説明

タグシステム並びに電気錠システム

【課題】タグを持った人が対象領域に存在すると誤検知されることを防止する。
【解決手段】存在が検知された特定人が屋外から屋内へ進入(移動)すると、第1の人感センサ3から人体検出信号が出力された後に第2の人感センサ4からも人体検出信号が出力される。故に、リーダ/ライタ2の制御部22では当該特定人が屋外から屋内へ入る向き(対象領域内から対象領域外へ出る向き)に移動したと判定することができ、当該特定人が携帯するタグ1の識別符号(ID)に対して応答信号の返信要求不可をメモリ部23に設定する。したがって、当該タグ1が屋内(対象領域外)に在る限りはリーダ/ライタ2から質問信号を受信しても応答信号を返信しないので、リーダ/ライタ2の制御部22が、屋内(対象領域外)に在るタグ1からの応答信号を受信して特定人が屋外(対象領域内)に居ると誤検知することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ/ライタとタグとからなるタグシステム並びに当該タグシステムを利用した電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リーダ/ライタ(質問器)とタグ(IDタグ、あるいはデータキャリア若しくは応答器とも呼ばれる)とからなるタグシステムが種々の分野で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1にはタグシステムを利用した電気錠システムが記載されている。この種の電気錠システムでは、タグを持った人がリーダ/ライタの通信エリア内に入ると、リーダ/ライタが人の持つタグとの間で無線通信を行うことによってこのタグから識別情報を取得し、取得した識別情報が予め登録されている識別情報に一致すれば、電気錠を解錠するようになっているが、通信エリアを通る人が入室しようとしているのか、それとも退出しようとしているのかを判別できないため、人の移動方向に応じて電気錠の施錠又は解錠を切り替えることができず、これから退出しようとする人がリーダ/ライタの通信エリア内を通ったために、電気錠が解錠されてしまう可能性もあった。
【0004】
これに対して特許文献1に記載されている従来例では、リーダ/ライタが2つのLF送信部を備え、各々のLF送信部が、扉の外側にある通路の進行方向に沿って互いの通信エリアが重複しないように配置され、自己のID番号を含む質問信号を送信し、タグでは、LF受信部が所定時間内に互いにID番号の異なる質問信号を複数受信した場合のみ、受信した全てのID番号およびID番号の受信順序を示す情報を自己の識別情報と共にRF送信部1から応答信号として送信させることにより、タグを持った人が入室しようとしているのか、退出しようとしているかを判別して入室と判別したときにのみ扉の電気錠を解錠させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−350861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来例では、出入口に設置されたリーダ/ライタの通信エリア内でタグを持った人が室内を移動した場合、リーダ/ライタからの質問信号を受信した当該タグが応答信号を返信してリーダ/ライタに受信されると電気錠が不用意に解錠されてしまう虞があった。つまり、本来ならタグの存在を検知する検知エリアにしたくない室内にもリーダ/ライタの送信する電波が到達するために当該室内が検知エリアに含まれてしまい、その結果、タグを持った人が対象領域(室外)に存在すると誤検知されてしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、タグを持った人が対象領域に存在すると誤検知されることを防止したタグシステム並びに電気錠システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、質問信号を送信するリーダ/ライタと、固有の識別情報を有し、前記質問信号を受信したときに当該識別情報を含む応答信号を送信するタグとからなり、タグから送信される応答信号をリーダ/ライタで受信し、当該応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が対象領域に存在するか否かを検知するタグシステムにおいて、質問信号の受信可能範囲内における人の移動方向のうち、対象領域外から対象領域内に入る向きと対象領域内から対象領域外に出る向きとを検出する移動方向検出手段を備え、リーダ/ライタは、対象領域に存在することを検知した人が対象領域内から対象領域外に出る向きに移動したことを移動方向検出手段が検出した場合、当該人が携帯するタグの識別情報を検知対象外の識別情報として記憶するとともに、当該検知対象外の識別情報を有するタグに対しては質問信号に対する応答信号の返信を要求せず、さらに、移動方向検出手段が対象領域外から対象領域内に入る向きへの移動を検出した人が携帯するタグの識別情報を前記検知対象外の識別情報から検知対象の識別情報に復帰させることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、対象領域内で存在を検知された人が対象領域外へ出た場合、当該人が携帯するタグが質問信号を受信しても応答信号を返信しないので、タグを持った人が対象領域に存在すると誤検知されることを防止できる。
【0010】
請求項2の発明は、上記目的を達成するために、質問信号を送信するリーダ/ライタと、固有の識別情報を有し、前記質問信号を受信したときに当該識別情報を含む応答信号を送信するタグと、電気錠を解錠及び施錠する電気錠制御装置とを備え、タグから送信される応答信号をリーダ/ライタで受信し、当該応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が対象領域に存在するか否かを検知し、対象領域内の前記人の存在が検知されたときに電気錠制御装置が電気錠を解錠又は施錠する電気錠システムにおいて、質問信号の受信可能範囲内における人の移動方向のうち、対象領域外から対象領域内に入る向きと対象領域内から対象領域外に出る向きとを検出する移動方向検出手段を備え、リーダ/ライタは、対象領域に存在することを検知した人が対象領域内から対象領域外に出る向きに移動したことを移動方向検出手段が検出した場合、当該人が携帯するタグの識別情報を検知対象外の識別情報として記憶するとともに、当該検知対象外の識別情報を有するタグに対しては質問信号に対する応答信号の返信を要求せず、さらに、移動方向検出手段が対象領域外から対象領域内に入る向きへの移動を検出した人が携帯するタグの識別情報を前記検知対象外の識別情報から検知対象の識別情報に復帰させることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、対象領域内で存在を検知された人が対象領域外へ出た場合、当該人が携帯するタグが質問信号を受信しても応答信号を返信しないので、タグを持った人が対象領域に存在すると誤検知されることを防止でき、その結果、電気錠が不用意に施錠あるいは解錠されることがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タグを持った人が対象領域に存在すると誤検知されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上におけるリーダ/ライタの動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、建物の外(屋外)の出入口周辺を対象領域とし、対象領域内にタグを持った人(以下、特定人と呼ぶ。)の存在が検知されたときに電気錠を解錠する電気錠システムに本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。但し、本発明に係るタグシステムは電気錠システム以外のシステム、例えば、セキュリティシステムなどにも利用可能である。
【0015】
図2に示すように、建物の出入口の扉Dの外側(屋外)にリーダ/ライタ2並びに第1の人感センサ3が設置され、出入口の扉Dの内側(屋内)に第2の人感センサ4が設置されている。ここで、図2における破線の円はリーダ/ライタ2から送信される質問信号の受信可能範囲Sを表しており、タグ1が受信可能範囲Sに在れば質問信号を受信することができる。また、出入口の扉Dには電気錠(図示せず)が設けられ、電気錠制御装置5によって当該電気錠の施錠及び解錠が行われる。尚、このような電気錠並びに電気錠制御装置5については従来周知であるから詳細な構成についての図示並びに説明は省略する。
【0016】
タグ1は、図1に示すように電波(例えば、UHF帯の電波)を送信並びに受信するためのアンテナ10及びRF回路部11と、RF回路部11を制御する制御部12と、RF回路部11並びに制御部12に電源を供給する電池13とを具備している。尚、制御部12は固有の識別符号(ID)を内蔵メモリ(図示しない)に記憶している。
【0017】
リーダ/ライタ2は、図1に示すように電波(例えば、UHF帯の電波)を送信並びに受信するためのアンテナ20及びRF回路部21と、RF回路部21を制御する制御部22と、電気的に書換可能な不揮発性の半導体メモリからなるメモリ部23と、各部に電源を供給する電源部24とを具備している。メモリ部23には、タグ1に割り当てられている識別符号(ID)と特定人との対応関係が記憶されている。この対応関係は、1乃至複数の特定人に個別に割り当てられる識別コードと、それぞれの特定人が携帯するタグ1の識別符号(ID)とを一対一に対応付けたものである。尚、電源部24は電池であってもよいし、商用交流電源から供給される交流電源を直流電源に変換する電源回路であってもよい。
【0018】
後述するように、メモリ部23にはタグ1の識別符号(ID)毎に応答信号の返信要求の可否が記憶されており、応答信号の返信を要求しないように設定されている識別符号が質問信号に含まれている。そして、タグ1の制御部12では、質問信号に含まれる識別符号が自らの識別符号に一致するときは応答信号を返信せず、質問信号に含まれる識別符号が自らの識別符号に一致しないときにのみ、応答信号を返信する。
【0019】
第1及び第2の人感センサ3,4は人体から放射される熱線を焦電素子で検出することによって人体の存在を検出するパッシブ形のセンサであって、リーダ/ライタ2の電源部24から電源供給を受けるとともに、人体の検出結果(人体検出信号)をリーダ/ライタ2の制御部22に出力している(図1参照)。但し、人感センサ3,4は焦電形素子を用いたパッシブ形のものに限定されず、例えば、超音波式のアクティブ形のものなどであっても構わない。
【0020】
リーダ/ライタ2の制御部22は、第1および第2の人感センサ3,4から人体検出信号を所定時間(例えば、数十秒間)内に連続して受け取った場合にその順番に基づいて、タグ1を携帯した特定人の移動方向を検出(判定)している。具体的には、第1の人感センサ3から人体検出信号を受け取ってから所定時間内に第2の人感センサ4から人体検出信号を受け取ったときは、入室しようとする特定人が屋外から屋内に入る向き(対象領域内から対象領域外へ出る向き)に移動したと判定し(図2の上向きの矢印参照)、反対に第2の人感センサ4から人体検出信号を受け取ってから所定時間内に第1の人感センサ3から人体検出信号を受け取ったときは、退出しようとする特定人が屋内から屋外へ出る向き(対象領域外から対象領域内へ入る向き)に移動したと判定している(図2の下向きの矢印参照)。
【0021】
そしてリーダ/ライタ2の制御部22は、特定人が屋外から屋内に入る向き(対象領域内から対象領域外へ出る向き)に移動したと判定した場合は当該特定人が持っているタグ1の識別符号(ID)に対する応答信号の返信を要求しないように設定し、反対に、特定人が屋内から屋外へ出る向き(対象領域外から対象領域内へ入る向き)に移動したと判定した場合は当該特定人が持っているタグ1の識別符号(ID)に対する応答信号の返信を要求するように設定する。
【0022】
図3はリーダ/ライタ2の制御部22が行う処理のフローチャートである。以下、図3のフローチャートを参照しながら本実施形態の動作を説明する。
【0023】
まず、タグ1を携帯した特定人が屋外から屋内に進入する場合を想定する。出入口に設置されているリーダ/ライタ2では、RF回路部21から質問信号を送信し(ステップS1)、屋外(対象領域内)に居る特定人が携帯するタグ1から返信される応答信号をRF回路部21で受信する(ステップS2)。リーダ/ライタ2の制御部22は、RF回路部21で受信した応答信号に含まれている識別符号をメモリ部23に記憶している識別符号と照合し、当該識別符号と対応付けられている特定人の識別コードを取得する。このように制御部22が特定人の識別コードを取得することによって対象領域内にタグ1を携帯した特定人の存在を検知したことになる。そして、対象領域内(屋外)に特定人の存在を検知したリーダ/ライタ2の制御部22から電気錠制御装置5に検知信号が出力され、当該検知信号を受け取った電気錠制御装置5が電気錠を解錠するのである。
【0024】
このとき、存在が検知された特定人が屋外から屋内へ進入(移動)すると、第1の人感センサ3から人体検出信号が出力された後に第2の人感センサ4からも人体検出信号が出力されるので(ステップS3,S4)、リーダ/ライタ2の制御部22では当該特定人が屋外から屋内へ入る向き(対象領域内から対象領域外へ出る向き)に移動したと判定することができ、当該特定人が携帯するタグ1の識別符号(ID)に対して応答信号の返信要求不可をメモリ部23に設定する(ステップS5)。したがって、当該タグ1が屋内(対象領域外)に在る限りはリーダ/ライタ2から質問信号を受信しても応答信号を返信しないので、リーダ/ライタ2の制御部22が、屋内(対象領域外)に在るタグ1からの応答信号を受信して特定人が屋外(対象領域内)に居ると誤検知することを防止できるものである。
【0025】
次に、タグ1を携帯した特定人が屋内から屋外に移動する場合を想定する。リーダ/ライタ2の制御部22では、第2の人感センサ4から人体検出信号が出力された後に第1の人感センサ3からも人体検出信号が出力されると(ステップS6,S7)、特定人が屋内から屋外へ出る向き(対象領域外から対象領域内へ入る向き)に移動したと判定し、RF回路部21より質問信号を送信させる(ステップS8)。このとき、制御部22ではメモリ部23に返信要求不可と設定されている識別符号(ID)を質問信号に含めない。故に、屋内から屋外へ移動した特定人が携帯するタグ1は、質問信号を受信して応答信号を返信する。
【0026】
リーダ/ライタ2の制御部22は、タグ1から返信された応答信号を受信すると(ステップS9)、当該応答信号に含まれている識別符号(ID)に対して応答信号の返信要求可をメモリ部23に設定する(ステップS10)。したがって、当該タグ1を携帯した特定人が屋外から屋内(対象領域内から対象領域外)へ移動する場合、ステップS1〜S5の処理が行われ、当該タグ1の識別符号(ID)に対して応答信号の返信要求不可が設定されることになる。
【符号の説明】
【0027】
1 タグ
2 リーダ/ライタ
3 第1の人感センサ
4 第2の人感センサ
5 電気錠制御装置
10 アンテナ
11 RF回路部
12 制御部
20 アンテナ
21 RF回路部
22 制御部
23 メモリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問信号を送信するリーダ/ライタと、固有の識別情報を有し、前記質問信号を受信したときに当該識別情報を含む応答信号を送信するタグとからなり、タグから送信される応答信号をリーダ/ライタで受信し、当該応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が対象領域に存在するか否かを検知するタグシステムにおいて、
質問信号の受信可能範囲内における人の移動方向のうち、対象領域外から対象領域内に入る向きと対象領域内から対象領域外に出る向きとを検出する移動方向検出手段を備え、
リーダ/ライタは、対象領域に存在することを検知した人が対象領域内から対象領域外に出る向きに移動したことを移動方向検出手段が検出した場合、当該人が携帯するタグの識別情報を検知対象外の識別情報として記憶するとともに、当該検知対象外の識別情報を有するタグに対しては質問信号に対する応答信号の返信を要求せず、さらに、移動方向検出手段が対象領域外から対象領域内に入る向きへの移動を検出した人が携帯するタグの識別情報を前記検知対象外の識別情報から検知対象の識別情報に復帰させることを特徴とするタグシステム。
【請求項2】
質問信号を送信するリーダ/ライタと、固有の識別情報を有し、前記質問信号を受信したときに当該識別情報を含む応答信号を送信するタグと、電気錠を解錠及び施錠する電気錠制御装置とを備え、タグから送信される応答信号をリーダ/ライタで受信し、当該応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が対象領域に存在するか否かを検知し、対象領域内の前記人の存在が検知されたときに電気錠制御装置が電気錠を解錠又は施錠する電気錠システムにおいて、
質問信号の受信可能範囲内における人の移動方向のうち、対象領域外から対象領域内に入る向きと対象領域内から対象領域外に出る向きとを検出する移動方向検出手段を備え、
リーダ/ライタは、対象領域に存在することを検知した人が対象領域内から対象領域外に出る向きに移動したことを移動方向検出手段が検出した場合、当該人が携帯するタグの識別情報を検知対象外の識別情報として記憶するとともに、当該検知対象外の識別情報を有するタグに対しては質問信号に対する応答信号の返信を要求せず、さらに、移動方向検出手段が対象領域外から対象領域内に入る向きへの移動を検出した人が携帯するタグの識別情報を前記検知対象外の識別情報から検知対象の識別情報に復帰させることを特徴とする電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108037(P2011−108037A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263192(P2009−263192)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】