説明

セメント系床パネル

【課題】セメントと骨材の混合材から成るセメント系床パネルの美粧効果と透水効果を向上し、更に産業廃棄物の有効利用を図るセメント系床パネルを提供する。
【解決手段】セメントと骨材の混合材から成るセメント系床パネルにおいて、該骨材として、表面に発色釉薬層を有する焼成粘土瓦の廃材を粉砕して得られた、全体が焼成粘土から成る粘土粒子2aと、表面に発色釉薬片3aが結合された粘土粒子2aとを含有し、上記発色釉薬片3aが無数に露出点在せる地肌模様を形成したセメント系床パネルP。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平屋根、バルコニー、ベランダ等の陸屋根覆工パネル、或いは広場、歩道等の地面覆工パネルとして用いられるセメント系床パネル、殊に産業廃棄物である焼成粘土瓦を骨材として有効利用したセメント系床パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
屋根葺き材として用いられている瓦の多くは焼成粘土瓦であり、殊に釉薬瓦が大部分を占めている。図1に示すように、釉薬瓦1は粘土で成形し乾燥した素地瓦2の表面に釉薬を施し、該釉薬を施した素地瓦を焼成し、該焼成により釉薬を素地瓦表面に融着し発色せしめ、発色釉薬層3を形成した構造を有する。該釉薬は成分により長石釉、フリット釉(ホウケイ酸塩釉)等に分類される。
【0003】
上記釉薬瓦1は多空隙構造の焼成粘土層から成る焼成素地瓦2と、該焼成素地瓦2の表面に硬質で耐水性に富む焼成発色釉薬層3を有する。
【0004】
他方出願人は図2に示すように、表層部を縦横の目地溝4にて多数の小ブロック5に目地割りし、下層部に網材6に代表される屈撓性連結材を埋設した床パネルPを市場に多量に供給している。
【0005】
上記床パネルPは目地溝4底部の接合部における割れ7を生起せしめて各小ブロック5を網材6にて連結しつつ屈撓せしめ、これにより敷設面の不陸を吸収して安定に敷設できるようにした構造を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して出願人は省資源、環境保全、コスト削減等の見地から、浄水場の沈殿物、焼却炉の焼却灰、鉱滓等の産業廃棄物をリサイクル骨材として再利用することについて研究と試行を重ね、これらを素材として用いたセメント系床パネルやブロックを製品化している。
【0007】
この産業廃棄物利用の研究と試行の一環として、セメント系床パネルの組成材として、粘土瓦、殊に釉薬層を有する焼成粘土瓦がパネルに美粧効果を与え、且つ透水と保水機能を与えるセメント系床パネルの骨材として適性材であることを見出し、これを利用したセメント系床パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はセメントと骨材の混合材から成るセメント系床パネルにおいて、該骨材として、表面に発色釉薬層を有する焼成粘土瓦の廃材を粉砕して得られた粘土粒子を用い、床材に求められる美粧効果と透水効果を付与したセメント系床パネルを提供するものである。
【0009】
前記焼成粘土瓦は表面に発色釉薬層を有する特有の組成構造を有し、この焼成粘土瓦を粉砕することにより、全体が焼成粘土から成る粘土粒子と、表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子とを得る。
【0010】
又上記二種類の粘土粒子に加え、焼成粘土瓦表面の釉薬層のみが剥落して粉砕された釉薬片が得られる。
【0011】
本発明は少なくとも上記発色釉薬層を有する焼成粘土瓦に由来する、全体が焼成粘土から成る粘土粒子と、表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子とをセメントと混合する。
【0012】
又はこれら両粒子と、表面の釉薬層が剥落して粉砕された発色釉薬片をセメントと混合し、加水混練してセメント系床パネルを成形する。
【0013】
該セメント系床パネルは細骨材として砂を用いず、セメントと上記釉薬瓦に由来する粘土粒子を主材としている。
【0014】
上記セメントに対する上記粘土粒子(全体が焼成粘土から成る粘土粒子と表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子)の配合比、又は発色釉薬片を含むこれら両粘土粒子の配合比は、1:2.0〜4.0が最適である。
【0015】
又は上記全体が焼成粘土から成る粘土粒子と、表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子をセメントと砂の混合材に混合し、加水混練してセメント系床パネルを成形する。
【0016】
又は上記両焼成粘土粒子と、表面の釉薬層が剥落して粉砕された焼成発色釉薬片を、セメントと砂の混合材に混合し、加水混練してセメント系床パネルを成形する。
【0017】
上記セメントに対する上記粘土粒子(全体が焼成粘土から成る粘土粒子と表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子)と砂の配合比、又はセメントに対する発色釉薬片を含むこれら両粘土粒子と砂の配合比は、1:1.0〜2.0:1.0〜2.0が最適である。
【0018】
上記セメント系床パネルは上記発色釉薬片(粘土粒子表面に結合された発色釉薬片又は/及び発色釉薬片単体)がパネル表面に無数に露出点在した地肌模様を形成する。この地肌模様は砂を配合しない場合に、より顕著である。
【0019】
実施に応じ、上記各セメント系床パネルの表面をショットブラスト加工により粗面に形成すると共に、該ショットブラスト加工により該粗面に上記発色釉薬片(粘土粒子表面に結合された発色釉薬片又は/及び発色釉薬片単体)が無数に露出点在し形成された地肌模様を顕在化せしめ、該発色釉薬片に由来する地肌模様と上記粗面とが協働してパネル表面に特有の地肌模様を醸成する。
【発明の効果】
【0020】
上記セメント系床パネルは、防水施工を施した平屋根、バルコニー、ベランダ等に敷設して防水層を保護しつつ歩行面を形成すると共に、雨水を透水せしめて防水層で遮水する機能を有し、上記焼成粘土瓦に由来する粘土粒子はセメント系床パネルにこの透水性能を富有せしめる。
【0021】
同様に広場や歩道等の地面を覆工したセメント系床パネルは、上記焼成粘土瓦に由来する粘土粒子が同パネルに透水性能を富有せしめ、雨水等を地面に浸透せしめる機能を富化する。
【0022】
更に上記セメント系床パネルは雨水又は散水を保水して太陽熱を吸収し、保水水分の蒸発によって該太陽熱を放出し冷却する機能に富み、自然環境を保全する陸屋根の床パネルとして有効である。
【0023】
上記ショットブラスト加工を施して粗面にした床パネルは、上記釉薬片が表面に点在する効果と相俟ってその表飾効果を高め、又ショットブラストによる粗面は透水効果を更に向上する。
【0024】
又本発明は産業廃棄物の有効利用を図ると共に、セメント系床パネルのコスト削減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図6に基づいて説明する。図1に基づき説明したように、釉薬瓦1は多空隙構造の焼成粘土層から成る焼成素地瓦2と、該焼成素地瓦2の表面に硬質で耐水性に富む焼成発色釉薬層3を有する。
【0026】
本発明はセメントと骨材の混合材から成るセメント系床パネルにおいて、該骨材として、上記表面に発色釉薬層3を有する焼成粘土瓦(釉薬瓦)1の廃材を資材とし、該釉薬瓦1を粉砕して得られた粘土粒子を用い、床材に求められる美粧効果と透水効果を付与したセメント系床パネルPを提供するものである。
【0027】
前記焼成粘土瓦1は表面に発色釉薬層3を有する特有の組成構造を有し、この焼成粘土瓦1を粉砕することにより、図3Aに拡大概示する全体が焼成粘土から成る粘土粒子2aと、図3Bに拡大概示する表面に発色釉薬片3aが結合された粘土粒子2aとを得る。
【0028】
上記粘土粒子2aは1mm〜10mmのものが混在した大きさである。
【0029】
又上記二種類の粘土粒子2aに加え、図3Cに拡大概示する焼成粘土瓦表面の釉薬層3のみが剥落して粉砕された釉薬片3aを得る。
【0030】
第一実施例は、少なくとも上記発色釉薬層3を有する焼成粘土瓦1に由来する、全体が焼成粘土から成る粘土粒子2aと、表面に発色釉薬片3aが結合された粘土粒子2aとをセメントと混合する。
【0031】
又はこれら両粒子2aと、表面の釉薬層3が剥落して粉砕された発色釉薬片3aをセメントと混合し、加水混練して図4に例示するセメント系床パネルPを成形する。
【0032】
該セメント系床パネルPは細骨材として砂を用いず、セメントと上記釉薬瓦1に由来する粘土粒子2aを主材としている。
【0033】
上記セメントAに対する上記粘土粒子(全体が焼成粘土から成る粘土粒子と表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子)2aの配合比、又は発色釉薬片3aを含むこれら両粘土粒子2aの配合比は、A:2a=1:2.0〜4.0とする。
【0034】
又は第二実施例として、上記全体が焼成粘土から成る粘土粒子2aと、表面に発色釉薬片3aが結合された粘土粒子2aをセメントと砂の混合材に混合し、加水混練して図4に例示するセメント系床パネルPを成形する。
【0035】
又は上記両焼成粘土粒子2aと、表面の釉薬層3が剥落して粉砕された焼成発色釉薬片3aを、セメントと砂の混合材に混合し、加水混練して図4に例示するセメント系床パネルPを成形する。
【0036】
粘土粒子2aは上記加水混練時に、崩壊されて更に細分化され、釉薬片3aは粘土粒子2aから剥離される。
【0037】
上記セメントAに対する上記粘土粒子(全体が焼成粘土から成る粘土粒子と表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子)2aと砂Bの配合比、又はセメントAに対する発色釉薬片3aを含むこれら両粘土粒子2aと砂Bの配合比は、A:2a:B=1:1.0〜2.0:1.0〜2.0とする。
【0038】
上記図4に示すセメント系床パネルPは図2に基づき説明したように、表層部を縦横の目地溝4にて多数の小ブロック5に目地割りし、下層部に網材6に代表される屈撓性連結材を埋設し、目地溝4底部の接合部における割れ7を生起せしめて各小ブロック5を網材6にて連結しつつ屈撓せしめ、これにより敷設面の不陸を吸収して安定に敷設できるようにした構造を有する。上記割れ7は雨水の透過に寄与する。
【0039】
図5に示すように、上記第一、第二実施例に係るセメント系床パネルPは上記発色釉薬片(粘土粒子表面に結合された発色釉薬片又は/及び発色釉薬片単体)3aがパネル表面に無数に露出点在した地肌模様を形成する。この地肌模様は砂を配合しない場合に、より顕著である。
【0040】
第三実施例として、図6に示すように、上記第一、第二実施例に係るセメント系床パネルPの表面をショットブラスト加工により粗面8に形成すると共に、該ショットブラスト加工により該粗面8に上記発色釉薬片(粘土粒子表面に結合された発色釉薬片又は/及び発色釉薬片単体)3aが無数に露出点在し形成された地肌模様を顕在化せしめ、該発色釉薬片3aに由来する地肌模様と上記粗面8とが協働してパネル表面に特有の地肌模様を醸成する。
【0041】
上記セメント系床パネルPは、防水施工を施した平屋根、バルコニー、ベランダ等に敷設して防水層を保護しつつ歩行面を形成すると共に、雨水を透水せしめて防水層で遮水する機能を有し、上記焼成粘土瓦に由来する粘土粒子はセメント系床パネルPにこの透水性能を富有せしめる。
【0042】
同様に広場や歩道等の地面を覆工したセメント系床パネルPは、上記焼成粘土瓦に由来する粘土粒子が同パネルに透水性能を富有せしめ、雨水等を地面に浸透せしめる機能を富加する。
【0043】
更に上記セメント系床パネルPは雨水又は散水を保水して太陽熱を吸収し、保水水分の蒸発によって該太陽熱を放出し冷却する機能に富み、自然環境を保全する床パネル、特に建物の陸屋根の床パネルとして最適である。
【0044】
又上記ショットブラスト加工を施して粗面8にした床パネルPは、上記透水効果を更に向上する。
【0045】
又上記セメント系床パネルによって瓦製造工場又は建築現場から多量に排出される焼成粘土瓦(産業廃棄物)の有効利用を図ると共に、セメント系床パネルのコスト削減に著しく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】釉薬瓦、即ち焼成粘土瓦を概示する断面図。
【図2】出願人が販売するセメント系床パネルの代表例を概示する断面図。
【図3】Aは上記釉薬瓦を粉砕して得られる全体が焼成粘土から成る粘土粒子を概示する拡大断面図、Bは同表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子を概示する拡大断面図、Cは同発色釉薬片を概示する拡大断面図。
【図4】上記各両粘土粒子又は両粘土粒子と発色釉薬片を骨材として用いたセメント系床パネルの代表例を概示する断面図。
【図5】上記セメント系床パネルの表面の地肌模様を概示する拡大断面図。
【図6】上記ショットブラスト加工により粗面にしたセメント系床パネルの表面の地肌模様を概示する拡大断面図。
【符号の説明】
【0047】
1…釉薬瓦、焼成粘土瓦、2…焼成素地瓦、2a…粘土粒子、3…焼成発色釉薬層、3a…発色釉薬片、4…目地溝、5…小ブロック、6…網材、7…割れ、8…粗面、A…セメント、B…砂、P…セメント系床パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと骨材の混合材から成るセメント系床パネルにおいて、該骨材として、表面に発色釉薬層を有する焼成粘土瓦の廃材を粉砕して得られた、全体が焼成粘土から成る粘土粒子と、表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子とを含有し、上記発色釉薬片が無数に露出点在せる地肌模様を形成したことを特徴とするセメント系床パネル。
【請求項2】
セメントと骨材の混合材から成るセメント系床パネルにおいて、該骨材として、表面に発色釉薬層を有する焼成粘土瓦の廃材を粉砕して得られた、全体が焼成粘土から成る粘土粒子と、表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子とを含有し、表面をショットブラスト加工により粗面にすると共に、該粗面にショットブラスト加工により上記発色釉薬片が無数に露出点在せる地肌模様を形成したことを特徴とするセメント系床パネル。
【請求項3】
上記セメント1に対し、砂1.0〜2.0、上記粘土粒子(全体が焼成粘土から成る粘土粒子と表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子)1.0〜2.0の骨材を配合して成ることを特徴とする請求項1又は2記載のセメント系床パネル。
【請求項4】
上記セメント1に対し、上記粘土粒子(全体が焼成粘土から成る粘土粒子と表面に発色釉薬片が結合された粘土粒子)2.0〜4.0の骨材を配合して成ることを特徴とする請求項1又は2記載のセメント系床パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−106660(P2007−106660A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302242(P2005−302242)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(591281459)マックストン株式会社 (25)
【Fターム(参考)】