説明

センシングシステム

【課題】長距離に渡って複数箇所の計測を行う場合であっても、進路が変更される光源からの光の強度を低下させることなく、計測精度を高めること。
【解決手段】たとえば振動観測を行う際の外部要因を計測する検出部128〜139として、種々の検出手段を用いることができ、また、光サーキュレータ106a〜106lは従来の光カプラのように光を分岐させるものではなく光の出力先を変更するものであるから光サーキュレータ106a〜106lが増えてもそれぞれの光サーキュレータ106a〜106lによって出力先が変更されるそれぞれの光の強度が低下してしまうことがないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバや光ファイバ応用光学部品等を用いたセンシングシステムに係り、たとえば振動観測、温度観測、水位観測、速度観測、加速度観測、歪観測等を行う計測に適したセンシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ファイバや光ファイバ応用光学部品等を用いることにより、たとえば振動観測、温度観測、水位観測、速度観測、加速度観測、歪観測等を行う計測に適したセンシングシステムが種々提案されている。
【0003】
たとえば加速度観測を行うものとしては、特許文献1に示されているようなFBG(Fiber Bragg Grating)を有する光ファイバセンサを用いた光式加速度計が知られている。
【0004】
この光式加速度計は、光源を内蔵し反射波長を計測する波長計測器に第1の光ファイバを介して複数の光カプラを接続し、さらにそれぞれの光カプラに第2の光ファイバを接続してそれぞれの光カプラからの経路を分岐し、この分岐した第2の光ファイバの先端にセンサFBGを有する光式加速度計を接続して構成される。
【0005】
このような光式加速度計では、波長計測器の光源からの光が第1の光ファイバを伝送し、各光カプラにより分岐されて各光式加速度計に達する。そして、いずれかの光式加速度計に加速度がかかった場合には、その光式加速度計に用いられているセンサFBGからの反射光の波長が変化し、その反射した光が波長計測器に戻ることで、変化した光の波長が計測され、加速度が算出されるとともに、反射光の波長が変化した位置が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−30796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1での光式加速度計では、変化した光の波長が波長計測器によって計測されることで、特定位置で振動があり歪が生じたことを認識でき、加速度の変化を測定することができる。
【0008】
ところが、このような光式加速度計では、センサFBGからの反射光の波長変化を観測して、振動の観測及び振動が生じた位置を特定する構成であるため、各光式加速度計に用いるセンサがFBGに限定されてしまうという問題があった。
【0009】
また、波長計測器の光源からの光は、波長計測器の光源が単一であることから、第1の光ファイバ上の各光カプラにてそれぞれの第2の光ファイバ側に分岐されるため、光カプラの数が増えるに従い、各光カプラにて分岐される光の強度が低下してしまうという問題もあった。
【0010】
また、長距離に渡って複数箇所の計測を行うものとすると、複数箇所に光式加速度計を設置する必要が生じることから、自ずと光カプラの数が増えることになり、光源から遠ざかるに従い、光カプラにて分岐される光の強度がさらに低下してしまうことで、各光式加速度計のセンサFBGうち、光源から遠い位置にあるセンサFBGからの反射光の強度が著しく低下してしまうことになり、振動が生じた位置を特定できないことが予測され、計測精度が劣化してしまうという問題もあった。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、長距離に渡って複数箇所の計測を行う場合であっても、進路が変更される光源からの光の強度を低下させることなく、計測精度を高めることができるセンシングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のセンシングシステムは、波長の異なる光を発する光源と、該光源からの光の出力先を変更する複数の光出力先変更手段と、これらの光出力先変更手段に対応し、これらの光出力先変更手段によって出力先が変更された特定波長の光を反射する複数の特定波長反射手段と、これらの特定波長反射手段に対応し、これらの特定波長反射手段によって反射された前記光を伝播する複数の光ファイバと、これらの光ファイバの先端に設けられ、外部要因に応じて前記光ファイバにより伝播される光の特性を変化させる複数の外部要因変化検出手段と、これらの外部要因変化検出手段からの反射光の光の特性の変化を観測する反射光観測手段とを備えることを特徴とする。
本発明のセンシングシステムでは、波長の異なる光を発する光源からの光の出力先が複数の光出力先変更手段により変更され、これらの光出力先変更手段に対応し、これらの光出力先変更手段から出力される特定波長の光が複数の特定波長反射手段により反射され、これらの特定波長反射手段によって反射された光がそれぞれの光ファイバにより伝播され、これらの光ファイバの先端に設けられた複数の外部要因変化検出手段により、外部要因に応じて光ファイバにより伝播される光の特性が変化され、これらの外部要因変化検出手段からの反射光の光の特性の変化が反射光観測手段により観測される。
すなわち、本願発明では、光源が波長の異なる光を発するため、たとえば振動観測、温度観測、水位観測、速度観測、加速度観測、歪観測等を行う際の外部要因を計測する外部要因変化検出手段として、種々の検出手段を用いることができる。
また、本願発明での光出力先変更手段は、従来の光カプラのように光を分岐させるものではなく光の出力先を変更するものであるから光出力先変更手段が増えてもそれぞれの光出力先変更手段によって出力先が変更されるそれぞれの光の強度が低下してしまうことがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセンシングシステムによれば、たとえば振動観測、温度観測、水位観測、速度観測、加速度観測、歪観測等を行う際の外部要因を計測する外部要因変化検出手段として、種々の検出手段を用いることができ、また、光出力先変更手段は従来の光カプラのように光を分岐させるものではなく光の出力先を変更するものであるから、光出力先の変更による光強度の低下は極めて小さく実用上は光強度の低下が問題になることがないので、光出力先変更手段が増えてもそれぞれの光出力先変更手段によって出力先が変更されるそれぞれの光の強度が低下してしまうことがないことから、長距離に渡って複数箇所の計測を行う場合であっても、進路が変更される光源からの光の強度を低下させることなく、計測精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のセンシングシステムの第1実施形態を説明するための図である。
【図2】図1の検出部の具体的な構成例を説明するための図である。
【図3】図1のセンシングシステムの構成を変えた場合の第2実施形態を説明するための図である。
【図4】図1のセンシングシステムの構成を変えた場合の第3実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の詳細について説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明のセンシングシステムの一実施形態を説明するための図であり、図2は図1の検出部の具体的な構成例を説明するための図である。なお、以下のセンシングシステムは、たとえば振動観測、温度観測、水位観測、速度観測、加速度観測、歪観測等を行う計測に適したものであり、光の特性の変化を観測するセンシングシステムであれば、その用途は限定されるものではないが、説明を分かり易くするために、たとえば振動観測を行う場合として説明するものとする。
【0016】
図1に示すセンシングシステムは、光ファイバ300によって接続される計測部1と測定部2とを備えている。計測部1は、レーザダイオード101〜103、波長合波カプラ104、光アンプ105、光サーキュレータ106、光アンプ107、波長分離カプラ108、光検出器109〜111、ADコンバータ112〜114、データ処理装置115を有している。
【0017】
レーザダイオード101〜103は、光源であり、それぞれ所定の波長(λ1〜λn)の光を発する。ここで、それぞれ所定の波長(λ1〜λn)は、後述のFBG116〜127の特性に合わせられている。
【0018】
波長合波カプラ104は、レーザダイオード101〜103から発せられた光の波長(λ1〜λn)を合波する。光アンプ105は、波長合波カプラ104からの光を所定レベルまで増幅する。
【0019】
光サーキュレータ106は、光アンプ105で増幅された光を光ファイバ300を介して測定部2側に出力したり、光ファイバ300からの反射光を光ファイバ301を介して光アンプ107側に出力したりする。ここで、光サーキュレータ106は、複数のポート(端子)を有しているものであり、たとえば3ポート(端子)を有しているとすると、たとえば第1のポートに入力した光が第2のポートにのみ出力され、第2のポートに入力した光が第3のポートにのみ出力され、第3ポートに入力した光が第1のポートにのみ出力されるといったような特性を持っている。
【0020】
光アンプ107は、光ファイバ301を介しての各測定部2側からの反射光を所定レベルまで増幅する。波長分離カプラ108は、光アンプ107により所定レベルまで増幅された反射光を、それぞれの波長(λ1〜λn)に分離する。
【0021】
光検出器109〜111は、波長分離カプラ108により分離されたそれぞれの波長(λ1〜λn)の光を電気信号(アナログ信号)として取り出す。ADコンバータ112〜114は、光検出器109〜111からの電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。データ処理装置115は、ADコンバータ112〜114からのそれぞれのデジタル信号を蓄積し、所定のデータ表現形式に変換する。
【0022】
測定部2は、光サーキュレータ106a〜106l、FBG(Fiber Bragg Grating Sensor)116〜127、検出部128〜139を有している。なお、図1においては、それぞれの測定部2が4個の光サーキュレータ106a〜106d、106e〜106h、106i〜106l、FBG116〜127、検出部128〜139を備えている場合で示しているが、これに限らず、たとえば光サーキュレータ106a〜106l、FBG116〜127、検出部128〜139がそれぞれ1個、2個又は3個で測定部2が構成されていてもよいし、当然に、それぞれが5個以上で構成されていてもよいことは勿論である。
【0023】
光サーキュレータ106a〜106lは、上記の光サーキュレータ106と同様に、複数のポート(端子)を有しているものであり、たとえば3ポート(端子)を有しているとすると、たとえば第1のポートに入力した光が第2のポートにのみ出力され、第2のポートに入力した光が第3のポートにのみ出力され、第3ポートに入力した光が第1のポートにのみ出力されるといったような特性を持っている。
【0024】
FBG116〜127は、上述した光源であるレーザダイオード101〜103からのそれぞれの所定の波長(λ1〜λn)と同じ波長の光のみを反射するといった特性を持っている。つまり、たとえばFBG116はレーザダイオード101からの波長(λ1)の光のみを反射し、FBG117はレーザダイオード102からの波長(λ2)の光のみを反射し、FBG127はレーザダイオード103からの波長(λn)の光のみを反射するものとなっている。
【0025】
ここで、FBG116〜127は、屈折率変調の周期に比例したブラッグ波長と呼ばれる特定の波長(λ1〜λn)の光のみを反射するといった特性を持っている。また、FBG116〜127にあっては、長手方向に歪が加わったり、また温度が変化したりすると、ブラッグ波長が変化する。その変化量はFBGに加わった歪や温度等の変化に対して線形に変化する。
【0026】
検出部128〜139は、振動を検知し、この検知した振動により光の波長変化や強度変化を生じるセンサを構成している。
【0027】
ここで、検出部128〜139の構成の一例を、図2(a)(b)を参照して説明する。なお、検出部128〜139の構成は全て同じであるため、図2においては、検出部128を代表させて説明するものとする。
【0028】
まず、図2(a)に示すように、検出部128は任意の測定対象物400に取り付けられている。検出部128は、光ファイバ302の先端側に設けられたFBG200と、光ファイバ302が撓まないように鉛直方向に延びる姿勢を保持する滑車201と、光ファイバ302に振動を伝達する振動伝達滑車202とを有している。
【0029】
FBG200は、図1に示すFBG116と同様の波長の光のみを反射するものとなっている。振動伝達滑車202には、支持棒204の一端側が連結されている。支持棒204の他端側には、バネ206により上方に付勢された重り205が連結されている。なお、図中符号209aは振動伝達滑車202を測定対象物400に固定するブラケットであり、符号209bは滑車201を測定対象物400に固定するブラケットであり、符号209cは光ファイバ302の先端側を測定対象物400に固定するブラケットである。
【0030】
このような検出部128では、測定対象物400が振動すると、バネ206により上方に付勢された重り205が矢印方向に振動し、支持棒204を矢印方向に回動させる。つまり、バネ206により上方に付勢された重り205と支持棒204とにより振動計が構成されている。このとき、支持棒204の一端側が振動伝達滑車202を介して光ファイバ302に振動を伝えることで、FBG200に対し矢印方向に伸縮の形で振動が伝えられる。これにより、FBG200からの反射光の波長に変化が生じることになり、反射光が振動と連動して変化するようにした検出部128が構成される。
【0031】
また、図2(b)に示す検出部128は、板バネ208の一端側が測定対象物400に取り付けられ、板バネ208の他端側にバネ206により上方に付勢された重り205が連結されている。また、板バネ208の一端側には、光ファイバ302の先端に設けられた取り付けられダイヤフラム207が取り付けられている。
【0032】
このような検出部128では、測定対象物400が振動すると、バネ206により上方に付勢された重り205が振動し、板バネ208を矢印方向に振動させる。つまり、バネ206により上方に付勢された重り205と板バネ208とにより振動計が構成されている。このとき、光干渉計をなすダイヤフラム207からの反射光の強度に変化が生じることになり、反射光の強度が振動と連動して変化するようにした検出部128が構成される。
【0033】
次に、センシングシステムにおける振動の計測について説明する。まず、計測部1のレーザダイオード101〜103を駆動し、それぞれのレーザダイオード101〜103から光を出力する。このとき、レーザダイオード101からはλ1の波長の光が出力され、レーザダイオード102からはλ2の波長の光が出力され、レーザダイオード103からはλnの波長の光が出力される。これらの波長(λ1〜λn)は、上述したように、FBG116〜127の特性に合わせられている。
【0034】
レーザダイオード101〜103から出力されたそれぞれの光は、波長合波カプラ104により合波され、光アンプ105により所定レベルまで増幅されて光サーキュレータ106を介し、光ファイバ300に出力される。そして、光サーキュレータ106から出力された光は、測定部2の全ての光サーキュレータ106a〜106lを通過し、最終まで伝播する。
【0035】
ここで、FBG116ではλ1の波長の光が反射し、光サーキュレータ106aから光ファイバ302を介して検出部128側に入射する。同様に、FBG117ではλ2の波長の光が反射し、光サーキュレータ106bから光ファイバ302を介して検出部129側に入射する。以下、同様に、それぞれのFBG118〜127では対応するλ3〜λnの波長の光が反射し、光サーキュレータ106c〜106lら光ファイバ302を介して検出部130〜139側に入射する。
【0036】
ここで、たとえば測定部2の検出部128が図2(a)に示した構成であるとすると、測定対象物400が振動することにより、バネ206により上方に付勢された重り205が矢印方向に振動し、支持棒204を矢印方向に回動させることで、支持棒204の一端側が振動伝達滑車202を介して光ファイバ302に振動を伝え、FBG200に対し矢印方向に伸縮の形で振動が伝えられる。これにより、測定対象物400の振動に連動してFBG200からの反射光の波長に変化が生じる。この現象は、測定部2の他の検出部129〜139でも同様である。
【0037】
また、たとえば測定部2の検出部128が図2(b)に示した構成であるとすると、測定対象物400が振動することにより、バネ206により上方に付勢された重り205が振動し、板バネ208を矢印方向に振動させる。このとき、ダイヤフラム207からの反射光の強度に変化が生じることになり、測定対象物400の振動に連動して反射光の強度が変化する。この現象は、測定部2の他の検出部129〜139でも同様である。
【0038】
そして、それぞれの検出部128からの反射光が光サーキュレータ106a〜106l及び光ファイバ300を介して計測部1に戻ると、計測部1の光サーキュレータ106により光ファイバ301側に分岐され、光アンプ107により所定レベルまで増幅されて出力される。
【0039】
光アンプ107により所定レベルまで増幅された反射光は、波長分離カプラ108によりそれぞれの波長(λ1〜λn)に分離され、光検出器109〜111により分離されたそれぞれの波長(λ1〜λn)の光が電気信号(アナログ信号)として取り出される。そして、データ処理装置115により、ADコンバータ112〜114からのそれぞれのデジタル信号が蓄積され、所定のデータ表現形式に変換される。
【0040】
ここで、各測定部2からの反射光が図2(a)で説明した測定対象物400の振動に連動してFBG200からの反射光の波長に変化が生じるものである場合、データ処理装置115によるデータ表現形式を、たとえば光のスペクトルで表すものとすると、それぞれのλ1〜λnの反射波長のスペクトルを観測することができる。また、データ処理装置115によるデータ表現形式を、たとえば光の強度で表すものとすると、それぞれのλ1〜λnの反射波長の強度の変化を観測することができる。
【0041】
この場合、各測定部2が図2(a)の構成であるとし、いずれかの測定部2のFBG200に測定対象物400の振動に連動した歪みが生じると、反射波長が短波長側にシフトするので、対応するFBG116とは異なった反射波長となる。このとき、測定部2のFBG200での反射光量が減少するため、データ処理装置115によるデータ表現形式を、たとえば光のスペクトルで表すものとすると、その光のスペクトルから振動が生じたことの確認が可能になる。
【0042】
また、各測定部2が図2(b)の構成であるとし、いずれかの測定部2からの反射光の強度が測定対象物400の振動に連動して変化するものとし、データ処理装置115によるデータ表現形式を、たとえば光の強度で表すものとすると、その光の強度の変化から振動が生じたことの確認が可能になる。
【0043】
このように、第1実施形態では、波長の異なる光を発する複数の光源であるレーザダイオード101〜103からの光が合波手段である波長合波カプラ104により合波され、該波長合波カプラ104からの光の出力先が複数の光出力先変更手段である光サーキュレータ106a〜106lにより変更され、これらの光サーキュレータ106a〜106lに対応し、これらの光サーキュレータ106a〜106lから出力される特定波長の光が複数の特定波長反射手段であるFBG116〜127により反射され、これらのFBG116〜127に対応し、これらのFBG116〜127によって反射された光が複数の光ファイバ302により伝播され、これらの光ファイバ302の先端に設けられた複数の外部要因変化検出手段である検出部128〜139により、外部要因に応じて光ファイバ302により伝播される光の特性が変化され、これらの検出部128〜139からの反射光が波長分離手段である波長分離カプラ108によりそれぞれの波長毎に分離され、該波長分離カプラ108によって分離されたそれぞれの波長(λ1〜λn)の光が複数の光検出器109〜111により電気信号として取り出され、これらの光検出器109〜111からの電気信号がADコンバータ112〜114によりデジタル信号に変換されると、反射光観測手段であるデータ処理装置115により該ADコンバータ112〜114からのそれぞれのデジタル信号が蓄積され、所定のデータ表現形式に変換される。
【0044】
すなわち、第1実施形態では、レーザダイオード101〜103が波長(λ1〜λn)の異なる光を発するために複数設けられていることから、たとえば振動観測を行う際の外部要因を計測する外部要因変化検出手段である検出部128〜139として、従来のようなFBGに限らず、図2のような振動計等のように外部要因に応じて光の特性を変化させる検出手段であれば、種々の検出手段を用いることができる。
【0045】
また、第1実施形態での光出力先変更手段である光サーキュレータ106a〜106lは、従来の光カプラのように光を分岐させるものではなく光の出力先を変更するものであるから光サーキュレータ106a〜106lが増えてもそれぞれの光サーキュレータ106a〜106lによって出力先が変更されるそれぞれの光の強度が低下してしまうことがない。
【0046】
このようなことから、たとえば振動観測を行う際の外部要因を計測する検出部128〜139として、種々の検出手段を用いることができ、また、光サーキュレータ106a〜106lは従来の光カプラのように光を分岐させるものではなく光の出力先を変更するものであるから光サーキュレータ106a〜106lが増えてもそれぞれの光サーキュレータ106a〜106lによって出力先が変更されるそれぞれの光の強度が低下してしまうことがないことから、長距離に渡って複数箇所の計測を行う場合であっても、進路が変更されるレーザダイオード101〜103からの光の強度を低下させることなく、計測精度を高めることができる。
【0047】
(第2実施形態)
図3は、図1のセンシングシステムの構成を変えた場合の第2実施形態を示す図である。なお、以下に示す図において、図1と共通する部分には同一符号を付し重複する説明は適宜行うものとする。
【0048】
第2実施形態では、図1に示した複数の光検出器109〜111及びADコンバータ112〜114をそれぞれ単一の光検出器109及びADコンバータ112とし、光検出器109と波長分離カプラ108との間に、高速光スイッチ140を設けている点でのみ、図1のセンシングシステムとは構成が相違している。
【0049】
このような構成では、第1実施形態と同様に、それぞれの検出部128からの反射光が光サーキュレータ106a〜106l及び光ファイバ300を介して計測部1に戻ると、計測部1の光サーキュレータ106により光ファイバ301側に分岐され、光アンプ107により所定レベルまで増幅されて出力される。
【0050】
また、光アンプ107により所定レベルまで増幅された反射光は、波長分離カプラ108によりそれぞれの波長(λ1〜λn)に分離されるが、ここで、高速光スイッチ140によりそれぞれの波長(λ1〜λn)毎に光検出器109に順次出力されるようにスイッチングされる。
【0051】
すなわち、高速光スイッチ140によるスイッチングを、たとえば各検出部128〜139からの反射光が戻る際の時間差に合わせて行わせることにより、反射光の波長(λ1〜λn)毎に光検出器109に順次出力されるようにすることができる。
【0052】
これにより、高速光スイッチ140では波長(λ1)のみの反射光が光検出器109に出力され、高速光スイッチ141では波長(λ2)のみの反射光が光検出器110に出力され、高速光スイッチ142では波長(λn)のみの反射光が光検出器111に出力されることになる。
【0053】
そして、高速光スイッチ140のスイッチングにより順次出力されるそれぞれの波長(λ1〜λn)の光が光検出器109により電気信号(アナログ信号)として取り出され、ADコンバータ112によりデジタル信号に変換されてデータ処理装置115に順次出力されると、上記同様に、データ処理装置115によりADコンバータ112から順次出力されるデジタル信号が蓄積され、所定のデータ表現形式に変換される。
【0054】
このように、第2実施形態では、図1に示した複数の光検出器109〜111及びADコンバータ112〜114をそれぞれ単一の光検出器109及びADコンバータ112とし、光検出器109と波長分離カプラ108との間に、高速光スイッチ140を設けているため、高速光スイッチ140により反射光をそれぞれの波長(λ1〜λn)毎に光検出器109に順次出力されるようにスイッチングされることから、光検出器109〜111及びADコンバータ112〜114をそれぞれ単一のものとしても、第1実施形態と同様に、長距離に渡って複数箇所の計測を行う場合、進路が変更されるレーザダイオード101〜103からの光の強度を低下させることなく、計測精度を高めることができる。
【0055】
(第3実施形態)
図4は、図1のセンシングシステムの構成を変えた場合の第3実施形態を示す図である。なお、以下に示す図において、図1と共通する部分には同一符号を付し重複する説明は適宜行うものとする。
【0056】
第3実施形態では、図1に示した光検出器109〜111と波長分離カプラ108との間に、それぞれの光検出器109〜111に対応させて高速光スイッチ140〜142を設けている点でのみ、図1のセンシングシステムとは構成が相違している。
【0057】
このような構成では、第1実施形態と同様に、それぞれの検出部128からの反射光が光サーキュレータ106a〜106l及び光ファイバ300を介して計測部1に戻ると、計測部1の光サーキュレータ106により光ファイバ301側に分岐され、光アンプ107により所定レベルまで増幅されて出力される。
【0058】
また、光アンプ107により所定レベルまで増幅された反射光は、波長分離カプラ108によりそれぞれの波長(λ1〜λn)に分離されるが、ここで、高速光スイッチ140〜142によりそれぞれの光検出器109〜111に対応する波長(λ1〜λn)のみがそれぞれの光検出器109〜111に出力されるようにスイッチングされる。
【0059】
すなわち、高速光スイッチ140では波長(λ1)のみの反射光が光検出器109に出力され、高速光スイッチ141では波長(λ2)のみの反射光が光検出器110に出力され、高速光スイッチ142では波長(λn)のみの反射光が光検出器111に出力されることになる。
【0060】
ここで、高速光スイッチ140によるスイッチングを、第2実施形と同様に、たとえば各検出部128〜139からの反射光が戻る際の時間差に合わせて行わせることにより、それぞれの光検出器109〜111に対応する波長(λ1〜λn)のみがそれぞれの光検出器109〜111に出力されるようにすることができる。
【0061】
そして、高速光スイッチ140のスイッチングにより順次出力されるそれぞれの波長(λ1〜λn)の光が光検出器109により電気信号(アナログ信号)として取り出され、ADコンバータ112によりデジタル信号に変換されてデータ処理装置115に順次出力されると、上記同様に、データ処理装置115によりADコンバータ112から順次出力されるデジタル信号が蓄積され、所定のデータ表現形式に変換される。
【0062】
このように、第3実施形態では、図1に示した光検出器109〜111と波長分離カプラ108との間に、それぞれの光検出器109〜111に対応させて高速光スイッチ140〜142を設けているため、高速光スイッチ140〜142によりそれぞれの光検出器109〜111に対応する波長(λ1〜λn)のみがそれぞれの光検出器109〜111に出力されるようにスイッチングされることから、高速光スイッチ140〜142と光検出器109〜111とを対応させるようにした場合、第1実施形態と同様に、長距離に渡って複数箇所の計測を行う場合であっても、進路が変更されるレーザダイオード101〜103からの光の強度を低下させることなく、計測精度を高めることができる。
【0063】
なお、以上の第1実施形態〜第3実施形態では、光源であるレーザダイオード101〜103を波長毎に複数設けた場合として説明したが、この例に限らず、広帯域に亘り出力が一様の自然放出光を放出するASE(Amplified Spontaneous Emission)光源を用いて所定の波長の光を選択的に出力したり、可変波長LD光源により所定の波長の光を出力したりする構成であってもよい。
【0064】
また、以上の第1実施形態及び第3実施形態では、光検出器109〜111及びADコンバータ112〜114を波長毎に複数設けた場合として説明したが、この例に限らず、第2実施形態のように高速光スイッチ140によるスイッチングにより所定の波長(λ1〜λn)のみが取り出されるようにすることで、光検出器109〜111及びADコンバータ112〜114が1個となる構成であってもよい。
【0065】
また、以上の第1実施形態〜第3実施形態では、データ処理装置115によりADコンバータ112、又はADコンバータ112〜114から順次出力されるデジタル信号が蓄積され、所定のデータ表現形式に変換される場合として説明したが、この例に限らず、光スペクトラムアナライザ、光パワーメーター等を用いて反射光の観測を行うようにしてもよい。
【0066】
また、以上の第1実施形態〜第3実施形態では、各実施形態でのセンシングシステムを、たとえば振動観測を行う場合として説明したが、これに限らず、温度観測、水位観測、速度観測、加速度観測、歪観測等を行う他の計測に適用してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
101〜103 レーザダイオード
104 波長合波カプラ
105 光アンプ
106 光サーキュレータ
106a〜106l 光サーキュレータ
107 光アンプ
108 波長分離カプラ
112〜114 ADコンバータ
115 データ処理装置
116〜127 FBG
128〜139 検出部
140〜142 高速光スイッチ
201 滑車
202 振動伝達滑車
204 支持棒
205 重り
206 バネ
207 ダイヤフラム
208 板バネ
300〜301 光ファイバ
400 測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる光を発する光源と、
該光源からの光の出力先を変更する複数の光出力先変更手段と、
これらの光出力先変更手段に対応し、これらの光出力先変更手段によって出力先が変更された特定波長の光を反射する複数の特定波長反射手段と、
これらの特定波長反射手段に対応し、これらの特定波長反射手段によって反射された前記光を伝播する複数の光ファイバと、
これらの光ファイバの先端に設けられ、外部要因に応じて前記光ファイバにより伝播される光の特性を変化させる複数の外部要因変化検出手段と、
これらの外部要因変化検出手段からの反射光の光の特性の変化を観測する反射光観測手段とを備える
ことを特徴とするセンシングシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate