説明

センタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法

【課題】 超砥粒砥石のロータリドレッサによるドレスの自動化を図り、ドレスに要する作業時間を大幅に短縮して、センタレス研削盤の稼働率の向上、生産性の向上に寄与できるようにする。
【解決手段】 ロータリドレッサを超砥粒砥石に所定量ずつ切り込みながら超砥粒砥石の砥石軸方向の全幅でトラバースしてドレスを行うに際し、粗ドレス時のドレッサ駆動モータの負荷電流値をサンプリングして、負荷電流値が超砥粒砥石の砥石軸方向の全幅で下限電流値を超えたときに粗ドレスを完了し、自動的に仕上げドレスに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法に関し、超砥粒砥石の接触式トラバースドレスの自動化を図り、そのドレスに要する作業時間を大幅に短縮して、センタレス研削盤の稼働率の向上、生産性の向上に寄与せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
高精度センタレス研削では、高精度な寸法管理が要求されるため、普通砥石に比べて摩耗が著しく少ないビトリファイドCBN砥石等の超砥粒研削砥石を用いるのが一般的である。
【0003】
この種の超砥粒研削砥石を接触式トラバースドレス法によりドレス(整形及び目立て)するに際しては、従来、ドレッサ駆動モータにより回転駆動されるロータリドレッサを所定の切り込み量で超砥粒研削砥石に接触させて砥石軸方向に繰り返しトラバースする一方、そのドレス中のドレッサ駆動モータの負荷電流をサンプリングして、砥石幅の全幅で負荷電流のサンプリング値がしきい値を超えたときにドレス状態を良好と判定する方法が採用されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−82300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビトリファイドCBN砥石は前述のように普通砥石に比べてはるかに硬く、特にスルーフィードセンタレス研削盤のように砥石幅が広い場合には、ロータリドレッサにダイヤモンドロータリドレッサを用いても、ロータリドレッサの軌跡通りに形状修正できるものではなく、その対策としてロータリドレッサの切り込み量を減らし、しかもトラバース送り速度を下げて、ドレッサ装置にかかる負担を軽減しながらドレスを行う必要がある。このため研削過程において、研削砥石の形状崩れが発生した場合には、そのドレス作業に多大な時間を要する。
【0005】
即ち、従来のドレス法では、ドレッサ駆動モータの負荷電流を監視する電流監視によりドレス完了時期の判断を行っているが、次のような問題があって、人の介入を完全に省くことができず、現在までのところ完全な自動化は実現できていない。従って、ドレス時間の短縮、人的負担の軽減について改善する余地がある。
【0006】
つまり、従来のドレス法では、ドレスをかけ過ぎた場合に(ダイヤモンドロータリドレッサの切り込み量が大きい場合)、ドレッサ装置の剛性との兼ね合いで砥石形状を悪化させる惧れがあり、ドレス作業の開始から完了までを一つのドレスサイクルで行うことは難しい。そのためドレス作業を例えば20サイクル毎の細切れとし、各ドレスサイクルでの切り込み量を小さくし、その各ドレスサイクルが終了する毎に人による目視チェックを行う等、適度な人の監視が必要となる。
【0007】
因みに、外径φ405mm×幅205mmのビトリファイドCBN砥石の場合、1日当たり10時間稼働、ドレスインターバル1カ月の条件下において、そのドレス作業に要する時間は約6〜12時間程度であり、非常に多大な時間を要している。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、超砥粒砥石のロータリドレッサによるドレスの自動化を図り、ドレスに要する作業時間を大幅に短縮して、センタレス研削盤の稼働率の向上、生産性の向上に寄与できるセンタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ロータリドレッサを超砥粒砥石に所定量ずつ切り込みながら該超砥粒砥石の砥石軸方向の全幅でトラバースしてドレスを行うに際し、粗ドレス時のドレッサ駆動モータの負荷をサンプリングして、そのサンプリング値が前記超砥粒砥石の砥石軸方向の全幅で下限値を超えたときに粗ドレスを完了し、自動的に仕上げドレスに移行するものである。
【0010】
仕上げドレス時には粗ドレス時よりも切り込み量及びトラバース送り速度を小さくして、前記ロータリドレッサを所定回数トラバースしてもよい。前記サンプリング値が上限値を超えたときには、粗ドレス時よりも小さく、仕上げドレス時よりも大きい切り込み量及び/又はトラバース送り速度でドレスを行ってもよい。前記サンプリング値が上限値を超えたときには、ドレス異常としてドレスサイクルを停止させてもよい。前記超砥粒砥石が砥石部と砥石部以外の部分とを砥石軸方向に有する場合には、前記砥石部以外の部分の前記サンプリング値を除外してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、超砥粒砥石のドレスを自動化でき、ドレスに要する作業時間を大幅に短縮できる。従って、センタレス研削盤の稼働率の向上、生産性の向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて詳述する。図1〜図9は本発明の第1の実施例を例示する。図1はセンタレス研削盤及びドレッサ装置の概要を示し、1はセンタレス研削盤のビトリファイドCBN砥石等の超砥粒研削砥石であり、図外の駆動モータにより研削砥石軸2廻りに所定速度で回転駆動されている。
【0013】
3はドレッサ装置である。ドレッサ装置3はロータリドレッサ4、ドレッサ駆動モータ5、切り込み台6、切り込み駆動モータ7、トラバース台8、トラバース駆動モータ9等を備え、各駆動モータ5,7,9の駆動により、所定の回転速度で回転状態のロータリドレッサ4をそのドレス軌跡に沿って往復移動させながら、超砥粒研削砥石1の粗ドレス、仕上げドレスを行うようになっている。なお、ドレッサ装置3は超砥粒研削砥石1のドレス時に発生する負荷に対して十分な剛性を有するものとなっている。
【0014】
ロータリドレッサ4は切り込み台6上でドレッサ軸10により回転自在に支持され、回転伝達機構11を介してドレッサ駆動モータ5によりドレッサ軸10廻りに回転駆動されている。切り込み台6はロータリドレッサ4を超砥粒研削砥石1の径方向に移動可能に支持するもので、切り込み駆動モータ7により往復移動可能である。トラバース台8は切り込み台6を介してロータリドレッサ4を超砥粒研削砥石1の砥石軸方向(砥石幅方向)にトラバース可能に支持するもので、トラバース駆動モータ9により往復移動可能である。
【0015】
なお、ドレッサ駆動モータ5には回転速度制御が可能なACサーボモータが使用されている。ロータリドレッサ4の回転方向は、必要に応じて超砥粒研削砥石1の回転方向に対して順方向又は逆方向の何れでもよい。回転伝達機構11はベルト等の巻き掛け伝動機構のように、低振動でドレッサ駆動モータ5の回転をロス無く伝え得るものが望ましい。
【0016】
図2はドレッサ装置3の制御系を示し、ドレッサ駆動モータ5を駆動するドレッサ駆動回路12、切り込み駆動モータ7を駆動する切り込み駆動回路13、トラバース駆動モータ9を駆動するトラバース駆動回路14の他に、これらの各駆動回路12〜14を介して各駆動モータ5,7,9を制御することにより、粗ドレス、仕上げドレスの各ドレス作業全体を自動的に制御する自動制御手段15を備えている。
【0017】
この自動制御手段15は例えばCPU、ROM、RAM及び適宜インターフェース等により構成され、ロータリドレッサ4による超砥粒研削砥石1の粗ドレスを制御する粗ドレス制御部16と、粗ドレスの完了後にロータリドレッサ4による超砥粒研削砥石1の仕上げドレスを制御する仕上げドレス制御部17と、ドレス中のドレッサ駆動モータ5の負荷、例えば負荷電流を所定の時間間隔でサンプリングするサンプリング部18と、このサンプリング部18でサンプリングされた負荷電流のサンプリング値を予め設定された下限電流値I1(図3参照)と比較して、超砥粒研削砥石1の砥石幅の全幅のサンプリング値が下限電流値I1を超えたときに粗ドレス完了(砥石形状修正完了)と判定して仕上げドレスに移行させるための粗ドレス完了判定部19と、サンプリング部18でサンプリングされた負荷電流のサンプリング値を予め設定された上限電流値I2(図3参照)と比較して、超砥粒研削砥石1の砥石幅の全幅の何れかの位置での過大切り込み等によってサンプリング値が上限電流値I2を超えたときに、ドレス異常と判定してドレスサイクルを停止(又は終了)させるための異常判定部20と、この異常判定部20がドレス異常と判定したときに、ドレス異常によるドレスサイクルの停止(又は終了)を表示する異常表示部21とを備えている。
【0018】
粗ドレス制御部16、仕上げドレス制御部17は、ロータリドレッサ4による超砥粒研削砥石1のドレス作業を前段の粗ドレスと後段の仕上げドレスとに分けて夫々の設定条件に従って制御し、また粗ドレス完了判定部19が粗ドレス完了を判定したときに、粗ドレスから仕上げドレスに移行し、更に異常判定部20が異常と判定したときにドレスを終了させるようになっている。
【0019】
そして、粗ドレス制御部16はドレッサ軸10廻りに所定の回転速度で回転状態のロータリドレッサ4を所定の切り込み量、トラバース送り速度で順次往復移動させて超砥粒研削砥石1を粗ドレスするように各駆動モータ5,7,9を制御する。仕上げドレス制御部17は、粗ドレス時に比較して切り込み量、トラバース速度が小さい微小切り込み量、微速トラバース送り速度でロータリドレッサ4を予め設定された回数だけ往復移動させて超砥粒研削砥石1を仕上げドレスするように各駆動モータ5,7,9を制御する。
【0020】
粗ドレス、仕上げドレスでのロータリドレッサ4の回転速度、切り込み量、トラバース送り速度は予め設定されており、その回転速度、切り込み量、トラバース送り速度に制御されている。因みに粗ドレス時には過大切り込みとならない範囲で能率的にドレスができるように、切り込み量、トラバース送り速度が共に大に設定され、仕上げドレス時には仕上げに適した微小切り込み量、微速トラバース送り速度に設定されている。
【0021】
なお、粗ドレス制御部16、仕上げドレス制御部17は、パルスエンコーダ等の回転速度検出手段によりロータリドレッサ4の回転速度を検出し、フィードバック制御により、常時略一定の回転速度でロータリドレッサ4が回転するようにドレッサ駆動モータ5を制御するようになっている。
【0022】
粗ドレス完了判定部19はサンプリング部18でサンプリングされた負荷電流のサンプリング値を予め設定された下限電流値I1とを比較して、超砥粒研削砥石1の全幅のサンプリング値が下限電流値I1を超えたときに粗ドレスの完了と判定し、粗ドレス制御部16の制御による粗ドレスから仕上げドレス制御部17の制御による仕上げドレスへの移行を指令するようになっている。
【0023】
ドレス作業中のドレッサ駆動モータ5の負荷電流をサンプリング部18によりサンプリングすると、超砥粒研削砥石1の砥石軸方向の部位毎にドレス負荷が大きく変動する粗ドレス時には、図3に示す如くドレス未完領域のサンプリング値は小さく、ドレス完了領域のサンプリング値が大きくなるように、その負荷状態に応じて上下に大きく変動し、砥石幅の全幅にわたる粗ドレスが完了したときには、砥石幅の全幅にわたるサンプリング値が大きくなる。
【0024】
そこで、粗ドレス完了判定部19では、このドレス未完領域、ドレス完了領域のサンプリング値の変化を考慮して、その中間の適宜電流値(粗ドレスの完了時における負荷電流値又は完了時における負荷電流値よりも若干小さい負荷電流値)を下限電流値I1として設定しておき、実際の負荷電流のサンプリング値が砥石幅の全幅で下限電流値I1を超えたときに粗ドレスの完了と判定し、粗ドレスから仕上げドレスに移行させるようになっている。
【0025】
次に図4に示す流れ図を参照して超砥粒研削砥石1のドレス作業を説明する。超砥粒研削砥石1をドレスする際には、先ず粗ドレス制御部16の制御により粗ドレスを行い、粗ドレス完了判定部19がその粗ドレスの完了と判定したときに、仕上げドレス制御部17の制御による仕上げドレスに自動的に移行し、その仕上げドレスの完了を以て全てのドレス作業を終了する。
【0026】
自動制御手段15にドレス作業開始を指令すると(ステップS1)、粗ドレス制御部16の制御による粗ドレスを行う(ステップS2)。このドレス作業中、サンプリング部18が砥石幅の全幅におけるドレッサ駆動モータ5の負荷電流を常時サンプリングし(ステップS3)、異常判定部20がその負荷電流のサンプリング値を上限電流値I2と比較する。そして、超砥粒研削砥石1のドレス中に過大切り込み等によってサンプリング値が上限電流値I2を超えれば、異常判定部20が粗ドレス中の異常と判定して(ステップS4)、異常停止としてドレスサイクルを停止し(ステップS5)、異常表示部21が異常停止を表示し報知する(ステップS6)。従って、ドレス中に過大切り込み等があれば、それを確実に判定してドレスサイクルを停止でき、ドレッサ装置3や超砥粒研削砥石1の損傷等を未然に防止できる。
【0027】
また粗ドレス完了判定部19が負荷電流のサンプリング値を下限電流値I1と比較する。そして、超砥粒研削砥石1の粗ドレスが進行して、砥石幅の全幅におけるサンプリング値が下限電流値I1を超えると、粗ドレス完了判定部19が粗ドレスの完了と判定して(ステップS7)、粗ドレス制御部16の制御による粗ドレスを完了し(ステップS8)、仕上げドレス制御部17の制御による仕上げドレスに自動的に移行する(ステップS9)。この仕上げドレス中は、ロータリドレッサ4が往復移動するトラバース回数を計数し(ステップS10)、それが設定回数になれば、仕上げドレスを終了する(ステップS11,S12)。
【0028】
粗ドレス、仕上げドレスのドレス中は、所定の回転速度、トラバース送り速度、切り込み量で超砥粒研削砥石1の砥石幅の全幅にわたって所定のドレス軌跡でロータリドレッサ4がトラバースを繰り返しながら超砥粒研削砥石1のドレスを行う。この場合、例えば超砥粒研削砥石1が図1に示すような形状であれば、ロータリドレッサ4がドレス軌跡に従ってトラバースを繰り返す毎に、ドレッサ駆動モータ5の負荷電流のサンプリング値は、図5に示すように変化する。
【0029】
即ち、粗ドレスの1往復目のサンプリング値は、ロータリドレッサ4が超砥粒研削砥石1に接触していないため略一定であり、ロータリドレッサ4が超砥粒研削砥石1に当たり始める2往復目からサンプリング値が大きくなる。そして、超砥粒研削砥石1の砥石幅の一部にドレス完了領域ができる3往復目以降では、そのドレス完了領域のサンプリング値が下限電流値I1を超える。しかし、ロータリドレッサ4が未だ超砥粒研削砥石1に当たっていない未接触領域(ドレス未完領域)があるため、その未接触領域ではサンプリング値は殆ど変化していない。
【0030】
その後、14往復目、15往復目に示すように、ロータリドレッサ4がトラバースを重ねる毎に超砥粒研削砥石1の砥石幅の全幅に占めるドレス完了領域が大になり、それに伴ってサンプリング値が下限電流値I1を超える時間が長くなる。そして、ロータリドレッサ4が砥石幅の全幅で超砥粒研削砥石1に接触して粗ドレスが完了する16往復目になると、サンプリング値が下限電流値I1を超えることになる。
【0031】
そこで、ドレス作業中は、図5に示すように変化するドレッサ駆動モータ5の負荷電流をサンプリング部18で常時サンプリングし、そのサンプリング値を粗ドレス完了判定部19で下限電流値I1と比較して、砥石幅の全幅のサンプリング値が下限電流値I1を超える16往復目が終了したときに粗ドレスの完了と判定し、粗ドレス制御部16による粗ドレスを完了して仕上げドレス制御部17の制御による仕上げドレスに自動的に移行する。
【0032】
仕上げドレスでは、仕上げドレス制御部17の制御により、微小切り込み量、微速トラバース送り速度でロータリドレッサ4が設定回数(例えば2回)だけ往復移動を繰り返す。そして、仕上げドレス1往復目、2往復目とロータリドレッサ4の往復回数が増すにつれてサンプリング値が小さくなり、仕上げドレスを終了する最後の往復時には、砥石幅の全幅でサンプリング値が略一定になる。これで超砥粒研削砥石1のドレス作業の全てが終了する。
【0033】
従って、このような構成を採用することによって、ドレス作業を粗ドレスと仕上げドレスとに分けて行い、しかも粗ドレスから仕上げドレスまでの全ドレス作業を自動的に行うことができるため、従来の各ドレスサイクルが終了する毎に人による目視チェックを行う場合に比較してドレス作業時間を大幅に短縮でき、センタレス研削盤稼働率が向上し、生産性の向上に大きく寄与できる利点がある。また負荷電流のサンプリング値を下限電流値I1と比較して粗ドレスの完了を判定するため、その判定も容易且つ確実にできる。
【0034】
超砥粒研削砥石1には、砥石部と砥石部以外の部分とが砥石軸方向に組み合わさったものがある。このような超砥粒研削砥石1をドレスする場合には、サンプリング部18として、サンプリング中断位置を砥石軸方向の任意の位置で設定できるようにしたフィルター機能又はフィルターを有するものを使用し、砥石部以外の部分の負荷電流のサンプリングを中断する等、負荷電流のサンプリング値から、砥石部以外の部分の影響を確実に除去する必要がある。
【0035】
例えば、図6(B)に示すように、ビトリファィド層25の外周にCBN層26を設けた砥石単体27を軸方向に複数個貼り合わせて構成された超砥粒研削砥石1の場合には、各砥石単体27の貼り合わせ部28の接着剤等の種類によっては、図6(A)に示すようにその貼り合わせ部28でドレッサ駆動モータ5の負荷電流のサンプリング値が下限電流値I1よりも低下することがある。なお、図6(C)はドレス軌跡を示す。
【0036】
即ち、複数個の砥石単体27を貼り合わせて構成された超砥粒研削砥石1では、各砥石単体27の張り合わせ面間の溝でロータリドレッサ4に対する抵抗が小さくなるため、図7(A)に示すように、その各貼り合わせ部28に対応する位置で負荷電流のサンプリング値が低下し、その波形に負荷電流の局部的な低下部分I28ができる。
【0037】
しかし、軸方向の任意の位置で負荷電流のサンプリングを中断するフィルター機能又はフィルターを有するサンプリング部18を使用すれば、図7(B)に示すように、砥石幅の全幅のサンプリング値の波形から、各貼り合わせ部28に対応する位置での局部的な低下部分I28を除去することができるため、粗ドレス完了判定部19により粗ドレスの完了を確実に判定できる。
【0038】
また図8(B)に示すようにビトリファィド層25の外周にCBN層26を設けた砥石単体27をスペーサ29を介して軸方向に複数個結合して構成された超砥粒研削砥石1の場合にも、図8(A)に示すように砥石単体27間の隙間部分でサンプリング値が下限電流値I1よりも低下する。なお、図8(C)はドレス軌跡を示す。
【0039】
従って、このような場合にも、その隙間部分に対応する負荷電流のサンプリングを中断することにより、粗ドレスの完了を確実に判定できる。なお、この超砥粒研削砥石1では、砥石径、砥石幅が異なる複数種類の砥石単体27を組み合わせているが、砥石径、砥石幅の一方又は両方が同じ場合でも同様である。
【0040】
図9(B)に示すようにビトリファィド層25の外周にCBN層26を設け、その軸方向の両端面に破損防止用のベークライト板等の保護板30を設けた超砥粒研削砥石1の場合には、図9(A)に示すように保護板30に対応する部分のサンプリング値が上限電流値I2を超えて、異常判定部20が過大切り込み等のドレス異常と誤って判定する惧れがある。
【0041】
このような場合にも、フィルター機能又はフィルターを備えたサンプリング部18を使用することにより、保護板30に対応する部分の負荷電流のサンプリングを中断でき、異常判定部20のドレス異常の誤判定を防止できる。なお、図9(C)はドレス軌跡を示す。
【0042】
図10〜図12は本発明の第2の実施例を例示し、粗ドレス時の負荷電流のサンプリング値が上限電流値I2を超えたときには、その粗ドレス時よりも小さく、仕上げドレス時よりも大きい切り込み量でドレスを行うようにしている。
【0043】
自動制御手段15は、図10に示すように第1の実施例と同様の粗ドレス制御部16、仕上げドレス制御部17、サンプリング部18、粗ドレス完了判定部19の他に、サンプリング部18でサンプリングされた負荷電流のサンプリング値を予め設定された上限電流値I2と比較して、超砥粒研削砥石1の砥石幅の何れかの位置での過大切り込み等によってサンプリング値が上限電流値I2を超えたときに、過大ドレスと判定する過大ドレス判定部32と、過大ドレス判定部32が過大ドレスと判定したときに、粗ドレスから粗ドレスと仕上げドレスとの中間程度にドレス負荷を軽減してその状態での粗ドレスを継続させる軽減制御部33とを備えている。
【0044】
例えば軽減制御部33は、ロータリドレッサ4の切り込み量が粗ドレス時よりも小さく、仕上げドレス時よりも大きくなる程度に予め設定されており、過大ドレス判定部32が過大ドレスと判定したときに、ロータリドレッサ4の切り込み量を粗ドレスの切り込み量から設定切り込み量まで小さくしてドレス負荷を軽減し、その状態で引き続き粗ドレスを継続させるように制御する。切り込み量を小さくする場合、それを予め数値で設定することも可能であるし、粗ドレス時の切り込み量の何パーセントと比率で設定することも可能である。
【0045】
超砥粒研削砥石1のドレス中に砥石幅の何れかの位置で過大切り込み等があった場合、図11に示すようにその位置での負荷電流のサンプリング値が上限電流値I2を超える。そして、サンプリング値が上限電流値I2を超えれば、図12に示すように過大ドレス判定部32が過大ドレスと判定して(ステップS13)、軽減制御部33が働いてロータリドレッサ4の切り込み量を小さくし、その状態での粗ドレスを継続する(ステップS14)。
【0046】
そして、その後のドレス中にサンプリング値が上限電流値I2よりも低下すれば(ステップS3、S13)、通常の粗ドレスに戻り(ステップS7、S2)、また粗ドレス完了判定部19が粗ドレスの完了と判定すれば(ステップS7、S8)、仕上げドレスに移行する(ステップS9)。なお、軽減状態でのドレスは、ロータリドレッサ4が数回程度トラバースを繰り返すようにしてもよい。
【0047】
軽減状態での粗ドレス時の切り込み量は、仕上げドレスでの切り込み量よりも大であるため、サンプリング値が下限電流値I1を下回ることはない。しかし、サンプリング値が下限電流値I1を下回るような場合には、他に何らかの原因による異常と考えられるので、軽減状態での粗ドレス回数を設定しておき、その設定回数になってもサンプリング値が下限電流値I1を超えないときには、ドレス異常としてドレスサイクルを停止させて異常表示や異常信号を出すようにすることが望ましい。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。粗ドレス時のドレッサ駆動モータの負荷をサンプリングする場合、その負荷の大小によって変化するドレッサ駆動モータ5の負荷電流をサンプリングするのが望ましいが、その他の電気信号等で負荷をサンプリングするようにしてもよい。
【0049】
また実施例では、過大ドレスの場合に軽減状態で粗ドレス制御を行う軽減制御部33を設けているが、この軽減制御部33に代えて、粗ドレス、仕上げドレス以外の中間的なドレス制御を行う第3のドレス制御部を設けてもよい。過大ドレス判定後のドレスは、粗ドレス時よりも小さく、仕上げドレス時よりも大きい切り込み量及び/又はトラバース送り速度でドレスを行う等、ドレス負荷を軽減できる状態で行えればよい。
【0050】
ドレッサ駆動モータ5には回転速度制御が可能なACサーボモータが使用されているが、他の各種のモータを使用することも可能である。超砥粒研削砥石1はビトリファイドCBN砥石以外のものでもよい。また実施例では、超砥粒研削砥石1について例示しているが、超砥粒調整砥石の場合にも同様に実施可能である。ドレッサ装置3は超砥粒砥石のドレス時に発生する負荷に対して十分な剛性を有するものであれば、実施例に例示する以外の構造のものでもよい。
【0051】
図6(B)に示すように砥石単体27を軸方向に複数個貼り合わせて構成された超砥粒研削砥石1、或いは図9(B)に示すように軸方向の両端面に保護板30を貼り合わせて構成された超砥粒研削砥石1の場合、接着剤の種類によってはその貼り合わせ部分の電流値が逆に高くなることがある。しかし、このような場合にも、フィルター機能又はフィルターを有するサンプリング部18を使用することによって、その貼り合わせ部分の電流値による影響を除去することが可能であり、前述と同様に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施例を示すドレッサ装置付きセンタレス研削盤の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例を示す制御系のブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例を示す負荷電流波形図である。
【図4】本発明の第1の実施例を示すドレス作業時の流れ図である。
【図5】本発明の第1の実施例を示すドレス時の負荷電流波形図である。
【図6】本発明の第1の実施例を示すサンプリングの中断を要する場合の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施例を示すドレス時の負荷電流波形図である。
【図8】本発明の第1の実施例を示すサンプリングの中断を要する場合の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施例を示すサンプリングの中断を要する場合の説明図である。
【図10】本発明の第2の実施例を示す制御系のブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施例を示す負荷電流波形図である。
【図12】本発明の第2の実施例を示すドレス作業時の流れ図である。
【符号の説明】
【0053】
1 超砥粒研削砥石
3 ドレッサ装置
4 ロータリドレッサ
5 ドレッサ駆動モータ
15 自動制御手段
16 粗ドレス制御部
17 仕上げドレス制御部
18 サンプリング部
19 粗ドレス完了判定部
20 異常判定部
21 異常表示部
32 過大ドレス判定部
33 軽減制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリドレッサを超砥粒砥石に所定量ずつ切り込みながら該超砥粒砥石の砥石軸方向の全幅でトラバースしてドレスを行うに際し、粗ドレス時のドレッサ駆動モータの負荷をサンプリングして、そのサンプリング値が前記超砥粒砥石の砥石軸方向の全幅で下限値を超えたときに粗ドレスを完了し、自動的に仕上げドレスに移行することを特徴とするセンタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法。
【請求項2】
仕上げドレス時には粗ドレス時よりも切り込み量及びトラバース送り速度を小さくして、前記ロータリドレッサを所定回数トラバースすることを特徴とする請求項1に記載のセンタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法。
【請求項3】
前記サンプリング値が上限値を超えたときには、粗ドレス時よりも小さく、仕上げドレス時よりも大きい切り込み量及び/又はトラバース送り速度でドレスを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法。
【請求項4】
前記サンプリング値が上限値を超えたときには、ドレス異常としてドレスサイクルを停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法。
【請求項5】
前記超砥粒砥石が砥石部と砥石部以外の部分とを砥石軸方向に有する場合には、前記砥石部以外の部分の前記サンプリング値を除外することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のセンタレス研削盤における超砥粒砥石のドレス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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