説明

セレクチンの阻害のための方法および組成物

本教示は、式I


の化合物に関する。式中の構成成分の変化因子は、本明細書中に記載されている。本教示の化合物は、セレクチンとして知られている哺乳類の接着タンパク質の拮抗体として作用し得る。セレクチンによって媒介される障害を治療するための方法が提供される。この方法は治療として有効な量のこれらの化合物を投与することを含む。本教示は、式Iの化合物および薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物およびエステルを作る方法および使用する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、セレクチンとして知られている哺乳類の接着タンパク質の拮抗薬として作用する新規な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管炎症の初期段階において、血流中の白血球および血小板が血管内皮に付着することによって、および揺れ(rolling)挙動を示すことによって、速度を低下させる。この分子固定化は、セレクチンとして知られているカルシウム依存性または「C−型」レクチンの種族の、白血球の表面上のリガンドへの特異的な結合によって媒介される。自己免疫疾患、血栓疾患、寄生虫疾患および腫瘍細胞の転移拡散など、セレクチンによって媒介される細胞接着の有害なきっかけとなり得るいくつかの疾病状態もある。
【0003】
セレクチンタンパク質の細胞外ドメインは、N−末端レクチン様ドメイン、上皮成長因子様ドメインおよびさまざまな数の短鎖共通反復体を特徴とする。P−セレクチン(以前はPADGEMまたはGMP−140として知られていた)、E−セレクチン(以前はELAM−1として知られていた)およびL−セレクチン(以前はLAM−1として知られていた)を含む3つのヒトセレクチンタンパク質が特定されている。内皮細胞上のE−セレクチン発現は、炎症誘発性サイトカインによって、その転写活性化を介して誘導される。L−セレクチンは、白血球上に構成的に発現され、リンパ球ホーミングにおいて重要な役割を演じているようである。P−セレクチンは、血小板のアルファ顆粒および内皮細胞のWeibel−Palade体の中に貯えられ、従って、炎症誘発性刺激に応答してこれらの細胞型の表面上に容易に発現され得る。セレクチンは、白血球の表面上のリガンド分子との特異的な相互作用によって接着を媒介する。一般的に、セレクチンのリガンドは、少なくとも部分的に炭水化物部分で構成されている。例えば、E−セレクチンは、下式
【0004】
【化1】

の末端構造を有する炭水化物に結合し、下式
【0005】
【化2】

の末端構造を有する炭水化物にも結合する。式中、Rは、炭水化物鎖の残りの部分である。これらの炭水化物は、既知の血液型抗原であり、普通はシアリルLewis xおよびシアリルLewis aとそれぞれ呼ばれている。内皮細胞の表面上のシアリルLewis x抗原単独の存在がE−セレクチンを発現する細胞への結合を促進するのに十分なことがある。E−セレクチンは、下式
【0006】
【化3】

の末端構造を有する炭水化物にも結合する。
【0007】
E−セレクチンについてと同様、各セレクチンは、ある範囲の炭水化物とさまざまな親和力で結合するようである。セレクチンによって媒介される接着の強さ(結合親和力)は、細胞表面上のセレクチンの密度および状況にも依存することがある。
【0008】
GlyCAM−1、CD34、ESL−1およびPSGL−1を含む構造的に多様な糖タンパク質リガンドが見かけ上の高い親和力でセレクチンに結合することができる。PSGL−1は、事実上白血球のすべてのサブセットによって発現されるムチン様ホモ二量体糖タンパク質であり、3つのセレクチンのそれぞれによって認識される。しかし、PSGL−1は、白血球上の優勢な高い親和力のP−セレクチンリガンドであるという点で独自のようである。PSGL−1への高い親和力のP−セレクチンの結合には、sLex含有O−グリカンとPSGL−1ポリペチドの陰イオンN−末端内の1つ以上のチロシン硫酸残基との両方が必要である(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4参照)。L−セレクチンもPSGL−1のN末端領域も認識し、P−セレクチンの場合と同様な硫酸化依存性結合要件を有する。E−セレクチンは、PSGL−1およびその他の糖タンパク質のsLex含有グリカンに結合することができるので、リガンド要件は厳密性が低いようである。P−セレクチンノックアウトおよびP/Eセレクチン二重ノックアウトマウスが血液中の好中球の高くなったレベルを示すという事実にもかかわらず、これらのマウスは、低下したDTH応答、および遅れたチオグリコール酸誘導腹膜炎(TIP)応答を示す(非特許文献5参照)。rPSGL−Igなどの可溶性の形のPSGL−1は、多数の動物モデルにおいて効力を示した(非特許文献6、非特許文献7および非特許文献8参照)。
【0009】
さらに、P−セレクチンリガンドタンパク質と、同タンパク質をコード化する遺伝子とが特定されている。特許文献1参照。P−セレクチン/LDLR欠損マウスによって示されるように、P−セレクチンの阻害は、アテローム性動脈硬化症の治療のための有用な標的を表す(非特許文献9参照)。アテローム性動脈硬化損傷部位におけるP−セレクチン発現の増加が報告され、P−セレクチン発現の大きさは損傷サイズと相関しているようである。P−セレクチンによって媒介される単核細胞の接着がアテローム性動脈硬化性のプラークの成長に寄与している可能性が高い(非特許文献10参照)。
【0010】
P−セレクチンの阻害は、例えば血栓症(Wakefield et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol 28(2008)387〜391、Myers et al.,Thromb Haemost 97(2007)400〜407)、アテローム性血栓症(Fuster et al.,Journal of the American College of Cardiology 46(2005)1209〜1218)、再狭窄(Bienvenu et al.,Circulation 103(2001)1128〜1134)、心筋梗塞(Furman et al.,Journal of the American College of Cardiology 38(2001)1002〜1006)、虚血再潅流、Reynauld症候群、炎症性腸疾患、骨関節炎、急性呼吸不全症候群、喘息(Romano,Treat Respir Med 4(2005)85〜94)、慢性閉塞性肺疾患(Romano,Treat Respir Med 4(2005)85〜94)、肺気腫、肺炎症、遅延型過敏反応(Staite et al.,Blood 88(1996)2973〜2979)、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、熱損傷、脳卒中、実験的アレルギー性脳脊髄炎、障害二次性多器官傷害症候群、好中球性皮膚病(Sweet病)、糸球体腎炎(Tianfu Wu,Arthritis & Rheumatism 56(2007)949〜959)、潰瘍性大腸炎(Irving et al.,European Journal of Gastroenterology & Hepatology 20(2008)283〜289)、Crohn病、壊死性全腸炎、サイトカイン誘発毒性、歯肉炎(Krugluger et al.,J Periodontal Res 28:145〜151)、歯周炎(Krugluger et al.,J Periodontal Res 28:145〜151)、溶血性尿毒症候群、乾せん症(Friedrich et al.,Archives of Dermatological Research 297(2006)345〜351)、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症、リウマチ性関節炎(Grober et al.,J.Clin.Invest.91(1993)2609〜2619)、Grave病(Hara et al.,Endocr J.43(1996)709〜713)、血液透析または白血球分離を伴う治療の免疫媒介副作用、顆粒球輸血関連症候群、深部静脈血栓症(Myers et al.,Thromb Haemost 97(2007)400〜407)、血栓症後症候群、不安定狭心症、一過性脳虚血発作、末梢血管疾患(例えば末梢動脈疾患)(van der Zee et al.,Clin Chem 52(2006)657〜664)、癌関連転移(McEver,Glycoconjugate Journal 14(1997)585〜591)、鎌症候群(鎌状赤血球貧血を含むがそれに限定されない)(Blann et al.,Journal of Thrombosis and Thrombolysis,10.1007/s11239−007−0177−7(2007年12月14日))、臓器拒絶(移植片対宿主)またはうっ血性心不全を含む他の疾患または状態のための有用な標的も表すことがある。炎症および接着過程を含む多数の重要な生物過程におけるセレクチンの役割を考えると、新しいセレクチン阻害剤への絶えることのない求めがあることが分る。
【0011】
炎症および接着過程を含む多数の重要な生物過程におけるセレクチンの役割を考えると、新しいセレクチン阻害剤への絶えることのない求めがあることが分る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,840,679号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Somers,W.S.et al.,Cell,2000,103:467〜479
【非特許文献2】Sako,D.et al.,Cell,1995,82(2):323〜331
【非特許文献3】Pouyani,N.et al.,Cell,1995,82(2):333〜343
【非特許文献4】Wilkins,P.P.et al.,J.Biol.Chem.,1995,270(39):22677〜22680
【非特許文献5】Frenette,P.S.et al.,Thromb Haemost,1997,78(1):60〜64
【非特許文献6】Kumar,A.et. al.,Circulation,1999,99(10):1363〜1369
【非特許文献7】Takada,M.et.al.,J.Clin.Invest.,1997,99(11):2682〜2690
【非特許文献8】Scalia,R.et al.,Circ Res.,1999,84(1):93〜102
【非特許文献9】Johnson,R.C.et al.,J.Clin.Invest.,1997,99:1037〜1043
【非特許文献10】Molenaar,T.J.M.et al.,Biochem.Pharmacol.,2003,(66):859〜866
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本教示は、式I
【0015】
【化4】

の化合物および薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物およびエステルを提供する。式中、R、R、R、R3′、R、Rおよびnは、本明細書に定義されるとおりである。
【0016】
本教示は、薬学的に有効な量の1つ以上の式Iの化合物(または薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物およびエステル)と、薬学的に許容されるキャリアおよび添加剤とを含む医薬品組成物にも関する。本教示は、式Iの化合物および薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物およびエステルを作る方法および使用する方法も提供する。実施態様によっては、本教示は、セレクチンによって媒介される細胞間接着過程を特徴とする状態を有する哺乳類を、例えば、哺乳類におけるセレクチンによって媒介される細胞内接着を少なくとも部分的に変化させるのに有効な量の1つ以上の式Iの化合物または薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物およびエステルを哺乳類に投与することによって、治療する方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本教示は、式I
【0018】
【化5】

の化合物および薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物およびエステルを提供する。
【0019】
は、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)OR、−C(S)NR、−C(NR)R、−C(NR)NR、−NR、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(NR)NR、−NRS(O)または−NRS(O)NRである。
【0020】
は、−C(O)OR、−C(O)NRまたはカルボン酸バイオイソスター(生物学的等価体)である。
【0021】
およびR3′は、独立に、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OR、−NR、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)OR、−C(S)NR、−C(NR)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されている。
【0022】
あるいは、RおよびR3′は、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、C4〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、4〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基を形成する。C4〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、4〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されている。
【0023】
およびRは、独立に、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OR、−NR、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)OR、−C(S)NR、−C(NR)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。−C(NR)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されている。
【0024】
は、それぞれの位置において独立に、H、−C(O)R、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)NR、−C(NR)R、−C(NR)NR、−S(O)、−S(O)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されている。
【0025】
およびRは、それぞれの位置において独立に、H、−OH、−SH、−S(O)OH、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(S)NH、−OC1〜10アルキル、−C(O)−C1〜10アルキル、−C(O)−OC1〜10アルキル、−OC6〜14アリール、−C(O)−C6〜14アリール、−C(O)−OC6〜14アリール、−C(S)N(C1〜10アルキル)、−C(S)NH−C1〜10アルキル、−C(O)NH−C1〜10アルキル、−C(O)N(C1〜10アルキル)、−C(O)NH−C6〜14アリール、−S(O)−C1〜10アルキル、−S(O)−OC1〜10アルキル、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロヘテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロヘテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されている。
【0026】
は、それぞれの位置において独立に、ハロゲン、−CN、−NO、オキソ、−O−Z−R10、−NR10−Z−R11、−N(O)R10−Z−R11、−S(O)10、−S(O)O−Z−R10、−S(O)NR10−Z−R11、−C(O)R10、−C(O)O−Z−R10、−C(O)NR10−Z−R11、−C(S)NR10−Z−R11、−Si(C1〜10アルキル)、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R12基によって置換されている。
【0027】
10およびR11は、それぞれの位置において独立に、H、−OH、−SH、−S(O)OH、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(S)NH、−OC1〜10アルキル、−C(O)−C1〜10アルキル、−C(O)−OC1〜10アルキル、−C(S)N(C1〜10アルキル)、−C(S)NH−C1〜10アルキル、−C(O)NH−C1〜10アルキル、−C(O)N(C1〜10アルキル)、−S(O)−C1〜10アルキル、−S(O)−OC1〜10アルキル、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロヘテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロヘテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R12基によって置換されている。
【0028】
12は、それぞれの位置において独立に、ハロゲン、−CN、−NO、オキソ、−OH、−NH、−NH(C1〜10アルキル)、−N(C1〜10アルキル)、−S(O)H、−S(O)−C1〜10アルキル、−S(O)OH、−S(O)−OC1〜10アルキル、−CHO、−C(O)−C1〜10アルキル、−C(O)OH、−C(O)−OC1〜10アルキル、−C(O)NH、−C(O)NH−C1〜10アルキル、−C(O)N(C1〜10アルキル)、−C(S)NH、−C(S)NH−C1〜10アルキル、−C(S)N(C1〜10アルキル)、−S(O)NH、−S(O)NH(C1〜10アルキル)、−S(O)N(C1〜10アルキル)、−Si(C1〜10アルキル)、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C1〜10アルコキシ基、C1〜10アルキルチオ基、C1〜10ハロアルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。
【0029】
Zは、それぞれの位置において独立に、2価C1〜10アルキル基、2価C2〜10アルケニル基、2価C2〜10アルキニル基、2価C1〜10ハロアルキル基または共有結合である。
【0030】
mは、それぞれの位置において独立に、0、1または2である。
【0031】
nは、0、1または2である。
【0032】
実施態様によっては、Rは、−ORまたは−NRであってよい。Rは、H、−C(O)R、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)NR、−S(O)、−S(O)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であってよい。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されていてよく、R、R、R、Zおよびmは、本明細書に定義されているとおりである。例えば、Rは、−OH,−OC(O)R、−OC(O)NR、−OS(O)、−OS(O)NRまたは−NRであってよい。特定の実施態様では、Rは、−OH、−OC(O)Rまたは−NRであってよい。特定の実施態様では、Rは、−OHであってよい。
【0033】
実施態様によっては、Rは、−C(O)ORであってよい。Rは、本明細書に定義されているとおりである。特定の実施態様では、Rは、H、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、独立に、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されてよく、ZおよびRは、本明細書中に定義されているとおりである。例えば、Rは、−C(O)OHであってよい。
【0034】
他の実施態様では、Rは、−C(O)NR1011であってよい。R10およびR11は、本明細書に定義されているとおりである。例えば、R10およびR11は、独立に、H、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であってよい。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されている。特定の実施態様では、Rは、−C(O)NHまたは−C(O)NHR10であってよい。R10は、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基である。C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されている。
【0035】
他の実施態様では、Rは、アミド、スルホンアミド、スルホン酸、3−ヒドロキシ−4H−ピラン−4−オン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、テトラゾールなどであるがそれらに限定されないカルボン酸バイオイソスターであってよい。これらのそれぞれは、任意に置換されて(例えばC1〜10アルキル基、OH等によって)いてよい。
【0036】
実施態様によっては、本教示の化合物は、式Ia、式Ib、式Ic、式Id、式Ieまたは式If
【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

によって表されてよい。式中、R、R、R、R3′、R、Rおよびnは、本明細書に定義されているとおりである。
【0039】
実施態様によっては、式I、式Ia、式Ib、式Ic、式Id、式Ieまたは式Ifの化合物について、RおよびR3′は、独立に、H、ハロゲン、−OR、−C(O)OR、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基または5〜14員ヘテロアリール基であってよい。C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基および5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されていてよく、ZおよびRは、本明細書に定義されているとおりである。特定の実施態様では、RおよびR3′は、独立に、H、F、Cl、Br、−OH、−O(C1〜6アルキル)、−COOH、C1〜6アルキル基、C3〜10シクロアルキル、フェニル基または5〜10員ヘテロアリール基であってよい。C1〜6アルキル基、C3〜10シクロアルキル基、フェニル基および5〜10員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されていてよく、ZおよびRは、本明細書に定義されているとおりである。例えば、RおよびR3′は、独立に、−O−(C1〜6アルキル)(式中、C1〜6アルキル基は、任意に置換されて(例えば−OCH、−OCHCH,−OCH(CH、−OCHCHCH,−OC(CHおよび−OCF)いてよい)、任意に置換されている直鎖または分岐のC1〜6アルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、−CF、−C(CHOH、−C(CF)(CH)OHおよび−C(CFOH)、または任意に置換されているC3〜14シクロアルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基)であってよい。実施態様によっては、RおよびR3′は、独立に、H、−C(CHOH、−C(CF)(CH)OHまたは−C(CFOHであってよい。実施態様によっては、RはHであってよく、R3′は−C(CFOHであってよい。他の実施態様では、Rは−C(CFOHであってよく、R3′はHであってよい。他の実施態様では、RおよびR3′はともにHであってよい。特定の実施態様では、RまたはR3′は、フェニル基またはチエニル基であってよく、それぞれが任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されていてよく、ZおよびRは、本明細書に定義されているとおりである。
【0040】
他の実施態様では、RおよびR3′は、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、C4〜14シクロアルキル基または4〜14員シクロへテロアルキル基を形成してよい。C4〜14シクロアルキル基および4〜14員シクロへテロアルキル基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されていてよく、ZおよびRは、本明細書に定義されているとおりである。シクロアルキル基およびシクロへテロアルキル基の例は、シクロヘキシル基およびピペリジル基を含むがそれらに限定されない。シクロヘキシル基およびピペリジル基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されていてよく、ZおよびRは本明細書に定義されているとおりである。例えば、RおよびR3′は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロヘキシル基を形成してよい。。実施態様によっては、本教示の化合物は、式Ig
【0041】
【化8】

を有する。R、R、R、Rおよびnは、本明細書に定義されているとおりである。
【0042】
本教示の化合物のいくつかの実施態様では、nは0であってよい。他の実施態様では、nは1であってよい。
【0043】
実施態様によっては、Rは、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OR、−NR、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、または任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されているC1〜10アルキル基であってよい。R、R、R、RおよびZは、本明細書に定義されているとおりである。実施態様によっては、Rは、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OH、NH、−C(O)OH、−C(O)NH、−O(C1〜10アルキル)、−NH(C1〜10アルキル)、−N(C1〜10アルキル)、−C(O)O(C1〜10アルキル)、−C(O)NH(C1〜10アルキル)、−C(O)N(C1〜10アルキル)、または任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されているC1〜10アルキル基であってよい。RおよびZは、本明細書に定義されているとおりである。特定の実施態様では、Rは、Hであってよい。
【0044】
実施態様によっては、Rは、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OR、−NR、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、または任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されているC1〜10アルキル基であってよい。R、R、R、RおよびZは、本明細書に定義されているとおりである。実施態様によっては、Rは、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OH、NH、−C(O)OH、−C(O)NH、−O(C1〜10アルキル)、−NH(C1〜10アルキル)、−N(C1〜10アルキル)、−C(O)O(C1〜10アルキル)、−C(O)NH(C1〜10アルキル)、−C(O)N(C1〜10アルキル)、または任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されているC1〜10アルキル基であってよい。RおよびZは、本明細書に定義されているとおりである。特定の実施態様では、Rは、Hであってよい。
【0045】
実施態様によっては、本教示の化合物は、式IIaまたはIIb
【0046】
【化9】

によって表されてよい。R、R、R3′、R、Rおよびnは、本明細書に定義されているとおりである。
【0047】
本記載全体にわたって、組成物が特定の成分を有し、備え、または含むとして記載される場合、あるいはプロセスが特定のプロセス工程を有し、備え、または含むとして記載される場合、本教示の組成物は、同じく挙げられた成分から基本的になり、またはからなり、本教示のプロセスは、同じく挙げられたプロセス工程から基本的になり、またはからなるものとされる。
【0048】
本出願においては、要素または成分が挙げられた要素または成分の一覧に含まれ、および/またはから選ばれるといわれる場合、要素または成分は、挙げられた要素および成分のいずれであってもよく、挙げられた要素または成分の2つ以上からなる群から選ばれてよいと理解すべきである。
【0049】
本明細書における単数形の使用は、特に断らない限り複数形を含む(逆もまた同じ)。さらに、用語「約」の使用が量を表す値の前である場合、本教示は、特に断らない限り、その特定の量を表す値そのものも含む。
【0050】
工程の順序または特定の動作を実行するための順序は、本教示が操作可能である限り、取るに足りないと理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または動作が同時に実行されてよい。
【0051】
本明細書において用いられる「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
【0052】
本明細書において用いられる「オキソ」は、二重結合の酸素(すなわち=O)を指す。
【0053】
本明細書において用いられる「アルキル」は、直鎖または分岐の飽和炭化水素基を指す。アルキル基の例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えばn−プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えばn−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル)、ペンチル(例えばn−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)基および類似基を含む。実施態様によっては、アルキル基は、−Z−Rおよび−Z−R12基から独立に選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に定義されているとおりである。通常、低級アルキル基は、最大6個の炭素原子を有する。低級アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル(例えばn−プロピルおよびイソプロピル)、およびブチル基(例えばn−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル)を含む。
【0054】
本明細書において用いられる「アルケニル」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐のアルキル基を指す。アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル基および類似基を含むがそれらに限定されない。1つ以上の炭素−炭素二重結合は、内部(2−ブテンにおけるように)であっても末端(1−ブテンにおけるように)であってもよい。実施態様によっては、アルケニル基は、−Z−Rおよび−Z−R12基から独立に選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に記載されているとおりである。
【0055】
本明細書において用いられる「アルキニル」は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐のアルキル基を指す。アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよび類似基を含むがそれらに限定されない。1つ以上の炭素−炭素三重結合は、内部(2−ブチンにおけるように)であっても末端(1−ブチンにおけるように)であってもよい。実施態様によっては、アルキニル基は、−Z−Rおよび−Z−R12基から独立に選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に記載されているとおりである。
【0056】
本明細書において用いられる「アルコキシ」は、−O−アルキル基を指す。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えばn−プロポキシおよびイソプロポキシ)、t−ブトキシ基および類似基を含むがそれらに限定されない。実施態様によっては、−O−アルキル基のアルキル基は、−Z−Rおよび−Z−R12基から独立に選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に記載されているとおりである。
【0057】
本明細書において用いられる「アルキルチオ」は、−S−アルキル基を指す。アルキルチオ基の例は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ(例えばn−プロピルチオおよびイソプロピルチオ)、t−ブチルチオ基および類似基を含むがそれらに限定されない。実施態様によっては、−S−アルキル基のアルキル基は、−Z−Rおよび−Z−R12基から独立に選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に記載されているとおりである。
【0058】
本明細書において用いられる「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン置換基を有するアルキル基を指す。ハロアルキル基の例は、CF、C、CHF、CHF、CCl、CHCl、CHCl、CClおよび類似物を含むがそれらに限定されない。「ハロアルキル」の定義の範囲内に、ペルハロアルキル基、すなわち水素原子のすべてがロゲン原子で置換されているアルキル基(例えば、CFおよびC)が含まれている。
【0059】
本明細書において用いられる「シクロアルキル」は、環になったアルキル、アルケニルおよびアルキニル基、例えば3から14個の環炭素原子を有し、任意に1つ以上(例えば1,2または3個)の二重結合または三重結合を含む非芳香族炭素環基を指す。シクロアルキル基は、単環(例えばシクロヘキシル)であっても多環(例えば融合環、橋架け環および/またはスピロ環系)であってもよい。炭素原子は、環系の内部または外部にある。シクロアルキル基の任意の適当な環位置が共有結合によって本定義の化学構造に結合してよい。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカニル、アダマンチルおよびスピロ[4.5]デカニル基、ならびにそれら化合物の同族体、異性体および類似物を含むがそれらに限定されない。実施態様によっては、シクロアルキル基は、−Z−Rおよび−Z−R12基から独立に選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に定義されているとおりである。実施態様によっては、シクロアルキル基は、1つ以上のオキソ基によって置換されていてよい。
【0060】
本明細書において用いられる「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を指し、例えば窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)およびセレン(Se)を含む。
【0061】
本明細書において用いられる「シクロへテロアルキル」は、O、NおよびSから選ばれる少なくとも1つ(例えば1〜5個)の環ヘテロ原子を含み、任意に1つ以上(例えば1,2または3個)の二重結合または三重結合を含む、3〜14個の環原子を有する非芳香族シクロアルキル基を指す。シクロへテロアルキル基は、結果として安定な構造を生じる任意のヘテロ原子または炭素原子において、本定義の化学構造に結合されてよい。シクロへテロアルキル環中の1つ以上のNまたはS原子は、酸化されて(例えばモルホリンN−オキシド、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド)よい。実施態様によっては、シクロへテロアルキル基の窒素原子は、置換基、例えば−Z−Rまたは−Z−R12基を有してよい。Z、RおよびR12は、本明細書に定義されているとおりである。シクロへテロアルキル基は、フタルイミド、ピペリドン、オキサゾリジノン、ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン、ピリジン−2(1H)−オンおよび類似物のように1つ以上のオキソ基も含んでよい。シクロへテロアルキル基の例は、特に、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、ピペラジニル基および類似基を含む。実施態様によっては、シクロへテロアルキル基は、任意に−Z−Rおよび−Z−R12基から選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に記載されているとおりである。
【0062】
本明細書において用いられる「アリール」は、芳香族単環炭化水素環系、あるいは少なくとも1つの他の芳香族炭化水素および/または非芳香族炭素環または複素環に融合した芳香族単環炭化水素環を有する多環系を指す。実施態様によっては、単環アリール基は6から14個の炭素原子を有してよく、多環アリール基は8から14個の炭素原子を有してよい。アリール基の任意の適当な環位置が本定義の化学構造に共有結合によって結合されてよい。実施態様によっては、アリール基は芳香族炭素環、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル基および類似基しか有しなくてよい。他の実施態様では、アリール基は、少なくとも1つの芳香族炭素環が1つ以上のシクロアルキルまたはシクロへテロアルキル環に融合している(すなわち共通の結合を有する)多環系であってよい。そのようなアリール基の例は、特に、シクロペンタンのベンゾ誘導体(すなわち5,6−二環シクロアルキル/芳香族環系であるインダニル基)、シクロヘキサン(すなわち6,6−二環シクロアルキル/芳香族環系であるテトラヒドロナフチル基)、イミダゾリン(すなわち5,6−二環シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるベンゾイミダゾリニル基)およびピラン(すなわち6,6−二環シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるクロメニル基)を含む。アリール基の他の例は、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基および類似基を含むがそれらに限定されない。実施態様によっては、アリール基は、任意に、−Z−Rおよび−Z−R12基から選ばれる最大4つの置換基を含んでよい。Z、RおよびR12は、本明細書に記載されているとおりである。
【0063】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」は、酸素(O)、窒素(N)および硫黄(S)から選ばれる少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む芳香族単環系、または環系内に存在する環の少なくとも1つが芳香族であり、少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む多環系を指す。ヘテロアリール基は、全体として、例えば5から14個の環原子を有し、1〜5個の環ヘテロ原子を含んでよい。ヘテロアリール基は、1つ以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環および非芳香族化合物シクロへテロアルキル環に融合している単環ヘテロアリール環を含む。ヘテロアリール基は、結果として安定な構造を生じる任意のヘテロ原子または炭素原子において、本定義の化学構造に結合されてよい。一般に、ヘテロアリール環は、O−O、S−SまたはS−O結合を含まない。しかし、ヘテロアリール基中の1つ以上のNまたはS原子は、酸化されて(例えばピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)よい。ヘテロアリール基の例は、例えば下式
【0064】
【化10】

に示される5員単環および5−6二環系を含む。Tは、O、S、NH、N−Z−RまたはN−Z−R12である。Z、RおよびR12は、本明細書に定義されているとおりである。そのようなヘテロアリール環の例は、ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル基および類似基を含むがそれらに限定されない。ヘテロアリール基のさらに別の例は、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾチエノピリジニル、ベンゾフロピリジニル基および類似基を含むがそれらに限定されない。実施態様によっては、ヘテロアリール基は、−Z−Rおよび−Z−R12基から独立に選ばれる最大4つの置換基によって置換されていてよい。Z、RおよびR12は、本明細書に記載されているとおりである。
【0065】
本明細書において用いられる「カルボン酸バイオイソスター」は、カルボン酸部分のそれと同様な化学的または物理的特性を有し、カルボン酸部分のそれと広義に同様な生物学的特性を作り出す置換基または基を指す。総合的に、R.B.Silverman,The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action(Academic Press,1992)参照。カルボン酸バイオイソスターの例は、アミド、スルホンアミド、スルホン酸、ホスホンアミド酸、ホスホン酸アルキル、N−シアノアセトアミド、3−ヒドロキシ−4H−ピラン−4−オン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールまたはテトラゾールを含むがそれらに限定されない。これらの化合物のそれぞれは、任意に置換されて(例えば、C1〜10アルキル基、OH等によって)いてよい。カルボン酸バイオイソスターの他の例は、−OHおよび下式
【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

に示されるものを含んでよいがそれらに限定されない。R、RおよびRは、本明細書に定義されているとおりである。
【0068】
本教示の化合物は、2つの他の部分と共有結合を形成することができる結合基として本明細書中で定義される「2価基」を含んでよい。例えば、本明細書に記載されている化合物は、例えばメチレン基などの2価C1〜10アルキル基を含んでよい。
【0069】
本明細書中のさまざまな箇所において、群または範囲の形で化合物の置換基が開示されている。本記載は、具体的に、そのような群および範囲の構成要素のそれぞれと、すべての個々の群内または範囲内の組合せを含むものとする。例えば、用語「C1〜10アルキル」は、具体的に、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C10、C〜CおよびC〜C10アルキルを個別に開示するものとする。別の例として、用語「5〜14員ヘテロアリール基」は、具体的に、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、5〜14、5〜13、5〜12、5〜11、5〜10、5〜9、5〜8、5〜7、5〜6、6〜14、6〜13、6〜12、6〜11、6〜10、6〜9、6〜8、6〜7、7〜14、7〜13、7〜12、7〜11、7〜10、7〜9、7〜8、8〜14、8〜13、8〜12、8〜11、8〜10、8〜9、9〜14、9〜13、9〜12、9〜11、9〜10、10〜14、10〜13、10〜12、10〜11、11〜14、11〜13、11〜12、12〜14、12〜13または13〜14個の環原子を有するヘテロアリール基を個別に開示するものとする。
【0070】
本明細書に記載されている化合物は、不斉原子(キラル中心とも呼ばれる)を含んでよく、化合物によっては1つ以上の不斉原子または中心を含んでよく、従って光学異性体(エナンチオマー)およびジアステレオマーが生じ得る。本教示、および本明細書に開示されている化合物は、そのような光学異性体(エナンチオマー)およびジアステレオマー(幾何異性体)、ならびにラセミおよび分割されたエナンチオマ的に純粋なRおよびS立体異性体ならびにRおよびS立体異性体の他の混合物と、薬学的に許容されるそれらの塩とを含む。光学異性体は、ジアステレオマー塩形成、速度論的分割および不斉合成を含むがそれらに限定されない当業者に既知の標準的な手順によって純粋な形で入手され得る。本教示は、アルケニル部分(例えばアルケンおよびイミン)を含む化合物のcisおよびtrans異性体も包含する。本教示は、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを含むがそれらに限定されない当業者に既知の標準的な分離手順によって純粋な形で入手され得るすべての可能な位置異性体およびそれらの混合物を包含するものと理解される。
【0071】
本明細書全体にわたって、構造式に化学名が示されることも示されないこともある。命名法に関してなんらかの疑問が生じた場合には構造式が優先される。
【0072】
本明細書に開示されている化合物のプロドラッグも本教示によって提供される。本明細書において用いられる「プロドラッグ」は、哺乳類被検対象に投与されたとき本教示の化合物を作り出し、発生させ、または放出する部分を指す。プロドラッグは、修飾部分が通常の取扱いによって、またはin vivoで親化合物から切り離されるように、本化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製されてよい。プロドラッグの例は、本化合物のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシル基に取り付けられた1つ以上の分子部分を含み、哺乳類の被検対象に投与されたとき、in vivoで切り離されて遊離のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシル基をそれぞれ形成する、本明細書に記載されている化合物を含む。プロドラッグの例は、本教示の化合物のアルコールおよびアミン官能基のアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体を含んでよいがそれらに限定されない。参照によってすべての目的について開示全体が本明細書に組み込まれるT.Higuchi and V.Stella,”Pro−drugs as Novel Delivery Systems,”Vol.14 of the A.C.S.Symposium SeriesおよびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987にプロドラッグの調製および使用が考察されている。
【0073】
本教示による化合物のエステル形は、哺乳類の体内で遊離カルボン酸形などの遊離酸の形に代謝され得る当分野で既知の薬学的に許容されるエステルを含む。適当なエステルの例は、アルキルエステル(例えば1から10個の炭素原子の)、シクロアルキルエステル(例えば3〜10個の炭素原子の)、アリールエステル(例えば6〜14個の炭素原子の(6〜10個の炭素原子を含む))およびそれらの複素環類似体(例えば3〜14の環原子のものであり、この3〜14の環原子のうち1〜3個が酸素、窒素および硫黄ヘテロ原子から選ばれてよい)を含むがそれらに限定されず、アルコール残基はさらに別の置換基を有してよい。実施態様によっては、本明細書に開示されている化合物のエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ネオペンチルエステルおよびヘキシルエステルなどのC1〜10アルキルエステル、シクロプロピルエステル、シクロプロピルメチルエステル、シクロブチルエステル、シクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルなどのC3〜10シクロアルキルエステル、またはフェニルエステル、ベンジルエステルおよびトリルエステルなどのアリールエステルであってよい。
【0074】
酸部分を有してよい本教示の化合物の薬学的に許容される塩は、有機および無機塩基を用いて形成されてよい。脱プロトンのために利用可能な酸性水素の数に応じて、モノアニオンおよびポリアニオン塩の両方が考慮される。塩基を用いて形成される適当な塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩などの金属塩、アンモニア塩、およびモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−またはトリ−低級アルキルアミン(例えばエチル−tert−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−またはジメチルプロピルアミン)、またはモノ−、ジ−またはトリヒドロキシ低級アルキルアルキルアミン(例えばモノ−、ジ−またはトリエタノールアミン)によって形成されるものなどの有機アミン塩を含む。無機塩基の具体的な非限定例は、NaHCO、NaCO、KHCO、KCO、CsCO、LiOH、NaOH、KOH、NaHPO、NaHPOおよびNaPOを含む。内部塩も形成されてよい。同様に、本明細書に開示されている化合物が塩基性部分を含むとき、有機および無機酸を用いて塩が形成されてよい。例えば、以下の酸、すなわち、酢酸、プロピオン酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、ジクロロ酢酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、フタル酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、トルエンスルホン酸およびカンファースルホン酸ならびにその他の既知の薬学的に許容される酸から塩が形成されてよい。
【0075】
本教示は、本明細書に記載されている少なくとも1つの化合物と、1つ以上の薬学的に許容されるキャリア、賦形剤または希釈剤とを含む医薬品組成物も提供する。そのようなキャリアの例は当業者に公知であり、例えば、参照によってすべての目的について開示全体が本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA(1985)に記載されているような、許容される薬学的手順によって調製されてよい。本明細書において用いられる「薬学的に許容される」は、毒物学的な観点から医薬品用途における使用に許容され、有効成分と有害に相互作用しない物質を指す。従って、薬学的に許容されるキャリアは、製剤中の他の成分と適合し、生物学的に許容されるものである。医薬品組成物中に補助有効成分も組み込まれてよい。
【0076】
本教示の化合物は、そのままでまたは通常の医薬品キャリアと組み合わされて、経口的にまたは非経口的に投与されてよい。利用可能な固体キャリアは、着香料、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、滑剤、圧縮助剤、結合剤または錠剤崩壊剤またはカプセル化材料としても作用することができる1つ以上の物質を含んでよい。本化合物は、通常の方法で、例えば既知の抗炎症剤について用いられるものと同様な方法で製剤化されてよい。本明細書に開示されている化合物を含む経口製剤は、錠剤、カプセル、口腔剤形、トローチ、薬用飴および経口液体、懸濁液または溶液を含む任意の通常用いられる経口形を含んでよい。粉体の場合、キャリアは、細かく分割された固体であってよい。この固体は、細かく分割された化合物との混合物である。錠剤の場合、本明細書に開示されている化合物が必要な圧縮特性を有するキャリアと適当な比率で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮されてよい。粉体および錠剤は、最大99%の本化合物を含んでよい。
【0077】
カプセルは、本明細書に開示されている1つ以上の化合物(単数または複数)と、薬学的に許容されるデンプン(例えばトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、砂糖、人工甘味料、粉体化セルロース(例えば結晶性および微結晶性セルロース)、小麦粉、ゼラチン、ガムおよび類似物などの不活性な充填剤(単数または複数)および/または希釈剤(単数または複数)との混合物を含んでよい。
【0078】
通常の圧縮法、湿式造粒法または乾式造粒法によって有用な錠剤製剤が作られてよく、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を含むがそれらに限定されない薬学的に許容される希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁剤または安定剤を利用してよい。表面改質剤は、非イオンおよび陰イオン表面改質剤を含む。表面改質剤の代表的な例は、poloxamer 188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、二酸化ケイ素コロイド、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよびトリエタノールアミンを含むがそれらに限定されない。本明細書における経口製剤は、本化合物(単数または複数)の吸収を変化させる標準的な遅延製剤または徐放製剤を利用してよい。経口製剤は、必要に応じて適切な可溶化剤または乳化剤を含む水または果物ジュース中の本明細書に開示されている化合物を投与することからなってもよい。
【0079】
溶液、懸濁液、乳化液、シロップ、エリキシルを調製する際、および吸入型の送達の場合に、液体キャリアが用いられてよい。水、有機溶媒、または両者の混合物、あるいは薬学的に許容される油または脂肪などの薬学的に許容される液体キャリア中に本教示の化合物が溶解されるかまたは懸濁されてよい。液体キャリアは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、着香料、懸濁剤、増粘剤、色材、粘度調節剤、安定剤および浸透圧調節剤など、その他の適当な医薬品添加物を含んでよい。経口および非経口投与のための液体キャリアの例は、水(特に、本明細書に記載されている添加剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液などのセルロース誘導体を含む)、アルコール(1価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば分留されたココナッツ油および落花生油)を含むがそれらに限定されない。非経口投与の場合、キャリアは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであってよい。非経口投与の場合、無菌液体形組成物中に無菌液体キャリアが用いられる。加圧される組成物のための液体キャリアは、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される噴霧剤であってよい。
【0080】
例えば筋肉注射、腹腔注射または皮下注射によって、無菌溶液または懸濁液である液体医薬品組成物が利用されてよい。静脈内に無菌溶液も投与されてよい。経口投与のための組成物は、液体または固体のどちらであってもよい。
【0081】
好ましくは、医薬品組成物は、単位用量形、例えば錠剤、カプセル、粉体、溶液、懸濁液、乳化液、顆粒または坐薬である。そのような形においては、医薬品組成物は、本化合物の適切な量を含む単位用量(単数または複数)にさらに分割されてよい。単位用量形は、包装された組成物、例えば分包された粉体、バイアル、アンプル、充填済み注射器または液体を含む小さな袋であってよい。あるいは、単位用量形は、それ自体カプセルまたは錠剤であってよく、または適切な数のそのようなパッケージ形の組成物であってよい。そのような単位用量形は、約1mg/kgの化合物から約500mg/kgの化合物を含んでよく、1回の用量分、または2回以上の用量分で投与されてよい。そのような用量は、経口、インプラント経由、非経口(静脈注射、腹腔注射および皮下注射を含む)、直腸経由、膣経由および皮膚経由を含む、本化合物(単数または複数)を受薬者の血流中に誘導する上で有用ないかなる方法によって投与されてもよい。
【0082】
特定の疾患状態または障害の治療または抑制のために投与されるとき、有効な用量は、利用される特定の化合物、投与のモード、および治療される状態の重篤さ、ならびに治療を受けている個人に関連するさまざまな身体条件に応じて変化してよいと理解される。治療用途においては、既に疾患を病んでいる患者に、疾患およびその合併症の症状を治療するかまたは少なくとも部分的に改善するのに十分な量の本教示の化合物が提供されてよい。通常、特定の個人の治療において用いられる用量は、主治医が中心となって決定されなければならない。関与する変数は、特定の病状およびその状態ならびに患者のサイズ、年齢および応答パターンを含む。
【0083】
場合によっては、例えば肺が標的臓器である場合には、計量用量吸入装置、呼吸作動吸入装置、複数用量乾燥粉体吸入装置、ポンプ、絞り作動噴霧スプレーディスペンサー、エーロゾルディスペンサーおよびエーロゾル噴霧器などであるがそれらに限定されないデバイスを用いて化合物を患者の気管に直接投与することが望ましいことがある。鼻腔内または気管内吸入による投与の場合、本教示の化合物は製剤化され、液体組成物、固体組成物、またはエーロゾル組成物とされてよい。液体組成物は、例示として、1つ以上の薬学的に許容される溶媒中に溶解され、部分的に溶解され、または懸濁された本教示の1つ以上の化合物を含んでよく、例えば、ポンプまたは絞り作動噴霧スプレーディスペンサーによって投与されてよい。例えば、溶媒は、等張食塩水または静菌水であってよい。固体組成物は、例示として、気管内使用に許容されるラクトースまたは他の不活性粉体と混合された1つ以上の本教示の化合物を含む粉体調製物であってよく、例えば、エーロゾルディスペンサー、または固体組成物を収納しているカプセルを壊すかまたは穿孔し、固体組成物を吸入のために供給するデバイスによって投与されてよい。エーロゾル組成物は、例示として、1つ以上の本教示の化合物、噴霧剤、界面活性剤および共溶媒を含んでよく、例えば、計量されたデバイスによって投与されてよい。噴霧剤は、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロフルオロアルカン(HFA)、または生理的におよび環境的に許容される他の噴霧剤であってよい。
【0084】
本明細書に記載されている化合物は、非経口的にまたは腹膜内に投与されてよい。ヒドロキシル−プロピルセルロースなどの界面活性剤と適当に混合された水の中で、これらの化合物あるいは薬学的に許容されるこれらの化合物の塩、水和物、またはエステルの溶液または懸濁液が調製されてよい。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油の中のそれらの混合物の中で分散物が調製されてもよい。一般に、通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を阻止する防腐剤を含む。
【0085】
注射に適する製剤形は、無菌注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌水溶液または分散液ならびに無菌粉体を含んでよい。実施態様によっては、製剤形は、無菌であってよく、その粘度は、製剤形が注射器を通って流れることを可能にする。好ましくは、製剤形は、製造および貯蔵条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に耐えて保存されてよい。キャリアは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、適当なそれらの混合物および植物油を含む溶媒または分散媒であってよい。
【0086】
本明細書に記載されている化合物は、経皮投与、すなわち体の表面と、上皮および粘膜組織を含む身体通過体内層とを通して投与されてよい。そのような投与は、薬学的に許容される塩、水和物またはエステルを含む本教示の化合物を用いて、ローション、クリーム、発泡体、パッチ、懸濁物、溶液および坐薬(直腸および膣)の形で実行されてよい。表皮を通して本教示の化合物(単数または複数)を供給する局所製剤は、炎症、乾せん症および関節炎の局所治療に有用であり得る。
【0087】
経皮投与は、本明細書に開示されている化合物などの化合物と、本化合物に不活性であり、皮膚に対して非毒性であり、全身性吸収のために皮膚を通して血流中への化合物の供給を可能にすることができるキャリアとを含む経皮パッチの使用によって実現され得る。キャリアは、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲルおよび封止デバイスなど、いかなる数の形であってもよい。クリームおよび軟膏は、水中油または油中水型粘性液または半固体乳濁液のどちらであってもよい。本化合物を含む石油または親水性石油中に分散した吸収性粉体で構成されたペーストも適していることがあり得る。化合物を血流中に放出するために、キャリアとともにまたはキャリアなしで本化合物を含む容器、または本化合物を含むマトリックスを覆う半透膜などのさまざまな封止デバイスが用いられてよい。文献中では他の封止デバイスが知られている。
【0088】
本明細書に記載されている化合物は、通常の坐薬の形で直腸投与または膣投与されてよい。坐薬製剤は、カカオバター、およびグリセリンを含む従来材料から作られ、坐薬の融点を変化させるワックスを添加してもよく、添加しなくてもよい。さまざまな分子量のポリエチレングリコールなどの水溶性坐剤基剤が用いられてよい。
【0089】
本教示の化合物をin vitroまたはin vivoで宿主細胞中に導入するために、脂質製剤またはナノカプセルが用いられてよい。当分野において知られている方法によって脂質製剤およびナノカプセルが調製されてよい。
【0090】
本教示の化合物の有効性を増加させるために、化合物を標的疾患の治療において有効な他の剤と組み合わせることが望ましいことがある。例えば、標的疾患を治療する上で有効な他の活性化合物(すなわち他の有効成分または剤)が本教示の化合物とともに投与されてよい。他の剤は、本明細書に開示されている化合物と同時に投与されてもよく、異なる時点で投与されてもよい。
【0091】
本教示の化合物は、哺乳類、例えばヒトにおける病理学的状態または障害の治療または抑制のために有用であり得る。従って、本教示は、哺乳類に本教示の化合物(または薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル)あるいは1つ以上の薬学的に許容されるキャリアと組み合わされているかまたは会合している本教示の化合物を含む医薬品組成物を提供することによって、病理学的状態または障害を治療するかまたは抑制する方法を提供する。本教示の化合物は、病理学的状態または障害の治療または抑制のために、単独でまたは他の治療として有効な化合物または治療法と組み合わされて投与されてよい。本明細書で用いられる「治療として有効な」は、望ましい生物活性または効果を誘発する物質または量を指す。本明細書中で用いられる「治療する」は、部分的にまたは完全に状態を軽減し、抑制し、および/または改善することを指す。
【0092】
本教示は、哺乳類における病理学的状態または障害の治療または抑制のための活性治療物質としての本明細書に開示されている化合物および薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物およびエステルの使用をさらに含む。実施態様によっては、病理学的状態または障害は、セレクチンによって媒介される細胞内接着と関連してよい。従って、本教示は、本明細書に記載される化合物を用いてこれらの病理学的状態および障害を治療する方法をさらに提供する。
【0093】
実施態様によっては、本教示は、本教示の化合物または薬学的に許容されるそれらの塩、水和物またはエステルの有効な量を哺乳類に投与することを含む、哺乳類におけるセレクチンによって媒介される細胞内接着を阻害する方法を提供する。特定の実施態様では、本教示は、本明細書に開示される化合物の治療として有効な量を哺乳類に投与することを含む、哺乳類における疾患、障害、状態または望ましくない過程と関連したセレクチンによって媒介される細胞内接着を阻害する方法を提供する。
【0094】
実施態様によっては、疾患、障害、状態または望ましくない過程は、感染、転移、望ましくない免疫過程、望ましくない血栓過程、あるいは炎症成分を有する疾患または状態(例えば心血管疾患、糖尿病またはリウマチ性関節炎)であってよい。実施態様によっては、疾患、障害、状態または望ましくない過程は、アテローム性動脈硬化、アテローム性血栓、再狭窄、心筋梗塞、虚血再潅流、Reynauld症候群、炎症性腸疾患、骨関節炎、急性呼吸不全症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺炎症、遅延型過敏性反応、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、熱損傷、脳卒中、実験的アレルギー性脳脊髄炎、傷害二次多器官傷害症候群、好中球皮膚病、Sweet病、糸球体腎炎、潰瘍性大腸炎、Crohn病、壊死性全腸炎、サイトカイン誘起毒性、歯肉炎、歯周炎、溶血性尿毒症症候群、乾せん症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、Grave病、血液透析または白血球分離と関連した治療の免疫媒介副作用、顆粒球輸血関連症候群、深部静脈血栓症、血栓後症候群、不安定狭心症、一過性脳虚血発作、末梢血管疾患(例えば末梢血管疾患)、癌関連転移、鎌状赤血球貧血を含むがそれに限定されない鎌症候群、臓器拒絶(移植片対宿主)、またはうっ血性心不全であってよい。
【0095】
実施態様によっては、疾患、障害、状態または望ましくない過程、細菌、ウイルスまたは寄生虫によって媒介される望ましくない感染過程、例えば歯肉炎、歯周炎、溶血性尿毒症症候群または顆粒球輸血関連症候群であってよい。
【0096】
実施態様によっては、疾患、障害、状態または望ましくない過程は、癌と関連した転移であってよい。さらに別の実施態様では、疾患、障害、状態または望ましくない過程は、望ましくない免疫過程と関連した疾患または障害、例えば乾せん症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、Grave病、および血液透析または白血球分離と関連した治療の免疫媒介副作用であってよい。特定の実施態様では、疾患、障害、状態または望ましくない過程は、望ましくない血栓症過程と関連した状態、例えば深部静脈血栓症、不安定狭心症、一過性脳虚血発作、末梢血管疾患、血栓症後症候群、静脈血栓塞栓症またはうっ血性心不全であってよい。
【0097】
実施態様によっては、本教示は、本教示の化合物または薬学的に許容されるそれらの化合物の塩、水和物またはエステルを臓器に投与することを含む、移植された(例えば腎臓移植)臓器中の望ましくない免疫過程を改善する方法を提供する。実施態様によっては、本教示は、必要とする患者に本教示の化合物を投与することを含む、鎌症候群、例えば鎌状赤血球貧血、の症状を治療するかまたは改善する方法を提供する。実施態様によっては、本方法は、セレクチンによって媒介される細胞内接着が関与する疾患または障害のためのバイオマーカーを有するヒト、哺乳類または動物を特定すること、および治療として有効な量の本明細書に記載されている化合物をヒト、哺乳類または動物に投与することを含んでよい。実施態様によっては、バイオマーカーは、可溶性P−セレクチン、CD40、CD40リガンド、MAC−1、TGFベータ、ICAM、VCAM、IL−1、IL−6、IL−8、Eotaxin、RANTES、MCP−1、PIGF、CRP、SAAおよび血小板単核細胞凝集体のうちの1つ以上であってよい。
【0098】
本教示の化合物は、既知の方法によって調製されてよい。特に、本教示の化合物は、当業者に既知の標準的な合成方法および手順を使用することによって市販の出発原料、文献中で知られている化合物、または容易に調製される中間体から下のスキーム中に概略が示されている手順によって調製されてよい。有機分子の調製ならびに官能基の変換および取り扱いのための標準的な合成方法および手順は、関連する科学文献または本分野の標準的な教科書から容易に得られる。通常のまたは好ましいプロセス条件(すなわち反応温度、時間、反応体のモル比、溶媒、圧力等)が示される場合、特に明記しない限り他のプロセス条件も用いられてよいことは自明である。最適反応条件は、用いられる特定の反応体または溶媒によって変化し得るが、そのような条件は、通常の最適化手順によって当業者によって決定され得る。示される合成工程の性質および順序が、本明細書に記載されている化合物の形成を最適化する目的で変更され得ることは、有機合成の当業者には自明であろう。
【0099】
本明細書に記載されているプロセスは、当分野において既知の任意の適当な方法によって監視されてよい。例えば、生成物の生成は、核磁気共鳴分光法(NMR、例えばHまたは13C)、赤外分光法(IR)、分光光度法(例えば紫外−可視)、質量分析法法(MS)などの分光法手段、あるいは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)などのクロマトグラフィーによって監視されてよい。
【0100】
化合物の調製は、さまざまな化学基の保護および脱保護を含んでよい。保護および脱保護の必要および適切な保護基の選択は、当業者によって容易に決定され得る。保護基の化学は、例えば、すべての目的のために参照によって開示全体が本明細書に組み込まれるGreene et al.,Protective Groups in Organic Synthesis,2d.Ed.(Wiley & Sons,1991)中に見いだされ得る。
【0101】
本明細書に記載されている反応またはプロセスは、有機合成の当業者によって容易に選ばれ得る適当な溶媒中で実行されてよい。通常、適当な溶媒は、反応が実行される温度、すなわち溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度までの範囲にあってもよい温度で反応体、中間体および/または生成物と実質的に反応しない。所定の反応は、1つの溶媒または2つ以上の溶媒の混合物中で実行されてよい。特定の反応工程に応じて、特定の反応工程のための適当な溶媒が選ばれてよい。
【0102】
一般に、本教示の化合物は、スキーム1〜6によって合成されてよい。
【0103】
【化13】

塩基、例えばNaOHの存在下で任意に置換されているインドリン−2,3−ジオンを、任意に置換されている2−オキソーエチルアセテートまたは対応するアルコールと反応させることによって、上のスキーム1に示されているように本教示の化合物が調製されてよい。式中、R、R3′、R、Rおよびnは、本明細書に定義されているとおりである。
【0104】
【化14】

適切に置換されているアニリンから、上のスキーム2に示されているように置換されているインドリン−2,3−ジオンが調製されてよい。式中RおよびR3′は、本明細書に定義されているとおりである。
【0105】
【化15】

あるいは、適切に置換されているアニリンから、上のスキーム3に示されているように置換されているインドリン−2,3−ジオンが調製されてよい。式中、RおよびR3′は、本明細書に定義されているとおりである。
【0106】
【化16】

適切に置換されているカルボン酸から、上のスキーム4に示されているように置換されている2−オキソ−エチルアセテートが調製されてよい。式中、R、Rおよびnは、本明細書に定義されているとおりである。
【0107】
【化17】

あるいは、置換されている2−オキソ−エチルアセテートは、適切に置換されているハロゲン化物から、上のスキーム5に示されているように調製されてよい。式中、R、Rおよびnは、本明細書に定義されているとおりである。
【0108】
【化18】

あるいは、置換されている2−オキソ−エチルアセテートのアルコールは、適切に置換されているカルボン酸から、上のスキーム6に示されているように調製されてよい。式中、R、Rおよびnは、本明細書に定義されているとおりである。
【実施例】
【0109】
例となる化合物の調製
以下の非限定的な実施例は、本教示の例を示すために提示されているに過ぎない。例示されてはいないが本教示の一部を構成する多数の均等物および変化形があることは、当業者に自明である。
【0110】
(実施例1)
2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−8−(トリフルオロメチル)キノリン−4−カルボン酸(化合物1)の調製
工程1 1−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−2−ヒドロキシエタノンの調製
15ミリリットル(mL)のトルエン中の1−ベンゾシクロブテンカルボン酸(1.0グラム(g)、6.76ミリモル(mmol))と3.5mLの塩化チオニルとの混合物が115℃で16時間(hrs)加熱された。反応混合物の濃縮は油状残留物を生じた。この残留物に10mLのトルエンが加えられ、得られた混合物は濃縮されて黄色い油が得られた。この油に1,1,2−トリス(トリメチルシリルオキシ)エタン(4.4mL、13.34mmol)が加えられた。得られた混合物は、窒素雰囲気下100℃で16時間加熱された。反応混合物は、50℃に冷却され、それに10mLのジオキサンおよび2mLの1規定(N)HClが加えられた。得られた混合物は、80℃で2時間撹拌された。混合物の濃縮は黄色い残留物を生じた。この残留物に10mLの水および15mLのジエチルエーテルが加えられた。有機層は、5mLの飽和重炭酸ナトリウム、食塩水で洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥された。ろ過によって固体が除去された。ろ液の濃縮は、1−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−2−ヒドロキシエタノン(0.55g、65%収率)を無色の油として生じた。H NMR(400 MHz,CDCl) δ2.82−2.98(m,1H),3.05−3.20(m,1H),3.46−3.51(m,1H),4.44−4.47(m,2H),7.05−7.81(m,4H)。
【0111】
工程2 2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−8−(トリフルオロメチル)キノリン−4−カルボン酸(化合物1)の調製
Cragoe et al.によって記載されているPfitzinger反応のための一般的な手順(J.Org.Chem.,1953,18:561参照)に従った。0.5mLのエタノール中の7−(トリフルオロメチル)インドリン−2,3−ジオン(130.0ミリグラム(mg)、0.60mmol)と1mLの6M水酸化カリウム水溶液との混合物に、0.5mLのエタノール中の1−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−2−ヒドロキシエタノン(実施例1、100mg、0.62mmol)の暖かい溶液が100℃で0.5時間かけて少しずつ加えられた。添加が完了した後、反応混合物は、反応が完了したことをHPLC−MSが示すまで(1時間から16時間の間で変化する)、加熱還流された。溶媒が除去され、組成生物は、調製規模のHPLCによって精製された。2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−8−(トリフルオロメチル)キノリン−4−カルボン酸塩を含む画分が濃縮された。得られた固体は、1mLのアセトニトリル中に溶解され、得られた溶液は、濃塩酸によって0℃でpH約1に酸性化された。水(20mL)が加えられ、得られた懸濁物は、0℃で1時間激しく撹拌された。ろ過によって黄色の固体が集められ、水で洗浄され、真空下で乾燥されて2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−8−(トリフルオロメチル)キノリン−4−カルボン酸(12.5mg、5.8%収率)が淡黄色の固体として得られた。H NMR(400 MHz,メタノール−d “MeOH−d”)δ3.46(dd,J=14.0,5.6 Hz,1H),3.98(dd,J=14.0,3.1 Hz,1H),5.06(dd,J=5.6,3.1 Hz,1H),6.99(d,J=6.3 Hz,1H),7.04−7.09(m,2H),7.25(d,J=6.1 Hz,1H),7.37−7.39(m,1H),7.62(d,J=7.3 Hz,1H),9.50(d,J=8.6 Hz,1H)。
【0112】
(実施例2)
2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−7,8−ジメチルキノリン−4−カルボン酸(化合物2)の調製
工程1 6,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンの調製
Rewcastle et al.によって記載されたイサチン合成(J.Med.Chem.,1991,34:217)が用いられた。クロラール水和物(45g、0.27mol)、ヒドロキしアミン塩化水素塩(205g、1.25mol)、および硫酸ナトリウム(226.5g、1.6mol)が2Lの丸底フラスコの中に入れられ、750mLの水が加えられた。この懸濁物に25mLの濃HClを含む250mLの水中の2,3−ジメチルアニリン(29.05g、0.24mol)が加えられた。懸濁液は、窒素雰囲気下45℃で90分(min)間、続いて52℃で45分間、最後に75℃で60分間加熱された。反応混合物は、室温に冷却された。沈殿物はろ過によって集められ、水および石油エーテルで洗浄され、真空デシケーター中で一夜乾燥されてN−(2,3−ジメチル−フェニル)−2−ヒドロキシイミノ−アセトアミド(40.1g、87%収率)が得られた。
【0113】
80mLのCHSOHに70℃〜80℃でN−(2,3−ジメチル−フェニル)−2−ヒドロキシイミノ−アセトアミド(20g、0.1mol)が1時間かけて少しずつ加えられた。得られた混合物は、同じ温度に15分間保持され、ビーカー中の砕かれた氷の上に注がれた。触れるとビーカーの外側が冷たく感じられるまで追加の氷が加えられた。沈殿物は集められ、1N水酸化ナトリウム水溶液中に溶解された。酢酸による中和は不純物を沈殿させ、沈殿物はろ過によって除かれ、塩酸によるろ液の酸性化は6,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンを固体(12.8g、70%収率)として生じさせた。H NMR(400 MHz,ジメチルスルホキシド−d “DMSO−d”)δ2.09(s,3H),2.27(s,3H),6.89(d,J=7.58 Hz,1H),7.25(d,J=7.58 Hz,1H),11.02(s,1H)。
【0114】
工程2 2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−7,8−ジメチルキノリン−4−カルボン酸(化合物2)の調製
実施例1に記載されている手順に従い、6,7−ジメチルインドリン−1H−2,3−ジオン(実施例2,105.0mg、0.60mmol)を1−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−2−ヒドロキシエタノン(実施例1、100mg、0.62mmol)と反応させることによって、2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−7,8−ジメチルキノリン−4−カルボン酸が黄色の固体(1.5mg、0.78%収率)として得られた。H NMR(400 MHz,MeOH−d) δ2.62−2.66(s,3H),2.85−2.90(s,3H),3.87(dd,J=14.0,5.6 Hz,1H),4.11(dd,J=14.0,3.1 Hz,1H),5.41(dd,J=5.6,3.1 Hz,1H),7.32−7.37(m,1H),7.40−7.45(m,2H),7.56(d,J=8.7 Hz,2H),8.75(d,J=8.7 Hz,1H)。
【0115】
(実施例3)
3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−7,8−ジメチル−キノリン−4−カルボン酸(化合物3)の調製
工程1 2−ヒドロキシ−1−インダン−2−イル−エタノンの調製
7.5mLのトルエン中のインダン−2−カルボン酸(1.0g、6.2mmol)と3.5ミリリットル(mL)の塩化チオニルとの混合物が115℃で16時間加熱された。反応混合物の濃縮は、油状残留物を与えた。この残留物に10mLのトルエンが加えられ、得られた混合物は濃縮されて黄色の油が得られ、この油に1,1,2−トリス(トリメチルシリルオキシ)エタン(4.1mL,12.4mmol)が加えられた。反応混合物は窒素雰囲気下100℃で16時間加熱された。反応混合物は50℃に冷却され、それに5mLのジオキサンおよび1mLのHCl水溶液が加えられた。得られた混合物は80℃で2時間撹拌され、混合物の濃縮は黄色の油状の残留物を与えた。残留物は10mLの水と15mLのジエチルエーテルとの間で分配された。有機層は5mLの飽和重炭酸ナトリウム溶液、食塩水で洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥された。固体はろ過によって除去され、ろ液は濃縮されて2−ヒドロキシ−1−インダン−2−イル−エタノン(0.80g、73%収率)が無色の油として得られた。H NMR(400 MHz,CDCl) δ3.12−3.24(m,4H),3.41−3.51(m,1H),4.84−4.86(d,J=4.55 Hz,2H),7.16−7.25(m,4H)。
【0116】
工程2 3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−7,8−ジメチル−キノリン−4−カルボン酸(化合物3)の調製
実施例1に記載されている手順に従って、6,7−ジメチルインドリン−2,3−ジオン(実施例2、90mg、0.51mmol)が6M KOHの存在下で2−ヒドロキシ−1−インダン−2−イル−エタノン(実施例3、90mg、0.51mmol)と反応させられた。3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−7,8−ジメチル−キノリン−4−カルボン酸がベージュの固体(18.2mg、10.7%収率)として得られた。H NMR(400 MHz,DMSO−d) δ2.38(s,3H),2.59(m,3H),3.35(dd,J=15.41,8.59 Hz,2H),3.44(dd,J=15.41,7.58 Hz,2H),4.25−4.35(m,1H),7.13−7.17(m,2H),7.24−7.29(m,2H),7.36(d,J=8.84 Hz,1H),8.29(d,J=8.84 Hz,1H)。
【0117】
(実施例4)
3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−イソプロピル−キノリン−4−カルボン酸(化合物4)の調製
工程1 7−イソプロピルインドール−2,3−ジオンの調製
2−ヒドロキシ−1−インダン−2−イル−エタノンの調製に関して実施例3に記載されている手順に従って、7−イソプロピルインドール−2,3−ジオンが調製され、褐色の粉末(46%収率)として得られた。H NMR(400 MHz,DMSO−d) δ1.18(d,J=6.8 Hz,6 H),3.04(7重線,1H),7.06(t,J=7.7 Hz,1H),7.35(d,J=7.3 Hz,1H),7.54(d,J=7.3 Hz,1H),11.09(s,1H)。
【0118】
工程2 3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−イソプロピル−キノリン−4−カルボン酸(化合物4)の調製
実施例1に記載されている手順に従って、7−イソプロピルインドリン−2,3−ジオン(実施例4、189mg、1.0mmol)が2−ヒドロキシ−1−インダン−2−イル−エタノン(実施例3、171mg、1.0mmol)と反応させられて3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−イソプロピル−キノリン−4−カルボン酸(40.4mg、11.6%収率)をベージュの固体として提供した。H NMR(400 MHz,DMSO−d) δ1.22(d,J=6.82 Hz,6 H),3.34−3.41(m,4H),4.03−4.14(m,1H),4.27−4.37(m,1H),7.12−7.16(m,2H),7.24−7.28(m,2H),7.38(d,J=7.37 Hz,1H),7.48(dd,J=8.34,7.37 Hz,1H),8.36(d,J=8.34 Hz,1H)。
【0119】
(実施例5)
3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−トリフルオロメチル−キノリン−4−カルボン酸(化合物5)の調製
工程1 7−トリフルオロメチル−1H−インドール−2,3−ジオンの調製
6,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンの調製に関する実施例2における手順に従って、7−トリフルオロメチル−1H−インドール−2,3−ジオンが調製され、固体(61%収率)として得られた。H NMR(400 MHz,DMSO−d) δ7.23(t,J=7.7 Hz,1H),7.78(d,J=7.3 Hz,1H),7.85(d,J=8.1 Hz,1H),11.46(s,1H)。
【0120】
工程2 3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−トリフルオロメチル−キノリン−4−カルボン酸(化合物5)の調製
実施例1に記載されている手順に従って、7−(トリフルオロメチル)インドリン−2,3−ジオン(実施例5、313mg、1.46mmol)が2−ヒドロキシ−1−インダン−2−イル−エタノン(実施例3、257mg、1.46mmol)と反応させられて3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−トリフルオロメチル−キノリン−4−カルボン酸(87.8mg、16.1%収率)がベージュの固体として得られた。H NMR(400 MHz,DMSO−d) δ3.34(dd,J=15.66,8.59 Hz,2H),3.43(dd,J=15.66,8.08 Hz,2H),4.26−4.38(m,1H),7.10−7.16(m,2H),7.22−7.28(m,2H),7.65(dd,J=8.94,7.88 Hz,1H),7.88(d,J=7.88 Hz,1H),8.95(d,J=8.94 Hz,1H)。
【0121】
生物学的試験
BIACORE P−セレクチン/PSGL−1阻害アッセイ
Biacore 3000装置(Biacore Inc.Piscataway,NJ.)上25℃、流速30μL/分で表面プラズモン共鳴アッセイが実行された。各アッセイは60秒の平衡化、60μL試料注入(kinjcet)および300秒解離からなっていた。
【0122】
必要なP−セレクチン結合決定基をすべて含んでいるヒトPSGL−1の短縮形「19ek」(Goetz,et al.,J Cell Biol.,1997,137:509〜519、およびSako,et al.,Cell,1995,83:323〜331参照)がアミン化学(スルホーNHS−LC−ビオチン、Pierce)によって固有C−末端リシン残基(Somers,et al.,Cell,2000,103:467−479参照)においてビオチン化され、HBS−EP緩衝液(Biacore Inc.)および標的600〜700RUを用いてBiacore SAセンサーチップ(Biacore Inc.)に固定化された。被覆されたチップは、HBS−P緩衝液(Biacore Inc.)で再平衡化され、受容体とリガンドとの間のカルシウム依存性相互作用に十分なカルシウムを保証するために、1mMのCaClおよび1mMのMgCl(ともにFischerから)が加えられた。
【0123】
試験化合物は、1.1×Biacoreアッセイ緩衝液中で1時間インキュベートされた。各溶液は96ウェルプレート形式(Millipore)を用いて0.2μmのフィルターを通して遠心分離された。試験化合物と並行してグリシルリジン三ナトリウム塩(TCI)が陽性対照として上記に記載されているのと同じ方法で調製された。P−セレクチンの実証された拮抗薬であるグリシルリジン(Patton,J.T.,GlycoTech Corporation,書面、2000年5月)は、P−セレクチン/PSGL−1相互作用を阻害し、このアッセイにおけるIC50は1mMであることが示された。
【0124】
ろ過されたそれぞれの試験化合物溶液に、レクチンと、CHO細胞中に発現された上皮成長因子(EGF)様ドメイン(Somers,et al.,Cell,2000,103:467〜479)とで構成されているヒトP−セレクチンの可溶性組み換え短縮形P−LEが加えられた。試薬の最終濃度は、500nM P.LE、250または500μM試験化合物(構造による)、または1mMグリシルリジン、10%DMSO、および1×Biacore緩衝液(100mM HEPES、150mM NaCl、1mM CaClおよび1mM MgCl(試薬はすべてFischerから))であり、pHは7.4であった。250μMで活性な化合物は、活性を定めるためにさらに滴定された。試験試料は、96ウェルプレート中でBiacore装置に装填された。
【0125】
Biacore生データファイルがテキストファイルとしてExcelスプレッドシートにエクスポートされた。Excel内で試料を含む緩衝液ブランクが各Biacore装置フローセル(Fc)について平均され、非阻害P.LE試料平均値から、およびすべての他の試料から減じられた。次に、二重基準法(Myszka,J.Mol.Recognit.,1999,12(5):279〜284)参照)として知られているプロセスで、各注入についてFc1(非被覆)からの基準信号が対応する活性(被覆)信号から減じられた。基準を減じた非阻害信号によって、基準を減じた阻害信号を除し、この商を1から減じ、得られた値に100を乗じることによって、結合のパーセント阻害が計算される。繰り返しパーセント阻害の値が平均され、平均値±標準偏差として表される。Biacoreアッセイにおける計算されたパーセント阻害の実験間標準偏差は±5であった。
【0126】
下の表1に、本発明による代表的な化合物に関するアッセイ結果が含まれている。
【0127】
【表1】

当業者には自明であるように、本教示の技術思想から逸脱することなく本教示の好ましい実施態様に対して多数の変化および変更が施され得る。そのような変化形はすべて本教示の範囲内に属するものとする。
【0128】
本出願は、2007年3月30日出願の米国特許仮出願第60/920950号の優先権を主張する。同出願の開示は参照によって本明細書に全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化19】

(式中、
は、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)OR、−C(S)NR、−C(NR)R、−C(NR)NR、−NR、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(NR)NR、−NRS(O)または−NRS(O)NRであり、
は、−C(O)OR、−C(O)NRまたはカルボン酸バイオイソスター(生物学的等価体)であり、
およびR3′は、独立に、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OR、−NR、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)OR、−C(S)NR、−C(NR)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基、前記C3〜14シクロアルキル基、前記C6〜14アリール基、前記3〜14員シクロへテロアルキル基および前記5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換されているか、
あるいは、RおよびR3′は、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、C4〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、4〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基を形成し、前記C4〜14シクロアルキル基、前記C6〜14アリール基、前記4〜14員シクロへテロアルキル基および前記5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換され、
およびRは、独立に、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OR、−NR、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)OR、−C(S)NR、−C(NR)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基、前記C3〜14シクロアルキル基、前記C6〜14アリール基、前記3〜14員シクロへテロアルキル基および前記5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換され、
は、それぞれの位置において独立に、H、−C(O)R、−C(O)NR、−C(S)R、−C(S)NR、−C(NR)NR、−C(NR)NR、−S(O)、−S(O)NR、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基、前記C3〜14シクロアルキル基、前記C6〜14アリール基、前記3〜14員シクロへテロアルキル基および前記5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換され、
およびRは、それぞれの位置において独立に、H、−OH、−SH、−S(O)OH、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(S)NH、−OC1〜10アルキル、−C(O)−C1〜10アルキル、−C(O)−OC1〜10アルキル、−OC6〜14アリール、−C(O)−C6〜14アリール、−C(O)−OC6〜14アリール、−C(S)N(C1〜10アルキル)、−C(S)NH−C1〜10アルキル、−C(O)NH−C1〜10アルキル、−C(O)N(C1〜10アルキル)、−C(O)NH−C6〜14アリール、−S(O)−C1〜10アルキル、−S(O)−OC1〜10アルキル、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロヘテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基、前記C3〜14シクロアルキル基、前記C6〜14アリール基、前記3〜14員シクロヘテロアルキル基および前記5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換され、
は、それぞれの位置において独立に、ハロゲン、−CN、−NO、オキソ、−O−Z−R10、−NR10−Z−R11、−N(O)R10−Z−R11、−S(O)10、−S(O)O−Z−R10、−S(O)NR10−Z−R11、−C(O)R10、−C(O)O−Z−R10、−C(O)NR10−Z−R11、−C(S)NR10−Z−R11、−Si(C1〜10アルキル)、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基、前記C3〜14シクロアルキル基、前記C6〜14アリール基、前記3〜14員シクロへテロアルキル基および前記5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個のR12基によって置換され、
10およびR11は、それぞれの位置において独立に、H、−OH、−SH、−S(O)OH、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(S)NH、−OC1〜10アルキル、−C(O)−C1〜10アルキル、−C(O)−OC1〜10アルキル、−C(S)N(C1〜10アルキル)、−C(S)NH−C1〜10アルキル、−C(O)NH−C1〜10アルキル、−C(O)N(C1〜10アルキル)、−S(O)−C1〜10アルキル、−S(O)−OC1〜10アルキル、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロヘテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基、前記C3〜14シクロアルキル基、前記C6〜14アリール基、前記3〜14員シクロヘテロアルキル基および前記5〜14員ヘテロアリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R12基によって置換され、
12は、それぞれの位置において独立に、ハロゲン、−CN、−NO、オキソ、−OH、−NH、−NH(C1〜10アルキル)、−N(C1〜10アルキル)、−S(O)H、−S(O)−C1〜10アルキル、−S(O)OH、−S(O)−OC1〜10アルキル、−CHO、−C(O)−C1〜10アルキル、−C(O)OH、−C(O)−OC1〜10アルキル、−C(O)NH、−C(O)NH−C1〜10アルキル、−C(O)N(C1〜10アルキル)、−C(S)NH、−C(S)NH−C1〜10アルキル、−C(S)N(C1〜10アルキル)、−S(O)NH、−S(O)NH(C1〜10アルキル)、−S(O)N(C1〜10アルキル)、−Si(C1〜10アルキル)、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C1〜10アルコキシ基、C1〜10アルキルチオ基、C1〜10ハロアルキル基、C3〜14シクロアルキル基、C6〜14アリール基、3〜14員シクロへテロアルキル基または5〜14員ヘテロアリール基であり、
Zは、それぞれの位置において独立に、2価C1〜10アルキル基、2価C2〜10アルケニル基、2価C2〜10アルキニル基、2価C1〜10ハロアルキル基または共有結合であり、
mは、それぞれの位置において独立に、0、1または2であり、
nは、0、1または2である)
の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項2】
は−OR、−OC(O)R、または−NRであり、R、RおよびRは、請求項1に定義されるとおりである、請求項2に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項3】
は−OHである、請求項2に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項4】
は−COOHである、請求項1、2または3に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項5】
前記化合物は、式Ia、式Ib、式Ic、式Id、式Ieまたは式Ifを有し、
【化20】

【化21】

式中、R、R、R、R3’、R、Rおよびnは、請求項1に定義されているとおりである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項6】
およびR3′は、独立に、H、ハロゲン、−OR、C1〜10アルキル基またはC6〜14アリール基であって、前記C1〜10アルキル基および前記C6〜14アリール基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換され、ZおよびRは、請求項1に定義されているとおりである、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項7】
およびR3′は、独立に、H、ハロゲン、−CF、C1〜10アルキル基、C3〜14シクロアルキル基、−COH、−OC1〜10アルキル、−OCF、−C(CFOH、フェニルまたは5〜14員ヘテロアリール基である、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項8】
およびR3′の一方はHであり、他方は−CFである、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項9】
およびR3′は、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、C4〜14シクロアルキル基または4〜14員シクロヘテロアルキル基を形成し、前記C4〜14シクロアルキル基および前記4〜14員シクロへテロアルキル基のそれぞれは、任意に1〜4個の−Z−R基によって置換され、ZおよびRは、請求項1に定義されているとおりである、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項10】
前記化合物は、式Igを有し、
【化22】

式中、R、R、R、Rおよびnは、請求項1に定義されているとおりである、
請求項9に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項11】
は、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OH、−NH、−C(O)OH、−C(O)NH、−O(C1〜10アルキル)、−NH(C1〜10アルキル)、−N(C1〜10アルキル)、−C(O)O(C1〜10アルキル)、−C(O)NH(C1〜10アルキル)、−C(O)N(C1〜10アルキル)または任意に1〜4個の−Z−R基(式中、RおよびZは、請求項1に定義されているとおりである)によって置換されているC1〜10アルキル基である、請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項12】
は、H、−CN、−NO、ハロゲン、−OH、−NH、−C(O)OH、−C(O)NH、−O(C1〜10アルキル)、−NH(C1〜10アルキル)、−N(C1〜10アルキル)、−C(O)O(C1〜10アルキル)、−C(O)NH(C1〜10アルキル)、−C(O)N(C1〜10アルキル)または任意に1〜4個の−Z−R基(式中、RおよびZは、請求項1に定義されているとおりである)によって置換されているC1〜10アルキル基である、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項13】
前記化合物は、式IIaまたはIIbを有し、
【化23】

【化24】

式中、R、R、R3′、R、Rおよびnは、請求項1に定義されているとおりである、
請求項1から12のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項14】
nは0である、請求項1から13のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項15】
nは1である、請求項1から13のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項16】
前記化合物は、2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−8−(トリフルオロメチル)キノリン−4−カルボン酸、2−(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン−1−イル)−3−ヒドロキシ−7,8−ジメチルキノリン−4−カルボン酸、3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−7,8−ジメチル−キノリン−4−カルボン酸、3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−イソプロピル−キノリン−4−カルボン酸および3−ヒドロキシ−2−インダン−2−イル−8−トリフルオロメチル−キノリン−4−カルボン酸から選ばれる、請求項1に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル。
【請求項17】
治療として有効な量の請求項1から16のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステル、ならびに薬学的に許容されるキャリアおよび賦形剤を含む医薬品組成物。
【請求項18】
セレクチンによって媒介される、哺乳類における細胞内接着を抑制する方法であって、治療として有効な量の請求項1から16のいずれか1項に記載の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩、水和物またはエステルを前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項19】
哺乳類における疾患、疾患の合併症、障害、状態または望ましくない過程を治療する方法であって、請求項1から16のいずれか1項に記載の化合物を前記哺乳類に投与することを含み、前記疾患、障害、状態または望ましくない過程は、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、心筋梗塞、虚血再潅流、Reynauld症候群、炎症性腸疾患、骨関節炎、急性呼吸不全症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺炎症、遅延型過敏性反応、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、熱損傷、脳卒中、実験的アレルギー性脳脊髄炎、外傷二次性多臓器傷害症候群、好中球皮膚病(Sweet病)、糸球体腎炎、潰瘍性大腸炎、Crohn病、壊死性全腸炎、サイトカイン誘起毒性、歯肉炎、歯周炎、溶血性尿毒症症候群、乾せん症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状線炎、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、強膜炎、Grave病、免疫によって媒介される血液透析または白血球分離と関連した治療の副作用、顆粒球輸血関連症候群、深在静脈血栓症、血栓症後症候群、不安定狭心症、一過性脳虚血発作、末梢血管疾患、血栓症後症候群、静脈血栓塞栓症、癌と関連した転移、鎌状赤血球性貧血、臓器移植拒絶およびうっ血性心不全、から選ばれる方法。
【請求項20】
哺乳類における疾患、疾患の合併症、障害、状態または望ましくない過程を治療するための薬剤を作るための請求項1から16のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、前記疾患、障害、状態または望ましくない過程は、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、心筋梗塞、虚血再潅流、Reynauld症候群、炎症性腸疾患、骨関節炎、急性呼吸不全症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺炎症、遅延型過敏性反応、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、熱損傷、脳卒中、実験的アレルギー性脳脊髄炎、外傷二次性多臓器傷害症候群、好中球皮膚病(Sweet病)、糸球体腎炎、潰瘍性大腸炎、Crohn病、壊死性全腸炎、サイトカイン誘起毒性、歯肉炎、歯周炎、溶血性尿毒症症候群、乾せん症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状線炎、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、強膜炎、Grave病、免疫によって媒介される血液透析または白血球分離と関連した治療の副作用、顆粒球輸血関連症候群、深在静脈血栓症、血栓症後症候群、不安定狭心症、一過性脳虚血発作、末梢血管疾患、血栓症後症候群、静脈血栓塞栓症、癌と関連した転移、鎌状赤血球性貧血、臓器移植拒絶およびうっ血性心不全、から選ばれる使用。

【公表番号】特表2010−523498(P2010−523498A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501254(P2010−501254)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058630
【国際公開番号】WO2008/121805
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】