説明

センサへのガス供給ポンプ及びその方法

【課題】可動部品が無く、設計が単純であり、メンテナンスをあまり必要とせず、安価で、信頼性があり、及び通常は耐熱性及び耐腐食性があるポンプを提供する。
【解決手段】ガスサンプリング又はガス分析システムのためのポンプは、ガス不透過性の壁を有するポンプ本体と、本体内にある電気コイルとを含む。ポンプは、ガスセンサ及びサンプリング又は分析されるガスを収容するガス容積と直列に接続される。コイルに印加される交流又は直流のいずれかの振幅を変化させることによって、コイル温度すなわちポンプ内部のガス温度を変化させることができ、ポンプ内のガス温度が低下する時にポンプに「吸い込み」を起こさせ、ポンプ内のガス温度が上昇する時にポンプに「吐出」を起こさせ、これによってサンプリングのためにガス容積からのガスがセンサ内に周期的に引き込まれ、及びセンサから吐出されるのを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願)
本出願は、2003年5月21日出願の出願番号第10/442070の継続部分出願であり、その開示事項は引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
例えば可燃性ガス及び蒸気(本明細書では総称して「ガス」と呼ぶ)などのガスの存在及び濃度を検出するための幾つかの公知のシステムが存在する。1つのこのようなシステムでは、ガスは、触媒燃焼中の放熱速度を測定することに基づいて検出される。可燃性ガス検出器は、触媒センサ上でのガスサンプルの燃焼によって可燃性ガスを検出し測定する。触媒燃焼は、センサ内で例えば触媒を含浸させたシリカ又はアルミナのような加熱された多孔性基板の表面上で起こる。結果として得られる基板の温度上昇は、触媒燃焼期間中の発熱速度に比例し、埋め込み式抵抗温度検出器(RTD)の抵抗変化の検知によって電子的に測定される。他のタイプのシステムの詳細は、上記で確認される特許出願で説明される。
【0003】
ガス検出/分析の分野では、強制サンプリングの方が拡散型サンプリングに比べて機能的により好ましい。しかしながら、強制サンプリングシステムでは、センサ周囲のガス速度の変動により、誤ったセンサ読み取りを生じさせる可能性がある。一般的に、ガスセンサに対して2タイプのポンプが使用されてきた。ガスサンプルを転送するために、電力を機械的運動に変換する機械式ポンプがある。ベンチュリー型ポンプも使用され、より堅牢で信頼度が高いポンプである。
【特許文献1】米国特許第4,115,229号公報
【特許文献2】米国特許第4,169,769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベンチュリー型ポンプは、高圧圧縮空気源を必要とし、常に利用可能とは限らない。信頼性の問題では、ポンプから空気圧縮機に移ることが多い。一般に、信頼性及びコスト有効性の要件は、特に補助的機器に対する要件及び可動部品点数がかなりあることから、既存のガスサンプリングポンプを用いて適合させることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、ガスの化学分析又は組成を決定するため、制御環境からガスサンプルをガスサンプラー又は検出器に供給する方法及び装置が提供され、該方法及び装置は、可動部品が無く、設計が単純であり、メンテナンスをあまり必要とせず、安価で、信頼性があり、及び通常は耐熱性及び耐腐食性がある。前述のことを達成するために、ガスの容積と連通するセンサと、ガスのサンプルを容積からセンサに供給するポンプとを有するガスサンプリングシステムにおいて、該ポンプが、ガスに対して不透過性であり、センサ及びガス容積と連通するチャンバを定める密閉本体と、本体のチャンバ内にある加熱素子と、該加熱素子の温度を変化させるために加熱素子に接続され、これにより加熱素子の温度低下に応答してチャンバ内の温度を制御し、ガスのサンプルを容積からセンサに引き込むコントローラとを含む。加熱素子は、交流又は直流電源のいずれかから同様に給電可能な電気素子を含むのが好ましい。交流電力及び直流電力を選択できる機能は、設計を単純化し、コストを削減することができる。更に、加熱素子の熱容量は、密閉本体を定める壁の熱容量よりも小さく、少なくとも10倍ほど小さいのが好ましい。他の態様では、コントローラは、チャンバ内のガス温度が上昇又は下降する時にチャンバを定める本体の壁の温度が、例えば自然対流冷却によりほぼ一定を維持した状態で、チャンバ内のガス温度が上昇する時にガスをチャンバから吐出し、チャンバ内のガス温度が下降する時にガスをチャンバ内に引き込むように温度を制御する。加熱素子に対して壁の熱容量を増大させることによりこの要件が可能になる。
【0006】
本発明の別の態様では、ガスのサンプルをセンサに供給するためにガスの容積と連通するセンサを有するシステムにおいて、ガスに不透過性であり、センサと連通するチャンバを有する密閉本体を準備する段階と、チャンバ内の加熱素子と、該加熱素子を制御してチャンバ内のガス温度を変化させるためのコントローラとを準備する段階と、加熱素子の温度を制御してチャンバ内のガス温度を変化させる段階と、加熱素子の温度の低下に応答して、ガスのサンプルを容積からセンサ内に引き込む段階とを含む方法も提供される。本方法はまた、ガスをガスの容積からセンサ内に引き込み、及びガスをセンサから吐出するように、加熱素子の温度を循環的に制御してチャンバ内のガス温度を変化させる段階を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1には、多孔性又は他の保護エンクロージャ14内にあり且つ流通チャンバ16内に収容されたガスセンサ12を含み、ガスをサンプリングするための、全体が10で示されたシステムが図示されている。チャンバ16は、周囲の拡散ガスを透過せず、例えば10メートルまでのかなりの距離だけ周囲ガス容積30から隔てることができる。チャンバは、拡散制限通路32によって容積30に空気圧接続されたサンプルガス入口と、排出通路40とを有する。通路32は本質的に、周囲ガスが容積30からチャンバ16内に拡散するのを防止すると共に、対流又は強制サンプリングによるガスサンプルの引き込むことができる。本明細書で説明するシステム10は、可燃性ガスのサンプリング及び分析に関連して説明されるが、本システム及び特にそのポンプ34は、可燃性ガスのサンプリング及び分析に限定されず、多くの異なるタイプのガスのサンプリング及び分析に用いることができる点は理解されるであろう。
【0008】
チャンバ16内のセンサ12は、例えば、ホイーストンブリッジ41の抵抗ショルダ18として接続される触媒感知ビード及び基準ビードを有する従来型の触媒ビードセンサのような触媒可燃性センサとすることができる。ホイーストンブリッジ41は、電源20により給電される。ホイーストンブリッジ41の出力は、前置増幅器22によって増幅され、次いでマイクロプロセッサベースのコントローラ24によって読み取られる。コントローラは、電子的に記憶するためブリッジ出力からのデータを収集し、該データを処理して、ガスサンプル中に可燃性ガスが存在するか否かを分析し、或いは該ブリッジ41出力に基づいて可燃性ガスの濃度及び/又は組成を評価する。コントローラは、そのデータ処理の結果を液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ装置26及び警報装置などの検出器インターフェース装置28に出力する。
【0009】
センサチャンバ16は、サンプリングされるべきガスを有する可能性のある部屋、排気筒又は他の容積などの周囲ガス容積30に空気圧接続される。チャンバは、ガスが容積30からの拡散によってセンサ12に到達しないように周囲ガスから隔てられている。拡散防止通路32は、チャンバ16をガス容積30に接続する。通路32は、0.1mmから3mmの内径と10mmから10,000mmの長さとを有する管体とすることができる。より具体的には、通路32の寸法は、通路を通過する周囲ガス拡散流速をそのサンプリングポンプ34によって強制的に形成される対流流速よりも小さくなるまで減速されるように選択される。通路32は、可燃性ガスが外部ガス容積30から拡散するのを実質的に阻止する。チャンバ16内へ拡散ガスが流入するのを阻止することにより、センサがゼロ化される時にガスサンプルから可燃物を一時的に除去するプロセスが容易になる。拡散ガスの流れを最小にする通路32はまた、センサチャンバ16での火炎の逆火を防止する火炎防止装置としても機能することができる。ガスサンプルは、本質的に対流によって容積30から通路32を通過してセンサチャンバ16内に流入する。通路32はまた、チャンバ16を容積30の周囲ガスの流れの変動から効果的に隔離しながら、周囲ガスサンプルをセンサチャンバ16内に引き込む導管を提供する。
【0010】
検出器の容積30、通路32及びセンサチャンバ16は、ガスポンプ34に直列に空気圧接続される。ポンプ34は、制御された流量のサンプルガスを容積30から通路32を通じてセンサチャンバ16内に引き込む。ポンプは、コントローラ24からの制御信号に応答する「呼吸」ポンプであるのが好ましい。呼吸ポンプ34は、コントローラ24によって制御されるヒーターコイル38を収容する密閉ポンプチャンバ36とすることができる。チャンバ36内のガスを循環的に加熱及び冷却することによって、ガスがポンプチャンバ36から押し出され、及びポンプチャンバ36内に引き込まれる。呼吸ポンプ34は、機械的に単純であり、確実に動作し、長寿命である。呼吸ポンプ34は、可動部品がなく、最大約500℃までの周囲温度で動作することができる。
【0011】
チャンバ16内へのサンプルの流れは、サンプルが燃焼されて測定される間は遮断されるのが好ましい。サンプルガス流の遮断は、ポンプ34の制御によって実現できる。ポンプ34は、繰り返しサイクルにおいて、制御された小容積のガス(サンプルガス)を「吸入し」、次いでサンプルをパージする(「吐出する」)。
【0012】
ヒーターコイル38は、支持された12.5ミクロン(0.0005インチ)の薄いステンレス鋼箔から形成することができ、該ステンレス鋼箔は廉価で、市場から容易に入手可能である。この場合、一定温度まで加熱又は冷却するヒーター時間は通常、1秒未満から数秒となる。一例として、センサチャンバ16は、1cc(立法センチメータ)から10ccの容積であり、ポンプチャンバ36は、5ccから200ccの容積とすることができる。チャンバ及びポンプチャンバの容積は、ガス検出器の特定の設計用途に応じて異なる場合がある。
【0013】
拡散防止ポンプ通路40は、ポンプチャンバ36とセンサチャンバ16との間の流体接続を形成する。ポンプ通路40は、通路32と同じ又は類似の管材料から形成することができる。ポンプ通路40及び通路32の寸法は、通路32及びポンプ通路40を通過するガス拡散速度が平均ポンプ流量よりも遅くなるように選択されるのが好ましい。一例として、標準状態で内径(ID)1mmで500mmの長さを備える管体を通過する水素の拡散流量は、0.0001cm/秒に近いものとなる。この流量は、対流によるセンサチャンバ内へのガスサンプリングの平均速度の0.1cm/秒と比較すると十分小さい。水素以外のガスの拡散速度は更に小さい。実際、ゼロでない拡散速度は、通常は問題にならない程度に僅かな測定誤差しか持ち込まない。例えば、ソレノイドバルブのような公知の機械式遮断装置を使用することによって更に拡散を更に減少させるか又はゼロにすることもできることは明らかである。
【0014】
図2は、センサ12、エンクロージャ14及びチャンバ16を含む検出器10の一部の概略トップダウン断面図である。触媒感知ビード42及び基準ビード44は、エンクロージャ14及びチャンバ16内で対称的に配置されるのが好ましい。ビード42及び44は、エンクロージャ14を通過するガス流れ46に対して対称的に配置される。例えば、ビードは、チャンバ16を通過するガス流路46の軸の両側に互いに等間隔にあるものとすることができる。ビードは、両方のビードが、ほぼ同時にほぼ同一の流れ条件に曝されると共に、センサエンクロージャ14内で互いに空間的にオフセットしているように流路内で整列される。ビードは、類似のガス曝露条件を有するので、ガス流に対する感知ビードと基準ビードとの応答は、感知ビード42上での可燃性ガスの燃焼以外は同一になるはずである。
【0015】
ビード42、44の流路46における互いに対しての対称的な整列は、サンプルガス流れに可燃性ガスが存在しない時のどのような「オフセット」センサ信号をも最小にするはずである。ビードを平衡して位置決めすることで、チャンバ16を流れる最大で数cm/secの典型的な流量でガスサンプル中の可燃性ガスの20ppm未満に相当するまでオフセットが最小になることが実験により分かった。ビードが対称的に配置されない場合には、オフセットセンサ信号は、かなり大きくなる可能性がある。このような大きなオフセットセンサ信号は、触媒感知ビード及び基準ビードが方向及び流量を不規則に変化させる傾向がある流路内に配置されるので、従来型のセンサでは一般的なことである。ビードのRTDは、例えば、1つのビードが他のビードの上流側にある場合、又は2つのビードが実質的にガスサンプルの同じ流れ状態を受けない場合には、非対称的に応答することになる。
【0016】
図3に示すように、検出器10はまた、ポンプ通路40に位置付けられた「吹き抜け」電流制御電解槽50を含むことができる。電解槽は、センサチャンバ16とポンプ34との間に空気圧接続される。電解槽は、ポンプ通路40を通って流れるガスから周囲湿気を吸収可能なマトリックスを貫通して電流が通過する時に、水素ガス(及び酸素)を生成するように設計されている。適切な高速応答電解槽は公知であり、ソ連特許第1170277号に示されている。
【0017】
センサチャンバに流入するガスサンプル流量は、流れ誤差を最小限にするように相対的に低い状態にあるが、通常は数秒間でゼロから最大値まで急激な相対変化を示す。ガスサンプリングは、センサをゼロ化するために例えば5〜30秒の期間の間中断される。従って、外部からのガス混合物は、センサチャンバ16内に連続的ではなく相対的に少量の部分ずつサンプリングされる。各サンプル部分の可燃性ガスは、サンプル中の可燃性ガスの完全燃焼が実質的に完了するまで燃焼させる(及び感知ビードの温度上昇)のが好ましく、このときに初めてチャンバ16内のガス部分が置き換えられる。「呼吸」ポンプ34を出入りするガス流は、コイル温度が変化する時にだけ発生することは理解されるであろう。ポンプ加熱コイルが一定の温度に留まっている時には(例えば一定に加熱されている間)、「呼吸」は停止し、チャンバ16を通過するガスの流れは、事実上ゼロのままである。換言すれば、間欠的で比較的短い(例えば1秒)「吸い込み」と「吐出」バーストが、これよりも長い(例えば15秒)休止時間で分割される。
【0018】
図4〜図6は、検出器10の動作の例示的段階のプロセスチャートである。図4及び図5は、各々が自動的ゼロ化(Vr)段階を有する別の可燃性ガス測定サイクルを示す。図6は、検出器が汚染されたか否かをチェックする較正プロセスを示す。ステップ52、68で、ガス検出器10は、「呼吸」ポンプヒーターコイル38を加熱するために、例えば3ワットを給電することができる。コントローラ24は、一定の時間期間の間コイル38に給電することができる。給電時には、ヒーターコイルの温度は、例えば周囲温度より100℃から200℃の高い温度まで数秒で上昇する。ステップ54で、コイルがポンプチャンバ36内のガスを加熱する間に、加熱されたガスは、ポンプ通路40、センサチャンバ16、及び通路32を通って容積30内まで押し出され、検出器10のパージを行う。このパージ期間中及び特に本パージ期間の後(ガス流量がしばらくの間実質的にゼロにとどまっているとき)に、ステップ56で、ポンプ及び/又は通路40に存在する可能性のある可燃性ガスは、センサチャンバ16内に流入し、センサ触媒ビード42及び/又はヒーター38で完全に燃焼する。基準電圧測定プロセスは、ガスのサンプリングの直前(図4を参照)又はサンプリング後(図5を参照)に実行することができる。
【0019】
センサチャンバ内でパージ期間中に可燃性ガスの燃焼完了を促進する技術は、ステップ56で、ポンプチャンバ内のガスを燃焼させることである。例えば、触媒燃焼を促進させるためにPtの薄層をヒーターコイル38に施工することができる。コイル38が加熱されると、ポンプチャンバ36内の可燃性ガスは、ポンプ通路40を通過してセンサチャンバ16内に流入できるようになる前に実質的に燃焼が完了する。
【0020】
チャンバ16内へのガスの流入が遮断され、ステップ56で、センサ12が既にセンサチャンバ16内に存在する可燃性ガスを完全燃焼した後に、ステップ58で、ホイーストンブリッジの出力が測定される。測定値は、今後使用するために基準電圧Vrとしてコントローラのメモリ内にデジタル形式で格納される。「基準電圧」(Vr)は、チャンバ16内へのガスの流入が遮断され、チャンバ内の可燃性物質がほぼ完全に燃焼を終えた後での「可燃性物質ゼロ」のブリッジ電圧出力として定義することができる。或いは、基準電圧は、ガスが最初にサンプリングされた後に測定されてもよい。この場合、基準電圧Vrが正確に測定されるための適切な条件は、ステップ76で、ガスサンプルの流れが遮断された(「吸い込み」の終了)後、約30秒以上の時間間隔で得られる。
【0021】
コントローラ24は、ヒーター38をオフにし、通常は約1〜3秒を要して薄膜ヒーターコイル38を冷却することができる。ステップ60、72で、ヒーター38及びポンプチャンバ内のガスが冷却されている間に、ポンプは、部屋30からサンプルガスの一部を吸い込む。ポンプは、既知の一定量(通常は少量)のガスのサンプルを部屋容積30から拡散制限通路32を通ってセンサチャンバ16内に吸い込む。
【0022】
ステップ62、74で、吸い込まれたガスサンプル中の可燃性ガスは、触媒感知ビード42上で燃焼する。任意選択的に、ガスサンプルは、可燃性物質が実質的に完全に燃焼するまで(通常は約30秒間)チャンバ16内に留まらせることができる。ステップ76で、この時点でセンサ出力は基準電圧Vrとして測定される。
【0023】
ポンプの「吸い込み」中、すなわちヒーターコイル38が冷却しポンプチャンバ内のガスを冷却すると、ガスサンプルは、チャンバ内に制御された量で急速に引き込まれる。ガスサンプル中の可燃性物質が燃焼すると、感知ビード42の温度が一時的に上昇し、ビード抵抗の変化を生じさる。感知ビードの温度上昇により、ホイーストンブリッジが感知ビードの温度を示すブリッジ出力電圧Vを発生する。ステップ62で、ブリッジ出力電圧は、1回又はそれ以上のガスサンプル測定時間で測定される。
【0024】
ステップ64、78で、ガスサンプルがポンプによって「吸い込まれた」後で、コントローラは、1つ又はそれ以上のサンプル測定時間においてVrとVとの差分を求めることによって、サンプリングされたガス内の可燃性ガス濃度を検出する。この一連の電圧測定値の差分により、ステップ66、80に示すように、コントローラが、メモリに格納されたルックアップテーブルを使用することにより長期間に亘り(すなわち人手による較正を行うことなく数年間)サンプリングされたガス中の可燃性ガス濃度の正確で精密な読み取り値を生成することができる。ルックアップテーブルは、差分電圧測定値をサンプルガスの燃焼温度に変換する。
【0025】
周囲背景ガスの変動は、センサを頻繁にゼロ化することによって補正され、可燃性ガス濃度の差分センサ測定値には影響を及ぼさない。
【0026】
可燃性ガスを含む「吸い込まれた」サンプルがセンサチャンバ16内で燃焼し、チャンバ内でほぼ完全に燃焼が完了するまで、触媒センサビード温度は上昇し、その後低下することになる。検出器10の1つの実施形態の実施された実験に基づくと、ブリッジ出力の動的特性は、可燃性ガスのタイプ及び/又はサンプル中に同時に存在する2つ又はそれ以上の可燃性ガスの濃度比率に依存する。例えば、最大燃焼速度及びその後の最大ブリッジ出力電圧は、可燃性物質として水素だけを有するガスサンプルの「吸い込み」後の約5秒で実現され、COのみを有する場合は約9秒で実現される。このデータは、2秒未満のガスサンプル「吸い込み」時間に基づく。H/COガス混合物では、最大燃焼速度(最大ブリッジ出力電圧で示される)は、5秒から9秒の間隔で徐々にシフトし、混合物中のCO濃度対Hが相対的に増加する。センサチャンバ16内への新しいガスサンプルの急速な導入に起因するセンサ12の温度上昇速度は、可燃性ガス混合物の組成を示す。感知ビードの温度上昇速度は、例えば、「吸い込み」期間に続く幾つかの時間間隔でホイーストンブリッジ出力を測定することによって求めることができる。可燃性ガスの燃焼速度は、サンプル中の特定の可燃性ガスの拡散係数及び触媒温度に依存する。或いは他の場合、感知ビード42の温度上昇の振幅は、センサ検出下限から可燃性ガス濃度の数パーセントまでの範囲で可燃性ガスの濃度に比例する。
【0027】
一般に、可燃性ガスの異なる組成による感知ビードの加熱の振幅及び速度の変化は、コントローラ24に可燃性ガスのタイプ及び濃度を識別させるか、又は部屋容積30からセンサエンクロージャ14内に引き込まれるガスサンプル中の2つの可燃性ガスの比を評価させることにより解析することができる。
【0028】
及びCO濃度間の比並びにこれらのガスの合計の濃度を実質的に十分な精度で求めるのに簡易アルゴリズムを使用できることが実験的に分かった。この目的のために、3つのホイーストンブリッジ出力V、V12及びVrがガスサンプル「吸い込み」に続いて3つの異なる時間間隔でそれぞれ測定される。「吸い込み」の開始(その持続時間は約1秒)から電圧測定までの時間間隔(遅れ)は、V、V12及びVrについてそれぞれ5秒、12秒及び30秒である。差分V12−Vrは、CO及びHの濃度の合計(サンプルガス中でのこれらの比とは無関係)を表すことが分かっており、コントローラ24にルックアップテーブルを使用させることよってCO及びH可燃物質の濃度を求めるのに使用することができる。比(V−Vr)/(V12−V)は、一般に0.9から1.7の範囲にあり、実質的にCO/H比に線形依存し、比0.9が100%COに相当し、比1.7が100%Hに相当する。タイミング及び/又は(V−Vr)/(V12−V)比相当量は、特定のセンサタイプ及びチャンバ幾何形状に特有のものとすることができる。一般的には、予備較正を必要とするであろう。(V−Vr)/(V12−V)を求めることにより、CO及びHの濃度は、各ガスについて求めることができる。従って、CO及びHの個々の濃度レベル及び組み合わせ濃度レベルを単一の測定サイクルからセンサビードの同じ温度で求めることができる。差分電圧(V−Vr)及び(V12−V)は、ステップ64で測定される。ステップ66では、コントローラがCO対H比のルックアップテーブルを用いて比較し、線形近似を実行することで、CO及びHの全濃度(個々及び合計)を求めることができる。
【0029】
CO及びH濃度を個別に比較的高精度で求めるためには、1分以上の測定サイクルが必要とすることができる。可燃性ガスに関するガスサンプルの組成が既知であり、可燃性ガスの合計だけに関心がある場合には、これよりもかなり短い測定サイクルを使用してもよい。或いは、短い測定サイクルと長い測定サイクルとを、コントローラのソフトウエア初期化スイッチを用いて交互に切り替えてもよい。例えば「長い」測定サイクルの使用によって、コントローラは、最初にCO/H比を所与のプロセスで一度測定できる。続いて、コントローラは、測定されたCO/H比が一定の既知量である(最新の長いサイクルで測定された)と想定する「高速」測定サイクルを自動的に適用することができる。コントローラは、周期的に長いサイクルを実行し、CO/H比を再測定することができる。
【0030】
ガスサンプリング(「吸い込み」)間の比較的短い時間間隔では、実際にはセンサ信号全体の交互する部分である、測定サイクル内のセンサ出力の最大値と最小値の差分を測定することにより、可燃性物質の組み合わせ濃度を求めることができる。
【0031】
ステップ66で検出器は、各測定サイクル後に「ゼロ点」自動較正を自動的に実行する。自動ゼロ化方法は、検出器が測定サイクル内の感知ビードの温度変化を約0・002℃まで検出することにより、サンプルガス中の少量の可燃性物質を正確に測定することを可能にする。自動ゼロ化は、ステップ76に示すように「吸い込み」段階の終了時、又はステップ58のように「吐出」段階の終了直前に基準センサ出力(V)を測定することによって実行することができる。
【0032】
測定サイクルの間、検出器は、例えば0.1ccから1ccまでの少量ガスサンプルをセンサチャンバ16内に「吸い込む」ことができる。チャンバは約2ccの容積を有することができるので、少量ガスサンプルは、(ガスサンプルよりもかなり大きなチャンバ容積を有するチャンバに入るとき)希釈される。実験では、検出器は、空気中水素の「外部」H濃度を8%(2LEL)まで確実に測定した。
【0033】
感度の自動較正は、例えば数分毎に1回から数時間毎に1回まで周期的に実行することができる。周囲湿気型電解槽が使用される時には、再較正サイクル時間は、サンプルガスから戻される電解水を補給することによって制限される。通常、1回の較正に必要とされる5mmから10mmのHは、−30℃露(霜)点(DP)状態であっても理想的には約20分で周囲湿気によって補給される。DPが高い程、周囲湿気による補給が速くなる。現実に、特に低DPガスサンプルに対しては、補給に1時間を超える時間を要する場合がある。湿気制限は、燃焼排ガスのDP温度は通常は+50℃に近いので、燃焼排ガス分析に関しては問題とはならない。LELよりも十分に低い濃度でも空気中に水素又は炭化水素が存在する場合、センサ上での燃焼に起因してかなりの量の水分が生成されるであろう点に留意されたい。
【0034】
図6に示すように、感度較正は、ステップ82に示す通り、残留ガス部分をセンサチャンバ16を通して更に外側の部屋に出す正規の(第1の)ポンプ「吐出」で始まる。センサ出力(V)が、「吐出」開始後から所定の時間遅れで測定される(ステップ84)。正規「吸い込み」(ステップ86)後で且つ次の(第2の)「吐出」段階の開始前に、ステップ88で、所定量の電気を電解槽50に通電して、電解槽のエンクロージャ51内に一定量の水素を生成する。この目的のために、電解槽には、例えば1mAから10mAの範囲の一定の電流が、例えば1秒から10秒の一定の時間期間にわたり供給される。この水素生成の期間は、好ましくは、正規サンプルガス測定期間中のポンプの「吸い込み」及び「吐出」段階の間の期間よりも短い必要がある。例えば0.1mmから10mmまでの生成される比較的少量の水素は通常、較正には十分である。
【0035】
ステップ90で、ポンプは、第2回目の「吐出」を行う。第2の「吐出」期間内にポンプから電解槽チャンバ51を介してチャンバ16内に引き継がれるガス部分は、電解槽内で生成された一定量の水素を含む。ステップ92では、水素燃焼中に、好ましくは第2の「吐出」開始から第1の「吐出」の開始後のVと同じ時間遅れでセンサ出力(V)が測定される。この時間遅れは通常、2秒から10秒の範囲内にあり、最適値は、センサチャンバ内にサンプルとして導入される水素の最大燃焼速度の時間に相当し、典型的には6秒に近い。「吐出」ガス量が制御され(一定)であり、更に生成される水素量が繰り返し可能であることに起因して、較正プロセスは、例えば数年にわたる長期間内に十分な高精度と再現性で、例えば2、3時間毎に繰り返すことができる。電解槽は、電解水が周囲環境から補給されるので、何年もの間手作業のアフターサービスを必要としない場合が多い。
【0036】
ステップ94では、VとVとの差分は、コントローラ24によって評価され、メモリに格納されているこの差分の許容範囲と比較される。センサの感度が十分であれば、VとVとの差分は所定の範囲内にある。ステップ94で、V−V比較に基づいて、センサ感度及びセンサ調整に関する決定又は自動的アクションが実行される。V及びVは、Vrに関する差分信号として、或いは絶対値として測定することができる。いずれの場合も、Vrは、VからVを差し引く間に相殺される。
【0037】
図6に示すゼロ点感知方法の場合、センサの汚染は、各較正サイクル後の自動較正によって迅速に検出することができる。感度較正は、測定サイクルの「吐出」段階中に実行されるので、この感度較正は、検出器ユーザに実質的に透明であり、正規LEL測定を妨害又は中断しない。水素と並行して生成される比較的少量の酸素は、ガスサンプル中にかなり多量のOが通常既に存在するので、センサ較正精度に影響を与えない。
【0038】
本明細書で開示された検出器10は、長期安定性を改善し、較正要件を最小にするための各測定間の透明自動「ゼロ化」を行うこと、センサ汚染成分を含む可能性があるガスサンプルに対し感知ビードの曝露を低減すること、燃焼排ガス分析に特に適用することができるCO及びH濃度を別個に測定すること、±10ppm(百万分の一)に至るまでの検出能レベルで可燃性ガス濃度を測定すること、ガスタービンエンクロージャー内部などの周囲ガス流量が大きい用途での可燃性物質を測定すること、センサをサンプリング点から数メートルまでの遠隔位置に配置することができること、センサがオンラインにある間センサ感度を自動的に監視し調整すること、後続の測定のために迅速にセンサを回復させながら、LELレベルを大きく上回る可燃性物質の濃度を確実に測定することなどの特徴及び機能を含むことができる。
【0039】
本明細書で説明したゼロ点及び感度較正の双方は、LEL検出器の高速応答速度の要件を満足する他の方法の中断の無いガスサンプリング及び公知の標準ブリッジ出力測定とを用いて、センサでの補助的で相対的に希な(例えば数時間に1回)処置として使用されてもよい。
【0040】
本発明を現時点で最も実用的で好ましい実施形態と考えられるものに関して説明してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の精神及び範囲に含められる種々の修正物及均等構成を保護するものである点を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ガス容積からのガスをサンプリングして分析するシステムのガスポンプを断面で示す概略図。
【図2】図1に示すシステムの可燃性ガス検出器の触媒ビード及び基準ビードにおける流入エンクロージャを断面で示す概略図。
【図3】システムの第2の実施形態を断面で示す概略図。
【図4】ガスサンプリング及び較正プロセスのフローチャート。
【図5】ガスサンプリング及び較正プロセスのフローチャート。
【図6】ガスサンプリング及び較正プロセスのフローチャート。
【符号の説明】
【0042】
10 ガスサンプリングシステム
12 ガスセンサ
14 多孔性又は他の保護エンクロージャ
16 流通チャンバ、チャンバ
32 通路
34 ポンプ
41 ホイーストンブリッジ
18 抵抗ショルダ
20 電源
22 前置増幅器
24 コントローラ
26 ディスプレイ装置
28 検出器インターフェース装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの容積と連通したセンサと、ガスのサンプルをガス容積からセンサに供給するためのポンプとを有するガスサンプリングシステムにおいて、
前記ポンプが、
ガスに対して不透過性であり、前記センサ及び前記ガス容積と連通するチャンバを定める密閉本体と、
前記本体のチャンバ内にある加熱素子と、
前記加熱素子の温度を変化させるため前記加熱素子に接続され、これにより加熱素子の温度低下に応答して前記チャンバ内の温度を制御し、前記ガスのサンプルを前記容積から前記センサに引き込むコントローラと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記加熱素子が電気素子であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラが交流電源を含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記加熱素子の熱容量が、前記密閉本体を定める壁の熱容量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記加熱素子の熱容量が、前記密閉本体を定める壁の熱容量よりも少なくとも10倍小さいことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、前記チャンバ内のガス温度が上昇する時に前記チャンバからガスを吐出し、前記チャンバ内のガス温度が下降する時に前記チャンバにガスを引き込むように前記チャンバ内のガス温度を制御し、前記密閉本体の壁は、チャンバ内のガス温度が上昇又は下降する時に前記壁の温度がほぼ一定を維持するような熱容量を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記加熱素子が電気素子であり、前記加熱素子が、約12.5ミクロン以下の厚さの箔を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記ガス温度が低下した後にガス温度の変化を遮断して前記チャンバ内へのガスの移動を止めることにより、前記チャンバ内のガス温度を循環的に上昇及び降下させて、ガスを前記チャンバからそれぞれ吐出し、及び前記チャンバ内にガスを引き込むようにすることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
ガスの容積と連通するセンサを有するシステムにおいて、ガスのサンプルをセンサに供給する方法であって、
(a)前記ガスに不透過性であり、前記センサと連通するチャンバを有する密閉本体を準備する段階と、
(b)前記チャンバ内の加熱素子と、前記加熱素子を制御して前記チャンバ内のガス温度を変化させるためのコントローラとを準備する段階と、
(c)前記加熱素子の温度を制御して前記チャンバ内のガス温度を変化させる段階と、
(d)前記加熱素子の温度低下に応答して、ガスのサンプルを前記ガス容積からセンサ内に引き込む段階と、
を含む方法。
【請求項10】
前記加熱素子が、電気作動コイルであり、該コイルに直流又は交流のいずれかを供給する段階を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガスをガスの容積からセンサ内部に引き込んでガスをセンサから吐き出すためにチャンバ内のガス温度を変化させるように、前記加熱素子の温度を循環的に制御して、前記チャンバ内のガスの温度を変化させ、ガスを前記ガスの容積から前記センサに引き込み、及び前記センサからガスを吐出する段階を含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンバ内のガス温度をほぼ一定に維持するように目的でサイクルを中断し、前記センサが該センサ内に引き込まれるガスをサンプリングするのに十分な時間を与えるようにする段階を含む請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−518076(P2007−518076A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547398(P2006−547398)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/043407
【国際公開番号】WO2005/068968
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】