説明

タッチスイッチの補正装置及びタッチスイッチの補正方法

【課題】この発明は、例えばディスクトレイの移動やモータの駆動等によりタッチスイッチの放電時間に変化が生じたとしても、人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができ、十分に実用に適し得るようにしたタッチスイッチの補正装置及びタッチスイッチの補正方法を提供することを目的としている。
【解決手段】人体の非接触時と接触時とにおける放電時間が異なることにより、操作されたか否かが判別されるタッチスイッチ(17)に対して、人体の非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差が常に同じになるように定期的に補正処理を施す際、その補正処理を、モータ(21)の駆動中は実行させず、モータ(21)の駆動が停止された時点で実行させるように制御する制御手段(36,36d)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばDVD(digital versatile disk)のような光ディスクに対して情報の記録または再生を行なう光ディスクドライブ等に使用して好適するタッチスイッチの補正装置及びタッチスイッチの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、首記の如き光ディスクドライブにあっては、その本体に設置された操作部を操作することによって主要な動作を制御することができるとともに、リモートコントローラを操作することによって種々の細かい設定や動作等の制御を行なうことができるようになっている。
【0003】
ここにおいて、近年、光ディスクドライブの本体に設置される操作部については、その耐久性やデザイン性等を考慮してタッチスイッチが使用されてきている。このタッチスイッチは、人体の非接触時と接触時との静電容量の差異に基づく放電時間の違いを利用して操作されたか否かを判別している。
【0004】
すなわち、このタッチスイッチは、電極に電圧を印加し対地に対して所定電圧になるまで充電した後、一定電流で放電させる動作を繰り返し行なっており、人体の接触時に、電極と対地間の静電容量が非接触時よりも大きくなって、放電時間が非接触時よりも予め設定された所定時間(しきい値)以上に長くなることで操作されたことを判別している。
【0005】
この場合、タッチスイッチにおける放電時間は、周囲温度の影響によって変化し易いことが知られている。一般に、人体の非接触時において比較すると、タッチスイッチにおける放電時間は、周囲温度が高くなるにつれて長くなり、周囲温度が低くなるにつれて短くなる傾向にある。
【0006】
つまり、タッチスイッチにおいては、温度変化により人体の非接触時における放電時間が変化するので、人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間を固定したままにしておくと、非接触時における放電時間としきい値となる放電時間との差ΔTが変化してしまい、人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができなくなる。
【0007】
このため、タッチスイッチでは、人体の非接触時における放電時間を定期的に更新し、この更新された放電時間から予め設定された所定時間ΔTだけ長い放電時間を人体の接触を判別するためのしきい値とするように補正処理を施している。この補正処理によって、非接触時における放電時間としきい値となる放電時間との差ΔTが一定に保たれ、人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができるようになる。
【0008】
ところで、上記した光ディスクドライブにあっては、その本体からディスクトレイを外方に突出させて光ディスクを載置し、そのディスクトレイを本体内に収容させて光ディスクに対する記録や再生等を行なうようにしている。この場合、ディスクトレイは、モータの駆動力により本体に対して出入されるようになっている。
【0009】
このため、ディスクトレイの移動がタッチスイッチの静電容量に変化を与えてその放電時間に変化を生じさせたり、モータ駆動時のノイズが放電時間に変化を生じさせたりすることがあるので、上記した補正処理を行なっても、タッチスイッチの信頼性を保持することが困難になっている。
【0010】
特許文献1には、スイッチに接触していないときの静電容量を基準とし、この基準からの静電容量の変化量でスイッチへの接触を判断するタッチパネルであって、スイッチに接触していないと判断されているときに基準を自動更新して、温度等の使用環境が変化しても安定したスイッチ操作を行なえるようにしたタッチパネルの構成が開示されている。
【特許文献1】特開2007−208682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、この発明は上記事情を考慮してなされたもので、例えばディスクトレイの移動やモータの駆動等によりタッチスイッチの放電時間に変化が生じたとしても、人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができ、十分に実用に適し得るようにしたタッチスイッチの補正装置及びタッチスイッチの補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、この発明に係るタッチスイッチの補正装置は、モータの駆動力を用いてディスクトレイを本体に対して出入させることによりディスクの出し入れを行なうディスクドライブを備えた機器に使用されるものを対象としている。そして、電極に対する充放電を繰り返し、人体の非接触時における放電時間と、人体の接触時における放電時間とが異なることを利用して、操作されたか否かが判別されるタッチスイッチと;タッチスイッチに対して、人体の非接触時における放電時間を測定し、その測定された放電時間から人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間を設定することにより、人体の非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差が常に同じになるように定期的に補正処理を施す補正手段と;補正手段による補正処理を、モータの駆動中は実行させず、モータの駆動が停止された時点で実行させるように制御する制御手段とを備えるようにしたものである。
【0013】
また、この発明に係るタッチスイッチの補正方法は、モータの駆動力を用いてディスクトレイを本体に対して出入させることによりディスクの出し入れを行なうディスクドライブを備えた機器に使用されるものを対象としている。そして、電極に対する充放電を繰り返し、人体の非接触時における放電時間と、人体の接触時における放電時間とが異なることを利用して、操作されたか否かが判別されるタッチスイッチに対して、人体の非接触時における放電時間を測定し、その測定された放電時間から人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間を設定することにより、人体の非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差が常に同じになるように定期的に補正処理を施す工程と;補正処理を、モータの駆動中は実行させず、モータの駆動が停止された時点で実行させるように制御する工程とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
上記した発明によれば、タッチスイッチに対する補正処理を、モータの駆動中は実行させず、モータの駆動が停止された時点で実行させるようにしたので、例えばディスクトレイの移動やモータの駆動等によりタッチスイッチの放電時間に変化が生じたとしても、人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができ、十分に実用に適するものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態で説明する光ディスクドライブとして光ディスク再生装置11の外観を示している。すなわち、この光ディスク再生装置11は、略薄型の箱状に形成されたキャビネット12を有している。
【0016】
そして、このキャビネット12には、その正面パネル12aに、電源スイッチ13、ディスクトレイ14、ディスクトレイ開閉スイッチ15、表示部16、複数の静電式のタッチスイッチ17を有する操作部18、リモートコントローラ19から送信された操作情報を受信する受信部20等が、それぞれ配設されている。
【0017】
図2は、上記光ディスク再生装置11の信号処理系を示している。この光ディスク再生装置11は、上記ディスクトレイ開閉スイッチ15を操作することにより、上記ディスクトレイ14を、キャビネット12の正面パネル12aに対して、モータ21の駆動力で水平に出入させるディスクドライブ部22を備えている。
【0018】
このディスクドライブ部22は、DVD等の光ディスク23が搭載されたディスクトレイ14をキャビネット12内に引き込み、その光ディスク23を把持して回転させ、光学式ヘッド(図示せず)を用いて、当該光ディスク23からその記録データを読み取るように機能する。
【0019】
そして、ディスクドライブ部22により光ディスク23から読み取られたデータは、トラックバッファ24に一旦格納された後、デマルチプレクサ部25に供給される。このデマルチプレクサ部25は、入力されたデータをそれぞれ圧縮符号化処理が施された映像データと音声データとに分離する。
【0020】
このうち、映像データは、映像入力バッファ26を介して映像デコーダ27に供給されて復号化処理が施される。そして、復号化された映像データは、D/A(digital/analog)変換部28に供給されてアナログの映像データに変換された後、映像出力端子29を介して外部に取り出され、モニタ30による映像表示に供される。
【0021】
また、上記デマルチプレクサ部25で分離された音声データは、音声入力バッファ31を介して音声デコーダ32に供給されて復号化処理が施される。そして、復号化された音声データは、D/A変換部33に供給されてアナログの音声データに変換された後、音声出力端子34を介して外部に取り出され、スピーカ35による音声再生に供される。
【0022】
ここで、このディスク再生装置11は、上記した再生動作を含むその全ての動作を制御部36によって統括的に制御されている。この制御部36は、CPU(central processing unit)36a等を内蔵しており、上記操作部18からの操作情報、または、上記リモートコントローラ19から送出され受信部20で受信した操作情報を受け、その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御している。
【0023】
この場合、制御部36は、メモリ部36bを利用している。このメモリ部36bとしては、主として、制御部36のCPU36aが実行するための制御プログラムを格納したROM(read only memory)と、該CPU36aに作業エリアを提供するためのRAM(random access memory)と、各種の設定情報及び制御情報等を格納するための不揮発性メモリとを有している。
【0024】
また、この制御部36は、上記表示部16を制御して、光ディスク再生装置11の現在の状態や各種の設定状態等を表示させたり、光ディスク再生装置11を各種のモードに設定するためのメニューを表示させたりしている。さらに、この制御部36は、タイマ部37を制御して、現在時刻の認識や時間の計測等を行なうことができる。また、この制御部36は、温度測定部38により現在の周囲温度を認識することができる。
【0025】
そして、上記制御部36は、タッチスイッチ補正部36c及びタッチスイッチ補正制御部36dを備えている。このうち、タッチスイッチ補正部36cは、上記操作部18を構成する複数のタッチスイッチ17に対して、人体の非接触時における放電時間を定期的に測定して更新し、この更新された放電時間から予め設定された所定時間ΔTだけ長い放電時間を人体の接触を判別するためのしきい値とするように補正処理を施している。
【0026】
このような補正処理を行なうことによって、周囲温度により人体の非接触時における放電時間が変化した場合にも、人体の非接触時における放電時間と、人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差ΔTが一定に保持され、各タッチスイッチ17が人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができるようになる。
【0027】
また、上記タッチスイッチ補正制御部36dは、詳細は後述するが、タッチスイッチ補正部36cが本来定期的に行なっている上述した補正処理を、予め設定された所定の禁止条件が成立している状態で実行させないように制御したり、駆動条件の発生に基づいて不定期に実行させたりするように制御している。
【0028】
すなわち、図3は、タッチスイッチ17の構成を示している。このタッチスイッチ17は、上記制御部36からポート17aを介して充電電圧が印加されるもので、人体(人の指等)17bが接触される操作パネル17cに近接して配置された電極17dと、この電極17dにコレクタが接続され、上記制御部36からポート17eを介してゲート電圧がベースに印加されるNPN型のトランジスタ17fと、このトランジスタ17fのエミッタと接地端との間に介挿接続された抵抗17gと、上記トランジスタ17fのベースと接地端との間に図示極性で直列に介挿接続されたダイオード17h,17iとから構成されている。
【0029】
そして、このタッチスイッチ17では、ポート17aに充電電圧を印加して電極17dを接地レベルに対して所定の電圧レベルになるまで充電した後、ポート17eにゲート電圧を印加してトランジスタ17fをオンさせ、電極17dに充電された電荷を放電させるという動作が繰り返し行なわれている。
【0030】
このときの放電電流は、抵抗17gの値と、トランジスタ17fのコレクタ−エミッタ間電圧効果(約0.7V)とで決まる一定値となる。また、放電時間は、操作パネル17cに人体17bが接触されていない状態を考えると、電極17dと接地端との間の静電容量によって規定される値となる。
【0031】
これに対し、操作パネル17cに人体17bが接触されると、電極17dと接地端との間の静電容量に、人体の静電容量(約数100pF)が加わるので、合わせた静電容量が大きくなり、放電時間が人体17bの非接触時に比べて長くなる。このため、放電時間が非接触時よりも予め設定された所定時間(しきい値)以上に長くなったことを検出することにより、操作されたことを判別することができる。
【0032】
すなわち、上記制御部36は、人体17bの非接触時における放電時間を基準値として記憶しておき、上記しきい値を越える放電時間の増加が検出されたときに、人体17bが接触されたと判断している。なお、電極17dの面積や、操作パネル17cの材質等にもよるが、充放電の周期は、1mS未満で行なわれるように設定される。
【0033】
ところで、タッチスイッチ17においては、一般に、非接触時でも、温度により、操作パネル17cや空気中の水の誘電率が変化するため、放電時間は変化する。すなわち、図4に示すように、周囲温度が高くなると非接触時における放電時間が長くなり、周囲温度が低くなると非接触時における放電時間が短くなることが知られている。
【0034】
図4において、(a)は、周囲温度が20度での非接触状態での放電時間を示し、(b)は、人体の接触を判別するために、この非接触時の放電時間(a)から予め設定された所定時間ΔTだけ長く設定されたしきい値を示している。この場合、上記制御部36は、放電時間がしきい値(b)を超えたときに、タッチスイッチ17が操作されたことを判別する。
【0035】
温度が高くなり、非接触時における放電時間(a)が(a1)まで長くなった場合、しきい値(b)が固定されていると、上記所定時間ΔTに満たない(a1)〜(b)なるわずかな放電時間の変化でしきい値(b)に至ってしまうため、制御部36は、タッチスイッチ17が操作されたと誤判定し易くなる。
【0036】
このため、上記したタッチスイッチ補正部36cでは、予め設定された間隔で放電時間を所定時間計測し、当該計測時間内で放電時間に上記所定時間ΔT以上の増加がない場合に、その放電時間を非接触時における新たな放電時間として設定し、その設定された放電時間から所定時間ΔTだけ長い時間を、人体の接触を判別するための新たなしきい値とするように補正処理を施し、接触の有無を常に感度良く判定することができるようにしている。
【0037】
図4で言えば、非接触時における放電時間(a)が(a1)まで長くなった場合、その(a1)を非接触時における新たな放電時間(基準値)として設定し、それよりも所定時間ΔTだけ長い放電時間(b1)を、人体の接触を判別するための新たなしきい値とするようにしている。
【0038】
これにより、非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値との差分の時間ΔTが、常に一定値となるように補正されることになり、人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができる。この補正処理は、実際上、光ディスク再生装置11内の内部発熱による温度上昇等を考慮して、例えば3分間隔等で動作させているのが一般的である。
【0039】
ところで、上記した光ディスク再生装置11にあっては、そのディスクトレイ14の移動がタッチスイッチ17の静電容量に変化を与えてその放電時間に変化を生じさせたり、ディスクトレイ14を駆動するためのモータ21の駆動時のノイズが放電時間に変化を生じさせたりすることがある。
【0040】
図5は、ディスクトレイ14を開閉させたときにおけるタッチスイッチ17の放電時間の変化を示している。すなわち、ディスクトレイ14が閉位置にある通常時に、人体の非接触時における放電時間が(a)となっている状態の時刻P0で、タッチスイッチ補正部36cが動作されたとする。
【0041】
すると、タッチスイッチ補正部36cにより、人体の非接触時における放電時間が(a)に設定され、その放電時間(a)よりも所定時間ΔTだけ長い放電時間(c)が、人体の接触を判別するためのしきい値として設定されるように補正処理が施される。このため、時刻S0に示すように、放電時間がしきい値(c)を超えると、制御部36は、人体が接触された、つまり、タッチスイッチ17が操作されたと判断する。
【0042】
図5において、T1の期間は、ディスクトレイ14が開いて閉じたときの放電時間を示している。ディスクトレイ14が開くときは、ディスクトレイ14を経由する付加静電容量が増えるので、放電時間が長くなり、かつ、ディスクトレイ14の動作によるノイズも発生する。
【0043】
今、期間T1内の時刻P2でタッチスイッチ補正部36cが動作されると、人体の非接触時における放電時間が(b)に設定され、その放電時間(b)よりも所定時間ΔTだけ長い放電時間(f)が、人体の接触を判別するためのしきい値として設定されることになる。
【0044】
このため、ディスクトレイ14が閉じて元に戻った、期間T1の後の状態において、時刻S2で人体が接触したときにおける放電時間は(c)になるが、(b)−(c)の差分値がΔT未満の値であるため、つまり、放電時間(c)がしきい値(f)を超えないため、制御部36は、タッチスイッチ17が操作されたと判断することができなくなる。
【0045】
また、期間T1内におけるディスクトレイ14の開放中において、開放完了に至るまでの非接触状態での放電時間の(a)から(b)までの変化は、ディスクトレイ14の位置やノイズ成分等の影響により、一定の傾きでは変化しない。
【0046】
すなわち、期間T1内の時刻P1でタッチスイッチ補正部36cが動作されると、人体の非接触時における放電時間が(d)に設定され、その放電時間(d)よりも所定時間ΔTだけ長い放電時間(b)が、人体の接触を判別するためのしきい値として設定されることになる。
【0047】
このため、時刻S1で放電時間が(e)になると、(d)−(e)の差分値がΔT以上の値となるため、つまり、放電時間(e)がしきい値(b)を超えるため、制御部36は、タッチスイッチ17が操作されたと判断してしまうことになる。
【0048】
以上に述べたように、ディスクトレイ14の開閉動作中に、つまり、モータ21の駆動中にタッチスイッチ補正部36cによる補正処理が施された場合、制御部36が、タッチスイッチ17が操作されたか否かの判断を誤まり易くなる。
【0049】
そこで、この実施の形態では、上記したタッチスイッチ補正制御部36dによって、タッチスイッチ補正部36cが本来一定の間隔で定期的に行なっている補正処理を、ディスクトレイ14の開閉動作中、つまり、モータ21の駆動中は実行させず、モータ21の駆動が停止した時点で実行させるように制御している。
【0050】
すなわち、図6(a)は、ディスクトレイ14の開閉動作が行なわれていない状態において、タッチスイッチ補正部36cが実行する補正処理のタイミングを示している。つまり、ディスクトレイ14の開閉が行なわれていない状態においては、タッチスイッチ補正部36cは、予め設定された一定の時間t1(例えば3分等)毎に、タッチスイッチ17に対する補正処理1,2,……を実行している。
【0051】
このような状態で、図6(b)に示すように、定期的な補正処理2が開始される時点よりも前の時点でモータ21の駆動1が開始され、定期的な補正処理2が開始される時点になってもモータ21の駆動1が継続されているとする。
【0052】
このとき、タッチスイッチ補正制御部36dは、図6(c)に示すように、タッチスイッチ補正部36cに対して、本来の定期的な時点での補正処理2の実行を停止させ、モータ21の駆動1が停止された時点で、タッチスイッチ17に対する補正処理2を実行させるように制御している。
【0053】
この場合、定期的な補正処理1が実行された後、次の補正処理2が実行されるまでの時間は、本来の時間t1よりも長い時間t2となるが、上記したようなタッチスイッチ17の操作に対する誤まった判断が行なわれることを防止することができる。
【0054】
また、図6(c)に示すように、補正処理2が実行された後、モータ21が駆動されなければ、タッチスイッチ補正部36cは、本来の時間t1が経過した後、タッチスイッチ17に対する補正処理3を実行する。
【0055】
さらに、上記補正処理3が実行された後、図6(b)に示すように、モータ21の駆動2が開始され、そのモータ21の駆動2が、補正処理3が実行されてから本来の時間t1が経過する前に停止されたとする。
【0056】
このとき、タッチスイッチ補正制御部36dは、図6(c)に示すように、タッチスイッチ補正部36cに対して、モータ21の駆動2が停止された時点で、タッチスイッチ17に対する補正処理4を実行させるように制御している。この場合、補正処理3が実行された後、次の補正処理4が実行されるまでの時間は、本来の時間t1よりも短い時間t3となるため、上記したようなタッチスイッチ17の操作に対する誤まった判断が行なわれることをより確実に防止することができる。
【0057】
上記した実施の形態によれば、タッチスイッチ補正部36cが一定の間隔で定期的に行なっている補正処理を、モータ21の駆動中は実行させず、モータ21の駆動が停止した時点で実行させるようにしたので、非接触時における放電時間(基準値)がディスクトレイ14の移動やモータ21の駆動ノイズ等に影響されなくなるため、人体の接触を常に同じ信頼性を持って判別することができ、十分に実用に適し得るものとなる。
【0058】
以上に、タッチスイッチ補正部36cが定期的に行なっている補正処理を、モータ21の駆動中は停止させモータ21の駆動が停止した時点で実行させることについて説明したが、タッチスイッチ補正部36cの補正処理は、リモートコントローラ19が操作されたという条件によっても制御することができる。
【0059】
すなわち、図7(a)は、タッチスイッチ補正部36cが実行する通常の補正処理のタイミングを示している。つまり、タッチスイッチ補正部36cは、予め設定された一定の時間t1(例えば3分等)毎に、タッチスイッチ17に対する補正処理1,2,……を実行している。
【0060】
このような状態で、図7(b)に示すように、定期的な補正処理2が開始される時点よりも前の時点で、リモートコントローラ19が操作されて、そこから送出された操作情報が受信部20に受信されたとする。このとき、タッチスイッチ補正制御部36dは、図7(c)に示すように、タッチスイッチ補正部36cに対して、補正処理2を実行させるように制御する。
【0061】
この場合、補正処理1が実行された後、次の補正処理2が実行されるまでの時間は、本来の時間t1よりも短い時間t4となるため、上記したようなタッチスイッチ17の操作に対する誤まった判断が行なわれることをより確実に防止することができる。
【0062】
また、図7(c)に示すように、補正処理2が実行された後、リモートコントローラ19が操作されなければ、タッチスイッチ補正部36cは、本来の時間t1が経過した後、タッチスイッチ17に対する補正処理3を実行する。
【0063】
なお、上記補正処理3が実行された後、図7(b)に示すように、本来の時間t1が経過する前に、リモートコントローラ19が操作されて、そこから送出された操作情報が受信部20に受信されたとする。このとき、タッチスイッチ補正制御部36dは、図7(c)に示すように、タッチスイッチ補正部36cに対して補正処理4を実行させるように制御している。
【0064】
この場合も、補正処理3が実行された後、次の補正処理4が実行されるまでの時間は、本来の時間t1よりも短い時間t5となるため、上記したようなタッチスイッチ17の操作に対する誤まった判断が行なわれることをより確実に防止することができる。
【0065】
上記したように、リモートコントローラ19が操作されたということは、ユーザが光ディスク再生装置11から離れた位置にいる、つまり、タッチスイッチ17を操作する可能性が低いことを意味する。このため、リモートコントローラ19の操作時に補正処理を行なえば、人体の接触による放電時間の変化に影響されることなく、非接触時における放電時間(基準値)を正確に測定することができるようになる。
【0066】
さらに、一定間隔での補正処理では、補正処理のタイミングが、ユーザによるタッチスイッチ17の操作と重なってしまうと、重なった回数分だけ補正処理が実行できなくなるため、接触に対する感度が鈍くなる。ところが、リモートコントローラ19の操作時に、補正処理を実行させるようにすれば、一定の感度に補正することが可能となる。
【0067】
また、タッチスイッチ補正部36cの補正処理は、温度が一定時間内に所定量変化したという条件によっても制御することができる。すなわち、図8(a)は、タッチスイッチ補正部36cが実行する通常の補正処理のタイミングを示している。つまり、タッチスイッチ補正部36cは、予め設定された一定の時間t1(例えば3分等)毎に、タッチスイッチ17に対する補正処理1,2,……を実行している。
【0068】
このような状態で、図8(b)に示すように、定期的な補正処理1が終了した時点から、温度測定部38により温度を測定し、次の定期的な補正処理2が開始される時点よりも前の時点で、温度が予め設定されたしきい値レベルC1(例えば5℃)に達したとする。
【0069】
このとき、タッチスイッチ補正制御部36dは、図8(c)に示すように、タッチスイッチ補正部36cに対して、補正処理2を実行させるように制御する。この場合、補正処理1が実行された後、次の補正処理2が実行されるまでの時間は、本来の時間t1よりも短い時間t6となるため、上記したようなタッチスイッチ17の操作に対する誤まった判断が行なわれることをより確実に防止することができる。
【0070】
また、図8(c)に示すように補正処理2が実行された後、図8(b)に示すように、本来の時間t1が経過する前に、温度が予め設定されたしきい値レベルC1に達しない場合は、本来の時間t1が経過した時点で、タッチスイッチ17に対する補正処理3を実行する。
【0071】
なお、上記補正処理3が実行された後、図8(b)に示すように、本来の時間t1が経過する前に、温度が予め設定されたしきい値レベルC1に達したとする。このとき、タッチスイッチ補正制御部36dは、図8(c)に示すように、タッチスイッチ補正部36cに対して補正処理4を実行させるように制御している。
【0072】
この場合も、補正処理3が実行された後、次の補正処理4が実行されるまでの時間は、本来の時間t1よりも短い時間t7となるため、上記したようなタッチスイッチ17の操作に対する誤まった判断が行なわれることをより確実に防止することができる。
【0073】
すなわち、光ディスク再生装置11のような情報処理機器では、起動すると内部発熱により急激に温度が上昇し、一定の温度に飽和する。このため、温度上昇中は、補正処理の直後の方が、動作処理の直前より、接触に対する感度がよくなり、的確に接触を検出することができる。
【0074】
また、夏場においては、情報処理機器の起動に合わせ、室内のエアーコンディショナーを動作させると、内部発熱による温度上昇と、周辺温度の温度低下とを合わせた温度変化となり、起動する前と温度が変わらない場合がある。この場合は、補正処理の直後と、補正処理の直前とで、接触に対する感度に差は生じない。
【0075】
図9は、上記タッチスイッチ補正制御部36dにおけるタッチスイッチ補正部36cの補正処理を制御する動作をまとめたフローチャートを示している。すなわち、処理が開始(ステップS11)されると、タッチスイッチ補正制御部36dは、ステップS12で、タッチスイッチ補正部36cの補正処理を制御する必要のある条件が発生されたか否か、つまり、モータ21の駆動及び停止、リモートコントローラ19の操作、急激な温度上昇等が生じたか否かを判別する。
【0076】
そして、補正処理を制御する必要のある条件が発生されていないと判断された場合(NO)、タッチスイッチ補正制御部36dは、ステップS13で、タッチスイッチ補正部36cを予め設定された所定の間隔に準じたタイミングで補正処理を行なわせるように制御して、ステップS12の処理に戻される。
【0077】
また、上記ステップS12で補正処理を制御する必要のある条件が発生されたと判断された場合(YES)、タッチスイッチ補正制御部36dは、ステップS14で、その発生された条件が、タッチスイッチ補正部36cに補正処理を実行させる条件、つまり、モータ21の停止、リモートコントローラ19の操作、急激な温度上昇等が生じたか否かを判別する。
【0078】
そして、タッチスイッチ補正部36cに補正処理を実行させる条件が生じていないと判断された場合(NO)、タッチスイッチ補正制御部36dは、タッチスイッチ補正部36cの補正処理を停止させる条件が生じている、つまり、モータ21の駆動中であると判断し、ステップS15で、タッチスイッチ補正部36cの補正処理を停止させた後、ステップS12の処理に戻される。
【0079】
また、上記ステップS14でタッチスイッチ補正部36cに補正処理を実行させる条件が生じていると判断された場合(YES)、タッチスイッチ補正制御部36dは、ステップS16で、タッチスイッチ補正部36cに補正処理を実行させ、ステップS17で、補正処理が終了したと判断された場合(YES)、ステップS12の処理に戻される。
【0080】
なお、この発明は上記した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化することができる。また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明の実施の形態を示すもので、光ディスク再生装置の外観を説明するために示す正面図。
【図2】同実施の形態における光ディスク再生装置の信号処理系を説明するために示すブロック構成図。
【図3】同実施の形態における光ディスク再生装置のタッチスイッチの構成を説明するために示す回路構成図。
【図4】同実施の形態における光ディスク再生装置のタッチスイッチに対する補正処理の必要性を説明するために示す図。
【図5】同実施の形態における光ディスク再生装置のタッチスイッチに対する補正処理とモータ駆動時のノイズとの関係を説明するために示す図。
【図6】同実施の形態における光ディスク再生装置のタッチスイッチに対する補正処理制御の一例を説明するために示す図。
【図7】同実施の形態における光ディスク再生装置のタッチスイッチに対する補正処理制御の他の例を説明するために示す図。
【図8】同実施の形態における光ディスク再生装置のタッチスイッチに対する補正処理制御のさらに他の例を説明するために示す図。
【図9】同実施の形態における光ディスク再生装置のタッチスイッチに対する補正処理制御動作を説明するために示すフローチャート。
【符号の説明】
【0082】
11…光ディスク再生装置、12…キャビネット、12a…正面パネル、13…電源スイッチ、14…ディスクトレイ、15…ディスクトレイ開閉スイッチ、16…表示部、17…タッチスイッチ、17a…ポート、17b…人体、17c…操作パネル、17d…電極、17e…ポート、17f…トランジスタ、17g…抵抗、17h,17i…ダイオード、18…操作部、19…リモートコントローラ、20…受信部、21…モータ、22…ディスクドライブ部、23…光ディスク、24…トラックバッファ、25…デマルチプレクサ部、26…映像入力バッファ、27…映像デコーダ、28…D/A変換部、29…出力端子、30…モニタ、31…音声入力バッファ、32…音声デコーダ、33…D/A変換部、34…出力端子、35…スピーカ、36…制御部、36a…CPU、36b…メモリ部、36c…タッチスイッチ補正部、36d…タッチスイッチ補正制御部、37…タイマ部、38…温度測定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動力を用いてディスクトレイを本体に対して出入させることによりディスクの出し入れを行なうディスクドライブを備えた機器に使用されるタッチスイッチの補正装置であって、
電極に対する充放電を繰り返し、人体の非接触時における放電時間と、人体の接触時における放電時間とが異なることを利用して、操作されたか否かが判別されるタッチスイッチと、
前記タッチスイッチに対して、人体の非接触時における放電時間を測定し、その測定された放電時間から人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間を設定することにより、人体の非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差が常に同じになるように定期的に補正処理を施す補正手段と、
前記補正手段による補正処理を、前記モータの駆動中は実行させず、前記モータの駆動が停止された時点で実行させるように制御する制御手段とを具備することを特徴とするタッチスイッチの補正装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ディスクドライブを備えた機器に対して、リモートコントローラによる操作が行なわれたとき、前記補正手段による補正処理を実行させることを特徴とする請求項1記載のタッチスイッチの補正装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ディスクドライブを備えた機器の温度が、一定時間内に所定量変化したとき、前記補正手段による補正処理を実行させることを特徴とする請求項1記載のタッチスイッチの補正装置。
【請求項4】
リモートコントローラによって操作可能な機器に使用されるタッチスイッチの補正装置であって、
電極に対する充放電を繰り返し、人体の非接触時における放電時間と、人体の接触時における放電時間とが異なることを利用して、操作されたか否かが判別されるタッチスイッチと、
前記タッチスイッチに対して、人体の非接触時における放電時間を測定し、その測定された放電時間から人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間を設定することにより、人体の非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差が常に同じになるように定期的に補正処理を施す補正手段と、
前記補正手段による補正処理を、前記リモートコントローラが操作された時点で実行させるように制御する制御手段とを具備することを特徴とするタッチスイッチの補正装置。
【請求項5】
電極に対する充放電を繰り返し、人体の非接触時における放電時間と、人体の接触時における放電時間とが異なることを利用して、操作されたか否かが判別されるタッチスイッチと、
前記タッチスイッチに対して、人体の非接触時における放電時間を測定し、その測定された放電時間から人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間を設定することにより、人体の非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差が常に同じになるように定期的に補正処理を施す補正手段と、
前記補正手段による補正処理を、温度が一定時間内に所定量変化した時点で実行させるように制御する制御手段とを具備することを特徴とするタッチスイッチの補正装置
【請求項6】
モータの駆動力を用いてディスクトレイを本体に対して出入させることによりディスクの出し入れを行なうディスクドライブを備えた機器に使用されるタッチスイッチの補正方法であって、
電極に対する充放電を繰り返し、人体の非接触時における放電時間と、人体の接触時における放電時間とが異なることを利用して、操作されたか否かが判別されるタッチスイッチに対して、人体の非接触時における放電時間を測定し、その測定された放電時間から人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間を設定することにより、人体の非接触時における放電時間と人体の接触を判別するためのしきい値となる放電時間との差が常に同じになるように定期的に補正処理を施す工程と、
前記補正処理を、前記モータの駆動中は実行させず、前記モータの駆動が停止された時点で実行させるように制御する工程とを具備することを特徴とするタッチスイッチの補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−225022(P2009−225022A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66246(P2008−66246)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】