説明

セキュリティ要素

本発明は、入斜光モードおよび透過光モードでの観察に対する多層フィルム体の形態のセキュリティ要素(3)に関する。セキュリティ要素(3)は、透過光モードで観察者に対して透明または半透明な第一の領域(40)において、キャリアフィルム(31)と部分的な金属反射層(34)とを有する。第一の領域(40)において、金属反射層が備えられる第一のゾーン(41)と、金属反射層が備えられない第二のゾーン(42)とが、連続する第一のゾーン(41)の重心間隔が300μm以下で交互に配置される。第一の領域(40)は、300μmより大きい大きさの少なくとも一つのパターン領域と、パターン領域に隣接し、少なくとも部分的にパターン領域を囲む背景領域とを有し、パターン領域において連続する第二のゾーン(42)の間隔が、背景領域において連続する第二のゾーン(42)の間隔に対して5〜30%異なり、パターン領域の形成により設定される情報アイテムが、透過光モードにおいて、観察者に対して可視化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入斜光モードおよび透過光モードでの観察用の多層フィルム体の形態で、透過光モードでの観察者に対する透明または半透明な領域を有するセキュリティ要素に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ文書は、出来る限りこれらの文書の偽造を困難にし偽造を防ぐセキュリティ特性を備える必要がある。透過光モードで観察される場合に確認でき、カラーコピーによる模造に対して特に高いセキュリティレベルを提供する透過セキュリティ特性を備えたセキュリティ文書が既に知られている。例えば、特許文献1は、スタンプまたは切削工程によりセキュリティ文書のキャリアに窓形態の開口が形成されるセキュリティ文書を開示している。これらの開口は、開口の全辺を越えて突出し、全表面領域にわたりキャリア表面に固定される少なくとも部分的に透明なカバーフィルムにより封鎖される。このカバーフィルムは、透明な開口内に配置され、金属反射層を背景とする回折構造により生じるセキュリティ要素を提供する。これは、入射光モードにより可視できるセキュリティ特性を透明な開口内に提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE-A-4334847
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、偽造に対して高いレベルのセキュリティを備えた、入斜光モードおよび透過光モードでの観察用のセキュリティ要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、入斜光モードおよび透過光モードでの観察に対する多層フィルム体の形態のセキュリティ要素であって、セキュリティ要素は、透過光モードで観察者に対して透明または半透明な第一の領域において、キャリアフィルムと部分的な金属反射層とを有し、第一の領域において、金属反射層が備えられる第一のゾーンと、金属反射層が備えられない第二のゾーンとが、連続する第一のゾーンの重心間隔が300μm以下で交互に配置され、第一の領域が、300μmより大きい大きさの少なくとも一つのパターン領域と、パターン領域に隣接し、少なくとも部分的にパターン領域を囲む少なくとも一つの背景領域とを有し、パターン領域において連続する第二のゾーンの間隔が、背景領域において連続する第二のゾーンの間隔に対して5〜30%異なり、パターン領域の形成により設定される情報アイテムが、透過光モードにおいて、観察者に対して見えるようになるセキュリティ要素により、達成される。
【0006】
上述した寸法規則を守ると、第一の情報は、入射光モードでは観察者には見ることが出来ず、透過光モードで急に出現することを見出した。従って、第一の領域は、観察者に対し、入射光モードと透過光モードとで異なる光学的外観を有し、本発明により、明確に認識可能であり容易に記憶されるセキュリティ要素が提供される。このセキュリティ要素は、カラーコピーまたは他の技術的手段による模倣が困難であり、セキュリティ要素は、模倣および偽造に対して高いレベルの予防手段を有する。さらに本発明によるセキュリティ要素は、少ない製造プロセスで製造可能であり、高価な材料の利用を要求せず、従って製造が事実上安価である。
【0007】
本発明の有利な開発が従属項に説明される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一のゾーンは、線形状またはストライプ形状の構造である。この場合、第一のゾーンの幅は200μm以下であるのが好ましく、第一のゾーンの長さは、幅よりもかなり大きく、1000μmより大きいことが好ましい。さらなる好ましい特性では、第一のゾーンの幅は10μm〜100μm、好ましくは10μm〜40μmである。このような寸法を守ることにより、コントラストにおいて大きな差異を獲得および達成することができ、光学的印象および色のランダムな相互作用に干渉する回折現象が実質的に回避される。
【0009】
第一の領域において、第一のゾーンの全表面領域が、第一および第二のゾーンの全領域の50%以下、好ましくは第一および第二のゾーンの全領域の10%以下の領域比を占めることが有利であることがさらにわかっている。さらに、互いに対する第一および第二の領域の比は、70%〜95%となるように選択されることが好ましい。この条件を守ることにより、入射光モードにおける第一の領域の光学的印象と、透過モードとにおいて、特に著しい差異を提供する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一のゾーンが、実質的に互いに平行に配置され、第一のゾーンの縦軸が、第一の領域において第一の座標軸とそれとは異なる第二の座標軸とで規定される座標系の第一の座標軸の方向に配置される。座標系は、互いに直角に配置される2本の直線により規定される座標系を有することができる。しかしながら、座標系は、例えば座標軸が蛇行したまたは円の形態の、幾何学的な変換座標系を有してもよい。そのような変換座標系の場合も、座標軸は互いに直角に配置されることが好ましい。
【0011】
第一のゾーンは、パターン領域と背景領域との間の境界を越えて延びるのが好ましい。各第一のゾーンは、パターン領域および背景領域の双方に備えられ、パターン領域と背景領域との間の境界で遮断されない。これは、光学的印象に干渉し、他方ある条件下で、注意深い観察者に、第一の情報アイテムを入射光において想像させる回折現象を回避させる。従って、この方策は、入射光モードと反射光モードとにおける光学的印象のコントラストをさらに増加する。第一のゾーンは、第一の座標軸方向において、第一の領域の全表面範囲を越えて延びるのが好ましい。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、第一のゾーンの重心線は、第二の座標軸方向において、第一の座標軸に沿って実質的に一定間隔である。この方策は、透過光モードで観察する場合に、パターン領域が極めて明瞭に見える、規則正しく均一な背景を提供する。しかしながら、第一のゾーンの重心線は、第二の情報アイテムを定める機能に従って、第二の座標軸方向において、第一の座標軸に沿って変化してもよい。第二の情報アイテムは、周期性を有する限り、300μm以上の周期間隔を有するのが好ましい。さらに、第二の情報アイテムは、パターン領域および背景領域に均一に重なり、入射光および透過光モードの双方で見た場合に現れ、透過光モードで見た場合に、背景領域とパターン領域との間のコントラストの差により生じる第一の情報にさらに重なる、例えばポートレートなどのグレースケールイメージを形成してもよい。
【0013】
第一のゾーンの重心線は、第二の座標軸方向において、互いに30μm〜40μmの間隔であることが有利であることがさらに分かっている。このようにして、入射光および透過光モードで見た場合の光学的外観のコントラストの差異が明瞭に現れ、煩わしい影響やカラー変化が実質的に回避される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、パターン領域における第一のゾーンの幅と、背景領域における第一のゾーンの幅とは、10〜30%、好ましくは15〜25%異なる。このようにして、入射光および透過光モードで観察する場合のコントラストの特に大きな差異が達成されることが究明されている。
【0015】
本発明のさらなる実施形態によれば、一つ以上の第一のゾーンは、マクロ構造化され、第三の情報アイテムを提示する。このように、第一の領域を、ベース構造からのストライプ形態、数字、文字、またはシンボルの形態で、例えばマクロ構造化することができ、例えば拡大鏡などの技術的支援により読み取ることができる。マクロ構造化は、微細な数字、文字、またはシンボルの領域において、金属反射層が備えられないことを意味する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、表面構造は、第一のゾーンにおける少なくとも第一の領域のサブ領域において、複製層の表面に形成される。この表面構造は、等方性または異方性マット構造であることが好ましい。しかしながら、表面構造は、他の回折表面構造、例えばキネグラム(登録商標)またはホログラムであってもよい。この表面構造で生じる光学効果は、入射光モードで観察される場合に現れ、入射光および透過光モードにおける光学的外観の間に非常に際立った差異が生じる。入射光モードで観察される場合に入射光の散乱反射を生じ、その効果により入射光で観察する場合に第一の情報の認知性をさらに妨げるマット構造の使用が望ましい。これは、透過光モードで観察される場合の背景領域とパターン領域でのコントラストの差異を増し、従って、透過光モードで観察する場合に第一の情報が特に明瞭に見えるようにするために用いてもよい。
【0017】
表面構造は、第一の領域において、第一のゾーンにおいて全表面領域にわたり、または表面領域の一部にわたり形成されてもよい。表面構造が第一の領域のサブ領域にのみ形成される場合、このサブ領域は、パターン領域とパターン領域に隣接する背景領域の一部とを全体にまたは主要部分をカバーするように選択されるのが好ましい。さらに、表面構造の形成により、さらなる第四の情報アイテムを第一の領域に形成することもでき、第四の情報アイテムは、後述するように、入射光および/または透過光モードで観察される場合に見ることができる。本発明により、さらなる面白い光学効果を達成することができる。
【0018】
本発明の目的は、入斜光モードおよび透過光モードでの観察に対する多層フィルム体の形態のセキュリティ要素であって、セキュリティ要素は、透過光モードで観察者に対して透明または半透明な第一の領域において、キャリアフィルムと部分的な金属反射層とを有し、金属反射層が備えられる第一のゾーンと、金属反射層が備えられない第二のゾーンとが、第一の領域において交互に備えられ、第一の領域内の第一および第二のゾーンそれぞれが、300μm以下の最小寸法であり、第一の領域は、大きさが300μmより大きい少なくとも一つのパターン領域と、パターン領域に隣接し少なくとも部分的にパターン領域を囲む少なくとも一つの背景領域とを有し、第一の領域内で、第一のゾーンに占有される背景領域およびパターン領域の少なくとも部分的な表面において、フィルム体により規定される平面の鏡面反射により少なくとも部分的に入射光を反射する個々の第一の表面構造が反射層に形成され、各パターン領域の全表面領域に対する第一のゾーンの表面領域比が、各背景領域の全表面領域に対する第一のゾーンの表面領域比と5〜30%異なり、パターン領域の形成により設定される第一の情報アイテムが、透過光モードにおいて、観察者に対して可視化されるセキュリティ要素により、さらに達成される。
【0019】
この条件が守られた場合、第一の情報は、入射光モードでは観察者には見ることが出来ず、透過光モードで急に現れることが分かった。本発明のこの性状により、金属反射層の構造に関して守られるべき条件は、明らかに厳しくなく、しかしながら、「遮蔽構造」として作用し、さらに入射光モードおよび透過光モードで見える第一の情報アイテムが明らかに異なるような第一の表面構造をさらに条件とする。本発明のこの性状は、入射光モードおよび透過光モードで観察する場合の人間の眼の知覚は異なり、パターン領域と背景領域の適切な構造は、入射光モードで観察される場合には観察者に対して不可視であり、透過光モードで観察される場合には現れる情報が、第一の領域においてコード化され得る、という発想に基づく。本発明によるセキュリティ要素は、カラーコピーまたは他の技術的手段による模倣が困難であり、模倣および偽造に対して高いレベルの予防手段を有する、明確に認識可能であり容易に記憶されるセキュリティ特性を提示する。さらに、本発明によるセキュリティ要素は、少ない製造プロセスで製造可能であり、高価な材料の利用を要求せず、従って製造が事実上安価である。
【0020】
第一および第二のゾーンは、前述したように第一のゾーンに形成されるのが好ましく、以降の記述に注意されたい。さらに、関連する「遮蔽構造」を用いる場合、第一の領域において、隠蔽構造と組み合わせて、第一および第二のゾーンの形成にさらなる変化形を用いることができ、このようにして、上述した効果を達成することができる。第一の領域における第一および第二のゾーンの構造に関しては、特に以下の変化形が有利であることが分かっている。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、連続する第一のゾーンの重心は、少なくとも一方向において、互いに300μm以下の間隔である。この場合、第一のゾーンの幅は、10μm〜150μmの間、さらに好ましくは10μm〜100μmの間で選択されるのが好ましい。このような寸法を守ることにより、コントラストにおいて大きな差異を得ることができ、光学的印象に干渉する回折現象および色のランダムな相互作用が、実質的に回避される。
【0022】
さらに、連続する第一のゾーンの重心を、第一の領域において規定される座標系の第一の座標軸の方向およびそれとは異なる第二の座標軸の方向の双方において、互いに300μm以下の間隔とすることができる。この場合、座標系は、座標軸が例えば波線形態でまたは同心円形態であり、または座標軸が完全に不規則に延びる、幾何学的変換座標系であってもよい。さらに、第一のゾーンの重心が、第一の領域における第一の座標軸の方向および第二の座標軸の方向において一定間隔であり、これにより、第一および第二のゾーンが、座標系により規定される一定間隔の格子ラスターに従って配置されてもよい。第一の領域の大きさを変化させることにより、前述した条件の遵守は、相対的表面比に関して、パターン領域および背景領域における第一のゾーンの調整を容易にする。さらに、パターン領域および背景領域における第一のゾーンの重心間隔が、少なくとも一方向において異なってもよく、上述した条件を守るために用いることも可能である。さらに、第一のゾーンを、上述した条件を守りつつ、第一の領域において格子ラスターに対して配置せず、ランダムまたは擬似ランダムに分配してもよい。
【0023】
各パターン領域の300μm×300μmの大きさに対する第一のゾーンによる最小および最大平均表面被覆率が、各背景領域の300μm×300μmの大きさに対する第一のゾーンによる最小および最大平均表面被覆率と、各場合で5〜30%異なり、最小平均表面被覆率が、5〜20%、最大平均表面被覆率が15〜30%異なることが好ましいことが特に有利であることが分かっている。これは、入射光モードでの観察と反射光モードとの間で特に高いレベルのコントラストが得られることを確約する。パターン領域および/または背景領域における300μm×300μmの大きさに対する第一のゾーンによる平均表面被覆率が、それぞれ一定であることが特に有利であることが分かっている。さらに、パターン領域および/または背景領域における300μm×300μmの大きさに対する第一のゾーンによる平均表面被覆率が、第二の情報アイテムを生じるために変化してもよい。従って、既に前述したように、例えばポートレイトなどの、パターン領域および背景領域に均一に重なるグレースケールイメージを、入射光モードで観察される場合および可能であれば透過光で観察される場合に現れ、透過光モードで観察される場合に、背景領域とパターン領域のコントラストの差により生じる第一の情報アイテムに重なる、第二の情報アイテムとして備えてもよい。従って、パターン領域は、例えば、各大きさが300μmより大きい、一つ以上の第一のサブ領域および一つ以上の第二のサブ領域を有し、第一のサブ領域における第一のゾーンの表面領域比は、第二のサブ領域における第一のゾーンの表面領域比とそれぞれ2%〜5%異なり、透過光モードでグレースケールイメージを生じる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、パターン領域において、第一のゾーンの全表面領域が、パターン領域の全表面領域に対して、40%以下、好ましくは5%〜30%の表面領域比を占める。このようにして、入射光と透過光モードとにおいて示される情報の間のコントラストに大きな差異を達成することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一の領域内で遮蔽構造として用いられる第一の表面構造は、第一のゾーンに占有される少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%の表面領域において、反射層に形成される。背景領域およびパターン領域内の第一の表面構造が、第一のゾーンに占有される少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%の背景領域およびパターン領域それぞれの表面領域において、それぞれ反射層に形成されることが、特に有利である。これは、透過光モードで観察する場合に、背景領域とパターン領域の間のコントラストにおける差異をさらに増すことができる遮蔽効果を達成する。第一の表面構造が反射層に形成される第一のゾーンによるパターン領域および背景領域の平均表面被覆率が、最大30%異なり、好ましくは一定であるように選択されることが特に有利であることがさらに分かっている。この場合、平均表面被覆率は、300μm×300μmの大きさに関連するのが好ましい。このような手続きにより、背景領域とパターン領域との間の遷移は、特にうまく隠され、透過光モードで観察する場合に、背景領域とパターン領域の間のコントラストにおける差異は、増加する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一の表面構造は、マット構造、マクロ構造、および回折構造のグループから選択され、またはこれらの表面構造の組み合わせに相当する。入射光モードで観察される場合に入射光を散乱形態で反射し、その効果により入射光モードにおいて第一の情報の認知性を特によく妨げる等方性または異方性マット構造の利用は、特に有利であることが分かっている。相関距離が100nm〜20μmの範囲であり、構造深度が50nm〜5μmの範囲のマット構造が用いられるのが好ましい。
【0027】
さらに、反射層の表面に形成され、入射光モードで観察される場合に、逆反射光の連続的な偏向に依り、第一の情報アイテムの認知度を効率よく隠す、双対または連続レンズ構造が望ましいことが分かっている。例えば、レンズ数が1〜200L/mmのシリンダーレンズの形態の構造、球面または非球面レンズ形状を、表面構造として利用することができる。これらの構造の構造深度は、50nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0028】
さらに、第一の表面構造として、線形または交差回折格子、特に正弦格子の利用が望ましいことが分かっている。これらの回折格子の空間周波数は、200L/mm〜3000L/mmであり、これらの構造の構造深度は、50nm〜500nmの範囲が好ましい。他の回折表面構造の利用も可能であり、面白い光学可変効果を示す表面構造(例えばキネグラム(登録商標))の利用は、入射光モードにおける第一の情報の認知度を特によく妨げることができる。入射光モードにおける第一の情報の認知度は、鏡面反射からの光の回折により効果的に覆われ、そのような構造のカラー分離作用に起因する。
【0029】
さらに、第一の表面構造として、非対称ブレーズ格子の利用が、望ましいことが分かっており、空間周波数が100〜2000L/mmの範囲で、構造深度が200nm〜5μmの範囲で選択されるのが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一の表面構造の形成により、第一の情報アイテムが覆い隠されるだけでなく、さらに詳細を後述するように、入射光および/または透過光モードで観察される場合に見えるようになる、第四の情報アイテムが、第一の領域に形成される。この場合、第四の情報アイテムは、透過光モードで第一の情報が見える領域を少なくとも部分的にカバーする領域において、入射光モードにおける第一の表面構造により既に備えられていることが好ましい。このようにして、入射光モードにおける人間の眼は、さらに「発散」され、入射光モードで観察する場合に、第一の情報アイテムの認知をさらに困難にする。
【0031】
従って、第一の表面構造は、第一の領域を少なくとも部分的にカバーする第二の領域において備えられることが好ましい。第二の領域が、第一の領域を越えて突出することが特に有利であることが分かっている。
【0032】
第二の領域は、第四の情報アイテムを提示するために、パターン形態で形成され得る。さらに、第四の情報アイテムは、一つ以上の以下のパラメータにより、設定されてもよい。第二の領域の形成、第一の表面構造が反射層に形成される領域の形成、第一の表面構造の構造パラメータ(構造パラメータは個々の光学可変効果を生じ、例えばホログラムのイメージコンテンツがその中にコード化される)、および第一の表面構造として、異なる表面構造が反射層に形成される領域の形成。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、第二の領域は、第一の表面構造として、異なる表面構造が反射層に形成される、2つ以上のサブ領域を有する。この場合、これらのサブ領域はパターン形態で形成され、それぞれ300μmより大きい大きさであり、第四の情報アイテムの少なくとも一部が、サブ領域のパターン形成により提示されることが好ましい。第一の表面構造のこのような構造は、入射光で観察される場合に、特に効果的に第一の情報アイテムの認知を防ぐことができることが分かっている。
【0034】
本発明の特に有利な実施形態では、第二の領域は、多数の均一な形状の第一のサブ領域と、多数の均一な形状の第二のサブ領域とを有し、第一のサブ領域および第二のサブ領域において異なる表面構造が反射層に形成され、および/または第一のサブ領域および第二のサブ領域が異なる構造を含み、第一および第二のサブ領域および任意のさらなるサブ領域が、反復パターンの形態で配置される。反復パターンは、少なくとも部分的におよび好ましくは完全に、パターン領域および背景領域をそれぞれカバーするのが好ましい。第一および第二のサブ領域は、1または2次元格子ラスターに対して整列していることがさらに望ましいことが分かっている。観察者の認知が反復配置によりさらに影響され、従って、入射光で観察される場合に、第一の情報アイテムの認知がさらに妨げられるため、第一の表面構造に対するこのような構造は、入射光で観察される場合に、第一の情報アイテムの認知を特に効果的に防ぐことができる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一の領域内に配置される第二の領域において、第一の表面構造がセキュリティ要素の複製層に形成され、または、第一の加飾層がセキュリティ要素において備えられ、第四の情報アイテムを提示する。従って、第四の情報アイテムは、第二の領域の構造により、および表面構造または加飾層それぞれにより、設定される。ここで、例えば、キネグラム(登録商標)およびホログラム、マット構造、特に異方性マット構造、または、例えばブレーズ格子などのマクロ構造、または非対称構造等の回折構造が、表面構造として用いられるのが好ましい。特に、透明な本体色の加飾層が、例えば薄膜層システム、コレステリック液晶層、または光学可変色素を含む層等の加飾層として用いられる。用いられる表面構造および加飾層のそれぞれの性質、それらの表面構造または加飾層の配置、およびそれらの表面構造または加飾層に隣接する層の選択に依り、この場合、後述するように、第四の情報アイテムは、入射光モードで観察される場合のみ、透過光モードで観察される場合のみ、または入射光モードおよび透過光モードで観察される場合に、見えるようにすることができる。
【0036】
従って、入射光モードで観察された場合にのみ第四の情報アイテムが見えるように、例えば第一の表面構造または第一の加飾層が、第二の領域によりカバーされた第一のゾーンにおいて、形成されまたは備えられ、第二の領域によりカバーされた第一のゾーンにおいて、形成されずまたは備えられないようにすることができる。さらに、第一の表面構造または第一の加飾層が、第二の領域によりカバーされた第二のゾーンにおいて、形成されまたは備えられ、第二の領域によりカバーされた第一のゾーンにおいて、形成されずまたは備えられないようにすることができる。従って、第四の情報アイテムは、透過光モードと、周囲の層の各構造と用いられる加飾層の性質と背景とに依り、入射光モードで観察される場合に、見ることが出来る。
【0037】
第一の表面構造が形成される複製層または第一の加飾層が、金属反射層とセキュリティ要素の第一の表面との間に配置されるのが好ましい。さらに、第一の領域内に配置される第三の領域において、第二の表面構造がセキュリティ要素の複製層に形成され、または、第二の加飾層がセキュリティ要素に形成されて、第五の情報アイテムを提示し、複製層または第二の加飾層が、金属反射層およびセキュリティ要素の第二の表面との間に配置される。従って、入射光モードで第一の表面の側から観察する場合に、第四の情報アイテムを見ることができ、入射光モードで第二の表面の側から観察する場合に、第五の情報アイテムを見ることができる。さらに、第一の表面構造または第一の加飾層が、第二の領域によりカバーされる第二のゾーンに形成されまたは備えられてもよい。そしてさらに、第一の領域内に配置される第三の領域において、第二の表面構造が、セキュリティ要素の複製層に形成され、または、第二の加飾層が、セキュリティ要素に備えられて、第五の情報アイテムを提示し、複製層または第二の加飾層が、金属反射層とセキュリティ要素の表面との間に配置され、入射光モードで表面の側から観察する場合に、第五の情報アイテムを見ることができ、透過光モードで観察する場合に、第四の情報アイテムを見ることができるのが好ましい。さらに、第一の領域内に配置される第四の領域において、第三の表面構造が、セキュリティ要素の複製層に形成され、または、第三の加飾層が、セキュリティ要素に備えられて、第六の情報アイテムを提示し、複製層または第三の加飾層が、金属反射層とセキュリティ要素の他の表面との間に配置され、入射光モードで表面の側から観察する場合に、第五の情報アイテムを見ることができ、入射光モードで他の表面の側から観察する場合に、第六の情報アイテムを見ることができ、透過光モードで観察する場合に、第四の情報アイテムを見ることができてもよい。
【0038】
上述した変形例に関するバリエーションにより、本発明によって、多数の面白い光学効果を得ることができる。第二、第三、および/または第四の領域は、少なくとも部分的にパターン領域と重なり、透過光モードで観察される場合および入射光モードで観察される場合に、観察者に対して、複数の光学認識可能な情報アイテムが、一つおよび同じ領域で提示されるように選択されるのが好ましい。第二の領域が第三の領域と重なり、第三の領域が第四の領域と重なり、または、第二、第三、および第四の領域が重なることが有利である。さらに、入射光モードおよび反射光モードで観察される場合に、パターン領域が複数の光学可変外観を提示するように、第二、第三、および/または第四の領域がパターン領域に一致するようにしてもよい。
【0039】
さらに、後述する手続きにより、ある側からの入射光モードと、他の側からの入射光モードと、透過光モードとにおいて、観察者に対して、異なる光学的外観が見える、本発明によるセキュリティ要素の実施形態を提供することができる。
【0040】
従って、本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、金属反射層から間隔を置き、第一のゾーンにおける第一の金属反射層と合致関係で備えられ、第二のゾーンには備えられない、さらなる部分的な金属反射層が、セキュリティ要素に備えられる。そして、第二の表面構造が、さらなる金属反射層の表面に形成され、第二の表面構造は、第一の表面構造と異なるのが好ましい。この場合、第二の表面構造は、第一の表面構造に関して前述した同様の形態で設計され、または、第二の領域に備えられるのが好ましい。前述した説明に注目されたい。この場合、第二の表面構造は、第四の情報アイテムとは異なる第五の情報アイテムを提示するのが好ましく、すなわち、第二の領域の構造、第一および第二の表面構造の(局所)構造パラメータ、および/または第二の表面領域がさらなる反射層に形成される領域の形成が異なる。従って、入射光モードで反射層の側から観察する場合、第四の情報アイテムを見ることができ、さらなる反射層の側から観察する場合、第五の情報アイテムを見ることができ、透過光モードで観察する場合、第一の情報アイテムを見ることができる。
【0041】
本発明の本実施形態は、さらに、第一および第二の表面構造がそれぞれ、および/または、第一および第二の加飾層がそれぞれ、セキュリティ要素の金属反射層の両側に備えられる上述した実施形態で変形可能であり、上述した効果を達成する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、セキュリティ要素は、例えば紙幣などの有価文書、例えばパスポートなどの身元確認資料、または、例えば製品セキュリティ保護ラベルなどの確認資料等の秘匿文書である。この場合、セキュリティ要素は、特に紙基質を含むキャリア基質を有するのが好ましい。この場合、窓形状の開口は、第一の領域におけるキャリア基質に形成されるのが好ましい。キャリアフィルムは、ストライプの形態であり、少なくともストライプの長手軸方向において、窓状の開口の両側に突出するのが好ましい。
【0043】
さらに、セキュリティ要素は、ラミネーションフィルムであってもよい。第一の領域に加え、そのようなラミネーションフィルムは、さらなるセキュリティ要素が存在する一つ以上の他の領域を有してもよい。この場合、ラミネーションフィルムは、例えば紙幣の紙基質のようなキャリア基質に対する適用に備えられる、ストライプまたはパッチの形態で形成されてもよい。
【0044】
本発明は、添付図面を参照して、以降の複数の実施形態により記述される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明によるセキュリティ要素の平面図を示す。
【図2】図1のセキュリティ要素の非実寸の部分断面図を示す。
【図3】第一および第二のゾーンにおける図1のセキュリティ要素の金属反射層の構造の非実寸の部分図を示す。
【図4】本発明の他のセキュリティ要素の非実寸の部分断面図を示す。
【図5】図4のセキュリティ要素の平面図を示す。
【図6】本発明による他のセキュリティ要素の平面図を示す。
【図7】図6のセキュリティ要素の非実寸の部分断面図を示す。
【図8】本発明の他のセキュリティ要素の非実寸の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、紙幣であるセキュリティ文書1の平面図を示す。しかしながら、セキュリティ要素1は、小切手、トラベラーズチェック、ソフトウエア許可証、身分証等であってもよい。
【0047】
セキュリティ文書1は、キャリア基質10と、キャリア基質10に適応されるフィルム要素11とを有する。キャリア基質10は、紙材料からなる。紙材料は、紙幣に用いられ、公知の方法で透かし模様、特別な押印、およびさらなるセキュリティ要素を与えることができる紙品質であることが好ましい。そのようなさらなるセキュリティ要素は、例えばスティール凹印刷、極小プリント、または、例えばホログラムなどの反射セキュリティ特性、およびカラー変化要素からなる。
【0048】
紙材料からなるキャリア基質は、約100μmの厚さが好ましい。さらに、一つ以上の紙および/またはプラスティック材料層部分からなる多層基質をキャリア基質として用い、または、全てプラスティック材料基質からなるキャリア基質をキャリア基質として用いることもできる。
【0049】
図1に示すように、キャリア基質は、窓状の開口12を有する。この窓状の開口は、フィルム要素11の領域においてどのような配置および形状で配置されてもよい。多数の窓状の開口12をフィルム要素11の領域に配置してもよい。窓状の開口12は、フィルム11の適用前に、スタンプまたは切削工程により、キャリア基質10に形成されるのが好ましい。キャリア基質は、特にキャリア基質10がプラスティック材料基質または紙とプラスティック材料基質との組み合わせの場合に、窓状の開口12を有するのではなく、図1に示すような窓形状の開口の領域が透明な構造であってもよい。
【0050】
フィルム要素11は、ストライプ形状または針形状の形態であるのが好ましく、4〜30mmの範囲のストライプ幅であるのが好ましい。この場合、フィルム要素11は、キャリア基質10の全幅または長さに渡り横に延び、製造技術の観点からフィルム要素11の適用が簡単である。
【0051】
図2に、フィルム要素11の構造の詳細を示す。図2は、窓形状の開口12の領域におけるセキュリティ要素1の断面図を示す。図2に示すように、フィルム要素11は、キャリアフィルム12、部分的な金属反射層13、および保護ラッカー層および/または接着剤下塗層14を有している。フィルム要素11は、図4に示すように、さらなる層を有してもよい。
【0052】
キャリアフィルム12は、10〜50μmの層厚のPETまたはBOPPフィルムである。キャリアフィルム12の機能は、開口を跨ぐための必要安定性を備えることであり、キャリアフィルム12の好ましい選択は、開口12の幅および長さの寸法により実質的に決定される。この場合、キャリアフィルム12は、少なくとも10μm、好ましくは10〜24μmの層厚のプラスティック材料フィルムにより形成されるのが好ましい。
【0053】
金属反射層13は、例えばアルミニウム、クロム、銅、金または銀、またはこれらの材料の合金からなり、蒸着またはスパッタにより適用されるのが好ましい。金属反射層13の層厚は、観察者に不透明に見えるように、20nm〜100nmであるのが好ましい。窓状の開口領域内に配置される領域20において、フィルム要素11は透明または半透明である。金属反射層13は、領域20においては部分的な構造であり、多数の第一のゾーン21の領域においてのみ備えられている。従って、領域20は、多数の第一のゾーン21と第二のゾーン22とに分割され、金属反射層は第一のゾーン21に備えられ、金属反射層は第二のゾーン22には備えられない。従って、ゾーン22においては、金属は、例えばポジ/ネガエッチング、洗浄マスク、またはレーザーアブレーションによる除金属化により、例えば後に除去される。金属は、蒸着マスクにより、第一のゾーン21にのみ適用され、第二のゾーン22には適用されなくすることもできる。
【0054】
さらに、窓状の開口12の領域に備えられる領域20に加えて、領域20に重ならず、さらなるセキュリティ要素、特に透過性セキュリティ要素が存在する、さらなる領域が存在する。これらの他の領域には、反射層13は備えられなくてもよく、全表面領域に渡り備えられてもよく、または、領域20とは異なって構成されてもよい。領域20は、所与の情報アイテムを提示する構造の形態、例えば数字、文字、シンボルの形態で形成することができる。
【0055】
図3に、領域20における金属反射層13の構造の詳細を示す。図3は、領域20における金属反射層の一部の非実寸の平面図を示す。図3に示すように、金属層が備えられた第一のゾーン21と第二のゾーン22とが交互し、第一のゾーン21が第二のゾーン22に続き、第二のゾーン22が第一のゾーン21に続く。連続する第一のゾーン21の重心は、互いに300μm以下の間隔で配置され、図3の実施形態では、互いに約100μmの間隔である。図3に示すように、この場合、第一のゾーンは、ストライプ形状の構造であり、互いに実質的に平行に配置されている。第一のゾーンおよび第二のゾーンの長手方向軸は、第一座標軸が長手方向軸に規定され第二座標軸がそれに直角である座標系の第一座標軸の方向に配置される。さらに、図3に示すように、第一のゾーン21の重心は、第一座標軸に沿って、第二座標軸方向に規則正しく間隔を隔てている。
【0056】
さらに、背景領域24により全体にまたは部分的に囲まれるパターン領域23が存在し、図3に非実寸で示すように、連続する第二の領域の間隔が、背景領域24における連続する第二の領域の間隔に対して、5〜30%異なるように選択される。従って、図3の実施形態において、背景領域24における第一のゾーン21の幅は60μmであり、背景領域23においては格子ラスター100μmで80μmである。パターン領域は、シンボル(ユーロ)の形状である。セキュリティ要素1が透過光モードで観察される場合、パターン領域23の構造で規定される情報アイテムが、領域22において提示され、従って、明るい背景に対して、非常に暗い影、ここではシンボル(ユーロ)、で示されるシンボルが存在する。セキュリティ要素1が入射光モードで観察される場合、その印象は再び消える。
【0057】
前述したように、第一のゾーンの重心が例えば波線形態でまたは同心円形態で配置されるように、第一のゾーンの重心は、幾何学的に変換された座標系に配置されてもよい。第一のゾーン21の互いの間隔は、透過光モードで観察される場合に、均一な光の背景に対して(ユーロ)が見えるように、実質的に一定に維持されるのが好ましい。しかしながら、第一のゾーン21の互いの間隔は、第一のゾーンの全幅に渡ってまたは部分的に変化してもよく、従って、情報の第一のアイテムは、反射光モードおよび透過光モードにおいて、情報の第二のアイテム、例えば対応するグレースケールイメージに重ね合わせられる。さらに、第一のゾーン21および第二のゾーン22は、第一の方向およびそれとは異なる第二の方向に交互しても良い。この場合、第一のゾーンは、第一座標軸方向および第二座標軸方向双方において交互するのが好ましい。
【0058】
図4に、本発明のさらなる実施形態を示す。図4は、ラミネーションフィルムのセキュリティ要素3を示す。このラミネーションフィルムは、セキュリティ文書のキャリア基質への適用に対して、例えばフィルム要素11のようなフィルム要素として用いることができ、または、個々に剥離されていないフィルム層の部位に相当してもよい。
【0059】
セキュリティ要素3は、キャリアフィルム31、加飾層32、複製層33、金属反射層34、加飾層35、保護ラッカー層36、および接着層37を有する。キャリアフィルム31は、12μmの層厚のPETフィルムである。加飾層32は、セキュリティ要素3の領域54において部分的にのみ備えられる。この領域では、加飾層32は、観察者に観察される場合、視角に依存するカラー変化効果を示す、薄膜層システムを含む。この薄膜層システムは、交互の高屈折―低屈折層を多数含むのが好ましく、層厚は、可視光スペクトルにおける一つ以上の波長に対してそれぞれλ/2またはλ/4を満たすようにそれぞれ選択される(λ=光の波長;光学密度、すなわち各媒体の屈折率を乗じた幾何学的密度が、それぞれλ/2またはλ/4条件を満たす)。さらに、この条件を満たし、キャリアフィルム31の方向で、例えば10%吸収作用で、好ましくは金属層の形態の吸収層に好ましくは接する、単一の光学スペーサー層を用いてもよい。
【0060】
複製層33は、0.5〜5μmの層厚で、熱複製層またはUV複製層からなる。図3に示すように、熱/圧力による熱複製またはUV複製により、複製層33における領域52において、表面構造が形成される。表面構造43は、等方性または異方性のマット構造であるのが好ましい。しかしながら、表面構造は、他の回折構造、例えばキネグラム(登録商標)、ホログラム、キノフォルムまたは0次回折構造であってもよい。表面構造は、線形または交差正弦格子またはブレーズ格子、レンズ様構造、マクロ構造、または前述した構造の組み合わせであってもよい。
【0061】
金属反射層34は、複製層33に適用されている。この場合、図4に示すように、金属反射層34は、領域40において、第一のゾーン41にのみ部分的に備えられ、第二のゾーン42には備えられていない。金属反射層34は、20nm〜100nmの層厚であり、入射光モードで観察される場合、観察者には不透明に見える。第一のゾーン41および第二のゾーン42の配置および構造は、この場合、図3の実施形態における第一のゾーン21と第二のゾーン22の配置と同様に選択される。シンボル(ユーロ)形態に形成されたパターン領域23の代わりに、パターン領域51が十字の形態で形成され、前述したように、連続する第二のゾーン42の間隔は、背景領域における連続する第二のゾーン42の間隔に対して5〜30%異なるように選択され、すなわち、パターン領域の透過率が、背景領域に対して増減可能である。図4の図は、領域40、51、53、52および54における第一のゾーン41および第二のゾーン42の特に数に関して実数ではなく、すなわち、それらの領域では、図4に示すよりも非常に多くのゾーン41および42が存在する。
【0062】
加飾層35は、金属反射層34に部分的に適用される。この場合、加飾層35は、領域53によりカバーされる第一のゾーン41にのみ、すなわち、図4に示す領域45にのみ備えられる。このため、加飾層35は、領域45においてのみ金属層34に適用される。加飾層35は、例えば印刷により、領域53における全表面領域に渡って金属層34に適用され、ゾーン42において、好ましくはゾーン42における金属反射層34の領域と共に、部分的に削除されてもよい。
【0063】
加飾層35は、好ましくは2μm〜3μmの層厚の、カラーラッカー層である。しかしながら、加飾層35は、薄膜層システムまたは架橋コレスティック液晶層または可変色素を有する層であってもよい。従って、加飾層35は、例えば液晶色素または薄膜層色素、発光またはサーモクロミック色素を含むことができる。
【0064】
保護ラッカー層36は、約1〜5μmの厚さである。この層は、省いてもよい。接着層37は、熱活性接着剤からなり、1〜5μmの厚さであることが好ましい。保護ラッカー層36は、UV活性接着剤または低温接着剤でもよい。接着層37は、省いてもよい。セキュリティ要素3は、加飾層32および35のようなさらなる加飾層を有してもよく、あるいは他のさらなる層を含んでもよい。セキュリティ要素の層31は、セキュリティ要素3の領域40における観察者に対し、透明または半透明の印象を与えるような性質である。これは、セキュリティ要素3の全ての層は、領域40における観察者に対して、透明または半透明であることを意味する。
【0065】
セキュリティ要素3が観察者に観察される場合、以下の情報アイテムが観察状況に応じて提示される。
【0066】
セキュリティ要素3が、入射光モードで、キャリアフィルム31の側から観察される場合、加飾層32の薄膜層システムにより生じるカラー変化効果が領域54で示される。従って、観察者には、領域54の構造で設定される第一の情報アイテムと、薄膜層システムで規定されるカラー変化効果が提示される。
【0067】
領域52において、表面構造43により設定される、例えば周囲の背景に対して非常に明確に際立つ金属的マット外観のような光学効果が存在する。従って、観察者には、領域52の構造および表面構造43により設定される第二の情報アイテムが提示される。
【0068】
セキュリティ要素3が、接着層37の側から観察者に観察される場合、加飾層37により生じる光学効果が領域53で示される。加飾層35としてカラーラッカー層が用いられる場合、領域53は、その色の配色によって、周囲領域と異なる。用いられる加飾層35が、薄膜層または光学的可変色素を含むラッカー層である場合、対応するカラー変化効果が、領域53に示される。これにより、領域53の構造と加飾層35の材料とにより設定される第三の情報アイテムが観察者に示される。さらに、接着層37の側から観察される場合、加飾層32の薄膜層システムにより生じる光学的印象、すなわち第一の情報アイテムが、領域54で示される。
【0069】
透過光モードで観察される場合、領域51は周囲領域よりもより暗く/明るく見える。従って、透過光モードでは、観察者には、パターン領域51の構造により設定される第四の情報アイテムが提示される。さらに、透過光モードで観察する場合、観察者には、領域52において、表面構造43により生じる光学効果が、減衰形態で、付加的に提示され得る。これは、領域52によりカバーされる第一のゾーン41の領域にのみ表面構造43を形成することにより回避することができる。
【0070】
従って、前述したように、セキュリティ要素3は、観察者に、それぞれの観察状況に応じて、異なる情報アイテムを提供し、セキュリティ要素3は、模倣が困難な、明確に認識可能なセキュリティ特性を提供する。
【0071】
本発明のさらなる実施形態を、以降、図6および7とともに説明する。図6は、例えば紙幣のような有価文書であるセキュリティ文書6の一部の平面図を示す。図7は、セキュリティ文書6の一部の非実寸の断面図を示す。
【0072】
セキュリティ文書6は、キャリア基質60と、キャリア基質60に適用されるフィルム要素61とを有する。セキュリティ文書6の構造とキャリア基質60に用いられる材料の選択に関しては、図1に付す説明に注目されたい。フィルム要素61は、ストライプ形状であるのが好ましく、4〜30mmの範囲のストライプ幅であるのが好ましい。フィルム要素61は、パターンフォームで形成される多数のサブ領域75および76と、これらの領域を囲む背景領域77とを同様に含む、第一の領域73および第二の領域74を有する。キャリア基質60は、図1のキャリア基質10と同様に、フィルム要素61を表側および開口を通じて裏側から見ることができる、窓形状の開口または対応する透明領域を有する。フィルム要素61は、フィルム要素73の第一の領域がセキュリティ文書60の表側および裏側双方から見ることができるように、フィルム要素61の第一の領域73が窓形状の開口の領域またはキャリア基質60の透明領域に配置されるように、キャリア基質60に配置される。フィルム要素61は、さらに、透過光モードにおいて観察者に透明または半透明に見え、入射光モードおよび透過光モードにおいて異なる光学的外観が示される構造である。図7に示すように、フィルム要素61は、窓形状の開口の領域に備えられる。フィルム要素61は、透明なキャリアフィルム62、複製層63、金属反射層64、および保護ラッカー層66を有する。この場合、第二の領域73では、金属反射層64を除く、フィルム要素61の全ての層が、透過光モードにおいて透明または半透明の印象を与えるために、透明材料で構成される。
【0073】
これらの層の構造に関しては、図1、2および4に示す対応する層に関する説明に注目されたい。
【0074】
金属反射層64は、領域73において部分的に備えられ、多数の第一のゾーン71の領域にのみ備えられる。従って、領域73は、多数の第一のゾーン71および第二のゾーン72に分割され、金属反射層は第一のゾーン71に備えられ、金属反射層は第二のゾーン72には備えられない。第一のゾーン71および第二のゾーン72は、図7に示すように、交互に備えられる。さらに、領域73は、パターン領域78と、パターン領域78を少なくとも部分的に囲む背景領域79とに分割される。領域73内の各第一および第二のゾーンは、300μm以下の最小寸法であり、第一および第二のゾーンの配置と形成は、パターン領域78の全表面領域に対する第一のゾーン71の表面領域比が、背景領域79の全表面領域に対する第一のゾーン71の表面領域比と5〜30%異なるように選択される。さらに、表面構造67が、第一の領域73内の複製層63において、第一のゾーンに占められる、少なくとも背景領域79およびパターン領域78の表面の一部に形成され、複製層63に適用される金属反射層64においても同様に形成される。表面構造67は、フィルム要素61により規定される平面の鏡面反射により、少なくとも部分的に入射光を屈折させる。
【0075】
金属反射層64の構造は、特に、図2、4および4に示す金属反射層13および34の構造と同様に行われる。さらに、本実施形態でさらに備えられた表面構造67により、フィルム要素61の製造において、さらに金属反射層63の構造変化を行うことができる。従って、第一のゾーン71が線形態に形成されず、線格子ラスターで整列しない状態も可能である。しかしながら、この場合、連続する第一のゾーン71の重心は、互いに300μm以下の間隔、特に100μm以下の間隔であることが好ましい。さらに、第一のゾーン71の最小だけでなく最大の大きさが、300μm以下、さらに200μm以下であることが好ましい。2次元、変換格子ラスターベースの第一のゾーン71の配列が可能であり、第一のゾーン71のランダムまたは擬似ランダム配列と同様に、干渉効果をさらに避けることができる。ここに図示する実施形態では、パターン領域78における大きさ300μm*300μmに対する第一のゾーンによる平均表面被覆率は、40〜70%の範囲であり、背景領域では60〜90%であるのが好ましく、さらに、パターン領域78および背景領域79における第一のゾーンによる最小平均表面被覆率は、5〜30%、好ましくは5〜20%異なり、パターン領域78および背景領域79における第一のゾーンによる最大平均表面被覆率は、5〜30%、好ましくは15〜30%異なる。
【0076】
表面構造67は、格子線について部分的に異なる空間周波数と配置を有する回折表面構造である。表面構造67は、キネグラム(登録商標)であるのが好ましい。図7に示すように、表面構造76は、第一の領域73の全表面には備えられておらず、第一のゾーン71を占有する。表面構造67による第一のゾーン71の完全な占有も可能である。表面構造67は、第一の領域72内で、第一のゾーン71により占有される表面領域の少なくとも50%において反射層64に形成され、この場合、背景領域内で、第一のゾーンにより占有される表面の少なくとも30%と、パターン領域内で、第一のゾーンにより占有される表面の少なくとも30%とにおいて形成されるのが好ましい。表面構造67が第一のゾーン71に形成される反射層64の領域の表面領域比は、背景領域およびパターン領域と同等あるいは多くて20%の差であることが好ましい。さらに、パターン領域および背景領域の出来る限り均一な表面被覆率は、特に、それぞれ第一のゾーン71を備えたパターン領域78および背景領域79の被覆率とに依らずに、表面構造67が反射層に形成される第一のゾーンの領域により達成されるべき目標である。好ましくは大きさ300μm*300μmに対するそれらの領域による平均表面被覆率は、多くて30%であるべきである。
【0077】
図6および7に示すように、第二の領域74は、それぞれ異なって形成される多数の第一のサブ領域75および第二のサブ領域76とを有する。この場合、サブ領域75および76は、それぞれ0.1〜10mmの大きさが好ましい。サブ領域75および76では、表面構造67として、異なる表面構造が反射層64に形成され、サブ領域75および76は、それぞれ異なる、好ましくは光学可変印象を与える。従って、図6の実施形態では、異なる回折構造が、サブ領域75および76に形成される。しかしながら、サブ領域75および76に形成される構造は、マット構造、回折構造、非対称構造、およびレンズ構造から選択され、またはそれらの構造の組み合わせにより形成されてもよい。従って、例えば、表面構造は、サブ領域75および76において、異なるタイプの構造、例えばサブ領域75ではマット構造で、サブ領域76では光学可変効果を示すキネグラム(登録商標)で形成されてもよい。図6および7の実施形態では、サブ領域75および76を囲む背景領域77は、表面構造77により占有されていない。しかしながら、背景領域77において、サブ領域75および76に形成される表面構造とは異なる上述した表面構造の一つを反射層64に形成してもよい。さらに、サブ領域75および76に加えて、領域74において、サブ領域75および76に形成される表面構造とは異なるさらなる表面構造が形成されるさらなるサブ領域を備えてもよい。
【0078】
さらに、サブ領域75および76において、同じ表面構造を反射層64に形成し、背景領域77において、表面構造を反射層64に形成せず、またはその表面構造とは異なる表面構造を反射層64に形成してもよい。従って、サブ領域75および76の周辺エッジは、背景領域77に対して際立ち、観察者により、異なる光学可変情報アイテムとして認識され得る。
【0079】
図6に示すように、サブ領域75および76は、領域73を完全にカバーする均一な反復パターンで配置される。この反復配置およびそれにより生じる観察者への影響は、入射光モードで観察される場合、第一の情報アイテムを特によく覆い隠す。
【0080】
従って、入射光モードでセキュリティ文書6を表面から観察する場合、図6に示す光学可変外観を示す比較的簡単な反復パターンが、領域74全てに提示される。透過光モードの場合、パターン領域78の構造の形態で提供される情報アイテム、例えば、明るい背景に対する人の頭部の複合イメージ、またはその逆が、観察者に対し領域73で提示される。
【0081】
図6および7で前述した実施形態は、図4および5に示す実施形態と組み合わせてもよく、従って、文書を入射光モードおよび透過光モードで異なる面から観察した場合に、さらに異なる、好ましくは重複する情報アイテムを提示するために、図7に示す層のほかに、図4に示すさらなる層を有してもよい。
【0082】
図6および7の実施形態、図1〜3の実施形態、および図4および5の実施形態は、図8に付して後述するように設計されてもよい。
【0083】
図8は、透明なキャリアフィルム81、接着下塗層、剥離層または透明な加飾層82、第一の複製層83、第一の金属反射層84、第二の複製層85、第二の金属反射層86および保護ラッカー層89を有する、フィルム体の形態のセキュリティ要素8を示す。これらの層の構造に関しては、図1〜7に付した説明を注目されたい。前述した反射層84および86は、反射層が備えられる第一のゾーン91と、反射層が備えられない第二のゾーン92とに分割される。反射層84および86は、それぞれ、第一のゾーン91では合致関係で備えられ、第二のゾ−ンでは備えられない。背景領域およびパターン領域における第一のゾーン91の形成に関しては、図1〜7に関する前述説明を注目されたい。さらに、第一の反射層84における第一の表面構造87および第二の反射層86における第二の表面構造88が、図8に例示するように、少なくとも部分的に第一のゾーン91に形成される。表面構造87および88の選択とこれらの表面構造に占有される領域の形成に関しては、特に図7に付した前述説明を注目されたい。
【0084】
セキュリティ文書8が入射光モードで第一の面101から観察される場合、表面構造87により形成される光学情報が提示される。セキュリティ文書8が入射光モードで第二の面102から観察される場合、表面構造88により形成される光学情報、例えば図6に示される像が提示される。セキュリティ文書8が透過光モードで観察される場合、パターン領域の構造により設定される光学情報、例えば人の頭部像が、第一の面101および第二の面102双方から観察される場合に提示される。
【符号の説明】
【0085】
1、3、6、8 セキュリティ要素
10、60 キャリア基質
11、61 フィルム要素
12 開口
13、34 金属反射層
14 接着剤塗布層
20、40、45、52、54 領域
21、41、71、91 第一のゾーン
22、42、72、92 第二のゾーン
23、51、78 パターン領域
24、79 背景領域
31、81 キャリアフィルム
32、35 加飾層
33、63 複製層
36 保護ラッカー層
37 接着層
43、67、68 表面構造
62、81 キャリアフィルム
64 金属反射層
66 保護ラッカー層
73 第一の領域
74 第二の領域
75、76 サブ領域
82 加飾層
83 第一の複製層
84 第一の金属反射層
85 第二の複製層
86 第二の金属反射層
87 第一の表面構造
88 第二の表面構造
89 保護ラッカー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入斜光モードおよび透過光モードでの観察に対する多層フィルム体の形態のセキュリティ要素(1、3)であって、前記セキュリティ要素(1、3)は、透過光モードで観察者に対して透明または半透明な第一の領域(20、40)において、キャリアフィルム(12、31)と部分的な金属反射層(13、34)とを有し、
前記第一の領域(20、40)において、前記金属反射層が備えられる第一のゾーン(21、41)と、前記金属反射層が備えられない第二のゾーン(22、42)とが、連続する第一のゾーン(21、41)の重心間隔が300μm以下で交互に配置され、前記第一の領域(20、40)が、300μmより大きい大きさの少なくとも一つのパターン領域(23)と、前記パターン領域(23)に隣接し、少なくとも部分的に前記パターン領域(23)を囲む背景領域(24)とを有し、前記パターン領域において連続する第二のゾーン(22、42)の間隔が、前記背景領域(24)において連続する第二のゾーン(22、42)の間隔に対して5〜30%異なり、前記パターン領域(23)の形成により設定される情報アイテムが、透過光モードにおいて、観察者に対して可視化されること、
を特徴とするセキュリティ要素(1、3)。
【請求項2】
前記第一のゾーン(21、41)が、線形状またはストライプ形状の構造であること、
を特徴とする請求項1に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項3】
前記第一のゾーン(21、41)の幅が200μm以下であり、前記第一のゾーン(21)の長さが1000μmより大きいこと、
を特徴とする請求項2に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項4】
前記第一のゾーン(21、41)の幅が、10μm〜100μm、好ましくは20μm〜60μmであること、
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項5】
前記第一の領域(20、40)において、前記第一のゾーン(21、41)の全表面領域が、前記第一および第二のゾーン(21、22;41、42)の全領域の50%以下、好ましくは10%以下の領域比を占めること、
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項6】
前記第一のゾーン(21、41)が、実質的に互いに平行に配置され、前記第一のゾーンの縦軸が、第一の領域(20、40)において第一の座標軸とそれとは異なる第二の座標軸とで規定される座標系の第一の座標軸の方向に配置されること、
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項7】
第一のゾーン(21、41)が、パターン領域(23)と背景領域(24)との間の境界を越えて延び、前記各第一のゾーンが前記パターン領域および前記背景領域の双方に備えられること、
を特徴とする請求項6に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項8】
第一のゾーンが、前記第一の座標軸方向において、前記第一の領域(20)の全表面範囲を越えて延びること、
を特徴とする請求項7に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項9】
前記第一のゾーン(21、41)の重心線が、前記第二の座標軸方向において、前記第一の座標軸に沿って実質的に一定間隔であること、
を特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項10】
前記第一のゾーンの重心線が、第二の情報アイテムを定める情報アイテムに従って、前記第二の座標軸方向において、前記第一の座標軸に沿って変化すること、
を特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項11】
前記第一のゾーンの重心線が、前記第二の座標軸方向において、互いに30μm〜40μmの間隔であること、
を特徴とする請求項9または10に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項12】
前記パターン領域(23)における前記第一のゾーン(21、41)の幅と、前記背景領域(24)における前記第一のゾーンの幅とが、10〜30%、好ましくは15〜25%異なること、
を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項13】
前記第一のゾーン(21、41)において、第一の表面構造、特に等方性または異方性マット構造が、前記反射層の表面に形成されること、
を特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項14】
入斜光モードおよび透過光モードでの観察に対する多層フィルム体の形態のセキュリティ要素(6、8)であって、前記セキュリティ要素(6、8)は、透過光モードで観察者に対して透明または半透明な第一の領域(73)において、キャリアフィルム(62、81)および部分的な金属反射層(64、84、86)を有し、
前記金属反射層が備えられる第一のゾーン(71、91)と、前記金属反射層が備えられない第二のゾーン(72、92)とが、前記第一の領域(73)において交互に備えられ、前記第一の領域(73)内の前記第一および第二のゾーン(71、91;72、92)それぞれが、300μm以下の最小寸法であり、前記第一の領域(73)は、大きさが300μmより大きい少なくとも一つのパターン領域(78)と、前記パターン領域に隣接し少なくとも部分的に前記パターン領域を囲む少なくとも一つの背景領域(79)とを有し、前記第一の領域(73)内で、前記第一のゾーン(71、91)に占有される前記背景領域および前記パターン領域の少なくとも部分的な領域において、フィルム体に規定される平面の鏡面反射により少なくとも部分的に入射光を反射する第一の表面構造(67、87)が前記反射層(64、84)に形成され、各パターン領域(78)の全表面領域に対する前記第一のゾーン(71、91)の表面領域比が、各背景領域(79)の全表面領域に対する前記第一のゾーン(71、91)の表面領域比と5〜30%異なり、前記パターン領域(78)の形成により設定される第一の情報アイテムが、透過光モードにおいて、観察者に対して可視化されること、
を特徴とするセキュリティ要素(6、8)。
【請求項15】
連続する第一のゾーンの重心が、少なくとも一方向において、互いに300μm以下の間隔であること、
を特徴とする請求項14に記載のセキュリティ要素(6、8)。
【請求項16】
連続する第一のゾーン(71、91)の重心が、前記第一の領域(73)において規定される座標系の第一の座標軸の方向およびそれとは異なる第二の座標軸の方向において、互いに300μm以下の間隔であること、
を特徴とする請求項15に記載のセキュリティ要素(6、8)。
【請求項17】
前記第一のゾーン(71、91)の前記重心が、前記第一の領域(73)における前記第一の座標軸方向および前記第二の座標軸方向において、一定間隔であること、
を特徴とする請求項16に記載のセキュリティ要素。
【請求項18】
前記パターン領域(78)および前記背景領域(79)における前記第一のゾーン(71、91)の前記重心間隔が、少なくとも一方向において異なること、
を特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項19】
各パターン領域(78)の300μm×300μmの大きさに対する前記第一のゾーン(71、91)による最小および最大平均表面被覆率が、各背景領域(79)の300μm×300μmの大きさに対する前記第一のゾーン(71、91)による最小および最大平均表面被覆率と、各場合で5〜30%異なること、
を特徴とする請求項14〜18のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(6、8)。
【請求項20】
前記パターン領域および/または前記背景領域における300μm×300μmの大きさに対する前記第一のゾーン(71、91)による平均表面被覆率が、それぞれ一定であること、
を特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(6、8)。
【請求項21】
前記パターン領域および/または前記背景領域における300μm×300μmの大きさに対する前記第一のゾーンによる平均表面被覆率が、第二の情報アイテムを生じるために変化すること、
を特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項22】
前記パターン領域(78)において、前記第一のゾーン(71、91)の全表面領域が、前記パターン領域(78)の全表面領域に対して、40%以下、好ましくは5%〜30%の表面領域比を占めること、
を特徴とする請求項14〜21のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(6、8)。
【請求項23】
前記第一の領域(52、54、73)内の前記第一の表面構造(43、67、87)が、前記第一のゾーン(21、41、71、91)に占有される少なくとも50%の表面領域において、前記反射層(13、34、64、84)に形成されること、
を特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3、6、8)。
【請求項24】
前記背景領域および前記パターン領域内の前記第一の表面構造(43、67、87)が、前記第一のゾーンに占有される、前記背景領域および前記パターン領域それぞれの少なくとも30%の表面領域において、それぞれ前記反射層(13、34、64、84)に形成されること、
を特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3、6、8)。
【請求項25】
前記第一の表面構造が前記第一のゾーンに形成される前記反射層の領域の表面領域比が、前記背景領域および前記パターン領域において、最大20%異なること、
を特徴とする請求項13〜24のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項26】
前記第一の表面構造が前記反射層に形成される第一のゾーンによる前記パターン領域および前記背景領域の平均表面被覆率が、300μm×300μmの大きさに対して、最大30%異なり、好ましくは一定であること、
を特徴とする請求項13〜25のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項27】
前記第一の表面構造(43、67、87)が、等方性または異方性マット構造、レンズ構造、回折構造、特に線形または交差回折格子のグループから選択され、またはこのグループの表面構造の組み合わせに相当すること、
を特徴とする請求項13〜26のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3、6、8)。
【請求項28】
入射光モードにおける前記第一の表面構造が、透過光モードにおいて前記第一の情報アイテムが見える領域を少なくとも部分的にカバーする領域において、第四の情報アイテムを提示すること、
を特徴とする請求項13〜27のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項29】
前記第一の表面構造(67)が、前記第一の領域(73)を少なくとも部分的にカバーする第二の領域(74)において備えられること、
を特徴とする請求項13〜28のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(6)。
【請求項30】
前記第二の領域(74)が、前記第一の領域(73)を越えて突出すること、
を特徴とする請求項29に記載のセキュリティ要素(6)。
【請求項31】
前記第二の領域が、第四の情報アイテムを提示するためにパターン形態で形成され得ること、
を特徴とする請求項13〜30のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項32】
前記第二の領域が、前記第一の表面構造(76)として、異なる表面構造が前記反射層に形成される、2つ以上のサブ領域(75、76)を有すること、
を特徴とする請求項29〜31のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(6)。
【請求項33】
前記サブ領域(75、76)がパターン形態で形成され、それぞれ300μmより大きい大きさであり、前記第四の情報アイテムの少なくとも一部が、前記サブ領域のパターン形成により提示されること、
を特徴とする請求項32に記載のセキュリティ要素(6)。
【請求項34】
前記第二の領域(74)が、多数の均一な形状の第一のサブ領域(75)と、多数の均一な形状の第二のサブ領域(76)とを有し、前記第一のサブ領域(75)および前記第二のサブ領域(76)とにおいて異なる表面構造が前記反射層(64)に形成され、および/または前記第一のサブ領域(75)および前記第二のサブ領域が異なる構造を含み、前記第一および第二のサブ領域および任意のさらなるサブ領域が、反復パターンの形態で配置されること、
を特徴とする請求項13〜33のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(6)。
【請求項35】
前記反復パターンが、少なくとも部分的におよび好ましくは完全に、前記パターン領域(78)および前記背景領域(79)をそれぞれカバーすること、
を特徴とする請求項34に記載のセキュリティ要素(6)。
【請求項36】
前記第一および第二のサブ領域(75,76)が、1または2次元格子ラスターに対して整列していること、
を特徴とする請求項34または35に記載のセキュリティ要素(6)。
【請求項37】
前記セキュリティ要素(8)が、前記金属反射層(84)とは間隔をおくさらなる部分的な金属反射層(86)を有し、さらなる前記金属反射層(86)は、前記第一のゾーン(91)において前記第一の金属反射層(84)と合致して備えられるとともに前記第二のゾーン(94)においては備えられず、第二の表面構造(88)がさらなる前記金属反射層の表面に形成されること、
を特徴とする請求項13〜36のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項38】
前記第一の表面構造(84)が第四の情報アイテムを提示し、前記第二の表面構造(86)が前記第四の情報アイテムとは異なる第五の情報アイテムを提示し、入射光モードで前記反射層(84)の側(101)から観察する場合に、前記第四の情報アイテムが可視化され、さらなる前記反射層(86)の側(102)から観察する場合に、前記第五の情報アイテムが可視化され、透過光モードで観察する場合に、前記第一の情報アイテムが可視化されること、
を特徴とする請求項37に記載のセキュリティ要素(8)。
【請求項39】
前記第二の表面構造が、請求項23〜26のいずれか1項に記載の前記第一の表面構造と同様に設計され、または、前記第一および第二の領域にそれぞれ備えられること、
を特徴とする請求項37または38に記載のセキュリティ要素。
【請求項40】
前記第一の領域(40)内に配置される第二の領域(52、54)において、第一の表面構造(43)が前記セキュリティ要素の複製層(33)に形成され、または、第一の加飾層(32)が前記セキュリティ要素に備えられ、第四の情報アイテムを提示すること、
を特徴とする請求項1〜39のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項41】
前記複製層(33)または前記第一の加飾層(32)が、前記金属反射層(34)と前記セキュリティ要素の第一の表面との間に配置され、前記第一の領域(40)内に配置される第三の領域(53)において、第二の表面構造が前記セキュリティ要素の複製層に形成され、または、第二の加飾層(35)が前記セキュリティ要素に形成されて、第五の情報アイテム(53)を提示し、前記複製層または前記第二の加飾層(35)が、前記金属反射層(34)と前記セキュリティ要素の第二の表面との間に配置され、入射光モードで前記第一の表面の側から観察する場合に、前記第四の情報アイテムを見ることができ、入射光モードで前記第二の表面の側から観察する場合に、前記第五の情報アイテムを見ることができること、
を特徴とする請求項40に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項42】
前記第一および/または第二の表面構造、または、前記第一および/または第二の加飾層が、前記第二または前記第三の領域によりそれぞれカバーされる前記第一のゾーンに形成されまたは備えられるとともに、前記第二または前記第三の領域によりそれぞれカバーされる前記第一のゾーンには形成されずまたは備えられないこと、
を特徴とする請求項40または41に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項43】
前記第一の表面構造または前記第一の加飾層が、前記第二の領域によりカバーされる前記第二のゾーンに形成されまたは備えられるとともに、前記第二の領域によりカバーされる前記第一のゾーンには形成されずまたは備えられず、透過光モードにおいて、前記第四の情報アイテムを見ることができること、
を特徴とする請求項40に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項44】
前記第一の表面構造または前記第一の加飾層が、前記第二の領域によりカバーされる前記第二のゾーンに形成されまたは備えられるとともに、前記第一の領域内に配置される第三の領域において、第二の表面構造が、前記セキュリティ要素の複製層に形成され、または、第二の加飾層が、前記セキュリティ要素に備えられて、第五の情報アイテムを提示し、前記複製層または前記第二の加飾層が、前記金属反射層と前記セキュリティ要素の第二の表面との間に配置され、入射光モードで前記第二の表面の側から観察する場合に、前記第五の情報アイテムを見ることができ、透過光モードで観察する場合に、前記第四の情報アイテムを見ることができること、
を特徴とする請求項40または43に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項45】
前記第一の領域内に配置される第四の領域において、第三の表面構造が、前記セキュリティ要素の複製層に形成され、または、第三の加飾層が、前記セキュリティ要素に備えられて、第六の情報アイテムを提示し、前記複製層または前記第三の加飾層が前記金属反射層と前記セキュリティ要素の第一の表面との間に配置され、入射光モードで前記第一の表面の側から観察する場合に、前記第五の情報アイテムを見ることができ、入射光モードで前記第二の表面の側から観察する場合に、前記第六の情報アイテムを見ることができること、
を特徴とする請求項44に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項46】
前記第二、第三、および/または第四の領域が、前記パターン領域と重なること、
を特徴とする請求項40〜45のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項47】
前記第二の領域が前記第三の領域と重なり、前記第三の領域が前記第四の領域と重なり、または、前記第二、第三、および第四の領域が重なること、
を特徴とする請求項40〜46のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項48】
前記第一、第二および第三の表面構造が、マット構造、回折構造またはマクロ構造のグループから選択される表面構造であること、
を特徴とする請求項40〜4748のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項49】
前記第一、第二および第三の加飾層が、薄膜層システム、液晶層、および/または光学可変色素を含む層であること、
を特徴とする請求項40〜48のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項50】
一つ以上の前記第一のゾーンが、マクロ構造化され、第三の情報アイテムを提示すること、
を特徴とする請求項1〜49のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項51】
前記セキュリティ要素(1)が、セキュリティ文書であること、
を特徴とする請求項1〜50のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項52】
前記セキュリティ要素が、特に紙基質を含むキャリア基質(10)を有し、前記第一の領域(20)において、窓形状の開口(12)が前記キャリア基質(10)に形成されること、
を特徴とする請求項51に記載のセキュリティ要素(1、3)。
【請求項53】
前記キャリアフィルム(12)がストライプの形態であり、前記窓形状の開口(12)が少なくとも前記ストライプの長手軸方向において両側に突出すること、
を特徴とする請求項51に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項54】
前記セキュリティ要素(3)が、ラミネーションフィルムであること、
を特徴とする請求項1〜50のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(3)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−517820(P2010−517820A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548623(P2009−548623)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000941
【国際公開番号】WO2008/095706
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(507370644)レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー (21)
【Fターム(参考)】