説明

センサ装置

【課題】 製造工程においてパッケージの表面に形成されたパッドが傷付かないようにすることができるセンサ装置を実現する。
【解決手段】 センサチップ51が収容されたパッケージ20は、ダンパ80を介してケース90に収容されている。パッケージ20の表面22aには、パッド形成領域E1の外周を囲むように枠状体40が設けられている。枠状体40は、セラミックにより、パッド23の厚さよりも厚く、かつ、封止層70の厚さよりも厚く形成されている。このため、表面22aを下にしてパッケージ20をハンドリングする際にパッド23の表面に傷が付くおそれがない。また、パッド形成領域E1に封止材を塗布する際に封止材が枠状体40を超えて垂れるおそれもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサチップが収容されたセラミック製のパッケージがさらにケースに収容されたセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック製のパッケージに形成された凹部にセンサチップを収容し、その凹部の開口部を蓋によって閉塞してなるセンサ装置が提案されている(特開2006−84200号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−84200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、外部からセンサ装置に伝達する振動を緩和することにより、さらに検出精度を高めることができるセンサ装置を開発した。以下、そのセンサ装置の製造方法について図を参照して説明する。なお、以下では、センサ装置としてヨーレートセンサ、加速度センサなど、車両の制御に用いるセンサ装置を例に挙げて説明する。
【0005】
図7は、センサ装置を構成するパッケージの製造工程を示す説明図である。図8は、パッケージの説明図であり、(a)はパッケージの表面の平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図9はパッケージを搬送する様子を示す説明図である。図10はセンサ装置の説明図であり、(a)は内部構造の一部を露出して示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0006】
まず、図7(a)に示すパッケージ20を製造する。パッケージ20は、アルミナなどにより形成されたセラミック層を複数積層して構成されている。パッケージ20には凹部26が形成されている。また、図示しないが、各セラミック層の表面や各セラミック層に形成されたスルーホールには、配線が形成されている。
【0007】
続いて、図7(b)に示すように、回路チップ50をパッケージ20の凹部26の底面に接着し、センサチップ51を回路チップ50の表面に接着する。回路チップ50には、センサチップ51からの検出信号を車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)にて処理可能な信号に変換する回路などが搭載されている。続いて、センサチップ51の表面に形成されたパッド(図示せず)と回路チップ50の表面に形成されたパッドとをボンディングワイヤ60によって接続する。また、回路チップ50の表面に形成されたパッドとパッケージ20に形成されたパッドとをボンディングワイヤ61によって接続する。
【0008】
続いて、図7(c)に示すように、蓋30をパッケージ20に溶接またはロウ付けし、パッケージ20内を封止する。蓋30は、金属により形成されている。また、図8(a)に示すように、パッケージ20の最下層に配置されたセラミック層22の表面22a、つまり、図7(b)に示すパッケージ20の下面には、パッド23〜25が形成されている。
【0009】
パッド23は、センサチップ51からの検出信号を取出すためのパッドやセンサチップ51に動作電源を供給するためのパッドなどから構成されている。パッド23において交差したハッチングを施した部分が、ボンディングワイヤを接続する領域である。パッド24は、センサチップ51を検査する際に用いるパッドである。パッド25は、コンデンサ52などの電子部品を接続するためのパッドである。各パッド23〜25は、パッケージ20の内部に形成された配線およびボンディングワイヤ61を介して回路チップ50と接続されている。
【0010】
続いて、図9に示すように、パッケージ20をトレイ100に載置し、コンデンサ52などの電子部品を取付ける工程へ搬送する。そして、図7(d)に示すように、パッケージ20の上下を反転させ、パッケージ20の表面22aに形成されたパッド25にコンデンサ52などの電子部品を接続する。
【0011】
図10に示すように、ケース90には、上面が開口したケース本体91と、このケース本体91を封止する蓋92とが備えられている。また、ケース本体91には、その内部から外部へ導出されたリード63が取付けられている。リード63は、ECUに接続され、そのECUが、回路チップ50からの信号に基いてヨーレートや加速度などを演算する。
続いて、蓋30とケース本体91の底面との間にダンパ80を介在させ、パッケージ20をケース本体91の底面に配置する。このダンパ80は、外部からセンサチップ51に伝達する振動を吸収するためのものであり、たとえば、接着剤である。
【0012】
続いて、パッケージ20の表面23aに形成された各パッド23と、対応するリード63とをボンディングワイヤ62によって接続する。続いて、パッケージ20の表面23aに配置された各パッド23〜25およびコンデンサ52などの電子部品を封止材によって封止する。図中、符号70で示す領域が、封止材により形成された封止層である。また、ボンディングワイヤ62およびリード63の接続部位も封止材によって封止する。封止材は、たとえば、ゲル状のエポキシ樹脂である。続いて、蓋92をケース本体91に取付け、蓋92およびケース本体91の境界を封止材によって封止する。これでセンサ装置200が完成する。
【0013】
しかし、その後の研究により、センサ装置200を製造する過程で、パッド23〜25の表面に傷が付き、ボンディングワイヤ62との接触面積が不足し、ボンディングワイヤ62の接続強度不足が発生するおそれのあることが分かった。そこで、パッドの表面に傷が付く原因を調査した結果、パッドが形成された表面23aを下にしてパッケージ20のハンドリングを行うことが原因であることが分かった。
【0014】
具体的には、パッケージ20の凹部26に回路チップ50およびセンサチップ51を取付ける際に、表面23aを下にしてパッケージ20を作業台の上に載置するときにパッドの表面が作業台の表面と擦れ、パッドの表面に傷が付くおそれがあった。また、パッケージ20の凹部26に回路チップ50およびセンサチップ51を取付けるとき、あるいは、回路チップ50およびセンサチップ51にボンディングワイヤ60,61を接続するときにパッケージ20が動き、パッドの表面が作業台の表面と擦れ、パッドの表面に傷が付くおそれがあった。また、図9に示すように、パッケージ20をトレイ100に載置して搬送するとき、パッケージ20が動くため、パッドの表面がトレイ100の表面と擦れ、パッドの表面に傷が付くおそれがあった。
【0015】
そこでこの発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、製造工程においてパッケージの表面に形成されたパッドが傷付かないようにすることができるセンサ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数のセラミック層(21)を積層してなる基板(20)と、前記基板の裏面に形成された凹部(26)と、前記凹部に収容されたセンサチップ(51)と、前記凹部の開口部を閉塞する蓋(30)と、前記基板の表面(22a)に形成されており、前記センサチップと電気的に接続されたパッド(23〜25)と、を有するパッケージ(20)と、前記パッケージが前記蓋を下にして収容されたケース(90)と、前記ケースに収容されたパッケージの前記パッドと電気的に接続されており、前記ケースの外部に導出された端子(63)と、を備えており、封止材によって前記パッドが封止されてなるセンサ装置(10)において、セラミックにより前記パッドの厚さよりも厚く、かつ、前記パッドが形成された領域の外周を囲むように前記基板の表面に形成された壁(40)を備えるという技術的手段を用いる。
【0017】
請求項1の技術的手段を用いれば、セラミックによりパッドの厚さよりも厚く、かつ、パッドが形成された領域の外周を囲むように基板の表面に形成された壁を備えるため、表面を下にしてパッケージをハンドリングするときに、基板の表面に形成されたパッドが擦れ、パッドに傷が付くおそれがない。
【0018】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のセンサ装置(10)において、前記壁(40)は、前記パッド(23〜25)の厚さよりも厚く、かつ、前記封止材によって前記パッドを封止している封止層(70)の厚さよりも厚く形成されているという技術的手段を用いる。
【0019】
請求項2の技術的手段を用いれば、壁は、封止材によってパッドを封止している封止層の厚さよりも厚く形成されているため、封止材が枠状体を超えないようにすることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のセンサ装置(10)において、前記壁(40)は枠状に形成されているという技術的手段を用いる。
【0021】
請求項3の技術的手段を用いれば、壁は枠状に形成されているため、基板を構成するセラミック層に積層し易いため、壁を容易に作成することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のセンサ装置(10)において、前記蓋(30)とケース(90)の底面との間に緩衝部材(80)が介在されているという技術的手段を用いる。
【0023】
請求項4に記載のように、蓋とケースの底面との間に緩衝部材が介在されている構造のセンサ装置にあっては、封止材が垂れて緩衝部材に付着すると、緩衝部材の緩衝特性が損なわれるおそれがあるが、パッドを封止している封止層の厚さよりも厚く形成された壁により、パッドが形成された領域を囲めば、封止材が垂れるおそれがないため、緩衝部材の緩衝特性が損なわれるおそれがない。
【0024】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態に係るセンサ装置の説明図であり、(a)は内部構造の一部を露出して示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図2】パッケージの説明図であり、(a)はパッケージの表面の平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図3】図2(a)のB−B矢視断面図である。
【図4】枠状体の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図5】パッケージを搬送する様子を示す説明図である。
【図6】枠状体の変更例を示す説明図である。
【図7】従来のセンサ装置を構成するパッケージの製造工程を示す説明図である。
【図8】パッケージの説明図であり、(a)はパッケージの表面の平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図9】パッケージを搬送する様子を示す説明図である。
【図10】センサ装置の説明図であり、(a)は内部構造の一部を露出して示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明に係る実施形態について図を参照して説明する。図1は、この実施形態に係るセンサ装置の説明図であり、(a)は内部構造の一部を露出して示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図2は、パッケージの説明図であり、(a)はパッケージの表面の平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図3は、図2(a)のB−B矢視断面図である。図4は、枠状体の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図5はパッケージを搬送する様子を示す説明図である。なお、図3,5は、枠状体の厚さがパッドよりも厚いことを分かり易くするために、枠状体およびパッドの厚さを誇張して描いてある。また、従来のセンサ装置と同じ構成については同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0027】
図1,2に示すように、パッド23〜25が形成されたパッケージ20の表面22aには、枠状体40が積層されている。この枠状体40が本願の請求項1に記載の壁に相当する。枠状体40は、パッド23〜25が形成されたパッド形成領域E1(図中破線で囲む領域)、つまり、封止材を塗布する塗布領域を囲むように配置されている。図4に示すように、枠状体40は、略矩形の枠状に形成されており、その開口部41は、パッド形成領域E1と同一の大きさに形成されている。
【0028】
また、図3に示すように、枠状体40は、パッド23〜25の厚さよりも厚く、かつ、塗布された封止材により形成される封止層70の厚さよりも厚く形成されている。この実施形態では、枠状体40は、その外周縁がパッケージ20の表面22aの外周縁と一致するように配置されている。
【0029】
また、枠状体40は、セラミックにより形成されており、アルミナのグリーンシートを型抜きして形成することができる。そして、型抜きされた枠状体40は、パッケージ20を製造する際に他のセラミック層21と同じように積層され、焼成されることにより、パッケージ20を形成する。
【0030】
上述したように、パッド形成領域E1の外周を囲むように配置された枠状体40は、パッド23〜25の厚さよりも厚いため、表面23aを下にしてパッケージ20をハンドリングする際に、パッドの表面が擦れて傷が付くおそれがない。
したがって、ボンディングワイヤ62の接触面積が不足することにより、ボンディングワイヤ62の接続強度が不足するおそれがない。
【0031】
また、枠状体40は、パッド形成領域E1に塗布する封止材により形成される封止層70の厚さよりも厚く形成されているため、封止材が枠状体40を超えるおそれがない。
したがって、封止材がパッケージ20の側面に垂れ、ダンパ80に付着するおそれがないため、封止材の付着によるダンパ80のダンパ特性が損なわれるおそれがない。
【0032】
また、図6(a)に示すように、パッド形成領域E1を複数に分割し、各パッド形成領域E1に封止材を塗布する場合は、同図(b)に示すように、各パッド領域E1を個別に囲む開口部41が形成された枠状体40を用いることもできる。この構造を用いれば、パッド形成領域E1に塗布された封止材が、隣接するパッド形成領域E1に漏れないため、特定のパッド形成領域E1における封止材の塗布量が過多になるおそれがない。また、各パッド形成領域E1毎に封止材の塗布量を制御することができる。
【0033】
また、枠状体40は、セラミック層21と同じようにアルミナのグリーンシートを加工して形成するのではなく、アルミナなどのセラミック材料をパッケージ20の表面22aに枠状に塗布することにより形成することもできる。また、封止材の垂れを目的としない場合は、枠状体40は連続形成されている必要はなく、1箇所または複数箇所に切れ目が形成されていても良い。
【符号の説明】
【0034】
10・・センサ装置、20・・パッケージ(基板)、21,22・・セラミック層、
23,24,25・・パッド、26・・凹部、30・・蓋、40・・枠状体(壁)、
50・・回路チップ、51・・センサチップ、
60,61,62・・ボンディングワイヤ、63・・リード(端子)、
70・・封止層、80・・ダンパ(緩衝材)、90・・ケース、
E1・・パッド形成領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック層を積層してなる基板と、前記基板の裏面に形成された凹部と、前記凹部に収容されたセンサチップと、前記凹部の開口部を閉塞する蓋と、前記基板の表面に形成されており、前記センサチップと電気的に接続されたパッドと、を有するパッケージと、
前記パッケージが前記蓋を下にして収容されたケースと、
前記ケースに収容されたパッケージの前記パッドと電気的に接続されており、前記ケースの外部に導出された端子と、
を備えており、封止材によって前記パッドが封止されてなるセンサ装置において、
セラミックにより前記パッドの厚さよりも厚く、かつ、前記パッドが形成された領域の外周を囲むように前記基板の表面に形成された壁を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記壁は、前記パッドの厚さよりも厚く、かつ、前記封止材によって前記パッドを封止している封止層の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記壁は枠状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記蓋と前記ケースの底面との間に緩衝部材が介在されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のセンサ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−247625(P2011−247625A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118295(P2010−118295)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】