説明

タッチパネル、情報入力装置、および表示装置

【課題】優れた反射防止特性を有するタッチパネルを提供する。
【解決手段】タッチパネルは、情報を入力する入力面を有する第1の導電性基材と、第2の導電性基材とを備える。第1の導電性基材、および第2の導電性基材の少なくとも一方が、表面を有する基体と、基体の表面に可視光の波長以下の微細ピッチで多数配置された、凸部または凹部からなる構造体と、構造体上に形成された透明導電膜とを備える。構造体は、錐体形状を有し、透明導電膜は、構造体に倣った表面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル、情報入力装置、および表示装置に関する。詳しくは、透明導電膜が一主面に形成された導電性光学素子を備えるタッチパネルに関する。
【0002】
近年、モバイル機器や携帯電話機器などが備える液晶表示素子などの表示装置上には、情報を入力するための抵抗膜式タッチパネルが配置されるようになっている。
【0003】
抵抗膜式タッチパネルは、2つの透明導電性フィルムがアクリル樹脂などの絶縁材料からなるスペーサを介して対向配置された構造を有する。透明導電性フィルムは、タッチパネルの電極として機能するものであり、高分子フィルムなどの透明性を有する基材と、この基材上に形成された、ITO(Indium Tin Oxide)などの高屈折率の材料(例えば1.9〜2.1程度)からなる透明導電膜とを備える。
【0004】
抵抗膜式タッチパネル用としての透明導電性フィルムには、例えば300Ω/□〜500Ω/□程度の所望の表面抵抗値が求められている。また、透明導電性フィルムには、抵抗膜式タッチパネルが配置される液晶表示素子などの表示装置の表示品質の劣化を避けるため、高い透過率が求められている。
【0005】
所望の表面抵抗値を実現するためには、透明導電性フィルムを構成する透明導電膜を例えば20nm〜30nm程度まで厚くする必要がある。しかしながら、高屈折率の材料である透明導電膜を厚くすると、透明導電膜と基材との界面における外光の反射が増加し、透明導電性フィルムの透過率が低下してしまうため、表示装置の品質の劣化が生じる問題がある。
【0006】
この問題を解決するために、例えば特許文献1では、基材と透明導電膜との間に反射防止膜を設けたタッチパネル用の透明導電性フィルムが提案されている。この反射防止膜は、屈折率の異なる複数の誘電体膜を順次積層して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−136625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の透明導電性フィルムでは、反射防止膜の反射機能に波長依存があるため、透明導電性フィルムの透過率に波長分散が生じてしまい、広範囲の波長で高透過率を実現することが困難である。
【0009】
したがって、本発明の目的は、優れた反射防止特性を有するタッチパネル、情報入力装置、および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
情報を入力する入力面を有する第1の導電性基材と、
第2の導電性基材と
を備え、
第1の導電性基材、および第2の導電性基材の少なくとも一方が、
表面を有する基体と、
基体の表面に可視光の波長以下の微細ピッチで多数配置された、凸部または凹部からなる構造体と、
構造体上に形成された透明導電膜と
を備え、
構造体は、錐体形状を有し、
透明導電膜は、構造体に倣った表面を有するタッチパネルである。
【0011】
第2の発明は、
表面を有する基体と、
基体の表面に可視光の波長以下の微細ピッチで多数配置された、凸部または凹部からなる構造体と、
構造体上に形成された透明導電膜と、
透明導電膜上に形成された保護層と
を備え、
構造体は、錐体形状を有し、
透明導電膜は、構造体に倣った表面を有するタッチパネルである。
【0012】
この発明において、主構造体を四方格子状または準四方格子状に周期的に配置することが好ましい。ここで、四方格子とは、正四角形状の格子のことをいう。準四方格子とは、正四角形状の格子とは異なり、歪んだ正四角形状の格子のことをいう。
例えば、構造体が直線上に配置されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた四方格子のことをいう。構造体が蛇行して配列されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を構造体の蛇行配列により歪ませた四方格子をいう。または、正四角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体の蛇行配列により歪ませた四方格子のことをいう。
【0013】
この発明において、構造体を六方格子状または準六方格子状に周期的に配置することが好ましい。ここで、六方格子とは、正六角形状の格子のことをいう。準六方格子とは、正六角形状の格子とは異なり、歪んだ正六角形状の格子のことをいう。
例えば、構造体が直線上に配置されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた六方格子のことをいう。構造体が蛇行して配列されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を構造体の蛇行配列により歪ませた六方格子をいう。または、正六角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体の蛇行配列により歪ませた六方格子のことをいう。
【0014】
この発明において、楕円には、数学的に定義される完全な楕円のみならず、多少の歪みが付与された楕円も含まれる。円形には、数学的に定義される完全な円(真円)のみならず、多少の歪みが付与された円形も含まれる。
【0015】
この発明において、同一トラック内における構造体の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。このようにすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。
【0016】
この発明において、各構造体が、基体表面において六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成している場合には、同一トラック内における構造体の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、好ましくは1.00≦P1/P2≦1.2、または1.00<P1/P2≦1.2、より好ましくは1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。
【0017】
この発明において、各構造体が、基体表面において六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成している場合には、各構造体は、トラックの延在方向に長軸方向を有し、中央部の傾きが先端部および底部の傾きよりも急峻に形成された楕円錐または楕円錐台形状であることが好ましい。このような形状にすることで、反射防止特性および透過特性を向上することができる。
【0018】
この発明において、各構造体が、基体表面において六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成している場合には、トラックの延在方向における構造体の高さまたは深さは、トラックの列方向における構造体の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。このような関係を満たさない場合には、トラックの延在方向の配置ピッチを長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体の充填率が低下する。このように充填率が低下すると、反射特性の低下を招くことになる。
【0019】
この発明において、構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、同一トラック内における構造体の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。このようにすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。
【0020】
構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、同一トラック内における構造体の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。
【0021】
構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、各構造体は、トラックの延在方向に長軸方向を有し、中央部の傾きが先端部および底部の傾きよりも急峻に形成された楕円錐または楕円錐台形状であることが好ましい。このような形状にすることで、反射防止特性および透過特性を向上することができる。
【0022】
構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体の高さまたは深さは、トラックの列方向における構造体の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。このような関係を満たさない場合には、トラックに対して45度方向または約45度方向における配置ピッチを長くする必要が生じるため、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体の充填率が低下する。このように充填率が低下すると、反射特性の低下を招くことになる。
【0023】
本発明では、微細ピッチで基体表面に多数配設けられた構造体が、複数列のトラックをなしていると共に、隣接する3列のトラック間において、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなしている。したがって、表面における構造体の充填密度を高くすることができ、これにより可視光などの反射防止効率を高め、反射防止特性に優れた透過率の極めて高い導電性光学素子を得ることができる。
【0024】
また、光ディスクの原盤作製プロセスとエッチングプロセスとを融合した方法を用いて光学素子を作製した場合には、光学素子作製用原盤を短時間で効率良く製造することができるとともに基体の大型化にも対応でき、これにより、光学素子の生産性の向上を図ることができる。また、構造体の微細配列を光入射面だけでなく光出射面にも設けた場合には、透過特性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、優れた反射防止性を有する導電性光学素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図1Bは、図1Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図1Cは、図1BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図1Dは、図1BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図1Eは、図1BのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図1Fは、図1BのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【図2】図2は、図1Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である。
【図3】図3Aは、図1Aに示した導電性光学素子のトラック延在方向の断面図である。図3Bは、図1Aに示した導電性光学素子1のθ方向の断面図である。
【図4】図4は、図1Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である。
【図5】図5は、図1Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である。
【図6】図6は、図1Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である。
【図7】図7は、構造体の境界が不明瞭な場合の構造体底面の設定方法について説明するための図である。
【図8】図8A〜図8Dは、構造体の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。
【図9】図9Aは、円錐形状または円錐台形状を有する構造体の配置の一例を示す図である。図9Bは、楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体の配置の一例を示す図である。
【図10】図10Aは、導電性光学素子を作製するためのロールマスタの構成の一例を示す斜視図である。図10Bは、図10Aに示したロールマスタの一部を拡大して表す平面図である。
【図11】図11は、ロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。
【図12】図12A〜図12Cは、本発明の第1の実施形態による導電性光学素子の製造方法を説明するための工程図である。
【図13】図13A〜図13Cは、本発明の第1の実施形態による導電性光学素子の製造方法を説明するための工程図である。
【図14】図14A〜図14Bは、本発明の第1の実施形態による導電性光学素子の製造方法を説明するための工程図である。
【図15】図15Aは、本発明の第2の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図15Bは、図15Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図15Cは、図15BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図15Dは、図15BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図15Eは、図15BのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図15Fは、図15BのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【図16】図16は、構造体の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。
【図17】図17Aは、導電性光学素子を作製するためのロールマスタの構成の一例を示す斜視図である。図17Bは、図17Aに示したロールマスタの一部を拡大して表す平面図である。
【図18】図18Aは、本発明の第3の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図18Bは、図18Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図18Cは、図18BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図18Dは、図18BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。
【図19】図19Aは、導電性光学素子を作製するためのディスクマスタの構成の一例を示す平面図である。図19Bは、図19Aに示したディスクマスタの一部を拡大して表す平面図である。
【図20】図20は、ディスク原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。
【図21】図21Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図21Bは、図21Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。
【図22】図22Aは、本発明の第5の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図22Bは、図22Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図22Cは、図22BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図22Dは、図22BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。
【図23】図23は、図22Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である。
【図24】図24Aは、本発明の第6の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図24Bは、図24Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図、図24Cは、図24BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図24Dは、図24BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。
【図25】図25は、図24Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である
【図26】図26は、本発明の第6の実施形態に係る導電性光学素子の屈折率プロファイルの一例を示すグラフである。
【図27】図27は、構造体の形状の一例を示す断面図である。
【図28】図28A〜図28Cは、変化点の定義を説明するための図である。
【図29】図29は、本発明の第7の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す断面図である。
【図30】図30は、本発明の第8の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す断面図である。
【図31】図31Aは、本発明の第9の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。図31Bは、本発明の第9の実施形態に係るタッチパネルの構成の変形例を示す断面図である。
【図32】図32Aは、本発明の第10の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す斜視図である。図32Bは、本発明の第10の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。
【図33】図33Aは、本発明の第11の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す斜視図である。図33Bは、本発明の第11の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。
【図34】図34は、本発明の第12の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。
【図35】図35は、本発明の第13の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す断面図である。
【図36】図36Aは、本発明の第14の実施形態に係るタッチパネルの構成の第1の例を示す斜視図である。図36Bは、本発明の第14の実施形態に係るタッチパネルの構成の第2の例を示す断面図である。
【図37】図37Aは、実施例1〜3、比較例1〜2の反射特性を示すグラフである。図37Bは、実施例1〜3、比較例1〜2の透過特性を示すグラフである。
【図38】図38Aは、実施例4〜7におけるアスペクト比と表面抵抗との関係を示すグラフである。図38Bは、実施例4〜7における構造体高さと表面抵抗との関係を示すグラフである。
【図39】図39Aは、実施例4〜7の透過特性を示すグラフである。図39Bは、実施例4〜7の反射特性を示すグラフである。
【図40】図40Aは、実施例4、6の透過特性を示すグラフである。図40Bは、実施例4、6の反射特性を示すグラフである。
【図41】図41Aは、実施例3、4の透過特性を示すグラフである。図41Bは、実施例3、4の反射特性を示すグラフである。
【図42】図42Aは、実施例8〜10、比較例6の透過特性を示すグラフである。図42Bは、実施例8〜10、比較例6の反射特性を示すグラフである。
【図43】図43は、実施例11〜12、比較例7〜9の透過特性を示すグラフである。
【図44】図44Aは、実施例13、14の導電性光学シートの透過特性を示すグラフである。図44Bは、実施例13、14の導電性光学シートの反射特性を示すグラフである。
【図45】図45Aは、実施例15、比較例10の反射特性を示すグラフである。図45Bは、実施例16、比較例11の反射特性を示すグラフである。
【図46】図46Aは、実施例17、比較例12の反射特性を示すグラフである。図46Bは、実施例18、比較例13の反射特性を示すグラフである。
【図47】図47Aは、構造体を六方格子状に配列したときの充填率を説明するための図である。図47Bは、構造体を四方格子状に配列したときの充填率を説明するための図である。
【図48】図48は、試験例3のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図49】図49Aは、比較例14の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図49Bは、比較例14の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【図50】図50Aは、比較例15の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図50Bは、比較例15の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【図51】図51Aは、比較例16の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図51Bは、比較例16の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【図52】図52Aは、実施例19の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図52Bは、実施例19の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【図53】図53Aは、実施例20の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図53Bは、実施例20の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【図54】図54Aは、実施例21の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図54Bは、実施例21の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【図55】図55Aは、実施例22の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図55Bは、実施例22の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【図56】図56は、実施例19、20、および比較例15の抵抗膜式タッチパネルの反射特性を示すグラフである。
【図57】図57は、凸部である構造体上に形成された透明導電膜の平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3の求め方を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(直線状でかつ六方格子状に構造体を2次元配列した例:図1参照)
2.第2の実施形態(直線状でかつ四方格子状に構造体を2次元配列した例:図15参照)
3.第3の実施形態(円弧状でかつ六方格子状に構造体を2次元配列した例:図18参照)
4.第4の実施形態(構造体を蛇行させて配列した例:図21参照)
5.第5の実施形態(凹形状の構造体を基体表面に形成した例:図22参照)
6.第6の実施形態(屈折率プロファイルをS字形状とした例:図24参照)
7.第7の実施形態(導電性光学素子の両主面に構造体を形成した例:図29参照)
8.第8の実施形態(透明導電性を有する構造体を透明導電膜上に配列した例:図30)
9.第9の実施形態(抵抗膜式タッチパネルに対する適用例:図31A、図31B参照)
10.第10の実施形態(タッチパネルのタッチ面にハードコート層を形成した例:図32A、図32B参照)
11.第11の実施形態(タッチパネルのタッチ面に偏光子またはフロントパネルを形成した例:図33A、図33B参照)
12.第12の実施形態(タッチパネルの周縁部に構造体を配列した例:図34参照)
13.第13の実施形態(インナータッチパネルの例:図35参照)
14.第14の実施形態(静電容量式タッチパネルに対する適用例:図36A、図36B参照)
【0028】
<1.第1の実施形態>
[導電性光学素子の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図1Bは、図1Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図1Cは、図1BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図1Dは、図1BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図1Eは、図1BのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図1Fは、図1BのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図2、図4〜図6は、図1Aに示した導電性光学素子1の一部を拡大して表す斜視図である。図3Aは、図1Aに示した導電性光学素子のトラックの延在方向(X方向(以下、適宜トラック方向ともいう))の断面図である。図3Bは、図1Aに示した導電性光学素子のθ方向の断面図である。
【0029】
導電性光学素子1は、対向する両主面を有する基体2と、反射の低減を目的とする光の波長以下の微細ピッチで一主面に配置された、凸部である複数の構造体3と、これらの構造体3上に形成された透明導電膜4とを備える。また、表面抵抗の低減の観点から、構造体3と透明導電膜4との間に金属膜(導電膜)5をさらに設けてもよい。この導電性光学素子1は、基体2を図2の−Z方向に透過する光について、構造体3とその周囲の空気との界面における反射を防止する機能を有している。
以下、導電性光学素子1に備えられる基体2、構造体3、透明導電膜4、および金属膜5について順次説明する。
【0030】
構造体3のアスペクト比(高さH/平均配置ピッチP)が、好ましくは0.2以上1.78以下、より好ましくは0.2以上1.28以下、さらに好ましくは0.63以上1.28以下の範囲内である。透明導電膜4の平均膜厚は、9nm以上50nm以下の範囲内であることが好ましい。構造体3のアスペクト比が0.2未満であり、透明導電膜4の平均膜厚が50nmを超えると、構造体間の凹部が透明導電膜4により埋まり、反射防止特性、および透過特性が低下する傾向にある。一方、構造体3のアスペクト比が1.78を超え、透明導電膜4の平均膜厚が9nm未満であると、構造体3の斜面が急峻になり、透明導電膜4の平均膜厚が薄くなるため、表面抵抗が上昇する傾向にある。すなわち、アスペクト比、および平均膜厚が上記数値範囲を満たすことで、幅広い範囲の表面抵抗(例えば100Ω/□以上5000Ω/□以下)を得ることができ、かつ、優れた反射防止特性、および透過特性を得ることができる。ここで透明導電膜4の平均膜厚は、構造体3の頂部における透明導電膜4の平均膜厚Dm1である。
【0031】
構造体3の頂部における透明導電膜4の平均膜厚をDm1、構造体3の傾斜面における透明導電膜4の平均膜厚をDm2、構造体間における透明導電膜4の平均膜厚をDm3としたときに、Dm1>Dm3>Dm2の関係を満たすことが好ましい。構造体3の傾斜面の平均膜厚D2は、9nm以上30nm以下の範囲内であることが好ましい。透明導電膜4の平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3が上記関係を満たし、かつ透明導電膜4の平均膜厚Dm2が上記数値範囲を満たすことで、幅広い範囲の表面抵抗を得ることができ、かつ、優れた反射防止特性、および透過特性を得ることができる。なお、平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3が上記関係を有しているか否かは、後述するように平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3をそれぞれ求めることにより確認することができる。
【0032】
透明導電膜4が、構造体3の形状に倣った表面を有し、構造体3の頂部における透明導電膜4の平均膜厚D1が、5nm以上80nm以下の範囲内であることが好ましい。なお、構造体3の頂部における透明導電膜4の平均膜厚D1は、平板換算膜厚にほぼ等しい。平板換算膜厚は、構造体上に透明導電膜4を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上に透明導電膜4を形成したときの膜厚である。
【0033】
幅広い範囲の表面抵抗を得ることができ、かつ、優れた反射防止特性、および透過特性を得る観点からすると、構造体3の頂部における透明導電膜4の平均膜厚Dm1は、25nm以上50nm以下の範囲内であり、構造体3の傾斜面における透明導電膜4の平均膜厚Dm2は、9nm以上30nm以下の範囲内であり、構造体間における透明導電膜4の平均膜厚Dm3は、9nm以上50nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0034】
図57は、凸部である構造体上に形成された透明導電膜の平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3の求め方を説明するための略線図である。以下、図57を参照して、平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3の求め方を説明する。
【0035】
まず、導電性光学素子1を構造体3の頂部を含むようにトラックの延在方向に切断し、その断面をTEMにて撮影する。次に、撮影したTEM写真から、構造体3の頂部における透明導電膜4の膜厚D1を測定する。次に、構造体3の傾斜面の位置のうち、構造体3の半分の高さ(H/2)の位置の膜厚D2を測定する。次に、構造体間の凹部の位置のうち、その凹部の深さが最も深くなる位置の膜厚D3を測定する。次に、これらの膜厚D1、D2、D3の測定を導電性光学素子1から無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値D1、D2、D3を単純に平均(算術平均)して平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3を求める。
【0036】
透明導電膜4の表面抵抗は、100Ω/□以上5000Ω/□以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは270Ω/□以上4000Ω/□以下の範囲内である。このような範囲の表面抵抗にすることで、種々の方式のタッチパネルの上部電極、または下部電極として透明導電性光学素子1を用いることができるからである。ここで、透明導電膜4の表面抵抗は、4端子測定(JIS K 7194)により求めたものである。
【0037】
構造体3の平均配置ピッチPは、好ましくは180nm以上350nm以下、より好ましくは100nm以上320nm以下、さらに好ましくは110nm以上280nm以下範囲内である。平均配置ピッチが180nm未満であると、構造体3の作製が困難となる傾向がある。一方、平均配置ピッチが350nmを超えると、可視光の回折が生じる傾向がある。
【0038】
構造体3の高さ(深さ)Hは、好ましくは70nm以上320nm以下、より好ましくは100nm以上320nm以下、さらに好ましくは110nm以上280nm以下の範囲に設定される。構造体3の高さHが70nm未満であると、反射率が増加する傾向がある。構造体3の高さHが320nmを超えると、所定の抵抗を実現するのが困難となる傾向がある。
【0039】
(基体)
基体2は、例えば、透明性を有する透明基体である。基体2の材料としては、例えば、透明性を有するプラスチック材料、ガラスなどを主成分とするものが挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0040】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。
【0041】
基材2としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理として下塗り層を設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同様の効果を得るために、基体2の表面に対してコロナ放電、UV照射処理を行うようにしてもよい。
【0042】
基体2がプラスチックフィルムである場合には、基体2は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。また、基材2の厚さは、例えば25μm〜500μm程度である。
【0043】
基体2の形状としては、例えば、シート状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、シートにはフィルムが含まれるものと定義する。基体2の形状は、カメラなどの光学機器などにおいて、所定の反射防止機能が必要とされる部分の形状などに合わせて適宜選択することが好ましい。
【0044】
(構造体)
基体2の表面には、凸部である構造体3が多数配列されている。この構造体3は、反射の低減を目的とする光の波長帯域以下の短い配置ピッチ、例えば可視光の波長と同程度の配置ピッチで周期的に2次元配置されている。ここで、配置ピッチとは、配置ピッチP1および配置ピッチP2を意味する。反射の低減を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm〜360nmの波長帯域、可視光の波長帯域とは360nm〜830nmの波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm〜1mmの波長帯域をいう。具体的には、配置ピッチは、好ましくは180nm以上350nm以下、190nm以上280nm以下であることがより好ましい。配置ピッチが180nm未満であると、構造体3の作製が困難となる傾向がある。一方、配置ピッチが350nmを超えると、可視光の回折が生じる傾向がある。
【0045】
導電性光学素子1の各構造体3は、基体2の表面において複数列のトラックT1,T2,T3,・・・(以下総称して「トラックT」ともいう。)をなすような配置形態を有する。本発明において、トラックとは、構造体3が列をなして直線状に連なった部分のことをいう。また、列方向とは、基体2の成形面において、トラックの延在方向(X方向)に直交する方向)のことをいう。
【0046】
構造体3は、隣接する2つのトラックT間において、半ピッチずれた位置に配置されている。具体的には、隣接する2つのトラックT間において、一方のトラック(例えばT1)に配列された構造体3の中間位置(半ピッチずれた位置)に、他方のトラック(例えばT2)の構造体3が配置されている。その結果、図1Bに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている。この第1の実施形態において、六方格子パターンとは、正六角形状の格子パターンのことをいう。また、準六方格子パターンとは、正六角形状の格子パターンとは異なり、トラックの延在方向(X軸方向)に引き伸ばされ歪んだ六方格子パターンのことをいう。
【0047】
構造体3が準六方格子パターンを形成するように配置されている場合には、図1Bに示すように、同一トラック(例えばT1)内における構造体3の配置ピッチP1(a1〜a2間距離)は、隣接する2つのトラック(例えばT1およびT2)間における構造体3の配置ピッチ、すなわちトラックの延在方向に対して±θ方向における構造体3の配置ピッチP2(例えばa1〜a7、a2〜a7間距離)よりも長くなっていることが好ましい。このように構造体3を配置することで、構造体3の充填密度の更なる向上を図れるようになる。
【0048】
構造体3が、成形の容易さの観点から、錐体形状、または錐体形状をトラック方向に延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。構造体3が、軸対称な錐体形状、または錐体形状をトラック方向に延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。隣接する構造体3に接合されている場合には、構造体3が、隣接する構造体3に接合されている下部を除いて軸対称な錐体形状、または錐体形状をトラック方向に延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。錐体形状としては、例えば、円錐形状、円錐台形状、楕円錐形状、楕円錐台形状などを挙げることができる。ここで、錐体形状とは、上述のように、円錐形状および円錐台形状以外にも、楕円錐形状、楕円錐台形状を含む概念である。また、円錐台形状とは、円錐形状の頂部を切り落とした形状をいい、楕円錐台形状とは、楕円錐の頂部を切り落とした形状のことをいう。
【0049】
構造体3は、トラックの延在方向の幅がこの延在方向とは直交する列方向の幅よりも大きい底面を有する錐体形状であることが好ましい。具体的には、構造体3は、図2および図4に示すように、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が曲面である楕円錐形状であることが好ましい。もしくは、図5に示すように、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が平坦である楕円錐台形状であることが好ましい。このような形状にすると、列方向の充填率を向上させることができるからである。
【0050】
反射特性の向上の観点からすると、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの錐体形状(図4参照)が好ましい。また、反射特性および透過特性の向上の観点からすると、中央部の傾きが底部および頂部より急峻な錐形形状(図2参照)、または、頂部が平坦な錐体形状(図5参照)であることが好ましい。構造体3が楕円錐形状または楕円錐台形状を有する場合、その底面の長軸方向が、トラックの延在方向と平行となることが好ましい。図2などでは、各構造体3は、それぞれ同一の形状を有しているが、構造体3の形状はこれに限定されるものではなく、基体表面に2種以上の形状の構造体3が形成されていてもよい。また、構造体3は、基体2と一体的に形成されていてもよい。
【0051】
また、図2、図4〜図6に示すように、構造体3の周囲の一部または全部に突出部6を設けることが好ましい。このようにすると、構造体3の充填率が低い場合でも、反射率を低く抑えることができるからである。具体的には例えば、突出部6は、図2、図4、および図5に示すように、隣り合う構造体3の間に設けられる。また、細長い突出部6が、図6に示すように、構造体3の周囲の全体またはその一部に設けられるようにしてもよい。この細長い突出部6は、例えば、構造体3の頂部から下部の方向に向かって延びている。突出部6の形状としては、断面三角形状および断面四角形状などを挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではなく、成形の容易さなどを考慮して選択することができる。また、構造体3の周囲の一部または全部の表面を荒らし、微細の凹凸を形成するようにしてもよい。具体的には例えば、隣り合う構造体3の間の表面を荒らし、微細な凹凸を形成するようにしてもよい。また、構造体3の表面、例えば頂部に微小な穴を形成するようにしてもよい。
【0052】
構造体3は図示する凸部形状のものに限らず、基体2の表面に形成した凹部で構成されていてもよい。構造体3の高さは特に限定されず、例えば420nm程度、具体的には415nm〜421nmである。なお、構造体3を凹部形状とした場合には、構造体3の深さとなる。
【0053】
トラックの延在方向における構造体3の高さH1は、列方向における構造体3の高さH2よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1<H2の関係を満たすことが好ましい。H1≧H2の関係を満たすように構造体3を配列すると、トラックの延在方向の配置ピッチP1を長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体3の充填率が低下するためである。このように充填率が低下すると、反射特性の低下を招くことになる。
【0054】
なお、構造体3のアスペクト比は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布(例えばアスペクト比0.5〜1.46程度の範囲)をもつように構成されていてもよい。高さ分布を有する構造体3を設けることで、反射特性の波長依存性を低減することができる。したがって、優れた反射防止特性を有する導電性光学素子1を実現することができる。
【0055】
ここで、高さ分布とは、2種以上の高さ(深さ)を有する構造体3が基体2の表面に設けられていることを意味する。すなわち、基準となる高さを有する構造体3と、この構造体3とは異なる高さを有する構造体3とが基体2の表面に設けられていることを意味する。基準とは異なる高さを有する構造体3は、例えば基体2の表面に周期的または非周期的(ランダム)に設けられている。その周期性の方向としては、例えばトラックの延在方向、列方向などが挙げられる。
【0056】
構造体3の周縁部に裾部3aを設けることが好ましい。導電性光学素子の製造工程において構造体3を金型などから容易に剥離することが可能になるからである。ここで、裾部3aとは、構造体3の底部の周縁部に設けられた突出部を意味する。この裾部3aは、上記剥離特性の観点からすると、構造体3の頂部から下部の方向に向かって、なだらかに高さが低下する曲面を有することが好ましい。なお、裾部3aは、構造体3の周縁部の一部にのみ設けてもよいが、上記剥離特性の向上の観点からすると、構造体3の周縁部の全部に設けることが好ましい。また、構造体3が凹部である場合には、裾部は、構造体3である凹部の開口周縁に設けられた曲面となる。
【0057】
構造体3の高さ(深さ)は特に限定されず、透過させる光の波長領域に応じて適宜設定され、例えば100nm〜280nm、好ましくは110nm〜280nmの範囲に設定される。ここで、構造体3の高さ(深さ)は、トラックの列方向における構造体3の高さ(深さ)である。構造体3の高さが100nm未満であると、反射率が増加する傾向があり、構造体3の高さが280nmを超えると、所定の抵抗を確保するのが困難になる傾向がある。構造体3のアスペクト比(高さ/配置ピッチ)は、0.5〜1.46の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.6〜0.8の範囲である。0.81未満であると反射特性および透過特性が低下する傾向にあり、1.46を超えると導電性光学素子の作製時において構造体3の剥離特性が低下し、レプリカの複製が綺麗に取れなくなる傾向があるからである。
また、構造体3のアスペクト比は、反射特性をより向上させる観点からすると、0.54〜1.46の範囲に設定することが好ましい。また、構造体3のアスペクト比は、透過特性をより向上させる観点からすると、0.6〜1.0の範囲に設定することが好ましい。
【0058】
なお、本発明においてアスペクト比は、以下の式(1)により定義される。
アスペクト比=H/P・・・(1)
但し、H:構造体の高さ、P:平均配置ピッチ(平均周期)
ここで、平均配置ピッチPは以下の式(2)により定義される。
平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3 ・・・(2)
但し、P1:トラックの延在方向の配置ピッチ(トラック延在方向周期)、P2:トラックの延在方向に対して±θ方向(但し、θ=60°−δ、ここで、δは、好ましくは0°<δ≦11°、より好ましくは3°≦δ≦6°)の配置ピッチ(θ方向周期)
【0059】
また、構造体3の高さHは、構造体3の列方向の高さとする。構造体3のトラック延在方向(X方向)の高さは、列方向(Y方向)の高さよりも小さく、また、構造体3のトラック延在方向以外の部分における高さは列方向の高さとほぼ同一であるため、サブ波長構造体の高さを列方向の高さで代表する。但し、構造体3が凹部である場合、上記式(1)における構造体の高さHは、構造体の深さHとする。
【0060】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。
【0061】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、反射防止特性を向上することができる。充填率を向上させるためには、隣接する構造体3の下部同士を接合する、または、構造体底面の楕円率を調整などして構造体3に歪みを付与することが好ましい。
【0062】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、導電性光学素子1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図1B参照)。また、その単位格子Ucの中央に位置する構造体3の底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(3)より充填率を求める。
充填率=(S(hex.)/S(unit))×100 ・・・(3)
単位格子面積:S(unit)=P1×2Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(hex.)=2S
【0063】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0064】
構造体3が重なっているときや、構造体3の間に突出部6などの副構造体があるときの充填率は、構造体3の高さに対して5%の高さに対応する部分を閾値として面積比を判定する方法で充填率を求めることができる。
【0065】
図7は、構造体3の境界が不明瞭な場合の充填率の算出方法について説明するための図である。構造体3の境界が不明瞭な場合には、断面SEM観察により、図7に示すように、構造体3の高さhの5%(=(d/h)×100)に相当する部分を閾値とし、その高さdで構造体3の径を換算し充填率を求めるようにする。構造体3の底面が楕円である場合には、長軸および短軸で同様の処理を行う。
【0066】
図8は、構造体3の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。図8A〜図8Dに示す楕円の楕円率はそれぞれ、100%、110%、120%、141%である。このように楕円率を変化させることで、基体表面における構造体3の充填率を変化させることができる。構造体3が準六方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、100%<e<150%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、優れた反射防止特性を得ることができるからである。
【0067】
ここで、楕円率eは、構造体底面のトラック方向(X方向)の径をa、それとは直交する列方向(Y方向)の径をbとしたときに、(a/b)×100で定義される。なお、構造体3の径a、bは以下のようにして求めた値である。導電性光学素子1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影し、撮影したSEM写真から無作為に構造体3を10個抽出する。次に、抽出した構造体3それぞれの底面の径a、bを測定する。そして、測定値a、bそれぞれを単純に平均(算術平均)して径a、bの平均値を求め、これを構造体3の径a、bとする。
【0068】
図9Aは、円錐形状または円錐台形状を有する構造体3の配置の一例を示す。図9Bは、楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体3の配置の一例を示す。図9Aおよび図9Bに示すように、構造体3が、その下部同士を重ね合うようにして接合されていていることが好ましい。具体的には、構造体3の下部が、隣接関係にある構造体3の一部または全部の下部と接合されていることが好ましい。より具体的には、トラック方向において、θ方向において、またはそれら両方向において、構造体3の下部同士を接合することが好ましい。より具体的には、トラック方向において、θ方向において、またはそれら両方向において、構造体3の下部同士を接合することが好ましい。図9A、図9Bでは、隣接関係にある構造体3の全部の下部を接合する例が示されている。このように構造体3を接合することで、構造体3の充填率を向上することができる。構造体同士は、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で接合されていることが好ましい。これにより、優れた反射防止特性を得ることができる。
【0069】
図9Bに示すように、楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体3の下部同士を接合した場合には、例えば、接合部a、b、cの順序で接合部の高さが浅くなる。具体的には、同一トラック内において隣接する構造体3の下部同士が重ね合わされて第1の接合部aが形成されるとともに、隣接するトラック間において隣接する構造体3の下部同士が重ね合わされて第2の接合部2が形成される。第1の接合部aと第2の接合部bとの交点に交点部cが形成される。交点部cの位置は、例えば、第1の接合部a、および第2の接合部bの位置よりも低くなっている。楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体3の下部同士を接合した場合には、例えば、接合部a、接合部b、交点部cの順序でそれらの高さが低くなる。
【0070】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、反射防止特性を向上できるからである。比率((2r/P1)×100)が大きくなり、構造体3の重なりが大きくなりすぎると反射防止特性が低減する傾向にある。したがって、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で構造体同士が接合されるように、比率((2r/P1)×100)の上限値を設定することが好ましい。ここで、配置ピッチP1は、構造体3のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0071】
(透明導電膜)
透明導電膜4は、透明酸化物半導体を主成分としていることが好ましい。透明酸化物半導体としては、例えば、SnO2、InO2、ZnOおよびCdOなどの二元化合物、二元化合物の構成元素であるSn、In、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つの元素を含む三元化合物、または多元系(複合)酸化物を用いることができる。透明導電膜4を構成する材料としては、例えばITO(In23、SnO2:インジウム錫酸化物)、AZO(Al23、ZnO:アルミドープ酸化亜鉛)、SZO、FTO(フッ素ドープ酸化錫)、SnO2(酸化錫)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、IZO(In23、ZnO:酸化インジウム亜鉛)などが挙げられるが、信頼性の高さ、および抵抗率の低さなどの観点から、ITOが好ましい。透明導電膜4を構成する材料は、導電性の向上の観点からすると、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。透明導電膜4は、構造体3の表面形状に倣って形成され、構造体3と透明導電膜4との表面形状がほぼ相似形状であることが好ましい。透明導電膜4の形成による屈折率プロファイルの変化を抑制し、優れた反射防止特性および/または透過特性を維持できるからである。
【0072】
(金属膜)
金属膜(導電膜)5を透明導電膜4の下地層として設けることが好ましい。抵抗率を低減でき、透明導電膜4を薄くすることができる、または透明導電膜4だけでは導電率が十分な値に達しない場合に、導電率を補うことができるからである。金属膜5の膜厚は、特に限定されるものではないが、例えば数nm程度に選ばれる。金属膜5は導電率が高いため、数nmの膜厚で十分な表面抵抗を得ることができる。また、数nm程度であれば、金属膜5による吸収や反射などの光学的な影響がほとんどない。金属膜5を構成する材料としては、導電性が高い金属系の材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、Ag、Al、Cu、Ti、Nb、不純物添加Siなどが挙げられるが、導電性の高さ、および使用実績などを考慮すると、Agが好ましい。金属膜5だけでも表面抵抗を確保することが可能だが極端に薄い場合、金属膜5が島状の構造となってしまい、導通性を確保することが困難となる。その場合、島状の金属膜5を電気的につなぐためにも、金属膜5の上層の透明導電膜4の形成が重要となってくる。
【0073】
[ロールマスタの構成]
図10は、上述の構成を有する導電性光学素子を作製するためのロールマスタの構成の一例を示す。図10に示すように、ロールマスタ11は、例えば、原盤12の表面に凹部である構造体13が可視光などの光の波長と同程度のピッチで多数配置された構成を有している。原盤12は、円柱状または円筒状の形状を有する。原盤12の材料は、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。後述するロール原盤露光装置を用い、2次元パターンが空間的にリンクし、1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、CAVで適切な送りピッチでパターニングする。これにより、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを記録することができる。極性反転フォマッター信号の周波数とロールの回転数を適切に設定することにより、所望の記録領域に空間周波数が一様な格子パターンを形成する。
【0074】
[導電性光学素子の製造方法]
次に、図11〜図14を参照しながら、以上のように構成される導電性光学素子1の製造方法について説明する。
【0075】
第1の実施形態に係る導電性光学素子の製造方法は、原盤にレジスト層を形成するレジスト成膜工程、ロール原盤露光装置を用いてレジスト膜にモスアイパターンの潜像を形成する露光工程、潜像が形成されたレジスト層を現像する現像工程を備える。さらに、プラズマエッチングを用いてロールマスタを製作するエッチング工程、紫外線硬化樹脂により複製基板を製作する複製工程と、複製基板上に透明導電膜を成膜する成膜工程とを備える。
【0076】
(露光装置の構成)
まず、図11を参照して、モスアイパターンの露光工程に用いるロール原盤露光装置の構成について説明する。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
【0077】
レーザー光源21は、記録媒体としての原盤12の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光15を発振するものである。レーザー光源21から出射されたレーザー光15は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学素子22を透過したレーザー光15は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
【0078】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子22を制御してレーザー光15の位相変調を行う。
【0079】
変調光学系25において、レーザー光15は、集光レンズ26により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acoust-Optic Modulator)27に集光される。レーザー光15は、音響光学素子27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザー光15は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
【0080】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光15は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、原盤12上のレジスト層へ照射される。原盤12は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36の上に載置されている。そして、原盤12を回転させるとともに、レーザー光15を原盤12の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光15を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光15の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0081】
露光装置は、図1Bに示した六方格子または準六方格子の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光15の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0082】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、音響光学素子27により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子または準六方格子パターンを記録することができる。例えば、図10Bに示すように、円周方向の周期を315nm、円周方向に対して約60度方向(約−60度方向)の周期を300nmにするには、送りピッチを251nmにすればよい(ピタゴラスの法則)。極性反転フォマッター信号の周波数はロールの回転数(例えば1800rpm、900rpm、450rpm、225rpm)により変化させる。例えば、ロールの回転数1800rpm、900rpm、450rpm、225rpmそれぞれに対向する極性反転フォマッター信号の周波数は、37.70MHz、18.85MHz、9.34MHz、4、71MHzとなる。所望の記録領域に空間周波数(円周315nm周期、円周方向約60度方向(約−60度方向)300nm周期)が一様な準六方格子パターンは、遠紫外線レーザー光を移動光学テーブル32上のビームエキスパンダ(BEX)33により5倍のビーム径に拡大し、開口数(NA)0.9の対物レンズ34を介して原盤12上のレジスト層に照射し、微細な潜像を形成することにより得られる。
【0083】
(レジスト成膜工程)
まず、図12Aに示すように、円柱状の原盤12を準備する。この原盤12は、例えばガラス原盤である。次に、図12Bに示すように、原盤12の表面にレジスト層14を形成する。レジスト層14の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、1種または2種以上の遷移金属からなる金属化合物を用いることができる。
【0084】
(露光工程)
次に、図12Cに示すように、上述したロール原盤露光装置を用いて、原盤12を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)15をレジスト層14に照射する。このとき、レーザー光15を原盤12の高さ方向(円柱状または円筒状の原盤12の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光15を間欠的に照射することで、レジスト層14を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光15の軌跡に応じた潜像16が、可視光波長と同程度のピッチでレジスト層14の全面にわたって形成される。
【0085】
潜像16は、例えば、原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成する。潜像16は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0086】
(現像工程)
次に、原盤12を回転させながら、レジスト層14上に現像液を滴下して、図13Aに示すように、レジスト層14を現像処理する。図示するように、レジスト層14をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光15で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、潜像(露光部)16に応じたパターンがレジスト層14に形成される。
【0087】
(エッチング工程)
次に、原盤12の上に形成されたレジスト層14のパターン(レジストパターン)をマスクとして、原盤12の表面をロールエッチング処理する。これにより、図13Bに示すように、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状の凹部、すなわち構造体13を得ることができる。エッチング方法は、例えばドライエッチングによって行われる。このとき、エッチング処理とアッシング処理を交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体13のパターンを形成することができる。また、レジスト層14の3倍以上の深さ(選択比3以上)のガラスマスターを作製でき、構造体3の高アスペクト比化を図ることができる。ドライエッチングとしては、ロールエッチング装置を用いたプラズマエッチングが好ましい。
【0088】
以上により、例えば、深さ120nm程度から350nm程度の凹形状の六方格子パターンまたは準六方格子パターンを有するロールマスタ11が得られる。
【0089】
(複製工程)
次に、例えば、ロールマスタ11と転写材料を塗布したシートなどの基体2を密着させ、紫外線を照射し硬化させながら剥離する。これにより、図13Cに示すように、凸部である複数の構造体が基体2の一主面に形成され、モスアイ紫外線硬化複製シートなどの導電性光学素子1が作製される。
【0090】
転写材料は、例えば、紫外線硬化材料と、開始剤とからなり、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいる。
【0091】
紫外線硬化材料は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどからなり、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0092】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0093】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0094】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0095】
フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al23などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0096】
機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。基体2の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
【0097】
基体2の成形方法は特に限定されず、射出成形体でも押し出し成形体でも、キャスト成形体でもよい。必要応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
【0098】
(金属膜成膜工程)
次に、図14Aに示すように、必要に応じて、構造体3が形成された基体2の凹凸面上に、金属膜を成膜する。金属膜の成膜方法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)を用いることができる。
【0099】
(導電膜の成膜工程)
次に、図14Bに示すように、構造体3が形成された基体2の凹凸面上に、透明導電膜を成膜する。透明導電膜の成膜方法としては、例えば、上述の金属膜の成膜方法と同様の方法を用いることができる。
【0100】
第1の実施形態によれば、非常に高透過率で反射光が低く写りこみの少ない導電性光学素子1を提供できる。複数の構造体3を表面に形成することにより反射防止機能を実現しているため、波長依存性が少ない。角度依存性が光学膜タイプの透明導電膜より少ない。多層の光学膜を使用せず、ナノインプリント技術の利用と高スループットな膜構成の採用とによって、優れた量産性、および低コストを実現できる。
【0101】
<2.第2の実施形態>
[導電性光学素子の構成]
図15Aは、本発明の第2の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図15Bは、図15Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図15Cは、図15BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図15Dは、図15BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図15Eは、図15BのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図15Fは、図15BのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【0102】
第2の実施形態に係る導電性光学素子1は、各構造体3が、隣接する3列のトラック間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなしている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。本発明において、準四方格子パターンとは、正四方格子パターンと異なり、トラックの延在方向(X方向)に引き伸ばされ歪んだ四方格子パターンを意味する。
【0103】
構造体3の高さまたは深さは特に限定されず、例えば、100nm〜280nm、好ましくは110nm〜280nmである。ここで、構造体3の高さ(深さ)は、トラックの延在方向における構造体3の高さ(深さ)である。構造体3の高さが100nm未満であると、反射率が増加する傾向があり、構造体3の高さが280nmを超えると、所定の抵抗を確保するのが困難となる傾向がある。トラックに対して(約)45度方向ピッチP2は、例えば、200nm〜300nm程度である。構造体3のアスペクト比(高さ/配置ピッチ)は、例えば、0.54〜1.13程度である。更に、各構造体3のアスペクト比は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。
【0104】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。また、同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、P1/P2が1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、反射防止特性を向上することができる。また、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体3の高さまたは深さは、トラックの延在方向における構造体3の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。
【0105】
トラックの延在方向に対して斜となる構造体3の配列方向(θ方向)の高さH2は、トラックの延在方向における構造体3の高さH1よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1>H2の関係を満たすことが好ましい。
【0106】
図16は、構造体3の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。楕円31、32、33の楕円率はそれぞれ、100%、163.3%、141%である。このように楕円率を変化させることで、基体表面における構造体3の充填率を変化させることができる。構造体3が四方格子または準四方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、150%≦e≦180%であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、優れた反射防止特性を得ることができるからである。
【0107】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、反射防止特性を向上することができる。
【0108】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、導電性光学素子1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図15B参照)。また、その単位格子Ucに含まれる4つの構造体3のいずれかの底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(4)より充填率を求める。
充填率=(S(tetra)/S(unit))×100 ・・・(2)
単位格子面積:S(unit)=2×((P1×Tp)×(1/2))=P1×Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(tetra)=S
【0109】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0110】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、64%以上、好ましくは69%以上、より好ましくは73%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、反射防止特性を向上できるからである。ここで、配置ピッチP1は、構造体3のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0111】
[ロールマスタの構成]
図17は、上述の構成を有する導電性光学素子を作製するためのロールマスタの構成の一例を示す。このロールマスタは、その表面において凹状の構造体13が四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなしている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0112】
ロール原盤露光装置を用い、2次元パターンが空間的にリンクし、1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、CAVで適切な送りピッチでパターニングする。これにより、四方格子パターン、または準六方格子パターンを記録することができる。極性反転フォマッター信号の周波数とロールの回転数を適切に設定することにより、所望の記録領域に空間周波数が一様な格子パターンをレーザー光の照射により原盤12上のレジストに形成することが好ましい。
【0113】
<3.第3の実施形態>
[導電性光学素子の構成]
図18Aは、本発明の第3の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図18Bは、図18Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図18Cは、図18BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図18Dは、図18BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。
【0114】
第3の実施形態に係る導電性光学素子1は、トラックTが円弧状の形状を有し、構造体3が円弧状に配置されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。図18Bに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する準六方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている。ここで、準六方格子パターンとは、正六方格子パターンとは異なり、トラックTの円弧状に沿って歪んだ六方格子パターンを意味する。あるいは、正六方格子パターンとは異なり、トラックTの円弧状に沿って歪み、かつ、トラックの延在方向(X軸方向)に引き伸ばされ歪んだ六方格子パターンを意味する。
上述した以外の導電性光学素子1の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0115】
[ディスクマスタの構成]
図19A、図19Bは、上述の構成を有する導電性光学素子を作製するためのディスクマスタの構成の一例を示す。図19A、図19Bに示すように、ディスクマスタ41は、円盤状の原盤42の表面に凹部である構造体43が多数配列された構成を有している。この構造体13は、導電性光学素子1の使用環境下の光の波長帯域以下、例えば可視光の波長と同程度のピッチで周期的に2次元配列されている。構造体43は、例えば、同心円状またはスパイラル状のトラック上に配置されている。
上述した以外のディスクマスタ41の構成は、第1の実施形態のロールマスタ11と同様であるので説明を省略する。
【0116】
[導電性光学素子の製造方法]
まず、図20を参照して、上述した構成を有するディスクマスタ41を作製するための露光装置について説明する。
【0117】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、ミラー38および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光15は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、ミラー38および対物レンズ34を介して、円盤状の原盤42上のレジスト層へ照射される。原盤42は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル(図示を省略する。)の上に載置されている。そして、原盤42を回転させるとともに、レーザー光15を原盤42の回転半径方向に移動させながら、原盤42上のレジスト層へレーザー光を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光15の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0118】
図20に示した露光装置においては、レジスト層に対して図18Bに示した六方格子または準六方格子の2次元パターンからなる潜像を形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光15の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0119】
制御機構37は、潜像の2次元パターンが空間的にリンクするように、1トラック毎に、AOM27によるレーザー光15の強度変調と、スピンドルモータ35の駆動回転速度と、移動光学テーブル32の移動速度とをそれぞれ同期させる。原盤42は、角速度一定(CAV)で回転制御される。そして、スピンドルモータ35による原盤42の適切な回転数と、AOM27によるレーザー強度の適切な周波数変調と、移動光学テーブル32によるレーザー光15の適切な送りピッチとでパターニングを行う。これにより、レジスト層に対して六方格子パターン、または準六方格子パターンの潜像が形成される。
【0120】
更に、極性反転部の制御信号を、空間周波数(潜像のパターン密度であり、P1:330、P2:300nm、または、P1:315nm、P2:275nm、または、P1:300nm、P2:265nm)が一様になるように徐々に変化させる。より具体的には、レジスト層に対するレーザー光15の照射周期を1トラック毎に変化させながら露光を行い、各トラックTにおいてP1がほぼ330nm(あるいは315nm、300nm)となるように制御機構37においてレーザー光15の周波数変調を行う。即ち、トラック位置が円盤状の原盤42の中心から遠ざかるに従い、レーザー光の照射周期が短くなるように変調制御する。これにより、基板全面において空間周波数が一様なナノパターンを形成することが可能となる。
【0121】
以下、本発明の第3の実施形態に係る導電性光学素子の製造方法の一例について説明する。
まず、上述した構成を有する露光装置を用いて、円盤状の原盤上に形成されたレジスト層を露光する以外は、第1の実施形態と同様にしてディスクマスタ41を作製する。次に、このディスクマスタ41と、紫外線硬化樹脂を塗布したアクリルシートなどの基体2とを密着させ、紫外線を照射し紫外線硬化樹脂を硬化させた後、ディスクマスタ41から基体2を剥離する。これにより、複数の構造体3が表面に配列された円盤状の光学素子が得られる。次に、複数の構造体3が形成された光学素子の凹凸面上に、必要に応じて、金属膜5を成膜した後、透明導電膜4を成膜する。これにより、円盤状の導電性光学素子1が得られる。次に、この円盤状の導電性光学素子1から、矩形状などの所定形状の導電性光学素子1を切り出す。これにより、目的とする導電性光学素子1が作製される。
【0122】
この第3の実施形態によれば、直線状に構造体3を配列した場合と同様に、生産性が高く、優れた反射防止特性を有する導電性光学素子1を得ることができる。
【0123】
<4.第4の実施形態>
図21Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図21Bは、図21Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。
【0124】
第4の実施形態に係る導電性光学素子1は、構造体3を蛇行するトラック(以下ウォブルトラックと称する。)上に配列している点において、第1の実施形態とは異なっている。基体2上における各トラックのウォブルは、同期していることが好ましい。すなわち、ウォブルは、シンクロナイズドウォブルであることが好ましい。このようにウォブルを同期させることで、六方格子または準六方格子の単位格子形状を保持し、充填率を高く保つことができる。ウォブルトラックの波形としては、例えば、サイン波、三角波などを挙げることができる。ウォブルトラックの波形は、周期的な波形に限定されるものではなく、非周期的な波形としてもよい。ウォブルトラックのウォブル振幅は、例えば±10μm程度に選択される。
この第4の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0125】
第4の実施形態によれば、構造体3をウォブルトラック上に配列していので、外観上のムラの発生を抑制できる。
【0126】
<5.第5の実施形態>
図22Aは、本発明の第5の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図22Bは、図22Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図22Cは、図22BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図22Dは、図22BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図23は、図22Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である。
【0127】
第5の実施形態に係る導電性光学素子1は、凹部である構造体3が基体表面に多数配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。この構造体3の形状は、第1の実施形態における構造体3の凸形状を反転して凹形状としたものである。なお、上述のように構造体3を凹部とした場合、凹部である構造体3の開口部(凹部の入り口部分)を下部、基体2の深さ方向の最下部(凹部の最も深い部分)を頂部と定義する。すなわち、非実体的な空間である構造体3により頂部、および下部を定義する。また、第5の実施形態では、構造体3が凹部であるため、式(1)などにおける構造体3の高さHは、構造体3の深さHとなる。
【0128】
この第5の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
この第5の実施形態では、第1の実施形態における凸形状の構造体3の形状を反転して凹形状としているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
<6.第6の実施形態>
図24Aは、本発明の第6の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す概略平面図である。図24Bは、図24Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す平面図である。図24Cは、図24BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図24Dは、図24BのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図25は、図24Aに示した導電性光学素子の一部を拡大して表す斜視図である。
【0130】
導電性光学素子1は、基体2と、この基体2の表面に形成された複数の構造体3と、これらの構造体3上に形成された透明導電膜4とを備える。また、表面抵抗の向上の観点から、構造体2と透明導電膜4との間に金属膜5をさらに設けることが好ましい。この構造体3は、錐体形状の凸部である。隣接する構造体3の下部同士が、その下部同士を重なり合うようにして接合されている。隣接する構造体3のうち、最隣接する構造体3が、トラック方向に配置されていることが好ましい。このような位置に最隣接する構造体3を配置することが、後述する製造方法では容易であるからである。この導電性光学素子1は、構造体3が設けられた基体表面に対して入射する光の反射を防止する機能を有している。以下では、図24Aに示すように、基体2の一主面内において直交する2つの軸をX軸、Y軸と称し、基体2の一主面に垂直な軸をZ軸と称する。また、構造体3間に空隙部2aがある場合には、この空隙部2aに微細凹凸形状を設けることが好ましい。このような微細凹凸形状を設けることで、導電性光学素子1の反射率をさらに低減することができるからである。
【0131】
図26は、本発明の第1の実施形態に係る導電性光学素子の屈折率プロファイルの一例を示す。図26に示すように、構造体3の深さ方向(図24A中、−Z軸方向)に対する実効屈折率が、基体2に向けて徐々に増加するとともに、S字形状の曲線を描くように変化している。すなわち、屈折率プロプロファイルが、1つの変曲点Nを有している。この変曲点は、構造体3の側面の形状に対応するものである。このように実効屈折率を変化させることで、光にとって境界が明確では無くなるため反射光を低減し、導電性光学素子1の反射防止特性を向上することができる。深さ方向に対する実効屈折率の変化は、単調増加であることが好ましい。ここで、S字状には、反転S字状、すなわちZ字状も含まれる。
【0132】
また、深さ方向に対する実効屈折率の変化が、構造体3の頂部側および基体側の少なくとも一方において実効屈折率の傾きの平均値よりも急峻であることが好ましく、構造体3の頂部側および基体側の両方において上記平均値よりも急峻であることがより好ましい。これにより、優れた反射防止特性を得ることができる。
【0133】
構造体3の下部は、例えば、隣接関係にある構造体3の一部または全部の下部と接合されている。このように構造体同士の下部を接合することで、構造体3の深さ方向に対する実効屈折率の変化を滑らかにすることができる。その結果、S字形状の屈折率プロファイルが可能となる。また、構造体同士の下部を接合することで、構造体の充填率を高めることができる。なお、図24Bでは、隣接する全ての構造体3を接合したときの接合部の位置が、黒丸印「●」にて示されている。具体的には、接合部は、隣接する全ての構造体3の間、同一トラック内にて隣接する構造体3の間(例えばa1〜a2間)、または、隣接するトラック間の構造体3の間(例えばa1〜a7間、a2〜a7間)に形成される。滑らかな屈折率プロファイルを実現し、優れた反射防止特性を得るためには、隣接する全ての構造体3の間に接合部を形成することが好ましい。後述する製造方法により接合部を容易に形成するためには、同一トラック内にて隣接する構造体3の間に接合部を形成することが好ましい。構造体3が六方格子パターンまたは準六方格子パターンに周期的に配置されている場合には、例えば、構造体3が6回対称となる方位で接合する。
【0134】
構造体3が、その下部同士を重ね合うようにして接合されていていることが好ましい。このように構造体3を接合することで、S字形状の屈折率プロファイルを得ることができるとともに、構造体3の充填率を向上することができる。構造体同士は、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で接合されていることが好ましい。これにより、優れた反射防止特性を得ることができる。
【0135】
構造体3の高さは、透過させる光の波長領域に応じて適宜設定することが好ましい。具体的には、構造体3の高さが、使用環境下の光の波長帯域の最大値の5/14以上10/7以下に選んでもよい。可視光を透過させる場合、構造体3の高さは100nm〜280nmであることが好ましい。構造体3のアスペクト比(高さH/配置ピッチP)は、0.5〜1.46の範囲に設定することが好ましい。0.5未満であると反射特性および透過特性が低下する傾向にあり、1.46を超えると導電性光学素子1の作製時において、構造体3の剥離特性が低下し、レプリカの複製が綺麗に取れなくなる傾向があるからである。
【0136】
構造体3の材料としては、例えば、紫外線、もしくは電子線により硬化する電離放射線硬化型樹脂、または熱により硬化する熱硬化型樹脂を主成分とするものが好ましく、紫外線で硬化できる紫外線硬化樹脂を主成分とするものが最も好ましい。
【0137】
図27は、構造体の形状の一例を示す拡大断面図である。構造体3の側面が、基体2へ向けて徐々に拡大するとともに、図26に示したS字状曲線の平方根の形状を描くように変化することが好ましい。このような側面形状にすることにより、優れた反射防止特性を得ることができ、かつ、構造体3の転写性を向上することができる。
【0138】
構造体3の頂部3tは、例えば、平面形状、または、先端に行くに従って細くなる凸形状である。構造体3の頂部3tを平面形状とする場合、単位格子の面積Sに対する、構造体頂部の平面の面積Stの面積比率(St/S)は、構造体3の高さが高くなるにつれて小さくなるようにすることが好ましい。このようにすることで、導電性光学素子1の反射防止特性を向上することができる。ここで、単位格子は、例えば、六方格子または準六方格子などである。構造体底面の面積比率(単位格子の面積Sに対する、構造体底面の面積Sbの面積比率(Sb/S)は、頂部3tの面積比率に近いことが好ましい。また、構造体3の頂部3tに、構造体3よりも屈折率が低い低屈折率層を形成してもよく、このような低屈折率層を形成することで、反射率を下げることが可能となる。
【0139】
頂部3tおよび下部3bを除く構造体3の側面は、その頂部3tから下部3bの方向に向かって、第1の変化点Paおよび第2の変化点Pbの組をこの順序で1つ有することが好ましい。これにより、構造体3の深さ方向(図24A中、−Z軸方向)に対する実効屈折率が、1つの変曲点を有することができる。
【0140】
ここで、第1の変化点および第2の変化点は以下のように定義される。
図28A、図28Bに示すように、構造体3の頂部3tから下部3bの間の側面が、構造体3の頂部3tから下部3bに向かって、滑らかな複数の曲面を不連続的に接合して形成されている場合には、接合点が変化点となる。この変化点と変曲点は一致することになる。接合点では正確には微分不可能であるが、ここでは、このような極限としての変曲点も変曲点と称する。構造体3が上述のような曲面を有する場合、構造体3の頂部3tから下部3bに向かう傾きが、第1の変化点Paを境にしてより緩やかになった後、第2の変化点Pbを境にしてより急になることが好ましい。
【0141】
図28Cに示すように、構造体3の頂部3tから下部3bの間の側面が、構造体3の頂部3tから下部3bに向かって、滑らかな複数の曲面を連続的に滑らかに接合して形成されている場合には、変化点は以下のように定義される。図28Cに示すように、構造体の側面に存在する2つの変曲点におけるそれぞれの接線が互いに交わる交点に対して、曲線上で最も近い点を変化点と称する。
【0142】
構造体3は、その頂部3tから下部3bの間の側面に、1つのステップStを有することが好ましい。このように1つのステップStを有することで、上述の屈折率プロファイルを実現することができる。すなわち、構造体3の深さ方向に対する実効屈折率を、基体2に向けて徐々に増加させるとともに、S字形状の曲線を描くように変化させることができる。ステップとしては、例えば傾斜ステップまたは平行ステップが挙げられ、傾斜ステップが好ましい。ステップStを傾斜ステップとすると、ステップStを平行ステップとするよりも、転写性を良好にできるからである。
【0143】
傾斜ステップとは、基体表面に対して平行ではなく、構造体3の頂部から下部の方向に向かうに従って側面が広がるように傾斜しているステップのことをいう。平行ステップとは、基体表面に対して平行なステップのことをいう。ここで、ステップStは、上述の第1の変化点Paおよび第2の変化点Pbで設定される区画である。なお、ステップStには、頂部3tの平面、および構造体間の曲面または平面を含まないものとする。
【0144】
構造体3が、成形の容易さの観点から、隣接する構造体3に接合されている下部を除いて軸対称な錐体形状、または錐体形状をトラック方向に延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。錐体形状としては、例えば、円錐形状、円錐台形状、楕円錐形状、楕円錐台形状などを挙げることができる。ここで、錐体形状とは、上述のように、円錐形状および円錐台形状以外にも、楕円錐形状、楕円錐台形状を含む概念である。また、円錐台形状とは、円錐形状の頂部を切り落とした形状をいい、楕円錐台形状とは、楕円錐の頂部を切り落とした形状のことをいう。なお、構造体3の全体形状は、これらの形状に限定されるものではなく、構造体3の深さ方向に対する実効屈折率が、基体2に向けて徐々に増加するとともに、S字状に変化するような形状であればよい。また、錐体形状には、完全な錐体形状のみならず、上述したように、側面にステップStを有する錐体形状も含まれる。
【0145】
楕円錐形状を有する構造体3は、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が先端に行くに従って狭くなる細くなる凸形状を有する構造体である。楕円錐台形状を有する構造体3は、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が平面である構造体である。構造体3を楕円錐形状または楕円錐台形状とする場合、構造体3の底面の長軸方向がトラックの延在方向(X軸方向)となるように、構造体3を基体表面に形成することが好ましい。
【0146】
構造体3の断面積は、上述の屈折率プロファイルに対応するように、構造体3の深さ方向に対して変化する。構造体3の断面積は、構造体3の深さ方向に向かうに従って単調に増加することが好ましい。ここで、構造体3断面積とは、構造体3が配列された基体表面に対して、平行な切断面の面積を意味する。深さの異なる位置での構造体3の断面積割合が、当該位置に対応した上記実効屈折率プロファイルに相当するように、深さ方向に構造体の断面積を変化させることが好ましい。
【0147】
上述したステップを有する構造体3は、例えば、以下のようにして作製された原盤を用いて、形状転写をすることにより得られる。すなわち、原盤作製のエッチング工程において、エッチング処理およびアッシング処理の処理時間を適宜調整することにより、構造体(凹部)の側面にステップが形成された原盤を作製する。
【0148】
この第6の実施形態によれば、構造体3が錐体形状を有し、この構造体3の深さ方向に対する実効屈折率が、基体2へ向けて徐々に増加するとともに、S字状の曲線を描くように変化する。これにより、構造体3の形状効果により、光にとって境界が明確では無くなるため、反射光を低減できる。よって、優れた反射防止特性を得ることができる。特に、構造体3の高さが大きい場合に、優れた反射防止特性が得られる。また、隣接する構造体3の下部同士を、その下部同士が重なり合うようにして接合しているので、構造体3の充填率を上げることができるとともに、構造体3の成形が容易となる。
【0149】
構造体3の深さ方向に対する実効屈折率プロファイルをS字状に変化させるとともに、(準)六方格子、または、(準)四方格子の配列で構造体を配置させることが好ましい。また、各構造体3は軸対称の構造、または、軸対称の構造をトラック方向に延伸または収縮させた構造とすることが好ましい。さらに、隣接する構造体3を基体付近において接合させることが好ましい。このような構成とすることで、より製造しやすく、高性能な反射防止構造体を作製することができる。
【0150】
光ディスクの原盤作製プロセスとエッチングプロセスとを融合した方法を用いて、導電性光学素子1を作製する場合には、電子線露光を用いて導電性光学素子1を作製した場合に比べて、原盤作製プロセスに要する時間(露光時間)を大幅に短縮することができる。したがって、導電性光学素子1の生産性を大幅に向上することができる。
【0151】
構造体3の頂部の形状を先鋭でなく平面形状とした場合には、導電性光学素子1の耐久性を向上することができる。また、ロールマスタ11に対する構造体3の剥離性を向上することもできる。構造体3のステップを傾斜ステップとした場合には、平行ステップとした場合に比べて転写性を向上することができる。
【0152】
<7.第7の実施形態>
図29は、本発明の第7の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す断面図である。第7の実施形態に係る導電性光学素子1は、図29に示すように、構造体3が形成された一主面(第1の主面)とは反対側となる他主面(第2の主面)に、構造体3をさらに備える点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0153】
導電性光学素子1の両主面における構造体3の配置パターン、およびアスペクト比などは、同一である必要はなく、所望とする特性に応じて、異なる配置パターン、およびアスペクト比を選択するようにしてもよい。例えば、一主面の配置パターンを準六方格子パターンとし、他主面の配置パターンを準四方格子パターンとするようにしてもよい。
【0154】
第7の実施形態では、基体2の両主面に複数の構造体3を形成しているので、導電性光学素子1の光入射面および光出射面の双方に対して、光の反射防止機能を付与することができる。これにより、光の透過特性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0155】
<8.第8の実施形態>
図30は、本発明の第8の実施形態に係る導電性光学素子の構成の一例を示す断面図である。図30に示すように、この導電性光学素子1は、基体2上に透明導電層8を備え、この透明導電層8の表面に、透明導電性を有する多数の構造体3が形成されている点において、第1の実施形態とは異なっている。透明導電層8が、導電性高分子、導電性フィラー、カーボンナノチューブ、および導電性粉末からなる群のうちの少なくとも1種の材料を含んでいる。導電性フィラーとしては、例えば銀系フィラーなどを用いることができる。導電性粉末としては、例えばITO粉末を用いることができる。
【0156】
第8の実施形態では、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0157】
<9.第9の実施形態>
図31Aは、本発明の第9の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。このタッチパネルは、いわゆる抵抗膜方式タッチパネルである。抵抗膜方式タッチパネルとしては、アナログ抵抗膜方式タッチパネル、およびデジタル抵抗膜方式タッチパネルのいずれであってもよい。図31Aに示すように、情報入力装置であるタッチパネル50は、情報を入力するタッチ面(入力面)を有する第1の導電性基材51と、この導電性基材51と対向する第2の導電性基材52とを備える。タッチパネル50は、第1の導電性基材51のタッチ側となる面に、ハードコート層、または防汚性ハードコート層をさらに備えることが好ましい。また、必要に応じて、タッチパネル50上にフロントパネルをさらに備えるようにしてもよい。このタッチパネル50は、例えば表示装置54に対して接着層53を介して貼り合わされる。
【0158】
表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)などの各種表示装置を用いることができる。
【0159】
第1の導電性基材51、および第2の導電性基材51の少なくとも一方として、第1〜第6の実施形態に係る導電性光学素子1のいずれかが用いられる。第1の導電性基材51、および第2の導電性基材51の両方として、第1〜第6の実施形態に係る導電性光学素子1のいずれかを用いる場合、両導電性基材として互いに同一、または異なる実施形態に係る導電性光学素子1を用いることができる。
【0160】
第1の導電性基材51、および第2の導電性基材51の互いに対向する2つの面のうち、少なくとも一方に構造体3が形成され、反射防止特性および透過特性の観点からすると、両方に構造体3が形成されていることが好ましい。
【0161】
第1の導電性基材51のタッチ側となる面に、単層または多層の反射防止層を形成することが好ましい。反射率を低減し、視認性を向上することができるからである。
【0162】
(変形例)
図31Bは、本発明の第9の実施形態に係るタッチパネルの変形例を示す断面図である。図31Bに示すように、第1の導電性基材51、および第2の導電性基材52の少なくとも一方として、第7の実施形態に係る導電性光学素子1が用いられる。
【0163】
第1の導電性基材51、および第2の導電性基材51の互いに対向する2つの面のうち、少なくとも一方に複数の構造体3が形成される。さらに、第1の導電性基材51のタッチ側となる面、および第2の導電性基材52の表示装置54の側となる面の少なくとも一方に複数の構造体3が形成される。反射防止特性および透過特性の観点からすると、両方の面に構造体3が形成されていることが好ましい。
【0164】
第9の実施形態では、第1の導電性基材51、および第2の導電性基材51の少なくとも一方として、導電性光学素子1を用いているので、すぐれた反射防止特性および透過特性を有するタッチパネル50を得ることができる。したがって、タッチパネル50の視認性を向上することができる。特に、屋外でのタッチパネル50の視認性を向上することができる。
【0165】
<10.第10の実施形態>
図32Aは、本発明の第10の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す斜視図である。図32Bは、本発明の第10の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。第10の実施形態に係るタッチパネルは、タッチ面に形成されたハードコート層7をさらに備える点において、第9の実施形態とは異なっている。
【0166】
タッチパネル50は、情報を入力するタッチ面(入力面)を有する第1の導電性光学素子51と、この第1の導電性光学素子51と対向する第2の導電性光学素子52とを備える。第1の導電性光学素子51と、第2の導電性光学素子52は、それらの周縁部間に配置された貼合層55を介して互いに貼り合わされている。貼合層55としては、例えば、粘着ペースト、粘着テープなどが用いられる。ハードコート層7の表面には、防汚性が付与されていることが好ましい。このタッチパネル50は、例えば表示装置54に対して貼合層53を介して貼り合わされる。貼合層53の材料としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコン系などの粘着剤を用いることができ、透明性の観点からすると、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0167】
第10の実施形態では、第1の導電性光学素子51のタッチ側となる面に、ハードコート層7を形成しているので、タッチパネル50のタッチ面の耐擦傷性を向上することができる。
【0168】
<11.第11の実施形態>
図33Aは、本発明の第11の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す斜視図である。図33Bは、本発明の第11の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。第11の実施形態に係るタッチパネル50は、第1の導電性光学素子51のタッチ側となる面に対して、貼合層60などを介して貼り合わされた偏光子58をさらに備える点において、第9の実施形態とは異なっている。このように偏光子58を設ける場合、第1の導電性光学素子51、および第2の導電性光学素子52の基体2としては、λ/4位相差フィルムを用いることが好ましい。このように偏光子58と、λ/4位相差フィルムである基体2とを採用することで、反射率を低減し、視認性を向上することができる。
【0169】
第1の導電性光学素子51のタッチ側となる面に、単層または多層の反射防止層(図示せず)を形成することが好ましい。反射率を低減し、視認性を向上することができるからである。また、第1の導電性光学素子51のタッチ側となる面に対して、貼合層61などを介して貼り合わされたフロントパネル(表面部材)59をさらに備えるようにしてもよい。このフロントパネル59の両主面の少なくとも一方に、第1の導電性光学素子51と同様に、多数の構造体3を形成するようにしてもよい。なお、図33では、フロントパネル59の入射面側に多数の構造体3を形成した例が示されている。また、第2の導電性光学素子52の表示装置54などに貼り合わされる面に、貼合層57などを介してガラス基板56を貼り合わせるようにしてもよい。
【0170】
第1の導電性光学素子51、および第2の導電性光学素子52の少なくとも一方の周縁部にも、複数の構造体3を形成することが好ましい。アンカー効果により、第1の導電性光学素子51、または第2の導電性光学素子52と、貼合層55との間の密着性を向上することができるからである。
【0171】
また、第2の導電性光学素子52の表示装置54などと貼り合わされる面に対しても、複数の構造体3を形成することが好ましい。複数の構造体3のアンカー効果により、タッチパネル50と貼合層57との間の接着性を向上することができるからである。
【0172】
<12.第12の実施形態>
図34は、第12の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。第12の実施形態に係るタッチパネル50は、第1の導電性基材51および第2の導電性基材52の少なくとも一方がその周縁部にも複数の構造体3を備える点において、第9の実施形態とは異なっている。第1の導電性基材51、および第2の導電性基材52の周縁部には、所定のパターンを有する配線層71と、この配線層71を覆う絶縁層72と、両基材を貼り合わせる貼合層55との少なくとも1種を備える。また、第2の導電性基材52の主面のうち、第1の導電性基材51と対向する対向面には、ドットスペーサ73が多数形成されている。
【0173】
配線層71は、平行電極、取り回し回路などを形成するためのものであり、例えば熱乾燥型、または熱硬化型の導電性ペーストなどの配線材を主成分としている。導電性ペーストとしては、例えば銀ペーストを用いることができる。絶縁層72は、両基材の配線層71の絶縁性確保、および短絡防止をするためのものであり、例えば紫外線硬化型、または熱硬化型の絶縁ペーストなどの絶縁材料、または絶縁テープからなる。貼合層55は、両基材を貼り合わせるためのものであり、例えば紫外線硬化型、または熱硬化型の粘着ペーストなどの粘着剤を主成分としている。ドットスペーサ73は、両基材のギャップ確保、および接触防止をするためのものであり、例えば紫外線硬化型、熱硬化型、またはフォトリソ型のドットスペーサ用ペーストを主成分としている。
【0174】
第12の実施形態では、第1の導電性基材51および第2の導電性基材52の少なくとも一方がその周縁部にも複数の構造体3を備えているので、アンカー効果を得ることできる。したがって、配線層71、絶縁層72、および貼合層55の密着性を向上することができる。また、下部電極となる第2の導電性基材52の電極面に多数の構造体3を形成した場合には、ドットスペーサ73の密着性を向上することができる。
【0175】
また、図34に示すように、第2の導電性基材52の表示装置54と貼り合わされる面に対しても、複数の構造体3を形成することが好ましい。複数の構造体3のアンカー効果により、タッチパネル50と表示装置54との間の接着性を向上することができるからである。
【0176】
<13.第13の実施形態>
図35は、第13の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す断面図である。図35に示すように、第13の実施形態に係る液晶表示装置70は、第1、および第2の主面を有する液晶パネル(液晶層)71と、第1の主面上に形成された第1の偏光子72と、第2の主面上に形成された第2の偏光子73と、液晶パネル71と第1の偏光子72との間に配置されたタッチパネル50とを備える。タッチパネル50は、液晶ディスプレイ一体型タッチパネル(いわゆるインナータッチパネル)である。第1の偏光子72の表面に多数の構造体3を直接形成するようにしてもよい。第1の偏光子72が、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムなどの保護層を表面に備えている場合には、保護層上に多数の構造体3を直接形成することが好ましい。このように偏光子72に多数の構造体3を形成することで、液晶表示装置70をさらに薄型化することができる。
【0177】
(液晶パネル)
液晶パネル71としては、例えば、ツイステッドネマチック(Twisted Nematic:TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(Super Twisted Nematic:STN)モード、垂直配向(Vertically Aligned:VA)モード、水平配列(In-Plane Switching:IPS)モード、光学補償ベンド配向(Optically Compensated Birefringence:OCB)モード、強誘電性(Ferroelectric Liquid Crystal:FLC)モード、高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal:PDLC)モード、相転移型ゲスト・ホスト(Phase Change Guest Host:PCGH)モードなどの表示モードのものを用いることができる。
【0178】
(偏光子)
第1の偏光子72、および第2の偏光子73は、その透過軸が互いに直交するようにして液晶パネル71の第1、および第2の主面上に対して、貼合層74、75を介して貼り合わされる。第1の偏光子72、および第2の偏光子73は、入射する光のうち直交する偏光成分の一方のみを通過させ、他方を吸収により遮へいするものである。第1の偏光子72、および第2の偏光子73としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムに、ヨウ素錯体や二色性染料を一軸方向に配列させたものを用いることができる。第1の偏光子72、および第2の偏光子73の両面には、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどの保護層を設けることが好ましい。
【0179】
(タッチパネル)
タッチパネル50は、第9〜第12の実施形態のいずれかのものを用いることができる。
【0180】
第11の実施形態では、偏光子72を液晶パネル71とタッチパネル50とで共用した構成としているので、光学特性を向上することができる。
【0181】
<14.第14の実施形態>
図36Aは、本発明の第14の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す斜視図である。図36Bは、本発明の第14の実施形態に係るタッチパネルの構成の一例を示す断面図である。この第14の実施形態に係るタッチパネル50は、いわゆる静電容量方式タッチパネルであり、その表面および内部の少なくとも一方に多数の構造体3が形成されている。このタッチパネル50は、例えば表示装置54に対して接着層53を介して貼り合わされる。
【0182】
(第1の構成例)
図36Aに示すように、第1の構成例に係るタッチパネル50は、基体2と、この基体2上に形成された透明導電膜4と、保護層9とを備える。基体2および保護層9の少なくとも一方には、可視光の波長以下の微細ピッチで構造体3が多数配置されている。なお、図36Aでは、基体2の表面に構造体3が多数配置された例が示されている。静電容量方式タッチパネルは、表面型静電容量方式タッチパネル、インナー型静電容量方式タッチパネル、および投影型静電容量方式タッチパネルのいずれであってもよい。基体2の周縁部に配線層などの周縁部材を形成する場合には、上述の第12の実施形態と同様に、基体2の周縁部にも多数の構造体3を形成することが好ましい。配線層などの周縁部材と基体2との密着性を向上することができるからである。
【0183】
保護層9は、例えばSiO2などの誘電体を主成分とする誘電体層である。透明導電膜4は、タッチパネル50の方式により異なる構成を有している。例えば、タッチパネル50が表面型静電容量方式タッチパネル、またはインナー型静電容量方式タッチパネルである場合には、透明導電膜4は、ほぼ一様な膜厚を有する薄膜である。タッチパネル50が投影型静電容量方式タッチパネルである場合には、透明導電膜4は、所定ピッチで配置された格子形状などの透明電極パターンである。透明導電膜4の材料としては、上述の第1の実施形態と同様のものを用いることができる。上記以外のことは、第9の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0184】
(第2の構成例)
図36Bに示すように、第2の構成例に係るタッチパネル50は、タッチパネル50の内部に代えて、保護層9の表面、すなわち、タッチ面に可視光の波長以下の微細ピッチで構造体3が多数配置されている点において、第1の構成例とは異なっている。なお、表示装置53に貼り合わされる側の裏面に、多数の構造体3をさらに配置するようにしてもよい。
【0185】
第14の実施形態では、静電容量方式のタッチパネル50の表面および内部の少なくとも一方に多数の構造体3を形成しているので、第8の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0186】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0187】
本発明の実施例および試験例について以下の順序で説明する。
1.導電性光学シートの光学特性
2.構造体と光学特性および表面抵抗との関係
3.透明導電膜の厚みと光学特性および表面抵抗との関係
4.他方式の低反射導電膜との比較
5.構造体と光学特性との関係
6.透明導電膜の形状と光学特性との関係
7.充填率、および径の比率と反射特性との関係(シミュレーション)
8.導電性光学シートを用いたタッチパネルの光学特性
9.モスアイ構造体による密着性の向上
【0188】
(高さH、配置ピッチP、アスペクト比(H/P))
以下の実施例において、導電性光学シートの構造体の高さH、配置ピッチP、およびアスペクト比(H/P)は以下のようにして求めた。
まず、光学シートの表面形状を、透明導電膜を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により撮影した。そして、撮影したAFM像、およびその断面プロファイルから、構造体の配置ピッチP、高さHを求めた。次に、これらの配置ピッチPおよび高さHを用いてアスペクト比(H/P)を求めた。
【0189】
(透明導電膜の平均膜厚)
以下の実施例において、透明導電膜の平均膜厚は以下のようにして求めた。
まず、導電性光学シートを構造体の頂部を含むようにトラックの延在方向に切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、構造体における頂部における透明導電膜の膜厚D1を測定した。これらの測定を導電性光学シートから無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値を単純に平均(算術平均)して平均膜厚Dm1を求め、この平均膜厚を透明導電膜の平均膜厚とした。
【0190】
また、凸部である構造体の頂部における透明導電膜の平均膜厚Dm1、凸部である構造体の傾斜面における透明導電膜の平均膜厚Dm2、凸部である構造体の間における透明導電膜の平均膜厚Dm3は、以下のようにして求めた。
まず、導電性光学シートを構造体の頂部を含むようにトラックの延在方向に切断し、その断面をTEMにて撮影した。次に、撮影したTEM写真から、構造体の頂部における透明導電膜の膜厚D1を測定した。次に、構造体の傾斜面の位置のうち、構造体の半分の高さ(H/2)の位置の膜厚D2を測定した。次に、構造体間の凹部の位置のうち、その凹部の深さが最も深くなる位置の膜厚D3を測定した。次に、これらの膜厚D1、D2、D3の測定を導電性光学シートから無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値D1、D2、D3を単純に平均(算術平均)して平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3を求めた。
【0191】
また、凹部である構造体の頂部における透明導電膜の平均膜厚Dm1、凹部である構造体の傾斜面における透明導電膜の平均膜厚Dm2、凹部である構造体の間における透明導電膜の平均膜厚Dm3は、以下のようにして求めた。
まず、導電性光学シートを構造体の頂部を含むようにトラックの延在方向に切断し、その断面をTEMにて撮影した。次に、撮影したTEM写真から、非実体的な空間である構造体の頂部における透明導電膜の膜厚D1を測定した。次に、構造体の傾斜面の位置のうち、構造体の半分の深さ(H/2)の位置の膜厚D2を測定した。次に、構造体間の凸部の位置のうち、その凸部の高さが最も高くなる位置の膜厚D3を測定した。次に、これらの膜厚D1、D2、D3の測定を導電性光学シートから無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値D1、D2、D3を単純に平均(算術平均)して平均膜厚Dm1、Dm2、Dm3を求めた。
【0192】
<1.導電性光学シートの光学特性>
(実施例1)
まず、外径126mmのガラスロール原盤を準備し、このガラスロール原盤の表面に以下のようにしてレジスト層を着膜した。すなわち、シンナーでフォトレジストを1/10に希釈し、この希釈レジストをディップによりガラスロール原盤の円柱面上に厚さ70nm程度に塗布することにより、レジスト層を着膜した。次に、記録媒体としてのガラスロール原盤を、図11に示したロール原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光することにより、1つの螺旋状に連なるとともに、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像がレジスト層にパターニングされた。
【0193】
具体的には、六方格子が形成されるべき領域に対して、前記ガラスロール原盤表面まで露光するパワー0.50mW/mのレーザー光を照射し凹形状の六方格子パターンを形成した。なお、トラック列の列方向のレジスト層の厚さは60nm程度、トラックの延在方向のレジスト厚さは50nm程度であった。
【0194】
次に、ガラスロール原盤上のレジスト層に現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、図示しない現像機のターンテーブル上に未現像のガラスロール原盤を載置し、ターンテーブルごと回転させつつガラスロール原盤の表面に現像液を滴下してその表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層が六方格子パターンに開口しているレジストガラス原盤が得られた。
【0195】
次に、ロールエッチング装置を用い、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、ガラスロール原盤の表面において、レジスト層から露出している六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の領域はレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部が得られた。このときのパターンでのエッチング量(深さ)はエッチング時間によって変化させた。最後に、O2アッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子のモスアイガラスロールマスタが得られた。列方向における凹部の深さは、トラックの延在方向における凹部の深さより深かった。
【0196】
次に、上記モスアイガラスロールマスタと紫外線硬化樹脂を塗布したアクリルシートを密着させ、紫外線を照射し硬化させながら剥離した。これにより、複数の構造体が一主面に配列された光学シートが得られた。次に、スパッタリング法により、平均膜厚30nmのIZO膜を構造体上に成膜した。
以上により、目的とする導電性光学シートを作製した。
【0197】
(実施例2)
平均膜厚160nmのIZO膜を構造体上に形成する以外は、実施例1と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0198】
(実施例3)
まず、実施例1と同様にして一主面に複数の構造体が配列された光学シートを作製した。次に、一主面に複数の構造体を形成したのと同様にして、光学シートの他主面に複数の構造体を形成した。これにより、両主面に複数の構造体が配列された光学シートが作製された。次に、スパッタリング法により、平均膜厚30nmのIZO膜を一主面の構造体上に成膜することにより、複数の構造体が両主面に配列された導電性光学シートを作製した。
【0199】
(比較例1)
IZO膜の成膜工程を省略する以外は実施例1と同様にして、光学シートを作製した。
【0200】
(比較例2)
スパッタリング法により、平均膜厚30nmのIZO膜を、平滑なアクリルシートの表面上に形成し、導電性光学シートを作製した。
【0201】
(形状の評価)
光学シートの表面形状を、IZO膜を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察した。そして、AFMの断面プロファイルから各実施例の構造体の高さなどを求めた。その結果を表1に示す。
【0202】
(表面抵抗の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの表面抵抗を4端子法(JIS K 7194)にて測定した。その結果を表1に示す。
【0203】
(反射率/透過率の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの反射率、および透過率を日本分光の評価装置(V−550)を用いて評価した。その結果を図37A、図37Bに示す。
【0204】
【表1】

【0205】
上述の評価結果から以下のことがわかる。
比較例2の表面抵抗を4端子法(JIS K 7194)にて測定したところ、270Ω/□となった。これに対して、モスアイ構造を表面に形成した実施例1では、抵抗率2.0×10-4Ω・cmの透明導電膜(IZO膜)を平板換算で30nm成膜すると、約30nm程度の平均膜厚となる。このときの表面抵抗は、表面積が増えることを換算しても、4000Ω/□であるが、抵抗膜式タッチパネルとして使用する際に問題ないレベルである。
【0206】
図37A、図37Bに示すように、実施例1は、透明導電膜を成膜していない、モスアイ構造体のみが表面に形成された比較例1と比較しても、遜色ない特性を保持している。また、実施例1は、同程度の表面抵抗をもつ透明導電膜を平滑なシート上に成膜した比較例1の光学特性よりも、優れた光学特性が得られている。
実施例2では、平板換算(平均膜厚)で160nmとなる厚さの透明導電膜(IZO膜)を成膜しているため、透過率が劣化する傾向がある。これは透明導電膜を過度に厚く成膜したため、モスアイ構造体の形状が崩れてしまい、所望の形状を維持することが困難となってしまったためと考えられる。すなわち、透明導電膜を過度に厚くすると、モスアイ構造体の形状を保持したまま薄膜を成長させることが困難になる。しかし、このように形状が保持されていない場合であっても、透明導電膜のみを平滑なシートに成膜した比較例2よりも光学特性が優れている。
両面にモスアイ構造体を形成した実施例3では、片面にモスアイ構造を形成した実施例1に比べて反射防止機能が向上している。図37Bから、97%〜99%の非常に高透過率な特性が実現されていることがわかる。
【0207】
<2.構造体と光学特性および表面抵抗との関係>
(実施例4〜6)
1トラック毎に極性反転フォマッター信号の周波数と、ロールの回転数と、送りピッチとを調整し、レジスト層をパターニングすることにより、六方格子パターンをレジスト層に記録した。これ以外のことは、実施例1と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0208】
(実施例7)
実施例6と凹凸関係を逆にした以外のことは実施例1と同様にして、凹形状を有する複数の構造体(逆パターンの構造体)が表面に形成された導電性光学シートを作製した。
【0209】
(比較例3)
IZO膜の成膜を省略する以外は実施例4と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0210】
(比較例4)
IZO膜の成膜を省略する以外は実施例6と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0211】
(比較例5)
スパッタリング法により、平均膜厚40nmのIZO膜を、平滑なアクリルシートの表面上に形成し、導電性光学シートを作製した。
【0212】
(形状の評価)
光学シートの表面形状を、IZO膜を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察した。そして、AFMの断面プロファイルから各実施例の構造体の高さなどを求めた。その結果を表2に示す。
【0213】
(表面抵抗の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの表面抵抗を4端子法にて測定した。その結果を表2に示す。また、図38Aに、アスペクト比と表面抵抗との関係を示す。図38Bに、構造体の高さと表面抵抗との関係を示す。
【0214】
(反射率/透過率の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの反射率、および透過率を日本分光の評価装置(V−550)を用いて評価した。その結果を図39A、図39Bに示す。また、図40A、図40Bに、実施例6と比較例4の透過特性、および反射特性を示す。図41A、図41Bに、実施例4と比較例3の透過特性、および反射特性を示す。
【0215】
【表2】

【0216】
図38A、図38Bから以下のことがわかる。
構造体のアスペクト比と表面抵抗との間に相関があり、アスペクト比の値にほぼ比例して表面抵抗が増加する傾向がある。これは、構造体の斜面が急峻になるほど、透明導電膜の平均膜厚が薄くなる、または構造体の高さが高い、もしくは深さが深いほど表面積が増えるため、高抵抗となるためと考えられる。
タッチパネルでは、一般的に500〜300Ω/□の表面抵抗が求められるので、本発明をタッチパネルに適用する場合には、アスペクト比を適宜調整して、所望の抵抗値が得られるようにすることが好ましい。
【0217】
図39A、図39B、図40A、図40Bから以下のことがわかる。
波長450nmよりも短波長側では透過率が低下する傾向がるが、波長450nm〜800nmの範囲では優れた透過特性が得られる。また、構造体のアスペクト比が高いほど、短波長側での透過率の低下を抑制できる。
波長450nmよりも短波長側では反射率も低下する傾向があるが、波長450nm〜800nmの範囲では優れた反射特性が得られる。また、構造体のアスペクト比が高いほど、短波長側での反射率の増加を抑制できる。
凸形状の構造体が形成された実施例6は、凹形状の構成体が形成された実施例7よりも光学特性が優れている。
【0218】
図41A〜図41Bから以下のことがわかる
アスペクト比が1.2である実施例4では、アスペクト比が0.6である実施例6よりも、光学特性の変化が少なく抑えられている。これは、アスペクト比1.2である実施例4の方が、アスペクト比0.6である実施例6よりも表面積が大きく、構造体に対する透明導電膜の平均膜厚が薄くなっているためと考えられる。
【0219】
<3.透明導電膜の厚みと光学特性および表面抵抗との関係>
(実施例8)
IZO膜の平均膜厚を50nmにする以外は実施例6と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0220】
(実施例9)
実施例6と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0221】
(実施例10)
IZO膜の平均膜厚を30nmにする以外は実施例6と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0222】
(比較例6)
IZO膜の成膜を省略する以外は実施例6と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0223】
(形状の評価)
光学シートの表面形状を、IZO膜を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察した。そして、AFMの断面プロファイルから各実施例の構造体の高さなどを求めた。その結果を表3に示す。
【0224】
(表面抵抗の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの表面抵抗を4端子法(JIS K 7194)にて測定した。その結果を表3に示す。
【0225】
(反射率/透過率の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの反射率、および透過率を日本分光の評価装置(V−550)を用いて評価した。その結果を図42A、図42Bに示す。
【0226】
【表3】

なお、“()”内に記された抵抗値は、同一の成膜条件にて平滑なシート上にIZO膜を成膜し、その成膜したIZO膜の抵抗値を測定したときの値である。
【0227】
図42A、図42Bから以下のことがわかる。
平均膜厚が厚くなるほど、450nmより短波長側の反射率、および透過率が低下する傾向がる。
【0228】
<2.構造体と光学特性および表面抵抗との関係>、および<3.透明導電膜の厚みと光学特性および表面抵抗との関係>の評価結果を総合すると、以下のことがわかる。
長波長側の光学特性は、構造体上に透明導電膜を成膜する前後でほとんど変化しないのに対して、短波長側の光学特性は変化する傾向がる。
構造体を高アスペクトな形状とすると、光学特性は良好であるが、表面抵抗が大きくなる傾向がる。
透明導電膜の厚さが厚くなると、短波長側の反射率が増加する傾向がある。
表面抵抗と光学特性とがトレードオフの関係にある。
【0229】
<4.他方式の低反射導電膜との比較>
(実施例11)
実施例5と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0230】
(実施例12)
IZO膜の平均膜厚を30nmにする以外は実施例6と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0231】
(比較例7)
スパッタリング法により、平均膜厚30nmのIZO膜を、平滑なアクリルシートの表面上に形成し、導電性光学シートを作製した。
【0232】
(比較例8)
PVD法にてフィルム上に順次N=2.0前後の光学膜を形成しその上に1.5前後の光学膜を形成しさらにその上に導電膜を形成した。
【0233】
(比較例9)
PVD法にてフィルム上に順次N=2.0前後の光学膜とN=1.5前後の光学膜を4層積層しそのうえに導電膜を形成した。
【0234】
(形状の評価)
光学シートの表面形状を、IZO膜を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察した。そして、AFMの断面プロファイルから各実施例の構造体の高さなどを求めた。その結果を表4に示す。
【0235】
(反射率/透過率の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの透過率を日本分光の評価装置(V−550)を用いて評価した。その結果を図43に示す。
【0236】
【表4】

【0237】
図43から以下のことがわかる。
構造体上に透明導電膜を成膜した実施例11、12は、平滑なシート上に透明導電膜を成膜した比較例7に比して、400nm〜800nmの波長帯域において優れた透過特性を有している。
多層膜を積層した比較例8、9は、波長500nm程度までは優れた透過特性を示す。しかしながら、400nm〜800nmの波長帯域全体では、構造体上に透明導電膜を成膜した実施例11、12が、多層膜を積層した比較例8、9よりも優れている。
【0238】
<5.構造体と光学特性との関係>
(実施例13)
1トラック毎に極性反転フォマッター信号の周波数と、ロールの回転数と、送りピッチとを調整し、レジスト層をパターニングすることにより、六方格子パターンをレジスト層に記録した。平均膜厚20nmのIZO膜を構造体上に形成した。これ以外のことは、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0239】
(実施例14)
1トラック毎に極性反転フォマッター信号の周波数と、ロールの回転数と、送りピッチとを調整し、レジスト層をパターニングすることにより、六方格子パターンをレジスト層に記録した。これ以外のことは、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0240】
(形状の評価)
光学シートの表面形状を、IZO膜を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察した。そして、AFMの断面プロファイルから各実施例の構造体の高さなどを求めた。その結果を表5に示す。
【0241】
(表面抵抗の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの表面抵抗を4端子法(JIS K 7194)にて測定した。その結果を表5に示す。
【0242】
(反射率/透過率の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの反射率、および透過率を日本分光の評価装置(V−550)を用いて評価した。その結果を図44A、図44Bに示す。
【0243】
【表5】

【0244】
図44A、図44Bから以下のことがわかる。
アスペクト比を低くすることにより、450nmより短波長側における光学特性の低下を改善することができる。透過特性がより改善していることから、吸収特性が改善していると推定される。
【0245】
<6.透明導電膜の形状と光学特性との関係>
(実施例15)
IZO膜の平均膜厚を30nmにする以外は実施例14と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0246】
(比較例10)
IZO膜の成膜を省略する以外は実施例15と同様にして光学シートを作製した。
【0247】
(実施例16)
IZO膜の平均膜厚を20nmにする以外は実施例12と同様にして導電性光学シートを作製した。
【0248】
(比較例11)
IZO膜の成膜を省略する以外は実施例16と同様にして光学シートを作製した。
【0249】
(実施例17)
実施例4と凹凸関係を逆にした。IZO膜の平均膜厚を30nmにして導電性光学シートを作製した。これ以外のことは実施例4と同様にして、凹形状を有する複数の構造体(逆パターンの構造体)が表面に形成された導電性光学シートを作製した。
【0250】
(比較例12)
IZO膜の成膜を省略する以外は実施例17と同様にして光学シートを作製した。
【0251】
(実施例18)
構造体の断面プロファイルの曲線変化率に変化をもたせた構造体上に平均膜厚30nmのIZO膜を形成した光学シートを作製した。
【0252】
(比較例13)
IZO膜の成膜を省略する以外は実施例18と同様にして光学シートを作製した。
【0253】
(形状の評価)
光学シートの表面形状を、IZO膜を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により観察した。そして、AFMの断面プロファイルから各実施例の構造体の高さなどを求めた。その結果を表6に示す。
【0254】
(表面抵抗の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの表面抵抗を4端子法(JIS K 7194)にて測定した。その結果を表6に示す。
【0255】
(透明導電膜の評価)
構造体上に形成した導電膜の断面方向に切断し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて構造体とそれに付着した導電膜の像を観察する。
【0256】
(反射率の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの反射率を日本分光の評価装置(V−550)を用いて評価した。その結果を図45A〜図46Bに示す。
【0257】
【表6】

【0258】
透明導電膜の形状評価、および反射率の評価から以下のことがわかる。
実施例15では、構造体の先端部の平均膜厚D1、構造体の斜面の平均膜厚D2、および構造体間のボトム部D3の平均膜厚は、以下のような関係になっていることがわかった。
D1(=38nm)>D3(=21nm)>D2(=14nm〜17nm)
IZOは屈折率が2.0程度であるため、構造体の先端部だけ実行屈折率が上昇する。このため、図45Aに示すように、IZO膜の成膜により反射率が上昇する。
実施例16では、構造体にほぼ均一に成膜されていることがわかった。このため、図45Bに示すように、成膜前後の反射率変化も少なくなっている。
実施例16では、凹形状の構造体のボトム部と、凹形状の構造体間のトップ部とにIZO膜の平均膜厚が、他の部分の平均膜厚に比して非常に厚くなっていることがわかった。特に、トップ部において平均膜厚が著しく厚くなっていることがわかった。このような成膜状態であるため、図46Aに示すように、反射率変化も複雑な挙動を示し、かつ上昇する傾向がある。
実施例17では、実施例15と同様に、構造体の先端部の平均膜厚D1、構造体の斜面の平均膜厚D2、および構造体間のボトム部D3の平均膜厚は、以下のような関係になっていることがわかった。
D1(=36nm)>D2(=20nm)>D3(=18nm)
しかしながら、500nm程度より短波長側において、反射率が急激に増加する傾向がる。これは、構造体の先端部の平面状となっており、先端部の面積が大きくなっているためと考えられる。
【0259】
以上により、急峻な斜面には透明導電膜は薄く付着し、フラットな面に近いほど透明導電膜が厚く付着する傾向がある。
また、構造体全体に均一に成膜されていると、成膜前後の光学特性変化が小さくなる傾向がある。
また、構造体の形状が自由曲面に近いほど、透明導電膜が構造体全体に均一に付着する傾向がある。
【0260】
<7.充填率、および径の比率と反射特性との関係>
次に、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)シミュレーションにより、比率((2r/P1)×100)と反射防止特性との関係について検討を行った。
【0261】
(試験例1)
図47Aは、構造体を六方格子状に配列したときの充填率を説明するための図である。図47Aに示すにように、構造体を六方格子状に配列した場合において、比率((2r/P1)×100)(但し、P1:同一トラック内における構造体の配置ピッチ、r:構造体底面の半径)を変化させたときの充填率を以下の式(2)により求めた。
充填率=(S(hex.)/S(unit))×100 ・・・(2)
単位格子面積:S(unit)=2r×(2√3)r
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(hex.)=2×πr2
(但し、2r>P1のときは作図上から求める。)
【0262】
例えば、配置ピッチP1=2、構造体底面の半径r=1とした場合、S(unit)、S(hex.)、比率((2r/P1)×100)、充填率は以下に示す値となる。
S(unit)=6.9282
S(hex.)=6.28319
(2r/P1)×100=100.0%
充填率=(S(hex.)/S(unit))×100=90.7%
【0263】
表7に、上述の式(2)により求めた充填率と比率((2r/P1)×100)との関係を示す。
【表7】

【0264】
(試験例2)
図47Bは、構造体を四方格子状に配列したときの充填率を説明するための図である。図47Bに示すにように、構造体を四方格子状に配列した場合において、比率((2r/P1)×100)、比率((2r/P2)×100)、(但し、P1:同一トラック内における構造体の配置ピッチ、P2:トラックに対して45度方向の配置ピッチ、r:構造体底面の半径)を変化させたときの充填率を以下の式(3)により求めた。
充填率=(S(tetra)/S(unit))×100 ・・・(3)
単位格子面積:S(unit)=2r×2r
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(tetra)=πr2
(但し、2r>P1のときは作図上から求める。)
【0265】
例えば、配置ピッチP2=2、構造体底面の半径r=1とした場合、S(unit)、S(tetra)、比率((2r/P1)×100)、比率((2r/P2)×100)、充填率は以下に示す値となる。
S(unit)=4
S(tetra)=3.14159
(2r/P1)×100=70.7%
(2r/P2)×100=100.0%
充填率=(S(tetra)/S(unit))×100=78.5%
【0266】
表8に、上述の式(3)により求めた充填率と、比率((2r/P1)×100)、比率((2r/P2)×100)との関係を示す。
また、四方格子の配置ピッチP1とP2との関係はP1=√2×P2となる。
【表8】

【0267】
(試験例3)
配置ピッチP1に対する構造体底面の直径2rの比率((2r/P1)×100)を80%、85%、90%、95%、99%の大きさにして、以下の条件で反射率をシミュレーションにより求めた。その結果のグラフを図48に示す。
構造体形状:釣鐘型
偏光:無偏光
屈折率:1.48
配置ピッチP1:320nm
構造体の高さ:415nm
アスペクト比:1.30
構造体の配列:六方格子
【0268】
図48から、比率((2r/P1)×100)が85%以上あれば、およそ可視域の波長域(0.4〜0.7μm)において、平均反射率RがR<0.5%となり、十分な反射防止効果が得られる。このとき底面の充填率は65%以上である。また、比率((2r/P1)×100)が90%以上あれば、可視域の波長域において平均反射率RがR<0.3%となり、より高性能な反射防止効果が得られる。このとき底面の充填率は73%以上であり、上限を100%として充填率が高いほど性能が良くなる。構造体同士が重なり合う場合は、構造体高さは一番低い位置からの高さを考えることとする。また、四方格子においても、充填率と反射率の傾向は同様であることを確認した。
【0269】
<8.導電性光学シートを用いたタッチパネルの光学特性>
(比較例14)
図49Aは、比較例14の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図49Bは、比較例14の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。なお、図49B中の矢印は、タッチパネルに入射する入射光、および界面にて反射された反射光を示している。なお、以下に示す比較例15、16、実施例19〜22の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図でも、図中の矢印は同様のものを示している。
【0270】
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム102の一主面に、厚さ26nmのITO膜103をスパッタリング法により成膜することにより、タッチ側となる第1の導電性基材101を作製した。次に、ガラス基板112の一主面に、厚さ26nmのITO膜113をスパッタリング法により成膜することにより、表示装置側となる第2の導電性基材111を作製した。次に、第1の導電性基材101と第2の導電性基材111とを互いのITO膜同士が対向するとともに、両基材間に空気層が形成されるように配置し、両基材の周縁部を粘着テープ121により貼り合わせた。これにより、抵抗膜式タッチパネル100が得られた。
【0271】
(反射率/透過率の評価)
上述のようにして得られた抵抗膜式タッチパネル100の反射率を、JIS Z8722に準拠して測定した。また、液晶表示装置54に貼り合わされた抵抗膜式タッチパネル100の透過率を、JIS K7105に準拠して測定した。
【0272】
(視認性の評価)
上述のようにして得られた抵抗膜式タッチパネル100の視認性を以下のようにして評価した。標準蛍光灯下に配置し、蛍光灯の写り込みを目視にて確認し、視認性を以下の基準に従って評価した。
×:蛍光灯の輪郭が明確にみえる
△:蛍光灯の輪郭がややぼやける
○:蛍光灯の輪郭がわかりにくく、反射光が明らかに弱い
◎:蛍光灯の輪郭がわからなく、ぼやけた光が反射する程度である
【0273】
(比較例15)
図50Aは、比較例15の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図50Bは、比較例15の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【0274】
第2の導電性基材111として、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム114の一主面に、厚さ26nmのITO膜113を成膜したものを用いる以外は、比較例1と同様にして抵抗膜式タッチパネル100を得た。次に、比較例14と同様にして、反射率/透過率の評価、および視認性の評価を行った。
【0275】
(比較例16)
図51Aは、比較例16の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図51Bは、比較例16の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【0276】
まず、λ/4位相差フィルム104の一主面に、厚さ26nmのITO膜103をスパッタリング法により成膜することにより、タッチ側となる第1の導電性基材101を作製した。次に、λ/4位相差フィルム115の一主面に、厚さ26nmのITO膜113をスパッタリング法により成膜することにより、表示装置側となる第2の導電性基材111を作製した。次に、第1の導電性基材101と第2の導電性基材111とを互いのITO膜同士が対向するとともに、両基材間に空気層が形成されるように配置し、両基材の周縁部を粘着テープ121により貼り合わせた。
【0277】
次に、一主面にAR(Anti-reflection)層132が形成された偏光子131を準備し、この偏光子131を、粘着テープ124を介して第1の導電性基材101のタッチ面側に対して貼り合わせた。この際、偏光子131と、液晶表示装置54の表示面側に備えられた偏光子との透過軸が平行の関係となるように、偏光子131の位置を調整した。これにより、抵抗膜式タッチパネル100が得られた。次に、比較例14と同様にして、反射率/透過率の評価、および視認性の評価を行った。
【0278】
(実施例19)
図52Aは、実施例19の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図52Bは、実施例19の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【0279】
以下の構成を有する複数の構造体3が形成されるように、露光およびエッチングの条件を調整する以外は実施例1と同様にして光学シート2を得た。但し、基体なるフィルムとしては、PETフィルムを用いた。
配置パターン:六方格子
構造体の凹凸:凸形状
構造体の形成面:片面
ピッチP1:270nm
ピッチP2:270nm
高さ:160nm
なお、構造体3のピッチ、高さ、およびアスペクト比は、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)による観察結果から得たものである。
【0280】
次に、複数の構造体3が形成された光学シート2の一主面に、平均膜厚26nmのITO膜4をスパッタリング法により成膜することにより、第1の導電性基材51を作製した。次に、PETフィルムを用いる以外は第1の導電性基材51を作製したのと同様にして、第2の導電性基材52を作製した。次に、第1の導電性基材51と第2の導電性基材52とを互いのITO膜同士が対向するとともに、両基材間に空気層が形成されるように配置し、両基材の周縁部を粘着テープ55により貼り合わせた。これにより、抵抗膜式タッチパネル50が得られた。次に、比較例14と同様にして、反射率/透過率の評価、および視認性の評価を行った。
【0281】
(実施例20)
図53Aは、実施例20の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図53Bは、実施例20の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【0282】
まず、実施例19と同様にして、複数の構造体が一主面に配列された光学シート51を形成した。次に、複数の構造体を一主面に形成したのと同様にして、光学シート51の他主面にも複数の構造体3を形成した。これにより、複数の構造体3が両主面に配列された光学シート2が作製された。この光学シート2を用いて第1の導電性基材51を作製する以外は実施例19と同様にして抵抗膜式タッチパネル50を得た。次に、比較例14と同様にして、反射率/透過率の評価、および視認性の評価を行った。
【0283】
(実施例21)
図54Aは、実施例21の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図54Bは、実施例21の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【0284】
まず、λ/4位相差フィルム2の一主面に、厚さ26μmのITO膜4をスパッタリング法により成膜することにより、タッチ側となる第1の導電性基材51を作製した。次に、基体となるフィルムとして、λ/4位相差フィルム2を用いる以外は実施例19と同様にして、第2の導電性基材52を得た。次に、第1の導電性基材51と第2の導電性基材52とを互いのITO膜同士が対向するとともに、両基材間に空気層が形成されるように配置し、両基材の周縁部を粘着テープ55により貼り合わせた。次に、第1の導電性基材51のタッチ側の面に、粘着テープ60を介して偏光子58を貼り合わせた後、この偏光子58上にトッププレート(前面部材)59を粘着テープ61を介して貼り合わせた。次に、第2の導電性基材52にガラス基板56を粘着テープ57を介して貼り合わせた。これにより、抵抗膜式タッチパネル50が得られた。次に、比較例14と同様にして、反射率/透過率の評価、および視認性の評価を行った。
【0285】
(実施例22)
図55Aは、実施例22の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す斜視図である。図55Bは、実施例22の抵抗膜式タッチパネルの構成を示す断面図である。
【0286】
第1の導電性基材51、および第2の導電性基材52の2つの対向面のうち、第2の導電基材52の対向面にのみ複数の構造体3を形成する以外は、実施例19と同様にして抵抗膜式タッチパネル50を得た。次に、この抵抗膜式タッチパネル50のタッチ側となる面に、トッププレート(前面部材)59を粘着テープ60を介して貼り合わせた。次に、第2の導電性基材52にガラス基板56を粘着テープ57を介して貼り合わせた。次に、比較例14と同様にして、反射率/透過率の評価、および視認性の評価を行った。
【0287】
表9に、比較例14〜16、実施例19〜22のタッチパネルの評価結果を示す。
【表9】

但し、表9に記載された反射率、および透過率は、波長380nm〜780nmの全波長測定後、太陽光換算に補正した透過率、視感反射率換算におけるものである。
【0288】
表9から以下のことがわかる。
第1および第2の導電性基材51、52の対向面に複数の構造体3を形成した実施例19は、このようなモスアイ構造体3を対向面に形成していない比較例14、15に比して、反射率を大幅に低減でき、かつ、透過率を大幅に向上できる。
タッチ側となる第1の導電性基材51の両主面に複数の構造体3を形成した実施例20は、タッチ側となる面に偏光子131、およびAR層132を積層した比較例16のように透過率の大幅な低下を招くことなく、反射率を低減できる。
第1の導電性基材51のタッチ側となる面に偏光子58を配置した実施例21は、第1の導電性基材51のタッチ側となる面に偏光子58を配置していない実施例22に比して、反射率を低減することができる。
【0289】
図56は、実施例19、20、および比較例15の抵抗膜式タッチパネルの反射特性を示すグラフである。図56から、以下のことがわかる。
第1および第2の導電性基材51、52の対向面に複数の構造体3を形成した実施例19、20は、このようなモスアイ構造体3を対向面に形成していない比較例15に比して、波長帯域380nm〜780nmの範囲において反射率を低減できる。
具体的には、実施例19、20は、人間の視感度が最も高い波長550nmにおいて反射率6%以下の低反射特性を実現できているのに対して、比較例15は、波長550nmにおいて反射率15%程度の低反射特性しか得られていない。
実施例19、20は、比較例15に比して波長依存性が小さい。特に、タッチ側となる第1の導電性基材51の両主面に複数の構造体3を形成した実施例20は、波長依存性が小さく、波長帯域380nm〜780nmの範囲においてほぼフラットな反射特性を得ることができる。
【0290】
<9.モスアイ構造体による密着性向上>
(実施例23)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、下記構成の構造体を六方格子状に配列する以外は、実施例1と同様にして導電性光学シートを作製した。
高さH:240nm
配置ピッチP:220nm
アスペクト比(H/P):1.09
【0291】
(実施例24)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、下記構成の構造体を六方格子状に配列する以外は、実施例1と同様にして導電性光学シートを作製した。
高さH:170nm
配置ピッチP:270nm
アスペクト比(H/P):0.63
【0292】
(比較例17)
PETフィルム上にハードコート層、ITO膜を順次積層することにより、導電性光学シートを作製した。
【0293】
(比較例18)
PETフィルム上にフィラー含有ハードコート層、ITO膜を順次積層することにより、導電性光学シートを作製した。
【0294】
(密着性の評価)
上述のようにして作製した導電性光学シートの電極面上に銀ペーストを塗布した後、130℃の環境下で30分間焼成した。次に、碁盤目テープ剥離テストを行った。テープとしては、密着性が高いポリイミドテープを用いた。その結果を表10に示す。
【表10】

【0295】
表10から、密着性、および透過特性について以下のことがわかる。
実施例23、24では、テープ剥離後のはがれはないことがわかる。これに対して、比較例17では、5〜6マス程度はがれがあり、比較例18では、18〜24程度のはがれがある。
実施例23、24では、95〜96%の高透過率が得られているのに対して、比較例17、18では、87〜90%の透過率が得られるにすぎないことがわかる。
【0296】
以上により、基材となるフィルム表面全体にモスアイ構造体を形成することで、導電性ペーストなどの配線材との密着性に優れ、かつ高透過率を有する透明導電性フィルムを実現することができる。また、モスアイ構造体の形成により、粘着ペーストなどの粘着剤、絶縁ペーストなどの絶縁材、およびドットスペーサなどとの密着性の向上も期待できる。
【0297】
以上、本発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0298】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、形状、材料および構成などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値、形状、材料および構成などを用いてもよい。
【0299】
また、上述の実施形態の各構成は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0300】
また、上述の実施形態において、光学素子1が、構造体3が形成された側の凹凸面上に、低屈折率層をさらに備えるようにしてもよい。低屈折率層は、基体2、構造体3、および突出部5を構成する材料より低い屈折率を有する材料を主成分としていることが好ましい。このような低屈折率層の材料としては、例えばフッ素系樹脂などの有機系材料、またはLiF、MgF2などの無機系の低屈折率材料が挙げられる。
【0301】
また、上述の実施形態において、熱転写により光学素子を作製するようにしてもよい。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする基体を加熱し、この加熱により十分に柔らかくなった基体に対して、ロールマスタ11やディスクマスタ41などの判子(モールド)を押し当てることにより、光学素子1を作製する方法を用いるようにしてもよい。
【0302】
上述の実施形態では、抵抗膜式のタッチパネルに対して本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、静電容量式、超音波式、または光学式のタッチパネルなどに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0303】
1 光学素子
2 基体
3 構造体
4 突出部
11 ロールマスタ
12 基体
13 構造体
14 レジスト層
15 レーザー光
16 潜像
21 レーザー
22 電気光学変調器
23,31 ミラー
24 フォトダイオード
26 集光レンズ
27 音響光学変調器
28 コリメータレンズ
29 フォマッター
30 ドライバ
32 移動光学テーブル系
33 ビームエキスパンダ
34 対物レンズ
35 スピンドルモータ
36 ターンテーブル
37 制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を入力する入力面を有する第1の導電性基材と、
第2の導電性基材と
を備え、
上記第1の導電性基材、および上記第2の導電性基材の少なくとも一方が、
表面を有する基体と、
上記基体の表面に可視光の波長以下の微細ピッチで多数配置された、凸部または凹部からなる構造体と、
上記構造体上に形成された透明導電膜と
を備え、
上記構造体は、錐体形状を有し、
上記透明導電膜は、上記構造体に倣った表面を有するタッチパネル。
【請求項2】
上記第1の導電性基材の入力面側に、偏光子をさらに備える請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
上記第1の導電性基材、および上記第2の導電性基材の基体が、λ/4位相差フィルムである請求項1記載のタッチパネル。
【請求項4】
上記入力面上に形成された偏光子をさらに備える請求項3記載のタッチパネル。
【請求項5】
380nm〜780nmの波長帯域において、10%以下の反射率である請求項1記載のタッチパネル。
【請求項6】
550nmの波長において、6%以下の反射率である請求項1記載のタッチパネル。
【請求項7】
上記基材は、他の表面を有し、
上記基体の他の表面に可視光の波長以下の微細ピッチで多数配置された、凸部または凹部からなる構造体をさらに備える請求項1記載の導電性光学素子。
【請求項8】
上記第1の導電性基材、および上記第2の導電性基材が対向して配置されている請求項1記載のタッチパネル。
【請求項9】
上記透明導電膜は所定ピッチで配置された格子形状の透明電極である請求項1記載のタッチパネル。
【請求項10】
上記第1の導電性基材、および上記第2の導電性基材の周縁部間に形成された配線層、絶縁層、および貼合層の少なくとも1種を備え、
上記第1の導電性基材、および上記第2の導電層基材の周縁部の少なくとも一方には、可視光以下の微細ピッチで多数配置された、凸部または凹部からなる構造体がさらに形成されている請求項1記載のタッチパネル。
【請求項11】
表面を有する基体と、
上記基体の表面に可視光の波長以下の微細ピッチで多数配置された、凸部または凹部からなる構造体と、
上記構造体上に形成された透明導電膜と、
上記透明導電膜上に形成された保護層と
を備え、
上記構造体は、錐体形状を有し、
上記透明導電膜は、上記構造体に倣った表面を有するタッチパネル。
【請求項12】
請求項1記載のタッチパネルが、抵抗膜方式であるタッチパネル。
【請求項13】
請求項1または11記載のタッチパネルが、静電容量方式であるタッチパネル。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のタッチパネルを備える情報入力装置。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のタッチパネルを備える表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【公開番号】特開2011−154674(P2011−154674A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216158(P2010−216158)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【分割の表示】特願2010−104619(P2010−104619)の分割
【原出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】