説明

セラミック基板の製造方法

【課題】拘束性を確保しつつ、脱脂性を向上させることのできるセラミック基板の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック基板の製造方法は、基材用セラミック粉末を含む成形体7を形成する工程と、成形体7の少なくとも一方の主面上に、成形体7の焼成温度では実質的に焼結しない第1拘束層用セラミック粉末を含む第1拘束層5を形成する工程と、第1拘束層5上に、前記第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径よりも平均粒径が大きく、成形体7の焼成温度では実質的に焼結しない、第2拘束層用セラミック粉末を含む、第2拘束層6を形成して、複合積層体10を形成する工程と、複合積層体10を焼成して複合焼成体11を得る工程と、複合焼成体11から第1拘束層5と第2拘束層6とを除去してセラミック基板9を得る工程と、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の製造方法に関する。特に、いわゆる無収縮プロセスを利用するセラミック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数のセラミック層を備えるセラミック基板がある。通常、そのようなセラミック基板には、その表面や内部に導体パターンが形成されている。導体パターンには、セラミック層の平面方向に延びる面内導体とセラミック層を厚み方向に貫通するように延びる層間接続導体とがある。
【0003】
セラミック基板を得るためには、セラミック粉末を含むグリーンシートを積層してなる成形体を焼成するが、焼成工程において、成形体は収縮する。その収縮が均一には生じないため、セラミック基板の平面方向の寸法ずれが生じたり、セラミック基板全体に反りやうねりが生じたりすることがある。この問題の対策として、セラミック基板の平面方向における焼成収縮を実質的に生じさせない方法である、いわゆる無収縮プロセスが知られている。無収縮プロセスは、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1では、図5のように、成形体105の両主面に拘束層103が形成されている。拘束層103に含まれるAl23粉末は成形体の焼成温度では実質的に焼結しないため、拘束層は実質的に収縮せず、成形体の両主面に拘束力を及ぼす。このため、成形体105は実質的に厚み方向にのみ収縮する。そして、焼成工程の後、拘束層103を除去することによって、寸法精度が高く、反りやうねりの小さいセラミック基板が取り出される。
【0005】
この無収縮プロセスにおいて、拘束性は拘束層の厚みと拘束層に含まれるセラミック粉末の粒径の両方に影響される。すなわち、拘束層の厚みが厚いほど、また、拘束層に含まれるセラミック粉末の粒径が小さいほど拘束性を向上させることができる。一方で、微粒のセラミック粉末を拘束層に用いると拘束層の除去性が低下する。そのため、拘束層のセラミック粉末の粒径は拘束性と除去性の両方の観点から決定され、拘束性については拘束層の厚みを厚くすることで補っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2554415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、生産性を向上させるために焼成時間を短くしたり、比較的厚いセラミック基板を作製する場合には、微粒のセラミック粉末を用いた拘束層では焼成後のセラミック基板にクラックや膨れ、デラミネーション等の欠陥が発生するという問題が生じた。原因は、脱脂時間が十分でないために、グリーンシート内の残留炭素量が多いことにある。脱脂工程後の残留炭素量が多いと、その後の焼成工程で残留炭素成分がガス化してセラミック基板にデラミネーションや膨れを生じさせてしまうからである。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであり、拘束性を確保しつつ、脱脂性を向上させることのできるセラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセラミック基板の製造方法は、基材用セラミック粉末を含む成形体を形成する工程と、前記成形体の少なくとも一方の主面上に、前記成形体の焼成温度では実質的に焼結しない第1拘束層用セラミック粉末を含む第1拘束層を形成する工程と、前記第1拘束層上に、前記第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径よりも平均粒径が大きく、前記成形体の焼成温度では実質的に焼結しない、第2拘束層用セラミック粉末を含む、第2拘束層を形成して、複合積層体を形成する工程と、前記複合積層体を焼成して複合焼成体を得る工程と、前記複合焼成体から前記第1拘束層と前記第2拘束層とを除去してセラミック基板を得る工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明では、第2拘束層に含まれる第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径が、第1拘束層に含まれる第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径よりも大きい。そのため、第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径を微粒にすることで拘束性を確保しつつ、第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径を粗粒にして脱脂性を向上させることができる。
【0011】
ここで、成形体が基材層用グリーンシートを積層して形成される場合には、第1拘束層は、複数の基材層用グリーンシートを積層した後に形成してもよいし、基材層用グリーンシートを積層する前に成形体の主面を構成するグリーンシート上に形成してもよい。
【0012】
また、本発明に係るセラミック基板の製造方法は、前記第2拘束層の前記第2拘束層用セラミック粉末に対するバインダ量が、前記第1拘束層の前記第1拘束層用セラミック粉末に対するバインダ量よりも少ないことが好ましい。
【0013】
かかる場合には、バインダの脱脂性がより向上する。
【0014】
また、本発明に係るセラミック基板の製造方法は、前記第2拘束層のバインダがアクリル系であることが好ましい。
【0015】
アクリル系のバインダはブチラール系のバインダに比べて低温で分解されるため脱脂されやすい。そのため、かかる場合にはバインダの脱脂性がより向上する。
【0016】
また、本発明に係るセラミック基板の製造方法は、前記第1拘束層のバインダがブチラール系であることが好ましい。
【0017】
ブチラール系のバインダは強度が高く、固いグリーンシートとなる。そのため、かかる場合には成形体と第1拘束層との間にある電極を成形体側に押し込みやすくなり、セラミック基板の平坦性が向上する。
【0018】
また、本発明に係るセラミック基板の製造方法は、前記第1拘束層のバインダがアクリル系であることが好ましい。
【0019】
アクリル系のバインダはブチラール系のバインダに比べて低温で分解されるため脱脂されやすい。そのため、かかる場合にはバインダの脱脂性がより向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、第2拘束層に含まれる第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径が、第1拘束層に含まれる第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径よりも大きい。そのため、第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径を微粒にすることで拘束性を向上させるとともに、第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径を粗粒にすることで、拘束層全体の厚みを厚くして拘束性を確保しつつ、脱脂性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るセラミック基板の製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明に係るセラミック基板の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明に係るセラミック基板の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明に係るセラミック基板の製造方法を示す断面図である。
【図5】従来のセラミック基板の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
図1〜図4は、本発明に係るセラミック基板の製造方法を示す断面図である。
【0024】
まず、図1に示すように、基材層用グリーンシート1aを用意する。基材層用グリーンシート1aは、下記の方法で得ることができる。すなわち、基材用セラミック粉末を、バインダ、溶剤、可塑剤等からなるビヒクル中に分散させることによって、スラリーを作製する。次いで、得られたスラリーをドクターブレード法のようなキャスティング法によってシート状に成形する。
【0025】
基材用セラミック粉末としては、例えばCaO−SiO2−Al23−B23系ガラス粉末とアルミナ粉末とを混合した粉末が挙げられる。より具体的には、CaOを0〜55重量%、SiO2を45〜70重量%、Al23を0〜30重量%、及び不純物を0〜10重量%含み、かつこれら100重量部に対してB23を5〜20重量部含むガラス粉末が挙げられる。このガラス粉末は、上記の割合で秤量後に1200℃以上の温度で溶融してガラス化した後に急冷して、これを粉砕することによって得られる。基材用セラミック粉末は、例えば、このガラス粉末を50〜65重量%(好ましくは60重量%)と、不純物が0〜10重量%のアルミナ粉末50〜35重量%(好ましくは40重量%)とを混合したものを用いる。
【0026】
バインダとしては、例えば、アクリル系樹脂またはブチラール系樹脂が用いられる。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エタノール、水系溶剤が用いられる。可塑剤としては、例えば、DOP(ジオクチルフタレート)やDBP(ジブチルフタレート)が用いられる。
【0027】
上述したスラリーは、例えば、粘度1000〜40000mPa・sに調整される。基材層用グリーンシート1aの厚みは、例えば0.02〜0.4mmがとされる。
【0028】
そして、同じく図1に示すように、パンチング加工やレーザー加工等により、基材層用グリーンシート1aに層間接続導体用孔2を形成する。そして、層間接続導体用孔2に、導電性ペーストを充填して、層間接続導体3を形成する。また、基材用グリーンシート1a上に導電性ペーストを印刷することによって、面内導体4を形成する。なお、図示した実施形態では、一部の面内導体4については、後述する第1拘束層用グリーンシート5a上に形成される。
【0029】
上述した層間接続導体3および面内導体4を形成するための導電性ペーストは、例えば銀または銅を主成分とするものが挙げられる。その他、Ag/Pd、Ag/Ptを主成分としても良い。また、導電性ペーストに代えて、必要に応じて抵抗ペーストやガラスペーストが用いられても良い。
【0030】
そして、同じく図1に示すように、第1拘束層用グリーンシート5aと第2拘束層用グリーンシート6aとを用意する。第1拘束層用グリーンシート5aは第1拘束層用セラミック粉末を含む。また、第2拘束層用グリーンシート6aは第2拘束層用セラミック粉末を含む。第1拘束層用セラミック粉末と第2拘束層用セラミック粉末は、上記の基材層用グリーンシート1aならびに層間接続導体3および面内導体4の焼成温度では実質的に焼結しないものが選択される。例えばアルミナ粉末が挙げられる。アルミナ粉末の場合、焼結温度は1500〜1600℃である。
【0031】
第1拘束層用グリーンシート5aと第2拘束層用グリーンシート6aとは、基材層用グリーンシート1aと同様の方法で作製することができる。
【0032】
本発明では、第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径が、第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径よりも大きい。一般的に、第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径が小さいほど、拘束力は大きくなる。具体的には、第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径は0.1〜0.5μmが好ましい。また、一般的に、第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径が大きいほど、シート密度が低下するため脱脂性は向上する。具体的には、第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径は1μm〜5μmが好ましい。
【0033】
次に、図2に示すように、成形体7を形成する。成形体7は、基材層1と層間接続導体3と面内導体4とを備える。そして、成形体7の少なくとも一方の主面上に、第1拘束層5を形成する。そして、第1拘束層5上に、第2拘束層6を形成して複合積層体10を得る。
【0034】
具体的には、図1で用意した複数の基材層用グリーンシート1a、第1拘束層用グリーンシート5a、第2拘束層用グリーンシート6aを所定の順に積層して、圧着する。この工程により、成形体7と第1拘束層5と第2拘束層6とを備える複合積層体10を得る。第1拘束層の厚みは例えば50μm〜100μmが好ましい。第2拘束層の厚みは例えば50μm〜150μmが好ましい。拘束層全体の厚みは例えば150μm〜200μmが好ましい。圧着は、静水圧プレスや、金型を用いた一軸プレスを用いて行う。圧着時の圧力は例えば10〜180MPaである。また、圧着時の温度は例えば50〜80℃である。
【0035】
なお、本実施形態では、セラミック基材層1は、上述したキャスティング法により形成した基材層用グリーンシート1aによって与えられる。厚膜印刷法により形成した厚膜印刷層によって与えられても良い。また、第1拘束層5、第2拘束層6を各1枚の第1拘束層用グリーンシート5a、第2拘束層グリーンシート6aで構成したが、必要に応じて複数枚のグリーンシートで構成しても良い。また、第1拘束層5と第2拘束層6とは、それぞれ第1拘束層用グリーンシート5aと第2拘束層用グリーンシート6aによって与えられているが、厚膜印刷法により形成した厚膜印刷層によって与えられても良い。
【0036】
その後、図3に示すように、得られた複合積層体10を焼成して複合焼成体11を得る。焼成の結果、成形体7は焼成体8となる。第1拘束層5と第2拘束層6とは、成形体の焼成温度では実質的に焼結しない。したがって、第1拘束層5と第2拘束層6とは実質的に収縮せず、成形体7の主面に拘束力を及ぼす。このため、成形体7は実質的に厚み方向にのみ収縮する。焼成に際しては、一回の焼成において脱脂工程と焼成工程を併せて行ってもよいし、焼成の前に別途脱脂を行ってもよい。
【0037】
そして、図4に示すように、複合焼成体から第1拘束層5と第2拘束層6とを除去して、セラミック基板9を得る。除去の方法としては、例えば超音波洗浄法やブラスト法が挙げられる。
【0038】
[実験例1]
以下のようにして、セラミック基板を作製した。実験例1では、第1拘束層用セラミック粉末と第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径を変えた試料を作製した。また、第1拘束層用グリーンシートと第2拘束層用グリーンシートのバインダ種およびバインダ量を変えた試料を作製した。
【0039】
まず、基材層用グリーンシートを以下のように用意した。具体的には、SiO2、CaO、Al23及びB23の各粉末を混合したガラス粉末とアルミナ粉末とを混合した。この混合粉末に対して、有機バインダおよび溶剤としてトルエン、エタノールを添加して混合した。具体的には、ボールミルで十分に混合することによって均一な分散状態を得た。その後、減圧下で脱泡処理を行い、スラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレードを用いたキャスティング法で、キャリアフィルム上でシート状に成形した。この工程により厚み0.30mmの基材層用グリーンシートを作製した。この基材層用グリーンシートを乾燥させた後、平面寸法が150mm□の大きさとなるようにキャリアフィルム毎カットした。
【0040】
次に、拘束層用グリーンシートを以下のように用意した。具体的には、アルミナ粉末に対して有機バインダと溶剤を添加して混合した。有機バインダとしては、ブチラール系とアクリル系を用いた。溶剤としてはトルエンとエタノールを用いた。具体的には、ボールミルで十分に混合することによって均一な分散状態を得た。その後、減圧下で脱泡処理を行い、スラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレードを用いたキャスティング法で、キャリアフィルム上でシート状に成形した。この工程により厚み0.10mmの拘束層用グリーンシートを作製した。この拘束層用グリーンシートを乾燥させた後、平面寸法が150mm□の大きさとなるようにキャリアフィルムごとカットした。
【0041】
そして、パンチング加工やレーザー加工等により、基材層用グリーンシートに層間接続導体用孔を形成した。そして、層間接続導体用孔に導電性ペーストを充填することによって、層間接続導体を形成した。また、基材層用グリーンシート上に導電性ペーストを印刷することによって、面内導体を形成した。なお、一部の導電性ペーストについては、拘束層用グリーンシートに印刷して形成した。
【0042】
そして、複合積層体を以下のように得た。具体的には層間接続導体や面内導体を形成した4枚の基材層用グリーンシートと、第1拘束層用グリーンシートと、第2拘束層用グリーンシートとを所定の順に積層して圧着した。この工程により、成形体7と第1拘束層5と第2拘束層6とを備える複合積層体を得た。圧着時の圧力は10〜180MPaとした。また、圧着時の温度は50〜80℃とした。
【0043】
次に、複合積層体を最高温度900℃のプロファイルで焼成して複合焼成体を得た。この実験例においては、1回の焼成において脱脂と焼成を行い、200℃〜400℃までの範囲を脱脂工程とした。そして、複合焼成体から、第1拘束層と第2拘束層を除去した。除去の方法は超音波洗浄法とブラスト法とした。このようにして、105mm×105mm×0.6mmのセラミック基板を得た。
【0044】
そして、得られた試料に対して脱脂性と拘束性の評価を行った。脱脂性の評価としては、脱脂工程が8時間、4時間、2時間の3つの場合について、焼成後のセラミック基板にクラック、デラミネーション、膨れ等の異常があるかどうかの外観観察を行った。そして、脱脂工程にかける時間が8時間、4時間、2時間のいずれの場合も外観に異常がない場合を◎、8時間および4時間の場合には外観に異常がないが2時間の場合には異常がある場合を○、8時間の場合には外観に異常がないが4時間および2時間の場合に異常がある場合を×とした。拘束性の評価としては、反り量をレーザー変位計で測定した。そして、反り量が0.3mm未満の場合を○、0.3mm以上の場合を×とした。
【0045】
表1に実験条件と実験結果を示す。表1中の平均粒径と比表面積の欄の「第1」は第1拘束層用セラミック粉末を示し、「第2」は第2拘束層用セラミック粉末を示す。
【0046】
また、バインダ種とバインダ量の欄の「第1」は第1拘束層を示し、「第2」は第2拘束層を示す。平均粒径は、レーザー回析粒度分布測定装置を用いて測定した。また、比表面積は、ガス吸着法(BET法)を用いて測定した。バインダ量は、拘束層中の、拘束層用セラミック粉末に対するバインダ量を規定している。
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径が第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径よりも大きい条件1〜4では、短い脱脂時間でも脱脂性と拘束性を両立させたセラミック基板が作製できていることが分かる。また、条件2では、第2拘束層の第2拘束層用セラミック粉末に対するバインダ量が、第1拘束層の第1拘束用セラミック粉末に対するバインダ量よりも少ない。かかる条件では、複合積層体の一番外側の層となる第2拘束層のバインダ量が少なくなる。したがって、さらに短い脱脂時間でも脱脂性は良好であった。
【0049】
また、条件3、4では、第2拘束層のバインダがアクリル系である。アクリル系のバインダはブチラール系のバインダに比べて低温で分解されるため脱脂されやすい。そのため、さらに短い脱脂時間でも脱脂性は良好であった。
【0050】
条件3では、第1拘束層のバインダがブチラール系である。ブチラール系バインダは強度が高く、固いシートとなる。そのため、成形体と第1拘束層との間にある電極を成形体側に押し込みやすくなる。したがって、セラミック基板の最外層に形成された電極が突出しなくなるため、平坦性の高いセラミック基板が得られる。
【0051】
条件4では、第1拘束層のバインダがアクリル系である。アクリル系のバインダは脱脂されやすい。そのため、さらに短い脱脂時間でも脱脂性は良好であった。
【0052】
条件5では、第1拘束層、第2拘束層ともに微粒のセラミック粉末を用いている。かかる場合には、拘束性は確保されるものの、脱脂性が低下する。また、条件6では、第1拘束層、第2拘束層ともに粗粒のセラミック粉末を用いている。かかる場合には、脱脂性は良いが、拘束性が低下する。また、条件7では、第2拘束層用セラミック粉末の平均粒径が第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径より小さい。かかる場合には、脱脂性が低下する結果となった。
【符号の説明】
【0053】
1a 基材層用グリーンシート
1 基材層
2 層間接続導体用孔
3 層間接続導体
4 面内導体
5a 第1拘束層用グリーンシート
5 第1拘束層
6a 第2拘束層用グリーンシート
6 第2拘束層
7 成形体
8 焼成体
9 セラミック基板
10 複合積層体
11 複合焼成体
101 炉ベルト
103 拘束層
105 成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材用セラミック粉末を含む成形体を形成する工程と、
前記成形体の少なくとも一方の主面上に、前記成形体の焼成温度では実質的に焼結しない第1拘束層用セラミック粉末を含む第1拘束層を形成する工程と、
前記第1拘束層上に、前記第1拘束層用セラミック粉末の平均粒径よりも平均粒径が大きく、前記成形体の焼成温度では実質的に焼結しない、第2拘束層用セラミック粉末を含む、第2拘束層を形成して、複合積層体を形成する工程と、
前記複合積層体を焼成して複合焼成体を得る工程と、
前記複合焼成体から前記第1拘束層と前記第2拘束層とを除去してセラミック基板を得る工程と、
を備える、セラミック基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2拘束層の前記第2拘束層用セラミック粉末に対するバインダ量が、前記第1拘束層の前記第1拘束層用セラミック粉末に対するバインダ量よりも少ない、請求項1に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2拘束層のバインダがアクリル系である、請求項1または2に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1拘束層のバインダがブチラール系である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1拘束層のバインダがアクリル系である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−171481(P2011−171481A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33401(P2010−33401)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】