説明

セメント混和材及びこれを混和した既調合セメントモルタル

【課題】 左官作業における使い勝手と作業性を高度に確保するとともにエフロレッセンスの発生を抑制することができるセメント混和材を提供する。
【解決手段】 セメント混和材を,緑泥石粉を65〜85wt%,ガラス繊維を8〜17wt%,硬質ウレタン粉を7〜18wt%含有したものとする。この混和材を用いることによって,セメント量に対して2〜3wt%の極く少量を混和することで,セメントモルタルが適度の粘性,好ましい揺変性,モルタルの流動性を発揮して,モルタルの延び,ベタツキ,こて切れ,こての軽さ等の使い勝手と作業性を高度に確保するともにエフロレッセンスの発生を抑制し得るものとなる。緑泥石粉が多いことによって安価に提供でき,またガラス繊維及び硬質ウレタン粉として,これらを含む軌条用の枕木等硬質ウレタン製品の加工屑等の産業廃棄物を分級したものを使用することによって更に安価に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の壁面,床面等の現場施工用又は舗道ブロック等の工場生産品に用いるセメントモルタルに関し,特にそのセメント混和材及びこれを混和した既調合セメントモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば現場施工の左官材料として用いられるセメントモルタルには,繊維系混和材として鋼,ガラス,合成樹脂といった繊維状混和材,浅黄土,フライアッシュといった無機質混和材,天然砂,人造砂といった細骨材等及び分散剤,AE剤,気泡剤,硬化促進剤等の各種混和剤が混和使用されて,塗り仕上げ後のひび割れ,剥落の防止,こて材料の圧送等施工性の向上等,各混和材,混和剤による性能や塗り材料としての性質の確保がなされるものとされており,また既調合セメントモルタルとしてこれら混和材,混和剤を予め混和したものが市販されている。
【0003】
またこの種の混和剤として,セメントモルタルに粘性を付与する目的で,ふのりや角又等の海藻糊を含んだ混和剤及びこれを混和した既調合セメントモルタルも市販されており,この場合,粘性のためにこて塗りが容易で,揺変性(チキソ性)を得られるためにダレがなく,モルタルの延びが得られて作業性がよく,モルタル落ちが少ないといった利点が得られるものとされている。
【0004】
【非特許文献1】株式会社エクスナレッジ 2001年12月15日発行「左官超実用テクニック読本」72〜73頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし乍ら,現実に下塗り,中塗り,仕上げ塗り等の実際の現場作業においてモルタルの延び,ベタツキ,こて切れ,こての軽さ等を充足することによって使い勝手を良好とする混和材が必ずしも存在するわけではなく,この面から見ると上記海藻糊を含んだ混和剤は,上記塗りの容易化,揺変性によってある程度良好な作業性を得られるとともにセメントモルタルの欠点とされるモルタル落ち等の防止に有効となし得るが,この場合,海藻を原料とすることによって,比較的高価なものとなる傾向を避けられないし,これを用いることによって上記モルタルの延び等の使い勝手において必ずしも満足するものとはなし得ないし,またセメントモルタルの欠点,特に可溶性塩基が析出することによるエフロレッセンス(白華)が発生して施工外観や製品外観を損い易いといった問題点についてはそのまま残されており,従って使い勝手やエフロレッセンスの抑制に有効な混和材が求められる状況にある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,比較的安価な供給が可能であり,エフロレッセンスの発生を可及的に抑制し得るとともに良好な使い勝手と作業性を可及的高度に確保し得るようにしたセメント混和材を提供するにあり,また該セメント混和材を混和した既調合セメントモルタルを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って鋭意検討した結果,セメント混和材を,緑泥石粉,ガラス繊維,硬質ウレタン樹脂粉末乃至硬質発泡ウレタン樹脂粉(以下硬質ウレタン粉という)を含有するとともにこれらの重量比を緑泥石65〜85wt%,ガラス繊維を8〜17wt%,硬質ウレタン粉を7〜18wt%として形成すると,これを混和したセメントモルタルが適度の粘性,好ましい揺変性,モルタルの流動性を発揮して,モルタルの延び,ベタツキ,こて切れ,こての軽さ等の使い勝手と作業性を高度に確保し,エフロレッセンスの発生を良好に抑制し得るとともに緑泥石粉を主原料とすることによって比較的安価に供給し得る一方で,混和材の混和によって生じることあるひび割れや強度不足等を招くことがなく,好ましいセメント混和材とすることが可能になるとの知見を得た。
【0008】
即ち,緑泥石粉は,緑泥石を粉砕したものであり,水に濡れ易いが水を吸収せず,従って混練時にセメントモルタルに均一に分散し易く,水を吸収することによる膨潤,乾燥,収縮を行う材料の如くにひび割れを招くことがなく,その結晶形態が単斜晶系,六角卓状,鱗状等の板状であることによって,特にこての滑りを極めて良好に確保するに好適であるとともに,該緑泥石粉が,好ましい粘性,揺変性,モルタルの流動性を確保して,モルタルの延び,ベタツキ,こて切れ,こての滑りや軽さ等を改善して使い勝手と作業性を高度に確保するに有効であること,従前と同様にガラス繊維が繊維状混和材として,同じくその揺変性を向上することによって上記緑泥石粉と相俟って更に高度な作業性を確保すること,硬質ウレタン粉が水に濡れ難いことによって撥水性を呈することによって,重ね塗りに際して一般に必要とされる水養生が不要となるとともに,必ずしもその理由は明確ではないが,同じく硬質ウレタン粉がエフロレッセンスの発生を抑制するように作用することが,その要因であると見られる。
【0009】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであって,請求項1に記載の発明を,緑泥石粉を65〜85wt%,ガラス繊維を8〜17wt%,硬質ウレタン粉を7〜18wt%含有してなることを特徴とするセメント混和材としたものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,ガラス繊維と硬質乃至硬質発泡ウレタンとによる,例えば軌条用の枕木,合成木材,法面用の受圧板等のガラス繊維強化硬質ウレタン系製品があり,その製品加工によって生じる切削屑,研磨屑等の加工屑,廃棄製品の粉砕物或いはこれらを分離したものを用いることによって,産業廃棄物の再利用を行い環境保護と低コスト化をなし得るものとするように,これを,上記ガラス繊維及び硬質ウレタン粉を,ガラス繊維強化硬質ウレタン系製品の加工屑,粉砕物,これらを分離した産業廃棄物再利用によるガラス繊維及び硬質ウレタンとしてなることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和材としたものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記セメント混和材は,セメントモルタルに一般に混和使用される各種混和剤の追加的な混和を妨げず,これらを併用することによって問題を生じることはないので,更に混和剤を添加することによってその品質の向上を期するものとするように,これを,上記セメント混和剤に,発泡剤,気泡剤,消泡剤,保水剤,収縮低減剤,繊維状混和材,無機質混和材,天然砂,細骨材,分散剤,AE剤,硬化促進剤等適宜の混和剤を追加的に添加してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント混和材としたものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は,該セメント混和材をセメントモルタルに混和することによって,現場での調合の煩雑さを解消し,上記混和材のメリットを備えたセメントモルタルを提供するように,これを,請求項1,2又は3に記載のセメント混和材を混和してなることを特徴とする既調合セメントモルタルとしたものである。
【0013】
本発明は,これらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,緑泥石粉,ガラス繊維,硬質ウレタン粉をそれぞれ上記所定量含有することによって,これを混和したセメントモルタルが適度の粘性,好ましい揺変性,モルタルの流動性を発揮して,モルタルの延び,ベタツキ,こて切れ,こての滑りや軽さ等の使い勝手と作業性を高度に確保し,エフロレッセンスの発生を良好に抑制し得るとともに緑泥石粉を主原料とすることによって比較的安価に供給し得る一方で,混和材の混和によって生じることがあるひび割れや強度不足等を招くことのない好ましいセメント混和材を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,ガラス繊維強化硬質ウレタン系製品の加工によって生じる切削屑,研磨屑等の加工屑,廃棄製品の粉砕物或いはこれらを分離したものを用いることによって,産業廃棄物の再利用を行い環境保護と低コスト化をなし得るものとすることができる。
【0016】
上記に加えて,ガラス繊維と硬質乃至硬質発泡ウレタンを原料とし,その重量比が適当なガラス繊維強化の硬質ウレタン系製品の加工屑や粉砕物を,上記緑泥石粉と混和することによって,産業廃棄物の再利用を可能とするとともに更に低コスト化をなし得るものとすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記セメント混和材に,セメントモルタルに混和使用される各種混和剤を更に混和することによってその品質の向上を期するものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は,該セメント混和材をセメントモルタルに混和することによって,現場での調合の煩雑さを解消し,上記混和材のメリットを備えたセメントモルタルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下更に具体的に説明すれば,本発明に係るセメント混和材は,緑泥石粉,ガラス繊維,硬質ウレタン粉を含有し,必要に応じてこれに,発泡剤,気泡剤,消泡剤,保水剤,収縮低減剤,繊維状混和材,無機質混和材,天然砂,細骨材,分散剤,AE剤,硬化促進剤等適宜の混和剤を追加的に混和したものとしてある。
【0020】
このとき緑泥石粉は,これを65〜85wt%,ガラス繊維は,これを8〜17wt%,硬質ウレタン粉は,これを7〜18wt%含有するものとしてあり,上記混和剤を追加的に混和するとき,例えば常法に従って定めた所定量のものを,これら緑泥石粉,ガラス繊維,硬質ウレタン粉に追加的に添加すればよい。
【0021】
緑泥石粉は,例えば産出されたものを微細粉末に粉砕したものを用いればよく,その結晶形態が板状をなすものであれば,これを幅広く採用することができる。また緑泥石粉の粒径にも特に限定はないが,一般に200メッシュを下回ると緑泥石粉が粗くなり,粘性が低くなるとともに充分な揺変性が得られず作業性が低下し易くなる傾向を生じ,一方400メッシュを上回ると,粉砕コストがアップするとともに緑泥石粉が細かく,粘性が高くなりすぎ,ベタツキ,こて切れ等の作業性が低下してセメントモルタルの塗り性が悪くなる傾向を生じる。従って該緑泥石粉の粒径は,これを200〜400メッシュ程度のものとするのが好ましい。
【0022】
緑泥石粉は,セメント混和材の65〜85wt%を占めるように含有すればよく,このとき65wt%を下回ると,緑泥石粉が量的に不足して,粘性が低くなるとともに充分な揺変性が得られず作業性が低下し易くなる傾向を生じ,また85wt%を上回ると,緑泥石粉が量的に過剰となり,ベタツキ,こて切れ等の作業性が低下してセメントモルタルの塗り性が悪くなる傾向を生じる。また緑泥石粉が70wt%を下回り,また80wt%を上回ると,それぞれ上記の傾向を招き易くなる。従って緑泥石粉の含有は,上記65〜85wt%とするのがよいが,好ましくは70〜80wt%とするのがよい。
【0023】
ガラス繊維は,長繊維のものはこれをカットによって短寸化して使用するのがよく,例えばガラス繊維が1cm程度を上回ると,セメントモルタルの混練時に凝集して均一な分散が妨げられ,均一分散を前提とする揺変性が得難くなる傾向を招き易く,また0.5mm程度を下回ると繊維長さが短寸にすぎて,均一分散するも充分な揺変性とこれによるモルタルの良好な流動性を確保し難くなる傾向を生じる。従ってガラス繊維は,これを0.5mm〜1cm程度の長さとするのが好ましい。
【0024】
ガラス繊維は,セメント混和材の8〜17wt%を占めるように含有すればよく,このとき8wt%を下回ると,ガラス繊維が量的に不足して,揺変性を充分に得られず,モルタルの流動性が低下して,緑泥石粉との相乗的な効果を得がたくなり,また17wt%を上回ると,揺変性等に変化がなく経済的に無意味となる。ガラス繊維が9wt%を下回り又は15wt%を上回るとそれぞれ上記の傾向を招きやすくなる。従ってガラス繊維の含有は,上記8〜17wt%とするのがよいが,好ましくは9〜15wt%とするのがよい。
【0025】
硬質ウレタン粉は,上記発泡したものを含めて広く使用でき,また粉末であれば,その粒径も特段に問わないが,例えば粒径が,30メッシュを下回ると粗くなり,セメントモルタル中にあって撥水性が強くなり,セメントモルタルの粘度が低下する傾向を招き易く,また200メッシュを上回ると微細となり,エフロレッセンスの発生が見られる傾向を生じる。従って硬質ウレタン粉は,これを30〜200メッシュ程度とするのが好ましい。
【0026】
硬質ウレタン粉は,セメント混和材の7〜18wt%を占めるように含有すればよく,このとき7wt%を下回ると,硬質ウレタン粉が量的に不足して,撥水性を呈することができず,重ね塗りに際して水養生を省略し得なくなるとともに,特に硬質ウレタン粉に起因するとみられるエフロレッセンスの抑制効果が低下するようになる。硬質ウレタン粉が11wt%を下回ると,上記の傾向を招き易くなる。また15wt%を上回ってもその効果は変らない。従って硬質ウレタン粉の含有は,上記7〜18wt%とするのがよく,好ましくは11〜15wt%とするのがよい。
【0027】
このときガラス繊維と硬質ウレタン粉は,ガラス繊維強化硬質ウレタン製品の加工屑,粉砕物,これらを分離した産業廃棄物再利用によるガラス繊維及び硬質ウレタンとすることができる。即ち,これら製品には,例えば軌条用の枕木,合成木材,法面用の受圧板,プラットホームのパネル,各種の蓋等があるとともにウレタンを発泡したもの,ウレタンを非発泡としたものがあるところ,例えば軌条用に用いられる枕木は,その成形後に上面に窪みを形成するために切削乃至研磨等の加工を行うとともにボルト固定用のボルト挿通孔の加工を行うものとされるためにその製品加工に伴って加工屑を生じ,これら加工屑は産業廃棄物として廃棄されている。その余の製品もそれぞれ用途に応じた製品加工を施すことによって加工屑を生じるのが一般である。また使用済の製品も産業廃棄物として廃棄されている。従ってこれらを再利用することによってセメント混和材の材料として使用すれば,環境保護に有益であるとともにそのコストを低減し得ることになる。
【0028】
加工屑は,その硬質ウレタン粉とガラス繊維の重量比,粒径,長さが上記範囲に一致したものはそのまま使用することができるが,必要に応じて更に粉砕や切断を施して粒径や長さを調整し,また硬質ウレタン粉とガラス繊維を分離して上記重量比に応じて使用し得るようにすればよい。これら硬質ウレタンとガラス繊維の分離は適宜な手段を用い得るが,例えば硬質ウレタンとガラス繊維の比重差を利用した分級,即ち遠心沈降を含めた沈降分離を施すのが,簡易にして確実にこれらの分離を行う上で有効である。因みに,例えば上記軌条用の枕木は,ガラス繊維と硬質ウレタン粉の重量比を1:1とするのが一般であるから,該枕木を使用すれば,上記重量比を略等しくするセメント混和材の材料として好適且つ有効に使用することができる。
【0029】
このように形成したセメント混和材は,これを現場でセメントモルタルに混和することが可能であるが,予めセメントモルタルに混和して工場出荷する形態とすることによって,セメントモルタルの量を考慮して行う現場での調合の煩雑さを解消して,そのまま水を加えて混練してその使用を行うことができる。このときセメントモルタルに対する該セメント混和材の混和量は,該セメントモルタルのセメント量に対して1〜7wt%とするのがよく,1wt%を下回るとセメント混和材が量的に不足して使い勝手や作業性のメリットを発揮することが難しくなり,7wt%を上回るとセメント混和材が量的に過剰となり,例えば硬質ウレタン粉が過剰で強度不足を招いたり,ガラス繊維が過剰で外観にザラツキを生じる等のセメントモルタルとしての性状を確保し難く,モルタル性能を低下させる要因ともなる。このとき2wt%を下回り,また5wt%を上回るとそれぞれの傾向を招き易くなるが,例えば2〜3wt%を上回ると上記5wt%程度まで,その上記使い勝手や作業性において変化が少なく,2〜3wt%を混和すれば充分であるとともに,これを上回る量を混和してもコストアップとなり経済的に意味がない。従ってセメントモルタルに対するセメント混和材の混和量は,上記セメント量に対して1〜7wt%とするのがよく,好ましくは2〜5wt%とするのがよく,特に好ましくは2〜3wt%とするのがよい。因みに上記海藻糊を含んだものを含めた従来のこの種混和材は,一般にセメント量に対して8〜24wt%程度を混和するものとされるところ,特に好ましい2〜3wt%の混和量は,混和量を大幅に減少し,ユーザーコストを低下させるとともにこれら従来の混和材にない上記メリットを発揮するものとすることができる。現場でセメント混和材をセメントモルタルに混和する場合並びに,特にエフロレッセンスを防止する上で,現場施工のカラーモルタルや舗道ブロック等の工場製品を生産するセメントモルタルに混和する場合についても同様である。
【0030】
以上のセメント混和材は,緑泥石粉を含むことによって,特にこての滑りをきわめて良好に確保し,セメントモルタル中に均一に分散し易く,好ましい粘性,揺変性,モルタルの流動性を確保して,モルタルの延び,ベタツキ,こて切れ,こての滑りや軽さ等を改善して使い勝手と作業性を高度に確保し,ガラス繊維を含むことによって,同じくその揺変性を向上して上記緑泥石粉と相俟って更に高度な作業性を確保し,硬質ウレタン粉が水に濡れ難いことによって撥水性を呈して,重ね塗りに際して一般に必要とされる水養生が不要とするとともにエフロレッセンスの発生を抑制するものとなり,また緑泥石粉を用いることによって比較的安価な供給が可能となる。また上記ガラス繊維強化硬質ウレタン製品の加工屑等の産業廃棄物を再利用した場合には,更に低コストのものとすることができる。従って良好なセメントモルタルの現場作業や工場生産品の生産において使い勝手と作業性を良好に確保し,エフロレッセンスの発生を抑制するセメント混和材を安価に提供することができる。また該セメント混和材を混和した既調合セメントモルタルは,これらのメリットを確保するとともに水を加えることによって混練でき,現場での調合の煩雑さを解消したものとすることができる。
【0031】
更に,セメント混和材を使用するに際して,例えばセメント量に対して2〜3wt%程度添加すると,セメントとの相乗的な作用のためと見られるが,強い撥水性を発揮するものとなるので,上記工場製品の舗道ブロックや現場施工カラーモルタル等のエフロレッセンスを防止できる。また混和剤を追加的に使用するについて,例えば市販の発泡剤や気泡剤をその指示量添加すると一種の泡モルタル状になり,かつ可使時間が長くなるので,例えば現場圧着タイルの下地モルタルに利用するとタイル張り付けの位置や,張り付け後のタイル表面の凸凹等の仕上げ調整を容易に成し得るのでタイル下地モルタルとして好適に用いることができる。また当該混和材の揺変性能により,張り付けたタイルのズレ落ちも防止できる。
【実施例1】
【0032】
緑泥石粉75wt%,ガラス繊維12.5wt%,硬質ウレタン粉12.5wt%を含有するセメント混和材を形成し,セメントと砂の比率を1:3としたセメントモルタル25kgに上記セメント混和材125g(1/4のセメント量に対して2wt%)を混和し,水4.5リットルを加えて充分に混練したモルタルの引抜きフロー値及び15回叩きフロー値を測定した。その結果を表1に示す。その後に50mのラス下地にこて塗りして,モルタルの延び,ベタツキ,こて切れ,こての軽さ,モルタルの平滑性を評価した。その結果を表2に示す。更にその圧縮強度,曲げ強度,付着強度(モルタル凝集強度)をJIS A 1171に準じて測定した。その結果を表3に示す。またモルタルをこて塗りし,28日間経過後にひび割れの有無を肉視によって確認した。
【実施例2】
【0033】
緑泥石粉を65wt%,ガラス繊維を17wt%,硬質ウレタン粉を18wt%とした以外,実施例1と同様とした。その結果を同じく表1,表2及び表3に示す。
【実施例3】
【0034】
緑泥石粉を85wt%,ガラス繊維を8wt%,硬質ウレタン粉を7wt%とした以外,実施例1と同様とした。その結果を同じく表1,表2及び表3に示す。
【比較例1】
【0035】
セメント混和材を混和しない以外,実施例1と同様とした。その結果を同じく表1,表2及び表3に示す。
【比較例2】
【0036】
緑泥石粉を55wt%,ガラス繊維を22.5wt%,硬質ウレタン粉を22.5wt%とした以外,実施例1と同様とした。その結果を同じく表1,表2及び表3に示す。
【比較例3】
【0037】
緑泥石粉を95wt%,ガラス繊維を2.5wt%,硬質ウレタン粉を2.5wt%とした以外,実施例1と同様とした。その結果を同じく表1,表2及び表3に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
以上の結果,実施例1乃至実施例3は,15回叩きフロー値が188〜193mmであり,比較例1乃至3の180〜182mmに比して揺変性が向上したものとなった。また実施例1は,特にモルタル延び,ベタツキ,こて切れ,こての軽さ,平滑性の全てにおいて◎であり,実施例2はベタツキ,こて切れ,こての軽さ,平滑性において実施例1と同様に◎,モルタル延びが○であり,実施例3は平滑性において◎,モルタル延び,ベタツキ,こて切れ,こての軽さにおいて○である一方,比較例1はモルタル延び,ベタツキ,こて切れ,こての軽さ,平滑性の全てにおいて×,比較例2はベタツキ,こて切れ,こての軽さにおいて○であるも,モルタル延びにおいて△,平滑性において×であり,比較例3はモルタル延び,こての軽さ,平滑性において△,ベタツキ,こて切れにおいて×であり,使い勝手,作業性,モルタル仕上げ面の全てにおいて実施例1乃至3が優れたものとなった。更に実施例1乃至3は,圧縮強度が45.0〜45.8,曲げ強度が7.5〜7.6,付着強度(凝集破壊の付着強度)が2.5〜2.6である一方,比較例1乃至3は,圧縮強度が44.3〜45.7,曲げ強度が7.5〜7.7,付着強度(凝集破壊の付着強度)が2.4〜2.6であり,セメント混和材を混和したことによって強度低下等を招くものではないことが確認された。更に28日経過後の肉視によるひび割れは,実施例1乃至3及び比較例1乃至3のいずれにもなく,同じくセメント混和材を混和したことによってひび割れを招くものではないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑泥石粉を65〜85wt%,ガラス繊維を8〜17wt%,硬質ウレタン粉を7〜18wt%含有してなることを特徴とするセメント混和材。
【請求項2】
上記ガラス繊維及び硬質ウレタン粉を,ガラス繊維強化硬質ウレタン系製品の加工屑,粉砕物,これらを分離した産業廃棄物再利用によるガラス繊維及び硬質ウレタンとしてなることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和材。
【請求項3】
上記セメント混和材に,発泡剤,気泡剤,消泡剤,保水剤,収縮低減剤,繊維状混和材,無機質混和材,天然砂,細骨材,分散剤,AE剤,硬化促進剤等適宜の混和剤を追加的に添加してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント混和材。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のセメント混和材を混和してなることを特徴とする既調合セメントモルタル。

【公開番号】特開2007−182351(P2007−182351A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1640(P2006−1640)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【出願人】(599080694)カドヤ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】