説明

ゼロクリアランス型ボルト締結ジョイント

【課題】リングギヤを差動装置ケースに結合することに使用され得るゼロクリアランス型ボルト締結ジョイントを提供すること。
【解決手段】ボルト締結ジョイントは、テーパ付き肩部44を持つボルト20を使用し、変形可能なスリーブ46を冷間形成して、“ゼロクリアランス”嵌合を与えることによって形成される。具体的には、複数のボルト締結ジョイントがリングギヤ42を差動装置ケース58に結合することに使用されることが好ましい。ボルトが差動装置ケース58及びリングギヤ42に挿入されるに従い、ボルト20のテーパ付き肩部44は、スリーブ46の外径が差動装置ケース58の貫通孔56の内壁に接触するまで、変形可能なスリーブ46を広げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般にボルト締結ジョイントに関し、特にリングギヤを差動装置ケースに結合することに使用されるようなゼロクリアランス型ボルト締結ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト締結ジョイントが使用されるべく試みられきた1つの応用は、リングギヤを差動装置ケースに結合することである。しかしながら、一般にボルト締結ジョイントは、差動装置ケースに関連したギヤの移動を防止することはできない。これは、ボルトをジョイントから後退させるギヤのスリップを防止するに十分なテンションをボルトが生成できないからである。
【0003】
リングギヤを差動装置ケースに結合する1つの現在の方法は、差動装置ケース上の複数の貫通孔の円形パターンと、リングギヤ上の複数の雌ネジ付き孔との一致を利用する。このデザインは、製造プラントの孔位置許容能力に関する関心を増している。その結果、課題は、リングギヤに差動装置ケースを締結する手法であって、整合を許容し且つ多数のサイクルにわたってリングギヤが実質的な負荷を受ける間のギヤスリップを最小化する手法を開発することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態の1つの目的は、例えばリングギヤを差動装置ケースに結合することに使用され得るゼロクリアランス型ボルト締結ジョイントを提供することにある。
【0005】
本発明の実施形態のもう1つの目的は、リングギヤに差動装置ケースを締結する手法であって、整合を許容し且つ多数のサイクルにわたってリングギヤが実質的な負荷を受ける間のギヤスリップを最小化する手法として使用され得るゼロクリアランス型ボルト締結ジョイントを提供することにある。
【0006】
簡単に、そして前述の目的の少なくとも1つに従って、本発明の実施形態は、ボルト締結ジョイントを提供する。このボルト締結ジョイントは、テーパ付き肩部を持つボルトを使用し、変形可能なスリーブを冷間形成して、“ゼロクリアランス嵌合”を与えることによって形成される。具体的には、複数のボルト締結ジョイントがリングギヤを差動装置ケースに結合することに使用されることが好ましい。ボルトが差動装置ケース及びリングギヤに挿入されるに従い、ボルトのテーパ付き肩部は、スリーブの外径が差動装置ケースの貫通孔の内壁に接触するまで、変形可能なスリーブを広げる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態によるボルト締結ジョイントの断面図であり、剪断負荷を与える前の状態を示している。
【図2】図1と同様ではあるが、剪断負荷が加えられた後のボルト締結ジョイントを示し、差動装置ケースとリングギヤとの間の最大移動を示している。
【図3】ボルトの設置前のスリーブを示している。
【図4】ボルトの設置後のスリーブを示している。
【図5】設置中のスリーブの冷間形成によるボルト上の引っ張り負荷の、時間に対するグラフである。
【図6】リングギヤ上のトルク(lb−ft)の、リングギヤと差動装置ケース間の回転の角度(度)に対するグラフである。
【図7】ボルトの上面図である。
【図8】スリーブの上面図である。
【図9】図8の線9−9に沿うスリーブの側断面図である。
【図10】差動装置ケースの断面である。
【図11】図10の線11−11に沿う断面図である。
【図12】リングギヤの断面である。
【図13】図12の線13−13に沿う断面図である。
【図14】保持形状を有する代替実施形態を示す。
【図15】図14の円を描いた部分の拡大詳細図である。
【図16】本発明で使用するに好ましいボルトを示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の構造及び動作の組織及び手法は、その更なる目的及び利点と共に、添付の図面に関連してなされる以下の説明を参照することによって、最も良く理解される。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を識別する。
【0009】
本発明は異なる形の実施形態に受け入れ可能であるが、その実施形態が図面に示され、ここで詳細に説明される。本説明は、発明の原理の例示として考えられるべきものであって、発明をここに図示され説明されたものに限定することを意図されたものではない、と理解されるべきである。
【0010】
本発明は、ゼロクリアランス型ボルト締結ジョイントに向けられている。このボルト締結ジョイントは、例えばリングギヤに差動装置ケースを締結する手法であって、整合を許容し且つ多数のサイクルにわたってリングギヤが実質的な負荷を受ける間のギヤスリップを最小化する手法として使用され得る
【0011】
図1及び2に示されているように、このボルト締結ジョイントは、好ましくは図7に示されるように6角形プロフィールを持つ頭部22を有するボルト20を備える。勿論、頭部22は、6角形以外のプロフィールを持つこともできる。ボルト20の逆端部30に近いボルト20のシャフト部分28上には、ネジ部26が設けられている。接着剤32、例えばプリコート80が、ボルト20のネジ部26の区間34に塗布されることがある。塗布された接着剤32は、以下で説明するように、指の作用力によって、リングギヤとの最初の係合後の1回転を開始できるようにする。図1〜4に示されているように、概ねボルト20のネジ部26と頭部22との間に、テーパ付き肩部44が設けられている。材料に関しては、ボルト20は、例えばESS−M1A170−Bグレード8又は8.2によって形成される。以下で更に詳細に論じられるように、肩部44は、その代わりに、丸み付けされた状態で設けられてもよく(図16参照)、このことは、以下で後述される理由から実際に好ましいものである。
【0012】
ボルト20に加えて、ボルト締結ジョイントは、図1〜4,8及び9に示されているように、スリーブ46を備える。図8及び9に示されているように、スリーブ46は、概ね円形で、貫通孔48を有する。そのようなものとして、スリーブ46は、内径50及び外径52を持つ。スリーブ46の内径50は、ボルト20のシャフト部分28の幅又は直径36よりも小さいことが好ましい。そうであれば、ボルト20が設置されるときに、即ち、リングギヤ42に対しネジ式に係合されるときに、ボルト20のテーパ付き肩部44は、スリーブ46を変形する。スリーブ46の外径52は、差動装置ケース58に設けられた対応する開口又は貫通孔56の直径54よりも小さいことが好ましい。そうであれば、スリーブ46は、差動装置ケース58の貫通孔56に挿入され得る。加えて、ボルト20の頭部22の直径60は、差動装置ケース58の貫通孔56の直径54よりも大きいことが好ましい。そのようなものとして、設置時に、ボルト20の頭部22は、図1,2及び4に示されているように、差動装置ケース58に接して座する。スリーブ46は、例えば、AISI1010鋼によって形成される。
【0013】
差動装置ケース58に関して、図10は、差動装置ケース58の断面を示し、そこに設けられた開口又は貫通孔56を描いている。図11は、図10の線11−11に沿う断面図である。リングギヤ42に関して、図12は、リングギヤの断面を示し、そこに設けられたねじ切りされた孔40を描いている。図13は、図12の線13−13に沿う断面図である。
【0014】
図3はボルト20が設置される前のスリーブ46の状態を示している。図示のように、スリーブ46の形状は、図9に示されたものと一致する。ボルト20の設置中に、ボルト20の頭部22は回転させられて、ボルト20のネジ部26をリングギヤ42に設けられたねじ切りされた孔40内に螺入させる。ネジ部26が孔40内に螺入するに従い、ボルト20のテーパ付き肩部44は、スリーブ46を図4に示されているように(図1及び2も参照)冷間形成する。これによりスリーブ46の外面64を差動装置ケース58の内壁62に接触可能に係合させて、“ゼロクリアランス”嵌合を与える。図5は、設置中のスリーブの冷間形成によるボルト上の引っ張り負荷の、時間に対するグラフである。
【0015】
リングギヤを差動装置ケースに十分に結合するために、複数のボルト締結ジョイントが使用されることが好ましい。図1は、剪断負荷を与える前のボルト締結ジョイントを示し、また図2は、剪断負荷を与えた後のボルト締結ジョイントを示し、差動装置ケース58とリングギヤ42との間の最大移動を示している。図示のように、差動装置ケース58がリングギヤ42及びボルト20に対して横向きに移動する間に、ボルト20及びスリーブ46は、差動装置ケース58とリングギヤ42との間の相対移動に抵抗する。これにより、好ましくは差動装置ケース58が多数のサイクルにわたって実質的な負荷を受ける時でさえも、ボルト20がジョイントから後退する傾向を更に減少させる。図6は、リングギヤ上のトルク(lb−ft)の、リングギヤと差動装置ケース間の回転の角度(度)に対するグラフである。
【0016】
図14は、スリーブ46(図14では46aとして識別される)の好ましい実施形態を示している。この場合、保持形状、具体的にはスリーブ46aの外面64a上で等しく離隔された3つの凹部66aと、内部リップ又は突起67aとが設けられている。この保持形状は、ボルト20及びスリーブ46aが供給され、スリーブ46aがボルト20上に保持されて、差動装置ケース及びリングギヤへの設置に備えるようにするものであり、これは好ましいものである。図15は、図4の円を描いた部分の拡大詳細図を示す。
【0017】
図16は、本発明で使用するに好ましいボルト20aを示している。このボルト20aは、R状面又は丸み付けされた部分21aを有する。放射対称面21aの目的は、スリーブ46に入るときに円滑な推移を与えること、並びにスリーブ46を押し出すに要する負荷を低減することにある。
【0018】
本発明の実施形態が図示され説明されてきたが、当業者は開示の精神及び範囲を逸脱することなしに、本発明の種々の変形を工夫することが想像される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構造体を第2の構造体に固定するためのボルト締結ジョイントを形成する方法であって、この方法は、
頭部及びこの頭部から延びたシャフト部分を備えたボルトであって、前記シャフト部分が、ネジ部と、ボルトの頭部とネジ部との間に配設された非ネジ部とを備え、前記非ネジ部が、幅を持つ構成のボルトを与える工程と、
第1の構造体内に配設されると共に貫通孔を有するスリーブであって、前記スリーブが、貫通孔によって規定される内径を持ち、前記スリーブの前記内径が、ボルトのシャフト部分の非ネジ部の幅よりも小さい構成のスリーブを与える工程と、
第2の構造体内にネジ付き孔を与える工程と、
ボルトのシャフト部分をスリーブの貫通孔を通して挿入する工程と、
ボルトのシャフト部分のネジ部を第2の構造体のネジ付き孔に螺入すると同時にボルトのシャフト部分の非ネジ部によってスリーブを変形させる工程と、
ボルトの頭部が第1の構造体に接触するまでボルトのシャフト部分のネジ部を第2の構造体のネジ付き孔に螺入し続けることにより、ボルト締結ジョイントを形成する工程と
を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−112530(P2012−112530A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−18248(P2012−18248)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【分割の表示】特願2008−526986(P2008−526986)の分割
【原出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(507065795)アキュメント インテレクチュアル プロパティーズ エルエルシー (11)
【Fターム(参考)】