説明

セルロースエステルフィルムの製造方法

【課題】長尺のセルロースエステルフィルムをオンラインで連続して製膜でき、低ヘイズで、製膜開始時の膜面品質(シワ耐性、破断耐性)に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができるセルロースエステルフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造方法において、主ドープに対しインライン方式でマット剤含有溶液を添加してドープを調製し、製膜開始後の製膜速度に従って、該ドープ中のマット剤濃度をオンラインで制御することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産開始時におけるフィルム搬送安定性が改良されたセルロースエステルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)の偏光板用の保護フィルムとしては、セルロースエステルフィルムが用いられている。従来のセルロースエステルフィルムの製造方法としては、例えば、溶液流延製膜方法により、セルロースエステル溶液(以下、ドープともいう)を、鏡面処理が施された表面を有し、無限移行する無端の支持体(ステンレス鋼製ベルトあるいはドラム)上に流延ダイからドープを流延し、形成したドープ膜(以下、ウェブともいう)を剥離ローラ(剥離点)で剥離し、次いで、ウェブを乾燥工程に移動し、搬送させながら乾燥してセルロースエステルフィルムとして製膜した後、最後に、巻き取り機によりロール状に巻き取ることにより、セルロースエステルフィルムを製造していた。
【0003】
従来、セルロースエステルフィルムの製造においては、2000m巻程度のロール状フィルムの生産が一般的であったが、近年、液晶表示装置(LCD)の偏光板用の保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの需要が拡大し、1ロット当たりのフィルム生産スケールも、2500m巻〜4000m巻のものが主流となっており、今後は、更なる生産能力の拡大及びフィルムの高生産の観点から、1ロールあたりの巻長が5000mを超えることが予測されている。
【0004】
しかしながら、このように、セルロースエステルフィルムの巻径がアップすることにより、ロール状に積層したフィルムにかかる力が増大し、巻き外観の劣化や、フィルム同士の滑り性の劣化、すなわち、巻き品質の劣化が生じるという現象があった。
【0005】
上記問題に対し、従来、滑り性の向上に寄与するマット剤の添加量を適宜調整(増量)する方法で対応がとられてきた。例えば、マット剤を含有するセルロースエステルフィルムを製膜する工程と、巻き取り直後のセルロースエステルフィルムの摩擦係数を検知する工程とを有し、製膜工程において、検知工程からのフィルム摩擦係数の検知情報に基づいて、ドープ中へのマット剤の添加量を調整するセルロースエステルフィルムの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1によれば、セルロースエステルフィルムの巻品質に係るフィルムの滑り性を、セルロースエステルフィルムの製造工程で検知し、その結果を製造条件(ドープ中へのマット剤の含有量)に反映することにより、例えば、5000m以上の巻長の積層ロールを製造する場合でも、ロール品質の劣化を抑えることができるとされている。しかしながら、セルロースエステルフィルムに要求される品質(例えば、透明性やコントラスト)に対し、単にマット剤量を増量することは品質、例えば、透明性等の特性を劣化させる要因となり、その添加量が自ずと制限を受けることになる。
【0006】
また、溶液流延方法によるセルロースアシレートの製造方法において、セルロースアシレートフィルム中のマット剤の含有率を0.03〜0.15質量%の範囲内に制御したセルロースアシレートフィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載の発明によれば、フィルムの透明性を損なうことなく、搬送性及び耐傷性に優れたセルロースアシレートフィルムが得られるとされている。
【0007】
一方、本発明者が、1ロールあたりの巻長が5000mを超えるような長尺のセルロースエステルフィルムを製造する際の問題について検討を進めた結果、巻き品質に関しては、巻きとり条件等の適正化により、ある程度までは、マット剤を増量することなく、長尺のロール状セルロースエステルフィルムを生産することが可能となったものの、フィルム製膜を開始する初期段階、すなわち、生産時の製膜速度に到達していない低速製膜段階では、搬送ロール等に対する摩擦特性(すべり性)が不十分となり、シワの発生やテンターにおけるクリッピングミス等のトラブルが発生する。そのような状態で、摩擦係数の低い低速製膜品をワインダー部で巻き取りロールに巻き取った後、その上に正規の製膜速度で生産した製品をロール状に積層して巻長が5000mを超えるような長尺のロール状セルロースエステルフィルムを形成した場合には、ロール状積層体の面品質(例えば、巻きシワ故障、巻きずれ故障等)が損な割れる結果となり、製膜開始から連続してオンラインで長尺のロール状セルロースエステルフィルムを安定して製造する上での大きな障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−313467号公報
【特許文献2】特開2002−317059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、長尺のセルロースエステルフィルムをオンラインで連続して製膜でき、低ヘイズで、製膜開始時の膜面品質(シワ耐性、破断耐性)に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができるセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0011】
1.溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造方法において、主ドープに対しインライン方式でマット剤含有溶液を添加してドープを調製し、製膜開始後の製膜速度に従って、該ドープ中のマット剤濃度をオンラインで制御することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0012】
2.前記製膜速度が50m/分未満では、前記ドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%以上とし、前記製膜速度が50m/分以上では、前記ドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%未満に制御することを特徴とする第1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0013】
3.生産条件の製膜速度に到達した時のドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量が、0.15質量%以下であることを特徴とする第1項または第2項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0014】
4.前記主ドープが含有するマット剤の濃度をA(質量%)とし、前記マット剤含有溶液が含有するマット剤の濃度をB(質量%)としたとき、マット剤の濃度比(B/A)の値が、2.0〜80.0の範囲であることを特徴とする第1項から第3項のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0015】
5.生産条件の製膜速度に到達した以降は、前記インライン方式による主ドープへのマット剤溶液の添加を行わないことを特徴とする第1項から第4項のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0016】
6.前記生産条件における製膜速度が、50〜150m/分の範囲であることを特徴とする第3項から第5項のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0017】
7.前記セルロースエステルフィルムの膜厚が35μm以下であることを特徴とする第1項から第6項のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0018】
8.ワインダー部がガイドローラを有していることを特徴とする第1項から第7項のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、長尺のセルロースエステルフィルムをオンラインで連続して製膜でき、低ヘイズで、製膜開始時の膜面品質(シワ耐性、破断耐性)に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができるセルロースエステルフィルムの製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に適用可能な溶液流延製膜装置の製造ラインの一例を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法は、溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造方法において、流延ダイの上流部に、主ドープに対しインライン方式でマット剤含有溶液を添加してドープを調製する設備を具備し、製膜開始後の製膜速度に従って、該ドープ中のマット剤濃度をオンラインで制御することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項9に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0022】
長尺のセルロースエステルフィルムを製造する際に、製膜を開始してから生産条件で設定する搬送速度(製膜速度)に到達するまでの低速搬送条件下では、巻き取り張力が低く、かつフィルム面の表面粗さが低い場合には、流延工程、乾燥工程あるいは巻き取り工程に設けられている各搬送ローラに対する摩擦特性が低下して滑りやすく、安定した搬送ができなくなり、その結果、低速搬送時にシワが発生したりする。さらに、延伸工程に設けられているテンター用のクリップでのクリッピングミスも発生しやすくなり、安定した搬送が困難になる。上記課題に対し、ドープ中のマット剤を増量することによりある程度の対応は可能であるが、製膜したフィルムの透明性、コントラスト適性等で課題を抱えることになる。
【0023】
本発明者らは、上記問題に対し鋭意検討を進めた結果、製膜開始から生産条件の搬送速度(製膜速度)に到達するまでの間(この間に製膜されるフィルムは、非製品対象フィルムで、リーダーフィルムとして機能する)では、主ドープに、マット剤を高濃度で含有するマット剤含有溶液をインライン方式で添加し、所望の高マット剤濃度を有するドープを調製する。このドープを用いて、低搬送速度条件下で製膜を行うことにより、適度な表面粗さあるいは摩擦係数を備えたリーダーフィルムとしてのセルロースエステルフィルムを製膜することができ、低搬送速度でも安定した搬送を行うことができる。その後、搬送速度が生産条件に到達した段階では、オンラインでマット剤の含有量を設計条件まで低下させることにより、透明性、コントラスト適性を備えたセルロースエステルフィルムを安定して、高い生産性で製造することができる。
【0024】
本発明の実施態様としては、製膜速度が50m/分未満の条件では、本発明に係るドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%以上に設定し、製膜速度が50m/分以上の条件では、ドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%未満に制御することが、生産安定性・搬送安定性及びセルロースエステルフィルムの品質をより両立させることができる観点から好ましい態様である。
【0025】
また、生産条件の製膜速度に到達した時点でのドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を、0.15質量%以下とすることが、低ヘイズで高いコントラストを有するセルロースエステルフィルムを得ることができる点で好ましい。
【0026】
また、主ドープが含有するマット剤の濃度をA(質量%)とし、前記マット剤含有溶液が含有するマット剤の濃度をB(質量%)としたとき、マット剤の濃度比(B/A)の値が、2.0〜80.0の範囲とすることが、製膜を開始してから生産条件の搬送速度(製膜速度)に到達するまでの低速搬送条件下で所望のマット剤濃度を含有するドープを得ることができる観点から好ましい。
【0027】
また、生産条件の製膜速度に到達した以降は、前記インライン方式による主ドープへのマット剤溶液の添加を行わないこと、生産条件における製膜速度が50〜150m/分の範囲であること、セルロースエステルフィルムの膜厚が35μm以下であること、ワインダー部がガイドローラを有していることが、本発明の目的効果をより発現することができる観点から好ましい。
【0028】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0029】
《セルロースエステルフィルムの製造方法》
はじめに、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に適用する溶液流延製膜方法について説明する。
【0030】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法としては、特に制限はなく、当業界で一般に用いられている方法でよく、例えば米国特許2,492,978号公報、同2,739,070号公報、同2,739,069号公報、同2,492,977号公報、同2,336,310号公報、同2,367,603号公報、同2,607,704号公報、英国特許64,071号公報、同735,892号公報、特公昭45−9074号公報、同49−4554号公報、同49−5614号公報、同60−27562号公報、同61−39890号公報、同62−4208号公報等に記載の方法を参考にすることができる。
【0031】
図1は、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に適用可能な溶液流延製膜装置のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程、及び巻取り工程を模式的に示すものである。なお、ここに示す例は、溶液流延製膜法の一例であり、本発明の実施にあたっては、図1のプロセスに限定されることはない。なお、ドープ調製工程における本発明に係る主ドープとマット剤含有溶液とのインライン方法に関する実施態様の詳細については、後述する。
【0032】
図1において、セルロースエステル系樹脂を含むドープの調製は、セルロースエステル系樹脂に対する良溶媒を主とする主溶媒に、溶解釜1中で該セルロースエステル系樹脂、及び必要に応じて添加する添加剤を投入し、攪拌しながら溶解して、主ドープを調製する。
【0033】
セルロースエステル系樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報等に記載のような冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載のような高圧で行う方法等、種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0034】
主溶媒を添加しての加熱温度は、使用する有機溶媒の沸点以上で、かつ該有機溶媒が沸騰しない範囲の温度が好ましく、例えば、60℃以上、更に詳しくは80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、主溶媒が沸騰しない条件に設定する。主ドープ中のセルロースエステル系樹脂の濃度は、10〜35質量%の範囲であるのが好ましい。
【0035】
主ドープには、セルロースエステル系樹脂と主溶媒のほかに、必要に応じ、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶媒と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル系樹脂の溶解前の溶媒に投入しても、セルロースエステル系樹脂を溶解した後の主ドープへ投入しても良い。
【0036】
本発明に係る主ドープにおいては、少なくともマット剤を含有していることが好ましく、更には主ドープの総固形分量に対し0.15質量%以下の濃度で含有していることが好ましい。
【0037】
溶解釜(加圧容器)1の構造には、特に制限は無く、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができる構造であればよい。加圧方式の溶解釜1には、そのほか、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は、窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0038】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法は、上記の溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造するにあたり、上記の溶解釜(加圧容器)1で調製したセルロースエステル系樹脂を主成分とする主ドープに、後述するインライン添加でマット剤含有溶液を添加して、流延用のドープを調製し、この流延用のドープを用いて、流延ダイを介して製膜する。
【0039】
具体的には、高圧分散装置によりマット剤粒子と溶媒を混合したマット剤分散液(マット剤添加液)を別釜にて調製し、このマット剤分散液を溶解釜1へ導入して、セルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)に、溶解時に添加する場合や、可塑剤のような添加剤の全量または一部を、こちらのドープに添加する場合もある。
【0040】
次いで、主ドープを送液ポンプ2の作動によりドープストック釜である第1ドープ静置釜3に送って、一旦、そこで貯える。さらに、静置後の主ドープを送液ポンプ4の作動により一次濾過器5に導いて一次濾過し、凝集物を除去する。一次濾過器5では、静置後の主ドープを、濾紙あるいは金属焼結フィルターなどの濾材で濾過する。その後、主ドープを、ドープストック釜である第2ドープ静置釜6に貯える。
【0041】
静置後の主ドープを、送液ポンプ7の作動により二次濾過器8に導いて二次濾過する。二次濾過器8では、主ドープを、濾紙あるいは金属焼結フィルターなどの濾材で濾過する。
【0042】
ここで、上記ドープ溶解釜1での溶解時の温度と、その温度での保持時間、第1ドープ静置釜3及び第2ドープ静置釜6での温度と、その温度での保持時間をそれぞれ調整する。
【0043】
一方、高圧分散装置(不図示)によりあらかじめ所望の分散粒径となるように分散処理を施したマット剤含有溶液を、マット剤含有溶液調製釜9にストックした後、送液ポンプ11の作動によりマット剤含有溶液循環濾過器12に導いて循環濾過するとともに、マット剤含有溶液を、マット剤含有溶液送液濾過器10で濾過する。
【0044】
このとき、本発明に係るマット剤含有溶液は、少なくともマット剤を含有し、主ドープとインラインミック後のドープの総固形分量に対するマット剤濃度が、0.3質量%以上になるような濃度でマット剤を含有していることが好ましく、更には、主ドープが含有するマット剤濃度の2.0〜80.0倍の範囲の濃度でマット剤を含有していることが好ましい。
【0045】
また、本発明に係るマット剤含有溶液が、マット剤の濃度を除いては上記説明した主ドープと同一組成として調製する方法も適用することができる。このような構成とすることにより、主ドープへのマット剤含有溶液の混合比率が変化しても、マット剤濃度以外は全く同一の条件、例えば、同一のドープ物性条件で製膜することができ、安定性の観点から好ましい。
【0046】
なお、上記のようなマット剤濃度以外は主ドープと同一組成のマット剤含有溶液を調製する場合には、主ドープの調製と同様の方法で、溶解釜1、送液ポンプ2、第1ドープ静置釜3、送液ポンプ4、一次濾過器5、第2ドープ静置釜6、送液ポンプ7、二次濾過器8を用いて調製することが好ましい。
【0047】
次いで、溶解釜(加圧容器)1で調製し、かつ二次濾過したセルロースエステル系樹脂を主成分とする主ドープを、スタチックミキサー13に導入するとともに、スタチックミキサー13の手前において、主ドープに、マット剤含有溶液を、インラインで添加することにより流延用のドープを調製する。つぎに、該流延用ドープを流延ダイ14に導入し、溶液流延製膜法により、支持体20上に流延して、ドープ膜(ウェブ)を形成する。
【0048】
本発明においてインライン添加、混合を行うために用いることのできる装置としては、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
【0049】
流延ダイ14としては、ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイ14には、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。また、キャスト工程における支持体20には、ステンレス鋼製の回転駆動ベルトもしくは同ドラムを鏡面仕上げした支持体20が使用される。キャスト工程の支持体20の温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶媒の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体20上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間を高めることができるため好ましく、5〜15℃の支持体20上に流延することが、さらに好ましい。ここで、剥離限界時間とは、透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープが支持体20上にある時間をいう。剥離限界時間は、短い方が生産性に優れていて、好ましい。
【0050】
支持体上の乾燥工程では、流延したドープを一旦ゲル化させた後、流延から剥離ローラ21によって剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶媒の蒸発を促進し、それだけ早く支持体20上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。その後、この温度を20%以上維持することが好ましく、さらにこの温度を40%以上維持することが好ましい。
【0051】
支持体20上での乾燥は、残留溶媒量60〜150%で支持体20から剥離ローラ21によって剥離することが、支持体20からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃の範囲にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5℃〜20℃の範囲がより好ましい。
【0052】
溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造において、残留溶媒量は、下式で表される。
【0053】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブ(フィルム)の任意時点での質量、Nは質量Mのものを115℃で1時間加熱処理したときのフィルム質量である。
【0054】
フィルム乾燥工程においては、支持体20より剥離ローラ21によって剥離したウェブ22をさらに乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0055】
剥離後、ウェブ22を、クリップ若しくはピンでウェブ22の両端を把持して搬送するテンター装置23、及び乾燥装置内に複数配置した搬送ローラ25に交互に通して搬送する乾燥装置24を用いて、ウェブ22を乾燥する。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に、支持体20より剥離した直後の残留溶媒量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため好ましい。
【0056】
特に、支持体20から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブ22は幅手方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅手方向にクリップでウェブ22の幅手方向両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
【0057】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラ、マイクロ波等で行う。簡便さの点で、熱風により行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが、寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。
【0058】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
【0059】
乾燥後のフィルム26中の残留溶媒量が2質量%以下となってから、セルロースエステル系樹脂フィルムとして巻き取り機27によってロール状に巻き取り、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
【0060】
使用する巻き取り機27は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0061】
巻き取り性を安定させるために、セルロースエステル系樹脂フィルムの幅方向の両端に凹凸を付与して端部を嵩高くするいわゆるナーリング加工を施しても良い。
【0062】
また、本発明においては、巻き取り工程での巻き取り安定性を向上させる観点から、弾性を備えたガイドローラ30でサポートしながら巻取りを行うことが、均一性の高いセルロースエステルフィルムを得ることができる観点から好ましい。
【0063】
本発明のセルロースアセテートフィルムの製造方法においては、生産条件の設定製膜速度Vとしては、50〜150m/分であることが好ましい。
【0064】
本発明において、本発明に係るセルロースエステルフィルムの厚さは、一般的には、20〜200μmの厚みで使用されるが、液晶表示装置(LCD)に使用される偏光板の薄肉化、軽量化の要望、及び本発明の効果をいかんなく発揮できる観点から35μm以下であることが好ましく、より好ましくは、20〜35μmの範囲である。また、積層ロール1本あたりのフィルム長として、4000m以上であることが好ましく、4500m以上であることが好ましく、5000m以上であることが特に好ましい。
【0065】
次いで、本発明のセルロースアセテートフィルムの製造方法における主ドープとマット剤含有溶液とのインライン方式による混合条件の詳細ついて説明する。なお、一部は、上記説明と重複。
【0066】
本発明においては、上記説明した溶液流延方法によるセルロースアセテートフィルムの製造方法において、流延ダイ14の前に、上記方法で調製した主ドープに対し、インライン方式でマット剤含有溶液を添加してドープを調製する際に、製膜を開始した後、生産条件の製膜速度に到達する間で、上昇する製膜速度に従って、ドープ中のマット剤濃度を制御することを特徴とする。
【0067】
具体的には、製膜速度が50m/分未満の低速製膜条件では、ドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%以上、という高濃度に設定して、低速搬送時の搬送ローラ等に対するすべり耐性(摩擦係数)を確保し、製膜速度が50m/分以上の条件では、ドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%未満という低濃度に制御することが好ましい。
【0068】
本発明でいうドープ中の総固形分量とは、製膜した後にフィルムを構成する材料であり、セルロースエステルフィルムのほか、可塑剤、紫外線吸収等が含まれる。
【0069】
また、好ましい態様としては、生産条件の設定製膜速度Vに到達した時のドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量が、0.15質量%以下であることが好ましく、更には生産条件の製膜速度Vに到達した以降は、インライン方式による主ドープへのマット剤含有溶液の添加を行わない、すなわち主ドープ中の総固形分量に対するマット剤濃度を0.15質量%以下に設定し、主ドープのみで製膜する方法がより好ましい態様である。
【0070】
加えて、前述のように、本発明に係る主ドープとマット剤含有溶液はいずれもマット剤を異なる濃度で含有し、かつマット剤の含有量を除いては、主ドープとマット剤含有溶液は同一組成であることが、安定した製膜条件を実現する上から好ましい。本発明に係る主ドープとマット剤含有溶液はいずれもマット剤を異なる濃度で含有する場合、ドープが含有するマット剤の濃度をA(質量%)とし、マット剤含有溶液が含有するマット剤の濃度をB(質量%)としたとき、マット剤の濃度比(B/A)の値が、2.0〜10.0の範囲であることが好ましい。
【0071】
次いで、本発明に係るセルロースエステルフィルムの各構成材料について説明する。
【0072】
(セルロースエステル)
本発明に係るセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
【0073】
セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%の範囲のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のベース強度が強くより好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0074】
ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用した方が、生産性効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更には、単独で使用することが最も好ましい。
【0075】
(マット剤)
本発明に適用可能なマット剤の種類としては、特に制限は無く、無機化合物でも有機化合物でもよいが、より好ましくは無機化合物である。無機化合物の例としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物であることが好ましく、特に、二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えば、アエロジル(株)製のAEROSIL200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812,R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106等が挙げられる。その中でも、分散性や粒径を制御する点では、AEROSIL200V、R972Vが好ましい。
【0076】
フィルム中でのマット剤粒子の平均粒径は、滑り性付与と透明性確保の観点から50nm〜2μmの範囲が好ましい。より好ましくは、100nm〜1000nm、さらに好ましくは、100nm〜500nmの範囲である。フィルム中での平均粒径は、断面写真を撮影して観察することにより、確認できる。
【0077】
マット剤粒子の粒径は、一次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルム中での粒径がそれぞれ異なっている。この中で最終的なフィルム中でのマット剤粒子の粒径は、フィルム原反の保存時おけるハリツキ故障や異物発生による凸状故障、またヘイズに影響する。よってフィルム中での微粒子の粒径を、コントロールすることが重要である。
【0078】
本発明において、最終的にフィルム中でのマット剤の平均二次粒径は100nm〜500nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、150nm〜400nmの範囲であり、更に好ましくは、200nm〜350nmの範囲である。フィルム中での平均二次粒径は断面写真を撮影し観察することで確認できる。マット剤の平均二次粒径が、500nmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られ、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、100nmより小さい場合は、充分な巻き取り性の改善効果が見られず、特に、セルロースエステルフィルムの膜厚が20〜65μmの範囲の場合が顕著となる。
【0079】
セルロースエステルフィルムのヘイズは、例えば、ASTM−D1003−52に従って測定できる。ヘイズは0〜0.6%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜0.4%、更に好ましくは、0.1〜0.2%の範囲である。
【0080】
マット剤の分散は、マット剤粒子と溶媒とを混合したマット剤混合液を高圧分散装置で処理することで行うことができる。分散に用いる高圧分散装置としては、マット剤と溶媒を混合したマット剤混合液を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだすような高圧分散装置を用いることができる。高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm2以上であることが好ましい。更に好ましくは1960N/cm2以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が418kJ/hr以上に達するものが好ましい。
【0081】
上記のような特性を備えた高圧分散装置としては、例えば、MicrofluidicsCorporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製のナノマイザーを挙げることができ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製のホモゲナイザー等が挙げられる。
【0082】
マット剤は、水溶性溶媒を25〜100質量%含有する溶媒中で分散した後、非水溶性有機溶媒を水溶性溶媒に対して0.5〜1.5倍添加して希釈する微粒子分散希釈液として用いることができる。また、セルロースエステル樹脂を溶媒に溶解する溶解工程で前記マット剤を分散したマット剤分散液を添加し、一定濃度のマット剤を含有する主ドープとして調製することができる。更に、該主ドープ中のマット剤濃度を高く設定し、マット剤濃度のみが異なるインライン液(マット剤含有溶液)として用いることもできる。
【0083】
水溶性溶媒としては、主に低級アルコールが用いられる。低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
【0084】
非水溶性溶媒としては特に限定されないが、セルロース樹脂の製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましく、水に対する溶解度が30質量%以下のものが用いられ、メチレンクロライド、クロロホルム、酢酸メチル等が挙げられる。
【0085】
マット剤粒子は溶媒中で1〜30質量%の濃度で分散される。これ以上の濃度で分散すると、粘度が急激に上昇し好ましくない。マット剤分散液中のマット剤粒子の濃度としては、5〜25質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、10〜20質量%の範囲である。
【0086】
(可塑剤)
本発明に係るセルロースエステルフィルムには、可塑剤を添加しても良い。本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。
【0087】
可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい、この場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下が、セルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため好ましい。
【0088】
リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方がさらに好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。
【0089】
(紫外線吸収剤)
本発明に係るセルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より、波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0090】
本発明においては、特に、波長370nmでの透過率が、10%以下であるものが好ましく、より好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下である。
【0091】
一般に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0093】
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤等である。不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をセルロース樹脂フィルムに添加するという態様が特に好ましい。
【0094】
紫外線吸収剤のドープ中への添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースエステル樹脂中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0095】
本発明において、紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステル樹脂に対する質量%で、0.1質量%〜2.5質量%の範囲であり、好ましくは、0.5質量%〜2.0質量%の範囲であり、より好ましくは0.8質量%〜2.0質量%の範囲である。紫外線吸収剤の使用量が2.5質量%より多いと透明性が悪くなる傾向があり好ましくない。
【0096】
(溶媒)
本発明に係るセルロースエステルの溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノールなどの低級アルコール類、シクロヘキサンジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族炭化水素塩化物類などを用いることができる。溶媒比率としては例えば、メチレンクロライド70〜95質量%、その他の溶媒は5〜30質量%の範囲が好ましい。また、セルロースエステルの濃度は10〜50質量%の範囲が好ましい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0098】
実施例1
〔セルロースエステルフィルム1の作製:本発明〕
(主ドープ1の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、数平均分子量=148000、質量平均分子量=310000、アセチル基置換度=2.9)
100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
二酸化ケイ素分散液(マット剤である二酸化ケイ素固形分量として0.166質量部)
2.60質量部
図1に記載のセルロースエステルフィルムの製造工程フローに従って、主ドープ1を調製した。上記各構成材料を密閉容器である溶解釜1に投入し、加熱しながら撹拌を行って完全に溶解した。次いで、送液ポンプ2で、ドープストックタンク釜である第1ドープ静置釜3に送液して、そこで一旦貯えた。次いで、ポンプ4により主ドープ1を一次濾過器5により、濾過を行った。濾過は、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して行い、濾過後の主ドープ1を第2ドープ静置釜6に貯蔵した。
【0099】
上記主ドープ1中の総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.15質量%である。
【0100】
〈二酸化ケイ素分散液の調製〉
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製の二酸化ケイ素微粒子、一次粒子の平均粒径16nm、見掛け比重90g/リットル) 12質量部
エタノール 88質量部
上記二酸化ケイ素及びエタノールをディゾルバーで30分間攪拌混合した後、更に、88質量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間攪拌混合して、二酸化ケイ素分散液を調製した。
【0101】
(マット剤含有溶液1の準備)
上記調製した二酸化ケイ素分散液を、インライン添加で用いるマット剤含有溶液1として使用した。
【0102】
図1に記載のセルロースエステルフィルムの製造工程フローにおいて、分散処理を施したマット剤含有溶液1(二酸化ケイ素分散)をマット剤含有溶液調製釜9にストックした後、送液ポンプ11の作動によりマット剤含有溶液循環濾過器12に導いて循環濾過して、スタンバイさせた。
【0103】
(セルロースエステルフィルムの作製)
図1に記載のセルロースエステルフィルムの製造工程フローに従って、上記調製した主ドープ1と、マット剤含有溶液1を用いて、下記の手順によりセルロースエステルフィルム1を作製した。
【0104】
第2ドープ静置釜6に貯蔵した主ドープ1と、マット剤含有溶液調製釜9に貯蔵したマット剤含有溶液1とを、流延ダイ14の直前に設けたスタチックミキサー13であるインラインミキサー(東レ社製 東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)により、主ドープ593質量部:マット剤含有溶液2.60質量部の比率で混合して、第1のドープ1を調製した。第1のドープ1の総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.30質量%である。
【0105】
製造工程の搬送速度を徐々に高めながら、10m/分の搬送速度に到達した時点で、流延ダイ14による支持体(流延ベルトともいう)20上へ第1のドープ1の供給を開始して、先行製膜を行った。製膜時の流延温度は35℃、流延したフィルムの幅は1.8mであった。流延ベルト20上で残留溶媒量が120%になるまで溶媒を蒸発させた後、流延ベルト20から剥離した。延伸工程23では、120℃で更に溶媒を蒸発させながらフィルムの幅方向に1.2倍の延伸を行った。巻き取り後のフィルムの膜厚は40μmであった。
【0106】
次いで、先行製膜を行った後、搬送速度が50m/分を超えた時点で、インラインミキサーへのマット剤含有溶液1の供給を停止し、主ドープ1のみで第2のドープ(ドープの総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.15質量%)を形成して製膜を継続し、100m/分まで搬送速度を上昇させた後、これを生産時の搬送速度として、5000m長のセルロースエステルフィルムの製造し、巻芯に先行製膜フィルムを巻き付け、その上に連続して100m/分で製膜したセルロースエステルフィルムを積層して、膜厚が40μmのセルロースエステルフィルム1を作製した。なお、セルロースエステルフィルム1の作製に際しては、ワインダー部でのガイドローラは使用しないでロール状に積層した。
【0107】
〔セルロースエステルフィルム2の作製:本発明〕
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、セルロースエステルフィルムの膜厚を40μmから35μmに変更した以外は同様にして、セルロースエステルフィルム2を作製した。
【0108】
〔セルロースエステルフィルム3の作製:本発明〕
(主ドープ2の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、数平均分子量=148000、質量平均分子量=310000、アセチル基置換度=2.9)
100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
二酸化ケイ素分散液(マット剤である二酸化ケイ素固形分量として0.055質量部)
0.86質量部
図1に記載のセルロースエステルフィルムの製造工程フローに従って、主ドープ2を調製した。上記各構成材料を密閉容器である溶解釜1に投入し、加熱しながら撹拌を行って完全に溶解した。次いで、送液ポンプ2で、ドープストックタンク釜である第1ドープ静置釜3に送液して、そこで一旦貯えた。次いで、ポンプ4により主ドープ2を一次濾過器5により、濾過を行った。濾過は、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して行い、濾過後の主ドープ2を第2ドープ静置釜6に貯蔵した。
【0109】
上記主ドープ2中の総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.05質量%である。
【0110】
(セルロースエステルフィルムの作製)
第2ドープ静置釜6に貯蔵した主ドープ2と、マット剤含有溶液調製釜9に貯蔵したマット剤含有溶液1とを、流延ダイ14の直前に設けたスタチックミキサー13であるインラインミキサー(東レ社製 東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)により、主ドープ2とマット剤含有溶液1との混合比を、593質量部(主ドープ2):4.34質量部(マット剤含有溶液1)として、第1のドープ3を調製した。第1のドープ3の総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.30質量%である。
【0111】
次いで、セルロースエステルフィルム2の作製において、第1のドープ1(マット剤含有量0.30質量%)に代えて、第1のドープ3(マット剤含有量0.30質量%)を用い、第2のドープ3としては、上記調製した主ドープ2のみ(マット剤含有量0.05質量%)を用いて製膜した以外は同様にして、膜厚が35μmのセルロースエステルフィルム3を作製した。
【0112】
〔セルロースエステルフィルム4の作製:本発明〕
(マット剤含有溶液4の調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、数平均分子量=148000、質量平均分子量=310000、アセチル基置換度=2.9)
100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
二酸化ケイ素分散液(マット剤である二酸化ケイ素固形分量として1.66質量部)
26.0質量部
図1のセルロースエステルフィルムの製造工程フローに記載の主ドープ1を調製工程と同様のラインにより、マット剤の含有量を除いては、主ドープ1と同一組成のマット剤含有溶液4を調製した。マット剤含有溶液4の総固形分量に対するマット剤の含有量は1.50質量%である。
【0113】
(セルロースエステルフィルムの作製)
第2ドープ静置釜6に貯蔵した主ドープ1と上記調製したマット剤含有溶液4とを、流延ダイ14の直前に設けたスタチックミキサー13であるインラインミキサー(東レ社製 東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)により、主ドープ1とマット剤含有溶液4との混合比を、593質量部(主ドープ1):59.3質量部(マット剤含有溶液4)として、第1のドープ4を調製した。第1のドープ4の総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.30質量%である。
【0114】
次いで、セルロースエステルフィルム2の作製において、第1のドープ1(マット剤含有量0.30質量%)に代えて、第1のドープ4(マット剤含有量0.30質量%)を用い、第2のドープとしては、上記調製した主ドープ1のみ(マット剤含有量0.15質量%)を用いて製膜した以外は同様にして、膜厚が35μmのセルロースエステルフィルム4を作製した。
【0115】
〔セルロースエステルフィルム5の作製:比較例〕
上記セルロースエステルフィルム2の作製において、マット剤含有溶液1のインライン添加は行わずに、主ドープ1(ドープの総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.15質量%)のみを用いて、製膜開始(搬送速度10m/分)から最終製膜(生産条件搬送速度100m/分)まで同一条件で行い、膜厚が35μmで、巻長が5000mのセルロースエステルフィルム5を作製した。
【0116】
〔セルロースエステルフィルム6の作製:比較例〕
上記セルロースエステルフィルム5の作製において、製膜時の膜厚を40μmに変更した以外は同様にして、セルロースエステルフィルム6を作製した。
【0117】
〔セルロースエステルフィルム7の作製:比較例〕
上記セルロースエステルフィルム6の作製において、主ドープ1(ドープの総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.15質量%)に代えて、下記主ドープ7(ドープの総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.30質量%)を用いて以外は同様にして、セルロースエステルフィルム7を作製した。
【0118】
(主ドープ7の調製)
前記主ドープ1の調製において、二酸化ケイ素分散液の添加量を5.20質量部に変更した以外は同様にして、ドープの総固形分量に対するマット剤の含有量が0.30質量%の主ドープ7を調製した。
【0119】
〔セルロースエステルフィルム8の作製:比較例〕
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、搬送速度10m/分〜50m/分までの先行製膜を、上記主ドープ7(ドープの総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.30質量%)を用いて行い、次いで、ドープの送液ラインを切り替え、搬送速度が50m/分を超え、生産条件の搬送速度100m/分までは主ドープ1(ドープの総固形分量に対するマット剤の含有量は、0.15質量%)を用いた以外は同様にして、バッチ方式によるドープの切り替えを行って、セルロースエステルフィルム8を作製した。
【0120】
《セルロースエステルフィルムの評価》
〔内部ヘイズの測定〕
下記の方法に従って、生産条件の搬送速度(100m/分)で作製した各セルロールエステルフィルムの内部ヘイズを測定した。
【0121】
(測定装置)
ヘイズメーター(濁度計)としては、(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)を使用した。このヘイズメーターは、光源として5V9Wハロゲン球を使用し、受光部にはシリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を用いている。なお、測定はJISK−7136に準じて行った。
【0122】
(測定手順)
〈ブランクヘイズ1の測定〉
1.清浄なスライドガラス上にグリセリンを気泡が入らないように注意して、一滴(0.05ml)滴下した。
【0123】
2.滴下したグリセリン上にカバーガラスを載せた。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
【0124】
3.上記ヘイズメーターにセットし、ブランクヘイズ1を測定した。
【0125】
〈フィルム試料を含めたヘイズ2の測定〉
4.清浄なスライドガラス上に、グリセリンを0.05ml滴下した。
【0126】
5.グリセリン上に、測定対象の試料フィルムを載せた。
【0127】
6.試料フィルム上に、グリセリンを0.05ml滴下した。
【0128】
7.その上にカバーガラスを載せた。
【0129】
8.この試料をヘイズメーターにセットし、ヘイズ2を測定した。
【0130】
下式に従って内部ヘイズを算出した。
【0131】
内部ヘイズ値=(ヘイズ2)−(ブランクヘイズ1)
(使用部品)
スライドガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製鹿特級
〔シワ耐性の評価〕
上記各セルロースエステルフィルムの製造工程において、搬送開始から搬送速度が27m/分に到達した時点で、図1に記載の巻き取り機27によりロール状に巻き取り直前の搬送しているフィルム面品質(シワ故障発生の有無)を目視観察して、下記の基準に従って低速搬送時のシワ耐性を評価した。
【0132】
○:搬送時にシワの発生は全く認められない
△:搬送時にやや弱いシワの発生は認められるが、巻き取り後のロール品質には影響ない
×:搬送時に強いシワの発生が認められ、巻き取り後のロール品質(巻き取り均一性)に影響がある
〔延伸工程適性の評価〕
上記各セルロースエステルフィルムの製造工程において、搬送開始から搬送速度が27m/分に到達した時点で、図1に記載のテンター装置23でのフィルム端部のクリッピングミス(把持不良)の有無を目視観察し、下記の基準に従って低速搬送時の延伸工程適性(クリッピング安定性)を評価した。
【0133】
○:クリッピングミスの発生が全く認められない
△:搬送時にわずかにクリッピングミスの発生は認められるが、搬送性に影響を与えるレベルではない
×:搬送時にクリッピングミスが発生し、安定した延伸、搬送に支障をきたす
〔破断耐性の評価〕
各セルロースエステルフィルムについて、5000m巻の積層ロールを各100本作製し、搬送開始から生産搬送条件である搬送速度100m/分に達するまでの間で、フィルムの破断が発生した回数をカウントし、破断発生頻度(%)(ロール100本あたりの破断ロールの発生数)を求めた。
【0134】
〔生産性の評価〕
セルロースエステルフィルム1の搬送開始から1000mまでのフィルム作製に要した時間を100とし、それぞれの相対作製時間を求め、下記の基準に従って生産性を評価した。
【0135】
○:相対作製時間が90〜100である
△:相対作製時間が101〜120である
×:相対作製時間が121以上である
以上により得られた結果を、表1に示す。
【表1】

表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する条件で製造したセルロースエステルフィルムは、製膜開始から生産時の搬送速度に到達するまでの低速搬送領域で、搬送不良(搬送シワやクリッピングミス)の発生が無く、安定に搬送でき、透明性及びコントラスト特性に優れたセルロースエステルフィルムを高い生産性で得ることができる。
【0136】
実施例2
《セルロースエステルフィルムの作製》
〔セルロースエステルフィルム2Bの作製〕
実施例1に記載のセルロースエステルフィルム2の作製において、ワインダー部において、図1に示すような弾性を有するガイドローラ30を設けて、巻取りを行った以外は同様にして、セルロースエステルフィルム2Bを作製した。
【0137】
〔セルロースエステルフィルム3Bの作製〕
実施例1に記載のセルロースエステルフィルム3の作製において、ワインダー部において、図1に示すような弾性を有するガイドローラ30を設けて、巻取りを行った以外は同様にして、セルロースエステルフィルム3Bを作製した。
【0138】
《セルロースエステルフィルムの評価》
上記作製したセルロースエステルフィルム2B、3Bと、実施例1で作製したセルロースエステルフィルム2、3について、下記の方法に従って、巻き取り品質特性の評価を行った。
【0139】
〔巻き取り品質の評価〕
上記各セルロースエステルフィルムの図1に記載の製造工程において、巻き取り27によりロール状に積層して巻き取った試料の巻き取り品質(巻きジワ、巻きズレの発生、ゆる巻きに起因する馬の背状故障、多角形状の変形故障)について目視観察を行い、下記の基準に従って、巻き取り品質の評価を行った。
【0140】
◎:積層ロールに、巻きジワ、巻きズレの発生、ゆる巻きに起因する馬の背状故障、多角形状の変形故障の発生は全く認められない
○:積層ロールに、ほぼ巻きジワ、巻きズレの発生、ゆる巻きに起因する馬の背状故障、多角形状の変形故障の発生は認められない
△:積層ロールに、ごく弱い巻きジワ、巻きズレの発生、ゆる巻きに起因する馬の背状故障または多角形状の変形故障の発生は見られるが、実用上問題の無い品質である
×:積層ロールに、巻きジワ、巻きズレの発生、ゆる巻きに起因する馬の背状故障または多角形状の変形故障の発生は見られ、実用上懸念される品質である
以上により得られた結果を、表2に示す。
【表2】

表2に記載の結果より明らかなように、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法で長尺の積層ロールを作製する際、ワインダー部でガイドローラを用いて積層することにより、巻き取り品質がより一層向上することが分かる。
【符号の説明】
【0141】
1 溶解釜(加圧容器)
2、4、7、11 送液ポンプ
3 第1ドープ静置釜
5 一次濾過器
6 第2ドープ静置釜
8 二次濾過器
9 マット剤含有溶液調製釜
10 マット剤含有溶液送液濾過器
12 マット剤含有溶液循環濾過器
13 スタチックミキサー
14 流延ダイ
20 支持体
21 剥離ローラ
22 ウェブ
23 テンター装置
24 乾燥装置
25 搬送ローラ
26 乾燥後のフィルム
27 巻き取り機
30 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造方法において、主ドープに対しインライン方式でマット剤含有溶液を添加してドープを調製し、製膜開始後の製膜速度に従って、該ドープ中のマット剤濃度をオンラインで制御することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記製膜速度が50m/分未満では、前記ドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%以上とし、前記製膜速度が50m/分以上では、前記ドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量を0.3質量%未満に制御することを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
生産条件の製膜速度に到達した時のドープ中の総固形分量に対するマット剤含有量が、0.15質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記主ドープが含有するマット剤の濃度をA(質量%)とし、前記マット剤含有溶液が含有するマット剤の濃度をB(質量%)としたとき、マット剤の濃度比(B/A)の値が、2.0〜80.0の範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
生産条件の製膜速度に到達した以降は、前記インライン方式による主ドープへのマット剤溶液の添加を行わないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記生産条件における製膜速度が、50〜150m/分の範囲であることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記セルロースエステルフィルムの膜厚が35μm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
ワインダー部がガイドローラを有していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−111886(P2013−111886A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261096(P2011−261096)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】