ソーナーシステム、送信装置、受信装置、ソーナー用目標物特定方法、及びそのプログラム
【課題】目標物からの反射音がドップラー付でも目標物の正確な位置を特定すること。
【解決手段】扇状の送波ファンビーム音を目標物に向けて送受信信する送波器20及び受波器30と、反射音の受信方位を受波器30に設定する受信方位設定部34と、反射音から目標物を特定する受信信号処理手段37とを有する。送波器20及び受波器30は相互に90°ずらして設置。又各送波素子用の励振信号を生成する生成回路部22を備え、この励振信号を一定周期のバルク波とし、このバルク波を異なった周波数の二以上の単位励振信号が並んだ周波数ホッピング信号dで構成、目標物からの反射受信信号を方位毎に特定するサンプルホールド回路39と、このサンプルホールドされた反射受信信号を成す複数の単位励振信号を対象としてドップラーシフトされた複数のレプリカ信号で相関をとるレプリカ相関部40と、その結果を画像表示用として記憶する記憶部とを備えたこと。
【解決手段】扇状の送波ファンビーム音を目標物に向けて送受信信する送波器20及び受波器30と、反射音の受信方位を受波器30に設定する受信方位設定部34と、反射音から目標物を特定する受信信号処理手段37とを有する。送波器20及び受波器30は相互に90°ずらして設置。又各送波素子用の励振信号を生成する生成回路部22を備え、この励振信号を一定周期のバルク波とし、このバルク波を異なった周波数の二以上の単位励振信号が並んだ周波数ホッピング信号dで構成、目標物からの反射受信信号を方位毎に特定するサンプルホールド回路39と、このサンプルホールドされた反射受信信号を成す複数の単位励振信号を対象としてドップラーシフトされた複数のレプリカ信号で相関をとるレプリカ相関部40と、その結果を画像表示用として記憶する記憶部とを備えたこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送波器と受波器とで形成されるクロスファンビームを使用し送波ファンビーム音が目標物により反射されて得られる反射音(エコー)を受信処理し目標物の正面画像を得るためのソーナーシステム、送信装置、受信装置、ソーナー目標物特定方法、及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、送波器と受波器とで形成されるクロスファンビーム方式(Mills Cross 法ともいう)を使用する水中画像ソーナーが複数提案されている。
クロスファンビーム方式によると、ソーナーヘッドに送波素子のラインアレイである送波器と受波素子のラインアレイである受波器とが直交するように配置し、送波器から水中に向かって左右に扇形に広がるビーム(ファンビーム)を発信し、直交する受波器も扇形のビーム形状で反射を待ち受けることにより、交点それぞれの測定値が得られる。
【0003】
この種の水中画像ソーナーで従来公知の文献として、下記の特許文献1乃至3がある。 この内、特許文献1に開示されている水中画像ソーナーは、その送信時及び受信時の動作として以下に示す内容が開示されている。
まず、送信タイミング制御回路から出力する送信タイミング制御信号を移相/周波数制御回路に供給し、移相/周波数制御回路において送信タイミング制御信号に基づき送波器の数に対応した数の周波数データ及び移相データを生成して出力する。周波数データは送信パルス発生回路に供給し、ここで各送波器に対応する周波数データ毎にパルス変調して各励振信号を生成する。さらに各励振信号を対応する可変移相回路に供給すると共に移相/周波数制御回路から各移相データを対応する可変移相回路に供給し、各可変移相回路において励振信号に対し移相データに応じた位相を与える。所定の位相を与えた各励振信号を電力増幅させてから対応する各送波器に印加し各送波器を励振駆動する。これにより、各送波器から時系列でかつビーム扁平面に交差する方向に微小角度ずつシフトさせて水中の目標物の方向に向けて送波ファンビームを送信する。
【0004】
又、受信時には、まず、受波器において、ビームの扁平面が送波ファンビームの扁平面に対して90度のずれをもって交差し扇形に拡がる受波ファンビーム(受波指向性)を形成し送波ファンビーム音が水中の目標物により反射されて得られる反射音を待ち受ける。 受波ファンビームは、一つの送波ファンビーム毎に一方側から他方側まで微小角度ずつシフトさせ、これを全部の送波ファンビームに対して行い、一つの受波ファンビーム毎に受波器で受信する。反射音は、受波ファンビームとクロスする位置の各受波器でそれぞれ受波され、受波信号(電気信号)に変換される。受波信号は、対応する各増幅回路で増幅され更に対応する各周波数分離回路に入力されて各々所定の周波数別の周波数分離信号として分離され画像再生処理装置に入力する。
画像再生処理装置では、受波器から入力する周波数分離信号の垂直方向及び水平方向に展開するレベルデータを算出し、画像データとして表示器に出力する。表示器ではレベルを輝度に置き換え表示する。
【0005】
一方、この特許文献1に記載された水中画像ソーナーは、目標物の特定部分を抽出し垂直方向の分解能を上げることができないという問題点があり、この問題点を解消するために、次に説明する特許文献2に開示されている水中画像ソーナーが提案されている。
【0006】
特許文献2に記載された水中画像ソーナーは、垂直方向の分解能を向上させるため、特許文献1に示す移相/周波数制御回路に代えて、掃引制御回路を備えている。この掃引制御回路は、送信パルス内で周波数を掃引する周波数データと、送波ファンビームの方向を走査する移相データとを発生する。周波数データは送信パルス発生回路に入力し、送信パルス発生回路において周波数データに基づき送信パルス内で第1の周波数から第2の周波数に連続的に変化する励振信号を生成する。
各送波素子には対応する可変移相回路と増幅器とを介して移相データと励振信号とが入力される。各送波器は、送波ファンビーム方向を移相データに応じて例えば垂直方向に変化させながら、周波数が第1の周波数から第2の周波数に連続的に変化する送波ファンビーム音を水中に放射する。
【0007】
そして、受波側では、第1の周波数から第2の周波数までの間の周波数範囲内で任意に設定される第3の周波数から第4の周波数までの周波数範囲を2以上の整数で分割したとき、受信信号の各分割周波数成分を、各中心周波数と帯域幅をそれぞれ可変制御する前記分割数のフィルタで周波数選択し、分割周波数成分毎に複数の受波器の受波ファンビーム方向のレベル検出を行い、画像データを生成する。
画像制御回路は、画像化する周波数範囲が与えられると、第3及び第4の周波数の設定により周波数分離回路内の各フィルタの中心周波数と帯域幅を可変制御する。これにより、反射音の特定周波数成分/特定角度範囲を抽出できるとした。
【0008】
更に、特許文献3に記載された目標物位置極限方法を実施するための水中画像ソーナーは、送波器と受波器とを有し、指向性を持つビーム信号に形成する整相器と,第1の周波数分析器と,第2の周波数分析器と,表示処理器と,レプリカ信号変換器と,受信処理器と,探知/表示処理器とを備えている。
【0009】
この特許文献3に記載された水中画像ソーナーは、送波器で送波ファンビーム音を水中に送波し、目標物からの反射音を受波器で受波し、受信信号を整相して指向性を持つビーム信号を形成し、このビーム信号を第1周波数分析器が一定時間の窓幅で周波数分析して分析結果をデータ蓄積し、この蓄積データを用い第2周波数分析器が所定の周波数分析幅による周波数分析を行ってその結果を表示すると共に、第1周波数分析器の周波数分析結果と前記送信信号のレプリカ信号との相関処理を行い、この相関処理結果の信号値が所定の閾値を越える場合に、この信号を目標物からのエコー信号であると判定し、このエコー信号の方位と距離を推定して、目標物の位置を局限するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−5728号公報
【特許文献2】特開平10−132930号公報
【特許文献3】特開平10−332818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1及び2に記載された目標物位置極限方法を実施するための水中画像ソーナーは、いずれも単純な周波数分割により送波ファンビームを分離するものでありドップラーを検出する手段がない。このため、ソーナーを搭載している水中走行体の移動又は目標物の移動等に起因して目標物からの反射音にドップラーが付されている場合、このドップラーが付いた目標物からの反射音とドップラーの無い残響とを分離することができないことから、ドップラーに起因して画素の座標がずれる場合があり、目標物の画像を正確に表示できない,という不都合があった。
【0012】
又、特許文献3に記載された水中画像ソーナーは、レプリカ相関処理及び整相器のそれぞれにおいて数式展開が難しくその解析処理に時間がかかり、また受信反射音に対する距離分解能・時間分解能の向上を図るための措置がなされていないため、当該分解能は低い。更に、反射音の受波が妨害,干渉,傍受に弱いとは難点がある。
【0013】
〔発明の目的〕
本発明は、上記に鑑みなされたもので、目標物が移動し反射受信信号にドップラーが付され受信周波数が変化していても、ドップラーの無い周囲環境の残響と有効に分離できて目標物を画像表示用として正確に検出することを可能とするソーナーシステム、送信装置、受信装置、ソーナー用目標物特定方法、およびそのプログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナーシステムは、
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、
前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成されている。
【0015】
更に、前記送波器駆動制御手段は、
前述した複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号を生成する励振信号生成回路部を備え、前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に当該バルク波をその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る少なくとも二以上の単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成しされている。
【0016】
そして、前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された方位角度毎に順次受信すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号を対象としてこれを経時的に複数回サンプルホールドするサンプルホールド回路と、このサンプルホールドにより取得された反射ドップラー信号にかかる前記バルク波の前記単位励振信号を対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部と、このレプリカ相関部で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成したことを特徴とする。
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナー用送信装置は、扇状に広げられた送波ファンビーム音を目標物に向けて且つ一定周期で繰り返し送信する送波器と、この送波器20を励振制御する送波器駆動制御手段と、この送波器駆動制御手段の全体的な動作を制御する主制御部とを備え、
前記送波器を前記目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成する。
【0018】
又、前記送波器駆動制御手段は、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号である周波数ホッピング信号dを生成し出力する励振信号生成回路部と、この励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dの位相を前記各送波素子毎に順次変化した状態に設定して対応する当該各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能を備えた送信方位設定部とを有する。
【0019】
そして、前記送信方位設定部が、前記前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号に設定する位相の印加パターンを変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能を備えた構成とし、更に、前記励振信号生成回路部で生成される前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に、このバルク波を少なくとも異なった周波数の断続した二以上の単位励振信号から成る前記ホッピング信号をもって構成したことを特徴とする。
【0020】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナー用受信装置は、
アレイ状に配列されてなる複数の送波素子を備えた送波器が一定周期で繰り返す広帯域のバルク波に付勢され目標物に向けて扇状の送波ファンビーム音を送信すると共に前記目標物からの反射波が戻ってきた場合にこれを受信する受波器と、この受波器が備えている複数の各受波素子を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を予め設定する受信方位設定部と、前記受波器で受信されるドプラーシフトされた反射受信信号を信号処理すると共に当該目標物の所在を特定する受信信号処理手段と、これら各部の動作を制御する主制御部とを備えている。
【0021】
この内、前記受波器の各受波素子を、目標物に面してアレイ状に配列すると共に前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態に設置する。
【0022】
そして、前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からのドップラーシフトされた反射受信波が前記受信方位設定部を介して予め設定された受信方位角度毎に順次受信された場合に当該反射受信信号を経時的に複数回サンプルホールドし出力するサンプルホールド回路と、このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記バルク波を構成する複数の単位励振信号を対象とし且つこれに対応して予め生成された複数のレプリカ信号とについて受信方位毎に相関をとりこれによって目標物からの正規の反射信号を特定するレプリカ相関部と、このレプリカ相関により特定された正規の反射信号を画像表示用の目標物特定情報として記憶する目標物特定情報記憶部と、を含む構成としたことを特徴とする。
【0023】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナー用目標物特定方法は、
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
【0024】
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として、前記送波器駆動制御手段の励振信号生成回路部が一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号から成る異なった周波数ホッピング信号dを、前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成し(周波数ホッピング信号d生成工程)、この周波数ホッピング信号dに基づいて生成される励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記前記送波器駆動制御手段の送信方位設定部が作動し、前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動して前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定し(送波ファンビーム音発信工程)、
【0025】
送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定し(反射信号受信工程)、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関をとることにより正規の反射信号を順次特定し(受信信号処理工程)、
この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像値データ処理部が画像表示用として特定するようにしたことを特徴とする(画像表示データ特定工程)。
【0026】
上記の目的を達成するため、本発明のソーナー用目標物特定プログラムは、
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
【0027】
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号から成る異なった周波数ホッピング信号dを、前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成する周波数ホッピング信号生成処理機能(周波数ホッピング信号d生成工程)、
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成される励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記送波器駆動制御手段21の送信方位設定部が作動し、前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動して前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定する送信方位切換え設定機能(送波ファンビーム音発信工程)、
【0028】
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に(反射信号受信工程)、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する受信方位切換え設定機能、(反射信号受信工程)
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関をとることにより正規の反射信号を順次特定する反射信号特定処理機能(受信信号処理工程)、
【0029】
及びこの特定された反射信号についてそのドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像値データ処理部が画像表示用として特定し記憶部に記憶処理する画像表示データ記憶処理機能、を備え、これを前記主制御部10が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は上述したように構成したので、これによると、送信波として複数の断続した周波数ホッピング信号を使用すると共に反射受信信号については前記周波数ホッピング信号に対応して予め準備された複数のレプリカ信号との相関をとるという構成を採用したので、目標物の移動により当該目標物からの反射音がドップラーシフトされて送信波の周波数が変化していても、これに影響されることなく当該目標物にかかる反射信号およびその情報を画像表示用として有効に且つ正確に受信し特定することを可能としたソーナーシステム、送信装置、受信装置、ソーナー用目標物特定方法、及びそのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るソーナーシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に開示したソーナーシステムにおける受信信号処理手段部分を示すブロック図である。
【図3】図1に開示したソーナーシステムにおける送波器と受波器の配置関係を示す正面図である。
【図4】図3に開示した送波器が形成する送波ファンビーム及びその励信信号を示す図で、図4(A)は扇状送波ファンビーム及びそれに対応した励信信号であるホッピング周波数データの例を示す説明図、図4(A)は送波器に印加されるバルク波Bとしての周波数ホッピング信号dの一例を示す説明図である。
【図5】図3に開示した受波器が外部に対して形成する受波ビーム領域の例を示す説明図である。
【図6】図1に開示したレプリカ相関部におけるレプリカ信号と反射受信信号との相関処理の場を示す図で、レプリカ信号は一の単位励信信号毎にq=50個とした場合の例を示す説明図である。
【図7】図1のソーナーシステムにおける画素値データ処理部による画素値データ処理の状態を示す説明図である。
【図8】図1のソーナーシステムにおける画像表示装置で二次元表示の場合の前記取得した受信信号の画面上における位置を示す説明図である。
【図9】図1のソーナーシステムにおける画像表示装置で三次元表示することを示す説明図である。
【図10】図1のソーナーシステムにおける送信装置部における動作を示すフローチャートである。
【図11】図1のソーナーシステムにおける受信装置部における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態を、図1乃至図11に基づいて説明する。
まず、図1乃至図4において、ソーナーシステム100は、扇状に広がる送波ファンビーム音TF1 ,TF2 ,……,TFY(Y は本実施形態では800)を目標物に向けて順次切り換え送信する送波器20及び当該送波器20を励振制御する送波器駆動制御手段21を備えた送信装置部100Aと、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器30及び当該受波器30を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部34並びに前記受波器30で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用の反射受信信号として特定する受信信号処理手段37を備えた受信装置部100Bとを備えている。
【0033】
更に、ソーナーシステム100は、上記各構成要素全体の動作を制御する主制御部10を備え、又、前記受信装置部100Bには、受信した前記反射受信信号をソーナー画面に表示する反射信号画像処理手段45を備えている。
【0034】
〔送信装置部および主制御部〕
上記送信装置部100Aが備えている送波器20は、探知用の目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子201 ,202 ,……,20n により構成されている。又、上記受波器30は、同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器20に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子301 ,302 ,……,30m により構成されている。ここで、本実施形態では、m=n=10に設定されている。図3に、これら送波器20および受波器30の配置状態の一例を示す。
【0035】
ここで、扇状に広がる送波ファンビーム音TFの送信方向については、送波器20を励振制御する送波器駆動制御手段21によって、後述するように送波ファンビーム音TFの繰り返し周期T0 (図4(B)参照)に同期して段階的に順次可変設定されるようになっている。
図4(A)に、この場合の送波ファンビーム音TF(TF1 ,TF2 ,……,TFY )の送信方向の例を示す。ここで、本実施形態では、Y=800に設定されている。
【0036】
又、前述した各送波素子201 〜20n および受波素子301 〜30n は、本実施形態ではそれぞれ圧電素子により形成され、且つその音波出力面については前述した扇状に広がる送波ファンビーム音TFを発信し得るように、その断面が緩やかな円弧状に形成されたものが使用されている。
【0037】
そして、この円弧状に形成された各送波素子201 〜20n 及び各受波素子301 〜30n については、その曲率半径を予め適度に設定することにより、前記送波ファンビーム音の扇状広がり角度αを、例えば30度,50度,又は70度の如く、予め任意の広がり各(スワス角)に設定し得るようになっている。
【0038】
更に、上記送波器駆動制御手段21は、前記複数の各送波素子201 〜20n を同時に励振するための励振信号を生成し出力する励振信号生成回路部22と、この励振信号生成回路部22で生成された励振信号を前記送波器20へ印加すると共に前記送波ファンビーム音TFの送信方向を(繰り返し周期(図4(B)参照)毎に)一方の側から他方の側(図4(A)では上方から下方)に段階的に順次可変設定する送信方位設定部21と、前記送波器20へ印加する励振信号を個別に増幅して対応する各送波素子201 〜20n へ個別に送り込む増幅器261 ,262 ,……,26n とを備えて構成されている。
【0039】
この内、前記励振信号生成回路部22は、上記各励振信号として一定周期で繰り返す広帯域のバルク波Bを生成する。ここで、図4(B)に示すバルク波Bは、扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて発信する場合の送波信号であり、本実施形態ではその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る四つの単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成されているが、2個,3個又は5個以上の単位励振信号を使用するように構成してもよい。
【0040】
この励振信号生成回路部22は、具体的には、周波数変調に必要な周波数情報として、本実施形態では周波数の異なった四つの変調用周波数データを含むホッピングパターン信号cを乱数値に基づいて特定し出力するホッピングパターン発生器22aと、前記ホッピングパターン信号cに基づいて前述した主制御部10から出力される基本パルスaをパルス変調し励振信号である周波数ホッピング信号dを生成して出力する周波数シンセサイザ22bとにより構成されている。
【0041】
即ち、上記ホッピングパターン発生器22aは、予め乱数発生回路を有すると共に、前記送波素子201 乃至20n の共振周波数における共振時のQを下げた状態で得られる広帯域励振信号の内の有効な共振が得られる最小限度および最大限度の各周波数に対応した最小および最大の乱数値を予め設定し、前記乱数発生回路から順次出力される複数の乱数値に対応した任意の周波数値の組合せを前記ホッピングパターン信号cとして特定する機能を備えている。
【0042】
これを更に詳述すると、まず、送波素子201 〜20n は、印加される周波数ホッピング信号からなる励振信号が送波素子20の共振周波数に近いものでなければ送信に有効な励振が行えず送波ファンビーム音を生成できない。このため、ホッピングパターン発生器22aは、乱数値に基づいた周波数変調(パルス変調)用の少なくとも二つの信号(本実施形態では四つの信号)であるホッピングパターン信号を出力するように構成されたものを使用している。
【0043】
また、周波数シンセサイザ22bとしては、前述したように、送波素子20の共振周波数の共振時のQを下げた状態の有効な共振が得られる広帯域励振信号の最小値をホッピングパターン発生器22aが出力する最小の乱数値に対応させ且つ同広帯域励振信号の最大値をホッピングパターン発生器22aが出力する最大の乱数値に対応させると共に、前述したホッピングパターン信号cに基づいて周波数ホッピング信号dを出力するように構成されている(図1参照)。
【0044】
この場合、ホッピングパターン信号cは、本実施形態では周波数シンセサイザ22bが主制御部10から入力する基本信号aをパルス変調して四つの単位励振信号を出力するためのパルス変調用の信号(搬送波に相当)である。又、上記ホッピングパターン発生器22aは、乱数発生器を含んで構成され、この乱数発生器が出力する乱数に基づいてホッピングパターンが生成される構成となっている。
【0045】
具体例として、ホッピングパターン発生器22aは、出力する乱数が1〜10までの範囲の任意の小値と、11から20までの範囲の任意の大値と、を交互に且つ小値と大値とがそれぞれ二個となるように四つの乱数値からなるホッピングパターン信号を出力するように構成されている。又、周波数シンセサイザ22bは、送波素子の共振周波数の共振時のQを下げた状態の有効な共振が得られる広帯域励振信号の最小値をホッピングパターン発生器22aが出力する乱数値=1に対応させ、且つ同広帯域励振信号の最大値をホッピングパターン発生器22aが出力する乱数値=20に対応させて、ホッピングパターン信号の四つの乱数値に対応する周波数ホッピング信号を出力するように構成されている。
【0046】
又、上記周波数シンセサイザ22bは、前述したようにホッピングパターン信号cに基づいて前述した主制御部10から一定間隔で送り込まれるパルス信号aをパルス変調し励振信号としての周波数ホッピング信号dを出力する機能を備えている。
【0047】
これにより、前述した励振信号である周波数ホッピング信号dが、上記励振信号生成回路部22で生成され出力されるようになっている。
【0048】
また、前述した送信方位設定部21は、上記励振信号生成回路部22で生成される周波数ホッピング信号dを送信器用励振信号として入力すると共に、当該周波数ホッピング信号dに基づいて前記送波ファンビーム音TFの送信方位設定用で位相が順次異なった複数の励振信号を加工生成する共に、当該生成された複数の励振信号を対応する前記各送波素子201 〜20n に同時に印加する機能を備えている。
【0049】
即ち、この送信方位設定部21は、前記各送波素子201 〜20n に印加する複数の各励振信号の位相を順次変化した状態に設定して対応する前記各送波素子201 〜20n に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能と、前述した主制御部10に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子201 〜20n から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号に設定する位相の印加パターンe1 ,e2 ,……,en を変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能とを備えている。
【0050】
この送信方位設定部21を更に詳述すると、この送信方位設定部21は、位相が異なる励振信号である周波数ホッピング信号dを前記複数の各送波素子201 〜20n に同時に印加する複数の可変移相回路251 ,252 ,……,25n と、この複数の各可変移相回路251 〜25n に前述した励振信号生成回路部22で生成される同一の周波数ホッピング信号dが同時に入力された場合に,当該周波数ホッピング信号dの位相を前記送波ファンビーム音の送信方向に対応して順次変化した状態に設定するように,対応する前記複数の各可変移相回路251 ,252 ,……,25n に指令する移相制御回路24とにより構成されている。符号e1 ,e2 ,……,en は、この場合の移相制御回路24からの指令信号を示す。
【0051】
即ち、上記送信方位特定機能は上記可変移相回路251 〜25n と移相制御回路24とによって実行されるようになっており、又上記送信方位切換え設定機能は、上記可変移相回路251 〜25n と移相制御回路24及び当該移相制御回路24に対して上記送信方位の切換え制御を指令する主制御回路10とによって実行されるようになっている。
【0052】
ここで、上述した主制御部10は、前記扇状の送波ファンビーム音TF1 〜TFY の送信方位角度の送信角度断続切替え設定に際しては、その切り換え時間の時間間隔を予め設定されたプログラムに従って適宜可変設定する切換えタイミング設定機能10aを備えている。
【0053】
図4(A)(B)に、上記主制御部10の送信方位切換え設定機能によって順次切り換え設定される扇状送波ファンビーム音TF1 ,TF2 ,……,TFY の送信方位の一例を模擬的に示す。そして、この扇状の送波ファンビーム音TF1 〜TFY の送信方位の切換えは、前述したように送信波であるバルク波の繰り返し発信の周期に同期して成されるようになっている。
【0054】
具体的には、前述した送波器20は、図4(A)において、最初に一番上の第1の送波ファンビームTF1 を形成し且つ時間t1 を経過する毎に周波数f1a,f2a,f3a,f4aからなる送波ファンビーム音が送信され目標物から反射し反射音として戻ってきた場合に受波器30で受波され、受信処理が完了する時間t2 が経過すると、上から二番目の第2の送波ファンビームTF2 を形成しかつ時間t1 を経過する毎に周波数f1b,f2b,f3b,f4bからなる送波ファンビーム音の発信を行い、以後も同様に、送波ファンビームを形成し送波ファンビーム音の発信を行う。図4(B)では、記号T0 は送信波の発信に際して設定される送信波(バルク波)の繰り返し周期を示す。又、記号TB は送信波(バルク波)のパルス幅を示す。
【0055】
送波器20から発信された送波ファンビーム音は目標物に到達すると反射され反射音(エコー)となり、この反射音が受波ファンビーム(受波指向性)を形成して待ち受ける受波器30(第1〜第mの受波素子301 〜30m )で受波される。
【0056】
これにより、上述した送波器20から出力される目標物探索用の送波ファンビーム音TF1 乃至TFY は、周波数の異なる4つの単位励振信号から成る断続したバルク波をもって、その繰り返し周期毎に異なった方位に扇状に広げられた状態で、順次切り換え送信されるようになっている。
【0057】
〔受信装置部および主制御部〕
次に、本実施形態に係る受信装置部100Bについて説明する。
図1乃至図9において、受信装置部100Bは、前述した目標物からの反射音であるドプラーシフトされた反射ドップラー信号を、前述したアレー状の送信器20に対してクロスビームの状態で受信する受波器30と、この受波器30を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を小刻みに設定する受信方位設定部34と、前記受波器30で受信される反射音を信号処理すると共に前記目標物の所在を表示する画像表示用の反射受信信号として特定する受信信号処理手段37とを備えている。
【0058】
更に、上記受信方位設定部34と受波器30との間には、当該受波器30の各受信素子301 ,302 ,……,30m で受信した前記目標物からの送波ファンビーム音TF1 〜TFY に係る反射受信信号(反射ドップラー信号)を個別に増幅する増幅器331 ,332 ,……,33m と、この各増幅器331 〜33m で増幅された反射受信信号を上記送波ファンビーム音TF1 〜TFY 毎に順次取り込で受信素子301 〜30m 毎に受信処理する直交変調器321 ,322 ,……,32m 及びBPF(広域フィルタ回路)311 ,312 ,……,31m の直列回路とが介装されている。
【0059】
これにより、前述した送波ファンビーム音TF1 乃至TFY が反射音として受信された場合に当該反射受信信号に係るバルク波Bの各単位励振信号の周波数にかかる信号を基準とする予め想定したドプラー周波数領域の反射受信信号のみが受信されるようになっている。
【0060】
ここで、この反射受信信号の受信に際して機能する受信方位設定部34について説明する。
この受信方位設定部34は、前記受波器30が反射音である送波ファンビーム音TF1
乃至TFY を受信し順次取り込むに際しては、前述した送信器20からのバルク波である送波ファンビーム音TF1 乃至TFY の発信のタイミングで(直接的には主制御部10から出力されるパルス信号aに付勢されて)、当該扇状の送波ファンビーム音TF1 乃至TFY の反射音に対してその扇状の面に直交する方向に向けて扇状の受信領域を設定する受信方位設定機能と、前記一の送波ファンビーム音(例えば図4(A)におけるTF1 の反射音)に対して本実施形態では1,000回の扇状の受信領域を前記各受波素子301 ,302 ,……,30m の一方から他方に向けて一定角度で断続的に順次切り換え設定する受信方位可変設定機能とを備えている。
【0061】
これを更に詳述すると、この受信方位設定部34は、具体的には、上述した受波器30の各受波素子301 〜30m を同時に個別に付勢して前記各送波ファンビーム音に対す
る受信方位角度を設定する複数の受信側可変移相回路361 〜36m と、この各受信側可変移相回路361 〜36m を介して前記各受波素子301 〜30m の受信動作を制御し前述した送波ファンビーム音の扇状ビーム面に直交する向きに扇状の受波ビーム領域を設定すると共に当該扇状受波ビーム領域RF1 ,RF2 ,……,RFX を上述したように前記各受波素子の一方の側から他方の側に向けて高速で可変設定する扇状受波ビーム設定回路35とを備えている(図1,図4(A)参照)。ここで、本実施形態では、X=1,000に設定されている。
【0062】
前述した複数の各受信側可変移相回路361 〜36m は、前述した各受波素子301 〜30m を同時に個別に受信駆動するに際しては、前述した扇状受波ビーム設定回路35に付勢されて作動し各受波素子301 〜30m に対する受信振動にかかる位相のずれを、上述した受信方位に合わせて順次個別に可変設定する。これによって、前述したように、扇状受波ビーム領域RF1 〜RFX が一方の側から他方の側に向けて断続的に順次切り換え設定されるようになっている。
【0063】
この場合、前述した一方の側から他方の側に向かう断続的に切り換え設定される前記扇状受波ビーム領域RF1 乃至RFX の切り換えは、1周期に反射受信信号を構成する4つの各単位励振信号の各一の単位励振信号(例えば0.1秒)に対して1,000回設定される。このため、4つの各単位励振信号からなる単一の反射バルク波に対しては、これが4回繰り返されることから、4,000回設定され、これが連続して繰り返されるようになっている。
【0064】
これにより、一の反射受信信号は1/1,000の確率で反射受信波の分解能が設定され、後述するように画像表示における横一列の1,000ドットにおける1ドットの情報が特定されるようになっている。
【0065】
即ち、前記扇状受波ビーム設定回路35にとって前記各受波素子301 〜30m に対して横方向の一方から他方に向かって1,000回切り換え設定される扇状受波ビーム領域の一の方位は、画像表示における1ドットに対応したものとなっている。
【0066】
そして、上記受信方位設定部34によって設定された一方側から他方の側に向けて繰り返し順次設定される1,000に分けられた複数の扇状受波ビーム領域RF1 〜RFxを通過して受信される前記反射受信信号は、前述した受信信号処理手段37に送り込まれる。
【0067】
この受信信号処理手段37は、前述した受信方位設定部34によって設定される扇状受波ビーム領域を介して前記各受信素子301 〜30m が同時に個別に受信した反射受信信号を加算処理し一の画像ドットに相当する受信データを各扇状の受波ビーム領域RF1 〜RFx毎に順次生成する加算処理部38と、この加算されて順次特定される各1ドットに対応した反射受信信号を経時的に且つ各単位受信信号(前述した単位励信信号に対応した信号部分)毎に例えば4回サンプンリングしてその時の受信データ(受信感度及び受信周波数)を特定し出力すると共に前記加算処理部38から送り込まれる他の1ドットに対応した反射受信信号に対しても同様に順次対処するサンプルホールド回路39とを備えている。
【0068】
ここで、上記加算処理部38で加算処理された受信データの前記受信素子301 〜30m における受信のタイミング情報は前述した主制御部10へ送られ、当該主制御部10では前述した送信時のタイミング情報に基づいて前述した目標物の位置情報(距離)が演算され記憶されるようになっている。
【0069】
前述したサンプルホールド回路39は、具体的には、受波器30で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された受信方位角度毎に且つ前記加算処理部38を介して各別に順次入力すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4a を対象としてこれを経時的に複数回(例えば4回)サンプルホールドし、当該単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aにかかる受信データと共にレプリカ相関処理の対象データとして後述するレプリカ相関部40へ出力されるようになっている。
【0070】
前述した受信信号処理手段37は、更に、前述したサンプルホールド回路39から出力されるレプリカ相関処理用の反射受信信号、即ち、このサンプルホールドにより取得された反射ドップラー信号にかかる前記バルク波の前記単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aを対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部41と、このレプリカ相関部41で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部と、前記レプリカ相関部41に併設され前記複数のレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成部40とを備えている。
【0071】
〔レプリカ信号生成部40〕
この内、上記したレプリカ信号生成部40は、前述した周波数シンセサイザ22bから出力される周波数の異なる単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aからなる励振信号(バルク波信号)に基づいて当該単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aを基準とし予め想定されるプラス方向およびマイナス方向に順次変化して成る異なった周波数の複数のレプリカ信号(本実施形態では101個)を生成し前記レプリカ相関部41へ出力する機能を備えている。この複数のレプリカ信号の生成は前述した励振信号(バルク波信号)Bの繰り返して出力される度に、当該励振信号(バルク波信号)Bの内容に合わせて繰り返し生成され出力されるようになっている。
【0072】
即ち、上記レプリカ信号生成部40で生成されるレプリカ信号は、前記励振信号生成回路部22で生成される周波数ホッピング信号dを構成する各単位励信信号f1a,f2a,f3a,f4aに対応して生成される。この場合、当該各単位励信信号f1a,f2a,f3a,f4aにかかる周波数を基準とし且つ想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を、前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分(本実施形態では50等分)した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成される。
このため、本実施形態では、各単位励信信号f1a,f2a,f3a,f4aと同一の周波数を基準レプリカ信号として合計101個のレプリカ信号が予め生成され記憶される。
【0073】
上記レプリカ信号生成部40は、具体的には、周波数シンセサイザ22bから入力する周波数ホッピング信号を構成している四つの周波数(図4参照)を基準としてこれをドップラーゼロに設定する。ここで、目標物が発信側(送信元)に接近移動している場合には、受波器30が受信する可能性がある周波数を最大に増幅された反射音(エコー)を想定して当該反射音に含まれる四つの周波数の各最大値(最大のドップラーが付いた周波数)を特定し、プラスのドップラーが付いた各最大周波数とドップラーゼロに設定する基準周波数との偏差(周波数)である+qをプラス側の最大ドップラー偏差とし、この+qを例えば50分割する。これにより、レプリカ信号生成部40は、ドップラーゼロの周波数のそれぞれに各段階のドップラーを加えたプラス側の50段階の周波数分析幅を持つ周波数のレプリカ信号を生成するドップラーシフト信号生成機能を備えている。
【0074】
又、このレプリカ信号生成部40は、目標物が発信側(送信元)に対して遠ざかって移動している場合に受波器30が受信する可能性がある周波数を最小に減少された反射音(エコー)を想定してこの反射音(エコー)に含まれる四つの周波数の各最小値を設定し、マイナスのドップラーが付いた各最小周波数とドップラーゼロに設定する基準周波数との偏差(周波数)である−qをマイナス側の最大ドップラー偏差とし、この−qを例えば50分割し、ドップラーゼロの周波数のそれぞれに各段階のドップラーを引いたマイナス側の50段階の周波数分析幅を持つ周波数のレプリカ信号を生成するドップラーシフト機能を有する。
このようにして、この例では、レプリカ信号生成部40は、ドップラーゼロの周波数を含めて101個のレプリカ信号を生成する。なお、レプリカ信号を101個にするのは一例に過ぎない。
【0075】
そして、このようにして生成されたレプリカ信号は、図6に示すように前述した各単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4a毎に区画されて、レプリカ相関部41のレプリカ信号記憶部42bに一時的に格納されるようになっている。
【0076】
〔レプリカ相関部41〕
レプリカ相関部41は、図1乃至図2に示すように、レプリカ信号生成部40で生成された複数のレプリカ信号を記憶するレプリカ信号記憶部42b,及び前述したサンプルホールド回路39でサンプリングされた反射受信信号の単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aを記憶する受信信号記憶部42aを備えた信号記憶部42と、この信号記憶部で記憶された前記反射受信信号について前記記憶されたレプリカ信号に基づいて相関処理を実行する受信信号相関処理部44とを備えている。
【0077】
この内、受信信号相関処理部44は、正規の反射信号の特定に際し、前述した受信方位角度毎に得られる前記反射受信信号を構成する周波数ホッピング信号の各単位周波数信号f1a,f2a,f3a,f4aを、レプリカ信号記憶部43に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについてその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定する相関処理機能44aを備えている。
【0078】
又、この受信信号相関処理部44は、この相関処理機能44aで特定された反射受信信号のドップラー情報及び当該反射受信信号の受信レベル情報に基づいて前記目標物の移動方向及び目標物の大きさを特定する目標物特定機能44bとを備えている。
【0079】
更に、この受信信号相関処理部44には、当該受信信号相関処理部44で特定された反射信号にかかる前記目標物の大きさ(受信信号レベル)及び移動方向の各データを記憶する目標物特定情報記憶部45が併設されている。
【0080】
このレプリカ相関により、目標物からの正規の反射信号が当該目標物の移動に伴うドップラーシフトし周波数の変化した状態で受信されても、このドップラーシフトした周波数の反射受信信号に惑わされることなく、目標物からの正規の反射信号を高精度で且つ確実に受信することが可能となり、同時に目標物の移動方向およびその速度も合わせて特定することができる。
【0081】
ここで、上記受信信号相関処理部44では、同一方位角度にあって特定される反射受信信号にかかる1,000ドットの情報(画像上における横方向の走査ライン上)が、前述した送信装置部100Aにて順次切り換え設定される扇状送波ファンビーム音TF1 ,TF2 ,……,TFY の送信方位の数(例えばY=800)の分だけ順次特定されて目標物特定情報記憶部45に記憶されるようになっている。
【0082】
この目標物特定情報記憶部45には、上記画像表示用にドット情報に対応して、同一タイミングの送受信情報に基づいて主制御部10で算定される各ドット情報にかかる目標物の位置情報(ソーナーシステム100からの距離情報)が入力され、対応するドット情報と共に目標物特定情報記憶部45に記憶されるようになっている。
【0083】
〔反射信号画像処理手段50〕
更に、上記受信信号処理手段37の出力段には、前述した目標物特定情報記憶部45に記憶された反射受信信号にかかる送受信のタイミング情報および反射レベルに基づいて前記目標物の所在位置およびその形状の大小にかかる各情報を特定する画素値データ処理を行う共に、前記反射受信信号の各受信方位に対応した表示用の座標データを付して座標データを生成し当該座標データを予め別に装備されたソーナー画像表示部に画像表示する反射信号画像処理手段50が併設されている。
【0084】
この反射信号画像処理手段50は、具体的には、前述した受信信号処理手段37で処理され順次送り込まれる目標物の位置情報及び感度情報(反射レベル情報)を順次画素値データに変換処理すると共に画像表示用の座標データを付して出力する画素値データ処理部46と、この画素値データ処理部46でデータ処理されたデータを記憶する座標値データ記憶部47と、この座標値データ記憶部47に記憶されている座標値データを二次元又は三次限の斜視図表示等に変換表示制御する表示制御部48とを備えて構成されている。
【0085】
ここで、上記画素値データ処理部46は、目標物特定情報記憶部45に記憶されている特定された一のドットおよびそれにかかる受信信号情報と対応する101個のレプリカ信号にかかるドップラー周波数のレプリカ相関値を読み出して、予め内部に設定されている画像表示条件の閾値と照合すると共に当該閾値を超えた音圧が最も高いレプリカ相関値を選択しその音圧に対応したグラデーションデータを画素値データとして出力する画素値データ処理を行う画素値データ処理機能を備えている。そして、この画素値データ処理を、前記各記憶部が記憶している一の送波ファンビーム毎に、対応する全部のレプリカ相関値に行われるようになっている。
【0086】
そして、上記画素値データ処理部46による画素値化処理は、具体的には、例えば図7に示すように、横軸の左端をドップラー周波数にかかる負の最大偏差であるマイナスq値,中央をドップラー周波数にかかる偏差0値,右端をドップラー周波数にかかる正の最大偏差であるプラスqとすると共に、縦軸に相関レベル(音圧)を取ったグラフ上で、目標物が存在すると想定される閾値エリア(ハッチングエリア,又は画像表示エリア)を設定し、同一の画素対応方位の101個のレプリカ相関値について1個ずつ閾値エリア(画像表示エリア)に含まれるか否か順次に判定する。
【0087】
そして、閾値エリアに含まれる最大の相関ピーク(最大音圧)を生じる一つのレプリカ相関値を抽出し、これを目標物の存在する画素としてグラデーションデータに置き換えて記憶する。符号47は、この場合のグラデーションデータを記憶する座標データ記憶部を示す。
【0088】
この画素値化処理を行うと、ドップラー周波数が付された反射受信信号であっても、これを閾値エリアによって高い相関レベルで確実に捕捉し特定することができる。又、この画素値化処理は、1ドットに対応する一画面分について順次行われ、これによって目標物からの反射信号を確実に検出し捕捉することができる。
【0089】
又、前述した表示制御部48は、前述した主制御部10からの要求に基づいて作動し、座標データ記憶部47に記憶されている画素値データを読み出して図8に示すようにマトリックス配列処理し、それをソーナー画像表示部に表示する画像表示制御機能を備えている。
【0090】
この場合、主制御部10からの要求に基づいて、同一時刻のマトリックス配列の画素を出力すれば二次元表示を行うことができ、又、サンプルホールドした複数回分の画面を奥行方向に重ね合わせて出力すれば図9に示すように三次元表示を行うことができる。さらに、送波器20と受波器30とで1サイクル分の送受波を行って得られる画面を重ね合わせて出力すれば、更に三次元表示を有効に行うことができる。
【0091】
〔本実施形態の動作〕
次に、上記実施形態におけるソーナーシステムの全体的な動作を、図10乃至図11に基づいて説明する。
最初に、目標物探索用として水中に発信される扇状送波ファンビーム音の生成および送信動作について説明し、続いて、目標物からの反射波に対する受信動作及びその受信信号に対する信号処理について順次説明する。
【0092】
(動作の概要)
図1に示すソーナーシステム100は、送信装置部100A側では、励振信号生成回路部22が周波数ホッピング信号からなるn個(本実施形態では10個)の異なった励振信号を送波素子201 〜20n に同時に印加することをY回(本実施形態では800回)繰り返すことにより、図4(A)に示すように、送波器20が第1〜第yの送波ファンビームTF1 〜TFY を順次に形成し送波ファンビーム音として水中に向かって送波する。
【0093】
一方、受信装置部100B側では、受信方位設定部34の指向性合成入力により、図5に示すように、受波器30が送波ファンビームを構成している各一つの周波数に対し空間的に90度のずれをもって交差する第1〜第xの受波ファンビーム(受波指向性)RF1 〜RFX を形成し待ち受ける。
【0094】
そして、この受信装置部100B側では、上記受波器30により、送波ファンビーム音が目標物に到達し送信元へ反射してくる反射音(エコー)を受波して受信処理し、当該反射受信信号を送波ファンビームの方位及び受波ファンビームの方位毎に指向性合成処理し、この指向性合成処理した反射受信信号と、該反射受信信号に対応する周波数ホッピング信号をドップラーシフトすることにより予め用意したレプリカ信号との間でレプリカ相関を行ってドップラーを除き、水中の目標物の正確な位置、距離、移動速度及び影像に関するY×Xのドット(Yは垂直方向のドット数,Xは水平方向のドット数)の画像データを取得し画像表示装置50に目標物の画像を表示するものである。
ここで、本実施形態では、n=m=10を想定しており、また、X=1,000、Y=800、を想定している。
以下、これを具体的に説明する。
【0095】
(送波ファンビームの送信動作)
システム全体を稼働状態に設定すると、まず、前記複数の各送波素子201 〜20n を同時に励振する励振信号として、前記送波器駆動制御手段21の励振信号生成回路部22が一定周期で繰り返す広帯域のバルク波Bで且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号(本実施形態では4個の単位励振信号)から成る異なった周波数ホッピング信号dを、前記バルク波Bの繰り返し周期毎に新たに生成し出力する(図10:S101乃至S105/周波数ホッピング信号生成工程)。
【0096】
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成される励振信号を前記送波器20に印加する(励振信号の印加工程)。この場合、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記前記送波器駆動制御手段21の送信方位設定部34が作動し、前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動して前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて(本実施形態では図4に示すように、図の上側部分から水平に広げられた扇状送波ファンビーム音を図の下側部分に向けて)一定の角度間隔で断続的に切り換え設定する(図10:S106/送波ファンビーム音発信工程)。
【0097】
これを更に詳述すると、まず、図10において、主制御部10が作動し一定周期で繰り返す基準信号a(バルク波)を送波器20用として出力する(図10:ステップS101)。同時に、主制御部10はシステム全体の動作タイミングを設定するタイミング制御信号bを出力する。
【0098】
同時に、主制御部10はタイミング制御信号bを出力する(図10:ステップS102)。このタイミング制御信号bは、連動する各構成部分(ホッピングパターン発生器22a、移相制御回路24、レプリカ信号生成部42、扇状受波ビーム設定回路35等)に入力する(図1)。
【0099】
次に、ホッピングパターン発生器22aがタイミング制御信号bの入力により前述したように周波数が不規則に設定された4種類のホッピングパターン信号cを生成して出力する(図10:ステップS103)。このホッピングパターン信号cは、周波数シンセサイザ22bに入力される(図1参照)。
【0100】
次いで、周波数シンセサイザ22bは、ホッピングパターン信号cに基づき基準信号aをホッピングパターン変調(パルス変調)して周波数ホッピング信号dを出力する(図10:ステップS104)。この周波数ホッピング信号dは、可変移相回路251 〜25n と後述するレプリカ信号生成部42に入力される(図1参照)。
【0101】
一方、移相制御回路24は、タイミング制御信号bの入力に基づいて各送波素子201 〜20n に個別に対応する位相制御信号e1 , e2,……en を生成し、これを位相設定指令信号として個別に前述した可変移相回路251 〜25n へ送り込む(図10:ステップS104)。
【0102】
これにより、可変移相回路251 〜25n は入力される周波数ホッピング信号bに対して個々に異なる位相制御信号(これによって送信方位が設定される)に基づいて遅延処理すると共に当該遅延処理され送信方位が設定された周波数ホッピング信号を出力し(図10:ステップS104)、これを対応する増幅器261 〜26n を介して送波素子201 〜20n に各別に印加する(図10(A):ステップS105乃至S106)。
【0103】
これにより、各送波素子201 〜20n は、励振信号の印加によって個別に励振され、全体が協働し送波器20として指向性を有する送波出力動作を行い、送波器20として第1の送波ファンビームTF1 を形成し送波ファンビーム音を送信する(図10:ステップS106)。以下、この動作を一定周期毎に実行し、第1,第3,…の送波ファンビームTF1 ,TF2 ,……,TFY を順次送信する(図10:ステップS107)。
【0104】
(反射ファンビームの受信及び受信信号の処理動作)
次に、上述した送波器20から送信された送波ファンビーム音が目標物から反射してきた場合、まず、この反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として受波器30が受信する。
【0105】
又、この反射波の受信に際しては、同時に予め前記受信方位設定部34が稼働し、前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向(本実施形態では図5に示す上下方向の広がり)で且つ前記アレイ状の各受信素子301 〜30X の一方の側から他方に側(受信側から見て右手方向から左手方向)に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する(図11:ステップS201/反射信号受信工程)。
【0106】
このステップS201の反射信号受信工程にあっては、最初に、前記送波器20による扇状に広げられた送波ファンビーム音TF1 〜TFY の広がりに直交する状態の扇状受波ビームRF1 〜RFX を、前記受信方位設定部34が予め前記受波器30の一方の端部側から他方の端部側に向けて断続的して繰り返し設定する(図11:ステップS202/扇状受波ビーム設定工程)。
同時に、この各扇状受波ビームで捕捉されるドップラーシフトされた前記反射波にかかる受信信号は、前記送波器20の各受信素子201 〜20n により同時に各別に受信される(図11:ステップS202/信号個別受信工程)。
【0107】
次に、この各受信素子201 〜20n で受信された反射波は、設定された扇状受波ビーム毎に方位情報が特定されて増幅器311 〜31n で増幅され、直交変調器321 〜32n 及び広帯域のフィルタ回路(BPF)331 〜33n で雑音処理され、その後、各別に前述した受信方位設定部34の受信側可変移送回路361 〜36n に取り込まれた後に加算処理部38に送られる(図11:ステップS203/雑音処理工程)。
【0108】
そして、この加算処理部38で加算処理されて画像上の単一ドットの位置情報が付された後にサンプリング処理され、その後、前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部44が相関をとり、これによって正規の反射信号を1ドットについて順次特定される(図11:ステップS204乃至S206/受信信号処理工程)。
【0109】
このステップS204乃至S206の受信信号処理工程にあっては、まず、前記各受信素子で受信された一の設定方位に於ける受信信号の全体を、加算処理部38が、前記受信方位設定部34の受信側可変移送回路361 〜36n を介して取り込んで加算処理する。 この加算処理は、前述した一の送波ファンビームについては水平方向に1,000回実行され、これによって画像処理における水平走査線上における1,000ドットの反射受信情報が生成される(図11:ステップS204/加算処理工程)。
【0110】
次に、この加算処理されて成る反射ドップラー信号は、その周波数及び感度情報を前記受信方位設定部34で設定される一の受信方位角度毎に且つ時系列で分けて前記複数の単位励信信号に対応した受信信号毎に、サンプルホールド回路39がサンプルホールドして出力する(図11:ステップS205/サンプルホールド工程)。
【0111】
このサンプルホールド工程によって、後述する画像表示における立体表示に必要な目標物のデータが得られる。このサンプルホールドされた受信信号は、レプリカ相関部の受信信号記憶部に順次記憶される(図11:ステップS205/受信信号記憶工程)。
【0112】
一方、レプリカ相関部におけるレプリカ相関処理に際しては、事前に、複数のレプリカ信号が、前述した4個の単位励信信号から成る励信信号(周波数ホッピング信号d)が励振信号生成回路部22から出力される度に当該励信信号に基づいて(当該励信信号の繰り返し出力毎に)ドップラーシフトされた複数のレプリカ信号が生成され、前述したレプリカ相関部が備えているレプリカ信号記憶部に図6に示す形態(4つの単位励信信号に対応した形態)をもって一時的に記憶される(図11:ステップS206/レプリカ信号生成工程)。
【0113】
このレプリカ信号生成工程では、前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の各周波数に対応して、前記レプリカ信号生成部42が生成しる。この場合、前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の一の信号にかかる周波数を基準とし想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を、前記基準周波数の前後でそれぞれ50等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成される。本実施形態では各単位励信信号毎に101個のレプリカ信号が予め生成され前述したようにレプリカ信号記憶部に記憶される。
【0114】
そして、このサンプルホールドされた前記反射受信信号がこれに対応して予めドップラーシフトされた前記複数のレプリカ信号に基づいて前記受信信号相関処理部が相関処理し、これによって前記目標物からの反射信号がそのドップラー量と共に特定される(図11:ステップS206乃至S207/レプリカ相関処理工程)。
【0115】
ここで、上記レプリカ相関処理について詳述する。
上記レプリカ相関処理では、レプリカ相関部41が一時記憶している反射受信信号に対し、画素対応方位が同一で、四つの周波数に関するサンプルホールドされた順位が同位の四つの受信信号を1組のデータ信号として読み出すと共に、各レプリカ信号記憶部42bが一時記憶してレプリカ信号を読み出すと共に読み出した1組のデータ信号と対応するレプリカ信号との相関をとり、ビーム信号の音圧強度とドップラーとを組み合わせたレプリカ相関値を出力する。この相関処理をサンプルホールド受信回数の分繰り返して、一の画素対応方位のレプリカ相関を終了する。こうして次々に画素対応方位毎にレプリカ相関を行う。
【0116】
続いて、第2の送波ファンビームTF2 についても、上述した第1の送波ファンビームTF1 の場合と同様にして相関処理が実行され、以後も、第yの送波ファンビームTFY まで、同様のステップが繰り返えされる。
【0117】
ここで、このレプリカ相関処理工程では、前記ドップラーシフトされた反射受信信号の特定に際し、前記各反射波の受信方位角度毎に得られるドップラーシフトされた前記反射受信信号にかかる各単位励信信号を、レプリカ信号記憶部42に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについて、前記受信信号相関処理部44が図6に示すようにその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定する。
【0118】
同時に、この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号に対応する前記反射ドップラー信号の送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び速度並びに移動方位にかる情報を、前記受信信号相関処理部44が特定し目標物特定情報記憶部46に記憶処理する。
【0119】
そして、この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記反射受信信号にかかる目標物の位置及び移動方位を、画像値データ処理部が画像表示用として特定し目標物特定情報記憶部45に記憶する(図11:ステップS207/画像表示データ特定工程)
【0120】
次に、この目標物特定情報記憶部45に記憶された正規の反射信号にかかる情報は、反射信号画像処理手段50の表示制御部48によってソーナー画像表示部49上に有効に表示される。具体的には、前述した受信信号処理手段37で処理され順次送り込まれる目標物の位置情報及び感度情報(反射レベル情報)は、画素値データ処理部で画素値データに順次変換処理され、画像表示用の座標データが付されて座標値データ記憶部47に記憶される(図11:ステップS208/座標データ記憶工程)。
【0121】
その後、この座標値データ記憶部47に記憶されている座標値データを、表示制御部48が二次元又は三次元の斜視図表示データに変換表示制御し、前述したソーナー画像表示部49上に送り込み、画像表示する(図11:ステップS209/目標物画像表示工程)。
【0122】
ここで、上記画素値データ処理部46は、前述したように、目標物特定情報記憶部45に記憶されている特定された一のドットおよびそれにかかる受信信号情報と対応する101個のレプリカ信号にかかるドップラー周波数のレプリカ相関値を読み出して、予め内部に設定されている画像表示条件の閾値と照合すると共に当該閾値を超えた音圧が最も高いレプリカ相関値を選択しその音圧に対応したグラデーションデータを画素値データとして出力する画素値データ処理を行う画素値データ処理機能を備えている。そして、この画素値データ処理を、前記各記憶部が記憶している一の送波ファンビーム毎に、対応する全部のレプリカ相関値に行われるようになっている。
【0123】
この上記画素値データ処理機能による画素値化処理は、具体的には、例えば図7に示すように、横軸の左端をドップラー周波数にかかる負の最大偏差であるマイナスq値,中央をドップラー周波数にかかる偏差0値,右端をドップラー周波数にかかる正の最大偏差であるプラスqとすると共に、縦軸に相関レベル(音圧)を取ったグラフ上で、目標物が存在すると想定される閾値エリア(ハッチングエリア,又は画像表示エリア)を設定し、同一の画素対応方位の101個のレプリカ相関値について1個ずつ閾値エリア(画像表示エリア)に含まれるか否か順次に判定する。
【0124】
その後、閾値エリアに含まれる最大の相関ピーク(最大音圧)を生じる一つのレプリカ相関値を抽出し、これを目標物の存在する画素としてグラデーションデータに置き換えて記憶する。符号47は、この場合のグラデーションデータを記憶する座標データ記憶部を示す。
【0125】
この画素値化処理を行うと、ドップラー周波数が付された反射受信信号であっても、これを閾値エリアによって高い相関レベルで確実に捕捉し特定することができる。又、この画素値化処理は、1ドットに対応する一画面分について順次行われ、これによって目標物からの反射信号を確実に検出し捕捉することができる。
【0126】
又、前述した表示制御部48は、前述した主制御部10からの要求に基づいて作動し、座標データ記憶部47に記憶されている画素値データを読み出して図8に示すようにマトリックス配列処理し、それをソーナー画像表示部に表示する。
【0127】
この場合、主制御部10からの要求に基づいて、同一時刻のマトリックス配列の画素を出力すれば二次元表示を行うことができ、又、サンプルホールドした複数回分の画面を奥行方向に重ね合わせて出力すれば図9に示すように三次元表示を行うことができる。さらに、送波器20と受波器30とで1サイクル分の送受波を行って得られる画面を重ね合わせて出力すれば、更に三次元表示を有効に行うことができる。
【0128】
ここで、本実施形態における上記動作で開示した各実行工程にあっては、その各動作機能の内容をプログラム化しコンピュータに実行させるように構成してもよい。この場合、コンピュータとしては前述した主制御部に予め装備したコンピュータを利用するようにしてもよい。
【0129】
(実施形態の作用効果)
このように、上記構成のソーナーシステム100によれば、送波器20が第1〜第yの送波ファンビームTF1 〜TFY を形成し、異なる周波数からなる送波ファンビーム音を水中に向かって送波し、受波器30が、一つの送波ファンビームの一つの周波数に対して第1〜第xの受波ファンビームRF1 〜RFX で切替式に待ち受けて反射音を受波し、受信方位設定部34が、周波数ホッピング信号に対応したレプリカ信号を生成して待ち受けると共に指向性を有するビーム信号を取得し、レプリカ相関部40が、ビーム信号とレプリカ信号とをレプリカ相関してレプリカ相関値を出力し、画素値データ処理部47が目標物特定情報記憶部46に記憶されたレプリカ相関値を読み出して画素値データ処理を行い、画像表示装置50が画素値データを入力して表示画面に水中の目標物の正確な位置、距離、移動速度及び影像に関するY×Xのドット(Yは垂直方向のドット数,Xは水平方向のドット数)を表示することができる。
【0130】
上記構成の送波装置部100Aは、周波数ホッピング信号を生成し周波数ホッピング信号を位相を変えて励振信号とし第1〜nの送波素子201 〜20n に入力し送波ファンビームを形成し送波ファンビーム音を送波合成することに特徴がある。
【0131】
また、上記構成の受波装置部100Bは、ドップラーシフトにより複数のレプリカ信号を生成すること、各受波素子301 ,302 ,……,30m で送波ファンビーム音の反射音を待ち受けて受信するための指向性制御を行ってビーム信号を取得すること、方位毎にレプリカ信号と受信ビーム信号とをレプリカ相関すること、レプリカ相関値を閾値に照合して画像データを得ること、を行う制御回路である。
【0132】
上記構成の受波装置部100Bは、送波装置部100Aに対応し、送波ファンビームの一つの周波数毎に第1〜第xの受波ファンビームを形成して受波し、一つの送波ファンビームを構成している周波数のホッピング数だけ第1〜第xの受波ファンビームの形成を繰り返して受信し反射信号を取得すること、及び、周波数毎に分かれた反射受信信号を方位別にまとめてからビーム信号との間でレプリカ相関することに特徴がある。
【0133】
従って、送波ファンビーム音と反射音が周波数ホッピング信号からなり、また、反射音に付いたドップラーを検出し、ドップラーが付いた目標物とドップラーの無い残響とを分離することができるので、妨害・干渉・傍受に強く、時間分解能距離分解能が高く、画素の座標ずれが生じない正確な画像データを高クロスレンジ分解能を有して取得できて正確な画像表示が行える。
【0134】
更に、本実施形態に係る上記ソーナーシステムによれば、妨害・干渉・傍受に強い送波ファンビーム音を生成しかつ目標物に向かって送波しかつ目標物により反射されて得られる反射音に付いたドップラーを検出しドップラーが付いた目標物とドップラーの無い残響とを分離して画素の座標ずれが生じない正確な画像表示、距離分解能・時間分解能が高い画像表示ができる。
【0135】
又、ソーナー用送信装置(送信装置部)、ソーナー用受信装置(受信装置部)、ソーナー画像表示方法、及びそのプログラムについても、上記実施形態の全体説明内で開示したように、上記ソーナーシステムと同様の目的を達成し得る構成および作用効果を備えたものとなっている。
【0136】
ここで、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲での各種変更が含まれる。
例えば、ホッピングパターン発生器22aは、上記のように、タイミング制御信号bを入力する毎に、ランダムに異なったホッピングパターン信号を周波数シンセサイザ22bに出力するようになっていてもよいし、また、送波素子201 〜20n が形成する送波ファンビームの数に対応した1サイクル分の異なったホッピングパターンを用意していて、タイミング制御信号bを入力する毎に、異なったホッピングパターン信号を周波数シンセサイザ22bに出力するようになっていてもよい。
【0137】
前述した送波素子については、これを横並びにして送波ファンビームを水平方向に並ばせて送信すると共に、前述した受波素子については、これを縦並びにして受波ファンビームを縦並びに形成して反射音を待ち受けるように設定してもよい。
また、送波素子201 〜20n で形成する送波ファンビームの形成順序が本実施形態とは逆に送波方向が下向きの角度から上向きの角度になるまで走査してもよい。
【0138】
(付記)
ここで、上述した各実施形態について、その新規な技術内容の要点を以下に示す。尚、これは、技術内容の要点であり、本発明をこれに限定するものではない。
【0139】
〔付記1〕
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、
前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段が、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号を生成する励振信号生成回路部を備え、前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に当該バルク波をその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る少なくとも二以上の単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成し、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された受信方位角度毎に順次受信すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号を対象としてこれを経時的に複数回サンプルホールドするサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドにより取得された反射受信波にかかる前記バルク波の前記各単位励振信号を対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関部で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成したことを特徴とするソーナーシステム。
【0140】
〔付記2〕
付記1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信信号処理手段に、前記目標物特定情報記憶部に記憶された前記反射信号にかかる送受信のタイミング情報および反射レベルに基づいて前記目標物の所在位置および形状にかかる各情報を特定する画素値データ処理を行う共に、前記各受信方位に対応した表示用の座標データを付して座標データを生成し当該座標データを予め別に装備されたソーナー画像表示部に画像表示する反射信号画像処理手段を併設したことを特徴とするソーナーシステム。
【0141】
〔付記3〕
付記1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記励振信号生成回路部は、周波数変調に必要な周波数情報として少なくとも二つの変調用周波数データを含むホッピングパターン信号cを乱数値に基づいて特定し出力するホッピングパターン発生器と、前記ホッピングパターン信号cと前記主制御部から一定周期で出力されるパルス波aとに基づいて励振信号である前記周波数ホッピング信号dを生成し一定周期で繰り返すバルク波として出力する周波数シンセサイザとを備えて構成されていることを特徴としたソーナーシステム。
【0142】
〔付記4〕
付記3に記載のソーナーシステムにおいて、
前記ホッピングパターン発生器は、予め乱数発生回路を有すると共に、前記送波素子の共振周波数における共振時のQを下げた状態で得られる広帯域の共振信号の内の有効に共振が得られる最小限度および最大限度の各周波数に対応した最小および最大の乱数値を予め設定し、前記乱数発生回路から順次出力される複数の乱数値に対応した任意の周波数値の組合せを前記ホッピングパターン信号cとして特定する機能を備え、
前記周波数シンセサイザ22bは、前記ホッピングパターン信号cに基づいて前記主制御部から一定間隔で送り込まれるパルス信号aをパルス変調し励振信号としての前記周波数ホッピング信号dを前記バルク波として出力する機能を備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【0143】
〔付記5〕
付記4に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段は、
前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dを送信器用励振信号として入力すると共に、当該周波数ホッピング信号dに基づいて前記各送波素子に対応した数で且つ前記送波ファンビーム音の送信方位に対応して設定される位相が順次異なった複数の励振信号を生成し当該生成された複数の励振信号を対応する前記各送波素子に同時に印加する送信方位設定部を備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【0144】
〔付記6〕(送信方位の切換え)
付記5に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送信方位設定部は、
前記各送波素子に印加する前記複数の各励振信号の位相を順次変化した状態に設定して対応する前記各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能と、
前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号に設定する位相の印加パターンを変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能とを備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【0145】
〔付記7〕
付記4に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送信方位設定部を、位相が異なる周波数ホッピング信号dを前記複数の各送波素子に同時に印加する複数の可変移相回路と、この複数の各可変移相回路に対して前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dが入力された場合に当該周波数ホッピング信号dの位相を前記送波ファンビーム音の送信方向に対応して順次変化した状態に設定するように対応する前記各可変移相回路に予め指令する移相制御回路24とにより構成したことを特徴とするソーナーシステム。
【0146】
〔付記8〕(方位切換え時の時間間隔)
付記6に記載のソーナーシステムにおいて、
前記主制御部は、前記送波ファンビーム音の送信方位角度の送信角度断続切替え設定に際しては、その切り換え時間の時間間隔を予め設定されたプログラムに従って適宜可変設定する切換えタイミング設定機能を備えていることを特徴とするソーナーシステム。
【0147】
〔付記9〕
付記1乃至6の何れか一つに記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信方位設定部を、
前記受波器の各受波素子を個別に付勢して前記各送波ファンビーム音に対する受信方位角度を設定する複数の受信側可変移相回路と、この各受信側可変移相回路を介して前記各受波素子の受信動作を制御し前記送波ファンビーム音の扇状ビーム面に直交する向きに扇状の受波ビーム領域を設定すると共に当該扇状受波ビーム領域を前記各受波素子の一方の側から他方の側に向けて可変設定する扇状受波ビーム設定回路とを備えた構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【0148】
〔付記10〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記扇状受波ビーム設定回路により前記各受波素子に切り換え設定される扇状受波ビーム領域の一の方位は、画像表示に際して設定される画面における1ドットに対応したものであることを特徴とするソーナーシステム。
【0149】
〔付記11〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信信号処理手段を、
前記各受波素子で受信され前記受信方位設定部の前記各受信側可変移相回路を介して取り込まれる同一タイミングのドップラーシフトされた前記反射受信信号を加算処理する加算処理部と、
この加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号を対象として前記サンプルホールド回路がサンプルホールドすると共に、このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記送信方位角度及び受信方位角度毎に分けて記憶する受信信号記憶部と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号に対応して予めドップラーシフトされた周波数信号であるレプリカ信号を,前記周波数ホッピング信号dに基づいて前記一の単位励振信号毎にそれぞれ複数生成するレプリカ信号生成部と、
このレプリカ信号生成部で生成される複数のレプリカ信号を前記送信方位角度毎に分けて記憶するレプリカ信号記憶部と、
前記記憶されたレプリカ信号と前記反射受信信号とを送信方位角度を合わせて且つ受信方位角度毎に相関をとり当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号およびそのドップラー量を順次特定する受信信号相関処理部とを含む構成とし、
前記サンプルホールド回路を、
前記加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号の周波数及び感度情報を前記扇状受波ビーム設定回路で特定される一の受信方位角度毎に且つ前記反射受信信号を構成する複数の各単位励信信号毎にサンプルホールドする構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【0150】
〔付記12〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記レプリカ信号生成部で生成されるレプリカ信号は、前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dを構成する各単位励信信号に対応して生成され、当該各単位励信信号にかかる周波数を基準とし且つ想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成されたものであることを特徴とするソーナーシステム。
【0151】
〔付記13〕
付記11に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信信号相関処理部は、
前記反射信号及びそのドプラー量の特定に際しては、前記受信方位角度毎に得られる前記反射受信信号を構成する周波数ホッピング信号の各単位周波数信号を、レプリカ信号記憶部に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについてその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定する相関処理機能と、
この特定された反射受信信号のドップラー情報及び当該反射受信信号にかかる送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を特定する目標物特定機能と、を備え、
前記受信信号相関処理部に、当該受信信号相関処理部で特定された反射信号にかかる前記目標物の位置及び移動方位の各情報を記憶する目標物特定情報記憶部を併設したことを特徴とするソーナーシステム。
【0152】
〔付記14〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の前記受信信号処理手段に、前記受信信号相関処理部で順次特定された前記目標物からの反射信号および当該反射信号にかかる情報を画像表示用として画像処理する反射信号画像処理手段を併設したことを特徴とするソーナーシステム。
【0153】
〔付記15〕
扇状に広げられた送波ファンビーム音を目標物に向けて且つ一定周期で繰り返し送信する送波器と、この送波器を励振制御する送波器駆動制御手段と、この送波器駆動制御手段の全体的な動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用送信装置において、
前記送波器を前記目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子をもって構成すると共に、
前記送波器駆動制御手段を、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号である周波数ホッピング信号dを生成し出力する励振信号生成回路部と、この励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dの位相を前記各送波素子毎に順次変化した状態に設定して対応する当該各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能を備えた送信方位設定部とを有する構成とし、
前記送信方位設定部を、前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号の位相の印加パターンを繰り返し発信する送信ファンビーム音毎に変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能を備えた構成とし、
前記励振信号生成回路部で生成される前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に、このバルク波を少なくとも異なった周波数の断続した二以上の単位励振信号から成る前記ホッピング信号をもって構成したことを特徴とするソーナー用送信装置。
【0154】
〔付記16〕
アレイ状に配列された複数の送波素子を備えた送波器から一定周期で繰り返えし発信された広帯域の扇状の送波ファンビーム音が目標物から反射して戻ってきた場合にこれを受信する複数の受波素子を備えた受波器と、この受波器の各受波素子を前記送波器のアレイ状送波素子に直交する方向に設置すると共に前記目標物からの反射音に対する受信方位を扇状の送波ファンビーム音に直交する方向の扇状の受波ビームとして予め設定する受信方位設定部と、前記受波器で受信されるドプラーシフトされた反射受信信号を信号処理すると共に当該目標物の所在を特定する受信信号処理手段と、これら各部の動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用受信装置において、
前記送波器から一定周期で繰り返えし発信される広帯域の扇状の送波ファンビーム音は周波数の異なる複数の単位励振信号から成るバルク波を励信信号として繰り返し発信された送波ファンビーム音とすると共に、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からのドップラーシフトされた反射受信信号が前記受信方位設定部を介して予め設定された受信方位角度毎に順次受信された場合に当該反射受信信号を経時的に複数回サンプルホールドし出力するサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記バルク波を構成する複数の単位励振信号を対象とし且つこれに対応して予め生成された複数のレプリカ信号とについて受信方位毎に相関処理すると共にこれによって目標物からの反射信号およびそのドプラー量を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関により特定された反射信号およびそのドプラー量にかかる情報を画像表示用の目標物特定情報として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成としたことを特徴とするソーナー用受信装置。
【0155】
〔付記17〕(方法の発明/付記1対応)
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記送波器駆動制御手段の励振信号生成回路部が前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成し(周波数ホッピング信号d生成工程)、
この周波数ホッピング信号dを励信信号として前記複数の送波素子に印加するに際しては、前記前記送波器駆動制御手段の送信方位設定部が作動し、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記複数の送波素子毎に個別に位相制御すると共に、当該位相制御された周波数ホッピング信号dを前記アレイ状の各送波素子に同時に印加して前記目標物に向けて送信される扇状送波ファンビーム音の方位を、前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定し(送波ファンビーム音発信工程)、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定し(反射信号受信工程)、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎に予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関処理すると共にこれにより当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号の強度及びそのドップラー量を順次特定し(受信信号処理工程)、
この特定された反射信号のドップラー情報並びに強度情報を画素値データ処理部が画像表示用として特定するようにしたこと(画像表示データ特定工程)を特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0156】
〔付記18〕(方法の発明/付記5対応)
付記17に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記送波ファンビーム音発信工程にあって、前記送波器に対する前記励振信号の印加に際しては、前記励振信号生成回路部が前記送信方位角度の切り換え毎に異なった周波数の単位励振信号の組合わせから成る周波数ホッピング信号dを出力するようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0157】
〔付記19〕(方法の発明/付記9対応)
付記17に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記受信信号処理工程にあっては、
前記各受信素子で受信された受信信号の全体を、前記受信方位毎に予め装備された加算処理部が前記受信方位設定部を介して取り込んで加算処理し、
この加算処理されて成る反射ドップラー信号の周波数及び感度情報を前記受信方位設定部で設定される一の受信方位角度毎に時系列で分けて且つ前記複数の単位励信信号に対応した受信信号毎に、サンプルホールド回路がサンプルホールドし、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号とこれに対応して予め生成され記憶部に記憶されているドップラーシフトされた前記複数のレプリカ信号とについて前記受信信号相関処理部が相関処理する構成としたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0158】
〔付記20〕(方法の発明)
付記15に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記レプリカ信号は、前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の各周波数に対応して且つ当該一の単位励信信号にかかる周波数を基準とし想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて、前記レプリカ信号生成部が生成したものであることを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0159】
〔付記21〕(方法の発明)
付記20に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記受信信号処理工程における前記ドップラーシフトされた反射受信信号の特定に際しては、前記各方位角度毎に得られるドップラーシフトされた前記反射受信信号にかかる周波数ホッピング信号dの各単位励信信号を、レプリカ信号記憶部に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについて、前記受信信号相関処理部がその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定し、
同時に、この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号に対応する前記反射ドップラー信号の送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び速度並びに移動方位を、前記受信信号相関処理部が特定し目標物特定情報記憶部に記憶処理するようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0160】
〔付記22〕(プログラム発明/付記17対応)
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成する周波数ホッピング信号生成処理機能、
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成され前記複数の各送波素子に対応して位相制御された励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動し前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的に切り換え設定する送信方位切換え設定機能、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する受信方位切換え設定機能、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて相関処理すると共にこれに基づいて反射信号の強度やドプラー量を順次特定する受信信号処理機能、
及びこの特定された反射信号についてそのドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像表示用として特定し記憶部に記憶処理する画像表示データ記憶処理機能、
を備え、これらの各処理機能を前記主制御部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【0161】
〔付記23〕(プログラム発明/付記19対応)
付記22に記載のソーナー用目標物特定プログラムにおいて、
前記信号受信処理機能にあっては、
前記各受信素子で受信される反射ドップラー信号の全体を受信方位毎に取り込んで加算処理する加算処理機能、
この加算処理されて成る反射ドップラー信号の周波数及び感度情報を前記受信方位設定部34で設定される一の受信方位角度毎に時系列で分けて且つ前記複数の単位励信信号に対応した単位周波数信号毎に、サンプルホールドした後これを一時的に保持するサンプルホールド処理機能、
このサンプルホールドされた前記反射ドップラー信号に対応して、予めドップラーシフトされた前記送波ファンビーム音の反射波に対応するドップラー周波数信号のレプリカ信号を、前記周波数ホッピング信号dに基づいて前記一の単位励振信号毎に複数生成すると共に、この生成された複数のレプリカ信号を前記送信方位角度によって特定される周波数ホッピング信号d毎に分けて、レプリカ信号記憶部43に記憶処理するレプリカ信号生成記憶処理機能、
および前記サンプルホールドされた反射ドップラー信号を、前記記憶されたレプリカ信号に基づいて相関処理し、反射ドップラー信号から目標物からの反射信号およびドプラー量を順次特定して記憶部に記憶する受信信号相関処理機能、
を設け、これらを前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【0162】
〔付記24〕(プログラム発明/付記20対応)
付記23に記載のソーナー用目標物特定プログラムにおいて、
前記レプリカ信号生成記憶処理機能では、
前記レプリカ信号を前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の周波数に対応して生成すると共に、当該一の前記単位励信信号にかかる周波数を基準とし想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成するレプリカ信号生成処理機能を設け、
これを前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【0163】
〔付記25〕(プログラム発明/付記21対応)
付記27に記載のソーナー用目標物特定プログラムにおいて、
前記受信信号相関処理機能にあっては、
前記ドプラーシフトされた反射受信信号に基づいて反射信号を特定するに際しては、前記各方位角度毎に得られる反射ドップラー信号にかかる周波数ホッピング信号の各単位励信信号を、レプリカ信号記憶部に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについて、その周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定し、
同時に、この特定された反射信号に対応する前記反射信号のドップラー情報及び送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び速度並びに移動方位を特定し目標物特定情報記憶部に記憶処理し、
これらを前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、送波器と受波器とで形成されるクロスファンビームを使用し送波ファンビーム音が目標物により反射されて得られる反射音(エコー)を受信処理し目標物の正面画像を得るためのソーナーシステム、送信装置、受信装置、ソーナー目標物特定方法、及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、送波器と受波器とで形成されるクロスファンビーム方式(Mills Cross 法ともいう)を使用する水中画像ソーナーが複数提案されている。
クロスファンビーム方式によると、ソーナーヘッドに送波素子のラインアレイである送波器と受波素子のラインアレイである受波器とが直交するように配置し、送波器から水中に向かって左右に扇形に広がるビーム(ファンビーム)を発信し、直交する受波器も扇形のビーム形状で反射を待ち受けることにより、交点それぞれの測定値が得られる。
【0003】
この種の水中画像ソーナーで従来公知の文献として、下記の特許文献1乃至3がある。 この内、特許文献1に開示されている水中画像ソーナーは、その送信時及び受信時の動作として以下に示す内容が開示されている。
まず、送信タイミング制御回路から出力する送信タイミング制御信号を移相/周波数制御回路に供給し、移相/周波数制御回路において送信タイミング制御信号に基づき送波器の数に対応した数の周波数データ及び移相データを生成して出力する。周波数データは送信パルス発生回路に供給し、ここで各送波器に対応する周波数データ毎にパルス変調して各励振信号を生成する。さらに各励振信号を対応する可変移相回路に供給すると共に移相/周波数制御回路から各移相データを対応する可変移相回路に供給し、各可変移相回路において励振信号に対し移相データに応じた位相を与える。所定の位相を与えた各励振信号を電力増幅させてから対応する各送波器に印加し各送波器を励振駆動する。これにより、各送波器から時系列でかつビーム扁平面に交差する方向に微小角度ずつシフトさせて水中の目標物の方向に向けて送波ファンビームを送信する。
【0004】
又、受信時には、まず、受波器において、ビームの扁平面が送波ファンビームの扁平面に対して90度のずれをもって交差し扇形に拡がる受波ファンビーム(受波指向性)を形成し送波ファンビーム音が水中の目標物により反射されて得られる反射音を待ち受ける。 受波ファンビームは、一つの送波ファンビーム毎に一方側から他方側まで微小角度ずつシフトさせ、これを全部の送波ファンビームに対して行い、一つの受波ファンビーム毎に受波器で受信する。反射音は、受波ファンビームとクロスする位置の各受波器でそれぞれ受波され、受波信号(電気信号)に変換される。受波信号は、対応する各増幅回路で増幅され更に対応する各周波数分離回路に入力されて各々所定の周波数別の周波数分離信号として分離され画像再生処理装置に入力する。
画像再生処理装置では、受波器から入力する周波数分離信号の垂直方向及び水平方向に展開するレベルデータを算出し、画像データとして表示器に出力する。表示器ではレベルを輝度に置き換え表示する。
【0005】
一方、この特許文献1に記載された水中画像ソーナーは、目標物の特定部分を抽出し垂直方向の分解能を上げることができないという問題点があり、この問題点を解消するために、次に説明する特許文献2に開示されている水中画像ソーナーが提案されている。
【0006】
特許文献2に記載された水中画像ソーナーは、垂直方向の分解能を向上させるため、特許文献1に示す移相/周波数制御回路に代えて、掃引制御回路を備えている。この掃引制御回路は、送信パルス内で周波数を掃引する周波数データと、送波ファンビームの方向を走査する移相データとを発生する。周波数データは送信パルス発生回路に入力し、送信パルス発生回路において周波数データに基づき送信パルス内で第1の周波数から第2の周波数に連続的に変化する励振信号を生成する。
各送波素子には対応する可変移相回路と増幅器とを介して移相データと励振信号とが入力される。各送波器は、送波ファンビーム方向を移相データに応じて例えば垂直方向に変化させながら、周波数が第1の周波数から第2の周波数に連続的に変化する送波ファンビーム音を水中に放射する。
【0007】
そして、受波側では、第1の周波数から第2の周波数までの間の周波数範囲内で任意に設定される第3の周波数から第4の周波数までの周波数範囲を2以上の整数で分割したとき、受信信号の各分割周波数成分を、各中心周波数と帯域幅をそれぞれ可変制御する前記分割数のフィルタで周波数選択し、分割周波数成分毎に複数の受波器の受波ファンビーム方向のレベル検出を行い、画像データを生成する。
画像制御回路は、画像化する周波数範囲が与えられると、第3及び第4の周波数の設定により周波数分離回路内の各フィルタの中心周波数と帯域幅を可変制御する。これにより、反射音の特定周波数成分/特定角度範囲を抽出できるとした。
【0008】
更に、特許文献3に記載された目標物位置極限方法を実施するための水中画像ソーナーは、送波器と受波器とを有し、指向性を持つビーム信号に形成する整相器と,第1の周波数分析器と,第2の周波数分析器と,表示処理器と,レプリカ信号変換器と,受信処理器と,探知/表示処理器とを備えている。
【0009】
この特許文献3に記載された水中画像ソーナーは、送波器で送波ファンビーム音を水中に送波し、目標物からの反射音を受波器で受波し、受信信号を整相して指向性を持つビーム信号を形成し、このビーム信号を第1周波数分析器が一定時間の窓幅で周波数分析して分析結果をデータ蓄積し、この蓄積データを用い第2周波数分析器が所定の周波数分析幅による周波数分析を行ってその結果を表示すると共に、第1周波数分析器の周波数分析結果と前記送信信号のレプリカ信号との相関処理を行い、この相関処理結果の信号値が所定の閾値を越える場合に、この信号を目標物からのエコー信号であると判定し、このエコー信号の方位と距離を推定して、目標物の位置を局限するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−5728号公報
【特許文献2】特開平10−132930号公報
【特許文献3】特開平10−332818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1及び2に記載された目標物位置極限方法を実施するための水中画像ソーナーは、いずれも単純な周波数分割により送波ファンビームを分離するものでありドップラーを検出する手段がない。このため、ソーナーを搭載している水中走行体の移動又は目標物の移動等に起因して目標物からの反射音にドップラーが付されている場合、このドップラーが付いた目標物からの反射音とドップラーの無い残響とを分離することができないことから、ドップラーに起因して画素の座標がずれる場合があり、目標物の画像を正確に表示できない,という不都合があった。
【0012】
又、特許文献3に記載された水中画像ソーナーは、レプリカ相関処理及び整相器のそれぞれにおいて数式展開が難しくその解析処理に時間がかかり、また受信反射音に対する距離分解能・時間分解能の向上を図るための措置がなされていないため、当該分解能は低い。更に、反射音の受波が妨害,干渉,傍受に弱いとは難点がある。
【0013】
〔発明の目的〕
本発明は、上記に鑑みなされたもので、目標物が移動し反射受信信号にドップラーが付され受信周波数が変化していても、ドップラーの無い周囲環境の残響と有効に分離できて目標物を画像表示用として正確に検出することを可能とするソーナーシステム、送信装置、受信装置、ソーナー用目標物特定方法、およびそのプログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナーシステムは、
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、
前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成されている。
【0015】
更に、前記送波器駆動制御手段は、
前述した複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号を生成する励振信号生成回路部を備え、前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に当該バルク波をその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る少なくとも二以上の単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成しされている。
【0016】
そして、前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された方位角度毎に順次受信すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号を対象としてこれを経時的に複数回サンプルホールドするサンプルホールド回路と、このサンプルホールドにより取得された反射ドップラー信号にかかる前記バルク波の前記単位励振信号を対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部と、このレプリカ相関部で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成したことを特徴とする。
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナー用送信装置は、扇状に広げられた送波ファンビーム音を目標物に向けて且つ一定周期で繰り返し送信する送波器と、この送波器20を励振制御する送波器駆動制御手段と、この送波器駆動制御手段の全体的な動作を制御する主制御部とを備え、
前記送波器を前記目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成する。
【0018】
又、前記送波器駆動制御手段は、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号である周波数ホッピング信号dを生成し出力する励振信号生成回路部と、この励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dの位相を前記各送波素子毎に順次変化した状態に設定して対応する当該各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能を備えた送信方位設定部とを有する。
【0019】
そして、前記送信方位設定部が、前記前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号に設定する位相の印加パターンを変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能を備えた構成とし、更に、前記励振信号生成回路部で生成される前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に、このバルク波を少なくとも異なった周波数の断続した二以上の単位励振信号から成る前記ホッピング信号をもって構成したことを特徴とする。
【0020】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナー用受信装置は、
アレイ状に配列されてなる複数の送波素子を備えた送波器が一定周期で繰り返す広帯域のバルク波に付勢され目標物に向けて扇状の送波ファンビーム音を送信すると共に前記目標物からの反射波が戻ってきた場合にこれを受信する受波器と、この受波器が備えている複数の各受波素子を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を予め設定する受信方位設定部と、前記受波器で受信されるドプラーシフトされた反射受信信号を信号処理すると共に当該目標物の所在を特定する受信信号処理手段と、これら各部の動作を制御する主制御部とを備えている。
【0021】
この内、前記受波器の各受波素子を、目標物に面してアレイ状に配列すると共に前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態に設置する。
【0022】
そして、前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からのドップラーシフトされた反射受信波が前記受信方位設定部を介して予め設定された受信方位角度毎に順次受信された場合に当該反射受信信号を経時的に複数回サンプルホールドし出力するサンプルホールド回路と、このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記バルク波を構成する複数の単位励振信号を対象とし且つこれに対応して予め生成された複数のレプリカ信号とについて受信方位毎に相関をとりこれによって目標物からの正規の反射信号を特定するレプリカ相関部と、このレプリカ相関により特定された正規の反射信号を画像表示用の目標物特定情報として記憶する目標物特定情報記憶部と、を含む構成としたことを特徴とする。
【0023】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるソーナー用目標物特定方法は、
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
【0024】
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として、前記送波器駆動制御手段の励振信号生成回路部が一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号から成る異なった周波数ホッピング信号dを、前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成し(周波数ホッピング信号d生成工程)、この周波数ホッピング信号dに基づいて生成される励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記前記送波器駆動制御手段の送信方位設定部が作動し、前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動して前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定し(送波ファンビーム音発信工程)、
【0025】
送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定し(反射信号受信工程)、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関をとることにより正規の反射信号を順次特定し(受信信号処理工程)、
この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像値データ処理部が画像表示用として特定するようにしたことを特徴とする(画像表示データ特定工程)。
【0026】
上記の目的を達成するため、本発明のソーナー用目標物特定プログラムは、
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
【0027】
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号から成る異なった周波数ホッピング信号dを、前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成する周波数ホッピング信号生成処理機能(周波数ホッピング信号d生成工程)、
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成される励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記送波器駆動制御手段21の送信方位設定部が作動し、前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動して前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定する送信方位切換え設定機能(送波ファンビーム音発信工程)、
【0028】
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に(反射信号受信工程)、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する受信方位切換え設定機能、(反射信号受信工程)
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関をとることにより正規の反射信号を順次特定する反射信号特定処理機能(受信信号処理工程)、
【0029】
及びこの特定された反射信号についてそのドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像値データ処理部が画像表示用として特定し記憶部に記憶処理する画像表示データ記憶処理機能、を備え、これを前記主制御部10が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は上述したように構成したので、これによると、送信波として複数の断続した周波数ホッピング信号を使用すると共に反射受信信号については前記周波数ホッピング信号に対応して予め準備された複数のレプリカ信号との相関をとるという構成を採用したので、目標物の移動により当該目標物からの反射音がドップラーシフトされて送信波の周波数が変化していても、これに影響されることなく当該目標物にかかる反射信号およびその情報を画像表示用として有効に且つ正確に受信し特定することを可能としたソーナーシステム、送信装置、受信装置、ソーナー用目標物特定方法、及びそのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るソーナーシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に開示したソーナーシステムにおける受信信号処理手段部分を示すブロック図である。
【図3】図1に開示したソーナーシステムにおける送波器と受波器の配置関係を示す正面図である。
【図4】図3に開示した送波器が形成する送波ファンビーム及びその励信信号を示す図で、図4(A)は扇状送波ファンビーム及びそれに対応した励信信号であるホッピング周波数データの例を示す説明図、図4(A)は送波器に印加されるバルク波Bとしての周波数ホッピング信号dの一例を示す説明図である。
【図5】図3に開示した受波器が外部に対して形成する受波ビーム領域の例を示す説明図である。
【図6】図1に開示したレプリカ相関部におけるレプリカ信号と反射受信信号との相関処理の場を示す図で、レプリカ信号は一の単位励信信号毎にq=50個とした場合の例を示す説明図である。
【図7】図1のソーナーシステムにおける画素値データ処理部による画素値データ処理の状態を示す説明図である。
【図8】図1のソーナーシステムにおける画像表示装置で二次元表示の場合の前記取得した受信信号の画面上における位置を示す説明図である。
【図9】図1のソーナーシステムにおける画像表示装置で三次元表示することを示す説明図である。
【図10】図1のソーナーシステムにおける送信装置部における動作を示すフローチャートである。
【図11】図1のソーナーシステムにおける受信装置部における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態を、図1乃至図11に基づいて説明する。
まず、図1乃至図4において、ソーナーシステム100は、扇状に広がる送波ファンビーム音TF1 ,TF2 ,……,TFY(Y は本実施形態では800)を目標物に向けて順次切り換え送信する送波器20及び当該送波器20を励振制御する送波器駆動制御手段21を備えた送信装置部100Aと、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器30及び当該受波器30を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部34並びに前記受波器30で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用の反射受信信号として特定する受信信号処理手段37を備えた受信装置部100Bとを備えている。
【0033】
更に、ソーナーシステム100は、上記各構成要素全体の動作を制御する主制御部10を備え、又、前記受信装置部100Bには、受信した前記反射受信信号をソーナー画面に表示する反射信号画像処理手段45を備えている。
【0034】
〔送信装置部および主制御部〕
上記送信装置部100Aが備えている送波器20は、探知用の目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子201 ,202 ,……,20n により構成されている。又、上記受波器30は、同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器20に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子301 ,302 ,……,30m により構成されている。ここで、本実施形態では、m=n=10に設定されている。図3に、これら送波器20および受波器30の配置状態の一例を示す。
【0035】
ここで、扇状に広がる送波ファンビーム音TFの送信方向については、送波器20を励振制御する送波器駆動制御手段21によって、後述するように送波ファンビーム音TFの繰り返し周期T0 (図4(B)参照)に同期して段階的に順次可変設定されるようになっている。
図4(A)に、この場合の送波ファンビーム音TF(TF1 ,TF2 ,……,TFY )の送信方向の例を示す。ここで、本実施形態では、Y=800に設定されている。
【0036】
又、前述した各送波素子201 〜20n および受波素子301 〜30n は、本実施形態ではそれぞれ圧電素子により形成され、且つその音波出力面については前述した扇状に広がる送波ファンビーム音TFを発信し得るように、その断面が緩やかな円弧状に形成されたものが使用されている。
【0037】
そして、この円弧状に形成された各送波素子201 〜20n 及び各受波素子301 〜30n については、その曲率半径を予め適度に設定することにより、前記送波ファンビーム音の扇状広がり角度αを、例えば30度,50度,又は70度の如く、予め任意の広がり各(スワス角)に設定し得るようになっている。
【0038】
更に、上記送波器駆動制御手段21は、前記複数の各送波素子201 〜20n を同時に励振するための励振信号を生成し出力する励振信号生成回路部22と、この励振信号生成回路部22で生成された励振信号を前記送波器20へ印加すると共に前記送波ファンビーム音TFの送信方向を(繰り返し周期(図4(B)参照)毎に)一方の側から他方の側(図4(A)では上方から下方)に段階的に順次可変設定する送信方位設定部21と、前記送波器20へ印加する励振信号を個別に増幅して対応する各送波素子201 〜20n へ個別に送り込む増幅器261 ,262 ,……,26n とを備えて構成されている。
【0039】
この内、前記励振信号生成回路部22は、上記各励振信号として一定周期で繰り返す広帯域のバルク波Bを生成する。ここで、図4(B)に示すバルク波Bは、扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて発信する場合の送波信号であり、本実施形態ではその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る四つの単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成されているが、2個,3個又は5個以上の単位励振信号を使用するように構成してもよい。
【0040】
この励振信号生成回路部22は、具体的には、周波数変調に必要な周波数情報として、本実施形態では周波数の異なった四つの変調用周波数データを含むホッピングパターン信号cを乱数値に基づいて特定し出力するホッピングパターン発生器22aと、前記ホッピングパターン信号cに基づいて前述した主制御部10から出力される基本パルスaをパルス変調し励振信号である周波数ホッピング信号dを生成して出力する周波数シンセサイザ22bとにより構成されている。
【0041】
即ち、上記ホッピングパターン発生器22aは、予め乱数発生回路を有すると共に、前記送波素子201 乃至20n の共振周波数における共振時のQを下げた状態で得られる広帯域励振信号の内の有効な共振が得られる最小限度および最大限度の各周波数に対応した最小および最大の乱数値を予め設定し、前記乱数発生回路から順次出力される複数の乱数値に対応した任意の周波数値の組合せを前記ホッピングパターン信号cとして特定する機能を備えている。
【0042】
これを更に詳述すると、まず、送波素子201 〜20n は、印加される周波数ホッピング信号からなる励振信号が送波素子20の共振周波数に近いものでなければ送信に有効な励振が行えず送波ファンビーム音を生成できない。このため、ホッピングパターン発生器22aは、乱数値に基づいた周波数変調(パルス変調)用の少なくとも二つの信号(本実施形態では四つの信号)であるホッピングパターン信号を出力するように構成されたものを使用している。
【0043】
また、周波数シンセサイザ22bとしては、前述したように、送波素子20の共振周波数の共振時のQを下げた状態の有効な共振が得られる広帯域励振信号の最小値をホッピングパターン発生器22aが出力する最小の乱数値に対応させ且つ同広帯域励振信号の最大値をホッピングパターン発生器22aが出力する最大の乱数値に対応させると共に、前述したホッピングパターン信号cに基づいて周波数ホッピング信号dを出力するように構成されている(図1参照)。
【0044】
この場合、ホッピングパターン信号cは、本実施形態では周波数シンセサイザ22bが主制御部10から入力する基本信号aをパルス変調して四つの単位励振信号を出力するためのパルス変調用の信号(搬送波に相当)である。又、上記ホッピングパターン発生器22aは、乱数発生器を含んで構成され、この乱数発生器が出力する乱数に基づいてホッピングパターンが生成される構成となっている。
【0045】
具体例として、ホッピングパターン発生器22aは、出力する乱数が1〜10までの範囲の任意の小値と、11から20までの範囲の任意の大値と、を交互に且つ小値と大値とがそれぞれ二個となるように四つの乱数値からなるホッピングパターン信号を出力するように構成されている。又、周波数シンセサイザ22bは、送波素子の共振周波数の共振時のQを下げた状態の有効な共振が得られる広帯域励振信号の最小値をホッピングパターン発生器22aが出力する乱数値=1に対応させ、且つ同広帯域励振信号の最大値をホッピングパターン発生器22aが出力する乱数値=20に対応させて、ホッピングパターン信号の四つの乱数値に対応する周波数ホッピング信号を出力するように構成されている。
【0046】
又、上記周波数シンセサイザ22bは、前述したようにホッピングパターン信号cに基づいて前述した主制御部10から一定間隔で送り込まれるパルス信号aをパルス変調し励振信号としての周波数ホッピング信号dを出力する機能を備えている。
【0047】
これにより、前述した励振信号である周波数ホッピング信号dが、上記励振信号生成回路部22で生成され出力されるようになっている。
【0048】
また、前述した送信方位設定部21は、上記励振信号生成回路部22で生成される周波数ホッピング信号dを送信器用励振信号として入力すると共に、当該周波数ホッピング信号dに基づいて前記送波ファンビーム音TFの送信方位設定用で位相が順次異なった複数の励振信号を加工生成する共に、当該生成された複数の励振信号を対応する前記各送波素子201 〜20n に同時に印加する機能を備えている。
【0049】
即ち、この送信方位設定部21は、前記各送波素子201 〜20n に印加する複数の各励振信号の位相を順次変化した状態に設定して対応する前記各送波素子201 〜20n に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能と、前述した主制御部10に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子201 〜20n から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号に設定する位相の印加パターンe1 ,e2 ,……,en を変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能とを備えている。
【0050】
この送信方位設定部21を更に詳述すると、この送信方位設定部21は、位相が異なる励振信号である周波数ホッピング信号dを前記複数の各送波素子201 〜20n に同時に印加する複数の可変移相回路251 ,252 ,……,25n と、この複数の各可変移相回路251 〜25n に前述した励振信号生成回路部22で生成される同一の周波数ホッピング信号dが同時に入力された場合に,当該周波数ホッピング信号dの位相を前記送波ファンビーム音の送信方向に対応して順次変化した状態に設定するように,対応する前記複数の各可変移相回路251 ,252 ,……,25n に指令する移相制御回路24とにより構成されている。符号e1 ,e2 ,……,en は、この場合の移相制御回路24からの指令信号を示す。
【0051】
即ち、上記送信方位特定機能は上記可変移相回路251 〜25n と移相制御回路24とによって実行されるようになっており、又上記送信方位切換え設定機能は、上記可変移相回路251 〜25n と移相制御回路24及び当該移相制御回路24に対して上記送信方位の切換え制御を指令する主制御回路10とによって実行されるようになっている。
【0052】
ここで、上述した主制御部10は、前記扇状の送波ファンビーム音TF1 〜TFY の送信方位角度の送信角度断続切替え設定に際しては、その切り換え時間の時間間隔を予め設定されたプログラムに従って適宜可変設定する切換えタイミング設定機能10aを備えている。
【0053】
図4(A)(B)に、上記主制御部10の送信方位切換え設定機能によって順次切り換え設定される扇状送波ファンビーム音TF1 ,TF2 ,……,TFY の送信方位の一例を模擬的に示す。そして、この扇状の送波ファンビーム音TF1 〜TFY の送信方位の切換えは、前述したように送信波であるバルク波の繰り返し発信の周期に同期して成されるようになっている。
【0054】
具体的には、前述した送波器20は、図4(A)において、最初に一番上の第1の送波ファンビームTF1 を形成し且つ時間t1 を経過する毎に周波数f1a,f2a,f3a,f4aからなる送波ファンビーム音が送信され目標物から反射し反射音として戻ってきた場合に受波器30で受波され、受信処理が完了する時間t2 が経過すると、上から二番目の第2の送波ファンビームTF2 を形成しかつ時間t1 を経過する毎に周波数f1b,f2b,f3b,f4bからなる送波ファンビーム音の発信を行い、以後も同様に、送波ファンビームを形成し送波ファンビーム音の発信を行う。図4(B)では、記号T0 は送信波の発信に際して設定される送信波(バルク波)の繰り返し周期を示す。又、記号TB は送信波(バルク波)のパルス幅を示す。
【0055】
送波器20から発信された送波ファンビーム音は目標物に到達すると反射され反射音(エコー)となり、この反射音が受波ファンビーム(受波指向性)を形成して待ち受ける受波器30(第1〜第mの受波素子301 〜30m )で受波される。
【0056】
これにより、上述した送波器20から出力される目標物探索用の送波ファンビーム音TF1 乃至TFY は、周波数の異なる4つの単位励振信号から成る断続したバルク波をもって、その繰り返し周期毎に異なった方位に扇状に広げられた状態で、順次切り換え送信されるようになっている。
【0057】
〔受信装置部および主制御部〕
次に、本実施形態に係る受信装置部100Bについて説明する。
図1乃至図9において、受信装置部100Bは、前述した目標物からの反射音であるドプラーシフトされた反射ドップラー信号を、前述したアレー状の送信器20に対してクロスビームの状態で受信する受波器30と、この受波器30を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を小刻みに設定する受信方位設定部34と、前記受波器30で受信される反射音を信号処理すると共に前記目標物の所在を表示する画像表示用の反射受信信号として特定する受信信号処理手段37とを備えている。
【0058】
更に、上記受信方位設定部34と受波器30との間には、当該受波器30の各受信素子301 ,302 ,……,30m で受信した前記目標物からの送波ファンビーム音TF1 〜TFY に係る反射受信信号(反射ドップラー信号)を個別に増幅する増幅器331 ,332 ,……,33m と、この各増幅器331 〜33m で増幅された反射受信信号を上記送波ファンビーム音TF1 〜TFY 毎に順次取り込で受信素子301 〜30m 毎に受信処理する直交変調器321 ,322 ,……,32m 及びBPF(広域フィルタ回路)311 ,312 ,……,31m の直列回路とが介装されている。
【0059】
これにより、前述した送波ファンビーム音TF1 乃至TFY が反射音として受信された場合に当該反射受信信号に係るバルク波Bの各単位励振信号の周波数にかかる信号を基準とする予め想定したドプラー周波数領域の反射受信信号のみが受信されるようになっている。
【0060】
ここで、この反射受信信号の受信に際して機能する受信方位設定部34について説明する。
この受信方位設定部34は、前記受波器30が反射音である送波ファンビーム音TF1
乃至TFY を受信し順次取り込むに際しては、前述した送信器20からのバルク波である送波ファンビーム音TF1 乃至TFY の発信のタイミングで(直接的には主制御部10から出力されるパルス信号aに付勢されて)、当該扇状の送波ファンビーム音TF1 乃至TFY の反射音に対してその扇状の面に直交する方向に向けて扇状の受信領域を設定する受信方位設定機能と、前記一の送波ファンビーム音(例えば図4(A)におけるTF1 の反射音)に対して本実施形態では1,000回の扇状の受信領域を前記各受波素子301 ,302 ,……,30m の一方から他方に向けて一定角度で断続的に順次切り換え設定する受信方位可変設定機能とを備えている。
【0061】
これを更に詳述すると、この受信方位設定部34は、具体的には、上述した受波器30の各受波素子301 〜30m を同時に個別に付勢して前記各送波ファンビーム音に対す
る受信方位角度を設定する複数の受信側可変移相回路361 〜36m と、この各受信側可変移相回路361 〜36m を介して前記各受波素子301 〜30m の受信動作を制御し前述した送波ファンビーム音の扇状ビーム面に直交する向きに扇状の受波ビーム領域を設定すると共に当該扇状受波ビーム領域RF1 ,RF2 ,……,RFX を上述したように前記各受波素子の一方の側から他方の側に向けて高速で可変設定する扇状受波ビーム設定回路35とを備えている(図1,図4(A)参照)。ここで、本実施形態では、X=1,000に設定されている。
【0062】
前述した複数の各受信側可変移相回路361 〜36m は、前述した各受波素子301 〜30m を同時に個別に受信駆動するに際しては、前述した扇状受波ビーム設定回路35に付勢されて作動し各受波素子301 〜30m に対する受信振動にかかる位相のずれを、上述した受信方位に合わせて順次個別に可変設定する。これによって、前述したように、扇状受波ビーム領域RF1 〜RFX が一方の側から他方の側に向けて断続的に順次切り換え設定されるようになっている。
【0063】
この場合、前述した一方の側から他方の側に向かう断続的に切り換え設定される前記扇状受波ビーム領域RF1 乃至RFX の切り換えは、1周期に反射受信信号を構成する4つの各単位励振信号の各一の単位励振信号(例えば0.1秒)に対して1,000回設定される。このため、4つの各単位励振信号からなる単一の反射バルク波に対しては、これが4回繰り返されることから、4,000回設定され、これが連続して繰り返されるようになっている。
【0064】
これにより、一の反射受信信号は1/1,000の確率で反射受信波の分解能が設定され、後述するように画像表示における横一列の1,000ドットにおける1ドットの情報が特定されるようになっている。
【0065】
即ち、前記扇状受波ビーム設定回路35にとって前記各受波素子301 〜30m に対して横方向の一方から他方に向かって1,000回切り換え設定される扇状受波ビーム領域の一の方位は、画像表示における1ドットに対応したものとなっている。
【0066】
そして、上記受信方位設定部34によって設定された一方側から他方の側に向けて繰り返し順次設定される1,000に分けられた複数の扇状受波ビーム領域RF1 〜RFxを通過して受信される前記反射受信信号は、前述した受信信号処理手段37に送り込まれる。
【0067】
この受信信号処理手段37は、前述した受信方位設定部34によって設定される扇状受波ビーム領域を介して前記各受信素子301 〜30m が同時に個別に受信した反射受信信号を加算処理し一の画像ドットに相当する受信データを各扇状の受波ビーム領域RF1 〜RFx毎に順次生成する加算処理部38と、この加算されて順次特定される各1ドットに対応した反射受信信号を経時的に且つ各単位受信信号(前述した単位励信信号に対応した信号部分)毎に例えば4回サンプンリングしてその時の受信データ(受信感度及び受信周波数)を特定し出力すると共に前記加算処理部38から送り込まれる他の1ドットに対応した反射受信信号に対しても同様に順次対処するサンプルホールド回路39とを備えている。
【0068】
ここで、上記加算処理部38で加算処理された受信データの前記受信素子301 〜30m における受信のタイミング情報は前述した主制御部10へ送られ、当該主制御部10では前述した送信時のタイミング情報に基づいて前述した目標物の位置情報(距離)が演算され記憶されるようになっている。
【0069】
前述したサンプルホールド回路39は、具体的には、受波器30で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された受信方位角度毎に且つ前記加算処理部38を介して各別に順次入力すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4a を対象としてこれを経時的に複数回(例えば4回)サンプルホールドし、当該単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aにかかる受信データと共にレプリカ相関処理の対象データとして後述するレプリカ相関部40へ出力されるようになっている。
【0070】
前述した受信信号処理手段37は、更に、前述したサンプルホールド回路39から出力されるレプリカ相関処理用の反射受信信号、即ち、このサンプルホールドにより取得された反射ドップラー信号にかかる前記バルク波の前記単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aを対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部41と、このレプリカ相関部41で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部と、前記レプリカ相関部41に併設され前記複数のレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成部40とを備えている。
【0071】
〔レプリカ信号生成部40〕
この内、上記したレプリカ信号生成部40は、前述した周波数シンセサイザ22bから出力される周波数の異なる単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aからなる励振信号(バルク波信号)に基づいて当該単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aを基準とし予め想定されるプラス方向およびマイナス方向に順次変化して成る異なった周波数の複数のレプリカ信号(本実施形態では101個)を生成し前記レプリカ相関部41へ出力する機能を備えている。この複数のレプリカ信号の生成は前述した励振信号(バルク波信号)Bの繰り返して出力される度に、当該励振信号(バルク波信号)Bの内容に合わせて繰り返し生成され出力されるようになっている。
【0072】
即ち、上記レプリカ信号生成部40で生成されるレプリカ信号は、前記励振信号生成回路部22で生成される周波数ホッピング信号dを構成する各単位励信信号f1a,f2a,f3a,f4aに対応して生成される。この場合、当該各単位励信信号f1a,f2a,f3a,f4aにかかる周波数を基準とし且つ想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を、前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分(本実施形態では50等分)した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成される。
このため、本実施形態では、各単位励信信号f1a,f2a,f3a,f4aと同一の周波数を基準レプリカ信号として合計101個のレプリカ信号が予め生成され記憶される。
【0073】
上記レプリカ信号生成部40は、具体的には、周波数シンセサイザ22bから入力する周波数ホッピング信号を構成している四つの周波数(図4参照)を基準としてこれをドップラーゼロに設定する。ここで、目標物が発信側(送信元)に接近移動している場合には、受波器30が受信する可能性がある周波数を最大に増幅された反射音(エコー)を想定して当該反射音に含まれる四つの周波数の各最大値(最大のドップラーが付いた周波数)を特定し、プラスのドップラーが付いた各最大周波数とドップラーゼロに設定する基準周波数との偏差(周波数)である+qをプラス側の最大ドップラー偏差とし、この+qを例えば50分割する。これにより、レプリカ信号生成部40は、ドップラーゼロの周波数のそれぞれに各段階のドップラーを加えたプラス側の50段階の周波数分析幅を持つ周波数のレプリカ信号を生成するドップラーシフト信号生成機能を備えている。
【0074】
又、このレプリカ信号生成部40は、目標物が発信側(送信元)に対して遠ざかって移動している場合に受波器30が受信する可能性がある周波数を最小に減少された反射音(エコー)を想定してこの反射音(エコー)に含まれる四つの周波数の各最小値を設定し、マイナスのドップラーが付いた各最小周波数とドップラーゼロに設定する基準周波数との偏差(周波数)である−qをマイナス側の最大ドップラー偏差とし、この−qを例えば50分割し、ドップラーゼロの周波数のそれぞれに各段階のドップラーを引いたマイナス側の50段階の周波数分析幅を持つ周波数のレプリカ信号を生成するドップラーシフト機能を有する。
このようにして、この例では、レプリカ信号生成部40は、ドップラーゼロの周波数を含めて101個のレプリカ信号を生成する。なお、レプリカ信号を101個にするのは一例に過ぎない。
【0075】
そして、このようにして生成されたレプリカ信号は、図6に示すように前述した各単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4a毎に区画されて、レプリカ相関部41のレプリカ信号記憶部42bに一時的に格納されるようになっている。
【0076】
〔レプリカ相関部41〕
レプリカ相関部41は、図1乃至図2に示すように、レプリカ信号生成部40で生成された複数のレプリカ信号を記憶するレプリカ信号記憶部42b,及び前述したサンプルホールド回路39でサンプリングされた反射受信信号の単位励振信号f1a,f2a,f3a,f4aを記憶する受信信号記憶部42aを備えた信号記憶部42と、この信号記憶部で記憶された前記反射受信信号について前記記憶されたレプリカ信号に基づいて相関処理を実行する受信信号相関処理部44とを備えている。
【0077】
この内、受信信号相関処理部44は、正規の反射信号の特定に際し、前述した受信方位角度毎に得られる前記反射受信信号を構成する周波数ホッピング信号の各単位周波数信号f1a,f2a,f3a,f4aを、レプリカ信号記憶部43に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについてその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定する相関処理機能44aを備えている。
【0078】
又、この受信信号相関処理部44は、この相関処理機能44aで特定された反射受信信号のドップラー情報及び当該反射受信信号の受信レベル情報に基づいて前記目標物の移動方向及び目標物の大きさを特定する目標物特定機能44bとを備えている。
【0079】
更に、この受信信号相関処理部44には、当該受信信号相関処理部44で特定された反射信号にかかる前記目標物の大きさ(受信信号レベル)及び移動方向の各データを記憶する目標物特定情報記憶部45が併設されている。
【0080】
このレプリカ相関により、目標物からの正規の反射信号が当該目標物の移動に伴うドップラーシフトし周波数の変化した状態で受信されても、このドップラーシフトした周波数の反射受信信号に惑わされることなく、目標物からの正規の反射信号を高精度で且つ確実に受信することが可能となり、同時に目標物の移動方向およびその速度も合わせて特定することができる。
【0081】
ここで、上記受信信号相関処理部44では、同一方位角度にあって特定される反射受信信号にかかる1,000ドットの情報(画像上における横方向の走査ライン上)が、前述した送信装置部100Aにて順次切り換え設定される扇状送波ファンビーム音TF1 ,TF2 ,……,TFY の送信方位の数(例えばY=800)の分だけ順次特定されて目標物特定情報記憶部45に記憶されるようになっている。
【0082】
この目標物特定情報記憶部45には、上記画像表示用にドット情報に対応して、同一タイミングの送受信情報に基づいて主制御部10で算定される各ドット情報にかかる目標物の位置情報(ソーナーシステム100からの距離情報)が入力され、対応するドット情報と共に目標物特定情報記憶部45に記憶されるようになっている。
【0083】
〔反射信号画像処理手段50〕
更に、上記受信信号処理手段37の出力段には、前述した目標物特定情報記憶部45に記憶された反射受信信号にかかる送受信のタイミング情報および反射レベルに基づいて前記目標物の所在位置およびその形状の大小にかかる各情報を特定する画素値データ処理を行う共に、前記反射受信信号の各受信方位に対応した表示用の座標データを付して座標データを生成し当該座標データを予め別に装備されたソーナー画像表示部に画像表示する反射信号画像処理手段50が併設されている。
【0084】
この反射信号画像処理手段50は、具体的には、前述した受信信号処理手段37で処理され順次送り込まれる目標物の位置情報及び感度情報(反射レベル情報)を順次画素値データに変換処理すると共に画像表示用の座標データを付して出力する画素値データ処理部46と、この画素値データ処理部46でデータ処理されたデータを記憶する座標値データ記憶部47と、この座標値データ記憶部47に記憶されている座標値データを二次元又は三次限の斜視図表示等に変換表示制御する表示制御部48とを備えて構成されている。
【0085】
ここで、上記画素値データ処理部46は、目標物特定情報記憶部45に記憶されている特定された一のドットおよびそれにかかる受信信号情報と対応する101個のレプリカ信号にかかるドップラー周波数のレプリカ相関値を読み出して、予め内部に設定されている画像表示条件の閾値と照合すると共に当該閾値を超えた音圧が最も高いレプリカ相関値を選択しその音圧に対応したグラデーションデータを画素値データとして出力する画素値データ処理を行う画素値データ処理機能を備えている。そして、この画素値データ処理を、前記各記憶部が記憶している一の送波ファンビーム毎に、対応する全部のレプリカ相関値に行われるようになっている。
【0086】
そして、上記画素値データ処理部46による画素値化処理は、具体的には、例えば図7に示すように、横軸の左端をドップラー周波数にかかる負の最大偏差であるマイナスq値,中央をドップラー周波数にかかる偏差0値,右端をドップラー周波数にかかる正の最大偏差であるプラスqとすると共に、縦軸に相関レベル(音圧)を取ったグラフ上で、目標物が存在すると想定される閾値エリア(ハッチングエリア,又は画像表示エリア)を設定し、同一の画素対応方位の101個のレプリカ相関値について1個ずつ閾値エリア(画像表示エリア)に含まれるか否か順次に判定する。
【0087】
そして、閾値エリアに含まれる最大の相関ピーク(最大音圧)を生じる一つのレプリカ相関値を抽出し、これを目標物の存在する画素としてグラデーションデータに置き換えて記憶する。符号47は、この場合のグラデーションデータを記憶する座標データ記憶部を示す。
【0088】
この画素値化処理を行うと、ドップラー周波数が付された反射受信信号であっても、これを閾値エリアによって高い相関レベルで確実に捕捉し特定することができる。又、この画素値化処理は、1ドットに対応する一画面分について順次行われ、これによって目標物からの反射信号を確実に検出し捕捉することができる。
【0089】
又、前述した表示制御部48は、前述した主制御部10からの要求に基づいて作動し、座標データ記憶部47に記憶されている画素値データを読み出して図8に示すようにマトリックス配列処理し、それをソーナー画像表示部に表示する画像表示制御機能を備えている。
【0090】
この場合、主制御部10からの要求に基づいて、同一時刻のマトリックス配列の画素を出力すれば二次元表示を行うことができ、又、サンプルホールドした複数回分の画面を奥行方向に重ね合わせて出力すれば図9に示すように三次元表示を行うことができる。さらに、送波器20と受波器30とで1サイクル分の送受波を行って得られる画面を重ね合わせて出力すれば、更に三次元表示を有効に行うことができる。
【0091】
〔本実施形態の動作〕
次に、上記実施形態におけるソーナーシステムの全体的な動作を、図10乃至図11に基づいて説明する。
最初に、目標物探索用として水中に発信される扇状送波ファンビーム音の生成および送信動作について説明し、続いて、目標物からの反射波に対する受信動作及びその受信信号に対する信号処理について順次説明する。
【0092】
(動作の概要)
図1に示すソーナーシステム100は、送信装置部100A側では、励振信号生成回路部22が周波数ホッピング信号からなるn個(本実施形態では10個)の異なった励振信号を送波素子201 〜20n に同時に印加することをY回(本実施形態では800回)繰り返すことにより、図4(A)に示すように、送波器20が第1〜第yの送波ファンビームTF1 〜TFY を順次に形成し送波ファンビーム音として水中に向かって送波する。
【0093】
一方、受信装置部100B側では、受信方位設定部34の指向性合成入力により、図5に示すように、受波器30が送波ファンビームを構成している各一つの周波数に対し空間的に90度のずれをもって交差する第1〜第xの受波ファンビーム(受波指向性)RF1 〜RFX を形成し待ち受ける。
【0094】
そして、この受信装置部100B側では、上記受波器30により、送波ファンビーム音が目標物に到達し送信元へ反射してくる反射音(エコー)を受波して受信処理し、当該反射受信信号を送波ファンビームの方位及び受波ファンビームの方位毎に指向性合成処理し、この指向性合成処理した反射受信信号と、該反射受信信号に対応する周波数ホッピング信号をドップラーシフトすることにより予め用意したレプリカ信号との間でレプリカ相関を行ってドップラーを除き、水中の目標物の正確な位置、距離、移動速度及び影像に関するY×Xのドット(Yは垂直方向のドット数,Xは水平方向のドット数)の画像データを取得し画像表示装置50に目標物の画像を表示するものである。
ここで、本実施形態では、n=m=10を想定しており、また、X=1,000、Y=800、を想定している。
以下、これを具体的に説明する。
【0095】
(送波ファンビームの送信動作)
システム全体を稼働状態に設定すると、まず、前記複数の各送波素子201 〜20n を同時に励振する励振信号として、前記送波器駆動制御手段21の励振信号生成回路部22が一定周期で繰り返す広帯域のバルク波Bで且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号(本実施形態では4個の単位励振信号)から成る異なった周波数ホッピング信号dを、前記バルク波Bの繰り返し周期毎に新たに生成し出力する(図10:S101乃至S105/周波数ホッピング信号生成工程)。
【0096】
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成される励振信号を前記送波器20に印加する(励振信号の印加工程)。この場合、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記前記送波器駆動制御手段21の送信方位設定部34が作動し、前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動して前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて(本実施形態では図4に示すように、図の上側部分から水平に広げられた扇状送波ファンビーム音を図の下側部分に向けて)一定の角度間隔で断続的に切り換え設定する(図10:S106/送波ファンビーム音発信工程)。
【0097】
これを更に詳述すると、まず、図10において、主制御部10が作動し一定周期で繰り返す基準信号a(バルク波)を送波器20用として出力する(図10:ステップS101)。同時に、主制御部10はシステム全体の動作タイミングを設定するタイミング制御信号bを出力する。
【0098】
同時に、主制御部10はタイミング制御信号bを出力する(図10:ステップS102)。このタイミング制御信号bは、連動する各構成部分(ホッピングパターン発生器22a、移相制御回路24、レプリカ信号生成部42、扇状受波ビーム設定回路35等)に入力する(図1)。
【0099】
次に、ホッピングパターン発生器22aがタイミング制御信号bの入力により前述したように周波数が不規則に設定された4種類のホッピングパターン信号cを生成して出力する(図10:ステップS103)。このホッピングパターン信号cは、周波数シンセサイザ22bに入力される(図1参照)。
【0100】
次いで、周波数シンセサイザ22bは、ホッピングパターン信号cに基づき基準信号aをホッピングパターン変調(パルス変調)して周波数ホッピング信号dを出力する(図10:ステップS104)。この周波数ホッピング信号dは、可変移相回路251 〜25n と後述するレプリカ信号生成部42に入力される(図1参照)。
【0101】
一方、移相制御回路24は、タイミング制御信号bの入力に基づいて各送波素子201 〜20n に個別に対応する位相制御信号e1 , e2,……en を生成し、これを位相設定指令信号として個別に前述した可変移相回路251 〜25n へ送り込む(図10:ステップS104)。
【0102】
これにより、可変移相回路251 〜25n は入力される周波数ホッピング信号bに対して個々に異なる位相制御信号(これによって送信方位が設定される)に基づいて遅延処理すると共に当該遅延処理され送信方位が設定された周波数ホッピング信号を出力し(図10:ステップS104)、これを対応する増幅器261 〜26n を介して送波素子201 〜20n に各別に印加する(図10(A):ステップS105乃至S106)。
【0103】
これにより、各送波素子201 〜20n は、励振信号の印加によって個別に励振され、全体が協働し送波器20として指向性を有する送波出力動作を行い、送波器20として第1の送波ファンビームTF1 を形成し送波ファンビーム音を送信する(図10:ステップS106)。以下、この動作を一定周期毎に実行し、第1,第3,…の送波ファンビームTF1 ,TF2 ,……,TFY を順次送信する(図10:ステップS107)。
【0104】
(反射ファンビームの受信及び受信信号の処理動作)
次に、上述した送波器20から送信された送波ファンビーム音が目標物から反射してきた場合、まず、この反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として受波器30が受信する。
【0105】
又、この反射波の受信に際しては、同時に予め前記受信方位設定部34が稼働し、前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向(本実施形態では図5に示す上下方向の広がり)で且つ前記アレイ状の各受信素子301 〜30X の一方の側から他方に側(受信側から見て右手方向から左手方向)に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する(図11:ステップS201/反射信号受信工程)。
【0106】
このステップS201の反射信号受信工程にあっては、最初に、前記送波器20による扇状に広げられた送波ファンビーム音TF1 〜TFY の広がりに直交する状態の扇状受波ビームRF1 〜RFX を、前記受信方位設定部34が予め前記受波器30の一方の端部側から他方の端部側に向けて断続的して繰り返し設定する(図11:ステップS202/扇状受波ビーム設定工程)。
同時に、この各扇状受波ビームで捕捉されるドップラーシフトされた前記反射波にかかる受信信号は、前記送波器20の各受信素子201 〜20n により同時に各別に受信される(図11:ステップS202/信号個別受信工程)。
【0107】
次に、この各受信素子201 〜20n で受信された反射波は、設定された扇状受波ビーム毎に方位情報が特定されて増幅器311 〜31n で増幅され、直交変調器321 〜32n 及び広帯域のフィルタ回路(BPF)331 〜33n で雑音処理され、その後、各別に前述した受信方位設定部34の受信側可変移送回路361 〜36n に取り込まれた後に加算処理部38に送られる(図11:ステップS203/雑音処理工程)。
【0108】
そして、この加算処理部38で加算処理されて画像上の単一ドットの位置情報が付された後にサンプリング処理され、その後、前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部44が相関をとり、これによって正規の反射信号を1ドットについて順次特定される(図11:ステップS204乃至S206/受信信号処理工程)。
【0109】
このステップS204乃至S206の受信信号処理工程にあっては、まず、前記各受信素子で受信された一の設定方位に於ける受信信号の全体を、加算処理部38が、前記受信方位設定部34の受信側可変移送回路361 〜36n を介して取り込んで加算処理する。 この加算処理は、前述した一の送波ファンビームについては水平方向に1,000回実行され、これによって画像処理における水平走査線上における1,000ドットの反射受信情報が生成される(図11:ステップS204/加算処理工程)。
【0110】
次に、この加算処理されて成る反射ドップラー信号は、その周波数及び感度情報を前記受信方位設定部34で設定される一の受信方位角度毎に且つ時系列で分けて前記複数の単位励信信号に対応した受信信号毎に、サンプルホールド回路39がサンプルホールドして出力する(図11:ステップS205/サンプルホールド工程)。
【0111】
このサンプルホールド工程によって、後述する画像表示における立体表示に必要な目標物のデータが得られる。このサンプルホールドされた受信信号は、レプリカ相関部の受信信号記憶部に順次記憶される(図11:ステップS205/受信信号記憶工程)。
【0112】
一方、レプリカ相関部におけるレプリカ相関処理に際しては、事前に、複数のレプリカ信号が、前述した4個の単位励信信号から成る励信信号(周波数ホッピング信号d)が励振信号生成回路部22から出力される度に当該励信信号に基づいて(当該励信信号の繰り返し出力毎に)ドップラーシフトされた複数のレプリカ信号が生成され、前述したレプリカ相関部が備えているレプリカ信号記憶部に図6に示す形態(4つの単位励信信号に対応した形態)をもって一時的に記憶される(図11:ステップS206/レプリカ信号生成工程)。
【0113】
このレプリカ信号生成工程では、前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の各周波数に対応して、前記レプリカ信号生成部42が生成しる。この場合、前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の一の信号にかかる周波数を基準とし想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を、前記基準周波数の前後でそれぞれ50等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成される。本実施形態では各単位励信信号毎に101個のレプリカ信号が予め生成され前述したようにレプリカ信号記憶部に記憶される。
【0114】
そして、このサンプルホールドされた前記反射受信信号がこれに対応して予めドップラーシフトされた前記複数のレプリカ信号に基づいて前記受信信号相関処理部が相関処理し、これによって前記目標物からの反射信号がそのドップラー量と共に特定される(図11:ステップS206乃至S207/レプリカ相関処理工程)。
【0115】
ここで、上記レプリカ相関処理について詳述する。
上記レプリカ相関処理では、レプリカ相関部41が一時記憶している反射受信信号に対し、画素対応方位が同一で、四つの周波数に関するサンプルホールドされた順位が同位の四つの受信信号を1組のデータ信号として読み出すと共に、各レプリカ信号記憶部42bが一時記憶してレプリカ信号を読み出すと共に読み出した1組のデータ信号と対応するレプリカ信号との相関をとり、ビーム信号の音圧強度とドップラーとを組み合わせたレプリカ相関値を出力する。この相関処理をサンプルホールド受信回数の分繰り返して、一の画素対応方位のレプリカ相関を終了する。こうして次々に画素対応方位毎にレプリカ相関を行う。
【0116】
続いて、第2の送波ファンビームTF2 についても、上述した第1の送波ファンビームTF1 の場合と同様にして相関処理が実行され、以後も、第yの送波ファンビームTFY まで、同様のステップが繰り返えされる。
【0117】
ここで、このレプリカ相関処理工程では、前記ドップラーシフトされた反射受信信号の特定に際し、前記各反射波の受信方位角度毎に得られるドップラーシフトされた前記反射受信信号にかかる各単位励信信号を、レプリカ信号記憶部42に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについて、前記受信信号相関処理部44が図6に示すようにその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定する。
【0118】
同時に、この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号に対応する前記反射ドップラー信号の送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び速度並びに移動方位にかる情報を、前記受信信号相関処理部44が特定し目標物特定情報記憶部46に記憶処理する。
【0119】
そして、この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記反射受信信号にかかる目標物の位置及び移動方位を、画像値データ処理部が画像表示用として特定し目標物特定情報記憶部45に記憶する(図11:ステップS207/画像表示データ特定工程)
【0120】
次に、この目標物特定情報記憶部45に記憶された正規の反射信号にかかる情報は、反射信号画像処理手段50の表示制御部48によってソーナー画像表示部49上に有効に表示される。具体的には、前述した受信信号処理手段37で処理され順次送り込まれる目標物の位置情報及び感度情報(反射レベル情報)は、画素値データ処理部で画素値データに順次変換処理され、画像表示用の座標データが付されて座標値データ記憶部47に記憶される(図11:ステップS208/座標データ記憶工程)。
【0121】
その後、この座標値データ記憶部47に記憶されている座標値データを、表示制御部48が二次元又は三次元の斜視図表示データに変換表示制御し、前述したソーナー画像表示部49上に送り込み、画像表示する(図11:ステップS209/目標物画像表示工程)。
【0122】
ここで、上記画素値データ処理部46は、前述したように、目標物特定情報記憶部45に記憶されている特定された一のドットおよびそれにかかる受信信号情報と対応する101個のレプリカ信号にかかるドップラー周波数のレプリカ相関値を読み出して、予め内部に設定されている画像表示条件の閾値と照合すると共に当該閾値を超えた音圧が最も高いレプリカ相関値を選択しその音圧に対応したグラデーションデータを画素値データとして出力する画素値データ処理を行う画素値データ処理機能を備えている。そして、この画素値データ処理を、前記各記憶部が記憶している一の送波ファンビーム毎に、対応する全部のレプリカ相関値に行われるようになっている。
【0123】
この上記画素値データ処理機能による画素値化処理は、具体的には、例えば図7に示すように、横軸の左端をドップラー周波数にかかる負の最大偏差であるマイナスq値,中央をドップラー周波数にかかる偏差0値,右端をドップラー周波数にかかる正の最大偏差であるプラスqとすると共に、縦軸に相関レベル(音圧)を取ったグラフ上で、目標物が存在すると想定される閾値エリア(ハッチングエリア,又は画像表示エリア)を設定し、同一の画素対応方位の101個のレプリカ相関値について1個ずつ閾値エリア(画像表示エリア)に含まれるか否か順次に判定する。
【0124】
その後、閾値エリアに含まれる最大の相関ピーク(最大音圧)を生じる一つのレプリカ相関値を抽出し、これを目標物の存在する画素としてグラデーションデータに置き換えて記憶する。符号47は、この場合のグラデーションデータを記憶する座標データ記憶部を示す。
【0125】
この画素値化処理を行うと、ドップラー周波数が付された反射受信信号であっても、これを閾値エリアによって高い相関レベルで確実に捕捉し特定することができる。又、この画素値化処理は、1ドットに対応する一画面分について順次行われ、これによって目標物からの反射信号を確実に検出し捕捉することができる。
【0126】
又、前述した表示制御部48は、前述した主制御部10からの要求に基づいて作動し、座標データ記憶部47に記憶されている画素値データを読み出して図8に示すようにマトリックス配列処理し、それをソーナー画像表示部に表示する。
【0127】
この場合、主制御部10からの要求に基づいて、同一時刻のマトリックス配列の画素を出力すれば二次元表示を行うことができ、又、サンプルホールドした複数回分の画面を奥行方向に重ね合わせて出力すれば図9に示すように三次元表示を行うことができる。さらに、送波器20と受波器30とで1サイクル分の送受波を行って得られる画面を重ね合わせて出力すれば、更に三次元表示を有効に行うことができる。
【0128】
ここで、本実施形態における上記動作で開示した各実行工程にあっては、その各動作機能の内容をプログラム化しコンピュータに実行させるように構成してもよい。この場合、コンピュータとしては前述した主制御部に予め装備したコンピュータを利用するようにしてもよい。
【0129】
(実施形態の作用効果)
このように、上記構成のソーナーシステム100によれば、送波器20が第1〜第yの送波ファンビームTF1 〜TFY を形成し、異なる周波数からなる送波ファンビーム音を水中に向かって送波し、受波器30が、一つの送波ファンビームの一つの周波数に対して第1〜第xの受波ファンビームRF1 〜RFX で切替式に待ち受けて反射音を受波し、受信方位設定部34が、周波数ホッピング信号に対応したレプリカ信号を生成して待ち受けると共に指向性を有するビーム信号を取得し、レプリカ相関部40が、ビーム信号とレプリカ信号とをレプリカ相関してレプリカ相関値を出力し、画素値データ処理部47が目標物特定情報記憶部46に記憶されたレプリカ相関値を読み出して画素値データ処理を行い、画像表示装置50が画素値データを入力して表示画面に水中の目標物の正確な位置、距離、移動速度及び影像に関するY×Xのドット(Yは垂直方向のドット数,Xは水平方向のドット数)を表示することができる。
【0130】
上記構成の送波装置部100Aは、周波数ホッピング信号を生成し周波数ホッピング信号を位相を変えて励振信号とし第1〜nの送波素子201 〜20n に入力し送波ファンビームを形成し送波ファンビーム音を送波合成することに特徴がある。
【0131】
また、上記構成の受波装置部100Bは、ドップラーシフトにより複数のレプリカ信号を生成すること、各受波素子301 ,302 ,……,30m で送波ファンビーム音の反射音を待ち受けて受信するための指向性制御を行ってビーム信号を取得すること、方位毎にレプリカ信号と受信ビーム信号とをレプリカ相関すること、レプリカ相関値を閾値に照合して画像データを得ること、を行う制御回路である。
【0132】
上記構成の受波装置部100Bは、送波装置部100Aに対応し、送波ファンビームの一つの周波数毎に第1〜第xの受波ファンビームを形成して受波し、一つの送波ファンビームを構成している周波数のホッピング数だけ第1〜第xの受波ファンビームの形成を繰り返して受信し反射信号を取得すること、及び、周波数毎に分かれた反射受信信号を方位別にまとめてからビーム信号との間でレプリカ相関することに特徴がある。
【0133】
従って、送波ファンビーム音と反射音が周波数ホッピング信号からなり、また、反射音に付いたドップラーを検出し、ドップラーが付いた目標物とドップラーの無い残響とを分離することができるので、妨害・干渉・傍受に強く、時間分解能距離分解能が高く、画素の座標ずれが生じない正確な画像データを高クロスレンジ分解能を有して取得できて正確な画像表示が行える。
【0134】
更に、本実施形態に係る上記ソーナーシステムによれば、妨害・干渉・傍受に強い送波ファンビーム音を生成しかつ目標物に向かって送波しかつ目標物により反射されて得られる反射音に付いたドップラーを検出しドップラーが付いた目標物とドップラーの無い残響とを分離して画素の座標ずれが生じない正確な画像表示、距離分解能・時間分解能が高い画像表示ができる。
【0135】
又、ソーナー用送信装置(送信装置部)、ソーナー用受信装置(受信装置部)、ソーナー画像表示方法、及びそのプログラムについても、上記実施形態の全体説明内で開示したように、上記ソーナーシステムと同様の目的を達成し得る構成および作用効果を備えたものとなっている。
【0136】
ここで、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲での各種変更が含まれる。
例えば、ホッピングパターン発生器22aは、上記のように、タイミング制御信号bを入力する毎に、ランダムに異なったホッピングパターン信号を周波数シンセサイザ22bに出力するようになっていてもよいし、また、送波素子201 〜20n が形成する送波ファンビームの数に対応した1サイクル分の異なったホッピングパターンを用意していて、タイミング制御信号bを入力する毎に、異なったホッピングパターン信号を周波数シンセサイザ22bに出力するようになっていてもよい。
【0137】
前述した送波素子については、これを横並びにして送波ファンビームを水平方向に並ばせて送信すると共に、前述した受波素子については、これを縦並びにして受波ファンビームを縦並びに形成して反射音を待ち受けるように設定してもよい。
また、送波素子201 〜20n で形成する送波ファンビームの形成順序が本実施形態とは逆に送波方向が下向きの角度から上向きの角度になるまで走査してもよい。
【0138】
(付記)
ここで、上述した各実施形態について、その新規な技術内容の要点を以下に示す。尚、これは、技術内容の要点であり、本発明をこれに限定するものではない。
【0139】
〔付記1〕
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、
前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段が、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号を生成する励振信号生成回路部を備え、前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に当該バルク波をその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る少なくとも二以上の単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成し、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された受信方位角度毎に順次受信すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号を対象としてこれを経時的に複数回サンプルホールドするサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドにより取得された反射受信波にかかる前記バルク波の前記各単位励振信号を対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関部で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成したことを特徴とするソーナーシステム。
【0140】
〔付記2〕
付記1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信信号処理手段に、前記目標物特定情報記憶部に記憶された前記反射信号にかかる送受信のタイミング情報および反射レベルに基づいて前記目標物の所在位置および形状にかかる各情報を特定する画素値データ処理を行う共に、前記各受信方位に対応した表示用の座標データを付して座標データを生成し当該座標データを予め別に装備されたソーナー画像表示部に画像表示する反射信号画像処理手段を併設したことを特徴とするソーナーシステム。
【0141】
〔付記3〕
付記1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記励振信号生成回路部は、周波数変調に必要な周波数情報として少なくとも二つの変調用周波数データを含むホッピングパターン信号cを乱数値に基づいて特定し出力するホッピングパターン発生器と、前記ホッピングパターン信号cと前記主制御部から一定周期で出力されるパルス波aとに基づいて励振信号である前記周波数ホッピング信号dを生成し一定周期で繰り返すバルク波として出力する周波数シンセサイザとを備えて構成されていることを特徴としたソーナーシステム。
【0142】
〔付記4〕
付記3に記載のソーナーシステムにおいて、
前記ホッピングパターン発生器は、予め乱数発生回路を有すると共に、前記送波素子の共振周波数における共振時のQを下げた状態で得られる広帯域の共振信号の内の有効に共振が得られる最小限度および最大限度の各周波数に対応した最小および最大の乱数値を予め設定し、前記乱数発生回路から順次出力される複数の乱数値に対応した任意の周波数値の組合せを前記ホッピングパターン信号cとして特定する機能を備え、
前記周波数シンセサイザ22bは、前記ホッピングパターン信号cに基づいて前記主制御部から一定間隔で送り込まれるパルス信号aをパルス変調し励振信号としての前記周波数ホッピング信号dを前記バルク波として出力する機能を備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【0143】
〔付記5〕
付記4に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段は、
前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dを送信器用励振信号として入力すると共に、当該周波数ホッピング信号dに基づいて前記各送波素子に対応した数で且つ前記送波ファンビーム音の送信方位に対応して設定される位相が順次異なった複数の励振信号を生成し当該生成された複数の励振信号を対応する前記各送波素子に同時に印加する送信方位設定部を備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【0144】
〔付記6〕(送信方位の切換え)
付記5に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送信方位設定部は、
前記各送波素子に印加する前記複数の各励振信号の位相を順次変化した状態に設定して対応する前記各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能と、
前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号に設定する位相の印加パターンを変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能とを備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【0145】
〔付記7〕
付記4に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送信方位設定部を、位相が異なる周波数ホッピング信号dを前記複数の各送波素子に同時に印加する複数の可変移相回路と、この複数の各可変移相回路に対して前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dが入力された場合に当該周波数ホッピング信号dの位相を前記送波ファンビーム音の送信方向に対応して順次変化した状態に設定するように対応する前記各可変移相回路に予め指令する移相制御回路24とにより構成したことを特徴とするソーナーシステム。
【0146】
〔付記8〕(方位切換え時の時間間隔)
付記6に記載のソーナーシステムにおいて、
前記主制御部は、前記送波ファンビーム音の送信方位角度の送信角度断続切替え設定に際しては、その切り換え時間の時間間隔を予め設定されたプログラムに従って適宜可変設定する切換えタイミング設定機能を備えていることを特徴とするソーナーシステム。
【0147】
〔付記9〕
付記1乃至6の何れか一つに記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信方位設定部を、
前記受波器の各受波素子を個別に付勢して前記各送波ファンビーム音に対する受信方位角度を設定する複数の受信側可変移相回路と、この各受信側可変移相回路を介して前記各受波素子の受信動作を制御し前記送波ファンビーム音の扇状ビーム面に直交する向きに扇状の受波ビーム領域を設定すると共に当該扇状受波ビーム領域を前記各受波素子の一方の側から他方の側に向けて可変設定する扇状受波ビーム設定回路とを備えた構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【0148】
〔付記10〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記扇状受波ビーム設定回路により前記各受波素子に切り換え設定される扇状受波ビーム領域の一の方位は、画像表示に際して設定される画面における1ドットに対応したものであることを特徴とするソーナーシステム。
【0149】
〔付記11〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信信号処理手段を、
前記各受波素子で受信され前記受信方位設定部の前記各受信側可変移相回路を介して取り込まれる同一タイミングのドップラーシフトされた前記反射受信信号を加算処理する加算処理部と、
この加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号を対象として前記サンプルホールド回路がサンプルホールドすると共に、このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記送信方位角度及び受信方位角度毎に分けて記憶する受信信号記憶部と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号に対応して予めドップラーシフトされた周波数信号であるレプリカ信号を,前記周波数ホッピング信号dに基づいて前記一の単位励振信号毎にそれぞれ複数生成するレプリカ信号生成部と、
このレプリカ信号生成部で生成される複数のレプリカ信号を前記送信方位角度毎に分けて記憶するレプリカ信号記憶部と、
前記記憶されたレプリカ信号と前記反射受信信号とを送信方位角度を合わせて且つ受信方位角度毎に相関をとり当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号およびそのドップラー量を順次特定する受信信号相関処理部とを含む構成とし、
前記サンプルホールド回路を、
前記加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号の周波数及び感度情報を前記扇状受波ビーム設定回路で特定される一の受信方位角度毎に且つ前記反射受信信号を構成する複数の各単位励信信号毎にサンプルホールドする構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【0150】
〔付記12〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記レプリカ信号生成部で生成されるレプリカ信号は、前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dを構成する各単位励信信号に対応して生成され、当該各単位励信信号にかかる周波数を基準とし且つ想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成されたものであることを特徴とするソーナーシステム。
【0151】
〔付記13〕
付記11に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信信号相関処理部は、
前記反射信号及びそのドプラー量の特定に際しては、前記受信方位角度毎に得られる前記反射受信信号を構成する周波数ホッピング信号の各単位周波数信号を、レプリカ信号記憶部に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについてその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定する相関処理機能と、
この特定された反射受信信号のドップラー情報及び当該反射受信信号にかかる送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を特定する目標物特定機能と、を備え、
前記受信信号相関処理部に、当該受信信号相関処理部で特定された反射信号にかかる前記目標物の位置及び移動方位の各情報を記憶する目標物特定情報記憶部を併設したことを特徴とするソーナーシステム。
【0152】
〔付記14〕
付記9に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の前記受信信号処理手段に、前記受信信号相関処理部で順次特定された前記目標物からの反射信号および当該反射信号にかかる情報を画像表示用として画像処理する反射信号画像処理手段を併設したことを特徴とするソーナーシステム。
【0153】
〔付記15〕
扇状に広げられた送波ファンビーム音を目標物に向けて且つ一定周期で繰り返し送信する送波器と、この送波器を励振制御する送波器駆動制御手段と、この送波器駆動制御手段の全体的な動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用送信装置において、
前記送波器を前記目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子をもって構成すると共に、
前記送波器駆動制御手段を、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号である周波数ホッピング信号dを生成し出力する励振信号生成回路部と、この励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dの位相を前記各送波素子毎に順次変化した状態に設定して対応する当該各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能を備えた送信方位設定部とを有する構成とし、
前記送信方位設定部を、前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号の位相の印加パターンを繰り返し発信する送信ファンビーム音毎に変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能を備えた構成とし、
前記励振信号生成回路部で生成される前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に、このバルク波を少なくとも異なった周波数の断続した二以上の単位励振信号から成る前記ホッピング信号をもって構成したことを特徴とするソーナー用送信装置。
【0154】
〔付記16〕
アレイ状に配列された複数の送波素子を備えた送波器から一定周期で繰り返えし発信された広帯域の扇状の送波ファンビーム音が目標物から反射して戻ってきた場合にこれを受信する複数の受波素子を備えた受波器と、この受波器の各受波素子を前記送波器のアレイ状送波素子に直交する方向に設置すると共に前記目標物からの反射音に対する受信方位を扇状の送波ファンビーム音に直交する方向の扇状の受波ビームとして予め設定する受信方位設定部と、前記受波器で受信されるドプラーシフトされた反射受信信号を信号処理すると共に当該目標物の所在を特定する受信信号処理手段と、これら各部の動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用受信装置において、
前記送波器から一定周期で繰り返えし発信される広帯域の扇状の送波ファンビーム音は周波数の異なる複数の単位励振信号から成るバルク波を励信信号として繰り返し発信された送波ファンビーム音とすると共に、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からのドップラーシフトされた反射受信信号が前記受信方位設定部を介して予め設定された受信方位角度毎に順次受信された場合に当該反射受信信号を経時的に複数回サンプルホールドし出力するサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記バルク波を構成する複数の単位励振信号を対象とし且つこれに対応して予め生成された複数のレプリカ信号とについて受信方位毎に相関処理すると共にこれによって目標物からの反射信号およびそのドプラー量を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関により特定された反射信号およびそのドプラー量にかかる情報を画像表示用の目標物特定情報として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成としたことを特徴とするソーナー用受信装置。
【0155】
〔付記17〕(方法の発明/付記1対応)
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記送波器駆動制御手段の励振信号生成回路部が前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成し(周波数ホッピング信号d生成工程)、
この周波数ホッピング信号dを励信信号として前記複数の送波素子に印加するに際しては、前記前記送波器駆動制御手段の送信方位設定部が作動し、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記複数の送波素子毎に個別に位相制御すると共に、当該位相制御された周波数ホッピング信号dを前記アレイ状の各送波素子に同時に印加して前記目標物に向けて送信される扇状送波ファンビーム音の方位を、前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定し(送波ファンビーム音発信工程)、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定し(反射信号受信工程)、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎に予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関処理すると共にこれにより当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号の強度及びそのドップラー量を順次特定し(受信信号処理工程)、
この特定された反射信号のドップラー情報並びに強度情報を画素値データ処理部が画像表示用として特定するようにしたこと(画像表示データ特定工程)を特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0156】
〔付記18〕(方法の発明/付記5対応)
付記17に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記送波ファンビーム音発信工程にあって、前記送波器に対する前記励振信号の印加に際しては、前記励振信号生成回路部が前記送信方位角度の切り換え毎に異なった周波数の単位励振信号の組合わせから成る周波数ホッピング信号dを出力するようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0157】
〔付記19〕(方法の発明/付記9対応)
付記17に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記受信信号処理工程にあっては、
前記各受信素子で受信された受信信号の全体を、前記受信方位毎に予め装備された加算処理部が前記受信方位設定部を介して取り込んで加算処理し、
この加算処理されて成る反射ドップラー信号の周波数及び感度情報を前記受信方位設定部で設定される一の受信方位角度毎に時系列で分けて且つ前記複数の単位励信信号に対応した受信信号毎に、サンプルホールド回路がサンプルホールドし、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号とこれに対応して予め生成され記憶部に記憶されているドップラーシフトされた前記複数のレプリカ信号とについて前記受信信号相関処理部が相関処理する構成としたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0158】
〔付記20〕(方法の発明)
付記15に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記レプリカ信号は、前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の各周波数に対応して且つ当該一の単位励信信号にかかる周波数を基準とし想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて、前記レプリカ信号生成部が生成したものであることを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0159】
〔付記21〕(方法の発明)
付記20に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記受信信号処理工程における前記ドップラーシフトされた反射受信信号の特定に際しては、前記各方位角度毎に得られるドップラーシフトされた前記反射受信信号にかかる周波数ホッピング信号dの各単位励信信号を、レプリカ信号記憶部に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについて、前記受信信号相関処理部がその周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定し、
同時に、この特定された反射信号のドップラー情報及び当該反射信号に対応する前記反射ドップラー信号の送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び速度並びに移動方位を、前記受信信号相関処理部が特定し目標物特定情報記憶部に記憶処理するようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【0160】
〔付記22〕(プログラム発明/付記17対応)
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成する周波数ホッピング信号生成処理機能、
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成され前記複数の各送波素子に対応して位相制御された励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動し前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的に切り換え設定する送信方位切換え設定機能、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する受信方位切換え設定機能、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて相関処理すると共にこれに基づいて反射信号の強度やドプラー量を順次特定する受信信号処理機能、
及びこの特定された反射信号についてそのドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像表示用として特定し記憶部に記憶処理する画像表示データ記憶処理機能、
を備え、これらの各処理機能を前記主制御部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【0161】
〔付記23〕(プログラム発明/付記19対応)
付記22に記載のソーナー用目標物特定プログラムにおいて、
前記信号受信処理機能にあっては、
前記各受信素子で受信される反射ドップラー信号の全体を受信方位毎に取り込んで加算処理する加算処理機能、
この加算処理されて成る反射ドップラー信号の周波数及び感度情報を前記受信方位設定部34で設定される一の受信方位角度毎に時系列で分けて且つ前記複数の単位励信信号に対応した単位周波数信号毎に、サンプルホールドした後これを一時的に保持するサンプルホールド処理機能、
このサンプルホールドされた前記反射ドップラー信号に対応して、予めドップラーシフトされた前記送波ファンビーム音の反射波に対応するドップラー周波数信号のレプリカ信号を、前記周波数ホッピング信号dに基づいて前記一の単位励振信号毎に複数生成すると共に、この生成された複数のレプリカ信号を前記送信方位角度によって特定される周波数ホッピング信号d毎に分けて、レプリカ信号記憶部43に記憶処理するレプリカ信号生成記憶処理機能、
および前記サンプルホールドされた反射ドップラー信号を、前記記憶されたレプリカ信号に基づいて相関処理し、反射ドップラー信号から目標物からの反射信号およびドプラー量を順次特定して記憶部に記憶する受信信号相関処理機能、
を設け、これらを前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【0162】
〔付記24〕(プログラム発明/付記20対応)
付記23に記載のソーナー用目標物特定プログラムにおいて、
前記レプリカ信号生成記憶処理機能では、
前記レプリカ信号を前記周波数ホッピング信号dを構成する単位励信信号の周波数に対応して生成すると共に、当該一の前記単位励信信号にかかる周波数を基準とし想定される最大及び最小に変化するドップラー周波数の数値を前記基準周波数の前後でそれぞれ複数等分した場合に得られる等分した位置の複数のドップラー周波数値に基づいて生成するレプリカ信号生成処理機能を設け、
これを前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【0163】
〔付記25〕(プログラム発明/付記21対応)
付記27に記載のソーナー用目標物特定プログラムにおいて、
前記受信信号相関処理機能にあっては、
前記ドプラーシフトされた反射受信信号に基づいて反射信号を特定するに際しては、前記各方位角度毎に得られる反射ドップラー信号にかかる周波数ホッピング信号の各単位励信信号を、レプリカ信号記憶部に記憶されている前記同一方位角度で且つ対応する順位の複数のレプリカ信号の全てについて、その周波数を比較すると共に、同一又はこれに最も近い値の一の周波数のレプリカ信号を前記反射波にかかる反射信号として特定し、
同時に、この特定された反射信号に対応する前記反射信号のドップラー情報及び送受信のタイミング情報に基づいて前記目標物の位置及び速度並びに移動方位を特定し目標物特定情報記憶部に記憶処理し、
これらを前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、
前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段が、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号を生成する励振信号生成回路部を備え、前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に当該バルク波をその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る少なくとも二以上の単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成し、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された受信方位角度毎に順次受信すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号を対象としてこれを経時的に複数回サンプルホールドするサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドにより取得された反射受信波にかかる前記バルク波の前記各単位励振信号を対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関部で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成したことを特徴とするソーナーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記励振信号生成回路部は、周波数変調に必要な周波数情報として少なくとも二つの変調用周波数データを含むホッピングパターン信号cを乱数値に基づいて特定し出力するホッピングパターン発生器と、前記ホッピングパターン信号cと前記主制御部から一定周期で出力されるパルス波aとに基づいて励振信号である前記周波数ホッピング信号dを生成し一定周期で繰り返すバルク波として出力する周波数シンセサイザとを備えて構成されていることを特徴としたソーナーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段は、
前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dを送信器用励振信号として入力すると共に、当該周波数ホッピング信号dに基づいて前記各送波素子に対応した数で且つ前記送波ファンビーム音の送信方位に対応して設定される位相が順次異なった複数の励振信号を生成し当該生成された複数の励振信号を対応する前記各送波素子に同時に印加する送信方位設定部を備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信方位設定部を、
前記受波器の各受波素子を個別に付勢して前記各送波ファンビーム音に対する受信方位角度を設定する複数の受信側可変移相回路と、この各受信側可変移相回路を介して前記各受波素子の受信動作を制御し前記送波ファンビーム音の扇状ビーム面に直交する向きに扇状の受波ビーム領域を設定すると共に当該扇状受波ビーム領域を前記各受波素子の一方の側から他方の側に向けて可変設定する扇状受波ビーム設定回路とを備えた構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信信号処理手段を、
前記各受波素子で受信され前記受信方位設定部の前記各受信側可変移相回路を介して取り込まれる同一タイミングのドップラーシフトされた前記反射受信信号を加算処理する加算処理部と、
この加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号を対象として前記サンプルホールド回路がサンプルホールドすると共に、このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記送信方位角度及び受信方位角度毎に分けて記憶する受信信号記憶部と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号に対応して予めドップラーシフトされた周波数信号であるレプリカ信号を,前記周波数ホッピング信号dに基づいて前記一の単位励振信号毎にそれぞれ複数生成するレプリカ信号生成部と、
このレプリカ信号生成部で生成される複数のレプリカ信号を前記送信方位角度毎に分けて記憶するレプリカ信号記憶部と、
前記記憶されたレプリカ信号と前記反射受信信号とを送信方位角度を合わせて且つ受信方位角度毎に相関をとり当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号およびそのドップラー量を順次特定する受信信号相関処理部とを含む構成とし、
前記サンプルホールド回路を、
前記加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号の周波数及び感度情報を前記扇状受波ビーム設定回路で特定される一の受信方位角度毎に且つ前記反射受信信号を構成する複数の各単位励信信号毎にサンプルホールドする構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【請求項6】
扇状に広げられた送波ファンビーム音を目標物に向けて且つ一定周期で繰り返し送信する送波器と、この送波器を励振制御する送波器駆動制御手段と、この送波器駆動制御手段の全体的な動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用送信装置において、
前記送波器を前記目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子をもって構成すると共に、
前記送波器駆動制御手段を、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号である周波数ホッピング信号dを生成し出力する励振信号生成回路部と、この励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dの位相を前記各送波素子毎に順次変化した状態に設定して対応する当該各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能を備えた送信方位設定部とを有する構成とし、
前記送信方位設定部を、前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号の位相の印加パターンを繰り返し発信する送信ファンビーム音毎に変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能を備えた構成とし、
前記励振信号生成回路部で生成される前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に、このバルク波を少なくとも異なった周波数の断続した二以上の単位励振信号から成る前記ホッピング信号をもって構成したことを特徴とするソーナー用送信装置。
【請求項7】
アレイ状に配列された複数の送波素子を備えた送波器から一定周期で繰り返えし発信された広帯域の扇状の送波ファンビーム音が目標物から反射して戻ってきた場合にこれを受信する複数の受波素子を備えた受波器と、この受波器の各受波素子を前記送波器のアレイ状送波素子に直交する方向に設置すると共に前記目標物からの反射音に対する受信方位を扇状の送波ファンビーム音に直交する方向の扇状の受波ビームとして予め設定する受信方位設定部と、前記受波器で受信されるドプラーシフトされた反射受信信号を信号処理すると共に当該目標物の所在を特定する受信信号処理手段と、これら各部の動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用受信装置において、
前記送波器から一定周期で繰り返えし発信される広帯域の扇状の送波ファンビーム音は周波数の異なる複数の単位励振信号から成るバルク波を励信信号として繰り返し発信された送波ファンビーム音とすると共に、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からのドップラーシフトされた反射受信信号が前記受信方位設定部を介して予め設定された受信方位角度毎に順次受信された場合に当該反射受信信号を経時的に複数回サンプルホールドし出力するサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記バルク波を構成する複数の単位励振信号を対象とし且つこれに対応して予め生成された複数のレプリカ信号とについて受信方位毎に相関処理すると共にこれによって目標物からの反射信号およびそのドプラー量を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関により特定された反射信号およびそのドプラー量にかかる情報を画像表示用の目標物特定情報として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成としたことを特徴とするソーナー用受信装置。
【請求項8】
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記送波器駆動制御手段の励振信号生成回路部が前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成し、
この周波数ホッピング信号dを励信信号として前記複数の送波素子に印加するに際しては、前記前記送波器駆動制御手段の送信方位設定部が作動し、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記複数の送波素子毎に個別に位相制御すると共に、当該位相制御された周波数ホッピング信号dを前記アレイ状の各送波素子に同時に印加して前記目標物に向けて送信される扇状送波ファンビーム音の方位を、前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定し、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定し、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎に予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関処理すると共にこれにより当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号の強度及びそのドップラー量を順次特定し、
この特定された反射信号のドップラー情報並びに強度情報を画素値データ処理部が画像表示用として特定するようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【請求項9】
請求項8に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記受信信号処理工程にあっては、
前記各受信素子で受信された受信信号の全体を、前記受信方位毎に予め装備された加算処理部が前記受信方位設定部を介して取り込んで加算処理し、
この加算処理されて成る反射ドップラー信号の周波数及び感度情報を前記受信方位設定部で設定される一の受信方位角度毎に時系列で分けて且つ前記複数の単位励信信号に対応した受信信号毎に、サンプルホールド回路がサンプルホールドし、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号とこれに対応して予め生成され記憶部に記憶されているドップラーシフトされた前記複数のレプリカ信号とについて前記受信信号相関処理部が相関処理する構成としたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【請求項10】
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成する周波数ホッピング信号生成処理機能、
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成され前記複数の各送波素子に対応して位相制御された励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動し前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的に切り換え設定する送信方位切換え設定機能、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する受信方位切換え設定機能、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて相関処理すると共にこれに基づいて反射信号の強度やドプラー量を順次特定する受信信号処理機能、
及びこの特定された反射信号についてそのドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像表示用として特定し記憶部に記憶処理する画像表示データ記憶処理機能、
を備え、これらの各処理機能を前記主制御部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【請求項1】
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を反射ドップラー信号として受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部と、を有し、
前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段が、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号を生成する励振信号生成回路部を備え、前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に当該バルク波をその繰り返し周期毎に異なった周波数から成る少なくとも二以上の単位励振信号を断続して時系列に並べて成る異なった周波数ホッピング信号dをもって構成し、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からの反射受信波である反射ドップラー信号を予め設定された受信方位角度毎に順次受信すると共に当該反射ドップラー信号の要部を成す前記周波数ホッピング信号dの単位励振信号を対象としてこれを経時的に複数回サンプルホールドするサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドにより取得された反射受信波にかかる前記バルク波の前記各単位励振信号を対象として、予めドップラーシフトさせて生成された複数のレプリカ信号との間で受信方位毎に相関をとり前記目標物からの反射信号を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関部で特定された反射信号を画像表示用として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成したことを特徴とするソーナーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記励振信号生成回路部は、周波数変調に必要な周波数情報として少なくとも二つの変調用周波数データを含むホッピングパターン信号cを乱数値に基づいて特定し出力するホッピングパターン発生器と、前記ホッピングパターン信号cと前記主制御部から一定周期で出力されるパルス波aとに基づいて励振信号である前記周波数ホッピング信号dを生成し一定周期で繰り返すバルク波として出力する周波数シンセサイザとを備えて構成されていることを特徴としたソーナーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のソーナーシステムにおいて、
前記送波器駆動制御手段は、
前記励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dを送信器用励振信号として入力すると共に、当該周波数ホッピング信号dに基づいて前記各送波素子に対応した数で且つ前記送波ファンビーム音の送信方位に対応して設定される位相が順次異なった複数の励振信号を生成し当該生成された複数の励振信号を対応する前記各送波素子に同時に印加する送信方位設定部を備えていることを特徴としたソーナーシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信方位設定部を、
前記受波器の各受波素子を個別に付勢して前記各送波ファンビーム音に対する受信方位角度を設定する複数の受信側可変移相回路と、この各受信側可変移相回路を介して前記各受波素子の受信動作を制御し前記送波ファンビーム音の扇状ビーム面に直交する向きに扇状の受波ビーム領域を設定すると共に当該扇状受波ビーム領域を前記各受波素子の一方の側から他方の側に向けて可変設定する扇状受波ビーム設定回路とを備えた構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のソーナーシステムにおいて、
前記受信装置部の受信信号処理手段を、
前記各受波素子で受信され前記受信方位設定部の前記各受信側可変移相回路を介して取り込まれる同一タイミングのドップラーシフトされた前記反射受信信号を加算処理する加算処理部と、
この加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号を対象として前記サンプルホールド回路がサンプルホールドすると共に、このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記送信方位角度及び受信方位角度毎に分けて記憶する受信信号記憶部と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号に対応して予めドップラーシフトされた周波数信号であるレプリカ信号を,前記周波数ホッピング信号dに基づいて前記一の単位励振信号毎にそれぞれ複数生成するレプリカ信号生成部と、
このレプリカ信号生成部で生成される複数のレプリカ信号を前記送信方位角度毎に分けて記憶するレプリカ信号記憶部と、
前記記憶されたレプリカ信号と前記反射受信信号とを送信方位角度を合わせて且つ受信方位角度毎に相関をとり当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号およびそのドップラー量を順次特定する受信信号相関処理部とを含む構成とし、
前記サンプルホールド回路を、
前記加算処理部で加算処理されて成る前記反射受信信号の周波数及び感度情報を前記扇状受波ビーム設定回路で特定される一の受信方位角度毎に且つ前記反射受信信号を構成する複数の各単位励信信号毎にサンプルホールドする構成としたことを特徴とするソーナーシステム。
【請求項6】
扇状に広げられた送波ファンビーム音を目標物に向けて且つ一定周期で繰り返し送信する送波器と、この送波器を励振制御する送波器駆動制御手段と、この送波器駆動制御手段の全体的な動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用送信装置において、
前記送波器を前記目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子をもって構成すると共に、
前記送波器駆動制御手段を、
前記複数の各送波素子を同時に励振するための励振信号である周波数ホッピング信号dを生成し出力する励振信号生成回路部と、この励振信号生成回路部で生成される周波数ホッピング信号dの位相を前記各送波素子毎に順次変化した状態に設定して対応する当該各送波素子に同時に印加し前記送波ファンビーム音の一の送信方位を特定する送信方位特定機能を備えた送信方位設定部とを有する構成とし、
前記送信方位設定部を、前記主制御部に制御されて作動し予め設定された一定のタイミングで前記各送波素子から出力される送波ファンビーム音の送信方位を前記複数の各励振信号の位相の印加パターンを繰り返し発信する送信ファンビーム音毎に変化させて一方の側から他方の側に向けて一定の角度間隔で断続的に順次切換え設定する送信方位切換え設定機能を備えた構成とし、
前記励振信号生成回路部で生成される前記励振信号を、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波とすると共に、このバルク波を少なくとも異なった周波数の断続した二以上の単位励振信号から成る前記ホッピング信号をもって構成したことを特徴とするソーナー用送信装置。
【請求項7】
アレイ状に配列された複数の送波素子を備えた送波器から一定周期で繰り返えし発信された広帯域の扇状の送波ファンビーム音が目標物から反射して戻ってきた場合にこれを受信する複数の受波素子を備えた受波器と、この受波器の各受波素子を前記送波器のアレイ状送波素子に直交する方向に設置すると共に前記目標物からの反射音に対する受信方位を扇状の送波ファンビーム音に直交する方向の扇状の受波ビームとして予め設定する受信方位設定部と、前記受波器で受信されるドプラーシフトされた反射受信信号を信号処理すると共に当該目標物の所在を特定する受信信号処理手段と、これら各部の動作を制御する主制御部とを備えたソーナー用受信装置において、
前記送波器から一定周期で繰り返えし発信される広帯域の扇状の送波ファンビーム音は周波数の異なる複数の単位励振信号から成るバルク波を励信信号として繰り返し発信された送波ファンビーム音とすると共に、
前記受信信号処理手段を、
前記受波器で受信される前記目標物からのドップラーシフトされた反射受信信号が前記受信方位設定部を介して予め設定された受信方位角度毎に順次受信された場合に当該反射受信信号を経時的に複数回サンプルホールドし出力するサンプルホールド回路と、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号を前記バルク波を構成する複数の単位励振信号を対象とし且つこれに対応して予め生成された複数のレプリカ信号とについて受信方位毎に相関処理すると共にこれによって目標物からの反射信号およびそのドプラー量を特定するレプリカ相関部と、
このレプリカ相関により特定された反射信号およびそのドプラー量にかかる情報を画像表示用の目標物特定情報として記憶する目標物特定情報記憶部とを含む構成としたことを特徴とするソーナー用受信装置。
【請求項8】
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記送波器駆動制御手段の励振信号生成回路部が前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成し、
この周波数ホッピング信号dを励信信号として前記複数の送波素子に印加するに際しては、前記前記送波器駆動制御手段の送信方位設定部が作動し、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記複数の送波素子毎に個別に位相制御すると共に、当該位相制御された周波数ホッピング信号dを前記アレイ状の各送波素子に同時に印加して前記目標物に向けて送信される扇状送波ファンビーム音の方位を、前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその切り換え設定し、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記受信方位設定部が稼働して前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定し、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎に予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて、受信信号相関処理部が相関処理すると共にこれにより当該反射受信信号にかかる目標物からの反射信号の強度及びそのドップラー量を順次特定し、
この特定された反射信号のドップラー情報並びに強度情報を画素値データ処理部が画像表示用として特定するようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【請求項9】
請求項8に記載のソーナー用目標物特定方法において、
前記受信信号処理工程にあっては、
前記各受信素子で受信された受信信号の全体を、前記受信方位毎に予め装備された加算処理部が前記受信方位設定部を介して取り込んで加算処理し、
この加算処理されて成る反射ドップラー信号の周波数及び感度情報を前記受信方位設定部で設定される一の受信方位角度毎に時系列で分けて且つ前記複数の単位励信信号に対応した受信信号毎に、サンプルホールド回路がサンプルホールドし、
このサンプルホールドされた前記反射受信信号とこれに対応して予め生成され記憶部に記憶されているドップラーシフトされた前記複数のレプリカ信号とについて前記受信信号相関処理部が相関処理する構成としたことを特徴とするソーナー用目標物特定方法。
【請求項10】
扇状に広がる送波ファンビーム音を目標物に向けて送信する送波器及び当該送波器を励振制御する送波器駆動制御手段を備えた送信装置部と、前記目標物からの反射音を受信する受波器及び当該受波器を付勢して前記目標物からの反射音に対する受信方位を設定する受信方位設定部並びに前記受波器で受信される反射音を信号処理し前記目標物の所在を画像表示用として特定する受信信号処理手段を備えた受信装置部と、これら各構成要素全体の動作を制御する主制御部とを有し、更に、前記送波器を目標物に面してアレイ状に配列されてなる複数の送波素子により構成すると共に、前記受波器を同じく目標物に面してアレイ状に配設され且つ前記アレイ状の送波器に対して90度回転した状態で設置された複数の受波素子により構成して成るソーナーシステムにあって、
前記複数の各送波素子を同時に励振する励振信号として使用する周波数ホッピング信号dを、一定周期で繰り返す広帯域のバルク波で且つ異なった周波数の少なくとも二以上の断続した単位励振信号により構成すると共に、これを前記バルク波の繰り返し周期毎に新たに生成する周波数ホッピング信号生成処理機能、
この周波数ホッピング信号dに基づいて生成され前記複数の各送波素子に対応して位相制御された励振信号を前記送波器に印加すると共に、前記バルク波の繰り返し周期に対応して前記アレイ状の各送波素子を同時に駆動し前記目標物に向けて発信する扇状送波ファンビーム音の方位を前記各送波素子の一方の側から他方に側に向けて断続的に切り換え設定する送信方位切換え設定機能、
前記送波器から発信される送波ファンビーム音の前記目標物からの反射波をドップラーシフトされた反射受信信号として前記受波器が受信すると共に、この反射波の受信に際しては、前記目標物からの反射音に対する受信方位を前記扇状送波ファンビーム音の広がりに直交する方向で且つ前記アレイ状の各受信素子の一方の側から他方に側に向けて断続的にその受信方位を切り換え設定する受信方位切換え設定機能、
前記受波器が受信した反射受信信号を前記単位励振信号毎にこれに対応して予め準備されたドップラーシフト付の複数のレプリカ信号に基づいて相関処理すると共にこれに基づいて反射信号の強度やドプラー量を順次特定する受信信号処理機能、
及びこの特定された反射信号についてそのドップラー情報及び当該反射信号にかかる送受信のタイミング情報並びに反射強度情報に基づいて前記目標物の位置及び移動方位を、画像表示用として特定し記憶部に記憶処理する画像表示データ記憶処理機能、
を備え、これらの各処理機能を前記主制御部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とするソーナー用目標物特定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−168122(P2012−168122A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31125(P2011−31125)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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