説明

スロットルボデー及び燃料噴射装置

【課題】インジェクタが噴霧した燃料の霧化を促進することのできるスロットルボデー及び燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】スロットルボデー32は、エンジンの吸気通路38を形成するボデー本体71と、吸気通路38を開閉するスロットルバルブ40と、吸気通路38内に燃料を噴射するインジェクタ42とを備える。ボデー本体71に、スロットルバルブ40を避けて吸気通路38を流れる2つの吸気流れが合流する部位においてインジェクタ42の燃料を噴射する噴孔部80を含む周辺部分を吸気通路38内に所定量突出させる。ボデー本体71に、吸気流れに乱流を発生させる乱流発生部材84を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルボデー及び燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスロットルボデーには、エンジンの吸気通路を形成するボデー本体と、前記ボデー本体の吸気通路を開閉する絞り弁と、前記ボデー本体の吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁いわゆるインジェクタとを備えるものがある(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−140732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスロットルボデーにおいて、インジェクタが噴霧した燃料(噴霧燃料という)は、吸入空気(吸気という。)の流速、内燃機関いわゆるエンジンの熱等によって、霧化されているのが一般的である。しかし、エンジン始動時の吸気の流速が遅いときやエンジン温度の低いとき等には、噴霧燃料の霧化が悪くなるという問題があった。このことは、排ガス性能を低下することからその改善が望まれる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、インジェクタが噴霧した燃料の霧化を促進することのできるスロットルボデー及び燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とするスロットルボデー及び燃料噴射装置により解決することができる。
すなわち、請求項1に記載されたエンジンのスロットルボデーによると、ボデー本体に、絞り弁を避けて吸気通路を流れる2つの吸気流れが合流する部位においてインジェクタの燃料を噴射する噴孔部を含む周辺部分を吸気通路内に所定量突出させている。これにより、絞り弁を避けて吸気通路を流れる2つの吸気流れが合流することで発生した乱流域に、インジェクタが燃料を噴射することになる。したがって、インジェクタが噴霧した燃料(噴霧燃料)が吸気流れの乱流によって撹拌されることによって、噴霧燃料の霧化を促進することができる。このことは、エンジン始動時の吸気の流速が遅いときや、エンジン温度の低いとき等における噴霧燃料の霧化の促進に有効であり、ひいては排ガス性能の向上に有益といえる。
【0007】
また、請求項2に記載されたスロットルボデーによると、ボデー本体及び/又はインジェクタに、吸気流れに乱流を発生させる乱流発生部材を設けている。したがって、乱流発生部材により吸気流れに乱流を発生させることによって、噴霧燃料の霧化を一層促進することができる。
【0008】
また、請求項3に記載されたスロットルボデーによると、乱流発生部材が、ボデー本体の吸気通路を部分的に遮るプレート状部材からなるものである。したがって、乱流発生部材であるプレート状部材により、ボデー本体の吸気通路を部分的に遮ることによって、吸気流れに乱流を発生させることができる。
【0009】
また、請求項4に記載されたスロットルボデーによると、インジェクタの噴孔部をボデー本体の吸気通路のほぼ中央部に位置させている。したがって、ボデー本体の吸気通路のほぼ中央部を横切る吸気流れの乱流によって、噴霧燃料の霧化を促進することができる。
【0010】
また、請求項5に記載されたスロットルボデーによると、インジェクタの軸線がボデー本体の吸気通路の軸線に対して直交状をなしている。したがって、ボデー本体の吸気通路の軸線に対して直交状をなす方向からインジェクタが燃料を噴射することによって、吸気流れの乱流による噴霧燃料の撹拌効果を向上することができる。
【0011】
また、請求項6に記載された燃料噴射装置によると、制御装置が、エンジンの吸気弁の開くタイミングに対してインジェクタの燃料を噴射する噴孔部付近で吸気流れの乱流が発生するまでの遅れ時間を加算した噴射タイミングでインジェクタを駆動制御する。したがって、インジェクタの噴孔部付近で吸気流れの乱流が発生する噴射タイミングで、インジェクタが燃料を噴射することによって、吸気流れの乱流による噴霧燃料の撹拌効果を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0013】
本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。本実施例のスロットルボデー及び燃料噴射装置は、例えば自動二輪車に搭載される単気筒エンジンに用いられるものである。説明の都合上、燃料噴射装置を含むエンジンのエンジンシステムを説明した後で、スロットルボデーについて説明することにする。なお、図1はエンジンシステムを示す構成図である。
【0014】
図1に示すように、車両(例えば二輪自動車)に搭載されるエンジンシステム10は、燃料を貯留するための燃料タンク12を備えている。燃料タンク12内に配置された燃料ポンプ13は、該燃料タンク12内に貯留された燃料を、燃料フィルタ14を通じて吸入しかつ加圧し、燃料供給通路15を通じてインジェクタ42(後述する。)へ供給する。また、燃料ポンプ13は、ECU68(後述する。)によって駆動制御される。また、インジェクタ42へ供給される燃料の圧力は、プレッシャレギュレータ17により所定の圧力に調整される。なお、燃料タンク12、燃料ポンプ13及び燃料供給通路15は、本明細書でいう「燃料供給装置」を構成している。
【0015】
エンジン20は、内燃機関であるレシプロタイプの4サイクル単気筒エンジンである。エンジン20には、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ22が設けられている。また、エンジン20には、クランクシャフト24の回転数すなわちエンジン回転数を検出するクランク角センサ25が配置されている。水温センサ22及びクランク角センサ25の検出信号は、ECU68(後述する。)に出力される。
【0016】
前記エンジン20の吸気側には、シリンダヘッド27の吸気ポート28に連通するインテークマニホールドいわゆる吸気管30、吸気管30に連通するスロットルボデー32、スロットルボデー32に連通するエアクリーナ35が配置されている。これら吸気管30、スロットルボデー32、エアクリーナ35は、エンジン20の燃焼室37に連通する一連の吸気通路38を形成しており、スロットルボデー32は吸気通路38の一部を形成している。また、スロットルボデー32は、スロットルバルブ40(後述する)を備えている。スロットルバルブ40が、所定のアクセル装置(図示しない。)の操作に基づいて開閉されることにより、吸気通路38を通じてエンジン20の燃焼室37に吸入される吸入空気量が調整される。また、スロットルボデー32は、インジェクタ42(後述する)を備えている。
【0017】
なお、図示は省略するが、スロットルボデー32には、前記スロットルバルブ40を迂回するバイパス通路が設けられている。バイパス通路には、その通路を流れるアイドル空気量を制御するためのアイドルスピードコントロールバルブ(「ISCバルブ」という。)が備えられている。ISCバルブは、ECU68(後述する。)によって駆動制御されるようになっている。
【0018】
前記スロットルボデー32には、スロットルバルブ40の開度を検出するスロットルポジションセンサ44、及び、吸気圧力を検出する吸気圧力センサ45が設けられている。また、前記エアクリーナ35には、エアクリーナエレメント47が内蔵されている。また、エアクリーナ35には、エアクリーナエレメント47の下流側すなわちクリーン側における吸気温を検出する吸気温センサ48が設けられている。また、スロットルポジションセンサ44、吸気圧力センサ45、及び、吸気温センサ48のそれぞれの検出信号は、前記ECU68(後述する。)に出力される。
【0019】
前記エンジン20の排気側には、前記シリンダヘッド27の排気ポート50に連通する排気管52が連通されている。排気管52内の排気通路53には、排気ガスを浄化するための三元触媒54が設けられている。
【0020】
前記シリンダヘッド27には、前記燃焼室37に臨む点火プラグ56が設けられている。点火プラグ56は、ECU68(後述する。)により点火タイミング毎にイグニッションコイル57から出力される点火信号を受けて火花放電する。これにより、燃焼室37に供給される可燃混合気に点火する。なお、点火プラグ56及びイグニッションコイル57は、点火装置を構成している。
また、シリンダヘッド27には、前記クランクシャフト24の回転に連動して前記吸気ポート28を開閉する吸気弁60、及び、排気ポート50を開閉する排気弁62が設けられている。
【0021】
前記燃料ポンプ13により前記燃料タンク12内から前記燃料供給通路15を通じてインジェクタ42に供給された燃料は、インジェクタ42の作動により、スロットルボデー32内の吸気通路38へ噴射される。また、前記吸気通路38には、外部から空気がエアクリーナ35のエアクリーナエレメント47を通じて取り込まれる。そして、吸気通路38に取り込まれた空気と、インジェクタ42から噴射された燃料は、可燃混合気すなわち所定の空燃比(A/F)の混合気として、吸気管30を通じてエンジン20の燃焼室37に吸入される。燃焼室37に吸入された可燃混合気は、前記点火プラグ56の火花放電により爆発・燃焼する。これにともない、ピストン63が運動してクランクシャフト24が回転することにより、自動二輪車を走行させる駆動力が得られる。また、燃焼後の排気ガスは、排気管52内の排気通路53を通じて外部すなわち大気中に排出される。
【0022】
前記エンジン20を搭載する自動二輪車には、車両用電源としてのバッテリ65、運転者により操作されることによりエンジン20を始動させるためのイグニッションスイッチ66、エンジン20の各種アクチュエータを制御する電子制御装置(「ECU」という。)ECU68が設けられている。
【0023】
前記バッテリ65は、前記イグニッションスイッチ66を介して前記ECU68に接続されている。しかして、イグニッションスイッチ66とECU68との間には、バッテリ65からECU68への電力の供給及び遮断を行なうメインリレー69が設けられている。メインリレー69は、接点とコイルとを備え、イグニッションスイッチ66のオンによりコイルに電流が流れるときにそのコイルに発生する磁力を用いてオン・オフ動作を行なう。すなわち、メインリレー69は、コイルに電流が流されているときにオンされ、コイルに電流が流されていないときにオフされる。そのメインリレー69がオンされることにより、バッテリ65からECU68に電力が供給される。
【0024】
前記エンジン20に設けられた前記各センサ22,25,44,45,48は、エンジン20の運転状態に関する各種運転パラメータを検出するものであり、ECU68にそれぞれ接続されている。すなわち、水温センサ22は、エンジン20の内部いわゆるウォータジャケットを流れるエンジン冷却水の温度(冷却水温)を検出し、その検出値に応じた電気信号をECU68に出力する。なお、水温センサ22は、本明細書でいう「エンジンの暖機状態を検出する暖機状態検出手段」に相当する。
【0025】
また、クランク角センサ25は、クランクシャフト24の回転数を検出し、その検出値に応じた電気信号をECU68に出力する。なお、クランク角センサ25は、本明細書でいう「クランク角を検出するクランク角検出手段」に相当する。
また、スロットルポジションセンサ44は、スロットルバルブ40の開度を検出し、その検出値に応じた電気信号をECU68に出力する。なお、スロットルポジションセンサ44は、本明細書でいう「スロットル開度検出手段」に相当する。
また、吸気圧力センサ45は、スロットルバルブ40より下流側の吸気通路38における吸気圧力を検出し、その検出値に応じた電気信号をECU68に出力する。なお、吸気圧力センサ45は、本明細書でいう「吸気圧力検出手段」に相当する。
また、吸気温センサ48は、エアクリーナエレメント47のクリーン側における吸気温を検出し、その検出値に応じた電気信号をECU68に出力する。
【0026】
前記ECU68は、前記各センサ22,25,44,45,48から出力された電気信号に基づき、燃料噴射制御及び点火時期制御等を実行するために、インジェクタ42及びイグニッションコイル57等を駆動制御する。ここで、燃料噴射制御とは、エンジン20の運転状態に応じてインジェクタ42による燃料噴射量及び噴射時間を制御することである。また、点火時期制御とは、エンジン20の運転状態に応じてイグニッションコイル57を制御することにより、点火プラグ56による点火時期を制御することである。
【0027】
また、前記ECU68は、周知のように、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、バックアップRAM、外部入力回路及び外部出力回路等を備えている。ECU68は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMと、外部入力回路及び外部出力回路等とをデータバスにより接続してなる論理演算回路を構成する。また、ROMは、エンジン20の各種制御に関する所定の制御プログラムを予め記憶したものである。また、RAMは、CPUの演算結果を一時記憶するものである。また、バックアップRAMは、予め記憶したデータを保存するものである。また、CPUは、入力回路を介して入力される各センサ22,25,44,45,48の検出信号に基づき、所定の制御プログラムに従って前述した各種制御等を実行する。なお、ECU68は、本明細書でいう「制御装置」を構成している。また、スロットルボデー32のインジェクタ42及びECU68は、本明細書でいう「燃料噴射装置」を構成している。
【0028】
次に、スロットルボデー32について詳しく説明する。なお、図2はスロットルボデーを示す断面図である。
図2に示すように、スロットルボデー32は、ボデー本体71に、前記したスロットルバルブ40、インジェクタ42等を備えて構成されている。以下、ボデー本体71、スロットルバルブ40、インジェクタ42の順に説明する。
【0029】
ボデー本体71を説明する。ボデー本体71は、中空円筒状に形成されたボア壁部72を備えている。ボア壁部72内の中空部を吸入空気が所定方向(図2中、矢印Y参照)へ流れる吸気通路38(エンジン20に通じる一連の吸気通路38の一部をなすものであるから同一符号を付す。)としている。ボア壁部72の上流側端部(図2において右端部)は、前記エアクリーナ35(図1参照)の下流側端部に対して着脱可能に接続されている。また、ボア壁部72の下流側端部(図2において左端部)は、前記吸気管30(図1参照)の上流側端部に対して着脱可能に接続されている。これにより、ボデー本体71が、エアクリーナ35及び吸気管30に対して着脱可能に接続されている。なお、ボデー本体71は、本明細書でいう「吸気通路形成部材」に相当する。また、ボア壁部72は、エアクリーナ35に限らず、その他の上流側の吸気通路形成部材に対して着脱可能に接続してもよく、また、吸気管30に限らず、その他の下流側の吸気通路形成部材に対して着脱可能に接続してもよい。
【0030】
次に、スロットルバルブ40を説明する。スロットルバルブ40は、いわゆるバタフライバルブである。また、前記ボア壁部72の上流部には、吸気通路38を径方向(図2において紙面表裏方向)に貫通するスロットルシャフト74が軸回り方向に回動可能に設けられている。スロットルバルブ40は、スロットルシャフト74上に固定されている。したがって、アクセル操作に連動してスロットルシャフト74が回動されることにより、スロットルバルブ40が吸気通路38を開閉することで吸入空気量が制御される。なお、スロットルバルブ40は、本明細書でいう「絞り弁」に相当する。
【0031】
次に、インジェクタ42を説明する。なお、インジェクタ42は、周知の構成のものであるから、その詳しい説明を省略する。
インジェクタ42は、その主体をなすインジェクタボデー76を有している。インジェクタボデー76の先端部(図2において下端部)には、インジェクタボデー76よりも小径をなす筒状の噴霧筒部78が同心状をなすように突出されている。噴霧筒部78内の中央部には、燃料を先方(図2において下方)へ向けて噴射する噴孔部80が同軸上にかつ噴霧筒部78の開口端面よりも所定量奥まった位置に設けられている。インジェクタ42を前記スロットルボデー32に備えるために、前記ボデー本体71のボア壁部72の下流部には、円形状のインジェクタ挿入孔82が形成されている。インジェクタ挿入孔82は、ボア壁部72の上壁部分を径方向(図2において上下方向)に貫通している。
【0032】
前記インジェクタボデー76は、前記ボア壁部72のインジェクタ挿入孔82内にシール状態で挿入されかつ該ボア壁部72に固定されている。これにより、インジェクタ42の軸線42Lが前記ボデー本体71の吸気通路38の軸線38Lに対して直交状をなしている。また、インジェクタ42の燃料を噴射する噴孔部80を含む周辺部分(噴霧筒部78を含むインジェクタボデー76の先端側部分が相当する。)が、ボア壁部72の上壁部分から吸気通路38内に所定量突出されている。また、インジェクタ42の噴孔部80が、吸気通路38のほぼ中央部すなわち軸線38L上付近に位置されている。
【0033】
さらに、前記インジェクタ42は、前記スロットルバルブ40を避けて前記吸気通路38を流れる2つの吸気流れ(図2中、矢印Y1,Y2参照)が合流する部位に噴孔部80が位置するように配置されている。また、エンジン20のアイドル時における2つの吸気流れ(図2中、矢印Y1、Y2参照)が合流する部位で、その合流による乱流(渦を含む)の概ね下流部分に噴孔部80を配置することが好ましい。具体的には、スロットルシャフト74の軸心74Cからボア壁部72のボア径72dの約0.5〜2。0倍相当分の下流側に噴孔部80を配置するとよい。なお、2つの吸気流れが合流する部位(領域)は、吸気流れに乱流が発生する部位であるので「乱流域」という。
【0034】
前記インジェクタ42は、前記ECU68(図1参照)によって燃料噴射制御(オン−オフ制御)される噴射時間と燃料噴射量をもって駆動制御されることにより、前記燃料タンク12から前記燃料供給通路15を通じて供給されてくる燃料を前記噴孔部80から前記吸気通路38内に向けて噴射する。
【0035】
前記ボデー本体71のボア壁部72の上壁部分には、前記インジェクタ42の上流側に隣接する乱流発生部材84が設置されている。乱流発生部材84は、前記吸気通路38の軸線38Lと直交状をなしかつ該吸気通路38の上半部を径方向に遮る半円形状のプレート状部材からなるもので、吸気流れに乱流を発生させる。
【0036】
ところで、前記エンジン20の吸気弁60(図1参照)が開くことにより、ボデー本体71の吸気通路38内を流れる吸気流れが発生するが、インジェクタ42の噴孔部80付近で吸気流れに乱流が発生する時期は、吸気流れの発生時期から所定時間遅れる。このため、前記ECU68(図1参照)は、前記クランク角センサ25及び前記吸気圧力センサ45等の検出信号に基づいて、エンジン20の吸気弁60の開くタイミングに対してインジェクタ42の噴孔部80付近で吸気流れの乱流が発生するまでの遅れ時間を加算した噴射タイミングでインジェクタ42を駆動制御するように設定されている。なお、本明細書でいう「噴射タイミング」とは、噴射開始から噴射終了までのタイミングをいう。
【0037】
なお、図3はクランク角度と吸気圧力との関係を示す特性線図である。図3において、横軸はクランク角度(°CA)を示しており、また、縦軸は吸気圧力(kPa)を示している。また、特性線LAは、エンジン20のアイドル運転時における吸気圧力の変化を示している。また、特性線LBは、エンジン20の軽負荷時における吸気圧力の変化を示している。また、特性線LCは、スロットルバルブ40の全開時における吸気圧力の変化を示している。そして、吸気弁60が開くタイミング(−360°)に対してクランク角度が所定角度(インジェクタ42の噴孔部80付近で吸気流れの乱流が発生するまでの遅れ時間に相当する角度)θ分、経過した噴射タイミングTでインジェクタ42が駆動制御される。
【0038】
前記したスロットルボデー32(図2参照)によると、ボデー本体71に、スロットルバルブ40を避けて吸気通路38を流れる2つの吸気流れ(図2中、矢印Y1,Y2参照)が合流する部位においてインジェクタ42の燃料を噴射する噴孔部80を含む周辺部分を吸気通路38内に所定量突出させている。これにより、スロットルバルブ40を避けて吸気通路38を流れる2つの吸気流れが合流することで発生した乱流域に、インジェクタ42が燃料を噴射することになる。したがって、インジェクタ42が噴霧した燃料が吸気流れの乱流によって撹拌されることによって、噴霧燃料の霧化を促進することができる。このことは、エンジン20始動時の吸気の流速が遅いときや、エンジン20温度の低いとき等における噴霧燃料の霧化の促進に有効であり、ひいては排ガス性能の向上に有益といえる。これとともに、吸気通路38の通路壁面(インジェクタ42の噴孔部80に対向する側の壁面)に対する噴霧燃料の付着を防止あるいは低減することができる。このため、定常時から加速時あるいは減速時から定常時となったときに、吸気通路38の通路壁面に対する噴霧燃料の付着量が増加することにより、エンジン20へ吸入される燃料量が減少したり、加速後の定常時あるいは定常時から減速時となったときに、通路壁面に付着した燃料がエンジン20へ吸入されることによりエンジン20へ吸入される燃料量が過剰となったりする等の不具合を改善することができる。
【0039】
また、ボデー本体71に、吸気流れに乱流を発生させる乱流発生部材84を設けている。したがって、乱流発生部材84により吸気流れに乱流を発生させることによって、噴霧燃料の霧化を一層促進することができる。
【0040】
また、乱流発生部材84が、ボデー本体71の吸気通路38を部分的に遮るプレート状部材からなるものである。したがって、乱流発生部材84であるプレート状部材により、ボデー本体71の吸気通路38を部分的に遮ることによって、吸気流れに乱流を発生させることができる。
【0041】
また、インジェクタ42の噴孔部80をボデー本体71の吸気通路38のほぼ中央部に位置させている。したがって、ボデー本体71の吸気通路38のほぼ中央部を横切る吸気流れの乱流によって、噴霧燃料の霧化を促進することができる。また、本実施例の場合、噴孔部80が噴霧筒部78の中央部に設定されているため、噴霧筒部78によっても吸気流れの乱流を発生させることができる。
【0042】
また、インジェクタ42の軸線42Lがボデー本体71の吸気通路38の軸線38Lに対して直交状をなしている。したがって、ボデー本体71の吸気通路38の軸線38Lに対して直交状をなす方向からインジェクタ42が燃料を噴射することによって、吸気流れの乱流による噴霧燃料の撹拌効果を向上することができる。
【0043】
また、前記した燃料噴射装置によると、ECU68が、エンジン20の吸気弁60の開くタイミングに対してインジェクタ42の燃料を噴射する噴孔部80付近で吸気流れの乱流が発生するまでの遅れ時間を加算した噴射タイミングでインジェクタ42を駆動制御する。したがって、インジェクタ42の噴孔部80付近で吸気流れの乱流が発生する噴射タイミングで、インジェクタ42が燃料を噴射することによって、吸気流れの乱流による噴霧燃料の撹拌効果を向上することができる。このことは、単気筒、2気筒等の少数気筒エンジンに有益といえる。
【0044】
[変更例]
次に、スロットルボデー32の変更例について説明する。なお、図4はスロットルボデーの変更例を示す断面図である。
前記実施例のスロットルボデー32(図2参照)では、インジェクタ42の軸線42Lがボデー本体71の吸気通路38の軸線38Lに対して直交状をなすように、インジェクタ42をボデー本体71に配置したのに対し、本変更例では、図4に示すように、吸気通路38の下流側へ向けて燃料を噴射するように、インジェクタ42の軸線42Lがボデー本体71の吸気通路38の軸線38Lに対して所定の角度θ1をもって傾斜状をなすように、インジェクタ42をボデー本体71に配置したものである。このように、ボデー本体71にインジェクタ42を吸気通路38の下流側に向かって斜めに搭載することにより、インジェクタが噴霧した燃料の霧化を促進するとともに、吸気通路38の通路壁面(インジェクタ42の噴孔部80に対向する側の壁面)に対する噴霧燃料の付着を防止あるいは低減することができる。
【0045】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、単気筒エンジンに限らず、2気筒以上の多気筒エンジンにも適用することができる。また、本発明は、二輪車用のエンジンに限らず、四輪車用のエンジンにも適用することができる。また、前記実施例のように、噴孔部80から軸線42Lに沿って直進的に燃料を噴射するインジェクタ42に代え、噴孔部80から斜め前方(下流側)へ燃料を斜状に噴射するいわゆる斜流タイプのインジェクタを用いることによって、噴霧燃料の霧化を促進することもできる。
【0046】
また、乱流発生部材84は、必要に応じて設けることができ、省略することも可能である。また、乱流発生部材84は、インジェクタボデー76に設けることもできる。また、乱流発生部材84は、ボデー本体71及び/又はインジェクタボデー76に対して取付けるだけでなく、一体形成することができる。また、乱流発生部材84は、吸気通路38を部分的に遮るものであればよく、乱流発生部材84の遮蔽面積及び遮蔽形態は適宜変更することができる。また、乱流発生部材84は。プレート状部材に限定されるものではなく、適宜の形状のものに変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一実施例にかかるエンジンシステムを示す構成図である。
【図2】スロットルボデーを示す断面図である。
【図3】クランク角度と吸気圧力との関係を示す特性線図である。
【図4】スロットルボデーの変更例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 エンジンシステム
20 エンジン
32 スロットルボデー
38 吸気通路
40 スロットルバルブ
42 インジェクタ
60 吸気弁
68 ECU(制御装置)
71 ボデー本体
80 噴孔部
84 乱流発生部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気通路を形成するボデー本体と、
前記ボデー本体の吸気通路を開閉する絞り弁と、
前記ボデー本体の吸気通路内に燃料を噴射するインジェクタと
を備えるスロットルボデーであって、
前記ボデー本体に、前記絞り弁を避けて吸気通路を流れる2つの吸気流れが合流する部位において前記インジェクタの燃料を噴射する噴孔部を含む周辺部分を前記吸気通路内に所定量突出させたことを特徴とするスロットルボデー。
【請求項2】
請求項1に記載のスロットルボデーであって、
前記ボデー本体及び/又は前記インジェクタに、吸気流れに乱流を発生させる乱流発生部材を設けたことを特徴とするスロットルボデー。
【請求項3】
請求項2に記載のスロットルボデーであって、
前記乱流発生部材が、前記ボデー本体の吸気通路を部分的に遮るプレート状部材からなることを特徴とするスロットルボデー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のスロットルボデーであって、
前記インジェクタの噴孔部を前記ボデー本体の吸気通路のほぼ中央部に位置させたことを特徴とするスロットルボデー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のスロットルボデーであって、
前記インジェクタの軸線が前記ボデー本体の吸気通路の軸線に対して直交状をなしていることを特徴とするスロットルボデー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のスロットルボデーと、前記インジェクタを駆動制御する制御装置とを備える燃料噴射装置であって、
前記制御装置が、エンジンの吸気弁の開くタイミングに対して前記インジェクタの噴孔部付近で吸気流れの乱流が発生するまでの遅れ時間を加算した噴射タイミングで前記インジェクタを駆動制御することを特徴とする燃料噴射装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−57891(P2009−57891A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225649(P2007−225649)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】