説明

センターピラー上部の接合構造

【課題】 本発明は、車体強度および剛性の向上を図ることが可能なセンターピラー上部の接合構造を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、車両1のルーフパネル2とサイドボデーアウターパネル3との接合部に車両前後方向へ沿って延びる上方開口の断面略コ字状の溝部5が設けられているセンターピラー上部Dの接合構造において、ルーフパネル2の下方にルーフセンターメンバー6を設ける一方、センターピラー上部Dにレールサイドインナーパネル12およびセンターピラーリンフォース10を設け、センターピラーリンフォース10の車両内側端部10aを車両1の上方内側へ向かって延長し、溝部5にてルーフセンターメンバー6、ルーフパネル2およびサイドボデーアウターパネル3と接合すると共に、センターピラーリンフォース10の車両内側端部10aをレールサイドインナーパネル12の車両内側端部12aまで延長して設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のセンターピラー上部における接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のセンターピラー上部においては、図8に示す如く、サイドボデーアウターパネル51、レールサイドリンフォース52およびレールサイドインナーパネル53によって構成されるレールサイド部と、センターピラーリンフォース54、サイドボデーアウターパネル51およびセンターピラーインナーパネル55によって構成されるセンターピラー部と、ルーフセンターメンバー56およびルーフパネル57によって構成されるルーフメンバー部とが接合されている(例えば、特許文献1参照)。そして、ルーフパネル57との左右両側端部に位置し、サイドボデーアウターパネル51との接合部には、車両前後方向へ沿って延びる上方開口の断面略コ字状の溝部57aがそれぞれ形成されている。
【特許文献1】特開平9−109926号公報
【0003】
ところで、このようなセンターピラー上部の構成部材のうち、レールサイドリンフォース52、センターピラーリンフォース54およびルーフセンターメンバー56は、車体強度上、板厚の厚い部材を使用して形成されている。一方、サイドボデーアウターパネル51、レールサイドインナーパネル53およびルーフパネル57などは、車体重量面から板厚の薄い部材を使用して形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のセンターピラー上部の接合構造では、板厚の厚いセンターピラーリンフォース54とルーフセンターメンバー56とが互いに離れて設けられているので、車体強度上不利であった。また、ルーフパネル57の溝部57aにおけるスポット溶接は、板厚の厚いルーフセンターメンバー56と板厚の薄いサイドボデーアウターパネル51およびルーフパネル57との重合部に対して行われているので、車体強度上不利であった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車体強度および剛性の向上を図ることが可能なセンターピラー上部の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両のルーフパネルとサイドボデーアウターパネルとの接合部に車両前後方向へ沿って延びる上方開口の断面略コ字状の溝部が設けられているセンターピラー上部の接合構造において、前記ルーフパネルの下方にルーフセンターメンバーを設ける一方、前記センターピラー上部にレールサイドインナーパネルおよびセンターピラーリンフォースを設け、該センターピラーリンフォースの車両内側端部を車両の上方内側へ向かって延長し、前記溝部にて前記ルーフセンターメンバー、前記ルーフパネルおよび前記サイドボデーアウターパネルと接合すると共に、前記センターピラーリンフォースの車両内側端部を前記レールサイドインナーパネルの車両内側端部まで延長して設けている。
【0007】
また、本発明において、前記センターピラーリンフォースの車両内側端部は、前記レールサイドインナーパネルとレールサイドリンフォースの車両内側端部の接合部に接合されている。
【0008】
そして、本発明において、前記溝部の接合部におけるサイドボデーアウターパネルには、前記ルーフセンターメンバーとほぼ同じ大きさの車両前後方向の幅の切欠き部が設けられている。
【0009】
さらに、本発明において、前記切欠き部のフランジ端部は、前記溝部の車両外側端部よりも車両内側に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
上述の如く、本発明に係るセンターピラー上部の接合構造は、車両のルーフパネルとサイドボデーアウターパネルとの接合部に車両前後方向へ沿って延びる上方開口の断面略コ字状の溝部が設けられているものであって、前記ルーフパネルの下方にルーフセンターメンバーを設ける一方、前記センターピラー上部にレールサイドインナーパネルおよびセンターピラーリンフォースを設け、該センターピラーリンフォースの車両内側端部を車両の上方内側へ向かって延長し、前記溝部にて前記ルーフセンターメンバー、前記ルーフパネルおよび前記サイドボデーアウターパネルと接合すると共に、前記センターピラーリンフォースの車両内側端部を前記レールサイドインナーパネルの車両内側端部まで延長して設けているので、車体の強度および剛性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明において、前記センターピラーリンフォースの車両内側端部は、前記レールサイドインナーパネルとレールサイドリンフォースの車両内側端部の接合部に接合されているので、車体強度をより一層向上させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記溝部の接合部におけるサイドボデーアウターパネルには、前記ルーフセンターメンバーとほぼ同じ大きさの車両前後方向の幅の切欠き部が設けられているので、スポット溶接の溶着性および作業性の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記切欠き部のフランジ端部は、前記溝部の車両外側端部よりも車両内側に配置されているので、シーラー塗布作業性を向上させ、かつシール性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1〜図7は本発明に係るセンターピラー上部の接合構造の実施の形態を示している。本実施形態のセンターピラー上部の接合構造が適用される車両1は、図1〜図4に示す如く、車体ルーフを構成するルーフパネル2と左右両側のサイドボデーアウターパネル3とを備えている。しかも、これらルーフパネル2とサイドボデーアウターパネル3とは、車体ルーフの左右両側端部でスポット溶接ガン4を用いてスポット溶接され、その接合部には、車両前後方向へ沿って延びる上方開口の断面略コ字状(断面略U字状)の溝部5が設けられている。これら溝部5は、雨水等を車外に導くために設けられたものであり、ルーフパネル2の左右両側端部を折り曲げることによりに形成されている。
【0016】
また、ルーフパネル2の下方には、板厚の厚いルーフセンターメンバー6が車幅方向に沿って配設されており、該ルーフセンターメンバー6は、図5に示す如く、車体ルーフの上部で開口が上向き配置の断面略ハット型に形成されている。そして、このルーフセンターメンバー6の前後フランジ部は、接着剤7によってルーフパネル2の下面にそれぞれ固着されている。一方、溝部5の接合部であって、板厚の薄いサイドボデーアウターパネル3には、図3および図4に示す如く、ルーフセンターメンバー6とほぼ同じ大きさの車両前後方向の幅の切欠き部8が設けられており、該切欠き部8の存在によって溶着性の悪い4枚スポット溶接を避けるように構成されている。しかも、切欠き部8のフランジ端部8aは、シーラー9の塗布作業性を損なわないように、溝部5の車両外側端部5aよりも車両内側に配置されている。
【0017】
また、サイドボデーアウターパネル3およびルーフセンターメンバー6の下方位置で、センターピラー上部には、図3および図4に示す如く、板厚の厚いセンターピラーリンフォース10およびレールサイドリンフォース11と、レールサイドインナーパネル12およびセンターピラーインナーパネル13が配設されている。センターピラーリンフォース10は、図6に示す如く、センターピラー上部で開口が内向き配置の断面略ハット型に形成されており、その前後フランジ部は、これとほぼ同様の断面形状を有するサイドボデーアウターパネル3の前後フランジ部に溶接で互いに接合され、閉断面を形成している。
しかも、センターピラーリンフォース10は、図7に示す如く、センターピラー中間部でも開口が内向き配置の断面略ハット型に形成されており、その前後フランジ部は、これとほぼ同様の断面形状を有するサイドボデーアウターパネル3の前後フランジ部に溶接で互いに接合されていると共に、開口が外向き配置の断面略ハット型を有するセンターピラーインナーパネル13の前後フランジ部に溶接で互いに接合され、それぞれ閉断面を形成している。
【0018】
また、本実施形態のセンターピラーリンフォース10の車両内側端部10aは、図4に示す如く、車両の上方内側へ向かって延長されており、溝部5にてルーフセンターメンバー6、ルーフパネル2およびサイドボデーアウターパネル3と接合されている。さらに、センターピラーリンフォース10の車両内側端部10aは、溝部5を越えてレールサイドインナーパネル12の車両内側端部12aまで延長して設けられており、当該レールサイドインナーパネル12とレールサイドリンフォース11の車両内側端部12a,11aの接合部に溶接で互いに接合されている。そのため、レールサイドリンフォース11およびレールサイドインナーパネル12の上下中間部には、一対のスポット溶接ガン4の片方を挿通させる溶接作業用孔14,15がルーフパネル2の溝部5のスポット溶接箇所Wと対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0019】
このように本実施形態の接合構造は、図2に示す如く、センターピラー部Aと、レールサイド部Bと、ルーフメンバー部Cと、センターピラー上部Dとが図8の従来例と同様に接合されているが、これらの部位を構成する部材の形状、配置および溶接の接合対象は、従来例とは異なっている。図2および図3において、矢印FRは車両前方を示し、矢印RRは車両後方を示している。
すなわち、特にセンターピラー部Aおよびセンターピラー上部Dは、センターピラーリンフォース10、サイドボデーアウターパネル3およびセンターピラーインナーパネル13によって構成されているが、図3および図4に示す如く、センターピラーリンフォース10の車両内側端部10aが溝部5を越えてレールサイドインナーパネル12の車両内側端部12aまで延長され、溝部5の接合部でサイドボデーアウターパネル3に切欠き部8が設けられており、溝部5にてルーフセンターメンバー6、ルーフパネル2およびサイドボデーアウターパネル3と接合されていると共に、レールサイドインナーパネル12およびレールサイドリンフォース11の車両内側端部12a,11aの接合部に接合されている。したがって、センターピラー上部Dでは、スポット溶接の溶着性を損なうことなく、ルーフパネル2の溝部5において板厚の厚いセンターピラーリンフォース10と板厚の厚いルーフセンターメンバー6とをスポット溶接することが可能となり、車体強度の向上を確実に図ることができる。
なお、レールサイド部Bは、サイドボデーアウターパネル3、レールサイドリンフォース11およびレールサイドインナーパネル12によって構成され、ルーフメンバー部Cは、ルーフセンターメンバー6およびルーフパネル2によって構成されている。
【0020】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るセンターピラー上部の接合構造が適用された車両の全体を示す側面図である。
【図2】図1において矢印Z方向から見た車室内側のセンターピラー上部を示す斜視図である。
【図3】図1において矢印Y方向から見た車室外側のセンターピラー上部を示す斜視図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図4におけるB−B線断面図である。
【図6】図4におけるC−C線断面図である。
【図7】図4におけるD−D線断面図である。
【図8】従来の接合構造のセンターピラー上部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両
2 ルーフパネル
3 サイドボデーアウターパネル
5 溝部
5a 溝部の車両外側端部
6 ルーフセンターメンバー
7 接着剤
8 切欠き部
8a フランジ端部
9 シーラー
10 センターピラーリンフォース
10a 車両内側端部
11 レールサイドリンフォース
11a 車両内側端部
12 レールサイドインナーパネル
12a 車両内側端部
13 センターピラーインナーパネル
A センターピラー部
D センターピラー上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネルとサイドボデーアウターパネルとの接合部に車両前後方向へ沿って延びる上方開口の断面略コ字状の溝部が設けられているセンターピラー上部の接合構造において、前記ルーフパネルの下方にルーフセンターメンバーを設ける一方、前記センターピラー上部にレールサイドインナーパネルおよびセンターピラーリンフォースを設け、該センターピラーリンフォースの車両内側端部を車両の上方内側へ向かって延長し、前記溝部にて前記ルーフセンターメンバー、前記ルーフパネルおよび前記サイドボデーアウターパネルと接合すると共に、前記センターピラーリンフォースの車両内側端部を前記レールサイドインナーパネルの車両内側端部まで延長して設けたことを特徴とするセンターピラー上部の接合構造。
【請求項2】
前記センターピラーリンフォースの車両内側端部は、前記レールサイドインナーパネルとレールサイドリンフォースの車両内側端部の接合部に接合されていることを特徴とする請求項1に記載のセンターピラー上部の接合構造。
【請求項3】
前記溝部の接合部におけるサイドボデーアウターパネルには、前記ルーフセンターメンバーとほぼ同じ大きさの車両前後方向の幅の切欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のセンターピラー上部の接合構造。
【請求項4】
前記切欠き部のフランジ端部は、前記溝部の車両外側端部よりも車両内側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のセンターピラー上部の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−76477(P2006−76477A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263714(P2004−263714)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】