説明

センサ本体およびそのセンサ本体を用いたひずみ測定装置

【課題】被測定対象の物理量を測定することと、情報記憶媒体が記憶するセンサに関する情報の読取りを端子数やケーブル本数を増加させることなく実現する。
【解決手段】被測定対象個所にひずみセンサ12およびTEDS13を設置し、正側の入力端子Aと負側の入力端子Cとの間にブリッジ電圧を印加する。すると、ブリッジ回路の正の出力端12dと負の出力端12bとの間に、被測定対象物理量に対応したひずみ出力が生じ、モード切換回路15のスイッチング素子がオンとなり、正側の出力端子Dと、負側の出力端子Bとの間に現れる。このとき、TEDS13との接続は断たれているので、ひずみ測定に何ら影響を与えない。一方、ブリッジ電圧の供給を断ち、正側の出力端子Dから、接地電位より低い電圧を印加すると、モード切換回路15の状態が切換わり、TEDS13に記憶された情報を正側の出力端子Dから読み取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージで形成されたホイートストンブリッジ回路よりなるひずみセンサと、前記ひずみセンサに関する情報が読み書き可能な情報記憶媒体とが一体的にまたは互いに近傍に配設されてなるセンサ本体と、前記センサ本体を用いたひずみ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ひずみ測定において、ひずみゲージまたはひずみゲージ式変換器等を用いて被測定対象の物理量あるいは機械量を測定する場合、当該ひずみゲージやひずみゲージ式変換器のメーカー名、センサの種類、型式、シリアル番号、校正値等が前記変換器等に添付される。
一方、ひずみ測定は、測定器から離れた場所に設置したひずみゲージや変換器に接続ケーブルを介して測定器を接続し、遠隔地のひずみを測定しなければならないことも多い。特に、ダム等のように大きな建造物や施設、あるいは工事現場等の多数の個所に、ひずみゲージおよびひずみゲージ式変換器等を含む種々のセンサを多数設置し、それぞれ複数の端子からなる各チャンネル毎の接続端子にケーブルを介して接続し、これら多チャンネルの接続端子を測定器に選択的に走査接続して測定を行う多チャンネル測定システムにおいては、ユーザー側で、チャンネルID、設置場所、接続モード、などを記録しなければならない。
従来は、このような膨大な計測に関するデータや計測条件などの情報を、必要に応じメモ書きしたり音声記録やパソコンに入力するなどして、記録していた。このため、記録作業に多くの時間がかかる上、人的ミスが生じる、といった問題があった。
【0003】
このような問題を考慮してなされたものとして、TEDS(Transducer Electronic Date Sheet)と称される、電子式データシート、即ち、読み書き可能な情報記憶媒体が市販されている。
このTEDSは、センサ内部の不揮発性メモリにセンサ固有の情報を記憶させることができ、例えば、メーカー名、センサの種類、型式、シリアル番号、校正値等の情報を記憶することが可能となっており、上記問題も解消されつつある。
図4は、このTEDSをひずみセンサと共に用いる場合の回路構成を示す。
図4に示すセンサ本体1は、4枚のひずみゲージSG1〜SG4で形成されたホイートストンブリッジ回路(以下、「ブリッジ回路」という)からなるひずみセンサ2と、TEDS3を有している。このうち、ひずみセンサ2のブリッジ回路の入力端2aには正側の入力端子Aが接続され、入力端2cには負側の入力端子Cが接続され、ブリッジ回路の出力端2dには正側の出力端子Dが接続され、出力端2bには負側の出力端子Bが接続されている。
【0004】
TEDS3の両端は、付属端子F、Gに接続されている。
ケーブルのシールド線4のすべては、共通にして接地端子Eに接続されている。
図4に例示したような従来のセンサ本体において、TEDS3によって実現される機能としては、例えば、センサ本体が設置された場所(位置)を特定する機能、TEDSから読み取った情報を基に測定器を自動調整する機能、測定条件テーブル(シリアル番号、校正値、測定点)の保守管理を自動化して測定準備時間を大幅に短縮する機能等が想定される。
このように、TEDSは、多くの有効な機能を発揮し得るので、近年ひずみ測定に採用され始めている。
【0005】
図5は、従来のセンサ本体の他の構成を示す回路図である。
同図に示すセンサ本体は、図4に示すセンサ本体とは違って、TEDSが含まれていない。
この従来例の場合、付属端子F,Gは、ブリッジ回路の入力端2a、2cと接続され、付属端子F,Gから測定器までの配線は、ひずみセンサをリモートセンシングする目的で使用されている。このリモートセンシングは、ひずみセンサからひずみ測定器(装置)に至るまでのケーブルにおける抵抗値の温度による変化を補償する目的で行われるものである。
図5に示す構成の場合、付属端子F,Gは、前記センシング目的で使用されるため、前述のTEDSを使用することができないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来のひずみセンサにあっては、ひずみ測定器までのケーブル本数や接続端子が実質的に制約されているので、リモートセンシングを行う構成とする場合は、TEDSを使用することができなくなるという問題点があった。
以下、この問題点について詳しく説明する。
例えば、前述のTEDS3を、図4にて示したと同様に、付属端子F,Gに接続し、さらに、端子F,G以外に新たな端子を設け、この新設の端子を介して別途2本のリード線をひずみセンサ2に接続し、さらに、この新設の端子と測定器との間をケーブルで接続して前記のリモートセンシングを行うことは原理的には可能であるが、新設の端子から測定器(ひずみを測定するための測定器)に至るまでの配線数が都合8本必要となる。しかしながら、ケーブルの芯線数は6本が限界とされている。(図4の端子Eを除く端子数に等しい)。
【0007】
このような配線数に限界の生じる理由について説明すると、これらの配線は、被覆されて1本のケーブルに纏められて、外部の測定器に接続されるが、通常、ひずみセンサは、被測定対象領域の多地点(100点を超える場合もある)に配置されるので、このケーブルの本数も多くなり、物理的に非常に嵩張ることにより、外部の測定器まで集中配線させることが物理的に困難となるばかりでなく、コストが大幅に上昇することとなる。よって、ここに、このケーブルの直径増大を極度に抑制すべき事情が存在し、ひいては測定器をひずみセンサと接続するための配線数(=端子数)は、極度に切り詰めなければならないのである。
本発明は、前述の問題点に鑑みてなされたものであり、被測定対象のひずみ、変位、加速度、トルク等の物理量あるいは機械量等を測定することと、TEDS等の情報記憶媒体が記憶する情報の読み出しを可能にすることとを両立させた上で、なおかつ測定器との接続に必要な配線数を従来通りの規定数に維持し、コストを極力低減化することができるセンサ本体およびそのセンサ本体を用いたひずみ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した本発明に係るセンサ本体は、上述した目的を達成するために、ひずみゲージで形成されたホイートストンブリッジ回路よりなるひずみセンサと、前記ひずみセンサに関する情報が読み書き可能な情報記憶媒体とが一体的にまたは近傍に配設されたセンサ本体であって、
前記ひずみセンサから出力される被測定対象物理量に応じたアナログ信号と、前記情報記憶媒体が記憶している情報に応じて出力されるデジタル信号とを、共通の2つの出力端子に選択的に出力させるモード切換回路と、
前記ホイートストンブリッジ回路にブリッジ電源を供給するための2つの入力端子と、
前記ホイートストンブリッジ回路の出力端と前記情報記憶媒体の出力端とが共通に接続される前記2つの出力端子を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載した本発明に係るセンサ本体のモード切換回路は、前記ホイートストンブリッジ回路の一対の出力端と前記一対の出力端子との間に介挿された二つのスイッチング素子と、
一端が前記負側の出力端子に接続された前記情報記憶媒体の他端と前記正側の前記出力端子との間に介挿されたダイオードとからなり、
前記2つの入力端子にブリッジ電源を供給した状態では、前記出力端子から被測定対象の物理量に応じたアナログ信号が前記出力端子から出力され、前記ブリッジ電源の供給を断った状態で、前記正側の出力端子に負電位を供給した状態では、前記情報記憶媒体に記憶している情報を前記出力端子から読み取りを行い得るように構成したことを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載した本発明に係るセンサ本体は、前記モード切換回路は、前記ホイートストンブリッジ回路の一方の出力端と正側の前記出力端子との間に直列に接続されたPチャンネル接合型FETからなる第1のスイッチング素子と、
前記ブリッジ回路の他方の出力端と負側の前記出力端子との間に接続されたNチャンネル接合型FETからなる第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子のゲートと前記負側の出力端子との間に接続された第1の抵抗と、
前記第2のスイッチング素子のゲートと前記正側の出力端子との間に接続された第2の抵抗と、
前記情報記憶媒体の前記他端にアノードが接続され、前記正側の出力端子にカソードが接続されたダイオードと、
から構成されていることを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項4に記載した本発明に係るセンサ本体の前記情報記憶媒体は、TEDSからなり、出荷時に、メーカー名、センサの種類、型式、シリアル番号、校正値のうちのいずれかの情報を記憶させ、出荷後にチャンネルID、設置場所、タグ番号等をユーザーの所望に応じて記憶させ得るものであることを特徴としている。
請求項5に記載した本発明に係るセンサ本体は、前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第1の抵抗、前記第2の抵抗および前記ダイオードからなる回路部分をICチップ化してなることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載した本発明に係るひずみ測定装置は、前記請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ本体を用いるひずみ測定装置であって、前記入力端子にブリッジ電圧を供給するブリッジ電源と、
前記入力端子と前記ブリッジ電源との間に介挿される入力スイッチと、
前記ブリッジ回路の出力の差分を検出する1対の差分アンプと、
前記差分アンプと前記出力端子との間に介挿される出力スイッチと、
正側の前記出力端子に選択的に接地電位よりも低い負電位を供給する負電位供給スイッチと、
前記TEDSに記憶されている情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段と前記出力端子の正側との間に介挿される読取スイッチと、
前記出力端子の負側を選択的に接地する接地スイッチとを、
有してなることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載した本発明に係るひずみ測定装置は、前記入力スイッチ、前記出力スイッチを、それぞれオンとすると共に前記負電位供給スイッチ、前記読取スイッチ、前記接地スイッチをそれぞれオフとすることにより前記ひずみセンサの出力を前記差分アンプに供給し、前記入力スイッチ、前記出力スイッチをそれぞれオフとすると共に前記負電位供給スイッチ、前記読取スイッチ、前記接地スイッチをそれぞれオンとすることにより前記TEDSに記憶された情報を読取手段で読取るように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ひずみゲージで形成されたホイートストンブリッジ回路よりなるひずみセンサと、前記ひずみセンサに関する情報が読み書き可能な情報記憶媒体とが一体的にまたは近傍に配設されたセンサ本体であって、
前記ひずみセンサから出力される被測定対象物理量に応じたアナログ信号と、前記情報記憶媒体が記憶している情報に応じて出力されるデジタル信号とを、共通の2つの出力端子に選択的に出力させるモード切換回路と、
前記ホイートストンブリッジ回路にブリッジ電源を供給するための2つの入力端子と、
前記ホイートストンブリッジ回路の出力端と前記情報記憶媒体の出力端とが共通に接続される前記2つの出力端子を備えた構成としたので、センサ本体とひずみ測定装置との接続に必要な配線数(芯数)を増加させることなく、被測定対象物理量や機械量を測定することと、TEDS等の情報記憶媒体が記憶する情報の読み取りとを、可能とし、特に、規定の配線数(通常は6本)のままで、リモートセンシング機能を有するひずみセンサをそのまま使用した状態でTEDS等の情報記憶媒体が記憶する情報を読み書きすることを可能となし、延いては、信頼性の高い測定データが得られると共にコストを大幅に低減し得るセンサ本体を提供することができる。
【0015】
また、請求項2に記載した発明によれば、
前記モード切換回路は、前記ホイートストンブリッジ回路の一対の出力端と前記一対の出力端子との間に介挿された二つのスイッチング素子と、
一端が前記負側の出力端子に接続された前記情報記憶媒体の他端と前記正側の前記出力端子との間に介挿されたダイオードとからなり、
前記2つの入力端子にブリッジ電源を供給した状態では、前記出力端子から被測定対象の物理量に応じたアナログ信号が前記出力端子から出力され、前記ブリッジ電源の供給を断った状態で、前記正側の出力端子に負電位を供給した状態では、前記情報記憶媒体に記憶している情報が前記出力端子から読み取りを行い得るように構成
したので、簡素な構成でありながら、上記請求項1に記載の発明の特有の効果を奏し得るセンサ本体を提供することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、
前記モード切換回路は、前記ホイートストンブリッジ回路の一方の出力端と正側の前記出力端子との間に直列に接続されたPチャンネル接合型FETからなる第1のスイッチング素子と、
前記ブリッジ回路の他方の出力端と負側の前記出力端子との間に接続されたNチャンネル接合型FETからなる第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子のゲートと前記負側の出力端子との間に接続された第1の抵抗と、
前記第2のスイッチング素子のゲートと前記正側の出力端子との間に接続された第2の抵抗と、
前記情報記憶媒体の前記他端にアノードが接続され、前記正側の出力端子にカソードが接続されたダイオードと、
から構成されているので、簡素な構成であり且つ信頼性の高いセンサ本体を提供することができる。
【0017】
また、請求項4に記載した発明によれば、
前記情報記憶媒体は、センサに組込まれた電子データシートであるTEDS(Transducer Electronic Date Sheetの略)からなり、出荷時に、メーカー名、センサの種類、型式、シリアル番号、校正値のうちのいずれかの情報を記憶させ、出荷後にチャンネルID、設置場所、タグ番号等をユーザーの所望に応じて記憶させ得るものであるため、市販のTEDSを使用することが可能となり、量産によるTEDSの構成部分のコストを低減させ得るセンサ本体を提供することができる。
また、請求項5に記載した発明によれば、
前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第1の抵抗、前記第2の抵抗および前記ダイオードからなる回路部分をICチップ化してなるので、上記構成部分が小型、軽量化され、ひずみセンサの特性に全く影響を及ぼさずにTEDSからの情報の読み取りを可能となし、ひずみセンサと共に組み込み得るセンサ本体を提供することができる。
【0018】
また、請求項6に記載した発明によれば、
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ本体に、
前記入力端子にブリッジ電圧を供給するブリッジ電源と、
前記入力端子と前記ブリッジ電源との間に介挿される入力スイッチと、
前記ブリッジ回路の出力の差分を検出する1対の差分アンプと、
前記差分アンプと前記出力端子との間に介挿される出力スイッチと、
正側の前記出力端子に選択的に接地電位よりも低い負電位を供給する負電位供給スイッチと、
前記TEDSに記憶されている情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段と前記出力端子の正側との間に介挿される読取スイッチと、
前記出力端子の負側を選択的に接地する接地スイッチとを、
付設してなるので、被測定対象の物理量や機械量を測定することと、TEDS等の情報記憶媒体が記憶する情報の読み取りを可能にすることを両立させた上で、なお且つひずみ測定装置との接続に必要な配線数を従来通りの規定数に維持することができ、配線数を、従来の場合に比べて削減し得ることに伴うコストダウンを実現し得るひずみ測定装置を提供することができる。
【0019】
また、請求項7に記載した発明によれば、
前記入力スイッチ、前記出力スイッチを、それぞれオンとすると共に前記負電位供給スイッチ、前記読取スイッチ、前記接地スイッチをそれぞれオフとすることにより前記ひずみセンサの出力を前記差分アンプに供給し、前記入力スイッチ、前記出力スイッチをそれぞれオフとすると共に前記負電位供給スイッチ、前記読取スイッチ、前記接地スイッチをそれぞれオンとすることにより前記TEDSに記憶された情報を読取手段で読取るように構成したので、前記各スイッチをオンオフ制御することだけで、ひずみ測定モードと、ひずみセンサに関する情報の読み取りモードを簡単且つ確実に切り換えることが可能であり、従って前記スイッチの動作を自動化させることで、測定作業の迅速化、人的ミスの排除を実現し得るひずみ測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のセンサ本体およびそのセンサ本体を用いたひずみ測定装置の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るセンサ本体の要部の構成と端子との関係で示す回路図である。
図1に示す第1の実施の形態に係るセンサ本体11は、大別してひずみセンサ12と、情報記憶媒体としてのTEDS13とモード切換回路15から構成されている。
先ず、ひずみセンサ12は、4枚のひずみゲージSG1〜SG4でホイートストンブリッジ回路(以下「ブリッジ回路」という)が形成されているが、より具体的には第1のひずみゲージSG1の一端と第2のひずみゲージSG2の一端とを接続をし、その接続点を負の出力端12bとする。第2のひずみゲージSG2の他端と第3のひずみゲージSG3の一端とを接続し、その接続点を負の入力端12cとする。第3のひずみゲージSG3の他端と第4のひずみゲージSG4の一端とを接続し、その接続点を正の出力端12dとする。
【0021】
第4のひずみゲージSG4の他端と第1のひずみゲージSG1の他端とを接続し、その接続点を正の入力端12aとする。
前記正の入力端12aは、正側入力端子Aにケーブル(またはリード線。以下同じ)を介して直接接続され、負の出力端12bは、負側のモード切換回路15を介して、負側の出力端子Bに接続され、負の入力端12cは、負側の入力端子Cに直接接続され、正の出力端12dは、正側のモード切換回路15を介して正側の出力端子Dに接続されている。ケーブルのシールド14は、予備端子Eに接続される。
即ち、ひずみセンサを形成するブリッジ回路の正の出力端12dと正側の出力端子との間および負の出力端12bと負側の出力端子Bとの間にモード切換回路15が直列に介挿されていることになる。
情報記憶媒体の一例としてこの実施の形態においては、TEDS13を用いている。
【0022】
TEDSとは、Transducer Electronic Data Sheet の略であり、センサに組み込まれた電子データシートを指称し、内部に読み書き可能なメモリを持ち、センサ自身とその使用に関わる必要な情報を記憶することができる。スマート・トランスデューサあるいはスマート・センサと称するものは、メモリの一部は製造者が規定するセンサ仕様の記憶に使われ、他の一部は、ユーザが規定できるようになっている。
例えば、メーカーの出荷時には、基本的な情報としてメーカー名、センサの種類、型式、シリアル番号、校正値、感度等を入力しておくものとし、ユーザーは、センサ情報、測定チャンネルID、ポイント、方向、タグ番号、測定モード、測定日時等の情報を追加して記憶させることができるように構成されている。
このTEDS13は、一端を接地し、他端を接地電位より低い負電位を供給することにより、内部に記憶された上記の各情報を読み書きすることができる。
【0023】
モード切換回路15は、詳しくは後で述べるが、ひずみセンサ12から出力される被測定物理量や機械量、例えば、ひずみ、応力、変位、操作力、荷重、圧力、加速度、トルク等に応じたアナログ信号と、TEDS13から出力される記憶情報に応じたデジタル信号とを、共通の2つの出力端子B、Dに選択的に出力させるものである。
図1に示す実施の形態における動作について説明する。
例えば、ひずみセンサ12が荷重変換器に添着されているものと仮定すると、センサ本体11としては、荷重変換器ということになる。
荷重変換器の起歪部の、例えば荷重印加方向に沿って2枚のひずみゲージSG1とSG3が接着等によって添着され、これと直交する方向に沿って他の2枚のひずみゲージSG2とSG4が添着されているものとすると、荷重変換器に圧縮方向に負荷がかかった場合、2つのひずみゲージSG1とSG3は圧縮されて抵抗値が減少し、他の2つのひずみゲージSG2とSG4は伸長されて抵抗値が増加する。
【0024】
そこで、正側の入力端子Aと負側の入力端子Cとの間にブリッジ電源(図3の符号17参照)からブリッジ電圧を印加すると、ひずみゲージSG1〜SG4の抵抗値の変化に基づいて、換言すれば印加された荷重に対応した電圧が正側の出力端子Dと負側の出力端子Bとの間に出力されるので、この出力を後述する差分アンプや差動増幅器により拡大して荷重値に変換する。これがアナログモードである。このアナログモードのときは、モード切換回路15の作用により、TEDS13との関係は、電気的に断たれた状態になる。
次に、正側の入力端子Aと負側の入力端子Cとの間に供給していたブリッジ電圧の供給を断ち、負側の出力端子Bを接地し、正側の出力端子Dに接地電位よりも低い負電位を供給することにより、モード切換回路15の作用により、ひずみセンサ12の出力は断たれ、TEDS13に記憶されている情報をデジタル的に正側の出力端氏Dから読み出すことができる。これがデジタルモードである。
図1の構成によれば、センサ本体11の端子数は、TEDS15を接続した状態でありながら4つで済み、センサ本体11と測定装置とを結ぶケーブルの芯数も4本で足り、コストを大幅に低減されることになり、また、ケーブルの太さを細くすることができるため、多点計測のときなど、ケーブルが嵩張らず、ケーブル配線処理が容易化される。
【0025】
図2は、本発明の第2の実施の形態を簡略に示す回路図である。
図2の実施の形態は、図1の実施の形態に対し、センシング機能を付加した点が相違している。
即ち、センサ本体11の構成および作用については、第1の実施の形態と同じであるので、繰り返し説明することは省略する。
図2において、ひずみセンサ12をなすブリッジ回路の正の入力端12aと付属端子Fとの間を、センシングリード線16bで結び、負の入力端12cと付属端子Gとの間をセンシングリード線12aで結んでいる。
従って、図示しないひずみ測定器側のブリッジ電源に一端が接続された一対のケーブルの他端は、正の入力端子Aと負の入力端子Cにそれぞれ接続され、ひずみ測定器の正側に一端が接続されたケーブルの他端は正側の出力端子Dに接続され、ひずみ測定器の負側に一端が接続された他端は、負側の出力端子Bに接続され、ひずみ測定器のリモートセンシング回路に一端が接続された一対のケーブルの他端は、付属端子FとGにそれぞれ接続される。
【0026】
このリモートセンシング用のケーブルを上述のように配設することにより、ひずみセンサ12から測定器側に至るケーブルの温度変化やケーブル長の変化に伴う内部抵抗の変化がひずみ測定の測定値に与える誤差を補償し、精度が高く、信頼性が高い測定を実現することができる。
即ち、図4や図5に示した従来の測定値では実現できなかったTEDSによるデータ読取機能とリモートセンシング機能とを、6本のケーブル(端子)のみで実現することができる。
図3は、本発明の第3の実施の形態を具体的に示す回路図である。
図3において、ひずみセンサ12の回路部分は、図1および図2に示す対応する回路部分と同じであるので、その構成と作用は上述したところを援用して詳しい説明は省略する。
【0027】
同図において、モード切換回路15は、第1のスイッチング素子としてのPチャンネル接合型FET15aと、第2のスイッチング素子としてのNチャンネル接合型FET15bと、ダイオードD1と、第1抵抗と、第2抵抗とから構成される。
Pチャンネル接合型FET(以下、単に「P型FET」と略称する)15aは、ブリッジ回路の正の出力端12dと正の出力端子Dとの間に直列に接続され、そのゲートは、第1の抵抗R1を介して負の出力端子Bに接続されている。Nチャンネル接合型FET(以下、単に「N型FET」と略称する)15bは、ブリッジ回路の負の出力端12bと負の出力端子Bとの間に直列接続され、そのゲートは、第2の抵抗R2を介して、正側の出力端子Dに接続されている。
TEDS13は、一端が負側の出力端子Bに接続され、他端がダイオードD1のアノードが接続され、そのダイオードD1のカソードは正側の出力端子Dに接続されている。
ブリッジ電源17の正極は、正の入力端子Aに入力スイッチS1を介して接続され、負極は、入力スイッチS2を介して負の入力端子Cに接続される。
【0028】
ひずみ測定器24は、上記ブリッジ電源17やスイッチS1,S2のほかに、差分アンプ18,19、差動アンプ20、負電位供給用電源21、負電位供給スイッチS6、レベルシフト制御部22、CPU23、読取スイッチS5、出力スイッチS3、S4および接地スイッチS7を有している。
差分アンプ18は、出力スイッチS4とケーブルを介してその入力端が正の出力端子Dに接続され、その出力端は、抵抗を介して差動アンプ20の一方の入力端に接続される。
差分アンプ19は、出力スイッチS3とケーブルを介して負の出力端Bに接続され、その出力端は抵抗を介して差動アンプ20の他方の入力端に接続される。
接地スイッチS7は、負の出力端子Bとアースとの間に介挿されている。
負電位供給用電源21の負極側と正の出力端子Dとの間には、負電位供給用スイッチS6が介挿されている。
レベルシフト制御部22と正側の出力端子Dとの間には、読取スイッチS5が介挿されている。
【0029】
このような構成よりなるひずみ測定装置の動作を図3を用いて詳しく説明する。
先ず、最初にデジタルモード(TEDS情報アクセスモード)に設定し、TEDS13に記憶されている情報を読み取ることから始める。
デジタルモードとアナログモードとの切換えは、スイッチS1〜スイッチS7のオンオフ制御によって行われるが、具体的には、表1の真理値に示すように行われる。
【0030】
【表1】

【0031】
即ち、表1に示されるように、TEDS情報を読み取るモード(デジタルモード)においては、読取スイッチS5、負電位供給スイッチS6、接地スイッチS7をそれぞれオンとし、入力スイッチS1、S2、出力スイッチS3、S4をそれぞれオフとする。
このように、入力スイッチS1、S2をオフとすることにより、P型FET15aとN型FET15bは共にオフとなるので、ひずみセンサ12と正側の出力端子Dおよび負側の出力端子との間は遮断される。
一方、負電位供給スイッチS6をオンとすることで、負電位供給用電源21から負電位供給スイッチS6→正の出力端子D→ダイオードD1を介してTEDS13の一端に負電位が供給され、TEDS13の他端は接地スイッチS7を介してアースされているので、TEDS13に記憶されているひずみセンサ12に関する情報、例えば、設置場所、方向、感度、較正値等が読取スイッチS5を介して、レベルシフト制御部22、CPU23によって、読み取ることができる。
【0032】
次に、アナログモード、即ち、ひずみ測定時には、入力スイッチS1、S2をオンとして入力端子A、C間にブリッジ電源17、17からブリッジ電圧を印加し、出力スイッチS3、S4をオンとして、負側の出力端子Bを差分アンプ19に接続し、正側の出力端子を差分アンプ18に接続する一方、読取スイッチS5をオフとしてレベルシフト制御部22を切り離し、負電位供給スイッチS6をオフとして負電位供給用電源21を切り離し、接地スイッチS7をオフとして接地から切り離す。
ブリッジ電源17から入力スイッチS1、S2を介してブリッジ回路にブリッジ電圧を印加すると、P型FET15aおよびN型FET15bは共にオンとなり、ひずみセンサ12からのアナログ信号は、出力端子D、B、出力スイッチS4、S3、差分アンプ18、19に入力され、さらに差動アンプ20によって、増幅されて被測定対象物理量や機械量に対応した測定出力が得られる。
ひずみ測定のアナログモードの際には、読取スイッチS5、負電位供給スイッチS6、接地スイッチS7はオフとされる上、差分アンプ18、19には、入力インピーダンスの高いものを使用しているので、前記アナログ測定信号は、電位だけとなり、電流が殆ど流れず、ひずみ測定値に与える影響を阻止することができる。
【0033】
モード切換回路15を構成するP型FET15a、N型FET15b、ダイオードD1、抵抗R1、R2をICチップ化することにより、この部分を小型・軽量化することが可能となるので、ひずみゲージ式変換器の内部に収容したり、一体化することもできる。
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形して実施することができる。
即ち、上述した実施の形態ではセンサ本体を荷重変換器について説明したが、他のひずみゲージ式変換器、例えば変位変換器、圧力変換器、加速度変換器、トルク変換器、傾斜計、土圧計等にも適用することができ、また、ひずみゲージを直接被測定対象個所に接着して、その個所のひずみを検出する場合にも適用可能である。
また、情報記憶媒体として、TEDSを用いた例を示したが、内部に読み書き可能なメモリを持ち、センサ自体とその使用に係わる必要な情報を記憶することができ負電位を供給することで、情報を読み取れるものであれば、その名称の如何に拘わらず、使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るセンサ本体の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るセンサ本体にリモートセンシング機能を付加した場合の回路図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るひずみ測定装置の構成を示す回路図である。
【図4】従来のひずみセンサにTEDSを付加して配線した状態を示す回路図である。
【図5】従来のひずみセンサにリモートセンシング機能を付加した場合の回路図である。
【符号の説明】
【0035】
11 センサ本体
12 ひずみセンサ
12a,12c 入力端
12b,12d 出力端
13 TEDS(Transducer Electronic Date Sheet)
14 シールド線
15 モード切換回路
15a Pチャンネル接合型FET
15b Nチャンネル接合型FET
16a,16b センシングリード線
17 ブリッジ電源
18,19 差分アンプ
20 差動アンプ
21 負電位供給用電源
22 レベルシフト制御部
23 CPU
24 ひずみ測定器
S1,S2 入力スイッチ
S3,S4 出力スイッチ
S5 読取スイッチ
S6 負電位供給スイッチ
S7 接地スイッチ
SG1〜SG4 ひずみゲージ
R1、R2 抵抗
D1 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみゲージで形成されたホイートストンブリッジ回路よりなるひずみセンサと、前記ひずみセンサに関する情報が読み書き可能な情報記憶媒体とが一体的にまたは近傍に配設されたセンサ本体であって、
前記ひずみセンサから出力される被測定対象物理量に応じたアナログ信号と、前記情報記憶媒体が記憶している情報に応じて出力されるデジタル信号とを、共通の2つの出力端子に選択的に出力させるモード切換回路と、
前記ホイートストンブリッジ回路にブリッジ電源を供給するための2つの入力端子と、
前記ホイートストンブリッジ回路の出力端と前記情報記憶媒体の出力端とが共通に接続される前記2つの出力端子を備えたことを特徴とするセンサ本体。
【請求項2】
前記モード切換回路は、前記ホイートストンブリッジ回路の一対の出力端と前記一対の出力端子との間に介挿された二つのスイッチング素子と、
一端が前記負側の出力端子に接続された前記情報記憶媒体の他端と前記正側の前記出力端子との間に介挿されたダイオードとからなり、
前記2つの入力端子にブリッジ電源を供給した状態では、前記出力端子から被測定対象の物理量に応じたアナログ信号が前記出力端子から出力され、前記ブリッジ電源の供給を断った状態で、前記正側の出力端子に負電位を供給した状態では、前記情報記憶媒体に記憶している情報を前記出力端子から読み取りを行い得るように構成したことを特徴とする請求項1に記載のセンサ本体。
【請求項3】
前記モード切換回路は、前記ホイートストンブリッジ回路の一方の出力端と正側の前記出力端子との間に直列に接続されたPチャンネル接合型FETからなる第1のスイッチング素子と、
前記ブリッジ回路の他方の出力端と負側の前記出力端子との間に接続されたNチャンネル接合型FETからなる第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子のゲートと前記負側の出力端子との間に接続された第1の抵抗と、
前記第2のスイッチング素子のゲートと前記正側の出力端子との間に接続された第2の抵抗と、
前記情報記憶媒体の前記他端にアノードが接続され、前記正側の出力端子にカソードが接続されたダイオードと、
から構成されていることを特徴とする請求項2に記載のセンサ本体。
【請求項4】
前記情報記憶媒体は、TEDSからなり、出荷時に、メーカー名、センサの種類、型式、シリアル番号、校正値のうちのいずれかの情報を記憶させ、出荷後にチャンネルID、設置場所、タグ番号等をユーザの所望に応じて記憶させ得るものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ本体。
【請求項5】
前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第1の抵抗、前記第2の抵抗および前記ダイオードからなる回路部分をICチップ化してなることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のセンサ本体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ本体を用いるひずみ測定装置であって、前記入力端子にブリッジ電圧を供給するブリッジ電源と、
前記入力端子と前記ブリッジ電源との間に介挿される入力スイッチと、
前記ブリッジ回路の出力の差分を検出する1対の差分アンプと、
前記差分アンプと前記出力端子との間に介挿される出力スイッチと、
正側の前記出力端子に選択的に接地電位よりも低い負電位を供給する負電位供給スイッチと、
前記TEDSに記憶されている情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段と前記出力端子の正側との間に介挿される読取スイッチと、
前記出力端子の負側を選択的に接地する接地スイッチとを、
有してなることを特徴とするひずみ測定装置。
【請求項7】
前記入力スイッチ、前記出力スイッチを、それぞれオンとすると共に前記負電位供給スイッチ、前記読取スイッチ、前記接地スイッチをそれぞれオフとすることにより前記ひずみセンサの出力を前記差分アンプに供給し、前記入力スイッチ、前記出力スイッチをそれぞれオフとすると共に前記負電位供給スイッチ、前記読取スイッチ、前記接地スイッチをそれぞれオンとすることにより前記TEDSに記憶された情報を読取手段で読取るように構成したことを特徴とする請求項6に記載のひずみ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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