説明

ソフトステート・シグナリングにおけるリフレッシュ要求

複数のソフトステート・ダイアログの中で(例えば、SIPの中で)クライアント端末(31)から様々なサーバ端末(33a,33b)へ送信されるリフレッシュ要求メッセージの、省電力化のための同期。この同期は、異なるダイアログ中のリフレッシュ要求メッセージ間で発生する大きな時刻オフセット(34)の継続的な検出と、リフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔の交渉済みの長さの調整(クライアント端末が様々なサーバ端末に対してほぼ同時にリフレッシュ要求メッセージを送信するようにする)とを伴う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトステート・シグナリングの間にクライアント端末から様々なサーバ端末へ送信されるリフレッシュ要求メッセージを同期するための方法及びデバイスに関し、そのようなデバイスを備えるクライアント端末及びSIP B2BUAにも関する。
【背景技術】
【0002】
シグナリングは、全ての通信ネットワークにおいて重要なコンポーネントであり、従来のシグナリングプロトコルは、ハードステート・シグナリング・アプローチ、又は、ソフトステート・シグナリング・アプローチ、或いは、これらの組み合わせを使用することができる。
【0003】
ソフトステート・シグナリングにおいて、セッションは、交渉済みリフレッシュ間隔の満了前に受信されるリフレッシュ要求メッセージによって状態(ステート)がリフレッシュされない限り、タイムアウトによって終了することになる。リフレッシュ要求メッセージは、通常、状態が最初に設定された後に定期的に送信され、ダイアログを存続させなければならないということを示す。それゆえ、ソフトステート・シグナリングは、明示的な状態の削除を何ら必要とせず、例えばネットワークエラーが原因でシグナリングが失われた場合はサーバ状態が自動的に削除されるので、信頼できる(reliable)シグナリングも何ら必要としない。
【0004】
反対に、ハードステート・シグナリングにおいては、設定された(installed)状態は、クライアント端末によって送信されるメッセージによって明示的に削除されない限り、設定されたままにされる。状態の設定及び削除は1度しか行われないので、信頼できるシグナリングが必要とされる。
【0005】
SIP(セッション開始プロトコル)は、従来からソフトステート・シグナリングを使用しており、そこでは、2つの通信端末(即ち、SIPユーザエージェント)が、セッションの状態を継続的にリフレッシュすることによってセッションを維持する。サービス要求デバイスとして振る舞うSIPユーザエージェント(例えば、クライアント端末)は、UAC(ユーザエージェントクライアント)と呼ばれ、サービス要求に対して応答するSIPユーザエージェント(例えば、サーバ端末)は、UAS(ユーザエージェントサーバ)と呼ばれる。クライアント端末は、様々な実装デバイス(各デバイスがUACをホスティングしている)の間で区別することができる。
【0006】
クライアント端末とサーバ端末との間でSIPダイアログを開始するためのクライアント端末からのセッション開始要求メッセージにおいては、また、SIPダイアログをリフレッシュするためのクライアント端末からのセッションリフレッシュ要求メッセージにおいても、クライアント端末(UAC、ユーザエージェントクライアント)は、リフレッシュ要求メッセージ中のヘッダに添付されるSession−Expires属性の中で適当な大きい値であるリフレッシュ間隔(例えば、1800秒)を提案する。サーバ端末(UAS、ユーザエージェントサーバ)は、応答の中で減らされた値を返すことによって、提案されたリフレッシュ間隔の値について交渉を行うという選択肢を持つ。しかしながら、Session−Expiresによって示されるリフレッシュ間隔の満了前に、後続のリフレッシュ要求メッセージがサーバ端末によって受信されなければならず、さもなければ、ダイアログは終了されることになる。
【0007】
それゆえ、ソフトステートSIPダイアログは、セッション開始要求メッセージ及びその後のセッションリフレッシュ要求メッセージのSession−Expiresにおいて設定された交渉済みリフレッシュ間隔の間に、定期的なリフレッシュによって維持される。しかしながら、クライアント端末が同じ無線リンクを介して同時に複数のサーバ端末とダイアログを維持している場合、このリフレッシュトラヒックは電力を食うことになり、最終的にはバッテリーを使い果たしてしまう。無線インタフェースを介してIPパケットを送信するための、エネルギーの観点での周辺的コスト(marginal cost)は、端末及びその無線装置の送信前の状態に依存する。クライアント端末及び無線装置が低電力モードや電源オフである場合、IPパケットを送信するための周辺的コストは、装置が動作状態に遷移することが原因で高くなるであろうが、その後のIPパケットを送信するためのコストは低くなるであろう。
【0008】
サーバ端末との典型的なSIPダイアログの間のリフレッシュ要求によって引き起こされるクライアント端末のエネルギー消費は、図1においてエネルギー対時刻の図に示される。この図において、1a、1b、及び1cによって示されるリフレッシュ要求メッセージは、それぞれ時刻t0、t1、及びt2において送信される。図示されるリフレッシュ間隔t1−t0及びt2−t1はほぼ等しく、その結果、セッションリフレッシュ要求メッセージの繰り返しパターンが生じる。
【0009】
図2は、同時に2つのサーバ端末との複数のSIPダイアログ(SIPダイアログ1及びSIPダイアログ2)を維持するクライアント端末におけるエネルギー消費を示す。典型的には、クライアント端末は、異なるサーバ端末へのリフレッシュ要求メッセージの中で同じ大きなリフレッシュ間隔を提案することになる。図示するように、各リフレッシュ要求が電源オフ又は低電力モードから動作状態への遷移を必要とするかもしれないので、クライアント端末は、複数のSIPダイアログを維持している場合に高エネルギー消費状態になる傾向にある。
【0010】
エネルギーは、端末が送信不可能であるが電源オフの前である期間中の、端末が電力を低下させている(down-powered)場合にも消費され、また、最後の送信と電源オフシーケンスの開始との間の高電力間隔の間にも消費される。
【0011】
複数のダイアログが存在するシナリオは、例えばSIPベースのIMS(IPマルチメディア・サブシステム)サービス(例えば、登録、プレゼンス、及び音声のサービスなど)においては一般的であるので、IMSクライアント端末は、バッテリーをすぐに使い果たしてしまう高エネルギー消費状態である可能性がある。
【0012】
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、上で概説した問題に対処することであり、この目的などは、添付の独立請求項に従う方法及びデバイスによって、また、従属請求項に従う実施形態によって、達成される。
【0014】
一態様によれば、本発明は、同時進行の複数のソフトステート・ダイアログの中でクライアント端末から送信されるリフレッシュ要求メッセージを同期する方法を提供する。前記方法において、同期デバイスが、複数の異なるダイアログ中のリフレッシュ要求メッセージ間における閾値より大きい時刻オフセットの発生を継続的に検出し、前記時刻オフセットが検出された場合に、下記のステップを実行する。
後の方のリフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔を、前記検出された時刻オフセットの分だけ短縮するステップと、
前記複数の異なるダイアログ中の前記リフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔の長さを比較するステップと、
リフレッシュ間隔が異なる長さを持つ場合に、長い方のリフレッシュ間隔を、短い方のリフレッシュ間隔に対応するように、又は、短い方のリフレッシュ間隔の長さの倍数に対応するように、短縮するステップ。
【0015】
前記クライアント端末から送信される前記リフレッシュ要求メッセージは、セッション開始要求メッセージ及びセッションリフレッシュ要求メッセージを含んでもよく、前記同期デバイスは、前記閾値のサイズを決定してもよい。
【0016】
前記後の方のリフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔の前記短縮は、1つのリフレッシュ要求メッセージ中においてのみ実行されてもよいし、2以上のリフレッシュ要求メッセージに亘って分割されてもよい。
【0017】
前記同期デバイスは、前記クライアント端末の中に配置されてもよいし、前記リフレッシュ要求メッセージが通過するSIP B2BUAと同じ位置に配置されてもよく、前記SIP B2BUAは、ボーダーゲートウェイであってもよい。
【0018】
前記ダイアログはSIPダイアログであってもよく、前記クライアント端末はSIPユーザエージェントであってもよく、前記クライアント端末は、実装上は2以上のデバイスに分散していてもよく、各デバイスがSIPユーザエージェントクライアントをホスティングしている。
【0019】
前記リフレッシュ要求メッセージ中のリフレッシュ間隔は、ヘッダに添付されるSession−Expires属性によって示されてもよく、前記方法は、同時進行の複数のソフトステート・ダイアログを維持するクライアント端末において電力を節約するように構成されてもよい。
【0020】
第2の態様によれば、本発明は、複数のソフトステート・ダイアログの中でクライアント端末から送信されるリフレッシュ要求メッセージを同期する同期デバイスを提供する。前記同期デバイスは、
複数の異なるダイアログ中で送信されるリフレッシュ要求メッセージ間における閾値より大きい時刻オフセットの発生を継続的に検出する手段と、
後の方のリフレッシュ要求メッセージ中のリフレッシュ間隔を、検出された時刻オフセットの分だけ短縮する手段と、
前記複数の異なるダイアログ中の前記リフレッシュ間隔の長さを比較する手段と、
リフレッシュ間隔が異なる長さを持つ場合に、長い方のリフレッシュ間隔を、短い方のリフレッシュ間隔に対応するように、又は、短い方のリフレッシュ間隔の長さの倍数に対応するように、短縮する手段と、
を備える。
【0021】
前記同期デバイスは、前記閾値のサイズを決定する手段を更に備えてもよい。
【0022】
更なる態様によれば、本発明は、前記第2の態様に従う同期デバイスを備えるクライアント端末、並びにSIP B2BUAを提供し、前記クライアント端末は、リフレッシュ間隔の満了前であって他のトラヒックの送信直後にスケジュールされたリフレッシュ要求メッセージを送信することにより、リフレッシュ要求メッセージを他のトラヒックと相関させるように構成されてもよい。
【0023】
上述の態様に従う本発明は、同時に幾つかのダイアログを維持しているクライアント端末における省電力化を可能にし、このことは、例えばIMSにおいて有利である(IMSクライアントはしばしば複数のダイアログを維持するため)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
ここで、添付の図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
【図1】1つのSIPダイアログにおけるリフレッシュ要求のエネルギー消費を示す。
【図2】2つの非同期のSIPダイアログにおけるリフレッシュ要求のエネルギー消費を示す。
【図3】1つのSIPユーザエージェントクライアントと2つのSIPユーザエージェントサーバとの間のリフレッシュ要求の送信を示すシグナリング図である。
【図4】同期前後の、3つのSIPダイアログのリフレッシュ要求のエネルギー消費を示す。
【図5】1つのユーザエージェントクライアントと3つのユーザエージェントサーバとを伴うSIPアーキテクチャの概略図である。
【図6】本発明の実施形態に従う同期を示すフロー図である。
【図7】本発明の実施形態に従う同期デバイスを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明において、本発明に関する完全な理解を提供するために、例えば特定のアーキテクチャ及びステップのシーケンスのような、具体的な詳細が説明される。しかしながら、当業者にとって明らかなこととして、本発明は、これらの具体的な詳細から逸れるかもしれない他の実施形態においても実施可能である。
【0026】
更に、明らかなこととして、説明される機能は、プログラムされるマイクロプロセッサ又は汎用コンピュータと併せて機能するソフトウェアを使用して実装可能であるし、及び/又は、アプリケーション固有集積回路を使用して実装可能である。本発明は方法の形式で説明されるが、本発明は、コンピュータプログラム製品にも具現化可能であるし、コンピュータプロセッサ及びメモリを含むシステムにも具現化可能であり、このメモリは、説明される機能を実行可能な1以上のプログラムでエンコードされる。
【0027】
本発明の基本的なコンセプトは、リフレッシュ要求メッセージを時間的に合体させることにより(即ち、リフレッシュ要求メッセージ(例えば、様々なサーバ端末へ送信されるセッション開始要求メッセージ及びセッションリフレッシュ要求メッセージのような)を同期させることにより)、2以上のサーバ端末との複数のダイアログを維持するクライアント端末における電力を節約することである。というのも、端末が低電力モード又は電源オフである場合に、無線インタフェースを介してIPパケットを送信するのに必要な電力が大きくなるからである。
【0028】
クライアント端末から送信されるリフレッシュ要求メッセージの同期は、セッション開始要求メッセージ及びその後のセッションリフレッシュ要求メッセージの中で示されるリフレッシュ間隔の交渉済みの値を調整することにより達成される。この調整は、複数のダイアログを維持するクライアント端末が、様々なサーバ端末に対してほぼ同時にリフレッシュ要求を送信するように行われる。このことは、図3のシグナリング図に示される。
【0029】
図3は、2つのサーバ端末33a,33b(即ち、2つのSIPユーザエージェントサーバUAS1及びUAS2)とのSIPダイアログを維持するクライアント端末31(例えば、1つのSIPユーザエージェントクライアントUAC)を示すシグナリング図であり、垂直軸上に時刻を示す。シグナルS11は、クライアント端末31から第1のサーバ端末33a(即ち、UAS1)へ送信されるリフレッシュ要求メッセージであり、シグナルS12は、クライアント端末31から第2のサーバ端末33b(即ち、UAS2)へ送信されるリフレッシュ要求メッセージである。シグナルS11及びS12は同期しておらず、これらは同時には送信されないので、これらの間には時刻オフセット34が存在する。本発明によれば、同期デバイス32が時刻オフセット34を検出し、クライアント端末から2つのサーバ端末へ送信されるリフレッシュ要求メッセージの同期を実行する。同期の後、クライアント端末から2つのサーバ端末へのリフレッシュ要求メッセージは、図中にシグナルS21及びS22で示されるように、ほぼ同時に送信されることになる。同期デバイス32は、同期すべき要求メッセージのパス中(経路中)に配置され、ネットワーク側に配置されてもよいしクライアント端末中に配置されてもよい。
【0030】
クライアント端末31は、代わりに、2以上のSIPユーザエージェントクライアントの間で分散していてもよい(各UACが例えば別々のパーソナルコンピュータの中に配置される)。
【0031】
図4は、本発明に従う同期の前後の、3つのSIPダイアログを維持するクライアント端末におけるエネルギー消費を示す。3つのダイアログにおける最初のリフレッシュ要求メッセージは、時間的に相関しておらず、それぞれ異なる時刻t1、t2、及びt3に送信される。しかしながら、同期が原因で、本発明によれば、クライアント端末から各サーバ端末への第2及び第3のリフレッシュ要求メッセージはそれぞれ、3つのダイアログ全てにおいて、時刻t4及びt5に送信される(即ち、クライアント端末から様々なサーバ端末へのリフレッシュ要求の送信は、時間的に相関している)。3つのリフレッシュ要求メッセージの時刻t4及びt5における送信の間には、電源オフ又は低電力モードからの遷移が要求されないため、3つのリフレッシュ要求メッセージが時間的に相関せずにそれぞれ時刻t1、t2、及びt3に送信される場合に比べて、必要とされるエネルギーが少なくなり、電力が節約される。それゆえ、1つのクライアント端末から様々なサーバ端末へのリフレッシュ要求メッセージに関する、本発明に従う同期の結果として、クライアント端末の省電力化及びバッテリー消費の削減がもたらされる。
【0032】
図4に示す同期は、リフレッシュ要求メッセージがダイアログ1、ダイアログ2、及びダイアログ3において同期していないということ(即ち、リフレッシュ要求メッセージがクライアント端末から少なくともほぼ同時に送信されてはいないということ)を検出する同期デバイス32(図4には示さない)によって実行される。本発明の第1の例示的な実施形態によれば、同期デバイスは、閾値よりも大きな時刻オフセットが、ダイアログ2及びダイアログ1の中で送信されるリフレッシュ要求の間(図4においてオフセット21として示す)、及び、ダイアログ3及びダイアログ1の中で送信されるリフレッシュ要求の間(図4においてオフセット31として示す)に発生したことを検出する。
【0033】
その後、Session−Expires属性によって示される、ダイアログ2及びダイアログ3におけるリフレッシュ間隔の長さが、時刻オフセットであるオフセット21及びオフセット31の分だけそれぞれ減らされる。この減少は、1つのリフレッシュ要求メッセージだけの中で実行されてもよいし、代わりに、幾つかのリフレッシュ要求メッセージに亘って分割されてもよい。その後、これに続くリフレッシュ要求メッセージは、ダイアログ1、ダイアログ2、及びダイアログ3の中でほぼ同時に送信されることになる。クライアント端末は、典型的には、様々なサーバ端末へ送信されるリフレッシュ要求メッセージの中で同じ大きなリフレッシュ間隔を提案するので、検出された時刻オフセットに対する調整後は、リフレッシュ要求メッセージは3つのダイアログにおいて同期されたままになる(即ち、クライアント端末からほぼ同時に送信される)。
【0034】
しかしながら、クライアント端末が異なるダイアログの中で異なるリフレッシュ間隔を提案する場合は、同期デバイスはその差を検出することになり、リフレッシュ間隔が同じになるように小さい方の値に対応するように大きい方の値を減少させる。なぜなら、そうしなければ、同期が失われることになるからである。
【0035】
或いは、大きい値が例えば120であり、小さい値が50である場合は、大きい値を50ではなく100に減少させることができる(即ち、小さい方の値の倍数に対応するようにする)。これにより、リフレッシュ要求メッセージは依然として同期したままになるが、このダイアログの中のリフレッシュトラヒックは50%削減され、これは省電力になる。
【0036】
第2の例示的な実施形態によれば、同期デバイスは、例えば、リフレッシュ要求メッセージの送信と電源オフとの間の時間間隔、及びネットワーク側のトラヒックフロー要件に基づいて、閾値のサイズを決定する。
【0037】
図6は、本発明の例示的な実施形態に従う同期手順を示すフロー図であり、ここで、2つのダイアログ(ダイアログ1及びダイアログ2)の中でクライアント端末から2つの異なるサーバ端末へ送信されるリフレッシュ要求メッセージが、同期されるようになる。ステップ61で、同期デバイスは、ダイアログ2及びダイアログ1の中で送信されるリフレッシュ要求の間に閾値より大きい時刻オフセットが存在するか否かを継続的に判定する。そのような時刻オフセットが検出された場合、ステップ62で、後で送信される方のリフレッシュ要求メッセージ中のSession−Expires属性の値が、検出された時刻オフセットの分だけ減らされる。これにより、その後のリフレッシュ要求メッセージは、ダイアログ1の中及びダイアログ2の中でほぼ同時に送信されることになる。ステップ63で、ダイアログ1及びダイアログ2が同じリフレッシュ間隔を持つか否かが判定され、持たない場合、ステップ64で、2つのリフレッシュ間隔のうち長い方が、短い方のリフレッシュ間隔、又は短い方のリフレッシュ間隔の長さの倍数に対応するように短縮され、これにより、リフレッシュ要求メッセージは同期したままになる。
【0038】
図5は、1つのUAC(ユーザエージェントクライアント)31(即ち、SIPクライアント端末)及び3つのUAS33a、33b、33c(即ち、SIPサーバ端末)と、無線基地局を含んだ無線ネットワーク52と、SIP B2BUA(バック・ツー・バック・ユーザエージェント)53と、を含む例示的なSIPアーキテクチャを示す。SIP B2BUAは、UACと3つのUASとの間の3つのセッションの各々において「中間者(man in the middle)」として機能し、UACに対してはUASとして振る舞い、UASに対してはUACとして振る舞う。
【0039】
それゆえ、本発明の第1の実施形態によれば、クライアント端末31から3つのサーバ端末33a、33b、33cへのリフレッシュ要求メッセージの同期は、セッションリフレッシュ要求メッセージ又はセッション開始要求メッセージの中のSession−Expires属性の値を観察すると共に調整することが可能な位置にあるSIP B2BUA53(例えば、ボーダーゲートウェイ)と同じ場所に配置される同期デバイス32によって実行される。
【0040】
同期デバイスをSIP B2BUAと同じ場所に配置することにより、SIP B2BUAを介して通信を行う全てのクライアント端末の中に、同期機能を実装することができる。
【0041】
それゆえ、本発明に従うSIP B2BUA53の例示的な実施形態は、同期デバイス32を含む。
【0042】
しかしながら、クライアント端末31自体が、セッション開始要求メッセージ及びセッションリフレッシュ要求メッセージの中でSession−Expires属性によって示されてサーバ端末33a、33b、及び33cへ送信されるリフレッシュ間隔の値を観察及び調整することもでき、これと共に、様々なダイアログの中で端末から送信されるリフレッシュ要求メッセージ間の時刻オフセットを検出することもできる。それゆえ、本発明の第2の実施形態によれば、クライアント端末31から3つのサーバ端末33a、33b、33cへのリフレッシュ要求メッセージの同期は、クライアント端末自体の中に配置される同期デバイス32によって実行される。
【0043】
それゆえ、本発明に従うクライアント端末31の第1の実施形態は、同期デバイス32を含む。しかしながら、第2の実施形態によれば、本発明に従うクライアント端末31は更に、リフレッシュ間隔の満了前であって他のトラヒックの送信直後にスケジュールされたリフレッシュ要求メッセージを送信することにより、リフレッシュトラヒックを他のトラヒックと相関させるように構成される。これにより、更なる省電力化が達成される。
【0044】
図7は、SIPダイアログに適用可能な、本発明の第1の実施形態に従う例示的な同期デバイス32を示すブロック図である。同期デバイス32は、1つのクライアント端末(即ち、UAC)によって維持される第1及び第2のSIPダイアログの中で送信されるリフレッシュ要求間での閾値より大きい時刻オフセットの発生を検出する手段71を備える。更に、このデバイスは、後の方のリフレッシュ要求メッセージのリフレッシュ間隔の長さを、検出された時刻オフセットの分だけ減少させる手段72を備える。同期デバイスは更に、2つのダイアログのその後のリフレッシュ要求メッセージの中で示されるリフレッシュ間隔の長さが同じであるか否かを判定する手段73と、リフレッシュ間隔が同じではない場合に、長い方のリフレッシュ間隔の長さを、短い方のリフレッシュ間隔の長さ、又は短い方のリフレッシュ間隔の長さの倍数に対応するように短縮する手段74と、を備える。
【0045】
第2の実施形態によれば、同期デバイスは更に、前記閾値のサイズを決定する手段を備える。
【0046】
本発明は、セッションリフレッシュ要求メッセージ(例えば、SIPにおけるINVITEメッセージ又はUPDATEメッセージ)を含む任意のソフトステート・シグナリングプロトコルに対して適用可能であり、IMSクライアント端末はしばしば複数のダイアログを維持するので、本発明は、例えばIMSにおいて有利である。
【0047】
具体的な例示的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、説明は一般的に、発明のコンセプトを説明することを意図するのみであり、本発明の範囲を限定するものとして捉えられてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時進行の複数のソフトステート・ダイアログの中でクライアント端末(31)から送信されるリフレッシュ要求メッセージを同期する方法であって、
同期デバイス(32)が、複数の異なるダイアログ中のリフレッシュ要求メッセージ間における閾値より大きい時刻オフセットの発生を継続的に検出するステップ(61)を備え、
前記時刻オフセットが検出された場合に前記同期デバイス(32)が実行する、
後の方のリフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔を、前記検出された時刻オフセットの分だけ短縮するステップ(62)と、
前記複数の異なるダイアログ中の前記リフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔の長さを比較するステップと(63)、
リフレッシュ間隔が異なる長さを持つ場合に、長い方のリフレッシュ間隔を、短い方のリフレッシュ間隔に対応するように、又は、短い方のリフレッシュ間隔の長さの倍数に対応するように、短縮するステップ(64)と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記クライアント端末から送信される前記リフレッシュ要求メッセージは、セッション開始要求メッセージ及びセッションリフレッシュ要求メッセージを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同期デバイスは、前記閾値のサイズを決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記後の方のリフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔の前記短縮は、1つのリフレッシュ要求メッセージ中においてのみ実行される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記後の方のリフレッシュ要求メッセージ中で示されるリフレッシュ間隔の前記短縮は、2以上のリフレッシュ要求メッセージに亘って分割される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記同期デバイスは、前記クライアント端末の中に配置される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイアログはSIPダイアログである
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記クライアント端末はSIPユーザエージェントである
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クライアント端末は、実装上は2以上のデバイスに分散しており、各デバイスがSIPユーザエージェントクライアントをホスティングしている
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記同期デバイスは、前記リフレッシュ要求メッセージが通過するSIP B2BUAと同じ位置に配置される
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記SIP B2BUAは、ボーダーゲートウェイである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リフレッシュ要求メッセージ中のリフレッシュ間隔は、ヘッダに添付されるSession−Expires属性によって示される
ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
同時進行の複数のソフトステート・ダイアログを維持するクライアント端末において電力を節約する
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
複数のソフトステート・ダイアログの中でクライアント端末(31)から送信されるリフレッシュ要求メッセージを同期する同期デバイス(32)であって、
複数の異なるダイアログ中で送信されるリフレッシュ要求メッセージ間における閾値より大きい時刻オフセットの発生を継続的に検出する手段(71)と、
後の方のリフレッシュ要求メッセージ中のリフレッシュ間隔を、検出された時刻オフセットの分だけ短縮する手段(72)と、
前記複数の異なるダイアログ中の前記リフレッシュ間隔の長さを比較する手段と(73)、
リフレッシュ間隔が異なる長さを持つ場合に、長い方のリフレッシュ間隔を、短い方のリフレッシュ間隔に対応するように、又は、短い方のリフレッシュ間隔の長さの倍数に対応するように、短縮する手段(74)と、
を備えることを特徴とする同期デバイス。
【請求項15】
前記閾値のサイズを決定する手段を更に備える
ことを特徴とする請求項14に記載の同期デバイス。
【請求項16】
前記リフレッシュ要求メッセージは、セッション開始要求メッセージ及びセッションリフレッシュ要求メッセージを含む
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の同期デバイス。
【請求項17】
前記クライアント端末(31)の中に配置される
ことを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の同期デバイス。
【請求項18】
複数のSIPダイアログ中で送信されるリフレッシュ要求メッセージを同期させる
ことを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の同期デバイス。
【請求項19】
前記クライアント端末はSIPユーザエージェントである
ことを特徴とする請求項18に記載の同期デバイス。
【請求項20】
前記クライアント端末は、実装上は2以上のデバイスに分散しており、各デバイスがSIPユーザエージェントクライアントをホスティングしている
ことを特徴とする請求項18又は19に記載の同期デバイス。
【請求項21】
前記リフレッシュ要求メッセージ中のリフレッシュ間隔は、ヘッダに添付されるSession−Expires属性によって示される
ことを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載の同期デバイス。
【請求項22】
同時進行の複数のソフトステート・ダイアログを維持するクライアント端末において電力を節約する
ことを特徴とする請求項14乃至21のいずれか1項に記載の同期デバイス。
【請求項23】
前記リフレッシュ要求メッセージが通過するSIP B2BUAと同じ位置に配置される
ことを特徴とする請求項18乃至22のいずれか1項に記載の同期デバイス。
【請求項24】
前記SIP B2BUAは、ボーダーゲートウェイである
ことを特徴とする請求項23に記載の同期デバイス。
【請求項25】
請求項17乃至22のいずれか1項に記載の同期デバイス(32)を備えることを特徴とするクライアント端末(31)。
【請求項26】
リフレッシュ間隔の満了前であって他のトラヒックの送信直後にスケジュールされたリフレッシュ要求メッセージを送信することにより、リフレッシュ要求メッセージを他のトラヒックと相関させる
ことを特徴とする請求項25に記載のクライアント端末(31)。
【請求項27】
請求項23又は24に記載の同期デバイス(32)を備えることを特徴とするSIP B2BUA(53)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−510200(P2012−510200A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537392(P2011−537392)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051345
【国際公開番号】WO2010/062226
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】