説明

スルホン酸基分離除去方法、及びイオン交換樹脂の処理方法

【課題】低コストで効率的かつ安全に、スルホン酸基等のヘテロ原子を含む官能基を有する有機化合物から、ヘテロ原子を含む官能基を分離除去する方法、並びに該方法を用いた使用済みイオン交換樹脂の処理方法を提供する。
【解決手段】含ヘテロ原子有機化合物に、微生物及び該微生物由来成分の少なくともいずれかを接触させることを特徴とする、含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。前記微生物は、ヘテロ原子と炭素原子との結合を切断する微生物であることが好ましい。前記含ヘテロ原子有機化合物の分解方法、及びこれを用いたスルホン酸基分離除去方法により、イオン交換樹脂から、イオン交換基及び該イオン交換樹脂に吸着した物質を分離除去することを含むことを特徴とするイオン交換樹脂の処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸基を含有する有機化合物から選択的にスルホン酸基を分離除去する方法、及び該方法を用いたイオン交換樹脂の処理方法に関し、特に、放射性物質を吸着した使用済みイオン交換樹脂の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基は硫酸と同様に強酸性を示し、その陰イオンは水と良く水和するので、イオン交換樹脂、界面活性剤、染料等として多くの有機化合物に導入され、広く利用されている。具体的には、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体等を基体とし、イオン交換基としてスルホン酸基を導入してなる強陽イオン交換樹脂や、陰イオン界面活性剤として合成洗剤に利用されているアルキルベンゼンスルホン酸塩等の有機化合物が挙げられる。
【0003】
イオン交換樹脂は、上水道、工業用水、排水等の浄化処理に用いられており、該浄化処理は、イオン交換樹脂が被処理液中のイオン性の汚染物質を吸着することにより行われる。長時間の浄化処理によってイオン交換樹脂のイオン交換能力が低下すると、再生液により再生され、イオン交換能力を回復させて再び浄化処理に用いられるか、廃棄処分される。
【0004】
イオン交換樹脂は、原子力発電所施設において、原子炉の冷却水、及び各設備や配管等の洗浄に用いられた排水等の水処理系統の浄化処理にも用いられている。処理される水には、放射性核種(例えば、コバルト60、セシウム137、ストロンチウム90等)やその他の汚染物質(例えば、配管内部のスラッジの主成分としての鉄、ニッケル等)がイオン状態で含まれているため、浄化処理に用いられた使用済みイオン交換樹脂は、これらの放射性物質を吸着して放射能汚染される。
このような放射性物質を含む水の浄化処理においては、放射性各種を外部に漏出させないために、過剰量のイオン交換樹脂が用いられ、使用済みイオン交換樹脂は放射性廃棄物として廃棄処分される。
【0005】
放射能汚染の程度が高い使用済みイオン交換樹脂の廃棄処理は、未処理のまま貯蔵タンクに貯蔵され、原子力発電所の施設内に保管されることにより行われるが、近年の原子力発電所の長寿命化により放射性廃棄物貯蔵スペースの不足が問題となっており、廃棄物処理時の減容化が求められている。
【0006】
これらの問題に対し、放射性廃棄物としての使用済みイオン交換樹脂の減容化方法としては、例えば、焼却処理により減容化する方法、活性酸素や酸素プラズマによりイオン交換樹脂を灰化減容する方法(例えば、特許文献1〜2参照)、加熱加圧下において水熱酸化分解処理する方法(例えば、特許文献3参照)、減圧下で加熱及び放射線照射により分解する方法(例えば、特許文献4参照)、及び超臨界水で酸化分解する方法などが提案されている。
【0007】
しかしながら、イオン交換樹脂の焼却は、不完全燃焼により発生する副生成物、焼却により生成する有害ガス、残渣や飛灰等の処理が必要となる。熱分解処理においても、処理時に発生するススや排気ガスの処理のために、フィルター等を備えた処理設備が必要となり、特に、放射性廃棄物であるイオン交換樹脂の処理においては、放射性物質を含む排ガスや残渣の拡散や飛散による二次汚染の危険性を有するという問題がある。
また、プラズマによる処理においても、高圧・高温条件下による処理を行うために大掛かりなプラント設備が必要となるとともに、該プラント設備のメンテナンスも必要となるため、コスト高になるという問題がある。
【0008】
さらに、超臨界水を用いて酸化分解を行う場合、被分解物中に硫黄酸化物が含まれていると硫酸が生成し、容器の腐食を招くという問題がある。そこで、スルホン酸基をイオン交換基として有するイオン交換樹脂の処理においては、硫酸の生成を防止するために酸化分解前に中和を行う必要がある。しかしながら、中和により生成する無機塩は、超臨界水に対する溶解度が著しく低いため、管状の反応器で連続処理を行う場合等に閉塞の原因となることがあり、また該無機塩を含む排水が二次廃棄物として多量に発生し、さらなる処理が必要となるという問題がある。
【0009】
ところで、放射性廃棄物としての使用済みイオン交換樹脂の廃棄処理において、放射性物質はイオン交換基に吸着しているため、イオン交換基を選択的に脱離して樹脂から分離することができれば、該イオン交換基とともに放射性物質をも樹脂本体から分離することができ、放射性物質を含まない樹脂の処理が比較的容易に行なうことができるようになる。分離された放射性廃棄物を含む廃液も、濃縮等により減容化することにより、放射線廃棄物の貯蔵容積を大幅に削減することができる。
【0010】
上記減容化方法としては、例えば、酸溶液により放射性物質を樹脂から溶離した後、樹脂を焼却処理し、回収した酸溶液(廃液)を濃縮又は無害化する方法(例えば、特許文献5〜8参照)が提案されている。しかしながら、これらの方法によると、放射性廃棄物としての使用済みイオン交換樹脂から酸溶液により放射性物質を溶離する場合には、該放射性物質が溶離された酸溶液を中和するために塩が多量に生成するという問題や、拡散透析膜を通して放射性物質と酸溶液とを分離し、酸溶液を回収して再利用する場合に、放射性物質の透過が避けられないため、該酸溶液の溶離性能が低下していくという問題がある。
【0011】
このように、放射性物質を吸着した使用済みイオン交換樹脂を処理する方法、特に、スルホン酸基をイオン交換基として有するイオン交換樹脂を処理する方法として、処理後に塩等の二次廃棄物の発生が抑えられ、高熱処理等が不要であるため設備を簡素化することができ、更に、酸などの化学薬品を必要とせず、処理に伴う有毒物質や放射性物質などの飛散が生じない処理方法は、未だ満足なものが提供されていないのが現状である。
【0012】
一方、陰イオン界面活性剤として合成洗剤に利用されている直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)は難分解性であり、生活雑排水中に含まれ、河川等の水質汚染の原因となっていることが知られている。
LASは、活性汚泥処理装置等により分解処理が行われるが、例えば、非特許文献1に記載されているように、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの分解試験を行い、分解生成物の検索を行った結果から、比較的分解されにくい中間物質として、スルホン酸基のついた4−フェニル酪酸及び3−フェニルプロピオン酸が生成されることが明らかになっている。LASはその分解経路から、スルホン酸基が脱離することによりベンゼン環がモノあるいはジヒドロ化された後に環が開裂して容易に分解されると考えられるため、LASの処理方法として、硫黄原子と炭素原子との結合を選択的に切断し、スルホン酸基を脱離させる処理は、分解性を高める方法として望ましいと考えられる。
【0013】
したがって、スルホン酸基等のヘテロ原子を含む官能基を有する有機化合物を、低コストで効率的かつ安全に処理してヘテロ原子を含む官能基を分離除去する方法、並びに該方法を用いた使用済みイオン交換樹脂の処理方法は、未だ満足なものが提供されておらず、開発が望まれているのが現状である。
【0014】
【特許文献1】特開平10−232300号公報
【特許文献2】特開2001−305287号公報
【特許文献3】特開2003−3154097号公報
【特許文献4】特開2004−245700号公報
【特許文献5】特開2003−4894号公報
【特許文献6】特開2005−49173号公報
【特許文献7】特開2005−201725号公報
【特許文献8】特開2004−28697号公報
【非特許文献1】T.Thrnheer et.al(1990),Biodegradation,1,55−64.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、低コストで効率的かつ安全に、スルホン酸基等のヘテロ原子を含む官能基を有する有機化合物から、ヘテロ原子を含む官能基を分離除去する方法、並びに該方法を用いた使用済みイオン交換樹脂の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、含ヘテロ原子有機化合物からヘテロ原子含を含む官能基を脱離させる微生物を、集積培養により選抜することができ、得られた前記微生物を用いることにより、含ヘテロ原子有機化合部を低コストで効率的かつ安全に処理できるという知見である。例えば、スルホン酸基脱離能を有する微生物は、スルホン酸基を唯一の硫黄源として利用できる微生物群から選抜され、例えば、芳香族スルホン酸化合物におけるベンゼン環とスルホン酸基とのC−S結合を切断し、スルホン酸基を特異的に脱離させることができるため、該微生物を用いて硫黄原子を含む有機化合物を処理することにより、硫黄原子を含む官能基の分離除去を行うことができるという知見である。
【0017】
本発明は、本発明らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 含ヘテロ原子有機化合物に、微生物及び該微生物由来成分の少なくともいずれかを接触させることを特徴とする、含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。
<2> 含ヘテロ原子有機化合物から、ヘテロ原子を含む官能基を脱離させる前記<1>に記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。
<3> 微生物が、ヘテロ原子と炭素原子との結合を切断する前記<1>から<2>のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。
<4> 含ヘテロ原子有機化合物が、イオン交換樹脂、界面活性剤、及び石油オイルのいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。
<5> 微生物が寄託番号FERM P−21015の株及び寄託番号FERM P−21034の株の少なくとも1つである前記<1>から<4>のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。
<6> 含ヘテロ原子化合物に対して、さらに補酵素を接触させる請求項1から5のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。
<7> 補酵素がNADHである前記<1>から<6>のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法である。
【0018】
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法により、スルホン酸基を有する有機化合物から、スルホン酸基を脱離させることを含むことを特徴とするスルホン酸基分離除去方法である。
<9> スルホン酸基を有する有機化合物に接触させる微生物が、スルホン酸基脱離能を有し、スルホン酸基を硫黄源として利用可能である前記<8>に記載のスルホン酸基分離除去方法である。
<10> 微生物を、少なくともスルホン酸基を有する有機化合物を含む培地で培養する前記<8>から<9>のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法である。
<11> 微生物由来成分が、微生物及び該微生物の培養液のいずれかから抽出された酵素を含む前記<8>から<10>のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法である。
<12> スルホン酸基を有する有機化合物が、芳香族スルホン酸化合物である前記<8>から<11>のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法である。
<13> スルホン酸基を有する有機化合物が、スルホン酸基をイオン交換基とするイオン交換樹脂である前記<8>から<12>のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法である。
【0019】
<14> 前記<1>から<13>のいずれかに記載の方法により、イオン交換樹脂から、イオン交換基を分離除去することを含むことを特徴とするイオン交換樹脂の処理方法である。
<15> 使用済みのイオン交換樹脂から、イオン交換基とともに該イオン交換基に吸着された物質を分離除去する前記<14>に記載のイオン交換樹脂の処理方法である。
<16> 使用済みのイオン交換樹脂が、放射性核種を含む液体の浄化処理に用いられたイオン交換樹脂である前記<14>から<15>のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法である。
<17> 使用済みのイオン交換樹脂が、原子炉の冷却水の浄化処理に用いられたイオン交換樹脂である前記<14>から<16>のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法である。
<18> イオン交換基及び該イオン交換基に吸着された物質を分離除去した後、樹脂基体を焼却処理する前記<14>から<17>のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法である。
<19> イオン交換基が、スルホン酸基である前記<14>から<18>のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法である。
<20> イオン交換基が、4級アンモニウム基である前記<14>から<18>のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法である。
【0020】
<21> 放射性物質を吸着したイオン交換樹脂を、前記<14>から<20>のいずれかに記載の方法により処理することを含むことを特徴とするイオン交換樹脂の廃棄方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、低コストで効率的かつ安全に、スルホン酸基等のヘテロ原子を含む官能基を有する有機化合物から、ヘテロ原子を含む官能基を分離除去する方法、並びに該方法を用いた使用済みイオン交換樹脂の処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(含ヘテロ原子有機化合物の分解方法)
本発明の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法は、含ヘテロ原子有機化合物に、微生物及び該微生物由来成分の少なくともいずれかを接触させることにより、例えば、含ヘテロ原子有機化合物から、ヘテロ原子を含む官能基を脱離させる方法である。
【0023】
前記微生物としては、含ヘテロ原子有機化合物を、唯一のヘテロ原子源として含む培地で生育可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヘテロ原子と炭素原子との結合を切断する切断能を有するものが好ましい。
【0024】
前記含ヘテロ原子有機化合物に対し、前記微生物及び該微生物由来成分を接触させる方法としては、例えば、前記微生物を、前記含ヘテロ原子有機化合物を含む培地で培養する態様が好ましく、例えば、培養槽を設けて前記微生物を培養し、前記培養槽に前記含ヘテロ原子有機化合物を所定の流量で導入する態様、前記微生物を担体に付着させ、これを反応槽に充填し、該反応槽内に含ヘテロ原子有機化合物を導入する態様等が挙げられる。
また、前記培養は、前記微生物が、ヘテロ原子と炭素原子との結合の切断能を発現しうる温度条件、水分条件となるように調整して行うことが好ましい。
【0025】
前記含ヘテロ原子有機化合物としては、例えば、イオン交換樹脂、界面活性剤、及び石油オイル等が挙げられる。
【0026】
前記イオン交換樹脂としては、例えば、スルホン酸基、4級アンモニウム基等をイオン交換基として有するものが挙げられる。
前記イオン交換樹脂を、前記含ヘテロ原子有機化合物の分解方法を用いて処理する方法は、後述の本発明のイオン交換樹脂の処理方法を通じて明らかにする。
【0027】
前記界面活性剤としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
前記界面活性剤は、合成洗剤等に多く含まれるため、前記合成洗剤成分が含まれる排水や汚泥等を前記含ヘテロ原子有機化合物の分解方法を用いて処理することにより、界面活性剤の分解性が向上し、水質の向上を実現することができる。
【0028】
前記石油オイルとしては、例えば、軽油、重油、廃油、コールタール、灯油、ガソリン、潤滑油等が挙げられる。
前記石油オイルを、前記含ヘテロ原子有機化合物の分解方法を用いて処理することにより、石油オイルの脱硫が、前記微生物又は前記微生物由来成分により化合物中のC−S結合が選択的に切断されることにより行われるため、石油オイルの炭素骨格は分解されることがなく、エネルギー物質としての価値が失われない。
【0029】
本発明の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法は、該含ヘテロ原子有機化合物の分解方法を含む態様である下記のスルホン酸基分離除去方法の説明を通じて明らかにする。
【0030】
(スルホン酸基分離除去方法)
本発明のスルホン酸基分離除去方法は、前記含ヘテロ原子有機化合物の分解方法により、すなわち、スルホン酸基を有する有機化合物に、前記微生物及び該微生物由来成分の少なくともいずれかを接触させることにより、前記スルホン酸基を有する有機化合物から、スルホン酸基を脱離させることを含み、必用に応じて適宜必要なその他の処理を含む。
【0031】
<微生物>
前記微生物としては、スルホン酸基を有する有機化合物を含む培地で生育可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スルホン酸基脱離能を有することが好ましく、脱離したスルホン酸基を硫黄源として利用可能であることがより好ましい。
前記微生物としては、例えば、スルホン酸基脱離能を有し、脱離したスルホン酸基を硫黄源として利用するバクテリア(細菌類)、酵母、カビ、放線菌等の糸状菌、及び原生動物などが挙げられる。また、前記微生物としては、好気性菌であってもよく、嫌気性菌であってもよい。
【0032】
前記微生物は、例えば、陸土壌、干潟土壌、河川底泥、及び海底汚泥等(以下、「土壌試料」という)を採取し、該土壌試料中に存在する微生物から、集積培養により、スルホン酸基を含有する有機化合物を分解し、唯一の硫黄源としてスルホン酸基を資化できるものを選抜することにより得ることができる。
前記微生物を選抜する前記集積培養は、例えば、以下の方法により行うことができる。
【0033】
−集積培養−
前記集積培養は、前記土壌試料、又は前記土壌試料を蒸留水等に懸濁して得られた上澄み液を、スルホン酸基を唯一の硫黄源として含有する集積培養用液体培地に添加し、該上澄み液中の微生物を、1〜4代まで継代培養し、増殖がみられるものを分離してスルホン酸基を唯一の硫黄源として含有する寒天培地等に植菌し、生育の良好な単一コロニーを単離することにより行われる。
なお、前記土壌試料が海洋底泥の場合、海底底泥中には含硫化合物が豊富であるため、前記集積培養用液体培地において7代目まで継代培養を行うことが好ましい。
【0034】
前記集積培養用液体培地としては、唯一の硫黄源としてスルホン酸基を有する有機化合物を含む培地である限り、特に制限はなく、その他の炭素源、窒素源、無機塩類等の成分は公知の培地成分から適宜選択することができる。
また、前記集積培養用液体培地は、前記微生物の増殖を検出可能な試薬等を含むことが好ましい。前記試薬としては、例えば、前記微生物の増殖に伴う培地のpHの変化を検出可能な試薬として、フェノールレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、メチルレッド等が挙げられる。
前記集積培養用液体培地の組成の一例を、以下に示す。
【0035】
〔集積培養用液体培地の組成(pH8.0)〕
・グルコース 0.1質量%
・コハク酸ナトリウム 0.05質量%
・ピルビン酸ナトリウム 0.05質量%
・グルコン酸ナトリウム 0.05質量%
・塩化アンモニウム 2.0質量%
・KHPO 1.8質量%
・KHPO 0.6質量%
・塩化マグネシウム・6水和物 0.01質量%
・塩化カルシウム・2水和物 0.01質量%
・塩化鉄・6水和物 0.01質量%
・塩化ナトリウム 1.5質量%
・硫黄源(スルホン酸基を有する有機化合物) 0.2質量%
・フェノールレッド 0.003質量%
・微量元素溶液 0.1質量%
【0036】
なお、前記微量元素溶液としては、例えば、下記に示す組成のものが挙げられる。
〔微量元素溶液〕
・ホウ酸 0.5g/L
・ヨウ化カリウム 0.25g/L
・塩化マンガン・4水和物 0.2g/L
・モリブデン酸ナトリウム・2水和物 0.2g/L
・塩化亜鉛 0.1g/L
・塩化コバルト 0.3g/L
・塩化銅・2水和物 0.15g/L
【0037】
含ヘテロ原子有機化合物から、ヘテロ原子を含む官能基を脱離させる効果をさらに高めるためには、培養に用いる培地に、補酵素を添加することが好適である。補酵素としては、微生物及び該微生物由来成分に悪影響を与えないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、特に還元型ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NADH)であることが好適である。
【0038】
また、前記集積培養用液体培地に前記硫黄源として添加されるスルホン酸基を有する有機化合物としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、ベンゼンスルホン酸ナトリウム(BSNa)、ベンゼンスルホン酸ニッケル(BSNi)、p−スチレンスルホン酸ナトリム(SSNa)、及びベンゼンスルホン酸(BSA)等の芳香族スルホン酸化合物などが挙げられる。
【0039】
前記集積培養用液体培地による培養の条件としては、前記微生物が死滅しない条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜45℃の温度条件が好ましい。また、前記培養は、好気的に行われることが好ましい。
【0040】
前記集積培養用液体培地中において、前記微生物が増殖したことを確認する方法としては、前記集積培養用液体培地の濁りや添加した試薬による色の変化を目視で確認する方法、並びに吸光度の測定、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定、化学的酸素要求量の測定等により確認する方法等が挙げられる。
【0041】
前記微生物の増殖が確認された前記集積培養用液体培地から、前記微生物を、スルホン酸基を唯一の硫黄源として含有する寒天培地に植菌してさらに培養することにより、単一コロニーを単離し、所望の前記微生物を選抜することができる。
【0042】
前記スルホン酸基を唯一の硫黄源として含有する寒天培地(以下、単に「寒天培地」という)としては、唯一の硫黄源としてスルホン酸基を有する有機化合物を含み、さらにスルホン酸基の脱離を比色法等により検出可能な試薬(例えば、DTNB(5,5’−dithiobis(2−nitrobenzonic acid)等)を含む培地である限り、特に制限はなく、その他の炭素源、窒素源、無機塩類等の成分は公知の培地成分から適宜選択することができる。
【0043】
前記微生物により前記スルホン酸基を有する有機化合物からスルホン酸基が脱離したことによって生成した亜硫酸イオンが、前記寒天培地中に添加されたDTNBと結合すると、S−スルホンとチオール化合物が生成する。該チオール化合物による黄色の発色により前記微生物のスルホン酸基脱離能の有無を評価することができ、比色法により定性することにより、前記微生物のスルホン酸基脱離活性を評価することができる。スルホン酸基脱離活性が高い単一コロニーを選抜することにより、所望の前記微生物が得られる。
【0044】
前記寒天培地の組成の一例を、以下に示す。
〔寒天培地の組成(pH7.0)〕
・肉エキス 0.3質量%
・ペプトン 0.5質量%
・寒天 1.5質量%
・DTNB 0.01質量%
・硫黄源(スルホン酸基を有する有機化合物) 0.2質量%(*)
*:前記硫黄源として、スルホン酸基をイオン交換基として有するイオン交換樹脂を用いる場合には、5質量%とすることが好ましい。
【0045】
前記寒天培地に前記硫黄源として添加されるスルホン酸基を有する有機化合物としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、ベンゼンスルホン酸ナトリウム(BSNa)、ベンゼンスルホン酸ニッケル(BSNi)、p−スチレンスルホン酸ナトリム(SSNa)、及びベンゼンスルホン酸(BSA)等の芳香族スルホン酸化合物、及びスルホン酸基をイオン交換基として有する強陽イオン交換樹脂などが挙げられる。
【0046】
前記寒天培地による培養の条件としては、前記微生物が死滅しない条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜45℃の温度条件が好ましい。また、前記培養は、好気的に行われることが好ましい。培養日数としては、1〜3日が好ましい。
【0047】
前記微生物のスルホン酸基脱離活性は、スルホン酸基を有する有機化合物を硫黄源として添加した培地で培養し、該培地中に生成した亜硫酸イオン(亜硫酸塩)、及び硫酸イオン(硫酸塩)の濃度を定量することにより評価することができる。
亜硫酸イオン(亜硫酸塩)の濃度としては、例えば、培養液中にEllman試薬を添加した後、該培地の415nmの波長における吸光度を測定することにより定量することができ、硫酸イオン(硫酸塩)の濃度としては、例えば、培養液中に塩酸及びBa−PEG試薬を添加した後、該培地の600nmの波長における吸光度を測定することにより定量することができる。
【0048】
前記微生物は、上記の方法により選抜された微生物であってもよく、前記選抜された微生物を、スルホン酸基を有する有機化合物を硫黄源として添加した培地を用いて馴養を繰り返すことにより、スルホン酸基脱離能及び脱離活性がより優れた微生物として選抜され、集積された微生物であってもよい。
【0049】
本発明においては、微生物として、平成18年9月4日付で産業技術総合研究所に受託されており、識別のための表示を150−6−4−3,BSAである寄託番号FERM P−21015の株、及び平成18年9月21日付で産業技術総合研究所に受託されており、識別のための表示を143−2−11−3,SSNaである寄託番号FERM P−21034の株が特に好適に使用できる。その科学的性質等は以下の通りである。
【0050】
<識別のための表示:150−6−4−3,BSA、寄託番号FERM P−21015の株>
1.微生物の種類・・・細菌
2.分類学上の位置・・・Stenotrophomonas 属
3.培養条件
(1)培地名・・・Difco nutrient agar (♯213000)
培地の組成・・・肉エキス0.3%、ペプトン0.5%、寒天1.5%
(2)培地のpH・・・6.8
(3)培地の殺菌条件・・・オートクレーブ(121℃・5分)
(4)培地温度・・・27℃
(5)培養期間・・・1日
(6)酸素要求性・・・好気
(7)培養方法・・・好気、静置培養、振とう培養、通気・攪拌培養
(8)光要求性・・・不要
(9)継代培養条件・・・植え継ぎ間隔:2〜3週、保管温度10℃以下
4.保管条件
(1)L−乾燥法による保管が可能(保管温度4〜10℃)。
(2)凍結法による保管が可能(保管温度−20〜−80℃)。
【0051】
<識別のための表示:143−2−11−3,SSNa、寄託番号FERM P−21034の株>
1.微生物の種類・・・細菌
2.分類学上の位置・・・Bacillus 属(Bacillus pumilus 属に近縁)
3.培養条件
(1)培地名・・・Difco nutrient agar (♯213000)
培地の組成・・・肉エキス0.3%、ペプトン0.5%、寒天1.5%
(2)培地のpH・・・6.8
(3)培地の殺菌条件・・・オートクレーブ(121℃・5分)
(4)培地温度・・・27℃
(5)培養期間・・・1日
(6)酸素要求性・・・好気
(7)培養方法・・・好気、静置培養、振とう培養、通気・攪拌培養
(8)光要求性・・・不要
(9)継代培養条件・・・植え継ぎ間隔:2〜3週、保管温度10℃以下
4.保管条件
(1)L−乾燥法による保管が可能(保管温度4〜10℃)。
(2)凍結法による保管が可能(保管温度−20〜−80℃)。
【0052】
<微生物由来成分>
前記微生物由来成分としては、前記微生物及び該微生物の培養液のいずれかから抽出された抽出物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スルホン酸基脱離活性を有する成分を含むことが好ましい。前記スルホン酸基脱離活性を有する成分としては、例えば、酵素等が挙げられる。
【0053】
<スルホン酸基を有する有機化合物>
本発明のスルホン酸基分離除去方法の被処理物質としては、スルホン酸基を有する有機化合物を少なくとも含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記被処理物質に含まれるスルホン酸基を有する有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族スルホン酸化合物、脂肪族スルホン酸化合物などが挙げられるが、これらの中でも芳香族スルホン酸化合物が好ましい。
前記被処理物質としては、例えば、スルホン酸基をイオン交換基として有するイオン交換樹脂、未分解の芳香族スルホン酸化合物を含有する排水や汚泥、石油オイル等が挙げられる。
【0054】
スルホン酸基を有する有機化合物、すなわち前記被処理物質に前記微生物及び前記微生物由来成分の少なくともいずれかを接触させる方法としては、前記微生物、又は前記微生物由来成分がスルホン酸基脱離活性を発現しうる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バッチ法、半連続法、連続法等の種々の方法が挙げられる。
また、前記被処理物質は、適宜前処理を行ってもよく、該前処理としては、例えば、溶媒中に分散乃至溶解させる処理、担体に固定化する処理等が挙げられる。
【0055】
具体的には、前記微生物を、被処理物質を添加した培地で培養する態様が好ましく、例えば、培養槽を設けて前記微生物を培養し、前記培養槽に前記被処理物質を所定の流量で導入する態様、前記微生物を担体に付着させ、これを反応槽に充填し、該反応槽内に前記被処理物質を導入する態様等が挙げられる。
前記微生物は、前記培養槽又は前記反応槽へ逐次添加されることが好ましく、該逐次添加により、培地中における前記微生物の濃度を経時的に増加させていくことが好ましい。
【0056】
また、前記培養は、前記微生物がスルホン酸基脱離活性を発現しうる温度条件、水分条件となるように調整して行うことが好ましい。
前記温度条件としては、例えば、10〜45℃が好ましい。
また、前記水分条件としては、例えば、50%以上が好ましい。
さらに、前記培養は、前記微生物の生育を促進する公知の方法を併用してもよい。
【0057】
前記培地としては、硫黄源としてスルホン酸基を有する有機化合物を含み、公知の炭素源、窒素源、及び無機塩類から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0058】
前記微生物、及び前記微生物由来成分により脱離されたスルホン酸基は、前記培地中で亜硫酸塩、又は硫酸塩として存在しているため、例えば、透析処理、及び適宜選択した他の微生物処理等を行うことにより前記被処理物質から容易に除去することができる。
【0059】
(イオン交換樹脂の処理方法)
本発明のイオン交換樹脂の処理方法は、本発明の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法、及び本発明のスルホン酸基分離除去方法により使用済みのイオン交換樹脂から、硫黄原子を含むイオン交換基を分離除去することを含み、更に必用に応じて、適宜選択したその他の処理を含む。
また、前記イオン交換樹脂の処理方法は、使用済みのイオン交換樹脂から、イオン交換基とともに該イオン交換基に吸着された物質を分離除去することが好ましい。
なお、前記使用済みのイオン交換樹脂とは、各種用途に使用された結果イオン交換性能の劣化したイオン交換樹脂、特に廃棄対象となったイオン交換樹脂をいうが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記イオン交換基としては、硫黄原子を含む限り特に制限はなく、例えば、スルホン酸基、4級アンモニウム基等が挙げられる。
また、前記イオン交換樹脂の樹脂基体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系樹脂、ピリジン系樹脂等が挙げられる。
【0061】
本発明のイオン交換樹脂の処理方法は、放射性核種を含む液体の浄化処理に用いられた使用済みイオン交換樹脂の処理に好適に用いられる。具体的には、原子炉の冷却水、及び原子力発電所等の放射線核種取扱施設における排水等の浄化処理に用いられ、イオン交換基が放射性物質を吸着した使用済みイオン交換樹脂の処理に好適に用いられる。
【0062】
前記使用済みイオン交換樹脂に吸着された前記放射性物質としては、例えば、構造材のステンレス鋼が腐食して生成した放射化生成物等が挙げられ、例えば、鉄やニッケル等の放射能強度の高い陽イオン種、コバルト60、セシウム137、ストロンチウム90等が挙げられる。
【0063】
前記使用済みイオン交換樹脂に対し、前記微生物及び該微生物由来成分を接触させることにより、前記使用済みイオン交換樹脂からイオン交換基が脱離するため、該イオン交換基に吸着された物質は、該イオン交換基とともに樹脂基体から分離され、さらに適宜必要な処理を行うことにより除去される。
【0064】
前記使用済みイオン交換樹脂に対し、前記微生物及び該微生物由来成分を接触させる方法としては、例えば、前記微生物を、前記使用済みイオン交換樹脂を添加した培地で培養する態様が好ましく、例えば、培養槽を設けて前記微生物を培養し、前記培養槽に前記使用済みイオン交換樹脂を所定の流量で導入する態様、前記微生物を担体に付着させ、これを反応槽に充填し、該反応槽内に前記使用済みイオン交換樹脂を導入する態様等が挙げられる。
また、前記培養は、前記微生物がスルホン酸基脱離活性を発現しうる温度条件、水分条件となるように調整して行うことが好ましい。
【0065】
脱離したイオン交換基及び該イオン交換基に吸着された物質の除去方法としては、特に制限はなく、公知の方法から適宜選択することができ、例えば、濾過、透析等が挙げられる。
【0066】
(イオン交換樹脂の廃棄方法)
本発明のイオン交換樹脂の廃棄方法は、放射性物質を吸着したイオン交換樹脂を、本発明のイオン交換樹脂の処理方法により処理することを含み、さらに必用に応じて適宜必要な処理を行う方法である。
【0067】
前記イオン交換基及び該イオン交換基に吸着された物質が分離除去された前記樹脂基体は、例えば、焼却等の公知の処理方法により減容化される。
また、前記イオン交換基及び該イオン交換基に吸着された放射性物質を含む処理液は、例えば、濃縮、乾燥、蒸発乾固等の方法により減容化される。
前記イオン交換樹脂の処理方法によれば、前記使用済みイオン交換樹脂が放射性廃棄物の場合、該イオン交換樹脂の体積の大半を占める前記樹脂基体を従来のように放射性廃棄物として貯蔵・保管する必要がなくなるため、放射性廃棄物の貯蔵・保管スペースを大幅に削減できる。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
−スルホン酸基脱離能を有する微生物の選抜−
愛媛県の陸土壌、東京都江戸川区の河川土壌、千葉県の干潟土壌、及び千葉県浦安沖の海底汚泥から、土壌試料を採取し、該土壌試料中の微生物から下記の集積培養により、スルホン酸基脱離能を有する微生物を選抜した。なお、河川土壌及び海底汚泥は、佐竹式コアサンプラー(離合社製)を用いて採取した。
【0070】
採取した前記土壌試料各1gを、下記表1及び2に示す組成の集積培養用液体培地9mLにそれぞれ添加し、27℃で3〜4日間静置培養した。前記集積培養用液体培地のpHは8に調整した。また、唯一の硫黄源として、芳香族スルホン酸化合物を添加した。
【0071】
【表1】

*1:硫黄源は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、ベンゼンスルホン酸ナトリウム(BSNa)、ベンゼンスルホン酸ニッケル(BSNi)、p−スチレンスルホン酸ナトリム(SSNa)、及びベンゼンスルホン酸(BSA)のいずれか1種である。
*2:微量元素溶液は、下記表2に示す組成である。
【0072】
【表2】

【0073】
前記集積培養用液体培地中に添加されたフェノールレッドにより、該培地の赤色が橙色に変化したサンプルから各1mLを採取し、これを同組成の培地4mLにそれぞれ添加し、27℃で3〜4日間振とう培養した。この操作を7回繰り返して継代培養を行い、スルホン酸基を硫黄源として利用可能な微生物の一次探索を行った。
【0074】
前記集積培養用液体培地が橙色で、かつ濁りがみられるサンプルを選択し、各100μLを採取し、下記に示す組成の寒天培地に塗布し、27℃で1〜2日間培養し、単一コロニーを形成させた。
前記寒天培地は、唯一の硫黄源として、スルホン酸基をイオン交換基として有するイオン交換樹脂を含む。
【0075】
〔寒天培地の組成(pH7.0)〕
・肉エキス(製品名:細菌用肉エキス、極東製薬社製) 0.3質量%
・ペプトン(製品名:Bactopeptone、Difco社製) 0.5質量%
・寒天(製品名:Bactoagar、Difco社製) 1.5質量%
・DTNB(和光純薬社製) 0.01質量%
・硫黄源(ダイヤイオンSKN1、三菱化学(株)製) 5.0質量%
なお、前記硫黄源は、スチレン系樹脂を樹脂基体とし、スルホン酸基をイオン交換基として有するゲル型のイオン交換樹脂である。
【0076】
前記寒天培地中に添加されたDTNB(5,5’−dithiobis(2−nitrobenzonic acid))により、黄色の発色がみられる単一コロニーを、スルホン酸基脱離能を有する微生物として単離し、さらに同様の寒天培地を用いて培養し、比色定性によりスルホン酸基脱離活性を6段階で評価した。
【0077】
−スルホン酸基脱離試験−
前記集積培養により選抜され、スルホン酸基脱離活性の評価において3以上の高い活性を示した千葉県の干潟土壌由来の微生物1種(以下、「119-7-2株」という)を用い、以下の方法によりスルホン酸基脱離試験を行った。
【0078】
前記119-7-2株を、肉エキス(製品名:細菌用肉エキス、極東製薬社製)0.3質量%、及びペプトン(製品名:Bactopeptone、Difco社製)0.5質量%を含むpH7.0の液体培地に添加し、27℃で24時間培養した後、前記液体培地にスルホン酸基をイオン交換樹脂として有するイオン交換樹脂(未使用)を10質量%添加し、培養を続けた。前記イオン交換樹脂を添加してから1時間後、2時間後、5時間後、7時間後、10時間後、25時間後、48時間後、及び72時間後に、前記液体培地中の亜硫酸イオン量、及び硫酸イオン量を下記の方法により定量した。結果を図1に示す。
なお、比較対象として、前記イオン交換樹脂を添加せずに培養を行ったものについても、同様にして定量を行った。結果を図2に示す。
【0079】
<亜硫酸イオン量の定量>
前記液体培地を1mL採取し、Ellman試薬(DTNBを1mg/mL含む0.1Mリン酸緩衝液、pH7)を0.1mL添加し、2分間室温条件下にて放置した。その後415nmの吸光度を測定し、既知濃度の標準物質から得た検量線を用いて亜硫酸イオン濃度を求めた。
【0080】
<硫酸イオン量の定量>
前記液体培地を0.5mL採取し、0.5M塩酸を0.5mL添加し、さらにBa−PEG試薬(0.977質量%塩化バリウム・2水和物と、15gのポリエチレングリコール(#6,000)を含む)を0.5mL添加し、5〜30分間室温条件下にて放置した。その後600nmの吸光度を測定し、既知濃度の標準物質から得た検量線を用いて硫酸イオン濃度を求めた。
【0081】
図1及び図2の結果から、イオン交換樹脂を添加した場合には、約10時間後に亜硫酸イオンの増加がみられ、次いで硫酸イオンの増加が認められた。一方、イオン交換樹脂を添加しない場合には、亜硫酸イオン及び硫酸イオンの顕著な増加は認められなかった。
前記微生物(119-7-2株)が、イオン交換樹脂からスルホン酸基を脱離させた結果、亜硫酸イオン量が増加し、次いで、脱離されたスルホン酸基が自然酸化又は前記微生物により酸化されたことにより、硫酸イオンに変換されたものと考えられる。
【0082】
(実施例2)
−金属を吸着したイオン交換樹脂の処理−
実施例1と同様にして、スルホン酸基脱離能を有し、かつスルホン酸基脱離活性の高い前記微生物29株を選抜し、以下の方法により金属を吸着したイオン交換樹脂からの金属分離を評価した。
前記微生物は、千葉県の干潟土壌由来の微生物22種(以下、「CH−1株〜CH−22株」と表す)、及び愛媛県の陸土壌由来の微生物7種(以下、「AE−1株〜AE−7株」と表す)であり、いずれも比色定性によるスルホン酸基脱離活性の評価において3以上の高い活性を示した微生物である。
【0083】
前記微生物29株を、肉エキス(製品名:細菌用肉エキス、極東製薬社製)0.3質量%、及びペプトン(製品名:Bactopeptone、Difco社製)0.5質量%を含むpH7.0の液体培地にそれぞれ添加し、27℃で48時間培養した後、前記液体培地にスルホン酸基をイオン交換樹脂として有し、ニッケルを吸着したイオン交換樹脂を5質量%添加し、培養を続けた。前記イオン交換樹脂を添加してから24時間後、ろ紙(東洋濾紙、No.2)を用いて固液分離を行い、培養液と樹脂基体を含む固形分とを分離した。前記微生物は、培養液中に含まれるように分離した。
【0084】
前記培養液は、硝酸10〜40mLを添加した後、約120℃で4〜5時間加熱して有機物を分解した後、純水を添加して100mLにメスアップし、試料液Aとした。
前記固形分は、105℃で恒量になるまで乾燥させた後、650℃で恒量になるまで灰化し、塩酸で溶解して100mLの試料液Bとした。
なお、ニッケルの分配を調べるために、固液分離に用いた前記ろ紙も灰化し、塩酸に溶解して試料液Cとし、さらに前記固形分を前記ろ紙から分離する際に用いた洗浄水も試料液Dとした。
【0085】
前記試料液A〜Dについて、誘導結合プラズマ発光分析装置(SPS3000、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて分析した。結果を下記表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
表3の結果から、CH−18株、AE−3株、AE−5株、及びAE−7株において、前記イオン交換樹脂中のニッケル量の有意な減少(理論値に対する測定値の減少量)がみられた。特に、AE−5株の結果から、前記微生物によって前記イオン交換樹脂から分離されたニッケルが、培養液中に遊離していることが示された。これらの結果から、前記微生物は、イオン交換樹脂のイオン交換基であるスルホン酸基とともに、吸着された金属も分離可能であり、分離された金属は培養液とともに除去可能であることがわかった。
【0088】
また、実施例2の方法と同様にして、放射性物質を吸着した使用済みイオン交換樹脂からイオン交換基とともに該イオン交換樹脂に吸着した放射性物質を分離すれば、放射性物質として貯蔵や保管が必用となる廃棄物量は、分離された放射性物質のみとなる。このため、従来のように、放射性物質の分離除去処理を行わずにイオン交換樹脂全量を放射性廃棄物として扱う場合に比べ、大幅な減容化が可能である。例えば、ニッケルを吸着したイオン交換樹脂をモデルとして換算すると、前記ニッケルを吸着したイオン交換樹脂1Lの重量が470gであるのに対し、吸着したニッケル全量は50gであるため、貯蔵や保管の対象となる廃棄物量を約1/9に軽量化することができる。
【0089】
(実施例3)
−補酵素の効果−
補酵素が、金属を吸着したイオン交換樹脂からの金属分離に及ぼす効果を以下の方法により評価した。
実施例1と同様にして、スルホン酸基脱離能を有し、かつスルホン酸基脱離活性の高い前記微生物1種(以下、「122−5−3−1株」という)を選抜した。この微生物は、比色定性によるスルホン酸基脱離活性の評価において3以上の高い活性を示した。
【0090】
補酵素を混合してNi結合イオン交換樹脂を微生物培養液で処理した試料の分析を行い、補酵素によるイオン交換樹脂からニッケル脱離の効果を確認した。
培地としては、肉エキス(製品名:細菌用肉エキス、極東製薬社製)0.3質量%、及びペプトン(製品名:Bactopeptone、Difco社製)0.5質量%を含むpH7.0の液体培地を、それぞれ以下のように処理したものを用いた。
対照例・・・補酵素を入れずに高圧滅菌した。
試験例1・・・上記液体培地に0.5mMの補酵素β−NADHを添加して一緒に高圧滅菌した。
試験例2・・・高圧滅菌後の上記液体培地に、0.5mMの補酵素β−NADHをろ過滅菌で添加した。
【0091】
122−5−3−1株を、上記各培地にそれぞれ添加し、27℃で12時間培養した後、前記液体培地にスルホン酸基をイオン交換樹脂として有し、ニッケルを吸着したイオン交換樹脂を5質量%添加し、培養を続けた。前記イオン交換樹脂を添加してから24時間後、高圧滅菌して樹脂と培養液とを分離した。122−5−3−1株は、培養液中に含まれるように分離した。
【0092】
前記樹脂は、105℃で恒量になるまで乾燥させた後、650℃で恒量になるまで灰化し、塩酸で溶解した。
前記培養液は、硝酸10〜40mLを添加した後、約120℃で4〜5時間加熱して有機物を分解した後、純水を添加して100mLにメスアップした。
【0093】
前記樹脂及び培養液について、誘導結合プラズマ発光分析装置(SPS3000、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて分析した。結果を下記表4及び図3に示す。
【0094】
(表4)

【0095】
表4及び図3からわかるように、イオン交換樹脂から分離されて培養液中に遊離したニッケル量は、補酵素なしの対照例と比較して、補酵素を添加した試験例では増量した。
イオン交換樹脂から分離されて培養液中に遊離したニッケル量は、高圧滅菌前に補酵素β−NADHを添加した試験例1において最も多く(84.6%)、次いで、高圧滅菌後に補酵素β−NADHを添加した試験例2が多かった。
以上のことから、含ヘテロ原子化合物に対して、微生物及び該微生物由来成分の少なくともいずれかに加えて、補酵素を接触させることにより、金属の脱離効果が著しく上昇することが確認された。
また、補酵素は耐熱性があるため、培地の調製時、同時に高圧滅菌がかけられることがわかった。
【0096】
(実施例4)
愛媛県の陸土壌、東京都江戸川区の河川土壌、千葉県の干潟土壌、及び千葉県浦安沖の海底汚泥から、土壌試料を採取し、該土壌試料中の微生物から、実施例1と同様にして、スルホン酸基脱離能を有し、かつスルホン酸基脱離活性の高い微生物株を選抜し、実施例2の方法により、ニッケルを吸着したイオン交換樹脂からのニッケル脱離を評価した。
【0097】
下記表5に、ニッケルを吸着したイオン交換樹脂からの培養液中へのニッケル脱離量(%)を示す。
(表5)

上記表5に示されたニッケル脱離量の多い2株(150−6−4−3,BSA及び143−2−11−3,SSNa)について、以下のようにして、同定を行った。
【0098】
−微生物の同定−
<150−6−4−3,BSA>
方法
1. 培養条件
商品名 Nutrient agar(英国ハンプシャー州、Oxoid)の培地を用いて、30℃で24時間、好気培養した菌株を供試菌体とした。
【0099】
2. 16S rDNA−Full
抽出からサイクルシークエンスまでの操作は、各プロトコールに基づいて行った。
DNA抽出・・・InstaGene Matrix(米国カリフォルニア州、BIO RAD)
PCR・・・Prime STAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ)
サイクルシークエンス・・・BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit (米国カリフォルニア州、Applied Biosystems)
使用プライマー・・・9F、339F、785F、1099F、536R、802R、1242R、1510R
シークエンス・・・ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer System(米国カリフォルニア州、Applied Biosystems)
解析ソフトウェア・・・Auto Assembler (米国カリフォルニア州 Applied Biosystems)、DNASIS Pro(日立ソフトウェアエンジニアリング)
相同性検索・・・細菌基準株データベース(テクノスルガ)、国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)
【0100】
結果
図4に示すように、細菌基準株データベースに対する相同性検索の結果、150−6−4−3,BSAの16S rDNA塩基配列は、StenotrophomonasやXanthomonas由来の16S rDNAに対し高い相同性を示し、中でもS.maltophilea LMG958株及びPseudomonas hibiscicola ATCC19867株の16S rDNAにSrDNAに対し最も高い相同性を示した(相同率99%以上)。
また図5に示すように、国際塩基配列データベースに対する相同性検索の結果においても、150−6−4−3,BSAの16S rDNA塩基配列は、S.maltophilea由来の16S rDNAに対し高い相同性を示した。
そして図6に示すように、細菌基準株データベースに対する相同性検索上位30株との簡易分子系統解析の結果、150−6−4−3,BSAは、Stenotrophomonasの16S rDNAが形成するクラスター内に含まれ、Pseudomonas hibiscicolaと系統枝を形成した。
以上のことから、150−6−4−3,BSAはStenotrophomonas maltophiliaに近縁名Stenotrophonas sp.であることが推定された。
この株は、平成18年9月4日付で寄託番号FERM P−21015として、産業技術総合研究所に受託されている。
【0101】
<143−2−11−3,SSNa>
1. 培養条件
上述の通り。
2. 16S rDNA−Full
上述の通り
【0102】
図7に示すように、細菌基準株データベースに対する相同性検索の結果、143−2−11−3,SSNaの16S rDNA塩基配列は、Bacillus由来の16S rDNAに対し高い相同性を示し、中でもBacillus pumilus ATCC7061株の16S rDNAに対し最も高い相同性を示した(相同率99.9%)。
また図8に示すように、国際塩基配列データベースに対する相同性検索の結果においても、143−2−11−3,SSNaの16S rDNA塩基配列は、Bacillus由来の16S rDNAに対し高い相同性を示した。
そして図9に示すように、細菌基準株データベースに対する相同性検索上位30株との簡易分子系統解析の結果、143−2−11−3,SSNaは、Bacillus pumilusと系統枝を形成し、非常に近縁であることが示された。
以上のことから、143−2−11−3,SSNaはBacillus pumilus に近縁なBacillus sp.であることが推定された。
この株は、平成18年9月21日付で寄託番号FERM P−21034として、産業技術総合研究所に受託されている。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法は、低コストで効率的かつ安全に、含ヘテロ原子有機化合物の分解することができるため、工業的なイオン交換樹脂の処理方法、排水や汚泥等の処理方法、石油オイルの脱硫方法として好適である。
本発明のスルホン酸基分離除去方法は、低コストで効率的かつ安全に、スルホン酸基を有する有機化合物からスルホン酸基を分離除去することができるため、スルホン酸基を有する有機化合物を工業的に大量に処理する方法、使用済みイオン交換樹脂の処理方法に好適であり、特に、放射性物質を吸着した使用済みイオン交換樹脂の処理に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、実施例1において、119−7−2株を、スルホン酸基をイオン交換基として有する未使用のイオン交換樹脂の存在下で培養したときに生じた亜硫酸イオン(Sulfite)、及び硫酸イオン(Sulfate)濃度の経時変化を示すグラフであり、左縦軸は亜硫酸濃度(μM)を、右縦軸は硫酸濃度(μM)、横軸は培養時間(時間)をそれぞれ示している。
【図2】図2は、実施例1において、119−7−2株を、スルホン酸基をイオン交換基として有する未使用のイオン交換樹脂を添加せずに培養したときに生じた亜硫酸イオン(Sulfite)、及び硫酸イオン(Sulfate)濃度の経時変化を示すグラフであり、左縦軸は亜硫酸濃度(μM)を、右縦軸は硫酸濃度(μM)、横軸は培養時間(時間)をそれぞれ示している。
【図3】図3は、実施例3における補酵素によるニッケル脱離の効果を示したグラフである。
【図4】図4は、150−6−4−3,BSAの細菌基準株データベース相同性検索の結果を示す表である。
【図5】図5は、150−6−4−3,BSAの国際塩基配列データベース相同性検索の結果を示す表である。
【図6】図6は、150−6−4−3,BSAの16S rDNAを用いた分子系統樹であり、左下の線はスケールバー、株名の末尾のTはその種の基準株、Gは全ゲノムが解読された株であることを示す。
【図7】図7は、143−2−11−3,SSNaの細菌基準株データベース相同性検索の結果を示す表である。
【図8】図8は、143−2−11−3,SSNaの国際塩基配列データベース相同性検索の結果を示す表である。
【図9】図9は、143−2−11−3,SSNaの16S rDNAを用いた分子系統樹であり、左下の線はスケールバー、株名の末尾のTはその種の基準株、Gは全ゲノムが解読された株であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含ヘテロ原子有機化合物に、微生物及び該微生物由来成分の少なくともいずれかを接触させることを特徴とする、含ヘテロ原子有機化合物の分解方法。
【請求項2】
含ヘテロ原子有機化合物から、ヘテロ原子を含む官能基を脱離させる請求項1に記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法。
【請求項3】
微生物が、ヘテロ原子と炭素原子との結合を切断する請求項1から2のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法。
【請求項4】
含ヘテロ原子有機化合物が、イオン交換樹脂、界面活性剤、及び石油オイルのいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法。
【請求項5】
微生物が寄託番号FERM P−21015の株及び寄託番号FERM P−21034の株の少なくとも1つである請求項1から4のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法。
【請求項6】
含ヘテロ原子化合物に対して、さらに補酵素を接触させる請求項1から5のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法。
【請求項7】
補酵素がNADHである請求項1から6のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の含ヘテロ原子有機化合物の分解方法により、スルホン酸基を有する有機化合物から、スルホン酸基を脱離させることを含むことを特徴とするスルホン酸基分離除去方法。
【請求項9】
スルホン酸基を有する有機化合物に接触させる微生物が、スルホン酸基脱離能を有し、スルホン酸基を硫黄源として利用可能である請求項8に記載のスルホン酸基分離除去方法。
【請求項10】
微生物を、少なくともスルホン酸基を有する有機化合物を含む培地で培養する請求項8から9のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法。
【請求項11】
微生物由来成分が、微生物及び該微生物の培養液のいずれかから抽出された酵素を含む請求項8から10のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法。
【請求項12】
スルホン酸基を有する有機化合物が、芳香族スルホン酸化合物である請求項8から11のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法。
【請求項13】
スルホン酸基を有する有機化合物が、スルホン酸基をイオン交換基とするイオン交換樹脂である請求項8から12のいずれかに記載のスルホン酸基分離除去方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の方法により、イオン交換樹脂から、イオン交換基を分離除去することを含むことを特徴とするイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項15】
使用済みのイオン交換樹脂から、イオン交換基とともに該イオン交換基に吸着された物質を分離除去する請求項14に記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項16】
使用済みのイオン交換樹脂が、放射性核種を含む液体の浄化処理に用いられたイオン交換樹脂である請求項14から15のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項17】
使用済みのイオン交換樹脂が、原子炉の冷却水の浄化処理に用いられたイオン交換樹脂である請求項14から16のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項18】
イオン交換基及び該イオン交換基に吸着された物質を分離除去した後、樹脂基体を焼却する請求項14から17のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項19】
イオン交換基が、スルホン酸基である請求項14から18のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項20】
イオン交換基が、4級アンモニウム基である請求項14から18のいずれかに記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項21】
放射性物質を吸着したイオン交換樹脂を、請求項14から20のいずれかに記載の方法により処理することを含むことを特徴とするイオン交換樹脂の廃棄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−143546(P2007−143546A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290492(P2006−290492)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000173913)財団法人微生物化学研究会 (29)
【出願人】(000142791)株式会社アトックス (25)
【Fターム(参考)】