説明

セメント硬化物の処理システム

【課題】 セメント硬化物には、アスベストを含有するものがある。これらは通常の方法では、埋め立てや破砕はできない。そこで、種々のアスベスト固定化法が提案されている。しかし、安全で簡単な方法はなかった。
【解決手段】 セメント硬化物を処理するためのシステムであって、該セメント硬化物を5mm以下のサイズに破砕する破砕装置、該セメント硬化物を該破砕装置に搬送する第1コンベア、該破砕されたセメント硬化物を粉砕する粉砕装置、該破砕されたセメント硬化物を該粉砕装置に搬送する第2コンベア、該粉砕されたセメント硬化物に無害化剤を混合する混練機、該粉砕されたセメント硬化物を該混練機に搬送する第3コンベアを主要機器とするものにおいて、第2コンベア及び第3コンベアは密閉式であり、その入側及び出側も密閉されており、該破砕装置入口近傍には集塵機を設け破砕物が外部に出ないようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント硬化物の処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスベストは、その発ガン性が発見され、使用禁止になっているが、以前施工された建造物にはまだそのまま残っているものが非常に多い。特に、コンクリートやスレートには、種々の理由からアスベストを混合したものがある。これらは通常の方法では、埋め立てや破砕はできない。
【0003】
そこで、種々のアスベスト固定化法が提案されているが、特許文献1の方法もその1つである。
この方法は、アスベストを含有する廃材の分解処理において、アルカリ金属と硫黄とをイオン結合させた多硫化水溶液と、該廃材と破砕媒体を攪拌混合する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−34574
【0005】
しかし、このような先行技術では、特殊な薬剤が必要なばかりか、装置も大がかりにならざるをえなかった。また、大きなコンクリート塊やスレート板等はそのまま処理できないため、前処理が必要であり、装置から装置への搬送も大変であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、このような欠点がなく、スレート板等がそのまま処理でき、処理工程ごとの搬送も不要である連続システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明セメント硬化物の処理システムを完成したものであり、その特徴とするところは、セメント硬化物を処理するためのシステムであって、該セメント硬化物を5mm以下のサイズに破砕する破砕装置、該セメント硬化物を該破砕装置に搬送する第1コンベア、該破砕されたセメント硬化物を粉砕する粉砕装置、該破砕されたセメント硬化物を該粉砕装置に搬送する第2コンベア、該粉砕されたセメント硬化物に無害化剤を混合する混練機、該粉砕されたセメント硬化物を該混練機に搬送する第3コンベアを主要機器とするものにおいて、第2コンベア及び第3コンベアは密閉式であり、その入側及び出側も密閉されており、該破砕装置入口近傍には集塵機を設け破砕物が外部に出ないよう構成した点にある。
【0008】
本発明は、アスベスト含有のセメント硬化物の処理を大きな目的にするものであるが、アスベストを含有していないものでも処理できるものである。
【0009】
ここで、セメント硬化物とは、セメントとその他の混合物を混合し硬化したものをいう。コンクリート、モルタル、スレート等である。ここでいうスレートは石材ではなく、セメントとアスベスト(アスベストが禁止されてからは配合されていない)を主原料として板状や波板状に成型したものである。
【0010】
破砕装置とは、スレート板等が比較的大きなサイズのまま、投入でき、少なくとも5mm以下のサイズにまで破砕するものである。構造としては、突起付きドラムが対向して回転するタイプが好適である。ドラムの数は、通常は2対か3対がよい。
突起は超鋼ビットであり、対向するドラムのビットとかみ合わされて、突起の先端が対向ドラムの突起以外の表面にほぼ接する形状のものがよい。ドラムのサイズは外径が200mm〜400mm程度のものが好適である。
【0011】
対のドラムの回転は逆回転であるがその回転速度を変えてもよい。
両破砕ローラーの速度の相違程度は、自由であるが、線速度として、遅い方が早い方の10%〜80%程度である。中でも、20%〜40%程度が最も好適であった。実際の回転数としては、特に限定はしないが、3rpm〜100rpm程度が好適である。
【0012】
この破砕装置は、コンベアからセメント硬化物が大気開放で導入させるため、粉体が舞い上がり、大気に放出される可能性がある。よって、投入口の近傍に集塵機へのダクトを設けて吸引することが好ましい。
破砕装置の下部には、破砕されたものを装置外へ送り出すためのコンベアが設けられている。スムースに所定量送り出すためには、スクリューコンベアが好適である。
【0013】
第1コンベアは、セメント硬化物を上記破砕装置に導入するもので、通常のベルトコンベアでよい。この第1コンベアの後部は、上記破砕装置の入口に届き、自動的に被搬送物が破砕装置に導入されるようにする。その近傍は狭い入口以外は全体としてカバーされているのがよい。
【0014】
粉砕装置とは、破砕装置で細かくされたものをより、小さくするもので、最大で2mm程度で、その99%は0.5mm以下にする。細かくするのは、後述する混合工程でよく混合できるようにするためである。
【0015】
この粉砕装置は、近接対向するドラムの間で粉砕する装置である。対向するドラムは2対から4対が好適である。入口(上部)から出口(下方)にかけて対向するドラム間距離を小さくするのがよい。例えば、最初が4mmで、次が3mm、その次が2mm等である。2mm間隔のものを多段にしてもよい。
【0016】
この対向するドラムは、その表面は凹凸がないものが好適である。また、1対の左右のドラムはその回転速度を変えてもよい。
この粉砕装置にも破砕装置同様、粉砕したものを装置外へ送り出すためのコンベアが設けられている。スムースに所定量送り出すためには、スクリューコンベアが好適であることも同様である。
【0017】
第2コンベアは、第1コンベアと異なり、搬送するものがすでに破砕されており、粉体も含まれているため、アスベストが飛散する可能性がある。よって、単なるベルトコンベアのような大気開放型ではなく、密閉タイプである。例えば、スクリューコンベアのようにパイプ内で螺旋羽根が回転するようなものが好適である。
この第2コンベアと、破砕装置内のコンベアを密閉状態で接続する。
【0018】
無害化剤とは、セメント硬化物にアスベストが含有されているかいないかで異なるが、アスベストの含有が疑われる場合には、アスベスト無害化剤を用いるのが安全サイドである。勿論、全くアスベストを含有しない場合でも、アスベスト無害化剤を用いてもよい。
アスベスト無害化剤とは、アスベストと混合し、熱処理することによって無害化するものである。例えば、水ガラス溶液等であが、これは限定するものではない。
この無害化剤は、全体の25〜40重量%、好ましくは30〜35重量%、程度混合する。これは、処理する硬化物の種類やアスベストの混合量によって異なるものである。
【0019】
混練機とは、混合機であり、粉体と液体を混合するのに適したものである。
構造としては、入口から粉体を導入し、その下部に設けられたスクリューコンベアで一定量が搬送され、その搬送中に液体がノズルから導入され、混練されるものである。
粉体と無害化剤が混合されたものは、そのまま熱処理工程に導入できるものである。
【0020】
よって、混練機には液体を注入するポンプが設けられている。しかし、ポンプを設けず、重力で落下させる等の方法でもよい。
【0021】
第3コンベアは、粉砕装置から混練機に粉砕物を搬送するものであり、構造的には第2コンベアと同様のものでよい。
【0022】
破砕装置は、最初にセメント硬化物が大気開放で導入されるため、その開放された開口部から、破砕されたもの(粉体もある)が飛散する可能性がある。これを防止するものが集塵機である。上記開口部近傍から吸引することによって、粉体が大気に飛散することを防止している。
【発明の効果】
【0023】
本発明システムには次のような効果がある。
(1) セメント硬化物を、そのまま(又はある程度砕いて)第1コンベアに載置するだけで、アスベスト無害化剤と混合されたそのまま熱処理できるものができる。
(2) すべて密閉装置内で自動的に行われるため、非常に安全である。
(3) アスベスト含有セメント硬化物の破砕時に必要な安全服等が不要になるため、費用が下がり、効率が上がる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明システムの全体を示す平面図である。
【図2】図1のBB側面図である。
【図3】図1のAA側面図である。
【図4】図1のCC側面図である。
【図5】本発明システムに使用する混練機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明システム1の主要機器の配置を示す平面図である。
第1コンベア2、破砕装置3、粉砕装置4、混練機5が配置されている。この図では、第2コンベア、第3コンベア、及び各装置のカバーは略している。
【0027】
図2は、図1のBB方向から見た、側面図である。第1コンベア2は、通常のベルトコンベアであり水平から17度傾斜している。第1コンベア2の終端部は破砕装置3の上部に設けられたカバー6の開口部7から内部に入っている。
破砕装置3は上方に開口しており、その開口から被破砕物8(ここではスレート板)が投入される。ここでは、最上部の1対のドラム9間に入れられる。
【0028】
最初の1対のドラム9で破砕されたものが次のドラム対10に入り、最後にスクリューコンベア11によって排出される。図2で言うと、手前に押し出されてくる。
【0029】
図3は、図1のAA方向から見た側面図であり、第2コンベア12が、破砕装置3と粉砕装置4を連結しているところを示す。連結部分は省略している。連結はパイプやホース等でできる。
この第2コンベア12は、スクリューコンベアであり、密閉タイプである。内部のスクリューが回転すると搬送するものである。
【0030】
破砕物は、第2コンベア12から粉砕装置4に搬送される。ここで破砕物は対向するドラム間に導入され、近接ドラムで粉砕される。この例では、4段の路ラムがあり、徐々に細かくされる。最終的には、そのほとんどが0.5mm以下にされる。破砕装置3と同様に、粉砕された粉砕物は下方のスクリューコンベア13から排出される。
この粉砕装置4の入口部分には、エキセントリック振分機構が設けられできるだけ均一に破砕物が下方に送られるようにしている。この振分機構は、モーターの回転を往復運動に変えてまばらに散らす構造のものである。
【0031】
図4は、図1のCC方向から見た側面図であり、第3コンベア14が、粉砕装置4と混練機5を連結しているところを示す。連結部分(密閉式の)は省略している。第3コンベア14は、第2コンベアと同種のものである。
【0032】
図5は、混練機5の1例を示す断面図である。上部のホッパー15から粉体を密閉状態で導入する。その粉体が下方のスクリューコンベア16から搬出され、そのコンベア内に液体タンク(無害化剤溶液、図示略)の液体が液体ポンプ17によってノズルから噴射され混合される。この例ではノズルは点検用蓋に取り付けられている。
この装置は、スクリュー式の混練機であり搬送しながら混合するものである。ホッパー15には、粉体のレベルを検知する検知具18が、上下に設けられている。ここでの液体(無害化剤)は、水ガラス溶液である。
混合されたものが、排出口19から排出される。
【0033】
この排出口19から排出された混合物を以下どのように処理するかは自由であり、本発明装置とは直接関係がない。熱処理が一般的であるが限定するものではない。
【符号の説明】
【0034】
1 本発明システム
2 第1コンベア
3 破砕装置
4 粉砕装置
5 混練機
6 カバー
7 カバー開口部
8 被破砕物
9 ドラム
10 次のドラム対
11 スクリューコンベア
12 第2コンベア
13 下方のスクリューコンベア
14 第3コンベア
15 ホッパー
16 下方のスクリューコンベア
17 液体ポンプ
18 検知具
19 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント硬化物を処理するためのシステムであって、該セメント硬化物を5mm以下のサイズに破砕する破砕装置、該セメント硬化物を該破砕装置に搬送する第1コンベア、該破砕されたセメント硬化物を粉砕する粉砕装置、該破砕されたセメント硬化物を該粉砕装置に搬送する第2コンベア、該粉砕されたセメント硬化物に無害化剤を混合する混練機、該粉砕されたセメント硬化物を該混練機に搬送する第3コンベアを主要機器とするものにおいて、第2コンベア及び第3コンベアは密閉式であり、その入側及び出側も密閉されており、該破砕装置入口近傍には集塵機を設け破砕物が外部に出ないよう構成したことを特徴とするセメント硬化物の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−36799(P2011−36799A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186327(P2009−186327)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(500474941)
【Fターム(参考)】