説明

スワッスビーム用音響変換器

音響スワッスビーム(108)を発射及び/又は受信するためのスワッスビーム音響変換器(100)。変換器は、関連する音響孔(110)を有する細長状凹状放射面(106)を集合的に提供するように構成される能動音響要素(104)の配列を備える。能動音響要素(104)の配列は、放射面(106)を介して、スワッスビーム(108)を発射及び/又は受信するように動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響スワッスビームの発射及び/又は受信のための音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
音響ビームは、水中音波探知機及び他の水中音響装置、音声変換器、及び例えば、建築音響などの空間の音響制御を含む多くの用途に利用される。
【0003】
水中音波探知機及び水中音響装置において、目的は、海底を調査すること、又は水中内の静止物体又は移動物体を検知することである。水中音響装置の更なる利用法は、魚群探知、魚類集団の推定、船舶の船体、埠頭、水路のような水中物体の検査を含む。これらの用途の多くにおいて、遠方音響スワッスビームを発射することができる音響変換器を利用することが望まれている。スワッスビームは、一般的に、一つの方向について広角をカバーし、その垂直方向に狭い幅をカバーするビームである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スワッスビームを発射する既知の音響変換器は、一般的に、ライン配列、又は代わりに凸状円筒配列のいずれかで配置された能動変換器要素の配列を備える。これらのタイプの音響変換器の両方には、制限がある。例えば、ライン配列音響変換器は、典型的には、その制限された幅により、ビームパワーに制限がある。
【0005】
凸状円筒配列変換器に関して、これらは、一般的に、構造上の条件により、動作周波数に関連した数波長分の直径より小さく作ることができないという大きさの制約がある。例えば、図1は、スワッスビームを生成する凸状円筒配列変換器10の既知の構造の例の断面端面図である。簡単に説明すると、凸状円筒変換器10は、支持構造体14内で凸状円筒配列に固定された能動変換器要素の配列を備える。動作において、変換器要素12は、音響孔16を介して全域にわたる広角スワッスビームを発射するように駆動される。音響孔16は、矢印20によって定められる幅を有する。典型的には、変換器要素12は、動作周波数に関連した約半波長分の厚さを有し、これにより、要素の前面間に実質的な間隔18を必要とする。それゆえ、凸状円筒変換器10は、一般的に、有効に動作するために、少なくとも数波長分の直径を必要とする。これは、要素12をより小さな直径の凸状円筒状に配置すると、要素間の間隔が増大するからであり、スワッスビームに関係する角度内で法外に大きな応答変動を引き起こすことになりやすい。
【0006】
本明細書では、特許明細書、他の外部文献、又は他の情報源を参照するが、これは、一般的に、発明の特徴を議論するための背景を提供することを目的とする。特別に述べられない限り、いかなる裁判管轄権においても、上記外部文献の参照は、上記文献、又は上記情報報源が背景技術である、又は技術常識の一部を形成することの承認と解釈されるものではない。
【0007】
本発明の目的は、スワッスビームを発射及び/又は受信するための改良された音響変換器を提供すること、または、少なくとも公共に有用な選択を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、概略的には、音響スワッスビームを発射及び/又は受信するスワッスビーム音響変換器において、関連する音響孔を有する細長状凹状放射面を集合的に提供するように構成される能動音響要素の配列を備え、前記能動音響要素の配列は、前記放射面を介して、スワッスビームを発射及び/又は受信するように動作可能であることを特徴とするスワッスビーム音響変換器である。
【0009】
好ましくは、放射面は、半円筒の周外面に実質的に一致する凹状円筒放射面である。
好ましくは、能動音響要素は、凹状半円筒放射面の周囲に配置され、各要素は、円筒軸から半径分等しく間隔をあけている。
好ましくは、能動音響要素の配列は、実質的に連続する放射面を提供するように配置される。
【0010】
好ましくは、各能動音響要素は、電気的に励振可能な電極間に結合される能動音響素材を備える音響変換器要素である、さらに好ましくは、各音響要素は、能動音響素材に直接的又は間接的に結合される一つ又はそれより多い整合層を備え、整合層は、変換器と音響ビームが伝搬する音響媒体との間のインピーダンス整合を提供するように構成される。例として、各能動音響要素は、放射面と能動音響素材との間に位置している整合層を備える。
好ましくは、能動音響要素は、支持構造体内において、相互に音響的に隔離されている。
【0011】
好ましくは、能動音響要素のそれぞれと電気的に接続し且つ能動音響要素のそれぞれを駆動するための電気駆動信号を生成し、それにより、放射面から全スワッスビームを発射し、又は代わって、前記放射面によって受信されるスワッスビームに応答して生成される能動音響要素からの電気信号を受信及び処理する制御システムを備える。
【0012】
好ましくは、配列内の各能動音響要素は、まっすぐ且つ細長状である。更に好ましくは、各能動音響要素の長さは、実質的に放射面の全長にわたって延びる。
【0013】
一つの形態において、変換器は、放射面の長手軸の方向について、実質的に固定された幅を有するスワッスビームを生成するように構成される。
【0014】
別の形態において、各まっすぐ且つ細長状の能動音響要素は、変換器の長さに沿って、互いから音響的及び電気的に隔離されるライン状の複数の個々の能動音響要素から集合的に形成される。好ましくは、ライン状の個々の能動音響要素は、変換器の長さに沿って、互いに整列して並べられ、それにより、変換器の長さに沿った能動音響要素の一連の選択的に動作可能な凹状配列セグメントを提供する。更に好ましくは、制御システムは、能動音響要素の一つ又はそれより多い凹状配列セグメントのいずれかを活性化又は非活性化するように動作可能であり、それにより、放射面の有効長さ、その結果、放射面の長手軸方向における伝搬されるスワッスビームの幅を制御する。加えて又は代わりに、制御システムは、能動音響要素の前記凹状配列セグメントに差動位相駆動信号を加えるように動作可能であり、それにより、前記放射面の長手軸を横切る軸の周囲の所望の方向に、伝搬されるスワッスビームを操縦する。
【0015】
好ましくは、能動音響要素の配列は、変換器の長手軸に垂直な面における広視野を有し、遠方音響強度は、視野内で実質的に均一である音響スワッスビームを発射するように動作可能である。
【0016】
好ましくは、能動音響要素は、所定の動作周波数で動作され、能動音響要素の配列は、放射面の周囲の隣接する音響要素間の中心間距離が前記動作周波数の波長の約1/2より大きくないように配置される。
【0017】
好ましくは、放射面は、一つ又はそれより多い保護層を介して、発射又は受信された音響スワッスビームを伝搬する音響媒体に間接的に露出している。さらに好ましくは、放射面は、音響スワッスビームが発射され又は受信される音響孔を形成し、一つ又はそれより多い保護層は、音響孔を少なくとも部分的に充填するように配置される。例として、保護層は、変換器が水中で動作可能とするために、水中で音響的透明となるように作成されたゴムから形成される。
【0018】
第2の態様において、本発明は、概略的には、音響スワッスビームを発射及び/又は受信する音響変換器において、動作可能な音響変換器要素の凹状円筒配列を備えることを特徴とする音響変換器である。
【0019】
第3の態様において、本発明は、概略的には、音響スワッスビームを発射する方法において、スワッスビームを発射する動作可能な音響変換器要素の凹状円筒配列を駆動することを備えることを特徴とする方法である。
本発明の第2及び第3の態様は、本発明の第1の態様に関して述べられたいずれか一つの又はそれより多い特徴を有していてもよい。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「放射面」は、音響孔に関連する集合面又は有効面を意味することを意図し、音響孔は、能動音響要素の配列から形成され、音響ビームが発射され及び/又は受信される面であり、当該面は、音響媒体に直接的に露出しているか、又は一つの又はそれより多い他の層を介して間接的に露出している。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「スワッスビーム」は、一つの方向について広角をカバーし、その垂直方向について、より狭い又は代わりに制御可能な幅又は焦点を有する遠方音響ビームを意味することを意図している。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「備える」は、少なくとも部分的に構成する」を意味する。本明細書及び特許請求の範囲の記述の解釈に関して、用語「備える」は、この用語で始まる特徴以外の特徴があってもよい。
【0023】
ここで用いられる用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」、又はその両方を意味する。
名詞につづいてここで用いられる「(s)」は、名詞の複数及び/又は単数の形態を意味する。
本発明は、前述にあり、さらに、後述が例示のみである構成を認識する。
本発明の好ましい実施形態が例示のみとして、以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】スワッスビームを生成する従来の凸状円筒音響変換器配列の例の側断面図を示す。
【図2】本発明の好ましい実施形態による音響変換器の側断面図を示す。
【図3A】本発明の第1の好ましい形態の音響変換器の側断面図を示す。
【図3B】図3AのAA線から見た第1の好ましい形態の音響変換器の側断面図を示す。
【図4A】本発明の第2の好ましい形態の音響変換器の側断面図を示す。
【図4B】図4AのBB線から見た第2の好ましい形態の音響変換器の側断面図を示す。
【図5A】変換器の長手軸を備える面での種々のビーム操縦角度に関して、160KHzの周波数で動作している図4A及び4Bの第2の好ましい形態から発射される音響スワッスビームの遠方指向性パターンのグラフである。
【図5B】変換器の長手軸に垂直な面における160KHzの周波数で動作している図4A及び4Bの第2の好ましい形態から発射される音響スワッスビームの遠方指向性パターンのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(概要)
本発明は、音響スワッスビームを生成及び/又は受信する音響変換器に関する。本記載に関して、スワッスビームは、典型的には、一つの方向について広角をカバーし、その垂直方向について狭い又は代わりに制御可能な幅又は焦点を有する遠方音響ビームである。この文脈における遠方は、一般的には、変換器の大きさ及び動作周波数の波長よりもかなり大きい距離である。音響変換器は、例えば可聴範囲又は超音波の周波数を含む、所望の動作周波数で音波を生成し、受信するように構成される。
【0026】
図2を参照すると、本発明の音響変換器100の構造の断面端面図が示される。図2は、変換器100の長手方向軸に垂直な面を見た図である。簡単に説明すると、音響変換器100は、能動音響要素104の配列を支持するように配置された細長状の支持構造体102を備える。能動音響要素104は、互いに関連して実質的に凹状パターンに配置され、それにより、実質的に凹状の細長放射面106を提供し、そこから音響ビームが変換器100により発射及び受信される。より詳しくは、能動音響要素104は、実質的に連続する凹部及び音響スワッスビーム用細長状放射面を集合的に提供するように配置される。
各能動音響要素104は、音響ビームを生成するように駆動され、全域にわたる遠方スワッスビーム108は個々の音響ビームすべての重ね合わせであることが理解される。図示されるように、スワッスビーム108は、変換器の長手軸に垂直な面において広角又は広視野(FOV:Field of View)である。変換器100のFOVは、音響能動要素104により形成される音響孔の開口の大きさに依存する。好ましい形態では、音響変換器は、FOV内で実質的に均一の遠方音響強度を有するスワッスビームを発射可能である。
【0027】
FOV(又は変換器100の長手方向軸に沿った面)に垂直方向のスワッスビーム108の幅に関して、これは、音響能動要素104及び放射面106の長さに依存する。より長い変換器100は、変換器100の長手方向軸の方向により狭いスワッスビームを生成、その反対に、より短い変換器は、より広いスワッスビームを生成することが理解される。
【0028】
前述の通り、音響変換器100は、能動音響要素100の凹状配置により提供される実質的に凹状の細長放射面106を備える。好ましい形態において、放射面106は、関連する直径を有する円筒部の周辺外面の一部又は部分に実質的に一致し、“凹状円筒放射面”と称される。言い換えると、放射面は、いくつかの形態において、能動音響要素104が半円筒部の外面に一致する半円筒状である。例えば、能動音響要素104は、各要素は円筒軸から一様に半径分の間隔をあけて、仮想の円筒面の部分に対して外向きに放射状に延びるように配置されると言うことができる。典型的には、凹状円筒放射面は、円筒部の全円周の半分以下に延びる。しかしながら、細長状の凹状放射面106は、必ずしも円筒形状である必要はなく、代わって、単純に、本質的に円筒形でないが内側に湾曲した正確な放射面であってもよい。
【0029】
凹状円筒変換器100は、図1に示される既知の従来の凸状円筒変換器と同じように、広角スワッスビームを生成することができるが、より少ない数の能動音響素子104及び矢印112で示される幅の音響孔110を有する。例示のみとして、図1の既知の従来の凸状円筒変換器は、最小サイズとして、動作周波数の10−12波長分の直径を必要とし、約2.5波長分の直径の凹状円筒放射面のサイズで同じFOVを有するスワッスビームを生成する図2の凹状円筒変換器100に対してずっと広い孔20を必要とする。変換器がより小さくなる一般的な利点とともに、より小さな音響孔110は、副ローブ抑圧のシェーディング及び位相配列技術を用いた変換器の長手方向軸又は円筒軸に沿ったビーム操縦の適用を可能とする。
【0030】
本発明の音響変換器のより好ましい形態が、例示のみとして以下により詳細に説明される。
【0031】
(第1の好ましい形態−単一チャネル音響変換器)
図3A及び3Bを参照して、第1の好ましい形態の単一チャネル音響変換器200が説明される。第1の好ましい形態において、音響変換器200は、音響スワッスビームを防止及び/又は受信するための細長状凹状放射面206を提供するように配置された複数の能動音響要素204の配列を支持する支持構造体202を備える。好ましくは、能動音響要素204は、所定の動作周波数又は動作周波数範囲のための所定の直径を有する凹状円筒放射面を提供するように、凹状円筒配置の状態にある。支持構造体は、適切な既知の変換器配列支持素材又は所定位置に能動音響要素の配列を支持するための機械システムのいかなる形態であってもよい。第1の好ましい形態において、支持構造体は、能動音響要素204を互いに音響的に隔離するように、能動音響要素204の中又は周りに提供される。支持構造体は、当業者によって理解されるいかなる遮音素材を備える。例示のみとして、支持構造体は、硬質多孔性ポリマー素材で形成されてもよい。
【0032】
放射面206は、音響媒体に直接露出しているか、一層又は複数層の保護層を介して間接的に露出するかいずれであってもよい。音響ビームが変換器から発射され又は変換器によって受信されるときに、音響ビームは音響媒体を介して伝搬することが理解される。保護層が用いられる場合、保護層は、設計条件に応じた様々な方法で放射面の全域に定置され、固定され、形成される。機械的又は他の固定方法は、放射面に保護層を固定するために用いることができ、接着剤又は成型技術を含むが、これに限られない。例示として、凹状細長状放射面206により提供される空洞部又は音響孔210は、任意的に、保護層212で少なくとも部分的に満たされてもよい。例えば、変換器200が水中変換器として用いられる場合、保護層は、水中で音響的透明となるように作成されたゴムから形成されてもよい。水中送信変換器では、保護層212の厚さは、音響ビームの高い強度ゾーンにおける空洞現象を避けるように、変換器200の動作パワーに応じて変えられる。保護層212は、必ずしも必須ではないが、特定の動作状況での変換器の性能を高める。
【0033】
前述のように、音響孔210の幅及び開口は、変換器の長手方向軸に垂直な平面において、FOV又は音響変換器200によって発射された遠方スワッスビームの到達範囲角度を画定する。列状の能動音響素子204の数は、いかなる特定の用途及び動作周波数に必要とされる凹状円筒放射面の直径に応じて変えられてもよい。
【0034】
変換器(図3B)の長手方向軸を備える面において、音響変換器200により発射される遠方スワッスビーム又は超音波ビームの幅又は焦点距離は、矢印214によって一般的に示されるような細長状能動音響要素204により提供される放射面206の全長に依存する。特に、変換器の長さが長いほど、FOVに垂直な方向におけるスワッスビームの幅は狭くなり、反対に、変換器の長さが短いほど、その反対である。
【0035】
要するに、放射面206に関連する能動音響要素204の長さ及び音響孔の大きさは、所定のFOV及び特定の動作周波数のための幅を有する特定の遠方スワッスビームを発射するように変更され、又は構成される。
【0036】
第1の好ましい形態において、配列している各能動音響要素204は、動作可能な音響変換器要素のいかなる形態であってもよい。能動音響要素204は、好ましくは、形状及び寸法において、同一であるが、これは、変換器の代替形態に必要ではない。例として、各能動音響要素204は、変換器の全長に実質的に延びる細長状連続構造の形態である。各細長状構造は、細長状圧電性セラミックプレート204aのような能動的音響素材の部品又は層を備える。各圧電性セラミックプレート204aは、図3Aに示されるように、放射面206に向いた前面216a及び変換器の底部に向いた反対の後面216bを有する。任意的に、能動音響要素の各構造は、有効な放射面206を形成するために、圧電性セラミックプレート204aの前面216aに提供される整合層又は要素204aをさらに備えていてもよい。しかしながら、要素204の能動音響素材は、変換器の代替形態における一つの又はそれより多い整合層又は拡張の有無に関わらず放射面を直接的に及び集合的に形成してもよい。要素204の整合層204bは、例示のみとして、ポリマー金属、酸化物、及び複合素材を含む適切な特定の音響インピーダンスを有する素材から形成されることが理解される。
【0037】
図示されないが、各能動音響要素204は、前部216aと後部216b間で能動音響素材204aを挟む前部電極及び後部電極を備える。さらに、各能動音響要素204の電極を電気接続することで、要素は、能動モードにおいて、音波又は音響ビームを生成するように駆動し、又は、代わって、受動モードにおいて、放射面206に入射する受信音波又は音響ビームによる能動音響素材の励振に応答する電気信号を受信するように駆動することができる。第1の好ましい形態において、隣接する能動音響要素204間の中心間距離は、好ましくは、動作周波数の波長の約1/2を超えない。
【0038】
音響変換器200は、さらに、能動音響要素204のそれぞれの電極に電気的に接続される制御システムを備えることが解る。制御システムは、能動音響要素204の電極に与える駆動信号を生成するように動作する電気回路を有し、その駆動信号により、各要素に、既知の音響的用途のための所望の動作周波数で音波又は音響ビームを生成し、発射させる。加えて又は代わって、制御システムは、放射面206での音響ビームの受信に応答して、能動音響要素204により生成される電気信号を受信するように構成され、これらは、種々の音響的用途のための既知の音響変換器技術に従って進められる。
【0039】
代替形態において、能動音響要素は、磁歪要素、又は音響ビームの生成及び/又は受信用に動作可能ないかなる他の種類の音響変換器要素であってもよい。
【0040】
第1の好ましい形態の変換器200の動作において、凹状配列の細長状能動音響要素204は、個々の音響ビームを生成し、個々の音響ビームすべての重畳であるスワッスビームを生成するための、要素の電極に加えられる駆動信号を介して、制御システムによって駆動される。さらに詳しくは、凹状円筒放射面と合致する能動音響要素204は、駆動信号により励振され、空洞部210内に音波を生成する。電気的励振により生成される音場及び圧電性要素204間の音響的相互作用は、収束円筒音響波面を形成する。波面は、焦点ゾーン(円筒軸又はその周囲)を通じて伝搬し、それから拡散する。変換器の波長及び寸法よりかなり大きい距離で、すなわち遠方で、広角(又はFOV)内、及び、前述したように、円筒開口に依存する幅内において、音波(スワッスビーム)の音響強度は、実質的に均一になる。
【0041】
変換器200の能動音響要素204の凹状配列は、広いFOV、及びFOVにわたって実質的に均一な応答を有する高出力スワッスビームを生成するための小孔を提供する。
【0042】
(第2の好ましい形態−多チャネル音響変換器)
図4A及び4Bを参照して、第2の好ましい形態における音響変換器300が説明される。第2の好ましい形態の音響変換器300は、第一の好ましい形態における音響変換器200と構造において実質的に同一であり、同様の部品には、同様の参照番号が付されている。主要な相違点は、音響変換器300は、以下に詳述するビーム操縦及び可変スワッスビーム幅制御方式の電子ビーム制御機能を有する多チャネル変換器であることである。
【0043】
図4Aを参照して、音響変換器300は、既に述べたように、凹状円筒細長状放射面206から外方向に放射状に延びる動作可能な能動音響要素304の配列を備える。しかしながら、音響変換器300は、単一チャネル音響変換器200のように、変換器の長さに沿って実質的に延びる連続する細長状能動音響要素304を用いない。多チャネル音響変換器300においては、ライン状の複数(N)の能動音響要素3040-Nが、放射面206の円筒軸周囲の各配列要素方向に提供される。能動音響要素3040-Nの各ラインは、変換器の長さに沿って、電気的及び音響的に互いに隔離されている。
【0044】
各ラインそれぞれの能動音響要素3040-Nの数は、好ましくは同一であり、ラインそれぞれの能動音響要素は、好ましくは、変換器の長さに沿って互いに対して直線状に並べられ、それにより、変換器の長さに沿った能動音響要素の一連の凹状配列セグメントを提供する。言い換えると、変換器の長さに沿って延びる能動音響要素3040-Nの各ラインは、要素の放射列(図4A)とみなすことができ、各放射列の能動要素は、凹状円筒放射面210の周囲にN個の円周方向列(図4B)に配列される。能動音響要素3040-Nの各円周方向列は、凹状配列セグメントとみなすことができる。
【0045】
第2の好ましい形態において、能動音響要素3040-Nを操作及び駆動する制御システムが、好ましくは提供される。音響変換器300の制御システムは、N個の凹状配列セグメントのいずれかを作動させ、又は非作動させるように動作することができ、それにより、放射面206の有効長さ、及び変換器の長手軸方向におけるスワッスビームの幅を制御する(図4B)。例えば、制御システムは、一端又は両端で一つの又はそれより多いN個の凹状配列セグメントを非作動とし、それにより、放射面206の有効長さを減じ、発射されるスワッスビームの幅を広げるように、配置又は構成される。
【0046】
さらに又は代わって、制御システムは、スワッスビームをビーム操縦し、又は変換器の長手軸方向におけるビーム幅を拡大するために、凹状配列セグメントに差動位相駆動信号を加える位相配列技術を用いるように構成される。例えば、能動凹状配列セグメントすべてに同位相が加えられると、遠方スワッスビームは、0°を表す矢印に示されるように、変換器300の中央長手軸に実質的に垂直な角度で、放射面206から伝搬する。しかしながら、差動位相駆動信号が、変換器の長さに沿って作動凹状配列セグメントに加えられ、それによって、変換器の長手軸を横断する軸の周囲に、スワッスビームの伝搬角度(D)を変更し、変換器の長手軸の方向にビーム幅を拡大する。
【0047】
多チャネル音響変換器300は、操縦可能及び可変幅の音響スワッスビームの生成を提供する。
【0048】
図5Aは、操縦角度D=0°、7.7°、15.5°及び23.7°における動作周波数160KHzで音響変換器300により発射されたスワッスビームの遠方指向性パターンを示す。指向性パターンは、変換器(図4B)の長手軸又は円筒軸を備える面におけるスワッスビームの音響応答を表す。図5Bは、変換器の長手軸又は円筒軸に垂直な面において、動作周波数160KHzで音響変換器300から発射されたスワッスビームの遠方指向性パターンを示し、又は、さらに詳しくは、図4Aに参照されるFOVを示す。図5Bに示されるように、スワッスビームは、この例では、約100°の広角にわたって実質的に一定の応答を有する。広角の一定応答又はFOVは、必要に応じて、狭められ、又は広げられることが理解される。
【0049】
(代替の形態)
本発明の音響変換器の凹状細長状放射面は、代わりに、凹状又は好ましくは円筒凹状の放射面に合致する能動音響要素の他の配列の配置又は構成により形成されてもよい。能動音響要素は、好ましくは、連続又は実質的に連続的な放射面を集合的に形成することが理解される。しかしながら、所定の用途に最適な設計でなくとも、音響変換器は、集合的な放射面を形成する能動要素の配列の前面間の間隔をあけてもなお動作してもよい。
【0050】
(用途例)
本発明の音響変換器は、好ましくは、小孔を介して高出力スワッスビームを生成及び/又は受信するように構成される。このタイプの音響変換器は、水中音波探知機、又は他のいかなる水中音響装置又は用途に用いることができる。加えて、音響変換器は、水又は空気を含むいかなる音響媒体内で動作することができる。例えば、音響変換器は、音声用途における空気音響効果用広角音響変換器として用いることができる。
【0051】
2つ又はそれより多い変換器は、各変換器が自己のスワッスビームを生成する並列直線又は曲線配列で連結され、それにより、極端な例である全方向変換器に、より広い全視野を提供する。例えば、多数連結した変換器が水中の側面走査用途に有用である。
前述した本発明は、その好ましい形態を含む。以下の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく本発明に対する変更がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響スワッスビームを発射及び/又は受信するスワッスビーム音響変換器において、
関連する音響孔を有する細長状凹状放射面を集合的に提供するように構成される能動音響要素の配列を備え、前記能動音響要素の配列は、前記放射面を介して、スワッスビームを発射及び/又は受信するように動作可能である、
ことを特徴とするスワッスビーム音響変換器。
【請求項2】
前記放射面は、半円筒の周外面に実質的に一致する凹状円筒放射面である、
請求項1に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項3】
前記能動音響要素は、前記凹状半円筒放射面の周囲に配置され、各要素は、前記円筒軸から半径分等しく間隔をあけている、
請求項2に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項4】
前記能動音響要素の配列は、実質的に連続する放射面を提供するように配置される、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項5】
各能動音響要素は、電気的に励振可能な電極間に結合される能動音響素材を備える音響変換器要素である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項6】
各音響要素は、能動音響素材に直接的又は間接的に結合される一つ又はそれより多い整合層を備え、前記整合層は、前記変換器と音響ビームが伝搬する音響媒体との間のインピーダンス整合を提供するように構成される、
請求項5に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項7】
各能動音響要素は、前記放射面と前記能動音響素材との間に位置している整合層を備える、
請求項6に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項8】
前記能動音響要素は、支持構造体内において、相互に音響的に隔離されている、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項9】
前記能動音響要素のそれぞれと電気的に接続し且つ前記能動音響要素のそれぞれを駆動するための電気駆動信号を生成し、それにより、前記放射面から全スワッスビームを発射し、又は代わって、前記放射面によって受信されるスワッスビームに応答して生成される前記能動音響要素からの電気信号を受信及び処理する制御システムを備える、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項10】
前記配列内の各能動音響要素は、まっすぐ且つ細長状である、
請求項9に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項11】
各能動音響要素の長さは、実質的に前記放射面の全長にわたって延びる、
請求項10に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項12】
前記変換器は、前記放射面の長手軸の方向について、実質的に固定された幅を有するスワッスビームを生成するように構成される、
請求項11に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項13】
各まっすぐ且つ細長状の能動音響要素は、前記変換器の長さに沿って、互いから音響的及び電気的に隔離されるライン状の複数の個々の能動音響要素から集合的に形成される、
請求項11に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項14】
前記ライン状の個々の能動音響要素は、前記変換器の長さに沿って、互いに整列して並べられ、それにより、前記変換器の長さに沿った能動音響要素の一連の選択的に動作可能な凹状配列セグメントを提供する、
請求項13に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項15】
前記制御システムは、能動音響要素の一つ又はそれより多い前記凹状配列セグメントのいずれかを活性化又は非活性化するように動作可能であり、それにより、前記放射面の有効長さ、その結果、前記放射面の長手軸方向における伝搬されるスワッスビームの幅を制御する、
請求項14に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項16】
前記制御システムは、能動音響要素の前記凹状配列セグメントに差動位相駆動信号を加えるように動作可能であり、それにより、前記放射面の長手軸を横切る軸の周囲の所望の方向に、伝搬されるスワッスビームを操縦する、
請求項14に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項17】
前記能動音響要素の配列は、前記変換器の長手軸に垂直な面における広視野を有し、前記遠方音響強度は、前記視野内で実質的に均一である音響スワッスビームを発射するように動作可能である、
請求項1ないし16のいずれか1項に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項18】
前記能動音響要素は、所定の動作周波数で動作され、前記能動音響要素の配列は、前記放射面の周囲の隣接する音響要素間の中心間距離が前記動作周波数の波長の約1/2より大きくないように配置される、
請求項1ないし17のいずれか1項に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項19】
前記放射面は、一つ又はそれより多い保護層を介して、前記発射又は受信された音響スワッスビームを伝搬する音響媒体に間接的に露出している、
請求項1ないし18のいずれか1項に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項20】
前記放射面は、音響スワッスビームが発射され又は受信される音響孔を形成し、一つ又はそれより多い前記保護層は、前記音響孔を少なくとも部分的に充填するように配置される、
請求項19に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項21】
前記保護層は、前記変換器が水中で動作可能とするために、水中で音響的透明となるように作成されたゴムから形成される、
請求項19又は20に記載のスワッスビーム音響変換器。
【請求項22】
音響スワッスビームを発射及び/又は受信する音響変換器において、
動作可能な音響変換器要素の凹状円筒配列を備える、
ことを特徴とする音響変換器。
【請求項23】
音響スワッスビームを発射する方法において、
スワッスビームを発射する動作可能な音響変換器要素の凹状円筒配列を駆動することを備える、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−500555(P2012−500555A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523763(P2011−523763)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/NZ2009/000119
【国際公開番号】WO2010/021554
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(500084016)インダストリアル リサーチ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】