説明

ソーラシミュレータ

【課題】被照射面に照射される光についての光量測定をより正確に行うことを可能とし、また被照射面に照射される光について損失を生じさせないソーラシミュレータを提供すること。
【解決手段】ソーラシミュレータ(1)は、疑似太陽光を発するランプ(3)と、疑似太陽光を被照射面(5)に導くための光学系(7)とを含む。光学系は、疑似太陽光を被照射面(5)に向けて反射させるための反射板(15)を備える。反射板はこれに設けられた採光窓(17)を有する。採光窓は、反射板(15)に入射する光の一部の通過を許す。採光窓(17)を通過した光は光量の測定に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の特性を評価すべくその性能を検査するために用いられる太陽光に近似した光(疑似太陽光)を生じさせるためのソーラシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラシミュレータは疑似太陽光を発するランプと、該ランプが発する光を検査対象である太陽電池の受光面が配置される被照射面に導くための光学系とを備える。前記ランプから放射された光(放射光)は、前記光学系を通過する間にその光量を整えられ、前記被照射面に到達する。光量調整は、たとえば前記光学系を通過中の光からその一部を取り出してその光度を測定し、その測定値を例えばフィードバック制御により前記ランプの出力に反映させる、あるいは光学的絞り機構に反映させることにより行われる。
【0003】
従来、光量測定のために前記放射光の一部を取り出すべく、前記光学系を構成するライトガイド(照明用ライトガイド)の出力端面に透光板を取り付けることが提案されている(特許文献1)。この提案によれば、前記照明用ライトガイドの出力端面に到達した光が、前記透光板を介して、前記被照射面を照射するものと、光量測定に用いられるものとに分岐される。光量測定に用いられる測定用光は、他のライトガイド(モニタ用ライトガイド)を介して光センサに送られ、その光度が測定される。
【0004】
ところで、ソーラシミュレータは、これを構成する光学部品に経時的な劣化が生じたときにはこれを取り替えて使用継続される。前記従来のソーラシミュレータにあっては、光学部品である前記透光板又は前記モニタ用ライトガイドが交換されると、交換の前後における部品品質のバラツキや取付位置のズレ等によってこれらの光透過率に変化が生じ、この変化のために光量の正確な測定が阻害されるという問題がある。さらに、前記被照射面を照射するための光は前記透光板を経て空気中に放射されるところ、前記照明用ライトガイドの出力端面とこれに取り付けられた前記透光板との間には前記透光板とは屈折率を異にする空気層が存するため、前記照明用ライトガイドの出力端面から放出された光は前記空気層及び前記透光板に入射するとき、並びに前記透光板から空中に放射されるときにこれらに当たってその一部が反射をする。このため、前記被照射面に照射される光の損失を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−42383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、被照射面に照射される光についての光量測定をより正確に行うことを可能とするソーラシミュレータを提供することにある。また、本発明の他の目的は、被照射面に照射される光について損失を生じさせないソーラシミュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1に記載の発明の特徴)
請求項1に記載に発明は、ソーラシミュレータに係り、太陽光に近似した光を発するランプと、前記ランプが発する光を被照射面に導くための光学系とを含み、前記光学系は、前記光を前記被照射面に向けて反射させるための反射板を備え、前記反射板はこれに設けられた採光窓であって前記反射板に入射する光についての光量を測定するために用いられる前記光の一部の通過を許す採光窓を有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明にあっては、前記ランプから放射され前記反射板に入射する光についての光量の測定に用いられる前記光の一部(測定用光)を取り出すための手段が前記反射板に設けられた採光窓からなる。前記採光窓は空気で満たされた空間からなり、該空間中の空気の光透過率は、前記採光窓を規定する光学部品である前記反射板の交換によって変化しない(空気にも僅かなバラツキはあるが、それは部品品質のバラツキに比べて無視できる程度に小さい)。このことから、光透過率の変化に起因する測定値の変化を回避することができ、これにより、前記光量測定及びその測定値に基づく調光をより正確に行うことができる。
【0009】
また、前記反射板に設けられた採光窓は前記反射板で反射された光(照射用光)の進行路内に存しない(通過を許すのは、反射板に入射する光であって反射光ではない)ことから、前記照射用光すなわち前記被照射面に向かう反射光に対してこれに損失が生じるような影響を及ぼさない。
【0010】
さらに、前記採光窓の形成箇所を、前記被照射面に向けて直接に光を反射する前記反射板としたことから、光量測定に供される光は前記被照射面に入射直前の光であり、これは、実質的に、前記被照射面への入射光に相当する。
【0011】
(請求項2に記載の発明の特徴)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記採光窓が光軸と平行な軸線を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、光の導孔である前記採光窓の軸線が光軸と平行であるように設定することにより、非平行に設定する場合と比べて、前記採光窓の周壁面における光の反射を低減し、これにより、前記採光窓を通過する光の減衰をより少なくすることができる。
【0013】
(請求項3に記載の発明の特徴)
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記光学系が、前記光を前記反射板に向けて反射させるための反射鏡と、前記反射板と前記反射鏡との間に配置された、前記光の面照度を均一にするためのレンズとを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、前記ランプが放射する光は、前記反射鏡での反射により前記レンズに通されてその面照度を均一にされた状態で前記反射板に入射するため、前記反射板の採光窓から取り出される光について、前記被照射面に到達する光と同一のものとすることができる。
【0015】
(請求項4に記載の発明の特徴)
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記光学系が、前記反射鏡と前記レンズとの間に配置された、前記光についての光量を調整するための絞り機構を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、前記反射板の採光窓から射出される光についての光量の測定値の大きさに基づき、前記絞り機構を操作して前記ランプから放射された光についての光量を低減し、また低減前の光量に戻すことができ、これにより、前記反射板に到達し、該反射板から前記被照射面に反射される光についての光量を調節することができる。
【0017】
(請求項5に記載の発明の特徴)
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明の構成要素を備えた上で、さらに、前記反射板の採光窓を通過した光についての光量の値に基づき、前記ランプの出力を調整するためのフィードバック制御機構を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、前記反射板の採光窓を通過した光についての光量の測定値を前記フィードバック制御機構に入力することにより、前記ランプの出力を調整し、前記被照射面に向かう光についての光量を調整することができる。
【0019】
(請求項6に記載の発明の特徴)
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明の構成要素を備えた上で、さらに、前記反射板の採光窓を通過した光についての光量の値に基づき、前記絞り機構を制御するためのフィードバック制御機構を含むことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、前記反射板の採光窓を通過した光についての光量の測定値を前記フィードバック制御機構に入力することにより、前記絞り機構を制御し、前記被照射面に向かう光についての光量を調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ソーラシミュレータについて、検査対象である太陽電池の受光面に照射される疑似太陽光についての光量の測定をより正確に行うことできる。また、前記被照射面に照射される疑似太陽光についての光量の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るソーラシミュレータの概念図である。
【図2】ソーラシミュレータにおける反射板及びその採光窓並びに光センサ及び光拡散板を概念的に示す拡大図である。
【図3】ソーラシミュレータにおけるフィードバック制御機構の回路図である。
【図4】制御機構のランプドライバにおけるランプ出力と制御入力との関係を示すグラフである。
【図5】絞り機構を含むソーラシミュレータの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照すると、本発明に係るソーラシミュレータの概要が全体に符号1で示されている。ソーラシミュレータ1は、太陽光に近似した放射光(疑似太陽光)Lを発するランプ3と、ランプ3から放射された光(放射光)Lを仮想平面である被照射面5に導くための光学系7とを備える。被照射面5には、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換するための太陽電池(図示せず)の性能試験に際し、その受光面がおかれる。
【0024】
図示のランプ3は放電灯からなる。この放電灯は、キセノンのような希ガスが封入された石英ガラス管9と、該石英ガラス管9の両端に配置された陽極11及び陰極13とを有する。両極11,13への電圧の印加により、両極11,13間にアーク放電が生じ、これが前述した疑似太陽である放射光Lを発する。ランプ3が放射する放射光Lについての光量は、両極11,13に加えられた電力の大きさに比例する。ランプ3は、前記放電灯に代えて、例えばハロゲン灯のようなフィラメント電球とすることができる。
【0025】
ランプ3の放射光Lを被照射面5に導くための光学系7は、放射光Lを受けてこれを被照射面5に向けて反射させるための反射板15を含む。反射板15は光学的反射物質の蒸着層の一方の面を反射面とする例えば矩形状のガラス板からなる。図1に示す例では、反射板15は、放射光Lが90度の反射角度をもって反射するように配置されている。
【0026】
反射板15には、これに入射する放射光Lの一部の通過を許す空気で満たされた非密閉空間である採光窓17が設けられている。採光窓17を通過した放射光Lの一部L1は、反射板15への入射光Lについての光量を測定するために用いられる(以下、「放射光の一部L1」を「測定用光L1」という。)。他方、反射板15で反射される放射光Lの残りの一部L2は、被照射面5に至り、該被照射面を照射する(以下、「放射光の残りの一部L2」を「照射用光L2」という。)。したがって、測定用光L1と照射用光L2とは光量を同じにするものであり、測定用光L1の測定により得られる光量の値は、照射用光L2のそれに等しい。
【0027】
また、採光窓17は、前記したように、反射板15自体に設けられており、照射用光L2の進行路内に存しない。このことから、採光窓17は、照射用光L2に対してこれに損失が生じるような悪影響を及ぼさない。
【0028】
採光窓17は、これを通しての放射光Lからの測定用光L1の抜き取りが、被放射面5に「放射照度の場所むら」(JIS C8912)を生じさせない程度の大きさとすることが望ましい。この観点から、採光窓17は、例えば2mmの直径を有する円形孔とすることができる。また、採光窓17の横断面形状は、円形に限らず、他の任意の形状、例えば多角形や楕円形とすることができる。さらに、本実施形態における採光窓17は、図2に示すように、反射板15の中央部に設けてあるが、後述するように光が当たっている範囲内の任意の箇所に設けることができる。
【0029】
採光窓17は、好ましくは、図1に示す例におけるように、その軸線が光軸lに平行であるように、具体的には光軸lの延長上に位置するように位置決められている。これによれば、採光窓17に進入した測定用光L1が採光窓17をその軸線に沿って直進することができ、光軸lと非平行な採光窓とした場合に生じる該採光窓の壁面(周壁)での反射とこれに伴う減衰とを回避することができる。
【0030】
反射板15の反射面と反対の側には、測定用光L1を検出し、該測定用光についての光量に対応する電圧に変換するための光センサ19が配置されている。光センサ19は、例えば太陽光スペクトルに感応するシリコンフォトダイオードからなるものとすることができる。光センサ19は好ましくは採光窓17の軸線の延長上に配置される。
【0031】
図1及び図2に示す例においては、さらに、採光窓17を規定する反射板15と光センサ19との間に、採光窓17から射出する測定用光L1を受けてこれを光センサ19に向けて拡散させる機能を有する拡散板21が配置されている。これによれば、光センサ19に届く光が拡散光であるため、光センサ19の配置位置や受光面の角度に多少の誤差があっても光センサ19による測定用光L2の検出を可能とすることができる。
【0032】
本実施形態における採光窓17は、上述したように反射板15を厚み方向に貫通する貫通孔によって構成してあるが、次の構成を採用することによって、採光窓17の作用効果に近似する作用効果を生じさせることができる。まず第1の構成として、反射板本体(図示を省略)の全体若しくは採光窓周辺を、たとえば、透明な合成樹脂やガラスのような透光性部材によって構成し、その反射板本体の一方の表面に光学的反射物質層を蒸着等によって形成する。ここで、この光学的反射物質層の一部を欠損させて(省略して)反射板本体を露出させれば、この露出部分を採光窓とすることができる。露出部分であれば反射されないので、光は、露出部分を、さらに、反射板本体を通過して反射板本体の裏側へ到達する。第2の構成として、上記欠損させる代わりに欠損部分を、いわゆるハーフミラー部分とし、透光性を確保するようにしてもよい。最後の第3の構成として、上記貫通孔を取付孔として、そこに光センサを直接埋設することもできる。上記第3の構成によれば、光センサの受光面が直接、光を受けることになるので、本実施形態のそれと同様な作用効果を期待することができる。
【0033】
光学系7は、さらに、被照射面15に到達する照射用光L2が被照射面15において均一な照度を有するものであるようにする、すなわち放射光Lの面照度を均一にするために用いられる光学部品である例えばフライアイレンズ23を含むものとすることが望ましい。
【0034】
図1に示す例においては、フライアイレンズ23はこれを経た放射光Lが反射板15に入射するように配置されている。フライアイレンズ23は反射板15と被照射面5との間に配置することも可能であるが、図示のようにランプ3と反射板15との間に配置することにより、ソーラシミュレータ1の使用期間中に経時的に劣化したフライアイレンズ23を交換した場合における交換前後のフライアイレンズの透過率の相違に拘らず、反射板15中央部の採光窓17を通過する測定用光L1と、被照射面5に到達する照射用光L2との間に光量の変化が生じることが回避される。また、フライアイレンズ23を経ることで反射板15に照射される光が均一な照度となるため採光窓17を、照射範囲の中央部を含めた同範囲内の任意の箇所に設けることが出来るという効果がある。
【0035】
また、本実施例においてはランプ9の放射光Lをフライアイレンズ23に導くために、反射板17と同様の反射鏡25が配置されている。反射鏡25は光学系7の一部をなす。ランプ9から放射された光Lは、これを受けた反射鏡25において90度の反射角度で反射板17に向けて反射される。反射鏡25で反射された光Lはフライアイレンズ23を経て反射板15に到達する。なお、反射鏡25は、本発明においては必須の構成要素ではなく、ランプ9と集光鏡27からの光を直接にフライアイレンズ23に入射させる機構として反射鏡25を省略してもよい。
【0036】
また、図示の例では、ランプ3が放射する光Lを集め、これを反射鏡25に導くための集光鏡27が配置されている。集光鏡27はランプ9の一部を取り囲む半球面からなる反射面を有する。図示の集光鏡27はガラス材料で形成され、その半球面にこれを反射面とするための光学的反射物質が蒸着されている。これによれば、ランプ3から放射された光Lは、集光鏡27の半球状の反射面内に集められ、該反射面において反射鏡25に向けて反射される。また、集光鏡27は、反射鏡25により反射された光Lがフライアイレンズ23に集光するように位置決められている。集光鏡27もまた光学系7の一部をなす。
【0037】
さらに、光学系7の一部として、被照射面5に入射する照射用光L2を平行にするためのレンズを配置することが望ましい。図1に示す例では、2枚のレンズ29,31がフライアイレンズ23と反射鏡15との間に互いに間隔をおいて配置され、かつ、一枚のコリメーションレンズ33が反射板15と被照射面5との間に配置されている。これらのレンズ29,31,33は、協働して、これらのレンズ29,31,33を通過した光である照射用光L2が平行光であるようにする。
【0038】
反射板15の採光窓17から放出され、光センサ19により検出された測定用光L1の光量に係る電気信号(電圧)は、これをランプ3の出力調整、又は光学的絞り機構の駆動を行うためのフィードバック信号として用いることができる。
【0039】
図3を参照すると、ランプ3の前記出力調整を行うためのフィードバック制御機構の一例が全体に符号35で示されている。フィードバック制御機構35は、演算増幅器と呼ばれる電気回路であるオペアンプ(operational amplifier)37と、これに電気的に接続されたランプドライバ39とを備える。
【0040】
オペアンプ37は、正入力端子41及び負入力端子43と、出力端子45とを備え、両入力端子41,43と出力端子45とがそれぞれ演算素子47に電気的に接続されている。演算素子47は、両入力端子41,43にそれぞれ加えられる2つの入力電圧の比較演算を行い、正入力端子41への入力電圧が負入力端子43への入力電圧より高ければ出力端子45の電圧を上げ、反対に低ければ電圧を下げる。
【0041】
オペアンプ37の負入力端子43には、増幅器49を介して、光センサ19が電気的に接続されている。増幅器49は、光センサ19が発する電気信号である電圧をオペアンプ37の動作に適合する大きさに増幅する作用をなす。
【0042】
また、オペアンプ37の正入力端子41には、可変抵抗器と呼ばれる電気部品であるボリューム51が電気的に接続されている。ボリューム51は、オペアンプ37の動作基準となる制御電圧を発生させる。ボリューム51には、これを手動操作するためのつまみ(図示せず)が設けられている。操作者は、前記つまみを操作することにより、前記制御電圧の大きさを調整することができる。
【0043】
ランプドライバ39はランプ3を駆動するための電気回路であって、制御入力端子53と、正出力端子55及び負出力端子57とを有する。制御入力端子53は、オペアンプ37の出力端子45に電気的に接続されており、オペアンプ37の出力端子45に出力された電圧が制御入力端子53に印加される。また、正出力端子55及び負出力端子57は、それぞれ、ランプ3の正電極11及び負電極13に電気的に接続されている。ランプドライバ39は、ランプ3の点灯開始時に高電圧を発生し、ランプ3における放電を開始させ、放電の開始後、制御入力端子53に加えられる電圧の大きさに従って、ランプ3の定電力制御を行う。
【0044】
図4に、前記制御入力電圧と、ランプ3の出力との関係の一例をグラフで示す。このグラフは、前記制御入力電圧が0〜5Vの範囲で変化するとき、これに応じてランプ3の出力が0〜100%の範囲で変化することを示す。ただし、実際には、放電灯からなるランプ3は、その出力を低くすると、放電が不安定になったり、あるいは停止することがあるため、制御領域は、ランプ3の出力の70〜100%の範囲とすることが望ましい。
【0045】
ソーラシミュレータ1のランプ3は、ランプドライバ39により電力を供給することにより点灯させることができる。ランプ3を点灯させた後、被照射面5に対する照射用光L2の光量の設定を行う。光量の設定(調光)は、例えば被照射面5上に照度計を置いて、該照度計が所望の指示値を示すように、ボリューム51を操作し、これによりオペアンプ37の正入力端子41に加えられる前記制御圧力を調整することにより行うことができる。前記したように、前記制御圧力の値はオペアンプ37において光センサ19からの圧力の値と比較され、その結果、光センサ19の圧力値が制御圧力値より低いとき、すなわち被照射面5に対する照射光量が設定光量より低いとき、オペアンプ37はその出力電圧値を上げて、逆の場合には下げる。これに対応して、ランプドライバ39はランプ3をその出力が上がり、あるいは下がるように駆動する。
【0046】
前記照射光量は、ランプ3の経時的劣化、光学系7を構成する光学部品への汚れの付着によるその透過率や反射率の低下等を原因として低下し、また、前記ランプ、前記光学部品等の新品への交換を原因として増大する。前記照射光量の低下又は増大を原因とする前記照射光量の変化は、これをフィードバック制御機構35により前記したようにして調整し、前記照射光量を所望の値に設定することができる。
【0047】
前記した例におけるランプドライバ39によるランプ3の出力制御に代えて、例えば液晶シャッター(図示せず)を使用した出力制御とすることができる。前記液晶シャッターは、反射鏡25とフライアイレンズ23との間、又はフライアイレンズ23と反射板15との間に配置することができる。前記液晶シャッターは、オペアンプ37の出力端子45からの電気信号を受けて、その透過率を0〜100%の範囲で変化させる。この変化のために、前記液晶シャッターを通過する照射光Lについての光量変化が実現される。
【0048】
また、前記した例においては、オペアンプ37が行う演算によるアナログ制御が用いられているが、これに代えて、コンピュータ回路を用いたデジタル制御を用いることができる。オペアンプ37に設けられる前記コンピュータ回路は、例えば、制御及び演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、記憶を行うROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、アナログ入力を行うA/D変換器と、アナログ出力を行うD/A変換器とを備える。このコンピュータ回路においては、光センサ19とボリューム51とが前記A/D変換器に電気的に接続され、ランプドライバ39に前記D/A変換器が電気的に接続される。光センサ19および、ボリューム51からのアナログ電気信号はA/D変換器によりそれぞれデジタル信号に変換されてCPUに入力される。CPUは2つの信号を比較してランプドライバ39の制御入力端子53に与える制御電圧値を計算してその結果をD/A変換器に出力する。D/A変換器でアナログ電気信号に変換された制御電圧値は制御入力端子53に加わりランプ3の出力を制御する。なお、前記ROMには前記CPUが実行するための制御プログラムが記憶され、前記RAMにはCPUがプログラムを実行する際のワークエリアが展開される。
【0049】
さらに、前記フィードバック制御においては、比例制御又はP制御と呼ばれる制御手法をもちいるが、これに代えて、PID制御やロバスト制御のような現代制御手法を採用することができる。前記したフィードバック制御機構35においては、オペアンプ37の正入力端子41に入力された制御電圧が、光センサ19からの信号電圧より高いか、又は低いかによってオペアンプ37の出力端子45における出力電圧の高下を決定する。しかし、このような比例制御によると、例えばランプ3に印加される電圧の変化に対してランプ3の発光量の変化が時間的に遅れるという特性がある場合、発光量の振動といった不都合が発生する恐れがある。このような不都合の発生に対する対処のため、例えば、P(比例定数)、I(積分定数)、D(微分定数)を好ましい値に設定したPID制御を行うことが望ましい。
【0050】
ところで、前記調光は、これをフィードバック制御機構35を用いて電気的に行うことに代えて、図5に示すような絞り機構61を用いて機械的に行うことが可能である。
【0051】
絞り機構61は互いに相対する一対の円板である調光板63及びシャッター板65を備える。
調光板63は、該円板内の円周上に複数の大径孔67及び複数の小径孔69が設けられており、絞り機構61を通過する光の光量を円板の回転角度位置を制御することによって100%(全開)から0%(遮光)まで段階的に減じる機能を持つ。シャッター板65は円板上にそれぞれ90度の角度をもち中心部がフライアイレンズ23の光軸の中心と一致する円周上に配された4つの同径の孔である開口部71と、開口部71からそれぞれ45度の角度をもって配された遮光部をもち、絞り機構61を通過する光を円板の回転角度位置を制御することによって通過と遮断を行う機能を持つ。
【0052】
両円板63,65は反射鏡25とフライアイレンズ23との間に配置され、これらの軸線が前記光軸上に位置する。ここで、調光板63は反射鏡25に面し、シャッター板65はフライアイレンズ23に面している。したがって、反射鏡25で反射された放射光Lは、調光板63の孔67,69及びシャッター板65の孔71を順次に経て、フライアイレンズ23に入射する。
【0053】
調光板63とシャッター板65はその円板の中心にそれぞれステッピングモータ73,74が取り付けられており、ステッピングモータ73,74それぞれを駆動することによって別個に回転制御可能であるように支持されている。
【0054】
ステッピングモータ73,74はそれぞれコンピュータ回路75に電気的に接続されている。コンピュータ回路75は制御及び演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、記憶を行うROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、アナログ入力を行うA/D変換器を備える。光センサ19とボリューム51とがコンピュータ回路75のA/D変換器に電気的に接続される。光センサ19および、ボリューム51からのアナログ電気信号はA/D変換器によりそれぞれデジタル信号に変換されてCPUに入力される。CPUは2つの信号を比較、演算し、その結果に基づき、所望の光量の照射用光L2が得られるように、ステッピングモータ73,74それぞれに対してその回転方向及び回転角度を含む駆動信号を発する。前記ROMには前記CPUが実行するための制御プログラムが記憶される。また、前記RAMにはCPUがプログラムを実行する際のワークエリアが展開される。上記では操作者がボリューム51を手動操作して動作基準となる制御電圧を発生したが、コンピュータ回路75にデジタル表示器及び入力操作スイッチを含む操作手段77を設けて操作者がこれらを操作して動作基準となる値を設定しても良い。例えば被照射面5の光エネルギーを1SUN(1000W/平方m)になるようにフィードバック制御を行う場合には、操作者はテンキーなどの入力操作スイッチを操作して、デジタル表示器に目標値が1000W/平方mとなるように設定を行う。コンピュータ回路75は被照射面5の光エネルギーが目標値になるように制御を行う。コンピュータ回路75は例えば1chipCPUのように小型なものをソーラシミュレータ内に組み込んで使用しても良い。また、パーソナルコンピュータやシーケンサをコンピュータ回路75として良い。
【符号の説明】
【0055】
1 ソーラシミュレータ
3 ランプ
5 被照射面
7 光学系
9 石英ガラス管
11 陽極
13 陰極
15 反射板
17 採光窓
19 光センサ
21 拡散板
23 フライアイレンズ
25 反射鏡
27 集光鏡
29,31 レンズ
33 コリメーションレンズ
35 フィードバック制御機構
37 オペアンプ
39 ランプドライバ
41 正入力端子
43 負入力端子
45 出力端子
47 演算素子
49 増幅器
51 ボリューム
53 制御入力端子
55 正出力端子
57 負出力端子
61 絞り機構
63 調光板
65 シャッター板
67 大径孔
69 小径孔
71 開口部
73 ステッピングモータ
75 コンピュータ回路
L 照射光
L1 測定用光
L2 照射用光
l 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光に近似した光を発するランプと、
前記ランプが発する光を被照射面に導くための光学系とを含み、
前記光学系は、前記光を前記被照射面に向けて反射させるための反射板を備え、
前記反射板はこれに設けられた採光窓であって前記反射板に入射する光の光量を測定するために用いられる前記光の一部の通過を許す採光窓を有する
ことを特徴とする、ソーラシミュレータ。
【請求項2】
前記採光窓は前記第1の反射板に入射する前記光の光軸と平行な軸線を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のソーラシミュレータ。
【請求項3】
前記光学系は、前記光を前記反射板に向けて反射させるための反射鏡と、前記反射板と前記反射鏡との間に配置された、前記被照射面における照度を均一にするためのレンズとを備える
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のソーラシミュレータ。
【請求項4】
前記光学系は、前記反射鏡と前記レンズとの間に配置された、前記光についての光量を調整するための絞り機構を備える
ことを特徴とする、請求項3に記載のソーラシミュレータ。
【請求項5】
さらに、前記反射板の採光窓を通過した光についての光量の値に基づき、前記ランプの出力を調整するためのフィードバック制御機構を含む
ことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のソーラシミュレータ。
【請求項6】
さらに、前記反射板の採光窓を通過した光についての光量の値に基づき、前記絞り機構を制御するためのフィードバック制御機構を含む
ことを特徴とする、請求項4記載のソーラシミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251387(P2010−251387A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96601(P2009−96601)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(505075983)有限会社ジェイアイエンジニアリング (7)
【Fターム(参考)】