説明

センサ付軸受

【課題】樹脂製の有端環状体からなるセンサホルダを転がり軸受の外輪の周溝を利用して外輪に支持させ、周方向二分割の弾性反発部を形成したばね部材によりセンサホルダの固定強化を図ったセンサ付軸受において、上述のようにセンサホルダの固定を強化するばね力を増すことが可能なので、センサホルダのさらなる固定強化を図る。
【解決手段】ばね部材15を、センサホルダ7の有端環状溝14に嵌着する主部16と、有端環状溝14から周方向に突き出てセンサホルダ7の開放凹部18内に位置する両端部17,17とからなる角線材製の線細工ばねとし、ばね部材15の両端部17,17を、有端環状溝14に主部16を嵌着した状態で軸方向に重なり、片方の端部17をずらして重なりを解消すると突き合って撓む部分とし、撓んだ両端部17,17の弾性反発による力Fで主部16がセンサホルダ7を外径側に押す力が増し、これにより、センサホルダ7の固定を強化するばね力が増すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受と、回転角度検出、温度検出、振動検出等の適宜のセンサとを備えたセンサ付軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサ付軸受の代表的なものとして、モータ軸、自動車の車軸の回転速度制御、回転方向制御、回転角度制御等に利用される回転センサ付軸受がある。センサ付軸受は、転がり軸受を構成する一方の軌道輪を、モータハウジングや自動車の懸架装置のような静止部材側に嵌合される静止側軌道輪とし、他方の軌道輪を、回転軸側に装着される回転側軌道輪としている。静止側軌道輪は、配線やセンサ位置決めに好都合なことから、センサホルダを支持させるベースとして利用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
センサホルダとしては、成形、絶縁が容易に得られることから、熱可塑性樹脂等で射出成形された樹脂製のものが利用されている。転がり軸受の外輪を静止側軌道輪とした場合、センサホルダに、外輪の内径面に軸方向一方側から嵌め込む位置決め部を形成し、その位置決め部に、外輪の内径面に形成された周溝に入る突条を形成し、位置決め部の嵌め込みによりセンサホルダを外輪に対して径方向に位置決めし、突条と周溝の溝壁の係合によりセンサホルダを抜け止めし、これにより、センサホルダを外輪に支持させることが可能である。(例えば、特許文献2)。
【0004】
前掲の特許文献2に開示されたセンサホルダは、有端環状体からなり、その両端部を弾性的に遠近させることができる。位置決め部の嵌め込みの際にセンサホルダの両端部を接近させ、突条を外輪の周溝に入れ易くしている。さらに、センサホルダを外輪に支持させた状態でばね部材を圧縮状態に装着することにより、ばね部材の弾性反発でセンサホルダに両端部を遠ざける作用を成すばね力を与え、センサホルダの固定を強化するようにしている。
【0005】
例えば、ばね部材として、センサホルダの両端部間に巡る有端環状溝に嵌着可能なC形同心止め輪状のばね部材が採用されている。ばね部材の両端部を接近させた状態でセンサホルダの有端環状溝に嵌着すると、その嵌着されたばね部材が弾性反発でセンサホルダを外径側に押し、また、ばね部材のセンサホルダへの固定を図ることができる。
【0006】
また、突条を周溝に嵌め込んだ状態でセンサホルダの両端部間にばね部材を押し込んでセンサホルダに装着するようにしたものがある。このばね部材は、センサホルダの両端部間への押し込みで撓む両端の自由片部と、両自由片部間に連なる中間部とからなる。両自由片部の撓みに伴う弾性反発により、センサホルダの両端部を遠ざかる向きに押し、また、ばね部材のセンサホルダへの固定を図ることができる。
【0007】
前掲の特許文献2では、上述のばね部材のセンサホルダへの装着を容易にするため、ばね部材には、止め輪状や両自由片部による割り溝状のように、周方向二分割の割り構造の弾性反発部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−249545号公報
【特許文献2】特開2009−74687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示されたばね部材では、割り構造とした弾性反発部の両割り片の弾性反発性に頼ってセンサホルダの固定を強化している。割り片自体の弾性反発性を増すことに限界があるので、外輪の大径化に伴ってセンサホルダを大径化すると、センサホルダの固定強化性が不十分になる恐れがある。例えば、周方向二分割の弾性反発部を形成したC形同心止め輪状のばね部材では、その曲げ半径が大きくなるため、センサホルダの両端部側に与えられるばね力が低下する傾向がある。また、周方向二分割の弾性反発部として両自由片部を形成したばね部材は、射出成形部品なので、両自由片部の弾性反発性に乏しく、射出樹脂の選択内で弾性反発性を増すことしかできない。
【0010】
そこで、この発明の課題は、樹脂製の有端環状体からなるセンサホルダを転がり軸受の外輪の周溝を利用して外輪に支持させ、周方向二分割の弾性反発部を形成したばね部材によりセンサホルダの固定強化を図ったセンサ付軸受において、センサホルダのさらなる固定強化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するこの発明は、外輪を静止部材に装着する転がり軸受と、センサを保持する樹脂製のセンサホルダとを備え、前記センサホルダは、前記外輪の内径面に軸方向一方側から嵌め込む位置決め部を有し、前記位置決め部に、前記外輪の内径面に形成された周溝に入る突条を形成し、かつ前記位置決め部の嵌め込みにより前記センサホルダを前記外輪に支持させることが可能な有端環状体からなり、前記センサホルダを前記外輪に支持させた状態でばね部材を圧縮状態に装着することにより当該ばね部材の弾性反発で当該センサホルダの固定を強化するようにしたセンサ付軸受を前提とする。
【0012】
第1の手段として、ばね部材が前記センサホルダの両端部間に巡る有端環状溝に嵌着可能な有端環状体からなるセンサ付軸受において、前記ばね部材は、前記有端環状溝に嵌着する主部と、当該有端環状溝から周方向に突き出る両端部とからなり、前記ばね部材の両端部を、前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で突き合って撓む部分とし、当該撓んだ両端部の弾性反発により前記センサホルダの固定を強化するばね力が増す構成を採用することができる。
【0013】
第1の手段によれば、センサホルダの有端環状溝に嵌着したばね部材の主部の弾性反発でセンサホルダの固定を強化し、さらに、ばね部材の両端部の撓みでセンサホルダの固定を強化するばね力を増すことができる。
【0014】
より具体的には、前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で前記ばね部材の両端部が軸方向に重なり合い、その片方の端部をずらして両端部を同一軸方向位置にすると前記突き合って撓む状態になる構成を採用することができる。
【0015】
ばね部材の主部を嵌着した状態で軸方向に重なり合う両端部のうち、その片方の端部をずらして両端部を同一軸方向位置にすると、ずらす片方の端部に弾性反発力を蓄積しつつ、突き合い状態とすることができ、その突き合い状態では、ずらした端部の弾性反発を受ける残りの片方の端部が反対側に撓む。これら両端部の撓みに伴う弾性反発を利用してセンサホルダの固定を強化するばね力を増すことができる。
【0016】
前記ばね部材が線細工ばねからなり、前記センサホルダの軸方向一方側の側面に、前記ばね部材の両端部が露出する開放凹部を形成し、前記ばね部材の両端部を突き合い状態にすると前記開放凹部の底面で当該両端部が軸方向に支持される構成を採用することができる。
【0017】
前記ばね部材を線細工ばねとすれば、軸方向に重なるばね部材の端部をずらし易い。センサホルダの軸方向一方側の側面に、ばね部材の両端部が露出する開放凹部を形成すれば、ばね部材の主部をセンサホルダの有端環状溝に軸方向一方側から押し込みつつ、ばね部材の両端部を、開放凹部内に位置させ、開放凹部の底面で突き合い状態のばねの両端部を軸方向に支持することができる。この支持により、突き合い状態の両端部が軸方向に互い違いになることを防止することができる。また、突き合い状態の両端部が開放凹部内に位置するため、他の部分との接触を防止することができる。したがって、線細工ばねを採用しても、両端部の突き合いが不意に解除されることを防止できる。
【0018】
特に、前記ばね部材の材料が軸方向に沿った表面を有する角線材からなり、前記表面を、前記ばね部材の両端部の突き合い面とすれば、丸線材の線細工ばねと比して、ばね部材の両端部が突き合い状態から軸方向に滑って互い違いになり難い。
【0019】
第1の手段では、ばね部材の端部の突き合い状態による撓みを利用するので、この突き合い状態を確保する手段を採用することが好ましい。
【0020】
すなわち、前記センサホルダは、前記ばね部材を装着して前記外輪に固定した状態で当該ばね部材の両端部のうち、少なくとも一方の端部の軸方向変位を前記突き合いが維持される範囲に制限する端止め構造を有すると、有端環状体のばね部材の各端部が、端部近傍の撓りで突き合い相手先から外れることを防止できる。
【0021】
ここで、第1の手段において、ばね部材の端部の突き合い相手先は、ばね部材の端部同士でも、センサホルダでもよいから、採用する突き合い構造に応じて適宜の端止め構造を採用することができる。
【0022】
例えば、ばね部材の端部同士の突き合いを採用する場合、前記端止め構造は、前記センサホルダの一端部側で前記ばね部材の両端部を軸方向に支持可能に形成された開放凹部と、軸方向隙間を前記開放凹部から周方向に前記センサホルダの両端部間を亘って当該センサホルダの他端部側まで連なるように形成する対向壁部とから構成することができる。
【0023】
より具体的には、前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で前記開放凹部に軸方向一方側から前記ばね部材の両端部を挿入し、軸方向に重なり合った当該ばね部材の両端部の片方をずらして当該ばね部材の両端部を同一軸方向位置にすると、当該開放凹部及び当該有端環状溝に軸方向に支持された当該ばね部材の端部同士が前記突き合って撓む状態になり、この状態から当該ばね部材の全体を周方向に当該ばね部材の両端部が前記対向壁部へ近づく向きで回転させると、当該ばね部材の両端部が前記軸方向隙間に収まるようにすることができる。
【0024】
ばね部材の端部同士を突き合う状態にし、この状態を開放凹部や有端環状溝の支持で維持することにより、ばね部材の全体を周方向に回転させることができる。したがって、開放凹部に周方向に連なる軸方向隙間を対向壁部で形成しておけば、ばね部材の全体を回転させて両端部を軸方向隙間内に入れ込むことができる。ここで、ばね部材の回転操作を止めるだけで、対向壁部により、ばね部材の両端部の軸方向変位を制限することができる。
【0025】
例えば、ばね部材の端部とセンサホルダとの突き合いを採用する場合、前記端止め構造は、前記センサホルダの一端部側よりも前記有端環状溝の長さを短くした当該センサホルダの他端部側で当該有端環状溝の周方向延長上まで突き出た支持壁と、前記センサホルダの一端部側で前記ばね部材の一端部を軸方向に支持する第一開放凹部と、前記センサホルダの他端部側で軸方向隙間を形成するように突き出た対向壁部と、この対向壁部及び前記支持壁間の周方向中間部分に前記軸方向隙間と連なるように形成された第二開放凹部とから構成することができる。
【0026】
より具体的には、前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で前記第一開放凹部に軸方向一方側から前記ばね部材の一端部を挿入し、当該第一開放凹部に軸方向に支持された当該ばね部材の一端部を前記対向壁部と突き合う状態とし、この状態から当該ばね部材の他端部を軸方向一方側及び外径側へ撓らせて前記支持壁越しに前記軸方向隙間に入れ込み、さらに当該撓りを戻すと、当該ばね部材の他端部が当該軸方向隙間内で当該対向壁部と突き合うようにすることができる。
【0027】
先に対向壁部にばね部材の一端部を突き当てる作業は、第一開放凹部内で容易に行うことができる。有端環状溝の長さをセンサホルダの他端部側で短くしておけば、ばね部材の主部を嵌着し、かつ一端部を突き合い状態にしても、ばね部材の他端部を外径側へ撓らせて第二開放凹部から対向壁部を潜らせ、軸方向隙間内に外径側から入れ込み、対向壁部に突き合わせることが容易になる。単に有端環状溝を短くするだけだと、突き合い状態にした後、ばね部材の撓みで外れる懸念が生じる。有端環状溝の周方向延長上まで突き出た支持壁、対向壁部及び支持壁の周方向中間部分に軸方向隙間と連なる第二開放凹部を採用することにより、ばね部材の他端部を軸方向一方側及び外径側へ撓らせて支持壁越しに軸方向隙間に入れ込むことを容易にしつつ、突き合い状態では上記懸念を支持壁で防止することができる。ばね部材の他端部は、支持壁越しに有端環状溝の軸方向深さ程度で済む軸方向の撓ませ具合と比して、対向壁部を潜らせるために外径側へずっと大きく撓ませる必要がある。したがって、支持壁を追加してでも、ばね部材の他端部を外径側に撓らせ易くすることが好ましい。前記の支持壁越しの状態を解消する撓り戻しにより、ばね部材の両端部を対向壁部に周方向に押し付け、さらに突き合った撓み状態にすることができ、同時に、対向壁部による制限をすることもできる。
【0028】
第2の手段として、前記ばね部材は、前記センサホルダの両端部間への押し込みで撓む両端の自由片部と、両自由片部間に連なる中間部とからなるセンサ付軸受において、前記中間部を前記押し込みに伴って圧縮される屈曲ばね部とし、前記中間部の弾性反発力により前記センサホルダの固定を強化するばね力が増す構成を採用することができる。
【0029】
前記中間部を前記押し込みに伴って圧縮される屈曲ばね部とすれば、その中間部の弾性反発力が両自由片部に伝わるので、これを利用して両自由片部がセンサホルダの両端部を遠ざける向きに押す力をさらに強化し、これにより、センサホルダの固定を強化するばね力を増すことができる。
【0030】
例えば、ばね部材を側面視でM字状とすれば、中間部を屈曲ばね部とすることができる。
【0031】
ばね部材の撓んだ両自由片部がセンサホルダの両端部を押す力を強化すると、反作用でばね部材がセンサホルダに対して径方向にずり動き易くなる。この反作用はセンサホルダの両端部で受け止めることが可能だが、さらにばね部材を安定させることが好ましい。
【0032】
例えば、前記センサホルダに、前記ばね部材を軸方向一方側から押し込む開放凹部を形成し、前記自由片部の先端を、側面視で前記センサホルダの端部との接触域よりも周方向に突出させ、前記自由片部の先端と前記開放凹部の内壁との掛り合いで当該ばね部材を径方向に位置決めした構成を採用することができる。
【0033】
センサホルダにばね部材を軸方向一方側から押し込む開放凹部を形成すれば、センサホルダの両端部のうち開放凹部の内壁部分間に両自由片部を押し込むことができる。さらに、自由片部の先端を、側面視で前記センサホルダの端部との接触域よりも周方向に突出させ、その先端と開放凹部の内壁との掛り合いで当該ばね部材を径方向に位置決めすることができる。これにより、ばね部材をより安定させることができる。
【0034】
第3の手段として、前記ばね部材に、周方向二分割の弾性反発部を形成したセンサ付軸受において、前記ばね部材を両端から中央に向かって巻いた形状とし、前記押し込みに伴って両巻き部が前記センサホルダの両端部間で中央側に寄るように撓む弾性反発で前記センサホルダの固定を強化し、また、当該両巻き部の中央側が突き合って撓む弾性反発により前記センサホルダの固定を強化するばね力が増す構成を採用することができる。
【0035】
ばね部材を両端から中央に向って巻いた形状とすれば、ばね部材をセンサホルダの両端部間に押し込むことに伴って両巻き部がセンサホルダの両端部間で圧縮されるようにする
ことができる。これにより、両巻き部が前記センサホルダの両端部間で中央側に寄るように撓む弾性反発で前記センサホルダの固定を強化することができる。さらに両巻き部の中央側が突き合って撓むようにすれば、その中央側の撓みに伴う弾性反発力により両巻き部の反中央側が前記センサホルダの両端部を遠ざける向きに押す力を強化し、これにより、センサホルダの固定を強化するばね力を増すことができる。
【0036】
第4の手段として、前記ばね部材は、前記センサホルダの両端部間への押し込みで撓む両端の自由片部と、両自由片部間に連なる中間部とからなるセンサ付軸受において、前記ばね部材が板状の鋼製材料を用いた板ばねからなる構成を採用することができる。
【0037】
ばね部材が樹脂ばねからなる場合と比して、鋼製材料を用いた板ばねでは、鋼板の高剛性を利用して中間部を薄くし、その分、両自由片部を長くして弾性反発性を高めることができるので、両自由片部がセンサホルダの両端部を遠ざける向きに押す力を強化すること、すなわち、センサホルダの固定を強化するばね力を増すことができる。
【0038】
この発明は、回転角度センサの磁気エンコーダが嵌着された内輪を備え、前記センサを、前記回転角度センサの磁気センサとし、前記外輪を、内径面の両側にシール溝を形成された軌道輪とし、前記周溝を、軸方向一方側の前記シール溝とし、前記センサホルダと前記磁気エンコーダとで内径側に開放するラビリンスシールを形成したセンサ付軸受に適用することができる。外輪のシール溝をセンサホルダの固定に利用するため、標準的な外輪を流用することができる。軸方向一方側のシール部材を装着する代わりに、内輪に嵌着された磁気エンコーダとセンサホルダとでラビリンスシールを形成することで内部の保護を図ることができる。ラビリンスシールを内径側に開放するように形成するため、センサホルダの側面の径方向幅は、外輪のシール溝から磁気エンコーダの軸方向一方側までに至る。この径方向幅を利用して、ばね部材を押し込むための凹部の形成スペースを確保することができる。
【0039】
センサ付軸受を装置に組み込む際や軸受運転中に、温度変化による膨張と収縮や、振動、衝撃といった力をセンサホルダが受けることが起こり得る。上記第1〜第4の手段のいずれを採用するにしても、ばね部材を軸方向一方側からセンサホルダに挿入する構造においては、センサホルダからばね部材が正規の位置から軸方向一方側へ抜け出ると、脱落し、又は脱落に至らずともセンサホルダの固定補助が弱まるので、センサホルダの固定が不安定になり、センサの検出に影響し得る。このため、ばね部材がセンサホルダから抜けることを確実に防止し、センサホルダと外輪の固定を確実にすることが好ましい。
【0040】
例えば、前記センサホルダの軸方向一方側の側面に、当該センサホルダに軸方向一方側から突き当てた前記ばね部材に軸方向一方側から臨む抜け止め部を設けることができる。
【0041】
センサホルダに軸方向一方側から突き当てるばね部材の装着構造にすれば、軸方向他方側に向ってセンサホルダから抜けないようにすることができる。センサホルダの軸方向一方側の側面であれば、その突き当てたばね部材に軸方向一方側から臨む抜け止め部を、センサホルダ内側の構造、センサ配置、ばね部材の形態に制限されることなく、適宜の配置、形態で設けることができる。したがって、ばね部材をセンサホルダに対して確実に軸方向に位置決めすることができる。
【0042】
第1の手段を採用する場合、前記センサホルダの軸方向一方側の側面に、前記有端環状溝の軸方向他方側の溝側壁に軸方向一方側から突き当てた前記ばね部材に軸方向一方側から臨む抜け止め部を設けることができる。
【0043】
他の手段と比してばね部材が比較的に周方向に長くなる第1の手段においては、抜け止
め部を有端環状溝のセンサホルダの両端部間に周方向に亘って連続する軸方向一方側の溝側壁として設けることもできるが、ばね部材の両端部が軸方向に互い違いにならないようにばね部材を軸方向に抜け止めすることができる限り、周方向の複数個所にのみ抜け止め部を設けることができる。
【0044】
ここで、前記ばね部材を装着した状態で前記外輪に固定された前記センサホルダの両端部間の対向隙間と直径方向反対側に位置する周方向一箇所を中央としたセンサホルダの周方向両側に、それぞれ前記抜け止め部を設け、前記センサホルダの各周方向片側に、同側の端部から周方向に最も近い前記抜け止め部と、次に近い抜け止め部との間に周方向隙間を形成し、前記ばね部材を前記センサホルダの周方向両側の周方向隙間を通して前記有端環状溝に挿入可能としたことが好ましい。
【0045】
抜け止め部を設けると、有端環状溝に軸方向一方側の溝側壁を設けることになるので、抜け止め部を内径側からくぐらせる必要があり、軸方向一方側の溝側壁のない完全に軸方向一方側に開放された有端環状溝にばね部材を嵌着する場合と比して、余分にばね部材を縮径させることを要する。上述のように、センサホルダの各周方向片側に、同側の端部から周方向に最も近い前記抜け止め部と、次に近い抜け止め部との間に周方向隙間を形成し、ばね部材をセンサホルダの周方向両側の周方向隙間を通して有端環状溝に挿入するようにすれば、最も近い抜け止め部が周方向両側に亘って連続する場合と比して、ばね部材を縮径させる程度が軽くなるので、抜け止め部を追加しつつ、ばね部材の嵌着を容易に行うことができる。
【0046】
より具体的には、前記抜け止め部を、前記中央と、各周方向片側の前記中央から120°進んだ一箇所とに設けるとよい。
【0047】
ばね部材の嵌着を容易にしつつ、3箇所の抜け止め部でばね部材を周方向全域でバランスよく抜け止めすることができる。
【0048】
前記抜け止め部を前記センサホルダに一体成形することが好ましい。
【0049】
抜け止め部をセンサホルダに一体成形すれば、抜け止め部を別途に用意してセンサホルダを組み立てる手間がない。なお、抜け止め部の材料を樹脂以外にするため、別体の抜け止め部を固定したセンサホルダとすることもできる。
【0050】
前記センサホルダをポリアミドイミド樹脂を主材料に用いて射出成形することができる。
【0051】
ポリアミドイミド樹脂は、射出成形用の樹脂の中でも温度クリープが小さい部類なので、センサホルダの温度クリープによるばね部材の脱落防止を図るのに好適である。
【0052】
上記第1〜第4の手段においては、回転センサの複数の磁気センサを含む集積回路からなる前記センサを採用することができる。
【0053】
回転センサを採用する場合、例えば、前記磁気センサが、前記転がり軸受の内輪に取り付けた磁気エンコーダと径方向に対向するように配置することができる。
【0054】
磁気ギャップが径方向に設定されるので、磁気センサが磁気エンコーダの回転振れの影響を磁気検出において受け難くすることができる。
【0055】
ばね部材のセンサホルダからの軸方向への抜け出しを防止できるので、センサホルダが
軸方向に変位して磁気センサと磁気エンコーダ間の正規の配置関係が狂うことも防止できる。
【0056】
集積回路からなるセンサを採用する場合、前記センサ及びコネクタを表面実装した回路基板を備え、前記回路基板を前記センサホルダの凹部に挿入することにより、回路基板をセンサホルダに対して位置決めすることができる。
【0057】
前記コネクタを径方向から配線するように設けることができる。
【0058】
配線をセンサホルダから径方向に取り出すので、ばね部材をセンサホルダの軸方向一方側から挿入する際に配線が邪魔になることを防止できる。
【発明の効果】
【0059】
この発明は、樹脂製の有端環状体からなるセンサホルダを転がり軸受の外輪の周溝を利用して外輪に支持させ、周方向二分割の弾性反発部を形成したばね部材によりセンサホルダの固定強化を図ったセンサ付軸受において、上述のようにセンサホルダの固定を強化するばね力を増すことが可能なので、センサホルダのさらなる固定強化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係るセンサ付軸受を、軸受中心軸及びセンサホルダの周方向長さ二等分位置を含む平面の切断面で示す断面図
【図2】図1のセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図3】(a)は、第1実施形態に係るばね部材の自然状態の側面図、(b)は、前記(a)のばね部材の主部をセンサホルダの有端環状溝に嵌着した状態におけるばね部材の両端部付近の拡大側面図
【図4】第2実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図5】第3実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図6】第4実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図7】第5実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図8】第6実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図9】第7実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図10】(a)は、第8実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図、(b)は、第8実施形態に係るセンサ付軸受の要部を、軸受中心軸及びセンサホルダの周方向長さ二等分位置を含む平面上のA−A線の断面図
【図11】(a)は、第9実施形態に係るセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図、(b)は、第9実施形態に係るセンサ付軸受の開放凹部を、外径側から正対する視線Bで示す平面図
【図12】第10実施形態に係るセンサ付軸受を、軸受中心軸及びセンサホルダの周方向長さ二等分位置を含む平面の切断面で示す断面図
【図13】図12のセンサ付軸受の軸方向一方側の側面図
【図14】(a)は、第10実施形態のセンサホルダの軸方向他方側の側面図、(b)は、図12と同じ切断面で示す断面図、(c)は、第10実施形態のセンサホルダの軸方向一方側の側面図
【図15】(a)は、第11実施形態のセンサホルダにばね部材を装着する途中の段階を軸方向一方側から示す側面図、(b)は、第11実施形態のばね部材の装着を終えた状態のセンサホルダを軸方向一方側から示す側面図
【図16】(a)は、図15(b)の端止め構造の拡大図、(b)は(a)の下面図、(c)は(b)中のc−c線の断面図
【図17】(a)は、第12実施形態のセンサホルダにばね部材を装着する途中の段階を軸方向一方側から示す側面図、(b)は、第12実施形態のばね部材の装着を終えた状態のセンサホルダを軸方向一方側から示す側面図
【図18】(a)は、図17(b)の端止め構造の部分拡大図、(b)は、図17(a)の端止め構造の拡大下面図、(c)は図16(b)中のc−c線に相当する切断面の断面図
【図19】図17(a)の端止め構造の拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
第1実施形態に係るセンサ付軸受は、図1、図2に示すように、転がり軸受1に回転センサを備えたものである。転がり軸受1は、静止部材(図示省略)に装着する外輪2と、回転軸(図示省略)に装着する内輪3とを備える。外輪2は、内径面の両側にシール溝4
,4を形成した軌道輪からなる。シール溝4には、シール5が嵌着可能となっている。センサ6を保持する樹脂製のセンサホルダ7は、外輪2に装着されている。センサ6は、磁気式回転センサの磁気センサからなる。ここで、「回転センサ」とは、回転角度、回転速度、回転方向の少なくとも1種の検出信号を電気信号として出力できるものをいう。磁気式回転センサの磁気エンコーダ8は、内輪3の外径面に軸方向一方側から装着されている。磁気エンコーダ8は、無端円環状であって、その周方向にN極とS極が交互に並ぶゴム磁石のエンコーダ部と、芯金とからなるものが利用されている。ゴム磁石を芯金に加硫接着させる場合、ゴム材としてNBR、HNBR、フッ素系、シリコーン系の材料を使用することができる。なお、「軸方向」とは、転がり軸受1の軸受中心軸に沿った方向をいい、「径方向」とは、当該軸受中心軸に直交する方向をいい、「周方向」とは、当該軸受中心軸回りの円周方向をいう。
【0062】
センサホルダ7は、外輪2の内径面に軸方向一方側から嵌め込む位置決め部9を有する。位置決め部9には、外輪2の内径面に形成された周溝であるシール溝4に入る突条10が形成されている。センサ6を保持するセンサホルダ7は、位置決め部9の嵌め込みにより外輪2に支持させることが可能な有端環状体からなる。センサホルダ7は、部品点数を少なくするため、射出成形により一部品に形成されている。
【0063】
センサホルダ7は、磁気エンコーダ8に軸方向一方側から臨む側面壁11を有する。センサホルダ7と磁気エンコーダ8とで径方向に対向する磁気ギャップから内径側に開放するラビリンスシールを形成するようになっている。回路基板12にセンサ6、入出力線を接続するためのコネクタ13を実装した状態で、センサホルダ7の凹部に回路基板12を挿入すると、センサ6を所定の位置に配置することができるようになっている。センサ6を樹脂封止すると、センサホルダ7がセンサ6を保持する状態になる。センサ6のセンサホルダ7に対する位置決めは、センサホルダ7を外輪2に取り付けると、内輪3に取り付けた磁気エンコーダ8のエンコーダ部と径方向に対向するように定められている。
【0064】
なお、センサ6の種類はセンサホルダ7に保持させることができる限り、特に限定されない。センサ6等を回路基板12に表面実装した例に限らず、配線や各素子は回路基板に直接半田付けすることもできる。また、磁気式回転センサは、複数の磁気センサを別個に装着するものでもよいが、実施形態のように複数の磁気センサ等を含む集積回路にアレイ化したものを採用する方が組み立ての手間が少なくなる。集積回路に逓倍回路を内蔵している方がセンサ6の分解能が高くなるため、センサ付軸受の適用範囲が広くなる。センサ6、回路基板12等の保持や封止には、熱硬化性樹脂、シリコーンゴム、ホットメルト等を適宜に用いることができる。
【0065】
センサホルダ7の側面壁11には、センサホルダ7の両端部19,19間に巡る有端環状溝14が周方向に形成されている。有端環状溝14は、軸方向一方側に開放されている。センサホルダ7を外輪2に支持させた状態で、図3(a)に示すばね部材15を図2に示すように圧縮状態に装着することができる。
【0066】
図2、図3(a)に示すように、ばね部材15は、有端環状溝14に嵌着可能な有端環状体からなる。ばね部材15は、有端環状溝14に嵌着するC形同心止め輪状の主部16と、有端環状溝14から周方向に突き出る両端部17,17とからなる。主部16は、周方向に形成されており、両端部17,17は、主部16よりも外径側に位置する部分を有する。この部分は、自然状態の側面視で円弧状に曲がっている。
【0067】
センサホルダ7の軸方向一方側の側面には、ばね部材15の両端部17,17が露出する開放凹部18が形成されている。
【0068】
図3(a)に示す自然状態のばね部材15を、図3(b)に示すように両端部17,17の円弧状部分が軸方向に重なるように変形させて主部16を圧縮状態にし、有端環状溝14に軸方向一方側から嵌め込むと、圧縮の残る主部16が弾性反発し、有端環状溝14の外径側の溝壁を外径側に押す。この状態では、図2に示すように、主部16が溝壁との摩擦係合によりばね部材が有端環状溝14に装着される。また、圧縮の残る主部16の弾性反発力がセンサホルダ7を外径側に押すため、センサホルダ7の両端部19,19を遠ざける向きの力がセンサホルダ7に与えられる。したがって、主部16の弾性反発でセンサホルダ7の固定を強化することができる。
【0069】
図3(b)に示すように、有端環状溝14に主部16を嵌着した状態でばね部材の両端部17,17の円弧状部分は、なお軸方向に重なり合う。その片方の端部17をずらして両端部17,17を同一軸方向位置にすると、図2に示すように、両端部17,17の円弧状部分が突き合って撓む状態になる。撓んだ両端部17,17の弾性反発により、両端部17,17を結ぶ弦方向にばね力F,Fが発生する。このばね力F,Fは、両端部17,17を遠ざける向きの力なので、主部16が外径側に押す力が強まる。したがって、センサホルダ7の固定を強化するばね力が増す。
【0070】
第1実施形態は、従来と同じくC形同心止め輪状の主部16でセンサホルダ7の固定を強化するだけでなく、さらに、ばね部材の両端部17,17の撓みに伴う弾性反発でもセンサホルダ7の固定を強化するばね力が増すため、さらなるセンサホルダ7の固定強化を図ることができる。
【0071】
図2、図3(a)に示すように、ばね部材15は、線細工ばねからなる。ばね部材15の材料は、主部16の断面形状から明らかなように、軸方向に沿った表面を有する角線材からなる。ばね部材15の両端部17,17を外径側に曲げているので、前記表面を、両端部17,17の突き合い面とすることができる。両端部17,17の突き合い面が軸方向に沿うため、丸線材製と比して突き合い状態から軸方向に互い違いになり難い。突き合い位置は、センサホルダ7の両端部19,19を均等に押すため、軸受中心軸及びセンサホルダ7の周方向長さ二等分位置を含む平面上に設定することが好ましい。
【0072】
上述のようにばね部材の両端部17,17を突き合い状態にすると、開放凹部18の軸方向に直交する平面状の底面で両端部17,17が軸方向に支持される。軸方向に段差をもって凹んだ開放凹部18内に位置するため、突き合い状態の両端部17,17が軸方向に互い違いになることを防止することができる。また、突き合い状態の両端部17,17が開放凹部18内に位置するため、他の部分との接触を防止することができる。
【0073】
なお、ばね部材15は、丸線材製としたり、板ばねにしたりすることができる。両端部17,17は、外径側に曲げた態様に限定されず、撓みによる弾性反発で主部16の一端側と他端側とが外径側に押す力が強くなる向きに力が発生する限り、適宜の形態にすることができる。両端部17,17の突き合い面を、自然状態の側面視で反転対称性をもった円弧状とすれば、突き合い状態の両端部17,17の径方向ずれ合いを許容することができる。線細工ばねのばね部材15の両端部17,17を第1実施形態のように外径側又は内径側に突出させて円弧状に曲げれば、スナップリングプライヤを用いた挟持も行い易い。
【0074】
この発明の第2実施形態に係るセンサ付軸受を図4に基づいて説明する。なお、以下では、上記第1実施形態との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成の説明を省略する。図示のように、第2実施形態は、センサホルダ21を外輪に支持させた状態で、センサホルダ21の開放凹部22内にばね部材23を圧縮状態に装着することにより、ばね部材23の弾性反発でセンサホルダ21の両端部24,24を遠ざける向きに押し、センサホ
ルダ21の固定を強化することができるようにしたものである。
【0075】
ばね部材23は、センサホルダ21の両端部24,24間への押し込みで撓む両端の自
由片部25,25と、両自由片部25,25間に連なる中間部26とからなる。自由片部25は、押し込み当初からばね部材23の他の部分と接触せずに両自由片部25,25が接
近する側へ自由に撓むことが可能な部分からなる。ばね部材23は、センサホルダ21の両端部24,24のうち、開放凹部22の内壁の周方向端部分の間に押し込まれる。中間
部26は、前記押し込みに伴って圧縮される屈曲ばね部とされている。中間部26の屈曲箇所が一箇所のため、ばね部材23は、側面視でM字状とされている。
【0076】
図中に二点鎖線でばね部材23の自然状態の側面視における外形の概要を示す。実線の押し込み状態のばね部材23と二点鎖線の自然状態との対比から明らかなように、ばね部材23を開放凹部22内の両端部24、24の部分に押し込むと、両端の自由片部25,25が接近する側へ撓むので、その弾性反発により両端部24,24を遠ざける向きに押
す力が発生し、センサホルダ21の固定を強化することができる。ばね部材23は、両自由片部25,25とセンサホルダ21の両端部24,24との摩擦係合により装着される
。さらに、屈曲ばね部である中間部26もV字両片部が接近する側に撓んだ圧縮状態になり、その弾性反発で両自由片部25,25が両端部24,24部分を遠ざける向きに押す力が強化される。その結果、センサホルダ21の固定を強化するばね力F,Fが増す。
【0077】
第2実施形態は、従来の周方向二分割の弾性反発部に相当するばね部材23の両自由片部25,25によるセンサホルダ21の固定強化に加え、さらに、屈曲ばね部である中間部26の撓みに伴う弾性反発でもセンサホルダ21の固定を強化するばね力が増すため、さらなるセンサホルダ21の固定強化を図ることができる。
【0078】
なお、上記「M字状」とは、両端の自由片部25,25間に連なる中間部26に一箇所の屈曲部を形成したことをいい、両自由片部25,25の先端が内径側又は外径側のいずれを向くかは問わず、自由片部25が先端に向って周方向に傾いたり、自由片部25の先端域や長さ方向中間域が曲がったりした態様をも含む意味である。
【0079】
例えば、M字状のばね部材23を両自由片部25,25の先端が内径側を向くように押し込む第2実施形態とは逆向きにした変更例として、第3実施形態を図5に示す。図示のように、第3実施形態は、センサホルダ21の開放凹部22内に、M字状のばね部材31を両自由片部32,32の先端が外径側を向くように押し込むことができる。中間部33の周方向間隔を第2実施形態よりも狭め、中間部33を内径側に寄せて配置し易くしている。センサホルダ21の両端部24,24部分の周方向間隔は、外径側に進むに連れて次第に広がる。第2実施形態と同程度のばね力F,Fを確保するため、自由片部32は、自然状態の側面視で先端に向って進むに連れて両自由片部25,25間の周方向間隔が広がるように傾けて形成されている。
【0080】
センサホルダ21の両端部24,24の周方向間隔は、外径側に進むに連れて次第に狭まるように形成することもできる。
【0081】
例えば、第4実施形態を図6に示すように、センサホルダ41の開放凹部42内に、ばね部材43を装着するに際し、外径側に進むに連れて次第に狭まるセンサホルダ41の両端部44,44間に押し込むようになっている。ばね部材43は、自然状態で第2実施形態と同様のM字状である。両自由片部45,45の先端が外径側を向くように押し込むため、センサホルダ41の両端部44,44が外径側に進むに連れて次第に狭まる分、第2実施形態と比して、両自由片部45,45が大きく撓み、中間部46の圧縮は緩くなり、総じて同程度のばね力F,Fを確保することができる。
【0082】
なお、第5実施形態を図7に示すように、センサホルダ41の両端部44,44間にばね部材51を、両自由片部52,52の先端が内径側を向くように押し込むこともできる。自由片部52は、両端部44,44の周方向間隔変化に対応して第4実施形態よりも傾けて形成されている。中間部53は、両端部44,44の周方向間隔変化に対応して第4実施形態よりも周方向に狭く形成されている。総じて得られるばね力F,Fは、同程度に確保されている。
【0083】
第6実施形態を図8に示す。図示のように、第6実施形態は、センサホルダ61の開放凹部62内にM字状のばね部材63を装着する点で上記第2〜第5実施形態と共通する。第6実施形態は、センサホルダ61の両端部64,64間の部分に押し込む両自由片部65,65の先端を周方向間隔が広がる向きに曲げることにより、自由片部65の先端を、側面視でセンサホルダ61の端部との接触域である開放凹部62内の端部64よりも周方向に突出させている点で相違する。自由片部65の先端の突出に対応して、開放凹部62の内壁の周方向端部のうち、自由片部65の先端と軸方向一方側に臨む位置上には、周方向間隔が広がる向きに周方向に延びた受け溝部66,66が形成されている。ばね部材63を開放凹部62内に装着すると、両自由片部65,65の先端と開放凹部62の内壁の受け溝部66,66との径方向の掛り合いでばね部材63を径方向に位置決めすることができる。これにより、ばね力Fを強化したばね部材63をセンサホルダ61の両端部64,64のみで受ける場合よりも安定させることができる。
【0084】
第7実施形態を図9に示す。図示のように、第7実施形態は、第4実施形態において、センサホルダ41の開放凹部42内にばね部材71を装着し、そのばね部材71に、周方向二分割の弾性反発部を形成した点で共通し、ばね部材71を両端から中央に向かって巻いた形状とした点で相違するものである。ばね部材71の弾性反発部は、両巻き部72,72からなる。図中二点鎖線で示したばね部材71の自然状態の側面視形状との対比から明らかなように、両巻き部72,72は、センサホルダ41の両端部44,44間への押し込みに伴って両端部44,44間で中央側に寄るように撓み、両巻き部72,72の中央側73,73が突き合って撓む。第7実施形態は、両巻き部72,72が中央側に撓む。両巻き部72,72がセンサホルダ41の両端部44,44間で中央側に寄る撓みで蓄積された弾性反発力は、両巻き部72,72の反中央側が両端部44,44を遠ざける向きに押す力となるので、センサホルダ41の固定を強化することができる。さらに、両巻き部72,72の中央側73,73が突き合う撓みで蓄積された弾性反発力は、両巻き部72,72の反中央側が両端部44,44を遠ざける向きに押す力を強化する。したがって、第7実施形態は、弾性反発部として両自由片部のみを有するばね部材と比して、センサホルダ41の固定を強化するばね力F,Fを増すことができる。
【0085】
なお、ばね部材71の巻き形状を、側面視で円弧状にしたため、センサホルダ41の両端部44,44で受け止め難くなる。したがって、センサホルダ41の両端部44,44の周方向間隔を狭める傾きにより、図示のようにばね部材71の径方向への位置決めを強化することが好ましい。両巻き部72,72は、側面視で円弧状に巻いたものに限定されず、押し込みに伴って全体として中央側に寄る撓みと、中央側73,73の突き合いによる撓みとが生じ、それぞれの撓みによる弾性反発がセンサホルダ41の固定強化に有効である限り、適宜の巻き形状にすることができる。
【0086】
上記第1実施形態〜第7実施形態において、ばね部材の材料は、線材、板材等を適宜に採用することができる。材料は、標準的な鋼に限られず、適宜の合金を用いることもできる。
【0087】
第8実施形態を図10に示す。図示のように、第8実施形態は、センサホルダ81を外
輪に支持させた状態で開放凹部82内の両端部間に押し込む両自由片部83,83を形成したばね部材84を備える点で第2実施形態と共通する。第8実施形態は、ばね部材84が板状の鋼製材料を用いた板ばねからなる点で相違する。ばね部材84は、側面視で押し込み方向に向けて開放されたコ字状に形成されている。開放凹部82は、外径側にも開放されている。ばね部材84の開放凹部82への押し込みは、先端を内径側に向けて径方向に押し込むようになっている。両自由片部83,83は、中間部85から先端に向って次第に周方向間隔が狭まる領域を有する。開放凹部82内のうち両自由片部83,83からばね力F,Fを受ける両端部分にも、対応する自由片部83と同側に傾きが与えられており、両自由片部83,83の圧縮を確保しながら先端から押し込み易くしている。センサホルダ81の両端部には、ばね力F,Fを受ける両端部分よりも周方向間隔の広い段差部86,86が形成されている。両自由片部83,83の先端87、87は、周方向間隔が広がる向きに曲げることにより、段差部86,86と反押し込み方向に掛り合うことが可能になっている。この掛り合いにより、前記のように押し込みを容易にする傾きを形成しながら、ばね部材84の径方向に位置決めすることができるようにしている。
【0088】
ばね部材84を形成する板状の鋼製材料としては、標準的なステンレス鋼、ばね鋼鋼材の板材、ばね用冷間圧延鋼帯等を用いることができる。樹脂ばねでは、両自由片部を受ける中間部の剛性を確保するため、中間部が押し込み方向に厚く、同じ開放凹部82内への装着を考えると、両自由片部の長さが短くなる。第8実施形態は、ばね部材84が鋼製材料を用いた板ばねからなるため、鋼板の高剛性を利用して中間部85を押し込み方向に薄くし、その分、両自由片部83,83を押し込み方向に長くして弾性反発性を高め、両自由片部83,83がセンサホルダ81の両端部を遠ざける向きに押す力F,Fを強化すること、すなわち、センサホルダ81の固定を強化するばね力F,Fを増すことができる。
【0089】
なお、コ字状のばね部材84を採用する場合でも、押し込み方向を軸方向一方側から軸方向に設定することは可能である。例えば、第9実施形態を図11に示すように、センサホルダ91の開放凹部92のばね力F,Fを受ける両端部分93,93を、軸方向一方側から他方側に向って形成し、そのさらに軸方向他方側に段差部94,94を形成すればよい。
【0090】
第1実施形態の変更例として、第10実施形態を図12〜図14に示す。図12、図13に示すように、第10実施形態は、センサホルダ101の軸方向一方側の側面に、センサホルダ101に軸方向一方側から突き当てたばね部材15に軸方向一方側から臨む抜け止め部103,103,103を設けた点で相違している。
【0091】
ばね部材15を装着した状態で外輪2に固定されたセンサホルダ101の両端部19、19間の対向隙間と直径方向反対側に位置する周方向一箇所を中央(図13中の上下方向の一点鎖線で示す)として、センサホルダ101の周方向両側に、それぞれ抜け止め部103が設けられると共に、前記中央にも抜け止め部103が設けられている。これら3箇所の抜け止め部103,103,103は、前記中央と、各周方向片側の前記中央から120°進んだ一箇所とに周方向等配された関係に設けられている。有端環状溝102は、三箇所の抜け止め部103,103,103を除いた他の周方向箇所でセンサホルダ101の軸方向一方側の側面に開放し、かつ内径側にも開放した形状とされている。結果的に、センサホルダ101の各周方向片側に、同側の端部19から周方向に最も近い抜け止め部103と、次に近い前記中央の抜け止め部103との間に周方向隙間が形成されている。このため、ばね部材15を有端環状溝102に嵌着するのに必要な最低限の縮径は、図13中にばね部材15の一部を二点鎖線で抜粋して示す状態となる。
【0092】
具体的には、ばね部材15を図12に一点鎖線で示すように斜めにしてセンサホルダ1
01の軸方向一方側から前記中央の抜け止め部103を内径側からくぐらせ、ばね部材15の概ね周方向中央部を目安に有端環状溝102の前記中央部分に挿入することになる。その結果、ばね部材15の概ね周方向中央部を軸方向に位置決めした状態で、ばね部材15の挿入残部を押してばね部材15の両端部17、17を接近させて縮径させ、ばね部材15の挿入残部を、最も近い抜け止め部103を内径側からくぐらせて有端環状溝102に挿入することができる。このように、ばね部材15の概ね周方向中央部を軸方向に位置決めした状態で挿入残部を有端環状溝102に入れ、この軸方向他方側の溝側壁に軸方向一方側から突き当てることができ、この突き当てで径方向に沿った向きに支持され、嵌着を終えることができる。この嵌着を終えたときのばね部材15を図12中に実線で示している。
【0093】
仮に、最も近い抜け止め部103が中央の抜け止め部103に周方向により近いところまで存在するとしたら、ばね部材15を図13に示す二点鎖線よりも一層内径側に曲げることを要する。このことから明らかなように、第10実施形態は、ばね部材15をセンサホルダ101の周方向両側の周方向隙間を通して有端環状溝102に挿入することができるので、抜け止め部103を追加しつつ、ばね部材15の嵌着を容易にすることができる。
【0094】
また、前記の中央を決める直径線上は、概ねばね部材15の両端部17、17が周方向に突き合う位置を通ることになる。したがって、第10実施形態は、ばね部材15の嵌着を容易にしつつ、3箇所の抜け止め部103,103,103でばね部材15を周方向全域でバランスよく抜け止めすることができる。
【0095】
各抜け止め部103は、センサホルダ101に一体成形されている。このため、図14に示すように、有端環状溝102の軸方向他方側の溝側壁102aには、抜け止め部103成形用のスライド金型を抜くため、孔105,105,105が軸方向に貫通している。軸方向に分割された金型で成形するとき、軸方向一方側に無理抜きする金型で抜け止め部103を成形することが困難なためである。なお、孔105,105,105は抜け止め部103の周方向配置に対応するため、ばね部材15を溝側壁102aで径方向に沿った向きに支持する支障になる程の数、大きさにならない。
【0096】
第10実施形態では、図12、図13に示すように、コネクタ13を外径側に向けた変更に伴い、センサ6及びコネクタ13を表面実装した回路基板12を挿入して位置決めするための凹部104がセンサホルダ101から外径側に開放されている。凹部104に挿入された樹脂モールドmで固定及び充填部の必要な保護が図られている。樹脂モールドmには、エポキシ樹脂やウレタン樹脂といった熱硬化性樹脂を用いることができ、これに代えて、ホットメルトを採用することもできる。
【0097】
第10実施形態は、第1実施形態を前提とした抜け止め部の採用例としたが、ばね部材の軸方向一方側への抜け防止に意義がある限り、他の実施形態においても適宜に抜け止めを設けることができる。例えば、図4、図5、図6、図7、図8のセンサホルダ21,41,61の各端部24,44,64に、ばね部材23、31,43,51,63の自由片部25,32,45,52,65に軸方向一方側から臨む抜け止め部を突出させることができる。図9のセンサホルダ41の各端部44に、ばね部材71の巻き部72に軸方向一方側から臨む抜け止め部を突出させることができる。
【0098】
第10実施形態の変更例として、第11実施形態を図15、図16に示す。第11実施形態のセンサホルダ201は、ばね部材15を装着して外輪に固定した状態で、ばね部材15の両端部17、17の軸方向変位を前記突き合いが維持される範囲に制限する端止め構造を有する点で相違する。端止め構造は、端部17同士が突き合って撓む状態で、衝撃等により両端部17、17が軸方向に互い違いになることを防ぐため、端部17近傍の撓りで互いに突き合い相手先から外れないようにすることができる。
【0099】
端止め構造は、センサホルダ201の一端部側でばね部材15の両端部17、17を軸方向に支持可能に形成された開放凹部202と、有端環状溝203から外径側に寄ったところで軸方向隙間wを開放凹部202から周方向にセンサホルダ201の両端部間を亘ってセンサホルダ201の他端部側まで連なるように形成する対向壁部204とからなる。センサホルダ201の一端部側は、第10実施形態でいうとセンサホルダ201の周方向片側に相当する。
【0100】
開放凹部202は、ばね部材15の両端部17、17を軸方向一方側から挿入できる位置で、第10実施形態のように有端環状溝203にばね部材15を嵌着することができるようになっている。ばね部材15の両端部17、17は、端部17同士の軸方向重なり合いを解消すると、開放凹部202の底面で軸方向に支持される。
【0101】
開放凹部202及び対向壁部204は、有端環状溝203に嵌着したばね部材15の全体を軸方向に支持しながら周方向に回転させることを可能にするため、有端環状溝203の軸方向他方側の溝側壁と同一面をなす支持壁面をもつように形成されている。
【0102】
また、対向壁部204は、センサホルダ201の一端部側と他端部側とにそれぞれ形成された上記支持壁面と、これらと軸方向に隙間wを形成するようにセンサホルダ201の他端部側から一端部側まで突き出た突壁面部とからなる。このため、対向壁部204は、開放凹部202から周方向にセンサホルダ201の両端部間を亘ってセンサホルダ201の他端部側まで連なるように形成する。軸方向隙間wは、ばね部材15の端部17同士が軸方向に互い違いにならない限り、有端環状溝203の軸方向溝深さよりも軸方向に大きく設定することができる。この設定の方が、成形誤差で対向壁部204の突壁面部が傾くことを吸収でき、ばね部材15の全体を回転させる際に、製品によっては傾端部17が対向壁部204の突壁面部に当ることを防止することができる。
【0103】
有端環状溝203にばね部材15の主部16を嵌着した状態で開放凹部202に軸方向一方側からばね部材15の両端部17、17を挿入し、軸方向に重なり合った両端部17、17の片方をずらして両端部17、17を同一軸方向位置にすると、図15(a)に示すように、ばね部材15の全体が開放凹部202及び有端環状溝203に軸方向に支持され、端部17同士が突き合って撓む状態になる。この状態から、ばね部材15の全体を周方向に両端部17、17が対向壁部204へ近づく向きで回転させると、図15(b)、図16に示すように、両端部17、17が軸方向隙間wに収まる。この状態では、対向壁面204の支持壁面と突壁面とで、両端部17、17の軸方向変位を制限することができる。なお、回転させ過ぎないようにするため、センサホルダ201の他端部には、第10実施形態よりも一端部側に近付けた回り止め壁面が形成されている。
【0104】
第10実施形態の変更例として、第12実施形態を図17〜図19に示す。第12実施形態は、ばね部材15の各端部17の突き合い相手先をセンサホルダ210に形成し、端止め構造を追加した点で相違する。
【0105】
センサホルダ210の一端部側よりも有端環状溝211の長さを短くしたセンサホルダ210の他端部側には、有端環状溝211の周方向延長上まで突き出た支持壁212が形成されている。センサホルダ210の他端部側で有端環状溝211の長さを短くするため、その他端部側の抜け止め部213を第10実施形態の等配位置よりも周方向中央の抜け止め部103側に近付け、支持壁212との間で軸方向及び外径側に凹んだ逃げ部214が形成されている。
【0106】
端止め構造は、支持壁212と、センサホルダ210の一端部側でばね部材15の一端部17を軸方向に支持する第一開放凹部215aと、センサホルダ210の他端部側で軸方向隙間を形成するように突き出た対向壁部216と、対向壁部216及び支持壁212間の周方向中間部分に対向壁部216の軸方向隙間と連なるように形成された第二開放凹部215bとからなる。軸方向隙間は第11実施形態の軸方向隙間と同様の大きさになっている。また、両開放凹部215a、215bの支持壁面と有端環状溝211の溝側壁との関係も第11実施形態と同様である。
【0107】
対向壁部216は、両開放凹部215a、215bの支持壁と同一面を成すように形成された支持壁面部と、センサホルダ210の一端部側で第一開放凹部215aよりも軸方向一方側に突き出た突壁面部と、ここからセンサホルダ210の他端部側の支持壁面部と軸方向隙間を形成するように突き出た突壁面部とからなる。
【0108】
第10実施形態のように、有端環状溝211にばね部材15の主部16を嵌着した状態で、図17(a)に示すように、第一開放凹部215aに軸方向一方側から一端部17を挿入することができる。第一開放凹部215aに軸方向に支持された一端部17を対向壁部216と突き合う状態とし、この状態から、図19、図18(b)、図17(a)に実線で示すように他端部17を軸方向一方側及び外径側へ撓らせて支持壁212越しの状態とし、特に図18(b)に実線で示すように、先に他端部17を対向壁部216の前記軸方向隙間に入れ込むことができる。逃げ部214は、この作業で外径側に撓らせることを容易にする。さらに図19に一点鎖線で他端部17を示すように、当該撓りを戻し、図18(b)に一点鎖線で他端部17を示すように、支持壁212に載っていたばね部材15の部分が落ちると、図18(a)に示すように、他端部17が、支持壁212で径方向に支持されると共に、他端部17が、対向壁部216の軸方向隙間内で、対向壁部216に突き合う一端部17と同じ軸方向位置で突き合い、両端部17、17がそれぞれ対向壁部216に押し付けられて撓んだ状態になる。同時に、対向壁部216により他端部17の軸方向変位を制限をすることもできる。
【0109】
上述の各実施形態においては、センサホルダ7等をポリアミドイミド樹脂を主材料に用いて射出成形することができる。センサホルダ7等のばね部材15等を受ける部分が温度クリープで変形することを防ぎ、ばね部材15等の脱落を防止することができる。なお、ポリアミドイミド樹脂としては、三菱ガス化学製の製品シリーズ名:エーアイポリマーM
Sを採用することができる。
【0110】
この発明の技術的範囲は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載に基く技術的思想の範囲内での全ての変更を含むものである。例えば、第1実施形態においては、ばね部材の両端部を内径側に曲げても、ばね力を増すことは可能である。第2実施形態〜第6実施形態においては、中間部を屈曲箇所を2箇所以上(例えば、M字状として2箇所)にすることもできる。
【符号の説明】
【0111】
1 転がり軸受
2 外輪
3 内輪
4 シール溝(周溝)
6 センサ
7,21,41,61,81,91,101,201,210 センサホルダ
8 磁気エンコーダ
9 位置決め部
10 突条
11 側面壁
14,102,203,211 有端環状溝
15,23,31,43,51,63,71,84 ばね部材
16 主部
17 ばね部材の端部
18,22,42,62,82,92,202 開放凹部
19,24,44,64,93 センサホルダの端部
25,32,45,52,65,83 自由片部
26,33,46,53,85 中間部
66 受け溝部
72 巻き部
73 巻き部の中央側
86,94 段差部
87 自由片部の先端
102a 溝側壁
103,213 抜け止め部
104 凹部
204,216 対向壁部
212 支持壁
214 逃げ部
215a 第一開放凹部
215b 第二開放凹部
w 軸方向隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪を静止部材に装着する転がり軸受と、センサを保持する樹脂製のセンサホルダとを備え、
前記センサホルダは、前記外輪の内径面に軸方向一方側から嵌め込む位置決め部を有し、前記位置決め部に、前記外輪の内径面に形成された周溝に入る突条を形成し、かつ前記位置決め部の嵌め込みにより前記センサホルダを前記外輪に支持させることが可能な有端環状体からなり、
前記センサホルダを前記外輪に支持させた状態でばね部材を圧縮状態に装着することにより当該ばね部材の弾性反発で当該センサホルダの固定を強化するようにし、
前記ばね部材は、前記センサホルダの両端部間に巡る有端環状溝に嵌着可能な有端環状体からなるセンサ付軸受において、
前記ばね部材は、前記有端環状溝に嵌着する主部と、当該有端環状溝から周方向に突き出る両端部とからなり、前記ばね部材の両端部を、前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で突き合って撓む部分とし、当該撓んだ両端部の弾性反発により前記センサホルダの固定を強化するばね力が増すことを特徴とするセンサ付軸受。
【請求項2】
前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で前記ばね部材の両端部が軸方向に重なり合い、その片方の端部をずらして両端部を同一軸方向位置にすると前記突き合って撓む状態になる請求項1に記載のセンサ付軸受。
【請求項3】
前記ばね部材が線細工ばねからなり、前記センサホルダの軸方向一方側の側面に、前記ばね部材の両端部が露出する開放凹部を形成し、前記ばね部材の両端部を突き合い状態にすると前記開放凹部の底面で当該両端部が軸方向に支持される請求項1又は2に記載のセンサ付軸受。
【請求項4】
前記ばね部材の材料が軸方向に沿った表面を有する角線材からなり、前記表面を、前記ばね部材の両端部の突き合い面とした請求項3に記載のセンサ付軸受。
【請求項5】
前記センサホルダは、前記ばね部材を装着して前記外輪に固定した状態で当該ばね部材の両端部のうち、少なくとも一方の端部の軸方向変位を前記突き合いが維持される範囲に制限する端止め構造を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ付軸受。
【請求項6】
前記端止め構造は、前記センサホルダの一端部側で前記ばね部材の両端部を軸方向に支持可能に形成された開放凹部と、軸方向隙間を前記開放凹部から周方向に前記センサホルダの両端部間を亘って当該センサホルダの他端部側まで連なるように形成する対向壁部とからなり、
前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で前記開放凹部に軸方向一方側から前記ばね部材の両端部を挿入し、軸方向に重なり合った当該ばね部材の両端部の片方をずらして当該ばね部材の両端部を同一軸方向位置にすると、当該開放凹部及び当該有端環状溝に軸方向に支持された当該ばね部材の端部同士が前記突き合って撓む状態になり、この状態から当該ばね部材の全体を周方向に当該ばね部材の両端部が前記対向壁部へ近づく向きで回転させると、当該ばね部材の両端部が前記軸方向隙間に収まる請求項5に記載のセンサ付軸受。
【請求項7】
前記端止め構造は、前記センサホルダの一端部側よりも前記有端環状溝の長さを短くした当該センサホルダの他端部側で当該有端環状溝の周方向延長上まで突き出た支持壁と、前記センサホルダの一端部側で前記ばね部材の一端部を軸方向に支持する第一開放凹部と、前記センサホルダの他端部側で軸方向隙間を形成するように突き出た対向壁部と、この対向壁部及び前記支持壁間の周方向中間部分に当該軸方向隙間と連なるように形成された第二開放凹部とからなり、
前記有端環状溝に前記主部を嵌着した状態で前記第一開放凹部に軸方向一方側から前記ばね部材の一端部を挿入し、当該第一開放凹部に軸方向に支持された当該ばね部材の一端部を前記対向壁部と突き合う状態とし、この状態から当該ばね部材の他端部を軸方向一方側及び外径側へ撓らせて前記支持壁越しに前記軸方向隙間に入れ込み、さらに当該撓りを戻すと、当該ばね部材の他端部が当該軸方向隙間内で当該対向壁部と突き合う請求項5に記載のセンサ付軸受。
【請求項8】
外輪を静止部材に装着する転がり軸受と、センサを保持する樹脂製のセンサホルダとを備え、
前記センサホルダは、前記外輪の内径面に軸方向一方側から嵌め込む位置決め部を有し、前記位置決め部に、前記外輪の内径面に形成された周溝に入る突条を形成し、かつ前記位置決め部の嵌め込みにより前記センサホルダを前記外輪に支持させることが可能な有端環状体からなり、
前記センサホルダを前記外輪に支持させた状態でばね部材を圧縮状態に装着することにより当該ばね部材の弾性反発で当該センサホルダの固定を強化するようにし、
前記ばね部材は、前記センサホルダの両端部間への押し込みで撓む両端の自由片部と、両自由片部間に連なる中間部とからなるセンサ付軸受において、
前記中間部を前記押し込みに伴って圧縮される屈曲ばね部とし、前記中間部の弾性反発力により前記センサホルダの固定を強化するばね力が増すことを特徴とするセンサ付軸受。
【請求項9】
前記ばね部材を側面視でM字状とした請求項8に記載のセンサ付軸受。
【請求項10】
前記センサホルダに、前記ばね部材を軸方向一方側から押し込む開放凹部を形成し、前記自由片部の先端を、側面視で前記センサホルダの端部との接触域よりも周方向に突出させ、前記自由片部の先端と前記開放凹部の内壁との掛り合いで当該ばね部材を径方向に位置決めした請求項8又は9に記載のセンサ付軸受。
【請求項11】
外輪を静止部材に装着する転がり軸受と、センサを保持する樹脂製のセンサホルダとを備え、
前記センサホルダは、前記外輪の内径面に軸方向一方側から嵌め込む位置決め部を有し、前記位置決め部に、前記外輪の内径面に形成された周溝に入る突条を形成し、かつ前記位置決め部の嵌め込みにより前記センサホルダを前記外輪に支持させることが可能な有端環状体からなり、
前記センサホルダを前記外輪に支持させた状態でばね部材を圧縮状態に装着することにより当該ばね部材の弾性反発で当該センサホルダの固定を強化するようにし、
前記ばね部材に、周方向二分割の弾性反発部を形成したセンサ付軸受において、
前記ばね部材を両端から中央に向かって巻いた形状とし、前記押し込みに伴って両巻き部が前記センサホルダの両端部間で中央側に寄るように撓む弾性反発で前記センサホルダの固定を強化し、また、当該両巻き部の中央側が突き合って撓む弾性反発により前記センサホルダの固定を強化するばね力が増すことを特徴とするセンサ付軸受。
【請求項12】
外輪を静止部材に装着する転がり軸受と、センサを保持する樹脂製のセンサホルダとを備え、
前記センサホルダは、前記外輪の内径面に軸方向一方側から嵌め込む位置決め部を有し、前記位置決め部に、前記外輪の内径面に形成された周溝に入る突条を形成し、かつ前記位置決め部の嵌め込みにより前記センサホルダを前記外輪に支持させることが可能な有端環状体からなり、
前記センサホルダを前記外輪に支持させた状態でばね部材を圧縮状態に装着することにより当該ばね部材の弾性反発で当該センサホルダの固定を強化するようにし、
前記ばね部材は、周方向二分割の弾性反発部を形成した前記センサホルダの両端部間への押し込みで撓む両端の自由片部と、両自由片部間に連なる中間部とからなるセンサ付軸受において、
前記ばね部材が板状の鋼製材料を用いた板ばねからなることを特徴とするセンサ付軸受。
【請求項13】
回転センサの磁気エンコーダが嵌着された内輪を備え、前記センサを、前記回転センサの磁気センサとし、前記外輪を、内径面の両側にシール溝を形成された軌道輪とし、前記周溝を、軸方向一方側の前記シール溝とし、前記センサホルダと前記磁気エンコーダとで内径側に開放するラビリンスシールを形成した請求項1から12のいずれか1項に記載のセンサ付軸受。
【請求項14】
前記センサホルダの軸方向一方側の側面に、当該センサホルダに軸方向一方側から突き当てた前記ばね部材に軸方向一方側から臨む抜け止め部を設けた請求項1から13のいずれか1項に記載のセンサ付軸受。
【請求項15】
前記センサホルダの軸方向一方側の側面に、前記有端環状溝の軸方向他方側の溝側壁に軸方向一方側から突き当てた前記ばね部材に軸方向一方側から臨む抜け止め部を設けた請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサ付軸受。
【請求項16】
前記ばね部材を装着した状態で前記外輪に固定された前記センサホルダの両端部間の対向隙間と直径方向反対側に位置する周方向一箇所を中央としたセンサホルダの周方向両側に、それぞれ前記抜け止め部を設け、前記センサホルダの各周方向片側に、同側の端部から周方向に最も近い前記抜け止め部と、次に近い抜け止め部との間に周方向隙間を形成し、前記ばね部材を前記センサホルダの周方向両側の周方向隙間を通して前記有端環状溝に挿入可能とした請求項15に記載のセンサ付軸受。
【請求項17】
前記抜け止め部を、前記中央と、各周方向片側の前記中央から120°進んだ一箇所と
に設けた請求項16に記載のセンサ付軸受。
【請求項18】
前記抜け止め部を前記センサホルダに一体成形した請求項14から17のいずれか1項に記載のセンサ付軸受。
【請求項19】
前記センサホルダをポリアミドイミド樹脂を主材料に用いて射出成形した請求項1から18のいずれか1項に記載のセンサ付軸受。
【請求項20】
前記センサは、回転センサの複数の磁気センサを含む集積回路からなる請求項1から19のいずれか1項に記載のセンサ付軸受。
【請求項21】
前記磁気センサが、前記転がり軸受の内輪に取り付けた磁気エンコーダと径方向に対向する請求項20に記載のセンサ付軸受。
【請求項22】
前記センサ及びコネクタを表面実装した回路基板を備え、前記回路基板を前記センサホルダの凹部に挿入する請求項20又は21に記載のセンサ付軸受。
【請求項23】
前記コネクタを径方向から配線するように設けた請求項22に記載のセンサ付軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−232319(P2011−232319A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149383(P2010−149383)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】