説明

スルーホールに金属を充填するための電気処理、とりわけプリント基板のスルーホールに銅を充填するための電気処理

本発明はスルーホールに金属を充填するための電気処理に関する。この処理は、プリント基板のスルーホールに銅を充填するのに特に好適である。この方法は、下記工程、すなわち、(i)電気めっきによってスルーホールの中央部に狭い部分を形成する工程と、(ii)工程(i)で得られたスルーホールに電気めっきによって金属を充填する工程とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーホールに金属を充填するための電気処理に関する。この処理は、プリント基板のスルーホールに銅を充填するのに特に好適である。この処理は、小径のホールにさえも耐久性のある充填を施すことができ、スルーホール内の好ましからざる異物混入が回避される。さらに、前記充填物は、非常に良好な熱伝導率を示す。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化がますます勢いを増す一方で、集積密度も増加している。プリント基板の場合、小型化の傾向は、下記構造パラメーター、すわなち、パッドの直径および導体の幅/導体の空隙の減少ならびに積層の改良および層の数の増加に反映されている(Der europaische Technologie − und Trendbericht 2001/2002 uber Leiterplatten mit hohen integrationsdichten(The European Technology and Trend Report 2001/2002 Concerning Printed Circuit Boards with High Integration Dendititis)を参照)。
これらの性質を有するプリント基板は、一般に、集積密度の高いプリント基板(いわゆるビルドアップ基板またはHDI)と呼ばれる。
プリント基板製造におけるそのようなHDI回路についての重要な側面は、スルーホール(いわゆるビアホール)の充填である。スルーホールの充填は、プロセス制御に非常に高い要求を課す。非常に異なる種類のドリルホールを考慮に入れなければならず、充填材についての様々な要件が満たされなければならず、続くプリント基板の作業工程を考慮に入れなければならない。
本発明の主な焦点は、プリント基板全体にわたるスルーホールの充填(めっきスルーホール、PTH)および内部ビアホール(埋設ビアホール)の充填である。
原則として、前記処理は、最も困難なワークピース、とりわけスルーホールを備えた板状ワークピースおよび板状電気回路基体のスルーホールに充填を施すのに好適である。
【0003】
スルーホールの封止において、高い集積密度を得るため、および電気的性質を向上させるためにはんだが部品上へ付かないようにすることがとりわけ重要である。多層プリント基板の場合、次に積み重ねられる層を積層している最中にホールへの(空気、溶媒などの)混入が生じることがあり、後に熱ストレスがかかった場合に、次の層にふくらみを生じ、その結果亀裂を生じさせることがある。
従って、スルーホールのための充填材は以下の要求を充たす必要がある。
− 溶媒を含有しないこと
− スリーブおよびソルダレジストに対して良好な接着性を示すこと
− 後の工程(例えば、ニッケル、金またはスズによる電気メタライゼーション)におけるプロセス薬品に対する耐性があること
− 熱レベリング工程に対する耐性があること
【0004】
従来技術では、スルーホールに充填を施すための様々な処理が知られている。
最も単純なケースでは、ホールに専用のソルダレジストを充填する。それらには、高集積密度の場合、必然的にリベットヘッドのように突き出るビア充填材によって分解能が損なわれることは全く無いという利点がある。しかしながら、問題なのは、混入した溶媒が、スズめっきのごときその後の処理工程において突然気化してカバーを破ってしまう可能性があるということである。
しかしながら、この処理は、内層のスルーホールを封止するのには向いていない。この場合、前記内層は、不純物の混入を避けるために、完全に封止されていなければならない。
この処理には、プラギングが広く用いられている。なぜならば、この処理を用いて、充填されたスルーホールを銅めっきすることによって、全く制限無く構築することができる内層を作ることができるからである。
充填材としては、樹脂でコーティングされた銅箔(RCC)または光誘電性液体またはドライフィルムのごとき各種誘電体が用いられる。
【0005】
EP 0 645 950 B1には、多層回路基板を製造するための方法が記載されている。スルーホールの充填材としては、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂からなる群から選択される熱硬化性樹脂が用いられる。さらに、導電性物質として、銀、ニッケル、銅およびそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属粉末が前記樹脂に添加される。
【0006】
一般に、プラギングは、プリント基板にドリルで穴を開け、ドリルホールのメタライゼーションをした後、組み立ての前に行われる。ビアホールが充填され、プラギングペーストが硬化した後、ペースト硬化物は充填処理によってわずかなリベットヘッドを示すため、機械的に平坦化されることになる。多くの場合、続いて銅による前記ペーストのメタライゼーションが行われ、連続した銅層が最終層として形成される。簡単に言えば、下記工程が必要である。
− ドリル穿孔
− スリーブのメタライゼーション
− プラギング
− ブラシ掛け、研削
− プラギングペーストのメタライゼーション
− 次層のビルドアップ層の積層
【0007】
EP 1 194 023 A1には、スルーホールに導電性ペーストを充填することによってHDIプリント基板を製造することが記載されている。この場合、ペーストの硬化は、基礎材料の成形と同時に行うことができ、その結果として、内層の導通が得られる。
しかしながら、前記方法は、多大な費用を必要とし、HDIプリント基板の製造における加工費を大きく増加させる原因となる。さらに、プリント基板上のレイアウト毎に、異なるプリントマスクを使用しなければならない。従って、前記方法は汎用されていない。
【0008】
プリント基板のドリルホールの直径が大きく異なる場合、プリント法は難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、前記問題点を解決する処理を開発し、かつ、ワークピースのスルーホールに、異物をほぼ全く残すこと無く、確実に充填を施すための単純な処理を提供することである。前記処理は、とりわけ、プリント基板のスルーホールに銅を充填するのに用いることができる。
【0010】
本発明のさらなる目的は、電解メタライゼーションにおいて高い性能を実現することである。この場合、これは、一方では、作業時間を短くするためにプリント基板の電解メタライゼーション中の電流密度をできるだけ高くし、他方では、プリント基板の表面に沈着する金属の量をできるだけ少なくするということを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的は、ワークピースのスルーホールに金属を充填するための本発明の処理を用いることによって達成される、前記処理は、下記工程、すなわち、
(i)スルーホールを有するワークピースを金属沈着電解質に接触させ、前記ワークピースと少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加することによって前記ワークピースに電流を供給する工程であって、前記電流を図1に示されるように好ましい沈着が前記スルーホールの中央部に生じるように選択することによって前記スルーホールの中央部を完全にまたはほぼ完全に埋める工程と、
(ii)前記ワークピースを金属沈着電解質に接触させ、前記ワークピースと少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加することによって前記ワークピースに電流を供給する工程であって、工程(i)で得られた完全にまたはほぼ完全に二つに分けられたスルーホールに図2のように所望の量まで金属を充填する工程と、
を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の2段階処理を用いることによって、スルーホールに純粋な金属層を充填することが初めてできるようになった。これに対し、ペースト(大半が導電性)を用いる従来の充填処理によると、必要とされる耐久性および所望される性質を備えた緻密な金属層の製造は不可能であると考えられている。
例えばプリント基板のホールのメタライゼーションの場合、従来法によると、初期段階ではホールの両端部と中央部に、ほぼ同一の分配状態が見られる。金属沈着が進むと、アスペクト比が変化し、ドリルホール内への分配が減少する。これにより、ドリルホールの両端部での金属沈着が増加し、ドリルホールの内部が金属で充填される前に両端部が塞がれてしまう。その結果、好ましからざる混入物、とりわけメタライゼーション浴の残留物がホール内に残ることになる。
【0013】
本発明は、特殊な沈着技術の第1工程において、スルーホールの中央部を完全にまたはほぼ完全に埋めることによってスルーホールから2つのホールを作り出すというアイデアに基づいている。前記2つのホールは、それぞれ、スルーホールの中央部に近いところで一端が閉止されている(図1参照)。スルーホールの中央部分の沈着物の形状は、図1aに示されるようなV型でもよいし、丸みを帯びた狭い部分を有する形状でもよい(図1b参照)。この沈着物の形状は、スルーホールの中央部において沈着量を増大することにより実現することができ、この場所でスルーホールの端部に比べてより多くの金属沈着が観察される。
【0014】
本発明を適用するのに好ましい分野であるプリント基板の製造において、これらのホールは、ブラインドホールまたはブラインドビアホールとも呼ばれる。第2メタライゼーション工程では、このように作成されたブラインドビアホールに金属を充填する(図2参照)。
【0015】
ブラインドビアホールに充填を施すための処理は従来技術において実質的に公知であり、記載されている。
EP 1 264 918 A1には、マイクロブラインドビアホールに充填を施すのに特に好適である電気銅沈着処理が記載されている。この処理では、空電解相における不活性アノードの使用が、電解質の充填性を維持および改善するのに役立つ。
EP 1 219 729 A1によれば、ホルムアルデヒドのごとき化学物質や、酸化剤を用いることによって、メタライゼーション浴が安定している期間を伸ばす。これは、マイクロブラインドビアホールに充填を施すのに特に好適である。添加剤として、スルホン酸基を有する硫黄含有物質およびチオール反応性化合物が用いられる。
【0016】
DE 103 25 101には、
(i)金属塩、酸および有機添加剤を含んでなる金属被膜で電気めっきするための電解質浴であって、前記浴は、15〜60g/Lの銅と、40〜300g/Lの硫酸と、20〜150mg/Lの塩化物とを含んでなる無機基質を含有し、そして前記有機添加剤は、増白剤、湿潤剤ならびにポリアミド、ポリアミン、ラクタムアルコキシレート、チオウレア、オリゴマーおよびポリマーフェナンゾニウム誘導体ならびにアミノ−トリフェニルメタン染料から選択されるさらなる添加剤を含んでなる、ことを特徴とする浴を用いて、
(ii)前記浴を、電流密度0.5〜2.5A/dmの直流または実効電流密度0.5〜10A/dmの電流パルスで運転し、
(iii)前記電解質の一部を前記電気浴から回収し、
(iv)前記回収された部分に酸化剤を添加し、
(v)任意に、前記回収された電解質に紫外線を照射し、そして
(vi)前記回収された部分を前記電気浴に戻し、酸化処理によって破壊された有機添加剤を補完する、
マイクロブラインドビアホールに充填を施すための処理が記載されている。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の処理は、プリント基板の最大深さ3.5mm、好ましくは0.025〜1mmの深さ、特に好ましくは0.05〜0.5mmの深さであり、直径1,000μm以下、好ましくは30〜300μm、最も好ましくは60〜150μmの直径のスルーホールを充填する。
【0018】
ワークピースのスルーホールに金属を充填するための本発明の処理では、原理的には電気金属沈着に好適なあらゆる電解質、例えば金、スズ、ニッケルまたはそれらの合金を沈着させるための電解質を用いることができる。好ましい金属は銅である。
銅沈着については、下記組成を有する電解質が最良の結果を与えた。
銅は、硫酸銅五水和物(CuSO×5HO)または硫酸銅溶液として電解質に添加することができる。その稼動範囲は、15〜75g/Lである。
硫酸(HSO)は、50〜96%溶液として添加される。その稼動範囲は、20〜400g/L、好ましくは50〜300g/Lである。
塩化物は、塩化ナトリウム(NaCl)または塩酸溶液(HCl)として添加される。ここでは、塩化物の稼動範囲は、20〜200mg/L、好ましくは30〜60mg/Lである。
さらに、電解質は、有機添加物として、増白剤、レベリング剤および湿潤剤を含んでなることが好ましい。
【0019】
一般に、湿潤剤は、濃度が0.005〜20g/L、好ましくは0.01〜5g/Lである酸素含有高分子化合物である。例を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
一般に、増白剤としては、表2に示される硫黄含有物質が用いられる。
【0022】
【表2】

【0023】
レベリング剤としては、DE 38 36 521 C2に記載されているように、高分子窒素化合物(例えば、ポリアミンまたはポリアミド)または窒素含有硫黄化合物、例えばチオウレア誘導体またはラクタムアルコキシレートを用いることができる。使用される物質の濃度は、0.1〜100ppmである。
【0024】
さらに、特許DE 41 26 502 C1に記載されているフェナゾニウム誘導体の重合体も用いることができる。ブラインドビアホールに充填するのに用いられるさらなる物質としては、マラカイト、ロザリニンまたはクリスタルバイオレットのごときアミノトリフェニルメタン構造に基づく着色剤が挙げられる。
【0025】
アノードとしては、例えば、レドックス系(すなわち、例えばFe2+/3+系)を用いないまたは用いる不活性アノードを用いることができる。鉄のレドックス系を用いる場合、鉄(II)イオンの濃度は、一般に1〜15g/L、好ましくは8〜12g/Lであり、そして鉄(III)イオンの濃度は、一般に1〜15g/L、好ましくは8〜12g/Lである。
酸性の銅のDCおよびAC電解質には、可溶性アノードを用いることができる。
銅によるメタライゼーションを行っている間、銅は、スルーホールの内部だけでなく、基板の表面にも沈着する。必要に応じて、前記表面に沈着した銅の層を、プリント基板の製造において知られているエッチング処理を用いて再度取り除くことができる。
さらに、金属による充填は、パルス逆電流を用いた特殊なメタライゼーションを用いた水平処理においてとりわけ良好な結果が得られた。この特殊な技術は、2つの独立したパルス整流器によって生じる2つのパルス形状が180°シフトした位相であることを特徴とする。2つの整流器を用いることによって、プリント基板の両面を個別にメタライゼーションすることができる。さらなる特徴は、双方の整流器について反対側の面に同時に逆の電流パルスが作用するように選択される周期的なパルス−休止の繰り返しを選択することである(図3参照)。
【0026】
逆パルスめっきは、とりわけ、アスペクト比の高いプリント基板への銅の電解析出のために開発されたものであり、例えば、DE 42 25 961 C2およびDE 27 39 427 A1に記載されている。高い電流密度を用いることによって、向上された表面分散性およびスルーホール内への分配性が得られる。
本発明の処理において、パラメーターは下記のように設定されることが好ましい。
少なくとも1つの逆方向電流パルスの継続時間に対する少なくとも1つの順方向電流パルスの継続時間の比は、少なくとも5、好ましくは少なくとも15、さらに好ましくは少なくとも18に設定される。この比は、75以下、好ましくは50以下に設定することができる。この比を約20に設定することが特に好ましい。
少なくとも1つの順方向電流パルスの継続時間は、好ましくは少なくとも5〜250msに設定することができる。
少なくとも1つの逆方向電流パルスの継続時間は、好ましくは20ms以下、最も好ましくは1〜10msに設定される。
【0027】
ワークピースにおける少なくとも1つの順方向電流パルスのピーク電流密度は、好ましくは15A/dm以下に設定される。ワークピースにおける少なくとも1つの順方向電流パルスの特に好ましいピーク電流密度は、水平処理において、約1.5〜8A/dmである。垂直処理において、ワークピースにおける少なくとも1つの順方向電流パルスの最も好ましいピーク電流密度は、2A/dm以下である。
ワークピースにおける少なくとも1つの逆方向電流パルスのピーク電流密度は、好ましくは60A/dm以下に調整される。ワークピースにおける少なくとも1つの逆方向電流パルスの特に好ましいピーク電流密度は、水平処理において、約30〜50A/dmである。垂直処理において、ワークピースにおける少なくとも1つの逆方向電流パルスの最も好ましいピーク電流密度は、3〜10A/dm以下である。
【0028】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の処理は、下記工程、すなわち、
(a)第1電圧をワークピースの第1面と少なくとも第1アノードとの間に印加することによって第1パルス逆電流を前記ワークピースの第1面に供給する、この第1パルス逆電流の各サイクルにおいて、少なくとも第1順方向電流パルスと少なくとも第1逆方向電流パルスとが流れる工程と、
(b)第2電圧を前記ワークピースの第2面と少なくとも第2アノードとの間に印加することによって第2パルス逆電流を前記ワークピースの第2面に供給する、この第2パルス逆電流の各サイクルにおいて、少なくとも第2順方向電流パルスと少なくとも第2逆方向電流パルスとが流れる工程と、
を含んでなる。
後者の実施態様について、少なくとも1つの第1順方向電流パルスおよび少なくとも1つの第1逆方向電流パルスは、それぞれ、少なくとも1つの第2順方向電流パルスおよび少なくとも1つの第2逆方向電流パルスのそれぞれに対してオフセットの関係であってもよい。本発明のさらに好ましい実施態様では、第1電流パルスと第2電流パルスの間のオフセットは約180°である。
【0029】
分配状態をさらに向上させるために、各サイクルの電流は2つの順方向電流パルスを有していてもよい。この場合、2つの順方向電流パルスと逆方向電流パルスとの間には、電流ゼロの中断期間を有する。
メタライゼーション処理の進行中に、パルス逆電流の少なくとも1つのパラメーターを変量することができる。このパラメーターは、逆方向電流パルスの継続時間に対する順方向電流パルスの継続時間の比および逆方向電流パルスのピーク電流密度に対する順方向電流パルスのピーク電流密度の比からなる群から選択される。ワークピースをメタライゼーションするときに逆方向電流パルスのピーク電流密度に対する順方向電流パルスのピーク電流密度の比を高めることおよび/または逆方向電流パルスの継続時間に対する順方向電流パルスの継続時間の比を減らすことが特に有利であることが明らかになった。
【実施例】
【0030】
本発明を下記実施例によってさらに説明する。
水平メタライゼーション処理
Atotech Deutschland GmbH製のInpulse2モジュールを使用したプリント基板の水平処理を行った(処理する基板は、移送面を水平にして水平方向に移動した)。ノズルホルダーとカソード(ワークピース)の間隙が15mmであり、アノードとカソードの間隙が8mmであった。
メタライゼーションするに当たり、特に断りのない限りは、寸法が18’×24”=457mm×610mmであり、直径150μm、深さ200μmのスルーホールを有するFR4素材のプリント基板を用いた。
メタライゼーションに先立ち、前記プリント基板の表面を、まずAtotech Deutschland GmbH社の洗浄剤Cuprapro CFで45秒間洗浄し、その後、5%硫酸で45秒間処理した。
【0031】
使用した電解質は下記組成を有する。銅イオンおよび硫酸の濃度は、別々の試験で調べた。いずれの場合も、メタライゼーションは40℃の温度で行った。
硫酸銅
硫酸
塩化物イオン: 50mg/L
鉄(II): 10g/L
鉄(III): 2g/L
レベリング剤InpulseH6: 4ml/L; 増白剤InpulseH6: 7mL/L
レベリング剤InpulseHF: 4ml/L; 増白剤InpulseHF: 7mL/L
Inpulseレベリング剤および増白剤は、Atotech Deutschland GmbHの製品である。
【0032】
実施例1
前述の一般的な水平処理の実施条件に従い、プリント基板を、まずInpulse H6を含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第1表1aに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理を30分間行った。図1aに示されるようなスルーホール内の銅沈着が見られた。
次に、前記プリント基板を、Inpulse HFを含有する銅による電解メタライゼーションのためのもう1つの浴中第1表1bに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理をさらに30分間行った。図2に示されるようなスルーホール内の銅沈着が見られた。
そして、スルーホールを完全に充填した。スルーホール内に異物混入は見られなかった。
【0033】
【表3】

【0034】
実施例2
前述の一般的な水平処理の実施条件に従い、プリント基板を、まずInpulse H6を含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第2表2aに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理を30分間行った。
【0035】
次に、前記プリント基板を、Inpulse HFを含有する銅による電解メタライゼーションのためのもう1つの浴中、第2表2bに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理をさらに30分間行った。
【0036】
そして、スルーホールを完全に充填した。スルーホール内に異物混入は見られなかった。
【0037】
【表4】

【0038】
実施例3
前述の一般的な水平処理の実施条件に従い、プリント基板を、Inpulse HFを含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第3表に記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理を60分間行った。
そして、スルーホールを完全に充填した。スルーホール内に異物混入は見られなかった。
【0039】
【表5】

【0040】
実施例4
前述の一般的な水平処理の実施条件に従い、直径200μm、深さ300μmのスルーホールを有するプリント基板を、まずInpulse H6を含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第4表4aに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理を30分間行った。
次に、前記プリント基板を、Inpulse HFを含有する銅による電解メタライゼーションのためのもう1つの浴中、第4表4bに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理をさらに30分間行った。
そして、スルーホールを完全に充填した。スルーホール内に異物混入は見られなかった。
【0041】
【表6】

【0042】
すべての試験において、パルスパラメーターのパルス間隔を調節し、180°の位相シフトに設定した。これは、アノードの試験基板の片面に逆方向パルスが印加される一方で、同時にアノードの反対面はパルスの休止時間にあたっていたことを意味する。図3のパルス形状の概略図(時間の関数としての電流)は、上部および下部アノードの間の位相シフトを示す(上の曲線:カソードの上面における電流、下の曲線:カソードの下面における電流)。
【0043】
垂直メタライゼーション処理
垂直メタライゼーションを行うに当たり、寸法が18”×24”=457mm×610mmであり、直径150μm、深さ200μmのスルーホールを有するFR4素材でできたプリント基板を用いた。
メタライゼーションに先立ち、前記プリント基板の表面を、まずAtotech Deutschland GmbH製の酸性洗浄剤Sで3分間洗浄し、その後、5%硫酸で60秒間処理した。
使用した電解質は下記組成を有する。銅イオンおよび硫酸の濃度は、別々の試験で調べた。いずれの場合も、メタライゼーションは23℃の温度で行った。
硫酸銅
硫酸
塩化物イオン: 第1工程では60mg/L、第2工程では35mg/L
レベリング剤Cuprapulse XP7: 20ml/L; 増白剤Cuprapulse S3: 1mL/L
レベリング剤Inplate DI: 15mL/L; 増白剤Inplate DI: 0.5mL/L
CuprapulseおよびInplateレベリング剤および増白剤は、Atotech Deutschland GmbHの製品である。
レドックス系は、下記組成を用いて、第2工程でのみ用いた。
鉄(II): 5g/L
鉄(III): 1g/L
【0044】
実施例5
上述の一般的な垂直処理の実施条件に従い、プリント基板を、まずCuprapulse XP7を含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第5表5aに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理を90分間行った。次に、第2工程において、前記プリント基板を、Inplate DIを含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第5表5bに記載のパラメーターを用いた直流処理をさらに85分間行った。そして、スルーホールを完全に充填した。スルーホール内に異物混入は見られなかった。
【0045】
【表7】

【0046】
実施例6
前述の一般的な垂直処理の実施条件に従い、プリント基板を、まずCuprapulse XP7を含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第6表6aに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理を90分間行った。次に、第2工程において、前記プリント基板を、Inplate DIを含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第6表6bに記載のパラメーターを用いた直流処理をさらに85分間行った。そして、スルーホールを完全に充填した。スルーホール内に異物混入は見られなかった。
【0047】
【表8】

【0048】
実施例7
前述の一般的な垂直処理の実施条件に従い、プリント基板を、まずCuprapulse XP7を含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第7表7aに記載のパラメーターを用いたパルス逆電流処理を90分間行った。次に、第2工程において、前記プリント基板を、Inplate DIを含有する銅による電解メタライゼーションのための浴中、第7表7bに記載のパラメーターを用いた直流処理をさらに85分間行った。そして、スルーホールを充填した。スルーホール内に異物混入は見られなかった。
【0049】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1aは好ましい銅めっきによる、プリント基板のスルーホールの中央部における狭い部分の形成を示す図である。図1bは好ましい銅めっきによる、プリント基板のスルーホールの中央部における狭い部分の形成を示す図である。
【図2】図2はスルーホールの中央部に狭い部分を形成した後、ホールに充填を施した後のスルーホールを示す図である。
【図3】図3は位相シフトおよびパルス休止時間を伴うパルス逆電流を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースのスルーホールに金属を充填するための電気処理であって、下記工程、すなわち、
(i)スルーホールを有するワークピースを金属沈着電解質に接触させ、前記ワークピースと少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加することによって前記ワークピースに電流を印加する工程であって、前記電流を図1に示されるように好ましい沈着が前記スルーホールの中央部に生じるように選択することによって前記スルーホールの中央部を完全にまたはほぼ完全に埋める工程と、
(ii)前記ワークピースを金属沈着電解質に接触させ、前記ワークピースと少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加することによって前記ワークピースに電流を供給する工程であって、工程(i)で得られた完全にまたはほぼ完全に二つに分けられたスルーホールに図2のように金属を充填する工程と、
を含んでなる前記電気処理。
【請求項2】
前記工程(i)における電流はパルス逆電流であり、前記電流の各サイクルにおいて、少なくとも1つの順方向電流パルスと少なくとも1つの逆方向電流パルスとが生じ、そして前記工程(ii)における電流はパルス逆電流、直流または交流である、請求項1に記載の処理。
【請求項3】
前記メタライゼーション工程(i)および(ii)は異なる電解質中で行われる、請求項1に記載の処理。
【請求項4】
前記メタライゼーション工程(i)および(ii)は同じ電解質中で行われる、請求項1に記載の処理。
【請求項5】
前記少なくとも1つの逆方向電流パルスの継続時間に対する前記少なくとも1つの順方向電流パルスの継続時間の比を、5〜75、最も好ましくは約20に設定する、請求項1ないし4のいずれかに記載の処理。
【請求項6】
前記少なくとも1つの順方向電流パルスの継続時間を、5〜250msに設定する、請求項1ないし5のいずれかに記載の処理。
【請求項7】
前記少なくとも1つの逆方向電流パルスの継続時間を、好ましくは20ms以下、最も好ましくは1〜10msに設定する、請求項1ないし6のいずれかに記載の処理。
【請求項8】
前記ワークピースにおける前記少なくとも1つの順方向電流パルスのピーク電流密度を、好ましくは15A/dm以下、水平処理の場合最も好ましくは1.5〜8A/dm、垂直処理の場合最も好ましくは2A/dmに設定する、請求項1ないし7のいずれかに記載の処理。
【請求項9】
前記ワークピースにおける前記少なくとも1つの逆方向電流パルスのピーク電流密度を、好ましくは60A/dm以下、水平処理の場合最も好ましくは30〜50A/dm、垂直処理の場合最も好ましくは3〜10A/dmに設定する、請求項1ないし8のいずれかに記載の処理。
【請求項10】
前記ワークピースの第1面と少なくとも第1アノードとの間に第1電圧を印加することによって第1パルス逆電流が前記ワークピースの第1面に供給され、この第1パルス逆電流の各サイクルにおいて、少なくとも第1順方向電流パルスと少なくとも第1逆方向電流パルスとが流れ、
前記ワークピースの第2面と少なくとも第2アノードとの間に第2電圧を印加することによって第2パルス逆電流が前記ワークピースの第2側面に供給され、この第2パルス逆電流の各サイクルにおいて、少なくとも第2順方向電流パルスと少なくとも第2逆方向電流パルスとが流れる、請求項1ないし9のいずれかに記載の処理。
【請求項11】
前記第1電流パルスは、前記第2電流パルスに対して約180°のオフセットである、請求項10に記載の処理。
【請求項12】
電解質として硫酸銅電解質が用いられる、請求項1ないし11のいずれかに記載の処理。
【請求項13】
前記電解質は、15〜75g/Lの銅と、20〜400g/Lの硫酸と、20〜200mg/Lの塩化物とを含有する無機基質を含んでなる、請求項1に記載の処理。
【請求項14】
前記電解質は、増白剤、レべリング剤および湿潤剤のごとき有機添加剤をさらに含んでなる、請求項13に記載の処理。
【請求項15】
前記電解質は、レドックス系を用いた不活性アノードを用いて運転される、請求項1ないし14のいずれかに記載の処理。
【請求項16】
電解質として硫酸銅電解質が用いられ、アノードとして可溶性アノードが用いられる、請求項1ないし15のいずれかに記載の処理。
【請求項17】
前記スルーホールの最大深さは3.5mmであり、好ましい深さは0.025〜1mm、特に好ましい深さは0.05〜0.5mmである、請求項1ないし16のいずれかに記載の処理。
【請求項18】
前記スルーホールの直径は1,000μm以下、好ましくは30〜300μm、最も好ましくは60〜150μmである、請求項1ないし17のいずれかに記載の処理。
【請求項19】
前記ワークピースは板状であり、かつ、スルーホールを有する、請求項1ないし18のいずれかに記載の処理。
【請求項20】
前記ワークピースはプリント基板または任意の他の板状電気回路基体である、請求項1ないし19のいずれかに記載の処理。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−513985(P2008−513985A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531632(P2007−531632)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009332
【国際公開番号】WO2006/032346
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】