説明

セキュリティフィルム、転写箔及び印刷物

【課題】特異な意匠性があり、かつ、偽造防止効果の高い、表面レリーフ型ホログラムを有するセキュリティフィルム及び転写箔を提供する。
【解決手段】支持体1上の片面に少なくとも、第1ホログラム形成層3、第1反射層4、第2ホログラム形成層5、第2反射層6、を順次積層し、かつ、第1反射層4が部分的に存在していることを特徴とするセキュリティフィルム。前記セキュリティフィルムの支持体1と第1ホログラム形成層3との間に剥離層が設けられ、かつ、第2反射層6上に接着層が設けられていることを特徴とする転写箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣・商品券・証明書として用いることが可能な、表面レリーフ型ホログラムに関するものであり、さらに詳しくは、少なくとも2つのレリーフ層を有し、特異な意匠性及びセキュリティ性を有するセキュリティフィルム及び転写箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、複製の困難さのために偽造防止機能に優れ、各種セキュリティ用途に多く使用されている。セキュリティ用途に用いられるホログラムの形態としては、ホログラムシール、ホログラム転写箔、および、各種紙媒体に用いられるスレッドホログラムがある。
【0003】
また、従来のホログラムはアルミ等の金属薄膜を反射層として用いることにより銀色に輝いて見えるものが一般的であるが、顔料または染料等により着色した層を設けることにより、金色やその他のメタリック色に見えるものも作成可能である(特許文献1参照)。さらに、着色層をパターン化することで2色以上の表現が可能となる。
【特許文献1】特開昭61−238079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、着色層をパターン化しても、ホログラム図柄はこのパターン上に別途加工する必要があるため、ホログラム図柄と着色パターンの位置を精度良く合わせることは困難であり、デザイン上大きな制約となっている。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解消するために成されたものであり、ホログラム図柄と着色パターンの見当が完全に一致したホログラムを自由に配置できることで、特異な意匠性及びセキュリティ性を有するセキュリティフィルム、転写箔及び印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、支持体上の片面に少なくとも、第1ホログラム形成層、第1反射層、第2ホログラム形成層、第2反射層、を順次積層し、かつ、第1反射層が部分的に存在していることを特徴とするセキュリティフィルムである。この発明によれば、まず、第1ホログラム層を視認するための第1反射層を部分的に設け、第1反射層の無い部分は第2反射層を通して第2ホログラム層が視認できるようにすることで、2色以上のパターンを持ち、かつ図柄の異なるホログラムを作成することができる。
このとき、ホログラム図柄と着色パターンの見当を完全に一致させることができるため、特異な意匠性及びセキュリティ性を有することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記第2ホログラム形成層が、前記第1ホログラム形成層とは異なるホログラム図柄を有することを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティフィルムである。この発明に係わるセキュリティフィルムは、少なくとも2種のホログラム図柄を有しているように、したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記第2ホログラム形成層が、顔料または染料により着色されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のセキュリティフィルムである。この発明に係わるセキュリティフィルムは、第2図柄の着色を、第2形成層自身への着色料の添加によって実現するように、したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記第1反射層と第2ホログラム形成層の間に、着色層(1)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。この発明に係わるセキュリティフィルムは、第2図柄の着色を、第1反射層と第2ホログラム成形層の間に設けた着色層(1)によって実現するように、したものである。着色層(1)は全面であっても、部分的なものであっても構わない。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記第1ホログラム形成層が、顔料または染料により着色されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。この発明に係わるセキュリティフィルムは、第1図柄の着色を、第1ホログラム形成層自身への着色料の添加によって実現するように、したものである。このとき、着色の効果は第2図柄にも影響する。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記支持体と第1ホログラム形成層の間に、着色層(2)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。この発明に係わるセキュリティフィルムは、第1図柄の着色を、支持体と第1ホログラム成形層の間に設けた着色層(2)によって実現するように、したものである。着色層(2)は全面であっても、部分的なものであっても構わないが、着色の効果は第2図柄にも影響する。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記第1反射層と第2反射層が、色の異なる材質の組合せとなっていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。この発明に係わるセキュリティフィルムは、第1反射層と第2反射層に色の異なるものを用いることで、第1図柄と第2図柄の色の違いを実現するように、したものである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載のセキュリティフィルムの前記支持体と第1ホログラム形成層との間、または、前記支持体と着色層(2)との間に剥離層が設けられ、かつ、前記第2反射層上に接着層が設けられていることを特徴とする転写箔である。この発明に係わる転写箔は、請求項1〜7のいずれかに記載のセキュリティフィルムを、紙やカードなど別の媒体に転写可能な転写箔に、したものである。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載のセキュリティフィルム及び/または請求項8に記載の転写箔を用いて、少なくとも1部にホログラム柄が設けられていることを特徴とする印刷物である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、パターニングされた第1図柄と第2図柄が組み合わされたセキュリティフィルムが提供される。パターニングはホログラムの図柄とは無関係に作成できるため、ホログラム自身により同様のパターンを表現した場合と比べ、特異な意匠性及びセキュリティ性を有することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、第1図柄と第2図柄のホログラム図柄を異なるものにすることで、2種類のホログラム図柄がパターニングされた、より特異な意匠性及びセキュリティ性を有するセキュリティフィルムが提供される。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、第2ホログラム形成層を着色することで、第1図柄と第2図柄で異なる色を持つセキュリティフィルムが提供される。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、第1反射層と第2ホログラム形成層の間に着色層(1)を設けることで、第1図柄と第2図柄で異なる色を持つセキュリティフィルムが提供される。さらに、着色層(1)を部分的に設けることで第2図柄の中でも色の異なる部分を持つセキュリティフィルムが提供される。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、第1ホログラム形成層を着色することで、第1図柄及び第2図柄の両方が同じ色に着色されたセキュリティフィルムが提供される。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、支持体と第1ホログラム形成層の間に着色層(2)を設けることで、第1図柄及び第2図柄の両方が同じ色に着色されたセキュリティフィルムが提供される。さらに、着色層(2)を部分的に設けることで、第1図柄と第2図柄のパターンとは無関係に、色の異なる部分を持つセキュリティフィルムが提供される。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、第1反射層及び第2反射層として、色の異なる材料の組み合わせを用いることで、第1図柄と第2図柄で異なる色を持つセキュリティフィルムが提供される。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、支持体と第1ホログラム形成層または着色層(2)の間に剥離層を設け、かつ、第2反射層上に接着層を設けることで、請求項1〜7の効果を持つ転写箔が提供される。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜7の効果を持つセキュリティフィルムの貼付、及び/または請求項8の発明により作成した転写箔の転写により、特異な意匠性及びセキュリティ性を有する印刷物が提供される。
【0024】
なお、本発明の用途としては、例えば、紙幣、証券、チケット、乗車券、商品券、証明書、ラベル、カード、および、スレッド等を挙げることができるが、限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のセキュリティフィルム及び転写箔は、支持体上に形成され、樹脂材料からなる第1ホログラム形成層と、上記第1ホログラム形成層上に部分的に形成された第1反射層と、上記第1ホログラム形成層及び第1反射層上に形成され、樹脂材料からなる第2ホログラム形成層と、上記第2ホログラム形成層上に形成された第2反射層と、を有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの断面図である。
図2は、本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの平面図である。
図3は、本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの断面図である。
図4は、本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの断面図である。
図5は、本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの平面図である。
図6は、本発明の1実施例を示す転写箔の断面図である。
【0026】
1.支持体
まず、本発明に用いられる支持体について説明する。本発明に用いられる支持体は、セキュリティフィルムとして使用する際にはホログラム形成層により得られる光像が、外的要因により乱されることを防止する保護機能を有するものである。また、転写箔として使用する際にはホットスタンプ等の方式により被転写物へ貼付を行った後、ホログラム形成層を有する転写物から剥離する機能を有するものである。本発明の支持体の適切な材料の実例としては、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、または酢酸セルロースフィルムが挙げられる。
【0027】
また、本発明のセキュリティフィルムを製造する際に、支持体上に溶剤を含む着色層、ホログラム形成層、アンカー層等の組成物を塗工することで形成する場合においては、上記樹脂材料は、上記溶剤に侵食されない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。
【0028】
本発明においては上記樹脂材料のなかでも、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、さらに上記ポリエステル系樹脂のなかでもポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0029】
本発明に用いられる支持体は透明でなくても良く、ホログラム形成層を視認できる程度の透明性を有すれば良く、着色されていても良い。
【0030】
本発明に用いられる支持体は任意の厚さで良いが、12μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。
【0031】
2.着色層
着色層(2)は支持体と第1ホログラム形成層の間に、着色層(1)は第1反射層と第2ホログラム形成層の間に形成される。形成方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等、一般的な印刷方法を用いることが可能であり、着色層に染料または顔料を配合することで着色効果を得ることができる。
【0032】
着色層は全面印刷であっても良いし、部分的なパターン印刷であっても良い。着色層が全面印刷の場合、着色効果はセキュリティフィルム及び/または転写箔の全面に及ぶが、着色層(1)が全面印刷の場合、着色効果は第1反射層が設けられていない部分に限定されるためパターン状となる。この時、着色層(1)の着色範囲と、後から加工される第2ホログラム形成層のホログラム図柄の範囲が完全に一致するため、特異な意匠性及びセキュリティ性が実現できる。
【0033】
着色層をパターンで印刷する場合、着色層(2)では印刷を行った部分に着色効果が得られる。このパターンは後から加工を行う第1反射層のパターンと無関係に印刷できるため、組み合わせることでより複雑なパターンを作り出すことが可能となり、より高い偽造防止効果が期待できる。着色層(1)をパターンで印刷した場合には、着色効果は第1反射層が設けられておらず、かつ、パターン印刷が行われている部分に限定される。
【0034】
着色層(1)を第1反射層のない第1ホログラム形成層上に塗工する場合は、塗工により第1ホログラム形成層上に成形されたホログラム図柄を消失させることが可能な材料を選定する必要があるが、一般的に屈折率に大きな差がなければ塗工によりホログラム図柄は消失する。
【0035】
3.ホログラム形成層
本発明に用いられるホログラム形成層は、熱エンボス成形により表面レリーフを記録することが可能であり、かつ、本発明の製造工程及び使用環境において、光像が消失しない程度の耐熱性等を有するものであれば特に限定されない。ホログラム形成層の形成方法としては、着色層同様、一般的な印刷方法を用いることができる他、グラビアコート、マイクログラビアコート、ロールコート、キスコート、ダイコート、コンマコート等、各種塗工方法を用いることができる。ホログラム形成層に染料または顔料を配合することでも、着色層と同様の着色効果を得ることができる。
【0036】
第1ホログラム形成層の材料としては、支持体または着色層(2)に容易に接着する樹脂が良いが、支持体または着色層に第1ホログラム形成層を積層するに先立って、アンカーコート処理、コロナ放電処理等の表面活性化処理を施しても良い。第2ホログラム形成層についても、第1反射層、第1ホログラム形成層、または着色層(1)に容易に接着する樹脂が良いが、第1ホログラム形成層同様、アンカーコート処理やコロナ放電処理等を行っても良い。
【0037】
第1反射層のない第1ホログラム形成層上に着色層(1)、第2ホログラム形成層またはアンカー層を塗工する際には、屈折率の近い材料を用いることで、第1反射層を設けていない部分で第1ホログラム形成層に成形されたホログラム図柄を消失させることができる。これにより、第1反射層が設けられていない部分において、後から成形する第2ホログラム形成層のホログラム図柄が第1ホログラム形成層に成形されたホログラム図柄の影響を受けることなく視認可能となる。
【0038】
本発明では、1つの基材に対して少なくとも2つのホログラム形成層を形成し、ホログラム成形の工程を繰り返すことで複数図柄を有するセキュリティフィルムおよび転写箔の作製を行うため、後からホログラム形成層にホログラムを成形する工程で、先に成形したホログラム形成層のレリーフ形状を破壊しないことが必要となる。
【0039】
ホログラム形成層への成形は熱と圧力を用いて行うため、一般的にはTgの異なるホログラム形成層を用い、Tgの高い順に第1ホログラム形成層、第2ホログラム形成層とし、成形温度を順次下げることで先に成形したホログラム形成層のレリーフ形状の破壊を防止する方法があるが、先にレリーフ形成される樹脂として紫外線硬化性樹脂を使用すると、硬化前のTgが低くても、ホログラム成形後にこの樹脂を硬化することで、後から第2ホログラム形成層にホログラムを成形する時点においてTgを十分に高くすることが容易となる。第1ホログラム形成層については、特に成形中に紫外線を用い、ポリアクリレートまたはポリウレタン等の成形樹脂を硬化させる方式が好ましい。
【0040】
本発明に用いられるホログラム形成層の厚みは、成形可能な厚みであれば特に限定されないが、0.3μmから〜3μmが適当である。
【0041】
ホログラム形成層に成形されるレリーフ形状は微細な凹凸形状であり特に限定されるものではないが、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものが含まれる。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターン、なし地柄などでもよい。光回折凹凸パターンとしては、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞が凹凸模様で記録されたホログラムや回折格子が適用できる。
【0042】
4.反射層
反射層は成形の前または後に、ホログラム形成層上にコーティングされる。適切な反射層材料の実例としては、アルミニウム、錫、硫化亜鉛、二酸化チタン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。第1反射層については、着色層(1)及び第2ホログラム形成層より成る第2図柄を隠蔽する必要があるため、第1反射層の材料としては透過率の低いものに限定されるが、第2反射層はこの限りではない。
【0043】
反射層の形成方法としては、金属材料の蒸着及びスパッタによる方法や、金属微粒子をインキ化し、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等、一般的な印刷方式で印刷する方法が可能である。また、反射層を部分的に設ける方法としては、蒸着及びスパッタを行う際のマスクの使用、印刷方式によるパターン印刷が可能である。さらに、一度全面に設けた反射層の一部を除去することでも反射層を部分的に設けることが可能であり、この方法としては、水洗インキを使用する方法、マスク後にエッチングする方法、レーザー加工等が挙げられる。
【0044】
第1反射層は第1ホログラム形成層上に部分的に形成される。第1反射層が形成された部分のホログラムは十分な輝度を持つ一方、第1反射層が形成されていない部分については、屈折率の近い樹脂を塗工することによりホログラムが消失する。この部分には後から成形される第2ホログラム形成層上に成形された別のホログラムが表現されることになる。
【0045】
第2反射層以降の反射層については、全面であっても、部分的であっても構わないが、反射層が設けられていない部分のホログラムは消失するか、十分な輝度が得られないものとなる。
【0046】
5.アンカー層
本発明では、最低限必要とされる層構成の他に、層間の密着性を向上させるために、必要に応じてアンカー層を設けても良い。また、表面処理により層間の密着性を向上させても良い。表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾンガス処理、アルカリ処理等が挙げられる。
【0047】
アンカー層の効果として、支持体とホログラム形成層との密着性を向上させることで、成形時の版取られをより抑制できる。また、アンカー層をクッション性のある柔軟な材料にすることで、熱及び/または圧力の負荷がかかっても、既に成形されているレリーフ形状の劣化を防止し、その結果、既に成形されているホログラムの輝度が保持される。
【0048】
6.マスク層
本発明では、反射層を部分的に設ける方法として、全面に蒸着またはスパッタを行ったものにマスク層を設けた後にエッチングを行う方法が可能である。マスク層にはエッチング時に反射層を保護する機能が必要であるが、マスク層は層構成の一部となるため、この機能以外にも、耐熱性、密着性等の性能が要求される。
【0049】
7.粘着層
本発明のセキュリティフィルムをステッカーとして作成する場合、第2反射層上に粘着層が成形される。粘着層の材料としては、被転写物に対し所望の接着性を有するものであれば特に限定されない。
【0050】
8.剥離層
本発明の転写箔においては、支持体と着色層(2)または第1ホログラム形成層との間に剥離層が形成される。剥離層は転写後に支持体から剥離し転写物の最表面となるため、保護層としての機能も要求される。剥離性能を向上するために、支持体と剥離層の間に離型層を設けることも可能である。
【0051】
また、本発明のセキュリティフィルムを脆性ステッカーとして作成する場合、支持体と着色層(2)または第1ホログラム形成層との間に脆性層として剥離層を設けることができる。この場合、ステッカーは支持体ごと粘着層を介して被貼付物に貼付された状態で使用されるが、このステッカーを故意に被貼付物から剥がそうとした際には、支持体と剥離層の間で剥離が発生し、ステッカーが破壊することで再利用等の不正を防止することができる。
【0052】
9.接着層
本発明の転写箔においては、第2反射層上に接着層が形成される。接着層の材料としては、被転写物に対し所望の接着性を有するものであれば特に限定されない。また、第2反射層と接着層の密着性をより向上させるため、間に接着アンカー層を設けることも可能である。
【0053】
本発明に用いられる接着層の厚みは、被転写物に対して所望の接着性を発現できる範囲内であれば特に限定されない。本発明においては、1μm〜10μmの範囲内が好ましく、ホログラム形成層同様、各種塗工方式を用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0055】
実施例1
図1は本発明によるステッカータイプのセキュリティフィルムの構成例を示す断面図である。図1に例示するように、支持体1と、アンカー層2と、第1ホログラム形成層3と、上記第1ホログラム形成層3上に部分的に形成された第1反射層4と、上記第1ホログラム形成層3及び上記第1反射層4上の全面に形成された第2ホログラム形成層5と、上記第2ホログラム形成層5上に形成された第2反射層6と、上記第2反射層6上に形成された粘着層7とからなるものである。本実施例において、上記アンカー層2は支持体1と第1ホログラム形成層3との密着性の向上のために設けている。また、本実施例では第2ホログラム形成層5に橙色の染料を添加している。
【0056】
図2は本実施例を支持体側から見た平面図である。図2に例示するように、第1ホログラム形成層3と第1反射層4により表現される第1図柄部8と、第2ホログラム形成層5と第2反射層6により表現される第2図柄部9とからなるものである。
【0057】
以下、実施例1の作成方法の具体例を示す。
【0058】
支持体として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名E5100,東洋紡績社製)を用い、コロナ処理が施された面上にアンカー層・第1ホログラム形成層の順にグラビアコーターで印刷を行った。オーブンでの乾燥後、第1ホログラム形成層の膜厚は2μmであった。
【0059】
このフィルムをロールエンボス装置にて熱プレスを行い、第1ホログラム形成層にホログラム図柄を成形した。
【0060】
第1ホログラム形成層上に、スクリーン印刷方式にて、水洗インキのパターン印刷を行った。水洗インキのパターン印刷は、第1反射層を設けたくない部分に行った。
【0061】
第1ホログラム形成層及び水洗インキ上にアルミ蒸着を行い、第1反射層を設けた。この時点では第1反射層は全面に設けられている。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。
【0062】
フィルムを水洗処理し、水洗インキ及び水洗インキ上の第1反射層の除去を行った。この時点では、第1反射層が除去された部分は透明であるが、第1ホログラム形成層に成形されているホログラム図柄が確認可能である。第1反射層が残っている部分は銀色のホログラムが確認できた。
【0063】
第1反射層及び第1反射層が除去された第1ホログラム形成層上に、橙色の染料を添加した第2ホログラム形成層をグラビアコーターで印刷を行った。オーブン乾燥後、第2ホログラム形成層の膜厚は2μmであった。
【0064】
このフィルムを、第1ホログラム形成層に成形した図柄とは異なる図柄のスタンパを用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行い、第2ホログラム形成層にホログラム図柄を成形した。
【0065】
第2ホログラム形成層上にアルミ蒸着を行い、第2反射層を設けた。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。この時点で、フィルムを支持体側から見ると、第1反射層が残された部分は第1ホログラム形成層に成形されたホログラム図柄が銀色に確認でき、第1反射層が除去された部分は第2ホログラム形成層に成形されたホログラム図柄が金色に確認できた。
【0066】
第2反射層上に粘着層を塗工し、オーブンにて乾燥させた。粘着層の乾燥後の膜厚は10μmであった。以上により、支持体/アンカー層/第1ホログラム形成層/第1反射層/第2ホログラム形成層/第2反射層/粘着層の構成を有する本発明のセキュリティフィルムを得た。
【0067】
以上のように構成した本実施例のセキュリティフィルムにおいては、除去した第1反射層上に橙色の染料を添加した第2ホログラム形成層を設け、異なる図柄のホログラム成形を行ったうえで第2反射層を設けることにより、ホログラムの画像を、銀色に輝く第1図柄部8と金色に輝く第2図柄部9として表現することが可能となる。この時、ホログラム図柄のパターンの境界と、着色パターンの境界は完全に一致するため、微細なパターン表現が可能となる等、デザイン上の制約を受けずに特異な意匠性及びセキュリティ性を有するセキュリティフィルムを作成することが可能となる。
【0068】
実施例2
図3は、本発明のステッカータイプのセキュリティフィルムの第2の構成例を示す断面図である。図3に例示するように、支持体1と、着色層(2)10と、第1ホログラム形成層3と、上記第1ホログラム形成層3上に部分的に形成された第1反射層4と、上記第1ホログラム形成層3及び上記第1反射層4上の全面に形成された着色層(1)11と、上記着色層(1)11上に形成された第2ホログラム形成層5と、上記第2ホログラム形成層5上に形成された第2反射層6と、上記第2反射層6上に形成された粘着層7とからなるものである。本実施例において、上記着色層(2)10は黄色染料を添加しており、上記着色層(1)11は青色染料を添加している。また、着色層(2)10は支持体1と第1ホログラム形成層3との密着性を向上させる機能も果たしている。
【0069】
実施例2の作成方法の具体例としては、アンカー層2の代わりに着色層(2)10を塗工することと、第2ホログラム形成層を塗工する前に着色層(1)11を塗工すること以外は、実施例1と同様にして作成し、本実施例のセキュリティフィルムを得た。着色層(2)及び着色層(1)は、グラビアコーターにて印刷を行った。
【0070】
実施例2のセキュリティフィルムにおいては、着色層(2)により全面に黄色表現し、着色層(1)により第2図柄部9のみ青色の表現を追加することにより、支持体側から観察した時に第1図柄部8は黄色のメタリックカラーとして観察され、第2図柄部9は緑色のメタリックカラーとして観察される。本実施例のように、第1反射層よりも支持体側の層に着色を行うことで、2色以上のカラー表現が可能となるが、この着色効果は第1図柄部8だけでなく第2図柄部9にも影響を与えるため、注意が必要である。本実施例においても、ホログラム図柄のパターンの境界と、着色パターンの境界は完全に一致する。
【0071】
実施例3
図4は、本発明のステッカータイプのセキュリティフィルムの第3の構成例を示す断面図である。本実施例では、実施例2で全面に設けられていた着色層(2)10及び着色層(1)11を部分的に設け、さらに第2ホログラム形成層5にも染料を添加している。本実施例において、上記着色層(2)10は赤色染料を、上記着色層(1)11は青色染料を、上記第2ホログラム形成層5は黄色染料を添加している。
【0072】
図5は本実施例を支持体側から見た平面図である。図5に例示するように、第1ホログラム形成層3と第1反射層4により表現される図柄は、着色層(2)10が印刷されている第1図柄着色部12と、着色層(2)10が印刷されていない第1図柄非着色部17とで異なる色表現がなされ、本実施例では、第1図柄着色部12は赤色のメタリックカラーとして観察され、第1図柄部非着色部17は銀色として観察される。
【0073】
第2ホログラム形成層5と第2反射層6により表現される図柄はさらに複雑な色表現が可能となり、着色層(2)が印刷され、かつ、着色層(1)が印刷されている第2図柄着色部B14と、着色層(2)が印刷され、かつ、着色層(1)が印刷されていない第2図柄着色部A13と、着色層(2)が印刷されておらず、かつ、着色層(1)が印刷されている第2図柄着色部C15と、着色層(2)が印刷されておらず、かつ、着色層(1)が印刷されていない第2図柄着色部D16と、の4種類の色表現となる。
【0074】
本実施例においては、
第2図柄着色部A13は着色層(2)10と第2ホログラム形成層5の着色効果により、橙色のメタリックカラーで表現され、
第2図柄着色部B14は着色層(2)10、着色層(1)11、及び第2ホログラム形成層5の着色効果により、黒色のメタリックカラーで表現され、
第2図柄着色部C15は着色層(1)11と第2ホログラム形成層5の着色効果により、緑色のメタリックカラーで表現され、
第2図柄着色部D16は第2ホログラム形成層5の着色効果により、黄色のメタリックカラーで表現される。
【0075】
実施例3の作成方法の具体例としては、着色層(2)10及び着色層(1)11をパターン状に印刷すること以外は、実施例2と同様にして作成し、本実施例のセキュリティフィルムを得た。着色層(2)10及び着色層(1)11のパターン化と、第2ホログラム形成層への着色により、本実施例では赤、銀、橙、黒、緑、黄の6色の色表現が可能となる。
【0076】
実施例3のセキュリティフィルムにおいては、着色層(2)10と着色層(1)11とを部分的に印刷することで色のパターンを表現し、第2ホログラム形成層5に着色効果を与えることで第1図柄部と第2図柄部の色の違いを表現している。本実施例においては、ホログラム図柄のパターンの境界と、第2ホログラム形成層5への着色効果によるパターンの境界は完全に一致するが、着色層(2)10及び着色層(1)11の部分的な印刷によるパターンの境界は一致しない。このため、着色層(2)10及び/または着色層(1)11の印刷をホログラム図柄のパターンに合わせて印刷する場合には、印刷精度を考慮した設計が必要となり、デザイン上の制約を受ける。寧ろ、着色層(2)10及び/または着色層(1)11のパターンについては、ホログラム図柄のパターンとは無関係にランダムに印刷を行うことで、特異な意匠性を表現することが可能である。
【0077】
実施例4
図6は、本発明の転写箔の構成例を示す断面図である。図6に例示するように、支持体1と、剥離層18と、第1ホログラム形成層3と、上記第1ホログラム形成層3上に部分的に形成された第1反射層4と、上記第1反射層上に形成されたマスク層19と、上記第1ホログラム形成層3及び上記マスク層19上の全面に形成されたアンカー層20と、上記アンカー層20上に形成された第2ホログラム形成層5と、上記第2ホログラム形成層5上に形成された第2反射層6と、上記第2反射層6上に形成されたアンカー層21と、上記アンカー層21上に形成された接着層22とからなるものである。本実施例において、上記アンカー層20は第1ホログラム形成層3及びマスク層19と、第2ホログラム形成層5との密着性の向上のために設けており、上記アンカー層21は第2反射層6と接着層22との密着性の向上のために設けている。また、本実施例では第2ホログラム形成層5に橙色の染料を添加している。
【0078】
以下、実施例4の作成方法の具体例を示す。
【0079】
支持体として厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名E5102,東洋紡績社製)を用い、コロナ処理が施された面上に剥離層・第1ホログラム形成層の順にグラビアコーターで印刷を行った。オーブンでの乾燥後、第1ホログラム形成層の膜厚は2μmであった。
【0080】
このフィルムをロールエンボス装置にて熱プレスを行い、第1ホログラム形成層にホログラム図柄を成形した。
【0081】
第1ホログラム形成層上にアルミ蒸着を行い、第1反射層を設けた。この時点では第1反射層は全面に設けられている。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。
【0082】
第1反射層上に、グラビア印刷方式にて、マスク層のパターン印刷を行った。マスク層のパターン印刷は、第1反射層を設けたい部分に行った。
【0083】
フィルムをエッチング処理し、マスク層が印刷されていない部分の第1反射層の除去を行った。この時点では、第1反射層が除去された部分は透明であるが、第1ホログラム形成層に成形されているホログラム図柄が確認可能である。第1反射層が残っている部分は銀色のホログラムが確認できた。
【0084】
マスク層及び第1反射層が除去された第1ホログラム形成層上に、アンカー層・第2ホログラム形成層の順に、グラビアコーターで印刷を行った。第2ホログラム形成層には、橙色の染料を添加したものを用いた。オーブン乾燥後、第2ホログラム形成層の膜厚は2μmであった。
【0085】
このフィルムを、第1ホログラム形成層に成形した図柄とは異なる図柄のスタンパを用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行い、第2ホログラム形成層にホログラム図柄を成形した。
【0086】
第2ホログラム形成層上にアルミ蒸着を行い、第2反射層を設けた。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。この時点で、フィルムを支持体側から見ると、第1反射層が残された部分は第1ホログラム形成層に成形されたホログラム図柄が銀色に確認でき、第1反射層が除去された部分は第2ホログラム形成層に成形されたホログラム図柄が金色に確認できた。
【0087】
第2反射層上にアンカー層・接着層の順に、グラビアコーターで印刷を行った。オーブン乾燥後、接着層の膜厚は3μmであった。以上により、支持体/剥離層/第1ホログラム形成層/第1反射層/マスク層/アンカー層/第2ホログラム形成層/第2反射層/アンカー層/接着層の構成を有する本発明の転写箔を得た。
【0088】
以上のように構成した本実施例の転写箔を用い、紙幣・商品券・証明書及びカード等の印刷物に貼付することにより、実施例1から3のセキュリティフィルムと同様の外観を持った転写物を印刷物の一部に付与することが可能となる。
【0089】
本実施例では、第1反射層及び第2反射層として、アルミ蒸着により形成した反射層を設ける場合について説明したが、これに限らず、他の材料により反射層を設ける場合についても、本発明を同様に適用することが可能である。この時、第2ホログラム形成層によるホログラム図柄を隠蔽するために、第1反射層の材料としては透過率が低いものに限定されるが、第2反射層については隠蔽性が不要であるため、硫化亜鉛、二酸化チタン等の透過率が高い材料を用いることも可能である。また、反射層の材料として、色合いの異なる材料の組み合わせを選定することにより、着色を行わずに色違いのホログラム図柄を表現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの平面図である。
【図3】本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの断面図である。
【図4】本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの断面図である。
【図5】本発明の1実施例を示すセキュリティフィルムの平面図である。
【図6】本発明の1実施例を示す転写箔の断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1…支持体
2、20、21…アンカー層
3…第1ホログラム形成層
4…第1反射層
5…第2ホログラム形成層
6…第2反射層
7…粘着層
8…第1図柄部
9…第2図柄部
10…着色層(2)
11…着色層(1)
12…第1図柄着色部
13…第2図柄着色部A
14…第2図柄着色部B
15…第2図柄着色部C
16…第2図柄着色部D
17…第1図柄非着色部
18…剥離層
19…マスク層
22…接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の片面に少なくとも、第1ホログラム形成層、第1反射層、第2ホログラム形成層、第2反射層、を順次積層し、かつ、第1反射層が部分的に存在していることを特徴とするセキュリティフィルム。
【請求項2】
前記第2ホログラム形成層が、前記第1ホログラム形成層とは異なるホログラム図柄を有することを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティフィルム。
【請求項3】
前記第2ホログラム形成層が、顔料または染料により着色されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のセキュリティフィルム。
【請求項4】
前記第1反射層と第2ホログラム形成層の間に、着色層(1)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項5】
前記第1ホログラム形成層が、顔料または染料により着色されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項6】
前記支持体と第1ホログラム形成層の間に、着色層(2)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項7】
前記第1反射層と第2反射層が、色の異なる材質の組合せとなっていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のセキュリティフィルムの前記支持体と第1ホログラム形成層との間、または、前記支持体と着色層(2)との間に剥離層が設けられ、かつ、前記第2反射層上に接着層が設けられていることを特徴とする転写箔。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のセキュリティフィルム及び/または請求項8に記載の転写箔を用いて、少なくとも1部にホログラム柄が設けられていることを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−99929(P2010−99929A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273428(P2008−273428)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】