セラミック電子部品
【課題】セラミック電子部品が有する空隙部に水分が浸入すると、電気絶縁性や寿命特性といった信頼性を低下させる。
【解決手段】空隙部への水分の侵入を防止するため、セラミック電子部品1の少なくとも部品本体2に、撥水処理剤を用いて撥水性を付与する。このとき、超臨界CO2流体のような超臨界流体を溶媒として溶解した撥水処理剤を用いて、少なくとも部品本体2に撥水性を付与する。好ましくは、撥水性を付与した後、部品本体2の外表面上にある撥水処理剤を除去する。撥水処理剤としては、シランカップリング剤、シリコーン系化合物またはフッ素系化合物が好適に用いられる。
【解決手段】空隙部への水分の侵入を防止するため、セラミック電子部品1の少なくとも部品本体2に、撥水処理剤を用いて撥水性を付与する。このとき、超臨界CO2流体のような超臨界流体を溶媒として溶解した撥水処理剤を用いて、少なくとも部品本体2に撥水性を付与する。好ましくは、撥水性を付与した後、部品本体2の外表面上にある撥水処理剤を除去する。撥水処理剤としては、シランカップリング剤、シリコーン系化合物またはフッ素系化合物が好適に用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、セラミック電子部品の内部への水分浸入防止のため、部品本体に撥水性を付与する工程を備える、セラミック電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品において、その空隙部に水分が浸入すると、電気絶縁性や寿命特性の劣化が生じる。この水分の浸入は、たとえば、外部端子電極の形成のために実施されるめっき処理時や、高湿環境下での使用時に生じやすい。特に、積層構造を有する部品本体を備える積層型セラミック電子部品の場合には、内部電極とセラミック層との界面に形成される隙間を通して水分が浸入しやすい。この場合、内部電極と電気的に接続されるように部品本体の外表面上に外部端子電極が形成され、内部電極とセラミック層との界面が外部端子電極によって覆われた状態にあっても、様々な空隙や隙間より水分は浸入し得る。特に、外部端子電極がめっきのみによって形成される場合、水分がより浸入しやすい。
【0003】
上述したような水分浸入を防止する方法として、撥水処理剤(「防水処理剤」という場合もある。)を付与する方法が多くの特許文献において提案されている。
【0004】
たとえば、特許第3304798号公報(特許文献1)および特許第3444291号公報(特許文献2)に記載の技術では、外部電極上にめっき処理を施す前に、セラミック素体表面や外部電極表面に撥水膜を形成することにより、水分の浸入を防止しようとしている。なお、特許文献1および2に記載のものでは、上記撥水膜は、外部電極が形成されたセラミック素体を、大気圧下または真空減圧下で撥水処理剤に浸漬することにより形成される。
【0005】
他方、特許第4167360号公報(特許文献3)に記載の技術では、外部電極上にめっき処理を施した後に、外部端子電極の表面および内部のポーラス部分に、撥水性を有する部材を含浸させることにより、水分の浸入を防止しようとしている。ここで、ポーラス部分への撥水性を有する部材の含浸工程では、めっき処理済みのチップを、撥水性を有する部材に真空減圧下で浸漬するようにしている。また、特許文献3に記載のものでは、外観やはんだ濡れ性を損なわないために、外部端子電極の表面からは、撥水性を有する部材を除去している。
【0006】
上述のように、特許文献1〜3に記載の技術では、撥水処理剤を大気圧下または真空減圧下で含浸している。しかしながら、単なる大気圧下または真空減圧下での含浸では、微細な空隙や深部に対しては、撥水処理剤を十分に浸透させることができず、撥水(防水)効果が不十分となり、信頼性低下を引き起こす場合がある。
【0007】
また、特許文献1および2に記載の技術のように、セラミック素体表面や外部電極表面に撥水膜を形成した後、これを除去する工程を実施しない場合、撥水処理剤の撥水能が高すぎると、その後のめっき処理において、めっき皮膜の析出不良や密着不良等の不具合が生じる場合がある。しかし、逆にめっき処理での不具合抑制を重視し、用いる撥水処理剤の撥水能を低くすると、本来の水分浸入防止効果が十分に得られない。これらのことから、特許文献1および2に記載の技術を適用した場合には、撥水処理剤の選定や含浸処理条件における制約が大きい。
【0008】
他方、特許文献3に記載の技術のように、撥水性を有する部材を含浸した後、これを除去する工程を実施する場合、除去が不十分であれば、外観やはんだ付け性に不具合が生じる場合があり、逆に、除去が過剰に行なわれれば、本来の水分浸入防止効果が十分に得られない。これらのことから、特許文献3に記載の技術を適用した場合にも、撥水性を有する部材の選定や含浸処理条件における制約が大きく、さらに除去条件における制約も大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3304798号公報
【特許文献2】特許第3444291号公報
【特許文献3】特許第4167360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記のような問題点を解決し得るセラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、セラミックをもって構成される部品本体を用意する工程と、部品本体の外表面上に外部端子電極を形成する工程と、撥水処理剤を用いて少なくとも部品本体に撥水性を付与する工程とを備える、セラミック電子部品の製造方法に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、上記撥水性を付与する工程において、超臨界流体を溶媒として溶解した撥水処理剤を用いて少なくとも部品本体に撥水性を付与する工程が実施されることを特徴としている。
【0012】
なお、この発明において、上記撥水性を付与する工程を実施する時点は、特に限定されない。すなわち、外部端子電極を形成する工程の前および後のいずれの時点で実施されても、あるいは、外部端子電極を形成する工程がたとえば焼付け(または硬化)工程およびめっき工程というように複数の工程を含む場合においては、外部端子電極を形成する工程の途中の時点で実施されても、この発明の範囲に含まれる。さらに、撥水性を付与する工程は複数回実施されてもよい。
【0013】
また、超臨界流体としては、望ましくは、公知のCO2超臨界流体が用いられる。
【0014】
撥水処理剤としては、たとえば、シランカップリング剤、シリコーン系化合物またはフッ素系化合物が有利に用いられる。
【0015】
この発明に係る製造方法は、好ましくは、積層された複数のセラミック層とセラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極とを含むとともに、内部電極の各一部が露出している、積層構造を有する部品本体を備える、セラミック電子部品に対して有利に適用される。この場合、外部端子電極を形成する工程は、内部電極と電気的に接続されるように外部端子電極を部品本体の外表面上に形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
この発明において用いられる超臨界流体は、高拡散性であり、浸透性に優れ、さらに高い溶解性を示す。そのため、超臨界流体に溶解した撥水処理剤は、ナノレベルの微細な空隙や深部にまで、容易に浸透し得る。
【0017】
したがって、この発明によれば、セラミック電子部品に存在するナノレベルの微細な空隙や深部にまで、撥水処理剤を十分に浸透させることが可能となる。その結果、セラミック電子部品において、十分な撥水(防水)効果が得られ、それにより、電気絶縁性や寿命特性といったセラミック電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0018】
この発明において、撥水性を付与する工程の後、少なくとも部品本体の外表面上にある撥水処理剤を除去する工程をさらに備えていると、撥水処理剤によってめっき付き性やはんだ濡れ性が阻害されることを抑制することができる。また、それにも関わらず、撥水処理剤が表面だけでなく深部にまで含浸されるため、十分な撥水(防水)効果を維持することができる。そのため、より強力な撥水能を有する撥水処理剤を問題なく用いることができる。
【0019】
この発明において、外部端子電極を形成する工程が、めっき膜を形成する工程を含む場合、めっき膜を形成する工程が、撥水性を付与する工程の後に実施されると、撥水処理剤によって部品本体へのめっき液の浸入を効果的に抑制することができる。
【0020】
上記の好ましい実施態様において、撥水性を付与する工程の後であって、めっき膜を形成する工程の前に、少なくともめっき膜を形成すべき面上にある撥水処理剤を除去する工程が実施されると、たとえ強力な撥水能を有する撥水処理剤を用いても、めっき膜の不着を生じにくくすることができる。
【0021】
この発明において、撥水性を付与する工程が、外部端子電極を形成する工程の前に、すなわち部品本体上に何らの電極も形成されない状態で実施されると、撥水処理剤を部品本体のより深くまで容易に浸透させることができる。
【0022】
この発明に係る製造方法が適用されるセラミック電子部品が、前述したような積層構造を有する部品本体を備えるものであると、セラミック層と内部電極との界面への撥水処理剤の浸透により、部品本体の内部への水分の浸入を抑制することができ、電気絶縁性および寿命特性といった信頼性を向上させることができる。
【0023】
上述の場合において、前述したように、撥水性を付与する工程が外部端子電極を形成する工程の前に実施されると、セラミック層と内部電極との界面に撥水処理剤が浸透しやすくなり、仮に内部電極間のセラミック層の厚みの非常に薄い積層型のセラミック電子部品であっても、十分な電気絶縁性および寿命特性といった高い信頼性が得られる。
【0024】
この発明において、撥水処理剤がシランカップリング剤を含んでいると、シランカップリング剤は、有機官能基と加水分解性基との両方を併せ持つため、セラミック表面と金属部の酸化皮膜表面との双方で脱水縮合することにより、撥水性を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態による製造方法によって製造された積層型のセラミック電子部品1を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、セラミック電子部品1は、積層構造を有する部品本体2を備えている。部品本体2は、その内部に複数の内部電極3および4を形成している。より詳細には、部品本体2は、積層された複数のセラミック層5と、セラミック層5間の界面に沿って形成された複数の層状の内部電極3および4とを備えている。
【0027】
セラミック電子部品1が積層セラミックコンデンサを構成するとき、セラミック層5は、誘電体セラミックから構成される。なお、セラミック電子部品1は、その他、インダクタ、サーミスタ、圧電部品などを構成するものであってもよい。したがって、セラミック電子部品1の機能に応じて、セラミック層5は、誘電体セラミックの他、磁性体セラミック、半導体セラミック、圧電体セラミックなどから構成されてもよい。
【0028】
部品本体2の一方および他方端面6および7には、それぞれ、複数の内部電極3および複数の内部電極4の各端部が露出していて、これら内部電極3の各端部および内部電極4の各端部を、それぞれ、互いに電気的に接続するように、外部端子電極8および9が形成されている。
【0029】
なお、図示したセラミック電子部品1は、2個の外部端子電極8および9を備える2端子型のものであるが、この発明は多端子型のセラミック電子部品にも適用することができる。
【0030】
外部端子電極8および9の各々は、図示した実施形態では、たとえば、部品本体2における内部電極3および4の露出面、すなわち端面6および7上に形成される第1の電極層10と、その上に形成される第2の電極層11と、その上に形成される第3の電極層12とを備えている。これら第1ないし第3の電極層10〜12の各々は、以下のような機能を有している。
【0031】
第1の電極層10は、複数の内部電極3または複数の内部電極4を互いに電気的に接続するためのものであり、たとえば銅のような良導電性金属を主成分とすることが好ましい。他方、第2および第3の電極層11および12は、セラミック電子部品1の実装性を向上させ、または付与するためのものである。より特定的には、第2の電極層11は、外部端子電極8および9にはんだバリア性を付与するためのもので、たとえばニッケルを主成分としている。第3の電極層12は、外部端子電極8および9にはんだぬれ性を付与するためのもので、たとえば錫または金を主成分としている。
【0032】
なお、外部端子電極8および9の各々が、上記のように、第1ないし第3の電極層10〜12の3層から構成される場合以外に、4層以上から構成されても、単に1層ないし2層から構成されてもよい。
【0033】
次に、セラミック電子部品1の製造方法、特に、外部端子電極8および9の形成方法について説明する。
【0034】
まず、周知の方法により、部品本体2が作製される。次に、外部端子電極8および9が、内部電極3および4と電気的に接続されるように、部品本体2の端面6および7上に形成される。ここで、外部端子電極8および9の形成工程では、第1の電極層10の形成工程、第2の電極層11の形成工程および第3の電極層12の形成工程が順次実施される。
【0035】
第1ないし第3の電極層10〜12のうち、第2および第3の電極層11および12は、通常、還元剤を用いて金属イオンを析出させる無電解めっき法、または通電処理を行なう電解めっき法によって形成される。
【0036】
他方、第1の電極層10は、上記無電解めっき法または電解めっき法によって形成される場合と、導電性ペーストの塗布および焼付けによって形成される場合と、導電性樹脂の塗布および硬化によって形成される場合と、スパッタリング等の薄膜形成法によって形成される場合とがあり得る。
【0037】
第1の電極層10がめっき法によって形成される場合について、より詳細に説明すると、まず、めっき前の部品本体2においては、一方の端面6に露出している複数の内部電極3相互、ならびに他方の端面7に露出している複数の内部電極4相互が、電気的に絶縁された状態になっている。第1の電極層10を形成するため、まず、内部電極3および4の各々の露出部分に対し、めっき液中の金属イオンを析出させる。そして、このめっき析出物をさらに成長させ、隣り合う内部電極3の各露出部および隣り合う内部電極4の各露出部のそれぞれにおけるめっき析出物を物理的に接続した状態とする。このようにして、均質で緻密な第1の電極層10が形成される。
【0038】
上述した第1の電極層10を、銅を主成分とするめっき膜から構成すると、銅のつきまわり性が良好であるので、めっき処理の能率化を図れ、かつ外部端子電極8および9の固着力を高めることができる。
【0039】
なお、図1に示したように、第1の電極層10は、部品本体2の1対の端面6および7上に形成されるとともに、その端縁が部品本体2の端面6および7に隣接する1対の主面13および14上ならびに1対の側面上に位置するように形成されている。このような第1の電極層10が能率的に形成されることを可能にするため、図示しないが、部品本体2の積層方向での両端部近傍に、電気的特性の発現に実質的に寄与しないダミー導体を露出するように形成し、ダミー導体上に第1の電極層10の形成のための金属イオンが析出するようにして、めっき成長を促進するようにしてもよい。
【0040】
また、上述しためっき工程の前に、端面6および7での内部電極3および4ならびにダミー導体の露出を十分なものとするため、部品本体2の端面6および7に研磨処理を施しておくことも好ましい。
【0041】
上述のように、第1の電極層10がめっき法により形成される場合、めっき処理後において、熱処理されることが好ましい。この熱処理によって、内部電極3および4の各々と第1の電極層10との間で相互拡散層が形成される。このような相互拡散層の形成は、部品本体2の内部への水分の浸入を防止する効果をも有する。
【0042】
また、この発明では、撥水処理剤を用いて少なくとも部品本体2に撥水性を付与する工程が実施される。ここで、撥水処理剤は、たとえば超臨界CO2流体のような超臨界流体を溶媒として溶解した状態で用いられる。より具体的には、撥水処理剤を付与するため、圧力容器中に、撥水処理剤と部品本体2またはセラミック電子部品1とを封入し、超臨界流体となるべき液体をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、昇温、昇圧することにより、撥水処理剤を超臨界流体中に溶解する。次いで、この状態を所定時間保持することにより、部品本体2またはセラミック電子部品1が有する微細な空隙に撥水処理剤を浸透させる。そして、圧力容器から部品本体2またはセラミック電子部品1を取り出し、乾燥した後、熱処理を施す。このようにして、撥水性付与工程が完了する。
【0043】
上述の撥水性付与工程において用いられた超臨界流体は、高拡散性であり、浸透性に優れ、さらに高い溶解性を示す。そのため、超臨界流体に溶解した撥水処理剤は、ナノレベルの微細な空隙や深部にまで、容易に浸透し得る。したがって、部品本体2あるいはセラミック電子部品1に存在するナノレベルの微細な空隙や深部にまで、撥水処理剤を十分に浸透させることが可能となる。その結果、部品本体2またはセラミック電子部品1において、十分な撥水(防水)効果が得られ、それにより、電気絶縁性や寿命特性といったセラミック電子部品1の信頼性を向上させることができる。
【0044】
上述の撥水性付与工程を実施する時点は、特に限定されない。すなわち、外部端子電極形成工程の前および後のいずれの時点で実施されても、あるいは、外部端子電極形成工程の途中、たとえば第1の電極層10の形成工程と第2の電極層11の形成工程との間で実施されてもよい。したがって、上述したように、圧力容器中に封入される部品本体2は、外部端子電極8および9の少なくとも一部が既に形成されている段階にある場合もあり得る。また、撥水性付与工程は複数回実施されてもよい。
【0045】
外部端子電極8および9を形成する工程が、めっき膜を形成する工程を含む場合、めっき膜を形成する工程が、撥水性付与工程の後に実施されると、撥水処理剤によって部品本体2へのめっき液の浸入を効果的に抑制することができる。
【0046】
また、撥水性付与工程が、外部端子電極形成工程の前に、すなわち部品本体2上に何らの電極も形成されない状態で実施されると、撥水処理剤を部品本体2のより深くまで容易に浸透させることができる。ここで、この実施形態のように、部品本体2が積層構造を有していると、セラミック層5と内部電極3および4との界面への撥水処理剤の浸透により、部品本体2の内部への水分の浸入を抑制することができ、電気絶縁性および寿命特性といった信頼性を向上させることができるが、特に、前述したように、撥水性付与工程が外部端子電極形成工程の前に実施されると、セラミック層5と内部電極3および4との界面に撥水処理剤が浸透しやすくなり、仮に内部電極3および4間のセラミック層5の厚みが非常に薄くても、十分な電気絶縁性および寿命特性といった高い信頼性を実現することができる。
【0047】
撥水性付与工程において用いられる撥水処理剤としては、たとえば、有機官能基と加水分解性基の両方を併せ持つ有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)が好適に用いられ得る。シランカップリング剤は、セラミック表面および金属部の酸化皮膜表面で脱水縮合することで撥水性を付与する。
【0048】
シランカップリング剤の加水分解反応は、シランカップリング剤への水分添加や、被処理面に吸着している水分によって進行する。シランカップリング剤の加水分解反応を促進するために、水分の溶解しやすいアルコール等を、シランカップリング剤と一緒に用いてもよい。
【0049】
撥水処理剤の超臨界流体への溶解度向上や、撥水処理剤としての特にシランカップリング剤の加水分解反応促進のため、たとえばアルコール類のような補助溶剤(エントレーナ)を用いることも好ましい。
【0050】
撥水処理剤としては、また、シリコーンオイル、シリコーンゴム、フッ素変性シリコーン、フッ素含有モノマーもしくはその重合体などのシリコーン系化合物またはフッ素系化合物をも好適に用いることができる。
【0051】
シリコーン系化合物とは、シロキサン結合による主骨格を持つ化合物を言い、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチル水素シロキサン等の未変性シリコーン、ポリエーテル、エポキシ、アミン類、カルボキシル基、アラルキル基、フッ素を含むフルオロアルキル基などを導入した各種変性シリコーンが挙げられる。また、性状から、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0052】
フッ素系化合物とは、フッ素原子を含む有機化合物を言い、たとえば、パーフルオロアルキル基を有するビニルエーテル、ビニルエステル、(メタ)アクリレート等のモノマーおよびその重合体、フルオロオレフィンの単独重合体およびフルオロオレフィンと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー類(ETFEポリマー類)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル類とのコポリマー類(PFAポリマー類)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が例示される。
【0053】
上述のように、撥水処理剤として、シリコーン系化合物またはフッ素系化合物を用いる場合においても、撥水処理剤の超臨界流体への溶解度向上のため、たとえばアルコール類のような補助溶剤(エントレーナ)を用いてもよい。
【0054】
撥水性付与工程の後、少なくとも部品本体2の外表面上にある撥水処理剤を除去する工程が必要に応じて実施される。この除去工程では、たとえば溶解処理による湿式除去工程(化学的除去工程)、または、たとえばバレル処理やブラスト処理による乾式除去工程(機械的除去工程)が採用される。
【0055】
上述のように、除去工程が実施されると、撥水処理剤によってめっき付き性やはんだ濡れ性が阻害されることを抑制することができる。また、それにも関わらず、撥水処理剤が表面だけでなく深部にまで含浸されるため、十分な撥水(防水)効果を維持することができる。そのため、より強力な撥水能を有する撥水処理剤を問題なく用いることができるようになる。
【0056】
特に、撥水性付与工程の後であって、めっき工程の前に、少なくともめっき膜を形成すべき面上にある撥水処理剤を除去する工程が実施されると、たとえ強力な撥水能を有する撥水処理剤を用いても、めっき膜の不着を生じにくくすることができる。
【0057】
また、超臨界流体を適用して撥水処理剤を付与した後、さらに、撥水処理剤を通常浸漬や真空含浸により付与してもよい。これは、超臨界流体による方法がセラミック体の内部の微細孔まで浸透させるのに有用であるのに対し、最表面の比較的大きな孔には、後者の通常浸漬や真空含浸による方法の方が好ましい場合があるためである。
【0058】
次に、この発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0059】
[実験例1]
実験例1では、簡単に言えば、外部端子電極の形成の途中、すなわち、導電性ペーストの焼付けによる厚膜を形成した後、めっき処理を施す前に撥水性付与工程を実施した。
【0060】
外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された、チタン酸バリウム系誘電体材料からなるセラミック層とNi内部電極とからなる、積層構造の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。部品本体の外形寸法は、2.0mm×1.25mm×1.25mmであった。また、隣り合う内部電極間のセラミック層の厚みは約1μmであった。
【0061】
他方、撥水処理剤として、下の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0062】
【表1】
【0063】
次に、この発明の実施例としての試料1〜6については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表2の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0064】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0065】
次に、試料1〜3については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料4〜6については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0066】
他方、表2に示す、比較例としての試料7〜12については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表2の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から部品本体を取り出した。
【0067】
次に、試料7〜9については、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料10〜12については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0068】
また、表2に示す、比較例としての試料13については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。
【0069】
次に、試料1〜13のすべてについて、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
【0070】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表2に示すように、めっき膜形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。いずれの評価項目についても、各試料の試料数を100個とした。より詳細には、めっき膜形成状態については、顕微鏡観察により、めっき不着が認められた試料を不良と判定し、不良数を計数した。また、耐湿負荷試験においては、温度125℃、相対湿度95%の環境下で、10Vの直流電圧を144時間印加し、試験後の絶縁抵抗値が1MΩ未満となった試料を不良と判定し、不良数を計数した。
【0071】
【表2】
【0072】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0073】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料7〜9間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、めっき膜形成状態不良が発生し、撥水能の低いシランカップリング剤を用いると、耐湿負荷試験不良が発生した。このことから、撥水処理において通常浸漬を採用した試料7〜9では、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が難しいことがわかった。
【0074】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料1〜3間で比較すると、試料2および3のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、めっき膜形成状態不良も発生せず、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0075】
なお、試料1のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、めっき膜形成状態不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0076】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料10〜12では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0077】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料4〜6では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、めっき膜形成状態不良も発生せず、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0078】
なお、前述の試料1のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、めっき膜形成状態不良が発生したが、試料4では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、めっき膜形成状態不良が発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0079】
撥水処理を行なわなかった試料13では、めっき膜形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0080】
[実験例2]
実験例2では、簡単に言えば、外部端子電極の形成後、すなわち、めっき処理を施した後に撥水性付与工程を実施した。
【0081】
実験例1において用意した積層セラミックコンデンサ用部品本体と同様のもの、すなわち、外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された、チタン酸バリウム系誘電体材料からなるセラミック層とNi内部電極とからなる、積層構造の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0082】
次に、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、積層セラミックコンデンサを得た。
【0083】
他方、撥水処理剤として、この実験例2でも、前掲の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0084】
次に、この発明の実施例としての試料21〜26については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表3の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記積層セラミックコンデンサとを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0085】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、積層セラミックコンデンサが有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から積層セラミックコンデンサを取り出した。
【0086】
次に、試料21〜23については、圧力容器から取り出した積層セラミックコンデンサを乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料24〜26については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した積層セラミックコンデンサを、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0087】
他方、表3に示す、比較例としての試料27〜32については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表3の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に積層セラミックコンデンサを浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、積層セラミックコンデンサに撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から積層セラミックコンデンサを取り出した。
【0088】
次に、試料27〜29については、シランカップリング剤溶液から取り出した積層セラミックコンデンサを乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料30〜32については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した積層セラミックコンデンサを、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0089】
また、表3に示す、比較例としての試料33については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。なお、この試料33は、実験例1における試料13と同じ条件で作製されたものである。
【0090】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表3に示すように、はんだ付け性を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。いずれの評価項目についても、各試料の試料数を100個とした。より詳細には、はんだ付け性については、はんだぬれ性を定性的に評価しようとするもので、JIS C 60068−2−58(2006)に既定される試験条件に従い、試料となる積層セラミックコンデンサを溶融はんだ中に浸漬した後、外部端子電極でのはんだ被覆状態を顕微鏡観察により評価し、外部端子電極表面でのはんだ被覆率が90%未満の試料を不良と判定し、不良数を計数した。また、耐湿負荷試験においては、実験例1の場合と同様に評価した。
【0091】
【表3】
【0092】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0093】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料27〜29間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、はんだ付け性不良が発生し、撥水能の低いシランカップリング剤を用いると、耐湿負荷試験不良が発生した。このことから、撥水処理において通常浸漬を採用した試料27〜29では、はんだ付け性と耐湿負荷試験との両立が難しいことがわかった。
【0094】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料21〜23間で比較すると、試料22および23のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、はんだ付け性不良も発生せず、はんだ付け性と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0095】
なお、試料21のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、はんだ付け性不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0096】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料30〜32では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0097】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料24〜26では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、はんだ付け性不良も発生せず、はんだ付け性と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0098】
なお、前述の試料21のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、はんだ付け性不良が発生したが、試料24では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、はんだ付け性不良が発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0099】
撥水処理を行なわなかった試料33は、前述したように、実験例1における試料13と同じ条件で作製されたものであるので、はんだ付け性不良数および耐湿負荷試験不良数について、表2に示したのと同様の数値を示している。
【0100】
[実験例3]
実験例3では、簡単に言えば、外部端子電極の形成前に撥水性付与工程を実施した。
【0101】
チタン酸バリウム系誘電体材料からなるセラミック層とNi内部電極とからなる、積層構造の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。部品本体の外形寸法は、1.9mm×1.05mm×1.05mmであった。また、隣り合う内部電極間のセラミック層の厚みは約1μmであった。
【0102】
他方、撥水処理剤として、この実験例3でも、前掲の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0103】
次に、この発明の実施例としての試料41〜46については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表4の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0104】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0105】
次に、試料41〜43については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料44〜46については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0106】
他方、表4に示す、比較例としての試料47〜52については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表4の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から部品本体を取り出した。
【0107】
次に、試料47〜49については、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料50〜52については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0108】
また、表4に示す、比較例としての試料53については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。
【0109】
次に、試料41〜53のすべてについて、部品本体上に、外部端子電極の第1の電極層としての導電性樹脂電極層を形成し、次いで、導電性樹脂電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、積層セラミックコンデンサを完成させた。
【0110】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表4に示すように、外部端子電極形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。いずれの評価項目についても、各試料の試料数を100個とした。より詳細には、外部端子電極形成状態については、十分な照明の下で、実体顕微鏡にて評価し、外部端子電極にピンホール等の欠陥が認められた試料を不良と判定し、不良数を計数した。また、耐湿負荷試験においては、実験例1の場合と同様に評価した。
【0111】
【表4】
【0112】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0113】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料47〜49間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良が発生した。また、試料47〜49のすべてで、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0114】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料41〜43間で比較すると、試料42および43のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態不良も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0115】
なお、試料41のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0116】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料50〜52では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0117】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料44〜46では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0118】
なお、前述の試料41のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生したが、試料44では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、外部端子電極形成状態不良も耐湿負荷試験不良も発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0119】
撥水処理を行なわなかった試料53では、外部端子電極形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0120】
[実験例4]
実験例4では、簡単に言えば、実験例3の場合と同様、外部端子電極の形成前に撥水性付与工程を実施したが、実験例3における、外部端子電極の第1の電極層として導電性樹脂電極層を形成する工程に代えて、Cu電解めっき工程を実施した。
【0121】
実験例3において用意したものと同様の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0122】
他方、撥水処理剤として、この実験例4でも、前掲の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0123】
次に、この発明の実施例としての試料61〜66については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表5の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0124】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0125】
次に、試料61〜63については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料64〜66については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0126】
他方、表5に示す、比較例としての試料67〜72については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表5の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から部品本体を取り出した。
【0127】
次に、試料67〜69については、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料70〜72については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0128】
また、表5に示す、比較例としての試料73については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。
【0129】
次に、試料61〜73のすべてについて、外部端子電極の第1の電極層としてのCu電解めっき膜を形成した。より詳細には、部品本体の端面に露出している複数の内部電極の露出端上にめっき液中のCuイオンを析出させ、このCuめっき析出物をさらに成長させることによって、隣り合う内部電極の各露出端相互を架橋して物理的に接続した状態となったCu電解めっき膜を形成した。
【0130】
次いで、上記の外部端子電極の第1の電極層としてのCu電解めっき膜上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、積層セラミックコンデンサを完成させた。
【0131】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例3の場合と同様の要領で、表5に示すように、外部端子電極形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。
【0132】
【表5】
【0133】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0134】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料67〜69間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良が発生した。また、試料67〜69のすべてで、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0135】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料61〜63間で比較すると、試料62および63のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態不良も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0136】
なお、試料61のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0137】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料70〜72では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0138】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料64〜66では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0139】
なお、前述の試料61のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生したが、試料64では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、外部端子電極形成状態不良も耐湿負荷試験不良も発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0140】
撥水処理を行なわなかった試料73では、外部端子電極形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0141】
[実験例5]
実験例5では、簡単に言えば、実験例1の場合と同様、外部端子電極の形成の途中、すなわち、導電性ペーストの焼付けによる厚膜を形成した後、めっき処理を施す前に撥水性付与工程を実施したが、撥水処理剤として、実験例1の場合とは異なり、シリコーン系化合物を用いた。
【0142】
実験例1において用意したものと同様、外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0143】
他方、撥水処理剤となるシリコーン系化合物として、シリコーンオイル(信越シリコーン製:「メチルハイドロジェンシリコーンオイルKF−99」)を用意した。
【0144】
次に、この発明の実施例としての試料81および82については、表6の「撥水処理」の欄に示すように、撥水処理剤としてのシリコーンオイル1.5mlとエントレーナとしてのアセトン5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0145】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0146】
次に、表6の「除去工程」の欄に示すように、試料81については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した。また、試料82については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にトルエンに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥した。
【0147】
他方、比較例としての試料83および84については、撥水処理剤としてのシリコーンオイルをトルエンに3体積%となるように溶解し、このシリコーンオイル溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シリコーンオイル溶液から部品本体を取り出した。
【0148】
次に、試料83については、シリコーンオイル溶液から取り出した部品本体を乾燥した。また、試料84については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、表6の「除去工程」の欄に示すように、シリコーンオイル溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にトルエンに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥した。
【0149】
また、表6に示す、比較例としての試料85については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。なお、試料85は、実験例1における試料13と同等のものである。
【0150】
次に、試料81〜85のすべてについて、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
【0151】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例1の場合と同様の方法により、表6に示すように、めっき膜形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。
【0152】
【表6】
【0153】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0154】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料81と通常浸漬を採用した試料83とに注目すると、両者とも耐湿負荷試験不良が発生しなかった。
【0155】
しかし、めっき膜形成状態不良は、両者とも発生した。ただし、めっき膜形成状態不良数は、前者の試料81において、より低減された。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0156】
なお、めっき膜形成状態不良の抑制のためには、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効である。
【0157】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料82と通常浸漬を採用した試料84とに注目すると、両者ともめっき膜形成状態不良が発生しなかった。
【0158】
しかし、撥水処理において通常浸漬を採用した試料84では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。これに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料82では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生しなかった。すなわち、試料82では、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0159】
撥水処理を行なわなかった試料85では、試料13について前述したとおり、めっき膜形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0160】
[実験例6]
実験例6では、簡単に言えば、実験例1および5の場合と同様、外部端子電極の形成の途中、すなわち、導電性ペーストの焼付けによる厚膜を形成した後、めっき処理を施す前に撥水性付与工程を実施したが、撥水処理剤として、実験例1および5の場合とは異なり、フッ素系化合物を用いた。
【0161】
実験例1において用意したものと同様、外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0162】
他方、撥水処理剤となるフッ素系化合物として、フッ素樹脂(ファインケミカルジャパン株式会社製:フッ素樹脂系離型・潤滑剤「FC−250ファイン・ドライスリップ」)を用意した。
【0163】
次に、この発明の実施例としての試料91および92については、表7の「撥水処理」の欄に示すように、撥水処理剤としてのフッ素樹脂1.5mlとエントレーナとしてのエタノール5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0164】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出し、乾燥した。
【0165】
次に、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、表7の「除去工程」の欄に示すように、試料92については、部品本体の表面にある撥水処理剤をサンドブラストにより除去した。
【0166】
他方、比較例としての試料93および94については、撥水処理剤としてのフッ素樹脂をエタノールに3体積%となるように溶解し、このフッ素樹脂溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、フッ素樹脂溶液から部品本体を取り出し、乾燥した。
【0167】
次に、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、表7の「除去工程」の欄に示すように、試料94については、部品本体の表面にある撥水処理剤をサンドブラストにより除去した。
【0168】
また、表7に示す、比較例としての試料95については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。なお、試料95は、実験例1における試料13と同等のものである。
【0169】
次に、試料91〜95のすべてについて、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
【0170】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例1の場合と同様の方法により、表7に示すように、めっき膜形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。
【0171】
【表7】
【0172】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0173】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料91と通常浸漬を採用した試料93とに注目すると、両者とも耐湿負荷試験不良が発生しなかった。
【0174】
しかし、めっき膜形成状態不良は、両者とも発生した。ただし、めっき膜形成状態不良数は、前者の試料91において、より低減された。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0175】
なお、めっき膜形成状態不良の抑制のためには、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効である。
【0176】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料92と通常浸漬を採用した試料94とに注目すると、両者ともめっき膜形成状態不良が発生しなかった。
【0177】
しかし、撥水処理において通常浸漬を採用した試料94では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。これに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料92では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生しなかった。すなわち、試料92では、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0178】
撥水処理を行なわなかった試料95では、試料13について前述したとおり、めっき膜形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【符号の説明】
【0179】
1 セラミック電子部品
2 部品本体
3,4 内部電極
5 セラミック層
6,7 端面
8,9 外部端子電極
10 第1の電極層
11 第2の電極層
12 第3の電極層
【技術分野】
【0001】
この発明は、セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、セラミック電子部品の内部への水分浸入防止のため、部品本体に撥水性を付与する工程を備える、セラミック電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品において、その空隙部に水分が浸入すると、電気絶縁性や寿命特性の劣化が生じる。この水分の浸入は、たとえば、外部端子電極の形成のために実施されるめっき処理時や、高湿環境下での使用時に生じやすい。特に、積層構造を有する部品本体を備える積層型セラミック電子部品の場合には、内部電極とセラミック層との界面に形成される隙間を通して水分が浸入しやすい。この場合、内部電極と電気的に接続されるように部品本体の外表面上に外部端子電極が形成され、内部電極とセラミック層との界面が外部端子電極によって覆われた状態にあっても、様々な空隙や隙間より水分は浸入し得る。特に、外部端子電極がめっきのみによって形成される場合、水分がより浸入しやすい。
【0003】
上述したような水分浸入を防止する方法として、撥水処理剤(「防水処理剤」という場合もある。)を付与する方法が多くの特許文献において提案されている。
【0004】
たとえば、特許第3304798号公報(特許文献1)および特許第3444291号公報(特許文献2)に記載の技術では、外部電極上にめっき処理を施す前に、セラミック素体表面や外部電極表面に撥水膜を形成することにより、水分の浸入を防止しようとしている。なお、特許文献1および2に記載のものでは、上記撥水膜は、外部電極が形成されたセラミック素体を、大気圧下または真空減圧下で撥水処理剤に浸漬することにより形成される。
【0005】
他方、特許第4167360号公報(特許文献3)に記載の技術では、外部電極上にめっき処理を施した後に、外部端子電極の表面および内部のポーラス部分に、撥水性を有する部材を含浸させることにより、水分の浸入を防止しようとしている。ここで、ポーラス部分への撥水性を有する部材の含浸工程では、めっき処理済みのチップを、撥水性を有する部材に真空減圧下で浸漬するようにしている。また、特許文献3に記載のものでは、外観やはんだ濡れ性を損なわないために、外部端子電極の表面からは、撥水性を有する部材を除去している。
【0006】
上述のように、特許文献1〜3に記載の技術では、撥水処理剤を大気圧下または真空減圧下で含浸している。しかしながら、単なる大気圧下または真空減圧下での含浸では、微細な空隙や深部に対しては、撥水処理剤を十分に浸透させることができず、撥水(防水)効果が不十分となり、信頼性低下を引き起こす場合がある。
【0007】
また、特許文献1および2に記載の技術のように、セラミック素体表面や外部電極表面に撥水膜を形成した後、これを除去する工程を実施しない場合、撥水処理剤の撥水能が高すぎると、その後のめっき処理において、めっき皮膜の析出不良や密着不良等の不具合が生じる場合がある。しかし、逆にめっき処理での不具合抑制を重視し、用いる撥水処理剤の撥水能を低くすると、本来の水分浸入防止効果が十分に得られない。これらのことから、特許文献1および2に記載の技術を適用した場合には、撥水処理剤の選定や含浸処理条件における制約が大きい。
【0008】
他方、特許文献3に記載の技術のように、撥水性を有する部材を含浸した後、これを除去する工程を実施する場合、除去が不十分であれば、外観やはんだ付け性に不具合が生じる場合があり、逆に、除去が過剰に行なわれれば、本来の水分浸入防止効果が十分に得られない。これらのことから、特許文献3に記載の技術を適用した場合にも、撥水性を有する部材の選定や含浸処理条件における制約が大きく、さらに除去条件における制約も大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3304798号公報
【特許文献2】特許第3444291号公報
【特許文献3】特許第4167360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記のような問題点を解決し得るセラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、セラミックをもって構成される部品本体を用意する工程と、部品本体の外表面上に外部端子電極を形成する工程と、撥水処理剤を用いて少なくとも部品本体に撥水性を付与する工程とを備える、セラミック電子部品の製造方法に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、上記撥水性を付与する工程において、超臨界流体を溶媒として溶解した撥水処理剤を用いて少なくとも部品本体に撥水性を付与する工程が実施されることを特徴としている。
【0012】
なお、この発明において、上記撥水性を付与する工程を実施する時点は、特に限定されない。すなわち、外部端子電極を形成する工程の前および後のいずれの時点で実施されても、あるいは、外部端子電極を形成する工程がたとえば焼付け(または硬化)工程およびめっき工程というように複数の工程を含む場合においては、外部端子電極を形成する工程の途中の時点で実施されても、この発明の範囲に含まれる。さらに、撥水性を付与する工程は複数回実施されてもよい。
【0013】
また、超臨界流体としては、望ましくは、公知のCO2超臨界流体が用いられる。
【0014】
撥水処理剤としては、たとえば、シランカップリング剤、シリコーン系化合物またはフッ素系化合物が有利に用いられる。
【0015】
この発明に係る製造方法は、好ましくは、積層された複数のセラミック層とセラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極とを含むとともに、内部電極の各一部が露出している、積層構造を有する部品本体を備える、セラミック電子部品に対して有利に適用される。この場合、外部端子電極を形成する工程は、内部電極と電気的に接続されるように外部端子電極を部品本体の外表面上に形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
この発明において用いられる超臨界流体は、高拡散性であり、浸透性に優れ、さらに高い溶解性を示す。そのため、超臨界流体に溶解した撥水処理剤は、ナノレベルの微細な空隙や深部にまで、容易に浸透し得る。
【0017】
したがって、この発明によれば、セラミック電子部品に存在するナノレベルの微細な空隙や深部にまで、撥水処理剤を十分に浸透させることが可能となる。その結果、セラミック電子部品において、十分な撥水(防水)効果が得られ、それにより、電気絶縁性や寿命特性といったセラミック電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0018】
この発明において、撥水性を付与する工程の後、少なくとも部品本体の外表面上にある撥水処理剤を除去する工程をさらに備えていると、撥水処理剤によってめっき付き性やはんだ濡れ性が阻害されることを抑制することができる。また、それにも関わらず、撥水処理剤が表面だけでなく深部にまで含浸されるため、十分な撥水(防水)効果を維持することができる。そのため、より強力な撥水能を有する撥水処理剤を問題なく用いることができる。
【0019】
この発明において、外部端子電極を形成する工程が、めっき膜を形成する工程を含む場合、めっき膜を形成する工程が、撥水性を付与する工程の後に実施されると、撥水処理剤によって部品本体へのめっき液の浸入を効果的に抑制することができる。
【0020】
上記の好ましい実施態様において、撥水性を付与する工程の後であって、めっき膜を形成する工程の前に、少なくともめっき膜を形成すべき面上にある撥水処理剤を除去する工程が実施されると、たとえ強力な撥水能を有する撥水処理剤を用いても、めっき膜の不着を生じにくくすることができる。
【0021】
この発明において、撥水性を付与する工程が、外部端子電極を形成する工程の前に、すなわち部品本体上に何らの電極も形成されない状態で実施されると、撥水処理剤を部品本体のより深くまで容易に浸透させることができる。
【0022】
この発明に係る製造方法が適用されるセラミック電子部品が、前述したような積層構造を有する部品本体を備えるものであると、セラミック層と内部電極との界面への撥水処理剤の浸透により、部品本体の内部への水分の浸入を抑制することができ、電気絶縁性および寿命特性といった信頼性を向上させることができる。
【0023】
上述の場合において、前述したように、撥水性を付与する工程が外部端子電極を形成する工程の前に実施されると、セラミック層と内部電極との界面に撥水処理剤が浸透しやすくなり、仮に内部電極間のセラミック層の厚みの非常に薄い積層型のセラミック電子部品であっても、十分な電気絶縁性および寿命特性といった高い信頼性が得られる。
【0024】
この発明において、撥水処理剤がシランカップリング剤を含んでいると、シランカップリング剤は、有機官能基と加水分解性基との両方を併せ持つため、セラミック表面と金属部の酸化皮膜表面との双方で脱水縮合することにより、撥水性を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態による製造方法によって製造された積層型のセラミック電子部品1を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、セラミック電子部品1は、積層構造を有する部品本体2を備えている。部品本体2は、その内部に複数の内部電極3および4を形成している。より詳細には、部品本体2は、積層された複数のセラミック層5と、セラミック層5間の界面に沿って形成された複数の層状の内部電極3および4とを備えている。
【0027】
セラミック電子部品1が積層セラミックコンデンサを構成するとき、セラミック層5は、誘電体セラミックから構成される。なお、セラミック電子部品1は、その他、インダクタ、サーミスタ、圧電部品などを構成するものであってもよい。したがって、セラミック電子部品1の機能に応じて、セラミック層5は、誘電体セラミックの他、磁性体セラミック、半導体セラミック、圧電体セラミックなどから構成されてもよい。
【0028】
部品本体2の一方および他方端面6および7には、それぞれ、複数の内部電極3および複数の内部電極4の各端部が露出していて、これら内部電極3の各端部および内部電極4の各端部を、それぞれ、互いに電気的に接続するように、外部端子電極8および9が形成されている。
【0029】
なお、図示したセラミック電子部品1は、2個の外部端子電極8および9を備える2端子型のものであるが、この発明は多端子型のセラミック電子部品にも適用することができる。
【0030】
外部端子電極8および9の各々は、図示した実施形態では、たとえば、部品本体2における内部電極3および4の露出面、すなわち端面6および7上に形成される第1の電極層10と、その上に形成される第2の電極層11と、その上に形成される第3の電極層12とを備えている。これら第1ないし第3の電極層10〜12の各々は、以下のような機能を有している。
【0031】
第1の電極層10は、複数の内部電極3または複数の内部電極4を互いに電気的に接続するためのものであり、たとえば銅のような良導電性金属を主成分とすることが好ましい。他方、第2および第3の電極層11および12は、セラミック電子部品1の実装性を向上させ、または付与するためのものである。より特定的には、第2の電極層11は、外部端子電極8および9にはんだバリア性を付与するためのもので、たとえばニッケルを主成分としている。第3の電極層12は、外部端子電極8および9にはんだぬれ性を付与するためのもので、たとえば錫または金を主成分としている。
【0032】
なお、外部端子電極8および9の各々が、上記のように、第1ないし第3の電極層10〜12の3層から構成される場合以外に、4層以上から構成されても、単に1層ないし2層から構成されてもよい。
【0033】
次に、セラミック電子部品1の製造方法、特に、外部端子電極8および9の形成方法について説明する。
【0034】
まず、周知の方法により、部品本体2が作製される。次に、外部端子電極8および9が、内部電極3および4と電気的に接続されるように、部品本体2の端面6および7上に形成される。ここで、外部端子電極8および9の形成工程では、第1の電極層10の形成工程、第2の電極層11の形成工程および第3の電極層12の形成工程が順次実施される。
【0035】
第1ないし第3の電極層10〜12のうち、第2および第3の電極層11および12は、通常、還元剤を用いて金属イオンを析出させる無電解めっき法、または通電処理を行なう電解めっき法によって形成される。
【0036】
他方、第1の電極層10は、上記無電解めっき法または電解めっき法によって形成される場合と、導電性ペーストの塗布および焼付けによって形成される場合と、導電性樹脂の塗布および硬化によって形成される場合と、スパッタリング等の薄膜形成法によって形成される場合とがあり得る。
【0037】
第1の電極層10がめっき法によって形成される場合について、より詳細に説明すると、まず、めっき前の部品本体2においては、一方の端面6に露出している複数の内部電極3相互、ならびに他方の端面7に露出している複数の内部電極4相互が、電気的に絶縁された状態になっている。第1の電極層10を形成するため、まず、内部電極3および4の各々の露出部分に対し、めっき液中の金属イオンを析出させる。そして、このめっき析出物をさらに成長させ、隣り合う内部電極3の各露出部および隣り合う内部電極4の各露出部のそれぞれにおけるめっき析出物を物理的に接続した状態とする。このようにして、均質で緻密な第1の電極層10が形成される。
【0038】
上述した第1の電極層10を、銅を主成分とするめっき膜から構成すると、銅のつきまわり性が良好であるので、めっき処理の能率化を図れ、かつ外部端子電極8および9の固着力を高めることができる。
【0039】
なお、図1に示したように、第1の電極層10は、部品本体2の1対の端面6および7上に形成されるとともに、その端縁が部品本体2の端面6および7に隣接する1対の主面13および14上ならびに1対の側面上に位置するように形成されている。このような第1の電極層10が能率的に形成されることを可能にするため、図示しないが、部品本体2の積層方向での両端部近傍に、電気的特性の発現に実質的に寄与しないダミー導体を露出するように形成し、ダミー導体上に第1の電極層10の形成のための金属イオンが析出するようにして、めっき成長を促進するようにしてもよい。
【0040】
また、上述しためっき工程の前に、端面6および7での内部電極3および4ならびにダミー導体の露出を十分なものとするため、部品本体2の端面6および7に研磨処理を施しておくことも好ましい。
【0041】
上述のように、第1の電極層10がめっき法により形成される場合、めっき処理後において、熱処理されることが好ましい。この熱処理によって、内部電極3および4の各々と第1の電極層10との間で相互拡散層が形成される。このような相互拡散層の形成は、部品本体2の内部への水分の浸入を防止する効果をも有する。
【0042】
また、この発明では、撥水処理剤を用いて少なくとも部品本体2に撥水性を付与する工程が実施される。ここで、撥水処理剤は、たとえば超臨界CO2流体のような超臨界流体を溶媒として溶解した状態で用いられる。より具体的には、撥水処理剤を付与するため、圧力容器中に、撥水処理剤と部品本体2またはセラミック電子部品1とを封入し、超臨界流体となるべき液体をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、昇温、昇圧することにより、撥水処理剤を超臨界流体中に溶解する。次いで、この状態を所定時間保持することにより、部品本体2またはセラミック電子部品1が有する微細な空隙に撥水処理剤を浸透させる。そして、圧力容器から部品本体2またはセラミック電子部品1を取り出し、乾燥した後、熱処理を施す。このようにして、撥水性付与工程が完了する。
【0043】
上述の撥水性付与工程において用いられた超臨界流体は、高拡散性であり、浸透性に優れ、さらに高い溶解性を示す。そのため、超臨界流体に溶解した撥水処理剤は、ナノレベルの微細な空隙や深部にまで、容易に浸透し得る。したがって、部品本体2あるいはセラミック電子部品1に存在するナノレベルの微細な空隙や深部にまで、撥水処理剤を十分に浸透させることが可能となる。その結果、部品本体2またはセラミック電子部品1において、十分な撥水(防水)効果が得られ、それにより、電気絶縁性や寿命特性といったセラミック電子部品1の信頼性を向上させることができる。
【0044】
上述の撥水性付与工程を実施する時点は、特に限定されない。すなわち、外部端子電極形成工程の前および後のいずれの時点で実施されても、あるいは、外部端子電極形成工程の途中、たとえば第1の電極層10の形成工程と第2の電極層11の形成工程との間で実施されてもよい。したがって、上述したように、圧力容器中に封入される部品本体2は、外部端子電極8および9の少なくとも一部が既に形成されている段階にある場合もあり得る。また、撥水性付与工程は複数回実施されてもよい。
【0045】
外部端子電極8および9を形成する工程が、めっき膜を形成する工程を含む場合、めっき膜を形成する工程が、撥水性付与工程の後に実施されると、撥水処理剤によって部品本体2へのめっき液の浸入を効果的に抑制することができる。
【0046】
また、撥水性付与工程が、外部端子電極形成工程の前に、すなわち部品本体2上に何らの電極も形成されない状態で実施されると、撥水処理剤を部品本体2のより深くまで容易に浸透させることができる。ここで、この実施形態のように、部品本体2が積層構造を有していると、セラミック層5と内部電極3および4との界面への撥水処理剤の浸透により、部品本体2の内部への水分の浸入を抑制することができ、電気絶縁性および寿命特性といった信頼性を向上させることができるが、特に、前述したように、撥水性付与工程が外部端子電極形成工程の前に実施されると、セラミック層5と内部電極3および4との界面に撥水処理剤が浸透しやすくなり、仮に内部電極3および4間のセラミック層5の厚みが非常に薄くても、十分な電気絶縁性および寿命特性といった高い信頼性を実現することができる。
【0047】
撥水性付与工程において用いられる撥水処理剤としては、たとえば、有機官能基と加水分解性基の両方を併せ持つ有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)が好適に用いられ得る。シランカップリング剤は、セラミック表面および金属部の酸化皮膜表面で脱水縮合することで撥水性を付与する。
【0048】
シランカップリング剤の加水分解反応は、シランカップリング剤への水分添加や、被処理面に吸着している水分によって進行する。シランカップリング剤の加水分解反応を促進するために、水分の溶解しやすいアルコール等を、シランカップリング剤と一緒に用いてもよい。
【0049】
撥水処理剤の超臨界流体への溶解度向上や、撥水処理剤としての特にシランカップリング剤の加水分解反応促進のため、たとえばアルコール類のような補助溶剤(エントレーナ)を用いることも好ましい。
【0050】
撥水処理剤としては、また、シリコーンオイル、シリコーンゴム、フッ素変性シリコーン、フッ素含有モノマーもしくはその重合体などのシリコーン系化合物またはフッ素系化合物をも好適に用いることができる。
【0051】
シリコーン系化合物とは、シロキサン結合による主骨格を持つ化合物を言い、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチル水素シロキサン等の未変性シリコーン、ポリエーテル、エポキシ、アミン類、カルボキシル基、アラルキル基、フッ素を含むフルオロアルキル基などを導入した各種変性シリコーンが挙げられる。また、性状から、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0052】
フッ素系化合物とは、フッ素原子を含む有機化合物を言い、たとえば、パーフルオロアルキル基を有するビニルエーテル、ビニルエステル、(メタ)アクリレート等のモノマーおよびその重合体、フルオロオレフィンの単独重合体およびフルオロオレフィンと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー類(ETFEポリマー類)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル類とのコポリマー類(PFAポリマー類)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が例示される。
【0053】
上述のように、撥水処理剤として、シリコーン系化合物またはフッ素系化合物を用いる場合においても、撥水処理剤の超臨界流体への溶解度向上のため、たとえばアルコール類のような補助溶剤(エントレーナ)を用いてもよい。
【0054】
撥水性付与工程の後、少なくとも部品本体2の外表面上にある撥水処理剤を除去する工程が必要に応じて実施される。この除去工程では、たとえば溶解処理による湿式除去工程(化学的除去工程)、または、たとえばバレル処理やブラスト処理による乾式除去工程(機械的除去工程)が採用される。
【0055】
上述のように、除去工程が実施されると、撥水処理剤によってめっき付き性やはんだ濡れ性が阻害されることを抑制することができる。また、それにも関わらず、撥水処理剤が表面だけでなく深部にまで含浸されるため、十分な撥水(防水)効果を維持することができる。そのため、より強力な撥水能を有する撥水処理剤を問題なく用いることができるようになる。
【0056】
特に、撥水性付与工程の後であって、めっき工程の前に、少なくともめっき膜を形成すべき面上にある撥水処理剤を除去する工程が実施されると、たとえ強力な撥水能を有する撥水処理剤を用いても、めっき膜の不着を生じにくくすることができる。
【0057】
また、超臨界流体を適用して撥水処理剤を付与した後、さらに、撥水処理剤を通常浸漬や真空含浸により付与してもよい。これは、超臨界流体による方法がセラミック体の内部の微細孔まで浸透させるのに有用であるのに対し、最表面の比較的大きな孔には、後者の通常浸漬や真空含浸による方法の方が好ましい場合があるためである。
【0058】
次に、この発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0059】
[実験例1]
実験例1では、簡単に言えば、外部端子電極の形成の途中、すなわち、導電性ペーストの焼付けによる厚膜を形成した後、めっき処理を施す前に撥水性付与工程を実施した。
【0060】
外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された、チタン酸バリウム系誘電体材料からなるセラミック層とNi内部電極とからなる、積層構造の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。部品本体の外形寸法は、2.0mm×1.25mm×1.25mmであった。また、隣り合う内部電極間のセラミック層の厚みは約1μmであった。
【0061】
他方、撥水処理剤として、下の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0062】
【表1】
【0063】
次に、この発明の実施例としての試料1〜6については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表2の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0064】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0065】
次に、試料1〜3については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料4〜6については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0066】
他方、表2に示す、比較例としての試料7〜12については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表2の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から部品本体を取り出した。
【0067】
次に、試料7〜9については、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料10〜12については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0068】
また、表2に示す、比較例としての試料13については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。
【0069】
次に、試料1〜13のすべてについて、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
【0070】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表2に示すように、めっき膜形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。いずれの評価項目についても、各試料の試料数を100個とした。より詳細には、めっき膜形成状態については、顕微鏡観察により、めっき不着が認められた試料を不良と判定し、不良数を計数した。また、耐湿負荷試験においては、温度125℃、相対湿度95%の環境下で、10Vの直流電圧を144時間印加し、試験後の絶縁抵抗値が1MΩ未満となった試料を不良と判定し、不良数を計数した。
【0071】
【表2】
【0072】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0073】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料7〜9間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、めっき膜形成状態不良が発生し、撥水能の低いシランカップリング剤を用いると、耐湿負荷試験不良が発生した。このことから、撥水処理において通常浸漬を採用した試料7〜9では、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が難しいことがわかった。
【0074】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料1〜3間で比較すると、試料2および3のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、めっき膜形成状態不良も発生せず、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0075】
なお、試料1のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、めっき膜形成状態不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0076】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料10〜12では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0077】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料4〜6では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、めっき膜形成状態不良も発生せず、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0078】
なお、前述の試料1のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、めっき膜形成状態不良が発生したが、試料4では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、めっき膜形成状態不良が発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0079】
撥水処理を行なわなかった試料13では、めっき膜形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0080】
[実験例2]
実験例2では、簡単に言えば、外部端子電極の形成後、すなわち、めっき処理を施した後に撥水性付与工程を実施した。
【0081】
実験例1において用意した積層セラミックコンデンサ用部品本体と同様のもの、すなわち、外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された、チタン酸バリウム系誘電体材料からなるセラミック層とNi内部電極とからなる、積層構造の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0082】
次に、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、積層セラミックコンデンサを得た。
【0083】
他方、撥水処理剤として、この実験例2でも、前掲の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0084】
次に、この発明の実施例としての試料21〜26については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表3の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記積層セラミックコンデンサとを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0085】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、積層セラミックコンデンサが有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から積層セラミックコンデンサを取り出した。
【0086】
次に、試料21〜23については、圧力容器から取り出した積層セラミックコンデンサを乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料24〜26については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した積層セラミックコンデンサを、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0087】
他方、表3に示す、比較例としての試料27〜32については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表3の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に積層セラミックコンデンサを浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、積層セラミックコンデンサに撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から積層セラミックコンデンサを取り出した。
【0088】
次に、試料27〜29については、シランカップリング剤溶液から取り出した積層セラミックコンデンサを乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料30〜32については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した積層セラミックコンデンサを、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0089】
また、表3に示す、比較例としての試料33については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。なお、この試料33は、実験例1における試料13と同じ条件で作製されたものである。
【0090】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表3に示すように、はんだ付け性を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。いずれの評価項目についても、各試料の試料数を100個とした。より詳細には、はんだ付け性については、はんだぬれ性を定性的に評価しようとするもので、JIS C 60068−2−58(2006)に既定される試験条件に従い、試料となる積層セラミックコンデンサを溶融はんだ中に浸漬した後、外部端子電極でのはんだ被覆状態を顕微鏡観察により評価し、外部端子電極表面でのはんだ被覆率が90%未満の試料を不良と判定し、不良数を計数した。また、耐湿負荷試験においては、実験例1の場合と同様に評価した。
【0091】
【表3】
【0092】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0093】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料27〜29間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、はんだ付け性不良が発生し、撥水能の低いシランカップリング剤を用いると、耐湿負荷試験不良が発生した。このことから、撥水処理において通常浸漬を採用した試料27〜29では、はんだ付け性と耐湿負荷試験との両立が難しいことがわかった。
【0094】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料21〜23間で比較すると、試料22および23のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、はんだ付け性不良も発生せず、はんだ付け性と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0095】
なお、試料21のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、はんだ付け性不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0096】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料30〜32では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0097】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料24〜26では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、はんだ付け性不良も発生せず、はんだ付け性と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0098】
なお、前述の試料21のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、はんだ付け性不良が発生したが、試料24では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、はんだ付け性不良が発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0099】
撥水処理を行なわなかった試料33は、前述したように、実験例1における試料13と同じ条件で作製されたものであるので、はんだ付け性不良数および耐湿負荷試験不良数について、表2に示したのと同様の数値を示している。
【0100】
[実験例3]
実験例3では、簡単に言えば、外部端子電極の形成前に撥水性付与工程を実施した。
【0101】
チタン酸バリウム系誘電体材料からなるセラミック層とNi内部電極とからなる、積層構造の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。部品本体の外形寸法は、1.9mm×1.05mm×1.05mmであった。また、隣り合う内部電極間のセラミック層の厚みは約1μmであった。
【0102】
他方、撥水処理剤として、この実験例3でも、前掲の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0103】
次に、この発明の実施例としての試料41〜46については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表4の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0104】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0105】
次に、試料41〜43については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料44〜46については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0106】
他方、表4に示す、比較例としての試料47〜52については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表4の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から部品本体を取り出した。
【0107】
次に、試料47〜49については、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料50〜52については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0108】
また、表4に示す、比較例としての試料53については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。
【0109】
次に、試料41〜53のすべてについて、部品本体上に、外部端子電極の第1の電極層としての導電性樹脂電極層を形成し、次いで、導電性樹脂電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、積層セラミックコンデンサを完成させた。
【0110】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表4に示すように、外部端子電極形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。いずれの評価項目についても、各試料の試料数を100個とした。より詳細には、外部端子電極形成状態については、十分な照明の下で、実体顕微鏡にて評価し、外部端子電極にピンホール等の欠陥が認められた試料を不良と判定し、不良数を計数した。また、耐湿負荷試験においては、実験例1の場合と同様に評価した。
【0111】
【表4】
【0112】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0113】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料47〜49間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良が発生した。また、試料47〜49のすべてで、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0114】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料41〜43間で比較すると、試料42および43のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態不良も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0115】
なお、試料41のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0116】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料50〜52では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0117】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料44〜46では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0118】
なお、前述の試料41のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生したが、試料44では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、外部端子電極形成状態不良も耐湿負荷試験不良も発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0119】
撥水処理を行なわなかった試料53では、外部端子電極形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0120】
[実験例4]
実験例4では、簡単に言えば、実験例3の場合と同様、外部端子電極の形成前に撥水性付与工程を実施したが、実験例3における、外部端子電極の第1の電極層として導電性樹脂電極層を形成する工程に代えて、Cu電解めっき工程を実施した。
【0121】
実験例3において用意したものと同様の積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0122】
他方、撥水処理剤として、この実験例4でも、前掲の表1に示す3種類のシランカップリング剤H、MおよびLを用意した。
【0123】
次に、この発明の実施例としての試料61〜66については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表5の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤1.5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0124】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0125】
次に、試料61〜63については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料64〜66については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0126】
他方、表5に示す、比較例としての試料67〜72については、表1に示した3種類のシランカップリング剤H、MおよびLから、表5の「シランカップリング剤」の欄に示すものを選択し、選択されたシランカップリング剤をイソプロピルアルコールに3体積%となるように溶解し、このシランカップリング剤溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シランカップリング剤溶液から部品本体を取り出した。
【0127】
次に、試料67〜69については、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を乾燥した後、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。また、試料70〜72については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、シランカップリング剤溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にイソプロピルアルコールに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥し、次いで、150℃の温度で30分間熱処理を行なった。
【0128】
また、表5に示す、比較例としての試料73については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。
【0129】
次に、試料61〜73のすべてについて、外部端子電極の第1の電極層としてのCu電解めっき膜を形成した。より詳細には、部品本体の端面に露出している複数の内部電極の露出端上にめっき液中のCuイオンを析出させ、このCuめっき析出物をさらに成長させることによって、隣り合う内部電極の各露出端相互を架橋して物理的に接続した状態となったCu電解めっき膜を形成した。
【0130】
次いで、上記の外部端子電極の第1の電極層としてのCu電解めっき膜上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、積層セラミックコンデンサを完成させた。
【0131】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例3の場合と同様の要領で、表5に示すように、外部端子電極形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。
【0132】
【表5】
【0133】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0134】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料67〜69間で比較すると、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良が発生した。また、試料67〜69のすべてで、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0135】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料61〜63間で比較すると、試料62および63のように、撥水能の比較的低いシランカップリング剤を用いても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態不良も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0136】
なお、試料61のように、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生した。これについては、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することによって解決される。
【0137】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において通常浸漬を採用した試料70〜72では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。
【0138】
これらに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料64〜66では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生せず、また、外部端子電極形成状態も発生せず、外部端子電極形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0139】
なお、前述の試料61のように、除去工程を実施せずに、撥水能の高いシランカップリング剤を用いると、外部端子電極形成状態不良および耐湿負荷試験不良が発生したが、試料64では、撥水能の高いシランカップリング剤を用いても、除去工程を実施したため、外部端子電極形成状態不良も耐湿負荷試験不良も発生しなかった。このことから、撥水能の高いシランカップリング剤を用いる場合、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効であることがわかった。
【0140】
撥水処理を行なわなかった試料73では、外部端子電極形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0141】
[実験例5]
実験例5では、簡単に言えば、実験例1の場合と同様、外部端子電極の形成の途中、すなわち、導電性ペーストの焼付けによる厚膜を形成した後、めっき処理を施す前に撥水性付与工程を実施したが、撥水処理剤として、実験例1の場合とは異なり、シリコーン系化合物を用いた。
【0142】
実験例1において用意したものと同様、外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0143】
他方、撥水処理剤となるシリコーン系化合物として、シリコーンオイル(信越シリコーン製:「メチルハイドロジェンシリコーンオイルKF−99」)を用意した。
【0144】
次に、この発明の実施例としての試料81および82については、表6の「撥水処理」の欄に示すように、撥水処理剤としてのシリコーンオイル1.5mlとエントレーナとしてのアセトン5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0145】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出した。
【0146】
次に、表6の「除去工程」の欄に示すように、試料81については、圧力容器から取り出した部品本体を乾燥した。また、試料82については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、圧力容器から取り出した部品本体を、乾燥前にトルエンに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥した。
【0147】
他方、比較例としての試料83および84については、撥水処理剤としてのシリコーンオイルをトルエンに3体積%となるように溶解し、このシリコーンオイル溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、シリコーンオイル溶液から部品本体を取り出した。
【0148】
次に、試料83については、シリコーンオイル溶液から取り出した部品本体を乾燥した。また、試料84については、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、表6の「除去工程」の欄に示すように、シリコーンオイル溶液から取り出した部品本体を、乾燥前にトルエンに30秒間浸漬して、表面にある撥水処理剤を除去してから乾燥した。
【0149】
また、表6に示す、比較例としての試料85については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。なお、試料85は、実験例1における試料13と同等のものである。
【0150】
次に、試料81〜85のすべてについて、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
【0151】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例1の場合と同様の方法により、表6に示すように、めっき膜形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。
【0152】
【表6】
【0153】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0154】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料81と通常浸漬を採用した試料83とに注目すると、両者とも耐湿負荷試験不良が発生しなかった。
【0155】
しかし、めっき膜形成状態不良は、両者とも発生した。ただし、めっき膜形成状態不良数は、前者の試料81において、より低減された。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0156】
なお、めっき膜形成状態不良の抑制のためには、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効である。
【0157】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料82と通常浸漬を採用した試料84とに注目すると、両者ともめっき膜形成状態不良が発生しなかった。
【0158】
しかし、撥水処理において通常浸漬を採用した試料84では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。これに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料82では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生しなかった。すなわち、試料82では、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0159】
撥水処理を行なわなかった試料85では、試料13について前述したとおり、めっき膜形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【0160】
[実験例6]
実験例6では、簡単に言えば、実験例1および5の場合と同様、外部端子電極の形成の途中、すなわち、導電性ペーストの焼付けによる厚膜を形成した後、めっき処理を施す前に撥水性付与工程を実施したが、撥水処理剤として、実験例1および5の場合とは異なり、フッ素系化合物を用いた。
【0161】
実験例1において用意したものと同様、外部端子電極の第1電極層として、導電性ペーストの焼付けによるCu厚膜が形成された積層セラミックコンデンサ用部品本体を用意した。
【0162】
他方、撥水処理剤となるフッ素系化合物として、フッ素樹脂(ファインケミカルジャパン株式会社製:フッ素樹脂系離型・潤滑剤「FC−250ファイン・ドライスリップ」)を用意した。
【0163】
次に、この発明の実施例としての試料91および92については、表7の「撥水処理」の欄に示すように、撥水処理剤としてのフッ素樹脂1.5mlとエントレーナとしてのエタノール5mlと上記部品本体とを、内容積が50mlの超臨界処理用圧力容器に封入し、超臨界流体中の撥水処理剤濃度が3体積%となるように、液体CO2をポンプで加圧しながら圧力容器内に導入し、温度40℃、圧力25MPaとなるまで昇温、昇圧することにより、超臨界CO2中に撥水処理剤を溶解した。
【0164】
その後、上記の状態を3時間保持することにより、部品本体が有する微細な空隙に対して撥水処理剤を浸透させた。その後、圧力容器から部品本体を取り出し、乾燥した。
【0165】
次に、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、表7の「除去工程」の欄に示すように、試料92については、部品本体の表面にある撥水処理剤をサンドブラストにより除去した。
【0166】
他方、比較例としての試料93および94については、撥水処理剤としてのフッ素樹脂をエタノールに3体積%となるように溶解し、このフッ素樹脂溶液に部品本体を浸漬し、この状態を40℃の温度で3時間保持することにより、部品本体に撥水処理剤を浸透させた。その後、フッ素樹脂溶液から部品本体を取り出し、乾燥した。
【0167】
次に、撥水処理後の撥水処理剤の除去工程の影響を確認するために、表7の「除去工程」の欄に示すように、試料94については、部品本体の表面にある撥水処理剤をサンドブラストにより除去した。
【0168】
また、表7に示す、比較例としての試料95については、撥水性を付与する処理は行なわなかった。なお、試料95は、実験例1における試料13と同等のものである。
【0169】
次に、試料91〜95のすべてについて、Cu厚膜からなる第1の電極層上に、電解めっき法により、第2の電極層としてのNiめっき膜、および第3の電極層としてのSnめっき膜を順次形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
【0170】
このようにして得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、実験例1の場合と同様の方法により、表7に示すように、めっき膜形成状態を評価するとともに、耐湿負荷試験を実施した。
【0171】
【表7】
【0172】
撥水処理剤の除去工程がない場合とある場合とに分けて考察する。
【0173】
(1)除去工程がない場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料91と通常浸漬を採用した試料93とに注目すると、両者とも耐湿負荷試験不良が発生しなかった。
【0174】
しかし、めっき膜形成状態不良は、両者とも発生した。ただし、めっき膜形成状態不良数は、前者の試料91において、より低減された。これは、撥水処理剤が深部まで浸透するためであると推測される。
【0175】
なお、めっき膜形成状態不良の抑制のためには、以下に示すように、撥水処理剤の除去工程を実施することが有効である。
【0176】
(2)除去工程がある場合
撥水処理において超臨界状態を採用した試料92と通常浸漬を採用した試料94とに注目すると、両者ともめっき膜形成状態不良が発生しなかった。
【0177】
しかし、撥水処理において通常浸漬を採用した試料94では、撥水処理剤の除去処理によって、表面の撥水能が低下し、耐湿負荷試験不良が発生した。これに対して、撥水処理において超臨界状態を採用した試料92では、撥水処理剤の除去処理によっても、耐湿負荷試験不良が発生しなかった。すなわち、試料92では、めっき膜形成状態と耐湿負荷試験との両立が可能であった。これは、撥水処理剤が深部まで浸透し、除去工程後においても、内部への水分浸入を防止できたためであると推測される。
【0178】
撥水処理を行なわなかった試料95では、試料13について前述したとおり、めっき膜形成状態不良は発生しなかったが、耐湿負荷試験不良は多くの試料において発生した。
【符号の説明】
【0179】
1 セラミック電子部品
2 部品本体
3,4 内部電極
5 セラミック層
6,7 端面
8,9 外部端子電極
10 第1の電極層
11 第2の電極層
12 第3の電極層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックをもって構成される部品本体と、
前記部品本体の外表面上に付与された撥水処理剤と、
前記撥水処理剤の上に形成された外部端子電極と、
を備える、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記外部端子電極は、めっき膜を有する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記外部端子電極は、導電性ペーストを焼付けた厚膜を有する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記外部端子電極は、導電性樹脂電極層を有する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項1】
セラミックをもって構成される部品本体と、
前記部品本体の外表面上に付与された撥水処理剤と、
前記撥水処理剤の上に形成された外部端子電極と、
を備える、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記外部端子電極は、めっき膜を有する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記外部端子電極は、導電性ペーストを焼付けた厚膜を有する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記外部端子電極は、導電性樹脂電極層を有する、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【図1】
【公開番号】特開2013−62550(P2013−62550A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−955(P2013−955)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2011−99123(P2011−99123)の分割
【原出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2011−99123(P2011−99123)の分割
【原出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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