セラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体
【課題】焼成時の剥離や割れを効果的に抑制することができるセラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体を提供すること。
【解決手段】材料組成の異なる第1セラミックシート及び第2セラミックシートと、両者の間に配置された中間層とを有するセラミック積層体の製造方法は、第1セラミックシート形成用の第1グリーンシート210と第1グリーンシート210よりも焼結開始温度が高い第2セラミックシート形成用の第2グリーンシート220との間に、焼結開始温度が両者の間にある中間層形成用の中間ペースト30を配置して未焼積層体10を得た後、未焼積層体10を一体焼成する。
【解決手段】材料組成の異なる第1セラミックシート及び第2セラミックシートと、両者の間に配置された中間層とを有するセラミック積層体の製造方法は、第1セラミックシート形成用の第1グリーンシート210と第1グリーンシート210よりも焼結開始温度が高い第2セラミックシート形成用の第2グリーンシート220との間に、焼結開始温度が両者の間にある中間層形成用の中間ペースト30を配置して未焼積層体10を得た後、未焼積層体10を一体焼成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子等に用いられる、複数のセラミックシートを積層してなるセラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関の排ガス中のガス成分の検知及び測定に用いられるガスセンサとして、空燃比センサ、窒素酸化物センサ等が開発されている。
このようなガスセンサに組み込まれるガスセンサ素子としては、例えば、アルミナやジルコニア等の材料により構成された複数のセラミックシートを積層したセラミック積層体からなる積層型のガスセンサ素子が知られている。
【0003】
上記セラミック積層体は、例えば、複数のグリーンシートを積層、圧着し、これを焼成することによって作製される。
ところが、隣接するグリーンシート同士の材料組成が異なる場合、焼成時の収縮挙動等が異なるため、両シートの界面に応力が発生し、シートの剥離や割れが発生するという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、材料組成の異なるグリーンシートの間に、組成が順次変化する傾斜構造が形成されるように複数の傾斜グリーンシートを配置し、熱サイクル等によるストレスを緩和するセラミック積層体の製造方法が提案されている。
また、特許文献2では、材料組成の異なるグリーンシートの間に、隣接するグリーンシートとの接合面において化学反応等を起こさず潤滑的な機能を奏する白金及び/又はパラジウムの金属粉末を含む金属ペーストを配置し、互いのグリーンシートが独立して収縮するようにして収縮差による不具合の発生を防止するセラミック積層体の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−148128号公報
【特許文献2】特開平8−188481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2で提案されているセラミック積層体の製造方法では、焼成時において傾斜グリーンシートや金属ペーストと隣接するグリーンシートとの間に依然として応力が発生しており、焼成時におけるシートの剥離や割れを十分に抑制することができなかった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、焼成時の剥離や割れを効果的に抑制することができるセラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、材料組成の異なる第1セラミックシート及び第2セラミックシートと、両者の間に配置された中間層とを有するセラミック積層体を製造する方法であって、
上記第1セラミックシート形成用の第1グリーンシートと該第1グリーンシートよりも焼結開始温度が高い上記第2セラミックシート形成用の第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間層形成用の中間ペーストを配置して未焼積層体を得た後、該未焼積層体を焼成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明のセラミック積層体の製造方法により製造されてなることを特徴とするセラミック積層体にある(請求項9)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明のセラミック積層体の製造方法においては、焼結開始温度が低温側の上記第1グリーンシートと高温側の上記第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間ペーストを配置し、これらを積層した未焼積層体を得る。そして、この未焼積層体を焼成することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
すなわち、例えば、材料組成の異なるグリーンシート(以下、適宜、シートという)を隣接して積層した場合、各シートは、焼成時の昇温過程において焼結を開始して収縮する。このとき、収縮挙動の差異(例えば、収縮率の差)等により、シート間の界面に応力が発生する。特に、焼結開始温度が異なる場合には、一方のシートの焼結(収縮)が開始され、他方のシートの焼結(収縮)が開始されていないような焼結初期段階において、シート間の界面に大きな応力が発生する。そして、焼結開始温度の差が大きくなればなるほど、一方のシートが焼結を開始してから他方のシートが焼結を開始するまでの時間が長くなり、焼結初期段階においてシート間の界面に大きな応力が加わり続けることになる。そして、これらの応力は、剥離や割れの大きな原因となる。
【0012】
しかしながら、本発明の製造方法においては、焼結開始温度が低温側の上記第1グリーンシートと高温側の上記第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間ペーストを配置する。そのため、上記第1グリーンシートの焼結が開始されてから上記第2グリーンシートの焼結が開始されるまでの間に、上記中間ペーストの焼結が開始される。これにより、隣接する上記第1及び第2グリーンシートと上記中間ペーストとの間(以下、層間という)の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間の界面に発生する応力を低減することができる。そして、このように焼結初期段階において各層間の界面に発生する応力を低減することにより、焼成時の剥離や割れの発生を特に効果的に抑制することができる。
【0013】
第2の発明のセラミック積層体は、上記第1の発明のセラミック積層体の製造方法により製造されたものである。そのため、上記セラミック積層体は、剥離や割れのない、高品質のものとなる。
【0014】
このように、本発明によれば、焼成時の剥離や割れを効果的に抑制することができるセラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、セラミック積層体を示す説明図。
【図2】実施例1における、第2グリーンシート上に中間ペーストを印刷した状態を示す説明図。
【図3】実施例1における、中間ペースト上に第1グリーンシートを積層する状態を示す説明図。
【図4】実施例1における、未焼積層体を示す説明図。
【図5】実施例1における、中間アルミナ原料の粒度分布を示す説明図。
【図6】実施例1における、アルミナ原料粉の解砕時間とS1/S2の値との関係を示す説明図。
【図7】実施例1における、温度と焼成収縮率との関係を示す説明図。
【図8】実施例1における、粒度分布比S1/S2と焼結開始温度との関係を示す説明図。
【図9】実施例2における、試料2の第1セラミックシートのSEM写真。
【図10】実施例2における、試料2の中間層のSEM写真。
【図11】実施例2における、試料3の中間層のSEM写真。
【図12】実施例2における、試料4の中間層のSEM写真。
【図13】実施例3における、ガスセンサ素子の構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、「焼結開始温度」とは、脱脂後のグリーンシートに対して焼成を行った場合に、その焼成時の昇温過程において収縮率が1%となった時点の温度をいう。このとき、グリーンシートの脱脂後の状態を基準(収縮率0%)とする。
【0017】
また、上記中間ペーストと上記第1グリーンシートとの焼結開始温度の差及び上記中間ペーストと上記第2グリーンシートとの焼結開始温度の差がいずれも150℃以下であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、各層間の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間の界面に発生する応力を確実に低減することができる。
【0018】
また、上記第1グリーンシートは、アルミナ原料を主成分とし、上記第2グリーンシートは、ジルコニア原料を主成分とすることが好ましい(請求項3)。
この場合には、アルミナとジルコニアとは焼結開始温度が異なるため、本発明を採用することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという効果を有効に発揮することができる。
【0019】
また、上記中間ペーストは、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ大粒粉とを50〜99質量%:1〜50質量%の割合で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を主成分とすることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする上記第1グリーンシートとジルコニア原料を主成分とする上記第2グリーンシートとの間に容易に調整することができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本発明の効果を十分に得ることができる。
【0020】
上記アルミナ小粒粉の中心粒径D50が0.1μm未満の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が高温側にシフトして上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記中心粒径D50が0.7μmを超える場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が低温側にシフトして上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
【0021】
また、上記アルミナ大粒粉の中心粒径D50が1.0μm未満の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が高温側にシフトして上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記中心粒径D50が61μmを超える場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が低温側にシフトして上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
【0022】
なお、「中心粒径D50」とは、いわゆるメディアン径のことであり、粒度分布において小粒径側からの累積質量が総質量の50%となる粒径のことをいう。
この中心粒径D50は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布測定装置等を用いて測定した粒度分布を用いて求めることができる。
【0023】
また、上記アルミナ原料粉は、アルミナ粉に対して粉砕・解砕処理を行い、任意の粒径に制御した2種類のアルミナ粉(アルミナ大粒粉、アルミナ小粒粉)を作製し、これらを任意の割合で混合することによって得られる。
また、アルミナ粉を仮焼して造粒粉を作製し、この造粒粉に対して低解砕処理を行い、仮焼によって凝集した2次粒子(アルミナ大粒粉)と低解砕で造粒粉から分離した1次粒子(アルミナ小粒粉)とを任意の割合で混合することによっても得られる。
【0024】
また、上記中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たすことが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする上記第1グリーンシートとジルコニア原料を主成分とする上記第2グリーンシートとの間に容易にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本発明の効果を十分に得ることができる。
【0025】
上記粒度分布面積S1、S2の関係がS1/S2<2.6の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が低温側にシフトして上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記関係がS1/S2≧23の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が高温側にシフトして上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
【0026】
なお、「粒度分布面積」とは、粒度分布(横軸:粒径(μm)、縦軸:存在頻度(%))の所定の粒径範囲における粒径Dn(μm)×存在頻度En(%)の総和で表されるものである。ここで、「n」は、粒径の大きさを複数の区間に分けたときの各区間を示し、「粒径Dn(μm)」は、各区間内の平均粒径を示し、「存在頻度En(%)」は、各区間の粒度分布全体に占める存在比率を示す。
また、小粒径側の分布山と大粒径側の分布山とは、ガウス曲線近似機能等を備えたグラフソフトを用いて、粒度分布における両者の重なり部分を推定することにより、それぞれ求めることができる。
また、粒度分布は、レーザ回折・散乱法による粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0027】
また、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1070〜1170℃であることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする上記第1グリーンシートとジルコニア原料を主成分とする上記第2グリーンシートとの間にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本発明の効果を十分に得ることができる。
【0028】
上記中間ペーストの焼結開始温度が1070℃未満の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記焼結開始温度が1170℃を超える場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
したがって、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1097〜1160℃であることがより好ましい(請求項7)。
【0029】
また、上記セラミック積層体は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するための積層型のガスセンサ素子の一部を構成することができる(請求項8)。
この場合には、剥離や割れを抑制した積層型のガスセンサ素子を容易に製造することができる。
【0030】
また、上記中間層の中心粒径D50をd1、上記第1セラミックシートの中心粒径D50をd2とした場合に、d1/d2=0.55±0.11の関係を満たすことが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記セラミック積層体は、剥離や割れのない、高品質のものとなる。
【0031】
また、上記中間層の中心粒径D50が4.4±0.5μmであり、かつ、上記第1セラミックシートの中心粒径D50が8.0±0.5μmであることが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記セラミック積層体は、剥離や割れのない、高品質のものとなる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるセラミック積層体の製造方法について、図を用いて説明する。
本例において製造するセラミック積層体1は、図1に示すごとく、材料組成の異なる第1セラミックシート21及び第2セラミックシート22と、両者の間に配置された中間層3とを有する。すなわち、セラミック積層体1は、第1セラミックシート21、中間層3、第2セラミックシート22を順に積層したものである。
第1セラミックシート21及び中間層3は、アルミナを主成分とするセラミックシートである。また、第2セラミックシート22は、ジルコニアを主成分とするセラミックシートである。
【0033】
本例のセラミック積層体1を製造するに当たっては、図2〜図4に示すごとく、第1セラミックシート21形成用の第1グリーンシート210と第1グリーンシート210よりも焼結開始温度が高い第2セラミックシート22形成用の第2グリーンシート220との間に、焼結開始温度が両者の間にある中間層3形成用の中間ペースト30を配置して未焼積層体10を得た後、未焼積層体10を焼成する。
以下、これを詳説する。
【0034】
本例のセラミック積層体1を製造するに当たっては、まず、第1グリーンシート210、第2グリーンシート220及び中間ペースト30を準備する。
【0035】
第1グリーンシート210を作製するに当たっては、中心粒径D50が0.1〜1.5μmのアルミナ粉を準備する。次いで、このアルミナ粉を溶媒(エタノール/2−ブタノール/酢酸イソアミルの3溶剤系、ノルマルプロパノール/酢酸ブチルの2溶剤系等)と混合し、ボールミルにて湿式解砕した後、バインダ(PVB300−1:電気化学工業製、BMSZ:積水化学製、等)、可塑剤(BBP、DBP:和光純薬製)、分散剤(ED216:サンノプコ製)等を添加して混合する。そして、これをドクターブレード方式によりシート状に成形する。これにより、第1グリーンシート210を得る。
【0036】
第2グリーンシート220を作製するに当たっては、中心粒径D50が0.1〜1.5μmのジルコニア粉を準備する。次いで、このジルコニア粉を上記と同様に溶媒と混合し、ボールミルにて湿式解砕した後、バインダ、可塑剤、分散剤等を添加して混合する。そして、これをドクターブレード方式によりシート状に成形する。これにより、第2グリーンシート220を得る。
【0037】
中間ペースト30を作製するに当たっては、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ大粒粉とを任意の割合(50〜99質量%:1〜50質量%)で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を準備する。そして、中間アルミナ原料にバインダ(BL−10:積水化学製)、溶媒(TPO:和光純薬製)等を添加する。これにより、中間ペースト30を得る。
【0038】
なお、中間ペースト30用のアルミナ原料粉は、アルミナ粉に対して粉砕・解砕処理を行い、任意の粒径に制御した2種類のアルミナ粉(アルミナ大粒粉、アルミナ小粒粉)を作製し、これらを任意の割合で混合することによって得られる。
また、アルミナ原料粉は、アルミナ粉を仮焼(800〜1200℃、2〜3時間)して造粒粉を作製し、この造粒粉に対して低解砕処理を行い、仮焼によって凝集した2次粒子(アルミナ大粒粉)と低解砕で造粒粉から分離した1次粒子(アルミナ小粒粉)とを任意の割合で混合することによっても得られる。
【0039】
また、中間ペースト30用の中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たすようにする。
具体的には、樹脂ポットにアルミナ原料粉、溶媒、解砕用玉石を入れ、ボールミルによる解砕処理を行うことにより、上記の中間アルミナ原料を得る。
【0040】
また、S1/S2の値(以下、粒度分布比S1/S2という)は、アルミナ原料粉の解砕時間を変更することによって調整することができる。
例えば、図5は、レーザ回折・散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定した中間アルミナ原料の粒度分布(横軸:粒径(μm)、縦軸:存在頻度(%))を示したものである。分布線A1〜A5は、それぞれアルミナ原料粉の解砕時間が0.5時間、8時間、16時間、24時間、30時間のものである。同図から、アルミナ原料粉の解砕時間が長くなるほど中間アルミナ原料の分布山が小粒径側にシフトする傾向が見られる。
また、図6は、アルミナ原料粉の解砕時間(時間)と粒度分布比S1/S2との関係を示したものである。同図には、近似直線G1を示してある。同図から、アルミナ原料粉の解砕時間が長くなるほど粒度分布比S1/S2が大きくなる傾向が見られる。
【0041】
また、中間ペースト30の焼結開始温度は、第1グリーンシート210の焼結開始温度(約1070℃)と第2グリーンシート220の焼結開始温度(約1170℃)との間になるようにする。特に1097〜1160℃の範囲内となるようにする。また、中間ペースト30と第1グリーンシート210との焼結開始温度の差及び中間ペースト30と第2グリーンシート220との焼結開始温度の差がいずれも150℃以下となるようにする。
なお、焼結開始温度とは、脱脂後を基準として、焼成時において収縮率が1%となるときの温度をいう。
【0042】
また、中間ペースト30の焼結開始温度は、アルミナ原料粉の解砕時間(粒度分布比S1/S2)を変更することによって調整することができる。
例えば、図7は、温度(℃)と焼成収縮率(%)との関係を示したものである。同図から、アルミナ原料粉の解砕時間が長くなるほど中間ペースト30の焼結開始温度が低くなる傾向が見られる。グラフB1〜B5は、それぞれアルミナ原料粉の解砕時間が0.5時間、8時間、16時間、24時間、30時間のものである。また、グラフC1は、第1グリーンシート210(アルミナ)の焼成収縮率、グラフC2は、第2グリーンシート220(ジルコニア)の焼成収縮率を示している。
また、図8は、粒度分布比S1/S2と中間ペースト30の焼結開始温度(℃)との関係を示したものである。同図には、近似直線G2を示してある。同図から、粒度分布比S1/S2が大きくなるほど中間ペースト30の焼結開始温度が高くなる傾向が見られる。
【0043】
次いで、図2に示すごとく、第2グリーンシート220の一方の面に、中間ペースト30を印刷により塗布し、乾燥させる。
次いで、図3に示すごとく、中間ペースト30の表面に、第1グリーンシート210を積層し、圧着する。これにより、図4に示すごとく、未焼積層体10を得る。
【0044】
次いで、未焼積層体10(図4)を所定の温度で脱脂した後、所定の温度で焼成する。これにより、第1セラミックシート21、中間層3、第2セラミックシート22を順に積層してなるセラミック積層体1(図1)を得る。
なお、第1グリーンシート210及び第2グリーンシート220がそれぞれ第1セラミックシート21及び第2セラミックシート22となり、中間ペースト30が中間層3となる。
【0045】
次に、本例のセラミック積層体1の製造方法における作用効果について説明する。
本例のセラミック積層体1の製造方法においては、焼結開始温度が低温側の第1グリーンシート210と高温側の第2グリーンシート220との間に、焼結開始温度が両者の間にある中間ペースト30を配置し、これらを積層した未焼積層体10を得る。そして、この未焼積層体10を焼成することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
すなわち、第1グリーンシート210の焼結が開始されてから第2グリーンシート220の焼結が開始されるまでの間に、中間ペースト30の焼結が開始される。これにより、隣接する第1及び第2グリーンシート210、220と中間ペースト30との間(以下、層間という)の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間の界面に発生する応力を低減することができる。そして、このように焼結初期段階において各層間の界面に発生する応力を低減することにより、焼成時の剥離や割れの発生を特に効果的に抑制することができる。
【0047】
また、本例では、中間ペースト30と第1グリーンシート210との焼結開始温度の差及び中間ペースト30と第2グリーンシート220との焼結開始温度の差がいずれも150℃以下である。そのため、各層間の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間に発生する応力を確実に低減することができる。
【0048】
また、第1グリーンシート210は、アルミナ原料を主成分とし、第2グリーンシート220は、ジルコニア原料を主成分とする。ここで、アルミナとジルコニアとは焼結開始温度が異なるため、本例の製造方法を採用することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという効果を有効に発揮することができる。
【0049】
また、中間ペースト30は、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ大粒粉とを50〜99質量%:1〜50質量%の割合で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を主成分とする。そのため、中間ペースト30の焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする第1グリーンシート210とジルコニア原料を主成分とする第2グリーンシート220との間に容易に調整することができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本例の効果を十分に得ることができる。
【0050】
また、中間ペースト30用の中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たす。そのため、中間ペースト30の焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする第1グリーンシート210とジルコニア原料を主成分とする第2グリーンシート220との間に容易にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本例の効果を十分に得ることができる。
【0051】
また、中間ペースト30の焼結開始温度は、1070〜1170℃であり、1097〜1160℃である。そのため、中間ペースト30の焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする第1グリーンシート210とジルコニア原料を主成分とする第2グリーンシート220との間にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本例の効果を十分に得ることができる。
【0052】
このように、本例によれば、焼成時の剥離や割れを効果的に抑制することができるセラミック積層体1の製造方法を提供することができる。また、本例の製造方法を用いることにより、剥離や割れのない、高品質のセラミック積層体1を得ることができる。
【0053】
(実施例2)
本例は、様々な条件でセラミック積層体を作製し、その評価を行ったものである。
本例では、表1に示すごとく、中間ペースト用のアルミナ原料粉の解砕時間を変更し、中間アルミナ原料の粒度分布比S1/S2の値や中間ペーストの焼結開始温度を調整した。その他は、実施例1と同様の方法を用いて複数のセラミック積層体(試料1〜5)を作製した。
【0054】
次に、得られたセラミック積層体(試料1〜5)の外観を評価した。
外観評価は、得られたセラミック積層体の層間に剥離が見られない場合には○、層間の一部に剥離が見られたものは△、層間全体に剥離が見られたものは×とした。
外観評価の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すごとく、試料1及び試料5は、層間全体に剥離が見られた。また、試料2及び試料4は、層間の剥離を抑制する効果はあったが、一部(端部)に剥離が見られた。一方、試料3は、層間に剥離が全く見られなかった。
これにより、中間アルミナ原料の粒度分布比S1/S2を2.6≦S1/S2<23の関係を満たすようにすることが好ましいことがわかった。また、中間ペーストの焼結開始温度を1097〜1160℃とすることが好ましいことがわかった。
【0057】
次に、得られたセラミック積層体の第1セラミックシート及び中間層について、FE−SEMにより内部観察を行った。本例では、試料2の第1セラミックシート、試料2〜4の中間層について内部観察を行った。図9は、試料2の第1セラミックシートのSEM写真であり、図10、図11、図12は、それぞれ試料2、3、4の中間層のSEM写真である。
【0058】
そして、図9〜図12のSEM写真から、試料2の第1セラミックシート、試料2〜4の中間層のアルミナ粒子の大きさを測定した。アルミナ粒子の測定は、SEM写真の任意の場所に長さ20μmの線分Lを引き、その線分L上に存在する粒子の個数、大きさを測定し、中心粒径D50を算出した。
【0059】
試料2の第1セラミックシートは、アルミナ粒子の個数が2.5個/20μm、中心粒径D50が8.0±0.5μmであった。なお、第1セラミックシートは、他の試料1、3〜5も同様の組成であるため、ほぼ同様の結果になると考えられる。
また、試料2の中間層は、アルミナ粒子の個数が3.0個/20μm、中心粒径D50が6.7±0.5μmであった。
また、試料3の中間層は、アルミナ粒子の個数が4.5個/20μm、中心粒径D50が4.4±0.5μmであった。
また、試料4の中間層は、アルミナ粒子の個数が5.5個/20μm、中心粒径D50が3.6±0.5μmであった。
【0060】
これにより、上述したセラミック積層体の外観評価において、試料3に剥離が見られなかったことから、中間層のアルミナの中心粒径D50が4.4±0.5μmであり、かつ、第1セラミックシートのアルミナの中心粒径D50が8.0±0.5μmであることが好ましいことがわかった。
【0061】
(実施例3)
本例は、図13に示すごとく、本発明(実施例1)のセラミック積層体をガスセンサ素子の一部に適用した例である。
本例のガスセンサ素子4は、酸素イオン伝導性の固体電解質体41と、固体電解質体41の一方の面と他方の面とにそれぞれ設けた被測定ガス側電極42及び基準ガス側電極43とを有する。また、被測定ガスを拡散透過させる拡散抵抗層44が被測定ガス側電極42を覆うように形成され、拡散抵抗層44における固体電解質体41とは反対側の面に、ガスを透過しない緻密な遮蔽層45が積層されている。
【0062】
また、固体電解質体41の基準ガス側電極43を設けた面には、溝部461を有するチャンバ層46が積層され、これにより、基準ガス側電極43が面する基準ガス室462が形成されている。また、チャンバ層46は、接合層48を介して、固体電解質体41に積層されている。
また、チャンバ層46における固体電解質体41とは反対側の面に、発熱体471を設けたヒータ47が積層されている。
【0063】
そして、チャンバ層46が実施例1における第1セラミックシートに相当する。また、固体電解質体41が実施例1における第2セラミックシートに相当する。また、接合層48が実施例1における中間層に相当する。
すなわち、チャンバ層46(第1セラミックシート)と固体電解質体41(第2セラミックシート)との間に接合層48(中間層)が配置されている。
【0064】
また、遮蔽層45が実施例1における第1セラミックシートに相当する。また、固体電解質体41が実施例1における第2セラミックシートに相当する。また、拡散抵抗層44が実施例1における中間層に相当する。
すなわち、遮蔽層45(第1セラミックシート)と固体電解質体41(第2セラミックシート)との間に拡散抵抗層44(中間層)が配置されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0065】
本例の場合には、剥離や割れを抑制した積層型のガスセンサ素子4を容易に製造することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0066】
1 セラミック積層体
10 未焼積層体
21 第1セラミックシート
210 第1グリーンシート
22 第2セラミックシート
220 第2グリーンシート
3 中間層
30 中間ペースト
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子等に用いられる、複数のセラミックシートを積層してなるセラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関の排ガス中のガス成分の検知及び測定に用いられるガスセンサとして、空燃比センサ、窒素酸化物センサ等が開発されている。
このようなガスセンサに組み込まれるガスセンサ素子としては、例えば、アルミナやジルコニア等の材料により構成された複数のセラミックシートを積層したセラミック積層体からなる積層型のガスセンサ素子が知られている。
【0003】
上記セラミック積層体は、例えば、複数のグリーンシートを積層、圧着し、これを焼成することによって作製される。
ところが、隣接するグリーンシート同士の材料組成が異なる場合、焼成時の収縮挙動等が異なるため、両シートの界面に応力が発生し、シートの剥離や割れが発生するという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、材料組成の異なるグリーンシートの間に、組成が順次変化する傾斜構造が形成されるように複数の傾斜グリーンシートを配置し、熱サイクル等によるストレスを緩和するセラミック積層体の製造方法が提案されている。
また、特許文献2では、材料組成の異なるグリーンシートの間に、隣接するグリーンシートとの接合面において化学反応等を起こさず潤滑的な機能を奏する白金及び/又はパラジウムの金属粉末を含む金属ペーストを配置し、互いのグリーンシートが独立して収縮するようにして収縮差による不具合の発生を防止するセラミック積層体の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−148128号公報
【特許文献2】特開平8−188481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2で提案されているセラミック積層体の製造方法では、焼成時において傾斜グリーンシートや金属ペーストと隣接するグリーンシートとの間に依然として応力が発生しており、焼成時におけるシートの剥離や割れを十分に抑制することができなかった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、焼成時の剥離や割れを効果的に抑制することができるセラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、材料組成の異なる第1セラミックシート及び第2セラミックシートと、両者の間に配置された中間層とを有するセラミック積層体を製造する方法であって、
上記第1セラミックシート形成用の第1グリーンシートと該第1グリーンシートよりも焼結開始温度が高い上記第2セラミックシート形成用の第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間層形成用の中間ペーストを配置して未焼積層体を得た後、該未焼積層体を焼成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明のセラミック積層体の製造方法により製造されてなることを特徴とするセラミック積層体にある(請求項9)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明のセラミック積層体の製造方法においては、焼結開始温度が低温側の上記第1グリーンシートと高温側の上記第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間ペーストを配置し、これらを積層した未焼積層体を得る。そして、この未焼積層体を焼成することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
すなわち、例えば、材料組成の異なるグリーンシート(以下、適宜、シートという)を隣接して積層した場合、各シートは、焼成時の昇温過程において焼結を開始して収縮する。このとき、収縮挙動の差異(例えば、収縮率の差)等により、シート間の界面に応力が発生する。特に、焼結開始温度が異なる場合には、一方のシートの焼結(収縮)が開始され、他方のシートの焼結(収縮)が開始されていないような焼結初期段階において、シート間の界面に大きな応力が発生する。そして、焼結開始温度の差が大きくなればなるほど、一方のシートが焼結を開始してから他方のシートが焼結を開始するまでの時間が長くなり、焼結初期段階においてシート間の界面に大きな応力が加わり続けることになる。そして、これらの応力は、剥離や割れの大きな原因となる。
【0012】
しかしながら、本発明の製造方法においては、焼結開始温度が低温側の上記第1グリーンシートと高温側の上記第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間ペーストを配置する。そのため、上記第1グリーンシートの焼結が開始されてから上記第2グリーンシートの焼結が開始されるまでの間に、上記中間ペーストの焼結が開始される。これにより、隣接する上記第1及び第2グリーンシートと上記中間ペーストとの間(以下、層間という)の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間の界面に発生する応力を低減することができる。そして、このように焼結初期段階において各層間の界面に発生する応力を低減することにより、焼成時の剥離や割れの発生を特に効果的に抑制することができる。
【0013】
第2の発明のセラミック積層体は、上記第1の発明のセラミック積層体の製造方法により製造されたものである。そのため、上記セラミック積層体は、剥離や割れのない、高品質のものとなる。
【0014】
このように、本発明によれば、焼成時の剥離や割れを効果的に抑制することができるセラミック積層体の製造方法及びそれによって得られるセラミック積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、セラミック積層体を示す説明図。
【図2】実施例1における、第2グリーンシート上に中間ペーストを印刷した状態を示す説明図。
【図3】実施例1における、中間ペースト上に第1グリーンシートを積層する状態を示す説明図。
【図4】実施例1における、未焼積層体を示す説明図。
【図5】実施例1における、中間アルミナ原料の粒度分布を示す説明図。
【図6】実施例1における、アルミナ原料粉の解砕時間とS1/S2の値との関係を示す説明図。
【図7】実施例1における、温度と焼成収縮率との関係を示す説明図。
【図8】実施例1における、粒度分布比S1/S2と焼結開始温度との関係を示す説明図。
【図9】実施例2における、試料2の第1セラミックシートのSEM写真。
【図10】実施例2における、試料2の中間層のSEM写真。
【図11】実施例2における、試料3の中間層のSEM写真。
【図12】実施例2における、試料4の中間層のSEM写真。
【図13】実施例3における、ガスセンサ素子の構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、「焼結開始温度」とは、脱脂後のグリーンシートに対して焼成を行った場合に、その焼成時の昇温過程において収縮率が1%となった時点の温度をいう。このとき、グリーンシートの脱脂後の状態を基準(収縮率0%)とする。
【0017】
また、上記中間ペーストと上記第1グリーンシートとの焼結開始温度の差及び上記中間ペーストと上記第2グリーンシートとの焼結開始温度の差がいずれも150℃以下であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、各層間の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間の界面に発生する応力を確実に低減することができる。
【0018】
また、上記第1グリーンシートは、アルミナ原料を主成分とし、上記第2グリーンシートは、ジルコニア原料を主成分とすることが好ましい(請求項3)。
この場合には、アルミナとジルコニアとは焼結開始温度が異なるため、本発明を採用することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという効果を有効に発揮することができる。
【0019】
また、上記中間ペーストは、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ大粒粉とを50〜99質量%:1〜50質量%の割合で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を主成分とすることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする上記第1グリーンシートとジルコニア原料を主成分とする上記第2グリーンシートとの間に容易に調整することができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本発明の効果を十分に得ることができる。
【0020】
上記アルミナ小粒粉の中心粒径D50が0.1μm未満の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が高温側にシフトして上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記中心粒径D50が0.7μmを超える場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が低温側にシフトして上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
【0021】
また、上記アルミナ大粒粉の中心粒径D50が1.0μm未満の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が高温側にシフトして上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記中心粒径D50が61μmを超える場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が低温側にシフトして上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
【0022】
なお、「中心粒径D50」とは、いわゆるメディアン径のことであり、粒度分布において小粒径側からの累積質量が総質量の50%となる粒径のことをいう。
この中心粒径D50は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布測定装置等を用いて測定した粒度分布を用いて求めることができる。
【0023】
また、上記アルミナ原料粉は、アルミナ粉に対して粉砕・解砕処理を行い、任意の粒径に制御した2種類のアルミナ粉(アルミナ大粒粉、アルミナ小粒粉)を作製し、これらを任意の割合で混合することによって得られる。
また、アルミナ粉を仮焼して造粒粉を作製し、この造粒粉に対して低解砕処理を行い、仮焼によって凝集した2次粒子(アルミナ大粒粉)と低解砕で造粒粉から分離した1次粒子(アルミナ小粒粉)とを任意の割合で混合することによっても得られる。
【0024】
また、上記中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たすことが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする上記第1グリーンシートとジルコニア原料を主成分とする上記第2グリーンシートとの間に容易にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本発明の効果を十分に得ることができる。
【0025】
上記粒度分布面積S1、S2の関係がS1/S2<2.6の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が低温側にシフトして上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記関係がS1/S2≧23の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が高温側にシフトして上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
【0026】
なお、「粒度分布面積」とは、粒度分布(横軸:粒径(μm)、縦軸:存在頻度(%))の所定の粒径範囲における粒径Dn(μm)×存在頻度En(%)の総和で表されるものである。ここで、「n」は、粒径の大きさを複数の区間に分けたときの各区間を示し、「粒径Dn(μm)」は、各区間内の平均粒径を示し、「存在頻度En(%)」は、各区間の粒度分布全体に占める存在比率を示す。
また、小粒径側の分布山と大粒径側の分布山とは、ガウス曲線近似機能等を備えたグラフソフトを用いて、粒度分布における両者の重なり部分を推定することにより、それぞれ求めることができる。
また、粒度分布は、レーザ回折・散乱法による粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0027】
また、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1070〜1170℃であることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする上記第1グリーンシートとジルコニア原料を主成分とする上記第2グリーンシートとの間にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本発明の効果を十分に得ることができる。
【0028】
上記中間ペーストの焼結開始温度が1070℃未満の場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が上記第1グリーンシートよりも低くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
一方、上記焼結開始温度が1170℃を超える場合には、上記中間ペーストの焼結開始温度が上記第2グリーンシートよりも高くなり、上記本発明の効果を得ることができないおそれがある。
したがって、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1097〜1160℃であることがより好ましい(請求項7)。
【0029】
また、上記セラミック積層体は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するための積層型のガスセンサ素子の一部を構成することができる(請求項8)。
この場合には、剥離や割れを抑制した積層型のガスセンサ素子を容易に製造することができる。
【0030】
また、上記中間層の中心粒径D50をd1、上記第1セラミックシートの中心粒径D50をd2とした場合に、d1/d2=0.55±0.11の関係を満たすことが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記セラミック積層体は、剥離や割れのない、高品質のものとなる。
【0031】
また、上記中間層の中心粒径D50が4.4±0.5μmであり、かつ、上記第1セラミックシートの中心粒径D50が8.0±0.5μmであることが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記セラミック積層体は、剥離や割れのない、高品質のものとなる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるセラミック積層体の製造方法について、図を用いて説明する。
本例において製造するセラミック積層体1は、図1に示すごとく、材料組成の異なる第1セラミックシート21及び第2セラミックシート22と、両者の間に配置された中間層3とを有する。すなわち、セラミック積層体1は、第1セラミックシート21、中間層3、第2セラミックシート22を順に積層したものである。
第1セラミックシート21及び中間層3は、アルミナを主成分とするセラミックシートである。また、第2セラミックシート22は、ジルコニアを主成分とするセラミックシートである。
【0033】
本例のセラミック積層体1を製造するに当たっては、図2〜図4に示すごとく、第1セラミックシート21形成用の第1グリーンシート210と第1グリーンシート210よりも焼結開始温度が高い第2セラミックシート22形成用の第2グリーンシート220との間に、焼結開始温度が両者の間にある中間層3形成用の中間ペースト30を配置して未焼積層体10を得た後、未焼積層体10を焼成する。
以下、これを詳説する。
【0034】
本例のセラミック積層体1を製造するに当たっては、まず、第1グリーンシート210、第2グリーンシート220及び中間ペースト30を準備する。
【0035】
第1グリーンシート210を作製するに当たっては、中心粒径D50が0.1〜1.5μmのアルミナ粉を準備する。次いで、このアルミナ粉を溶媒(エタノール/2−ブタノール/酢酸イソアミルの3溶剤系、ノルマルプロパノール/酢酸ブチルの2溶剤系等)と混合し、ボールミルにて湿式解砕した後、バインダ(PVB300−1:電気化学工業製、BMSZ:積水化学製、等)、可塑剤(BBP、DBP:和光純薬製)、分散剤(ED216:サンノプコ製)等を添加して混合する。そして、これをドクターブレード方式によりシート状に成形する。これにより、第1グリーンシート210を得る。
【0036】
第2グリーンシート220を作製するに当たっては、中心粒径D50が0.1〜1.5μmのジルコニア粉を準備する。次いで、このジルコニア粉を上記と同様に溶媒と混合し、ボールミルにて湿式解砕した後、バインダ、可塑剤、分散剤等を添加して混合する。そして、これをドクターブレード方式によりシート状に成形する。これにより、第2グリーンシート220を得る。
【0037】
中間ペースト30を作製するに当たっては、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ大粒粉とを任意の割合(50〜99質量%:1〜50質量%)で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を準備する。そして、中間アルミナ原料にバインダ(BL−10:積水化学製)、溶媒(TPO:和光純薬製)等を添加する。これにより、中間ペースト30を得る。
【0038】
なお、中間ペースト30用のアルミナ原料粉は、アルミナ粉に対して粉砕・解砕処理を行い、任意の粒径に制御した2種類のアルミナ粉(アルミナ大粒粉、アルミナ小粒粉)を作製し、これらを任意の割合で混合することによって得られる。
また、アルミナ原料粉は、アルミナ粉を仮焼(800〜1200℃、2〜3時間)して造粒粉を作製し、この造粒粉に対して低解砕処理を行い、仮焼によって凝集した2次粒子(アルミナ大粒粉)と低解砕で造粒粉から分離した1次粒子(アルミナ小粒粉)とを任意の割合で混合することによっても得られる。
【0039】
また、中間ペースト30用の中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たすようにする。
具体的には、樹脂ポットにアルミナ原料粉、溶媒、解砕用玉石を入れ、ボールミルによる解砕処理を行うことにより、上記の中間アルミナ原料を得る。
【0040】
また、S1/S2の値(以下、粒度分布比S1/S2という)は、アルミナ原料粉の解砕時間を変更することによって調整することができる。
例えば、図5は、レーザ回折・散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定した中間アルミナ原料の粒度分布(横軸:粒径(μm)、縦軸:存在頻度(%))を示したものである。分布線A1〜A5は、それぞれアルミナ原料粉の解砕時間が0.5時間、8時間、16時間、24時間、30時間のものである。同図から、アルミナ原料粉の解砕時間が長くなるほど中間アルミナ原料の分布山が小粒径側にシフトする傾向が見られる。
また、図6は、アルミナ原料粉の解砕時間(時間)と粒度分布比S1/S2との関係を示したものである。同図には、近似直線G1を示してある。同図から、アルミナ原料粉の解砕時間が長くなるほど粒度分布比S1/S2が大きくなる傾向が見られる。
【0041】
また、中間ペースト30の焼結開始温度は、第1グリーンシート210の焼結開始温度(約1070℃)と第2グリーンシート220の焼結開始温度(約1170℃)との間になるようにする。特に1097〜1160℃の範囲内となるようにする。また、中間ペースト30と第1グリーンシート210との焼結開始温度の差及び中間ペースト30と第2グリーンシート220との焼結開始温度の差がいずれも150℃以下となるようにする。
なお、焼結開始温度とは、脱脂後を基準として、焼成時において収縮率が1%となるときの温度をいう。
【0042】
また、中間ペースト30の焼結開始温度は、アルミナ原料粉の解砕時間(粒度分布比S1/S2)を変更することによって調整することができる。
例えば、図7は、温度(℃)と焼成収縮率(%)との関係を示したものである。同図から、アルミナ原料粉の解砕時間が長くなるほど中間ペースト30の焼結開始温度が低くなる傾向が見られる。グラフB1〜B5は、それぞれアルミナ原料粉の解砕時間が0.5時間、8時間、16時間、24時間、30時間のものである。また、グラフC1は、第1グリーンシート210(アルミナ)の焼成収縮率、グラフC2は、第2グリーンシート220(ジルコニア)の焼成収縮率を示している。
また、図8は、粒度分布比S1/S2と中間ペースト30の焼結開始温度(℃)との関係を示したものである。同図には、近似直線G2を示してある。同図から、粒度分布比S1/S2が大きくなるほど中間ペースト30の焼結開始温度が高くなる傾向が見られる。
【0043】
次いで、図2に示すごとく、第2グリーンシート220の一方の面に、中間ペースト30を印刷により塗布し、乾燥させる。
次いで、図3に示すごとく、中間ペースト30の表面に、第1グリーンシート210を積層し、圧着する。これにより、図4に示すごとく、未焼積層体10を得る。
【0044】
次いで、未焼積層体10(図4)を所定の温度で脱脂した後、所定の温度で焼成する。これにより、第1セラミックシート21、中間層3、第2セラミックシート22を順に積層してなるセラミック積層体1(図1)を得る。
なお、第1グリーンシート210及び第2グリーンシート220がそれぞれ第1セラミックシート21及び第2セラミックシート22となり、中間ペースト30が中間層3となる。
【0045】
次に、本例のセラミック積層体1の製造方法における作用効果について説明する。
本例のセラミック積層体1の製造方法においては、焼結開始温度が低温側の第1グリーンシート210と高温側の第2グリーンシート220との間に、焼結開始温度が両者の間にある中間ペースト30を配置し、これらを積層した未焼積層体10を得る。そして、この未焼積層体10を焼成することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
すなわち、第1グリーンシート210の焼結が開始されてから第2グリーンシート220の焼結が開始されるまでの間に、中間ペースト30の焼結が開始される。これにより、隣接する第1及び第2グリーンシート210、220と中間ペースト30との間(以下、層間という)の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間の界面に発生する応力を低減することができる。そして、このように焼結初期段階において各層間の界面に発生する応力を低減することにより、焼成時の剥離や割れの発生を特に効果的に抑制することができる。
【0047】
また、本例では、中間ペースト30と第1グリーンシート210との焼結開始温度の差及び中間ペースト30と第2グリーンシート220との焼結開始温度の差がいずれも150℃以下である。そのため、各層間の焼結開始温度の差を小さくし、焼結開始温度の差によって各層間に発生する応力を確実に低減することができる。
【0048】
また、第1グリーンシート210は、アルミナ原料を主成分とし、第2グリーンシート220は、ジルコニア原料を主成分とする。ここで、アルミナとジルコニアとは焼結開始温度が異なるため、本例の製造方法を採用することにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという効果を有効に発揮することができる。
【0049】
また、中間ペースト30は、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ大粒粉とを50〜99質量%:1〜50質量%の割合で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を主成分とする。そのため、中間ペースト30の焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする第1グリーンシート210とジルコニア原料を主成分とする第2グリーンシート220との間に容易に調整することができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本例の効果を十分に得ることができる。
【0050】
また、中間ペースト30用の中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たす。そのため、中間ペースト30の焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする第1グリーンシート210とジルコニア原料を主成分とする第2グリーンシート220との間に容易にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本例の効果を十分に得ることができる。
【0051】
また、中間ペースト30の焼結開始温度は、1070〜1170℃であり、1097〜1160℃である。そのため、中間ペースト30の焼結開始温度を、アルミナ原料を主成分とする第1グリーンシート210とジルコニア原料を主成分とする第2グリーンシート220との間にすることができる。これにより、焼成時の剥離や割れの発生を効果的に抑制するという本例の効果を十分に得ることができる。
【0052】
このように、本例によれば、焼成時の剥離や割れを効果的に抑制することができるセラミック積層体1の製造方法を提供することができる。また、本例の製造方法を用いることにより、剥離や割れのない、高品質のセラミック積層体1を得ることができる。
【0053】
(実施例2)
本例は、様々な条件でセラミック積層体を作製し、その評価を行ったものである。
本例では、表1に示すごとく、中間ペースト用のアルミナ原料粉の解砕時間を変更し、中間アルミナ原料の粒度分布比S1/S2の値や中間ペーストの焼結開始温度を調整した。その他は、実施例1と同様の方法を用いて複数のセラミック積層体(試料1〜5)を作製した。
【0054】
次に、得られたセラミック積層体(試料1〜5)の外観を評価した。
外観評価は、得られたセラミック積層体の層間に剥離が見られない場合には○、層間の一部に剥離が見られたものは△、層間全体に剥離が見られたものは×とした。
外観評価の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すごとく、試料1及び試料5は、層間全体に剥離が見られた。また、試料2及び試料4は、層間の剥離を抑制する効果はあったが、一部(端部)に剥離が見られた。一方、試料3は、層間に剥離が全く見られなかった。
これにより、中間アルミナ原料の粒度分布比S1/S2を2.6≦S1/S2<23の関係を満たすようにすることが好ましいことがわかった。また、中間ペーストの焼結開始温度を1097〜1160℃とすることが好ましいことがわかった。
【0057】
次に、得られたセラミック積層体の第1セラミックシート及び中間層について、FE−SEMにより内部観察を行った。本例では、試料2の第1セラミックシート、試料2〜4の中間層について内部観察を行った。図9は、試料2の第1セラミックシートのSEM写真であり、図10、図11、図12は、それぞれ試料2、3、4の中間層のSEM写真である。
【0058】
そして、図9〜図12のSEM写真から、試料2の第1セラミックシート、試料2〜4の中間層のアルミナ粒子の大きさを測定した。アルミナ粒子の測定は、SEM写真の任意の場所に長さ20μmの線分Lを引き、その線分L上に存在する粒子の個数、大きさを測定し、中心粒径D50を算出した。
【0059】
試料2の第1セラミックシートは、アルミナ粒子の個数が2.5個/20μm、中心粒径D50が8.0±0.5μmであった。なお、第1セラミックシートは、他の試料1、3〜5も同様の組成であるため、ほぼ同様の結果になると考えられる。
また、試料2の中間層は、アルミナ粒子の個数が3.0個/20μm、中心粒径D50が6.7±0.5μmであった。
また、試料3の中間層は、アルミナ粒子の個数が4.5個/20μm、中心粒径D50が4.4±0.5μmであった。
また、試料4の中間層は、アルミナ粒子の個数が5.5個/20μm、中心粒径D50が3.6±0.5μmであった。
【0060】
これにより、上述したセラミック積層体の外観評価において、試料3に剥離が見られなかったことから、中間層のアルミナの中心粒径D50が4.4±0.5μmであり、かつ、第1セラミックシートのアルミナの中心粒径D50が8.0±0.5μmであることが好ましいことがわかった。
【0061】
(実施例3)
本例は、図13に示すごとく、本発明(実施例1)のセラミック積層体をガスセンサ素子の一部に適用した例である。
本例のガスセンサ素子4は、酸素イオン伝導性の固体電解質体41と、固体電解質体41の一方の面と他方の面とにそれぞれ設けた被測定ガス側電極42及び基準ガス側電極43とを有する。また、被測定ガスを拡散透過させる拡散抵抗層44が被測定ガス側電極42を覆うように形成され、拡散抵抗層44における固体電解質体41とは反対側の面に、ガスを透過しない緻密な遮蔽層45が積層されている。
【0062】
また、固体電解質体41の基準ガス側電極43を設けた面には、溝部461を有するチャンバ層46が積層され、これにより、基準ガス側電極43が面する基準ガス室462が形成されている。また、チャンバ層46は、接合層48を介して、固体電解質体41に積層されている。
また、チャンバ層46における固体電解質体41とは反対側の面に、発熱体471を設けたヒータ47が積層されている。
【0063】
そして、チャンバ層46が実施例1における第1セラミックシートに相当する。また、固体電解質体41が実施例1における第2セラミックシートに相当する。また、接合層48が実施例1における中間層に相当する。
すなわち、チャンバ層46(第1セラミックシート)と固体電解質体41(第2セラミックシート)との間に接合層48(中間層)が配置されている。
【0064】
また、遮蔽層45が実施例1における第1セラミックシートに相当する。また、固体電解質体41が実施例1における第2セラミックシートに相当する。また、拡散抵抗層44が実施例1における中間層に相当する。
すなわち、遮蔽層45(第1セラミックシート)と固体電解質体41(第2セラミックシート)との間に拡散抵抗層44(中間層)が配置されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0065】
本例の場合には、剥離や割れを抑制した積層型のガスセンサ素子4を容易に製造することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0066】
1 セラミック積層体
10 未焼積層体
21 第1セラミックシート
210 第1グリーンシート
22 第2セラミックシート
220 第2グリーンシート
3 中間層
30 中間ペースト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料組成の異なる第1セラミックシート及び第2セラミックシートと、両者の間に配置された中間層とを有するセラミック積層体を製造する方法であって、
上記第1セラミックシート形成用の第1グリーンシートと該第1グリーンシートよりも焼結開始温度が高い上記第2セラミックシート形成用の第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間層形成用の中間ペーストを配置して未焼積層体を得た後、該未焼積層体を焼成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストと上記第1グリーンシートとの焼結開始温度の差及び上記中間ペーストと上記第2グリーンシートとの焼結開始温度の差がいずれも150℃以下であることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記第1グリーンシートは、アルミナ原料を主成分とし、上記第2グリーンシートは、ジルコニア原料を主成分とすることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストは、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ原料小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ原料大粒粉とを50〜99質量%:1〜50質量%の割合で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を主成分とすることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たすことを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1070〜1170℃であることを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1097〜1160℃であることを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記セラミック積層体は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するための積層型のガスセンサ素子の一部を構成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法により製造されてなることを特徴とするセラミック積層体。
【請求項10】
請求項9に記載のセラミック積層体において、上記中間層の中心粒径D50をd1、上記第1セラミックシートの中心粒径D50をd2とした場合に、d1/d2=0.55±0.11の関係を満たすことを特徴とするセラミック積層体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のセラミック積層体において、上記中間層の中心粒径D50が4.4±0.5μmであり、かつ、上記第1セラミックシートの中心粒径D50が8.0±0.5μmであることを特徴とするセラミック積層体。
【請求項1】
材料組成の異なる第1セラミックシート及び第2セラミックシートと、両者の間に配置された中間層とを有するセラミック積層体を製造する方法であって、
上記第1セラミックシート形成用の第1グリーンシートと該第1グリーンシートよりも焼結開始温度が高い上記第2セラミックシート形成用の第2グリーンシートとの間に、焼結開始温度が両者の間にある上記中間層形成用の中間ペーストを配置して未焼積層体を得た後、該未焼積層体を焼成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストと上記第1グリーンシートとの焼結開始温度の差及び上記中間ペーストと上記第2グリーンシートとの焼結開始温度の差がいずれも150℃以下であることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記第1グリーンシートは、アルミナ原料を主成分とし、上記第2グリーンシートは、ジルコニア原料を主成分とすることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストは、中心粒径D50が0.1〜0.7μmのアルミナ原料小粒粉と中心粒径D50が1.0〜61.0μmのアルミナ原料大粒粉とを50〜99質量%:1〜50質量%の割合で混合してなるアルミナ原料粉を用いた中間アルミナ原料を主成分とすることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間アルミナ原料は、粒度分布において2つの分布山を有すると共に、小粒径側の分布山における粒度分布面積をS1、大粒径側の分布山における粒度分布面積をS2とした場合に、2.6≦S1/S2<23の関係を満たすことを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1070〜1170℃であることを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記中間ペーストの焼結開始温度は、1097〜1160℃であることを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法において、上記セラミック積層体は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するための積層型のガスセンサ素子の一部を構成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法により製造されてなることを特徴とするセラミック積層体。
【請求項10】
請求項9に記載のセラミック積層体において、上記中間層の中心粒径D50をd1、上記第1セラミックシートの中心粒径D50をd2とした場合に、d1/d2=0.55±0.11の関係を満たすことを特徴とするセラミック積層体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のセラミック積層体において、上記中間層の中心粒径D50が4.4±0.5μmであり、かつ、上記第1セラミックシートの中心粒径D50が8.0±0.5μmであることを特徴とするセラミック積層体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−219310(P2011−219310A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90520(P2010−90520)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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