説明

タイムレコーダ

【課題】作業効率に優れたタイムレコーダを提供する。
【解決手段】タイムカードが挿入された時刻をタイムカードに印字するタイムレコーダ10であって、タイムレコーダ10本体の外部に配置された温度計測器40から出力された温度情報に基づいて、挿入時刻での温度情報を取得する制御部25と、挿入時刻と共に温度情報をタイムカードに印字する印字部23と備えている。これにより、作業者はタイムレコーダにタイムカードを挿入するという一度の作業で、挿入時刻と温度情報とをタイムカードに印字することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイムレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クロック機構と印字機構と、温度計測機能とを備えたハンディ式のタイムスタンプが知られている。このタイムスタンプは、物体の表面温度を非接触式の表面温度計で測定した後、その測定温度を測定時刻と一緒に紙に印字することができる。このタイムスタンプは、流通食品の表面温度を計測することにより、流通過程における食品の温度を管理することを目的としている。
【0003】
【特許文献1】特開2000‐76504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイムスタンプでは、測定温度を紙に印字する際には、温度を測定する測定作業と、測定した温度を印字する印字作業との2つの作業が必要となる。従って作業効率が悪い。
【0005】
上記タイムスタンプは、ハンディ式である。従って、流通過程中の複数の工程毎に計測作業を行う場合には、作業者がタイムスタンプを携帯して各工程の計測場所に移動して、工程毎に温度計測の作業を行う必要がある。従って、作業者はタイムスタンプを携帯する必要がありこの点に関しても作業効率が悪い。
【0006】
そこで本発明は、作業効率に優れたタイムレコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、タイムカードが挿入された時刻を前記タイムカードに印字するタイムレコーダであって、該タイムレコーダ本体の外部に配置された温度計測部から出力された温度情報に基づいて、前記挿入時刻での温度情報を取得する温度情報取得部と、前記挿入時刻と共に前記温度情報を前記タイムカードに印字する印字部と備えたことを特徴とするタイムレコーダによって達成できる。
【0008】
タイムカードを挿入すると、挿入時刻と共に挿入時刻での温度情報が印字される。従って、作業者はタイムレコーダにタイムカードを挿入するという一度の作業で、挿入時刻と温度情報とをタイムカードに印字することができる。また、温度の管理対象となる場所が複数ある場合、管理対象毎にタイムレコーダを設置することにより、作業者は手ぶらで各管理対象を巡回することができる。従って、上記タイムレコーダは、作業効率に優れている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業効率に優れたタイムレコーダを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る一実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係るタイムレコーダ10の外観図である。図2は、タイムレコーダ10の構成図である。タイムレコーダ10は、タイムカード挿入時の時刻をタイムカードに印字すると共に、該タイムレコーダ本体の外部に配置された温度計測器40からの出力信号に基づいて、後述する挿入時刻での温度情報をタイムカードに印字する。
【0011】
図1に示すように、タイムレコーダ10は、上面に挿入口12が形成されたタイムレコーダ10を有する。また、タイムレコーダ10は、正面に表示部14、操作部16、スピーカ17が設けられている。表示部14は、液晶ディスプレイから構成され、現在日時、時刻などが表示される。スピーカ17は、操作部16の操作時に報知音を出力する。タイムレコーダ10の側面には、USB(Universal Serial Bus)インタフェース18が設けられている。タイムレコーダ10は、ケーブル19を介して温度計測器40と接続されている。
【0012】
カード送り部22は、図示しないタイムカードの位置を定める機構で、図示しないモータ、カード差込口、カード検出スイッチ等から構成される。また、カード送り部22は、制御部25による制御に基づき、印字する行までカードを吸入し、印字中はタイムカードを保持し、印字後はタイムカードを排出することによりタイムカードの垂直位置を定める。
【0013】
印字部23は、タイムカードの印字欄に、タイムカード挿入時刻と、温度計測器40から出力された挿入時刻における温度情報を印字する。印字部23は、図示しない印字ヘッド、モータ、キャリア等から構成される。印字ヘッドはキャリアに支持されており、キャリアはモータの駆動力により水平方向に移動可能とされている。印字部23は、制御部25による制御に基づき、印字ヘッドを印字しようとする印字欄に適した水平位置に移動させ、印字欄に制御部から供給された時刻及び温度情報を印字する。
【0014】
計時部24は、図示しない発振器、カウンタ等から構成される計時回路で、現在時刻及びカレンダ情報(日付、曜日等)を計時する。
【0015】
制御部25は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、所定のプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備え、タイムレコーダ10全体の動作を制御する。例えば、制御部25は、後述する印字処理において、打刻カウントに基づいて、印字する行及び欄を特定する。次に、制御部25は、カード送り部22及び印字部23を制御して印字ヘッドを当該欄の位置まで移動させて、タイムカードの挿入時刻、挿入時での温度情報を印字する。RAMは、CPUの処理に必要な情報を一時的に記憶するワークスペースとなる。
【0016】
制御部25は、インタフェース27を介して温度計測器40と接続されている。制御部25は、温度計測器40から出力された温度情報を取得可能であり、RAM内に一時的に記憶する。このように、制御部25は温度情報取得部としても機能する。尚、温度計測器40から出力される温度は、所定時間ごと、例えば1分毎に出力され、制御部25は、継続してRAMに一時期的に記憶させる。尚、RAMに一時的に記憶される温度情報は、常時更新するように構成されていてもよい。
【0017】
記憶部26は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成される。制御部25がタイムカードの挿入を検出すると、制御部25はRAMから挿入時の温度情報を読み出して、記憶部26に温度情報を記憶させる。詳細には、記憶部26には、タイムカードの挿入時刻と挿入時刻での温度情報とが関連付けた、温度履歴テーブル(履歴情報)が記憶される。図3は、記憶部26に記憶される温度履歴テーブルの例示図である。温度履歴テーブルにおいては、日付、時刻、温度が関連付けられている。
【0018】
USBインタフェース18は、記憶部26に記憶された温度履歴テーブルに関する情報を外部の情報処理装置(例えばパーソナルコンピュータ)に出力するためのインタフェースである。USBインタフェース18は、出力部に相当する。尚、温度履歴テーブルに関する情報を外部の情報処理機器に出力する場合には、このようなUSB方式のインタフェースに限定されず、その他のコネクタであってもよいし、例えば無線LANなどの無線通信手段を介して自動送信するようにしてもよい。
【0019】
温度計測器40は、温度計測器40周辺の外気温度を測定する。温度計測器40は、温度によって抵抗値が変化する不図示のサーミスタを備えた、公知の技術により構成される。尚、温度計測器40は、サーミスタを備えたものに限定されず、温度計測器40周辺の外気温度を測定できるものであればよく、例えば、白金側温抵抗体を用いたものであってもよい。温度計測器40によって測定された温度に関する情報は、タイムレコーダ10へと出力される。タイムレコーダ10は、ケーブル19を介して温度計測器40と連結されているが、これに限定されず、例えば、Bluetoothなどの無線通信手段を介して、温度計測器40が出力する温度情報をタイムレコーダ本体が受信するように構成してもよい。
【0020】
次に、制御部25が実行する印字処理の一例について説明する。図4は、制御部25が実行するフローチャートである。図4に示すように制御部25は、カード検出スイッチからの出力により、タイムカードが挿入されたか否かを判定する(ステップS1)。否定判定の場合には、制御部25は、印字処理を終了する。肯定判定の場合には、制御部25は、計時部24からの情報に基づいて現在時刻を読み出す(ステップS2)。次に、制御部25は、RAMに一時的に記憶されている温度情報を読み出す(ステップS3)。この温度情報は温度計測器40から出力された温度情報である。次に、制御部25は、読み出された時刻と温度情報とを、タイムカードの所定の印字欄に印字部23により印字する(ステップS4)。尚、印字する際には、制御部25は、記憶部26から打刻カウントを読み出し、この打刻カウント値に基づいてタイムカードの印字欄を特定する。これにより、タイムカードには、挿入時刻と、挿入時刻での温度情報とが印字される。
【0021】
次に、制御部25は、挿入時刻と挿入時刻での温度情報とを温度履歴テーブルとして記憶部26の不揮発性メモリに記憶させる(ステップS5)。尚、この場合の挿入時刻での温度情報とは、RAMに一時的に記憶されていた温度情報である。尚、この温度履歴テーブルには、複数の挿入時刻と、複数の挿入時刻に対応する複数の温度情報とが記憶されている。
【0022】
次に、本実施例に係るタイムレコーダの使用例を説明する。図5は、本実施例に係るタイムレコーダの使用例の説明図である。使用例として、複数の倉庫内の温度を管理する場合を想定する。
【0023】
倉庫100a〜100d内は、それぞれ所定の温度に制御されている。倉庫100a〜100dには、それぞれタイムレコーダ10a〜10dが設置されている。温度計測器40a〜40dは、それぞれ温度管理の対象となる倉庫100a〜100dの室内に配置されている。また、タイムレコーダ10a〜10dは、それぞれ倉庫100a〜100dの室外に配置されている。
【0024】
各タイムレコーダ10a〜10dには、それぞれタイムカードT1〜T4が予め設置されている。作業者は、各タイムレコーダ10a〜10dまでを巡回することにより、倉庫100a〜100dの各温度を、タイムカードT1〜T4のそれぞれに印字することができる。
【0025】
前述したように、タイムレコーダ10は、タイムカードの挿入と同時に、挿入時刻と温度情報とがタイムカードに印字される。従って、作業者は、タイムカードを挿入するという一度の作業で、挿入時刻の記憶と、挿入時刻での温度情報とをタイムカードに印字することができる。従って、作業者の作業効率が向上する。
【0026】
また、各倉庫100a〜100dに、それぞれタイムレコーダ10a〜10dが配置されているので、作業者は、タイムレコーダを携帯することなく、各倉庫100a〜100dの温度を把握することができる。これにより、作業者の作業効率が向上する。
【0027】
また、タイムレコーダ10と、温度計測器40とは、ケーブル19を介して接続されている。このためタイムレコーダ10から離れた場所の温度情報を取得することができる。従って、上記使用例に示したように、温度の測定対象となる倉庫100a〜100d内のそれぞれに温度計測器40a〜40dを配置し、倉庫100a〜100d外にタイムレコーダ10a〜10dを配置することにより、作業者は倉庫100a〜100d内に入ることなく、容易に倉庫100a〜100d内の温度を記録することができる。
【0028】
図6は、タイムカードの例示図である。図6に示すように、タイムカードには、時刻と温度とがそれぞれ関連付けて印字される。
【0029】
次に、本実施例に係るタイムレコーダの他の使用例を説明する。図7は、本実施例に係るタイムレコーダでの他の使用例の説明図である。使用例として、食品加工場で各工程場の温度を管理する場合を想定する。
【0030】
食品加工場などにおいて、工程が行われる場所毎にタイムレコーダを配置する。各工程とは、下処理工程場200a、フライ工程場200b、梱包工程場200c、冷凍工程場200dなどである。工程場毎に配置されたタイムレコーダ10a〜10dは、それぞれタイムカードTに対する印字欄が重複しないように設定されている。
【0031】
図8は、タイムカードの例示図である。図8に示すように、印字欄1には、下処理工程場200aでの時刻と温度とが印字されており、印字欄2〜4には、それぞれフライ工程場200b、梱包工程場200c、冷凍工程場200dでの時刻と温度とが印字されている。この場合、各工程に従事する作業者が、1枚のタイムカードTを用いて、各工程での時刻と温度とを印字することができる。即ち、下処理工程場200aに従事する作業者は、下処理工程場200aに配置されたタイムレコーダ10aによりタイムカードTを印字し、ここで印字されたタイムカードTは、加工対象である食品と共に次の工程であるフライ工程場200bに搬送することができる。タイムカードTの搬送は、例えば、食品を搬送するためのトレイ(不図示)に食品と共にタイムカードを置き、各工程間を繋ぐベルトコンベアー(不図示)によってトレイを搬送することにより可能である。フライ工程場200bに搬送されたタイムカードTは、フライ工程場200bに従事する作業者によってフライ工程場200bに置かれたタイムレコーダ10bを用いてタイムカードTを印字する。フライ工程場200bでの温度が印字されたタイムカードTは、同様に食品と共に次の工程へと搬送される。
【0032】
このように、タイムカードTを加工対象である食品と共に各工程へと搬送できるので、ある特定の作業者が、各工程を巡回して温度を計測する必要はない。従って、作業効率が向上する。
【0033】
また、このようにタイムカードTを用いることにより、各工程での温度情報が一枚のタイムカードTに集約化でき各工程での温度の把握が容易となる。また、各工程に従事する作業者にとっても、前工程での温度を容易に把握することができる。
【0034】
尚、食品の加工工程において、温度の管理と時間とは密接に関係している。即ち、食品の品質を維持するためには、現在の食品の温度のみならず、各工程が終了した際の時間が重要である。
【0035】
ここで、特開2000−76504号公報に開示されているタイムスタンプについて説明する。上記タイムスタンプは、非接触式の温度計を内蔵している。非接触式の温度計は、計測対象の物体表面にレーザビームを照射し、物体から反射されたレーザビームを受光することにより行われる。従って、作業者の計測作業によっては、適切に計測対象の温度を計測できないおそれがある。即ち、不慣れな作業者が温度を計測する場合には、正確に温度を計測できない恐れがある。また、温度計測を行う作業者が変わるたびに、計測温度にばらつきが起こる可能性もある。従って作業者にとっては、常に正確な温度測定を強いられることになり、この観点からも作業効率が悪化している。
【0036】
しかしながら、本実施例に係るタイムレコーダ10は、温度計測器40がタイムレコーダ10の外部に設けられているので、作業者は、正確な温度の測定に必要な特別は作業を強いられることはない。従って、本実施例に係るタイムレコーダ10によれば、温度測定に不慣れな作業者であっても、容易に測定でき、また、作業者毎の測定精度のばらつきも生じない。
【0037】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0038】
制御部25が取得した温度に基づいて、タイムカードTに印字する温度情報の色を変更してもよい。例えば、制御部25が取得した温度が、予め設定された所定の範囲に含まれていない場合には、通常の印字色が黒であるのに対し、赤で印字するように構成してもよい。この場合、印字部23は、黒と赤とのインクリボンを備えている必要がある。
【0039】
上記温度計測器40は、タイムレコーダ10と着脱可能であってもよいし、着脱不能であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施例に係るタイムレコーダの外観図である。
【図2】タイムレコーダの構成図である。
【図3】記憶部に記憶される温度履歴テーブルの例示図である。
【図4】制御部が実行するフローチャートである。
【図5】本実施例に係るタイムレコーダの使用例の説明図である。
【図6】タイムカードの例示図である。
【図7】本実施例に係るタイムレコーダでの他の使用例の説明図である。
【図8】タイムカードの例示図である。
【符号の説明】
【0041】
10 タイムレコーダ
12 挿入口
14 表示部
16 操作部
17 スピーカ
18 USBインタフェース
19 ケーブル
22 カード送り部
23 印字部
24 計時部
25 制御部
26 記憶部
27 インタフェース
40 温度計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムカードが挿入された時刻を前記タイムカードに印字するタイムレコーダであって、
該タイムレコーダ本体の外部に配置された温度計測部から出力された温度情報に基づいて、前記挿入時刻での温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記挿入時刻と共に前記温度情報を前記タイムカードに印字する印字部と備えたことを特徴とするタイムレコーダ。
【請求項2】
前記挿入時刻と前記温度情報とを記憶する記憶部を備えた、ことを特徴とする請求項1に記載のタイムレコーダ。
【請求項3】
前記記憶部は、前記挿入時刻と前記温度情報とを関連付けて履歴情報として記憶する、ことを特徴とする請求項2に記載のタイムレコーダ。
【請求項4】
前記記憶部に記憶された情報を外部機器へ出力するための出力部を有している、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のタイムレコーダ。
【請求項5】
前記温度計測部を備えた、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のタイムレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−26721(P2010−26721A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186344(P2008−186344)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】