説明

セパレーター及びセパレーターの製造方法

【課題】高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有するセパレーターを提供する。
【解決手段】平面視格子状の第1ナノ繊維層20と、第1ナノ繊維層20の一方面に配設され、第1ナノ繊維層20よりも薄い第2ナノ繊維層30と、第1ナノ繊維層10の他方面に配設され、第1ナノ繊維層20よりも薄い第3ナノ繊維層40とを備えるセパレーター10。第1ナノ繊維層20は、7μm〜30μmの範囲内にある厚さを有する。第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40は、ともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレーター及びセパレーターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ繊維層を有するセパレーターが知られている(例えば、特許文献1参照。)。ナノ繊維層を有するセパレーターは、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維が細く空隙が微細かつ均一であるため、絶縁性及びデンドライト耐性が高い。このため、高い絶縁性及び高いデンドライト耐性を維持したままセパレーターの厚さを薄くしてイオン伝導性を高くすることが可能となる。また、ナノ繊維層を有するセパレーターは、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して空隙率が大きいため、高い電解液保持性を有し、このことからもイオン伝導性を高くすることが可能となる。このため、ナノ繊維層を有するセパレーターは、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターとなる。このようなセパレーターは、電池(一次電池及び二次電池を含む。)やコンデンサー(キャパシターともいう。)等に好適に用いることができる。なお、本発明において、ナノ繊維とは、平均径が数nm〜数千nmの繊維のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−510700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ナノ繊維層を有するセパレーターは、ナノ繊維層を構成するナノ繊維が極細の繊維からなるため、機械的強度が低いという問題がある。そこで、ナノ繊維層を厚くして機械的強度を高くすることが考えられるが、ナノ繊維層自体を厚くして機械的強度を高くしたのでは、イオン伝導性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有するセパレーターを提供することを目的とする。また、そのようなセパレーターを製造可能なセパレーターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のセパレーターは、平面視格子状の第1ナノ繊維層と、前記第1ナノ繊維層の一方面に配設され、前記第1のナノ繊維層よりも薄い第2ナノ繊維層と、前記第1ナノ繊維層の他方面に配設され、前記第1のナノ繊維層よりも薄い第3ナノ繊維層とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のセパレーターによれば、平面視格子状の第1ナノ繊維層と、第1のナノ繊維層よりも薄い第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層を備える。このため、第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層の働きにより、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するものとなる。
【0008】
また、本発明のセパレーターによれば、平面視格子状の第1ナノ繊維層と、第1のナノ繊維層よりも薄い第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層を備える。このため、平面視格子状の第1ナノ繊維層を厚くして機械的強度を高くすることができる。この場合、第1ナノ繊維層を厚くしたとしても、第1ナノ繊維層が平面視格子状の構造を有するため、電解液の流通が良好に保たれる結果、イオン伝導性が低下することもない。
【0009】
その結果、本発明のセパレーターは、高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有するセパレーターとなる。
【0010】
[2]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維層は、7μm〜30μmの範囲内にある厚さを有することが好ましい。
【0011】
「第1ナノ繊維層が7μm〜30μmの範囲内にある厚さを有すること」が好ましいのは、以下の理由による。すなわち、第1ナノ繊維層が7μm未満の厚さを有する場合には、機械的強度が低下する場合があるからであり、第1ナノ繊維層が30μmを超える厚さを有する場合には、セパレーターの厚さが厚くなりすぎるからである。これらの観点から言えば、第1ナノ繊維層は、10μm〜20μmの範囲内にある厚さを有することがより一層好ましい。
【0012】
[3]本発明のセパレーターにおいては、前記第2ナノ繊維層及び前記第3ナノ繊維層は、ともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さを有することが好ましい。
【0013】
「第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層がともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さを有すること」が好ましいのは、以下の理由による。すなわち、第2ナノ繊維層又は第3ナノ繊維層が1μm未満の厚さを有する場合には、絶縁性及びデンドライト耐性が低下する場合があるからであり、第2ナノ繊維層又は第3ナノ繊維層が5μmを超える厚さを有する場合には、イオン伝導性が低下する場合があるからである。これらの観点から言えば、第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層は、ともに2μm〜4μmの範囲内にある厚さを有することがより一層好ましい。
【0014】
[4]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維層は、平面視で格子の総面積よりも大きな総面積を有する多数の開口を有することが好ましい。
【0015】
このような構成とすることにより、第1ナノ繊維層を厚くして機械的強度を高くしたとしても、電解液の流通が良好に保たれる結果、イオン伝導性が低下することもない。
【0016】
[5]本発明のセパレーターにおいては、前記開口は、平面視で10μm〜200μmの範囲内にある平均面積を有することが好ましい。
【0017】
「開口が平面視で10μm〜200μmの範囲内にある平均面積を有すること」が好ましいのは、以下の理由による。すなわち、開口が平面視で10μm未満の平均面積を有する場合には、イオン伝導性が低下する場合があるからであり、開口が平面視で200μm超える平均面積を有する場合には、セパレーターの機械的強度が低下する場合があるからである。これらの観点から言えば、開口は、平面視で20μm〜100μmの範囲内にある平均面積を有することがより一層好ましい。
【0018】
[6]本発明のセパレーターの製造方法は、絶縁性の支持体上に位置する平面視格子状のコレクター電極と、ノズルとの間に高電圧を印加した状態で、前記ノズルからポリマー溶液を吐出することにより、前記コレクター電極上に平面視格子状の第1ナノ繊維層を形成する第1工程と、前記第1ナノ繊維層の一方面に前記第1ナノ繊維層よりも薄い第2ナノ繊維層を配設するとともに、前記第1ナノ繊維層の他方面に前記第1ナノ繊維層よりも薄い第3ナノ繊維層を配設する第2工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0019】
本発明のセパレーターの製造方法によれば、上記した構成を有し、高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有する本発明のセパレーターを製造することができる。
【0020】
[7]本発明のセパレーターの製造方法において、前記第1工程においては、前記第1ナノ繊維層として、7μm〜30μmの範囲内にある厚さを有する第1ナノ繊維層を形成することが好ましい。
【0021】
このような方法とすることにより、高い機械的強度を有し、かつ、適切な厚さを有するセパレーターを製造することができる。
【0022】
[8]本発明のセパレーターの製造方法において、前記第2工程においては、前記第2ナノ繊維層及び前記第3ナノ繊維層として、ともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さを有する第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層を配設することが好ましい。
【0023】
このような方法とすることにより、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターを製造することができる。
【0024】
[9]本発明のセパレーターにおいて、前記第1工程においては、前記第1ナノ繊維層として、平面視で格子の総面積よりも大きな総面積を有する多数の開口を有する第1ナノ繊維層を形成することが好ましい。
【0025】
このような方法とすることにより、第1ナノ繊維層を厚くして機械的強度を高くしたとしても、電解液の流通が良好に保たれる結果、イオン伝導性が低下することのないセパレーターを製造することができる。
【0026】
[10]本発明のセパレーターの製造方法において、前記開口は、平面視で10μm〜200μmの範囲内にある平均面積を有することが好ましい。
【0027】
このような方法とすることにより、第1ナノ繊維層を厚くして機械的強度を高くしたとしても、電解液の流通が良好に保たれる結果、イオン伝導性が低下することのないセパレーターを製造することができる。
【0028】
[11]本発明のセパレーターの製造方法においては、前記第2工程においては、電界紡糸法により前記第1ナノ繊維層の一方面に前記第2ナノ繊維層を形成するとともに、電界紡糸法により前記第1ナノ繊維層の他方面に前記第3ナノ繊維層を形成することが好ましい。
【0029】
このような方法とすることにより、第1ナノ繊維層と、第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層との接合強度の高い高品質なセパレーターを製造することが可能となる。
【0030】
[12]本発明のセパレーターの製造方法においては、前記第2工程を実施する前に、前記第2ナノ繊維層及び前記第3ナノ繊維層として、電界紡糸法により製造した第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層を準備しておき、前記第2工程においては、前記第1ナノ繊維層の一方面に前記第2ナノ繊維層を貼り付けるとともに、前記第1ナノ繊維層の他方面に前記第3ナノ繊維層を貼り付けることが好ましい。
【0031】
このような方法とすることにより、高い生産性で本発明のセパレーターを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1に係るセパレーター10を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係るセパレーターの製造方法を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1に係るセパレーターの製造方法を説明するために示す図である。
【図4】実施形態1に係るセパレーターの製造方法に用いるコレクター110の構造を説明するために示す図である。
【図5】実施形態2に係るセパレーターの製造方法に用いるコレクター110aの構造を説明するために示す図である。
【図6】実施形態3に係るセパレーターの製造方法を説明するために示す図である。
【図7】変形例に係るセパレーター14,16,18を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明のセパレーター及びセパレーターの製造方法について、図に示す実施形態に基づいて説明する。
【0034】
[実施形態1]
1.セパレーター
図1は、実施形態1に係るセパレーター10を説明するために示す図である。図1(a)はセパレーター10の断面図であり、図1(b)はセパレーター10の平面図である。
【0035】
実施形態1に係るセパレーター10は、図1に示すように、正方形の開口を有する平面視縦横格子状の第1ナノ繊維層20と、第1ナノ繊維層20の一方面に配設され、第1のナノ繊維層20よりも薄い第2ナノ繊維層30と、第1ナノ繊維層20の他方面に配設され、第1のナノ繊維層20よりも薄い第3ナノ繊維層40とを備える。
【0036】
第1ナノ繊維層20は、7μm〜30μmの範囲内にある厚さ(例えば15μm)を有する。第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40は、ともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さ(例えば3μm)を有する。
【0037】
第1ナノ繊維層20は、平面視で格子Lの総面積S1よりも大きな総面積S2を有する多数の開口Oを有する。開口Oは、平面視で10μm〜200μmの範囲内にある平均面積(例えば50μm)を有する。格子Lは、平面視で1μm〜10μmの範囲にある太さ(例えば2μm)を有する。
【0038】
第1ナノ繊維層20は、電界紡糸法により製造された第1ナノ繊維からなる。第1ナノ繊維の平均径は、30nm〜3000nm(例えば800nm)である。第1ナノ繊維層20は、ポリマー材料(例えばポリオレフィン)からなる。
【0039】
第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40は、ともに電界紡糸法により製造された第2ナノ繊維及び第3ナノ繊維からなる。第2ナノ繊維及び第3ナノ繊維の平均径はともに、30nm〜3000nm(例えば300nm)である。第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40は、ともにポリマー材料(例えばポリオレフィン)からなる。
【0040】
2.セパレーターの製造方法
図2及び図3は、実施形態1に係るセパレーターの製造方法を説明するために示す図である。図2(a)〜図2(c)はセパレーターが製造されていく様子を示す断面図であり、図3(a)〜図3(c)はセパレーターが製造されていく様子を示す装置断面図である。図4は、実施形態1に係るセパレーターの製造方法に用いるコレクター110の構造を説明するために示す図である。図4(a)はコレクター110の下面図であり、図4(b)は図4(a)のA1−A1断面図であり、図4(c)は図4(a)のA2−A2断面図である。
【0041】
実施形態1に係るセパレーター10は、図2に示すように、平面視格子状の第1ナノ繊維層20を形成する第1工程(図2(a)参照。)と、第1ナノ繊維層20の一方面に第1ナノ繊維層よりも薄い第2ナノ繊維層30を配設するとともに、第1ナノ繊維層20の他方面に第1ナノ繊維層よりも薄い第3ナノ繊維層40を配設する第2工程(図2(b)及び図2(c)参照。)とをこの順序で実施することにより製造することができる。以下、工程順に説明する。
【0042】
(1)第1工程
第1工程は、図3(a)に示すように、電界紡糸装置100を用いて実施する。電界紡糸装置100は、コレクター電極114と、コレクター電極114に対向する位置に位置するノズル122と、コレクター電極114とノズル122との間に高電圧を印加する電源装置130と、ノズル122に供給するポリマー溶液を貯蔵する原料タンク(図示せず。)を備える。コレクター電極114は、図4に示すように、絶縁材料からなる支持体112上に位置する平面格子状の電極からなる。支持体112とコレクター電極114とでコレクター110が構成されている。ノズル122は上向きノズルからなり、ノズルブロック120に配設されている。電源装置130の正極はコレクター電極114に接続され、電源装置130の負極は、ノズルブロック120に接続されている。
【0043】
そして、第1工程においては、コレクター電極114と、ノズル122との間に高電圧を印加した状態で、ノズル122からポリマー溶液を吐出することにより、コレクター110上に平面視格子状の第1ナノ繊維層20を形成する。
【0044】
(2)第2工程
第2工程は、図3(b)及び図3(c)に示すように、電界紡糸装置200を用いて実施する。電界紡糸装置200は、一般的な電界紡糸装置であり、コレクター210は、平板状の電極からなる。
【0045】
そして、第2工程においては、まず、電界紡糸装置200のコレクター210に第1ナノ繊維層20を設置した後、コレクター210、ノズル222との間に高電圧を印加した状態で、ノズル222からポリマー溶液を吐出することにより、第1ナノ繊維層20の一方面に層状の第2ナノ繊維層30を形成する(図2(b)参照。)。
【0046】
その後、第1ナノ繊維層20及び第2ナノ繊維層30からなる積層体をひっくり返して電界紡糸装置200のコレクター210に設置した後、コレクター210と、ノズル222との間に高電圧を印加した状態で、ノズル222からポリマー溶液を吐出することにより、第1ナノ繊維層20の他方面に層状の第3ナノ繊維層40を形成する(図2(c)参照。)。
【0047】
これにより、実施形態1に係るセパレーター10を製造することができる。
【0048】
3.実施形態1の効果
(1)セパレーターの効果
実施形態1に係るセパレーター10は、平面視格子状の第1ナノ繊維層20と、第1のナノ繊維層20よりも薄い第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40を備えるため、第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40の働きにより、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するものとなる。
【0049】
また、実施形態1に係るセパレーター10は、平面視格子状の第1ナノ繊維層20と、第1のナノ繊維層20よりも薄い第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40を備えるため、平面視格子状の第1ナノ繊維層20を厚くして機械的強度を高くすることができる。この場合、第1ナノ繊維層20を厚くしたとしても、第1ナノ繊維層20が平面視格子状の構造を有するため、電解液の流通が良好に保たれる結果、イオン伝導性が低下することもない。
【0050】
その結果、実施形態1に係るセパレーター10は、高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有するセパレーターとなる。
【0051】
また、実施形態1に係るセパレーター10は、第1ナノ繊維層20が7μm〜30μmの範囲内にある厚さを有するため、高い機械的強度を有し、かつ、適切な厚さを有するセパレーターとなる。
【0052】
また、実施形態1に係るセパレーター10は、第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40がともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さを有するため、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターとなる。
【0053】
また、実施形態1に係るセパレーター10は、第1ナノ繊維層20が平面視で格子の総面積よりも大きな総面積を有する多数の開口を有するため、高いイオン伝導性を有するセパレーターとなる。
【0054】
さらにまた、実施形態1に係るセパレーター10は、開口が平面視で10μm〜200μmの範囲内にある平均面積を有するため、高いイオン伝導性を有するセパレーターとなる。
【0055】
(2)セパレーターの製造方法の効果
実施形態1に係るセパレーターの製造方法によれば、上記した第1工程及び第2工程をこの順序で含むものであるため、上記した構成を有し、高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有する実施形態1に係るセパレーター10を製造することができる。
【0056】
また、実施形態1に係るセパレーターの製造方法によれば、第2工程においては、電界紡糸法により第1ナノ繊維層20の一方面に第2ナノ繊維層30を形成するとともに、電界紡糸法により第1ナノ繊維層20の他方面に第3ナノ繊維層40を形成するため、第1ナノ繊維層20と、第2ナノ繊維層30及び第3ナノ繊維層40との接合強度の高い高品質なセパレーターを製造することが可能となる。
【0057】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係るセパレーターの製造方法に用いるコレクター110aの構造を説明するために示す図である。図5(a)はコレクター110aの下面図であり、図5(b)は図5(a)のA1−A1断面図であり、図5(c)は図4(a)のA2−A2断面図である。
【0058】
実施形態2に係るセパレーターの製造方法は、基本的には、実施形態1に係るセパレーターの製造方法と同様の工程を含むが、第1工程で用いるコレクターの構造が異なる。すなわち、実施形態2に係るセパレーターの製造方法で用いるコレクター110aは、コレクター電極114が、ノズル122と等電位の電極体118に絶縁部材116を介して埋め込まれた構造を有する。
【0059】
このように、実施形態2に係るセパレーターの製造方法は、第1工程で用いるコレクターの構造が異なるが、上記した第1工程及び第2工程をこの順序で含むものであるため、実施形態1に係るセパレーターの製造方法の場合と同様に、上記した構成を有し、高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有するセパレーターを製造することができる。
【0060】
また、実施形態2に係るセパレーターの製造方法によれば、実施形態1に係るセパレーターの製造方法により製造されるセパレーターよりも、しっかりと開口された開口Oを有するセパレーターを製造することができる。
【0061】
なお、実施形態2に係るセパレーターの製造方法は、第1工程で用いるコレクターの構造が異なること以外は、実施形態1に係るセパレーターの製造方法と同様の工程を有するため、実施形態1に係るセパレーターの製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0062】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係るセパレーターの製造方法を説明するために示す図である。図6(a)〜図6(c)はセパレーターが製造されていく様子を示す断面図である。
【0063】
実施形態3に係るセパレーターの製造方法は、基本的には、実施形態1に係るセパレーターの製造方法と同様の工程を含むが、第2工程の内容が異なる。すなわち、実施形態3に係るセパレーターの製造方法においては、図6に示すように、第2工程を実施する前に、第2ナノ繊維層32及び第3ナノ繊維層42として、電界紡糸法により製造した第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層を準備しておき、第2工程においては、第1ナノ繊維層20の一方面に上記した第2ナノ繊維層32を貼り付けるとともに、第1ナノ繊維層20の他方面に第3ナノ繊維層42を貼り付けることとしている。このようにして実施形態3に係るセパレーター12を製造することとしている。第2工程は、接着剤を用いて行うこともできるし、圧力を用いて行うこともできるし、熱及び圧力を用いて行うこともできる。
【0064】
このように、実施形態3に係るセパレーターの製造方法は、実施形態1に係るセパレーターの製造方法とは第2工程の内容が異なるが、上記した第1工程及び第2工程をこの順序で含むものであるため、実施形態1に係るセパレーターの製造方法の場合と同様に、上記した構成を有し、高い絶縁性、高いデンドライト耐性、高いイオン伝導性及び高い機械的強度を有するセパレーターを製造することができる。
【0065】
また、実施形態3に係るセパレーターの製造方法によれば、高い生産性でセパレーターを製造することが可能となる。
【0066】
なお、実施形態3に係るセパレーターの製造方法は、第2工程の内容が異なること以外は、実施形態1に係るセパレーターの製造方法と同様の工程を有するため、実施形態1に係るセパレーターの製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0067】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0068】
(1)上記各実施形態における各構成要素の数、位置関係、大きさは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
(2)上記各実施形態においては、正方形の開口を有する縦横格子状の第1ナノ繊維層を備えるセパレーターを例にとって本発明のセパレーターを説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図7は、変形例に係るセパレーター14,16,18を説明するために示す図である。図7に示すように、第1ナノ繊維層は、図7(a)に示すように、六角形の開口を有する格子状の形状を有していてもよいし、図7(b)に示すように、三角形の開口を有する格子状の形状を有していてもよいし、図7(c)に示すように、円形の開口を有する格子状の形状を有していてもよいし、その他の格子状の形状を有していてもよい。すなわち、本発明において、「格子状」には、任意の形状を有する開口と、当該開口を仕切る仕切り(格子)を有するものすべてが含まれる。
【0070】
(3)上記各実施形態においては、上向きノズルを有する上向き式電界紡糸装置を用いて本発明のセパレーターの製造方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、下向きノズルを有する下向き式電界紡糸装置や横向きノズルを有する横向き式電界紡糸装置を用いて本発明のセパレーターの製造方法を実施することもできる。
【符号の説明】
【0071】
10,12,14,16,18…セパレーター、20…第1ナノ繊維層、30…第2ナノ繊維層、40…第3ナノ繊維層、100,200…電界紡糸装置、110,110a,210…コレクター、112,212…支持体、114…コレクター電極、116…絶縁部材、118…電極体、120,220…ノズルブロック、122,222…ノズル、130,230…電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視格子状の第1ナノ繊維層と、
前記第1ナノ繊維層の一方面に配設され、前記第1のナノ繊維層よりも薄い第2ナノ繊維層と、
前記第1ナノ繊維層の他方面に配設され、前記第1のナノ繊維層よりも薄い第3ナノ繊維層とを備えることを特徴とするセパレーター。
【請求項2】
請求項1に記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維層は、7μm〜30μmの範囲内にある厚さを有することを特徴とするセパレーター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセパレーターにおいて、
前記第2ナノ繊維層及び前記第3ナノ繊維層は、ともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さを有することを特徴とするセパレーター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維層は、平面視で格子の総面積よりも大きな総面積を有する多数の開口を有することを特徴とするセパレーター。
【請求項5】
請求項4に記載のセパレーターにおいて、
前記開口は、平面視で10μm〜200μmの範囲内にある平均面積を有することを特徴とするセパレーター。
【請求項6】
絶縁性の支持体上に位置する平面視格子状のコレクター電極と、ノズルとの間に高電圧を印加した状態で、前記ノズルからポリマー溶液を吐出することにより、前記コレクター電極上に平面視格子状の第1ナノ繊維層を形成する第1工程と、
前記第1ナノ繊維層の一方面に前記第1ナノ繊維層よりも薄い第2ナノ繊維層を配設するとともに、前記第1ナノ繊維層の他方面に前記第1ナノ繊維層よりも薄い第3ナノ繊維層を配設する第2工程とをこの順序で含むことを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のセパレーターの製造方法において、
前記第1工程においては、前記第1ナノ繊維層として、7μm〜30μmの範囲内にある厚さを有する第1ナノ繊維層を形成することを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のセパレーターの製造方法において、
前記第2工程においては、前記第2ナノ繊維層及び前記第3ナノ繊維層として、ともに1μm〜5μmの範囲内にある厚さを有する第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層を配設することを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記第1工程においては、前記第1ナノ繊維層として、平面視で格子の総面積よりも大きな総面積を有する多数の開口を有する第1ナノ繊維層を形成することを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のセパレーターの製造方法において、
前記開口は、平面視で10μm〜200μmの範囲内にある平均面積を有することを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載のセパレーターの製造方法において、
前記第2工程においては、電界紡糸法により前記第1ナノ繊維層の一方面に前記第2ナノ繊維層を形成するとともに、電界紡糸法により前記第1ナノ繊維層の他方面に前記第3ナノ繊維層を形成することを特徴とするセパレーターの製造方法。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれかに記載のセパレーターの製造方法において、
前記第2工程を実施する前に、前記第2ナノ繊維層及び前記第3ナノ繊維層として、電界紡糸法により製造した第2ナノ繊維層及び第3ナノ繊維層を準備しておき、
前記第2工程においては、前記第1ナノ繊維層の一方面に前記第2ナノ繊維層を貼り付けるとともに、前記第1ナノ繊維層の他方面に前記第3ナノ繊維層を貼り付けることを特徴とするセパレーターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−199037(P2012−199037A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61841(P2011−61841)
【出願日】平成23年3月20日(2011.3.20)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】