説明

ソルダペースト

【課題】はんだ粉末とフラックスの反応により、水や水素などのガスが発生する。はんだが溶融するとき、このガスおよびフラックス中の溶媒ガスおよびフラックス自体が取り込まれてしまい、ボイドと呼ばれる、はんだの中に空間が生じる。このボイドの発生を防止したソルダペーストを提供する。
【解決手段】はんだ合金粉末と、接合面およびはんだ合金粉末の酸化物を除去清浄化するためのフラックスとからなるソルダペーストにおいて、吸着剤Aを必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板に電子部品を接合するために、はんだ合金粉末をフラックス中に混合して、ペースト状としたソルダペーストが広く用いられている。
従来から、この種のソルダペーストとしては、錫を主成分とし、鉛、銀、銅、亜鉛などの金属を含む合金を粉末化したものと、ロジン、溶剤、活性剤などの添加剤を含むフラックスを均一に混ぜ合わせ、ペースト状にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5〜図7に於て、従来のソルダペーストについて説明すると、まず、図5に示すように、ソルダペースト31を専用の印刷機を用いてプリント基板33上に印刷し、各種部品(図示省略)を搭載する。この基板33をリフロー炉に通すことにより、図6に示すように、ソルダペースト31の金属成分が溶融し、プリント基板33上の電極と(図示省略の)部品電極が図7の固化状態となってはんだ付けされる。
【特許文献1】特許第3105505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、図6に示すように、ソルダペースト31が溶融する際、はんだ粉末とフラックスが反応し、水や水素などのガスが発生する。また、フラックス中の溶媒ガスが発生する。これらのガスGが集まって、図7の固化状態下ではんだ34中に空間が発生する。この空間はボイドVと呼ばれる。
【0005】
この図7に示すように、はんだ付け後にボイドVが大量に発生したり、このボイドVの大きさが巨大であると、基板電極と部品電極の接合面積が小さくなり、接合強度が低下するという問題が生ずる。
【0006】
そこで、本発明は、はんだ溶融時にガスやフラックスが取り込まれないようにし、ボイドの発生を抑え、基板電極と部品電極の接合面積を十分に維持して、接合強度を十分確保できるソルダペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、はんだ粉末合金とフラックスからなるソルダペーストにおいて、必須成分として多孔質の吸着剤を含むものである。
また、吸着剤が、活性炭素、又は、シリカゲル、若しくは、活性アルミナである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸着剤がプリヒート中にガス及びフラックスを吸着し、はんだが溶融する際に、ガス及びフラックスを吸着した吸着剤がはんだの外へ上記ガス及びフラックスを効率良く持ち出し、それによって、固化したはんだ中にボイドが混入するのを防止して、大きな接合強度が得られ、はんだ付け部分の接合強度の信頼性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係るはんだペーストは、図1に示すように、吸着剤Aをソルダペースト2の必須成分とするもので、この吸着剤Aとして活性炭素、シリカゲル、活性アルミナなどが使用できる。この吸着剤Aは、図2に示すように、はんだ溶融時に発生するガスGやフラックスを吸着し、かつ、ガスGやフラックスを吸着した吸着剤Aが効率よく(図3に示す如く)金属はんだ4の外に持ち出すことができる。つまり、図4の固化状態下では、金属はんだ4の外周縁にフラックス残渣Fと吸着剤Aが集まる。
【0010】
本発明に使用する金属成分は、Sn−Pb系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi−In系、Sn−Zn系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Bi系、Sn−Bi−Ag系、Sn−Cu系などが使用できる。
本発明に使用する吸着剤以外のフラックス成分としては、下記に示すものがある。
【0011】
ベース樹脂としては、通常のソルダペースト用フラックスに含まれているものが使用できる。例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、これら変性ロジンおよびロジンエステルなどのロジン系樹脂、テルペン系樹脂およびテルペンフェノール樹脂などのテルペン系樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリビニルブチラール、エチルセルロースなどの熱可塑性樹脂および軟化点60℃以上のペンタエリスリトールエステルが使用できる。
【0012】
活性剤としては、通常のソルダペースト用フラックスに含まれているものが使用できる。たとえば、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、1,3−ジフェニルグアニジン、2−メチルイミダゾール。2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどの二級アミンのハロゲン化水素酸塩、および3,5−ジメチルピリジン、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどの三級アミンのハロゲン化水素酸塩などが使用できる。
【0013】
チクソ剤としては、通常のソルダペースト用フラックスに含まれているものが使用できる。例えば、硬化ヒマシ油、脂肪酸アマイドなどが使用できる。
【0014】
溶剤としては、通常のソルダペースト用フラックスに含まれているものが使用できる。例えば、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、タービネオールなどが使用できる。
【0015】
図1は、本発明に係るソルダペースト2を専用の印刷機を使用してプリント基板3上に印刷した状態を示し、吸着剤Aが混入していることを示す。この上に、図示省略の各種電子部品を搭載して、リフロー炉に通すと、図2と図3に示すように(但し電子部品は図示省略)、ソルダペースト2の金属部分は溶解して、プリント基板3上の電極と(図示省略の)電子部品の電極とがはんだ付けされて、図4の固化状態となるが、その際に、図2に示すように、発生した微小ガスG及びフラックスは、矢印Nのように、吸着剤Aに吸着され、引き続いて図3に示す如く、溶融状態の金属はんだ4の外表面へ、吸着剤Aと共に、持ち出されて、外周縁へ流れ下り、フラックス残渣Fと吸着剤Aは、外部(外周縁)に集められ、固化した金属はんだ4中にボイドが混在することが防止できる。
【0016】
従って、ソルダペースト2の成分として、吸着剤Aを必須とすることにより、はんだ4中のボイドを減らすことができ、はんだ付け部分の強度アップと接合信頼性の向上を図り得る。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例及び比較例についてはんだ付け性、ボイド発生状態について実験を行った。
本発明の実施例におけるフラックスの製造法は、一般のソルダペーストに使用されている方法でよく、フラックスの各成分をその溶剤で加熱攪拌溶解後、冷却してフラックスとした。次に、はんだ粉末と吸着剤を、一般のソルダペーストに使用される混合機で攪拌混合して調整した。調整したソルダペーストは、 250℃におけるはんだ付け性を JIS Z 3284 附属書10により、またペーストの粘度を JIS Z 3284 附属書6のスパイラル粘度計(10回転)により試験した。そして、 250℃におけるはんだ付け性を確認した試験片をX線観察装置を用いて、ボイドの発生状態を観察した(表1参照)。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例1:水添ロジン10.0重量%、ロジンエステル35.0重量%、硬化ヒマシ油 7.0重量%、オクタデカン酸 7.0重量%、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール 5.0重量%、ブチルジグリコール36.0重量%からなるフラックスに錫−銀−銅はんだ粉末(粒子径20〜40μm)と活性炭素を 5.0重量%を混練し、ソルダペーストを調整した。このペーストを、 250℃におけるはんだ付け性と、ボイド発生状態について試験した。その結果を表1に示す。本実施例1は、吸着剤として活性炭素を使用したもので、はんだ付け性はクラス2、ボイド発生状態は少なく良好であった。ボイド抑制効果は、活性炭素を加えたことにより達成できたものと思われる。
【0020】
実施例2:水添ロジン10.0重量%、ロジンエステル35.0重量%、硬化ヒマシ油 7.0重量%、オクタデカン酸 7.0重量%、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール 5.0重量%、ブチルジグリコール36.0重量%からなるフラックスに錫−銀−銅はんだ粉末(粒子径20〜40μm)とシリカゲルを 5.0重量%を混練し、ソルダペーストを調整した。このペーストを、 250℃におけるはんだ付け性と、ボイド発生状態について試験した。その結果を表1に示す。本実施例2は、吸着剤としてシリカゲルを使用したもので、はんだ付け性はクラス2、ボイド発生状態は少なく良好であった。ボイド抑制効果は、シリカゲルを加えたことにより達成できたものと思われる。
【0021】
実施例3:水添ロジン10.0重量%、ロジンエステル35.0重量%、硬化ヒマシ油 7.0重量%、オクタデカン酸 7.0重量%、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール 5.0重量%、ブチルジグリコール36.0重量%からなるフラックスに錫−銀−銅はんだ粉末(粒子径20〜40μm)と活性アルミナを 5.0重量%を混練し、ソルダペーストを調整した。このペーストを、 250℃におけるはんだ付け性と、ボイド発生状態について試験した。その結果を表1に示す。本実施例3は、吸着剤として活性アルミナを使用したもので、はんだ付け性はクラス2、ボイド発生状態は少なく良好であった。ボイド抑制効果は、活性アルミナを加えたことにより達成できたものと思われる。
【0022】
比較例:水添ロジン10.0重量%、ロジンエステル35.0重量%、硬化ヒマシ油 7.0重量%、オクタデカン酸 7.0重量%、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール 5.0重量%、ブチルジグリコール36.0重量%からなるフラックスに錫−銀−銅はんだ粉末(粒子径20〜40μm)を混練し、ソルダペーストを調整した。このペーストには吸着剤は含まない。このペーストを、 250℃におけるはんだ付け性と、ボイド発生状態について試験した。その結果を表1に示す。本比較例は、吸着剤を含まないため、はんだ付け性はクラス2であったが、ボイド発生が多く、不良であった(表1中のX線写真参照)。
【0023】
このように、実施例1,2,3はいずれも、ソルダペースト2に吸着剤Aを添加することにより、はんだ溶融中に発生するガスG及びフラックスを吸着し、ガスGおよびフラックスを吸着した吸着剤Aがはんだ4の外へ持ち出されて、はんだ4中のボイドの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の一形態を示す使用状態説明図である。
【図2】溶融状態の説明図である。
【図3】さらに溶融が進んだ状態の説明図である。
【図4】固化状態の説明図である。
【図5】従来例を示す使用状態説明図である。
【図6】従来例の溶融状態の説明図である。
【図7】従来例の固化状態の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
2 ソルダペースト
3 プリント基板
A 吸着剤
G ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ粉末合金とフラックスからなるソルダペーストにおいて、必須成分として多孔質の吸着剤を含むことを特徴とするソルダペースト。
【請求項2】
上記吸着剤が活性炭素である請求項1記載のソルダペースト。
【請求項3】
上記吸着剤がシリカゲルである請求項1記載のソルダペースト。
【請求項4】
上記吸着剤が活性アルミナである請求項1記載のソルダペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255153(P2009−255153A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109913(P2008−109913)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(391002443)株式会社ニホンゲンマ (8)
【Fターム(参考)】