説明

タダラフィル及び少なくとも1種の担体を含んでなる固体組成物

本発明は、ホスホジエステラーゼ5阻害剤タダラフィルの迅速な溶出を供する経口投与用医薬製剤を作製するのに適した経口医薬組成物に関する。具体的には、本医薬組成物は、高い溶解性及び溶出速度を示すタダラフィルの固体複合体を含んでなる。さらに、本発明は、これらの医薬製剤を調製する方法と、PDE5阻害剤に関連した疾患を治療するためのかかる医薬製剤の使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2006年7月7日に出願された米国仮出願第60/819,215号に基づく利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0002】
本発明は、ホスホジエステラーゼ5阻害剤タダラフィルの迅速な溶出を提供する経口投与用医薬製剤の作製に適した経口医薬組成物に関する。具体的には、該医薬組成物は高い溶解性及び溶出速度を示すタダラフィルの固体複合体を含んでなる。さらに本発明は、これらの医薬製剤を調製する方法と、PDE5阻害剤に関連した疾患を治療するためのかかる医薬製剤の使用とに関する。
【背景技術】
【0003】
心筋収縮、血流の調節、神経伝達、腺分泌、細胞分化及び遺伝子発現等の広範な生物学的過程が、環状ヌクレオチドの生物学的セカンドメッセンジャーであるcAMP及びcGMPの定常レベルの影響を受けると報告されている。これら分子の細胞内受容体には、環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼ(PGK)、環状ヌクレオチド依存性チャネル、及びクラスIホスホジエステラーゼ(PDE)が含まれると考えられる。PDEは大きなタンパク質の大きなファミリーであり、Sutherland及び共同研究者らによって報告された(Rall & Sutherland 1958、Butcher & Sutherland 1962)。環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼのファミリーは、3’,5’−環状ヌクレオチドの、対応する5’−リン酸への加水分解を触媒すると考えられる。
【0004】
タダラフィルはCialis(登録商標)の有効成分であり、男性の勃起障害の治療に用いられてきた。Cialis(登録商標)の処方情報には、本製品はアーモンド型の経口投与用フィルムコート錠であって、タダラフィルと、以下の非活性成分とを含有すると記載されている。クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、酸化鉄、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、二酸化チタン、及びトリアセチン。http://pi.lilly.com/us/cialis-pi.pdfを参照のこと。
【0005】
タダラフィルは、(6R−トランス)−6−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−ピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオンという化学名を有する。タダラフィルに割り当てられた構造を以下に示す。(CAS#171596−29−5)
【0006】
【化1】

【0007】
タダラフィルは固体であり、実質的に水不溶性であって、メタノール、エタノール、アセトン等の一部の有機溶媒にも、極めて僅かな溶解性しか示さないと考えられている。米国特許第6,841,167号は、タダラフィルの水溶性は25℃で水1ミリリットルあたり約2μgであると報告している。
【0008】
水溶性の低い化合物は、溶出速度が低く、生体利用能(bioavailability)も低くなる。例えば、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Delivery Methods (6th ed., 1995), p. 105, 108を参照のこと。
【0009】
タダラフィルの見かけの水溶性の低さを克服しようと、様々な手法が用いられてきた。公開国際特許出願WO01/08686には、「遊離薬物(free drug)」形態のタダラフィルを、希釈剤、滑沢剤、親水性結合剤、及び崩壊剤との混合物として含んでなる医薬製剤が開示されている。
【0010】
溶解性を改善するために用いられる他の手法は、タダラフィルの「共沈物」を用いて製剤を調製するものである。本手法では、水混和性非水溶媒(及び任意により水)中における、タダラフィルと担体との「密接混合物(intimate mixture)」を、担体が実質的に不溶である水性「共沈媒体」を用いて「密接混合物」から共沈させる。米国特許第5,985,326号を参照。但し本文献もあまり明確ではない。該‘326特許はいわゆる溶媒に基づく方法を軽視している。
【0011】
生体利用能が改善されたタダラフィル製剤を調製する目的で、医薬的に許容し得る溶媒中に懸濁されたタダラフィルを含有するソフトゲルカプセルも開発されている。
【0012】
Cialis(登録商標)製品についてはFDAの「オレンジブック」に米国特許第6,821,975号が掲載されている。本特許は、Cialis(登録商標)の販売社に付与されたものと思われる。本特許は、「化合物の粒子を含んでなり、少なくとも90%の該粒子が約40ミクロン未満の粒径を有する」「遊離薬物微粒子型」のタダラフィルを対象とし、好ましくは少なくとも90%の前記粒子が10ミクロン未満の粒径を有するとしている。
【0013】
しかし、かかる手法を用いても、製剤投与時に血流まで到達するタダラフィルは、含有されるタダラフィルのほんの一部に過ぎないと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本技術分野では、溶出速度が向上し、生体利用能が改善されたタダラフィルの医薬製剤が、依然として求められている。本発明は、Cialis(登録商標)及び極細粒子サイズの遊離薬物型タダラフィルの何れと比較しても、溶解性及び溶出速度が有意に改善された、タダラフィルの医薬製剤又は組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様によれば、本発明は、タダラフィルと少なくとも1種の担体とを含んでなる固体複合体であって、少なくとも約85wt%のタダラフィルが、前記少なくとも1種の担体と密接に結びついているとともに、約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する、固体複合体に関する。少なくとも約85wt%のタダラフィルは、結晶形態ではないことが好ましい。前記固体複合体は、固溶体の形態であることが好ましい。上記条件下において、好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%のタダラフィルが、約5分間以内に溶出する。
【0016】
上記固体複合体は、遊離薬物型のタダラフィルであって、d(0.9)値が約40μm超となるような粒径分布を有するタダラフィルととともに、医薬組成物に含まれていてもよい。かかる医薬組成物は、約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、前記医薬組成物の50wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出し、前記医薬組成物の70wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出することが好ましい。
【0017】
前記固溶体において、実質的に全てのタダラフィルが溶解していることがより好ましい。少なくとも1種の担体が親水性ポリマーであることも好ましい。タダラフィルの、前記少なくとも1種の担体に対する割合は、重量比で約1:0.5〜約1:20であることが好ましい。この割合は、より好ましくは約1:1〜約1:10、さらに好ましくは約1:3〜約1:6、一層好ましくは約1:5である。担体は、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリエチレングリコールであることが好ましく、ポビドン(別名ポリビニルピロリドン)であることがより好ましい。
【0018】
他の態様によれば、本発明は、タダラフィルと少なくとも1種の担体とを含んでなる固体複合体であって、タダラフィルの約85wt%が前記少なくとも1種の担体中に固溶している固体複合体に関する。ここで、約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出することが好ましい。
【0019】
前記固体複合体は、遊離薬物型でd(0.9)値が約40μm超であるような粒径分布を有するタダラフィルとともに、医薬組成物に含まれていてもよい。かかる医薬組成物は、約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、前記医薬組成物の50wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出し、前記医薬組成物の70wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出することが好ましい。
【0020】
前記固体複合体において、実質的に全てのタダラフィルが、前記少なくとも1種の担体中で固溶していることが好ましい。前記少なくとも1種の担体が親水性ポリマーであることも好ましい。前記少なくとも1種の担体は、少なくとも1種の担体に対するタダラフィルの割合が、重量比で約1:3〜約1:6となるような量で存在する。前記少なくとも1種の担体は、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリエチレングリコールであることが好ましく、ポビドンが特に好ましい。
【0021】
他の態様によれば、本発明は、タダラフィルと少なくとも1種の担体との固体複合体を製造する方法であって、a)タダラフィルと、前記少なくとも1種の担体と、少なくとも1種の溶媒とを混合して溶液を形成する工程;及びb)前記組み合わせから前記溶媒を除去して前記固体複合体を得る工程を含んでなる方法に関する。
【0022】
本方法において、前記固体複合体は、固溶体であることが好ましい。前記担体は、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリエチレングリコールであることがより好ましい。前記溶媒が、低級脂肪族アルコール又は炭素数3〜8のケトンであることも好ましい。前記少なくとも1種の前記溶媒は、タダラフィルが25℃で溶媒1mL当たり少なくとも約1.2mgの溶解度を有する溶媒であることがより好ましい。前記溶媒は蒸発により除去されることが好ましい。溶媒の除去は流動床乾燥機を用いて行うことが好ましく、前記溶液を当初は空の流動床乾燥機へ噴霧することにより行うことが好ましい。前記溶液は、アセトンと水との混合物であることが好ましく、アセトンの水に対する割合が約30:1〜約1:1、より好ましくは約11:2〜約3:1であることが好ましい。流動床乾燥機において、前記溶液を、少なくとも1種の医薬的に許容し得る賦形剤へと噴霧することが好ましい。他の態様によれば、前記溶媒は噴霧乾燥により除去される。
【0023】
さらに他の態様によれば、本発明は、タダラフィルを含んでなる固体複合体であって、前記固体複合体を、約4.5〜約7.0の間のpHを有する水溶液中で試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する固体複合体に関する。少なくとも60wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出することが好ましい。前記固体複合体は少なくとも1種の担体を含むことが好ましい。
【0024】
他の態様によれば、本発明は、約20mgのタダラフィルを含んでなる固体複合体であって、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する、固体複合体に関する。
【0025】
更なる態様によれば、本発明は、タダラフィルを含んでなる固体複合体であって、微粉化遊離薬物型のタダラフィルと比べ、より高い溶解性(又は、少なくとも水系媒体と比べて、より高い溶解性)を有する固体複合体に関する。
【0026】
他の態様によれば、本発明は、固溶体の形態のタダラフィルを含んでなる固体複合体であって、d(0.9)値が約4μmとなるような粒径分布を有する遊離薬物型タダラフィルと比べ、より高い溶解性(又は、少なくとも水系媒体と比べて、より高い溶解性)を有する固体複合体に関する。
【0027】
他の態様によれば、本発明は、タダラフィルを含んでなる固形経口医薬組成物であって、少なくとも約85wt%のタダラフィルが非晶質形である医薬組成物に関する。タダラフィルは非晶質の形態であることが好ましい。
【0028】
他の態様によれば、本発明は、タダラフィルと少なくとも1種の担体とを含んでなる固体複合体であって、タダラフィルと前記少なくとも1種の担体とが、タダラフィルと前記少なくとも1種の担体との溶液から前記溶媒を蒸発させることにより形成された密接な結びつきを有する、固体複合体に関する。
【0029】
他の態様によれば、本発明は、タダラフィルの医薬組成物であって:a)少なくとも1種の担体と密接な結びつきを有する非晶質の形態のタダラフィル;及びb)d(0.9)値が約40μm超であるような粒径分布を有する遊離薬物型タダラフィルを含んでなる医薬組成物に関する。好ましくは、部分a)及び部分b)が、約20mgのタダラフィルを含有する前記医薬組成物の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、前記医薬組成物の50wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出し、前記医薬組成物の70wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出するような割合で存在することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の固体複合体の溶出プロファイルを、市販のタダラフィル錠剤(Cialis(登録商標)20mg)の溶出プロファイル、及び、d(0.9)=〜(約)50μmの粒径を有する、常法により得られたタダラフィル粒子の溶出プロファイルと比較したものである。
【図2】図2は、本発明の固体複合体の溶出プロファイルを、d(0.9)=〜(約)4μmの粒径を有する微粉化タダラフィル粒子の溶出プロファイルと比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一実施形態によれば、本発明は、タダラフィルと少なくとも1種の担体とを含んでなる固体複合体であって、遊離薬物型とは対照的に、少なくとも約85wt%のタダラフィルが、前記少なくとも1種の担体と密接に結びついている固体複合体を提供する。少なくとも85wt%のタダラフィルは、結晶形態ではないことが好ましい。
【0032】
本明細書で使用される「タダラフィル」とは、遊離塩基タダラフィル並びに医薬的に許容し得るその塩及び溶媒和物を意味するが、タダラフィル化合物の範囲を限定することを意図するものではない。前記固体複合体中のタダラフィル、及び、この固体複合体を製造する本明細書記載の方法におけるタダラフィルは、遊離塩基であることが好ましい。
【0033】
「密接な結びつき(intimate association)」又は「密接に結びついた(intimately associated)」とは、前記少なくとも1種の担体とタダラフィルとが分子レベルで相互作用し、容易に検出し得る分離したタダラフィル相が存在しないことを意味する。すなわち、前記少なくとも1種の担体とタダラフィルとは、同一の単一相に含まれる。
【0034】
「遊離薬物」又は「遊離薬物型」とは、担体と密接な結びつきを有しない、医薬用途に適したタダラフィルの固体粒子を意味する。
【0035】
「非晶質」及び「結晶形態ではない」とは、結晶性タダラフィルに特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを示さず、通常の条件下(例えば2〜20度/分の加熱速度の使用)での示差走査熱量測定により、識別可能な吸熱を示さない物質を意味する。
【0036】
本明細書で測定量について使用される「約」という語は、測定を実施又は解釈する当業者が、測定の目的及び使用する測定器具の精度に応じた注意を払った場合に、通常予測される測定量の変動を意味する。
【0037】
前記固体複合体には結晶性タダラフィルが検出されないことが好ましい。本発明の固体複合体のタダラフィルは、非晶質の状態であることが好ましい。
【0038】
前記固体複合体は、タダラフィルが前記担体に溶解した固溶体であることが好ましい。
【0039】
固溶体においては、存在量の少ない1又は2以上の成分(一般に溶質と呼ばれる)の結晶構造に関連する個々の物性は失われる。溶質の存在は、分光学的手法により、或いは、固溶体の束一的性質を測定することにより検出することができる。
【0040】
前記固溶体において、一部のタダラフィルが析出し、或いは担体に溶解せず残存していても、本発明の範囲を逸脱することはない。しかし、前記固溶体には、少なくとも85wt%のタダラフィルが溶解している。少なくとも約90wt%、より好ましくは少なくとも約95wt%、さらに好ましくは少なくとも約99wt%のタダラフィルが、固溶体に溶解していることが最も好ましい。すなわち、最も好ましい実施形態によれば、タダラフィルの全て、或いは実質的に全てが、固溶体に溶解している。
【0041】
糖及びポリマーを含め、医薬的に許容し得る不活性固体担体の多くが、本発明の固体複合体に適している。
【0042】
前記少なくとも1種の担体は、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコール等の親水性ポリマーであることが好ましい。最も好ましくは、前記担体はポビドンである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリメチルアクリレート、及びヒドロキシプロピルセルロースも、本発明に適した担体となり得るが、本発明の実施において好ましい担体ではない。
【0043】
少なくとも85wt%のタダラフィルを、前記担体と密接に結びついた状態で、好ましくは前記担体中に固溶した状態で、維持するのに少なくとも十分な担体の量を用いることが好ましい。本発明の固体複合体中における薬剤の担体に対する重量比は、通常は約1:0.5〜約1:20、より好ましくは約1:1〜約1:10、さらに好ましくは約1:3〜約1:6、最も好ましくは約1:5の範囲内である。
【0044】
本発明の固体複合体は、a)タダラフィル、少なくとも1種の担体、及び少なくとも1種の溶媒を混合して溶液を形成する工程;及び、b)この混合物から溶媒を除去して固体複合体を得る工程により調製されうる。かかる方法により調製される固体複合体は、固溶体の形態であることが好ましく、タダラフィルの実質的に全部、最も好ましくはタダラフィルの全部が、少なくとも1種の担体中に固溶していることが好ましい。
【0045】
任意により、医薬的に許容し得る賦形剤を、工程a)で混合し、或いは工程b)の溶液に加えてもよい。
【0046】
前記固体複合体の調製に適した溶媒としては、少なくとも85wt%のタダラフィルと実質的に全ての担体とを溶解し得る、a)有機溶媒、及び、b)有機溶媒と水との組み合わせ等が挙げられる。この溶媒は、少なくとも85wt%のタダラフィルと85wt%の担体とを溶解し得ることが好ましい。前記溶媒は、実質的に全てのタダラフィルと担体とを溶解し得ることがより好ましい。前記溶媒は、全てのタダラフィルと担体とを溶解し得ることが最も好ましい。
【0047】
好適な溶媒の例として、低級脂肪族アルコール類及び炭素数3〜8のケトン類が挙げられる。
【0048】
本明細書で「低級脂肪族アルコール類」とは、一般構造R−OHを有する有機化合物を意味する。ここでRは、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基である。本発明の方法で好ましく使用される低級脂肪族アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、及びブタノール等が挙げられる。本発明における溶媒として有用な炭素数3〜8のケトン類としては、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)及びメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。溶媒としては、エタノール、アセトン、及びイソプロピルアルコールが特に好ましく、エタノールが最も好ましい。有機溶媒と水との組み合わせの好ましい例としては、アセトンと水との組み合わせが挙げられる。アセトン:水の比は、約30:1〜約1:1であることが好ましく、約11:2〜約3:1であることが好ましい。
【0049】
前記少なくとも1種の担体は、タダラフィルが25℃で溶媒1mL当たり少なくとも約1.2mgの溶解度を有するものであることが好ましい。
【0050】
少なくとも85wt%のタダラフィルと担体の大部分とが、前記少なくとも1種の溶媒中に溶解していることが好ましい。少なくとも85wt%のタダラフィルと85wt%の担体とが、前記少なくとも1種の溶媒中に溶解していることがより好ましい。実質的に全てのタダラフィル及び担体が、前記少なくとも1種の溶媒中に溶解していることがより好ましい。特に好ましい実施形態によれば、全てのタダラフィル及び担体が、前記少なくとも1種の溶媒中に溶解している。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、タダラフィルと少なくとも1種の担体と少なくとも1種の溶媒との混合は、溶媒をタダラフィル及び少なくとも1種の担体と任意の順序で混合する工程を伴う。タダラフィル、担体、及び溶媒の混合は、任意の好適な混合法を用いて行われる。例としては、マグネチックスターラー、ミキサースターラー(mixer stirrer)、振とう機、超音波処理(sonification)等が挙げられる。
【0052】
前記固体複合体を調製するための出発原料としては、任意の形態(結晶性又は非晶質等)のタダラフィルを用いることができる。
【0053】
タダラフィルは任意の適切な手段により合成することができる。
【0054】
溶媒除去は任意の適切な手法により行うことができる。好ましい方法は蒸発である。前記少なくとも1種の溶媒を除去するための特に好ましい方法としては、タダラフィルの溶液の流動床乾燥及び噴霧乾燥等が挙げられる。「噴霧乾燥」は、広義には、液体混合物を小滴へと分散させ(霧化)、混合物から溶媒を迅速に除去する方法を指す。典型的な噴霧乾燥機は、小滴から溶媒を蒸発させるための強い駆動力を有する。これは例えば、加熱した乾燥用ガスを供給することにより提供することができる。噴霧乾燥法及び装置は、Perry's Chemical Engineer's Handbook, pgs. 20-54 to 20-57 (Sixth Edition 1984)に記載されている。
【0055】
結果として得られる、少なくとも1種の担体と密接に結びついたタダラフィルの固体複合体を、回収して乾燥してもよい。この固体複合体を医薬組成物に製剤してもよい。かかる組成物には、医薬的に許容し得る賦形剤、例えば界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)、結合剤、フィラー、流動促進剤(glidant)、滑沢剤、崩壊剤等を使用できる。例えば、前記固体複合体は、カプセル、錠剤、又はジェルカプセル等の固形経口製剤等の製造に有用な固形経口医薬組成物に製剤することができる。一実施形態を挙げれば、前記固体複合体を回収し、そのままカプセルに入れて用いてもよく、或いは、医薬的に許容し得る1又は2以上の賦形剤、例えば界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)、結合剤、フィラー、流動促進剤、滑沢剤、崩壊剤等と組み合わせて医薬組成物とし、これを医薬投与形態等へと加工してもよい。
【0056】
固体複合体を医薬組成物に製剤し、次いで錠剤等の剤形へと製剤する場合、かかる医薬組成物は、医薬的に許容し得る賦形剤を含有する。この賦形剤の機能としては、圧縮後に有効成分と他の賦形剤との結合促進が挙げられる。例えば、錠剤の製剤時に錠剤パンチやダイ(tablet punch and dye)に対する錠剤の付着を減らし、錠剤の遊離を容易にする目的で、滑沢剤を加えてもよい。
【0057】
他の実施形態によれば、前記固体複合体は、非経口、経直腸、経皮、頬内、又は経鼻投与用の医薬組成物に製剤される。非経口投与に適した形態としては、水性又は非水系の溶液又はエマルジョン等が挙げられ、直腸投与の場合は、投与に適した形態として、親水性又は疎水性賦形剤を有する座剤等が挙げられる。局所投与については、本発明は本技術分野で公知の適切な経皮送達システムを提供し、経鼻送達については、本技術分野で公知の適切なエアロゾル送達システムを提供する。経口投与用の医薬組成物が好ましい。
【0058】
溶媒除去後にタダラフィルの固体複合体を回収した後、1又は2以上の賦形剤を加える代わりに、これら2つの工程を組み合わせて1つの工程とし、例えばタダラフィル、担体及び溶媒を含んだ溶液を賦形剤の流動床に噴霧しながら乾燥させてもよい。これにより、賦形剤上に固体複合体が形成される。
【0059】
前記医薬組成物は、追加のタダラフィル(すなわち、固体複合体中のタダラフィルに加えて、さらに別のタダラフィル)を含有していてもよい。これにより、組成物からのタダラフィルの溶出速度を、広範囲のプロファイルに適合するように調節することができる。例えば、遅い溶出速度が望まれる場合の組成物は、速い溶出速度が望ましい場合の組成物に比べて、「追加の」(遊離薬物の)タダラフィルをより高い割合で含んでなることが好ましい。
【0060】
溶出を調節するために使用される遊離薬物型のタダラフィルは、d(0.9)値が約40μm超、例えば約50μmの粒径分布を有することが好ましい。
【0061】
医薬製剤に用いる固体複合体の量は、医薬的に有効な量のタダラフィルを提供する量とすることが好ましい。固体複合体の使用量は、当然ながら、粒子内の薬剤:担体比に応じて異なる。
【0062】
薬物又は薬理学的活性薬剤の「有効な」又は「医薬的に有効な」量とは、無毒性であって、所望の効果(例えば勃起障害の治療)を提供するのに十分な薬物又は薬剤の量を意味する。
【0063】
PDE5阻害剤の投与量及び投与計画は、選択される具体的な薬物、治療を受ける患者の年齢及び全身状態、患者の症状の重症度、並びに処方する医師の判断に応じて異なる。すなわち、患者毎にはばらつきがあるため、用量は単なる指針であり、医師は患者にとって適切であると判断する有効な治療水準を達成するべく、化合物の用量を調節してもよい。所望の治療の度合いを判断するにあたって、医師は、患者の年齢や他の疾患又は既往症の存在等、種々の要因のバランスをとる必要がある。
【0064】
前記医薬組成物は哺乳動物に投与してもよい。好ましくは、該哺乳動物はヒトである。好ましくは、前記医薬製剤は勃起障害を治療するために投与される。
【0065】
「治療する」、「治療される」及び「治療」とは、以下のうち少なくとも1つを意味する。症状の重症度及び/又は頻度の減少、症状及び/又はその根本原因の除去、症状及び/又はその根本原因の発生の予防、或いは、障害の改善又は矯正。例えば、本方法により勃起障害を「治療する」ことは、本明細書での定義によれば、素因を有する個体において疾患を予防することと、臨床症状を示す個体において疾患を治療することの両者を包含する。
【0066】
本発明の固体複合体及びこれを含む医薬組成物は、哺乳動物において、PDE阻害剤タダラフィルの迅速な吸収及び発現を可能にすることが好ましい。
【0067】
特にタダラフィルは、弱酸性〜中性のpH領域において、消化管での吸収に十分な溶解性を有する固体複合体から、或いはかかる固体複合体を含有する医薬製剤から放出されることが好ましい。
【0068】
約4.5〜約7.0の範囲のpHを有する水溶液中で試験した場合、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出することが好ましい。上記条件下で、好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%のタダラフィルが、約5分間以内に溶出する。かかる溶出速度は、表1で例示されるものと少なくとも同程度にストリンジェントな条件(例えば表1に記載した条件)下で、20mgのタダラフィルを含んだ複合体を試験した場合にも達成されることが好ましい。
【0069】
前記固体複合体、及び、前記固体複合体を含んでなる医薬製剤又は投与形態を、(例えば高分子コーティングで)被覆してもよいが、溶出速度を試験する際には、当然ながら前記固体複合体は被覆されない。
【0070】
さらなる実施形態によれば、本発明の組成物は、本発明の固体複合体と遊離薬物型タダラフィルとの混合物を含んでいてもよい。この場合、微粉化タダラフィルを用いることなく中間の溶出速度を達成し得るように、遊離薬物型のタダラフィル粒子はd(0.9)値40μm超の粒径分布を有することが好ましい。このように、固体複合体と遊離薬物型タダラフィルとの比率を調節して所望の溶出速度を得ることは、当業者に公知である。例えば、当業者であれば、Cialis(登録商標)に匹敵する溶出速度を達成することができる。すなわち、20mgのタダラフィルを含む組成物の試料を、表1に例示する条件と少なくとも同程度にストリンジェントな条件(例えば表1に記載される条件)で試験した場合に、好ましくは、約5分間以内に組成物中の50wt%のタダラフィルが溶出し、約10分間以内に組成物中の70wt%のタダラフィルが溶出する溶出速度を達成できる。
【実施例】
【0071】
以下の実施例では、Mini-Glatt model 7069流動床乾燥機を用い、以下の条件で操作して溶媒を除去した。
導入口予熱:40℃〜60℃。
噴霧圧力:1.5〜2バール。
生成物温度:30℃〜35℃。
フラップ(気流):0.2バール。
ポンプ:9RPM。
【0072】
以下に記載の溶出プロファイルは、溶出容器中、USP装置2(パドル)を用いて、表1に記載の条件で測定した。試料はUV検出器でオンライン分析した。
【0073】
【表1】

【0074】
[実施例1]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体の比率1:5)
d(0.9)=〜(約)50μmのタダラフィル300mgを、エタノール240mLに、ソニケーターを用いて溶解させ、溶液を作製した。d(0.9)=〜(約)50μmという語は、少なくとも約90%の粒子が約50μm未満の粒径を有することを指す。
【0075】
前記溶液に、ポビドン(PVP K−30)1500mgを、ソニケーターを用いて完全に溶解させた。上記のように流動床乾燥機を用いて、この溶液からエタノールを蒸発させ、乾燥粉末(P−00464)を得た。
【0076】
タダラフィル20mgを含む乾燥粉末P−00464の試料を回収し、表1の条件でその溶出プロファイルを測定した。P00464の溶出プロファイルを、市販のタダラフィル錠剤(Cialis(登録商標)20mg)、及び、d(0.9)=〜(約)50μmの粒径分布(PSD)を有する有効薬剤成分(active drug substance)の溶出プロファイルと比較した。溶出試験の結果を図1に示す。
【0077】
40分の時点で溶出したタダラフィルの量を見ると、固溶体又は固体複合体の形態のタダラフィルは、d(0.9)=〜(約)50μmのタダラフィル粒子よりも高い溶解度を有することが分かる。5分後に溶出したタダラフィルの割合を見ると、固溶体又は固体複合体の形態のタダラフィルは、Cialis(登録商標)及びd(0.9)=〜(約)50μmのタダラフィル粒子の何れと比較しても、より高い溶出速度を有することが分かる。
【0078】
[実施例2]
PSD d(0.9)=〜(約)4μmのタダラフィルと比べて、タダラフィル固溶体の溶出速度は速く、総溶解度は高い
実施例1のP−00464の試料と、d(0.9)=〜(約)4μmのPSDを有するタダラフィル活性物質(TAPI AK−2186という)の試料を、溶出試験のために下記の手順で調製した。これらの試料の溶出プロファイルを、表1の条件に従って測定した。これらの試料をオンラインでUV検出により分析し、比較した。図2に、各薬物試料の平均値を示す。
【0079】
試料調製
有効薬剤成分:
1)d(0.9)=〜(約)4μmのPSDを有するタダラフィル20mgの試料(TAPI AK−2186という)をガラス管に入れた。
2)この管に0.05wt%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液5mLを加えた。
3)試料をソニケーターに8分間かけ、スラリーを形成した。
4)スラリーを溶解容器に移して試験した。
【0080】
P−00464:
1)実施例1のP−00464試料125mg(タダラフィル20mgに相当)を秤量し、溶解容器に移して試験した。
【0081】
固溶体のタダラフィルの90wt%超が40分間以内に溶出したのに対し、同一時点でPSD d(0.9)=〜(約)4μmのタダラフィル粒子からの溶出は70wt%未満であった。
【0082】
当業者には明らかなように、これらの結果から、固溶体中のタダラフィルが、PSD d(0.9)=〜(約)4μmのタダラフィル粒子と比べ、溶出速度が速く、溶解度が高いことが分かる。ひいては、本発明の固体複合体及び組成物が、微粉化した遊離薬物微粒子の形態のタダラフィルと比べ、溶解性が有意に高いことが分かる。
【0083】
[実施例3]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体Eudragit(登録商標)L-100の比率1:0.5)
d(0.9)=〜(約)50μmの粒径を有するタダラフィル1000mgをエタノール1000mLに溶解させ、溶液を形成する。この溶液に500mgのEudragit(登録商標)L-100を溶解させる。流動床乾燥機を用いてエタノールを溶液から蒸発させ、乾燥粉末を得る。この乾燥粉末を回収し、医薬製剤中に組み入れてもよい。
【0084】
[実施例4]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体の比率1:3)
d(0.9)=〜(約)50μmの粒径を有するタダラフィル300mgを240mLのエタノールにソニケーターを用いて溶解させ、溶液を形成する。この溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース900mgを、ソニケーターを用いて溶解させる。この溶液から流動床乾燥機を用いてエタノールを蒸発させ、乾燥粉末を得る。この乾燥粉末を回収し、医薬製剤に組み入れてもよい。
【0085】
[実施例5]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体の比率1:7)
d(0.9)=〜(約)50μmの粒径を有するタダラフィル300mgを、エタノール240mLにソニケーターを用いて溶解させ、溶液を形成する。この溶液に、ポリエチレングリコール2100mgを、ソニケーターを用いて溶解させる。この溶液から流動床乾燥機を用いてエタノールを蒸発させ、乾燥粉末を得る。この乾燥粉末を回収し、医薬製剤に組み入れてもよい。
【0086】
[実施例6]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体の比率1:20)
d(0.9)=〜(約)50μmの粒径を有するタダラフィル300mgを、エタノール240mLにソニケーターを用いて溶解させ、溶液を形成する。この溶液に、ポビドン(PVP k−30)6000mgを、ソニケーターを用いて溶解させる。この溶液から流動床乾燥機を用いてエタノールを蒸発させ、乾燥粉末を得る。この乾燥粉末を回収し、医薬製剤に組み入れてもよい。
【0087】
[実施例7]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体の比率1:10)
d(0.9)=〜(約)50μmの粒径を有するタダラフィル300mgを、エタノール240mLにソニケーターを用いて溶解させ、溶液を形成する。この溶液にポビドン(PVP k−30)3000mgを、ソニケーターを用いて溶解させる。この溶液から流動床乾燥機を用いてエタノールを蒸発させ、乾燥粉末を得る。この乾燥粉末を回収し、医薬製剤に組み入れてもよい。
【0088】
[実施例8]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体の比率1:5)75%とタダラフィル遊離薬物(d(0.9)=〜(約)50μm)25%との物理混合物
90mgの実施例1の粉末(P−00464;タダラフィル15mgに相当)を、PSD(粒径分布)d(0.9)=〜(約)50μmのタダラフィル原料5mgと混合する。
【0089】
上記の(実施例1の)溶出溶媒を用いてこの物理混合物を試験した場合、各時間間隔における結果は、この物理混合物の前記2つの成分の溶出の加重平均に近い。例えば、固溶体75%及び遊離薬物25%の混合物の5分後の溶出は次の通りである。=0.75*(5分間での固溶体の溶出)+0.25*(5分間での遊離薬物の溶出)(実施例1で提供した溶出データを参照)。
【0090】
[実施例9]
タダラフィル固溶体(活性薬物:担体の比率1:5)25%とタダラフィル遊離薬物(d(0.9)=〜(約)50μm)75%との物理混合物
実施例1の粉末30mg(P−00464;タダラフィル15mgに相当)を、PSD(粒径分布)d(0.9)=〜(約)50μmのタダラフィル原料15mgと混合する。
【0091】
上記の(実施例1の)溶出溶媒を用いてこの物理混合物を試験した場合、各時間間隔における結果は、この物理混合物の前記2つの成分の溶出の加重平均に近い。例えば、固溶体75%及び遊離薬物25%の混合物の5分後の溶出は次の通りである。=0.75*(5分間での固溶体の溶出)+0.25*(5分間での遊離薬物の溶出)(実施例1で提供した溶出データを参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タダラフィルと少なくとも1種の担体とを含んでなる固体複合体であって、
少なくとも約85wt%のタダラフィルが、前記少なくとも1種の担体と密接に結びついているとともに、
約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する、固体複合体。
【請求項2】
前記少なくとも約85wt%のタダラフィルが結晶形態ではない、請求項1記載の固体複合体。
【請求項3】
前記固体複合体が固溶体である、請求項2記載の固体複合体。
【請求項4】
少なくとも60wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出する、請求項1記載の固体複合体。
【請求項5】
少なくとも70wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出する、請求項4記載の固体複合体。
【請求項6】
請求項1記載の固体複合体と、遊離薬物型のタダラフィルであって、d(0.9)値が約40μm超となるような粒径分布を有するタダラフィルとを含んでなる医薬組成物。
【請求項7】
約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、前記医薬組成物の50wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出し、前記医薬組成物の70wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
実質的に全てのタダラフィルが固溶体に溶解している、請求項3記載の固体複合体。
【請求項9】
前記少なくとも1種の担体が親水性ポリマーである、請求項1記載の固体複合体。
【請求項10】
前記固溶体中における、タダラフィルの、前記少なくとも1種の担体に対する割合が、重量比で約1:0.5〜約1:20であるような量で前記少なくとも1種の担体が存在する、請求項9記載の固体複合体。
【請求項11】
前記固溶体中におけるタダラフィルの、前記少なくとも1種の担体に対する割合が、重量比で約1:1〜約1:10であるような量で、前記少なくとも1種の担体が存在する、請求項9記載の固体複合体。
【請求項12】
前記固溶体中におけるタダラフィルの、前記少なくとも1種の担体に対する割合が、重量比で約1:3〜約1:6であるような量で、前記少なくとも1種の担体が存在する、請求項9記載の固体複合体。
【請求項13】
前記固溶体中におけるタダラフィルの、前記少なくとも1種の担体に対する割合が、重量比で約1:5であるような量で、前記少なくとも1種の担体が存在する、請求項9記載の固体複合体。
【請求項14】
前記少なくとも1種の担体が、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項9記載の固体複合体。
【請求項15】
前記少なくとも1種の担体がポビドンである、請求項14記載の固体複合体。
【請求項16】
タダラフィルと少なくとも1種の担体とを含んでなる固体複合体であって、タダラフィルの約85wt%が前記少なくとも1種の担体中に固溶している固体複合体。
【請求項17】
約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する、請求項16記載の固体複合体。
【請求項18】
請求項16記載の固体複合体と、遊離薬物型でd(0.9)値が約40μm超であるような粒径分布を有するタダラフィルとを含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
約20mgのタダラフィルを含有する前記固体複合体の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、前記医薬組成物の50wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出し、前記医薬組成物の70wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する、請求項18記載の固体複合体。
【請求項20】
実質的に全てのタダラフィルが前記少なくとも1種の担体中に固溶している、請求項16記載の固体複合体。
【請求項21】
前記少なくとも1種の担体が親水性ポリマーである、請求項16記載の固体複合体。
【請求項22】
前記少なくとも1種の担体に対するタダラフィルの割合が、重量比で約1:3〜約1:6であるような量で、前記少なくとも1種の担体が存在する、請求項21記載の固体複合体。
【請求項23】
前記少なくとも1種の担体がポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項21記載の固体複合体。
【請求項24】
前記少なくとも1種の担体がポビドンである、請求項21記載の固体複合体。
【請求項25】
タダラフィルと少なくとも1種の担体との固体複合体を製造する方法であって、
a)タダラフィルと、前記少なくとも1種の担体と、少なくとも1種の溶媒とを混合して溶液を形成する工程;及び
b)前記組み合わせから前記溶媒を除去して前記固体複合体を得る工程
を含んでなる方法。
【請求項26】
前記固体複合体が固溶体である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種の担体が、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒が低級脂肪族アルコール類及び炭素数3〜8のケトン類から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記溶媒が、タダラフィルが25℃で溶媒1mL当たり少なくとも約1.2mgの溶解度を有する溶媒である、請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記溶媒が蒸発により除去される、請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒除去が流動床乾燥機を用いて実施される、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記溶液を、当初は空の流動床乾燥機へ噴霧し、前記溶媒を除去する、請求項25記載の方法。
【請求項33】
前記溶媒がアセトンと水との混合物であり、アセトンの水に対する割合が約30:1〜約1:1である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
アセトンの水に対する割合が約11:2〜約3:1である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
流動床乾燥機において、前記溶液が少なくとも1種の医薬的に許容し得る賦形剤へと噴霧される、請求項31記載の方法。
【請求項36】
前記溶媒除去が噴霧乾燥により実施される、請求項25記載の方法。
【請求項37】
タダラフィルを含んでなる固体複合体であって、前記固体複合体を、約4.5〜約7.0の間のpHを有する水溶液中で試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する固体複合体。
【請求項38】
前記複合体が少なくとも1種の担体を含んでなる、請求項37記載の固体複合体。
【請求項39】
少なくとも60wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出する、請求項37記載の固体複合体。
【請求項40】
約20mgのタダラフィルを含んでなる固体複合体であって、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、少なくとも80wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出する、固体複合体。
【請求項41】
前記固体複合体がさらに少なくとも1種の担体を含んでなる、請求項40記載の固体複合体。
【請求項42】
少なくとも60wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出する、請求項40記載の固体複合体。
【請求項43】
タダラフィルを含んでなる固体複合体であって、微粉化遊離薬物型のタダラフィルと比べ、より高い溶解性を有する固体複合体。
【請求項44】
固溶体の形態のタダラフィルを含んでなる固体複合体であって、d(0.9)値が約4μmとなるような粒径分布を有する遊離薬物型タダラフィルと比べ、より高い溶解性を有する固体複合体。
【請求項45】
タダラフィルを含んでなる固形経口医薬組成物であって、少なくとも約85wt%のタダラフィルが非晶質形である医薬組成物。
【請求項46】
前記少なくとも約85wt%のタダラフィルが非晶質の形態である、請求項45記載の固形経口医薬組成物。
【請求項47】
タダラフィルと少なくとも1種の担体とを含んでなる固体複合体であって、タダラフィルと前記少なくとも1種の担体とが、タダラフィルと前記少なくとも1種の担体との溶液から前記溶媒を蒸発させることにより形成された密接な結びつきを有する、固体複合体。
【請求項48】
前記少なくとも1種の担体がポビドンである、請求項47記載の固体複合体。
【請求項49】
タダラフィルとポビドンとが重量比約1:5の割合で存在する、請求項48記載の固体複合体。
【請求項50】
タダラフィルの医薬組成物であって:
a)少なくとも1種の担体と密接な結びつきを有する非晶質の形態のタダラフィル;及び
b)d(0.9)値が約40μm超であるような粒径分布を有する遊離薬物型タダラフィルを含んでなる医薬組成物。
【請求項51】
部分a)及び部分b)が、約20mgのタダラフィルを含有する前記医薬組成物の試料を、実質的に0.15wt%のラウリル硫酸ナトリウムと6gのNaH2PO4とからなり、37℃で約4.5のpHを示す1000mLの水性媒体と、少なくとも同等にストリンジェントな1000mLの水性媒体中で、50rpmの速度で回転するパドルを用いて試験した場合に、前記医薬組成物の50wt%のタダラフィルが約5分間以内に溶出し、前記医薬組成物の70wt%のタダラフィルが約10分間以内に溶出するような割合で存在する、請求項50記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−542648(P2009−542648A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518090(P2009−518090)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/043664
【国際公開番号】WO2008/005039
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】