説明

タイヤ内圧測定システム

【課題】タイヤの内圧を検出する検出器の構造を簡素化し、コスト並びにタイヤの使用状態への影響を抑える。
【解決手段】タイヤ内圧測定システム1は、タイヤの内圧を検出する検出器40と、検出器40によって検出されたタイヤの内圧に関するデータを取得する取得装置20と、検出器40に設けられた検出側アンテナ部と取得装置に設けられた取得側アンテナ部との相対位置を調整可能な位置調整機構と、を備えている。検出側アンテナ部は、前記検出側アンテナ部と前記取得側アンテナ部との相互インダクタンスに基づいて、前記取得側アンテナ部との相対位置を調整されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内圧を検出する圧力センサと、圧力センサによって検出されたタイヤ内圧に関するデータを取得する取得装置とを有するタイヤ内圧測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの内圧を検査する方法として、タイヤが組み付けられたリムホイールに設けられた圧力センサによって測定された内圧データを、車両に設けられたリーダ部において非接触で検出するタイヤ内圧測定システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上述のタイヤ内圧測定システムにおいて、圧力センサを含む検出器及び検出器から内圧データを取得するリーダ部は、コイルからなるアンテナ部をそれぞれ有する。検出器は、互いのアンテナ部間に起こる電磁誘導作用によって生じた誘導起電力をコンデンサによって蓄えて、構成回路が駆動するように構成されている。
【0004】
また、圧力センサによって検出した内圧データに応じた圧力信号を制御回路によってデジタル信号に変換した後、電波による送信に適したアナログ信号に変換する。そして、アナログ信号をコイルから構成されるアンテナ部によって、リーダ部に対して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−136383号公報 図1など
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のタイヤ内圧測定システムには、以下の問題があった。
【0007】
検出器のアンテナ部は、コンデンサとコイルとからなる共振回路によって構成されておいる。このような共振回路を用いて内圧データを送受信すると、ノイズの影響によってデータの検出精度が低下するおそれがある。
【0008】
更に、検出器のアンテナ部は、コンデンサとコイルからなるシンプルな構成であるため、製造誤差による構成のバラツキが生じやすい。例えば、複数のタイヤに対して検出器を装着し、この検出器によって複数のタイヤの内圧データを取得するように構成された空気圧測定システムにおいては、製造誤差がよってアンテナ部の構成が一定でない場合には、検出器毎に内圧データのばらつきが生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、共振回路を有する検出器と、この共振回路の共振波形を取得してタイヤの内圧データを取得する取得装置と、を備えるタイヤ内圧測定システムにおいて、タイヤ内圧の検出精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明の特徴は、タイヤの内圧を検出する検出器(検出器40)と、前記検出器によって検出されたタイヤ(タイヤ10)の内圧に関するデータを取得する取得装置(取得装置20)とを有するタイヤ内圧測定システム(タイヤ内圧測定システム1)であって、前記検出器は、前記タイヤの内圧によって電極間距離が変化することによって静電容量が変化する静電容量センサ(静電容量センサ41)と、コア材に導線が巻回されたコイルによって形成されており、前記静電容量センサに接続された検出側アンテナ部(検出側アンテナ部42)とからなる共振回路を備え、前記取得装置は、コア材に導線が巻回されたコイルによって形成されており、前記検出側アンテナ部に電磁誘導によって起電力を発生させるとともに前記起電力によって充電された前記静電容量センサと前記検出側アンテナ部とからなる共振回路の共振波形を取得する取得側アンテナ部(取得側アンテナ部51)と、前記検出側アンテナ部に起電力を与える駆動部(パルス発振部52、スイッチング回路53)と、前記共振波形を増幅する信号増幅部(増幅回路54)と、前記増幅された共振波形のうち所定数の波形を分周する分周部(分周回路55)と、前記分周して得られた波形の立ち上がりから立ち下がりまでの期間を電圧値に変換する変換部(変換部56,57)と、前記変換部によって変換された電圧値に基づいて前記タイヤの内圧を算出する圧力算出部(圧力算出部58)と、を備えている。タイヤ内圧測定システムは、検出側アンテナ部と取得側アンテナ部との相対位置を調整可能な位置調整機構(雄ねじ部43a、雌ねじ部33a)を備えており、検出側アンテナ部は、検出側アンテナ部と取得側アンテナ部との相互インダクタンスに基づいて、取得側アンテナ部との相対位置を調整されるように構成されていることを要旨とする。
【0011】
本発明によれば、取得装置は、検出器において発生した共振波形の共振周波数の変化量をタイヤの内圧の変化量に直接対応させるのではなく、共振波形を分周して得られた波形の立ち上がりから立ち下がりまでの期間を電圧値に変換する。具体的には、取得装置は、起電力によって充電された静電容量センサと検出側アンテナ部とからなる共振回路の共振波形を取得し、この共振波形の立ち上がりから立ち下がりまでの期間に対応付けられるタイヤ内圧を測定できるように構成されている。よって、検出器において発生した共振波形の共振周波数の変化量をタイヤの内圧の変化量に直接対応させないため、ノイズの影響による精度の低下を抑制することができる。
【0012】
また、検出側アンテナ部は、検出側アンテナ部と取得側アンテナ部との相互インダクタンスに基づいて、取得側アンテナ部との相対位置を調整可能に構成されている。静電容量センサとコイルからなる共振回路は、比較的シンプルな構成であり、製造誤差等によって、静電容量センサとコイルの構成や検出側アンテナと取得側アンテナとの距離等が変化すると、共振波形に影響し、検出精度が低下してしまうおそれがある。しかし、検出側アンテナ部と取得側アンテナ部との相互インダクタンスに基づいて、検出側アンテナ部の位置を調整するように構成されているため、検出側アンテナ部と取得側アンテナ部との相互インダクタンスを一定値にすることができる。よって、検出器等の製造誤差による内圧データの検出精度の低下を抑制することができる。
【0013】
なお、相互インダクタンスとコイル間の距離とは、反比例の関係にあり、コイル間の距離を調整することにより相互インダクタンスを調整することができる。また、検出側アンテナの位置調整は、検出側アンテナのみの位置を調整するように構成してもよいし、検出器全体の位置を調整するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、共振回路を有する検出器と、この検出器の共振波形を取得してタイヤの内圧データを取得する取得装置とを備えるタイヤ内圧測定システムにおいて、検出側アンテナと取得側アンテナの相互インダクタンスに基づいて検出側アンテナと取得側アンテナとの距離を調整することができる。相互インダクタンスを調整することによって、共振回路の共振周波数を調整することができる。よって、検出器等の製造誤差による内圧データの誤差を低減し、タイヤ内圧の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るタイヤ内圧測定システムの概略構成を説明する図である。
【図2】検出器の概略構成と検出器が配置される位置を説明する図である。
【図3】静電容量センサの構成を説明する図である。
【図4】検出器の位置調整機構を説明する図である。
【図5】タイヤ内圧測定システムの回路構成を説明する図である。
【図6】変更例に係る検出器の位置調整機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るタイヤ内圧測定システム1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)タイヤ内圧測定システムの概略構成の説明、(2)検出器の構成及び検出器の配置位置の説明、(3)タイヤ内圧測定システムの回路構成、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態、について説明する。
【0017】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0018】
(1)タイヤ内圧測定システムの概略構成の説明
図1は、実施形態に係るタイヤ内圧測定システム1の概略構成を説明する図である。図1には、タイヤ10と、タイヤ10が組み付けられたリムホイール11が描かれている。リムホイール11には、タイヤ10とリムホイール11との間に形成された気室ARに空気を注入するバルブ30が取り付けられている。
【0019】
バルブ30は、バルブコア31と、バルブステム32と、バルブキャップ33とを有する。バルブコア31は、タイヤ10とリムホイール11との間に形成される気室ARに連通された気室側端部31eと空気を注入する注入口31aとを有する。バルブコア31は、バルブステム32に挿入され、リムホイール11に取り付けられる。バルブキャップ33は、バルブコア31の注入口31aを覆うようにバルブステム32に装着される。
【0020】
実施形態のタイヤ内圧測定システム1は、タイヤの内圧を検出する検出器40(図1には不図示)と、検出器40によって検出されたタイヤの内圧に関するデータを取得する取得装置20とを有する。取得装置20は、後述するアンテナ部等を収容する保持部21、使用者からの入力を受け付ける入力部22(一部のみ図示)などを有し、検出器40によって検出されたタイヤ10の内圧に関するデータを非接触により取得する。実施形態では、検出器40は、バルブ30に装着されており、該バルブ30はタイヤ装着部材に相当する。
【0021】
(2)検出器の構成及び検出器の配置位置の説明
図2は、検出器40の概略構成と検出器40が配置される位置を説明する図である。検出器40は、静電容量センサ41と、検出側アンテナ部42と、収容部43(図4参照)とを有する。静電容量センサ41は、電極間距離が変化することによって静電容量が変化するコンデンサである。図3は、静電容量センサの内部構成を示す断面図であり、図4は、バルブキャップの内部構成及び検出器を示す模式断面図である。
【0022】
検出側アンテナ部42は、コア材(不図示)に導線42aが巻回されたコイルによって形成されている。すなわち、静電容量センサ41と検出側アンテナ部42とは、LC共振回路を構成している。静電容量センサ41と検出側アンテナ部42は、収容部43に収容されている。収容部43は、静電容量センサ41と検出側アンテナ部42とを収容可能な内部空間を有する中空状である。
【0023】
静電容量センサ41は、圧力を検出する検知面41aを有する。図2に示す実施形態では、検知面41aが注入口31aに対向するように静電容量センサ41がバルブキャップ33の内部に配置される。また、検出側アンテナ部42もバルブキャップ33の内部に配置される。
【0024】
図2に示す実施形態では、バルブキャップ33がバルブステム32に取り付けられると収容部43の底面43b(図4参照)が注入口31aを押し込み、タイヤの内圧が検知面41aにかかるようになっている。なお、図2では、バルブステム32は省略されている。
【0025】
静電容量センサ41は、図3に示すように、センサ筐体411と、密閉された空間(気密部という)Rが形成されるようにセンサ筐体411に取り付けられるダイヤフラム部412とを有する。
【0026】
気密部Rを形成するセンサ筐体411の底部411bには、筐体側電極413が配置される。また、ダイヤフラム部412の内側には、ダイヤフラム電極414が配置される。筐体側電極413とダイヤフラム電極414とは、コンデンサを構成する。
【0027】
検出器40では、ダイヤフラム部412に外側から加わる力(図3に示す矢印F)が増えると、ダイヤフラム部412は、気密部Rの容量を減少させる方向に変形する。また、減少すると、ダイヤフラム部412は、気密部Rの容量を増加させる方向に変形する。コンデンサでは、電極間隔が狭くなるほど静電容量が増加するため、ダイヤフラム部412にかかる圧力が高いほど、静電容量が増加する。
【0028】
検出器40の収容部43は、バルブ30を構成するバルブキャップ33内に固定されている。検出器40の収容部43は、円柱状であって、その外周面には、円周方向に沿った螺旋状の雄ねじ部43aが形成されている。バルブキャップ33は、検出器40の収容部43が挿入可能な空間を有する中空状であって、その内周面には、円周方向に沿って螺旋状に延び、かつ雄ねじ部43aに螺合する雌ねじ部33aが形成されている。この雄ねじ部43aと雌ねじ部33aとは、位置調整機構を構成している。
【0029】
収容部43をバルブキャップ33に対して回転させることにより、収容部43は、検出側アンテナ部42を構成するコイルの軸方向に沿って移動される。具体的には、収容部43をバルブキャップ33に対して回転させることにより、雄ねじ部43aが雌ねじ部33aに沿って移動し、検出側アンテナ部42を構成するコイルの軸方向に沿って収容部43が移動される。収容部43には検出器40が固定されており、検出側アンテナ部42は、検出器40の移動に伴ってコイルの軸方向に沿って移動する。検出側アンテナ部42が軸方向に沿って移動させることにより、検出側アンテナ部42と取得側アンテナ部51との距離Dを調整することができる。
【0030】
バルブキャップ33の先端(取得側の先端)には、取得装置20の保持部21が当接する段差部33bが形成されている。段差部33bには、保持部21の先端部21aが当接する。段差部33b及び先端部21aは、位置決め部を構成する。取得装置20の先端部21aとバルブキャップ33の段差部33bとが当接した状態では、取得装置20とバルブキャップ33とが嵌合して、バルブ30内の検出器40と取得装置20との相対位置を一定に保つことができるように構成されている。
【0031】
取得装置20の保持部21は、検出器40を内包するバルブキャップ33と別体であって、バルブキャップに対して着脱自在に設けられている。例えば、取得装置20によってタイヤの内圧データを複数回取得する際に、取得装置20とバルブキャップ33との相対位置が一定に維持されないと、取得装置20と検出器40との距離が一定に保たれず、タイヤの内圧データを正確に取得できないおそれがある。しかし、バルブキャップ33と取得装置20との移動を規制する位置決め部を備えることにより、バルブキャップ33と取得装置20との距離を一定に保つことができ、取得装置20と検出器40との相対位置を一定に保ち易くなる。
【0032】
(3)タイヤ内圧測定システムの回路構成
次に、タイヤ内圧測定システム1の回路構成について説明する。図4は、タイヤ内圧測定システムの回路構成を説明する図である。タイヤ内圧測定システム1は、タイヤ10の内圧を検出する検出器40と、検出器によって検出されたタイヤ10の内圧に関するデータを取得する取得装置20とを有する。
【0033】
検出器40は、静電容量センサ41と検出側アンテナ部42とからなるLC共振回路を構成している。
【0034】
LC共振回路では、静電容量の増加によって、共振周波数の減衰特性が変わる。このため、実施形態では、コンデンサである静電容量センサ41と、検出側アンテナ部42を構成するコイルとの間の共振周波数の共振波形を検出し、予め決められた数の波形を分周して得られる波形の立ち上がりから立ち下がりまでの期間を電圧値に変換している。
【0035】
取得装置20は、取得側アンテナ部51と、パルス発振部52と、スイッチング回路53と、増幅回路54と、分周回路55と、変換部56と、圧力算出部58とを有し、図示しない制御部によって制御されている。
【0036】
取得側アンテナ部51は、図1に示す保持部21に内蔵されている。取得側アンテナ部51は、コア材に導線51aが巻回されたコイルによって形成されており、検出器40の検出側アンテナ部42に、電磁誘導によって誘導起電力を発生させる。また、取得側アンテナ部51は、検出器40の検出側アンテナ部42に発生させられた起電力によって充電された静電容量センサ41と検出側アンテナ部42とからなるLC共振回路の共振に同調して、共振波形を取得する。
【0037】
パルス発振部52は、検出側アンテナ部42に与える起動パルスを生成する。スイッチング回路53は、パルス発振部52によって発生させた起動パルスを取得側アンテナ部51に送る起動モードと、検出側アンテナ部42から共振波形を取得する取得モードとを、図示しない制御部から送られる切替信号に応じて切り替える。
【0038】
増幅回路54は、検出器40のLC共振回路の共振に同調して取得側アンテナ部51から取得した共振波形を増幅する。これによりノイズ成分と信号成分とを分離することができる。
【0039】
分周回路55は、増幅された共振波形のうち所定数の波形を1つのパルスに分周する。
【0040】
例えば、取得された共振周波数が減衰するまでの期間内に得られた10波形分のパルスを1パルスに分周する。
【0041】
取得直後の共振波形には、起動パルスの影響によるノイズ成分が含まれる。また、共振周波数は時間とともに減衰し微弱になるためノイズ成分との分離が難しくなる。そのため、取得開始直後の波形は採用せず、起動パルスに起因するノイズ成分が無視できる程度になったときから、ノイズ成分を分離することが不可能になる直前までの期間の共振波形を抽出する。実施形態では、この共振波形が10波形分程度である。
【0042】
本実施の形態の回路構成では、変換部56は、CR充電回路561を備える。CR充電回路561は、分周して得られた波形の立ち上がりから立ち下がりまでの期間、コンデンサCに充電する。充電された電圧値は、A/D変換器562においてデジタル信号に変換される。第1の回路構成では、CR充電回路561の時定数は、静電容量センサ41において検出された圧力変化が電圧変化として明確になるように設定される。
【0043】
圧力算出部58は、電圧値のデジタル信号をタイヤ内圧に対応付ける。電圧値とタイヤ内圧との対応テーブルを予め計測して得られた結果をメモリなどに格納して用意しておくことができる。圧力算出部58は、対応テーブルを参照して、電圧値に対応するタイヤ内圧を決定する。
【0044】
実施形態のタイヤ内圧測定システム1によれば、以上のようにして、タイヤ内圧を測定できる。
【0045】
上述した回路構成を有するタイヤ内圧測定システム1は、次のように動作する。使用者によって入力部22から測定開始の指示が入力されると、制御部から送られた切替信号によって、スイッチング回路53は、パルス発振部52によって発生させた起動パルスを取得側アンテナ部51に送る側に切り替えられる。
【0046】
パルス発振部52によって発生された起動パルスは、取得側アンテナ部51に送られる。起動パルスが送られた後、スイッチング回路53は、検出側アンテナ部42から共振波形を取得する側に切り替えられる。
【0047】
取得側アンテナ部51は、検出側アンテナ部42に電磁誘導によって誘導起電力を発生させる。検出側アンテナ部42に発生させられた起電力によって静電容量センサ41が充電される。静電容量センサ41は、タイヤの内圧に応じた静電容量を有する。静電容量センサ41と検出側アンテナ部42とからなるLC共振回路には、静電容量に応じた共振周波数を有する共振が発生する。
【0048】
取得側アンテナ部51は、検出側アンテナ部42に同調して、静電容量センサ41と検出側アンテナ部42とからなるLC共振回路の共振波形を取得する。
【0049】
次に、増幅回路54は、取得側アンテナ部51から取得した共振波形を増幅する。増幅された信号からノイズ成分と信号成分とが分離される。信号成分として、受信から所定の時間以降の10波形分が取り出される。
【0050】
続いて、分周回路55は、増幅された共振波形のうち所定数の波形を1つのパルスに分周する。CR充電回路561は、分周して得られた1パルスの立ち上がりから立ち下がりまでの期間、コンデンサCを充電する。充電された電圧値は、A/D変換器562においてデジタル信号に変換される。
【0051】
圧力算出部58は、対応テーブルを参照して、電圧値に対応するタイヤ内圧を決定する。実施形態のタイヤ内圧測定システム1によれば、以上のようにして、タイヤ内圧が測定される。
【0052】
(4)作用・効果
実施形態のタイヤ内圧測定システム1によれば、検出器40は、静電容量センサ41と、コア材に導線が巻回されたコイルによって形成された検出側アンテナ部42とから構成されている。このように検出器40の構造を簡素化できる。このため、検出器40は小型化が容易であり、検出器40は、バルブキャップ33に配置することができる。検出器40は、従来の検出器よりも軽量化でき、ホイールバランスへの影響を低減するとともにタイヤへの負荷を低減できる。また、製造コストを低減できるため、検出器40の交換にかかる維持費を抑えることができる。
【0053】
検出側アンテナ部42は、検出側アンテナ部42と取得側アンテナ部51との相互インダクタンスに基づいて、取得側アンテナ部51との相対位置を調整可能に構成されている。コンデンサとコイルからなる共振回路は、比較的シンプルな構成であり、製造誤差等によって、コンデンサやコイルの構成や検出側アンテナと取得側アンテナとの距離等が変化すると、共振波形に影響し、検出精度が低下してしまうおそれがある。しかし、検出側アンテナ部と取得側アンテナ部との相互インダクタンスに基づいて、検出側アンテナ部の位置を調整するように構成されているため、検出側アンテナ部と取得側アンテナ部との相互インダクタンスを一定値にすることができる。よって、検出器等の製造誤差による内圧データの検出精度の低下を抑制することができる。
【0054】
例えば、タイヤに対して検出器を装着する際に、取得装置内に設けられた取得側アンテナ部と検出側アンテナ部との相互インダクタンスが所定の初期値になるように調整する。この相互インダクタンスの調整は、位置調整機構を介して検出側アンテナ部と取得側アンテナ部と距離を調整して行うことができる。このように、検出器を装着する際に、取得側アンテナ部と検出側アンテナ部との相互インダクタンスを一定にすることにより、検出器の製造誤差による共振周波数のバラツキを抑制し、内圧の検出精度を向上させることができる。また、検出器の共振回路において調整回路を設ける構成に比べて、回路構成を簡略化することができる。
【0055】
また、取得装置20は、検出器40において発生した共振波形を分周して得られた1パルスの立ち上がりから立ち下がりまでの期間を電圧値に変換する変換部56(変換部57)と、変換部56によって変換された電圧値に基づいてタイヤの内圧を算出する。
【0056】
例えば、静電容量センサの静電容量の違いによる共振周波数の変化を直接検出することを試みるとする。このとき、インダクタンス:L=1000μHのコイルに静電容量の変化が10pF程度である静電容量センサを組み合わせると、発生する共振周波数は、1.6MHz前後になる。この共振周波数を増幅し、ノイズ成分を除去し、10波形分の共振波形を1波形に分周して得られたパルスの立ち上がりから立ち下がりまでの時間は、およそ6.25μs程度になる。
【0057】
静電容量センサの静電容量は、圧力変化によって、通常、2倍程度しか変化しないため、圧力変化による静電容量の変化は、共振波形を分周したパルスにおいて、6.25μs±数μs程度の差として現れる。
【0058】
このため、静電容量センサの静電容量の違いによる共振周波数の変化量をタイヤの内圧の変化量に直接対応付け可能にするには、取得装置には、数μsを0.001μs程度の分解能で測定できる性能が求められ、取得装置には、GHzオーダの周波数でサンプリングが可能なCPUが必要になる。
【0059】
すなわち、静電容量センサの静電容量の違いによる共振周波数変化をタイヤの内圧の変化量に直接対応付けようとすると、取得装置が高価になり、検出器の構成を極めて簡素にできるという利点を生かせなくなる。
【0060】
そこで、実施形態では、共振周波数の変化量をタイヤの内圧の変化量に直接対応させるのではなく、検出側アンテナ部42から得た共振波形を電圧値に変換している。共振波形を電圧値に変換することにより、取得装置20をGHzオーダの周波数でサンプリングが可能なCPUよりも廉価な構成で実現できる。
【0061】
また、実施形態で示したように、バルブキャップ33の内部に配置可能な静電容量センサ41の静電容量の変化は、数pF〜20pF程度である。
【0062】
LC共振回路の共振周波数は、f=π/2(LC)1/2で表されるため、コイルのインダクタンスが大きくなると、共振周波数の値は小さくなる。また、共振用のコイルのインダクタンスが大きくなると、コイルの容量成分が静電容量センサ41の静電容量に対して無視できない程度の値になる。また、共振用のコイルのインダクタンスが大きくなると、抵抗成分が大きくなり、共振周波数の減衰が大きくなる。このように、共振用のコイルのインダクタンスが大きくなると、共振波形の信号が検出しにくくなるという問題がある。
【0063】
このことから、実施形態では、バルブキャップ33の内部に配置可能な程度の静電容量センサ41に組み合わせて用いる共振用のコイルのインダクタンスは、1000μH程度、若しくは1000μH以下に設定することが好ましい。
【0064】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例が明らかとなる。例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。
【0065】
例えば、位置調整機構は、変形例を概念することができる。図6は、変形例に係る位置調整機構を説明する図である。変形例に係る位置調整機構は、収容部43の外周に突設された突起部43cと、バルブキャップ33の内周面に形成された溝部33cとを有する。突起部43cは、弾性変形する弾性部材によって構成されている。
【0066】
検出側アンテナ部42を構成するコイルの軸方向(図示する長手方向L)において収容部が押圧されると、収容部43の突起部43cは、バルブキャップ33の内周面に形成された溝部33cによって内側に押圧されて弾性変形する。検出部40を内包する収容部43が長手方向Lに移動可能となり、検出側アンテナ部42と取得側アンテナ部51との距離Dが調整可能となる。また、一旦検出部40の位置を調整した後は、突起部43cと溝部と33cとが噛み合うため、収容部43の移動を規制することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、収容部の突起部が弾性部材によって構成されており、弾性変形するように構成されているが、例えば、バルブキャップの溝部が弾性変形可能に構成されており、この溝部が変形することによってバルブキャップ内で収容部が移動可能に構成されていてもよい。また、長手方向に移動可能なラチェット機構によって位置調整部材を構成し、長手方向に沿って検出器の位置を調整するように構成してもよい。
【0068】
また、タイヤ内圧測定システム1が適用可能なタイヤは、限定されない。乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、航空機用タイヤなどが挙げられる。
【0069】
本実施形態では、静電容量センサの静電容量を測定対象であるタイヤの標準内圧に合わせて設定する。静電容量センサが変わると、アンテナ部のコイルサイズ(巻回数、径サイズ)などが変わる。このため、取得装置20において、検出器40に与える起動パルスを変更する機能を搭載することによって、複数の静電容量センサ(すなわち、種類の異なるタイヤの内圧測定)に対応させることができる。
【0070】
検出器40を構成する静電容量センサ41,検出側アンテナ部42の取付位置は、上述した例に限定されない。バルブコア31における注入口31aと気室側端部31eとの間に配置されていてもよい。なお、静電容量センサ41と検出側アンテナ部42との距離は短いほどよく、静電容量センサ41は、温度変化が少ない部分に配置されることが好ましい。
【0071】
また、回路を構成する変換部は、上述の実施形態に限定されず、異なる構成であってもよい。例えば、変換部は、CR充電回路に代えて、積分回路を備えていてもよい。積分回路は、分周して得られた波形の立ち上がりから立ち下がりまでの期間、入力をHi電圧状態からLo電圧状態にする。積分回路の出力電圧値をA/D変換器においてデジタル信号に変換することができる。
【0072】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0073】
AR…気室、 C…コンデンサ、 D…距離、 F…矢印、 L…長手方向、 R…気密部、 1…タイヤ内圧測定システム、 10…タイヤ、 11…リムホイール、 20…取得装置、 21…保持部、 21a…先端部、 22…入力部、 30…バルブ、 31…バルブコア、 31a…注入口、 31e…気室側端部、 32…バルブステム、 33…バルブキャップ、 33a…雌ねじ部、 33b…段差部、 33c…溝部、 40…検出器、 41…静電容量センサ、 41,…静電容量センサ、 41a…検知面、 42…アンテナ部、 42…検出側アンテナ部、 42…検出側アンテナ部、 42a…導線、 43…収容部、 43a…雄ねじ部、 43c…突起部、 51…取得側アンテナ部、 51a…導線、 52…パルス発振部、 53…スイッチング回路、 54…増幅回路、 55…分周回路、 56…変換部、 57…変換部、 58…圧力算出部、 411…センサ筐体、 411b…底部、 412…ダイヤフラム部、 413…筐体側電極、 414…ダイヤフラム電極、 561…CR充電回路、 562…変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内圧を検出する検出器と、前記検出器によって検出されたタイヤの内圧に関するデータを取得する取得装置を有するタイヤ内圧測定システムであって、
前記検出器は、
前記タイヤの内圧によって電極間距離が変化することによって静電容量が変化する静電容量センサと、コア材に導線が巻回されたコイルによって形成されており前記静電容量センサに接続された検出側アンテナ部と、からなる共振回路を備え、
前記取得装置は、
コア材に導線が巻回されたコイルによって形成されており、前記検出側アンテナ部に電磁誘導によって起電力を発生させるとともに、前記起電力によって充電された前記静電容量センサと前記検出側アンテナ部とからなる共振回路の共振波形を取得する取得側アンテナ部と、
前記検出側アンテナ部に起電力を与える駆動部と、
前記共振波形を増幅する信号増幅部と、
前記増幅された共振波形のうち所定数の波形を分周する分周部と、
前記分周して得られた波形の立ち上がりから立ち下がりまでの期間を電圧値に変換する変換部と、
前記変換部によって変換された電圧値に基づいて前記タイヤの内圧を算出する圧力算出部と、を備えており、
前記検出側アンテナ部と前記取得側アンテナ部との相対位置を調整可能な位置調整機構を備えており、
前記検出側アンテナ部は、前記検出側アンテナ部と前記取得側アンテナ部との相互インダクタンスに基づいて、前記取得側アンテナ部との相対位置を調整されるように構成されている、タイヤ内圧測定システム。
【請求項2】
前記検出器は、前記タイヤに固定されたタイヤ装着部材を介して前記タイヤに装着されており、
前記検出器は、前記タイヤ装着部材に対して相対移動可能に構成されており、
前記タイヤ装着部材と前記取得装置とのうち、少なくともいずれか一方には、前記タイヤ装着部材と前記取得装置との相対位置を規定するための位置決め部が形成されている、請求項1に記載のタイヤ内圧測定システム。
【請求項3】
前記タイヤ装着部材及び前記検出器のうちいずれか一方は、円柱状であり、
前記タイヤ装着部材及び前記検出器の他方は、前記タイヤ装着部材及び前記検出器の前記一方が挿入可能な空間を有する中空状であって、
前記位置調整機構は、前記タイヤ装着部材及び前記検出器の前記一方の外周面に形成された雄ねじ部と、前記タイヤ装着部材及び前記検出器の前記他方の内周面に形成され、かつ前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部と、を備え、かつ前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との相対移動によって、前記検出側アンテナ部を構成するコイルの軸方向に沿って前記検出側アンテナ部を移動するように構成されている、請求項2に記載のタイヤ内圧測定システム。
【請求項4】
前記タイヤ装着部材及び前記検出器のうちいずれか一方は、円柱状であり、
前記タイヤ装着部材及び前記検出器の他方は、前記タイヤ装着部材及び前記検出器の前記一方が挿入可能な空間を有する中空状であって、
前記位置調整機構は、前記タイヤ装着部材及び前記検出器の前記一方の外周面に形成された突起部と、前記タイヤ装着部材及び前記検出器の前記他方の内周面に形成され、かつ前記突起部と噛み合う溝部と、を備え、
前記突起部及び前記溝部は、前記検出側アンテナ部を構成するコイルの軸方向に沿って複数隣接してそれぞれ形成されており、
前記位置調整機構は、前記突起部と前記溝部とが噛み合うことにより、前記コイルの軸方向に沿った前記検出側アンテナ部の移動を規制するように構成されている、請求項2に記載のタイヤ内圧測定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−255699(P2012−255699A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128483(P2011−128483)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】