説明

センサー

本発明は、センサーおよび特に生物学的に重要な種の検出のためのセンサーに関する。特に、本発明は、サンプル中の少なくとも1種の干渉物の存在下で、検体を検出するための方法を提供する。この方法は、変換器および変換器と連通した受容体層を有するセンサーを用意する工程(ここで、受容体層は、検体を吸収するための材料を含む。);受容体層を、サンプルに曝す工程;受容体層を処理して、少なくとも1種の干渉物を選択的に除去する工程;そして変換器からの信号を測定する工程、の各工程を含む。この処理工程は、電位における変化、pHにおける変化または温度における変化を、受容体層に適用することによって、受容体層を洗浄することによって、受容体層を照射することによって、またはそれらの組み合わせをすることによって行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーおよび特に、生物学的に重要な種の検出のためのセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の健康管理は、種々の体液への化学的および生化学的分析試験の範囲に依存し、病気の診断および管理を可能にする。医療の進歩および技術的進歩は、過去数十年にかけて診断試験の範囲を大幅に拡大してきた。さらに、マイクロシステム技術およびナノ技術等の開発技術の出現とともに、人体への理解の深まりは、診断技術に大きな影響を与えることが期待される。
【0003】
ますます、病院における診断試験は、ポイントオブケアー(PoC)で行われ、特に、急速な応答が、最も重要な評価であり、そして治療上決定が素早くされなければならない状況において行われる。PoC試験における最近の進歩にも関わらず、幾つかのやむを得ないニーズがかなえられていない。現在入手可能な診断試験の多くは、酵素、抗体およびDNA等の高度な生物学的受容体の使用に依存する。それらの生物学的由来により、これらの生体分子は、典型的には、検出用途において使用される場合、多くの限界、例えば、乏しい再現性、製造の間の不安定性、pH、イオン強度、温度等の環境因子への感度、および殺菌工程に関係した問題に苦しむ。
【0004】
これらの問題を解決するための約束されたルートは、分子インプリントポリマー(MIP)等の合成ポリマー系受容体によって提供される。合成受容体は、生物学的受容体に関係する多くの不利益を回避する。例えば、分子インプリンティングは、一般的であり、そして高い親和性および高い特異性と、堅牢性および低い製造コストとを組み合わせた合成受容体を調製するための費用効率が高い技術である。さらに、MIP受容体材料は、広範な臨床関連化合物および診断マーカーのために、既に示されてきた。生物学的受容体と対照的に、合成受容体、そして特に、MIPは、典型的には、低いおよび高い、pH、圧力および温度において安定であり、安価であり、そして調製が容易であり、有機溶媒を受け入れ、実際に任意の検体ために調製でき、そして、マイクロ機械加工およびマイクロ製造技術と適合する。
【0005】
分子インプリンティングは、材料における(結合または触媒の)特異的な認識部位のテンプレート誘起形成方法として規定でき、テンプレートは、自己集成化メカニズムによって材料の構造的な構成部分の位置決めおよび方向付けを指示する。材料それ自身は、オリゴマー、ポリマー(例えば、有機MIPおよび無機をインプリントしたシリカゲル)または2次元の表面集成体(グラフト化された単層)であることができるであろう。
【0006】
例えば、受容体が用途の間の大幅な再生なしに使用される多くの用途において、いわゆる非共有結合性MIPの使用が一般的に、特に、検出用途において、好ましい。テンプレート/検体は、非共有結合性相互作用によって、これらの受容体材料に緩く結合しているだけなので、合成受容体から比較的容易に除去でき、そしてセンサーは新たな測定のために再生できる。一般的に、非共有結合性インプリントは、より容易に達成され、そしてより広範囲なテンプレートに適用される。
【0007】
非共有結合性MIPにおいて、ポリマー内に含まれるモノマーは、テンプレートと、非共有結合性相互作用、例えば、水素結合、静電相互作用、配位結合形成等を通して相互作用する。図1は、モノマー出発材料から、テンプレート、すなわち、ターゲット検体または、それらの構造的な類似体に特異性を有する結合部位を有するポリマーを生成し、そして続くテンプレートの溶出または抽出の、MIPの自己組織化の略図を示す。
【0008】
この技術は、小さい有機分子(例えば、グルコース)および薬物等の(1200Daまでの)小さい分子から、大きいタンパク質および細胞にわたる広範な化合物のために、MIPを成功裏に作り出すために用いられてきた。生じたポリマーは、堅牢、安価であり、そして、多くの場合、診断用途に好適である親和性および特異性を有する。MIPのこの高い特異性および安定性は、MIPに、センサー技術で使用するための酵素、抗体、および天然受容体に、期待できる代替手段を提供する。MIPおよび他の合成ポリマーに関するさらなる詳細については、国際公開第2005/075995号パンフレットを参照のこと。
【0009】
ターゲットに特異的であるが、選択的な化学的受容体はまた、ある程度、血液等の複雑なサンプル混合物中に存在する他の化合物と相互作用する。例えば、尿酸およびアスコルビン酸は、電気化学的に所与の化合物を検出しようとする場合、非常に多くの場合、強い相互作用として挙げられ;1つの具体的な例は、人間の血液サンプル中のグルコース測定である。測定への干渉の影響を低下させるために、妨害物(interferents)を撥ね付けることができる保護材料で認識素子を被覆し、したがって電気化学的変換器に到達することを妨げることが示唆されてきた(M.F.Jakewayら、Anal.Chem.1994、Nov15、66(22)、3882〜8)。したがって、このアプローチは、妨害物によって電気化学的信号の低下を防ぎ、そして検出され、測定される所望の信号が、検体の存在から生じことを可能にするが、しかし、センサーの感度を大幅に低下させ、そしてセンサーの応答時間を増加させる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、必要以上に感度を低下させることなく、選択性を高めるためことへの技術的な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、変換器および変換器と連通した受容体層を有するセンサーを用意する工程(この受容体層は、検体を吸収するための材料を含む);サンプルに受容体層を曝す工程;受容体層を処理して、少なくとも1種の干渉物を選択的に除去する工程;そして変換器からの信号を測定する工程、の各工程を含む、サンプルにおいて、少なくとも1種の妨害物の存在下で、検体を検出するための方法を提供する。
【0012】
これは、保護被膜の使用およびマイクロセンサー上に固定化された高い結合親和性合成受容体を使用した感度の損失なしに、複雑な混合物中に存在する1種の化合物の特異的な測定を可能にする検出方法を提供する。
【0013】
センサーが電気化学的センサーであり、そして受容体層が、本質的に良好な導電体である場合、導電性材料は、受容体層中に分散できる。これは、受容体層中の結合部位中の検体と大半の受容体層との間の電気伝導を促進でき、そしてそれ故に、検体と、変換器それ自身との間の電気伝導を促進できる。好適な導電性材料は、例えば、金属(例えば、金、銀、銅または白金)の導電性粒状固体、炭素(例えば、カーボンブラック、フラーレン、ナノチューブまたは球)の導電性粒状固体、および/または導電性有機材料の導電性粒状固体である。粒状固体は、粉末、ナノ粒子およびワイヤーを含むことができる。受容体層が、前駆体ポリマー組成物から生成されるポリマーを含む場合、導電性材料は、重合してポリマーを生成する前に、この組成物中で分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、ここで、以下の添付図面を参照して記載される:
【図1】図1は、MIPの自己組織化の略図を示し、そして最先端のものを参照して上記で説明され;
【図2】図2は、(図2A中の)MIPを組み込んだ本発明の方法を行うためのセンサーを示し、検体に加えて多くの障害物を含む複雑なサンプル(図2B)、続く洗浄工程(図2C)を示す;
【図3】図3は、3つのグラフ(A〜C)に、本発明の方法を使用した結果を示す;および
【図4】図4は、静脈内監視システムに組み込まれた本発明の方法を行うためのセンサーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2Aに示すように、センサー1は、サンプル2を提供されている。サンプル2は、典型的には流体サンプル、好ましくは液体、そして最も好ましくは、血液等の体液である。サンプルは、(図2において、正三角形で表わされた)検出される検体、および検体の特異的検出を妨げる場合がある1種または2種以上の(正方形、丸および直角三角形で表わされた)妨害物を含む点で、「複雑なサンプル」である。例えば、妨害物は、検体に比較して、センサー中でより高い信号レベルを生成する場合があり、そして/または著しく高いレベルで存在する場合があり、そして/または検体の活性を抑える場合がある。したがって、サンプル中のターゲット検体の存在を決定し、そして量を測定することが可能でない場合難しい。
【0016】
例は、患者の血液および妨害物として、アスコルビン酸および尿酸等の他の電気活性化合物を含有する複雑なサンプルにおける、麻酔薬物プロポフォールの電気化学的検出である。
【0017】
図2Aにおいて、センサー1は、閉じ込め構造3、受容体層4、基材5および変換器6を含む。そうしたセンサーは、国際公開第2005/075995号パンフレット中に、さらに詳細が記載されている。この閉じ込め構造3は、基材5の上に配置されている。閉じ込め構造3は、第1の内部空間を画定する第1の限定構造を含む。図2Aに示すように、変換器6および受容体層4が、第1の内部空間中に配置されている。この受容体層4は、変換器と連通するように、変換器6の上または近傍にある。好ましくは、第1の限定構造は連続的な構造であり、すなわち、壁が連続しており、そして第1の内部空間を充分に取り囲み、そして最も好ましくは、環状、すなわち「井戸」である。第1の限定構造を取り囲む、第2の内部空間を画定する第2の限定構造をまた、国際公開第2005/075995号パンフレット中に記載されたように提供できる。第1の限定構造および第2の限定構造は、好ましくはポリイミドからなる。センサー1は、サンプルを含み、そして、受容体層4にサンプルを向かわせる流路を画定する、チャネルをさらに含むことができる。
【0018】
検体に高い結合親和性および選択性を有し、そしてマイクロセンサーチップ上に固定化できる材料は、受容体層4として使用できる。例えば、受容体層4は、合成ポリマー、生体分子またはそれらの組み合わせを含むことができる、さらに好ましくは、受容体層は、イオノフェア、分子インプリントポリマー、酵素、抗原、インプリントされたシリカゲル、2次元の表面集成体(グラフト化された単層)またはそれらの組み合わせを含み、さらに好ましくは、受容体層4は、合成ポリマー、および最も好ましくは、MIPを含む。
【0019】
好適なMIPは、本明細書中で上記に記載され、そしてこれらのMIPのいずれかは、受容体層4に組み込まれることができる。検出される検体がプロポフォールである例として、MIPは、好ましくはN、N−ジエチルアミノメタクリル酸エチル(DEAEM)、アクリルアミド、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸(TFMAA)、イタコン酸およびエチレングリコールメタクリレートホスフェート(EGMP)の1種または2種以上のモノマーに基づくポリマーである。架橋剤は、好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、グリセロールジメタクリレート(GDMA)、トリアクリル酸メチル(TRIM)、ジビニルベンゼン(DVB)、(アシルアミドを架橋結合させるのに特に好適である)メチレンビスアクリルアミドおよびピペラジンビスアクリルアミド、フェニレンジアミン、ジブロモブタン、エピクロルヒドリン、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよびN、N'−メチレンビスアクリルアミドから選択される。モノマー:架橋剤の比率は、好ましくは、1:1〜1:15である。プロポフォール受容体のさらなる詳細については、国際公開第02/00737号パンフレットおよび国際公開第2006/120381号パンフレットを参照のこと。
【0020】
受容体層4は、変換器6と連通する。変換器6は、電流測定変換器、電位差測定変換器、伝導度測定変換器、(蛍光を含む)光学変換器、重量測定変換器、弾性表面波変換器、共鳴変換器、容量変換器または熱変換器であることができる。受容体層4は、検体および妨害物と結びつき、そしてこれらの材料の存在が、変換器によって検出される。検出のメカニズムは、変換器の性質によって変化するであろう。しかし、受容体層4は、変換器と連通して、検体および妨害物が、変換器によって検出できることが好ましい。例えば、変換器6が、電流測定変換器または伝導度測定変換器である場合、受容体層4は、変換器6と電子連通していることが好ましい。受容体層4は、変換器6の上に直接配置されていることができ、または受容体層4は、変換器6の近傍にあることができ、そして電子連通が、受容体層4と、変換器6との間の電解質または他の導電性材料の存在によって確立されている。変換器6が熱変換器である場合、受容体層4は、変換器6と熱連通する。これは、再び直接接触によることができ、または受容体層4は、変換器6の近傍にあることができ、そして熱伝達は、受容体層4と変換器6との間の熱伝導性材料の存在によって確立されている。
【0021】
変換器6それ自身は、好ましくは基材5の上に配置されている。変換器6は、基材5の表面上に配置でき、または変換器6は、基材5の中に配置できる。変換器6および受容体層4はまた、単一の実体を構成できる。例えば、電極材料は、好適な基材5の上にスクリーン印刷できる。(受容体の材料を形成する)ポリマーおよび(受容体層4内の変換器6および分散した導電性材料の両者を形成する)グラファイトを次に組み合わせることができ、そして電極材料上にスクリーン印刷できる。センサー1はまた、検体をさらに検出するための変換器および受容体層をさらに含むことができる。基材5は、好ましくは、平面基材である。基材5は、ケイ素(例えば、ケイ素ウェハー)、セラミック、ガラス、金属、プラスチック等からなることができる。あるいは、受容体層4それ自身は、基材として働くのに充分弾性的であることができ、そして別個の基材5は、必要でない。
【0022】
図2Aは、MIPとしての受容体層を示す。白抜きの三角は、検体の結合部位を表わす。結合部位は、検出される検体、または検体に近い構造的な類似体の存在下で、周知技術を使用して、MIPを合成することによって提供される(国際公開第2005/075995号パンフレットおよび国際公開第2006/120381号パンフレットを参照のこと)。
【0023】
MIPは検体または類似体でインプリントされたので、MIPは、妨害物よりさらに強くターゲット検体と相互作用するであろう。例えば、インプリント工程により、検体は、非特異的結合を介してMIPと相互作用だけをできる妨害物と比較して、MIPとさらに多い数の相互作用点を有することができる。
【0024】
図2Bに示すように、サンプル2は、受容体層4と接触させられる。この時に変換器6を作動させる場合、検体および妨害物の両方は、記録された信号に寄与するであろう。この信号の大きさは、(特異的および非特異的結合の両方を通した)ターゲット検体および妨害物の非特異的結合の存在によって生成された信号の合計に、典型的には等しい。
【0025】
次の工程において、受容体層4(例えばMIP)は、洗浄される。洗浄は、弱く結合した妨害物および非特異的結合によって弱く結合したターゲット検体の両者から受容体を急速に除去し(図2Cを参照のこと);特異的結合によって受容体に結合しているさらに強く結合した検体は、受容体材料から、さらにゆっくりと解放される。この洗浄工程は、受容体層4からの妨害物の除去で生じる変換器によって記録される信号のレベルの急速な落ち込みとなり、続いて受容体層4からの検体の遅い解放によって主に生じる、より長いテールを伴う。結合した検体が受容体層4から洗浄され続けるにつれて、このテールは続く。典型的なセンサーのトレースは、図3を参照して以下検討される。
【0026】
本発明のセンサーは、センサーチップを微細加工すること、そして国際公開第2005/075995号パンフレットおよび国際公開第2006/120381号パンフレットに記載した方法を使用して、変換器の上に受容体層を堆積させることによって、調製できる。少なくとも1つの干渉物の存在下で、興味のある検体を潜在的に含有するサンプルは、次に受容体層に導入でき、そして検体および妨害物は、受容体層に結合できる。結合した検体および妨害物を有する受容体層は、次に処理されて、少なくとも1つの干渉物を選択的に除去され。測定が異なる回数で変換器から得られ、そして結果が好適な検量線を参照して分析されて、サンプルに存在する検体の量を決定する。
【0027】
処理工程の開始に続くある時点の信号が記録される。この信号は、次に、サンプル中の検体の濃度の測定がされる。
【0028】
サンプル中における検体の濃度が分析されることは、処理工程が開始された後のある時点で、変換器を用いて記録された信号を測定することによって決定できる。図2C中に図式的に示したようにこの時点で記録された信号は、サンプルにおける検体濃度の指標となる。弱く結合した材料の当初の除去の後で、変換された信号は、サンプル中に存在する検体の濃度と関係する。
【0029】
したがって、このアプローチは、1種または2種以上の干渉物を含有する複雑なサンプル中における妨害物から検体の区別ならびに、検体の検出および濃度測定を可能にする。洗浄工程の開始と、信号の記録との間の時間の遅れは、例えば、使用されるセンサーのタイプ、受容体層の材料、受容体層の厚さおよびセンサーの形状による。したがって、特別な用途に適合するように設計できる。
【0030】
処理工程は、検体、妨害物および受容体層それ自身の性質によるであろう。好適な技術は、電位における変化、pHにおける変化または温度における変化を、受容体層に適用すること、受容体層を洗浄すること、受容体層を照射すること、またはそれらの組み合わせを適用することを含む。好ましくは、妨害物は、受容体層を洗浄することによって選択的に除去される。
【0031】
洗浄工程において使用される流体はまた、もちろん、検体、妨害物および受容体層の性質によるであろう。例えば、好ましい態様では、受容体層は、分子インプリントポリマーから生成でき、検体は、麻酔プロポフォールであり、そして妨害物は、尿酸およびアスコルビン酸である。この場合は、水性洗浄液体は、簡便なことに、このタイプのセンサーで使用される水性洗い流しまたは較正流体の1種、例えば、ホスフェートバッファー溶液であることができる。好適な検量流体の説明では、国際公開第99/62398号パンフレットを参照のこと。
【0032】
別の態様では、検体は、THF、アセトニトリルまたはアルコール等の有機溶媒を用いて洗浄することによって除去できる。同様に、結合した検体および存在する妨害物は、酸性または塩基性の洗浄液体で洗浄することによって区別できる。
【0033】
洗浄工程は、別個の洗浄液体を、受容体層に適用することによって、または受容体層と既に接触している流体の化学的組成を単に変更することによって、行うことができる。同様に、pHの変化は、異なるpHを有する洗浄液体を用いて洗浄すること、または酸または塩基を、受容体層と既に接触している流体に導入することによって達成できる。
【0034】
したがって、本発明の1つの特定の例において、この方法は、弱く結合した妨害物が除去された後で、受容体層の上の保護層の必要なしで、層中または層上に結合した検体の結合の存在を測定することによって、測定される検体からなる複雑な混合物におけるセンサーを作動させるために提供される。
【0035】
好ましくは、受容体層は、センサーの複数のまたは連続的な使用を可能にする検体のための充分な容量を有する。
【0036】
本発明の別の態様では、この方法は、処理工程の後に、受容体層から検体を解放させる工程をさらに含む。従って、受容体層4から妨害物を解放する初期の処理工程に、(すなわち、電位における変化、pHにおける変化または温度における変化を、受容体層に適用することによる、受容体層を洗浄することによる、受容体層を照射することによる、またはそれらの組み合わせをすること、および好ましくは、洗浄することによる)上記で説明したタイプの外部刺激を使用した再生工程が続く。この再生工程は、次により高い速度で受容体材料から検体を解放させ、検体によるより強い信号を生じさせる。このアプローチは、信号対ノイズ比、したがって測定の感度を改善させるために使用できる。第一工程における解放速度または解放された量のいずれかが低い状態で、受容体層から解放される検体の量の(突然の)増加を提供するのに特に使用される。上記に記載したプロポフォールセンサーの例において、プロポフォールのこの続く除去は、電位変化を使用して達成できる。
【0037】
プロポフォールはまた、同じ洗浄流体を用いて洗浄を続けることによって除去できる。
【0038】
本発明の特に好ましい態様において、センサー1は、受容体層としてMIPを用いた血液サンプル中におけるプロポフォールの測定に使用される。さらに好ましくは、MIPは、電流測定変換器上に固定化される。
【0039】
好ましくは、センサー1は、MIPによって解放されるプロポフォールを酸化させるために使用される。これは、例えば、変換器を電流測定変換器として作動させることによって、および電極と参照電極との間に0.35V以上の電圧を適用することによって、達成できる。この電圧を注意深く選択することによって、すなわち、プロポフォールを酸化できるレベルより丁度わずかに上で、より高い酸化電位を有する他の種の酸化を抑制できる。
【0040】
使用する場合、センサー1は、典型的にはサンプリング装置に組み込まれている。このサンプリング装置は、サンプリングポートに連結し、そして本明細書中に記載されたセンサーを組み込むハウジング、およびセンサーと電子連通する信号処理ユニットを含む。そうしたシステムの例が、図4に示されている。システムは、センサー1より上の血管内ライン9において、サンプリングポート8に連結したセンサー1を組み込んだハウジング7を備えている。サンプリング装置10、例えば、シリンジは、サンプリングポート8に連結している。使用者は、サンプリング装置10を使用して測定するために、センサー1にかけて流れる血液を引き抜くであろう。測定が完了した後で、血液は、患者に戻されて流れることができるか、または血液は、捨てるために流されることができる。別の態様では、センサーは、例えば、圧力センサー等の1種または2種以上の他のセンサーと共に、血管内の流れラインに組み込まれることができる。サンプルは、周期的に、規則正しく、要求に応じて、ユーザーの介入後に、のいずれかで、取ることができる。
【0041】
センサー1は、患者監視装置12に接続できる局所的なディスプレイおよび信号処理ユニット11に接続されている。センサー1はまた、当該技術分野で知られている技術を使用して、ハウジング7に電気的に接続されている。
【0042】
上記のシステムに加えて、センサーを、当業者に公知の様々な他の検出システムにおいて用いることができる。例えば、患者に直接接続されるよりむしろ、サンプルは、患者から取ることができ、そしてセンサーが統合されている分析機に、サンプル分析のために輸送できる。
【0043】
マーカー、物質または薬物の検出および測定を提供することに加えて、本発明のセンサーは、なされた分析の結果に基づく患者の治療のためのフィードバックを提供する。このフィードバックは、使用者に直接提供できるか、または患者への治療を管理する装置を含む閉ループ制御システムの一部であることができる。ある特定の例は、1種もしくは2種以上の体液または体の区画、例えば、血液または血液プラズマにおける麻酔薬の濃度を測定する、プロポフォール等の麻酔薬のためのセンサーであり、そしてこれらの測定に基づいて、直接に、または使用者へのいずれかで、麻酔薬の次の送達を、例えば、シリンジポンプを介した患者の送達速度を制御することによって、指示する。
【0044】
センサーはまた、患者の健康を特徴付ける他のパラメーターを監視する、病気の状態を示す特別なマーカーを監視するか、または患者の治療、例えば、血液のガス、pH、温度等を指示するシステムを用いて使用できる。
【実施例】
【0045】
本発明は、ここで、限定することを目的としない以下の例を参照して記載される。
【0046】
例1−センサーの調製
国際公開第2005/075995号パンフレットおよび国際公開第2006/120381号パンフレットに記載された方法を使用して、センサーチップを微細加工し、そして変換器上にMIPを固定化することによって、センサーを調製した。
【0047】
特に、MIP層の電極表面への堅牢な結合を確かにするために、そしてポリマー形成への制御を得るために、最初に電極に重合開始剤をしっかりと固定した。センサー表面にアミノ官能基を導入するために、きれいな酸化された白金電極を、乾燥トルエン中3%の3−アミノプロピルトリエトキシシランに3時間曝した。重合開始剤4、4'−アゾビス(シアノ吉草酸)を、20mMの4、4'−アゾビス(シアノ吉草酸)、17mMのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミドおよび28mMの1−ヒドロキシベンゾトリアゾールの混合物に誘導体化されたセンサーを曝すことによって、次にカルボジイミドカップリングを介してアミノ層に共有結合させた。この反応を暗所室温で5時間生じさせた。誘導体化された電極を、アセトンで充分にリンスして、あらゆる非共有結合開始剤を除去し、そして最終的に窒素流の中で乾燥させた。誘導体化されたセンサーを暗所に保ち、そして同日に使用した。
【0048】
1.55gのジメチルホルムアミドに溶解した、50mgのプロポフォール、210mgのDEAEM(モノマー)、1.3gのエチレングリコールジメタクリレート(架橋剤)からなる200μLの酸素のないMIP前重合混合物中に、誘導体化されたセンサーを浸けた。この容器を窒素で洗い流し、そして石英ガラスのスライドで最終的に密閉した。UV源に接続されたUV光ガイドを、次に石英スライドの上に置き、そして5分間作動させた。最終的に容器からセンサーを出し、そしてメタノールで洗浄し、5mLの0.1M HCl/20%メタノールで洗浄し、水でリンスし、そして5mLの0.1M NaOH/20%メタノールで洗浄し、水でリンスし、そして最終的に、圧縮空気の流れの中で風乾させた。原子間力顕微鏡で特徴付けられた典型的には45nm厚のインプリントポリマーフィルムが、得られた。
【0049】
例2−センサーの評価
妨害物である尿酸およびアスコルビン酸の存在下で、麻酔プロポフォールを含有するホスフェートで緩衝させた生理食塩水のサンプルを、MIPに導入し、そしてMIPと検体および妨害物を結合させた。結合した検体および妨害物を有するMIPを次に、ホスフェートで緩衝させた生理食塩水(140mM NaCl、10niMホスフェート)で洗浄した。時間を変えて電流測定変換器を使用して測定を行い、そして結果を図3に示す。
【0050】
図3Aは、(「0uM」とラベルした)プロポフォールのない単独の妨害物の信号、および(「135uM」とラベルした)135μMのプロポフォールの存在下の、妨害物を示す。図3Bは、弱く結合した妨害物の急速な除去による急激な信号の落ち込み、およびプロポフォールの存在下でのゆっくりとした信号の低下より詳細に示すグラフ(A)の領域を示す。この例では、洗浄工程の開始に続く30秒の信号を取って、サンプル中における検体、プロポフォールの濃度の測定をした。図3Cは、一定レベルの尿酸およびアスコルビン酸の存在下で、4.2、8.4、16.9、33.5、67.5および135μMのプロポフォール濃度のための直線の検量線を示す。従って、不明サンプル中のプロポフォールの濃度は、検量線を参照して決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中において、少なくとも1種の干渉物の存在下で、検体を検出するための方法であって、
変換器および該変換器と連通した受容体層を有するセンサーを用意する工程、
該受容体層は、該検体を吸収するための材料を含む;
該サンプルに該受容体層を曝す工程;
該受容体層を処理して、該少なくとも1種の干渉物を選択的に除去する工程;そして、
該変換器からの該信号を測定する工程
の各工程を含んで成る、方法。
【請求項2】
該センサーが、基材をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該変換器が、該基材上に配置されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該センサーが閉じ込め構造をさらに含み、該閉じ込め構造が、第1の内部空間を画定する第1の限定構造を含んでおり、そして該変換器および該受容体層が該第1の内部空間中に配置されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該第1の限定構造が、連続的な構造である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該第1の限定構造が、環状である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
該センサーが、該サンプルを含むためのチャネルをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該サンプルが、流体サンプルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該流体サンプルが、体液である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該受容体層が、合成ポリマーを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該受容体層が、分子インプリントポリマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該変換器が、電流測定変換器、電位差測定変換器、伝導度測定変換器、光学変換器、重量測定変換器、弾性表面波変換器、共鳴変換器、容量変換器または熱変換器である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該検体が、プロポフォールであり、該サンプルが、体液であり、そして該洗浄工程が、水性液体を用いて行われる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該受容体層が、該センサーの複数のまたは連続的な使用を可能にするための、該検体のための充分な容量を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該受容体層を処理して、該少なくとも1種の干渉物を選択的に除去することが、電位における変化、pHにおける変化または温度における変化を、該受容体層に適用することによって、該受容体層を洗浄することによって、該受容体層を照射することによって、またはそれらの組み合わせをすることによって行われる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
該受容体層を処理することが、該受容体層を洗浄することによる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該方法が、該受容体層を処理した後で、選択的に該少なくとも1種の干渉物を選択的に除去するために、該受容体層から該検体を解放する工程をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該検体が、電位における変化、pHにおける変化または温度における変化を、該受容体層に適用することによって、該受容体層を洗浄することによって、該受容体層を照射することによって、またはそれらの組み合わせをすることによって、解放される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該検体が、該受容体層を洗浄することによって、解放される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該検体が、プロポフォールであり、該サンプルが、体液であり、そして該検体が、電圧における変化を適用することによって解放される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
該受容体層が、受容体材料および分散した導電性材料を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520476(P2010−520476A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552263(P2009−552263)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000697
【国際公開番号】WO2008/107649
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507184063)クランフィールド ユニバーシティ (7)
【出願人】(507365813)スフィア メディカル リミティド (4)
【Fターム(参考)】