タイヤトレッド中にボイドを維持する特徴部
本発明の特定の実施形態は、長さ、幅及び厚さを備えたトレッド本体を有するタイヤトレッドを含み、その厚みは、外面及び下面によって画定される。このようなトレッドは、トレッド本体の厚み中に設けられたボイドを更に有するのが良い。このようなトレッドは、ボイドとトレッド下面との間に延びる1つ又は2つ以上の部材を更に有するのが良い。本発明の他の実施形態は、このようなトレッドを有するタイヤ並びにこのようなトレッドを成形するためのモールドを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、タイヤトレッドの厚み中にボイドを有するタイヤトレッドに関し、特に、タイヤ成型及び/又は硬化作業中、ボイド中への材料の流れを制限すると共に/或いはタイヤ作動中におけるこのようなボイドに沿う亀裂発生及び/又は亀裂進展を減少させる特徴部を備えたトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野における通常の知識として、タイヤトレッドは、タイヤ性能を高めるための種々の成形トレッド要素及び特徴部を有する。また、当該技術分野における通常の知識として、これら成形トレッド要素及び特徴部を、タイヤ成型及び硬化作業中タイヤと同時に、又は例えばタイヤ更生(山掛け)作業時にタイヤ又はタイヤカーカスへのトレッドの張り付け前にトレッドモールドにより別個独立に形成できる。
【0003】
トレッド特徴部としては、各々がトレッドの厚み中にボイドを形成する溝及びサイプが挙げられるが、これらには限定されない。或る特定の状況では、トレッドボイドは、トレッド外面の下に維持され、或いは、換言すると、トレッドの新品状態において視界から実質的に隠されるようにトレッド外面の下に埋没状態(即ち、隠された又は埋め込まれた状態)で設けられる。このような場合、埋没状態の特徴部は、タイヤトレッドの摩耗段階においてタイヤ性能を高めるために追加のトレッドボイド及び/トラクションエッジを提供するよう設けられるのが良い。トレッドが例えばタイヤの更生のために予備成形される場合、埋没トレッドボイドをトレッドの下面に沿って又はこれを貫通して形成される場合があり、下面は、後でタイヤケーシングに結合される表面である。したがって、ボイドは、トレッド下面に開口している。トレッドを成形した後、トレッドは、タイヤ又はタイヤカーカスに張り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
予備成形トレッドをタイヤに張り付けた後、最終的に、タイヤを次のプロセスにおいて成型し又は硬化させ、この場合、タイヤを加熱して加圧する。このようなプロセス中、未硬化材料、例えば結合材料は、下面を通ってボイド中に押し込まれる場合がある。事実、この材料は、ボイドを少なくとも部分的に満たし、それにより埋没特徴部の有効性が低下する場合がある。例えば、特徴部が溝で或る場合、このような溝は、ウェット時性能を向上させるために水を除去し又は吸収するボイドを提供する。しかしながら、溝が変位した材料で少なくとも部分的に満たされると、ボイド容量及び溝の有効性は、最適レベルよりも低い。別の例では、トレッド特徴部は、サイプを含む場合があり、このサイプは、一般に、スリット状の又は幅の狭い溝から成る。サイプは、タイヤトラクションの向上のために追加のトラクションエッジを提供するが、これが形成する不連続部により局所トレッド剛性を減少させるという結果をもたらす。しかしながら、サイプが変位した材料で少なくとも部分的に満たされるようになると、サイプは、トラクションエッジとしては最適レベルよりも低い状態で働く場合があると共に/或いはトレッドの局所剛性を減少させる場合がある。したがって、硬化作業中におけるトレッドの下面からのトレッド特徴部としてのボイド中への材料の入り込み、流入又は侵入を実質的に制限すると共に/或いは阻止する必要がある。
【0005】
別の問題は、タイヤ形成に続くタイヤ作動中に生じる場合がある。具体的に説明すると、ボイドがトレッドの下面まで延びると、ボイドの近く、例えば、ボイドがトレッド下面と交差する場所に亀裂が発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特定の実施形態は、トレッドの下面からトレッドの厚み中に設けられたボイド中への材料の流れを実質的に最小限に抑え又は阻止すると共に/或いは亀裂発生及び/又はボイドに隣接したところでの亀裂発生及び/又は進展を減少させ又はなくす部材を有するタイヤトレッドを含む。タイヤトレッドの特定の実施形態は、長さ、幅及び厚さを有するトレッド本体を含み、その厚みは、外面及び下面によって画定される。このようなトレッドは、トレッド本体の厚み中に設けられたボイドを更に有するのが良い。このようなトレッドは、ボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッド下面との間に延びる1つ又は2つ以上の部材を更に有するのが良い。特定の実施形態では、このようなトレッドは、タイヤの一部を形成するのが良い。
【0007】
本発明の特定の実施形態は又、成形タイヤトレッドを形成するモールドを含み、このモールドは、複数個のモールド部分によって形成されていて、底面を備えたキャビティを有する。モールドは、キャビティ内に延びるボイド形成要素を更に有し、ボイド形成要素は、トレッドの厚み中にボイドを形成する。このようなモールドは、キャビティ底面とボイド形成要素との間に延びる凹部形成要素を更に有する。さらにモールドは、ボイド形成要素に隣接して設けられた1つ又は2つ以上の凹部を更に有するのが良く、1つ又は2つ以上の凹部は、成形トレッド中に1つ又は2つ以上の部材を形成し、少なくともトレッドをタイヤに張り付けたとき、1つ又は2つ以上の部材は、一緒になって、トレッドボイドの幅を少なくとも部分的に横切って延びる。特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の部材は、ボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッド下面との間に延びる。
【0008】
本発明の上記目的、特徴及び利点並びに他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に示されている本発明の特定の実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになろう。なお、図中、同一の参照符号は、本発明の同一の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態としての埋没トレッドボイドを有する例示のタイヤの断面図である。
【図2】タイヤの拡大部分図であり、トレッド内に設けられた埋没トレッドボイドを示し、ボイドが、ボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に位置決めされる突起又は部材を備えてはおらず、それにより、望ましくない材料がタイヤ硬化作業中にボイド内に流入可能であると共に/或いはタイヤ作動中に亀裂がトレッドの下面に沿って発生すると共に/或いは進展可能である状態を示す図である。
【図3】タイヤの拡大図であり、本発明の実施形態に従って、埋没トレッドボイドを示し、このトレッドボイドがトレッドボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に設けられた突起又は部材を有し、それによりタイヤ硬化作業中におけるボイド中への望ましくない材料の流入を十分に減少させ又は阻止すると共に/或いはタイヤ作動中におけるトレッドの下面に沿う亀裂の発生及び/又は進展を減少させることができる状態を示す図である。
【図4】図3に示されている特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、トレッドが、埋没トレッドボイド及びこのトレッドボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に設けられた突起又は部材を有し、それによりタイヤ硬化作業中におけるボイド中への望ましくない材料の流入を十分に減少させ又は阻止すると共に/或いはタイヤ作動中におけるトレッドの下面に沿う亀裂の発生及び/又は進展を減少させることができる状態を示すと共に本発明の変形実施形態に従ってこれら部材がボイドの縁から非直線的にテーパしている状態を示す図である。
【図5】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、ボイドが台形を形成し、突起又は部材が移行部又はフィレットを含む状態を示す図である。
【図6a】図3に示されているトレッドの変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、ボイドの断面形状が長円形であり、開口部が十分に幅の狭い開口部まで縮小されている状態を示す図である。
【図6b】図3に示されたトレッドの変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、ボイドの断面形状が円形であり、部材が互いにオーバーラップしている状態を示す図である。
【図7a】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がボイドの対向した側部から延びると共に互いにオーバーラップしている状態を示す図である。
【図7b】図7aに示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材のボイドの対向した側部から延びると共につがい関係をなす切欠き又はつがい関係をなす異形部によって互いにオーバーラップしている状態を示す図である。
【図8】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材が十分に幅の狭い又は実質的に閉じられた開口部をもたらすようボイドの一方の側部から延びている状態を示す図である。
【図9】図8に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がボイドの一方の側部から延びていて、ボイドの対向した側部に沿って設けられた切欠き又は凹部に係合する状態を示す図である。
【図10a】図9に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がタイヤへの張り付け時に実質的に閉じる開放位置で成形されている状態を示す図である。
【図10b】図10aに示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がボイドに対する部材の閉鎖を促進する切欠きを有する状態を示す図である。
【図11】図4に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材の開放位置で成形されている状態を示す図である。
【図12】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、独立して成形された部材がボイドの各側から延びるようタイヤトレッドに張り付けられる状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に従って全体が図3に示された本発明のトレッド特徴部を成形する際に用いられるモールドの断面端面図である。
【図14】図13のモールドの変形実施形態としてのモールドの拡大部分断面図であり、本発明の実施形態に従って、このようなモールドが図10aに示されているトレッドを成形する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特定の実施形態は、タイヤ硬化作業中におけるボイド中への望ましくない材料の流入を十分に減少させ又は阻止すると共に/或いはタイヤ作動中におけるボイドの付近での且つトレッドの下面に沿う亀裂の発生及び/又は進展を十分に減少させ又は阻止する目的で、タイヤトレッドであって、トレッドの厚みの中に設けられたトレッドボイド及びボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に位置決めされた部材又は突起を有するタイヤトレッド及びタイヤトレッドを成形するタイヤトレッドモールドを提供する。本明細書において開示される1つ又は2つ以上の部材を備えたこのようなトレッドはどれでも、タイヤの一部分を形成することができる。
【0011】
特定の場合、最終タイヤ製品を形成するために予備成形トレッドが用いられる。例えば、タイヤ更生作業では、先ず最初に、タイヤトレッドを成形し、次に、タイヤ又はタイヤカーカスに張り付けて更生タイヤを形成する。予備成形トレッドは、一般に、頂面又は外面を有し、この頂面又は外面は、一般に、タイヤの外面と関連しており、予備成形トレッドは、トレッドをタイヤ又はタイヤカーカスに係合状態で取り付けるために用いられる下面を更に有する。完全に又は部分的に硬化されている場合のあるトレッドの成形後、トレッドをタイヤ又はタイヤカーカスに張り付ける。タイヤ又はタイヤカーカスへのトレッドの密着及び取り付けを促進するためにトレッドとタイヤ又はタイヤカーカスとの間に接着剤層を設けても良く又は設けなくても良い。接着剤層は、例えば、クッション用ゴム状物質又は他の接着剤の層から成るのが良い。
【0012】
タイヤトレッドは、様々なトレッド特徴部を有することができる。例えば、トレッドは、各々がタイヤの任意の方向に、例えば側方に又は周方向に延びることができる特徴部、例えばリブ、ブロック、溝及び/サイプを有するのが良い。特定の特徴部、例えば溝及びサイプは、トレッド中にボイドを形成する。或る特定の場合、埋没状態(即ち、隠された又は埋め込まれた状態)で設けられる特徴部又はボイドを提供するようトレッド特徴部又はボイドをトレッド外面の下に且つトレッドの厚み中に設けることが望ましい場合がある。例えば、ボイドは、埋没溝又はサイプを形成することができる。また、トレッド特徴部又はボイドは、トレッド外面と連絡関係をなしても良い(即ち、沈められておらず又は完全に沈められていない)。どのトレッド特徴部に関しても、トレッドを予備成形すると、トレッド下面を貫くことによってトレッド中に存在するボイドを形成することができる。したがって、予備成形トレッドをタイヤカーカスに張り付けると、トレッド下面の下に位置し又はこれに隣接して位置する材料は、下面を貫通して延びる孔又は開口部が十分には縮小されず又は実質的に覆われ若しくは閉じられていない場合、次のタイヤ成型及び/又は硬化作業中にボイドに入り込む場合がある。望ましくない材料がボイドに入った場合、トレッド特徴部は、設計通り又は意図通りには働かない場合がある。上述したように、特徴部が溝である場合、意図したボイドは、ウェット時タイヤ性能を向上させるよう所与の量の水を受け入れるように寸法決めされており、溝は、望ましくない材料を受け入れた時に動作レベルは最適レベルよりも低い場合がある。また、上述したように、特徴部がサイプである場合、サイプは、望ましくない材料がサイプを少なくとも部分的に満たした場合、動作レベルは最適レベルよりも低い場合がある。したがって、材料がタイヤ硬化作業中、トレッドの下面からトレッドにボイドに入るのを阻止するのが望ましい。さらに、タイヤ成型後のタイヤ作動中、トレッドの下面に沿って特徴部又はボイドに密接した場所、例えばボイドがトレッドの下面と交差する場所で亀裂が発生すると共に/或いは進展する場合がある。
【0013】
図1を参照すると、全体としてタイヤ10の断面が示されている。タイヤ10は、トレッド10の半径方向広がり部分に取り付けられたトレッド20を有し、トレッド20は、互いに反対側に位置する側壁12相互間に延びる(幅方向に)幅及びタイヤ10の周囲に沿って延びる長さを有する。トレッド20は、外面22と反対側の下面24との間に延びる本体21を更に有している。外面22は、一般に、タイヤ作動中、タイヤ転動面、例えば路面又は地面に係合し、下面24は、トレッド20の取り付けのためにタイヤ又はタイヤカーカスの一部分に係合する。上述したように、接着剤層26が設けられるのが良く、この層26は、タイヤ10の一部分又はタイヤカーカスへのトレッド20の取り付け具合の向上を容易に、又は促進するようトレッド20の下面24に係合する。
【0014】
引き続き図1を参照すると、トレッド20は、トレッド特徴部28を有し、このトレッド特徴部は、トレッド20の厚みt中にボイド29を提供する。例えば一例として図2に示されている先行技術では、トレッド特徴部28又はボイド29は、開口部30を経てトレッド下面24に実質的に露出されており、開口部30は、ボイド29の幅に実質的に等しい。換言すると、トレッド特徴部28又はボイド29は、トレッド下面24まで実質的に下方に延びており、ボイド29の幅又は側部29aは、場所Iのところで下面24と交差する。したがって、図2に例として示されているように、タイヤ材料、例えば接着剤層26は、タイヤ硬化又は成型作業中、トレッド特徴部28のボイド29内に流れ込み又はこの中に変形して入り込む場合があり、それにより、タイヤ材料は、このような作業によりもたらされる熱及び圧力に起因して流動状態になり又は流体になる。異種材料が下面24に隣接して位置決めされる場合があるので、このような材料は、特定の成型又は硬化作業中、多少なりとも流動性になり又は流体になる場合がある。このような材料は又、異なる成型又は硬化パラメータ、例えば高い又は低い熱又は圧力を用いた場合にも多少なりとも流動性になり又は流体になる場合がある。さらに、タイヤ作動中、側部29aとトレッド下面24の交差部Iのところにも亀裂が発生すると共に/或いは進展する場合がある。というのは、交差部Iが応力集中領域になる場合があるからである。
【0015】
図3を参照すると、ボイド29中への材料の流れを十分に減少させると共に/或いは実質的になくすため且つ/或いは下面24に沿う亀裂の発生及び/又は進展を減少させると共に/或いはなくすため、トレッド20は、ボイド29の少なくとも一部分と下面24との間に延びる1つ又は2つ以上の部材32を有するのが良い。具体的に説明すると、1つ又は2つ以上の部材32の各々は、トレッド本体21又は特徴部28若しくはボイド29の側部29aから自由端34まで所望の幅w32だけ延びている。換言すると、1つ又は2つ以上の部材32は、開口部30を少なくとも部分的に横切って又は特徴部28若しくはボイド29の幅にわたって延びている。1つ又は2つ以上の部材32を備えたこのようなトレッド24は、タイヤ10の一部分を形成するようタイヤ10に取り付けられるのが良い。
【0016】
1つ又は2つ以上の部材32は、ボイド29の少なくとも一部分と下面24との間に延びる際、例えば図3〜図9に示されているように実質的に下面24に沿って延びるのが良く、或いは、他の実施形態では、下面24からトレッド厚みt中で側部29aに沿って任意の距離だけオフセットし又は離隔されるのが良い。このようなトレッド特徴部28又はボイド29は、トレッド外面22に開口しても良く又はこれと連絡状態にあっても良いことはいうまでもない。したがって、トレッド特徴部28は、トレッド外面22の下に埋没状態(即ち、隠され又は埋め込まれた状態)で設けられたものであっても良く、部分的に埋没状態(即ち、特徴部28が部分的に外面22と連絡状態にあり又はこれに露出されている状態)で設けられたものであっても良く、或いは埋没状態で設けられていなくても良い(即ち、実質的に完全に外面22に露出されていても良い)。上述したように、特徴部28は、ボイド29を含む。
【0017】
引き続き図3を参照すると、亀裂発生及び/又は進展を1つ又は2つ以上の部材32がボイド29又は特徴部28の側部29aから且つボイド29の少なくとも一部分と下面24との間に延びる場合、軽減することができると共に/或いはなくすことができる。亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすため、厚さt32を有する部材32が、側部29aから任意の距離又は幅w32にわたり延びるのが良い。したがって、部材32は、例えば図3〜図6b、図7bに例として示されているように開口部30を部分的に横切って又はボイド29の幅にわたって延びるのが良く、或いは、例えば図7、図8及び図9に例として示されているように開口部30を少なくとも実質的に横切って又はボイド29の幅にわたって延びるのが良い。全体として図6b〜図7bを参照すると、部材32は、互いにオーバーラップしているのが良い。側部29aから延びる部材32を提供することにより、亀裂発生場所Iをなくすことができ又は応力減少場所に移すことができる。さらに、自由端34が例えば図8に例として示されている対向した側部29aに当接し又は実質的に近づき又は例えば図9に例として示されているように対向した側部29aを越えて延びる場合、このような対向した側部29aに沿う亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすことができる。
【0018】
特定の実施形態では、亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすため、各部材32は、少なくとも約0.5ミリメートル(mm)又は少なくとも約1ミリメートル(mm)の最小幅w32を有し、更に、少なくとも約0.5mmの最大厚さt32,maxを有する。他の実施形態では、1つ又は2つ以上の部材32は、場所Iのところでの亀裂発生及び/又は進展を軽減し、移すと共に/或いはなくす上で十分に剛性の部材32を提供するよう任意他の幅、厚さ又は形状を有しても良い。このような部材32は、関連の特徴部28又はボイド29の寸法及び/又は形状、トレッド20を形成する材料の物理的及び化学的性質並びにタイヤ作動中にトレッド20に加わる荷重により様々であって良い。部材32が上述したように互いにオーバーラップし又は当接する場合、このような部材32の寸法形状を減少させることができる。というのは、追加の支持体を他のオーバーラップ又は当接部材32によって提供できるからである。
【0019】
本発明による部材32を提供する場合、部材32が側部29aから延びる起点としての(即ち、交差する)場所のところで又はこの近くにおいてこのような部材32の頂面(即ち、ボイド側表面)に沿って亀裂発生及び進展が生じる場合がある。全体として図5、図7〜図9を参照すると、この亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすために移行部33が設けられるのが良く、この移行部は、局所応力集中を減少させ又は実質的になくすよう働く。このような移行部は、図示のようにフィレット(即ち、アール付き、曲線状又は非直線状の移行部33)又は例えば面取り部(即ち、直線状移行部33)から成るのが良い。移行部33を備えた部材32は、可変厚さ部材32であると見なすことができる。
【0020】
特定の実施形態では、下面24から特徴部28又はボイド29中への望ましくない材料の流れ又は変位は、1つ又は2つ以上の部材32が特徴部28及び/又はボイド29の側部29a又はトレッド本体21から延びて少なくともタイヤ10又はタイヤカーカスへのトレッド20の張り付け時に十分に幅の狭い又は実質的に閉じられた開口部30aをもたらす(即ち、開口部30を十分に横切って延び又は実質的にこれを跨ぐ)場合、所望通りに軽減され及び/又はなくされる。例えば、図3〜図9の1つ又は2つ以上の部材32は、全体として図3〜図7bに示されているように対向した部材32相互間又は全体として図8及び図9に示されているように部材32と側部29a又はトレッド本体21の一部との間に形成される幅の狭い又は閉じられた開口部30aをもたらすよう延びるのが良い。したがって、1つ又は2つ以上の部材32は、ボイド29の少なくとも一部分を下面24から十分に又は実質的に離隔させることにより下面24とボイド29との間にバリヤ又はフローレストリクタ(制流子)として働く。このような部材32をバリヤ、フローレストリクタ、妨害物又はフラップと呼ぶことができる。
【0021】
特定の実施形態では、例えば、或る特定の路上トラック用タイヤに用いられるトレッドでは、幅の狭い開口部30aの幅は、約2ミリメートル(mm)以下、他の実施形態では、約1mm以下である。他の実施形態では、十分に幅の狭い開口部30aは、1又は2mmを超えても良く、即ち、開口部30aが或る特定の条件においてはボイド29中への材料の流れを減少させ又はなくす目的で2又は2mmを超えても十分である場合がある。例えば、望ましくない材料は、特定の成型及び/又は硬化作業中、流体としての状態ではない場合があり又は変形可能な場合がある。というのは、種々の成型及び/又は硬化パラメータ、例えば温度/又は圧力を変えることができるからである。さらに、ボイドに隣接して位置する望ましくない材料が様々な場合があるので、種々の物理的及び化学的性質を持つ材料は、同様な成型又は硬化条件では流動性が低い又は変形性が低い場合がある。さらに、剛性の増大した部材32は、変形性が低い場合があり、それにより、大きな開口部30aの使用が可能な場合がある。より剛性の高い部材32は、例えば断面積を増大させることにより又は互いにオーバーラップし又は当接した部材32を採用することによって達成できる。図3〜図9の1つ又は2つ以上の部材32のどれもが、例えば全体的に図6aに示されているように十分に幅の狭い開口部30aを形成するよう働くことができ又は全体として図3〜図5、図6b〜図9に例として示されているように実質的に閉じられた開口部30a(即ち、実質的に閉じられた開口部30)を形成することができる。
【0022】
実質的に閉じられた開口部30a(即ち、開口部30が実質的に閉じられている場合)は、1つ又は2つ以上の部材32が開口部30を実質的に横切って延びる場合、例えば、1つ又は2つ以上の部材32が別の部材32、側部29a又はトレッド本体21の任意他の部分に実質的に当接し又はこれとオーバーラップしている場合に生じる。例えば、図3〜図5の部材32は、互いに当接するよう延び、これに対し、図6b〜図7bの部材32は、互いにオーバーラップしている。図8では、部材32は、対向した側部29a又はトレッド本体21に当接するよう延びている。最後に、図9では、部材32は、切欠き又は凹部36を介してトレッド本体21に当接し又はこれに係合している。部材32がボイド29中への望ましくない材料の入り込み又は流れを減少させると共に/或いはなくすよう設けられている場合、亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすことも又達成できる
【0023】
図4〜図11を参照すると、部材32の種々の変形実施形態が断面で示されている。しかしながら、1つ又は2つ以上の部材32は、任意所望の形状又は設計のものであって良いことが想定される。さらに、部材32はどれでも、トレッド20の任意の長さ又は幅に沿って延びても良い。具体的に説明すると、部材32は、トレッド20の幅又は長さの部分又は全体に沿って横方向に、斜めに又は周方向に延びても良い。
【0024】
各部材32は、厚さt32を有し、この厚さは、幅w32を横切って一定であっても良く、可変であっても良い。具体的に説明すると、全体として図4を参照すると、各部材32は、最大厚さt32,max及び最小厚さt32,minを有するのが良い。例えば、具体的に図4に示されているように且つ図5〜図7aでは非具体的に示されているように、可変厚さ部材32に関し、最大厚さt32,maxは、隣接の側部29aに沿って(即ち、部材32が延びる起点としての側部に沿って)見られるのが良く、最小厚さt32,minが自由端34のところに見られるのが良い。当然のことながら、最大厚さt32,max及び最小厚さt32,minは各々、可変厚さ部材32の幅w32に沿う任意の箇所で(即ち、部材32の互いに反対側の端相互間、例えば隣接の側部29aと自由端34との間の任意の場所で)生じても良い。特定の実施形態では、部材32の最大厚さt32,maxは、少なくとも約0.5mm、1mm又は2mmであるのが良い。部材32が例えば図6b及び図7aに例として示されているように一点までテーパしている場合、最小厚さt32,minは、ゼロに近づく。厚さが実質的に一定の部材32が図3に例として示されている。
【0025】
一定又は可変厚さ部材32が幅w32に沿って直線的に又は非直線的に延びることができる。全体として図4〜図9を参照すると、非直線的に延びる部材32が示されている。一定厚さ部材32が図3に直線状に延びるよう示されている。図5、図7a及び図7bを参照すると、図示の実施形態の変形例は、移行部材33を備えておらず、したがって、直線状に延び又はテーパした可変厚さ部材32を提供している。非直線状に延びる部材32は、任意の非直線方向又は経路をなして延びる部分(即ち、部材32の頂(又はボイド側)面及び/又は底面(又は下面))を有するのが良く、このような非直線状方向又は経路としては、例えば、弧状、曲線状(波形)又は段付き方向又は経路が挙げられるが、これらには限定されない。弧状経路が図4、図6a及び図6bに示されている。
【0026】
上述したように、特徴部28は、トレッド20の任意所望の特徴部から成っていて良い。例えば、特徴部28は、溝であっても良く又はボイド29を形成する任意他のポケット又はセグメントであって良く、ボイド29は、トレッド20のボイド比を増大させるよう設けられるのが良い。これは、例えば、ウェット時、積雪時、又は軟弱な土壌時(即ち、ダート、泥又は砂)性能を向上させる上で有用な場合がある。特徴部28のボイド29は又、サイプから成っていても良く、サイプは、これがタイヤフットプリントに入ってこれを通り続けているときに閉じ(即ち、それ自体内方に潰れ)、後でこれがタイヤフットプリントを出るときに開くようになった本質的に細い溝である。したがって、特徴部28及びボイド29の形状は、任意の断面形状のものであって良い。例えば、図3及び図4を参照すると、特徴部28及び/又はボイド29の断面形状は、全体として長方形であるのが良い。全体として図5〜図6aを参照すると、特徴部28及び/又はボイド29は、それぞれ全体として台形又は長円形であるのが良い。図6bを参照すると。ボイド29は、円形であるのが良く、特定の実施形態では、少なくとも約6mmの直径を有する円から成るのが良く、1つ又は2つ以上の部材32は、約3mm以上の最大厚さt32,maxを有する。特定の実施形態では、ボイド29は、断面で見て幅が約6〜8mm、高さが8mmであるが、他の実施形態では、ボイド29は、任意所望の寸法のものであって良い。
【0027】
全体として図6b〜図7bを参照すると、2つ又は3つ以上の部材32は、互いにオーバーラップしているのが良く、他方、ボイド開口部30を少なくとも部分的に横切って延びている。部材32のオーバーラップ構成を達成するため、少なくとも1つの部材32は、可変の又はテーパした厚さを有するのが良い。図6b〜図7aに示されている実施形態は、各々がテーパした又は可変厚さt32を有する互いにオーバーラップした部材32を提供している。他の実施形態では、実質的に一定の厚さt32を有する部材32は、例えば、側部29aに沿い又はトレッド厚さtに沿って各部材32の垂直位置を変更し又は互い違いにすることによって互いにオーバーラップするのが良い。例えば、図8に示されている実施形態は、互いにオーバーラップした部材32の互い違い構造を提供するよう改造されても良く、この場合、第2の部材32は、既存の部材32に対向した側部29aから部材32のうちの少なくとも1つが実質的に一定厚さt32を有する既存の部材32の上方の位置まで延びる。また、部材32の互い違い構造中の部材32の各々は、可変の又はテーパした厚さt32を有しても良いことが想定される。さらに別の変形例では、互いにオーバーラップした部材32は、一実施形態に従って、例えば全体が図7bに示されているように対向した部材32相互間の切欠き付き、段付き又は異形の(直線又は非直線状)のインターフェイスを提供することによって達成できる。また、変形例として、互いにオーバーラップした部材32の1つ又は2つ以上の相互インターフェイス関係をなす表面に沿って模様付けすること又は例えば溝又は起伏部のような特徴部を提供して互いにオーバーラップした部材32相互間のインターロック、結合又は機械的インターフェイスを促進し又は違ったやり方で、部材32が1つ又は2つ以上の部材32に加えられる力に良好に抵抗することができるようにすることが挙げられる。互いにオーバーラップした部材32相互間に十分に縮小し又は実質的に閉じられた開口部30aを形成することができる。
【0028】
1対の部材32がボイド29の対向した側部から延びて協働して開口部30を縮小し又は閉じている図3〜図7bに示された実施形態の変形例として、単一の部材32が例えば全体的に図8及び図9に示されているように開口部30を十分に縮小し又は実質的に閉じるよう(即ち、実質的に縮小し又は実質的に閉じられた開口部30aを形成するよう)特徴部28及び/ボイド29の少なくとも一部分を横切って延びても良い。したがって、単一の部材32は、少なくともトレッド20の特定の長さに沿い、トレッド20の下面24に沿って開口部30の少なくとも一部分又はボイド29の幅を横切って延び又は開口部30を跨ぐのが良い。図8に示された変形例では、部材32の自由端部34は、縮小開口部30aを備え、この開口部の幅は、特定の実施形態では、約2mm以下又は1mm以下である。他の実施形態では、自由端部34は、特徴部28、ボイド29及び/又は開口部30の対向した側部20aに接触し又は当接する。
【0029】
図9に示されている変形例では、部材32は、開口部30の幅よりも広い幅w32だけ延びている。図9では、例えば、部材32の自由端34は、特徴部28及び/又はボイド29の反対側の側部に沿って設けられた切欠き36に係合するのが良い。切欠き36は、任意形状のものであって良く、例えば、段付き、丸形若しくは傾斜(テーパ付き)インターフェイス又は部材32とのインターロックを容易にする任意の形状のものであって良い。図9に示されている切欠き36は、階段状切欠きである。切欠き36により、部材32は、ボイド29に入って部材32を変位させようとする材料の流入に良好に抵抗することができる。というのは、切欠き36は、部材32に作用する力に抵抗するよう部材32が係合する表面を提供するからである。また、このような特徴部又はテキスチャは、切欠き36と部材32のインターロックを容易にするよう切欠き36及び/又は部材32のインターフェイス関係をなす部分に沿って設けられるのが良い。
【0030】
全体として図10a〜図11を参照すると、部材32の変形実施形態が提供されている。このような実施形態では、1つ又は2つ以上の部材32は、開口部30に対して開放位置で成形されており、その結果、1つ又は2つ以上の部材32は、トレッド20の下面24から外方に延びるよう成形され、タイヤ又はタイヤカーカスへのトレッド20の張り付け時、1つ又は2つ以上の部材32は、逸らされて開口部30の少なくとも一部を横切って延びるようになり、それにより他の実施形態において上述した1つ又は2つ以上の部材32として働くようになる。例えば、図10aに示されている実施形態は、全体として、図9に示されている実施形態の開放バージョンであり、図11で示されている実施形態は、図4又は図7aに示されている実施形態の開放バージョンである。全体的に図10bに例として示されているように、切欠き38は、ボイド29及び開口部30に対する部材32の逸れ及び閉鎖具合の向上を容易にするよう部材32の任意の側部に沿って配置されるのが良い。丸形特徴部を備えた切欠き38(並びに切欠き36)は、タイヤ作動中における亀裂発生に良好に抵抗することができる。
【0031】
他の実施形態では、1つ又は2つ以上の部材32は、トレッド20と一緒に形成される(即ち、成形される)やり方に代えて、トレッド20とは別個独立に1つ又は2つ以上の部材32が形成され、次に、トレッド20に張り付けられても良い。例えば、上述した部材32は、トレッド20とは別個独立に形成できる。全体として図12を参照すると、他の変形例では、部材32は、対向した切欠き36相互間でボイド29の側部29aからボイド29を横切って延びるのが良く、それにより1つ又は2つ以上の部材32を下面24を越えて突き出ることなく、トレッド20の厚み中に設けることができる。他の変形例では、別個独立に形成された部材32は、たった1つの切欠き36に係合しても良く、或いは、どの切欠き36にも係合しなくても良い。独立して形成された部材32は、タイヤ10を最終的に成型すると共に/或いは硬化させる前に予備形成又は予備成形トレッド20又はタイヤ10に張り付けられ又は取り付けられるのが良い。当業者に知られている手段、例えば接着剤を用いると、別個独立に形成された部材32をトレッド20及び/又はタイヤ10に取り付けることができる。これとは対照的に、図3〜図11に示されている1つ又は2つ以上の部材32は、例えば成形によりトレッド本体21と一体に形成される。
【0032】
上述した任意の実施形態において、トレッド特徴部28、ボイド29、下面24、部材32及び任意他の成形表面は、成形後プロセスに先立って且つ/或いは成形後プロセス中、その汚染を減少させると共に/或いはなくすように処理されるのが良い。汚染を減少させ又はなくすことにより、タイヤ又はタイヤカーカスへのトレッド20及び部材32の接着及び結合具合の向上が可能である。向上した接着及び結合は、互いに接触した部材32相互間においても得られる。当業者に知られている種々の材料及び/又はプロセスを用いてタイヤとの十分な結合を容易にするようトレッド表面を調製し保護すると共に保つことができる。表面は、このような表面をフィルム又は組織に当てて成形することによって作られると共に保護されても良い。ブラシ掛け、研削又は化学薬品の使用、ブラスチングプロセス、例えば極低温CO2ブラスチング、レーザアブレーション又は当業者に一般的に知られている任意他のプロセス又はプロセスの組み合わせによって表面をクリーニングすると共に/或いは模様付けすることができる。
【0033】
全体として図13を参照すると、トレッド20中に部材32を形成するモールド50が提供されている。モールド50を用いると、上述した任意の部材32又はその任意の変形例を形成することができる。モールド50は、一般に、モールドキャビティ56を形成する複数個のモールド部分を有する。図13に示されている実施形態では、モールド50は、一般に、一緒になってモールドキャビティ56を形成する対向したモールド部分52,54を有する。第1のモールド部分52及び第2のモールド部分54は各々、トレッド20中に任意所望のトレッド特徴部を形成する要素を有するのが良い。例えば、モールド要素58は、トレッド外面22に沿ってトレッド特徴部、例えば溝又はサイプを形成するよう第1のモールド部分52からキャビティ56内に延びるのが良い。さらに、第2のモールド部分54は、底面55から延びる1つ又は2つ以上のボイド形成要素60を有する。各ボイド形成要素60は、トレッド20の下面24に沿って特徴部28及び/又は対応のボイド29を形成する。第2のモールド部分54は、1つ又は2つ以上の凹部64を形成する1つ又は2つ以上の凹部形成要素62を更に有する。
【0034】
ボイド形成要素60とモールド底面55との間に凹部形成要素62と関連して凹部64が形成されている。各凹部64は、対応のトレッド20に上記において開示され又は想定された任意の部材32を形成する。1つ又は2つ以上の凹部64は、1つ又は2つ以上の部材32が上述したボイド29の幅を横切って延びているので、ボイド形成要素の幅を少なくとも部分的に横切って延びている。特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の凹部64は、少なくとも約0.5mm、1mm又は2mmにわたって延びるのが良い。幅の小さな凹部64が他の実施形態において存在しても良い。さらに凹部形成要素62は、トレッド20中にボイド29の縮小開口部30aを形成することができ、このような凹部形成要素は、上記において計画された縮小開口部30aの幅と実質的に同じ幅を有する。特定の実施形態では、凹部形成要素62の幅は、約2mm以下、又は1mm以下である。他の実施形態では、凹部形成要素62の幅は、これよりも大きくても良い。
【0035】
凹部形成要素62は、ボイド形成要素60をトレッド下面24を形成する底面55から間隔を置いた関係に保つ。ボイド形成要素60及び対応の凹部形成要素62は、単一モールド要素として形成されても良く、或いは、別個独立に形成されて後でモールド50内での使用のために結合されても良い。凹部形成要素62は、存在しなくても良く、その代わり、ボイド形成要素60の一部が凹部形成要素62としての役目を果たして良いことが想定される。モールド要素60及び/又はモールド要素62は、対応のモールド部分54と共に形成されても良く、或いは、別々に形成されて任意公知の手段、例えば締結具又は溶接の使用によりモールド部分54に取り付けられても良い。
【0036】
例えば図14に例として示された他の実施形態では、部材32を形成する1つ又は2つ以上の凹部64がキャビティ底面55中に延びるのが良い。このような実施形態では、モールド50は、一般に、上述したように且つ全体として図10a〜図11に示されているように開放位置で成形される部材32を形成するために用いられ、これら部材32は、トレッド下面24から外方に(即ち、下方に)延びる。モールド50は、トレッド20中に切欠き36を形成する切欠き形成要素66を更に有するのが良い。モールド50は、上述したトレッド20の任意他の特徴部若しくは部分又はその任意の変形例を形成する任意他の要素又は凹部を更に有するのが良い。
【0037】
本発明をその特定の実施形態に関して説明したが、このような説明は、例示であって、本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。したがって、本発明の範囲及び内容は、添付の特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、タイヤトレッドの厚み中にボイドを有するタイヤトレッドに関し、特に、タイヤ成型及び/又は硬化作業中、ボイド中への材料の流れを制限すると共に/或いはタイヤ作動中におけるこのようなボイドに沿う亀裂発生及び/又は亀裂進展を減少させる特徴部を備えたトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野における通常の知識として、タイヤトレッドは、タイヤ性能を高めるための種々の成形トレッド要素及び特徴部を有する。また、当該技術分野における通常の知識として、これら成形トレッド要素及び特徴部を、タイヤ成型及び硬化作業中タイヤと同時に、又は例えばタイヤ更生(山掛け)作業時にタイヤ又はタイヤカーカスへのトレッドの張り付け前にトレッドモールドにより別個独立に形成できる。
【0003】
トレッド特徴部としては、各々がトレッドの厚み中にボイドを形成する溝及びサイプが挙げられるが、これらには限定されない。或る特定の状況では、トレッドボイドは、トレッド外面の下に維持され、或いは、換言すると、トレッドの新品状態において視界から実質的に隠されるようにトレッド外面の下に埋没状態(即ち、隠された又は埋め込まれた状態)で設けられる。このような場合、埋没状態の特徴部は、タイヤトレッドの摩耗段階においてタイヤ性能を高めるために追加のトレッドボイド及び/トラクションエッジを提供するよう設けられるのが良い。トレッドが例えばタイヤの更生のために予備成形される場合、埋没トレッドボイドをトレッドの下面に沿って又はこれを貫通して形成される場合があり、下面は、後でタイヤケーシングに結合される表面である。したがって、ボイドは、トレッド下面に開口している。トレッドを成形した後、トレッドは、タイヤ又はタイヤカーカスに張り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
予備成形トレッドをタイヤに張り付けた後、最終的に、タイヤを次のプロセスにおいて成型し又は硬化させ、この場合、タイヤを加熱して加圧する。このようなプロセス中、未硬化材料、例えば結合材料は、下面を通ってボイド中に押し込まれる場合がある。事実、この材料は、ボイドを少なくとも部分的に満たし、それにより埋没特徴部の有効性が低下する場合がある。例えば、特徴部が溝で或る場合、このような溝は、ウェット時性能を向上させるために水を除去し又は吸収するボイドを提供する。しかしながら、溝が変位した材料で少なくとも部分的に満たされると、ボイド容量及び溝の有効性は、最適レベルよりも低い。別の例では、トレッド特徴部は、サイプを含む場合があり、このサイプは、一般に、スリット状の又は幅の狭い溝から成る。サイプは、タイヤトラクションの向上のために追加のトラクションエッジを提供するが、これが形成する不連続部により局所トレッド剛性を減少させるという結果をもたらす。しかしながら、サイプが変位した材料で少なくとも部分的に満たされるようになると、サイプは、トラクションエッジとしては最適レベルよりも低い状態で働く場合があると共に/或いはトレッドの局所剛性を減少させる場合がある。したがって、硬化作業中におけるトレッドの下面からのトレッド特徴部としてのボイド中への材料の入り込み、流入又は侵入を実質的に制限すると共に/或いは阻止する必要がある。
【0005】
別の問題は、タイヤ形成に続くタイヤ作動中に生じる場合がある。具体的に説明すると、ボイドがトレッドの下面まで延びると、ボイドの近く、例えば、ボイドがトレッド下面と交差する場所に亀裂が発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特定の実施形態は、トレッドの下面からトレッドの厚み中に設けられたボイド中への材料の流れを実質的に最小限に抑え又は阻止すると共に/或いは亀裂発生及び/又はボイドに隣接したところでの亀裂発生及び/又は進展を減少させ又はなくす部材を有するタイヤトレッドを含む。タイヤトレッドの特定の実施形態は、長さ、幅及び厚さを有するトレッド本体を含み、その厚みは、外面及び下面によって画定される。このようなトレッドは、トレッド本体の厚み中に設けられたボイドを更に有するのが良い。このようなトレッドは、ボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッド下面との間に延びる1つ又は2つ以上の部材を更に有するのが良い。特定の実施形態では、このようなトレッドは、タイヤの一部を形成するのが良い。
【0007】
本発明の特定の実施形態は又、成形タイヤトレッドを形成するモールドを含み、このモールドは、複数個のモールド部分によって形成されていて、底面を備えたキャビティを有する。モールドは、キャビティ内に延びるボイド形成要素を更に有し、ボイド形成要素は、トレッドの厚み中にボイドを形成する。このようなモールドは、キャビティ底面とボイド形成要素との間に延びる凹部形成要素を更に有する。さらにモールドは、ボイド形成要素に隣接して設けられた1つ又は2つ以上の凹部を更に有するのが良く、1つ又は2つ以上の凹部は、成形トレッド中に1つ又は2つ以上の部材を形成し、少なくともトレッドをタイヤに張り付けたとき、1つ又は2つ以上の部材は、一緒になって、トレッドボイドの幅を少なくとも部分的に横切って延びる。特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の部材は、ボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッド下面との間に延びる。
【0008】
本発明の上記目的、特徴及び利点並びに他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に示されている本発明の特定の実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになろう。なお、図中、同一の参照符号は、本発明の同一の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態としての埋没トレッドボイドを有する例示のタイヤの断面図である。
【図2】タイヤの拡大部分図であり、トレッド内に設けられた埋没トレッドボイドを示し、ボイドが、ボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に位置決めされる突起又は部材を備えてはおらず、それにより、望ましくない材料がタイヤ硬化作業中にボイド内に流入可能であると共に/或いはタイヤ作動中に亀裂がトレッドの下面に沿って発生すると共に/或いは進展可能である状態を示す図である。
【図3】タイヤの拡大図であり、本発明の実施形態に従って、埋没トレッドボイドを示し、このトレッドボイドがトレッドボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に設けられた突起又は部材を有し、それによりタイヤ硬化作業中におけるボイド中への望ましくない材料の流入を十分に減少させ又は阻止すると共に/或いはタイヤ作動中におけるトレッドの下面に沿う亀裂の発生及び/又は進展を減少させることができる状態を示す図である。
【図4】図3に示されている特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、トレッドが、埋没トレッドボイド及びこのトレッドボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に設けられた突起又は部材を有し、それによりタイヤ硬化作業中におけるボイド中への望ましくない材料の流入を十分に減少させ又は阻止すると共に/或いはタイヤ作動中におけるトレッドの下面に沿う亀裂の発生及び/又は進展を減少させることができる状態を示すと共に本発明の変形実施形態に従ってこれら部材がボイドの縁から非直線的にテーパしている状態を示す図である。
【図5】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、ボイドが台形を形成し、突起又は部材が移行部又はフィレットを含む状態を示す図である。
【図6a】図3に示されているトレッドの変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、ボイドの断面形状が長円形であり、開口部が十分に幅の狭い開口部まで縮小されている状態を示す図である。
【図6b】図3に示されたトレッドの変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、ボイドの断面形状が円形であり、部材が互いにオーバーラップしている状態を示す図である。
【図7a】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がボイドの対向した側部から延びると共に互いにオーバーラップしている状態を示す図である。
【図7b】図7aに示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材のボイドの対向した側部から延びると共につがい関係をなす切欠き又はつがい関係をなす異形部によって互いにオーバーラップしている状態を示す図である。
【図8】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材が十分に幅の狭い又は実質的に閉じられた開口部をもたらすようボイドの一方の側部から延びている状態を示す図である。
【図9】図8に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がボイドの一方の側部から延びていて、ボイドの対向した側部に沿って設けられた切欠き又は凹部に係合する状態を示す図である。
【図10a】図9に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がタイヤへの張り付け時に実質的に閉じる開放位置で成形されている状態を示す図である。
【図10b】図10aに示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材がボイドに対する部材の閉鎖を促進する切欠きを有する状態を示す図である。
【図11】図4に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、部材の開放位置で成形されている状態を示す図である。
【図12】図3に示された特徴部の変形実施形態を提供するタイヤトレッドの拡大部分図であり、本発明の実施形態に従って、独立して成形された部材がボイドの各側から延びるようタイヤトレッドに張り付けられる状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に従って全体が図3に示された本発明のトレッド特徴部を成形する際に用いられるモールドの断面端面図である。
【図14】図13のモールドの変形実施形態としてのモールドの拡大部分断面図であり、本発明の実施形態に従って、このようなモールドが図10aに示されているトレッドを成形する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特定の実施形態は、タイヤ硬化作業中におけるボイド中への望ましくない材料の流入を十分に減少させ又は阻止すると共に/或いはタイヤ作動中におけるボイドの付近での且つトレッドの下面に沿う亀裂の発生及び/又は進展を十分に減少させ又は阻止する目的で、タイヤトレッドであって、トレッドの厚みの中に設けられたトレッドボイド及びボイドの側部から延びると共にボイドの少なくとも一部分とトレッドの下面との間に位置決めされた部材又は突起を有するタイヤトレッド及びタイヤトレッドを成形するタイヤトレッドモールドを提供する。本明細書において開示される1つ又は2つ以上の部材を備えたこのようなトレッドはどれでも、タイヤの一部分を形成することができる。
【0011】
特定の場合、最終タイヤ製品を形成するために予備成形トレッドが用いられる。例えば、タイヤ更生作業では、先ず最初に、タイヤトレッドを成形し、次に、タイヤ又はタイヤカーカスに張り付けて更生タイヤを形成する。予備成形トレッドは、一般に、頂面又は外面を有し、この頂面又は外面は、一般に、タイヤの外面と関連しており、予備成形トレッドは、トレッドをタイヤ又はタイヤカーカスに係合状態で取り付けるために用いられる下面を更に有する。完全に又は部分的に硬化されている場合のあるトレッドの成形後、トレッドをタイヤ又はタイヤカーカスに張り付ける。タイヤ又はタイヤカーカスへのトレッドの密着及び取り付けを促進するためにトレッドとタイヤ又はタイヤカーカスとの間に接着剤層を設けても良く又は設けなくても良い。接着剤層は、例えば、クッション用ゴム状物質又は他の接着剤の層から成るのが良い。
【0012】
タイヤトレッドは、様々なトレッド特徴部を有することができる。例えば、トレッドは、各々がタイヤの任意の方向に、例えば側方に又は周方向に延びることができる特徴部、例えばリブ、ブロック、溝及び/サイプを有するのが良い。特定の特徴部、例えば溝及びサイプは、トレッド中にボイドを形成する。或る特定の場合、埋没状態(即ち、隠された又は埋め込まれた状態)で設けられる特徴部又はボイドを提供するようトレッド特徴部又はボイドをトレッド外面の下に且つトレッドの厚み中に設けることが望ましい場合がある。例えば、ボイドは、埋没溝又はサイプを形成することができる。また、トレッド特徴部又はボイドは、トレッド外面と連絡関係をなしても良い(即ち、沈められておらず又は完全に沈められていない)。どのトレッド特徴部に関しても、トレッドを予備成形すると、トレッド下面を貫くことによってトレッド中に存在するボイドを形成することができる。したがって、予備成形トレッドをタイヤカーカスに張り付けると、トレッド下面の下に位置し又はこれに隣接して位置する材料は、下面を貫通して延びる孔又は開口部が十分には縮小されず又は実質的に覆われ若しくは閉じられていない場合、次のタイヤ成型及び/又は硬化作業中にボイドに入り込む場合がある。望ましくない材料がボイドに入った場合、トレッド特徴部は、設計通り又は意図通りには働かない場合がある。上述したように、特徴部が溝である場合、意図したボイドは、ウェット時タイヤ性能を向上させるよう所与の量の水を受け入れるように寸法決めされており、溝は、望ましくない材料を受け入れた時に動作レベルは最適レベルよりも低い場合がある。また、上述したように、特徴部がサイプである場合、サイプは、望ましくない材料がサイプを少なくとも部分的に満たした場合、動作レベルは最適レベルよりも低い場合がある。したがって、材料がタイヤ硬化作業中、トレッドの下面からトレッドにボイドに入るのを阻止するのが望ましい。さらに、タイヤ成型後のタイヤ作動中、トレッドの下面に沿って特徴部又はボイドに密接した場所、例えばボイドがトレッドの下面と交差する場所で亀裂が発生すると共に/或いは進展する場合がある。
【0013】
図1を参照すると、全体としてタイヤ10の断面が示されている。タイヤ10は、トレッド10の半径方向広がり部分に取り付けられたトレッド20を有し、トレッド20は、互いに反対側に位置する側壁12相互間に延びる(幅方向に)幅及びタイヤ10の周囲に沿って延びる長さを有する。トレッド20は、外面22と反対側の下面24との間に延びる本体21を更に有している。外面22は、一般に、タイヤ作動中、タイヤ転動面、例えば路面又は地面に係合し、下面24は、トレッド20の取り付けのためにタイヤ又はタイヤカーカスの一部分に係合する。上述したように、接着剤層26が設けられるのが良く、この層26は、タイヤ10の一部分又はタイヤカーカスへのトレッド20の取り付け具合の向上を容易に、又は促進するようトレッド20の下面24に係合する。
【0014】
引き続き図1を参照すると、トレッド20は、トレッド特徴部28を有し、このトレッド特徴部は、トレッド20の厚みt中にボイド29を提供する。例えば一例として図2に示されている先行技術では、トレッド特徴部28又はボイド29は、開口部30を経てトレッド下面24に実質的に露出されており、開口部30は、ボイド29の幅に実質的に等しい。換言すると、トレッド特徴部28又はボイド29は、トレッド下面24まで実質的に下方に延びており、ボイド29の幅又は側部29aは、場所Iのところで下面24と交差する。したがって、図2に例として示されているように、タイヤ材料、例えば接着剤層26は、タイヤ硬化又は成型作業中、トレッド特徴部28のボイド29内に流れ込み又はこの中に変形して入り込む場合があり、それにより、タイヤ材料は、このような作業によりもたらされる熱及び圧力に起因して流動状態になり又は流体になる。異種材料が下面24に隣接して位置決めされる場合があるので、このような材料は、特定の成型又は硬化作業中、多少なりとも流動性になり又は流体になる場合がある。このような材料は又、異なる成型又は硬化パラメータ、例えば高い又は低い熱又は圧力を用いた場合にも多少なりとも流動性になり又は流体になる場合がある。さらに、タイヤ作動中、側部29aとトレッド下面24の交差部Iのところにも亀裂が発生すると共に/或いは進展する場合がある。というのは、交差部Iが応力集中領域になる場合があるからである。
【0015】
図3を参照すると、ボイド29中への材料の流れを十分に減少させると共に/或いは実質的になくすため且つ/或いは下面24に沿う亀裂の発生及び/又は進展を減少させると共に/或いはなくすため、トレッド20は、ボイド29の少なくとも一部分と下面24との間に延びる1つ又は2つ以上の部材32を有するのが良い。具体的に説明すると、1つ又は2つ以上の部材32の各々は、トレッド本体21又は特徴部28若しくはボイド29の側部29aから自由端34まで所望の幅w32だけ延びている。換言すると、1つ又は2つ以上の部材32は、開口部30を少なくとも部分的に横切って又は特徴部28若しくはボイド29の幅にわたって延びている。1つ又は2つ以上の部材32を備えたこのようなトレッド24は、タイヤ10の一部分を形成するようタイヤ10に取り付けられるのが良い。
【0016】
1つ又は2つ以上の部材32は、ボイド29の少なくとも一部分と下面24との間に延びる際、例えば図3〜図9に示されているように実質的に下面24に沿って延びるのが良く、或いは、他の実施形態では、下面24からトレッド厚みt中で側部29aに沿って任意の距離だけオフセットし又は離隔されるのが良い。このようなトレッド特徴部28又はボイド29は、トレッド外面22に開口しても良く又はこれと連絡状態にあっても良いことはいうまでもない。したがって、トレッド特徴部28は、トレッド外面22の下に埋没状態(即ち、隠され又は埋め込まれた状態)で設けられたものであっても良く、部分的に埋没状態(即ち、特徴部28が部分的に外面22と連絡状態にあり又はこれに露出されている状態)で設けられたものであっても良く、或いは埋没状態で設けられていなくても良い(即ち、実質的に完全に外面22に露出されていても良い)。上述したように、特徴部28は、ボイド29を含む。
【0017】
引き続き図3を参照すると、亀裂発生及び/又は進展を1つ又は2つ以上の部材32がボイド29又は特徴部28の側部29aから且つボイド29の少なくとも一部分と下面24との間に延びる場合、軽減することができると共に/或いはなくすことができる。亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすため、厚さt32を有する部材32が、側部29aから任意の距離又は幅w32にわたり延びるのが良い。したがって、部材32は、例えば図3〜図6b、図7bに例として示されているように開口部30を部分的に横切って又はボイド29の幅にわたって延びるのが良く、或いは、例えば図7、図8及び図9に例として示されているように開口部30を少なくとも実質的に横切って又はボイド29の幅にわたって延びるのが良い。全体として図6b〜図7bを参照すると、部材32は、互いにオーバーラップしているのが良い。側部29aから延びる部材32を提供することにより、亀裂発生場所Iをなくすことができ又は応力減少場所に移すことができる。さらに、自由端34が例えば図8に例として示されている対向した側部29aに当接し又は実質的に近づき又は例えば図9に例として示されているように対向した側部29aを越えて延びる場合、このような対向した側部29aに沿う亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすことができる。
【0018】
特定の実施形態では、亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすため、各部材32は、少なくとも約0.5ミリメートル(mm)又は少なくとも約1ミリメートル(mm)の最小幅w32を有し、更に、少なくとも約0.5mmの最大厚さt32,maxを有する。他の実施形態では、1つ又は2つ以上の部材32は、場所Iのところでの亀裂発生及び/又は進展を軽減し、移すと共に/或いはなくす上で十分に剛性の部材32を提供するよう任意他の幅、厚さ又は形状を有しても良い。このような部材32は、関連の特徴部28又はボイド29の寸法及び/又は形状、トレッド20を形成する材料の物理的及び化学的性質並びにタイヤ作動中にトレッド20に加わる荷重により様々であって良い。部材32が上述したように互いにオーバーラップし又は当接する場合、このような部材32の寸法形状を減少させることができる。というのは、追加の支持体を他のオーバーラップ又は当接部材32によって提供できるからである。
【0019】
本発明による部材32を提供する場合、部材32が側部29aから延びる起点としての(即ち、交差する)場所のところで又はこの近くにおいてこのような部材32の頂面(即ち、ボイド側表面)に沿って亀裂発生及び進展が生じる場合がある。全体として図5、図7〜図9を参照すると、この亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすために移行部33が設けられるのが良く、この移行部は、局所応力集中を減少させ又は実質的になくすよう働く。このような移行部は、図示のようにフィレット(即ち、アール付き、曲線状又は非直線状の移行部33)又は例えば面取り部(即ち、直線状移行部33)から成るのが良い。移行部33を備えた部材32は、可変厚さ部材32であると見なすことができる。
【0020】
特定の実施形態では、下面24から特徴部28又はボイド29中への望ましくない材料の流れ又は変位は、1つ又は2つ以上の部材32が特徴部28及び/又はボイド29の側部29a又はトレッド本体21から延びて少なくともタイヤ10又はタイヤカーカスへのトレッド20の張り付け時に十分に幅の狭い又は実質的に閉じられた開口部30aをもたらす(即ち、開口部30を十分に横切って延び又は実質的にこれを跨ぐ)場合、所望通りに軽減され及び/又はなくされる。例えば、図3〜図9の1つ又は2つ以上の部材32は、全体として図3〜図7bに示されているように対向した部材32相互間又は全体として図8及び図9に示されているように部材32と側部29a又はトレッド本体21の一部との間に形成される幅の狭い又は閉じられた開口部30aをもたらすよう延びるのが良い。したがって、1つ又は2つ以上の部材32は、ボイド29の少なくとも一部分を下面24から十分に又は実質的に離隔させることにより下面24とボイド29との間にバリヤ又はフローレストリクタ(制流子)として働く。このような部材32をバリヤ、フローレストリクタ、妨害物又はフラップと呼ぶことができる。
【0021】
特定の実施形態では、例えば、或る特定の路上トラック用タイヤに用いられるトレッドでは、幅の狭い開口部30aの幅は、約2ミリメートル(mm)以下、他の実施形態では、約1mm以下である。他の実施形態では、十分に幅の狭い開口部30aは、1又は2mmを超えても良く、即ち、開口部30aが或る特定の条件においてはボイド29中への材料の流れを減少させ又はなくす目的で2又は2mmを超えても十分である場合がある。例えば、望ましくない材料は、特定の成型及び/又は硬化作業中、流体としての状態ではない場合があり又は変形可能な場合がある。というのは、種々の成型及び/又は硬化パラメータ、例えば温度/又は圧力を変えることができるからである。さらに、ボイドに隣接して位置する望ましくない材料が様々な場合があるので、種々の物理的及び化学的性質を持つ材料は、同様な成型又は硬化条件では流動性が低い又は変形性が低い場合がある。さらに、剛性の増大した部材32は、変形性が低い場合があり、それにより、大きな開口部30aの使用が可能な場合がある。より剛性の高い部材32は、例えば断面積を増大させることにより又は互いにオーバーラップし又は当接した部材32を採用することによって達成できる。図3〜図9の1つ又は2つ以上の部材32のどれもが、例えば全体的に図6aに示されているように十分に幅の狭い開口部30aを形成するよう働くことができ又は全体として図3〜図5、図6b〜図9に例として示されているように実質的に閉じられた開口部30a(即ち、実質的に閉じられた開口部30)を形成することができる。
【0022】
実質的に閉じられた開口部30a(即ち、開口部30が実質的に閉じられている場合)は、1つ又は2つ以上の部材32が開口部30を実質的に横切って延びる場合、例えば、1つ又は2つ以上の部材32が別の部材32、側部29a又はトレッド本体21の任意他の部分に実質的に当接し又はこれとオーバーラップしている場合に生じる。例えば、図3〜図5の部材32は、互いに当接するよう延び、これに対し、図6b〜図7bの部材32は、互いにオーバーラップしている。図8では、部材32は、対向した側部29a又はトレッド本体21に当接するよう延びている。最後に、図9では、部材32は、切欠き又は凹部36を介してトレッド本体21に当接し又はこれに係合している。部材32がボイド29中への望ましくない材料の入り込み又は流れを減少させると共に/或いはなくすよう設けられている場合、亀裂発生及び/又は進展を軽減すると共に/或いはなくすことも又達成できる
【0023】
図4〜図11を参照すると、部材32の種々の変形実施形態が断面で示されている。しかしながら、1つ又は2つ以上の部材32は、任意所望の形状又は設計のものであって良いことが想定される。さらに、部材32はどれでも、トレッド20の任意の長さ又は幅に沿って延びても良い。具体的に説明すると、部材32は、トレッド20の幅又は長さの部分又は全体に沿って横方向に、斜めに又は周方向に延びても良い。
【0024】
各部材32は、厚さt32を有し、この厚さは、幅w32を横切って一定であっても良く、可変であっても良い。具体的に説明すると、全体として図4を参照すると、各部材32は、最大厚さt32,max及び最小厚さt32,minを有するのが良い。例えば、具体的に図4に示されているように且つ図5〜図7aでは非具体的に示されているように、可変厚さ部材32に関し、最大厚さt32,maxは、隣接の側部29aに沿って(即ち、部材32が延びる起点としての側部に沿って)見られるのが良く、最小厚さt32,minが自由端34のところに見られるのが良い。当然のことながら、最大厚さt32,max及び最小厚さt32,minは各々、可変厚さ部材32の幅w32に沿う任意の箇所で(即ち、部材32の互いに反対側の端相互間、例えば隣接の側部29aと自由端34との間の任意の場所で)生じても良い。特定の実施形態では、部材32の最大厚さt32,maxは、少なくとも約0.5mm、1mm又は2mmであるのが良い。部材32が例えば図6b及び図7aに例として示されているように一点までテーパしている場合、最小厚さt32,minは、ゼロに近づく。厚さが実質的に一定の部材32が図3に例として示されている。
【0025】
一定又は可変厚さ部材32が幅w32に沿って直線的に又は非直線的に延びることができる。全体として図4〜図9を参照すると、非直線的に延びる部材32が示されている。一定厚さ部材32が図3に直線状に延びるよう示されている。図5、図7a及び図7bを参照すると、図示の実施形態の変形例は、移行部材33を備えておらず、したがって、直線状に延び又はテーパした可変厚さ部材32を提供している。非直線状に延びる部材32は、任意の非直線方向又は経路をなして延びる部分(即ち、部材32の頂(又はボイド側)面及び/又は底面(又は下面))を有するのが良く、このような非直線状方向又は経路としては、例えば、弧状、曲線状(波形)又は段付き方向又は経路が挙げられるが、これらには限定されない。弧状経路が図4、図6a及び図6bに示されている。
【0026】
上述したように、特徴部28は、トレッド20の任意所望の特徴部から成っていて良い。例えば、特徴部28は、溝であっても良く又はボイド29を形成する任意他のポケット又はセグメントであって良く、ボイド29は、トレッド20のボイド比を増大させるよう設けられるのが良い。これは、例えば、ウェット時、積雪時、又は軟弱な土壌時(即ち、ダート、泥又は砂)性能を向上させる上で有用な場合がある。特徴部28のボイド29は又、サイプから成っていても良く、サイプは、これがタイヤフットプリントに入ってこれを通り続けているときに閉じ(即ち、それ自体内方に潰れ)、後でこれがタイヤフットプリントを出るときに開くようになった本質的に細い溝である。したがって、特徴部28及びボイド29の形状は、任意の断面形状のものであって良い。例えば、図3及び図4を参照すると、特徴部28及び/又はボイド29の断面形状は、全体として長方形であるのが良い。全体として図5〜図6aを参照すると、特徴部28及び/又はボイド29は、それぞれ全体として台形又は長円形であるのが良い。図6bを参照すると。ボイド29は、円形であるのが良く、特定の実施形態では、少なくとも約6mmの直径を有する円から成るのが良く、1つ又は2つ以上の部材32は、約3mm以上の最大厚さt32,maxを有する。特定の実施形態では、ボイド29は、断面で見て幅が約6〜8mm、高さが8mmであるが、他の実施形態では、ボイド29は、任意所望の寸法のものであって良い。
【0027】
全体として図6b〜図7bを参照すると、2つ又は3つ以上の部材32は、互いにオーバーラップしているのが良く、他方、ボイド開口部30を少なくとも部分的に横切って延びている。部材32のオーバーラップ構成を達成するため、少なくとも1つの部材32は、可変の又はテーパした厚さを有するのが良い。図6b〜図7aに示されている実施形態は、各々がテーパした又は可変厚さt32を有する互いにオーバーラップした部材32を提供している。他の実施形態では、実質的に一定の厚さt32を有する部材32は、例えば、側部29aに沿い又はトレッド厚さtに沿って各部材32の垂直位置を変更し又は互い違いにすることによって互いにオーバーラップするのが良い。例えば、図8に示されている実施形態は、互いにオーバーラップした部材32の互い違い構造を提供するよう改造されても良く、この場合、第2の部材32は、既存の部材32に対向した側部29aから部材32のうちの少なくとも1つが実質的に一定厚さt32を有する既存の部材32の上方の位置まで延びる。また、部材32の互い違い構造中の部材32の各々は、可変の又はテーパした厚さt32を有しても良いことが想定される。さらに別の変形例では、互いにオーバーラップした部材32は、一実施形態に従って、例えば全体が図7bに示されているように対向した部材32相互間の切欠き付き、段付き又は異形の(直線又は非直線状)のインターフェイスを提供することによって達成できる。また、変形例として、互いにオーバーラップした部材32の1つ又は2つ以上の相互インターフェイス関係をなす表面に沿って模様付けすること又は例えば溝又は起伏部のような特徴部を提供して互いにオーバーラップした部材32相互間のインターロック、結合又は機械的インターフェイスを促進し又は違ったやり方で、部材32が1つ又は2つ以上の部材32に加えられる力に良好に抵抗することができるようにすることが挙げられる。互いにオーバーラップした部材32相互間に十分に縮小し又は実質的に閉じられた開口部30aを形成することができる。
【0028】
1対の部材32がボイド29の対向した側部から延びて協働して開口部30を縮小し又は閉じている図3〜図7bに示された実施形態の変形例として、単一の部材32が例えば全体的に図8及び図9に示されているように開口部30を十分に縮小し又は実質的に閉じるよう(即ち、実質的に縮小し又は実質的に閉じられた開口部30aを形成するよう)特徴部28及び/ボイド29の少なくとも一部分を横切って延びても良い。したがって、単一の部材32は、少なくともトレッド20の特定の長さに沿い、トレッド20の下面24に沿って開口部30の少なくとも一部分又はボイド29の幅を横切って延び又は開口部30を跨ぐのが良い。図8に示された変形例では、部材32の自由端部34は、縮小開口部30aを備え、この開口部の幅は、特定の実施形態では、約2mm以下又は1mm以下である。他の実施形態では、自由端部34は、特徴部28、ボイド29及び/又は開口部30の対向した側部20aに接触し又は当接する。
【0029】
図9に示されている変形例では、部材32は、開口部30の幅よりも広い幅w32だけ延びている。図9では、例えば、部材32の自由端34は、特徴部28及び/又はボイド29の反対側の側部に沿って設けられた切欠き36に係合するのが良い。切欠き36は、任意形状のものであって良く、例えば、段付き、丸形若しくは傾斜(テーパ付き)インターフェイス又は部材32とのインターロックを容易にする任意の形状のものであって良い。図9に示されている切欠き36は、階段状切欠きである。切欠き36により、部材32は、ボイド29に入って部材32を変位させようとする材料の流入に良好に抵抗することができる。というのは、切欠き36は、部材32に作用する力に抵抗するよう部材32が係合する表面を提供するからである。また、このような特徴部又はテキスチャは、切欠き36と部材32のインターロックを容易にするよう切欠き36及び/又は部材32のインターフェイス関係をなす部分に沿って設けられるのが良い。
【0030】
全体として図10a〜図11を参照すると、部材32の変形実施形態が提供されている。このような実施形態では、1つ又は2つ以上の部材32は、開口部30に対して開放位置で成形されており、その結果、1つ又は2つ以上の部材32は、トレッド20の下面24から外方に延びるよう成形され、タイヤ又はタイヤカーカスへのトレッド20の張り付け時、1つ又は2つ以上の部材32は、逸らされて開口部30の少なくとも一部を横切って延びるようになり、それにより他の実施形態において上述した1つ又は2つ以上の部材32として働くようになる。例えば、図10aに示されている実施形態は、全体として、図9に示されている実施形態の開放バージョンであり、図11で示されている実施形態は、図4又は図7aに示されている実施形態の開放バージョンである。全体的に図10bに例として示されているように、切欠き38は、ボイド29及び開口部30に対する部材32の逸れ及び閉鎖具合の向上を容易にするよう部材32の任意の側部に沿って配置されるのが良い。丸形特徴部を備えた切欠き38(並びに切欠き36)は、タイヤ作動中における亀裂発生に良好に抵抗することができる。
【0031】
他の実施形態では、1つ又は2つ以上の部材32は、トレッド20と一緒に形成される(即ち、成形される)やり方に代えて、トレッド20とは別個独立に1つ又は2つ以上の部材32が形成され、次に、トレッド20に張り付けられても良い。例えば、上述した部材32は、トレッド20とは別個独立に形成できる。全体として図12を参照すると、他の変形例では、部材32は、対向した切欠き36相互間でボイド29の側部29aからボイド29を横切って延びるのが良く、それにより1つ又は2つ以上の部材32を下面24を越えて突き出ることなく、トレッド20の厚み中に設けることができる。他の変形例では、別個独立に形成された部材32は、たった1つの切欠き36に係合しても良く、或いは、どの切欠き36にも係合しなくても良い。独立して形成された部材32は、タイヤ10を最終的に成型すると共に/或いは硬化させる前に予備形成又は予備成形トレッド20又はタイヤ10に張り付けられ又は取り付けられるのが良い。当業者に知られている手段、例えば接着剤を用いると、別個独立に形成された部材32をトレッド20及び/又はタイヤ10に取り付けることができる。これとは対照的に、図3〜図11に示されている1つ又は2つ以上の部材32は、例えば成形によりトレッド本体21と一体に形成される。
【0032】
上述した任意の実施形態において、トレッド特徴部28、ボイド29、下面24、部材32及び任意他の成形表面は、成形後プロセスに先立って且つ/或いは成形後プロセス中、その汚染を減少させると共に/或いはなくすように処理されるのが良い。汚染を減少させ又はなくすことにより、タイヤ又はタイヤカーカスへのトレッド20及び部材32の接着及び結合具合の向上が可能である。向上した接着及び結合は、互いに接触した部材32相互間においても得られる。当業者に知られている種々の材料及び/又はプロセスを用いてタイヤとの十分な結合を容易にするようトレッド表面を調製し保護すると共に保つことができる。表面は、このような表面をフィルム又は組織に当てて成形することによって作られると共に保護されても良い。ブラシ掛け、研削又は化学薬品の使用、ブラスチングプロセス、例えば極低温CO2ブラスチング、レーザアブレーション又は当業者に一般的に知られている任意他のプロセス又はプロセスの組み合わせによって表面をクリーニングすると共に/或いは模様付けすることができる。
【0033】
全体として図13を参照すると、トレッド20中に部材32を形成するモールド50が提供されている。モールド50を用いると、上述した任意の部材32又はその任意の変形例を形成することができる。モールド50は、一般に、モールドキャビティ56を形成する複数個のモールド部分を有する。図13に示されている実施形態では、モールド50は、一般に、一緒になってモールドキャビティ56を形成する対向したモールド部分52,54を有する。第1のモールド部分52及び第2のモールド部分54は各々、トレッド20中に任意所望のトレッド特徴部を形成する要素を有するのが良い。例えば、モールド要素58は、トレッド外面22に沿ってトレッド特徴部、例えば溝又はサイプを形成するよう第1のモールド部分52からキャビティ56内に延びるのが良い。さらに、第2のモールド部分54は、底面55から延びる1つ又は2つ以上のボイド形成要素60を有する。各ボイド形成要素60は、トレッド20の下面24に沿って特徴部28及び/又は対応のボイド29を形成する。第2のモールド部分54は、1つ又は2つ以上の凹部64を形成する1つ又は2つ以上の凹部形成要素62を更に有する。
【0034】
ボイド形成要素60とモールド底面55との間に凹部形成要素62と関連して凹部64が形成されている。各凹部64は、対応のトレッド20に上記において開示され又は想定された任意の部材32を形成する。1つ又は2つ以上の凹部64は、1つ又は2つ以上の部材32が上述したボイド29の幅を横切って延びているので、ボイド形成要素の幅を少なくとも部分的に横切って延びている。特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の凹部64は、少なくとも約0.5mm、1mm又は2mmにわたって延びるのが良い。幅の小さな凹部64が他の実施形態において存在しても良い。さらに凹部形成要素62は、トレッド20中にボイド29の縮小開口部30aを形成することができ、このような凹部形成要素は、上記において計画された縮小開口部30aの幅と実質的に同じ幅を有する。特定の実施形態では、凹部形成要素62の幅は、約2mm以下、又は1mm以下である。他の実施形態では、凹部形成要素62の幅は、これよりも大きくても良い。
【0035】
凹部形成要素62は、ボイド形成要素60をトレッド下面24を形成する底面55から間隔を置いた関係に保つ。ボイド形成要素60及び対応の凹部形成要素62は、単一モールド要素として形成されても良く、或いは、別個独立に形成されて後でモールド50内での使用のために結合されても良い。凹部形成要素62は、存在しなくても良く、その代わり、ボイド形成要素60の一部が凹部形成要素62としての役目を果たして良いことが想定される。モールド要素60及び/又はモールド要素62は、対応のモールド部分54と共に形成されても良く、或いは、別々に形成されて任意公知の手段、例えば締結具又は溶接の使用によりモールド部分54に取り付けられても良い。
【0036】
例えば図14に例として示された他の実施形態では、部材32を形成する1つ又は2つ以上の凹部64がキャビティ底面55中に延びるのが良い。このような実施形態では、モールド50は、一般に、上述したように且つ全体として図10a〜図11に示されているように開放位置で成形される部材32を形成するために用いられ、これら部材32は、トレッド下面24から外方に(即ち、下方に)延びる。モールド50は、トレッド20中に切欠き36を形成する切欠き形成要素66を更に有するのが良い。モールド50は、上述したトレッド20の任意他の特徴部若しくは部分又はその任意の変形例を形成する任意他の要素又は凹部を更に有するのが良い。
【0037】
本発明をその特定の実施形態に関して説明したが、このような説明は、例示であって、本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。したがって、本発明の範囲及び内容は、添付の特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドであって、
長さ、幅、及び厚さを備えたトレッド本体を有し、その厚みが外面及び下面によって画定され、
前記トレッド本体の前記厚み中に設けられたボイドを有し、
前記ボイドの側部から延びると共に前記ボイドの少なくとも一部分と前記トレッド下面との間に延びる1つ又は2つ以上の部材を有する、タイヤトレッド。
【請求項2】
前記トレッドは、タイヤの一部分を形成している、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項3】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記トレッド本体から延びている、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項4】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々は、前記トレッド本体と一体形成されている、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項5】
前記1つ又は2つ以上の部材は、1対の部材から成り、前記部材の各々は、前記ボイドの互いに対向した側部から延びている、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項6】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々は、前記ボイドの幅を少なくとも部分的に横切って延びている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のタイヤトレッド。
【請求項7】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々の幅は、少なくとも約0.5mmである、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項8】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々の厚さは、少なくとも約0.5mmである、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項9】
前記1つ又は2つ以上の部材のうちの少なくとも1つは、前記ボイドの開口部を実質的に横切って延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項10】
前記1つ又は2つ以上の部材のうちの少なくとも1つは、前記トレッド本体に設けられた切欠きに係合する、請求項9記載のタイヤトレッド。
【請求項11】
前記1つ又は2つ以上の部材は、互いにオーバーラップしている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項12】
前記1つ又は2つ以上の部材は、縮小開口部を形成するよう延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項13】
前記縮小開口部の幅は、約2mm以下である、請求項12記載のタイヤトレッド。
【請求項14】
前記縮小開口部は、実質的に閉じられている、請求項12記載のタイヤトレッド。
【請求項15】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記実質的に閉じられた開口部を形成するよう実質的に互いに当接した1対の対向した部材から成る、請求項14記載のタイヤトレッド。
【請求項16】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記下面から外方に延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項17】
前記部材のうちの少なくとも1つの厚さは、前記部材の幅に沿って変化している、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項18】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記トレッド下面に沿って延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項19】
前記ボイドは、前記トレッド外面の下に隠れた状態で設けられている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項20】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記ボイドの幅を横切って延びる独立して成形された部材を含み、前記独立成形部材は、各々が前記ボイドの前記側部に沿って前記トレッド本体内に設けられた切欠きに係合する互いに反対側の端部を有する、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項21】
請求項1記載の成形タイヤトレッドを形成するモールドであって、前記モールドは、
複数個のモールド部分によって形成されていて、底面を備えたキャビティを有し、
前記キャビティ内に延びるボイド形成要素を有し、前記ボイド形成要素は、前記トレッドの厚み中にボイドを形成し、
前記キャビティ底面と前記ボイド形成要素との間に延びる凹部形成要素を有し、
前記ボイド形成要素に隣接して設けられた1つ又は2つ以上の凹部を有し、前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記成形トレッド内に1つ又は2つ以上の部材を形成し、前記1つ又は2つ以上の部材は、前記ボイドの側部から延びると共に前記ボイドの少なくとも一部分とトレッド下面との間に延びている、タイヤトレッドモールド。
【請求項22】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記キャビティ底面中に延びている、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項23】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記ボイド形成要素の幅を少なくとも部分的に横切って延びている、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項24】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記ボイド形成要素の幅を少なくとも約0.5mmだけ横切って延びている、請求項23記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項25】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記ボイド形成要素の幅を実質的に横切って延びている、請求項23記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項26】
前記凹部形成要素は、前記トレッド中に前記ボイドの縮小開口部を形成している、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項27】
前記凹部形成要素の幅は、約2mm以下である、請求項26記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項28】
前記1つ又は2つ以上の凹部の厚さは、各前記凹部の幅に沿って変化している、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項1】
タイヤトレッドであって、
長さ、幅、及び厚さを備えたトレッド本体を有し、その厚みが外面及び下面によって画定され、
前記トレッド本体の前記厚み中に設けられたボイドを有し、
前記ボイドの側部から延びると共に前記ボイドの少なくとも一部分と前記トレッド下面との間に延びる1つ又は2つ以上の部材を有する、タイヤトレッド。
【請求項2】
前記トレッドは、タイヤの一部分を形成している、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項3】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記トレッド本体から延びている、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項4】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々は、前記トレッド本体と一体形成されている、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項5】
前記1つ又は2つ以上の部材は、1対の部材から成り、前記部材の各々は、前記ボイドの互いに対向した側部から延びている、請求項1記載のタイヤトレッド。
【請求項6】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々は、前記ボイドの幅を少なくとも部分的に横切って延びている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のタイヤトレッド。
【請求項7】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々の幅は、少なくとも約0.5mmである、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項8】
前記1つ又は2つ以上の部材の各々の厚さは、少なくとも約0.5mmである、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項9】
前記1つ又は2つ以上の部材のうちの少なくとも1つは、前記ボイドの開口部を実質的に横切って延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項10】
前記1つ又は2つ以上の部材のうちの少なくとも1つは、前記トレッド本体に設けられた切欠きに係合する、請求項9記載のタイヤトレッド。
【請求項11】
前記1つ又は2つ以上の部材は、互いにオーバーラップしている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項12】
前記1つ又は2つ以上の部材は、縮小開口部を形成するよう延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項13】
前記縮小開口部の幅は、約2mm以下である、請求項12記載のタイヤトレッド。
【請求項14】
前記縮小開口部は、実質的に閉じられている、請求項12記載のタイヤトレッド。
【請求項15】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記実質的に閉じられた開口部を形成するよう実質的に互いに当接した1対の対向した部材から成る、請求項14記載のタイヤトレッド。
【請求項16】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記下面から外方に延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項17】
前記部材のうちの少なくとも1つの厚さは、前記部材の幅に沿って変化している、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項18】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記トレッド下面に沿って延びている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項19】
前記ボイドは、前記トレッド外面の下に隠れた状態で設けられている、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項20】
前記1つ又は2つ以上の部材は、前記ボイドの幅を横切って延びる独立して成形された部材を含み、前記独立成形部材は、各々が前記ボイドの前記側部に沿って前記トレッド本体内に設けられた切欠きに係合する互いに反対側の端部を有する、請求項6記載のタイヤトレッド。
【請求項21】
請求項1記載の成形タイヤトレッドを形成するモールドであって、前記モールドは、
複数個のモールド部分によって形成されていて、底面を備えたキャビティを有し、
前記キャビティ内に延びるボイド形成要素を有し、前記ボイド形成要素は、前記トレッドの厚み中にボイドを形成し、
前記キャビティ底面と前記ボイド形成要素との間に延びる凹部形成要素を有し、
前記ボイド形成要素に隣接して設けられた1つ又は2つ以上の凹部を有し、前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記成形トレッド内に1つ又は2つ以上の部材を形成し、前記1つ又は2つ以上の部材は、前記ボイドの側部から延びると共に前記ボイドの少なくとも一部分とトレッド下面との間に延びている、タイヤトレッドモールド。
【請求項22】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記キャビティ底面中に延びている、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項23】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記ボイド形成要素の幅を少なくとも部分的に横切って延びている、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項24】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記ボイド形成要素の幅を少なくとも約0.5mmだけ横切って延びている、請求項23記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項25】
前記1つ又は2つ以上の凹部は、前記ボイド形成要素の幅を実質的に横切って延びている、請求項23記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項26】
前記凹部形成要素は、前記トレッド中に前記ボイドの縮小開口部を形成している、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項27】
前記凹部形成要素の幅は、約2mm以下である、請求項26記載のタイヤトレッドモールド。
【請求項28】
前記1つ又は2つ以上の凹部の厚さは、各前記凹部の幅に沿って変化している、請求項21記載のタイヤトレッドモールド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−507447(P2012−507447A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535546(P2011−535546)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082496
【国際公開番号】WO2010/053478
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082496
【国際公開番号】WO2010/053478
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【Fターム(参考)】
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