説明

タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置

【課題】
位置誤差にロバストで様々なサイズのレバーハンドルバルブを開放、閉鎖操作する人の器用さをロボットに実装するためのレバーハンドルバルブ操作タスクスキルを実装するタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置を実現する。
【解決手段】
レバーハンドルバルブ12の開放・閉鎖操作をタスクスキルに基づいて記述するために、タスクスキルの動作手順を示し、ここの動作手順をタスクスキルのモデルである初期条件、タスクスキル動作、終了条件に基づいて記述した。また、タスクスキル動作にはインピーダンスと力のハイブリッド制御、またはインピーダンス制御を実装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は器用な作業のひとつであるレバーハンドルを操作してバルブの開放、閉鎖を実現するタスクスキルを実装したレバーハンドルバルブ操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントなどでは、配管内を流れる液体や気体の制御に多くのレバーハンドルバルブを利用しており、レバーハンドルバルブ操作は、人の手により実行されている。
【0003】
しかし、プラントにおけるコスト削減を実現するには、バルブ操作員を削減する必要がある。また、原子力プラント、宇宙空間、深海などの極限環境下では、人が直接レバーハンドルバルブを操作するには放射線の影響など危険性が極めて高い。
【0004】
この改善策として、バルブに駆動機構を付加する方法や、遠隔地からバルブを開閉する装置が開発されているが、既に使用されているバルブに適用するには、追加部品の設置などが必要となる(特許文献1、2参照)。さらに、ロボットなどによるレバーハンドルバルブ操作の実現も考えられているが、ロボットのハンドとレバーハンドルの位置・姿勢誤差問題を解決することができていない。
【特許文献1】特開平3−19365号公報
【特許文献2】特開2000−55235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、既に幅広く使用されているレバーハンドルバルブを人の代わりに操作できる特性を有し、レバーハンドルバルブを操作するハンドとレバーハンドル間に位置・姿勢誤差があってもレバーハンドルバルブ操作を実現できる特性を有するレバーハンドルバルブ操作タスクスキルの具体的な記述と、レバーハンドルバルブ操作タスクスキルを実装したレバーハンドルバルブ操作装置の確立である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
【0007】
タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置は、ロボットと、力センサと、ハンドと、カメラと、ロボットを制御する制御装置と、力センサ情報を取得する装置と、ハンドを制御する制御装置と、カメラを制御する制御装置と、インピーダンスと力のハイブリッド制御を利用したタスクスキルを実装するタスクスキル実装装置と、を有する。
【0008】
タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置は、ロボットと、力センサと、ハンドと、カメラと、ロボットを制御する制御装置と、力センサ情報を取得する装置と、ハンドを制御する制御装置と、カメラを制御する制御装置と、インピーダンス制御を利用したタスクスキルを実装するタスクスキル実装装置と、を有する。
【0009】
前記タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置のロボットは多関節方式であり、ロボットを駆動するモータの電流を利用して力センサの代わりに利用することができることを特徴とするタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置。
【0010】
前記レバーハンドルバルブ操作は、環境に固定されたレバーハンドルバルブに対して、バルブの開放、バルブの閉鎖を行い、レバーハンドルバルブの全サイズに対応し、レバーハンドルとハンドの中心軸に位置と姿勢の誤差があっても、前記レバーハンドルバルブ操作を実現することを特徴とするタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置によれば、操作対象であるレバーハンドルの位置を位置誤差無しに正確に計測する必要が無くなり、既に使用されているレバーハンドルバルブの操作を人に代わって実行することができるため、コスト削減に貢献するだけでなく、原子力プラントなど非常に危険な環境でもレバーハンドルバルブ操作を実現できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置を実施するための最良の形態を以下に説明する。本発明は前記課題を解決するために、前記タスクスキルを利用する。前記タスクスキルは、ロボットがある基本動作を実行できるだけでなく、上位言語のレベルから再利用可能なモジュールである。
【0013】
該タスクスキルのモデルは、初期条件、タスクスキル動作、終了条件からなる一連の状態遷移を実現するものであることを特徴とする。本発明では、レバーハンドルバルブ操作タスクスキルにおけるタスクスキル動作に、インピーダンスと力のハイブリッド制御、またはインピーダンス制御が実装(適用)される点を特徴とする。
【0014】
即ち、本発明におけるレバーハンドルバルブ操作装置では、タスクスキル動作を、インピーダンスと力のハイブリッド制御、またはインピーダンス制御に基づいて行うプログラムが実装されたタスクスキル実装装置(具体的にはタスクスキルを実行するプログラムが実装されたコンピュータ)を備えている。
【0015】
タスクスキル動作にインピーダンスと力のハイブリッド制御を実装(適用)することにより、自由空間での軌道追従性を確保し、対象物や環境との位置誤差に対しても過大な力が発生することを防止できる点が主な特徴である。そして、位置と姿勢のそれぞれ軸に対し操作者の意図に合わせてインピーダンス制御と力制御を適用できる点も特徴である。
【0016】
さらに、タスクスキル動作にインピーダンスと力のハイブリッド制御を実装する場合、ひとつの軸においてインピーダンス制御から力制御、あるいは力制御からインピーダンス制御に切り替えるとき、制御の安定化問題が生じるが、タスクスキル動作にインピーダンス制御を実装すると、このような制御の切り替え問題がなくなることも本発明の特徴である。
【0017】
ここで、本発明に係るタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置を実施するための最良の形態を、タスクスキル動作にインピーダンスと力のハイブリッド制御を利用した実施例1及びタスクスキル動作にインピーダンス制御を利用した実施例2に基づいて、図面を参照して、以下説明する。
【0018】
なお、図4は実施例1を説明する図であり、図5は実施例2を説明する図であるが、図1〜3は、実施例1及び実施例2に共通な図である。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に関わるタスクスキル動作にインピーダンスと力のハイブリッド制御を利用したタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置1の全体構成図である。タスクスキル実行装置10は、ロボット2(本実施例1ではロボットアーム)、力センサ3、ハンド4、カメラ5、ロボット制御装置6、ハンド制御装置7、力センサ情報取得装置8、カメラ制御装置9を有する。
【0020】
ロボット2は、多関節方式であり、ロボット制御装置6により位置制御で動作する。さらに、ロボット2を駆動するモータの電流を利用して力センサ3の代わりに利用することもできる。ハンド4の手先位置は、ロボット2の関節に設置されている関節角度計測装置(例、ポテンショメータ)により計算できることは周知技術である。
【0021】
ハンド4は、多指ハンドであり、ハンド制御装置7により指先が位置制御で動作する。
【0022】
タスクスキル実行装置10は、ロボット制御装置6に送信するロボット2の目標手先位置指令値とハンド制御装置7に送信するハンド4の目標指位置指令値をタスクスキル実装装置11から受信し、ロボット制御装置6で計算されるロボット2の現在手先位置情報と力センサ情報取得装置8で取得する力センサ3の情報とハンド制御装置7で計算されるハンド4の現在指位置情報とカメラ制御装置9で取得するカメラ5の映像をタスクスキル実装装置11へ送信する。
【0023】
タスクスキル実装装置11は、レバーハンドルバルブ操作タスクスキルが実装される。タスクスキルは、初期条件、タスクスキル動作、終了条件からなる一連の状態遷移を実現し、初期条件および終了条件はロボット2の位置、力センサ3の値、ハンド4の位置、カメラ5の映像情報で記述され、タスクスキル動作はインピーダンスと力のハイブリッド制御で記述される。
【0024】
図2は、ハンド4によるレバーハンドルバルブ12の開放、閉鎖作業の概要図である。レバーハンドルバルブ12は環境に固定される。Σhはハンド4に固定されたハンド座標系であり、点0が原点である。Σlはレバーハンドルバルブ12に固定されたレバーハンドルバルブ座標系であり、点Lが原点である。ロボット2の手先座標系は、ハンド4のハンド座標系Σhと一致する。
【0025】
ハンド4を動かすタスクスキル動作は、タスクスキル動作座標系Σsで記述され、制御点はハンド4の点Oとするため、ハンド4に力、モーメントが作用しない場合には、ハンド4の点Oがハンド4のインピーダンス中心となる。Σsは、Σhを基準として決定され、原点も点Oと一致する。
【0026】
ここで、ハンド4が移動すると同時にΣhも移動するため、ある時点でのΣhをΣsと設定し、Σhが引き続き移動したとしてもΣsは設定された時点の位置に固定される。また、一度ΣsがΣhにより設定され、Σsを基準にしてΣhが移動したとしても、移動後のΣhを利用してΣsを新規に再設定できる。
【0027】
タスクスキル動作に実装されるインピーダンスと力のハイブリッド制御では、個々の制御軸(x、y、z軸、roll、pitch、yaw軸)に対してインピーダンス制御と力制御のどちらかの制御を設定する必要がある。
【0028】
レバーハンドルバルブ操作タスクスキルの動作手順と個々の軸に対する制御方法は、
(1)レバーハンドルバルブ12への接近・接触動作(全軸インピーダンス制御)
(2)レバーハンドルバルブ12への押付け動作(z軸力制御、その他の軸インピーダンス制御)
(3)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作(全軸力制御)
(4)ハンド4の閉動作(全軸インピーダンス制御)
(5)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作(全軸力制御)
(6)レバーハンドルバルブ12の開放・閉鎖動作(x、y、z軸力制御、その他の軸インピーダンス制御)
(7)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作(全軸力制御)
(8)ハンド4の開動作(全軸インピーダンス制御)
(9)レバーハンドルバルブ12からの離脱動作(全軸インピーダンス制御)
と記述する。図3にレバーハンドルバルブ操作スクスキルの動作手順のブロック図を示す。
【0029】
(1)レバーハンドルバルブ12への接近・接触動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:カメラ5によりΣhのz軸とΣlのz軸をある程度一致させ、動作開始時ΣhをΣsとして設定する。
・タスクスキル動作:全軸インピーダンス制御とする。インピーダンス中心をz軸方向に
0.009 [m/s] で0.1 [m] 移動させる。
・終了条件:z軸方向に-4.0[N] 発生した時点で終了する。この時点でのΣhをΣsとして再設定する。
【0030】
(2)レバーハンドルバルブ12への押付け動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:z軸方向に-4.0 [N] 発生状態とする。
・タスクスキル動作:z軸力制御、その他の軸インピーダンス制御とする。z軸方向に-4.0 [N] で押付ける。
・終了条件:3.0 [s] 間押付けた時点で終了する。
【0031】
(3)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸力制御とする。全軸0.5 [s] 間に 0.0 [N]、0.0[Nm]にする。
・終了条件:0.5 [s] 間経過した時点で終了する。この時点でのΣhをΣsとして再設定する。
【0032】
(4)ハンド4の閉動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸インピーダンス制御とする。インピーダンス中心は固定したまま、ハンド4を閉じる。
・終了条件:2.0 [s] 間経過した時点で終了する。
【0033】
(5)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸力制御とする。全軸1.7 [s] 間に 0.0 [N]、0.0[Nm]にする。
・終了条件:1.7 [s] 間経過した時点で終了する。この時点でのΣhをΣsとして再設定する。
【0034】
(6)レバーハンドルバルブ12の開放・閉鎖動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:x、y、z軸力制御、その他の軸インピーダンス制御とする。バルブ開放の場合、インピーダンス中心をyaw軸周りに0.14 [rad/s] で-3.14 [rad] 回転させる。バルブ閉鎖の場合、インピーダンス中心をyaw軸周りに0.14 [rad/s] で 3.14 [rad] 回転させる。x、y、z軸に対しては、目標力を0.0 [N]とする。
・終了条件:バルブV10Aに対しては、yaw軸周りのモーメントが絶対値で0.5 [Nm] 以上発生したまま1.0 [s] 間経過した状態を、バルブの開放・閉鎖完了評価条件とし、バルブの開放・閉鎖完了評価条件を満たした時点で終了する。
なお、バルブV25Aに対するバルブの開放・閉鎖完了評価条件は、yaw軸周りのモーメントが絶対値で1.5 [Nm] 以上発生したまま1.0 [s] 間経過した状態とし、バルブV40AおよびV50Aに対するバルブの開放・閉鎖完了評価条件は、yaw軸周りのモーメントが絶対値で2.0 [Nm] 以上発生したまま1.0 [s] 間経過した状態とする。
【0035】
(7)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸力制御とする。全軸1.3 [s] 間に 0.0 [N]、0.0 [Nm]にする。
・終了条件:1.3 [s] 間経過した時点で終了する。この時点でのΣhをΣsとして再設定する。
【0036】
(8)ハンド4の開動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸インピーダンス制御とする。インピーダンス中心は固定したまま、ハンド4を開放する。
・終了条件:2.0 [s] 間経過した時点で終了する。
【0037】
(9)レバーハンドルバルブ12からの離脱動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸インピーダンス制御とする。インピーダンス中心をz軸方向に0.017 [m/s] で -0.05 [m] 移動させる。
・終了条件:インピーダンス中心がz軸方向に-0.05 [m] 移動した時点で終了する。
【0038】
図4にレバーハンドルバルブ操作タスクスキルを実装したレバーハンドルバルブ操作装置によるレバーハンドルバルブ開放操作の実行結果を示す。使用したレバーハンドルバルブはV25Aである。図4(a)はハンド4の点Oに作用する力、図4(b)はハンド4の点Oに作用するモーメント、図4(c)はハンド4の点Oの位置、図4(d)はハンド4の点Oの姿勢、図4(e)はインピーダンス中心の位置、図4(f)はインピーダンス中心の姿勢である。
【0039】
動作手順は図3の(1)〜(9)となっている。位置誤差は、並進で10.0 [mm]、姿勢で10 [deg] 設定した。位置誤差がある状況でレバーハンドルバルブ開放操作は問題なく実行されている。また、V10A、V40A、V50Aにおいても、問題なくレバーハンドルバルブ開放・閉鎖操作が実行できた。
【実施例2】
【0040】
図1は、本発明に関わるタスクスキル動作にインピーダンス制御を利用したタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置1の全体構成図である。タスクスキル実行装置10は、ロボット2(本実施例2ではロボットアーム)、力センサ3、ハンド4、カメラ5、ロボット制御装置6、ハンド制御装置7、力センサ情報取得装置8、カメラ制御装置9を有する。
【0041】
ロボット2は、多関節方式であり、ロボット制御装置6により位置制御で動作する。さらに、ロボット2を駆動するモータの電流を利用して力センサ3の代わりに利用することもできる。ハンド4の手先位置は、ロボット2の関節に設置されている関節角度計測装置(例、ポテンショメータ)により計算できることは周知技術である。
【0042】
ハンド4は、多指ハンドであり、ハンド制御装置7により指先が位置制御で動作する。
【0043】
タスクスキル実行装置10は、ロボット制御装置6に送信するロボット2の目標手先位置指令値とハンド制御装置7に送信するハンド4の目標指位置指令値をタスクスキル実装装置11から受信し、ロボット制御装置6で計算されるロボット2の現在手先位置情報と力センサ情報取得装置8で取得する力センサ3の情報とハンド制御装置7で計算されるハンド4の現在指位置情報とカメラ制御装置9で取得するカメラ5の映像をタスクスキル実装装置11へ送信する。
【0044】
タスクスキル実装装置11は、レバーハンドルバルブ操作タスクスキルが実装される。タスクスキルは、初期条件、タスクスキル動作、終了条件からなる一連の状態遷移を実現し、初期条件および終了条件はロボット2の位置、力センサ3の値、ハンド4の位置、カメラ5の映像情報で記述され、タスクスキル動作はインピーダンス制御で記述される。
【0045】
図2は、ハンド4によるレバーハンドルバルブ12の開放、閉鎖作業の概要図である。レバーハンドルバルブ12は環境に固定される。Σhはハンド4に固定されたハンド座標系であり、点0が原点である。Σlはレバーハンドルバルブ12に固定されたレバーハンドルバルブ座標系であり、点Lが原点である。ロボット2の手先座標系は、ハンド4のハンド座標系Σhと一致する。
【0046】
ハンド4を動かすタスクスキル動作は、タスクスキル動作座標系Σsで記述され、制御点はハンド4の点Oとするため、ハンド4に力、モーメントが作用しない場合には、ハンド4の点Oがハンド4のインピーダンス中心となる。Σsは、Σhを基準として決定され、原点も点Oと一致する。
【0047】
ここで、ハンド4が移動すると同時にΣhも移動するため、ある時点でのΣhをΣsと設定し、Σhが引き続き移動したとしてもΣsは設定された時点の位置に固定される。また、一度ΣsがΣhにより設定され、Σsを基準にしてΣhが移動したとしても、移動後のΣhを利用してΣsを新規に再設定できる。
【0048】
レバーハンドルバルブ操作タスクスキルの動作手順と個々の軸に対する制御方法は、
(1)レバーハンドルバルブ12への接近・接触動作
(2)レバーハンドルバルブ12への押付け動作
(3)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作
(4)ハンド4の閉動作
(5)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作
(6)レバーハンドルバルブ12の開放・閉鎖動作
(7)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作
(8)ハンド4の開動作
(9)バーハンドルバルブ12からの離脱動作
と記述する。図3にレバーハンドルバルブ操作スクスキルの動作手順のブロック図を示す。
【0049】
(1)レバーハンドルバルブ12への接近・接触動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:カメラ5によりΣhのz軸とΣlのz軸をある程度一致させ、動作開始時ΣhをΣsとして設定する。
・タスクスキル動作:インピーダンス中心をz軸方向に0.009 [m/s] で0.1 [m] 移動させる。
・終了条件:z軸方向に-4.0 [N] 発生した時点で終了する。
【0050】
(2)レバーハンドルバルブ12への押付け動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:z軸方向に-4.0 [N] 発生状態とする。
・タスクスキル動作:インピーダンス中心を固定する。
・終了条件:3.0 [s] 間経過した時点で終了する。
【0051】
(3)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸0.5 [s] 間に0.0 [N]、0.0 [Nm]になるようにインピーダンス中心を移動する。
・終了条件:0.5 [s] 間経過した時点で終了する。この時点でのΣhをΣsとして再設定する。
【0052】
(4)ハンド4の閉動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:インピーダンス中心は固定したまま、ハンド4を閉じる。
・終了条件:2.0 [s] 間経過した時点で終了する。
【0053】
(5)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸1.7 [s] 間に0.0 [N]、0.0 [Nm]になるようにインピーダンス中心を移動する。
・終了条件:1.7 [s] 間経過した時点で終了する。この時点でのΣhをΣsとして再設定する。
【0054】
(6)レバーハンドルバルブ12の開放・閉鎖動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:バルブ開放の場合、インピーダンス中心をyaw軸周りに0.14 [rad/s] で -3.14 [rad] 回転させる。バルブ閉鎖の場合、インピーダンス中心をyaw軸周りに0.14 [rad/s] で 3.14 [rad] 回転させる。x、y、z軸に対しては、発生力が0.0 [N]となるようにインピーダンス中心を移動する。
・終了条件:バルブV10Aに対しては、yaw軸周りのモーメントが絶対値で0.5 [Nm] 以上発生したまま1.0 [s] 間経過した状態を、バルブの開放・閉鎖完了評価条件とし、バルブの開放・閉鎖完了評価条件を満たした時点で終了する。
なお、バルブV25Aに対するバルブの開放・閉鎖完了評価条件は、yaw軸周りのモーメントが絶対値で1.5 [Nm] 以上発生したまま1.0[s] 間経過した状態とし、バルブV40AおよびV50Aに対するバルブの開放・閉鎖完了評価条件は、yaw軸周りのモーメントが絶対値で2.0 [Nm] 以上発生したまま1.0 [s] 間経過した状態とする。
【0055】
(7)レバーハンドルバルブ12からの力解除動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:全軸1.3 [s] 間に0.0 [N]、0.0 [Nm]となるようにインピーダンス中心を移動する。
・終了条件:1.3 [s] 間経過した時点で終了する。この時点でのΣhをΣsとして再設定する。
【0056】
(8)ハンド4の開動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:インピーダンス中心は固定したまま、ハンド4を開放する。
・終了条件:2.0 [s] 間経過した時点で終了する。
【0057】
(9)レバーハンドルバルブ12からの離脱動作は、タスクスキルのモデルを使って以下のように記述する。
・初期条件:初期条件無し。
・タスクスキル動作:インピーダンス中心をz軸方向に0.017 [m/s] で -0.05 [m] 移動させる。
・終了条件:インピーダンス中心がz軸方向に-0.05 [m] 移動した時点で終了する。
【0058】
図5にレバーハンドルバルブ操作タスクスキルを実装したレバーハンドルバルブ操作装置によるレバーハンドルバルブ開放操作の実行結果を示す。使用したレバーハンドルバルブはV10Aである。図5(a)はハンド4の点Oに作用する力、図5(b)はハンド4の点Oに作用するモーメント、図5(c)はハンド4の点Oの位置、図5(d)はハンド4の点Oの姿勢、図5(e)はインピーダンス中心の位置、図5(f)はインピーダンス中心の姿勢である。
【0059】
動作手順は図3の(1)〜(9)となっている。位置誤差は、並進で10.0 [mm]、姿勢で10 [deg] 設定した。位置誤差がある状況でレバーハンドルバルブ開放操作は問題なく実行されている。また、V25A、V40A、V50Aにおいても、問題なくレバーハンドルバルブ開放・閉鎖操作が実行できた。
【0060】
以上、本発明に関わるレバーハンドルバルブ操作タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置を実施するための最良の形態を実施例1、実施例2に基づいて説明した。既に本発明を利用し、実施例で示したタスクスキルによるレバーハンドルバルブの開放・閉鎖操作を実行した。このタスクスキルによるレバーハンドルバルブ装置は、異なるサイズのレバーハンドルバルブ12や位置・姿勢誤差を含んだ様々な環境下でレバーハンドルバルブ操作をすべて実現することができ、実際に使用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
これまでは、既にプラント内に設置されているレバーハンドルバルブの操作は、人に拠らなければならなかったり、新たに部品を設置したりする必要があった。さらに、ロボットにより、レバーハンドルバルブの操作を実施するには、ハンド4とレバーハンドルバルブ12間に位置・姿勢誤差があると、レバーハンドルバルブ操作が遂行できなかったが、本発明では前記のように新たに部品を設置する必要もなく、位置・姿勢誤差があっても問題なくレバーハンドルバルブ操作を実現することができる。したがって、プラント内だけでなく、様々な環境下で使用されているレバーハンドルバルブの操作を本発明に関わるレバーハンドルバルブ操作タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明であるタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置の全体構成図である(実施例1、2)。
【図2】本発明でのレバーハンドルバルブとハンドの概要図である(実施例1、2)。
【図3】本発明でのレバーハンドルバルブ操作タスクスキル動作手順である(実施例1、2)。
【図4】本発明でのタスクスキル動作にインピーダンスと力のハイブリッド制御を使用したレバーハンドルバルブ操作装置による実行結果である(実施例1)。
【図5】本発明でのタスクスキル動作にインピーダンス制御を使用したレバーハンドルバルブ操作装置による実行結果である(実施例2)。
【符号の説明】
【0063】
1 タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置
2 ロボット
3 力センサ
4 ハンド
5 カメラ
6 ロボット制御装置
7 ハンド制御装置
8 力センサ情報取得装置
9 カメラ制御装置
10 タスクスキル実行装置
11 タスクスキル実装装置
12 レバーハンドルバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、力センサと、ハンドと、カメラと、ロボットを制御する制御装置と、力センサ情報を取得する装置と、ハンドを制御する制御装置と、カメラを制御する制御装置と、インピーダンスと力のハイブリッド制御を利用したタスクスキルを実装するタスクスキル実装装置と、を有するタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置。
【請求項2】
ロボットと、力センサと、ハンドと、カメラと、ロボットを制御する制御装置と、力センサ情報を取得する装置と、ハンドを制御する制御装置と、カメラを制御する制御装置と、インピーダンス制御を利用したタスクスキルを実装するタスクスキル実装装置と、を有するタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置。
【請求項3】
前記タスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置のロボットは多関節方式であり、ロボットを駆動するモータの電流を利用して力センサの代わりに利用することができることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置。
【請求項4】
前記レバーハンドルバルブ操作は、環境に固定されたレバーハンドルバルブに対して、バルブの開放、バルブの閉鎖を行い、レバーハンドルバルブの全サイズに対応し、レバーハンドルとハンドの中心軸に位置と姿勢の誤差があっても、前記レバーハンドルバルブ操作を実現することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタスクスキルによるレバーハンドルバルブ操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−305644(P2006−305644A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128068(P2005−128068)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度経済産業省原子力試験研究委託費「原子力ロボットの実環境技能蓄積技術に関する研究」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】