ゼオライト含有硬化体の製造方法
【課題】高強度なゼオライト含有硬化体を低コストに製造する。また、フライアッシュを有効利用する。
【解決手段】シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにした。また、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを使用するようにした。
【解決手段】シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにした。また、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを使用するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト含有硬化体の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、レンガ及びプレキャストコンクリートの代替品や建築材料としての使用に好適なゼオライト含有硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製品の代替品として利用可能なブロック状や柱状のゼオライト含有硬化体を製造する技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体をアルカリ処理後脱水し、加圧成形後に水熱処理を施すことによりゼオライトを含有する硬化体を製造する方法が提案されている(特許文献1)。具体的には、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、廃材である石炭灰、ロックウールまたは鉱滓スラグ等を使用し、この粉粒体を水酸化アルカリ水溶液に一定時間浸漬し(アルカリ処理)、アルカリ処理された粉粒体を脱水プレス処理して過剰な水酸化アルカリ水溶液を除去し、加圧形成した後にオートクレーブを用いて水熱処理(蒸気養生)を施すことにより、ブロック状や柱状のゼオライト含有硬化体を製造するものである。また、アルカリ処理の際に浸漬液として使用する水酸化アルカリ水溶液には、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム化合物が添加される。
【0004】
上記製造方法において、水酸化アルカリ水溶液へのカルシウム化合物の添加は、以下の目的で行われる。即ち、浸漬液として使用する水酸化アルカリ水溶液の濃度の増加や粉粒体の浸漬液への浸漬時間の増加に伴い、浸漬液の粘度が上昇してしまう。このことに起因して脱水プレス処理時に濾水抵抗が増加し、脱水プレス処理により十分に脱水できなくなる。十分な脱水を行わないと、加圧成形体に過剰の水が残存し、ゼオライト含有硬化体の空隙量が増加し、その結果としてゼオライト含有硬化体の強度が低下してしまう。そこで、上記製造方法においては、浸漬液の粘度上昇を抑えて、ゼオライト含有硬化体の強度を確保する目的で、カルシウム化合物が水酸化アルカリ水溶液に添加されている。
【0005】
また、廃碍子の粉砕物をアルカリ処理後脱水し、加圧成形後に水熱処理を施すことによりゼオライト含有硬化体を製造する方法が提案されている(特許文献2)。具体的には、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、廃碍子という特定の廃材の粉砕物を用いることによって、アルカリ処理の際に浸漬液として使用する水酸化アルカリ水溶液にカルシウム化合物を添加せずとも、浸漬液の粘度上昇を抑えることができ、特許文献1に記載の製造方法のように、カルシウム化合物を添加することなく、ゼオライト含有硬化体の強度を確保することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−124315
【特許文献2】特開2001−172015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の製造方法で得られるゼオライト含有硬化体の強度は、最も優れたものでも、圧縮強度が30〜35MPaで且つ曲げ強度が約6〜7MPaに留まる。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法では、コンクリート製品の代替材料として上記よりも高強度のゼオライト含有硬化体が要求される場合に対応できないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1及び2に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法では、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体や廃碍子を水酸化アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行うことから、大量の水酸化アルカリ水溶液を必要とし、製造コストが嵩む問題があった。さらに、脱水プレス処理により過剰な水酸化アルカリ水溶液を除去していることから、製造初期に投入した水酸化アルカリ水溶液の全量を有効利用することができず、無駄が多いという問題もあった。また、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体や廃碍子を水酸化アルカリ水溶液で浸漬処理したものに対し、脱水プレスと加圧成型を行う程度では、成型体自体の強度が十分なものとは言えず、水熱処理を施すとひび割れ等が発生してゼオライト含有硬化体に欠陥を含むことが懸念されていた。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の製造方法では、ゼオライト含有硬化体の強度を確保する上で、カルシウム化合物の添加が必要であり、製造コストがさらに嵩んでしまうという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の製造方法では、カルシウム化合物の添加を必要としないことから製造コストの低減を図ることはできるものの、原料として使用できる粉粒体が廃碍子の粉砕物という特定のものに限定されてしまい、火力発電所から多量に排出されるフライアッシュのように、産業副産物の利用促進ならびに処分地の制約等の観点から、有効利用の割合を積極的に増やすことが望まれている廃棄物を使用することができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、従来の製造方法で製造されるゼオライト含有硬化体よりも高強度のゼオライト含有硬化体を製造することを可能とする方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、従来の製造方法よりも製造コストを抑えることを可能とするゼオライト含有硬化体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、従来の製造方法よりも製造コストを抑えながらも、有効利用の割合を積極的に増やすことが望まれている廃棄物であるフライアッシュを原料とすることを可能とするゼオライト含有硬化体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、本願発明者等は鋭意研究し、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法とは全く異なる新規な製造方法を開発した。即ち、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料と水酸化アルカリと水とを混練し、これらを混練材料として一体化させ、この混練材料に対し物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すという新たなゼオライト含有硬化体の製造方法を開発した。しかも、この新規な製造方法によりゼオライト含有硬化体を製造した場合、圧縮強度が87.0MPaで且つ曲げ強度が11.2MPaという、従来の製造方法により製造されるゼオライト含有硬化体の強度と比較して飛躍的に高い強度を有するゼオライト含有硬化体を製造し得ることを知見し、本願発明に至った。
【0015】
かかる知見に基づく、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法は、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにしている。
【0016】
粉粒体を構成しているシリカ及びアルミナを含む非晶質材料が水酸化アルカリと接触すると、非晶質相が浸食される。この浸食反応を水の存在下で高温で生じさせると、非晶質相からシリコンやアルミニウム等のイオンの溶出が促進され、溶出されたイオンが再配列する過程で規則性を有するようになり、ゼオライト系鉱物が生成される。シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、蒸気養生を施すのと同時に物理的な拘束圧力を付与することにより、この物理的な拘束圧力が、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させるように作用し、ゼオライト含有硬化体の強度が高められる。
【0017】
ここで、混練材料には、補強繊維がさらに混練されていることが好ましい。補強繊維がさらに混練されることによって、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度の双方を高めることができ、特に、曲げ強度を顕著に高めることができる。
【0018】
また、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを用いることが好ましい。フライアッシュの粒子は、1〜200μmの粒度分布を有していることから、フライアッシュの粒子間において多くの接着点を確保することができる。したがって、ゼオライト含有硬化体の強度を確実に高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、蒸気養生を施す際に同時に付与する物理的な拘束圧力が、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させるように作用するので、ゼオライト含有硬化体の強度を高めることができる。
【0020】
しかも、請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにしているので、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法のように、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体を浸漬するために水酸化アルカリ水溶液を大量に使用する必要がなく、脱水プレス処理を行う必要もない。また、浸漬液の粘度上昇を抑えるためにカルシウム化合物の添加を行う必要もない。したがって、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法と比較して製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0021】
また、請求項2に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、混練材料に補強繊維がさらに混練されているので、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度の双方を高めることができ、特に、曲げ強度を顕著に高めることが可能となる。
【0022】
請求項3に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを用いるようにしているので、フライアッシュの粒子間において多くの接着点を確保することができ、ゼオライト含有硬化体の強度を確実に高めることができる。また、フライアッシュを原料として使用することができるので、火力発電所から多量に排出されるフライアッシュの利用促進を図ることが可能となる。したがって、フライアッシュに対する産業上の利用促進の要請に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態における物理的な拘束圧力を付与する装置を示す図である。
【図2】養生温度がゼオライト含有硬化体の細孔径分布に及ぼす影響を示す図である。
【図3】水酸化アルカリの種類が細孔径分布に及ぼす影響を示す図である。
【図4】水酸化カリウムの配合量の違いが細孔径分布に及ぼす影響を示す図である。
【図5】アルカリを水酸化ナトリウムとした場合のXRDによる鉱物種同定結果を示す図である。
【図6】アルカリを水酸化カリウムとした場合のXRDによる鉱物種同定結果を示す図である。
【図7】図5の横軸を2θ=60°まで広げた図である。
【図8】養生温度条件によるXRD分析結果の違いを示す図である。
【図9】水酸化ナトリウムを用いて製造したゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真である。
【図10】図9の領域1の拡大写真である。
【図11】図9の領域2の拡大写真である。
【図12】図9の領域3の拡大写真である。
【図13】水酸化カリウムを用いて製造したゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真である。
【図14】図13の領域4の拡大写真である。
【図15】図13の領域5の拡大写真である。
【図16】図13とは別の領域を撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法は、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにしている。
【0026】
本発明で使用するシリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体(以下、単に粉粒体と呼ぶこともある)としては、例えば石炭火力発電所から発生するクリンカーアッシュ、シンダアッシュ、フライアッシュ等の石炭灰を用いることができる。また、ロックウール、製鉄所から発生する高炉スラグや転炉スラグ等の鉱滓スラグ、廃碍子等を粉粒体に加工したものを用いることができる。但し、本発明で使用するシリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体は、これらに限定されるものではなく、シリカ及びアルミナを含み且つ実質的に非晶質である材料の粉粒体であれば用いることができる。即ち、ゼオライト含有硬化体の製造を阻害しない範囲での結晶の含有も許容される。
【0027】
ここで、本発明で使用するシリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュの使用が特に好ましい。フライアッシュは、1〜200μmの粒度分布を有していることから、フライアッシュの粉粒体間において多くの接着点を確保することができる。したがって、ゼオライト含有硬化体の強度を高めやすい。尚、フライアッシュ以外の石炭灰、ロックウール、鉱滓スラグ、廃碍子等を、1〜200μmの粒度分布を有する粉粒体に加工することで、フライアッシュを用いた場合と同程度の強度を有するゼオライト含有硬化体を得られるものと推定される。
【0028】
次に、本発明に使用する水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが挙げられる。
【0029】
水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した場合には、方沸石(Analcime-C)、グメリン沸石(Gmelinite-Na)を含有するゼオライト含有硬化体を製造することができる。また、水酸化アルカリとして水酸化カリウムを使用した場合には、ペルリアライト(Perlialite)を含有するゼオライト含有硬化体を製造することができる。
【0030】
ここで、ゼオライト含有硬化体のゼオライト含有量と圧縮強度の双方を高めたい場合には、水酸化カリウムの使用が好適である。水酸化カリウムを使用することによるゼオライト含有硬化体の圧縮強度の増強効果は、ゼオライト含有硬化体に含有されるゼオライト系鉱物がペルリアライト(Perlialite)であることと、ゼオライト含有硬化体の細孔径が水酸化ナトリウムを使用して得られるゼオライト含有硬化体の細孔径よりも小さいこととに起因しているものと推定される。
【0031】
本発明において、混練材料は、粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練して得られる。粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練することで、水酸化アルカリと水とを混練材料に均一に分散させることができる。したがって、混練材料内でゼオライト生成反応を均一に生じさせて、均質なゼオライト含有硬化体を製造することができる。ここで、水酸化アルカリは予め水に溶解させて水酸化アルカリ水溶液とし、水酸化アルカリ水溶液と粉粒体とを混練して混練材料を得ることが好適である。水酸化アルカリを水に溶解してから粉粒体と混練することによって、水酸化アルカリと水とを混練材料に均一に分散させ易くなり、混練時間を短縮することができる。
【0032】
ここで、粉粒体に対する水の混合量については、混練材料を一塊とでき且つ混練材料が流動性を有することのない粘度となる量とすればよい。例えば、粉粒体1000gに対して200g〜300gとすることが好適であり、250g程度とすることがより好適である。水の混合量が少なすぎると、粉粒体を混練して一塊とすることができなくなる。また、多すぎると、ゼオライト含有硬化体の空隙の発生量が多くなって、ゼオライト含有硬化体の強度を確保できなくなる。
【0033】
尚、本明細書における「ゼオライト含有硬化体の強度の確保」とは、ゼオライト含有硬化体コンクリート部材の代替材料として使用する場合や建築材料として要求される強度を確保することを意味している。例えば、本願発明によれば、圧縮強度が15MPa(15N/mm2)以上で且つ曲げ強度が4MPa(4N/mm2)以上のゼオライト含有硬化体を得ることができる。
【0034】
また、粉粒体に対する水酸化アルカリの混合量については、ゼオライト系鉱物の生成量を高めるためには多ければ多いほどよい。例えば、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した場合には、粉粒体1000gに対して110g以上混合とすることが好適であり、125g以上混合することがより好適であり、粉粒体に混合される水に溶解する限界量の水酸化ナトリウムを混合することが最も好適である。この場合には、ゼオライト系鉱物の生成量を増大させやすい。また、水酸化アルカリとして水酸化カリウムを使用した場合には、粉粒体1000gに対して88g以上とすることが好適であり、176g以上混合することがより好適であり、混練材料に混合される水に溶解する限界量の水酸化カリウムを混合することがさらに好適である。この場合には、ゼオライト系鉱物の生成量の増大と、ゼオライト含有硬化体の強度の確保の両立が図りやすい。
【0035】
粉粒体は、水酸化アルカリ及び水と共に混練され、混練材料が得られる。ここで、粉粒体に対する水の混合量についての上記の好適な範囲、即ち、粉粒体1000gに対して水を200〜300g混合する場合には、粉粒体に対する水の量が少ないことから、混練の際には撹拌力の強い強制練り型ミキサーを用いて混練することが好ましい。例えば、AICOH社製MTシリーズを使用することができるが、これに限定されるものではない。この混練工程により、所謂固練りスラリ状の混練材料が得られる。
【0036】
ここで、混練材料には、補強繊維がさらに混練されていることが好ましい。この場合には、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度の双方と高めることができ、特に、曲げ強度を顕著に向上させる効果がある。補強繊維としては、鋼繊維やポリプロピレン製繊維等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、粉粒体に対する補強繊維の混合量は、ゼオライト含有硬化体の製造を阻害しない範囲内であれば特に限定されないが、例えば粉粒体1000gに対して補強繊維30gを混合すれば、ゼオライト含有硬化体の強度を高める効果が十分に発揮される。
【0037】
次に、混練材料に物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施す。
【0038】
本発明における物理的な拘束圧力とは、100℃以上の養生温度で蒸気養生を行う際の飽和蒸気圧由来の圧力や、100℃未満の養生温度で蒸気養生を行う際に導入される蒸気由来の圧力とは別に、混練材料に付与される圧力を意味している。
【0039】
本発明における物理的な拘束圧力は、例えば図1に示す拘束圧力付与装置1により付与することができる。この装置は、大まかには、混練材料6を収容する型枠2と、型枠2の開口部に蓋をする上蓋5と、混練材料6と上蓋5との間に収納される中蓋3から構成される。尚、混練材料6は、型枠2に収容して中蓋3をした後に脱泡及び締固め処理する。
【0040】
型枠2と中蓋3と上蓋5の材質は、例えばステンレス鋼であるが、耐熱性を有し、耐アルカリ性を有し、且つ熱伝導性の高い材質であればこれに限定されるものではない。
【0041】
物理的な拘束圧力の制御は例えば以下のようにして行う。即ち、中蓋3にはばね4が備えられており、ばね4の無負荷時の位置(ばね4に力が与えられていない状態における位置)は、中蓋3の高さよりも高くしておく。そして、上蓋5を型枠2に固定したときに、上蓋5によってばね4を収縮できるようにしておく。このように構成することで、ばね4自体のばね定数と、中蓋3の底面積(混練材料と中蓋3の接地面の面積)と、ばね4の無負荷時の位置からのずれにより、混練材料6に付与される物理的な拘束圧力を制御できる。
【0042】
また、ばね4の無負荷時の位置からのずれは、上記の方法以外の方法によっても制御することが可能であり、上記の方法により物理的な拘束圧力を付与することには限定されない。例えば、本実施形態では、中蓋3の底面にばね4を固定し、中蓋3の上面を開口面としてこの開口面からばね4を突出させた状態としているが、中蓋3の上面を開口面とせず、上面にばね4を固定するようにしてもよい。この場合には、本実施形態の場合よりもばね4を収縮させることができるので、ばね4の無負荷時の位置からのずれを本実施形態の場合よりも大きくすることができ、より強い物理的拘束圧力を付与することができる。つまり、同じばね定数のばねを使用する場合には、ばね4の無負荷時の位置からのずれを大きくすることで物理的な拘束圧力を高めることができ、逆に、ばね4の無負荷時の位置からのずれを小さくすることで物理的な拘束圧力を小さくすることができる。
【0043】
また、上記のようなばねを使った物理的拘束圧力の付与方法には限定されない。例えば、容器に混練材料を収容し、混練材料を蓋で押しつけた状態でこの蓋を容器に固定することによって物理的拘束圧力を付与するようにしてもよい。尚、上蓋5を型枠2に固定する方法は、例えばねじ締めであるが、この方法に限定されるものではなく、バンド式の固定具を利用して上蓋5を型枠2で固定するようにしてもよい。
【0044】
また、型枠2の形状は、図1に示す直方体の形状に限定されるものではなく、物理的な拘束圧力を混練材料に均一に付与できるものであればよい。例えば、円柱形状等としてもよい。
【0045】
物理的な拘束圧力の値については、混練材料中において、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させるように作用する値であれば特に限定されるものではないが、例えば、0.02〜0.3MPaとすることが好適である。物理的な拘束圧力が小さすぎると、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させる作用が小さくなりすぎて、ゼオライト含有硬化体の強度を確保できなくなる場合がある。尚、拘束圧力を大きくしすぎても、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させる作用が飽和してしまうと考えられるので、あまり大きな物理的拘束圧力を付与しても無駄になる。
【0046】
本発明における蒸気養生は、ゼオライト系鉱物の生成を促進させ得る熱量を混練材料に付与することができ、且つ図1に示す拘束圧力付与装置1が加熱されたときに混練材料に含まれる水が装置1の外へ放出されるのを防いで、混練材料中の水分を維持し、ゼオライト系鉱物の生成反応を促進可能な条件で行われるものであり、水蒸気オートクレーブ装置にて養生温度100℃以上の飽和蒸気圧下あるいは飽和蒸気圧よりも小さい蒸気圧で行う養生処理と、蒸気養生槽にて100℃未満の温度で水蒸気を導入しながら行う養生処理の双方が包含される。例えば、水蒸気オートクレーブ装置にて、圧力0.6〜2.3MPa程度の飽和蒸気下で、養生温度を160℃〜220℃とし、養生時間を6〜24時間とすることが好適である。または、蒸気養生槽を用い、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生を施すことにより、ゼオライト系鉱物の生成量は少なくなるものの、ゼオライト含有硬化体の強度の確保が可能であることが確認されたことから、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生と同等の熱量を混練材料に付与しうる条件の蒸気養生を施すようにしてもよい。
【0047】
尚、蒸気養生槽を用い、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生を施した場合には、ゼオライト含有硬化体にメルリーノ沸石(Merlinoite)及び灰十字沸石(Phillipsite)を含有させることが可能である。
【0048】
ここで、図1に示す拘束圧力付与装置1によって、混練材料6の完全密封状態での収容が達成可能な場合、即ち、拘束圧力付与装置1に収容された混練材料6に含まれる水が、装置1の加熱時に外に漏れ出ることの無い場合には、水蒸気を導入することなく装置1を単に加熱するだけでゼオライト含有硬化体が得られることが本発明者等の実験により確認されている。したがって、例えば乾燥炉等により加熱するだけでゼオライト含有硬化体が得られることになる。しかしながら、ゼオライト含有硬化体は、ある程度の大きさを有するものが要求されることが多いことから、このニーズに応えるべく、拘束圧力付与装置1の大型化が必要になることが多い。また、ゼオライト含有硬化体を工業的に大量生産する上では、型枠にかかるコストを抑制する観点から、同じ拘束圧力付与装置1を何度も使い回す必要が生じることが多い。このような状況下で、拘束圧力付与装置1として完全密封状態のものを要求することは、拘束圧力付与装置1に要求される寸法精度を高めて型枠にかかるコストを上昇させるだけでなく、製造された硬化体が不良品となる虞が生じやすくなる。即ち、混練材料の加熱中に装置1の完全密封状態が維持できなくなった場合には、混練材料に含まれる水が装置1の外に放出されて、混練材料中での水熱反応が阻害されてしまい、ゼオライト含有硬化体が製造できなくなる場合がある。しかしながら、本発明のように蒸気養生を施す場合には、装置1が若干の隙間を有する略密封状態であっても、この隙間に蒸気が入り込んで、混練材料に含まれる水(混練材料に混練されている水)の放出を抑制することができる。また、隙間に蒸気が入り込むことにより、混練材料中に蒸気が供給される効果も期待できる。したがって、略密封状態であったとしても、蒸気養生を行う場合には、混練材料中におけるゼオライト生成反応の促進が阻害されることはなく、強度特性の優れたゼオライト含有硬化体を製造することが可能である。しかも、粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練して得られた直後の混練材料は、過剰な水分に対して脆弱であることから、これをそのまま蒸気養生に供したとしてもその形状を維持することができない。しかしながら、混練材料を拘束圧力付与装置1に略密閉状態で収容すれば、蒸気養生における過剰な水分によってその形状が破壊されることがない。したがって、混練材料を拘束圧力付与装置1に略密封状態あるいは完全密封状態で収容して物理的拘束圧力を付与することは、粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練して得られた直後の混練材料を蒸気養生に供することを可能として、ゼオライト含有硬化体を短期間で製造可能とする付加的な利点も生み出す。尚、ここでいう略密封状態における隙間とは、混練材料に過剰の水分が供給されてその形状が破壊されない程度の隙間、具体的には、混練材料を収容する容器とその容器の蓋の周囲との間の数ミリの隙間、または混練材料を収容する容器とその容器の蓋の隅部(例えば容器が直方体の場合には蓋の四隅)との間の数ミリの隙間を意味している。
【0049】
ここで、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した場合の蒸気養生の条件は、養生時間については24時間することが好適である。但し、例えば養生温度を220℃とした場合には、養生時間を6時間以上としてもゼオライトの生成量が変化しなかったことから、養生温度が高温の場合には、養生時間を長時間としてもゼオライトの生成量が飽和する場合がある。逆に養生温度を低温とした場合には、ゼオライト生成量を十分なものとするために養生時間を24時間よりも長時間を必要とする場合がある。また、養生温度は160℃〜220℃とすることが好適である。養生温度を160℃〜200℃とした場合には、ゼオライト系鉱物の生成とゼオライト含有硬化体の強度の向上の両立を図りやすい。特に、養生温度を180℃とすることで、圧縮強度を高める効果が最も高まり、養生温度を160℃とすることで、曲げ強度を高める効果が最も高まる。また、養生温度を200℃〜220℃とした場合、ゼオライト含有硬化体に求められる最低限の強度を確保しながら、ゼオライト系鉱物の生成量を増加させることができる。但し、蒸気養生条件は、上記の範囲に限定されるものではなく、ゼオライト含有硬化体として要求されるゼオライト生成量、ゼオライト系鉱物種及び強度に応じて、適宜設定すればよい。
【0050】
また、水酸化アルカリとして水酸化カリウムを使用した場合の蒸気養生の条件は、養生温度を220℃とし、養生時間を24時間とすることが好適である。この場合、ゼオライト含有硬化体のゼオライト系鉱物含有量の増加とゼオライト含有硬化体の強度(圧縮強度)の向上の両立を図りやすい。但し、蒸気養生条件は、上記の範囲に限定されるものではなく、ゼオライト含有硬化体として要求されるゼオライト生成量、ゼオライト系鉱物種及び強度に応じて、適宜設定すればよい。
【0051】
尚、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例】
【0052】
本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法の実施例を以下に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(1)粉体材料と水酸化アルカリと練混ぜ水の配合条件
粉粒体としてJIS A 6201でII種に相当するフライアッシュを用いた。このフライアッシュの強熱減量は2.9重量%であった。また、SiO2含有量は53.9重量%であり、CaO含有量は7.2重量%であった。水酸化アルカリとして水酸化ナトリウム(和光純薬製)または水酸化カリウム(和光純薬製)を使用した。練混ぜ水として水道水を使用した。水酸化アルカリは水に溶解させて水酸化アルカリ溶液としてから使用した。
【0054】
本実施例では、表1に示す配合1〜4をゼオライト含有硬化体製造原料の配合条件として設定した。尚、表1における単位は全て「g」である。
【0055】
【表1】
【0056】
(2)ゼオライト含有硬化体の製造条件
表1に示す配合に従い、フライアッシュを5000gとして各材料を計量し、フライアッシュに水酸化アルカリ水溶液を添加して撹拌力の強い強制練り型ミキサー(AICOH社製MTシリーズ)で均質に混練し、混練材料を得た。尚、このミキサーは遊星運動をする2本の攪拌子を有しており、約5分間練混ぜを行うことで、均質な混練材料を得ることができた。
【0057】
次に、この混練材料を図1に示す拘束圧力付与装置1の型枠2の中(内寸法:20cm×20cm断面、高さ35cm)に収容した。型枠2の内面には、蒸気養生終了後のゼオライト含有硬化体の取り出しを容易なものとするため、PEEK製の剥離板(不図示)を設置した。また、収容した混練材料の高さは15cmとなった。
【0058】
型枠2の中に混練材料を収容した後、中蓋3を載置した型枠2を振動テーブル(エクセン社製TVシリーズ)上に設置し、振動数2500Hz、振幅1.5mmの振動を混練材料に4分間付与して脱泡及び締固めを行った。
【0059】
次に、上蓋5を枠型2にねじ締めして固定した。そして、中蓋3に収容されているばね4の平衡位置からのずれ(上蓋5をねじ止めする前後でのばね4の長さの差)とばね4自体のばね定数と中蓋3の底面積とから、混練材料に付与される物理的な拘束圧力の大きさを計算したところ、0.13MPaであった。そして、混練材料に拘束圧力を付与した状態で拘束圧力付与装置1ごと水蒸気オートクレーブ装置に入れ、各種条件で蒸気養生を施した。
【0060】
尚、型枠2と中蓋3と上蓋5の材質はステンレス鋼とした。
【0061】
(3)ゼオライト含有硬化体の特性評価項目
上記により製造したゼオライト含有硬化体は、圧縮強度測定、曲げ強度測定、pH測定、合成鉱物相の同定、細孔容積率測定、細孔径分布測定及び溶出試験に供し、その特性を評価した。
【0062】
圧縮強度測定は、製造したゼオライト含有硬化体を直径35mm×高さ70mmの円柱状に切り出した試験体を使用して、JIS R 5201に準じて行った。
【0063】
曲げ強度測定は、製造したゼオライト含有硬化体を40mm×40mm×160mmの直方体に切り出した試験体を使用して、JIS R 5201に準じて行った。
【0064】
pH測定は、製造したゼオライト含有硬化体を粉末状に調整し、当該粉末をイオン交換水に添加して、20℃で6時間撹拌した後にイオン交換水のpHを測定することにより実施した。尚、ゼオライト含有硬化体粉末のイオン交換水に対する添加量は、イオン交換水の重量の1/10の重量とした。
【0065】
合成鉱物相の同定は粉末X線回折法(XRD)により行い、この同定結果に基づいてゼオライト含有硬化体を構成する主要な鉱物種の特定を行った。
【0066】
総細孔容積率測定は、水銀圧入式細孔径分布測定装置により行った。また、細孔径分布測定は、水銀圧入式細孔径分布測定装置により行った。
【0067】
溶出試験は、環境庁告示46号法に準じて行った。
【0068】
(4)実験結果
(4−1)水酸化ナトリウムの配合量の影響
水酸化ナトリウムの配合量がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、水酸化ナトリウムの配合量が異なる配合1と配合2の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、これらゼオライト含有硬化体の特性について比較検討した。結果を表2に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生条件は、汎用的な養生温度である180℃とし、養生時間は24時間とした。また、蒸気養生は1.0MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示されるように、配合1と配合2の双方の条件ともに、非常に高い圧縮強度と曲げ強度を示し、特に、配合2を適用した場合には、圧縮強度が87N/mm2で且つ曲げ強度が11.2N/mm2となり、非常に高い強度を有するゼオライト含有硬化体の製造が可能であることが明らかとなった。尚、水に対する水酸化ナトリウムの溶解度の限界値に近い水酸化ナトリウム量を配合した配合2の条件の方が、配合1の条件と比較して、圧縮強度と曲げ強度が若干高まったがその差は有意ではないと判断された。
【0071】
pH値については、配合1の条件よりも配合2の条件の方が高くなることが確認され、水酸化ナトリウムの配合量が多い方がpH値が高まる傾向が見られた。
【0072】
総細孔容積率と圧縮強度との間には、負の相関が認められた。即ち、圧縮強度が高い方が、総細孔容積率が低下する傾向が見られた。このことから、水酸化ナトリウムの配合量を高めることでフライアッシュの溶解反応が進行し易くなり、粒子間の間隙が充填され易くなることが明らかとなった。
【0073】
ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物をXRDにより分析した結果を図5及び図7に示す。尚、図5と図7は同一の測定結果を示し、図7は図5よりも横軸(2θ)の範囲を拡大して表示したものである。また、図7の実線のスペクトルはフライアッシュのXRD分析結果である。配合1と配合2の条件で製造したゼオライト含有硬化体の双方から、ゼオライト系鉱物であるグメリン沸石(Gmelinite-Na)の生成が確認された。また、配合1では、グメリン沸石(Gmelinite-Na)に加え、ゼオライトK−Iの生成が確認された。また、フライアッシュに含まれているムライト、石英、マグネタイト及びヘマタイトが比較的多く残存していることが確認された。しかし、フライアッシュに含まれていた非晶質相を示す2θ=15〜35°に生じた山状のピークはほぼ消失し、別の非晶質相を示す2θ=25〜40°に新たな山状のピークが発生することを確認した。このことから、フライアッシュの非晶質相が主に水酸化ナトリウムと反応することによってゼオライト系鉱物が生成したものと考えられた。
【0074】
(4−2)養生温度の影響
養生温度がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、養生温度を160℃、180℃、200℃または220℃として配合2の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、その諸特性について比較検討した。結果を表3に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生の養生時間は24時間とした。また、蒸気養生は0.62、1.0、1.6、2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0075】
【表3】
【0076】
表3に示されるように、圧縮強度は養生温度180℃で最大となり、曲げ強度は養生温度160℃で最大となった。また、養生温度を最も高めた220℃で得られたゼオライト含有硬化体の圧縮強度ならびに曲げ強度は他の養生温度で養生した場合に比べ、低い値ではあったものの、コンクリート部材の代替材料や建築材料として使用可能な程度の強度が確保できていることが明らかとなった。
【0077】
pH値については、養生温度220℃で得られたゼオライト含有硬化体で11.2となり、養生温度が180℃以上になると、養生温度の増加に伴って低下する傾向が見られた。このことから、フライアッシュの溶解反応は養生温度の上昇に伴って進行しやすくなることが明らかとなった。
【0078】
総細孔容積率と圧縮強度の間には、負の相関が認められた。即ち、圧縮強度が低い方が、総細孔容積率が増加する傾向が見られた。このことから、養生温度が高まると、フライアッシュの溶解反応が進行しやすくなる一方で、総細孔容積率の増加が起こりやすくなり、圧縮強度が低下すると考えられた。
【0079】
次に、製造したゼオライト含有硬化体の細孔径分布を測定した結果を図2に示す。図2において、□は養生温度を160℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示し、☆は養生温度を180℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示し、▽は養生温度を200℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示し、■は養生温度を220℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示している。
【0080】
図2に示すように、養生温度を180℃として製造したゼオライト含有硬化体は、孔径0.02μm未満の空隙を多く有しているものの、0.02μm以上の空隙を殆ど有しておらず、このことが、圧縮強度を高める要因になったものと推定された。これに対し、養生温度を220℃として製造したゼオライト含有硬化体は、孔径0.1〜2μmの空隙を多く有しており、このことが圧縮強度を低下させる要因になったものと推定された。
【0081】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果、主要構成鉱物が養生温度の変化に伴い変化することが確認された。即ち、養生温度を160℃とした場合には、ゼオライトK−I、名称が付与されていないゼオライト類及びヘマタイトが検出された。養生温度を180℃とした場合には、ゼオライトK−I及び名称が付与されていないゼオライト類が減少し、ゼオライトに属する鉱物であるグメリン沸石(Gmelinite-Na)が検出された。養生温度を200℃とした場合には、グメリン沸石(Gmelinite-Na)に加え、ゼオライトに属する鉱物である方沸石(Analcime-C)、ゼオライトP1が検出された。養生温度を220℃とした場合には、グメリン沸石(Gmelinite-Na)及び方沸石(Analcime-C)が検出された。
【0082】
また、養生温度条件によるXRD分析結果の違いを図8に示す。この結果から、養生温度の上昇に伴って、ゼオライト系鉱物の生成量が高まることが明らかとなった。
【0083】
以上の結果から、養生温度の上昇に伴ってゼオライト系鉱物の生成量が高まると共に、ゼオライト系鉱物の種類も変化するものの、圧縮強度と曲げ強度が低下することから、養生温度の上昇に伴って、結晶間に細孔が多く形成されやすくなるものと考えられた。
【0084】
したがって、ゼオライト含有硬化体中のゼオライト系鉱物含有量を高めることを目的とする場合には、養生温度を220℃まで高めることが適切であるが、養生温度を160℃〜200℃とすることで、ゼオライト含有硬化体にゼオライト系鉱物を含有させながら硬化体の強度を高めやすくなり、特に180℃にすることで圧縮強度を顕著に高めることができ、160℃とすることで、曲げ強度を顕著に高めることが可能であることが明らかとなった。つまり、この結果から、養生温度の制御により、ゼオライト含有硬化体の強度、ゼオライト系鉱物の種類、ゼオライト系鉱物の生成量を管理できることが明らかとなった。
【0085】
(4−3)養生時間の影響
養生時間がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、養生時間を6時間、18時間、24時間として配合2の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、その特性について比較検討した。結果を表4に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の養生温度は220℃とした。また、蒸気養生は2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0086】
【表4】
【0087】
表4に示されるように、養生時間を24時間としたときに、圧縮強度及び曲げ強度が最も低い値になったものの、圧縮強度及び曲げ強度の変化幅は、養生時間が6〜24時間の範囲内では、比較的少ないことが確認された。そして、どの条件においても、コンクリート部材の代替材料として使用可能な程度の強度が確保できている明らかとなった。また、総細孔容積率は、いずれの養生時間においても30体積%であり、ほとんど変わらなかった。
【0088】
pHについては、養生時間の増大に伴って低下する傾向が見られた。これは、養生時間の増大に伴って、フライアッシュの溶解反応が進行したことに起因しているためと考えられる。
【0089】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果、いずれのゼオライト含有硬化体においても、方沸石(Analcime-C)、グメリン沸石(Gmelinite-Na)、その他のゼオライト類、及びフライアッシュに含まれていた鉱物相の残存物であるムライトと石英が主要構成鉱物であることが確認された。また、いずれの養生温度においても、XRDスペクトルにおけるピーク高さに有意差が見られなかった。
【0090】
以上の結果から、養生温度を220℃とした場合には、養生時間を6時間とすれば、ゼオライト系鉱物の生成量を十分なものとできることが明らかとなった。
【0091】
(4−4)配合するアルカリ種の影響
配合するアルカリ種がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、アルカリ種の異なる配合2と配合4の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、これらゼオライト含有硬化体の特性について比較検討した。結果を表5に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生の養生温度ならびに養生時間は、220℃、24時間とした。また、蒸気養生は2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。尚、配合2に示す水酸化ナトリウムの配合量と配合4に示す水酸化カリウムの配合量は、モル換算で当量とした。
【0092】
【表5】
【0093】
表5に示されるように、圧縮強度、曲げ強度及びpHについては配合4の条件の方が配合2の条件よりも大きな値を示した。総細孔容積率については、配合2と配合4の条件とも30体積%程度であり、差は見られなかった。
【0094】
ここで、配合4では水酸化カリウムを配合しており、配合2では水酸化ナトリウムを配合していることから、配合するアルカリ種を水酸化カリウムとすることで、圧縮強度、曲げ強度を高めることができ、特に圧縮強度を大幅に高めることが可能であることが明らかとなった。
【0095】
次に、製造した硬化体の細孔径分布を測定した結果を図3に示す。図3において、■は配合2の条件で製造した硬化体(水酸化ナトリウムを配合)の測定結果を示し、○は配合4の条件で製造した硬化体(水酸化カリウムを配合)の測定結果を示している。
【0096】
この結果から、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体においては、細孔径が主に0.1〜2μmの範囲に分布しているのに対し、水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体においては、細孔径が0.01〜0.1μmの範囲に分布していることが確認された。したがって、水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体の圧縮強度が高かったのは、ゼオライト含有硬化体の空隙を形成する細孔の径が、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体のそれと比較して微細であることが一つの要因であると考えられた。
【0097】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合2)と水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合4)では、主要構成鉱物が異なっていることが明らかとなった。即ち、水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合4)の場合には、カリウムを多く含むゼオライト系鉱物であるペルリアライト(Perlialite)を多く含むことが確認された。一方、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合2)の場合には、方沸石(Analcime-C)、グメリン沸石(Gmelinite-Na)を多く含むことが確認された。これらの主要構成鉱物の違いが、圧縮強度に大きな差異をもたらしたものと考えられた。
【0098】
以上の結果から、方沸石(Analcime-C)を多く生成させることを目的とした場合は、水酸化ナトリウムを使用することが好ましく、ペルリアライト(Perlialite)を多く生成させ、かつ圧縮強度を高めることを目的とする場合には、水酸化カリウムを使用することが好ましいことが明らかとなった。
【0099】
尚、配合4の条件で製造したゼオライト含有硬化体について、密度を測定したところ、1.6g/cm3であった。このことから、本発明により得られるゼオライト含有硬化体は、高い強度を有しながらも、非常に軽いことが明らかとなった。
【0100】
また、配合4の条件で製造したゼオライト含有硬化体について、吸水率を測定したところ、吸水率が20%であることが明らかとなった。このことから、本発明のゼオライト含有硬化体は、ゼオライトの吸着能を利用した固体吸着材として利用できることが明らかとなった。
【0101】
(4−5)水酸化カリウムの配合量の影響
水酸化カリウムの配合量がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、水酸化カリウムの配合量が異なる配合3と配合4の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、これらゼオライト含有硬化体の特性について比較検討した。結果を表6に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生の養生温度ならびに養生時間は、220℃、24時間とした。また、蒸気養生は2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0102】
【表6】
【0103】
表6に示されるように、圧縮強度とpHについては、配合4の条件の方が配合3の条件よりも大きな値を示した。これに対し、曲げ強度と総細孔容積率については、配合4の条件の方が配合3の条件よりも小さな値を示した。
【0104】
ここで、水酸化カリウムの配合量は、配合3の条件よりも配合4の条件の方が多いことから、水酸化カリウムの配合量を多くすることで、圧縮強度とpHを高めることができ、総細孔容積率を低くできることが明らかとなった。一方、曲げ強度に関しては、水酸化カリウムの配合量を少なくした方が高まることが明らかとなった。
【0105】
次に、製造した硬化体の細孔径分布を測定した結果を図4に示す。図4において、●は配合3の条件で製造した硬化体(水酸化カリウム配合量88.1g)の測定結果を示し、○は配合4の条件で製造した硬化体(水酸化カリウム配合量176.2g)の測定結果を示している。
【0106】
この結果から、水酸化カリウムの配合量が多い配合4の条件で製造した硬化体の方が、細孔の径が小さいことが確認された。したがって、この細孔径の差が、圧縮強度に影響を与えているものと考えられた。
【0107】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果を図6に示す。配合3ではゼオライト系鉱物であるZoisiteが僅かに生成するが、フライアッシュの主要構成物であるムライト、石英等の顕著な減少は認められなかった。このことから、配合3において発現した圧縮強度はフライアッシュ粒子間の癒着によりもたらされたものであることが考えられた。この結果から、水酸化カリウムの配合量をフライアッシュ1000gに対して88.1g以下とした場合、強度面としての実用上の問題は無いものの、ゼオライト系鉱物の生成量が低下してしまうことが明らかとなった。そして、この結果から、水酸化カリウムの配合量を減らすことで、ゼオライト系鉱物の生成量が少なくなり、圧縮強度が小さくなる一方で、曲げ強度を高められることが明らかとなった。逆に、水酸化カリウムの配合量を増やすことで、ゼオライト系鉱物の生成量を高め、圧縮強度を高めることができる一方、曲げ強度は小さくなることが明らかとなった。
【0108】
(4−6)溶出試験結果
配合2、3及び配合4の条件で、養生温度を220℃、養生時間を24時間として製造したゼオライト含有硬化体と、配合2の条件で、養生温度160℃、養生時間を24時間として製造したゼオライト含有硬化体とから溶出する微量元素を分析した結果を表7に示す。表7において、数値の単位は「mg/L」である。尚、比較のために、フライアッシュ単味でも溶出試験を行った。
【0109】
【表7】
【0110】
いずれのゼオライト含有硬化体においても、フライアッシュ単味の場合と比較して、全クロム溶出量が80〜90%程度減少することが確認された。このことから、ゼオライト系鉱物の生成量に依らずに、本発明のゼオライト含有硬化体により全クロム溶出量が抑えられることが明らかとなった。
【0111】
また、配合するアルカリを水酸化カリウムとした場合、フライアッシュ単味の場合と比較して、ホウ素の溶出量が10〜30%減少した。このことから、配合するアルカリ種を水酸化カリウムとすることで、全クロム溶出量を抑制する効果に加えて、ホウ素の溶出量を抑制する効果が得られることが明らかとなった。
【0112】
尚、砒素,セレンについては,いずれのゼオライト含有硬化体においてもフライアッシュ単味に比べて溶出量が高まったが、配合するアルカリを水酸化カリウムとすることで、砒素の溶出が若干抑えられることが確認された。
【0113】
以上の結果から、フライアッシュ単味に比べてクロムならびにホウ素の溶出を抑制し,かつ砒素の溶出も極力抑えるためには、水酸化カリウムを使用した方がよいことが明らかとなった。
【0114】
(5)補強繊維添加の影響
配合4の条件に鋼繊維をフライアッシュ質量の3%(フライアッシュ1000gに対して鋼繊維30g)を混合し、養生温度220℃、養生時間24時間で蒸気養生(2.3MPa)を施してゼオライト含有硬化体を製造し、鋼繊維を添加せずに製造したゼオライト含有硬化体との性能の比較を行った。結果を表8に示す。尚、添加した鋼繊維はBeKaert社製OLファイバー(直径0.2mm、長さ13mm)とした。
【0115】
【表8】
【0116】
表8に示されるように、鋼繊維を混合することで、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度を高める効果があり、特に曲げ強度を高める効果に優れていることが明らかとなった。
【0117】
(6)養生温度の低温化の検討
養生温度を低温としてゼオライト含有硬化体を製造した場合の諸特性について、配合2の条件で検討を行った。結果を表9に示す。養生の条件は、以下の2条件とした。尚、蒸気の導入条件は、相対湿度95%以上とした。
・養生温度:50℃、養生時間:12日間(以下、50℃−12日間養生と呼ぶ)
・養生温度:80℃、養生時間:3日間(以下、80℃−3日間養生と呼ぶ)
【0118】
【表9】
【0119】
ゼオライト含有硬化体の主要構成鉱物種をXRDにより分析した結果、50℃-12日間養生では、フライアッシュに含まれる構成鉱物が多く残存しており、僅かにゼオライト類が生成した程度であることが確認された。また、80℃−3日間養生においても、フライアッシュの構成鉱物が比較的多く残存していることが確認されたが、50℃-12日間養生の場合に比べてメルリーノ沸石(Merlinoite)及び灰十字沸石(Phillipsite)等のゼオライト系鉱物が多く生成されていることが確認された。
【0120】
ゼオライト系鉱物の生成量が少なかった50℃-12日間養生において、圧縮強度が39.1N/mm2、曲げ強度4.7N/mm2となり、同じ配合で220℃で24時間の蒸気養生を施したゼオライト含有硬化体の圧縮強度(15.4N/mm2)、曲げ強度(4.0N/mm2)に比べて高い強度を示した。これは、フライアッシュの非晶質相の癒着による強度増加の効果が、220℃で24時間の蒸気養生を施した場合と比較して、50℃-12日間養生の場合の方が高いためと推察された。
【0121】
蒸気養生温度を低温とした場合には、水熱合成時にゼオライト系鉱物が多く生成する配合とした場合でも、反応が十分に進行しないため、非晶質系反応相が主体となるが、圧縮強度は40N/mm2程度となり、比較的高強度を確保できる。このことから、ゼオライト系鉱物を多く生成させることを目的としない場合は、50℃-12日間または80℃−3日間の蒸気養生条件でよいことが明らかとなった。そして、この結果から、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生と同等のエネルギーを混練材料に付与しうる条件の蒸気養生を施すことで、上記と同様の効果が得られることが推察された。
【0122】
尚、このように上記養生温度を低温化することによって、メルリーノ沸石(Merlinoite)及び灰十字沸石(Phillipsite)等のゼオライト系鉱物を生成できることが明らかとなったことから、養生温度を変更することによって、ゼオライト含有硬化体の構成成分たるゼオライト系鉱物の種類を変更できることが明らかとなった。
【0123】
(7)電子顕微鏡観察
配合2及び配合4の条件で、養生温度220℃、養生時間24時間として製造したゼオライト含有硬化体について、電子顕微鏡観察を行い、結晶の形状等について検討した。
【0124】
水酸化アルカリを水酸化ナトリウムとした条件である配合2の条件で得られたゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真を図9〜12に示す。尚、図10は図9の領域1の拡大像であり、図11は図9の領域2の拡大像であり、図12は図9の領域3の拡大像である。図9、図10及び図12に示されるように、柱状及び繊維状の結晶が比較的多く生成していることが確認された。また、図11に示されるような粒径10μm程度の粗大で密実な結晶が多く生成していることが確認された。そして、その密実な結晶の周囲には、開口幅が0.1μm程度の空隙が形成されており、この開口は細孔径分布0.1〜2μmの空隙に相当すると考えられた。
【0125】
次に、水酸化アルカリを水酸化カリウムとした条件である配合4の条件で得られたゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真を図13〜16に示す。尚、図14は図13の領域4の拡大像であり、図15は図13の領域5の拡大像である。図16は図13とは別の領域を撮影して得られた電子顕微鏡写真である。図13〜図16に示されるように、微小柱状結晶及び積層柱状結晶が多く生成しており、図14では短冊状結晶の存在が確認され、図16では微小繊維状結晶の存在が確認された。また、微小柱状結晶及び積層柱状結晶を取り囲むような密実な積層状の生成物が存在し(図13及び図15参照)、その形態はセメント水和物中のカルシウム・シリケート水和物(C−S−H)の形態に類似していた。この観察結果から、セメント水和物中のカルシウム・シリケート水和物(C−S−H)の形態との類似性がゼオライト含有硬化体の強度発現性の要因の一つであることが考えられた。
【0126】
(8)まとめ
以上、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、圧縮強度が15〜87N/mm2、曲げ強度が4.0〜13N/mm2の高強度なブロック状のゼオライト含有硬化体を製造し得ることが明らかとなった。したがって、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法と比較して、高強度のゼオライト含有硬化体を製造することができ、コンクリート部材の代替材料や建築材料として高強度なゼオライト含有硬化体が要求される場合にも対応が可能となる。
【0127】
また、配合4の条件、即ち、フライアッシュ1000gに対し、水酸化カリウムを176.1g、水を248.4g混合した混練材料に対し、物理的拘束圧力を付与しながら蒸気養生(養生温度220℃、養生時間24時間)として製造したゼオライト含有硬化体は、密度が1.6g/cm3と非常に軽量であり、このことから、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、高い強度を有し且つ非常に軽いゼオライト含有硬化体を製造できることが明らかとなった。また、このゼオライト含有硬化体の吸水率が20%であったことから、固体吸着材としての使用も可能となる。尚、本発明の製造方法により、吸水率が5%以下のゼオライト含有硬化体が得られた場合には、これを粉砕処理することで、高強度コンクリート用の細骨材として使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の製造方法により得られるゼオライト含有硬化体は、超長期間の安定使用が望まれるコンクリート部材の代替材料、レンガ等のブロック材料として利用できる。また、ゼオライトは除臭・吸湿・調湿・放湿機能を有することから、これらの機能を有する建築材料として利用することも可能である。具体的な例としては、シックハウス症候群の原因物質である有機分子を吸着する機能を有する建築材料として利用することが可能である。さらに、固体吸着材や、イオン交換材、触媒等としても利用することが可能である。また、温室効果ガスである二酸化炭素の吸着材として利用することもできる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト含有硬化体の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、レンガ及びプレキャストコンクリートの代替品や建築材料としての使用に好適なゼオライト含有硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製品の代替品として利用可能なブロック状や柱状のゼオライト含有硬化体を製造する技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体をアルカリ処理後脱水し、加圧成形後に水熱処理を施すことによりゼオライトを含有する硬化体を製造する方法が提案されている(特許文献1)。具体的には、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、廃材である石炭灰、ロックウールまたは鉱滓スラグ等を使用し、この粉粒体を水酸化アルカリ水溶液に一定時間浸漬し(アルカリ処理)、アルカリ処理された粉粒体を脱水プレス処理して過剰な水酸化アルカリ水溶液を除去し、加圧形成した後にオートクレーブを用いて水熱処理(蒸気養生)を施すことにより、ブロック状や柱状のゼオライト含有硬化体を製造するものである。また、アルカリ処理の際に浸漬液として使用する水酸化アルカリ水溶液には、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム化合物が添加される。
【0004】
上記製造方法において、水酸化アルカリ水溶液へのカルシウム化合物の添加は、以下の目的で行われる。即ち、浸漬液として使用する水酸化アルカリ水溶液の濃度の増加や粉粒体の浸漬液への浸漬時間の増加に伴い、浸漬液の粘度が上昇してしまう。このことに起因して脱水プレス処理時に濾水抵抗が増加し、脱水プレス処理により十分に脱水できなくなる。十分な脱水を行わないと、加圧成形体に過剰の水が残存し、ゼオライト含有硬化体の空隙量が増加し、その結果としてゼオライト含有硬化体の強度が低下してしまう。そこで、上記製造方法においては、浸漬液の粘度上昇を抑えて、ゼオライト含有硬化体の強度を確保する目的で、カルシウム化合物が水酸化アルカリ水溶液に添加されている。
【0005】
また、廃碍子の粉砕物をアルカリ処理後脱水し、加圧成形後に水熱処理を施すことによりゼオライト含有硬化体を製造する方法が提案されている(特許文献2)。具体的には、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、廃碍子という特定の廃材の粉砕物を用いることによって、アルカリ処理の際に浸漬液として使用する水酸化アルカリ水溶液にカルシウム化合物を添加せずとも、浸漬液の粘度上昇を抑えることができ、特許文献1に記載の製造方法のように、カルシウム化合物を添加することなく、ゼオライト含有硬化体の強度を確保することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−124315
【特許文献2】特開2001−172015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の製造方法で得られるゼオライト含有硬化体の強度は、最も優れたものでも、圧縮強度が30〜35MPaで且つ曲げ強度が約6〜7MPaに留まる。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法では、コンクリート製品の代替材料として上記よりも高強度のゼオライト含有硬化体が要求される場合に対応できないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1及び2に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法では、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体や廃碍子を水酸化アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行うことから、大量の水酸化アルカリ水溶液を必要とし、製造コストが嵩む問題があった。さらに、脱水プレス処理により過剰な水酸化アルカリ水溶液を除去していることから、製造初期に投入した水酸化アルカリ水溶液の全量を有効利用することができず、無駄が多いという問題もあった。また、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体や廃碍子を水酸化アルカリ水溶液で浸漬処理したものに対し、脱水プレスと加圧成型を行う程度では、成型体自体の強度が十分なものとは言えず、水熱処理を施すとひび割れ等が発生してゼオライト含有硬化体に欠陥を含むことが懸念されていた。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の製造方法では、ゼオライト含有硬化体の強度を確保する上で、カルシウム化合物の添加が必要であり、製造コストがさらに嵩んでしまうという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の製造方法では、カルシウム化合物の添加を必要としないことから製造コストの低減を図ることはできるものの、原料として使用できる粉粒体が廃碍子の粉砕物という特定のものに限定されてしまい、火力発電所から多量に排出されるフライアッシュのように、産業副産物の利用促進ならびに処分地の制約等の観点から、有効利用の割合を積極的に増やすことが望まれている廃棄物を使用することができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、従来の製造方法で製造されるゼオライト含有硬化体よりも高強度のゼオライト含有硬化体を製造することを可能とする方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、従来の製造方法よりも製造コストを抑えることを可能とするゼオライト含有硬化体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、従来の製造方法よりも製造コストを抑えながらも、有効利用の割合を積極的に増やすことが望まれている廃棄物であるフライアッシュを原料とすることを可能とするゼオライト含有硬化体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、本願発明者等は鋭意研究し、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法とは全く異なる新規な製造方法を開発した。即ち、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料と水酸化アルカリと水とを混練し、これらを混練材料として一体化させ、この混練材料に対し物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すという新たなゼオライト含有硬化体の製造方法を開発した。しかも、この新規な製造方法によりゼオライト含有硬化体を製造した場合、圧縮強度が87.0MPaで且つ曲げ強度が11.2MPaという、従来の製造方法により製造されるゼオライト含有硬化体の強度と比較して飛躍的に高い強度を有するゼオライト含有硬化体を製造し得ることを知見し、本願発明に至った。
【0015】
かかる知見に基づく、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法は、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにしている。
【0016】
粉粒体を構成しているシリカ及びアルミナを含む非晶質材料が水酸化アルカリと接触すると、非晶質相が浸食される。この浸食反応を水の存在下で高温で生じさせると、非晶質相からシリコンやアルミニウム等のイオンの溶出が促進され、溶出されたイオンが再配列する過程で規則性を有するようになり、ゼオライト系鉱物が生成される。シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、蒸気養生を施すのと同時に物理的な拘束圧力を付与することにより、この物理的な拘束圧力が、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させるように作用し、ゼオライト含有硬化体の強度が高められる。
【0017】
ここで、混練材料には、補強繊維がさらに混練されていることが好ましい。補強繊維がさらに混練されることによって、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度の双方を高めることができ、特に、曲げ強度を顕著に高めることができる。
【0018】
また、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを用いることが好ましい。フライアッシュの粒子は、1〜200μmの粒度分布を有していることから、フライアッシュの粒子間において多くの接着点を確保することができる。したがって、ゼオライト含有硬化体の強度を確実に高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、蒸気養生を施す際に同時に付与する物理的な拘束圧力が、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させるように作用するので、ゼオライト含有硬化体の強度を高めることができる。
【0020】
しかも、請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにしているので、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法のように、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体を浸漬するために水酸化アルカリ水溶液を大量に使用する必要がなく、脱水プレス処理を行う必要もない。また、浸漬液の粘度上昇を抑えるためにカルシウム化合物の添加を行う必要もない。したがって、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法と比較して製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0021】
また、請求項2に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、混練材料に補強繊維がさらに混練されているので、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度の双方を高めることができ、特に、曲げ強度を顕著に高めることが可能となる。
【0022】
請求項3に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを用いるようにしているので、フライアッシュの粒子間において多くの接着点を確保することができ、ゼオライト含有硬化体の強度を確実に高めることができる。また、フライアッシュを原料として使用することができるので、火力発電所から多量に排出されるフライアッシュの利用促進を図ることが可能となる。したがって、フライアッシュに対する産業上の利用促進の要請に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態における物理的な拘束圧力を付与する装置を示す図である。
【図2】養生温度がゼオライト含有硬化体の細孔径分布に及ぼす影響を示す図である。
【図3】水酸化アルカリの種類が細孔径分布に及ぼす影響を示す図である。
【図4】水酸化カリウムの配合量の違いが細孔径分布に及ぼす影響を示す図である。
【図5】アルカリを水酸化ナトリウムとした場合のXRDによる鉱物種同定結果を示す図である。
【図6】アルカリを水酸化カリウムとした場合のXRDによる鉱物種同定結果を示す図である。
【図7】図5の横軸を2θ=60°まで広げた図である。
【図8】養生温度条件によるXRD分析結果の違いを示す図である。
【図9】水酸化ナトリウムを用いて製造したゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真である。
【図10】図9の領域1の拡大写真である。
【図11】図9の領域2の拡大写真である。
【図12】図9の領域3の拡大写真である。
【図13】水酸化カリウムを用いて製造したゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真である。
【図14】図13の領域4の拡大写真である。
【図15】図13の領域5の拡大写真である。
【図16】図13とは別の領域を撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法は、シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すようにしている。
【0026】
本発明で使用するシリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体(以下、単に粉粒体と呼ぶこともある)としては、例えば石炭火力発電所から発生するクリンカーアッシュ、シンダアッシュ、フライアッシュ等の石炭灰を用いることができる。また、ロックウール、製鉄所から発生する高炉スラグや転炉スラグ等の鉱滓スラグ、廃碍子等を粉粒体に加工したものを用いることができる。但し、本発明で使用するシリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体は、これらに限定されるものではなく、シリカ及びアルミナを含み且つ実質的に非晶質である材料の粉粒体であれば用いることができる。即ち、ゼオライト含有硬化体の製造を阻害しない範囲での結晶の含有も許容される。
【0027】
ここで、本発明で使用するシリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュの使用が特に好ましい。フライアッシュは、1〜200μmの粒度分布を有していることから、フライアッシュの粉粒体間において多くの接着点を確保することができる。したがって、ゼオライト含有硬化体の強度を高めやすい。尚、フライアッシュ以外の石炭灰、ロックウール、鉱滓スラグ、廃碍子等を、1〜200μmの粒度分布を有する粉粒体に加工することで、フライアッシュを用いた場合と同程度の強度を有するゼオライト含有硬化体を得られるものと推定される。
【0028】
次に、本発明に使用する水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが挙げられる。
【0029】
水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した場合には、方沸石(Analcime-C)、グメリン沸石(Gmelinite-Na)を含有するゼオライト含有硬化体を製造することができる。また、水酸化アルカリとして水酸化カリウムを使用した場合には、ペルリアライト(Perlialite)を含有するゼオライト含有硬化体を製造することができる。
【0030】
ここで、ゼオライト含有硬化体のゼオライト含有量と圧縮強度の双方を高めたい場合には、水酸化カリウムの使用が好適である。水酸化カリウムを使用することによるゼオライト含有硬化体の圧縮強度の増強効果は、ゼオライト含有硬化体に含有されるゼオライト系鉱物がペルリアライト(Perlialite)であることと、ゼオライト含有硬化体の細孔径が水酸化ナトリウムを使用して得られるゼオライト含有硬化体の細孔径よりも小さいこととに起因しているものと推定される。
【0031】
本発明において、混練材料は、粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練して得られる。粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練することで、水酸化アルカリと水とを混練材料に均一に分散させることができる。したがって、混練材料内でゼオライト生成反応を均一に生じさせて、均質なゼオライト含有硬化体を製造することができる。ここで、水酸化アルカリは予め水に溶解させて水酸化アルカリ水溶液とし、水酸化アルカリ水溶液と粉粒体とを混練して混練材料を得ることが好適である。水酸化アルカリを水に溶解してから粉粒体と混練することによって、水酸化アルカリと水とを混練材料に均一に分散させ易くなり、混練時間を短縮することができる。
【0032】
ここで、粉粒体に対する水の混合量については、混練材料を一塊とでき且つ混練材料が流動性を有することのない粘度となる量とすればよい。例えば、粉粒体1000gに対して200g〜300gとすることが好適であり、250g程度とすることがより好適である。水の混合量が少なすぎると、粉粒体を混練して一塊とすることができなくなる。また、多すぎると、ゼオライト含有硬化体の空隙の発生量が多くなって、ゼオライト含有硬化体の強度を確保できなくなる。
【0033】
尚、本明細書における「ゼオライト含有硬化体の強度の確保」とは、ゼオライト含有硬化体コンクリート部材の代替材料として使用する場合や建築材料として要求される強度を確保することを意味している。例えば、本願発明によれば、圧縮強度が15MPa(15N/mm2)以上で且つ曲げ強度が4MPa(4N/mm2)以上のゼオライト含有硬化体を得ることができる。
【0034】
また、粉粒体に対する水酸化アルカリの混合量については、ゼオライト系鉱物の生成量を高めるためには多ければ多いほどよい。例えば、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した場合には、粉粒体1000gに対して110g以上混合とすることが好適であり、125g以上混合することがより好適であり、粉粒体に混合される水に溶解する限界量の水酸化ナトリウムを混合することが最も好適である。この場合には、ゼオライト系鉱物の生成量を増大させやすい。また、水酸化アルカリとして水酸化カリウムを使用した場合には、粉粒体1000gに対して88g以上とすることが好適であり、176g以上混合することがより好適であり、混練材料に混合される水に溶解する限界量の水酸化カリウムを混合することがさらに好適である。この場合には、ゼオライト系鉱物の生成量の増大と、ゼオライト含有硬化体の強度の確保の両立が図りやすい。
【0035】
粉粒体は、水酸化アルカリ及び水と共に混練され、混練材料が得られる。ここで、粉粒体に対する水の混合量についての上記の好適な範囲、即ち、粉粒体1000gに対して水を200〜300g混合する場合には、粉粒体に対する水の量が少ないことから、混練の際には撹拌力の強い強制練り型ミキサーを用いて混練することが好ましい。例えば、AICOH社製MTシリーズを使用することができるが、これに限定されるものではない。この混練工程により、所謂固練りスラリ状の混練材料が得られる。
【0036】
ここで、混練材料には、補強繊維がさらに混練されていることが好ましい。この場合には、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度の双方と高めることができ、特に、曲げ強度を顕著に向上させる効果がある。補強繊維としては、鋼繊維やポリプロピレン製繊維等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、粉粒体に対する補強繊維の混合量は、ゼオライト含有硬化体の製造を阻害しない範囲内であれば特に限定されないが、例えば粉粒体1000gに対して補強繊維30gを混合すれば、ゼオライト含有硬化体の強度を高める効果が十分に発揮される。
【0037】
次に、混練材料に物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施す。
【0038】
本発明における物理的な拘束圧力とは、100℃以上の養生温度で蒸気養生を行う際の飽和蒸気圧由来の圧力や、100℃未満の養生温度で蒸気養生を行う際に導入される蒸気由来の圧力とは別に、混練材料に付与される圧力を意味している。
【0039】
本発明における物理的な拘束圧力は、例えば図1に示す拘束圧力付与装置1により付与することができる。この装置は、大まかには、混練材料6を収容する型枠2と、型枠2の開口部に蓋をする上蓋5と、混練材料6と上蓋5との間に収納される中蓋3から構成される。尚、混練材料6は、型枠2に収容して中蓋3をした後に脱泡及び締固め処理する。
【0040】
型枠2と中蓋3と上蓋5の材質は、例えばステンレス鋼であるが、耐熱性を有し、耐アルカリ性を有し、且つ熱伝導性の高い材質であればこれに限定されるものではない。
【0041】
物理的な拘束圧力の制御は例えば以下のようにして行う。即ち、中蓋3にはばね4が備えられており、ばね4の無負荷時の位置(ばね4に力が与えられていない状態における位置)は、中蓋3の高さよりも高くしておく。そして、上蓋5を型枠2に固定したときに、上蓋5によってばね4を収縮できるようにしておく。このように構成することで、ばね4自体のばね定数と、中蓋3の底面積(混練材料と中蓋3の接地面の面積)と、ばね4の無負荷時の位置からのずれにより、混練材料6に付与される物理的な拘束圧力を制御できる。
【0042】
また、ばね4の無負荷時の位置からのずれは、上記の方法以外の方法によっても制御することが可能であり、上記の方法により物理的な拘束圧力を付与することには限定されない。例えば、本実施形態では、中蓋3の底面にばね4を固定し、中蓋3の上面を開口面としてこの開口面からばね4を突出させた状態としているが、中蓋3の上面を開口面とせず、上面にばね4を固定するようにしてもよい。この場合には、本実施形態の場合よりもばね4を収縮させることができるので、ばね4の無負荷時の位置からのずれを本実施形態の場合よりも大きくすることができ、より強い物理的拘束圧力を付与することができる。つまり、同じばね定数のばねを使用する場合には、ばね4の無負荷時の位置からのずれを大きくすることで物理的な拘束圧力を高めることができ、逆に、ばね4の無負荷時の位置からのずれを小さくすることで物理的な拘束圧力を小さくすることができる。
【0043】
また、上記のようなばねを使った物理的拘束圧力の付与方法には限定されない。例えば、容器に混練材料を収容し、混練材料を蓋で押しつけた状態でこの蓋を容器に固定することによって物理的拘束圧力を付与するようにしてもよい。尚、上蓋5を型枠2に固定する方法は、例えばねじ締めであるが、この方法に限定されるものではなく、バンド式の固定具を利用して上蓋5を型枠2で固定するようにしてもよい。
【0044】
また、型枠2の形状は、図1に示す直方体の形状に限定されるものではなく、物理的な拘束圧力を混練材料に均一に付与できるものであればよい。例えば、円柱形状等としてもよい。
【0045】
物理的な拘束圧力の値については、混練材料中において、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させるように作用する値であれば特に限定されるものではないが、例えば、0.02〜0.3MPaとすることが好適である。物理的な拘束圧力が小さすぎると、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させる作用が小さくなりすぎて、ゼオライト含有硬化体の強度を確保できなくなる場合がある。尚、拘束圧力を大きくしすぎても、ゼオライト系鉱物の生成過程で結晶間の距離を縮小させる作用が飽和してしまうと考えられるので、あまり大きな物理的拘束圧力を付与しても無駄になる。
【0046】
本発明における蒸気養生は、ゼオライト系鉱物の生成を促進させ得る熱量を混練材料に付与することができ、且つ図1に示す拘束圧力付与装置1が加熱されたときに混練材料に含まれる水が装置1の外へ放出されるのを防いで、混練材料中の水分を維持し、ゼオライト系鉱物の生成反応を促進可能な条件で行われるものであり、水蒸気オートクレーブ装置にて養生温度100℃以上の飽和蒸気圧下あるいは飽和蒸気圧よりも小さい蒸気圧で行う養生処理と、蒸気養生槽にて100℃未満の温度で水蒸気を導入しながら行う養生処理の双方が包含される。例えば、水蒸気オートクレーブ装置にて、圧力0.6〜2.3MPa程度の飽和蒸気下で、養生温度を160℃〜220℃とし、養生時間を6〜24時間とすることが好適である。または、蒸気養生槽を用い、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生を施すことにより、ゼオライト系鉱物の生成量は少なくなるものの、ゼオライト含有硬化体の強度の確保が可能であることが確認されたことから、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生と同等の熱量を混練材料に付与しうる条件の蒸気養生を施すようにしてもよい。
【0047】
尚、蒸気養生槽を用い、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生を施した場合には、ゼオライト含有硬化体にメルリーノ沸石(Merlinoite)及び灰十字沸石(Phillipsite)を含有させることが可能である。
【0048】
ここで、図1に示す拘束圧力付与装置1によって、混練材料6の完全密封状態での収容が達成可能な場合、即ち、拘束圧力付与装置1に収容された混練材料6に含まれる水が、装置1の加熱時に外に漏れ出ることの無い場合には、水蒸気を導入することなく装置1を単に加熱するだけでゼオライト含有硬化体が得られることが本発明者等の実験により確認されている。したがって、例えば乾燥炉等により加熱するだけでゼオライト含有硬化体が得られることになる。しかしながら、ゼオライト含有硬化体は、ある程度の大きさを有するものが要求されることが多いことから、このニーズに応えるべく、拘束圧力付与装置1の大型化が必要になることが多い。また、ゼオライト含有硬化体を工業的に大量生産する上では、型枠にかかるコストを抑制する観点から、同じ拘束圧力付与装置1を何度も使い回す必要が生じることが多い。このような状況下で、拘束圧力付与装置1として完全密封状態のものを要求することは、拘束圧力付与装置1に要求される寸法精度を高めて型枠にかかるコストを上昇させるだけでなく、製造された硬化体が不良品となる虞が生じやすくなる。即ち、混練材料の加熱中に装置1の完全密封状態が維持できなくなった場合には、混練材料に含まれる水が装置1の外に放出されて、混練材料中での水熱反応が阻害されてしまい、ゼオライト含有硬化体が製造できなくなる場合がある。しかしながら、本発明のように蒸気養生を施す場合には、装置1が若干の隙間を有する略密封状態であっても、この隙間に蒸気が入り込んで、混練材料に含まれる水(混練材料に混練されている水)の放出を抑制することができる。また、隙間に蒸気が入り込むことにより、混練材料中に蒸気が供給される効果も期待できる。したがって、略密封状態であったとしても、蒸気養生を行う場合には、混練材料中におけるゼオライト生成反応の促進が阻害されることはなく、強度特性の優れたゼオライト含有硬化体を製造することが可能である。しかも、粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練して得られた直後の混練材料は、過剰な水分に対して脆弱であることから、これをそのまま蒸気養生に供したとしてもその形状を維持することができない。しかしながら、混練材料を拘束圧力付与装置1に略密閉状態で収容すれば、蒸気養生における過剰な水分によってその形状が破壊されることがない。したがって、混練材料を拘束圧力付与装置1に略密封状態あるいは完全密封状態で収容して物理的拘束圧力を付与することは、粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練して得られた直後の混練材料を蒸気養生に供することを可能として、ゼオライト含有硬化体を短期間で製造可能とする付加的な利点も生み出す。尚、ここでいう略密封状態における隙間とは、混練材料に過剰の水分が供給されてその形状が破壊されない程度の隙間、具体的には、混練材料を収容する容器とその容器の蓋の周囲との間の数ミリの隙間、または混練材料を収容する容器とその容器の蓋の隅部(例えば容器が直方体の場合には蓋の四隅)との間の数ミリの隙間を意味している。
【0049】
ここで、水酸化アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した場合の蒸気養生の条件は、養生時間については24時間することが好適である。但し、例えば養生温度を220℃とした場合には、養生時間を6時間以上としてもゼオライトの生成量が変化しなかったことから、養生温度が高温の場合には、養生時間を長時間としてもゼオライトの生成量が飽和する場合がある。逆に養生温度を低温とした場合には、ゼオライト生成量を十分なものとするために養生時間を24時間よりも長時間を必要とする場合がある。また、養生温度は160℃〜220℃とすることが好適である。養生温度を160℃〜200℃とした場合には、ゼオライト系鉱物の生成とゼオライト含有硬化体の強度の向上の両立を図りやすい。特に、養生温度を180℃とすることで、圧縮強度を高める効果が最も高まり、養生温度を160℃とすることで、曲げ強度を高める効果が最も高まる。また、養生温度を200℃〜220℃とした場合、ゼオライト含有硬化体に求められる最低限の強度を確保しながら、ゼオライト系鉱物の生成量を増加させることができる。但し、蒸気養生条件は、上記の範囲に限定されるものではなく、ゼオライト含有硬化体として要求されるゼオライト生成量、ゼオライト系鉱物種及び強度に応じて、適宜設定すればよい。
【0050】
また、水酸化アルカリとして水酸化カリウムを使用した場合の蒸気養生の条件は、養生温度を220℃とし、養生時間を24時間とすることが好適である。この場合、ゼオライト含有硬化体のゼオライト系鉱物含有量の増加とゼオライト含有硬化体の強度(圧縮強度)の向上の両立を図りやすい。但し、蒸気養生条件は、上記の範囲に限定されるものではなく、ゼオライト含有硬化体として要求されるゼオライト生成量、ゼオライト系鉱物種及び強度に応じて、適宜設定すればよい。
【0051】
尚、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例】
【0052】
本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法の実施例を以下に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(1)粉体材料と水酸化アルカリと練混ぜ水の配合条件
粉粒体としてJIS A 6201でII種に相当するフライアッシュを用いた。このフライアッシュの強熱減量は2.9重量%であった。また、SiO2含有量は53.9重量%であり、CaO含有量は7.2重量%であった。水酸化アルカリとして水酸化ナトリウム(和光純薬製)または水酸化カリウム(和光純薬製)を使用した。練混ぜ水として水道水を使用した。水酸化アルカリは水に溶解させて水酸化アルカリ溶液としてから使用した。
【0054】
本実施例では、表1に示す配合1〜4をゼオライト含有硬化体製造原料の配合条件として設定した。尚、表1における単位は全て「g」である。
【0055】
【表1】
【0056】
(2)ゼオライト含有硬化体の製造条件
表1に示す配合に従い、フライアッシュを5000gとして各材料を計量し、フライアッシュに水酸化アルカリ水溶液を添加して撹拌力の強い強制練り型ミキサー(AICOH社製MTシリーズ)で均質に混練し、混練材料を得た。尚、このミキサーは遊星運動をする2本の攪拌子を有しており、約5分間練混ぜを行うことで、均質な混練材料を得ることができた。
【0057】
次に、この混練材料を図1に示す拘束圧力付与装置1の型枠2の中(内寸法:20cm×20cm断面、高さ35cm)に収容した。型枠2の内面には、蒸気養生終了後のゼオライト含有硬化体の取り出しを容易なものとするため、PEEK製の剥離板(不図示)を設置した。また、収容した混練材料の高さは15cmとなった。
【0058】
型枠2の中に混練材料を収容した後、中蓋3を載置した型枠2を振動テーブル(エクセン社製TVシリーズ)上に設置し、振動数2500Hz、振幅1.5mmの振動を混練材料に4分間付与して脱泡及び締固めを行った。
【0059】
次に、上蓋5を枠型2にねじ締めして固定した。そして、中蓋3に収容されているばね4の平衡位置からのずれ(上蓋5をねじ止めする前後でのばね4の長さの差)とばね4自体のばね定数と中蓋3の底面積とから、混練材料に付与される物理的な拘束圧力の大きさを計算したところ、0.13MPaであった。そして、混練材料に拘束圧力を付与した状態で拘束圧力付与装置1ごと水蒸気オートクレーブ装置に入れ、各種条件で蒸気養生を施した。
【0060】
尚、型枠2と中蓋3と上蓋5の材質はステンレス鋼とした。
【0061】
(3)ゼオライト含有硬化体の特性評価項目
上記により製造したゼオライト含有硬化体は、圧縮強度測定、曲げ強度測定、pH測定、合成鉱物相の同定、細孔容積率測定、細孔径分布測定及び溶出試験に供し、その特性を評価した。
【0062】
圧縮強度測定は、製造したゼオライト含有硬化体を直径35mm×高さ70mmの円柱状に切り出した試験体を使用して、JIS R 5201に準じて行った。
【0063】
曲げ強度測定は、製造したゼオライト含有硬化体を40mm×40mm×160mmの直方体に切り出した試験体を使用して、JIS R 5201に準じて行った。
【0064】
pH測定は、製造したゼオライト含有硬化体を粉末状に調整し、当該粉末をイオン交換水に添加して、20℃で6時間撹拌した後にイオン交換水のpHを測定することにより実施した。尚、ゼオライト含有硬化体粉末のイオン交換水に対する添加量は、イオン交換水の重量の1/10の重量とした。
【0065】
合成鉱物相の同定は粉末X線回折法(XRD)により行い、この同定結果に基づいてゼオライト含有硬化体を構成する主要な鉱物種の特定を行った。
【0066】
総細孔容積率測定は、水銀圧入式細孔径分布測定装置により行った。また、細孔径分布測定は、水銀圧入式細孔径分布測定装置により行った。
【0067】
溶出試験は、環境庁告示46号法に準じて行った。
【0068】
(4)実験結果
(4−1)水酸化ナトリウムの配合量の影響
水酸化ナトリウムの配合量がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、水酸化ナトリウムの配合量が異なる配合1と配合2の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、これらゼオライト含有硬化体の特性について比較検討した。結果を表2に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生条件は、汎用的な養生温度である180℃とし、養生時間は24時間とした。また、蒸気養生は1.0MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示されるように、配合1と配合2の双方の条件ともに、非常に高い圧縮強度と曲げ強度を示し、特に、配合2を適用した場合には、圧縮強度が87N/mm2で且つ曲げ強度が11.2N/mm2となり、非常に高い強度を有するゼオライト含有硬化体の製造が可能であることが明らかとなった。尚、水に対する水酸化ナトリウムの溶解度の限界値に近い水酸化ナトリウム量を配合した配合2の条件の方が、配合1の条件と比較して、圧縮強度と曲げ強度が若干高まったがその差は有意ではないと判断された。
【0071】
pH値については、配合1の条件よりも配合2の条件の方が高くなることが確認され、水酸化ナトリウムの配合量が多い方がpH値が高まる傾向が見られた。
【0072】
総細孔容積率と圧縮強度との間には、負の相関が認められた。即ち、圧縮強度が高い方が、総細孔容積率が低下する傾向が見られた。このことから、水酸化ナトリウムの配合量を高めることでフライアッシュの溶解反応が進行し易くなり、粒子間の間隙が充填され易くなることが明らかとなった。
【0073】
ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物をXRDにより分析した結果を図5及び図7に示す。尚、図5と図7は同一の測定結果を示し、図7は図5よりも横軸(2θ)の範囲を拡大して表示したものである。また、図7の実線のスペクトルはフライアッシュのXRD分析結果である。配合1と配合2の条件で製造したゼオライト含有硬化体の双方から、ゼオライト系鉱物であるグメリン沸石(Gmelinite-Na)の生成が確認された。また、配合1では、グメリン沸石(Gmelinite-Na)に加え、ゼオライトK−Iの生成が確認された。また、フライアッシュに含まれているムライト、石英、マグネタイト及びヘマタイトが比較的多く残存していることが確認された。しかし、フライアッシュに含まれていた非晶質相を示す2θ=15〜35°に生じた山状のピークはほぼ消失し、別の非晶質相を示す2θ=25〜40°に新たな山状のピークが発生することを確認した。このことから、フライアッシュの非晶質相が主に水酸化ナトリウムと反応することによってゼオライト系鉱物が生成したものと考えられた。
【0074】
(4−2)養生温度の影響
養生温度がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、養生温度を160℃、180℃、200℃または220℃として配合2の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、その諸特性について比較検討した。結果を表3に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生の養生時間は24時間とした。また、蒸気養生は0.62、1.0、1.6、2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0075】
【表3】
【0076】
表3に示されるように、圧縮強度は養生温度180℃で最大となり、曲げ強度は養生温度160℃で最大となった。また、養生温度を最も高めた220℃で得られたゼオライト含有硬化体の圧縮強度ならびに曲げ強度は他の養生温度で養生した場合に比べ、低い値ではあったものの、コンクリート部材の代替材料や建築材料として使用可能な程度の強度が確保できていることが明らかとなった。
【0077】
pH値については、養生温度220℃で得られたゼオライト含有硬化体で11.2となり、養生温度が180℃以上になると、養生温度の増加に伴って低下する傾向が見られた。このことから、フライアッシュの溶解反応は養生温度の上昇に伴って進行しやすくなることが明らかとなった。
【0078】
総細孔容積率と圧縮強度の間には、負の相関が認められた。即ち、圧縮強度が低い方が、総細孔容積率が増加する傾向が見られた。このことから、養生温度が高まると、フライアッシュの溶解反応が進行しやすくなる一方で、総細孔容積率の増加が起こりやすくなり、圧縮強度が低下すると考えられた。
【0079】
次に、製造したゼオライト含有硬化体の細孔径分布を測定した結果を図2に示す。図2において、□は養生温度を160℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示し、☆は養生温度を180℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示し、▽は養生温度を200℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示し、■は養生温度を220℃として製造したゼオライト含有硬化体の測定結果を示している。
【0080】
図2に示すように、養生温度を180℃として製造したゼオライト含有硬化体は、孔径0.02μm未満の空隙を多く有しているものの、0.02μm以上の空隙を殆ど有しておらず、このことが、圧縮強度を高める要因になったものと推定された。これに対し、養生温度を220℃として製造したゼオライト含有硬化体は、孔径0.1〜2μmの空隙を多く有しており、このことが圧縮強度を低下させる要因になったものと推定された。
【0081】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果、主要構成鉱物が養生温度の変化に伴い変化することが確認された。即ち、養生温度を160℃とした場合には、ゼオライトK−I、名称が付与されていないゼオライト類及びヘマタイトが検出された。養生温度を180℃とした場合には、ゼオライトK−I及び名称が付与されていないゼオライト類が減少し、ゼオライトに属する鉱物であるグメリン沸石(Gmelinite-Na)が検出された。養生温度を200℃とした場合には、グメリン沸石(Gmelinite-Na)に加え、ゼオライトに属する鉱物である方沸石(Analcime-C)、ゼオライトP1が検出された。養生温度を220℃とした場合には、グメリン沸石(Gmelinite-Na)及び方沸石(Analcime-C)が検出された。
【0082】
また、養生温度条件によるXRD分析結果の違いを図8に示す。この結果から、養生温度の上昇に伴って、ゼオライト系鉱物の生成量が高まることが明らかとなった。
【0083】
以上の結果から、養生温度の上昇に伴ってゼオライト系鉱物の生成量が高まると共に、ゼオライト系鉱物の種類も変化するものの、圧縮強度と曲げ強度が低下することから、養生温度の上昇に伴って、結晶間に細孔が多く形成されやすくなるものと考えられた。
【0084】
したがって、ゼオライト含有硬化体中のゼオライト系鉱物含有量を高めることを目的とする場合には、養生温度を220℃まで高めることが適切であるが、養生温度を160℃〜200℃とすることで、ゼオライト含有硬化体にゼオライト系鉱物を含有させながら硬化体の強度を高めやすくなり、特に180℃にすることで圧縮強度を顕著に高めることができ、160℃とすることで、曲げ強度を顕著に高めることが可能であることが明らかとなった。つまり、この結果から、養生温度の制御により、ゼオライト含有硬化体の強度、ゼオライト系鉱物の種類、ゼオライト系鉱物の生成量を管理できることが明らかとなった。
【0085】
(4−3)養生時間の影響
養生時間がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、養生時間を6時間、18時間、24時間として配合2の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、その特性について比較検討した。結果を表4に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の養生温度は220℃とした。また、蒸気養生は2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0086】
【表4】
【0087】
表4に示されるように、養生時間を24時間としたときに、圧縮強度及び曲げ強度が最も低い値になったものの、圧縮強度及び曲げ強度の変化幅は、養生時間が6〜24時間の範囲内では、比較的少ないことが確認された。そして、どの条件においても、コンクリート部材の代替材料として使用可能な程度の強度が確保できている明らかとなった。また、総細孔容積率は、いずれの養生時間においても30体積%であり、ほとんど変わらなかった。
【0088】
pHについては、養生時間の増大に伴って低下する傾向が見られた。これは、養生時間の増大に伴って、フライアッシュの溶解反応が進行したことに起因しているためと考えられる。
【0089】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果、いずれのゼオライト含有硬化体においても、方沸石(Analcime-C)、グメリン沸石(Gmelinite-Na)、その他のゼオライト類、及びフライアッシュに含まれていた鉱物相の残存物であるムライトと石英が主要構成鉱物であることが確認された。また、いずれの養生温度においても、XRDスペクトルにおけるピーク高さに有意差が見られなかった。
【0090】
以上の結果から、養生温度を220℃とした場合には、養生時間を6時間とすれば、ゼオライト系鉱物の生成量を十分なものとできることが明らかとなった。
【0091】
(4−4)配合するアルカリ種の影響
配合するアルカリ種がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、アルカリ種の異なる配合2と配合4の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、これらゼオライト含有硬化体の特性について比較検討した。結果を表5に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生の養生温度ならびに養生時間は、220℃、24時間とした。また、蒸気養生は2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。尚、配合2に示す水酸化ナトリウムの配合量と配合4に示す水酸化カリウムの配合量は、モル換算で当量とした。
【0092】
【表5】
【0093】
表5に示されるように、圧縮強度、曲げ強度及びpHについては配合4の条件の方が配合2の条件よりも大きな値を示した。総細孔容積率については、配合2と配合4の条件とも30体積%程度であり、差は見られなかった。
【0094】
ここで、配合4では水酸化カリウムを配合しており、配合2では水酸化ナトリウムを配合していることから、配合するアルカリ種を水酸化カリウムとすることで、圧縮強度、曲げ強度を高めることができ、特に圧縮強度を大幅に高めることが可能であることが明らかとなった。
【0095】
次に、製造した硬化体の細孔径分布を測定した結果を図3に示す。図3において、■は配合2の条件で製造した硬化体(水酸化ナトリウムを配合)の測定結果を示し、○は配合4の条件で製造した硬化体(水酸化カリウムを配合)の測定結果を示している。
【0096】
この結果から、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体においては、細孔径が主に0.1〜2μmの範囲に分布しているのに対し、水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体においては、細孔径が0.01〜0.1μmの範囲に分布していることが確認された。したがって、水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体の圧縮強度が高かったのは、ゼオライト含有硬化体の空隙を形成する細孔の径が、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体のそれと比較して微細であることが一つの要因であると考えられた。
【0097】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合2)と水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合4)では、主要構成鉱物が異なっていることが明らかとなった。即ち、水酸化カリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合4)の場合には、カリウムを多く含むゼオライト系鉱物であるペルリアライト(Perlialite)を多く含むことが確認された。一方、水酸化ナトリウムを配合したゼオライト含有硬化体(配合2)の場合には、方沸石(Analcime-C)、グメリン沸石(Gmelinite-Na)を多く含むことが確認された。これらの主要構成鉱物の違いが、圧縮強度に大きな差異をもたらしたものと考えられた。
【0098】
以上の結果から、方沸石(Analcime-C)を多く生成させることを目的とした場合は、水酸化ナトリウムを使用することが好ましく、ペルリアライト(Perlialite)を多く生成させ、かつ圧縮強度を高めることを目的とする場合には、水酸化カリウムを使用することが好ましいことが明らかとなった。
【0099】
尚、配合4の条件で製造したゼオライト含有硬化体について、密度を測定したところ、1.6g/cm3であった。このことから、本発明により得られるゼオライト含有硬化体は、高い強度を有しながらも、非常に軽いことが明らかとなった。
【0100】
また、配合4の条件で製造したゼオライト含有硬化体について、吸水率を測定したところ、吸水率が20%であることが明らかとなった。このことから、本発明のゼオライト含有硬化体は、ゼオライトの吸着能を利用した固体吸着材として利用できることが明らかとなった。
【0101】
(4−5)水酸化カリウムの配合量の影響
水酸化カリウムの配合量がゼオライト含有硬化体の特性に与える影響を明らかにするため、水酸化カリウムの配合量が異なる配合3と配合4の条件でゼオライト含有硬化体を製造し、これらゼオライト含有硬化体の特性について比較検討した。結果を表6に示す。尚、ゼオライト含有硬化体製造時の蒸気養生の養生温度ならびに養生時間は、220℃、24時間とした。また、蒸気養生は2.3MPaの飽和蒸気圧下で実施した。
【0102】
【表6】
【0103】
表6に示されるように、圧縮強度とpHについては、配合4の条件の方が配合3の条件よりも大きな値を示した。これに対し、曲げ強度と総細孔容積率については、配合4の条件の方が配合3の条件よりも小さな値を示した。
【0104】
ここで、水酸化カリウムの配合量は、配合3の条件よりも配合4の条件の方が多いことから、水酸化カリウムの配合量を多くすることで、圧縮強度とpHを高めることができ、総細孔容積率を低くできることが明らかとなった。一方、曲げ強度に関しては、水酸化カリウムの配合量を少なくした方が高まることが明らかとなった。
【0105】
次に、製造した硬化体の細孔径分布を測定した結果を図4に示す。図4において、●は配合3の条件で製造した硬化体(水酸化カリウム配合量88.1g)の測定結果を示し、○は配合4の条件で製造した硬化体(水酸化カリウム配合量176.2g)の測定結果を示している。
【0106】
この結果から、水酸化カリウムの配合量が多い配合4の条件で製造した硬化体の方が、細孔の径が小さいことが確認された。したがって、この細孔径の差が、圧縮強度に影響を与えているものと考えられた。
【0107】
次に、ゼオライト含有硬化体に含まれる主要構成鉱物についてXRDにより分析した結果を図6に示す。配合3ではゼオライト系鉱物であるZoisiteが僅かに生成するが、フライアッシュの主要構成物であるムライト、石英等の顕著な減少は認められなかった。このことから、配合3において発現した圧縮強度はフライアッシュ粒子間の癒着によりもたらされたものであることが考えられた。この結果から、水酸化カリウムの配合量をフライアッシュ1000gに対して88.1g以下とした場合、強度面としての実用上の問題は無いものの、ゼオライト系鉱物の生成量が低下してしまうことが明らかとなった。そして、この結果から、水酸化カリウムの配合量を減らすことで、ゼオライト系鉱物の生成量が少なくなり、圧縮強度が小さくなる一方で、曲げ強度を高められることが明らかとなった。逆に、水酸化カリウムの配合量を増やすことで、ゼオライト系鉱物の生成量を高め、圧縮強度を高めることができる一方、曲げ強度は小さくなることが明らかとなった。
【0108】
(4−6)溶出試験結果
配合2、3及び配合4の条件で、養生温度を220℃、養生時間を24時間として製造したゼオライト含有硬化体と、配合2の条件で、養生温度160℃、養生時間を24時間として製造したゼオライト含有硬化体とから溶出する微量元素を分析した結果を表7に示す。表7において、数値の単位は「mg/L」である。尚、比較のために、フライアッシュ単味でも溶出試験を行った。
【0109】
【表7】
【0110】
いずれのゼオライト含有硬化体においても、フライアッシュ単味の場合と比較して、全クロム溶出量が80〜90%程度減少することが確認された。このことから、ゼオライト系鉱物の生成量に依らずに、本発明のゼオライト含有硬化体により全クロム溶出量が抑えられることが明らかとなった。
【0111】
また、配合するアルカリを水酸化カリウムとした場合、フライアッシュ単味の場合と比較して、ホウ素の溶出量が10〜30%減少した。このことから、配合するアルカリ種を水酸化カリウムとすることで、全クロム溶出量を抑制する効果に加えて、ホウ素の溶出量を抑制する効果が得られることが明らかとなった。
【0112】
尚、砒素,セレンについては,いずれのゼオライト含有硬化体においてもフライアッシュ単味に比べて溶出量が高まったが、配合するアルカリを水酸化カリウムとすることで、砒素の溶出が若干抑えられることが確認された。
【0113】
以上の結果から、フライアッシュ単味に比べてクロムならびにホウ素の溶出を抑制し,かつ砒素の溶出も極力抑えるためには、水酸化カリウムを使用した方がよいことが明らかとなった。
【0114】
(5)補強繊維添加の影響
配合4の条件に鋼繊維をフライアッシュ質量の3%(フライアッシュ1000gに対して鋼繊維30g)を混合し、養生温度220℃、養生時間24時間で蒸気養生(2.3MPa)を施してゼオライト含有硬化体を製造し、鋼繊維を添加せずに製造したゼオライト含有硬化体との性能の比較を行った。結果を表8に示す。尚、添加した鋼繊維はBeKaert社製OLファイバー(直径0.2mm、長さ13mm)とした。
【0115】
【表8】
【0116】
表8に示されるように、鋼繊維を混合することで、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度と曲げ強度を高める効果があり、特に曲げ強度を高める効果に優れていることが明らかとなった。
【0117】
(6)養生温度の低温化の検討
養生温度を低温としてゼオライト含有硬化体を製造した場合の諸特性について、配合2の条件で検討を行った。結果を表9に示す。養生の条件は、以下の2条件とした。尚、蒸気の導入条件は、相対湿度95%以上とした。
・養生温度:50℃、養生時間:12日間(以下、50℃−12日間養生と呼ぶ)
・養生温度:80℃、養生時間:3日間(以下、80℃−3日間養生と呼ぶ)
【0118】
【表9】
【0119】
ゼオライト含有硬化体の主要構成鉱物種をXRDにより分析した結果、50℃-12日間養生では、フライアッシュに含まれる構成鉱物が多く残存しており、僅かにゼオライト類が生成した程度であることが確認された。また、80℃−3日間養生においても、フライアッシュの構成鉱物が比較的多く残存していることが確認されたが、50℃-12日間養生の場合に比べてメルリーノ沸石(Merlinoite)及び灰十字沸石(Phillipsite)等のゼオライト系鉱物が多く生成されていることが確認された。
【0120】
ゼオライト系鉱物の生成量が少なかった50℃-12日間養生において、圧縮強度が39.1N/mm2、曲げ強度4.7N/mm2となり、同じ配合で220℃で24時間の蒸気養生を施したゼオライト含有硬化体の圧縮強度(15.4N/mm2)、曲げ強度(4.0N/mm2)に比べて高い強度を示した。これは、フライアッシュの非晶質相の癒着による強度増加の効果が、220℃で24時間の蒸気養生を施した場合と比較して、50℃-12日間養生の場合の方が高いためと推察された。
【0121】
蒸気養生温度を低温とした場合には、水熱合成時にゼオライト系鉱物が多く生成する配合とした場合でも、反応が十分に進行しないため、非晶質系反応相が主体となるが、圧縮強度は40N/mm2程度となり、比較的高強度を確保できる。このことから、ゼオライト系鉱物を多く生成させることを目的としない場合は、50℃-12日間または80℃−3日間の蒸気養生条件でよいことが明らかとなった。そして、この結果から、50℃で12日間または80℃で3日間の蒸気養生と同等のエネルギーを混練材料に付与しうる条件の蒸気養生を施すことで、上記と同様の効果が得られることが推察された。
【0122】
尚、このように上記養生温度を低温化することによって、メルリーノ沸石(Merlinoite)及び灰十字沸石(Phillipsite)等のゼオライト系鉱物を生成できることが明らかとなったことから、養生温度を変更することによって、ゼオライト含有硬化体の構成成分たるゼオライト系鉱物の種類を変更できることが明らかとなった。
【0123】
(7)電子顕微鏡観察
配合2及び配合4の条件で、養生温度220℃、養生時間24時間として製造したゼオライト含有硬化体について、電子顕微鏡観察を行い、結晶の形状等について検討した。
【0124】
水酸化アルカリを水酸化ナトリウムとした条件である配合2の条件で得られたゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真を図9〜12に示す。尚、図10は図9の領域1の拡大像であり、図11は図9の領域2の拡大像であり、図12は図9の領域3の拡大像である。図9、図10及び図12に示されるように、柱状及び繊維状の結晶が比較的多く生成していることが確認された。また、図11に示されるような粒径10μm程度の粗大で密実な結晶が多く生成していることが確認された。そして、その密実な結晶の周囲には、開口幅が0.1μm程度の空隙が形成されており、この開口は細孔径分布0.1〜2μmの空隙に相当すると考えられた。
【0125】
次に、水酸化アルカリを水酸化カリウムとした条件である配合4の条件で得られたゼオライト含有硬化体の電子顕微鏡写真を図13〜16に示す。尚、図14は図13の領域4の拡大像であり、図15は図13の領域5の拡大像である。図16は図13とは別の領域を撮影して得られた電子顕微鏡写真である。図13〜図16に示されるように、微小柱状結晶及び積層柱状結晶が多く生成しており、図14では短冊状結晶の存在が確認され、図16では微小繊維状結晶の存在が確認された。また、微小柱状結晶及び積層柱状結晶を取り囲むような密実な積層状の生成物が存在し(図13及び図15参照)、その形態はセメント水和物中のカルシウム・シリケート水和物(C−S−H)の形態に類似していた。この観察結果から、セメント水和物中のカルシウム・シリケート水和物(C−S−H)の形態との類似性がゼオライト含有硬化体の強度発現性の要因の一つであることが考えられた。
【0126】
(8)まとめ
以上、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、圧縮強度が15〜87N/mm2、曲げ強度が4.0〜13N/mm2の高強度なブロック状のゼオライト含有硬化体を製造し得ることが明らかとなった。したがって、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、従来のゼオライト含有硬化体の製造方法と比較して、高強度のゼオライト含有硬化体を製造することができ、コンクリート部材の代替材料や建築材料として高強度なゼオライト含有硬化体が要求される場合にも対応が可能となる。
【0127】
また、配合4の条件、即ち、フライアッシュ1000gに対し、水酸化カリウムを176.1g、水を248.4g混合した混練材料に対し、物理的拘束圧力を付与しながら蒸気養生(養生温度220℃、養生時間24時間)として製造したゼオライト含有硬化体は、密度が1.6g/cm3と非常に軽量であり、このことから、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、高い強度を有し且つ非常に軽いゼオライト含有硬化体を製造できることが明らかとなった。また、このゼオライト含有硬化体の吸水率が20%であったことから、固体吸着材としての使用も可能となる。尚、本発明の製造方法により、吸水率が5%以下のゼオライト含有硬化体が得られた場合には、これを粉砕処理することで、高強度コンクリート用の細骨材として使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の製造方法により得られるゼオライト含有硬化体は、超長期間の安定使用が望まれるコンクリート部材の代替材料、レンガ等のブロック材料として利用できる。また、ゼオライトは除臭・吸湿・調湿・放湿機能を有することから、これらの機能を有する建築材料として利用することも可能である。具体的な例としては、シックハウス症候群の原因物質である有機分子を吸着する機能を有する建築材料として利用することが可能である。さらに、固体吸着材や、イオン交換材、触媒等としても利用することが可能である。また、温室効果ガスである二酸化炭素の吸着材として利用することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すことを特徴とするゼオライト含有硬化体の製造方法。
【請求項2】
前記混練材料には、補強繊維がさらに混練されている請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法。
【請求項3】
前記シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを用いる請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法。
【請求項1】
シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体と水酸化アルカリと水とを混練してなる混練材料に対し、物理的な拘束圧力を付与しながら蒸気養生を施すことを特徴とするゼオライト含有硬化体の製造方法。
【請求項2】
前記混練材料には、補強繊維がさらに混練されている請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法。
【請求項3】
前記シリカ及びアルミナを含む非晶質材料の粉粒体として、フライアッシュを用いる請求項1に記載のゼオライト含有硬化体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−209036(P2009−209036A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22327(P2009−22327)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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