タイヤの処理方法及びタイヤ処理装置
【課題】熱可塑性材料と金属材料を含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と金属材料とに簡単に分別可能とするタイヤの処理方法を提供すること。
【解決手段】熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤ10の、金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化させる第1の工程と、第1の工程により溶融または軟化した熱可塑性材料と金属材料とを分別する第2の工程と、をタイヤの処理方法が有すること。
【解決手段】熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤ10の、金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化させる第1の工程と、第1の工程により溶融または軟化した熱可塑性材料と金属材料とを分別する第2の工程と、をタイヤの処理方法が有すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの処理方法及びタイヤ処理装置、特には、熱可塑性材料と金属材料を含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と金属材料とに簡単に分別可能とするタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に用いられる空気入りタイヤとして、タイヤの骨格部分をゴムに代えて熱可塑性材料で形成した空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。タイヤの骨格部分を熱可塑性材料で形成することで、加硫ゴム製の従来タイヤ対比で製造が容易になる可能性がある。
【0003】
従来のゴム製の空気入りタイヤを廃棄処分する場合、廃タイヤをゴムと補強材(ベルト、ビード、プライ等)に分別することは困難で、手間とコストがかかり、リサイクル上で問題となる場合があった。従来のゴムタイヤの処理としては、例えば特許文献2に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【特許文献2】特開平11−114876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性材料は加硫ゴムとは違ってリサイクルし易く、用途も多い。そこで、熱可塑性材料と金属材料とを含んで形成された空気入りタイヤに関しても、熱可塑性材料と金属材料とに分別する方法が望まれるが、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成された空気入りタイヤに関しては、熱可塑性材料と金属材料とを簡単に分別する処理方法及び処理装置が従来無かった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と金属材料とに簡単に分別可能とするタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のタイヤの処理方法は、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤの、前記金属材料を昇温させて該金属材料周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化させる第1の工程と、前記第1の工程により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する第2の工程と、を有する。
【0008】
請求項1に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、タイヤを構成している金属材料が昇温されて、該金属材料周辺の熱可塑性材料が溶融または軟化状態となる。
そして、第2の工程では、第1の工程により溶融または軟化した熱可塑性材料と、金属材料とが分別される。
ここで、第1の工程で金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させるので、例えば、金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させないものと比べて、熱可塑性材料と金属材料とを簡単に分離することができる。
【0009】
また、第1の工程では、金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化状態にするため、例えば、金属材料周辺の熱可塑性材料を熱風や熱源からの熱放射などで加熱して溶融又は軟化状態にするものと比べて、金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化させるために必要とするエネルギーを低く抑えられる。
【0010】
なお、ここでいう「金属材料を昇温させる」とは、金属材料の温度を上昇させることである。
また、ここでいう「タイヤ」とは、タイヤを複数に分断したタイヤ構成部材も含むものである。なお、上記タイヤ構成部材は、熱可塑性材料と非熱可塑性材料とを含んで構成されるものを指す。
【0011】
請求項2に記載のタイヤの処理方法は、請求項1に記載のタイヤの処理方法において、前記第1の工程では、前記金属材料に電流を流して該金属材料を昇温させる。
【0012】
請求項2に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、金属材料に電流を流して該金属材料を昇温させることから、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱するものと比べて、金属材料を急速に昇温することができる。なお、金属材料に電流を流した場合には、該金属材料は自己の電気抵抗により発熱する。
【0013】
請求項3に記載のタイヤの処理方法は、請求項1または請求項2に記載のタイヤの処理方法において、前記第1の工程では、電磁誘導により前記金属材料を昇温させる。
【0014】
請求項3に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、電磁誘導により金属材料に渦電流を流して該金属材料を昇温させることから、例えば、金属材料が熱可塑性材料中に埋設されていても、外部から非接触で金属材料のみを昇温させることができる。
【0015】
請求項4に記載のタイヤの処理方法は、請求項1に記載のタイヤの処理方法において、前記第1の工程では、前記金属材料を加熱して該金属材料を昇温させる。
【0016】
請求項4に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、金属材料を加熱して該金属材料を昇温させることから、金属材料の温度制御をしやすい。
なお、ここでいう「金属材料を加熱する」は、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱することを指す。
【0017】
請求項5に記載のタイヤの処理方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤの処理方法において、前記タイヤは、一方のビード部から他方のビード部に跨るタイヤ骨格部分が前記熱可塑性材料で形成されると共に、前記タイヤ骨格部分の外周部分には前記金属材料で構成された補強コードの少なくとも一部が埋設され、前記第1の工程では、前記補強コードを昇温させて該補強コード周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化状態にし、前記第2の工程では、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出す。
【0018】
請求項5に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、補強コードが昇温されて、該補強コード周辺の熱可塑性材料が溶融または軟化状態となる。
そして、第2の工程では、第1の工程により溶融または軟化した熱可塑性材料から補強コードが引き出される。これにより、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部分と金属材料で構成された補強コードとを簡単に分離することができる。
【0019】
請求項6に記載のタイヤの処理方法は、請求項5に記載のタイヤの処理方法において、前記補強コードは、前記タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に配設され、前記第2の工程では、前記タイヤを回転させながら、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出しながら巻き取る。
【0020】
請求項6に記載のタイヤの処理方法によれば、第2の工程では、タイヤを回転させながら溶融または軟化した熱可塑性材料から補強コードが引き出されながら巻き取られる。補強コードは、タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に配設されているので、効率的に補強コードを巻き取ることができる。
【0021】
請求項7に記載のタイヤ処理装置は、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤを保持する保持部と、前記金属材料周辺の前記熱可塑性材料が溶融または軟化する温度まで前記金属材料を昇温可能な昇温部と、前記金属材料を保持し、前記保持部に対して相対移動して前記昇温部により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する分別部と、を有する。
【0022】
請求項7に記載のタイヤ処理装置によれば、保持部が、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されたタイヤを保持する。
次に、昇温部が、金属材料周辺の熱可塑性材料が溶融または軟化する温度まで金属材料を昇温させる。
そして、分別部が金属材料を保持し、保持部に対して相対移動して昇温部により溶融または軟化した熱可塑性材料と金属材料とを分別する。
【0023】
ここで、上記のように、昇温部で金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させるので、例えば、金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させないものと比べて、熱可塑性材料と金属材料を簡単に分離することができる。
【0024】
請求項8に記載のタイヤ処理装置は、請求項7に記載のタイヤ処理装置において、前記昇温部は、電磁誘導で前記金属材料を昇温させる電磁誘導加熱装置である。
【0025】
請求項8に記載のタイヤ処理装置によれば、昇温部が電磁誘導加熱装置であることから、電磁誘導により金属材料に渦電流を流して該金属材料を昇温させることができるため、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱する装置と比べて、金属材料を急速に昇温することができる。
また、昇温部が電磁誘導加熱装置であることから、例えば、金属材料が熱可塑性材料中に埋設されていても、外部から非接触で金属材料のみを昇温させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明のタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置によれば、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されたタイヤを熱可塑性材料と金属材料とに簡単に分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤ処理装置の斜視図である。
【図2】(A)タイヤ保持装置のタイヤ保持部を最小径とした状態を示す斜視図であり、(B)タイヤ保持装置のタイヤ保持部を最大径とした状態を示す斜視図である。
【図3】タイヤをタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である。
【図4】トレッドを剥離したタイヤをタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である
【図5】電磁誘導加熱装置付近の部分断面拡大斜視図である。
【図6】電磁誘導加熱装置のコイルがタイヤ骨格部材の外周部に配置された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図7】電磁誘導装置のコイルからの磁場による電磁誘導により、補強コードが昇温された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図8】補強コード周辺の溶融した熱可塑性材料から補強コードが取り出される動作を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図9】電磁誘導加熱装置のコイルがタイヤ骨格部材のビード部外周に配置された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図10】電磁誘導加熱装置のコイルからの磁場による電磁誘導により、ビードコアが昇温された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図11】ビードコア周辺の溶融した熱可塑性材料から補強コードが取り出される動作を示すタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置について説明するが、まず、このタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置において処理対象となっているタイヤ10について説明する。
【0029】
(タイヤ)
図3には、タイヤの骨格部分を熱可塑性材料で構成したタイヤ10が示されている。本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
【0030】
タイヤ10は、図示しないリムのビードシート部及びリムフランジに接触する1対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16を含んで構成される環状のタイヤ骨格部材17を有している。なお、このタイヤ骨格部材17が、本発明のタイヤ骨格部分に相当する。
【0031】
本実施形態のタイヤ骨格部材17は、熱可塑性材料で形成されている。なお、タイヤ骨格部材17は、各部位(ビード部12、サイド部14、クラウン部16)にそれぞれ異なる特徴を有する熱可塑性材料を用いてもよい。
【0032】
熱可塑性材料としては、ゴム様の弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いてもよい。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0034】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
【0035】
なお、熱可塑性材料は、上述した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー以外のものであってもよい。
【0036】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードで構成された円環状のビードコア18が埋設されている。このビードコア18は、本発明の金属材料で構成された金属部材の一例である。
なお、本実施形態では、タイヤ10のビードコア18がスチールコードで構成されているが、例えば、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで構成されていてもよく、また、ビードコア自体が省略されていてもよい。
【0037】
図3に示すように、本実施形態のタイヤ10は、ビード部12のリムとの接触部分(ビードシートと接触する部分及びリムフランジと接触する部分)に弾性体の一例としてのゴムで形成されたシール層24が設けられている。なお、リムフランジと接触する部分のシール層24は、タイヤ骨格部材17とリムとの間のシール性(気密性)が確保できていれば、省略されてもよい。
【0038】
タイヤ骨格部材17のクラウン部16には、金属繊維のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成された金属コード26がタイヤ周方向に螺旋状に巻回されかつ金属コード26全体が埋設されている。なお、金属コード26は、クラウン部16に対して一部分が埋設される構成でもよい。この金属コード26によりクラウン部16の外周部にクラウン部補強層28が形成され、クラウン部16のタイヤ周方向剛性が補強されている。なお、上記クラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。なお、本実施形態の金属コード26は、本発明の金属材料で構成された金属部材である補強コードの一例である。
【0039】
クラウン部16の外周側には、クッションゴム29、トレッドゴム30の順でゴム層が配設されている。このクッションゴム29は、タイヤ10の走行時にトレッドゴム30が受ける路面からの入力を緩衝して乗り心地性を向上させるものであり、弾性率がトレッドゴム30よりも低く設定されている。なお、タイヤ10は、クッションゴム29を省略してトレッドゴム30を直接クラウン部16の外周側に配設する構成としてもよい。
なお、トレッドゴム30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝30Aを含むトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
【0040】
(タイヤ処理装置)
次に、本実施形態のタイヤ10の処理を行うタイヤ処理装置32について説明する。
タイヤ処理装置32は、タイヤ10を保持するためのタイヤ保持装置33を有している。なお、タイヤ保持装置33は、本発明の保持部の一例である。タイヤ保持装置33は、床面に接地された台座34の上部に、水平に配置された軸36が回転可能に支持されている。なお、この軸36は、図示しないモータにより回転されるようになっている。
【0041】
図1、図2に示すように、軸36の端部側には、タイヤ保持部40が設けられている。タイヤ保持部40は、軸36に固定されたシリンダブロック38を備え、シリンダブロック38には径方向外側に延びる複数のシリンダロッド41が周方向に等間隔に設けられている。
【0042】
シリンダロッド41の先端には、外面がタイヤ内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面42Aを有するタイヤ保持片42が設けられている。
図2(A)は、シリンダロッド41の突出量が最も小さい状態(タイヤ保持部40が最小径の状態)を示しており、図2(B)はシリンダロッド41の突出量が最も大きい状態(タイヤ保持部40が最大径の状態)を示している。各シリンダロッド41は連動して同一方向に同一量移動可能となっている。
【0043】
図1に示すように、タイヤ保持装置33の近傍には、金属材料を電磁誘導により昇温させるための電磁誘導加熱装置44が配置されている。図6に示すように、電磁誘導加熱装置44は、金属製のコイル45と、このコイル45を内蔵し不導体(例えば、絶縁性を有する樹脂など)で形成されたケース46と、コイル45に交流電流を供給してコイル45周辺に交流磁場を発生させる交流電源47とを有している。なお、本実施形態のコイル45は中心軸が軸36と平行方向となるようにケース46に配設されている。また、交流電源47は後述する支柱48に取付けられているが、本発明はこの構成に限定されず、交流電源47を他の場所に設置しても構わない。
【0044】
図1に示すように、台座34の上部には、支柱48が取り付けられており、この支柱48の側面に、上下の位置を変更可能に、図示しないボルト等でシリンダ50が取り付けられている。シリンダ50は、軸36と平行に配置されており、シリンダロッド50Aの先端にケース46が取り付けられている。
【0045】
また、タイヤ処理装置32は、コード巻取装置56を有している。コード巻取装置56は、金属コード26を巻き付けるリール58、リール58を回転させるモータ60を有している。なお、タイヤ処理装置32は、本発明の分別部の一例である。
【0046】
(タイヤの処理工程)
(1) まず、径を縮小したタイヤ保持部40(図2(A)参照)の外周側に、タイヤ10を配置し、その後、タイヤ保持部40の径を拡大して、タイヤ10の内周面に複数のタイヤ保持片42を接触させて、複数のタイヤ保持片42によってタイヤ10を内側から保持する(図1参照)。
【0047】
(2) 次に、一般の更生タイヤと同様にして、カッタ、バフ等を用いてタイヤ10からトレッドゴム30及びクッションゴム29を除去する。また、トレッドゴム30と同様にして、タイヤ10からシール層24を除去する。この工程により、タイヤ10からトレッドゴム30、クッションゴム29、及びシール層24が除去されて、図4に示すタイヤ骨格部材17が残る。
【0048】
(3) 次に、図5、図6に示すように、コイル45をタイヤ骨格部材17のクラウン部16の上方、具体的には、金属コード26の上方に移動する。そして、コイル45に交流電源47から交流電流を供給してコイル45周辺に交流磁場を発生させる。この交流磁場により金属コード26には起電力が生じて渦電流が流れ、金属コード26自身の電気抵抗により、該金属コード26が発熱する。すなわち、電磁誘導により金属コード26が昇温される。
【0049】
ここで、電磁誘導加熱装置44を用いることにより、金属コード26のみが電磁誘導によって昇温されるため、効率的に金属コード26を昇温させることができる。特に、電磁誘導により金属コード26に電流を流して該金属コード26を昇温させることから、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱するものと比べて、金属材料を急速に昇温することができる。
また、電磁誘導加熱装置44は、金属コード26がタイヤ骨格部材17中に完全に埋設されていても、電磁誘導により外部から非接触で金属コード26のみを昇温させることができる。
【0050】
なお、タイヤ骨格部材17を回転させながら、金属コード26を電磁誘導で昇温させても、タイヤ骨格部材17を静止させた状態で金属コード26を電磁誘導で昇温させてもよい。
【0051】
そして、上記のように、金属コード26が電磁誘導で昇温されると、この金属コード26周辺の熱可塑性材料が溶融状態になる(図7参照)。なお、熱可塑性材料を溶融させるためには、当然ながら、溶融させる部分の温度を熱可塑性材料の融点以上に加熱する必要がある。
その後、クラウン部16の溶融した部分から螺旋状に埋設されていた金属コード26の端部を取り出し、該端部をリール58に係止する。
【0052】
(4) そして、図1、図5に示すように、タイヤ10を矢印A方向に回転させながら、リール58を回転させることで、図8に示すように、溶融した部分から金属コード26が順次引き出されてリール58に順次巻き取られる(本発明の第2の工程)。
このとき、コイル45は、常に金属コード26の上方で金属コード26を電磁誘導で昇温できるように移動する。
【0053】
なお、クラウン部16に螺旋状に埋設された金属コード26の一端部付近の上方にケース46を静止させた状態で金属コード26を電磁誘導で昇温させて、金属コード26の他端部から該金属コード26をリール58に順次巻き取る構成としてもよい。
【0054】
(5) 次に、図9に示すように、ビード部12のタイヤ幅方向外側の表面の一部をタイヤ周方向に沿って、例えば、バフ、リュータ、サンドペーパーなどを用いて削り落とす。そして、電磁誘導加熱装置44のケース46の向きをビード部12の削り落とされた部分に向け、電磁誘導でビードコア18を昇温させ、該ビードコア18周辺の熱可塑性材料を溶融状態にする(図10参照)。その後、図11に示すように、溶融した部分からビードコア18を取り出す。
このようにして、熱可塑性材料から金属材料を全て取り除いたタイヤ骨格部材17は、再び溶融してリサイクルすることが可能となる。
【0055】
このようにして、本実施形態のタイヤの処理方法では、電磁誘導により金属コード26を昇温させて、金属コード26周辺の熱可塑性材料を加熱するため、例えば、金属コード26周辺の熱可塑性材料を熱風や熱源からの熱放射などで加熱して溶融又は軟化状態にするものと比べて、金属コード26を昇温させた該金属コード26周辺の熱可塑性材料を加熱するのに必要となるエネルギーを低く抑えられる。
【0056】
また、金属コード26周辺の熱可塑性材料を溶融させた状態で、熱可塑性材料の溶融した部分から金属コード26を引き出すため、タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料と金属材料で構成される金属コード26とを、簡単に分離することができる。
【0057】
上記実施形態では、金属コード26を取り出す際に熱可塑性材料を溶融させたが、金属コード26を取り出す際に大きな力を必要としなければ、場合によっては金属コード26を取り出す部分の熱可塑性材料は、軟化した状態であってもよい。
【0058】
(その他の実施形態)
第1実施形態のタイヤの処理方法では、金属コード26を電磁誘導で昇温させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、トレッドゴム30及びクッションゴム29が除去されたタイヤ骨格部材17の表面を一部削り、例えば、金属コード26の一端部と他端部を露出させて、一端部と他端部を交流電源47に接続して直接電流を流す構成としてもよい。この場合には、電磁誘導を用いずに、直接金属コード26に交流電流を印加できるため、エネルギーの損失が少ない。また、装置を簡略化できる。
なお、タイヤ骨格部材17の内面に金属コード26の両端側にそれぞれ接続された一対の金属片を配設したタイヤを製造し、このタイヤが寿命となった際に、上記一対の金属片を介して直接交流電流を金属コード26に流して該金属コード26を昇温させてもよい。このようなタイヤの場合には、タイヤ骨格部材17から金属コード26を露出させる必要がないため、処理作業が簡単になる。
【0059】
第1実施形態では、金属コード26に電流を流して該金属コード26を昇温させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、金属コードのみを熱伝導などで加熱し該金属コード26周辺の熱可塑性材料を溶融させる構成としてもよい。具体的には、タイヤ10からトレッドゴム30及びクッションゴム29を除去した後で、タイヤ骨格部材17から金属コード26の一端部を取り出し、取り出した部分の金属コード26を例えば、熱風、熱放射、熱板などで加熱し、金属コード26を一端部側からコード巻取装置56で巻き取る構成としてもよい。
【0060】
その他の実施形態のタイヤの処理方法では、タイヤ10を複数に分断(例えば、タイヤ径方向に複数に分断)してから、金属コード26及びビードコア18を昇温してもよい。なお、この昇温は、電磁誘導を用いても、交流電流を直接印加しても、露出した金属コード及びビードコア18を熱伝導で加熱してもよい。
【0061】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 タイヤ
12 ビード部
17 タイヤ骨格部材(タイヤ骨格部分)
18 ビードコア(金属材料)
26 金属コード(補強コード(金属材料))
32 タイヤ処理装置
33 タイヤ保持装置(保持部)
44 電磁誘導加熱装置(昇温部)
56 コード巻取装置(分別部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの処理方法及びタイヤ処理装置、特には、熱可塑性材料と金属材料を含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と金属材料とに簡単に分別可能とするタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に用いられる空気入りタイヤとして、タイヤの骨格部分をゴムに代えて熱可塑性材料で形成した空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。タイヤの骨格部分を熱可塑性材料で形成することで、加硫ゴム製の従来タイヤ対比で製造が容易になる可能性がある。
【0003】
従来のゴム製の空気入りタイヤを廃棄処分する場合、廃タイヤをゴムと補強材(ベルト、ビード、プライ等)に分別することは困難で、手間とコストがかかり、リサイクル上で問題となる場合があった。従来のゴムタイヤの処理としては、例えば特許文献2に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【特許文献2】特開平11−114876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性材料は加硫ゴムとは違ってリサイクルし易く、用途も多い。そこで、熱可塑性材料と金属材料とを含んで形成された空気入りタイヤに関しても、熱可塑性材料と金属材料とに分別する方法が望まれるが、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成された空気入りタイヤに関しては、熱可塑性材料と金属材料とを簡単に分別する処理方法及び処理装置が従来無かった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と金属材料とに簡単に分別可能とするタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のタイヤの処理方法は、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤの、前記金属材料を昇温させて該金属材料周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化させる第1の工程と、前記第1の工程により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する第2の工程と、を有する。
【0008】
請求項1に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、タイヤを構成している金属材料が昇温されて、該金属材料周辺の熱可塑性材料が溶融または軟化状態となる。
そして、第2の工程では、第1の工程により溶融または軟化した熱可塑性材料と、金属材料とが分別される。
ここで、第1の工程で金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させるので、例えば、金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させないものと比べて、熱可塑性材料と金属材料とを簡単に分離することができる。
【0009】
また、第1の工程では、金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化状態にするため、例えば、金属材料周辺の熱可塑性材料を熱風や熱源からの熱放射などで加熱して溶融又は軟化状態にするものと比べて、金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化させるために必要とするエネルギーを低く抑えられる。
【0010】
なお、ここでいう「金属材料を昇温させる」とは、金属材料の温度を上昇させることである。
また、ここでいう「タイヤ」とは、タイヤを複数に分断したタイヤ構成部材も含むものである。なお、上記タイヤ構成部材は、熱可塑性材料と非熱可塑性材料とを含んで構成されるものを指す。
【0011】
請求項2に記載のタイヤの処理方法は、請求項1に記載のタイヤの処理方法において、前記第1の工程では、前記金属材料に電流を流して該金属材料を昇温させる。
【0012】
請求項2に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、金属材料に電流を流して該金属材料を昇温させることから、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱するものと比べて、金属材料を急速に昇温することができる。なお、金属材料に電流を流した場合には、該金属材料は自己の電気抵抗により発熱する。
【0013】
請求項3に記載のタイヤの処理方法は、請求項1または請求項2に記載のタイヤの処理方法において、前記第1の工程では、電磁誘導により前記金属材料を昇温させる。
【0014】
請求項3に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、電磁誘導により金属材料に渦電流を流して該金属材料を昇温させることから、例えば、金属材料が熱可塑性材料中に埋設されていても、外部から非接触で金属材料のみを昇温させることができる。
【0015】
請求項4に記載のタイヤの処理方法は、請求項1に記載のタイヤの処理方法において、前記第1の工程では、前記金属材料を加熱して該金属材料を昇温させる。
【0016】
請求項4に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、金属材料を加熱して該金属材料を昇温させることから、金属材料の温度制御をしやすい。
なお、ここでいう「金属材料を加熱する」は、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱することを指す。
【0017】
請求項5に記載のタイヤの処理方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤの処理方法において、前記タイヤは、一方のビード部から他方のビード部に跨るタイヤ骨格部分が前記熱可塑性材料で形成されると共に、前記タイヤ骨格部分の外周部分には前記金属材料で構成された補強コードの少なくとも一部が埋設され、前記第1の工程では、前記補強コードを昇温させて該補強コード周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化状態にし、前記第2の工程では、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出す。
【0018】
請求項5に記載のタイヤの処理方法によれば、第1の工程では、補強コードが昇温されて、該補強コード周辺の熱可塑性材料が溶融または軟化状態となる。
そして、第2の工程では、第1の工程により溶融または軟化した熱可塑性材料から補強コードが引き出される。これにより、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部分と金属材料で構成された補強コードとを簡単に分離することができる。
【0019】
請求項6に記載のタイヤの処理方法は、請求項5に記載のタイヤの処理方法において、前記補強コードは、前記タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に配設され、前記第2の工程では、前記タイヤを回転させながら、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出しながら巻き取る。
【0020】
請求項6に記載のタイヤの処理方法によれば、第2の工程では、タイヤを回転させながら溶融または軟化した熱可塑性材料から補強コードが引き出されながら巻き取られる。補強コードは、タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に配設されているので、効率的に補強コードを巻き取ることができる。
【0021】
請求項7に記載のタイヤ処理装置は、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤを保持する保持部と、前記金属材料周辺の前記熱可塑性材料が溶融または軟化する温度まで前記金属材料を昇温可能な昇温部と、前記金属材料を保持し、前記保持部に対して相対移動して前記昇温部により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する分別部と、を有する。
【0022】
請求項7に記載のタイヤ処理装置によれば、保持部が、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されたタイヤを保持する。
次に、昇温部が、金属材料周辺の熱可塑性材料が溶融または軟化する温度まで金属材料を昇温させる。
そして、分別部が金属材料を保持し、保持部に対して相対移動して昇温部により溶融または軟化した熱可塑性材料と金属材料とを分別する。
【0023】
ここで、上記のように、昇温部で金属材料を昇温させて該金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させるので、例えば、金属材料周辺の熱可塑性材料を溶融又は軟化させないものと比べて、熱可塑性材料と金属材料を簡単に分離することができる。
【0024】
請求項8に記載のタイヤ処理装置は、請求項7に記載のタイヤ処理装置において、前記昇温部は、電磁誘導で前記金属材料を昇温させる電磁誘導加熱装置である。
【0025】
請求項8に記載のタイヤ処理装置によれば、昇温部が電磁誘導加熱装置であることから、電磁誘導により金属材料に渦電流を流して該金属材料を昇温させることができるため、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱する装置と比べて、金属材料を急速に昇温することができる。
また、昇温部が電磁誘導加熱装置であることから、例えば、金属材料が熱可塑性材料中に埋設されていても、外部から非接触で金属材料のみを昇温させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明のタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置によれば、熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されたタイヤを熱可塑性材料と金属材料とに簡単に分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤ処理装置の斜視図である。
【図2】(A)タイヤ保持装置のタイヤ保持部を最小径とした状態を示す斜視図であり、(B)タイヤ保持装置のタイヤ保持部を最大径とした状態を示す斜視図である。
【図3】タイヤをタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である。
【図4】トレッドを剥離したタイヤをタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である
【図5】電磁誘導加熱装置付近の部分断面拡大斜視図である。
【図6】電磁誘導加熱装置のコイルがタイヤ骨格部材の外周部に配置された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図7】電磁誘導装置のコイルからの磁場による電磁誘導により、補強コードが昇温された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図8】補強コード周辺の溶融した熱可塑性材料から補強コードが取り出される動作を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図9】電磁誘導加熱装置のコイルがタイヤ骨格部材のビード部外周に配置された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図10】電磁誘導加熱装置のコイルからの磁場による電磁誘導により、ビードコアが昇温された状態を示すタイヤ幅方向断面図である。
【図11】ビードコア周辺の溶融した熱可塑性材料から補強コードが取り出される動作を示すタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置について説明するが、まず、このタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置において処理対象となっているタイヤ10について説明する。
【0029】
(タイヤ)
図3には、タイヤの骨格部分を熱可塑性材料で構成したタイヤ10が示されている。本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
【0030】
タイヤ10は、図示しないリムのビードシート部及びリムフランジに接触する1対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16を含んで構成される環状のタイヤ骨格部材17を有している。なお、このタイヤ骨格部材17が、本発明のタイヤ骨格部分に相当する。
【0031】
本実施形態のタイヤ骨格部材17は、熱可塑性材料で形成されている。なお、タイヤ骨格部材17は、各部位(ビード部12、サイド部14、クラウン部16)にそれぞれ異なる特徴を有する熱可塑性材料を用いてもよい。
【0032】
熱可塑性材料としては、ゴム様の弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いてもよい。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0034】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
【0035】
なお、熱可塑性材料は、上述した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー以外のものであってもよい。
【0036】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードで構成された円環状のビードコア18が埋設されている。このビードコア18は、本発明の金属材料で構成された金属部材の一例である。
なお、本実施形態では、タイヤ10のビードコア18がスチールコードで構成されているが、例えば、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで構成されていてもよく、また、ビードコア自体が省略されていてもよい。
【0037】
図3に示すように、本実施形態のタイヤ10は、ビード部12のリムとの接触部分(ビードシートと接触する部分及びリムフランジと接触する部分)に弾性体の一例としてのゴムで形成されたシール層24が設けられている。なお、リムフランジと接触する部分のシール層24は、タイヤ骨格部材17とリムとの間のシール性(気密性)が確保できていれば、省略されてもよい。
【0038】
タイヤ骨格部材17のクラウン部16には、金属繊維のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成された金属コード26がタイヤ周方向に螺旋状に巻回されかつ金属コード26全体が埋設されている。なお、金属コード26は、クラウン部16に対して一部分が埋設される構成でもよい。この金属コード26によりクラウン部16の外周部にクラウン部補強層28が形成され、クラウン部16のタイヤ周方向剛性が補強されている。なお、上記クラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。なお、本実施形態の金属コード26は、本発明の金属材料で構成された金属部材である補強コードの一例である。
【0039】
クラウン部16の外周側には、クッションゴム29、トレッドゴム30の順でゴム層が配設されている。このクッションゴム29は、タイヤ10の走行時にトレッドゴム30が受ける路面からの入力を緩衝して乗り心地性を向上させるものであり、弾性率がトレッドゴム30よりも低く設定されている。なお、タイヤ10は、クッションゴム29を省略してトレッドゴム30を直接クラウン部16の外周側に配設する構成としてもよい。
なお、トレッドゴム30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝30Aを含むトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
【0040】
(タイヤ処理装置)
次に、本実施形態のタイヤ10の処理を行うタイヤ処理装置32について説明する。
タイヤ処理装置32は、タイヤ10を保持するためのタイヤ保持装置33を有している。なお、タイヤ保持装置33は、本発明の保持部の一例である。タイヤ保持装置33は、床面に接地された台座34の上部に、水平に配置された軸36が回転可能に支持されている。なお、この軸36は、図示しないモータにより回転されるようになっている。
【0041】
図1、図2に示すように、軸36の端部側には、タイヤ保持部40が設けられている。タイヤ保持部40は、軸36に固定されたシリンダブロック38を備え、シリンダブロック38には径方向外側に延びる複数のシリンダロッド41が周方向に等間隔に設けられている。
【0042】
シリンダロッド41の先端には、外面がタイヤ内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面42Aを有するタイヤ保持片42が設けられている。
図2(A)は、シリンダロッド41の突出量が最も小さい状態(タイヤ保持部40が最小径の状態)を示しており、図2(B)はシリンダロッド41の突出量が最も大きい状態(タイヤ保持部40が最大径の状態)を示している。各シリンダロッド41は連動して同一方向に同一量移動可能となっている。
【0043】
図1に示すように、タイヤ保持装置33の近傍には、金属材料を電磁誘導により昇温させるための電磁誘導加熱装置44が配置されている。図6に示すように、電磁誘導加熱装置44は、金属製のコイル45と、このコイル45を内蔵し不導体(例えば、絶縁性を有する樹脂など)で形成されたケース46と、コイル45に交流電流を供給してコイル45周辺に交流磁場を発生させる交流電源47とを有している。なお、本実施形態のコイル45は中心軸が軸36と平行方向となるようにケース46に配設されている。また、交流電源47は後述する支柱48に取付けられているが、本発明はこの構成に限定されず、交流電源47を他の場所に設置しても構わない。
【0044】
図1に示すように、台座34の上部には、支柱48が取り付けられており、この支柱48の側面に、上下の位置を変更可能に、図示しないボルト等でシリンダ50が取り付けられている。シリンダ50は、軸36と平行に配置されており、シリンダロッド50Aの先端にケース46が取り付けられている。
【0045】
また、タイヤ処理装置32は、コード巻取装置56を有している。コード巻取装置56は、金属コード26を巻き付けるリール58、リール58を回転させるモータ60を有している。なお、タイヤ処理装置32は、本発明の分別部の一例である。
【0046】
(タイヤの処理工程)
(1) まず、径を縮小したタイヤ保持部40(図2(A)参照)の外周側に、タイヤ10を配置し、その後、タイヤ保持部40の径を拡大して、タイヤ10の内周面に複数のタイヤ保持片42を接触させて、複数のタイヤ保持片42によってタイヤ10を内側から保持する(図1参照)。
【0047】
(2) 次に、一般の更生タイヤと同様にして、カッタ、バフ等を用いてタイヤ10からトレッドゴム30及びクッションゴム29を除去する。また、トレッドゴム30と同様にして、タイヤ10からシール層24を除去する。この工程により、タイヤ10からトレッドゴム30、クッションゴム29、及びシール層24が除去されて、図4に示すタイヤ骨格部材17が残る。
【0048】
(3) 次に、図5、図6に示すように、コイル45をタイヤ骨格部材17のクラウン部16の上方、具体的には、金属コード26の上方に移動する。そして、コイル45に交流電源47から交流電流を供給してコイル45周辺に交流磁場を発生させる。この交流磁場により金属コード26には起電力が生じて渦電流が流れ、金属コード26自身の電気抵抗により、該金属コード26が発熱する。すなわち、電磁誘導により金属コード26が昇温される。
【0049】
ここで、電磁誘導加熱装置44を用いることにより、金属コード26のみが電磁誘導によって昇温されるため、効率的に金属コード26を昇温させることができる。特に、電磁誘導により金属コード26に電流を流して該金属コード26を昇温させることから、例えば、金属材料を熱伝導などで加熱するものと比べて、金属材料を急速に昇温することができる。
また、電磁誘導加熱装置44は、金属コード26がタイヤ骨格部材17中に完全に埋設されていても、電磁誘導により外部から非接触で金属コード26のみを昇温させることができる。
【0050】
なお、タイヤ骨格部材17を回転させながら、金属コード26を電磁誘導で昇温させても、タイヤ骨格部材17を静止させた状態で金属コード26を電磁誘導で昇温させてもよい。
【0051】
そして、上記のように、金属コード26が電磁誘導で昇温されると、この金属コード26周辺の熱可塑性材料が溶融状態になる(図7参照)。なお、熱可塑性材料を溶融させるためには、当然ながら、溶融させる部分の温度を熱可塑性材料の融点以上に加熱する必要がある。
その後、クラウン部16の溶融した部分から螺旋状に埋設されていた金属コード26の端部を取り出し、該端部をリール58に係止する。
【0052】
(4) そして、図1、図5に示すように、タイヤ10を矢印A方向に回転させながら、リール58を回転させることで、図8に示すように、溶融した部分から金属コード26が順次引き出されてリール58に順次巻き取られる(本発明の第2の工程)。
このとき、コイル45は、常に金属コード26の上方で金属コード26を電磁誘導で昇温できるように移動する。
【0053】
なお、クラウン部16に螺旋状に埋設された金属コード26の一端部付近の上方にケース46を静止させた状態で金属コード26を電磁誘導で昇温させて、金属コード26の他端部から該金属コード26をリール58に順次巻き取る構成としてもよい。
【0054】
(5) 次に、図9に示すように、ビード部12のタイヤ幅方向外側の表面の一部をタイヤ周方向に沿って、例えば、バフ、リュータ、サンドペーパーなどを用いて削り落とす。そして、電磁誘導加熱装置44のケース46の向きをビード部12の削り落とされた部分に向け、電磁誘導でビードコア18を昇温させ、該ビードコア18周辺の熱可塑性材料を溶融状態にする(図10参照)。その後、図11に示すように、溶融した部分からビードコア18を取り出す。
このようにして、熱可塑性材料から金属材料を全て取り除いたタイヤ骨格部材17は、再び溶融してリサイクルすることが可能となる。
【0055】
このようにして、本実施形態のタイヤの処理方法では、電磁誘導により金属コード26を昇温させて、金属コード26周辺の熱可塑性材料を加熱するため、例えば、金属コード26周辺の熱可塑性材料を熱風や熱源からの熱放射などで加熱して溶融又は軟化状態にするものと比べて、金属コード26を昇温させた該金属コード26周辺の熱可塑性材料を加熱するのに必要となるエネルギーを低く抑えられる。
【0056】
また、金属コード26周辺の熱可塑性材料を溶融させた状態で、熱可塑性材料の溶融した部分から金属コード26を引き出すため、タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料と金属材料で構成される金属コード26とを、簡単に分離することができる。
【0057】
上記実施形態では、金属コード26を取り出す際に熱可塑性材料を溶融させたが、金属コード26を取り出す際に大きな力を必要としなければ、場合によっては金属コード26を取り出す部分の熱可塑性材料は、軟化した状態であってもよい。
【0058】
(その他の実施形態)
第1実施形態のタイヤの処理方法では、金属コード26を電磁誘導で昇温させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、トレッドゴム30及びクッションゴム29が除去されたタイヤ骨格部材17の表面を一部削り、例えば、金属コード26の一端部と他端部を露出させて、一端部と他端部を交流電源47に接続して直接電流を流す構成としてもよい。この場合には、電磁誘導を用いずに、直接金属コード26に交流電流を印加できるため、エネルギーの損失が少ない。また、装置を簡略化できる。
なお、タイヤ骨格部材17の内面に金属コード26の両端側にそれぞれ接続された一対の金属片を配設したタイヤを製造し、このタイヤが寿命となった際に、上記一対の金属片を介して直接交流電流を金属コード26に流して該金属コード26を昇温させてもよい。このようなタイヤの場合には、タイヤ骨格部材17から金属コード26を露出させる必要がないため、処理作業が簡単になる。
【0059】
第1実施形態では、金属コード26に電流を流して該金属コード26を昇温させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、金属コードのみを熱伝導などで加熱し該金属コード26周辺の熱可塑性材料を溶融させる構成としてもよい。具体的には、タイヤ10からトレッドゴム30及びクッションゴム29を除去した後で、タイヤ骨格部材17から金属コード26の一端部を取り出し、取り出した部分の金属コード26を例えば、熱風、熱放射、熱板などで加熱し、金属コード26を一端部側からコード巻取装置56で巻き取る構成としてもよい。
【0060】
その他の実施形態のタイヤの処理方法では、タイヤ10を複数に分断(例えば、タイヤ径方向に複数に分断)してから、金属コード26及びビードコア18を昇温してもよい。なお、この昇温は、電磁誘導を用いても、交流電流を直接印加しても、露出した金属コード及びビードコア18を熱伝導で加熱してもよい。
【0061】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 タイヤ
12 ビード部
17 タイヤ骨格部材(タイヤ骨格部分)
18 ビードコア(金属材料)
26 金属コード(補強コード(金属材料))
32 タイヤ処理装置
33 タイヤ保持装置(保持部)
44 電磁誘導加熱装置(昇温部)
56 コード巻取装置(分別部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤの、前記金属材料を昇温させて該金属材料周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化させる第1の工程と、
前記第1の工程により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する第2の工程と、
を有するタイヤの処理方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、前記金属材料に電流を流して該金属材料を昇温させる請求項1に記載のタイヤの処理方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、電磁誘導により前記金属材料を昇温させる請求項1または請求項2に記載のタイヤの処理方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、前記金属材料を加熱して該金属材料を昇温させる請求項1に記載のタイヤの処理方法。
【請求項5】
前記タイヤは、一方のビード部から他方のビード部に跨るタイヤ骨格部分が前記熱可塑性材料で形成されると共に、前記タイヤ骨格部分の外周部分には前記金属材料で構成された補強コードの少なくとも一部が埋設され、
前記第1の工程では、前記補強コードを昇温させて該補強コード周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化状態にし、
前記第2の工程では、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出す、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤの処理方法。
【請求項6】
前記補強コードは、前記タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に配設され、
前記第2の工程では、前記タイヤを回転させながら、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出しながら巻き取る、請求項5に記載のタイヤの処理方法。
【請求項7】
熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤを保持する保持部と、
前記金属材料周辺の前記熱可塑性材料が溶融または軟化する温度まで前記金属材料を昇温可能な昇温部と、
前記金属材料を保持し、前記保持部に対して相対移動して前記昇温部により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する分別部と、
を有するタイヤ処理装置。
【請求項8】
前記昇温部は、電磁誘導で前記金属材料を昇温させる電磁誘導加熱装置である請求項7に記載のタイヤ処理装置。
【請求項1】
熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤの、前記金属材料を昇温させて該金属材料周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化させる第1の工程と、
前記第1の工程により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する第2の工程と、
を有するタイヤの処理方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、前記金属材料に電流を流して該金属材料を昇温させる請求項1に記載のタイヤの処理方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、電磁誘導により前記金属材料を昇温させる請求項1または請求項2に記載のタイヤの処理方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、前記金属材料を加熱して該金属材料を昇温させる請求項1に記載のタイヤの処理方法。
【請求項5】
前記タイヤは、一方のビード部から他方のビード部に跨るタイヤ骨格部分が前記熱可塑性材料で形成されると共に、前記タイヤ骨格部分の外周部分には前記金属材料で構成された補強コードの少なくとも一部が埋設され、
前記第1の工程では、前記補強コードを昇温させて該補強コード周辺の前記熱可塑性材料を溶融または軟化状態にし、
前記第2の工程では、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出す、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤの処理方法。
【請求項6】
前記補強コードは、前記タイヤ骨格部分の外周に螺旋状に配設され、
前記第2の工程では、前記タイヤを回転させながら、溶融または軟化した前記熱可塑性材料から前記補強コードを引き出しながら巻き取る、請求項5に記載のタイヤの処理方法。
【請求項7】
熱可塑性材料と金属材料とを含んで構成されるタイヤを保持する保持部と、
前記金属材料周辺の前記熱可塑性材料が溶融または軟化する温度まで前記金属材料を昇温可能な昇温部と、
前記金属材料を保持し、前記保持部に対して相対移動して前記昇温部により溶融または軟化した前記熱可塑性材料と前記金属材料とを分別する分別部と、
を有するタイヤ処理装置。
【請求項8】
前記昇温部は、電磁誘導で前記金属材料を昇温させる電磁誘導加熱装置である請求項7に記載のタイヤ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−14064(P2013−14064A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148117(P2011−148117)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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