説明

セグメント式ステータ及びその製造方法

【課題】 導体セグメント同士の絶縁を確保しつつコイルエンドの寸法を小さくしたセグメント式ステータ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ステータコア40のスロット42に挿入された複数の導体セグメント20が、そのスロット42から突き出した端部を屈曲させて円周方向に捻られ、先端の接合部21が他のスロット42に挿入された導体セグメント20の接合部21と接合されてなるものであって、屈曲して円周方向に捻られた状態の導体セグメント20は、ステータコア40の軸方向に位置する他の導体セグメント20との間に絶縁部材26を有し、導体セグメント20同士が当該絶縁部材26を挟んだ絶縁状態で重ね合わされたセグメント式ステータ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ステータコアのスロットに複数の導体セグメントを挿入し、そのステータコアの軸方向端部にて導体セグメントを屈曲させて捻りを加え、他のスロットに挿入された導体セグメントと溶接などによって接合して構成するコイルエンド部を有するセグメント式ステータ及びその製造方法であって、そのコイルエンド部の軸方向寸法を小さくするようにしたセグメント式ステータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を構成するステータには、コイル巻き線に換えて従来から複数の導体セグメントが使用され、ステータコアのスロットに導体セグメントを挿入した後、その端部同士を接合するようにしたセグメント式ステータが各種提案されている。下記特許文献1にもそうした発電機が記載されている。図10は同文献に記載された交流発電機を構成するステータについて、そのコイルエンド部を示した斜視図である。また、図11は、ステータを構成する導体セグメントを示した斜視図である。
【0003】
図11に示す導体セグメント110は、矩形断面の線形平角形状をした銅等の電気導体に絶縁被膜を被覆して形成された線材である。この導体セグメント110は、図示するよるように略U字形状をしており、その両先端部には絶縁被膜41を除去した接合部112が設けられている。ステータ100は、こうした導体セグメント110が図10に示すように、ステータコア120のスロット122内に一方から挿入され、両端部が他端から突き出している。
【0004】
そして、導体セグメント110は、複数本が一つのスロット122内に挿入されて図10に示すように並んでおり、ステータコア120の一方ではターン部114の高さが揃えられている。そして、ステータコア120の他端では、スロット122から突き出した導体セグメント110屈曲して周方向に沿って捻られ、他のスロット122に挿入された導体セグメント110の接合部112との間で、例えばアークを使用したTIG溶接によって接合される。
【特許文献1】特開2001−238385号公報(第5−7頁、図7、図14)
【特許文献2】特開2003−116242号公報(第3頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のこうしたセグメント式ステータ100では、図11に示すような絶縁皮膜が施された導体セグメント110が使用されているが、この導体セグメント110は、矩形断面の線形平角形状をした真っ直ぐな線材が用意され、所定の間隔で形成された接合部112の位置で切断され、所定長さの導体セグメント110が得られる。そして、更にはそれぞれにU字状の変形が加えられる。しかし、従来のセグメント式ステータでは、1台の発電機に例えば200〜300本といった数の導体セグメント110が用いられるため、セグメント自身の加工の手間と、スロット122への1本ずつ挿入する手間がかかり生産効率が良くなかった。
【0006】
一方、図10に示すように導体セグメント110を挿入して各々を接続したものは、全体がモールド固定されるため、スロット122から突き出したコイルエンド部分において導体セグメント110同士が接触していなければ絶縁皮膜を必要としない。そのため、前述した絶縁皮膜を被覆したものに比べて材料費を抑えことができ、接合部112の加工も必要なくなるため加工工程が少ない分生産効率が良く製造コストの面でも有利である。
しかし、導体セグメント110同士の離間を確実なものとする必要があり、コイルエンド部分の寸法が大きくなり、ステータ100自身および発電機が大型化してしまう。
【0007】
ところで、図11に示すようにU字形の導体セグメント110を使用した場合、2箇所のスロット122にそれぞれ挿入する難しさがリードタイムの延長や不良率の増加等に繋がる。そこで、こうした課題に対しては、特許文献2に記載されている図13に示すような導体セグメント130が有効である。図から分かるように、その変形形状は図11のものに比べて単純であり、しかもこれはスロット122内に入れた後で変形させることになるため、加工工程が簡略化され、スロット122内への挿入も簡単である。
しかしながら、そうした利点がある一方で、ステータコア120の両端で導体セグメント同士を接合するため、前述したコイルエンドの寸法拡大問題が両端において生じ、更にステータ及び発電機の寸法を増大させてしまう。
【0008】
よって、本発明は、かかる課題を解決すべく、導体セグメント同士の絶縁を確保しつつコイルエンドの寸法を小さくしたセグメント式ステータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセグメント式ステータは、ステータコアのスロットに挿入された複数の導体セグメントが、そのスロットから突き出した端部を屈曲させて円周方向に捻られ、先端の接合部が他のスロットに挿入された導体セグメントの接合部と接合されてなるものであって、屈曲して円周方向に捻られた状態の前記導体セグメントは、前記ステータコアの軸方向に位置する他の導体セグメントとの間に絶縁部材を有し、導体セグメント同士が当該絶縁部材を挟んだ絶縁状態で重ね合わされたものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るセグメント式ステータは、前記導体セグメントが、矩形断面の線形平角形状をしたものであり、前記スロットに挿入された場合に円周方向の一面に絶縁部材が張り付けられたものであることが好ましい。
また、本発明に係るセグメント式ステータは、前記導体セグメントが、矩形断面の線形平角形状をしたものであり、前記スロットに挿入された場合に円周方向と径方向のそれぞれ一面に絶縁部材が張り付けられたものであることが好ましい。
また、本発明に係るセグメント式ステータは、複数の挿入孔が一列に並べて形成された絶縁インシュレータに前記導体セグメントが差し込まれたセグメントユニットを有し、そのセグメントユニットを前記ステータコアのスロット内に装着するようにしたものであることが好ましい。
【0011】
一方、本発明に係るセグメント式ステータの製造方法は、ステータコアのスロットに挿入された複数の導体セグメントが、そのスロットから突き出した端部を屈曲させて円周方向に捻られ、先端の接合部が他のスロットに挿入された導体セグメントの接合部と接合されてなるものであって、矩形断面の線形平角形状をしたその少なくとも一面に絶縁部材を張り付けた導体セグメントを前記スロットに挿入し、当該導体セグメントを屈曲させて捻り、更に前記ステータコアの軸方向に位置する他の導体セグメントと、当該絶縁部材を介して絶縁状態で重ね合うように、導体セグメントをステータコア側に押さえ付けるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るセグメント式ステータの製造方法は、前記導体セグメントが、四角形の導体板に同じ大きさの絶縁板を接着し、所定の幅でカッティングして形成するようにしたことが好ましい。
また、本発明に係るセグメント式ステータの製造方法は、前記導体セグメントが、四角形の導体板に同じ大きさの絶縁板を接着し、所定の幅でカッティングし、更にそれらを横にして並べ別の絶縁板を接着した後にカッティングすることにより、2面に絶縁部材を施すようにしたことが好ましい。
また、本発明に係るセグメント式ステータの製造方法は、複数の挿入孔が一列に並べて形成された絶縁インシュレータに前記導体セグメントを差し込んだセグメントユニットを形成し、そのセグメントユニットを前記ステータコアのスロット内に装着するようにしたことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
よって、本発明のセグメント式ステータ及びその製造方法によれば、例えば導体セグメントの一面に絶縁部材が張り付けることにより、他の導体セグメントの間に絶縁部材を介在させることで絶縁状態を確保して導体セグメント同士を重ね合わせることができるので、導体セグメント間の余分な隙間を無くすことでコイルエンド部分の寸法を抑えることができる。また、本発明では、導体セグメントを導体板に絶縁板を張り付けてカッティングする簡単な工程で製造することができる。更に、絶縁インシュレータによって複数の導体セグメントを一体化しているため、ステータの製造における取り扱いが便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係るセグメント式ステータ及びその製造方法について図面を参照しながら以下に説明する。ここで、図1は、絶縁インシュレータに導体セグメントがセットされた正面図であり、図2は、絶縁インシュレータに導体セグメントを差し込んでがセットする状態が分かるように示した斜視図である。
【0015】
絶縁インシュレータ10は、断面が矩形の線形平角の導体セグメント20の断面形状に合わせた貫通孔(差込み孔)11が複数一列に形成されている。そして、その差込み孔11内に導体セグメント20が1本ずつ差し込まれるが、隣り合う導体セグメント20同士の絶縁が確保できるようにポリフェニレンサルファイド(PPS)で形成されている。更に後述するようにステータコアのスロット内に装着された場合、絶縁インシュレータ10が保持されるように、スロットの壁に擦れて潰れることにより抜け留めとして機能する突起12が形成されている。
【0016】
導体セグメント20は、絶縁インシュレータ10の中に差し込み易くする等の目的で両端又は片端にテーパ面が形成されている。こうした導体セグメント20が図1に示すように絶縁インシュレータ10に差し込まれ、セグメントユニット30を構成する。その際、長さの違う導体セグメント20が絶縁インシュレータ10の端から順に差し込まれ、それぞれ絶縁インシュレータ10両側から同じ長さだけ導体セグメント20が出ている。導体セグメント20は差込み孔11内に摩擦抵抗を受けるようにして入れられ、差し込み後はその位置で保持されるようになっている。
なお、このほかにも、導体セグメント20を所定の間隔に並べた状態で治具に保持させ、インサート成型によって絶縁インシュレータ10を成型してセグメントユニット30を製作してしまう方法も考えられる。
【0017】
ところで本実施形態では、導体セグメント20に予め絶縁部材が張り付けられている。図3は導体セグメント20及びセグメントユニット30を製造する工程を示した図である。導体セグメント20は、先ず四角形で所定の大きさの導体部材25と絶縁部材26とが用意され(a)、それらが重ねられて接着剤により、または焼き付けなどによって2層に張り付けられる(b)。なお、例えば導体部材25には銅板が使用され、絶縁部材26にはPPS板が使用される。絶縁部材26の板厚は、電動機を構成したときに導体セグメント20にかかる電圧の大きさによって決められる。そして次に、導体部材25と絶縁部材26とからなる2層の板が波線で示す所定の幅でカッティングされ(c)、線形平角形状をしたその一面に絶縁部材26を備えた導体セグメント20が形成される(d)。こうして形成された導体セグメント20は、絶縁インシュレータ10の差込み孔11内に絶縁部材26を同一方向に揃えて挿入される(e)。
【0018】
なお、図3(e)では全ての導体セグメント20が同じ長さで示されているが、図2に示すように長さを変化させる場合には、板材の際に異なる寸法の導体部材25と絶縁部材26とを用いて、それぞれの長さの導体セグメント20を形成するようにする。
【0019】
次に、図4は、セグメントユニット30をステータコア40のスロット42に装着した状態を示した図である。セグメントユニット30は、ステータコア40の内周側に切り欠かれたスロット42に挿入される。セグメントユニット30は、導体セグメント20の長さが異なっているが、ステータコア40の中心部から外側に長さが長くなる向きで装着される。絶縁インシュレータ10の長さはステータコア40の軸方向寸法とほぼ同じであるため、ほぼスロット42から出ることなく収まっている。従って、この状態ではステータコア40のスロット42から複数本の導体セグメント20が軸方向に突き出している。
【0020】
次に、こうしてステータコア40に装着されたセグメントユニット30は、スロット42から出た導体セグメント20の両端が図5に示すように折り曲げられる。なお、図5は、ステータを構成するセグメントユニット30の一つを示した斜視図である。
すなわち、導体セグメント20は、治具を使ってスロット42から出たところで斜めに屈曲され、更に先端部でステータコア40の軸方向(以下、同方向を上下方向とする)に向けて折り曲げられる。一つのスロット42に設けられた複数の導体セグメント20は、両端を除いて交互に逆向きに折り曲げられている。そして、導体セグメント20は、それぞれ屈曲とともにステータコア40の円周方向に沿うように更に捻りも加えられている。
【0021】
ここで、図6は、導体セグメント20同士を接合したステータのコイルエンド部分を示した斜視図である。導体セグメント20は、その先端に上下方向に突き立つようにして折り曲げられた接合部21が形成され、それぞれ8つ離れたスロット42の導体セグメント20であって、逆向きに折り曲げられた同一円周上にあるものの接合部21同士が接合される。接合部21の接合には、TIG溶接や接着剤が用いられ、導体部材25同士が接続される。ところで本実施形態では、こうして接合部21の接合に先立ち治具を使った傾斜部22の押さえ込みが行われる。従来、導体部材のみからなる導体セグメントの場合には、図6に示すように、上下に位置する他の導体セグメントとの傾斜部同士は接触による短絡を防止するため、上下方向に離間させるようにしていた。しかし、本実施形態では各導体セグメント20の傾斜部22において、上下一方の面に絶縁部材26が存在するので、上下に重なった異なるスロット42の導体セグメント20同士、その傾斜部22が重ね合わされる。
【0022】
ステータコア40に装着され、屈曲及び捻りが加えられた導体セグメント20は、図5及び図6に示すステータコア40上方のコイルエンド部では、図面左側に傾いているものは全て上面側に絶縁部材26があり、図面右側に傾いているものは全て下面側に絶縁部材26がある。そのため、図6に示す状態から導体セグメント20をステータコア40側に押し付けて図7に示すように重ね合っても、各導体セグメント20は、必ず一方の導体部材25が他方の絶縁部材26に接することになり絶縁状態が保たれる。
【0023】
こうしてステータコア40への導体セグメント20の装着が完了したステータ軸方向に見ると、図8に示すように、捻られた導体セグメント20先端の接合部21が放射線状に整列している。
なお、セグメントユニット30を構成する導体セグメント20は、図1及び図2に示すように長さが異なるので接続部の高さが揃えられている。本実施形態では、ステータコア40の上端側のコイルエンド部分のみ図6及び図7を示して具体的に示したが、上下両方で導体セグメント20を屈曲させて捻り、更にステータコア40側へ押さえ付けた後、先端の接合部21の溶接などによる接合が行われる。
【0024】
よって、本実施形態のセグメント式ステータ1及びその製造方法によれば、導体セグメント20の一面に絶縁部材26が張り付けられているので、上下方向に重ね合わされた導体セグメント20同士の絶縁が確保され短絡してしまうことはない。従って、導体セグメント20を上下方向に押さえ付けて重なり合わせることが可能であるため、導体セグメント間の余分な隙間を無くしてコイルエンド部分の寸法を抑えることができ、セグメント式ステータ1及び、このステータ1を用いた電動機全体をコンパクト化させることが可能になる。特に、ステータコアの両端で導体セグメントを接続する本実施形態のようなものでは、コイルエンドが上下2箇所にできるため、この部分の高さを抑えることは電動機のコンパクト化に大きく寄与する。
【0025】
また、導体セグメント20は、導体部材25に絶縁部材26を張り付けただけ簡単なものであるため、従来の絶縁皮膜を被覆させた導体セグメント110などに比べてコストを抑えることができる。しかも図7に示すように一度に複数本の製造が簡単に行うことができる点でもコストの低下を可能にしている。更に、絶縁インシュレータ10によって複数の導体セグメント20を一体化しているため、ステータの製造における取り扱いが便利である。
【0026】
ところで、本実施形態では、導体セグメント20の傾斜部22において上下方向に絶縁部材26が存在するため、ステータコア40の径方向に見た場合には導体部材25同士が接触する危険がある。そこで、径方向の接触を防止するためには、図4に示すように絶縁リング45が用いられる。絶縁リング45は、図面では一つしか示していないが、径方向に12個並んだ各円周上の導体セグメント20毎に仕切れるように、径の異なる絶縁リング45が複数設けられている。そして、複数の絶縁リング45が径方向に隣り合った導体セグメント20間に挿入され、絶縁状態が確保される。従って、この状態でコイルエンド部分の導体セグメント20を折り曲げて捻りを加えた場合でも、径方向に隣り合うもの同士の接触による短絡が防止できる。
【0027】
これに対し、第2実施形態として導体セグメントに径方向の接触による短絡を防止するためのセグメント式ステータを提案する。すなわち、絶縁リングを無くした構成としたものである。なお、前記実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明する。ここで図9は、本実施形態の導体セグメント(a)とセグメントユニット(b)を示した図である。
本実施形態の導体セグメント50は、前記実施形態と同様、図3に示すように所定の大きさの導体部材25と同じ面積の絶縁部材26が用意され(a)、それらが重ねられて接着剤により、または焼き付けなどによって2層に張り付けられる(b)。本実施形態でも、導体部材25には例えば銅板が使用され、絶縁部材26にはPPS板が使用される。絶縁部材26の板厚は導体セグメント20にかかる電圧の大きさによって決められる。そして次に、導体部材25と絶縁部材26とからなる2層の板が所定の幅でカッティングされ(c)、全て線形平角形状をしたその一面に絶縁部材26を備えた導体セグメント20が形成される(d)。
【0028】
その後、本実施形態では図9(a)に示すように、導体部材25に対して絶縁部材26と直交する面に絶縁部材27が張り付けられる。これは、図3(d)によって形成された導体セグメント20を同じ方向に倒して並べ、そこに図3(a)に示した絶縁部材26と同様の一枚の絶縁部材27を接着させて導体セグメント20毎にその絶縁部材27をカッティングする。そうして出来た図9(a)の導体セグメント50を図9(b)に示すように絶縁インシュレータ10の差込み孔11内に絶縁部材26,27の向きを揃えて挿入する。
【0029】
こうして形成されたセグメントユニット31は、詳しく図示しないが、前記実施形態と同様にステータコア40の内周側に切り欠かれたスロット42に挿入され、スロット42から軸方向に突き出た導体セグメント50の両端が、治具を使って図4に示すように屈曲して捻られ、更にステータコア40側に押さえ付けられる。そして、導体セグメント50先端の接合部21が他の導体セグメント50の接合部21と接合される。
【0030】
よって、本実施形態のセグメント式ステータ及びその製造方法によれば、導体セグメント50に絶縁部材26,27が張り付けられているので、上下方向に重ね合わされた導体セグメント50同士の絶縁が確保され短絡してしまうことはない。更に、絶縁部材27によって径方向に隣り合う導体セグメント50の導体部材25との絶縁が確保され、絶縁リング45を設ける必要もなく短絡が防止できる。
導体セグメント50を上下方向に押さえ付けて重なり合わせることが可能であるため、導体セグメント間の余分な隙間を無くしてコイルエンド部分の寸法を抑えることができ、セグメント式ステータ及び、このステータを用いた電動機全体をコンパクト化させることが可能になる。特に、ステータコアの両端で導体セグメントを接続する本実施形態のようなものでは、コイルエンドが上下2箇所にできるため、この部分の高さを抑えることは電動機のコンパクト化に大きく寄与する。
【0031】
また、導体セグメント50は、導体部材25に絶縁部材26,27を張り付けただけ簡単なものであるため、従来の絶縁皮膜を被覆させた導体セグメント110などに比べてコストを抑えることができる。しかも図3及び図9に示すように一度に複数本の製造が簡単に行うことができる点でもコストの低下を可能にしている。更に、絶縁インシュレータ10によって複数の導体セグメント50を一体化しているため、ステータの製造における取り扱いが便利である。
【0032】
以上、本発明に係るセグメント式ステータ及びその製造方法について、その一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、ステータコア40の上下にコイルエンドを有するものについて説明したが、図10及び図11に示したU字形の導体セグメントであって、そのコイルエンド部分をステータコア側に押し付けることによってコンパクト化させたセグメント式ステータであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】絶縁インシュレータに導体セグメントがセットされた状態を示した正面図である。
【図2】絶縁インシュレータに導体セグメントを差し込んでがセットする状態が分かるように示した斜視図である。
【図3】導体セグメント及びセグメントユニットを製造する工程を示した図である。
【図4】セグメントユニットをステータコアのスロットに装着した状態を示した図である。
【図5】ステータを構成するセグメントユニットの一つを示した斜視図である。
【図6】導体セグメント同士を接合したステータのコイルエンド部分を示した斜視図である。
【図7】導体セグメントをステータコア側に押し付けた状態のステータのコイルエンド部分を示した斜視図である。
【図8】セグメント式ステータを軸方向に見た図である。
【図9】第2実施形態の導体セグメント(a)とセグメントユニット(b)を示した図である。
【図10】交流発電機を構成する従来ステータについて、そのコイルエンド部を示した斜視図である。
【図11】従来のステータを構成する導体セグメントを示した斜視図である。
【図12】従来のステータを構成する導体セグメントを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 セグメント式ステータ
10 絶縁インシュレータ
20 導体セグメント
21 接合部
22 傾斜部
25 導体部材
26 絶縁部材
30 セグメントユニット
40 ステータコア
42 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアのスロットに挿入された複数の導体セグメントが、そのスロットから突き出した端部を屈曲させて円周方向に捻られ、先端の接合部が他のスロットに挿入された導体セグメントの接合部と接合されてなるセグメント式ステータにおいて、
屈曲して円周方向に捻られた状態の前記導体セグメントは、前記ステータコアの軸方向に位置する他の導体セグメントとの間に絶縁部材を有し、導体セグメント同士が当該絶縁部材を挟んだ絶縁状態で重ね合わされたものであることを特徴とするセグメント式ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載するセグメント式ステータにおいて、
前記導体セグメントは、矩形断面の線形平角形状をしたものであり、前記スロットに挿入された場合に円周方向の一面に絶縁部材が張り付けられたものであることを特徴とするセグメント式ステータ。
【請求項3】
請求項1に記載するセグメント式ステータにおいて、
前記導体セグメントは、矩形断面の線形平角形状をしたものであり、前記スロットに挿入された場合に円周方向と径方向のそれぞれ一面に絶縁部材が張り付けられたものであることを特徴とするセグメント式ステータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載するセグメント式ステータにおいて、
複数の挿入孔が一列に並べて形成された絶縁インシュレータに前記導体セグメントが差し込まれたセグメントユニットを有し、そのセグメントユニットを前記ステータコアのスロット内に装着するようにしたものであることを特徴とするセグメント式ステータ。
【請求項5】
ステータコアのスロットに挿入された複数の導体セグメントが、そのスロットから突き出した端部を屈曲させて円周方向に捻られ、先端の接合部が他のスロットに挿入された導体セグメントの接合部と接合されてなるセグメント式ステータの製造方法において、
矩形断面の線形平角形状をしたその少なくとも一面に絶縁部材を張り付けた導体セグメントを前記スロットに挿入し、当該導体セグメントを屈曲させて捻り、更に前記ステータコアの軸方向に位置する他の導体セグメントと、当該絶縁部材を介して絶縁状態で重ね合うように、導体セグメントをステータコア側に押さえ付けるようにしたことを特徴とするセグメント式ステータの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載するセグメント式ステータの製造方法において、
前記導体セグメントは、四角形の導体板に同じ大きさの絶縁板を接着し、所定の幅でカッティングして形成するようにしたことを特徴とするセグメント式ステータの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載するセグメント式ステータの製造方法において、
前記導体セグメントは、四角形の導体板に同じ大きさの絶縁板を接着し、所定の幅でカッティングし、更にそれらを横にして並べ別の絶縁板を接着した後にカッティングすることにより、2面に絶縁部材を施すようにしたことを特徴とするセグメント式ステータの製造方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載するセグメント式ステータの製造方法において、
複数の挿入孔が一列に並べて形成された絶縁インシュレータに前記導体セグメントを差し込んだセグメントユニットを形成し、そのセグメントユニットを前記ステータコアのスロット内に装着するようにしたことを特徴とするセグメント式ステータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−157993(P2006−157993A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340385(P2004−340385)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】