ソフトプロテアーゼ阻害剤およびそのプロソフト型
本発明は、プロテアーゼを阻害するための化合物および方法を提供する。本発明の1つの態様は、活性化プロテアーゼと反応し、標的プロテアーゼの近くに活性阻害剤成分を放出するプロソフト阻害剤を特徴とする。ある特定の事例では、化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIVなどのプロテアソームおよび/またはポストプロリン切断酵素(PPCE)を阻害する。本発明の化合物は、一部には、標的プロテアーゼに対する毒性の低減および/または特異性の改善により、より良好な治療係数を提供する。本発明の別の態様は、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症を治療するための本開示の化合物の使用について提供する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年2月27日に出願した米国仮特許出願第61/156,246号に対する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、プロテアーゼを阻害するための化合物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
プロテアーゼは、特異ペプチド結合においてタンパク質を切断する酵素である。プロテアーゼは、セリン、チオールまたはシステイニル、酸またはアスパルチル、およびメタロプロテアーゼの4つの一般分類に分類することができる(非特許文献1)。プロテアーゼは、消化、血栓の形成および溶解、再生、ならびに異種細胞および有機体に対する免疫反応などの、種々の生物活性に必須である。しかしながら、異常タンパク質分解は、ヒトおよび他の哺乳動物における多数の疾病に関連する。したがって、患者を治療する過程において、1つ以上のタンパク質分解酵素の機能を中断させることは、しばしば有益となる。
【0004】
ペプチド基質の結合部位は、酵素の表面にわたる一連の「特異性サブサイト(specificity subsite)」からなる。「特異性サブサイト」という用語は、酵素に対する基質部分と相互作用できる酵素のポケットまたは他の部位を指す。例えば、セリンおよびシステインプロテイナーゼなどのプロテアーゼとペプチドとの相互作用について論じる際に、本願では、SchechterおよびBergerの命名法を使用する(非特許文献2)。切断反応で生じたカルボキシ末端残基から開始して、基質または阻害剤の個々のアミノ酸残基はP1、P2などと指定され、酵素の対応するサブサイトはS1、S2などと指定される。基質の切断しやすい結合は、基質のP1〜P1'の間のアミド結合である。よって、ペプチドXaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4については、Xaa3とXaa4残基の間で切断されるが、Xaa3残基はP1残基と称され、酵素のS1サブサイトに結合し、Xaa2はP2残基と称され、S2サブサイトに結合するなどとなる。
【0005】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIVまたはDPP IV)は、好ましくは、例えばP1位置などの最後から2番目の位置にプロリン残基を含むペプチド鎖からN末端ジペプチドを切断する、セリンプロテアーゼである。DPIVは細胞膜関連ペプチダーゼの群に属し、細胞表面ペプチダーゼの大部分のようにII型内在性膜タンパクであり、そのシグナル配列によって細胞膜に固定されている。DPIVは、CD4+T細胞の表面に特異的に見られるリンパ系起源のものを含む、種々の分化した哺乳類の上皮、内皮、および造血細胞ならびに組織に見られる。DPIVは、白血球分化マーカーCD26として同定されている。
【0006】
プロテアソームは、損傷、酸化、または異常に折り畳まれたタンパク質のタンパク質分解、ならびに、細胞周期進行などのさまざまな細胞機能に必要とされる重要な調節タンパク質の加工または分解を含めた、真核細胞における細胞内タンパク質代謝回転の大部分に関与するプロテアーゼを含む細胞複合体である。例えば、26Sプロテアソームは、その触媒コアに、およそ700kDaの分子量のマルチサブユニット複合体である20Sプロテアソームを含む、多触媒性のプロテアーゼである。必須の生理的役割を果たす一方、プロテアソームは、正常な細胞過程が調節不全となる病状の結果または原因として生じる、不適切なタンパク質分解またはタンパク質分解の促進にも関与している。特徴的な例の1つは癌であり、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、および腫瘍抑制遺伝子を含む、細胞周期調節タンパク質の調節されていないプロテアソーム依存性の分解が、結果として、促進された無制御の有糸分裂を引き起こし、それによって、癌の増殖および転移を促進する(非特許文献3〜5)。プロテアソーム酵素機能の阻害により、癌または炎症などの病状における疾患進行の停止または鈍化が期待される。
【0007】
例えば、ラクタシスチンおよびその類似体といったプロテアソーム阻害剤は、マラリア原虫であるPlasmodium spp.の、前赤内期および赤内期の発達を遮断することが示されている。その肝期および赤内期の両方の間、寄生虫は急激な形態変化、および、幾多の複製を経験するが、それらの事象はプロテアソーム活性を必要とすると考えられる。ラクタシスチンは、プロテアソームの活性部位の触媒的N末端スレオニンを共有結合的に修飾し、哺乳類の細胞、原虫、および古細菌のプロテアソームを含む、調査した全プロテアソームの活性を阻害することが発見されている(非特許文献6)。
【0008】
ヒトの線維芽細胞活性化タンパク質(FAPα)は、モノクローナル抗体(mAb)F19として最初に同定された分子量95,000の細胞表面分子である(非特許文献7、8)。FAPα cDNAは、大きな細胞外領域、膜貫通領域、および短い細胞質尾部を有するII型内在性膜タンパク質をコードする(非特許文献9、特許文献1)。FAPαは、ジペプチジルペプチダーゼ活性を有する膜結合タンパク質であり、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)としても知られる、T細胞活性化抗原CD26に対する48%のアミノ酸配列同一性を示す(非特許文献9)。FAPαは酵素活性を有し、酵素機能にとって重要なセリン624を有するセリンプロテアーゼのファミリーに属する(特許文献1)。膜オーバーレイアッセイを用いた研究により、FAPα二量体がAla−Pro−7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、Gly−Pro−7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、およびLys−Pro−7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリンジペプチドを切断できることが明らかとなった(特許文献1)。
【0009】
FAPαは、ヒトの上皮癌、回復期創傷の肉芽組織、ならびに、ある特定の骨および軟部組織の肉腫に存在する悪性細胞の、多くの組織型の反応性間質線維芽細胞において選択的に発現される。正常な成人組織は、一般に、検出可能なFAPαを有しないが、一部の胎児の間葉組織は、過渡的に、前記分子を発現する。対照的に、乳癌、非小細胞性肺癌、および結腸直腸癌の90%よりも多くを含む、一般的な種類の上皮癌の大部分は、FAPα反応性間質線維芽細胞を包含する(非特許文献9)。これらのFAPα+線維芽細胞は、新しく形成される腫瘍血管に付随して生じ、腫瘍毛細血管内皮と悪性上皮細胞集合の底面の間に介在する、はっきりと区別できる細胞内コンパートメントを形成する(非特許文献10)。FAPα+間質線維芽細胞は、原発性癌および転移性癌の両方に見られるが、例えば乳腺線維腺腫および結腸直腸腺腫のような線維腺腫など、検査した良性および前癌性の上皮性病変(非特許文献10)には、FAPα+間質細胞が含まれることは極めて稀である。正常組織におけるFAPαの限られた分布パターン、および、多くの悪性腫瘍の支持間質におけるFAPαの均一な発現に基づいて、131Iで標識したmAb F19の臨床試験が、転移性大腸癌の患者において開始されている(非特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第97/34927号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Cuypers et al., J. Biol. Chem. 1982, 257, 7086
【非特許文献2】Biochem. Biophys. Res. Commun. 1967, 27, 157−162
【非特許文献3】Goldberg et al. Chem. & Biol. 1995, 2, 503−508
【非特許文献4】Coux et al. Ann. Rev. Biochem., 1996, 65, 801−847
【非特許文献5】Deshaies, Trends Cell Biol. 1995, 5, 428−434
【非特許文献6】Gantt et al. Antimicrob. Agents Chemother. 1998, 42, 2731−2738
【非特許文献7】Rettig et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988, 85, 3110−3114
【非特許文献8】Rettig et al. Cancer Res. 1993, 53, 3327−3335
【非特許文献9】Scanlan et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994, 91, 5657−5661
【非特許文献10】Welt et al. J. Clin. Oncol. 1994, 12, 1193−1203
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、プロテアーゼを阻害する化合物および方法を提供する。本発明の1つの態様は、活性阻害剤部分を標的プロテアーゼに近接して放出するための、活性化プロテアーゼと反応するプロソフト阻害剤を特徴とする。ある特定の事例では、本化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIVなどの、プロテアソームおよび/またはポストプロリン切断酵素(PPCE)を阻害する。本発明の化合物は、一部には、毒性の低減および/または標的化プロテアーゼに対する特異性の改善に起因して、良好な治療指数を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】化合物5の形成のための典型的な反応スキーム。試薬および条件:i.(a)NMM、クロロギ酸イソブチル、−20℃、(b)4―ニトロ−1,2−フェニレンアミン、−15℃〜室温;ii.P4S10、THF、0℃〜室温;iii.NaNO2、0℃;iv.BoroSar−pn.HCl、NEt3、0℃〜室温;v.HCl(g)、CH2Cl2、0℃〜室温;vi.PhB(OH)2、MTBE−H2O、室温。
【図2】化合物5のD2Oにおける1H NMRスペクトル。
【図3】化合物5のD2Oにおける11B NMRスペクトル。
【図4】化合物5のLC−MSスペクトル。
【図5】化合物5のHPLCクロマトグラム。
【図6】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図7】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図8】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図9】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図10】化合物22の構造。
【図11】化合物23すなわちVal−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物23への合成経路(B)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図12】化合物24すなわちGly−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物24への合成経路(B)、およびpH=2におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図13】化合物25すなわちAla−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物25への合成経路B)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図14】化合物26すなわちPro−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物26への合成経路(B)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図15】化合物27すなわちPhe−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(B)。
【図16】化合物28すなわちTrp−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、および化合物28への合成経路(B)。
【図17】化合物29すなわち2−アミノアジピン酸(aminoadipic)−boroSar(チオキソアミド)または2−Aad−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物29への合成経路(B)、およびDPP4/8/9のアッセイ結果についてのIC50値(C)。
【図18】化合物30すなわちAib−boroSar(チオキソアミド)の構造。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
本発明は、プロテアーゼ阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤の使用方法を提供する。本発明は、多様なプロテアーゼ阻害剤を特徴とする。例えば、プロテアーゼは、ジペプチジルペプチダーゼIVなどのポストプロリン切断酵素(PPCE)であってもよい。本発明は、プロテアソーム活性を阻害する化合物も提供する。ある特定の事例では、プロテアーゼ阻害剤はプロソフト阻害剤である。プロソフト阻害剤は「活性化プロテアーゼ」によって活性化、すなわち切断されて、活性阻害剤成分を「標的プロテアーゼ」に近接して放出する、不活性薬剤である。活性化プロテアーゼおよび標的プロテアーゼの同一性は、同一であっても、異なっていてもよい。プロソフト阻害剤の活性化の後、活性阻害剤部分は、不可逆性のプロト脱ホウ素化によって、自己不活化を受ける。
【0015】
本発明のプロソフト阻害剤分子を典型的なプロドラッグと区別する特徴の1つは、阻害剤部分が、標的の近くに活性型として生じた後に、例えば、標的酵素から離れて拡散するにつれて経時により不活化され、それによって、患者の他の部位で生じた酵素の阻害に起因しうる有害な副作用の可能性を低減することである。この「プログラム化された」失活機構と、標的酵素の近くへの活性型での放出の組合せは、阻害剤部分自体を使用した場合よりも、本発明の分子をより特異的、効果的、および安全にする(すなわち、副作用がより少なくなる)。
【0016】
本発明の化合物の有利な特徴としては:一部には、標的化プロテアーゼの毒性の低減および/または特異性の改善に起因する、より良好な治療指標;より良好な経口アベイラビリティ;保存寿命の増大;および/または作用持続時間の増大(例えば、約4時間よりも長く、約8時間よりも長く、約12時間よりも長く、または約16時間よりも長い時間有効な単回経口投与製剤など)が挙げられる。
【0017】
本発明の化合物の別の有利な特徴は、プロト脱ホウ素化により、無毒のホウ酸を不可逆的に放出することである。ホウ酸のLD50は、一般的な食卓塩のものとほぼ等しい。したがって、本発明の化合物を用いた長期の慢性治療は、安全性プロファイルの改善(副作用の低減)をもたらすことが期待される。
【0018】
本発明の化合物は、DPIV介在性のものなど、種々の障害または病状の治療の一環として用いることができる。特定の理論に縛られることは望まないが、DPP IVを阻害する化合物は、DPP IV阻害を含む機構を通じて耐糖能を改善することができることが観察された。
【0019】
ある特定の対象化合物は、延長された持続期間を有する。したがって、ある特定の実施の形態では、単回投与後少なくとも約4時間、または少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、または単回投与後少なくとも約16時間の間、血清のPPCE(例えば、DPIV)濃度を少なくとも約50%阻害する用量を提供するように、化合物が選択され、そのような化合物量で製剤される。
【0020】
例えば、ある特定の実施の形態では、本方法は、グルコース代謝障害に関する1つ以上の異常な指数の改善に有効な量で、好ましくは24時間の間の所定の時間、DPIV阻害剤の投与を包含することが好ましい。
【0021】
定義
化合物は、ホルモンインスリンの合成または発現を刺激する、または刺激を生じることができる場合に、「インスリン向性(insulinotropic)活性」を有するという。
【0022】
「boro−Xaa」という用語は、カルボキシレート基(COOH)がボロニル基(B(OH)2)で置換された、アミノ酸類似体のことをいい、ここでXaaはアミノ酸残基である。例えば、「boro−Ala」という用語は、カルボキシレート基(COOH)がボロニル基(B(OH)2)で置換されたアラニン類似体を指す;「boro−Pro」という用語は、カルボキシレート基(COOH)がボロニル基(B(OH)2)で置換されたプロリン類似体を指す。言い換えれば、「Ala−boroPro」という用語は、次を指す:
【化1】
【0023】
「チオキサム」という用語は、化学命名法に関連して用いられ、少なくとも1つのアミド基が少なくとも1つのチオキサミド基で置換された化合物を指す。例えば Pro(チオキサム)は、アミド基がチオキサミド基で置換されたプロリン残基を指す。例えば、「Ala−boroProチオキソアミド」という用語は次を指す:
【化2】
【0024】
本方法によって治療すべき「患者」または「被験体」とは、ヒトまたはヒトではない被験体のいずれかを意味しうる。ヒトではない被験体としては、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ)および愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ)が挙げられる。
【0025】
「ED50」という用語は、50%の患者において、例えば、グルコース反応性、ヘマトクリット値の上昇、腫瘍容積の低下などの生理学的計測における臨床的に意義のある改善または変化をもたらすであろう薬物の用量を意味する。
【0026】
「IC50」という用語は、例えば、インビボにおいてDPIV(または他のPPCE)活性の少なくとも50%を阻害するのに必要とされる化合物の量など、生物活性を50%阻害する薬物用量を意味する。
【0027】
「LD50」という用語は、試験対象の50%が致死する薬物用量を意味する。
【0028】
「治療指数」という用語は、LD50/ED50と定義される薬物の治療指数のことをいう
治療の対象とする方法に関連して、例えば、本発明のDPIV阻害剤などの化合物の「治療に有効な量」とは、所望の投薬計画(哺乳動物、例えばヒトなどに対する)の一部として投与される場合に、例えば、任意の医療に適用可能な妥当な損益比で、症状を軽減する、状態を改善する、または治療すべき障害または状態の臨床的に許容できる基準に従った病状の開始を遅延させる、または化粧品用途の、製剤における化合物の量のことをいう。
【0029】
「単回経口投与製剤」とは少なくともその薬物のEC50と同等であるが、LD50未満である、血清濃度を生じる薬物量を提供する調剤である。単回経口投与製剤のための別の基準は、少なくともその薬物のIC50と同等であるが、LD50未満である、血清濃度を生じるのに必要な薬物量を提供する調剤である。いずれかの基準により、単回経口投与製剤は、その薬物のLD50より少なくとも10%低い血清濃度を生じる薬物量が好ましく、LD50より少なくとも50%、75%、または90%低い血清濃度を生じることがさらに好ましい。
【0030】
脂肪族鎖は、以下に定義されるアルキル、アルケニルおよびアルキニルの種類を含む。脂肪族直鎖は、非分岐の炭素鎖部分に限られる。本明細書では「脂肪族基」という用語は、直鎖、分岐鎖、または環状脂肪族炭化水素基を指し、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基などの飽和および不飽和の脂肪族基が含まれる。
【0031】
「アルキル」とは、規定された炭素原子数、または規定されていない場合には最大30までの炭素原子を有する、完全に飽和した、環式または非環式の、分岐または非分岐の炭素鎖部分を指す。例えば、1〜8炭素原子のアルキルとは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルなどの部分、およびそれらの部分の位置異性体である部分を指す。10〜30の炭素原子のアルキルとして、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシルおよびテトラコシルが挙げられる。ある特定の実施の形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に30以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC1〜C30、分岐鎖ではC3〜C30)、さらに好ましくは20以下の炭素原子を有する。
【0032】
「シクロアルキル」とは、各々が3〜12の炭素原子を有する、単環式または二環式、または架橋した飽和炭素環式環を意味する。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造に5〜12の炭素原子を有し、さらに好ましくは環構造に6〜10の炭素を有する。
【0033】
炭素数が別に規定されない限り、本明細書では「低級アルキル」とは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルなど、その骨格構造に、1〜10の炭素、さらに好ましくは1〜6の炭素原子を有する先に定義したアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。本願を通じて、好ましいアルキル基は低級アルキルである。ある特定の実施の形態では、本明細書でアルキルとして指定される置換基は、低級アルキルである。
【0034】
「アルケニル」とは、規定された炭素原子数、または炭素原子数の限定が特に規定されていない場合には最大26までの炭素原子数を有し;その部分に1つ以上の二重結合を有する、環式のまたは非環式の、分岐したまたは非分岐の不飽和の炭素鎖部分を指す。6〜26の炭素原子のアルケニルは、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘニコセニル(heneicosoenyl)、ドコセニル、トリコセニル、およびテトラコセニルのさまざまな異性体に例示され、ここで、不飽和結合はその部分のどこかに位置すればよく、二重結合について(Z)または(E)配置のいずれかを有しうる。
【0035】
「アルキニル」とは、1つ以上の三重結合を有する、アルケニルの範囲のヒドロカルビル部分を指す。
【0036】
「アルキルチオ」という用語は、結合した硫黄部分を有する、先に定義したアルキル基を指す。ある特定の実施の形態では、「アルキルチオ」部分は、−(S)−アルキル、−(S)−アルケニル、−(S)−アルキニル、および−(S)−(CH2)m−R1のうちの1つで表され、ここで、mおよびR1は以下に定義される。代表的なアルキルチオ基にはメチルチオ、エチルチオなどが含まれる。
【0037】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、本明細書では、結合した酸素部分を有する、以下に定義されるアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが含まれる。「エーテル」は、酸素によって共有結合的に連結した2つの炭化水素である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2)m−R1のうちの1つで表すことができるようなアルコキシルであるかアルコキシルに類似しているものであり、ここで、mおよびR1は以下に記載されている。
【0038】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当技術分野で認識されており、例えば、式:
【化3】
【0039】
によって表すことができる部分など、非置換または置換アミンの両方を指し、ここで、R3、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R1を表すか、またはR3およびR5は、それらが結合するN原子と一緒に、環構造内に4〜8原子を有する複素環を完成し;R1は、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、またはポリシクリルを表し;mは0または1〜8の範囲の整数である。ある特定の実施の形態では、R3またはR5の一方のみがカルボニルであってよく、例えば、R3、R5、および窒素は、一緒にイミドを形成しない。さらなる特定の実施の形態では、R3およびR5(および随意的にR6)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R1を表す。よって、「アルキルアミン」という用語は、本明細書では、それに結合した置換または非置換のアルキルを有する、すなわち、R3およびR5のうち少なくとも一方がアルキル基である、先に定義したアミン基を意味する。ある特定の実施の形態では、アミノ基またはアルキルアミンは塩基性であり、pKa≧7.00を有する共役酸を有することを意味する。すなわち、これらの官能基のプロトン化した形態は、水と比較して、約7.00を超えるpKaを有する。
【0040】
「アリール」という用語は、 本明細書では、環の各原子が炭素である(すなわち、炭素環式アリール)か、または1つ以上の原子がヘテロ原子である(すなわち、ヘテロアリール)、3員環〜12員環の置換または非置換の単環の芳香族基を含む。好ましくは、アリール基は、5員環〜12員環、さらに好ましくは6員環〜10員環を含む。「アリール」という用語は、2つ以上の環式環を有する多環式の環系も含み、ここで、2つ以上の炭素を2つの隣接する環で共有しており、ここで、環のうち少なくとも1つは芳香族環であり、例えば、他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルでありうる。炭素環式アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが含まれる。ヘテロアリール基には、環構造内に1〜4つのヘテロ原子を含んだ、置換または非置換の芳香族の3員環〜12員環構造が含まれ、さらに好ましくは5員環〜12員環、さらに好ましくは6員環〜10員環の構造のことをいう。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。
【0041】
「ヘテロシクリル」または「複素環式基」という用語は、環構造内に1〜4つのヘテロ原子を含んだ、3員環〜12員環構造を指し、さらに好ましくは5員環〜12員環、さらに好ましくは6員環〜10員環の構造のことをいう。複素環は多環であってもよい。ヘテロシクリル基としては、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、例えばアゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。複素環は、1つ以上の位置において、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルファモイル、スルフィニル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素環式芳香族部分、−CF3、−CNなどの上述の置換基で置換されうる。
【0042】
「カルボニル」という用語は、 当技術分野で認識されており、式:
【化4】
【0043】
で表される部分を含み、ここで、Xは結合であるか、もしくは酸素または硫黄を表し、R7は水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R1または薬学的に許容される塩を表し、R8は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2)m−R1を表し、ここで、mおよびR1は先に定義した通りである。Xが酸素であり、R7またはR8が水素ではない場合、式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、R7が先に定義した通りである場合、その部分は、本明細書では、カルボキシル基を指し、特にR7が水素の場合には、式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R8が水素の場合には、式は「ホルメート」を表す。 一般に、上記式の酸素原子が硫黄で置換される場合には、式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、R7またはR8が水素ではない場合、式は「チオエステル」基を表す。Xが硫黄であり、R7が水素の場合、式は「チオカルボン酸」基を表す。Xが硫黄でありR8が水素の場合、式は「チオホルメート」基を表す。他方では、Xが結合であり、R7が水素ではない場合、上記式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R7が水素の場合、上記式は「アルデヒド」基を表す。
【0044】
「チオキサミド」という用語は、 本明細書では、式:
【化5】
【0045】
で表すことができる部分を指し、ここで、Rtは、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアリールからなる群より選択され、水素またはアルキルであることが好ましい。さらには、「チオキサミド由来の」化合物または「チオキサミド類似体」とは、1つ以上のアミド基が1つ以上の対応するチオキサミド基で置換された化合物を指す。チオキサミドは、当技術分野では「チオアミド」とも称される。
【0046】
本明細書では、「置換(した)」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基のすべてを含むことが意図されている。広範な態様において、許容される置換基には、有機化合物における非環式のおよび環式の、分岐および非分岐の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の置換基が含まれる。実例となる置換基としては、例えば、本明細書で先に説明したものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に1つ以上存在して差し支えなく、同一または異なっていて構わない。本発明の目的では、窒素などのヘテロ原子は、そのヘテロ原子の価数を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容される置換基を有していてもよい。本発明は、いかなる方法によっても、有機化合物の許容される置換基により制限されない。「置換」または「〜で置換された」には、このような置換は、置換された原子および置換基の許容される価数に従い、例えば、転位、環化、脱離などの変換を自発的に生じない、安定な化合物を生じるという暗黙の条件が含まれることが理解されよう。
【0047】
本明細書では、「ニトロ」という用語は−NO2を意味し;「ハロゲン」という用語は−F、−Cl、−Br、または−Iを指し;「スルフヒドリル」という用語は−SHを意味し;「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味し;「スルホニル」という用語は−SO2−を意味し;「アジド」という用語は−N3を意味し;「シアノ」という用語は−CNを意味し;「イソシアナート」という用語は−NCOを意味し;「チオシアナート」という用語は−SCNを意味し;「イソチオシアナート」という用語は−NCSを意味し;「シアナート」という用語は−OCNを意味する。
【0048】
「スルファモイル」という用語は、当技術分野で認識されており、式:
【化6】
【0049】
で表すことができる部分を含み、ここで、R3およびR5は先に定義した通りである。
【0050】
「スルファート」という用語は、当技術分野で認識されており、式:
【化7】
【0051】
で表すことができる部分を含み、ここで、R7は先に定義した通りである。
【0052】
「スルホンアミド」という用語は、当技術分野で認識されており、式:
【化8】
【0053】
で表すことができる部分を含み、ここで、R3およびR8は先に定義した通りである。
【0054】
「スルホネート」という用語は、 当技術分野で認識されており、式:
【化9】
【0055】
で表すことができる部分を含み、ここで、R7は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0056】
「スルホキシド」または「スルフィニル」という用語は、 本明細書では、式:
【化10】
【0057】
で表すことができる部分を含み、ここで、R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、またはアリールからなる群より選択される。
【0058】
本明細書では、例えば、アルキル、m、nなどの各表現の定義は、構造内に2つ以上存在する場合には、同一の構造内の他の部分の定義とは独立していることが意図されている。
【0059】
「アミノ酸類似体」という用語は、C末端カルボキシル基、N末端アミノ基または側鎖官能基のいずれかが化学的に修飾されている、天然のアミノ酸と構造的に類似した化合物を指す。例えば、アスパラギン酸−(β−メチルエステル)は、アスパラギン酸のアミノ酸類似体であり;N−エチルグリシンは、グリシンのアミノ酸類似体であり;またはアラニンカルボキサミドは、アラニンのアミノ酸類似体である。
【0060】
アミノ酸の構造に立体異性体の可能性がある場合には、これらアミノ酸の(D)および(L)−立体異性体も含まれる。本明細書のアミノ酸およびアミノ酸残基の配置は、適切な記号(D)、(L)または(DL)で表され、さらには、配置が指定されていない場合には、アミノ酸または残基は(D)、(L)、または(DL)の配置を有する可能性がある。本発明の化合物の一部の構造には、非対称性の炭素原子も含まれることに留意されたい。したがって、このような非対称性から生じた異性体は、本発明の範囲内に含まれることが理解されよう。これらの異性体は、古典的な分離技術および立体選択的合成により、実質的に純粋な形態で得ることができる。本願の目的では、反対のことが明確に示されない限り、指定されたアミノ酸は、(D)および(L)の両方の立体異性体を含むように解釈されるべきである。
【0061】
「保護基」という語句は、本明細書では、反応性の官能基を望ましくない化学反応から保護する置換基を意味する。これらの保護基の例としては、カルボン酸およびボロン酸のエステル、アルコールのエーテル、ならびにアルデヒドおよびケトンノアセタールおよびケタールが挙げられる。例えば、「N末端保護基」または「アミノ保護基」という語句は、本明細書では、合成の間の望ましくない反応に対し、アミノ酸またはペプチドのN末端を保護するために用いることができるさまざまなアミノ保護基を指す。適切な基の例としては、説明の目的で、ホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、およびメトキシスクシニルなどのアシル保護基;例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)などの芳香族ウレタン保護基;およびt−ブトキシカルボニル(Boc)または9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などの脂肪族ウレタン保護基が挙げられる。
【0062】
「アミノ末端保護基」という用語は、 本明細書では、典型的には有機合成、特にペプチド合成に用いられる末端アミノ保護基を指す。アセチルおよびベンゾイルなどのアシル保護基;ベンジルオキシカルボニルなどの芳香族ウレタン保護基;および、tert−ブトキシカルボニルなどの脂肪族ウレタン保護基を含めた、既知の種類の保護基のいずれかを使用することができる。例えば、Gross and Mienhoffer, Eds., Peptides, Academic Press: New York, 1981;Vol. 3, 3−88;およびGreen, T. W.;Wuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed, Wiley: New York, 1991を参照。好ましい保護基としては、アリール−、アラルキル−、ヘテロアリール−およびヘテロアリールアルキル−カルボニルおよびスルホニル部分が挙げられる。
【0063】
上述のように、本発明のある特定の化合物は、特定の幾何学的形状または立体異性体で存在しうる。本発明は、発明の範囲内に含まれる、シス型およびトランス型異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含めたすべての化合物を意図している。さらなる非対称性の炭素原子がアルキル基などの置換基に存在していてもよい。このような異性体、ならびにそれらの混合物はすべて、本発明に含まれることが意図されている。特定のエナンチオマーが好ましい特定の実施の形態では、本発明の化合物は、2つのエナンチオマーのそれぞれが50%の範囲で存在するラセミ化合物とは対照的に、好ましいエナンチオマーを、>60%、>70%、>80%、>90%、>95%、または98%を超えて、または99%含むように高められる。
【0064】
本発明の目的では、化学元素は、CASバージョンのHandbook of Chemistry and Physics, 67th ed., 1986-87の内表紙の元素周期表に従って識別される。
【0065】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、妥当な損益比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症のない、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触した使用に適した化合物、材料、組成物、および/または投与形態を指すのに用いられる。
【0066】
「薬学的に許容される担体」という語句は、本明細書では、本発明の阻害剤を、身体の1つの器官または部位から、身体の別の器官または部位に運搬もしくは輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物または媒体を意味する。各担体は、製剤の他の原料に適合性であり、患者にとって有害ではないという意味で「許容」されなければならない。薬学的に許容される担体としての役割をしうる材料の幾つかの例として:(1)乳糖、ブドウ糖およびショ糖などの糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびなどのデンプン;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐剤蝋(坐剤ワックス)などの賦形剤;(9)ピーナツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;(10)プロピルレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質除去水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)製薬に用いられる他の毒性のない適合物質が挙げられる。
【0067】
「薬学的に許容される塩」という用語は、これらの事例では、本発明の化合物の、比較的毒性のない無機および有機の塩基付加塩を指す。
【0068】
「薬学的に機能的な誘導体」という用語は、哺乳動物に投与する際に阻害剤を(直接または間接的に)提供する能力がある、例えばエステルまたはアミドなどの本発明の阻害剤の薬学的に許容される誘導体を指す。このような誘導体は、過度の実験なしに当業者に認識される。それでもなお、BurgerのMedicinal Chemistry and Drug Discovery、5th ed.、Vol 1の教示を参照する。
【0069】
本明細書では「生理学的条件」という用語は、温度、pH、イオン強度、粘度、および、生きている生命体に適合する、および/または、典型的には生きている哺乳動物の細胞における細胞内に存在する、同様の生化学的パラメータを指す。
【0070】
「プロドラッグ」という用語は、 本明細書では、生理学的条件下で治療的に活性な薬剤に変換される化合物を網羅する。プロドラッグを製造する一般的な方法は、生理学的条件下で加水分解されて所望の分子を露呈する、選択部分を含めることである。他の実施の形態では、プロドラッグは宿主動物の酵素活性によって転換される。
【0071】
「保存寿命」という用語は、典型的には、阻害剤の性能特性が最大である期間を指す。本明細書では「T90」という用語は、対象とする阻害剤の製剤が、開始サンプルの活性の90%になる時点、すなわち、10%縮減される時点まで分解するのにかかる時間を指す。同様に「T50」という用語は、対象とする阻害剤の製剤が、開始サンプルの活性の50%になる時点、すなわち、50%縮減される時点まで分解するのにかかる時間を指す。保存寿命は、阻害剤の所定の医薬製剤についてT90またはT50のいずれかで報告され、ヘルスケア提供者または患者が使用するように包装された製剤について測定される。
【0072】
本明細書では「実質的に溶解性」という用語は、吸入推進(inhalant propeller)混合物に溶解でき、層に分離しない、または室温で最低でも24時間攪拌せずに放置した場合にも沈殿を形成しない、実質的に透明な溶液から濁った溶液までを形成する阻害剤を指す。
【0073】
「経皮パッチ」とは、口腔内に見られるような粘膜を含めた、皮膚または任意の適切な外表面を介して、患者に薬物を送達することができるシステムを意味する。このような送達システムは、一般に、可撓性バッキング、接着剤および薬物保持マトリクスを備え、バッキングは接着剤とマトリクスを保護し、接着剤は患者の皮膚上に全体を保持する。皮膚と接触する際に、薬物保持マトリクスは阻害剤を皮膚に送達し、次いで、薬物が皮膚を通じて患者の体内システムに入る。
【0074】
「四級化剤」という用語は、4つ未満の置換基を有する窒素原子を4つの置換基を有する正に帯電した窒素原子に転換する化合物を指す。「四級化剤」の例としては、塩化、臭化、およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどのハロゲン化低級アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル、および硫酸ジアミルなどの硫酸ジアルキル、塩化、臭化、およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物、臭化ベンジルおよび臭化フェネチルなどのハロゲン化アラルキル、および他のものなどが挙げられる。
【0075】
典型的な実施の形態
(i).典型的な化合物およびそれらの塩
ほとんどの事例においてさまざまな式を用い、以下に有用な化合物について説明する。いずれの事例においても、式における変数は、各個別の式について明確に定義される。1つの式についての変数の定義は、別の式で提供される定義を変化させるのに使用すべきではないが、1つの式について定義されていない変数は、他の同様の式についての定義との類推で解釈して差し支えない。
【0076】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式Iの化合物:
【化11】
【0077】
またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R1およびR2は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、または−C(=O)−C(R6)3を表し;
R3およびR4は、独立して、H、またはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒にボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
nは1〜4の整数であり;
R6は、H、アルキル、ハロ、またはアリールである。
【0078】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1はHまたは低級アルキルを表す。
【0079】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1はHを表す。
【0080】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHまたは低級アルキルを表す。
【0081】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表す。
【0082】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0083】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、メチル、エチル、またはプロピルを表す。
【0084】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3はメチルを表す。
【0085】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4はHまたは低級アルキルを表す。
【0086】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4はHを表す。
【0087】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5はHまたは低級アルキルを表す。
【0088】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5はHを表す。
【0089】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは1、2、または3である。
【0090】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは2である。
【0091】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここでY1はOHである。
【0092】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y2はOHである。
【0093】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1はOHであり;およびY2はOHである。
【0094】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1およびY2は、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表す。
【0095】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1はHであり;R2はHであり;R3はメチルであり;R4はHであり;R5はHであり;nは2であり;Y1はOHであり;Y2はOHである。
【0096】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式IIの化合物:
【化12】
【0097】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0098】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式IIIの化合物:
【化13】
【0099】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0100】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、約10nm以下、約1.0nm以下、約0.1nm以下、または約0.01nm以下のDPIV阻害についてのKiを有するDPIV阻害剤である。実際、ピコモルおよびフェムトモル範囲のKi値を有する阻害剤も意図されている。
【0101】
対象とする化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、毒性のない有機または無機酸から得られる、化合物の従来の毒性のない塩または第4級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の毒性のない塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から得られるもの;および、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製される塩が挙げられる。
【0102】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法による塩基または酸部分を含む、対象とする化合物から合成することができる。一般に、塩は、適切な溶媒において、遊離の塩基または酸を、所望の塩を形成する、化学量論量または過剰の無機または有機の酸または塩基と反応させることによって調製される。対象とする化合物の薬学的に許容される酸塩は、本発明の化合物の酸を、適量の、水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムまたはマグネシウム)などの塩基または、アミン、ピペリジン、ピロリジン、ベンジルアミンなどの有機塩基、または水酸化テトラメチルアンモニウムなどの第4級水酸化アンモニウムで処理するなどの従来の手法によって容易に調製される。
【0103】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式IVの化合物:
【化14】
【0104】
またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R'は、H、あるいは、非置換であるか、またはヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、アミン、アミド、チオ、C1−3アルキルチオ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはグアニジニウム基で置換されてもよい低級アルキルを表し;
R"は、Hまたは低級アルキルであり;
R1aは、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、−C(=O)−C(R6)3 、C末端に結合したアミノ酸またはペプチドまたはそれらの類似体、またはアミノ保護基を表し;
R2bは、Hまたは低級アルキルを表すか、またはR’aと一緒に5、6または7員環を形成し;
R3aは低級アルキルを表し;
R6は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、ハロ、またはアリールであり;
Y1およびY2は、独立して、−OH、−OR5、または−OHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に通常の生理学的条件下でボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成する。
【0105】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3aはメチルである。
【0106】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1およびY2は−OHである。
【0107】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1aは、H、またはアミノ保護基、およびR2bはHを表す。
【0108】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R”はHを表す。
【0109】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、化合物は、100nm以下のKiを有するポストプロリン切断酵素を阻害する。
【0110】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、ポストプロリン切断酵素は、ペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である。
【0111】
ある特定の実施の形態では、式IVの化合物は、下記:
【化15】
【0112】
からなる群より選択される。
【0113】
本発明の別の実施の形態は、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害するための医薬品の製造における、前述の化合物のいずれか1つの使用に関する。
【0114】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つの使用に関し、ここで、ポストプロリン切断酵素はジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である。
【0115】
ある特定の実施の形態では、本発明は、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療のための前述の化合物のいずれか1つの使用に関する。
【0116】
ある特定の実施の形態では、本発明は、腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方のための前述の化合物のいずれか1つの使用に関する。
【0117】
本発明のさらに別の実施の形態は、前述の化合物のいずれか1つ、またはそれらの医薬製剤を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法を含む。
【0118】
本発明の別の実施の形態は、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性の阻害に使用するための前述の化合物のいずれかを含む。ある特定の実施の形態では、ポストプロリン切断酵素はジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である。
【0119】
本発明のさらに別の実施の形態は、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療に使用するための前述の化合物のいずれかを含む。
【0120】
本発明の別の実施の形態は、腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方に使用するための前述の化合物のいずれかを含む。
【0121】
(ii).典型的なプロドラッグ形態
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つのプロドラッグ形態に関する。ある特定の実施の形態では、前述の化合物のいずれか1つはプロドラッグである。これらの「プロソフト」阻害剤は、活性化して、活性阻害剤部分を標的プロテアーゼの近くに放出する不活性薬剤である。
【0122】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式V:
【化16】
【0123】
のプロドラッグ化合物に関し、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
R2は、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R8)3、または−C(=O)−C(R8)3を表し;
R3およびR4は、独立して、Hまたはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に、ボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
Lは存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
R8は、H、アルキル、ハロ、またはアリールを表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
nは、1〜4の整数である。
【0124】
ある特定の実施の形態では、本発明は式VI:
【化17】
【0125】
のプロドラッグ化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す。
【0126】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式VII:
【化18】
【0127】
のプロドラッグ化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す。
【0128】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0129】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表す。
【0130】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0131】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、メチル、エチル、またはプロピルを表す。
【0132】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3はメチルを表す。
【0133】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0134】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4はHを表す。
【0135】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0136】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5はHを表す。
【0137】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは1、2、または3である。
【0138】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは2である。
【0139】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1はOHである。
【0140】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y2はOHである。
【0141】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1はOHであり;Y2はOHである。
【0142】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1およびY2は、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表す。
【0143】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Lは存在しない。
【0144】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Xは存在しない。
【0145】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Yは存在しない。
【0146】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖である。
【0147】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;およびプロリンは、Lに直接結合したアミノ酸残基である。
【0148】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖である。
【0149】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;およびプロリンは、Lに直接結合したアミノ酸残基である。
【0150】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lは存在せず;Xは存在せず;Yは存在せず;およびプロリンは、Nに直接結合したアミノ酸残基である。
【0151】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表し;R3はメチルを表し;R4はHを表し;R5はHを表し;nは2であり;Y1はOHであり;Y2はOHであり;Lは存在せず;Xは存在せず;Yは存在せず;およびR1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖である。
【0152】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表し;R3はメチルを表し;R4はHを表し;R5はHを表し;nは2であり;Y1はOHであり;Y2はOHであり;Lは存在せず;Xは存在せず;Yは存在せず;R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;およびプロリンは、Nに直接結合したアミノ酸残基である。
【0153】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的および活性化プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。
【0154】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、ポストプロリル開裂プロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、DPP IV、DPP II、プロリル オリゴペプチダーゼ(PO)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、およびプロリルカルボキシペプチダーゼからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、ポストプロリル開裂プロテアーゼは、エンドペプチダーゼであり、Aはブロックされたアミノ末端を含む。
【0155】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、トロンビン(第X因子)、マトリプターゼ、ファルシパイン、前立腺特異抗原(PSA)、およびそれらの相同プロテアーゼからなる群より選択される。
【0156】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、阻害剤は、線維芽細胞活性化タンパク質によって活性化されて、前立腺特異抗原(PSA)を阻害する化合物を放出する。
【0157】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、阻害剤は、PSAによって活性化されて、プロテアソーム活性を阻害する化合物を放出する。
【0158】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼは、ポストプロリル開裂プロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼは、DPP IV、DPP II、プロリルオリゴペプチダーゼ(PO)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、およびプロリルカルボキシペプチダーゼからなる群より選択される。
【0159】
本発明のプロソフト阻害剤分子を典型的なプロドラッグと区別する特徴の1つは、本発明のある特定の実施の形態において、標的の近くに活性型で発生した阻害剤部分が、例えば、標的酵素から拡散するにつれて経時による不活化を被り、それによって、患者の他の部位で生じる酵素の阻害に起因するであろう有害な副作用の可能性を低減することである。標的酵素の近くにおける活性型の放出と、この「プログラム化された」失活機構との組合せにより、本発明の分子は、阻害剤部分のみを使用する場合よりも特異的、効果的、および安全になる(すなわち、副作用が少なくなる)。
【0160】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤の治療指数は、阻害剤部分単独の治療指数より少なくとも約2倍大きく、少なくとも約5倍大きく、少なくとも約10倍大きく、少なくとも約50倍大きく、または少なくとも約100倍大きい。
【0161】
対象とするプロソフト阻害剤の多くにおいて、阻害剤部分自体の別の改善が、溶液、油または固体の製剤など、医薬製剤における安定性を増大させる。このような安定性は、保存寿命の観点から表すことができる。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、少なくとも約7日間、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、または少なくとも約200日間のT90を有する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、少なくとも約200日間、または少なくとも約400日間のT50を有する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、固体の単回経口投与製剤として、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、または少なくとも約200日間のT90を有する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、液体の単回投与懸濁液として、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、または少なくとも約200日間のT90を有する。
【0162】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は1つ以上の不斉中心を含む。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、プロソフト阻害剤のうち少なくとも約75モル%〜約99.999モル%のユートマー(ディストマーに対して)として提供される。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99モル%から、約99.999モル%までのユートマーとして提供される。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、アミノ酸またはアミノ酸類似体のL−エナンチオマー(Cα炭素に関して)を有するユートマーである。
【0163】
一般に、対象とするプロソフト阻害剤は、阻害剤部分の標的酵素として、同一酵素によって活性化されるか、または異なる酵素によって活性化されるかに基づいて、2種類のはっきりと区別できるタイプに分けることができる。最初のタイプは、1型または標的活性化スマートプロテアーゼ阻害剤(TASPI)と称され、2つめは、2型または標的指向性スマートプロテアーゼ阻害剤(TDSPI)と称される。プロソフト阻害剤の両方の実施の形態は、標的化酵素への活性成分の特異的送達を提供し、かつ、阻害剤部分が標的酵素から離れて拡散する際に阻害剤活性の弱化をもたらす。
【0164】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIは、標的化酵素の、組織または細胞特異的阻害についてのさらなる可能性を提供する。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIは、1つの所定の細胞または組織型における所定の酵素を阻害するが、別のものは阻害しない可能性を提供する。例えば、身体の各細胞は、プロテアソームプロテアーゼ複合体を含む。プロテアソーム機能の阻害は、多くの実用的な治療および予防用途を有する。しかしながら、細胞型または組織型を選択する方法で、プロテアソーム活性の阻害をもたらすことは困難である。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIは、対象とする標的細胞または組織においてまたは隣接して発現するプロテアーゼに対するアドレス部分を有するプロソフト阻害剤を使用することにより、選択的方法でプロテアソーム阻害剤部分を送達するように構成することができる。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIはFAPまたは前立腺特異抗原(PSA)によって活性化することができ、生じる阻害剤部分Gはプロテアソームの阻害剤である。
【0165】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、アドレス部分は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼからなる群より選択される活性化プロテアーゼの基質である。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、阻害剤部分は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼからなる群より選択される標的プロテアーゼのジペプチジル阻害剤である。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。
【0166】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、標的とともに作用し、限定はしないが、ジペプチジルペプチダーゼ−11(DPP−XI)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)、ジペプチジルペプチダーゼ (DPP VIII)、ジペプチジルペプチダーゼ9(DPP IX)、アミノペプチダーゼP、線維芽細胞活性化タンパク質α(セプラーゼ)、プロリル トリペプチジルペプチダーゼ、プロリルオリゴペプチダーゼ(エンドプロテイナーゼPro−C)、アトラクチン(溶解性 ジペプチジル−アミノペプチダーゼ)、アシルアミノアシル−ペプチダーゼ(N−アシルペプチドヒドロラーゼ;fMetアミノペプチダーゼ)およびリソソームプロ−Xカルボキシペプチダーゼ(アンギオテンシナーゼC、プロリルカルボキシペプチダーゼ)を含めたセリンプロテアーゼを活性化するように設計することができる。
【0167】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、標的とともに作用し、限定はしないが、膜Pro−Xカルボキシペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼP)、アンジオテンシン変換酵素(ペプチジル−ジぺプチダーゼA多重ペプチダーゼ)、コラゲナーゼI(間質性コラゲナーゼ;マトリクス メタロプロテイナーゼ1;MMP−1;Mcol−A)、ADAM10(α−セクレターゼ、ミエリン関連ジスインテグリンメタロプロテイナーゼ)、ネプリリシン(アトリオペプチダーゼ;CALLA;CD10;エンドペプチダーゼ24.1 1;エンケファリナーゼ)、マクロファージエラスターゼ(メタロエラスターゼ;マトリクス メタロプロテイナーゼ12;MMP−12)、マトリリシン(マトリクス メタロプロテイナーゼ7;MMP−7)、およびニューロリシン(エンドペプチダーゼ24.16;ミクロソームエンドペプチダーゼ;ミトコンドリアオリゴペプチダーゼ)を含めたメタロプロテアーゼを活性化するように設計することができる。
【0168】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、ポストプロリル開裂プロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、DPP IV、DPP II、プロリル オリゴペプチダーゼ(PO)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、およびプロリルカルボキシペプチダーゼからなる群より選択される。
【0169】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は1種類のプロテアーゼによって活性化され、異なるプロテアーゼを阻害する。
【0170】
オレフィン、ホスホネート、アザアミノ酸類似体などのペプチド模倣薬も含まれる。
【0171】
上述の化合物の予定される等価物には、それらの化合物に対応し、予定される方法での使用における化合物の有効性に悪影響を与えない、置換基の1つ以上の単純な変化がなされた、同一の一般的性質(例えば、GLP−1または他のペプチド・ホルモンまたはそれらの前駆体のタンパク質分解を阻害する能力)を有する化合物が含まれる。一般に、本発明の化合物は、例えば、容易に入手可能な出発材料、試薬および従来の合成手順を使用して、下記の一般的な反応スキームに示される方法、またはそれらの修正方法によって調製されうる。これらの反応において、それ自体は知られているが本明細書では言及されていない、変形を活用することも可能である。
【0172】
(iii).GLP−1の作動性効果
本方法に有用な化合物は、ある特定の実施の形態では、血糖値を低下し、肥満を軽減し、耐糖能障害を軽減し、肝臓のグルコース新生を阻害し、血中脂質濃度を低下し、アルド−ス・レダクターゼを阻害する能力を有する。したがって、それらは、高血糖症、肥満、高脂血症、糖尿病性合併症(網膜症、腎症、神経障害、白内障、冠動脈疾患および動脈硬化症を含む)の予防および/または治療、さらには、肥満に関係する高血圧症および骨粗しょう症の予防および/または治療に有用である。
【0173】
真性糖尿病は、インスリン分泌の相対的または絶対的低下、インスリン感受性の低下、またはインスリン耐性から生じる、高血糖症を特徴とする疾患である。この疾患の罹患率および死亡率は、脈管、腎臓、および神経学的合併症に起因する。経口的ブドウ糖負荷試験は、糖尿病の診断に用いられる臨床試験である。経口的ブドウ糖負荷試験では、グルコースの負荷またはチャレンジに対する患者の生理学的反応を評価する。グルコース摂取後に、グルコースチャレンジに対する患者の生理学的反応を評価する。一般に、これは、幾つかの所定の時点の患者の血糖値(患者の血漿、血清、または全血におけるグルコース濃度)を判定することによって達成される。
【0174】
1つの実施の形態では、本発明は、GLP−1の作用を作動させる方法を提供する。腸および後脳におけるグルカゴン前駆体から誘導されるGLP−1(GLP−1(7−37)およびGLP−1(7−36))のイソ型は、インスリン向性(インスリン分泌性)活性を有する、すなわち、それらがグルコース代謝を調節することが判明した。DPIVはイソ型を切断してペプチドを不活化する。よって、ある特定の実施の形態では、本発明の化合物は、生物活性のGLP−1ペプチドの分解を妨げることによって、インスリン向性(インスリン分泌性)活性を作動させることができる。
【0175】
ある特定の実施の形態では、方法は、肥満に関する異常な指数を改善するのに有効な量で、DPIV阻害剤を投与することを包含する。脂肪細胞はホルモン・レプチンを放出し、これが血流内を移動してレプチン受容体を通じて脳に達し、GLP−1の産生を促す。次に、GLP−1は、膨満感を生じさせる。有力な理論は、大抵の肥満の人々の脂肪細胞は、恐らくは十分なレプチンを産生しているが、レプチンが脳内のレプチン受容体と適切に連結することができず、したがって、GLP−1の産生を促さないというものである。したがって、GLP−1製剤を食欲抑制剤として活用することを対象とする多くの研究が存在する。本方法は、肥満に関係する障害の治療における、内因性GLP−1および異所的に添加したGLP−1の両方の半減期を増大する手段を提供する。
【0176】
(iv).他のペプチド・ホルモンの作動性効果
別の実施の形態では、対象とする薬物は、例えば、GLP−2、GIPおよびNPYなどのペプチド・ホルモンの活性を作動させる(例えば、模倣または強化する)のに使用することができる。
【0177】
ある特定の実施の形態では、本発明は、DPIVまたは一部の他のタンパク質分解活性による1つ以上のペプチド・ホルモンのタンパク質分解を阻害することによって、種々の異なるポリペプチド・ホルモンの薬物動態を修正する方法および組成物を提供する。分泌後代謝は、調節ペプチドの全般的な恒常性における重要な要素であり、これらのプロセスに関与する他の酵素は、本方法による薬理学的介入に適した標的でありうる。
【0178】
ある特定の実施の形態では、本方法は、グリセンチン(PG1−69に対応)、オキシントモジュリン(PG33−69)、グリセンチン関連膵臓ポリペプチド(GRPP、PG1―30)、干渉ペプチド−2(IP−2、PG111−122アミド)、およびグルカゴン様ペプチド−2(LPD−2、PG126−158)などの他のプログルカゴン由来のペプチドの半減期を増大させるのに使用することができる。例えば、グリセンチンは、腸粘膜の増殖を起こすことが実証され、胃の蠕動を抑制し、よって、消化管の疾病の治療薬として有用であることが解明され、本発明に至った。
【0179】
さらに例証するため、本発明は、GLP−2の作用を作動させる方法を提供する。GLP−2が胃腸組織の増殖を促進するための向性剤(trophic agent)として作用することが判明した。GLP−2の効果は、特に、小腸の成長を増大することを特徴とし、したがって、本明細書では「腸向性(intestinotrophic)」効果と称される。DPIVは、GLP−2を生物学的に不活性なペプチドへと切断することが知られている。よって、1つの実施の形態では、DPIVの阻害はGLP−2の分解を妨げ、それによって、そのホルモンの血漿半減期を増大させる。ある特定の実施の形態では、本発明は、例えば、クローン病または炎症性大腸炎(IBD)の治療などにおいて、腸粘膜の上皮の成長および修復促進が所望される、腸組織の損傷、炎症、または切除を治療する方法に関する。
【0180】
よって、1つの態様において、本発明は、胃腸組織、さらに具体的には小腸組織の成長および増殖を促進する化合物の、治療およびそれに関連する使用に関する。例えば、本方法は、例えば、腸粘膜の上皮の成長および修復促進が所望される、腸組織の損傷、炎症、または切除を治療するための計画の一環として使用することができる。
【0181】
一般に、小腸の質量増大、および、結果として生じる小腸の粘膜機能の増大のいずれかの利益を享受する患者は、目的とする方法による治療の対象者である。
【0182】
さらに一般的には、本発明は、消化管疾病を治療するための治療方法を提供する。本方法は、腸粘膜の増殖を促進することから、消化吸収における機能不全の病理学的状態の治療および予防、すなわち、粘膜の萎縮の治療および予防、または消化管組織の形成不全および外科的切除によるこれらの組織の低下の治療、ならびに消化吸収の改善に使用することができる。さらには、本方法は、腸炎、クローン病、および潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患に起因する病理学的粘膜状態の治療、および、術後の消化管機能の低下の治療にも使用することができる。さらには、グリセンチンは、手術侵襲の治癒促進ならびに消化管機能の改善に効果的に使用することができる。よって、本発明は、グリセンチンを活性成分として含む、消化管粘膜の委縮治療薬、消化管創傷治療薬および、消化管機能を促進する薬物も提供する。
【0183】
同様に、本発明の化合物は、セクレチン、VIP、PHI、PACAP、GIP、および/またはヘロデルミンの血漿半減期の修正に使用することができる。加えて、DPIVは、受容体選択性を修正する方法において、それらペプチドの処理に関与することから、本方法は、膵臓ポリペプチド類の一種である、ペプチドYYおよび神経ペプチドYの薬物動態の改変に使用することができる。
【0184】
神経ペプチドY(NPY)は、血管平滑筋の緊張の調節、ならびに血圧の調節に作用すると考えられる。NPYはまた、心筋収縮能を低下させる。NPYは、最も強力な、既知の食欲刺激剤でもある(Wilding et al., J. Endocrinology 1992, 132, 299-302)。中枢誘起性の食物摂取(食欲増進)効果は、大部分がNPY Y1受容体介在性であり、体脂肪の蓄積および肥満の増大を引き起こす(Stanley et al., Physiology and Behavior 1989, 46, 173-177)。
【0185】
本発明によれば、食欲不振の治療方法は、化合物を有効量で宿主対象に投与して食欲を刺激し、かつ、体脂肪の蓄積を増加させ、それによって食欲不振の症状を実質的に軽減することを包含する。
【0186】
ある特定の実施の形態では、本発明は、体脂肪または脂質の蓄積を制御する方法に関する。
【0187】
DPIVは、成長ホルモン放出因子(GHRF)の代謝および不活化にも関与している。GHRFは、グルカゴン、セクレチン、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、胃抑制ペプチド(GIP)、およびヘロデルミンを含めた、相同ペプチドの一種である(Kubiak et al. Peptide Res. 1994, 7, 153)。GHRFは、視床下部から分泌し、下垂体前葉からの成長ホルモン(GH)の放出を促す。よって、本方法は、ある特定の成長ホルモン分泌不全性の子供の臨床治療、および、成人の栄養改善および体組成(筋肉と脂肪)の修正のための臨床治療に使用することができる。本方法はまた、例えば、高収量の乳汁産生、および、高収量の引き締まった家畜を開発するため、獣医学診療に使用することもできる。
【0188】
(v).造血作動薬(Hematopoietic agonists)
さらに別の態様では、本発明は、培養またはインビボにおける造血細胞を刺激する方法を提供する。ある特定の実施の形態では、対象とするDPP IVプロ阻害剤は、骨髄に発現するプロテアーゼの基質であるアドレス部分を含む。
【0189】
本発明の1つの態様によれば、インビトロにおける造血細胞を刺激する方法が提供される。本方法は、(1)前記造血細胞を十分な量のDPP IVプロ阻害剤と接触させて、造血細胞の数および分化に対する、造血細胞の数および/またはこれら造血細胞の分化を増大させることを包含する。
【0190】
ある特定の実施の形態では、化合物は、例えば、腫瘍増殖および転移などに関する細胞増殖の阻害など、形質転換細胞/組織の成長または脈管化の阻害、および、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害に使用することができる。さらに他の実施の形態では、化合物は、例えば、免疫抑制剤として、免疫応答の低減に使用することができる。
【0191】
本発明の重要な態様の1つは、対象における造血細胞数の欠乏を復元または予防することを包含する。このような欠乏は、例えば、遺伝的異常、疾患、ストレス、化学療法(例えば、細胞毒性薬治療、ステロイド薬治療、免疫抑制薬治療など)、および放射線治療に起因して生じうる。
【0192】
よって、インターロイキン−1、2、3、4、5、6,7、9、10、11、12、13、および17は、リンパ球 分化に関与することが知られている。インターロイキン3および4は、マスト細胞の分化に関与する。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、インターロイキン−3およびインターロイキン−5は、好酸球の分化に関与する。GMCSF、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)およびIL−3は、マクロファージの分化に関与する。
【0193】
GMCSF、GCSFおよびIL−3は、好中球の分化に関与する。GMSCF、IL−3、IL−6、IL−11およびTPOは、血小板の分化に関与する。Flt3リガンドは樹枝状細胞の成長に関与する。GMCSF、IL−3、およびエリスロポエチンは、赤血球の分化に関与する。
【0194】
最後に、造血を持続することができる原始多能性前駆細胞の自己再生は、SCF、Flt3リガンド、G−CSF、IL−3、IL−6およびIL−11を必要とする。所望の結果を達成するためのさまざまな組合せは、当業者にとって明らかであろう。
【0195】
(vi).併用投与
本発明の別の態様は、1つ以上の他の治療薬を本化合物とともに投与する、併用療法を提供する。このような併用治療は、治療の個々の成分の同時、逐次、または分離投与によって達成されうる。
【0196】
多くの医薬品または治療薬は、当技術分野で認識されており、本発明の医薬組成物における使用に従順である。「医薬品」という用語には、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒または軽減に使用する物質;または身体の構造または機能に影響を与える物質;または、生物学的に活性になる、または所定の生理環境に置かれた後により活性になるプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
1つの実施の形態では、化合物は、GLP−1などのインスリンまたは他のインスリン分泌促進薬、GLP−2、GIP、またはNPYなどのペプチド・ホルモン、または前記薬剤およびペプチド・ホルモンの異所性発現を引き起こす遺伝子治療ベクターと併せて投与される。ある特定の実施の形態では、前記薬剤またはペプチド・ホルモンは、1つ以上のアミノ酸が加えられた、削除された、または置換された、天然または合成のペプチド・ホルモンの変異形であって差し支えない。
【0198】
別の例となる実施の形態では、化合物はM1受容体拮抗薬と併せて投与することができる。コリン作動薬は、ムスカリン性受容体を介して作用するインスリン放出の強力なモジュレータである。さらには、このような薬剤の使用は、HDL濃度の上昇とともに、コレステロール濃度低下の付加利益を有しうる。適切なムスカリン性受容体拮抗薬には、ムスカリン性のコリン作動性受容体の活性化を直接または間接的にブロックする物質が含まれる。好ましくは、これらの物質はM1受容体選択性である(またはこのような選択性を促進する量で用いられる)。非限定的な例としては、第4級アミン(メタンテリン、イプラトロピウム、およびプロパンテリンなど)、第3級アミン(例えば、ジサイクロミンおよびスコポラミンなど)、および三環式のアミン(例えば、テレンゼピン)が挙げられる。ピレンゼピンおよびメチルスコポラミンが好ましい。他の適切なムスカリン性受容体拮抗薬としては、ベンズトロピン(Merck社からCOGENTINとして市販される)、ヘキサヒドロシラジフェニドール・塩酸塩(Lambrecht et al, Trends in Pharmacol. Sci. 1989, 10 (Suppl), 60に開示されるHHSID塩酸塩;(+/-)−3−キヌクリジニルキサンテン−9−カルボキシレートヘミオキサレート(QNX−ヘミオキサレート;Birdsall et al., Trends in Pharmacol. Sci. 1983, 4, 459;テレンゼピンジヒドロクロリド(Coruzzi et al. Arch. Int. Pharmacodyn. Ther. 1989, 302, 232;およびKawashima et al. Gen. Pharmacol. 1990, 21, 17)、およびアトロピンが挙げられる。これらのムスカリン性受容体拮抗薬の用量は、一般に、上記概略のように最適化に供される。脂質代謝障害の場合には、用量最適化は、脂質代謝反応性の手段を参照することによって投与タイミングを合わせるか否かとは無関係である必要があろう。
【0199】
インスリンおよび脂質代謝の制御および前述の障害の低減に関して、本化合物はまた、d2ド−パミン作動薬(例えば、ブロモクリプチン)などのプロラクチン阻害剤と相乗的に作用しうる。したがって、本方法には、プロラクチン阻害麦角アルカロイドおよびプロラクチン阻害ド−パミン作動薬などのプロラクチン阻害剤の併用投与を含めることができる。適切な化合物の例として、2−ブロモ−α−エルゴクリプチン、6−メチル−8−β−カルボベンジルオキシアミノエチル−10−α−エルゴリン、8−アシルアミノエルゴリン、6−メチル−8−α−(N−アシル)アミノ−9−エルゴリン、6−メチル−8−α−(N−フェニルアセチル)アミノ−9−エルゴリン、エルゴコルニン、9,10−ジヒドロエルゴコルニン、D−2−ハロ−6−アルキル−8−置換エルゴリン、D−2−ブロモ−6−メチル−8−シアノメチルエルゴリン、カルビドパ、ベンセラジド、および他のドパ脱炭酸酵素阻害剤、L−ド−パ、ド−パミン、およびそれらの非毒性の塩が挙げられる。
【0200】
本発明に従って用いられる化合物は、グリベンクラミド、グリピジド、グリクラジド、およびAG−EE 623 ZWなどのβ−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬剤と併用することもできる。化合物はまた、メトホルミンおよび関連化合物などの他の経口剤または、例えばアカルボースなどのグルコシダーゼ阻害剤と組み合わせて、有利に適用してもよい。
【0201】
(vii).医薬組成物
ある特定の実施の形態では、本発明は、
薬学的に許容される担体;および
前述の化合物のいずれかまたはそれらの薬学的に許容される塩
を含む医薬組成物に関する。
【0202】
本発明の化合物を単独で投与することが可能であるが、ある特定の事例では、化合物を薬剤製剤(組成物)として投与することが好ましい。プロテアーゼ阻害剤、およびプロドラッグ自体の形態は、本発明によれば、ヒトまたは獣医学的医薬に使用するのに便利な任意の方法で投与するために製剤化されて差し支えない。ある特定の実施の形態では、医薬製剤に含まれる化合物は、それ自体が活性でありうるか、または、例えば、生理的な条件において活性化合物へと転換する能力がある、プロドラッグでありうる。
【0203】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを含む医薬組成物に関する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の組成物のいずれか1つに関し、ここで、組成物は、経口、経頬、非経口、経皮、吸入、鼻腔内、経粘膜、埋め込み、または直腸投与用に製剤化される。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の組成物のいずれか1つに関し、ここで、対象とする阻害剤は経口で利用可能であり、ヒト患者に経口投与するのに適した固体の投与組成物として提供することができる。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の組成物のいずれか1つに関し、ここで、対象とする阻害剤は経皮的に活性であり、局所クリーム製剤または懸濁液または経皮パッチの形態で提供することができる。
【0204】
本明細書に記載するように調製された化合物は、当技術分野で周知のように、患者の治療すべき障害および年齢、状態、および体重に応じて、さまざまな形態で投与することができる。例えば、化合物が経口的に投与される場合、それらは、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、またはシロップ剤として製剤化されて差し支えなく;または非経口投与では、それらは注入剤(静脈内、筋肉内、または皮下)、点滴製剤、または坐剤として製剤化されうる。眼の粘膜経路による用途では、それらは点眼剤または眼軟膏剤として製剤化されうる。これらの製剤は従来の手段で調製することができ、必要に応じて、活性成分は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、矯味薬、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、またはコーティング剤など、従来の添加剤と混合して構わない。用量は、患者の症状、年齢および体重、治療または予防する障害の性質および重症度、薬物の投与経路および剤形に応じて変動しうるが、一般に、成人のヒト患者には、0.01〜2000mgの化合物の1日投与量が推奨され、これは、単回投与または分割投与で投与されて差し支えない。
【0205】
所定の患者の治療の有効性の観点から最も有効な結果をもたらす化合物の正確な投与時間および/または量は、特定の化合物の活性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティ、患者の生理学的条件(年齢、性別、疾病の種類および段階、全身的な身体状態、所定の用量に対する反応性、および薬剤の種類を含む)、投与経路などに応じて決まる。しかしながら、上記指針は、例えば、被験体をモニタリングし、用量および/またはタイミングを調整することから構成される日常的な実験しか必要としない、最適な投与時間および/または量の決定など、治療の微調整のための基準として使用することができる。
【0206】
湿潤剤、乳化剤、および、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料、および香料、保存料および抗酸化物質もまた、組成物中に存在していてもよい。
【0207】
薬学的に許容される抗酸化物質の例としては:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性の抗酸化物質;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性の抗酸化物質;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0208】
本発明の方法に有用な製剤としては、経口、経鼻、局所(経頬および舌下を含む)、直腸、膣内、噴霧、および/または非経口投与に適したものが挙げられる。製剤は、便利に、単位投与形態で存在していてもよく、調剤学の分野で周知の任意の方法で調製してもよい。担体材料と組み合わせて単回投与形態を生じることができる活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与方法に応じて変動する。担体材料と組み合わせて単回投与形態を生じることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物の量である。一般に、100%のうち、この量は、活性成分の約1%〜約99%の範囲であり、好ましくは約5%〜約70%、さらに好ましくは約10%〜約30%の範囲である。
【0209】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、化合物を、担体および、随意的に1つ以上の副成分と合わせる工程を有してなる。一般に、製剤は、リガンドを、液体担体、または微粉化した固体担体、またはその両方と均一および緊密に混練し、次に、必要に応じて、製品を成形することによって調製される。
【0210】
経口投与に適した製剤は、それぞれ所定の量の化合物を活性成分として含む、カプセル、カシェ剤 、丸薬、錠剤、トローチ剤(香味付けした基剤、通常はショ糖およびアカシアまたはトラガカントを使用)、粉末、顆粒、または水溶性または非水溶性の液体における溶液または懸濁液、または水中油型または油中水型の液体エマルション、またはエリキシル剤またはシロップ、または芳香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアなどの不活性の基剤を使用)、および/または口内洗浄液などの形態であって差し支えないく。化合物はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与してもよい。
【0211】
経口投与のための固体投与形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末、顆粒など)では、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなどの1種類以上の薬学的に許容される担体、および/または次のうちのいずれかと混合される:(1)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶液遅延剤;(6)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、アセチル アルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの滑剤および(10)着色剤。カプセル、錠剤、および丸薬の場合には、医薬組成物は緩衝剤も含みうる。同様の種類の固体組成物もまた、乳糖または乳糖類(milk sugars)、ならびに高分子量の ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用されてもよい。
【0212】
錠剤は、随意的に1つ以上の副成分とともに、圧縮または成形によって作られて差し支えない。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を使用して調製されうる。すりこみ錠は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化したペプチドまたはペプチド模倣薬の混合物を、適切な機械で成形することによって製造されうる。
【0213】
錠剤、および、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒などの他の固体投与形態は、随意的に、分割して、または、腸溶コーティングおよび製薬の技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製してもよい。それらは、所望の放出特性、他のポリマーマトリクス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを提供するために、例えば、種々の割合で混合したヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを使用して、その中の活性成分の持続放出または制御放出を提供するように、製剤化されてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通じたろ過によって、または、使用直前に、滅菌水、または一部の他の滅菌注入可能な溶剤に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を導入することによって、滅菌されうる。これらの組成物はまた、随意的に乳白剤を含んでもよく、随意的に遅延方式で、胃腸管のある特定の部位に、活性成分のみを、または、選択的に放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性成分はまた、適切な場合には、上述の賦形剤の1種類以上とともに、マイクロカプセルの形態であってもよい。
【0214】
経口投与のための液体投与形態としては、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体の投与形態には、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などの乳化剤など、当技術分野で一般に用いられる不活性希釈剤が含まれうる。
【0215】
不活性希釈剤のほかに、経口組成物には、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、着色料、香料、および保存剤などの助剤を含めることもできる。
【0216】
懸濁液には、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタン・エステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天−寒天およびトラガカント、およびそれらの混合物などの懸濁剤を含めてもよい。
【0217】
直腸または膣内投与のための製剤は、坐剤として存在して差し支えなく、これは、1つ以上の化合物を、室温では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸または膣内で溶解して活性薬剤を放出する、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩などを含む、1種類以上の適切な刺激性のない賦形剤または担体と混合することによって調製されうる。
【0218】
膣内投与に適した製剤には、当技術分野で適切であると知られるこれらの担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、泡状、または噴霧製剤も含まれる。
【0219】
化合物の局所または経皮投与のための投与形態としては、粉末、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、溶液、パッチ、および吸入剤が挙げられる。活性成分は、薬学的に許容される担体、および、必要とされうる任意の保存料、緩衝剤、または推進剤と、滅菌条件下で混合して差し支えない。
【0220】
軟膏、ペースト、クリーム、およびジェルには、化合物に加えて、動物および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース 誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含めることができる。
【0221】
粉末および噴霧剤には、化合物に加えて、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含めることができる。加えて、噴霧剤には、クロロフルオロ炭化水素などの通常の推進剤および、ブタンおよびプロパンなどの揮発性の非置換の炭化水素を含めることができる。
【0222】
化合物は、あるいは、噴霧投与することもできる。これは、化合物を含む水性の噴霧剤、リポソーム製剤、または固体粒子を調整することによって達成される。非水溶性の(例えばフッ化炭素推進剤などの)懸濁液を使用することもできよう。超音波ネブライザは、化合物の崩壊を生じうる、薬剤のせん断への曝露を最小限に抑えることから、好ましい。
【0223】
通常、水性の噴霧剤は、薬剤の水性の溶液または懸濁液を従来の薬学的に許容される担体および安定剤と一緒に製剤化することによって作られる。担体および安定剤は、特定の化合物の要件に応じて変動するが、典型的には、非イオン性の界面活性剤(Tweens、Pluronics、またはポリエチレングリコール)、無毒のタンパク様血清アルブミン、ソルビタン・エステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩、糖類、または糖アルコールなどが含まれる。噴霧剤は、一般に、等張液から調製される。
【0224】
本発明に従った吸入または噴霧製剤で投与されうる医薬品は、選択された推進系に溶解性または実質的に溶解性の形態で存在しうる、吸入療法に有用なプロテアーゼ阻害剤プロドラッグを含む。
【0225】
微粒子医薬品の粒径は、噴霧製剤の投与の際に、実質的にすべての医薬品の肺への吸入が可能でなければならず、20μm未満が望ましく、好ましくは1〜10μmの範囲であり、例えば、1〜5μmである。医薬品の粒径は、例えばミル粉砕または微粒子化などの従来の手段によって縮小して差し支えない。
【0226】
医薬品の投与は、軽症、中程度、または重症の急性または慢性の症状の治療、または予防的治療に適用されうる。正確な投与用量は、患者の年齢および状態、使用する特定の微粒子医薬品および投与頻度に応じて決まり、最終的には主治医の裁量であることが認識されよう。医薬品の組合せが用いられる場合、組合せの各成分の用量は、一般に、単独で使用する場合に各成分について用いられる用量である。典型的には、投与は、例えば、1日あたり1〜8回など、1回以上であって差し支えなく、毎回、例えば1、2、3または4回の吸入(puffs)が与えられる。投与は1日1回であることが好ましい。
【0227】
投与では、薬物は、ゼラチン、プラスチックまたは他のカプセル、カートリッジまたはブリスター・パックを使用して、ネブライザから、加圧式定量噴霧吸入器から、または乾燥粉末吸入器(例えば、TURBUHALER(登録商標)として販売)から乾燥粉末として、または、乾燥粉末吸入器から、適切に吸入される。
【0228】
希釈剤または担体は、一般に、毒性がなく、医薬品に対して化学的に不活性であり;例えば、乳糖、デキストラン、マンニトール、ブドウ糖または医薬品に所望の味を与える任意の添加剤を、粉末化した医薬品に加えることができる。
【0229】
微粉化混合物は、絞り弁で封止され、プラスチックの作動装置に組み込まれた容器に入れた液体推進剤混合物に懸濁または溶解させてもよい。使用する推進剤は、さまざまな化学式のハロカーボンでありうる。最も頻繁に用いられるハロカーボン推進剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、テトラフルオロエタン、および1,1−ジフルオロエタンである。低濃度の、ソルビタントリオレエート、レシチン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、またはオレイン酸などの界面活性剤もまた、物理的安定性の改善のために使用して差し支えない。
【0230】
経皮パッチは、身体への化合物の制御送達の提供という追加の利点を有する。このような投与形態は、薬剤を適切な溶剤に溶解または分散させることによって製造することができる。吸収促進薬もまた、皮膚上の化合物のフラックスの増大に使用することができる。このようなフラックスの速度は、速度制御膜の提供またはポリマーマトリクスまたはゲルへのペプチド模倣薬の分散によって制御することができる。
【0231】
眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末、溶液なども、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0232】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は1つ以上の化合物を、1種類以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液またはエマルション、または使用直前に滅菌注入可能な溶液または分散液へと再構成されうる滅菌粉末と組み合わせて含み、これは、抗酸化物質、緩衝剤、静菌薬、製剤を対象とする受益者の血液と等張にする溶質、または懸濁または増粘剤を含みうる。
【0233】
本発明の医薬組成物に用いられうる適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とする粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0234】
これらの組成物には、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの助剤を含めてもよい。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール ソルビン酸などのさまざまな抗菌剤および抗真菌剤を包含させることによって確実にしてもよい。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることも望ましいであろう。加えて、注入可能な剤形の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらされうる。
【0235】
一部の事例では、薬物の効果を引き延ばすために、皮下または筋肉内注入による薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶性の乏しい結晶質または非晶質の材料の懸濁液の使用によって達成されうる。薬物の吸収率はその溶解率に応じて決まり、これは、すなわち、結晶の大きさおよび結晶形状に応じて決まりうる。あるいは、非経口的に投与される薬物形態の遅延吸収は、油媒体に薬物を溶解または懸濁することによって達成される。
【0236】
注入可能なデポ製剤は、ポリ乳酸−ポリグリコール酸などの生分解性ポリマーに化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって製造される。薬物のポリマーに対する比、および、使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度は制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。注入可能なデポ製剤はまた、薬物を、体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルションに封入することによって調製される。
【0237】
本発明の化合物がヒトおよび動物に対する薬剤として投与される場合、それ自体を与えるか、または、薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば、0.1〜99.5%(さらに好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を含む医薬組成物として、投与することもできる。
【0238】
薬剤の製剤は、経口的に、非経口的に、局所的に、または直腸的に投与して差し支えない。それらは、当然ながら、各投与経路に適した形態で与えられる。例えば、それらは、錠剤またはカプセルの形態で、注入、吸入、目薬、軟膏、坐剤、点滴によって;ローションまたは軟膏によって局所的に;および坐剤によって直腸投与される。経口投与が好ましい。
【0239】
「非経口投与」および「非経口的に投与された」という語句は、本明細書では、経腸投与および局所性投与以外の、通常は注入による、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内への注入および導入を含むがこれに限定されるものではない、投与方法を意味する。
【0240】
「全身投与」、「全身的に投与した」、「末梢投与」および「末梢的に投与した」という語句は、本明細書では、患者の体内システムに入り、代謝および他の同様のプロセスにさらされるように、リガンド、薬物、または他の材料の、中枢神経系に直接投与する以外の、例えば、皮下投与などの投与を意味する。
【0241】
これらの化合物は、経頬的におよび舌下を含めた、例えば、噴霧などによって経口的、経鼻的に、粉末、軟膏または点滴剤によって直腸、膣内、非経口、大槽内、および局所的に、任意の適切な投与経路によって、治療のためにヒトおよび他の動物に投与されうる。
【0242】
動物飼料への本発明の活性化合物の添加は、活性化合物を有効量で含む適切な飼料予混合物を調製し、前記予混合物を全飼料配合物に取り込むことによって達成されることが好ましい。
【0243】
あるいは、活性成分を含む中間濃縮物または飼料補助剤を、飼料に混合することもできる。これらの飼料予混合物および全飼料配合物を調製および投与する方法は、参考文献(例えばApplied Animal Nutrition;San Francisco:Freedman, 1969;またはLivestock FeedsおよびFeeding;Corvallis:O & B Books, 1977)に記載されている。
【0244】
選択される投与経路にかかわらず、本発明の、適切な水和した形態で使用されうる化合物および/または医薬組成物は、当業者に知られた従来の方法によって、薬学的に許容される投与形態に製剤化される。
【0245】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性を有さずに、特定の患者の所望の治療反応、組成、および投与方法を達成するのに有効な活性成分の量をもたらすように変動しうる。
【0246】
(viii).薬剤包装および製造
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つ;およびそれらの使用説明書を含む、包装された薬剤に関する。
【0247】
ある特定の実施の形態では、本発明は推奨用量および/または患者への製剤の投与について記載された説明書(文書および/または図解)と関連して、薬学的に許容される賦形剤に調合された本発明の1つ以上の阻害剤を含む、包装された薬剤に関する。このような説明書は、疾病の治療または予防についての詳細、ならびに、随意的に、可能性のある副作用および薬物間または薬物−食物間の相互作用の警告を含みうる。
【0248】
本発明のさらに別の態様は、
a.1つ以上の対象とする阻害剤を製造し;
b.ヘルスケア提供者に対し、本明細書に記載される疾病または徴候のいずれかを治療または予防する製剤を使用することの利益を売り込む
ことを含む、医薬品事業を行うための方法に関する。
【0249】
ある特定の実施の形態では、対象とする事業方法は、製剤を販売するための流通機構を提供することを含む。本方法はまた、本明細書に記載される疾病または徴候のいずれかを治療および予防するために、患者または医師に、製剤を使用するための説明資料を提供することも含みうる。
【0250】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記説明書は、グルコース代謝の制御またはポストプロリン切断酵素の阻害に関する。
【0251】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記説明書は、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原の阻害における使用を含む。
【0252】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、インスリン、インスリン分泌促進薬またはその両方と一緒に調合されるか、または一緒に包装される。
【0253】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、M1受容体拮抗薬、プロラクチン阻害剤、β−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬物、メトホルミン、グルコシダーゼ阻害剤またはそれらのいずれかの組合せと一緒に調合されるか、または一緒に包装される。
【0254】
(ix).本発明の典型的な方法
ある特定の実施の形態では、本発明は、前記酵素を前述の化合物のいずれか1つと接触させることを含む、ポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0255】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前記酵素が哺乳動物のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である、前述の方法のいずれか1つに関する。
【0256】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0257】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の方法のいずれか1つに関し、ここで、本方法は、グルカゴン様ペプチド、NPY、PPY、セクレチン、GLP−1、GLP−2、およびGIPからなる群より選択されるペプチド・ホルモンの患者の血漿濃度を上昇させる。
【0258】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるグルコース代謝を制御する方法に関する。
【0259】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の方法のいずれか1つに関し、ここで、前記患者は、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症(カイロミクロン、VLDLおよびLDLなど)を患っている。
【0260】
ある特定の実施の形態では、本発明は、インスリン、インスリン分泌促進薬またはその両方を治療に有効な量で前記患者に投与することをさらに含む、前述の方法のいずれか1つに関する。
【0261】
ある特定の実施の形態では、本発明は、M1受容体拮抗薬、プロラクチン阻害剤、β−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬物、メトホルミン、グルコシダーゼ阻害剤またはそれらのいずれかの組合せを治療に有効な量で前記患者に投与することをさらに含む、前述の方法のいずれか1つに関する。
【0262】
ある特定の実施の形態では、本発明は、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原を、前述の化合物のいずれか1つと接触させることを含む、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0263】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるプロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0264】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の方法のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、グルコース代謝 障害(例えば、耐糖能異常、インスリン耐性、高血糖症、高インスリン血症、およびII型糖尿病)に関する異常な指数を改善するのに有効な量で、24時間の間、所定の間隔で投与される。化合物の有効量は、被験体の約0.01、0.1、1、10、30、50、70、100、150、200、500、または1000mg/kgでありうる。
【0265】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つの単回投与に関する。ある特定の実施の形態では、本発明は、単回投与のいずれか1つに関し、ここで、前記単回投与は、ボーラス注入法、経口投与または吸入投与の形態である。ある特定の実施の形態では、本発明は、単回投与のいずれか1つに関し、ここで、前記単回投与は、持続性のインビボ効果を生じることができる。
【実施例】
【0266】
本発明を一般的に述べてきたが、以下の実施例を参照することによって、本発明のある特定の態様および実施の形態がさらに容易に理解されよう。これらの実施例は、単に例証する目的で含まれ、本発明を限定することは意図されていない。
【0267】
実施例1
Glu−boroSar(チオキソアミド)塩酸塩の合成
化合物5(式III)を形成するための合成スキ−ムを図1に示す。
【化19】
【0268】
化合物1.
N−メチルモルホリン(81.4mL、740mmol)をTHF(3000mL)中、N−Boc−L−Glu(O−t−Bu)−OH(112.5g、370mmol)の溶液に−20℃で加え、その後、クロロギ酸イソブチル(48.1mL、370mmol)を滴下により添加した。混合物を20分間攪拌し、次に、 4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミン(56.6g、370mmol)を数回に分けて加え、得られたスラリ−を−15℃で2時間攪拌し、その後、室温で一晩攪拌した。沈殿をろ過して、ろ液を蒸発乾固させた。残渣をEtOAc(2500mL)に溶解し、1MのNaH2PO4(2×500mL)、塩水(300mL)、5%のNaHCO3(2×500mL)および塩水(2×300mL)を用いて連続して洗浄した。Na2SO4を用いて有機相を乾燥し、蒸発乾固させた。EtOAc/ヘキサンに由来する残渣の結晶化により、黄色粉末として化合物1を得た(156g、96%)。
【化20】
【0269】
化合物2.
アルゴン下、P4S10(79.1g、178mmol)を、THF(3000mL)中、Na2CO3(19g、178mmol)と混合した。混合物を25℃で1.5時間攪拌し、その後0℃まで冷却した。この透明溶液に、THF(500mL)中、アニリド1(156g,356mmol)を滴下して加え、その後、0℃で30分間攪拌し、次いで室温で3時間攪拌した。混合物を、セリットを通じてろ過し、ろ液を蒸発乾固させた。残渣をEtOAc/ヘプタン(2/1、2500mL)に溶解し、5%のNaHCO3(3×500mL)で洗浄し、水層をEtOAc/ヘプタン(2/1,3×800mL)で逆抽出した。有機相を合わせて塩水(2×300mL)で洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥し、油状になるまで蒸発させた。EtOAc/ヘキサンから得た残渣の結晶化により、黄色粉末として化合物2を得た(143.2g,88.5%)。
【化21】
【0270】
化合物3.
チオアニリド2(71g,156mmol)を、40℃で穏やかに温めることにより、70%の酢酸(氷酢酸860mLおよび水370mL)に溶解し、次に、氷水で3℃まで冷却した。この溶液に、NaNO2(17g,246mmol)を、攪拌しつつ、30分間にわたり数回に分けて加えた。同一温度でさらに1時間反応させた後、氷水(4000mL)を数回に分けて添加し、得られた沈殿生成物をろ過し、冷水で洗浄した。オレンジ色の固形物をEtOAc(1500mL)に再溶解し、5%のNaHCO3(2×300mL)、および塩水(2×300mL)を用いて連続して洗浄した。Na2SO4を用いて有機相を乾燥し、真空下で蒸発させて、化合物3を黄色粉末として得た(48.3g、66.5%)。
【化22】
【0271】
化合物4.
Et3N(29mL,208mmol)を、氷水浴下、THF(600mL)中、化合物3(48.3g,103.7mmol)およびboroSar−pn.HCl(29.6g,114mmol)の溶液に滴下して加えた。次に、反応混合物を室温で1時間、攪拌した。沈殿した塩をろ過して取り除き、溶媒を真空下で蒸発させた。残渣をEtOAc(1500mL)に再溶解し、0.1NのKHSO4(2×300mL)、飽和NaHCO3水(2×300mL)、塩水(300mL)で連続して洗浄し、次に、Na2SO4を用いて乾燥した。溶媒の蒸発およびシリカゲル・クロマトグラフィ・カラム(ヘキサン/EtOAc、3:1)による残渣の精製により、チオペプチドBを得た(33.5g、61%)。
【化23】
【0272】
Glu−boroSar[チオキソアミド]塩酸(5)。無水ジクロロメタン(400mL)中、化合物4(33.5g,63.8mmol)の氷水で冷却した溶液に、HClガスを約1時間または飽和するまでバブリングした。反応混合物を室温で1.5時間攪拌し、次いで、減圧下で蒸発乾固させ、白色粉末を得た。これを予め冷却した0.01NのHCl(200mL)に溶解した。次に、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)(200mL)およびフェニルボロン酸(7.1g)を加えた。混合物を室温で1時間攪拌し、水相を分離した。MTBE層を0.05NのHCl(50mL)を用いて抽出し、水相を合せてエチルエーテルで洗浄した(3×200mL)。ロータリーエバポレーターで水相を濃縮し(<25℃)、粗生成物を、2%の溶媒B(溶媒A,4Lの水中、1.8mLのHCl;溶媒B,4Lのアセトニトリル中、1.2mLのHCl)で溶出させる分取用HPLCによって精製した。所望の画分を回収し、約60mLまで濃縮して凍結乾燥させた。得られた白色粉末を、真空下、デシケーター(NaOHおよびドライエライト)内で乾燥を続け、化合物5を得た(2段階で13.2g、76.5%)。HPLC−TAN純度:94.0%(線形形式)、6.0%(循環形式)。
【0273】
化合物5のD2O中の1H NMRスペクトルを図2に示す。
【0274】
化合物5のD2O中の11B NMRスペクトルを図3に示す。
【0275】
化合物5のLC−MSスペクトルを図4に示す。
【0276】
化合物5のHPLCスペクトルを図5に示す。
【0277】
実施例2
インビトロ検査
使用する生物学的試験方法は米国仮特許出願第60/752,017号の優先権を主張する、国際公開2007/100374号パンフレットとして公開された国際出願第PCT/US06/047853号明細書に記載されている。これらの方法は、参照することによってその全体が本明細書に取り込まれる。
【0278】
図6〜9は、さまざまな生物学的アッセイの結果を示している。これらの図におけるCLogP値はmChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。
【0279】
特に、化合物5(図7、1段目)とそのオキシ類似体11(図6、最下段)との比較に注目されたい。化合物5は、化合物11より約66倍も強力なDPP IV阻害剤である。
【0280】
さらには、化合物5は、DPP IVの阻害について、DPP8またはDPP9よりも良好な選択性を示し、DPP IVに対して、11よりもはるかに選択的になっている(5はDPP IVに対してDPP9より6,000倍も強力であり、DPP IVに対してDPP8より13,000倍も強力であるのに対し;11は、DPP IVに対して、DPP9またはDPP8の、それぞれ、わずか430倍および2,000倍である)。
【0281】
化合物5は、インビトロにおいて、FAPおよびPREPに対する良好な選択性を実証した。これは、boroPro化合物(6、7、8、9、10、12、および13)が有しない特性である。
【0282】
実施例3
毒性
「細胞内IC50」パラメータがインビボにおける毒性と相関すると仮定した。したがって、化合物5は、毒性の観点から、図6〜9に示す化合物のうち本質的に最も好ましい細胞内IC50(IC−IC50)値を示した。IC−IC50が細胞透過性の尺度ではないことに留意することが重要である。それは、IC50と同様に、細胞透過性、DPP9に対する有効性、分子内環化反応の速度および平衡、ならびに本質的および細胞内の両方における阻害剤安定性を含めた、因子の複合である。加えて、図6〜9に見られるIC−IC50値は、pH2.0で4時間プレインキュベートした化合物から得られた。
【0283】
毒性の1つの指標として、化合物6、7、および22(化合物22は図10に示す)の最大耐性量(MTD)を、Sprague−Dawley(SD)ラットを用いた用量漸増単回投与研究において決定した。化合物6は、0.025mg/kgのMTDを有し、最も耐性があった。毒性の最初の兆候は、投与後3〜4時間で観察され、主に、活性の大幅な低下が見られた。嗜眠状態の動物に行った剖検は、腹部および胸郭器官のすべての血流増加、ならびに胃および小腸における透明液の存在を示し、胃腸(GI)毒性が示唆された。化合物7は、6よりも少なくとも200倍大きい、≧5mg/kgのMTDを示した。5mg/kgよりも多く与えられた数匹のラットは嗜眠を示し、これを殺処分し、剖検した。腸および盲腸に液体およびガスが見られ、この場合も、GI毒性が示唆された。化合物22を与えられたラットは、500mg/kgを超えて投与するまでは、有害な影響を示さず、>6の2.0×104倍を超える、7より13〜100倍大きいMTDを得た。22の900mg/kgにおいて、6匹の動物のうち3匹が致死した。致死前の苦痛または他の有害な副作用の明らかな兆候はなかった。剖検により、死亡ラットは体液で満たされた胃および小腸を有していたことが判明し、胃腸毒性が示唆された。他の臓器はすべて正常に見えた。
【0284】
化合物6は、試験化合物のうち最も有効なIC−IC50である、80nMを示した。上述のように、化合物6は最も毒性でもある。化合物7は、10.3μMのIC−IC50値を示した。化合物22の推定IC−IC50値は>7000μMである。IC−IC50値とMTD値の間には相関関係が存在する。DPP9に対する細胞内有効性は、IC−IC50値で測定して、MTDと同様に6>7>22の順に低下し、これらの阻害剤の細胞内有効性がそれらの毒性を定性的に追従することを示している。
【0285】
IC−IC50の測定値および、実証されたIC−IC50値とMTDの相関についての論述は、参照することによってその全体が本明細書に援用される、J. Med. Chem. 2008, 51 (19), 6005に示されている。
【0286】
さらには、199nMのIC−IC50を有する化合物8もまた非常に有効である。サルを用いた研究は、化合物8もまた非常に毒性であることを示した。
【0287】
しかしながら、化合物5のIC−IC50は828μMであり、化合物5は、細胞内におけるDPP9の阻害という点ではあまり有効ではないことを示唆している。実際、化合物14は、既知の抗糖尿病薬であるシタグリプチン(DPP IV阻害剤)である。そのIC−IC50は、213μMであると測定された。この測定値に基づけば、化合物5は化合物14よりも効果が少ないはずである。
【0288】
しかしながら、化合物5によって実証されたIC−IC50は、化合物5が、測定したMTDによって決定される最低毒性を示すはずであることを示唆している。予備段階の結果は、これがその事例であることを示唆している。ある実験では、13匹のオスのSDラットに300mg/kgの化合物5を与えた。24時間後、すべての動物の挙動は正常であり、毒性の兆候は見られなかった。比較として、化合物6では、0.05mg/kgの単回投与で、ラットを致死させる。
【0289】
参照による取り込み
本明細書で引用される米国特許および米国特許出願公報はすべて、参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0290】
等価物
当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な実施の形態に対する多くの等価物を、認識するか、または、日常的な実験のみを利用して確定することができるであろう。このような等価物は添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年2月27日に出願した米国仮特許出願第61/156,246号に対する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、プロテアーゼを阻害するための化合物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
プロテアーゼは、特異ペプチド結合においてタンパク質を切断する酵素である。プロテアーゼは、セリン、チオールまたはシステイニル、酸またはアスパルチル、およびメタロプロテアーゼの4つの一般分類に分類することができる(非特許文献1)。プロテアーゼは、消化、血栓の形成および溶解、再生、ならびに異種細胞および有機体に対する免疫反応などの、種々の生物活性に必須である。しかしながら、異常タンパク質分解は、ヒトおよび他の哺乳動物における多数の疾病に関連する。したがって、患者を治療する過程において、1つ以上のタンパク質分解酵素の機能を中断させることは、しばしば有益となる。
【0004】
ペプチド基質の結合部位は、酵素の表面にわたる一連の「特異性サブサイト(specificity subsite)」からなる。「特異性サブサイト」という用語は、酵素に対する基質部分と相互作用できる酵素のポケットまたは他の部位を指す。例えば、セリンおよびシステインプロテイナーゼなどのプロテアーゼとペプチドとの相互作用について論じる際に、本願では、SchechterおよびBergerの命名法を使用する(非特許文献2)。切断反応で生じたカルボキシ末端残基から開始して、基質または阻害剤の個々のアミノ酸残基はP1、P2などと指定され、酵素の対応するサブサイトはS1、S2などと指定される。基質の切断しやすい結合は、基質のP1〜P1'の間のアミド結合である。よって、ペプチドXaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4については、Xaa3とXaa4残基の間で切断されるが、Xaa3残基はP1残基と称され、酵素のS1サブサイトに結合し、Xaa2はP2残基と称され、S2サブサイトに結合するなどとなる。
【0005】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIVまたはDPP IV)は、好ましくは、例えばP1位置などの最後から2番目の位置にプロリン残基を含むペプチド鎖からN末端ジペプチドを切断する、セリンプロテアーゼである。DPIVは細胞膜関連ペプチダーゼの群に属し、細胞表面ペプチダーゼの大部分のようにII型内在性膜タンパクであり、そのシグナル配列によって細胞膜に固定されている。DPIVは、CD4+T細胞の表面に特異的に見られるリンパ系起源のものを含む、種々の分化した哺乳類の上皮、内皮、および造血細胞ならびに組織に見られる。DPIVは、白血球分化マーカーCD26として同定されている。
【0006】
プロテアソームは、損傷、酸化、または異常に折り畳まれたタンパク質のタンパク質分解、ならびに、細胞周期進行などのさまざまな細胞機能に必要とされる重要な調節タンパク質の加工または分解を含めた、真核細胞における細胞内タンパク質代謝回転の大部分に関与するプロテアーゼを含む細胞複合体である。例えば、26Sプロテアソームは、その触媒コアに、およそ700kDaの分子量のマルチサブユニット複合体である20Sプロテアソームを含む、多触媒性のプロテアーゼである。必須の生理的役割を果たす一方、プロテアソームは、正常な細胞過程が調節不全となる病状の結果または原因として生じる、不適切なタンパク質分解またはタンパク質分解の促進にも関与している。特徴的な例の1つは癌であり、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、および腫瘍抑制遺伝子を含む、細胞周期調節タンパク質の調節されていないプロテアソーム依存性の分解が、結果として、促進された無制御の有糸分裂を引き起こし、それによって、癌の増殖および転移を促進する(非特許文献3〜5)。プロテアソーム酵素機能の阻害により、癌または炎症などの病状における疾患進行の停止または鈍化が期待される。
【0007】
例えば、ラクタシスチンおよびその類似体といったプロテアソーム阻害剤は、マラリア原虫であるPlasmodium spp.の、前赤内期および赤内期の発達を遮断することが示されている。その肝期および赤内期の両方の間、寄生虫は急激な形態変化、および、幾多の複製を経験するが、それらの事象はプロテアソーム活性を必要とすると考えられる。ラクタシスチンは、プロテアソームの活性部位の触媒的N末端スレオニンを共有結合的に修飾し、哺乳類の細胞、原虫、および古細菌のプロテアソームを含む、調査した全プロテアソームの活性を阻害することが発見されている(非特許文献6)。
【0008】
ヒトの線維芽細胞活性化タンパク質(FAPα)は、モノクローナル抗体(mAb)F19として最初に同定された分子量95,000の細胞表面分子である(非特許文献7、8)。FAPα cDNAは、大きな細胞外領域、膜貫通領域、および短い細胞質尾部を有するII型内在性膜タンパク質をコードする(非特許文献9、特許文献1)。FAPαは、ジペプチジルペプチダーゼ活性を有する膜結合タンパク質であり、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)としても知られる、T細胞活性化抗原CD26に対する48%のアミノ酸配列同一性を示す(非特許文献9)。FAPαは酵素活性を有し、酵素機能にとって重要なセリン624を有するセリンプロテアーゼのファミリーに属する(特許文献1)。膜オーバーレイアッセイを用いた研究により、FAPα二量体がAla−Pro−7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、Gly−Pro−7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、およびLys−Pro−7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリンジペプチドを切断できることが明らかとなった(特許文献1)。
【0009】
FAPαは、ヒトの上皮癌、回復期創傷の肉芽組織、ならびに、ある特定の骨および軟部組織の肉腫に存在する悪性細胞の、多くの組織型の反応性間質線維芽細胞において選択的に発現される。正常な成人組織は、一般に、検出可能なFAPαを有しないが、一部の胎児の間葉組織は、過渡的に、前記分子を発現する。対照的に、乳癌、非小細胞性肺癌、および結腸直腸癌の90%よりも多くを含む、一般的な種類の上皮癌の大部分は、FAPα反応性間質線維芽細胞を包含する(非特許文献9)。これらのFAPα+線維芽細胞は、新しく形成される腫瘍血管に付随して生じ、腫瘍毛細血管内皮と悪性上皮細胞集合の底面の間に介在する、はっきりと区別できる細胞内コンパートメントを形成する(非特許文献10)。FAPα+間質線維芽細胞は、原発性癌および転移性癌の両方に見られるが、例えば乳腺線維腺腫および結腸直腸腺腫のような線維腺腫など、検査した良性および前癌性の上皮性病変(非特許文献10)には、FAPα+間質細胞が含まれることは極めて稀である。正常組織におけるFAPαの限られた分布パターン、および、多くの悪性腫瘍の支持間質におけるFAPαの均一な発現に基づいて、131Iで標識したmAb F19の臨床試験が、転移性大腸癌の患者において開始されている(非特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第97/34927号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Cuypers et al., J. Biol. Chem. 1982, 257, 7086
【非特許文献2】Biochem. Biophys. Res. Commun. 1967, 27, 157−162
【非特許文献3】Goldberg et al. Chem. & Biol. 1995, 2, 503−508
【非特許文献4】Coux et al. Ann. Rev. Biochem., 1996, 65, 801−847
【非特許文献5】Deshaies, Trends Cell Biol. 1995, 5, 428−434
【非特許文献6】Gantt et al. Antimicrob. Agents Chemother. 1998, 42, 2731−2738
【非特許文献7】Rettig et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988, 85, 3110−3114
【非特許文献8】Rettig et al. Cancer Res. 1993, 53, 3327−3335
【非特許文献9】Scanlan et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994, 91, 5657−5661
【非特許文献10】Welt et al. J. Clin. Oncol. 1994, 12, 1193−1203
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、プロテアーゼを阻害する化合物および方法を提供する。本発明の1つの態様は、活性阻害剤部分を標的プロテアーゼに近接して放出するための、活性化プロテアーゼと反応するプロソフト阻害剤を特徴とする。ある特定の事例では、本化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIVなどの、プロテアソームおよび/またはポストプロリン切断酵素(PPCE)を阻害する。本発明の化合物は、一部には、毒性の低減および/または標的化プロテアーゼに対する特異性の改善に起因して、良好な治療指数を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】化合物5の形成のための典型的な反応スキーム。試薬および条件:i.(a)NMM、クロロギ酸イソブチル、−20℃、(b)4―ニトロ−1,2−フェニレンアミン、−15℃〜室温;ii.P4S10、THF、0℃〜室温;iii.NaNO2、0℃;iv.BoroSar−pn.HCl、NEt3、0℃〜室温;v.HCl(g)、CH2Cl2、0℃〜室温;vi.PhB(OH)2、MTBE−H2O、室温。
【図2】化合物5のD2Oにおける1H NMRスペクトル。
【図3】化合物5のD2Oにおける11B NMRスペクトル。
【図4】化合物5のLC−MSスペクトル。
【図5】化合物5のHPLCクロマトグラム。
【図6】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図7】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図8】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図9】DPP阻害剤についてのさまざまなインビトロおよびインビボ検査の結果を示す表。CLogP値は、ChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。表におけるIC50のすべての測定値は、新しく作ったpH2.0の原液を室温で4時間プレインキュベートすることを包含したサンプルから得た。PREP以外はすべて同一の基質(GP−AMC)を異なる濃度(DPP IVは10μM、DPP8およびDPP9は25μM、FAPは50μM)で使用した。
【図10】化合物22の構造。
【図11】化合物23すなわちVal−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物23への合成経路(B)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図12】化合物24すなわちGly−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物24への合成経路(B)、およびpH=2におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図13】化合物25すなわちAla−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物25への合成経路B)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図14】化合物26すなわちPro−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物26への合成経路(B)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(C)。
【図15】化合物27すなわちPhe−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、およびpH=2および8におけるDPP IVの検査結果(B)。
【図16】化合物28すなわちTrp−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、および化合物28への合成経路(B)。
【図17】化合物29すなわち2−アミノアジピン酸(aminoadipic)−boroSar(チオキソアミド)または2−Aad−boroSar(チオキソアミド)の構造(A)、化合物29への合成経路(B)、およびDPP4/8/9のアッセイ結果についてのIC50値(C)。
【図18】化合物30すなわちAib−boroSar(チオキソアミド)の構造。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
本発明は、プロテアーゼ阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤の使用方法を提供する。本発明は、多様なプロテアーゼ阻害剤を特徴とする。例えば、プロテアーゼは、ジペプチジルペプチダーゼIVなどのポストプロリン切断酵素(PPCE)であってもよい。本発明は、プロテアソーム活性を阻害する化合物も提供する。ある特定の事例では、プロテアーゼ阻害剤はプロソフト阻害剤である。プロソフト阻害剤は「活性化プロテアーゼ」によって活性化、すなわち切断されて、活性阻害剤成分を「標的プロテアーゼ」に近接して放出する、不活性薬剤である。活性化プロテアーゼおよび標的プロテアーゼの同一性は、同一であっても、異なっていてもよい。プロソフト阻害剤の活性化の後、活性阻害剤部分は、不可逆性のプロト脱ホウ素化によって、自己不活化を受ける。
【0015】
本発明のプロソフト阻害剤分子を典型的なプロドラッグと区別する特徴の1つは、阻害剤部分が、標的の近くに活性型として生じた後に、例えば、標的酵素から離れて拡散するにつれて経時により不活化され、それによって、患者の他の部位で生じた酵素の阻害に起因しうる有害な副作用の可能性を低減することである。この「プログラム化された」失活機構と、標的酵素の近くへの活性型での放出の組合せは、阻害剤部分自体を使用した場合よりも、本発明の分子をより特異的、効果的、および安全にする(すなわち、副作用がより少なくなる)。
【0016】
本発明の化合物の有利な特徴としては:一部には、標的化プロテアーゼの毒性の低減および/または特異性の改善に起因する、より良好な治療指標;より良好な経口アベイラビリティ;保存寿命の増大;および/または作用持続時間の増大(例えば、約4時間よりも長く、約8時間よりも長く、約12時間よりも長く、または約16時間よりも長い時間有効な単回経口投与製剤など)が挙げられる。
【0017】
本発明の化合物の別の有利な特徴は、プロト脱ホウ素化により、無毒のホウ酸を不可逆的に放出することである。ホウ酸のLD50は、一般的な食卓塩のものとほぼ等しい。したがって、本発明の化合物を用いた長期の慢性治療は、安全性プロファイルの改善(副作用の低減)をもたらすことが期待される。
【0018】
本発明の化合物は、DPIV介在性のものなど、種々の障害または病状の治療の一環として用いることができる。特定の理論に縛られることは望まないが、DPP IVを阻害する化合物は、DPP IV阻害を含む機構を通じて耐糖能を改善することができることが観察された。
【0019】
ある特定の対象化合物は、延長された持続期間を有する。したがって、ある特定の実施の形態では、単回投与後少なくとも約4時間、または少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、または単回投与後少なくとも約16時間の間、血清のPPCE(例えば、DPIV)濃度を少なくとも約50%阻害する用量を提供するように、化合物が選択され、そのような化合物量で製剤される。
【0020】
例えば、ある特定の実施の形態では、本方法は、グルコース代謝障害に関する1つ以上の異常な指数の改善に有効な量で、好ましくは24時間の間の所定の時間、DPIV阻害剤の投与を包含することが好ましい。
【0021】
定義
化合物は、ホルモンインスリンの合成または発現を刺激する、または刺激を生じることができる場合に、「インスリン向性(insulinotropic)活性」を有するという。
【0022】
「boro−Xaa」という用語は、カルボキシレート基(COOH)がボロニル基(B(OH)2)で置換された、アミノ酸類似体のことをいい、ここでXaaはアミノ酸残基である。例えば、「boro−Ala」という用語は、カルボキシレート基(COOH)がボロニル基(B(OH)2)で置換されたアラニン類似体を指す;「boro−Pro」という用語は、カルボキシレート基(COOH)がボロニル基(B(OH)2)で置換されたプロリン類似体を指す。言い換えれば、「Ala−boroPro」という用語は、次を指す:
【化1】
【0023】
「チオキサム」という用語は、化学命名法に関連して用いられ、少なくとも1つのアミド基が少なくとも1つのチオキサミド基で置換された化合物を指す。例えば Pro(チオキサム)は、アミド基がチオキサミド基で置換されたプロリン残基を指す。例えば、「Ala−boroProチオキソアミド」という用語は次を指す:
【化2】
【0024】
本方法によって治療すべき「患者」または「被験体」とは、ヒトまたはヒトではない被験体のいずれかを意味しうる。ヒトではない被験体としては、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ)および愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ)が挙げられる。
【0025】
「ED50」という用語は、50%の患者において、例えば、グルコース反応性、ヘマトクリット値の上昇、腫瘍容積の低下などの生理学的計測における臨床的に意義のある改善または変化をもたらすであろう薬物の用量を意味する。
【0026】
「IC50」という用語は、例えば、インビボにおいてDPIV(または他のPPCE)活性の少なくとも50%を阻害するのに必要とされる化合物の量など、生物活性を50%阻害する薬物用量を意味する。
【0027】
「LD50」という用語は、試験対象の50%が致死する薬物用量を意味する。
【0028】
「治療指数」という用語は、LD50/ED50と定義される薬物の治療指数のことをいう
治療の対象とする方法に関連して、例えば、本発明のDPIV阻害剤などの化合物の「治療に有効な量」とは、所望の投薬計画(哺乳動物、例えばヒトなどに対する)の一部として投与される場合に、例えば、任意の医療に適用可能な妥当な損益比で、症状を軽減する、状態を改善する、または治療すべき障害または状態の臨床的に許容できる基準に従った病状の開始を遅延させる、または化粧品用途の、製剤における化合物の量のことをいう。
【0029】
「単回経口投与製剤」とは少なくともその薬物のEC50と同等であるが、LD50未満である、血清濃度を生じる薬物量を提供する調剤である。単回経口投与製剤のための別の基準は、少なくともその薬物のIC50と同等であるが、LD50未満である、血清濃度を生じるのに必要な薬物量を提供する調剤である。いずれかの基準により、単回経口投与製剤は、その薬物のLD50より少なくとも10%低い血清濃度を生じる薬物量が好ましく、LD50より少なくとも50%、75%、または90%低い血清濃度を生じることがさらに好ましい。
【0030】
脂肪族鎖は、以下に定義されるアルキル、アルケニルおよびアルキニルの種類を含む。脂肪族直鎖は、非分岐の炭素鎖部分に限られる。本明細書では「脂肪族基」という用語は、直鎖、分岐鎖、または環状脂肪族炭化水素基を指し、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基などの飽和および不飽和の脂肪族基が含まれる。
【0031】
「アルキル」とは、規定された炭素原子数、または規定されていない場合には最大30までの炭素原子を有する、完全に飽和した、環式または非環式の、分岐または非分岐の炭素鎖部分を指す。例えば、1〜8炭素原子のアルキルとは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルなどの部分、およびそれらの部分の位置異性体である部分を指す。10〜30の炭素原子のアルキルとして、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシルおよびテトラコシルが挙げられる。ある特定の実施の形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に30以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC1〜C30、分岐鎖ではC3〜C30)、さらに好ましくは20以下の炭素原子を有する。
【0032】
「シクロアルキル」とは、各々が3〜12の炭素原子を有する、単環式または二環式、または架橋した飽和炭素環式環を意味する。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造に5〜12の炭素原子を有し、さらに好ましくは環構造に6〜10の炭素を有する。
【0033】
炭素数が別に規定されない限り、本明細書では「低級アルキル」とは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルなど、その骨格構造に、1〜10の炭素、さらに好ましくは1〜6の炭素原子を有する先に定義したアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。本願を通じて、好ましいアルキル基は低級アルキルである。ある特定の実施の形態では、本明細書でアルキルとして指定される置換基は、低級アルキルである。
【0034】
「アルケニル」とは、規定された炭素原子数、または炭素原子数の限定が特に規定されていない場合には最大26までの炭素原子数を有し;その部分に1つ以上の二重結合を有する、環式のまたは非環式の、分岐したまたは非分岐の不飽和の炭素鎖部分を指す。6〜26の炭素原子のアルケニルは、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘニコセニル(heneicosoenyl)、ドコセニル、トリコセニル、およびテトラコセニルのさまざまな異性体に例示され、ここで、不飽和結合はその部分のどこかに位置すればよく、二重結合について(Z)または(E)配置のいずれかを有しうる。
【0035】
「アルキニル」とは、1つ以上の三重結合を有する、アルケニルの範囲のヒドロカルビル部分を指す。
【0036】
「アルキルチオ」という用語は、結合した硫黄部分を有する、先に定義したアルキル基を指す。ある特定の実施の形態では、「アルキルチオ」部分は、−(S)−アルキル、−(S)−アルケニル、−(S)−アルキニル、および−(S)−(CH2)m−R1のうちの1つで表され、ここで、mおよびR1は以下に定義される。代表的なアルキルチオ基にはメチルチオ、エチルチオなどが含まれる。
【0037】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、本明細書では、結合した酸素部分を有する、以下に定義されるアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが含まれる。「エーテル」は、酸素によって共有結合的に連結した2つの炭化水素である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2)m−R1のうちの1つで表すことができるようなアルコキシルであるかアルコキシルに類似しているものであり、ここで、mおよびR1は以下に記載されている。
【0038】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当技術分野で認識されており、例えば、式:
【化3】
【0039】
によって表すことができる部分など、非置換または置換アミンの両方を指し、ここで、R3、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R1を表すか、またはR3およびR5は、それらが結合するN原子と一緒に、環構造内に4〜8原子を有する複素環を完成し;R1は、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、またはポリシクリルを表し;mは0または1〜8の範囲の整数である。ある特定の実施の形態では、R3またはR5の一方のみがカルボニルであってよく、例えば、R3、R5、および窒素は、一緒にイミドを形成しない。さらなる特定の実施の形態では、R3およびR5(および随意的にR6)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R1を表す。よって、「アルキルアミン」という用語は、本明細書では、それに結合した置換または非置換のアルキルを有する、すなわち、R3およびR5のうち少なくとも一方がアルキル基である、先に定義したアミン基を意味する。ある特定の実施の形態では、アミノ基またはアルキルアミンは塩基性であり、pKa≧7.00を有する共役酸を有することを意味する。すなわち、これらの官能基のプロトン化した形態は、水と比較して、約7.00を超えるpKaを有する。
【0040】
「アリール」という用語は、 本明細書では、環の各原子が炭素である(すなわち、炭素環式アリール)か、または1つ以上の原子がヘテロ原子である(すなわち、ヘテロアリール)、3員環〜12員環の置換または非置換の単環の芳香族基を含む。好ましくは、アリール基は、5員環〜12員環、さらに好ましくは6員環〜10員環を含む。「アリール」という用語は、2つ以上の環式環を有する多環式の環系も含み、ここで、2つ以上の炭素を2つの隣接する環で共有しており、ここで、環のうち少なくとも1つは芳香族環であり、例えば、他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルでありうる。炭素環式アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが含まれる。ヘテロアリール基には、環構造内に1〜4つのヘテロ原子を含んだ、置換または非置換の芳香族の3員環〜12員環構造が含まれ、さらに好ましくは5員環〜12員環、さらに好ましくは6員環〜10員環の構造のことをいう。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。
【0041】
「ヘテロシクリル」または「複素環式基」という用語は、環構造内に1〜4つのヘテロ原子を含んだ、3員環〜12員環構造を指し、さらに好ましくは5員環〜12員環、さらに好ましくは6員環〜10員環の構造のことをいう。複素環は多環であってもよい。ヘテロシクリル基としては、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、例えばアゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。複素環は、1つ以上の位置において、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルファモイル、スルフィニル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素環式芳香族部分、−CF3、−CNなどの上述の置換基で置換されうる。
【0042】
「カルボニル」という用語は、 当技術分野で認識されており、式:
【化4】
【0043】
で表される部分を含み、ここで、Xは結合であるか、もしくは酸素または硫黄を表し、R7は水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R1または薬学的に許容される塩を表し、R8は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2)m−R1を表し、ここで、mおよびR1は先に定義した通りである。Xが酸素であり、R7またはR8が水素ではない場合、式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、R7が先に定義した通りである場合、その部分は、本明細書では、カルボキシル基を指し、特にR7が水素の場合には、式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R8が水素の場合には、式は「ホルメート」を表す。 一般に、上記式の酸素原子が硫黄で置換される場合には、式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、R7またはR8が水素ではない場合、式は「チオエステル」基を表す。Xが硫黄であり、R7が水素の場合、式は「チオカルボン酸」基を表す。Xが硫黄でありR8が水素の場合、式は「チオホルメート」基を表す。他方では、Xが結合であり、R7が水素ではない場合、上記式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R7が水素の場合、上記式は「アルデヒド」基を表す。
【0044】
「チオキサミド」という用語は、 本明細書では、式:
【化5】
【0045】
で表すことができる部分を指し、ここで、Rtは、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアリールからなる群より選択され、水素またはアルキルであることが好ましい。さらには、「チオキサミド由来の」化合物または「チオキサミド類似体」とは、1つ以上のアミド基が1つ以上の対応するチオキサミド基で置換された化合物を指す。チオキサミドは、当技術分野では「チオアミド」とも称される。
【0046】
本明細書では、「置換(した)」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基のすべてを含むことが意図されている。広範な態様において、許容される置換基には、有機化合物における非環式のおよび環式の、分岐および非分岐の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の置換基が含まれる。実例となる置換基としては、例えば、本明細書で先に説明したものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に1つ以上存在して差し支えなく、同一または異なっていて構わない。本発明の目的では、窒素などのヘテロ原子は、そのヘテロ原子の価数を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容される置換基を有していてもよい。本発明は、いかなる方法によっても、有機化合物の許容される置換基により制限されない。「置換」または「〜で置換された」には、このような置換は、置換された原子および置換基の許容される価数に従い、例えば、転位、環化、脱離などの変換を自発的に生じない、安定な化合物を生じるという暗黙の条件が含まれることが理解されよう。
【0047】
本明細書では、「ニトロ」という用語は−NO2を意味し;「ハロゲン」という用語は−F、−Cl、−Br、または−Iを指し;「スルフヒドリル」という用語は−SHを意味し;「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味し;「スルホニル」という用語は−SO2−を意味し;「アジド」という用語は−N3を意味し;「シアノ」という用語は−CNを意味し;「イソシアナート」という用語は−NCOを意味し;「チオシアナート」という用語は−SCNを意味し;「イソチオシアナート」という用語は−NCSを意味し;「シアナート」という用語は−OCNを意味する。
【0048】
「スルファモイル」という用語は、当技術分野で認識されており、式:
【化6】
【0049】
で表すことができる部分を含み、ここで、R3およびR5は先に定義した通りである。
【0050】
「スルファート」という用語は、当技術分野で認識されており、式:
【化7】
【0051】
で表すことができる部分を含み、ここで、R7は先に定義した通りである。
【0052】
「スルホンアミド」という用語は、当技術分野で認識されており、式:
【化8】
【0053】
で表すことができる部分を含み、ここで、R3およびR8は先に定義した通りである。
【0054】
「スルホネート」という用語は、 当技術分野で認識されており、式:
【化9】
【0055】
で表すことができる部分を含み、ここで、R7は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0056】
「スルホキシド」または「スルフィニル」という用語は、 本明細書では、式:
【化10】
【0057】
で表すことができる部分を含み、ここで、R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、またはアリールからなる群より選択される。
【0058】
本明細書では、例えば、アルキル、m、nなどの各表現の定義は、構造内に2つ以上存在する場合には、同一の構造内の他の部分の定義とは独立していることが意図されている。
【0059】
「アミノ酸類似体」という用語は、C末端カルボキシル基、N末端アミノ基または側鎖官能基のいずれかが化学的に修飾されている、天然のアミノ酸と構造的に類似した化合物を指す。例えば、アスパラギン酸−(β−メチルエステル)は、アスパラギン酸のアミノ酸類似体であり;N−エチルグリシンは、グリシンのアミノ酸類似体であり;またはアラニンカルボキサミドは、アラニンのアミノ酸類似体である。
【0060】
アミノ酸の構造に立体異性体の可能性がある場合には、これらアミノ酸の(D)および(L)−立体異性体も含まれる。本明細書のアミノ酸およびアミノ酸残基の配置は、適切な記号(D)、(L)または(DL)で表され、さらには、配置が指定されていない場合には、アミノ酸または残基は(D)、(L)、または(DL)の配置を有する可能性がある。本発明の化合物の一部の構造には、非対称性の炭素原子も含まれることに留意されたい。したがって、このような非対称性から生じた異性体は、本発明の範囲内に含まれることが理解されよう。これらの異性体は、古典的な分離技術および立体選択的合成により、実質的に純粋な形態で得ることができる。本願の目的では、反対のことが明確に示されない限り、指定されたアミノ酸は、(D)および(L)の両方の立体異性体を含むように解釈されるべきである。
【0061】
「保護基」という語句は、本明細書では、反応性の官能基を望ましくない化学反応から保護する置換基を意味する。これらの保護基の例としては、カルボン酸およびボロン酸のエステル、アルコールのエーテル、ならびにアルデヒドおよびケトンノアセタールおよびケタールが挙げられる。例えば、「N末端保護基」または「アミノ保護基」という語句は、本明細書では、合成の間の望ましくない反応に対し、アミノ酸またはペプチドのN末端を保護するために用いることができるさまざまなアミノ保護基を指す。適切な基の例としては、説明の目的で、ホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、およびメトキシスクシニルなどのアシル保護基;例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)などの芳香族ウレタン保護基;およびt−ブトキシカルボニル(Boc)または9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などの脂肪族ウレタン保護基が挙げられる。
【0062】
「アミノ末端保護基」という用語は、 本明細書では、典型的には有機合成、特にペプチド合成に用いられる末端アミノ保護基を指す。アセチルおよびベンゾイルなどのアシル保護基;ベンジルオキシカルボニルなどの芳香族ウレタン保護基;および、tert−ブトキシカルボニルなどの脂肪族ウレタン保護基を含めた、既知の種類の保護基のいずれかを使用することができる。例えば、Gross and Mienhoffer, Eds., Peptides, Academic Press: New York, 1981;Vol. 3, 3−88;およびGreen, T. W.;Wuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed, Wiley: New York, 1991を参照。好ましい保護基としては、アリール−、アラルキル−、ヘテロアリール−およびヘテロアリールアルキル−カルボニルおよびスルホニル部分が挙げられる。
【0063】
上述のように、本発明のある特定の化合物は、特定の幾何学的形状または立体異性体で存在しうる。本発明は、発明の範囲内に含まれる、シス型およびトランス型異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含めたすべての化合物を意図している。さらなる非対称性の炭素原子がアルキル基などの置換基に存在していてもよい。このような異性体、ならびにそれらの混合物はすべて、本発明に含まれることが意図されている。特定のエナンチオマーが好ましい特定の実施の形態では、本発明の化合物は、2つのエナンチオマーのそれぞれが50%の範囲で存在するラセミ化合物とは対照的に、好ましいエナンチオマーを、>60%、>70%、>80%、>90%、>95%、または98%を超えて、または99%含むように高められる。
【0064】
本発明の目的では、化学元素は、CASバージョンのHandbook of Chemistry and Physics, 67th ed., 1986-87の内表紙の元素周期表に従って識別される。
【0065】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、妥当な損益比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症のない、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触した使用に適した化合物、材料、組成物、および/または投与形態を指すのに用いられる。
【0066】
「薬学的に許容される担体」という語句は、本明細書では、本発明の阻害剤を、身体の1つの器官または部位から、身体の別の器官または部位に運搬もしくは輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物または媒体を意味する。各担体は、製剤の他の原料に適合性であり、患者にとって有害ではないという意味で「許容」されなければならない。薬学的に許容される担体としての役割をしうる材料の幾つかの例として:(1)乳糖、ブドウ糖およびショ糖などの糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびなどのデンプン;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐剤蝋(坐剤ワックス)などの賦形剤;(9)ピーナツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;(10)プロピルレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質除去水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)製薬に用いられる他の毒性のない適合物質が挙げられる。
【0067】
「薬学的に許容される塩」という用語は、これらの事例では、本発明の化合物の、比較的毒性のない無機および有機の塩基付加塩を指す。
【0068】
「薬学的に機能的な誘導体」という用語は、哺乳動物に投与する際に阻害剤を(直接または間接的に)提供する能力がある、例えばエステルまたはアミドなどの本発明の阻害剤の薬学的に許容される誘導体を指す。このような誘導体は、過度の実験なしに当業者に認識される。それでもなお、BurgerのMedicinal Chemistry and Drug Discovery、5th ed.、Vol 1の教示を参照する。
【0069】
本明細書では「生理学的条件」という用語は、温度、pH、イオン強度、粘度、および、生きている生命体に適合する、および/または、典型的には生きている哺乳動物の細胞における細胞内に存在する、同様の生化学的パラメータを指す。
【0070】
「プロドラッグ」という用語は、 本明細書では、生理学的条件下で治療的に活性な薬剤に変換される化合物を網羅する。プロドラッグを製造する一般的な方法は、生理学的条件下で加水分解されて所望の分子を露呈する、選択部分を含めることである。他の実施の形態では、プロドラッグは宿主動物の酵素活性によって転換される。
【0071】
「保存寿命」という用語は、典型的には、阻害剤の性能特性が最大である期間を指す。本明細書では「T90」という用語は、対象とする阻害剤の製剤が、開始サンプルの活性の90%になる時点、すなわち、10%縮減される時点まで分解するのにかかる時間を指す。同様に「T50」という用語は、対象とする阻害剤の製剤が、開始サンプルの活性の50%になる時点、すなわち、50%縮減される時点まで分解するのにかかる時間を指す。保存寿命は、阻害剤の所定の医薬製剤についてT90またはT50のいずれかで報告され、ヘルスケア提供者または患者が使用するように包装された製剤について測定される。
【0072】
本明細書では「実質的に溶解性」という用語は、吸入推進(inhalant propeller)混合物に溶解でき、層に分離しない、または室温で最低でも24時間攪拌せずに放置した場合にも沈殿を形成しない、実質的に透明な溶液から濁った溶液までを形成する阻害剤を指す。
【0073】
「経皮パッチ」とは、口腔内に見られるような粘膜を含めた、皮膚または任意の適切な外表面を介して、患者に薬物を送達することができるシステムを意味する。このような送達システムは、一般に、可撓性バッキング、接着剤および薬物保持マトリクスを備え、バッキングは接着剤とマトリクスを保護し、接着剤は患者の皮膚上に全体を保持する。皮膚と接触する際に、薬物保持マトリクスは阻害剤を皮膚に送達し、次いで、薬物が皮膚を通じて患者の体内システムに入る。
【0074】
「四級化剤」という用語は、4つ未満の置換基を有する窒素原子を4つの置換基を有する正に帯電した窒素原子に転換する化合物を指す。「四級化剤」の例としては、塩化、臭化、およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどのハロゲン化低級アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル、および硫酸ジアミルなどの硫酸ジアルキル、塩化、臭化、およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物、臭化ベンジルおよび臭化フェネチルなどのハロゲン化アラルキル、および他のものなどが挙げられる。
【0075】
典型的な実施の形態
(i).典型的な化合物およびそれらの塩
ほとんどの事例においてさまざまな式を用い、以下に有用な化合物について説明する。いずれの事例においても、式における変数は、各個別の式について明確に定義される。1つの式についての変数の定義は、別の式で提供される定義を変化させるのに使用すべきではないが、1つの式について定義されていない変数は、他の同様の式についての定義との類推で解釈して差し支えない。
【0076】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式Iの化合物:
【化11】
【0077】
またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R1およびR2は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、または−C(=O)−C(R6)3を表し;
R3およびR4は、独立して、H、またはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒にボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
nは1〜4の整数であり;
R6は、H、アルキル、ハロ、またはアリールである。
【0078】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1はHまたは低級アルキルを表す。
【0079】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1はHを表す。
【0080】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHまたは低級アルキルを表す。
【0081】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表す。
【0082】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0083】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、メチル、エチル、またはプロピルを表す。
【0084】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3はメチルを表す。
【0085】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4はHまたは低級アルキルを表す。
【0086】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4はHを表す。
【0087】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5はHまたは低級アルキルを表す。
【0088】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5はHを表す。
【0089】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは1、2、または3である。
【0090】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは2である。
【0091】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここでY1はOHである。
【0092】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y2はOHである。
【0093】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1はOHであり;およびY2はOHである。
【0094】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1およびY2は、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表す。
【0095】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1はHであり;R2はHであり;R3はメチルであり;R4はHであり;R5はHであり;nは2であり;Y1はOHであり;Y2はOHである。
【0096】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式IIの化合物:
【化12】
【0097】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0098】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式IIIの化合物:
【化13】
【0099】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0100】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、約10nm以下、約1.0nm以下、約0.1nm以下、または約0.01nm以下のDPIV阻害についてのKiを有するDPIV阻害剤である。実際、ピコモルおよびフェムトモル範囲のKi値を有する阻害剤も意図されている。
【0101】
対象とする化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、毒性のない有機または無機酸から得られる、化合物の従来の毒性のない塩または第4級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の毒性のない塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から得られるもの;および、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製される塩が挙げられる。
【0102】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法による塩基または酸部分を含む、対象とする化合物から合成することができる。一般に、塩は、適切な溶媒において、遊離の塩基または酸を、所望の塩を形成する、化学量論量または過剰の無機または有機の酸または塩基と反応させることによって調製される。対象とする化合物の薬学的に許容される酸塩は、本発明の化合物の酸を、適量の、水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムまたはマグネシウム)などの塩基または、アミン、ピペリジン、ピロリジン、ベンジルアミンなどの有機塩基、または水酸化テトラメチルアンモニウムなどの第4級水酸化アンモニウムで処理するなどの従来の手法によって容易に調製される。
【0103】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式IVの化合物:
【化14】
【0104】
またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R'は、H、あるいは、非置換であるか、またはヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、アミン、アミド、チオ、C1−3アルキルチオ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはグアニジニウム基で置換されてもよい低級アルキルを表し;
R"は、Hまたは低級アルキルであり;
R1aは、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、−C(=O)−C(R6)3 、C末端に結合したアミノ酸またはペプチドまたはそれらの類似体、またはアミノ保護基を表し;
R2bは、Hまたは低級アルキルを表すか、またはR’aと一緒に5、6または7員環を形成し;
R3aは低級アルキルを表し;
R6は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、ハロ、またはアリールであり;
Y1およびY2は、独立して、−OH、−OR5、または−OHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に通常の生理学的条件下でボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成する。
【0105】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3aはメチルである。
【0106】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1およびY2は−OHである。
【0107】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1aは、H、またはアミノ保護基、およびR2bはHを表す。
【0108】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、R”はHを表す。
【0109】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、化合物は、100nm以下のKiを有するポストプロリン切断酵素を阻害する。
【0110】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述の化合物のいずれか1つに関し、ここで、ポストプロリン切断酵素は、ペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である。
【0111】
ある特定の実施の形態では、式IVの化合物は、下記:
【化15】
【0112】
からなる群より選択される。
【0113】
本発明の別の実施の形態は、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害するための医薬品の製造における、前述の化合物のいずれか1つの使用に関する。
【0114】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つの使用に関し、ここで、ポストプロリン切断酵素はジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である。
【0115】
ある特定の実施の形態では、本発明は、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療のための前述の化合物のいずれか1つの使用に関する。
【0116】
ある特定の実施の形態では、本発明は、腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方のための前述の化合物のいずれか1つの使用に関する。
【0117】
本発明のさらに別の実施の形態は、前述の化合物のいずれか1つ、またはそれらの医薬製剤を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法を含む。
【0118】
本発明の別の実施の形態は、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性の阻害に使用するための前述の化合物のいずれかを含む。ある特定の実施の形態では、ポストプロリン切断酵素はジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である。
【0119】
本発明のさらに別の実施の形態は、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療に使用するための前述の化合物のいずれかを含む。
【0120】
本発明の別の実施の形態は、腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方に使用するための前述の化合物のいずれかを含む。
【0121】
(ii).典型的なプロドラッグ形態
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つのプロドラッグ形態に関する。ある特定の実施の形態では、前述の化合物のいずれか1つはプロドラッグである。これらの「プロソフト」阻害剤は、活性化して、活性阻害剤部分を標的プロテアーゼの近くに放出する不活性薬剤である。
【0122】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式V:
【化16】
【0123】
のプロドラッグ化合物に関し、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
R2は、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R8)3、または−C(=O)−C(R8)3を表し;
R3およびR4は、独立して、Hまたはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に、ボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
Lは存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
R8は、H、アルキル、ハロ、またはアリールを表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
nは、1〜4の整数である。
【0124】
ある特定の実施の形態では、本発明は式VI:
【化17】
【0125】
のプロドラッグ化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す。
【0126】
ある特定の実施の形態では、本発明は、式VII:
【化18】
【0127】
のプロドラッグ化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す。
【0128】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0129】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表す。
【0130】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0131】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3は、メチル、エチル、またはプロピルを表す。
【0132】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R3はメチルを表す。
【0133】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0134】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R4はHを表す。
【0135】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5は、Hまたは低級アルキルを表す。
【0136】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R5はHを表す。
【0137】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは1、2、または3である。
【0138】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、nは2である。
【0139】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1はOHである。
【0140】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y2はOHである。
【0141】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1はOHであり;Y2はOHである。
【0142】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Y1およびY2は、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表す。
【0143】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Lは存在しない。
【0144】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Xは存在しない。
【0145】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、Yは存在しない。
【0146】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖である。
【0147】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;およびプロリンは、Lに直接結合したアミノ酸残基である。
【0148】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖である。
【0149】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;およびプロリンは、Lに直接結合したアミノ酸残基である。
【0150】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lは存在せず;Xは存在せず;Yは存在せず;およびプロリンは、Nに直接結合したアミノ酸残基である。
【0151】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表し;R3はメチルを表し;R4はHを表し;R5はHを表し;nは2であり;Y1はOHであり;Y2はOHであり;Lは存在せず;Xは存在せず;Yは存在せず;およびR1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖である。
【0152】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、R2はHを表し;R3はメチルを表し;R4はHを表し;R5はHを表し;nは2であり;Y1はOHであり;Y2はOHであり;Lは存在せず;Xは存在せず;Yは存在せず;R1は、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;およびプロリンは、Nに直接結合したアミノ酸残基である。
【0153】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的および活性化プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。
【0154】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、ポストプロリル開裂プロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、DPP IV、DPP II、プロリル オリゴペプチダーゼ(PO)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、およびプロリルカルボキシペプチダーゼからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、ポストプロリル開裂プロテアーゼは、エンドペプチダーゼであり、Aはブロックされたアミノ末端を含む。
【0155】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、トロンビン(第X因子)、マトリプターゼ、ファルシパイン、前立腺特異抗原(PSA)、およびそれらの相同プロテアーゼからなる群より選択される。
【0156】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、阻害剤は、線維芽細胞活性化タンパク質によって活性化されて、前立腺特異抗原(PSA)を阻害する化合物を放出する。
【0157】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、阻害剤は、PSAによって活性化されて、プロテアソーム活性を阻害する化合物を放出する。
【0158】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼは、ポストプロリル開裂プロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼは、DPP IV、DPP II、プロリルオリゴペプチダーゼ(PO)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、およびプロリルカルボキシペプチダーゼからなる群より選択される。
【0159】
本発明のプロソフト阻害剤分子を典型的なプロドラッグと区別する特徴の1つは、本発明のある特定の実施の形態において、標的の近くに活性型で発生した阻害剤部分が、例えば、標的酵素から拡散するにつれて経時による不活化を被り、それによって、患者の他の部位で生じる酵素の阻害に起因するであろう有害な副作用の可能性を低減することである。標的酵素の近くにおける活性型の放出と、この「プログラム化された」失活機構との組合せにより、本発明の分子は、阻害剤部分のみを使用する場合よりも特異的、効果的、および安全になる(すなわち、副作用が少なくなる)。
【0160】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤の治療指数は、阻害剤部分単独の治療指数より少なくとも約2倍大きく、少なくとも約5倍大きく、少なくとも約10倍大きく、少なくとも約50倍大きく、または少なくとも約100倍大きい。
【0161】
対象とするプロソフト阻害剤の多くにおいて、阻害剤部分自体の別の改善が、溶液、油または固体の製剤など、医薬製剤における安定性を増大させる。このような安定性は、保存寿命の観点から表すことができる。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、少なくとも約7日間、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、または少なくとも約200日間のT90を有する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、少なくとも約200日間、または少なくとも約400日間のT50を有する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、固体の単回経口投与製剤として、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、または少なくとも約200日間のT90を有する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、対象とするプロソフト阻害剤は、液体の単回投与懸濁液として、少なくとも約20日間、少なくとも約50日間、少なくとも約100日間、または少なくとも約200日間のT90を有する。
【0162】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は1つ以上の不斉中心を含む。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、プロソフト阻害剤のうち少なくとも約75モル%〜約99.999モル%のユートマー(ディストマーに対して)として提供される。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99モル%から、約99.999モル%までのユートマーとして提供される。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、アミノ酸またはアミノ酸類似体のL−エナンチオマー(Cα炭素に関して)を有するユートマーである。
【0163】
一般に、対象とするプロソフト阻害剤は、阻害剤部分の標的酵素として、同一酵素によって活性化されるか、または異なる酵素によって活性化されるかに基づいて、2種類のはっきりと区別できるタイプに分けることができる。最初のタイプは、1型または標的活性化スマートプロテアーゼ阻害剤(TASPI)と称され、2つめは、2型または標的指向性スマートプロテアーゼ阻害剤(TDSPI)と称される。プロソフト阻害剤の両方の実施の形態は、標的化酵素への活性成分の特異的送達を提供し、かつ、阻害剤部分が標的酵素から離れて拡散する際に阻害剤活性の弱化をもたらす。
【0164】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIは、標的化酵素の、組織または細胞特異的阻害についてのさらなる可能性を提供する。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIは、1つの所定の細胞または組織型における所定の酵素を阻害するが、別のものは阻害しない可能性を提供する。例えば、身体の各細胞は、プロテアソームプロテアーゼ複合体を含む。プロテアソーム機能の阻害は、多くの実用的な治療および予防用途を有する。しかしながら、細胞型または組織型を選択する方法で、プロテアソーム活性の阻害をもたらすことは困難である。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIは、対象とする標的細胞または組織においてまたは隣接して発現するプロテアーゼに対するアドレス部分を有するプロソフト阻害剤を使用することにより、選択的方法でプロテアソーム阻害剤部分を送達するように構成することができる。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のTDSPIのいずれか1つに関し、ここで、TDSPIはFAPまたは前立腺特異抗原(PSA)によって活性化することができ、生じる阻害剤部分Gはプロテアソームの阻害剤である。
【0165】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、アドレス部分は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼからなる群より選択される活性化プロテアーゼの基質である。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、阻害剤部分は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼからなる群より選択される標的プロテアーゼのジペプチジル阻害剤である。ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、標的プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。
【0166】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、標的とともに作用し、限定はしないが、ジペプチジルペプチダーゼ−11(DPP−XI)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)、ジペプチジルペプチダーゼ (DPP VIII)、ジペプチジルペプチダーゼ9(DPP IX)、アミノペプチダーゼP、線維芽細胞活性化タンパク質α(セプラーゼ)、プロリル トリペプチジルペプチダーゼ、プロリルオリゴペプチダーゼ(エンドプロテイナーゼPro−C)、アトラクチン(溶解性 ジペプチジル−アミノペプチダーゼ)、アシルアミノアシル−ペプチダーゼ(N−アシルペプチドヒドロラーゼ;fMetアミノペプチダーゼ)およびリソソームプロ−Xカルボキシペプチダーゼ(アンギオテンシナーゼC、プロリルカルボキシペプチダーゼ)を含めたセリンプロテアーゼを活性化するように設計することができる。
【0167】
ある特定の実施の形態では、本発明は前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は、標的とともに作用し、限定はしないが、膜Pro−Xカルボキシペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼP)、アンジオテンシン変換酵素(ペプチジル−ジぺプチダーゼA多重ペプチダーゼ)、コラゲナーゼI(間質性コラゲナーゼ;マトリクス メタロプロテイナーゼ1;MMP−1;Mcol−A)、ADAM10(α−セクレターゼ、ミエリン関連ジスインテグリンメタロプロテイナーゼ)、ネプリリシン(アトリオペプチダーゼ;CALLA;CD10;エンドペプチダーゼ24.1 1;エンケファリナーゼ)、マクロファージエラスターゼ(メタロエラスターゼ;マトリクス メタロプロテイナーゼ12;MMP−12)、マトリリシン(マトリクス メタロプロテイナーゼ7;MMP−7)、およびニューロリシン(エンドペプチダーゼ24.16;ミクロソームエンドペプチダーゼ;ミトコンドリアオリゴペプチダーゼ)を含めたメタロプロテアーゼを活性化するように設計することができる。
【0168】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、ポストプロリル開裂プロテアーゼである。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、活性化プロテアーゼは、DPP IV、DPP II、プロリル オリゴペプチダーゼ(PO)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、およびプロリルカルボキシペプチダーゼからなる群より選択される。
【0169】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述のプロドラッグ化合物のいずれか1つに関し、ここで、プロソフト阻害剤は1種類のプロテアーゼによって活性化され、異なるプロテアーゼを阻害する。
【0170】
オレフィン、ホスホネート、アザアミノ酸類似体などのペプチド模倣薬も含まれる。
【0171】
上述の化合物の予定される等価物には、それらの化合物に対応し、予定される方法での使用における化合物の有効性に悪影響を与えない、置換基の1つ以上の単純な変化がなされた、同一の一般的性質(例えば、GLP−1または他のペプチド・ホルモンまたはそれらの前駆体のタンパク質分解を阻害する能力)を有する化合物が含まれる。一般に、本発明の化合物は、例えば、容易に入手可能な出発材料、試薬および従来の合成手順を使用して、下記の一般的な反応スキームに示される方法、またはそれらの修正方法によって調製されうる。これらの反応において、それ自体は知られているが本明細書では言及されていない、変形を活用することも可能である。
【0172】
(iii).GLP−1の作動性効果
本方法に有用な化合物は、ある特定の実施の形態では、血糖値を低下し、肥満を軽減し、耐糖能障害を軽減し、肝臓のグルコース新生を阻害し、血中脂質濃度を低下し、アルド−ス・レダクターゼを阻害する能力を有する。したがって、それらは、高血糖症、肥満、高脂血症、糖尿病性合併症(網膜症、腎症、神経障害、白内障、冠動脈疾患および動脈硬化症を含む)の予防および/または治療、さらには、肥満に関係する高血圧症および骨粗しょう症の予防および/または治療に有用である。
【0173】
真性糖尿病は、インスリン分泌の相対的または絶対的低下、インスリン感受性の低下、またはインスリン耐性から生じる、高血糖症を特徴とする疾患である。この疾患の罹患率および死亡率は、脈管、腎臓、および神経学的合併症に起因する。経口的ブドウ糖負荷試験は、糖尿病の診断に用いられる臨床試験である。経口的ブドウ糖負荷試験では、グルコースの負荷またはチャレンジに対する患者の生理学的反応を評価する。グルコース摂取後に、グルコースチャレンジに対する患者の生理学的反応を評価する。一般に、これは、幾つかの所定の時点の患者の血糖値(患者の血漿、血清、または全血におけるグルコース濃度)を判定することによって達成される。
【0174】
1つの実施の形態では、本発明は、GLP−1の作用を作動させる方法を提供する。腸および後脳におけるグルカゴン前駆体から誘導されるGLP−1(GLP−1(7−37)およびGLP−1(7−36))のイソ型は、インスリン向性(インスリン分泌性)活性を有する、すなわち、それらがグルコース代謝を調節することが判明した。DPIVはイソ型を切断してペプチドを不活化する。よって、ある特定の実施の形態では、本発明の化合物は、生物活性のGLP−1ペプチドの分解を妨げることによって、インスリン向性(インスリン分泌性)活性を作動させることができる。
【0175】
ある特定の実施の形態では、方法は、肥満に関する異常な指数を改善するのに有効な量で、DPIV阻害剤を投与することを包含する。脂肪細胞はホルモン・レプチンを放出し、これが血流内を移動してレプチン受容体を通じて脳に達し、GLP−1の産生を促す。次に、GLP−1は、膨満感を生じさせる。有力な理論は、大抵の肥満の人々の脂肪細胞は、恐らくは十分なレプチンを産生しているが、レプチンが脳内のレプチン受容体と適切に連結することができず、したがって、GLP−1の産生を促さないというものである。したがって、GLP−1製剤を食欲抑制剤として活用することを対象とする多くの研究が存在する。本方法は、肥満に関係する障害の治療における、内因性GLP−1および異所的に添加したGLP−1の両方の半減期を増大する手段を提供する。
【0176】
(iv).他のペプチド・ホルモンの作動性効果
別の実施の形態では、対象とする薬物は、例えば、GLP−2、GIPおよびNPYなどのペプチド・ホルモンの活性を作動させる(例えば、模倣または強化する)のに使用することができる。
【0177】
ある特定の実施の形態では、本発明は、DPIVまたは一部の他のタンパク質分解活性による1つ以上のペプチド・ホルモンのタンパク質分解を阻害することによって、種々の異なるポリペプチド・ホルモンの薬物動態を修正する方法および組成物を提供する。分泌後代謝は、調節ペプチドの全般的な恒常性における重要な要素であり、これらのプロセスに関与する他の酵素は、本方法による薬理学的介入に適した標的でありうる。
【0178】
ある特定の実施の形態では、本方法は、グリセンチン(PG1−69に対応)、オキシントモジュリン(PG33−69)、グリセンチン関連膵臓ポリペプチド(GRPP、PG1―30)、干渉ペプチド−2(IP−2、PG111−122アミド)、およびグルカゴン様ペプチド−2(LPD−2、PG126−158)などの他のプログルカゴン由来のペプチドの半減期を増大させるのに使用することができる。例えば、グリセンチンは、腸粘膜の増殖を起こすことが実証され、胃の蠕動を抑制し、よって、消化管の疾病の治療薬として有用であることが解明され、本発明に至った。
【0179】
さらに例証するため、本発明は、GLP−2の作用を作動させる方法を提供する。GLP−2が胃腸組織の増殖を促進するための向性剤(trophic agent)として作用することが判明した。GLP−2の効果は、特に、小腸の成長を増大することを特徴とし、したがって、本明細書では「腸向性(intestinotrophic)」効果と称される。DPIVは、GLP−2を生物学的に不活性なペプチドへと切断することが知られている。よって、1つの実施の形態では、DPIVの阻害はGLP−2の分解を妨げ、それによって、そのホルモンの血漿半減期を増大させる。ある特定の実施の形態では、本発明は、例えば、クローン病または炎症性大腸炎(IBD)の治療などにおいて、腸粘膜の上皮の成長および修復促進が所望される、腸組織の損傷、炎症、または切除を治療する方法に関する。
【0180】
よって、1つの態様において、本発明は、胃腸組織、さらに具体的には小腸組織の成長および増殖を促進する化合物の、治療およびそれに関連する使用に関する。例えば、本方法は、例えば、腸粘膜の上皮の成長および修復促進が所望される、腸組織の損傷、炎症、または切除を治療するための計画の一環として使用することができる。
【0181】
一般に、小腸の質量増大、および、結果として生じる小腸の粘膜機能の増大のいずれかの利益を享受する患者は、目的とする方法による治療の対象者である。
【0182】
さらに一般的には、本発明は、消化管疾病を治療するための治療方法を提供する。本方法は、腸粘膜の増殖を促進することから、消化吸収における機能不全の病理学的状態の治療および予防、すなわち、粘膜の萎縮の治療および予防、または消化管組織の形成不全および外科的切除によるこれらの組織の低下の治療、ならびに消化吸収の改善に使用することができる。さらには、本方法は、腸炎、クローン病、および潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患に起因する病理学的粘膜状態の治療、および、術後の消化管機能の低下の治療にも使用することができる。さらには、グリセンチンは、手術侵襲の治癒促進ならびに消化管機能の改善に効果的に使用することができる。よって、本発明は、グリセンチンを活性成分として含む、消化管粘膜の委縮治療薬、消化管創傷治療薬および、消化管機能を促進する薬物も提供する。
【0183】
同様に、本発明の化合物は、セクレチン、VIP、PHI、PACAP、GIP、および/またはヘロデルミンの血漿半減期の修正に使用することができる。加えて、DPIVは、受容体選択性を修正する方法において、それらペプチドの処理に関与することから、本方法は、膵臓ポリペプチド類の一種である、ペプチドYYおよび神経ペプチドYの薬物動態の改変に使用することができる。
【0184】
神経ペプチドY(NPY)は、血管平滑筋の緊張の調節、ならびに血圧の調節に作用すると考えられる。NPYはまた、心筋収縮能を低下させる。NPYは、最も強力な、既知の食欲刺激剤でもある(Wilding et al., J. Endocrinology 1992, 132, 299-302)。中枢誘起性の食物摂取(食欲増進)効果は、大部分がNPY Y1受容体介在性であり、体脂肪の蓄積および肥満の増大を引き起こす(Stanley et al., Physiology and Behavior 1989, 46, 173-177)。
【0185】
本発明によれば、食欲不振の治療方法は、化合物を有効量で宿主対象に投与して食欲を刺激し、かつ、体脂肪の蓄積を増加させ、それによって食欲不振の症状を実質的に軽減することを包含する。
【0186】
ある特定の実施の形態では、本発明は、体脂肪または脂質の蓄積を制御する方法に関する。
【0187】
DPIVは、成長ホルモン放出因子(GHRF)の代謝および不活化にも関与している。GHRFは、グルカゴン、セクレチン、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、胃抑制ペプチド(GIP)、およびヘロデルミンを含めた、相同ペプチドの一種である(Kubiak et al. Peptide Res. 1994, 7, 153)。GHRFは、視床下部から分泌し、下垂体前葉からの成長ホルモン(GH)の放出を促す。よって、本方法は、ある特定の成長ホルモン分泌不全性の子供の臨床治療、および、成人の栄養改善および体組成(筋肉と脂肪)の修正のための臨床治療に使用することができる。本方法はまた、例えば、高収量の乳汁産生、および、高収量の引き締まった家畜を開発するため、獣医学診療に使用することもできる。
【0188】
(v).造血作動薬(Hematopoietic agonists)
さらに別の態様では、本発明は、培養またはインビボにおける造血細胞を刺激する方法を提供する。ある特定の実施の形態では、対象とするDPP IVプロ阻害剤は、骨髄に発現するプロテアーゼの基質であるアドレス部分を含む。
【0189】
本発明の1つの態様によれば、インビトロにおける造血細胞を刺激する方法が提供される。本方法は、(1)前記造血細胞を十分な量のDPP IVプロ阻害剤と接触させて、造血細胞の数および分化に対する、造血細胞の数および/またはこれら造血細胞の分化を増大させることを包含する。
【0190】
ある特定の実施の形態では、化合物は、例えば、腫瘍増殖および転移などに関する細胞増殖の阻害など、形質転換細胞/組織の成長または脈管化の阻害、および、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害に使用することができる。さらに他の実施の形態では、化合物は、例えば、免疫抑制剤として、免疫応答の低減に使用することができる。
【0191】
本発明の重要な態様の1つは、対象における造血細胞数の欠乏を復元または予防することを包含する。このような欠乏は、例えば、遺伝的異常、疾患、ストレス、化学療法(例えば、細胞毒性薬治療、ステロイド薬治療、免疫抑制薬治療など)、および放射線治療に起因して生じうる。
【0192】
よって、インターロイキン−1、2、3、4、5、6,7、9、10、11、12、13、および17は、リンパ球 分化に関与することが知られている。インターロイキン3および4は、マスト細胞の分化に関与する。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、インターロイキン−3およびインターロイキン−5は、好酸球の分化に関与する。GMCSF、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)およびIL−3は、マクロファージの分化に関与する。
【0193】
GMCSF、GCSFおよびIL−3は、好中球の分化に関与する。GMSCF、IL−3、IL−6、IL−11およびTPOは、血小板の分化に関与する。Flt3リガンドは樹枝状細胞の成長に関与する。GMCSF、IL−3、およびエリスロポエチンは、赤血球の分化に関与する。
【0194】
最後に、造血を持続することができる原始多能性前駆細胞の自己再生は、SCF、Flt3リガンド、G−CSF、IL−3、IL−6およびIL−11を必要とする。所望の結果を達成するためのさまざまな組合せは、当業者にとって明らかであろう。
【0195】
(vi).併用投与
本発明の別の態様は、1つ以上の他の治療薬を本化合物とともに投与する、併用療法を提供する。このような併用治療は、治療の個々の成分の同時、逐次、または分離投与によって達成されうる。
【0196】
多くの医薬品または治療薬は、当技術分野で認識されており、本発明の医薬組成物における使用に従順である。「医薬品」という用語には、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒または軽減に使用する物質;または身体の構造または機能に影響を与える物質;または、生物学的に活性になる、または所定の生理環境に置かれた後により活性になるプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
1つの実施の形態では、化合物は、GLP−1などのインスリンまたは他のインスリン分泌促進薬、GLP−2、GIP、またはNPYなどのペプチド・ホルモン、または前記薬剤およびペプチド・ホルモンの異所性発現を引き起こす遺伝子治療ベクターと併せて投与される。ある特定の実施の形態では、前記薬剤またはペプチド・ホルモンは、1つ以上のアミノ酸が加えられた、削除された、または置換された、天然または合成のペプチド・ホルモンの変異形であって差し支えない。
【0198】
別の例となる実施の形態では、化合物はM1受容体拮抗薬と併せて投与することができる。コリン作動薬は、ムスカリン性受容体を介して作用するインスリン放出の強力なモジュレータである。さらには、このような薬剤の使用は、HDL濃度の上昇とともに、コレステロール濃度低下の付加利益を有しうる。適切なムスカリン性受容体拮抗薬には、ムスカリン性のコリン作動性受容体の活性化を直接または間接的にブロックする物質が含まれる。好ましくは、これらの物質はM1受容体選択性である(またはこのような選択性を促進する量で用いられる)。非限定的な例としては、第4級アミン(メタンテリン、イプラトロピウム、およびプロパンテリンなど)、第3級アミン(例えば、ジサイクロミンおよびスコポラミンなど)、および三環式のアミン(例えば、テレンゼピン)が挙げられる。ピレンゼピンおよびメチルスコポラミンが好ましい。他の適切なムスカリン性受容体拮抗薬としては、ベンズトロピン(Merck社からCOGENTINとして市販される)、ヘキサヒドロシラジフェニドール・塩酸塩(Lambrecht et al, Trends in Pharmacol. Sci. 1989, 10 (Suppl), 60に開示されるHHSID塩酸塩;(+/-)−3−キヌクリジニルキサンテン−9−カルボキシレートヘミオキサレート(QNX−ヘミオキサレート;Birdsall et al., Trends in Pharmacol. Sci. 1983, 4, 459;テレンゼピンジヒドロクロリド(Coruzzi et al. Arch. Int. Pharmacodyn. Ther. 1989, 302, 232;およびKawashima et al. Gen. Pharmacol. 1990, 21, 17)、およびアトロピンが挙げられる。これらのムスカリン性受容体拮抗薬の用量は、一般に、上記概略のように最適化に供される。脂質代謝障害の場合には、用量最適化は、脂質代謝反応性の手段を参照することによって投与タイミングを合わせるか否かとは無関係である必要があろう。
【0199】
インスリンおよび脂質代謝の制御および前述の障害の低減に関して、本化合物はまた、d2ド−パミン作動薬(例えば、ブロモクリプチン)などのプロラクチン阻害剤と相乗的に作用しうる。したがって、本方法には、プロラクチン阻害麦角アルカロイドおよびプロラクチン阻害ド−パミン作動薬などのプロラクチン阻害剤の併用投与を含めることができる。適切な化合物の例として、2−ブロモ−α−エルゴクリプチン、6−メチル−8−β−カルボベンジルオキシアミノエチル−10−α−エルゴリン、8−アシルアミノエルゴリン、6−メチル−8−α−(N−アシル)アミノ−9−エルゴリン、6−メチル−8−α−(N−フェニルアセチル)アミノ−9−エルゴリン、エルゴコルニン、9,10−ジヒドロエルゴコルニン、D−2−ハロ−6−アルキル−8−置換エルゴリン、D−2−ブロモ−6−メチル−8−シアノメチルエルゴリン、カルビドパ、ベンセラジド、および他のドパ脱炭酸酵素阻害剤、L−ド−パ、ド−パミン、およびそれらの非毒性の塩が挙げられる。
【0200】
本発明に従って用いられる化合物は、グリベンクラミド、グリピジド、グリクラジド、およびAG−EE 623 ZWなどのβ−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬剤と併用することもできる。化合物はまた、メトホルミンおよび関連化合物などの他の経口剤または、例えばアカルボースなどのグルコシダーゼ阻害剤と組み合わせて、有利に適用してもよい。
【0201】
(vii).医薬組成物
ある特定の実施の形態では、本発明は、
薬学的に許容される担体;および
前述の化合物のいずれかまたはそれらの薬学的に許容される塩
を含む医薬組成物に関する。
【0202】
本発明の化合物を単独で投与することが可能であるが、ある特定の事例では、化合物を薬剤製剤(組成物)として投与することが好ましい。プロテアーゼ阻害剤、およびプロドラッグ自体の形態は、本発明によれば、ヒトまたは獣医学的医薬に使用するのに便利な任意の方法で投与するために製剤化されて差し支えない。ある特定の実施の形態では、医薬製剤に含まれる化合物は、それ自体が活性でありうるか、または、例えば、生理的な条件において活性化合物へと転換する能力がある、プロドラッグでありうる。
【0203】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを含む医薬組成物に関する。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の組成物のいずれか1つに関し、ここで、組成物は、経口、経頬、非経口、経皮、吸入、鼻腔内、経粘膜、埋め込み、または直腸投与用に製剤化される。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の組成物のいずれか1つに関し、ここで、対象とする阻害剤は経口で利用可能であり、ヒト患者に経口投与するのに適した固体の投与組成物として提供することができる。ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の組成物のいずれか1つに関し、ここで、対象とする阻害剤は経皮的に活性であり、局所クリーム製剤または懸濁液または経皮パッチの形態で提供することができる。
【0204】
本明細書に記載するように調製された化合物は、当技術分野で周知のように、患者の治療すべき障害および年齢、状態、および体重に応じて、さまざまな形態で投与することができる。例えば、化合物が経口的に投与される場合、それらは、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、またはシロップ剤として製剤化されて差し支えなく;または非経口投与では、それらは注入剤(静脈内、筋肉内、または皮下)、点滴製剤、または坐剤として製剤化されうる。眼の粘膜経路による用途では、それらは点眼剤または眼軟膏剤として製剤化されうる。これらの製剤は従来の手段で調製することができ、必要に応じて、活性成分は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、矯味薬、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、またはコーティング剤など、従来の添加剤と混合して構わない。用量は、患者の症状、年齢および体重、治療または予防する障害の性質および重症度、薬物の投与経路および剤形に応じて変動しうるが、一般に、成人のヒト患者には、0.01〜2000mgの化合物の1日投与量が推奨され、これは、単回投与または分割投与で投与されて差し支えない。
【0205】
所定の患者の治療の有効性の観点から最も有効な結果をもたらす化合物の正確な投与時間および/または量は、特定の化合物の活性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティ、患者の生理学的条件(年齢、性別、疾病の種類および段階、全身的な身体状態、所定の用量に対する反応性、および薬剤の種類を含む)、投与経路などに応じて決まる。しかしながら、上記指針は、例えば、被験体をモニタリングし、用量および/またはタイミングを調整することから構成される日常的な実験しか必要としない、最適な投与時間および/または量の決定など、治療の微調整のための基準として使用することができる。
【0206】
湿潤剤、乳化剤、および、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料、および香料、保存料および抗酸化物質もまた、組成物中に存在していてもよい。
【0207】
薬学的に許容される抗酸化物質の例としては:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性の抗酸化物質;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性の抗酸化物質;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0208】
本発明の方法に有用な製剤としては、経口、経鼻、局所(経頬および舌下を含む)、直腸、膣内、噴霧、および/または非経口投与に適したものが挙げられる。製剤は、便利に、単位投与形態で存在していてもよく、調剤学の分野で周知の任意の方法で調製してもよい。担体材料と組み合わせて単回投与形態を生じることができる活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与方法に応じて変動する。担体材料と組み合わせて単回投与形態を生じることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物の量である。一般に、100%のうち、この量は、活性成分の約1%〜約99%の範囲であり、好ましくは約5%〜約70%、さらに好ましくは約10%〜約30%の範囲である。
【0209】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、化合物を、担体および、随意的に1つ以上の副成分と合わせる工程を有してなる。一般に、製剤は、リガンドを、液体担体、または微粉化した固体担体、またはその両方と均一および緊密に混練し、次に、必要に応じて、製品を成形することによって調製される。
【0210】
経口投与に適した製剤は、それぞれ所定の量の化合物を活性成分として含む、カプセル、カシェ剤 、丸薬、錠剤、トローチ剤(香味付けした基剤、通常はショ糖およびアカシアまたはトラガカントを使用)、粉末、顆粒、または水溶性または非水溶性の液体における溶液または懸濁液、または水中油型または油中水型の液体エマルション、またはエリキシル剤またはシロップ、または芳香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアなどの不活性の基剤を使用)、および/または口内洗浄液などの形態であって差し支えないく。化合物はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与してもよい。
【0211】
経口投与のための固体投与形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末、顆粒など)では、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなどの1種類以上の薬学的に許容される担体、および/または次のうちのいずれかと混合される:(1)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶液遅延剤;(6)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、アセチル アルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの滑剤および(10)着色剤。カプセル、錠剤、および丸薬の場合には、医薬組成物は緩衝剤も含みうる。同様の種類の固体組成物もまた、乳糖または乳糖類(milk sugars)、ならびに高分子量の ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用されてもよい。
【0212】
錠剤は、随意的に1つ以上の副成分とともに、圧縮または成形によって作られて差し支えない。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を使用して調製されうる。すりこみ錠は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化したペプチドまたはペプチド模倣薬の混合物を、適切な機械で成形することによって製造されうる。
【0213】
錠剤、および、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒などの他の固体投与形態は、随意的に、分割して、または、腸溶コーティングおよび製薬の技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製してもよい。それらは、所望の放出特性、他のポリマーマトリクス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを提供するために、例えば、種々の割合で混合したヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを使用して、その中の活性成分の持続放出または制御放出を提供するように、製剤化されてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通じたろ過によって、または、使用直前に、滅菌水、または一部の他の滅菌注入可能な溶剤に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を導入することによって、滅菌されうる。これらの組成物はまた、随意的に乳白剤を含んでもよく、随意的に遅延方式で、胃腸管のある特定の部位に、活性成分のみを、または、選択的に放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性成分はまた、適切な場合には、上述の賦形剤の1種類以上とともに、マイクロカプセルの形態であってもよい。
【0214】
経口投与のための液体投与形態としては、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体の投与形態には、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などの乳化剤など、当技術分野で一般に用いられる不活性希釈剤が含まれうる。
【0215】
不活性希釈剤のほかに、経口組成物には、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、着色料、香料、および保存剤などの助剤を含めることもできる。
【0216】
懸濁液には、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタン・エステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天−寒天およびトラガカント、およびそれらの混合物などの懸濁剤を含めてもよい。
【0217】
直腸または膣内投与のための製剤は、坐剤として存在して差し支えなく、これは、1つ以上の化合物を、室温では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸または膣内で溶解して活性薬剤を放出する、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩などを含む、1種類以上の適切な刺激性のない賦形剤または担体と混合することによって調製されうる。
【0218】
膣内投与に適した製剤には、当技術分野で適切であると知られるこれらの担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、泡状、または噴霧製剤も含まれる。
【0219】
化合物の局所または経皮投与のための投与形態としては、粉末、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、溶液、パッチ、および吸入剤が挙げられる。活性成分は、薬学的に許容される担体、および、必要とされうる任意の保存料、緩衝剤、または推進剤と、滅菌条件下で混合して差し支えない。
【0220】
軟膏、ペースト、クリーム、およびジェルには、化合物に加えて、動物および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース 誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含めることができる。
【0221】
粉末および噴霧剤には、化合物に加えて、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含めることができる。加えて、噴霧剤には、クロロフルオロ炭化水素などの通常の推進剤および、ブタンおよびプロパンなどの揮発性の非置換の炭化水素を含めることができる。
【0222】
化合物は、あるいは、噴霧投与することもできる。これは、化合物を含む水性の噴霧剤、リポソーム製剤、または固体粒子を調整することによって達成される。非水溶性の(例えばフッ化炭素推進剤などの)懸濁液を使用することもできよう。超音波ネブライザは、化合物の崩壊を生じうる、薬剤のせん断への曝露を最小限に抑えることから、好ましい。
【0223】
通常、水性の噴霧剤は、薬剤の水性の溶液または懸濁液を従来の薬学的に許容される担体および安定剤と一緒に製剤化することによって作られる。担体および安定剤は、特定の化合物の要件に応じて変動するが、典型的には、非イオン性の界面活性剤(Tweens、Pluronics、またはポリエチレングリコール)、無毒のタンパク様血清アルブミン、ソルビタン・エステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩、糖類、または糖アルコールなどが含まれる。噴霧剤は、一般に、等張液から調製される。
【0224】
本発明に従った吸入または噴霧製剤で投与されうる医薬品は、選択された推進系に溶解性または実質的に溶解性の形態で存在しうる、吸入療法に有用なプロテアーゼ阻害剤プロドラッグを含む。
【0225】
微粒子医薬品の粒径は、噴霧製剤の投与の際に、実質的にすべての医薬品の肺への吸入が可能でなければならず、20μm未満が望ましく、好ましくは1〜10μmの範囲であり、例えば、1〜5μmである。医薬品の粒径は、例えばミル粉砕または微粒子化などの従来の手段によって縮小して差し支えない。
【0226】
医薬品の投与は、軽症、中程度、または重症の急性または慢性の症状の治療、または予防的治療に適用されうる。正確な投与用量は、患者の年齢および状態、使用する特定の微粒子医薬品および投与頻度に応じて決まり、最終的には主治医の裁量であることが認識されよう。医薬品の組合せが用いられる場合、組合せの各成分の用量は、一般に、単独で使用する場合に各成分について用いられる用量である。典型的には、投与は、例えば、1日あたり1〜8回など、1回以上であって差し支えなく、毎回、例えば1、2、3または4回の吸入(puffs)が与えられる。投与は1日1回であることが好ましい。
【0227】
投与では、薬物は、ゼラチン、プラスチックまたは他のカプセル、カートリッジまたはブリスター・パックを使用して、ネブライザから、加圧式定量噴霧吸入器から、または乾燥粉末吸入器(例えば、TURBUHALER(登録商標)として販売)から乾燥粉末として、または、乾燥粉末吸入器から、適切に吸入される。
【0228】
希釈剤または担体は、一般に、毒性がなく、医薬品に対して化学的に不活性であり;例えば、乳糖、デキストラン、マンニトール、ブドウ糖または医薬品に所望の味を与える任意の添加剤を、粉末化した医薬品に加えることができる。
【0229】
微粉化混合物は、絞り弁で封止され、プラスチックの作動装置に組み込まれた容器に入れた液体推進剤混合物に懸濁または溶解させてもよい。使用する推進剤は、さまざまな化学式のハロカーボンでありうる。最も頻繁に用いられるハロカーボン推進剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、テトラフルオロエタン、および1,1−ジフルオロエタンである。低濃度の、ソルビタントリオレエート、レシチン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、またはオレイン酸などの界面活性剤もまた、物理的安定性の改善のために使用して差し支えない。
【0230】
経皮パッチは、身体への化合物の制御送達の提供という追加の利点を有する。このような投与形態は、薬剤を適切な溶剤に溶解または分散させることによって製造することができる。吸収促進薬もまた、皮膚上の化合物のフラックスの増大に使用することができる。このようなフラックスの速度は、速度制御膜の提供またはポリマーマトリクスまたはゲルへのペプチド模倣薬の分散によって制御することができる。
【0231】
眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末、溶液なども、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0232】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は1つ以上の化合物を、1種類以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液またはエマルション、または使用直前に滅菌注入可能な溶液または分散液へと再構成されうる滅菌粉末と組み合わせて含み、これは、抗酸化物質、緩衝剤、静菌薬、製剤を対象とする受益者の血液と等張にする溶質、または懸濁または増粘剤を含みうる。
【0233】
本発明の医薬組成物に用いられうる適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とする粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0234】
これらの組成物には、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの助剤を含めてもよい。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール ソルビン酸などのさまざまな抗菌剤および抗真菌剤を包含させることによって確実にしてもよい。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることも望ましいであろう。加えて、注入可能な剤形の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらされうる。
【0235】
一部の事例では、薬物の効果を引き延ばすために、皮下または筋肉内注入による薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶性の乏しい結晶質または非晶質の材料の懸濁液の使用によって達成されうる。薬物の吸収率はその溶解率に応じて決まり、これは、すなわち、結晶の大きさおよび結晶形状に応じて決まりうる。あるいは、非経口的に投与される薬物形態の遅延吸収は、油媒体に薬物を溶解または懸濁することによって達成される。
【0236】
注入可能なデポ製剤は、ポリ乳酸−ポリグリコール酸などの生分解性ポリマーに化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって製造される。薬物のポリマーに対する比、および、使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度は制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。注入可能なデポ製剤はまた、薬物を、体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルションに封入することによって調製される。
【0237】
本発明の化合物がヒトおよび動物に対する薬剤として投与される場合、それ自体を与えるか、または、薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば、0.1〜99.5%(さらに好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を含む医薬組成物として、投与することもできる。
【0238】
薬剤の製剤は、経口的に、非経口的に、局所的に、または直腸的に投与して差し支えない。それらは、当然ながら、各投与経路に適した形態で与えられる。例えば、それらは、錠剤またはカプセルの形態で、注入、吸入、目薬、軟膏、坐剤、点滴によって;ローションまたは軟膏によって局所的に;および坐剤によって直腸投与される。経口投与が好ましい。
【0239】
「非経口投与」および「非経口的に投与された」という語句は、本明細書では、経腸投与および局所性投与以外の、通常は注入による、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内への注入および導入を含むがこれに限定されるものではない、投与方法を意味する。
【0240】
「全身投与」、「全身的に投与した」、「末梢投与」および「末梢的に投与した」という語句は、本明細書では、患者の体内システムに入り、代謝および他の同様のプロセスにさらされるように、リガンド、薬物、または他の材料の、中枢神経系に直接投与する以外の、例えば、皮下投与などの投与を意味する。
【0241】
これらの化合物は、経頬的におよび舌下を含めた、例えば、噴霧などによって経口的、経鼻的に、粉末、軟膏または点滴剤によって直腸、膣内、非経口、大槽内、および局所的に、任意の適切な投与経路によって、治療のためにヒトおよび他の動物に投与されうる。
【0242】
動物飼料への本発明の活性化合物の添加は、活性化合物を有効量で含む適切な飼料予混合物を調製し、前記予混合物を全飼料配合物に取り込むことによって達成されることが好ましい。
【0243】
あるいは、活性成分を含む中間濃縮物または飼料補助剤を、飼料に混合することもできる。これらの飼料予混合物および全飼料配合物を調製および投与する方法は、参考文献(例えばApplied Animal Nutrition;San Francisco:Freedman, 1969;またはLivestock FeedsおよびFeeding;Corvallis:O & B Books, 1977)に記載されている。
【0244】
選択される投与経路にかかわらず、本発明の、適切な水和した形態で使用されうる化合物および/または医薬組成物は、当業者に知られた従来の方法によって、薬学的に許容される投与形態に製剤化される。
【0245】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性を有さずに、特定の患者の所望の治療反応、組成、および投与方法を達成するのに有効な活性成分の量をもたらすように変動しうる。
【0246】
(viii).薬剤包装および製造
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つ;およびそれらの使用説明書を含む、包装された薬剤に関する。
【0247】
ある特定の実施の形態では、本発明は推奨用量および/または患者への製剤の投与について記載された説明書(文書および/または図解)と関連して、薬学的に許容される賦形剤に調合された本発明の1つ以上の阻害剤を含む、包装された薬剤に関する。このような説明書は、疾病の治療または予防についての詳細、ならびに、随意的に、可能性のある副作用および薬物間または薬物−食物間の相互作用の警告を含みうる。
【0248】
本発明のさらに別の態様は、
a.1つ以上の対象とする阻害剤を製造し;
b.ヘルスケア提供者に対し、本明細書に記載される疾病または徴候のいずれかを治療または予防する製剤を使用することの利益を売り込む
ことを含む、医薬品事業を行うための方法に関する。
【0249】
ある特定の実施の形態では、対象とする事業方法は、製剤を販売するための流通機構を提供することを含む。本方法はまた、本明細書に記載される疾病または徴候のいずれかを治療および予防するために、患者または医師に、製剤を使用するための説明資料を提供することも含みうる。
【0250】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記説明書は、グルコース代謝の制御またはポストプロリン切断酵素の阻害に関する。
【0251】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記説明書は、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原の阻害における使用を含む。
【0252】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、インスリン、インスリン分泌促進薬またはその両方と一緒に調合されるか、または一緒に包装される。
【0253】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の包装された薬剤のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、M1受容体拮抗薬、プロラクチン阻害剤、β−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬物、メトホルミン、グルコシダーゼ阻害剤またはそれらのいずれかの組合せと一緒に調合されるか、または一緒に包装される。
【0254】
(ix).本発明の典型的な方法
ある特定の実施の形態では、本発明は、前記酵素を前述の化合物のいずれか1つと接触させることを含む、ポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0255】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前記酵素が哺乳動物のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)である、前述の方法のいずれか1つに関する。
【0256】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0257】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の方法のいずれか1つに関し、ここで、本方法は、グルカゴン様ペプチド、NPY、PPY、セクレチン、GLP−1、GLP−2、およびGIPからなる群より選択されるペプチド・ホルモンの患者の血漿濃度を上昇させる。
【0258】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるグルコース代謝を制御する方法に関する。
【0259】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の方法のいずれか1つに関し、ここで、前記患者は、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症(カイロミクロン、VLDLおよびLDLなど)を患っている。
【0260】
ある特定の実施の形態では、本発明は、インスリン、インスリン分泌促進薬またはその両方を治療に有効な量で前記患者に投与することをさらに含む、前述の方法のいずれか1つに関する。
【0261】
ある特定の実施の形態では、本発明は、M1受容体拮抗薬、プロラクチン阻害剤、β−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬物、メトホルミン、グルコシダーゼ阻害剤またはそれらのいずれかの組合せを治療に有効な量で前記患者に投与することをさらに含む、前述の方法のいずれか1つに関する。
【0262】
ある特定の実施の形態では、本発明は、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原を、前述の化合物のいずれか1つと接触させることを含む、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0263】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つを、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるプロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法に関する。
【0264】
ある特定の実施の形態では、本発明前述の方法のいずれか1つに関し、ここで、前記化合物は、グルコース代謝 障害(例えば、耐糖能異常、インスリン耐性、高血糖症、高インスリン血症、およびII型糖尿病)に関する異常な指数を改善するのに有効な量で、24時間の間、所定の間隔で投与される。化合物の有効量は、被験体の約0.01、0.1、1、10、30、50、70、100、150、200、500、または1000mg/kgでありうる。
【0265】
ある特定の実施の形態では、本発明は、前述の化合物のいずれか1つの単回投与に関する。ある特定の実施の形態では、本発明は、単回投与のいずれか1つに関し、ここで、前記単回投与は、ボーラス注入法、経口投与または吸入投与の形態である。ある特定の実施の形態では、本発明は、単回投与のいずれか1つに関し、ここで、前記単回投与は、持続性のインビボ効果を生じることができる。
【実施例】
【0266】
本発明を一般的に述べてきたが、以下の実施例を参照することによって、本発明のある特定の態様および実施の形態がさらに容易に理解されよう。これらの実施例は、単に例証する目的で含まれ、本発明を限定することは意図されていない。
【0267】
実施例1
Glu−boroSar(チオキソアミド)塩酸塩の合成
化合物5(式III)を形成するための合成スキ−ムを図1に示す。
【化19】
【0268】
化合物1.
N−メチルモルホリン(81.4mL、740mmol)をTHF(3000mL)中、N−Boc−L−Glu(O−t−Bu)−OH(112.5g、370mmol)の溶液に−20℃で加え、その後、クロロギ酸イソブチル(48.1mL、370mmol)を滴下により添加した。混合物を20分間攪拌し、次に、 4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミン(56.6g、370mmol)を数回に分けて加え、得られたスラリ−を−15℃で2時間攪拌し、その後、室温で一晩攪拌した。沈殿をろ過して、ろ液を蒸発乾固させた。残渣をEtOAc(2500mL)に溶解し、1MのNaH2PO4(2×500mL)、塩水(300mL)、5%のNaHCO3(2×500mL)および塩水(2×300mL)を用いて連続して洗浄した。Na2SO4を用いて有機相を乾燥し、蒸発乾固させた。EtOAc/ヘキサンに由来する残渣の結晶化により、黄色粉末として化合物1を得た(156g、96%)。
【化20】
【0269】
化合物2.
アルゴン下、P4S10(79.1g、178mmol)を、THF(3000mL)中、Na2CO3(19g、178mmol)と混合した。混合物を25℃で1.5時間攪拌し、その後0℃まで冷却した。この透明溶液に、THF(500mL)中、アニリド1(156g,356mmol)を滴下して加え、その後、0℃で30分間攪拌し、次いで室温で3時間攪拌した。混合物を、セリットを通じてろ過し、ろ液を蒸発乾固させた。残渣をEtOAc/ヘプタン(2/1、2500mL)に溶解し、5%のNaHCO3(3×500mL)で洗浄し、水層をEtOAc/ヘプタン(2/1,3×800mL)で逆抽出した。有機相を合わせて塩水(2×300mL)で洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥し、油状になるまで蒸発させた。EtOAc/ヘキサンから得た残渣の結晶化により、黄色粉末として化合物2を得た(143.2g,88.5%)。
【化21】
【0270】
化合物3.
チオアニリド2(71g,156mmol)を、40℃で穏やかに温めることにより、70%の酢酸(氷酢酸860mLおよび水370mL)に溶解し、次に、氷水で3℃まで冷却した。この溶液に、NaNO2(17g,246mmol)を、攪拌しつつ、30分間にわたり数回に分けて加えた。同一温度でさらに1時間反応させた後、氷水(4000mL)を数回に分けて添加し、得られた沈殿生成物をろ過し、冷水で洗浄した。オレンジ色の固形物をEtOAc(1500mL)に再溶解し、5%のNaHCO3(2×300mL)、および塩水(2×300mL)を用いて連続して洗浄した。Na2SO4を用いて有機相を乾燥し、真空下で蒸発させて、化合物3を黄色粉末として得た(48.3g、66.5%)。
【化22】
【0271】
化合物4.
Et3N(29mL,208mmol)を、氷水浴下、THF(600mL)中、化合物3(48.3g,103.7mmol)およびboroSar−pn.HCl(29.6g,114mmol)の溶液に滴下して加えた。次に、反応混合物を室温で1時間、攪拌した。沈殿した塩をろ過して取り除き、溶媒を真空下で蒸発させた。残渣をEtOAc(1500mL)に再溶解し、0.1NのKHSO4(2×300mL)、飽和NaHCO3水(2×300mL)、塩水(300mL)で連続して洗浄し、次に、Na2SO4を用いて乾燥した。溶媒の蒸発およびシリカゲル・クロマトグラフィ・カラム(ヘキサン/EtOAc、3:1)による残渣の精製により、チオペプチドBを得た(33.5g、61%)。
【化23】
【0272】
Glu−boroSar[チオキソアミド]塩酸(5)。無水ジクロロメタン(400mL)中、化合物4(33.5g,63.8mmol)の氷水で冷却した溶液に、HClガスを約1時間または飽和するまでバブリングした。反応混合物を室温で1.5時間攪拌し、次いで、減圧下で蒸発乾固させ、白色粉末を得た。これを予め冷却した0.01NのHCl(200mL)に溶解した。次に、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)(200mL)およびフェニルボロン酸(7.1g)を加えた。混合物を室温で1時間攪拌し、水相を分離した。MTBE層を0.05NのHCl(50mL)を用いて抽出し、水相を合せてエチルエーテルで洗浄した(3×200mL)。ロータリーエバポレーターで水相を濃縮し(<25℃)、粗生成物を、2%の溶媒B(溶媒A,4Lの水中、1.8mLのHCl;溶媒B,4Lのアセトニトリル中、1.2mLのHCl)で溶出させる分取用HPLCによって精製した。所望の画分を回収し、約60mLまで濃縮して凍結乾燥させた。得られた白色粉末を、真空下、デシケーター(NaOHおよびドライエライト)内で乾燥を続け、化合物5を得た(2段階で13.2g、76.5%)。HPLC−TAN純度:94.0%(線形形式)、6.0%(循環形式)。
【0273】
化合物5のD2O中の1H NMRスペクトルを図2に示す。
【0274】
化合物5のD2O中の11B NMRスペクトルを図3に示す。
【0275】
化合物5のLC−MSスペクトルを図4に示す。
【0276】
化合物5のHPLCスペクトルを図5に示す。
【0277】
実施例2
インビトロ検査
使用する生物学的試験方法は米国仮特許出願第60/752,017号の優先権を主張する、国際公開2007/100374号パンフレットとして公開された国際出願第PCT/US06/047853号明細書に記載されている。これらの方法は、参照することによってその全体が本明細書に取り込まれる。
【0278】
図6〜9は、さまざまな生物学的アッセイの結果を示している。これらの図におけるCLogP値はmChemDraw Ultraバージョン11.0を使用して計算した。
【0279】
特に、化合物5(図7、1段目)とそのオキシ類似体11(図6、最下段)との比較に注目されたい。化合物5は、化合物11より約66倍も強力なDPP IV阻害剤である。
【0280】
さらには、化合物5は、DPP IVの阻害について、DPP8またはDPP9よりも良好な選択性を示し、DPP IVに対して、11よりもはるかに選択的になっている(5はDPP IVに対してDPP9より6,000倍も強力であり、DPP IVに対してDPP8より13,000倍も強力であるのに対し;11は、DPP IVに対して、DPP9またはDPP8の、それぞれ、わずか430倍および2,000倍である)。
【0281】
化合物5は、インビトロにおいて、FAPおよびPREPに対する良好な選択性を実証した。これは、boroPro化合物(6、7、8、9、10、12、および13)が有しない特性である。
【0282】
実施例3
毒性
「細胞内IC50」パラメータがインビボにおける毒性と相関すると仮定した。したがって、化合物5は、毒性の観点から、図6〜9に示す化合物のうち本質的に最も好ましい細胞内IC50(IC−IC50)値を示した。IC−IC50が細胞透過性の尺度ではないことに留意することが重要である。それは、IC50と同様に、細胞透過性、DPP9に対する有効性、分子内環化反応の速度および平衡、ならびに本質的および細胞内の両方における阻害剤安定性を含めた、因子の複合である。加えて、図6〜9に見られるIC−IC50値は、pH2.0で4時間プレインキュベートした化合物から得られた。
【0283】
毒性の1つの指標として、化合物6、7、および22(化合物22は図10に示す)の最大耐性量(MTD)を、Sprague−Dawley(SD)ラットを用いた用量漸増単回投与研究において決定した。化合物6は、0.025mg/kgのMTDを有し、最も耐性があった。毒性の最初の兆候は、投与後3〜4時間で観察され、主に、活性の大幅な低下が見られた。嗜眠状態の動物に行った剖検は、腹部および胸郭器官のすべての血流増加、ならびに胃および小腸における透明液の存在を示し、胃腸(GI)毒性が示唆された。化合物7は、6よりも少なくとも200倍大きい、≧5mg/kgのMTDを示した。5mg/kgよりも多く与えられた数匹のラットは嗜眠を示し、これを殺処分し、剖検した。腸および盲腸に液体およびガスが見られ、この場合も、GI毒性が示唆された。化合物22を与えられたラットは、500mg/kgを超えて投与するまでは、有害な影響を示さず、>6の2.0×104倍を超える、7より13〜100倍大きいMTDを得た。22の900mg/kgにおいて、6匹の動物のうち3匹が致死した。致死前の苦痛または他の有害な副作用の明らかな兆候はなかった。剖検により、死亡ラットは体液で満たされた胃および小腸を有していたことが判明し、胃腸毒性が示唆された。他の臓器はすべて正常に見えた。
【0284】
化合物6は、試験化合物のうち最も有効なIC−IC50である、80nMを示した。上述のように、化合物6は最も毒性でもある。化合物7は、10.3μMのIC−IC50値を示した。化合物22の推定IC−IC50値は>7000μMである。IC−IC50値とMTD値の間には相関関係が存在する。DPP9に対する細胞内有効性は、IC−IC50値で測定して、MTDと同様に6>7>22の順に低下し、これらの阻害剤の細胞内有効性がそれらの毒性を定性的に追従することを示している。
【0285】
IC−IC50の測定値および、実証されたIC−IC50値とMTDの相関についての論述は、参照することによってその全体が本明細書に援用される、J. Med. Chem. 2008, 51 (19), 6005に示されている。
【0286】
さらには、199nMのIC−IC50を有する化合物8もまた非常に有効である。サルを用いた研究は、化合物8もまた非常に毒性であることを示した。
【0287】
しかしながら、化合物5のIC−IC50は828μMであり、化合物5は、細胞内におけるDPP9の阻害という点ではあまり有効ではないことを示唆している。実際、化合物14は、既知の抗糖尿病薬であるシタグリプチン(DPP IV阻害剤)である。そのIC−IC50は、213μMであると測定された。この測定値に基づけば、化合物5は化合物14よりも効果が少ないはずである。
【0288】
しかしながら、化合物5によって実証されたIC−IC50は、化合物5が、測定したMTDによって決定される最低毒性を示すはずであることを示唆している。予備段階の結果は、これがその事例であることを示唆している。ある実験では、13匹のオスのSDラットに300mg/kgの化合物5を与えた。24時間後、すべての動物の挙動は正常であり、毒性の兆候は見られなかった。比較として、化合物6では、0.05mg/kgの単回投与で、ラットを致死させる。
【0289】
参照による取り込み
本明細書で引用される米国特許および米国特許出願公報はすべて、参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0290】
等価物
当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な実施の形態に対する多くの等価物を、認識するか、または、日常的な実験のみを利用して確定することができるであろう。このような等価物は添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R1およびR2は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、または−C(=O)−C(R6)3を表し;
R3およびR4は、独立して、H、またはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に、1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に、ボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
nは1〜4の整数であり;
R6はH、アルキル、ハロ、またはアリールである、
化合物。
【請求項2】
R1が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1がHを表すことを特徴とする請求項1記載の化合物。。
【請求項4】
R2が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
R2がHを表すことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R3が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
R3が、メチル、エチル、またはプロピルを表すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
R3がメチルを表すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
R4がHまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
R4がHを表すことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
R5が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
R5がHを表すことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
nが1、2、または3であることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
nが2であることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
Y1がOHであることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
Y2がOHであることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
Y1がOHであり;Y2がOHであることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
Y1およびY2が、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表すことを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
R1がHであり;R2がHであり;R3がメチルであり;R4がHであり;R5がHであり;nが2であり;Y1がOHであり;Y2がOHであることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項20】
式IIの化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
式IIIの化合物:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
式Vのプロドラッグ化合物:
【化4】
であって、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
R2は、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R8)3、または−C(=O)−C(R8)3を表し;
R3およびR4は、独立して、Hまたはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に、1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;または、それらに結合するホウ素原子と一緒に、ボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
Lは存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または、−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または、−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
nは、1〜4の整数であり;
R8は、H、アルキル、ハロ、またはアリールである、
プロドラッグ化合物。
【請求項23】
R2が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項24】
R2がHを表すことを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項25】
R3が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22〜24いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項26】
R3が、メチル、エチル、またはプロピルを表すことを特徴とする請求項22〜24いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項27】
R3が、メチルを表すことを特徴とする請求項22〜24いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項28】
R4が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22〜27いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項29】
R4がHを表すことを特徴とする請求項22〜27いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項30】
R5が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22〜29いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項31】
R5がHを表すことを特徴とする請求項22〜29いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項32】
nが1、2、または3であることを特徴とする請求項22〜31いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項33】
nが2であることを特徴とする請求項22〜31いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項34】
Y1がOHであることを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項35】
Y2がOHであることを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項36】
Y1およびY2がOHであることを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項37】
Y1およびY2が、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表すことを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項38】
Lが存在しないことを特徴とする請求項22〜37いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項39】
Xが存在しないことを特徴とする請求項22〜38いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項40】
Yが存在しないことを特徴とする請求項22〜39いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項41】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項42】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項43】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項44】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項45】
R1が2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22〜37いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項46】
R2がHを表し;R3がメチルを表し;R4がHを表し;R5がHを表し;nが2であり;Y1がOHであり;Y2がOHであり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項47】
R2はHを表し;R3がメチルを表し;R4がHを表し;R5がHを表し;nが2であり;Y1がOHであり;Y2がOHであり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項48】
式VIのプロドラッグ化合物:
【化5】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または、−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または、−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す、
プロドラッグ化合物。
【請求項49】
Lが存在しないことを特徴とする請求項48記載のプロドラッグ化合物。
【請求項50】
Xが存在しないことを特徴とする請求項48または49記載のプロドラッグ化合物。
【請求項51】
Yが存在しないことを特徴とする請求項48〜50いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項52】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項53】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項54】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項55】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項56】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項48記載のプロドラッグ化合物。
【請求項57】
式VIIのプロドラッグ化合物:
【化6】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す、
プロドラッグ化合物。
【請求項58】
Lが存在しないことを特徴とする請求項57記載のプロドラッグ化合物。
【請求項59】
Xが存在しないことを特徴とする請求項57または58記載のプロドラッグ化合物。
【請求項60】
Yが存在しないことを特徴とする請求項57〜59いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項61】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項62】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項63】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項64】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項65】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項57記載のプロドラッグ化合物。
【請求項66】
薬学的に許容される担体;および、請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項67】
前記酵素を請求項1〜65いずれか1項記載の化合物と接触させる工程を有してなる、ポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項68】
前記酵素が哺乳動物のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項69】
請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項70】
グルカゴン様ペプチド、NPY、PPY、セクレチン、GLP−1、GLP−2、およびGIPからなる群より選択されるペプチド・ホルモンの患者の血漿濃度を増加することを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項71】
請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるグルコース代謝を制御する方法。
【請求項72】
前記患者が、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症を患っていることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項73】
インスリン、インスリン分泌促進薬、またはその両方を、治療に有効な量で、前記患者に投与することをさらに含む、請求項71または72記載の方法。
【請求項74】
M1受容体拮抗薬、プロラクチン阻害剤、β−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬物、メトホルミン、グルコシダーゼ阻害剤またはそれらのいずれかの組合せを、治療に有効な量で、前記患者に投与することをさらに含む、請求項71〜73いずれか1項記載の方法。
【請求項75】
プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原を、請求項1〜65いずれか1項記載の化合物と接触させることを含む、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項76】
請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるプロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項77】
式IVの化合物:
【化7】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R’は、H、あるいは、非置換であるか、または、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、アミン、アミド、チオ、C1−3アルキルチオ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはグアニジニウム基で置換されうる低級アルキルを表し;
R"はHまたは低級アルキルを表し;
R1aは、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、−C(=O)−C(R6)3、C末端に結合したアミノ酸またはペプチドまたはそれらの類似体、またはアミノ保護基を表し;
R2bは、H、低級アルキルを表すか、または、R’aと一緒に5、6または7員環を形成し;
R3aは低級アルキルを表し;
R6は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、ハロ、またはアリールであり;
Y1およびY2は、独立して、−OH、−OR5、または−OHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に、通常の生理学的条件下でボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成する、
化合物。
【請求項78】
R3aがメチルであることを特徴とする請求項77記載の化合物。
【請求項79】
Y1およびY2が−OHであることを特徴とする請求項77または78記載の化合物。
【請求項80】
R1aがH、またはアミノ保護基を表し、R2bがHを表すことを特徴とする請求項77〜79いずれか1項記載の化合物。
【請求項81】
R"がHを表すことを特徴とする請求項77〜80いずれか1項記載の化合物。
【請求項82】
前記化合物が100nm以下のKiを有するポストプロリン切断酵素を阻害することを特徴とする請求項77〜81いずれか1項記載の化合物。
【請求項83】
前記ポストプロリン切断酵素がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項82記載の化合物。
【請求項84】
前記化合物が、下記:
【化8】
からなる群より選択されることを特徴とする請求項77記載の化合物。
【請求項85】
患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害するための医薬品の製造における、請求項77〜84いずれか1項記載の化合物の使用方法。
【請求項86】
前記ポストプロリン切断酵素がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項85記載の使用方法。
【請求項87】
II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療のための請求項85記載の使用方法。
【請求項88】
腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方のための請求項85記載の使用方法。
【請求項89】
請求項77〜84いずれか1項記載の化合物、またはそれらの医薬製剤を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項90】
患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性の阻害に使用するための請求項77〜84いずれか1項記載の化合物。
【請求項91】
前記ポストプロリン切断酵素がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項90記載の化合物。
【請求項92】
II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療に使用するための請求項77〜84いずれか1項記載の化合物。
【請求項93】
腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方に使用するための請求項77〜84いずれか1項記載の化合物。
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R1およびR2は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、または−C(=O)−C(R6)3を表し;
R3およびR4は、独立して、H、またはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に、1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に、ボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
nは1〜4の整数であり;
R6はH、アルキル、ハロ、またはアリールである、
化合物。
【請求項2】
R1が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1がHを表すことを特徴とする請求項1記載の化合物。。
【請求項4】
R2が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
R2がHを表すことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R3が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
R3が、メチル、エチル、またはプロピルを表すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
R3がメチルを表すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
R4がHまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
R4がHを表すことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
R5が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
R5がHを表すことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
nが1、2、または3であることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
nが2であることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
Y1がOHであることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
Y2がOHであることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
Y1がOHであり;Y2がOHであることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
Y1およびY2が、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表すことを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
R1がHであり;R2がHであり;R3がメチルであり;R4がHであり;R5がHであり;nが2であり;Y1がOHであり;Y2がOHであることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項20】
式IIの化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
式IIIの化合物:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
式Vのプロドラッグ化合物:
【化4】
であって、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
R2は、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R8)3、または−C(=O)−C(R8)3を表し;
R3およびR4は、独立して、Hまたはアルキルを表し;
R5は、H、低級アルキル、またはアラルキルを表し;
Y1およびY2は、独立して、OH、OR5、またはOHへと加水分解可能な基であるか;一緒に、1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;または、それらに結合するホウ素原子と一緒に、ボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成し;
Lは存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または、−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または、−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
nは、1〜4の整数であり;
R8は、H、アルキル、ハロ、またはアリールである、
プロドラッグ化合物。
【請求項23】
R2が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項24】
R2がHを表すことを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項25】
R3が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22〜24いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項26】
R3が、メチル、エチル、またはプロピルを表すことを特徴とする請求項22〜24いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項27】
R3が、メチルを表すことを特徴とする請求項22〜24いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項28】
R4が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22〜27いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項29】
R4がHを表すことを特徴とする請求項22〜27いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項30】
R5が、Hまたは低級アルキルを表すことを特徴とする請求項22〜29いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項31】
R5がHを表すことを特徴とする請求項22〜29いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項32】
nが1、2、または3であることを特徴とする請求項22〜31いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項33】
nが2であることを特徴とする請求項22〜31いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項34】
Y1がOHであることを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項35】
Y2がOHであることを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項36】
Y1およびY2がOHであることを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項37】
Y1およびY2が、一緒に、(低級アルキル)CH(OH)CH2CH(OH)(低級アルキル)、(低級アルキル)CH(OH)CH(OH)(低級アルキル)、HOCH2CH2CH2OH、またはHOCH2CH2OHを表すことを特徴とする請求項22〜33いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項38】
Lが存在しないことを特徴とする請求項22〜37いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項39】
Xが存在しないことを特徴とする請求項22〜38いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項40】
Yが存在しないことを特徴とする請求項22〜39いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項41】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項42】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項43】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項44】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22〜40いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項45】
R1が2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22〜37いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項46】
R2がHを表し;R3がメチルを表し;R4がHを表し;R5がHを表し;nが2であり;Y1がOHであり;Y2がOHであり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項47】
R2はHを表し;R3がメチルを表し;R4がHを表し;R5がHを表し;nが2であり;Y1がOHであり;Y2がOHであり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項22記載のプロドラッグ化合物。
【請求項48】
式VIのプロドラッグ化合物:
【化5】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または、−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または、−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す、
プロドラッグ化合物。
【請求項49】
Lが存在しないことを特徴とする請求項48記載のプロドラッグ化合物。
【請求項50】
Xが存在しないことを特徴とする請求項48または49記載のプロドラッグ化合物。
【請求項51】
Yが存在しないことを特徴とする請求項48〜50いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項52】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項53】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項54】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項55】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項48〜51いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項56】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項48記載のプロドラッグ化合物。
【請求項57】
式VIIのプロドラッグ化合物:
【化6】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R1は、H、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、スルホニルアミノ、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、または1、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表し;
Lは存在しないか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、−(CH2)mO(CH2)m−、−(CH2)mNR2(CH2)m−、および−(CH2)mS(CH2)m−を表し;
Xは存在しないか、または−N(R7)−、−O−、または−S−を表し;
Yは存在しないか、または−C(=O)−、−C(=S)−、または−SO2−を表し;
mは、存在ごとに独立して、0〜10の整数であり;
R7は、H、アリール、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または1〜8アミノ酸残基のポリペプチド鎖を表す、
プロドラッグ化合物。
【請求項58】
Lが存在しないことを特徴とする請求項57記載のプロドラッグ化合物。
【請求項59】
Xが存在しないことを特徴とする請求項57または58記載のプロドラッグ化合物。
【請求項60】
Yが存在しないことを特徴とする請求項57〜59いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項61】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項62】
R1が、2、3、4、5、6、7、または8アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項63】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項64】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;プロリンが、Lに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項57〜60いずれか1項記載のプロドラッグ化合物。
【請求項65】
R1が、2アミノ酸残基のポリペプチド鎖であり;Lが存在せず;Xが存在せず;Yが存在せず;プロリンが、Nに直接結合したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項57記載のプロドラッグ化合物。
【請求項66】
薬学的に許容される担体;および、請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項67】
前記酵素を請求項1〜65いずれか1項記載の化合物と接触させる工程を有してなる、ポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項68】
前記酵素が哺乳動物のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項69】
請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項70】
グルカゴン様ペプチド、NPY、PPY、セクレチン、GLP−1、GLP−2、およびGIPからなる群より選択されるペプチド・ホルモンの患者の血漿濃度を増加することを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項71】
請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるグルコース代謝を制御する方法。
【請求項72】
前記患者が、II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症を患っていることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項73】
インスリン、インスリン分泌促進薬、またはその両方を、治療に有効な量で、前記患者に投与することをさらに含む、請求項71または72記載の方法。
【請求項74】
M1受容体拮抗薬、プロラクチン阻害剤、β−細胞のATP依存性のカリウム・チャンネルに作用する薬物、メトホルミン、グルコシダーゼ阻害剤またはそれらのいずれかの組合せを、治療に有効な量で、前記患者に投与することをさらに含む、請求項71〜73いずれか1項記載の方法。
【請求項75】
プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原を、請求項1〜65いずれか1項記載の化合物と接触させることを含む、プロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項76】
請求項1〜65いずれか1項記載の化合物を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるプロテアソーム、DP8、DP9、または前立腺特異抗原のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項77】
式IVの化合物:
【化7】
またはその薬学的に許容される塩であって、ここで、
R’は、H、あるいは、非置換であるか、または、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、アミン、アミド、チオ、C1−3アルキルチオ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはグアニジニウム基で置換されうる低級アルキルを表し;
R"はHまたは低級アルキルを表し;
R1aは、H、低級アルキル、アラルキル、−C(=O)−OC(R6)3、−C(=O)−C(R6)3、C末端に結合したアミノ酸またはペプチドまたはそれらの類似体、またはアミノ保護基を表し;
R2bは、H、低級アルキルを表すか、または、R’aと一緒に5、6または7員環を形成し;
R3aは低級アルキルを表し;
R6は、存在ごとに独立して、H、低級アルキル、ハロ、またはアリールであり;
Y1およびY2は、独立して、−OH、−OR5、または−OHへと加水分解可能な基であるか;一緒に1,2−ジオールまたは1,3−ジオールを表すか;またはそれらに結合するホウ素原子と一緒に、通常の生理学的条件下でボロン酸へと加水分解可能な5員環〜8員環を形成する、
化合物。
【請求項78】
R3aがメチルであることを特徴とする請求項77記載の化合物。
【請求項79】
Y1およびY2が−OHであることを特徴とする請求項77または78記載の化合物。
【請求項80】
R1aがH、またはアミノ保護基を表し、R2bがHを表すことを特徴とする請求項77〜79いずれか1項記載の化合物。
【請求項81】
R"がHを表すことを特徴とする請求項77〜80いずれか1項記載の化合物。
【請求項82】
前記化合物が100nm以下のKiを有するポストプロリン切断酵素を阻害することを特徴とする請求項77〜81いずれか1項記載の化合物。
【請求項83】
前記ポストプロリン切断酵素がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項82記載の化合物。
【請求項84】
前記化合物が、下記:
【化8】
からなる群より選択されることを特徴とする請求項77記載の化合物。
【請求項85】
患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害するための医薬品の製造における、請求項77〜84いずれか1項記載の化合物の使用方法。
【請求項86】
前記ポストプロリン切断酵素がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項85記載の使用方法。
【請求項87】
II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療のための請求項85記載の使用方法。
【請求項88】
腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方のための請求項85記載の使用方法。
【請求項89】
請求項77〜84いずれか1項記載の化合物、またはそれらの医薬製剤を、治療に有効な量で、それらを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性を阻害する方法。
【請求項90】
患者におけるポストプロリン切断酵素のタンパク質分解活性の阻害に使用するための請求項77〜84いずれか1項記載の化合物。
【請求項91】
前記ポストプロリン切断酵素がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)であることを特徴とする請求項90記載の化合物。
【請求項92】
II型糖尿病、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖症、低血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂血症、または高リポタンパク血症の治療に使用するための請求項77〜84いずれか1項記載の化合物。
【請求項93】
腫瘍増殖および転移に関する細胞増殖の阻害、異常増殖細胞集団における血管形成の阻害、またはその両方に使用するための請求項77〜84いずれか1項記載の化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−519187(P2012−519187A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552221(P2011−552221)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/025771
【国際公開番号】WO2010/099537
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/025771
【国際公開番号】WO2010/099537
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【Fターム(参考)】
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