説明

セルロース不織布およびその製造方法と複合材料

【課題】空隙率と化学修飾率をコントロールした不織布を得ることで、それを複合材料にした際の、高透明性、非着色性、低線膨張係数化を実現する。
【解決手段】化学修飾されたセルロース不織布であって、化学修飾率がセルロースの全水酸基に対して8〜65mol%で、空隙率が35体積%以上、好ましくは35〜60体積%であるセルロース不織布。セルロースを不織布とした後に、化学修飾することにより、このセルロース不織布を製造する。このセルロース不織布とセルロース以外の樹脂とを含む複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース不織布およびその製法と、このセルロース不織布を用いた複合材料に関するものであり、特にセルロース不織布の空隙率と化学修飾率を制御することで、複合材料にした際の、高透明性、非着色性、低線膨張係数化を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バクテリアセルロースをはじめとするセルロースの微細繊維を用いた複合材料がさかんに研究されている。セルロースはその伸びきり鎖結晶が故に、低線膨張係数と高弾性率と高強度とを発現することが知られている。また、微細化することにより、複合材料とした際、高透明性を示す材料として注目されている。
【0003】
特許文献1においては、バクテリアセルロースや木質を原料に含水状態から乾燥してシートとし、その後化学修飾することによりセルロース複合材料を得ている。しかし、木質の場合、当該特許文献の実施例6にあるように化学修飾率が7.2mol%と低く、本発明者らの検討によれば、複合化の後処理で加熱した際に、着色してしまうという問題点があった。また、バクテリアセルロース(ナタデココ)の場合、当該特許文献の実施例1にあるように化学修飾率が5.6mol%程度であるものが得られていたが、本発明者らの検討によれば、不織布の空隙率が低く、複合材料化の際に、マトリックスが不織布に含浸しにくく、結果として複合材料の透明性が低下するといった問題点があった。
【0004】
特許文献2においては、微細セルロース分散液の抄紙を行う際、有機溶媒で置換した後に乾燥させるという製法で、空隙率が35〜95体積%の不織布を得ている。しかしながら、この特許文献には化学修飾については具体的な記載がない。本発明者らの検討によれば、セルロースの化学修飾率が低すぎると、複合化の後処理で加熱した際に着色してしまうという問題があり、逆に、化学修飾率が高すぎると、複合材料の線膨張係数が大きくなってしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開2007−51266号公報
【特許文献2】特開2006−316253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、空隙率と化学修飾率をコントロールしたセルロース不織布を得ることで、それを複合材料にした際の、高透明性、非着色性、低線膨張係数化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)のセルロース不織布は、化学修飾されたセルロース不織布であって、化学修飾率がセルロースの全水酸基に対して8〜65mol%、空隙率が35体積%以上であることを特徴とする。
【0007】
請求項2のセルロース不織布は、請求項1において、化学修飾率が8〜50mol%であることを特徴とする。
【0008】
請求項3のセルロース不織布は、請求項1又は2において、空隙率が60体積%以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項4)のセルロース不織布の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセルロース不織布を製造する方法であって、セルロースを不織布とした後に、化学修飾することを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項5)のセルロース不織布の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセルロース不織布を製造する方法であって、セルロースを化学修飾した後に、不織布とすることを特徴とする。
【0011】
請求項6のセルロース不織布の製造方法は、請求項4又は5において、セルロースを有機溶媒で洗浄した後に不織布とすることを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項7)の複合材料は、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセルロース不織布とセルロース以外の樹脂とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セルロース不織布の空隙率を制御することにより、樹脂が含浸しやすくなり、高透明な複合材料が得られるとともに、セルロースの化学修飾率を制御することで非着色性、低線膨張係数化を発現することができる。さらには化学修飾率を制御することで、得られる複合材料の吸水率を低減するとともに、セルロースと樹脂との親和性も高められるといった効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0015】
[セルロース不織布]
本発明のセルロース不織布は、化学修飾されたセルロース不織布であって、化学修飾率がセルロースの全水酸基に対して8〜65mol%で、空隙率が35体積%以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るセルロース不織布とは、主としてセルロースからなる不織布であり、セルロース繊維の集合体である。セルロース不織布はセルロース分散液を抄紙又は塗布によって製膜する方法、あるいはゲル状膜を乾燥する方法などによって得られる。
【0017】
<膜厚>
本発明のセルロース不織布の厚みは特に制限されるものではないが、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上で、1mm以下、さらに好ましくは500μm以下、特に好ましくは250μm以下である。セルロース不織布の厚みは、製造の安定性、強度の点から上記下限以上であることが好ましく、生産性、均一性、樹脂の含浸性の点から上記上限以下であることが好ましい。
【0018】
<繊維径>
本発明のセルロース不織布を構成するセルロース繊維の繊維径は細いことが好ましい。具体的には1500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、さらに好ましくは1000nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、特に好ましくは500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましい。1500nm以上の繊維径のものを含んでいない不織布は、樹脂と複合化した場合、透明性が高く、線膨張率が低いものが得られる点において好ましい。
なお、セルロース繊維の繊維径はSEM観察により確認することができる。
【0019】
SEMより観察される本発明のセルロース不織布中のセルロース繊維の繊維径は、平均で4〜400nmであることが好ましい。セルロース繊維の平均繊維径が400nmを超えると透明性が低下するので好ましくない。また、繊維径が4nm未満の繊維は実質的に製造できない。透明性の観点から、セルロース繊維の平均繊維径は好ましくは4〜200nmであり、より好ましくは4〜100nmである。
【0020】
<色目>
本発明のセルロース不織布の色目は、白いことが好ましい。本発明のセルロース不織布は、上述のように繊維径の細いセルロース繊維で構成されるが、空隙があるために、セルロース不織布自体は実質的には透明にならず、樹脂を含浸させて複合化した後に透明となる。その際、無色であることが好ましい。よって、不織布自体は白いことが好ましい。
【0021】
セルロースの性質から、不織布は青味、赤味がつくことはほとんどなく、原料由来で黄色味がつく場合や、後の化学修飾によって黄色味が着く場合がある。特に、木質由来の原料を用いる場合、精製度合いによって黄色味が着くことがある。不織布に黄色味が着くと、複合化した際、透明であっても黄色味を示し好ましくない。
【0022】
このような黄色味はイエローインデックス(以後YI)を測定することで評価できる。YI値が大きい程黄色味が強いことを示す。本発明におけるセルロース不織布のYI値は40以下であることが好ましく、35以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。YI値は例えば、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定することができる。
【0023】
<含水率>
セルロースは元来、親水性であるので材料として使っていく上で、含水率が問題になる場合がある。本発明のセルロース不織布の含水率が高いと、複合化する際に、重合を阻害したり樹脂の性能を下げたりする場合がある。また、複合材料の含水率が高いと、材料として用いた場合、腐食の原因になったり、誤動作の原因になったり、吸水により複合材料が伸び、反りの原因になったりして好ましくない。なお、含水率は、吸水によりセルロース不織布が保持し得る水量であり、吸水率と同義である。
【0024】
本発明では、セルロース繊維を化学修飾することによって、その含水率を低くすることができる。本発明のセルロース不織布の含水率は下記の測定方法において3%以下であることが好ましい。
【0025】
(セルロース不織布の含水率の測定方法)
セルロース不織布を温度23℃、湿度50%に48時間以上調湿し、これをTG−DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて、空気下、室温から600℃まで10℃/分で昇温していったときの200℃における重量減少率(%)を含水率とする。
【0026】
<原料>
セルロース不織布の原料としては、針葉樹や広葉樹等の木質、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、コットンリンターやコットンリント等のコットン、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率になり好ましい。バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましく、さらに原料が得やすい点で好ましい。さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
【0027】
<空隙率>
本発明のセルロース不織布は空隙率が35体積%以上であることを特徴とする。本発明のセルロース不織布の空隙率は、好ましくは35体積%以上、60体積%以下である。セルロース不織布の空隙率が小さいと、後に示す化学修飾が進行しにくかったり、樹脂が含浸しにくくなり好ましくない。また、空隙率が高いと複合材料としたとき、線膨張係数が大きくなるので、好ましくない。
【0028】
ここでいう空隙率とは、不織布中における空隙の体積率を示し、空隙率は、セルロース不織布の面積、厚み、重量から、下記式によって求めることができる。
空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cmと仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo(株)製 IP65)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
【0029】
複合材料中のセルロース不織布の空隙率を求める場合、セルロース不織布の断面のSEM観察を画像解析することにより空隙率を求めることができる。
【0030】
<化学修飾>
本発明のセルロース不織布は、化学修飾された不織布である。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
【0031】
(種類)
化学修飾によってセルロースに導入させる官能基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
【0032】
(修飾方法)
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
【0033】
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルよるなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0034】
酸としては、例えば酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸等が挙げられる。
【0035】
酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2-ブタン酸、無水ペンタン酸等が挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが挙げられる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン等が挙げられる。
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、エチルオキセタンが挙げられる。
【0036】
これらの中では特に無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0037】
(化学修飾率)
ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
【0038】
〈測定方法〉
セルロース不織布0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
【数1】

これを解いていくと、以下の通りである。
【数2】

【0039】
本発明のセルロース不織布の化学修飾率は、セルロースの全水酸基に対して、通常8mol%以上、好ましくは15mol%以上で、通常65mol%以下、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは35mol%以下である。
【0040】
セルロースを化学修飾することにより、セルロースの分解温度が上昇し、耐熱性が高くなる。
この化学修飾率が低すぎると、耐熱性の改善効果が不足し、複合化の後処理で加熱した際に、着色してしまうことがあり、化学修飾率が高すぎると、セルロース構造が破壊され結晶性が低下するため、得られる複合材料の線膨張係数が大きくなってしまうという問題点があり好ましくない。また、化学修飾率が低すぎると、不織布の親水性が高くなり、含水率が高くなり好ましくない。特に、セルロース原料として木質を用いる場合、化学修飾率が低いと複合化の後処理で加熱した際に、着色してしまったり、化学修飾率が高くても化学修飾反応後に不織布が着色してしまったりするので好ましくない。
【0041】
[セルロース不織布の製造方法]
本発明のセルロース不織布は、前述の化学修飾率と空隙率を満たすものであればその製造方法は特に限定されるものではない。化学修飾は、不織布に製膜する前のセルロースに行ってもよいし、セルロースを不織布とした後に行ってもよいが、セルロースを不織布に製膜するに際しては、セルロースを有機溶媒で洗浄した後に不織布とすることが好ましい。
【0042】
不織布の製造に当たっては、セルロース原料を必要に応じて、精製や微細化した後に、そのセルロース分散液(通常はセルロースの水分散液)を濾過又は塗布によって製膜、あるいはゲル状膜を製膜し、製膜後は乾燥して不織布とするが、この乾燥を行う前にアルコール等の有機溶媒で洗浄もしくは浸漬処理することが好ましい。
【0043】
化学修飾については、上述の如く、不織布に製膜してから行ってもよいし、不織布に製膜する前のセルロースに化学修飾を行ってもよい。製造の効率性の点では、不織布に製膜する前のセルロースに化学修飾した方が好ましい。また、高い化学修飾率と透明性を両立しやすい点では不織布に製膜してから化学修飾した方が好ましい。いずれの場合も、セルロースを製膜する際には、水をアルコール等の有機溶媒で置換する。不織布に製膜してから化学修飾する場合は、化学修飾が終了した後は水でよく洗浄した後、残留する水をアルコール等の有機溶媒で置換して乾燥することが好ましい。
【0044】
このような不織布の製造方法について更に詳しく説明する。
【0045】
<不織布の製造>
不織布の製造には微細化したセルロース繊維を用いる。
バクテリアセルロースをセルロース原料とする場合、セルロースを産生するバクテリアを培養することによりセルロース繊維を得ることができる。この産生物を培地から取り出し、それを水洗、又はアルカリ処理などしてバクテリアを除去することにより、バクテリアを含まない含水バクテリアセルロースを得ることができる。バクテリアは微細なセルロースを産生するので微細化処理を行うことなく、そのまま用いることができる。
針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットンは精製した後、微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。また、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等も微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。
【0046】
セルロースを微細化する分散機としてはブレンダータイプの高速回転分散機やグラインダーのような石臼式粉砕機や高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を用いることが好ましい。
ブレンダータイプの高速回転分散機を用いる際には、なるべく回転数は高い方が好ましく、例えば10,000rpm以上、好ましくは15,000rpm以上で、1分以上、好ましくは10分以上微細化処理することが好ましい。グラインダーのような石臼式分散機を用いる場合には、ギャップ間はある程度小さい方が好ましい。また、回転数はある程度高い方が好ましく例えば1000rpm以上で行う。石臼を通す回数は例えば1回以上、好ましくは2回以上である。
高圧ホモジナイザーを用いる場合、なるべく高圧で運転する方が好ましく、例えば15MPa以上が好ましい。また高圧部を通す回数は例えば1回以上、好ましくは2回以上である。
超高圧ホモジナイザーを用いる場合も、なるべく高圧で運転する方が好ましく、例えば100MPa以上、好ましくは150MPa以上が好ましい。また高圧部を通す回数は例えば1回以上、好ましくは2回以上である。
超音波ホモジナイザーを用いる場合、周波数は15kHz以上、実効出力密度は1W/cm以上であることが好ましい。また、処理時間は5分以上、好ましくは10分以上とすることが好ましい。また、超音波ホモジナイザーを用いた際は、好ましくはその後に遠心分離を行う。
特に、ブレンダータイプの分散機や高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーで微細化した後に超音波ホモジナイザーを用いた処理を行うことが、セルロースを均一に微細化するのに有効である。
【0047】
微細化を行う際のセルロース分散液のセルロース濃度は0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上であることが好ましい。セルロース濃度が低すぎると濾過や塗布するのに時間がかかりすぎる。また、セルロース濃度は10重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2.0重量%以下であることが好ましい。セルロース濃度が高すぎると粘度が高くなりすぎたり、均一な微細セルロースが得られなかったりするので好ましくない。
【0048】
濾過によって不織布を得る場合、セルロース分散液の濃度は、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であることが好ましい。濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかるため好ましくない。また、セルロース分散液の濃度は1.5重量%以下、好ましくは1.2重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下であることが好ましい。濃度が高すぎると均一な不織布が得られないため好ましくない。
【0049】
また、濾過時の濾布としては、微細化したセルロースは通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなる不織布、織物、多孔膜であることが好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。これらは単独であっても、混合物であっても構わない。
具体的には孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜5μm、例えば1μmの、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン又はナイロンの織物等が挙げられる。
【0050】
本発明のセルロース不織布はある範囲の空隙率を有することが好ましいが、このような空隙率の不織布を得る方法として、濾過による製膜工程において、セルロース中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する方法を挙げることができる。これは、濾過により水を除去し、セルロース含量が5〜99重量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加えるものである。又は、セルロース分散液を濾過装置に投入した後、アルコール等の有機溶媒を分散液の上部に静かに投入することによっても濾過の最後にアルコール等の有機溶媒と置換することができる。
【0051】
ここで用いるアルコール等の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素等の1種又は2種以上の有機溶媒が挙げられる。非水溶性有機溶媒を用いる場合は、水溶性有機溶媒との混合溶媒にするか水溶性有機溶媒で置換した後、非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
【0052】
<セルロースの化学修飾>
化学修飾については、前述の如く、不織布に製膜する前のセルロースに行ってもよいし、不織布に製膜してから化学修飾を行ってもよい。
【0053】
不織布に製膜する前のセルロースに化学修飾する場合、原料の粗セルロースを化学修飾してもよいし、精製後のセルロースに化学修飾してもよいし、その後微細化した後の微細セルロースに化学修飾してもよいが、化学修飾剤を効率的に反応できる点で、精製後のセルロースに化学修飾することが好ましい。
【0054】
この場合、化学修飾は通常の方法をとることができるが、通常、精製後のセルロースは含水状態であるので、この水を反応溶媒等と置換して、化学修飾剤と水との反応を極力抑制することが重要である。また、ここで水を除去するために乾燥すると、後の微細化が進行しにくくなるため乾燥工程を入れることは好ましくない。
【0055】
化学修飾は、通常の方法をとることができる。すなわち、常法に従って、セルロースと化学修飾剤とを反応させることによって化学修飾を行うことができる。この際、必要に応じて溶媒や触媒を用いたり、加熱、減圧等を行ってもよい。触媒としてはピリジンやトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
【0056】
温度条件としては、高すぎるとセルロースの黄変や重合度の低下等が懸念され、低すぎると反応速度が低下することから10〜130℃が好ましい。反応時間は化学修飾剤や化学修飾率にもよるが数分から数十時間である。
【0057】
このようにして化学修飾を行った後は、反応を終結させるために水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。
この後、化学修飾されたセルロースが、精製前の粗セルロースであれば、この化学修飾後に精製を行い、さらに微細化して製膜して不織布とする。精製後のセルロースに化学修飾を行った場合は、この化学修飾後に微細化して製膜して不織布とする。また、微細セルロースに化学修飾を行った場合は、化学修飾後に製膜して不織布とする。不織布とするとする際、例えば、微細セルロース分散液を濾過することにより不織布とする場合は、濾過による製膜工程において、セルロース中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する。
【0058】
セルロースの化学修飾を、セルロースを不織布に製膜した後に行う場合は、上述のように、不織布を製造後、アルコール等の有機溶媒で置換した後、更に不織布を乾燥した後に化学修飾を行っても、乾燥せずに化学修飾を行っても構わないが、乾燥した後に行った方が化学修飾の反応速度が速くなるため好ましい。乾燥する場合は送風乾燥、減圧乾燥してもよいし、加圧乾燥してもよい。また、加熱しても構わない。
不織布の化学修飾も、通常の方法をとることができ、具体的には、上述の不織布とする前のセルロースに化学修飾を行う場合と同様である。
【0059】
不織布に化学修飾を行った場合も、化学修飾後は、反応を終結させるために水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。また、水で十分に洗浄した後、さらに残留する水をアルコール等の有機溶媒で置換することが好ましい。この場合、不織布をアルコール等の有機溶媒に浸漬しておくことで容易に置換することができる。
【0060】
<乾燥>
不織布に製膜する前に化学修飾を行った場合も、不織布に製膜してから化学修飾を行った場合も、最後に不織布を乾燥するが、この乾燥には送風乾燥又は減圧乾燥してもよいし、加圧乾燥してもよい。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎると不織布が着色したり、分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性があり、圧力が高すぎるとセルロース不織布がつぶれたり分解する可能性がある。
【0061】
[複合材料]
本発明の複合材料は、上述の本発明のセルロース不織布と、セルロース以外の樹脂とを複合化してなるものである。
この場合のセルロース以外の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。この複合し得るセルロース以外の樹脂については後述する。
本発明のセルロース不織布を用いた複合材料中の不織布部分の空隙は、このような複合材料に用いた樹脂が充填されている。基本的には不織布を作成した際の空隙が保たれそこに樹脂が充填されている。
【0062】
<複合割合>
本発明の複合材料において、複合材料とセルロース以外の樹脂との含有割合には特に制限はなく、通常、セルロース不織布が1重量%以上99重量%以下であり、セルロース以外の樹脂が1重量%以上99重量%以下である。低線膨張化を発現するには、セルロース不織布が1重量%以上セルロース以外の樹脂が99重量%以下であることが必要であり、透明性を発現するにはセルロース不織布が99重量%以下、セルロース以外の樹脂が1重量%以上であることが必要である。好ましい範囲は、セルロース不織布が2重量%以上90重量%以下であり、セルロース以外の樹脂が10重量%以上98重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロース不織布が5重量%以上80重量%以下であり、セルロース以外の樹脂が20重量%以上95重量%以下である。
【0063】
複合材料の樹脂含量(又はセルロース含量)は、樹脂含浸前のセルロース不織布の重量と含浸後の複合材料の重量より求めることができる。また、複合材料を樹脂が可溶な溶媒に浸漬して樹脂のみを取り除き、残ったセルロース不織布の重量から求めることもできる。その他、樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂やセルロースの官能基を定量して求める方法がある。
【0064】
<厚み>
本発明において複合材料の厚みは、好ましくは20μm以上10mm以下である。このような厚みの複合材料にすることで強度を保つことができる。複合材料の厚みはより好ましくは25μm以上、特に好ましくは30μm以上で、好ましくは8mm以下、特に好ましくは5mm以下である。
なお、本発明の複合材料は、好ましくはこのような厚みの膜状(フィルム状)又は板状であるが、平膜又は平板に限らず、曲面を有する膜状又は板状とすることもできる。また、その他の異形形状であっても良い。また、厚みは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なってもよい。
【0065】
<積層体>
本発明では、複合材料を複数枚重ねて積層体を得ることができる。この積層体に加熱プレス処理を加えることで厚膜化することができる。
厚膜の複合材料は、グレージングや構造材料として用いることができる。
【0066】
<製造方法>
本発明の複合材料の製造方法としては、本発明のセルロース不織布に、セルロース以外の樹脂のモノマーを含浸させて重合させる方法、熱硬化性樹脂先駆体又は光硬化性樹脂先駆体を含浸させて硬化させる方法、セルロース樹脂以外の樹脂溶液を含浸させ乾燥後、加熱プレス等で密着させる方法、セルロース樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法等が挙げられる。
【0067】
セルロース不織布に、モノマーを含浸させて重合させる方法としては熱可塑性樹脂のモノマーと必要に応じて重合触媒や開始剤をセルロース不織布に含浸させ、加熱等で重合させて複合材料を得る方法が挙げられる。
【0068】
熱硬化性樹脂先駆体又は光硬化性樹脂先駆体を含浸させて硬化させる方法としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂先駆体又はアクリル樹脂等の光硬化性樹脂先駆体と硬化剤との混合物を、セルロース不織布に含浸させ、熱又は光等により上記熱硬化性樹脂先駆体又は光硬化性樹脂先駆体を硬化させることにより複合材料を得る方法が挙げられる。
【0069】
放射線により硬化させる際、照射する放射線の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマーの組成および光重合開始剤の種類、量に合わせて、300〜450nmの紫外線を好ましくは0.1〜200J/cmの範囲で照射する。更に好ましくは1〜20J/cmの範囲で照射する。放射線を複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物が得られる。使用するランプの具体例としては、無電極水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
【0070】
重合をすみやかに完了させる目的で、光重合と熱重合を同時に行ってもよい。この場合には、放射線照射と同時に硬化性組成物を30〜300℃の範囲で加熱して硬化を行う。この場合、硬化性組成物には、重合を完結するために熱重合開始剤を添加してもよいが、大量に添加すると硬化物の複屈折の増大と色相の悪化をもたらすので、熱重合開始剤は、モノマー量の合計に対して0.1〜2重量部、より好ましくは0.3〜1重量部となるように用いられる。
【0071】
セルロース不織布にセルロース樹脂以外の樹脂溶液を含浸させ乾燥後、加熱プレス等で密着させる方法としては、セルロース以外の樹脂をその樹脂が溶解する溶媒に溶解させその溶液をセルロース不織布に含浸させ、乾燥させることで複合材料を得る方法が挙げられる。この場合、乾燥後加熱プレス等で溶媒が乾燥した空隙を密着させることでより高性能な複合材料を得ることができる。
【0072】
セルロース樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法等としては、セルロース樹脂以外の熱可塑性樹脂を、そのガラス温度又は融点以上の温度で溶融させて、セルロース不織布に含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法を挙げることができる。
【0073】
<物性>
(透明性)
本発明のセルロース不織布を用いて透明樹脂と複合化した複合材料を得ることで、透明性の高い、すなわちヘーズの低い材料を得ることができる。このヘーズ値としては20以下であることが好ましく、10以下であることがさらに好ましく、5以下であることが透明材料としては特に好ましい。ヘーズの測定は例えばスガ試験機製ヘーズメータを用いて行い、C光の値を用いる。
【0074】
(線膨張係数)
本発明のセルロース不織布を用いて複合材料を得ることで、線膨張係数の低い材料を得ることができる。本発明の複合材料の線膨張係数は0.5〜50ppm/Kであることが好ましく、30ppm/K以下であることがさらに好ましく、25ppm/K以下であることが特に好ましい。複合材料の線膨張係数は後述の実施例の項に示す方法で測定される。
【0075】
(着色)
本発明のセルロース不織布を用いて複合材料を得ることで、着色の小さい複合材料を得ることができる。
セルロースを用いることで原料由来で黄色味がつく場合、後の化学修飾によって黄色味が着く場合がある。特に木質由来の原料を用いる場合、精製度合いによって黄色味が着くことがある。不織布に黄色味が着くと、複合化した際、透明であっても黄色味を示し好ましくない。また、複合する樹脂由来で黄色味が着く場合がある。
本発明の複合材料のYI値は20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。YI値は例えば、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定することができる。
【0076】
(曲げ強度)
本発明のセルロース不織布を用いた複合材料は、曲げ強度が、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。曲げ強度が40MPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
【0077】
(曲げ弾性率)
本発明のセルロース不織布を用いた複合材料は、曲げ弾性率が、好ましくは0.2〜100GPaであり、より好ましくは、1〜50GPaである。曲げ弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
【0078】
<用途>
本発明のセルロース不織布は、セルロースの伸びきり鎖結晶が故に低線膨張係数であり、高弾性、高強度を発現する。またセルロース繊維を微細化することで透明樹脂と複合化した際、透明性が高く、着色、ヘーズの小さい複合材料を得ることができる。このように光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。これらの用途においては、フレキシブルな材料としてガラス代替が可能であり、軽量化、柔軟性、成形性、意匠性等の効果が得られる。
また、低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造材料としても用いることができる。特に、グレージング、内装材、外板、バンパー等の自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いられる。
【0079】
[セルロース以外の樹脂]
以下に本発明の複合材料において、セルロース不織布と複合化されるセルロース以外の樹脂、即ち、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂について説明する。
【0080】
熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0081】
スチレン系樹脂としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等の重合体及び共重合体が挙げられる。
【0082】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等の重合体及び共重合体が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。(メタ)アクリル酸エステルとは(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキルエステル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0083】
芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有できる1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される共重合体であり、必要に応じて芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分としてテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(例えば芳香族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸塩化物)を使用してもよいものである。
【0084】
前記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ(略号はアルドリッチ社試薬カタログを参照)等が例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZ(中心炭素がシクロヘキサン環に参加しているもの)が好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。共重合可能な3価フェノール類としては、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンやフロログルシノールなどが例示できる。
【0085】
脂肪族ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ジオール成分及び/又は脂環式ジオール成分とビスアルキルカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される共重合体である。脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノールやイソソルバイト等が挙げられる。
【0086】
芳香族ポリエステル系樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類とテレフタル酸等の芳香族カルボン酸との共重合体が挙げられる。また、ポリアリレートのように、ビスフェノールA等のジオール類とテレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族カルボン酸との共重合体も挙げられる。
【0087】
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、上記ジオールとコハク酸、吉草酸等の脂肪族ジカルボン酸との共重合体やグリコール酸や乳酸等のヒドロキシジカルボン酸の共重合体等が挙げられる。
【0088】
脂肪族ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との二元或いは三元の共重合体等;具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂、及び4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体等の4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の樹脂、並びに、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体、更に、例えば1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の非共役ジエンとの二元或いは三元の共重合体等、具体的には、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のオレフィン系ゴム等が挙げられ、これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。
【0089】
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンやシクロヘキサジエン等、ポリマー鎖中に環状オレフィン骨格を含む重合体もしくはこれらを含む共重合体である。例えば、ノルボルネン骨格の繰り返し単位、又はノルボルネン骨格とメチレン骨格の共重合体よりなるノルボルネン系樹脂が挙げられ、市販品としては、JSR製の「アートン」、日本ゼオン製の「ゼネックス」および「ゼオノア」、三井化学製の「アペル」、チコナ製の「トーパス」等が挙げられる。
【0090】
ポリアミド系樹脂としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等の脂肪族アミド系樹脂や、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0091】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体も挙げられる。
【0092】
ポリイミド系樹脂としては、無水ポリメリット酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の共重合体であるピロメリット酸型イミド、無水塩化トリメリット酸やp−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンやジイソシアネート化合物からなる共重合体であるトリメリット酸型ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン等からなるビフェニル型ポリイミド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等からなるベンゾフェノン型ポリイミド、ビスマレイミドや4,4’−ジアミノジフェニルメタン等からなるビスマレイミド型ポリイミド等が挙げられる。
【0093】
ポリアセタール系樹脂としては、オキシメチレン構造を単位構造にもつホモポリマーと、オキシエチレン単位を含む共重合体が挙げられる。
【0094】
ポリスルホン系樹脂としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンやビスフェノールA等の共重合体が挙げられる。
【0095】
非晶性フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロアルキルビニルエーテル等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0096】
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0097】
熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂とは、常温では液状、半固体状又は固形状等であって常温下又は加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱又は光の作用によって硬化反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。ここで、樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が硬化してなる樹脂を意味する。
【0098】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
【0099】
上記エポキシ樹脂とは、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂中のエポキシ基の数としては、1分子あたり1個以上7個以下であることが好ましく、1分子あたり2個以上であることがより好ましい。ここで、1分子あたりのエポキシ基の数は、エポキシ樹脂中のエポキシ基の総数をエポキシ樹脂中の分子の総数で除算することにより求められる。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、以下に示したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独でも2種以上併用されてもよい。これらエポキシ樹脂は熱硬化性樹脂先駆体のエポキシ化合物であり、硬化剤を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化物である硬化エポキシ樹脂が得られる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂及びこれらの水添化物や臭素化物等が挙げられる。また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチルアジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等の脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。また、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。また、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。また、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体のグリシジルアミン型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。また、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また、エポキシ化SBS等のような、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添化物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体における共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。また1分子あたり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。また、上記エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。上記変成エポキシ樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、エポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂又はオリゴマーが添加されてもよい。また、フルオレン含有エポキシ樹脂、フルオレン基を含有する熱硬化性樹脂および組成物、又はその硬化物も挙げられる。これらフルオレン含有エポキシ樹脂は、フルオレン基を分子内に含有することにより、屈折率が高く、また、高耐熱性であるため好適に用いられる。上記エポキシ樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
オキセタン樹脂は、少なくとも1個のオキセタン環を有する化合物である。上記オキセタン樹脂モノマー中のオキセタン環の数は、1分子あたり1個以上、4個以下が好ましい。分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[3−(トリエトキシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。分子中に2個のオキセタン環を有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
上記オキセタン樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に光硬化はエネルギーの有効活用の面から好適に利用される。ここで光硬化とは活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0101】
フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類とホルムアルデヒド等を反応させてノボラック等を合成し、これをヘキサメチレンテトラミン等で硬化させたもの等が挙げられる。
【0102】
ユリア樹脂としては、尿素等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
【0103】
メラミン樹脂としては、メラミン等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和多塩基酸等と多価アルコール等より得られる不飽和ポリエステルを、これと重合する単量体に溶解し硬化した樹脂等が挙げられる。
【0104】
珪素樹脂としては、オルガノポリシロキサン類を主骨格とするものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、グリコール等のジオール類と、ジイソシアネートからなる重合反応物等が挙げられる。
【0105】
ジアリルフタレート樹脂としては、ジアリルフタレートモノマー類とジアリルフタレートプレポリマー類からなる反応物が挙げられる。
【0106】
これら熱硬化性樹脂の硬化剤、硬化触媒としては特に限定はないが、例えば、硬化剤としては多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられ、硬化触媒としてはイミダゾール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0107】
また、光硬化性樹脂としては、ラジカル重合可能な化合物を重合又は共重合してなる(メタ)アクリレート系の重合体又は共重合体が挙げられる。
【0108】
ラジカル重合可能な化合物としては、例えば、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート、含脂環骨格モノ(メタ)アクリレート、スチレン系化合物、エステル以外のアクリル酸誘導体などが挙げられる。
更に、光硬化性樹脂製造の際、必要に応じて連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤を添加することができる。
【0109】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
分子内に2〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリテールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリテールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0110】
これらの中でも、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレートなどのビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが好ましく用いられる。
【0111】
エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ基を有する化合物、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加型の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。具体的にはビスフェノールAジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテル=ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル=トリ(メタ)アクリレート、2−ヒドリキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0112】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2〜10個(好ましくは2〜5個)有するウレタンオリゴマー等が挙げられる。例えば、ジイソシアネート類及びジオール類を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて製造される(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマーがある。
【0113】
ここで用いるジオールのうち、ポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオール等が挙げられる。イオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン性重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテンオキシドとエチレンオキシド等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
【0114】
ここまでに述べたこれらのポリエーテルジオールは、例えばPTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学(株)製)、PPG1000、EXCENOL2020、1020(以上、旭オーリン(株)製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂(株)製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬(株)製)等の市販品としても入手することができる。
【0115】
ポリオール化合物としては、上記のポリエーテルジオールの他にポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられ、これらのジオールをポリエーテルジオールと併用して用いることもできる。これらの構造単位の重合様式は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。ここで用いるポリエステルジオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。これらの市販品としては、クラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、(株)クラレ製)等が入手できる。
【0116】
また、ポリカーボネートジオールとしては、例えば1,6−ヘキサンポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン(株)製)、PC−8000(米国PPG(株)製)等が挙げられる。
【0117】
さらにポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらのジオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル(株)製)等が市販品として入手することができる。
【0118】
上記以外のジオールも数多く使用することができる。このようなジオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
【0119】
また上記したようなジオールを併用する以外にも、ポリオキシアルキレン構造を有するジオールとともにジアミンを併用することも可能であり、このようなジアミンとしてはエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0120】
好ましいジオールとしては1,4−ブタンジオールの重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。このジオールの好ましい分子量は数平均分子量で通常50〜15,000であり、特に500〜3,000である。
【0121】
一方、ジイソシアネート類としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。中でもイソホロンジイソシアネートやノルボルナンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環骨格を有するジイソシアネートが好適に用いられる。
【0122】
また、反応に用いるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げることができる。これらのうち、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0123】
市販のウレタンオリゴマーとしては、EB2ECRYL220(ダイセル・サイテック)、アートレジンUN-3320HA(根上工業)、アートレジンUN-3320HB(根上工業)、アートレジンUN-3320HC(根上工業)、アートレジンUN-330(根上工業)及びアートレジンUN-901T(根上工業)、NK-オリゴU-4HA(新中村化学)、NK-オリゴU-6HA(新中村化学)、NK-オリゴU-324A(新中村化学)、NK-オリゴU-15HA(新中村化学)、NK-オリゴU-108A(新中村化学)、NK-オリゴU-200AX(新中村化学)、NK-オリゴU-122P(新中村化学)、NK-オリゴU-5201(新中村化学)、NK-オリゴU-340AX(新中村化学)、NK-オリゴU-511(新中村化学)、NK-オリゴU-512(新中村化学)、NK-オリゴU-311(新中村化学)、NK-オリゴUA-W1(新中村化学)、NK-オリゴUA-W2(新中村化学)、NK-オリゴUA-W3(新中村化学)、NK-オリゴUA-W4(新中村化学)、NK-オリゴUA-4000(新中村化学)、NK-オリゴUA-100(新中村化学)、紫光UV-1400B(日本合成化学工業)、紫光UV-1700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6300B(日本合成化学工業)、紫光UV-7550B(日本合成化学工業)、紫光UV-7600B(日本合成化学工業)、紫光UV-7605B(日本合成化学工業)、紫光UV-7610B(日本合成化学工業)、紫光UV-7620EA(日本合成化学工業)、紫光UV-7630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7640B(日本合成化学工業)、紫光UV-6630B(日本合成化学工業)、紫光UV-7000B(日本合成化学工業)、紫光UV-7510B(日本合成化学工業)、紫光UV-7461TE(日本合成化学工業)、紫光UV-3000B(日本合成化学工業)、紫光UV-3200B(日本合成化学工業)、紫光UV-3210EA(日本合成化学工業)、紫光UV-3310B(日本合成化学工業)、紫光UV-3500BA(日本合成化学工業)、紫光UV-3520TL(日本合成化学工業)、紫光UV-3700B(日本合成化学工業)、紫光UV-6100B(日本合成化学工業)、紫光UV-6640B(日本合成化学工業)等が使用できる。
【0124】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートの数平均分子量は1000〜100,000が好ましく、更に好ましくは2,000〜10,000である。中でもメチレンジシクロヘキシルジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールを有するウレタンアクリレートは透明性、低複屈折性、柔軟性等の点により優れており、好適に利用することができる。
【0125】
含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート化合物(以下、「ビス(メタ)アクリレート」と略すことがある)の具体例としては、例えばビス(アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等、及びこれらの混合物等を挙げることが出来る。
【0126】
これらのうち、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン及び(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンから選ばれるものが好ましい。
【0127】
これらのビス(メタ)アクリレートは、いくつか併用することもできる。
【0128】
含脂環骨格モノ(メタ)アクリレート化合物(以下、「モノ(メタ)アクリレート」と略すことがある)の具体例としては、例えば(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等が挙げられる。また、これらの混合物等を挙げることが出来る。
【0129】
これらのうち、ビス(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンから選ばれるものが好ましい。
【0130】
スチレン系化合物としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0131】
エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0132】
連鎖移動剤としてしては、例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事が出来る。メルカプタン化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオグリコレート)、ジエチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(β−チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(β−チオグリコレート)等の2〜6価のチオグリコール酸エステル又はチオプロピオン酸エステル;トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシ)プロピル]トリイソシアヌレート等のω−SH基含有トリイソシアヌレート;ベンゼンジメルカプタン、キシリレンジメルカプタン、4、4’−ジメルカプトジフェニルスルフィド等のα,ω−SH基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどの1種又は2種以上を用いるのが好ましい。メルカプタン化合物を入れる場合は、ラジカル重合可能な化合物の合計に対して、通常30重量%以下の割合で含有させる。
【0133】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものであり、その紫外線吸収剤は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4、4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリーブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、その他マロン酸エステル系のホスタビンPR−25(クラリアント社)、蓚酸アニリド系のサンデュボアVSU(クラリアント社)などの化合物である。紫外線吸収剤を入れる場合は、ラジカル重合可能な化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
【0134】
充填剤としては、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやPMMAなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。中でも、ナノサイズのシリカ粒子を用いると透明性を維持することができ好適である。また、紫外線硬化性モノマーと構造の似たポリマーを用いると高濃度までポリマーを溶解させることが可能であり、好適である。例えば日立化成社の紫外線硬化性モノマー(FA−513M)を重合させたポリマーは好適である。重合の方法はよく知られた熱重合が用いることができる。
【0135】
また、シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリル基を有しており、本発明に係る硬化性組成物中の他のモノマーと共重合することができるので好ましい。シランカップリング剤は、ラジカル重合可能な化合物の合計100重量部に対して通常0.1〜50重量部と、好ましくは1〜20重量部、特に好ましくは1〜20重量部となるように用いる。この割合が0.1重量部よりも少ない場合には、これを含有させる効果が十分に得られず、また50重量部よりも多い場合には、硬化体の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
【0136】
セルロース不織布に樹脂を複合化させるための硬化性組成物は、公知の方法で重合硬化させて、硬化体とすることができる。
例えば、熱硬化、又は放射線硬化等が挙げられる。好ましくは放射線硬化である。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等が挙げられるが、好ましくは光である。更に好ましくは波長が200nm〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が300〜400nmの紫外線である。
【0137】
具体的には、予め硬化性組成物に加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を添加しておき、加熱して重合させる方法(以下「熱重合」という場合がある)、予め硬化性組成物に紫外線等の放射線によりラジカルを発生する光重合開始剤を添加しておき、放射線を照射して重合させる方法(以下「光重合」という場合がある)等、および熱重合開始剤と光重合開始剤を併用して予め添加しておき、熱と光の組み合わせにより重合させる方法が挙げられ、本発明においては光重合がより好ましい。
【0138】
光重合開始剤としては、通常、光ラジカル発生剤が用いられる。光ラジカル発生剤としては、この用途に用い得ることが知られている公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0139】
光重合開始剤の使用量は、硬化性組成物中のラジカル重合可能な化合物の合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上である。その上限は、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、得られる硬化物の複屈折を大きくするだけでなく色相も悪化する。公知の技術として特開2004−352781号公報に記載されているように、開始剤の濃度を5重量部とした場合、開始剤の吸収により、紫外線の照射と反対側に光が到達できずに未硬化の部分が生ずる。また、黄色く着色し色相の劣化が著しい。一方、少なすぎると紫外線照射を行っても重合が十分に進行しないおそれがある。
【0140】
熱重合開始剤としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。具体的にはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。光照射時に熱重合が開始されると、重合を制御することが難しくなるので、これらの熱重合開始剤は好ましくは1分半減期温度が120℃以上であることがよい。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0141】
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0142】
尚、本発明のセルロース不織布の化学修飾率、空隙率及び含水率、セルロース不織布を用いた複合材料のセルロース含量、ヘーズ、YI及び線膨張係数の測定方法は以下の通りである。
【0143】
〔セルロース不織布の化学修飾率〕
セルロース不織布0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。これをフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
【数3】

これを解いていくと、以下の通りである。
【数4】

【0144】
〔セルロース不織布の空隙率〕
セルロース不織布の面積、厚み、重量から、下記式によって求めた。
空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cmと仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo(株)製 IP65)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用した。
【0145】
〔セルロース不織布の含水率〕
セルロース不織布を温度23℃、湿度50%に48時間以上調湿し、これをTG−DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて空気下、室温から600℃まで10℃/分で昇温していったときの200℃における重量減少率(%)を含水率とした。
【0146】
〔セルロース不織布の熱分解温度〕
セルロース不織布を温度23℃、湿度50%に48時間以上調湿し、これをTG−DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて窒素下、室温から600℃まで10℃/分で昇温していったときのTGから求めた接線の交点を分解温度とした。
【0147】
〔セルロース不織布を用いた複合材料のヘーズ〕
スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
【0148】
〔セルロース不織布を用いた複合材料のYI値〕
スガ試験機製カラーコンピュータを用いてYI値を測定した。
【0149】
〔セルロース不織布を用いた複合材料の線膨張係数〕
複合材料をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。
これをSII製TMA120を用いて引っ張りモードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温し、次いで180℃から25℃まで5℃/min.で降温し、更に25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
【0150】
<製造例1>
木粉((株)宮下木材、米松100)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。これを脱塩水で洗浄した後、亜塩素酸ナトリウムを用いて酢酸酸性下、80℃にて5.5時間脱リグニンした。脱塩水洗浄した後にさらに水酸化カリウム5重量%水溶液に16時間浸漬して脱ヘミセルロースした。脱塩水洗浄した後に、0.5重量%の水懸濁液とし、超高圧ホモジナイザー(スギノマシン製アルティマイザー))に245MPaで10回通した。
【0151】
<実施例1>
製造例1で得られたセルロース分散液を0.13重量%濃度に水で希釈し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に150g投入し、固形分が約5重量%になったところで2−プロパノール30mlを投入して置換した。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して白色のセルロース不織布を得た。
このセルロース不織布を100mlの無水酢酸に含浸して90℃にて7時間加熱した。その後、蒸留水でよく洗浄し、最後に2−プロパノールに10分浸した後、120℃、0.14MPaにて5分間プレス乾燥して厚さ45μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は16mol%であった。また空隙率は36体積%であった。また、このセルロース不織布の含水率を測定したところ1.8%であった。また、熱分解温度は表1に示す通りであった。
このセルロース不織布のSEM観察より500nm以上の繊維径の繊維は含まれていないことを確認した。また、任意に抽出した20箇所の平均繊維径は14nmであった。この不織布のYI値は11.4であった。
【0152】
この不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、ベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に含浸させ、減圧下一晩おいた。これを2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度400mW/cmの下を、ライン速度7m/minで照射した。このときの放射照射量は0.12J/cmであった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は25℃であった。
次いで、放射照度1900mW/cmの下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cmであった。この操作をガラス面を反転して8回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は44℃であった。放射照射量は21.8J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、190℃の真空オーブン中で4時間加熱して複合材料を得た。なお、紫外線の放射照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
この複合材料の物性を表1に示す。
【0153】
なお、この複合材料をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。これをSII社製DMS6100を用いて引っ張りモードでDMA(動的粘弾性)測定を行い、チャック間10mm、周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率E’(単位:GPa)を測定したところ、8.1GPaであった。
【0154】
<実施例2>
セルロース不織布を化学修飾する際の反応温度を100℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、厚さ57μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は32mol%であった。また空隙率は38体積%であった。
この不織布を実施例1と同様にして複合化し、複合材料を得た。この不織布と複合材料の物性を表1に示す。
【0155】
<実施例3>
セルロース不織布を化学修飾をする際の反応温度を60℃とし、反応時間を3.5時間に変えた以外は実施例1と同様にして、厚さ51μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は8.3mol%であった。また空隙率は44体積%であった。
この不織布を実施例1と同様にして複合化し、複合材料を得た。この不織布と複合材料の物性を表1に示す。
【0156】
<実施例4>
製造例1において、脱ヘミセルロースして、脱塩水洗浄したセルロースを濾過により脱水した。これを酢酸中に分散して濾過する工程を3回行うことにより、水を酢酸に置換した。セルロース1gに対して、トルエン50ml、酢酸40ml、60重量%過塩素酸水溶液0.2mlとなるように、これらを混合しておき、そこに酢酸置換したセルロースを添加した後、セルロース1gに対して無水酢酸1mlを添加し、攪拌しながら1時間反応させた。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄し、これを0.5重量%の水懸濁液とした。
【0157】
増幸産業株式会社の石臼式摩砕機スーパーマスコロイダーMKCA6−2を用い、GC6−80の石臼を用いて、上下の石臼が接する位置より80μm締めた位置において回転数1500rpmにて、上記の水懸濁液を原料投入口から投入して石臼に通す操作を2回繰り返して行った。さらに、超高圧ホモジナイザー(スギノマシン製アルティマイザー)に150MPaで2回、245MPaで10回通した。このようにして微細化したセルロース分散液を水で希釈して0.13重量%濃度に調整し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に150g投入し、固形分が約5重量%になったところで2−プロパノールを30ml投入して置換した。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して白色のアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の厚さは48μm、化学修飾率は8.3mol%であった。また空隙率は45体積%であった。
この不織布を実施例1と同様にして複合化し、複合材料を得た。この不織布と複合材料の物性を表1に示す。
【0158】
<実施例5>
セルロース1gに対する無水酢酸の添加量を1.5mlに変えた以外は実施例4と同様にして、厚さ50μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は18.7mol%であった。また空隙率は47体積%であった。
この不織布を実施例1と同様にして複合化し、複合材料を得た。この不織布と複合材料の物性を表1に示す。
【0159】
<実施例6>
実施例4において、超高圧ホモジナイザーを245MPaで10回通した後のセルロース分散液を水で0.25重量%に希釈した後、SMT社製超音波ホモジナイザーUH−600S(周波数20kHz、出力224W)を用いて以上の条件で超音波処理を行った。
36mmφのストレート型チップ(チタン合金製)を用い、アウトプットボリウム8でチューニングを行い、最適なチューニング位置で60分間、50%の間欠運転にて超音波処理を行った。50%の間欠運転とは0.5秒間超音波を発振した後0.5秒間休止を行う運転をさす。セルロース分散液は処理容器の外側から5℃の冷水で冷却し、分散液温度を15℃±5℃に保つと共に、マグネティックスターラーにて撹拌しながら処理を行った。
【0160】
この超音波処理後のセルロース分散液をさらに水で0.13重量%に希釈した後、遠心分離を行った。遠心分離機として日立工機株式会社製のhimacCR22Gを用い、アングルローターとしてR20A2を用いた。50ml遠沈管8本を、回転軸から34度の角度で設置した。1本の遠沈管に入れるセルロース分散液の量は30mlとした。18000rpmにて30分間遠心分離作業を行い、その上澄み液を採取した。
この上澄み液を実施例4と同様に濾過して、白色のアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の厚さは44μm、化学修飾率は9.0mol%であった。また空隙率は46体積%であった。
この不織布を実施例1と同様にして複合化し、複合材料を得た。この不織布と複合材料の物性を表1に示す。
【0161】
<比較例1(特開2007−51266 実施例6の追試)>
製造例1のセルロース分散液を0.2重量%濃度に水で希釈し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に100g投入して濾過し、55℃の送風乾燥機で乾燥した。このセルロース不織布を100mlの無水酢酸に含浸して120℃で14時間加熱した。その後、メタノール、流水、蒸留水にて洗浄後、60℃で1時間減圧乾燥して、厚さ38μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は4.3mol%であった。また空隙率は31体積%であった。
この不織布を実施例1と同様にして複合化し、複合材料を得た。この不織布と複合材料の物性を表1に示す。
【0162】
<比較例2>
製造例1で得られたセルロース分散液を0.2重量%濃度に水で希釈し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に100g投入して濾過し、120℃、2MPaで5分間プレス乾燥してセルロース不織布を得た。
このセルロース不織布を100mlの無水酢酸に含浸して120℃にて14時間加熱した。その後、蒸留水でよく洗浄し、最後に2−プロパノールに10分浸した後、120℃、2MPaにて5分間プレス乾燥して、厚さ39μmのアセチル化セルロース不織布を得た。この不織布の化学修飾率は13mol%であった。また空隙率は25体積%であった。
この不織布を実施例1と同様にして複合化し、複合材料を得た。この不織布と複合材料の物性を表1に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
比較例1,2の結果からわかるように、セルロース不織布の空隙率が低いと、樹脂が含浸し難いため、ヘーズが高くなり透明性が悪くなった。また、比較例1に示すようにセルロース不織布の化学修飾率が低いと、複合材料のYI値が高くなった。これに対して、実施例1〜6に示すように、セルロース不織布の化学修飾率と空隙率を制御することで、ヘーズが低く、すなわち透明性が高く、YI値も低く、線膨張係数も低い複合材料を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学修飾されたセルロース不織布であって、化学修飾率がセルロースの全水酸基に対して8〜65mol%で、空隙率が35体積%以上であるセルロース不織布。
【請求項2】
化学修飾率が8〜50mol%である請求項1に記載のセルロース不織布。
【請求項3】
空隙率が60体積%以下である請求項1又は2に記載のセルロース不織布。
【請求項4】
セルロースを不織布とした後に、化学修飾することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセルロース不織布の製造方法。
【請求項5】
セルロースを化学修飾した後に、不織布とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセルロース不織布の製造方法。
【請求項6】
セルロースを有機溶媒で洗浄した後に不織布とすることを特徴とする請求項4又は5に記載のセルロース不織布の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセルロース不織布とセルロース以外の樹脂とを含む複合材料。

【公開番号】特開2009−161896(P2009−161896A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304525(P2008−304525)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】