説明

タイヤで製作したアワビ類蓄養殖施設とその蓄養殖方法

【課題】
アワビ等貝類の蓄養殖の課題は陸上施設費が嵩張る、設置面積を多く必要とする、近年は沿岸域の水質が悪化し病原菌も多い、高水温を嫌い残渣の残らない様にする工夫、海面では余り移動しない為小魚や人が触る事を嫌う、こうした事で長期間アワビが成長するまで投資のみで4年間はリスクが大きすぎて、事業化が進まない、
【解決手段】
本発明はアワビの立場に立った養殖とは、それはアワビの望む水質及び水温を如何に確保するか、アワビに極力触れないで設置面積が多く、かつ残渣が気にならない方法は、暗い為安心して餌を食べるので成長が早く丈夫な貝を作る方法は、かつ最も大切な施設費の軽減をテーマとして研究した。それら全てにおいて無償で入手可能な中古タイヤを連結して使う事で課題の殆どを解決出来、尚海底利用も可能、及び移動が容易で高水温に対処出来、最も適した養殖施設及び方法と言える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産業分野のアワビ類の蓄養殖に関するアワビ類蓄養殖施設と蓄養殖方法
【背景技術】
【0002】
従来アワビの貝類蓄養殖事業は陸上水槽施設が主であり、その水槽内にシェルターを置きその内側の日光の当らない面に貝が住み、一方、海では波の静かな湾内若しくは波静かな海域での小割りの中にシェルターを置いての養殖やポリカゴ等による蓄養殖も行われているが少数である。海での蓄養殖では海面上から吊り下げ方式が一般的で海底での蓄養殖は聞かれない。海底蓄養殖施設として他に特許申請中の浜口平成15年4月の特開2003−100384があるがそれぞれ使用部材とその蓄養殖対象及び蓄養殖方法が違う。又、タイヤを使用したものとして他に技術的に工夫したものもあるが、これらは魚礁としての活用やアワビ養殖の時のシェルターとしての利用方法の発明であり、本発明と大きく違う(以下文献参照)
【特許文献1】特開平10−271932号公報
【特許文献2】特開2003−100384号公報
【特許文献3】特開2001−286237号公報
【特許文献4】特開平8−228634号公報
【特許文献5】特開昭55−39714号公報
【特許文献6】特開平5−335337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アワビ等貝類は接着面を多く必要とし、人為的に棲家を作り易い陸上施設養殖に頼らざるを得なし、海面ではアワビ等貝類は揺れや明るい所を嫌う性質があり規模や経済面で事業化できないという課題がある。
【0004】
陸上施設養殖は施設費、動力費等が嵩み経営コストが高く、又棲家を作る事で餌滓が溜り清掃を頻繁に行う必要があり、その事で貝を傷つけ歩止りが低くなり、営業成績が悪化するという課題がある。
【0005】
近年沿岸海域の水質が悪化しつつあり、取水する海水に悪い病原菌が入り、貝等の病気を起こすケースが多く発生し、海水のろ過に多くの費用がかかるため病気を食い止める事ができない事や夏場の高水温時には、水槽内の温度上昇により蓄養殖対象貝類が餌を摂取せず成長が止り病死するという課題がある。
【0006】
ポリ篭の様な容量50L位の物を海中に吊るしての蓄養殖では清掃時に対象物に傷を付けるし、規模的に大量生産が難しく経済的でないという課題がある。
【0007】
海面、陸上施設共沿岸水の影響を受けやすく、大雨で塩分濃度が下がり、大量死させるといった問題もあり、これら一連のアワビに対する環境問題は最終的にはアワビの成長を遅らせると言う最大の課題がある。
【0008】
従来の海面施設設置海域の蓄養殖漁場は砂地であり、海底で養殖した場合アワビ等の貝類が砂で窒息死するので海底では飼えなかったし、海底が岩礁地帯は網が破網するので蓄養殖海域としては利用されないという漁場の高度活用観点からの課題もある。
【0009】
特許文献1は金網カゴを使った魚貝類養殖方法で、特徴として人工的に海底を作った構造で、本発明と類似性は無い、設置海域は湾内に限定され、実用化は無理ではないでしょうか。
【0010】
本発明は、従来のアワビ等貝類の蓄養殖事業がエネルギー消費型の陸上施設で、コスト面で厳しい状況である現状を鑑み、貝類にとって最も住みよい環境である海で低コストの蓄養殖施設とその蓄養殖方法を提供する事で、これらの課題を解決する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決する為に大きく別けて5つのテーマがある、1)陸上施設はコスト高 2)陸上施設は水質が良くなく、病原菌が入りやすい、 3)アワビ養殖は接着面を多く必要とするので接着面を多くする工夫が要る、 4)アワビは高水温を嫌い、暗い所で住み、人の手が触れる事を嫌うので極力触れないでの養殖 5)天然のアワビが住む岩礁地帯はアワビにとって最も環境が良いので、養殖場として未利用の岩礁地帯も今後は高度活用の観点から考える必要もあり以上の事からタイヤを組み合わせて製作した蓄養殖施設を使う事がこれらの条件に適している。
【0012】
タイヤを組み合わせて製作した蓄養殖施設を浮力用タイヤ及び重力調整用タイヤを連結する事で海面もしくは海底又は岩礁地帯でもアワビ等の蓄養殖事業が可能となり蓄養殖事業のコストダウンと歩止り向上を可能にする。
【発明の効果】
【0013】
今回の発明の効果は浅海の砂地はもとより、今まで利用されてなかった浅海の岩礁地帯の海域がタイヤの弾力性と海水に対する耐久性及び強度を活用する事でアワビ等の養殖場として利用できると言う栽培漁業の可能性が広がった。
【0014】
近年、沿岸水域や蓄養殖海域の水質が赤潮や富栄養化等により、病原菌が多く見られるようになり、養殖業者は急激に減少しているが、今回の発明によりアワビ等の蓄養殖事業に参入する養殖業者が増え、活性化が期待される。
【0015】
アワビは移し変え時に傷を付ける恐れがあり、注意を要するが、今回の発明では、成長に伴ってタイヤを足していく構造のなっている事でアワビ等の蓄養殖物に触れる事が無く、ストレスや傷を与えないという効果がある。
【0016】
タイヤは古タイヤを使えば、必要な部材はボルト等少量で他の付属部品を入れても施設費が安価である利点や産業廃棄物の有効利用に繋がり、環境問題や資源問題に寄与出来、経営面でも大きなメリットである。
【0017】
魚類養殖は容積に対しxkgの収容密度と表すが甲殻貝類は接地面積により収容量が決まる、タイヤの集合体の形状は接地面積が多くかつ暗い構造になっており、養殖密度でいえば通常施設に比べの4〜5倍の収容量となり経済性が高い。
【0018】
暖かい県のアワビ陸上施設での養殖実験によれば、気温の低い季節であれば、月3mm程度の成長が見込めるが、6〜9月の海水温が高い時には、全く成長しないとの報告もある、施設がコンパクトで尚且つ丈夫なため、施設移動と浮沈が容易であり、荒天・高水温時にはより深い海域への移動も可能で、海底での蓄養殖によりアワビ等貝類の適水温を求める結果、好成績に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
アワビ等蓄養殖施設はタイヤ1を使い、タイヤ1には、タイヤ連結穴2が等間隔で必要数タイヤ側面8両側に開いている、給餌口3はタイヤ接地面9も上部に付いている。
【0020】
他に同蓄養殖施設の部材として錘用タイヤ5がある、これはタイヤを横に置いて、その内側の丸くなった部分にコンクリートを流し込み固めてある、錘用タイヤ5のコンクリートの詰まってない反対側のタイヤ側面8には同蓄養殖施設本体のタイヤ1の接地面9とボルトで連結されるようなっており、錘用タイヤ連結穴11が必要数開いている、本体を形成するタイヤ1にも必要に応じて下部に錘用タイヤ連結穴11が開いているタイヤ1があるが、これの数は錘用タイヤ5の上に本体のタイヤ1は4本並ぶ所から、夫々の条件により数本に1本開いていればよい。
【0021】
他に等蓄養殖施設の部材として浮力及びクッション用タイヤ6がある、これは、本体タイヤ1の両側のタイヤ接地面9に対し浮力及びクッション用タイヤ6を連結するようになっており、これも地形その他条件を加味して必要数量準備する、浮力用として利用する時は浮力及びクッション用タイヤ6にフロート14を結わえる。
【0022】
他に蓄養殖施設の部材として海底の地形に合わせタイヤ3角切り10を繋いで岩場の地形に合わす事で安定性を高め、本体タイヤ1同士の間に必要数準備して置けばよい、こうする事で岩礁地帯での蓄養殖が可能になる。
【0023】
他に等蓄養殖施設の部材として本体タイヤ1の両サイドには網目状の蓋網4が必要で、これによりアワビの逃亡を防ぐ仕組みである、この数は両サイドに1枚ずつで、タイヤ連結穴2にボルト止めとする。
【0024】
本体タイヤ1の接地面9は小穴7が必要数開いており、海水の流入口と餌滓が溜まらない様になっている、上方部分は穴を開けない事により、アワビ等貝類が暗い中で餌を取る習性があり、常に暗い状態にして置く事で、成長が早くなるメリットがある。
【0025】
タイヤ1の上部部分には開閉可能な餌の給餌口3が付いているが実施段階ではタイヤ1の4〜5個毎でも良い。これはアワビの餌が海草で適度の大きさに切った海草をアワビの食性に合わせ夕刻時に本体タイヤ1を海面まで浮上させて給餌口3から入れておくがアワビは夜の内に移動して食べるので全てのタイヤに給餌口は必要でない。
【0026】
タイヤ1の下部部分にはタイヤ内にコンクリート13を流し込んで作った重力調整用の錘用タイヤ5が必要数ボルトで連結される事でタイヤ1と海底と隙間ができることで、海底が砂地の場合に特に効果を発揮する。
【0027】
タイヤ1の接地面9には浮力及びクッション用タイヤ6が必要数連結される事で、施設設置海域を海面若しくは海底と自由に選べし、海底が岩礁地帯では特にクッションとしての役割と施設の安定性に寄与する仕組みになっている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態アワビ類蓄養殖施設の斜視図。
【図2】本実施形態アワビ類蓄養殖施設単体図。
【図3】本実施形態アワビ類蓄養殖施設の側面図(砂地)。
【図4】本実施形態アワビ類蓄養殖施設の側面図(岩礁地帯)。
【図5】本実施形態アワビ類蓄養殖施設の展開図(海面上)。
【図6】本実施形態アワビ類蓄養殖施設の錘用タイヤの単体図。
【図7】本実施形態アワビ類蓄養殖施設の浮力及びクッション用タイヤの単体図。
【符号の説明】
【0029】
1 タイヤ
2 タイヤ連結穴
3 給餌口
4 蓋網
5 錘用タイヤ
6 浮力及びクッション用タイヤ
7 小穴
8 タイヤ側面
9 タイヤ接地面
10 タイヤ3角切れ
11 錘用タイヤ連結穴
12 浮力及びクッション用タイヤ連結穴
13 コンクリート
14 フロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車・トラック等のタイヤを使いタイヤ側面部分両側に必要数対称線上同間隔で穴を開け側面同士を繋ぎ、養殖個数により必要数量分をボルトで繋ぎ、その両端はアワビの逃亡を防げるように網で蓋をした形となっている、タイヤの接地面下方にあたる部分には海水の出入りと残渣が溜まらないようする為の穴が必要数空いている、又、同接地面上方部分は必要な広さにタイヤを切り取り、再度それを餌の給餌口用の蓋として使用し、これらタイヤをアワビの成長や出荷等に合わせ海上等でボルトの脱着により自由に蓄養殖施設の規模を増減出来る仕組みになっておりタイヤその物が養殖施設となる事を特徴とするアワビ類蓄養殖施設。
【請求項2】
請求項1記載のタイヤを必要数組み合わせて製作した蓄養殖施設で3角形に切ったタイヤを必要数本体タイヤに挟み海底の形状に合わることで岩場の海底での蓄養殖を可能とする事を特徴としたアワビ類蓄養殖施設。
【請求項3】
請求項1記載の本体両サイドに必要数脱着容易なボルト止めでタイヤを付けることで養殖施設が岩礁に当りそのショックで貝が剥れ、又、ストレスを起こす事を防ぐ為のクッションとしての役目を高め、及び施設を浮かして蓄養殖する時や蓄養殖海域を変更する場合、浮上し曳航する必要があり、その時のフロートを括る為の役目を成すタイヤとしての必要性を特徴としたアワビ類蓄養殖施設。
【請求項4】
必要数ボルト等で側面同士を繋いだ本体施設タイヤの接地面下部に、タイヤ内側下段をコンクリート詰めた錘用タイヤを脱着容易なボルト止めで取付ける事で沈下力を増し同錘用タイヤの脱着により、容易に天候、水温による必要な水域を選べる事を特徴としたアワビ類蓄養殖方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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