説明

タッチパネル及びそれを備えた表示装置

【課題】複数点のタッチ入力が行われた場合に、実際のタッチ入力を正しく判別することか可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】タッチパネルは、演算回路10により複数点のタッチ入力が検出された場合には、当該検出時に検出用配線2,3に付与した第1電圧と異なる第2電圧を検出用配線2,3に付与して、容量検出回路6により前記静電容量を再検出する。そして、タッチパネルは、上記検出された静電容量に基づいて、複数点のそれぞれにおけるタッチ入力の有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影型静電容量方式のタッチパネル及びそれを備えた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザの指などによるタッチをタッチスクリーンで検出して、そのタッチ位置を示す位置座標を特定するタッチパネルが、優れたユーザインターフェース手段として知られている。
【0003】
従来、タッチパネルでのユーザによる意思表現は、1点のタッチ入力によって行われることが主流であったが、近年、同時の複数点のタッチ入力によって行われるようになってきている。そのため、より複雑なマンマシンインターフェースシステムが要求されており、複数点のタッチ入力を同時に検出可能なタッチパネルの技術開発が活発に行われている。
【0004】
さて、タッチ位置の検出方式としては、静電容量方式などが知られている。この静電容量方式の一つである投影型静電容量方式においては、タッチスクリーン内に設けられたタッチセンサに対し人の指が持つ静電容量が与える僅かな変化を検出回路で検出し、その検出結果に基づいてタッチスクリーン上のタッチ位置(位置座標)を算出する。この静電容量方式では、タッチセンサが内蔵されるタッチスクリーンが、その前面側を数mm厚程度のガラス板等の保護板で覆われた場合であってもタッチ位置が検出可能であり、堅牢性に優れている。また、この方式では手袋装着時でもタッチ位置の検出が可能である点や、可動部がないため長寿命である点なども利点として有している。
【0005】
このような投影型静電容量方式には、タッチセンサの静電容量を直接測定する自己容量方式と呼ばれる測定(検出)方法と、タッチセンサ内の一方の電極から信号を印加し他方の電極に伝達された電荷量を測定し、当該電荷量に基づいて静電容量を測定する相互容量方式と呼ばれる測定(検出)方法がある。
【0006】
自己容量方式は、相互容量方式よりも、1つのタッチ位置を計算するための検出動作回数が少なく、また一般的に消費電力が少ないなどのメリットがあることから、多くの装置に採用されている。しかし、下記非特許文献に記載されているように、自己容量方式には、ユーザにより同時に複数点のタッチ入力された場合に、実際にタッチされた位置だけでなく、タッチされていない位置もタッチ位置として誤認識してしまう現象、いわゆるゴースト現象が生じるという課題がある。そこで、自己容量方式では、2点のタッチ入力時の相対距離の変化を利用してゴースト現象の影響を抑制可能なジェスチャー認識が、一般的に使用されている。
【0007】
一方、クロスポイント走査型の相互容量方式では、自己容量方式で生じるゴースト現象の対策が可能である。しかしながら、この方式は、自己容量方式と比較して、一般的に1点の位置座標を計算するための検出動作回数が多く、また多くのメモリを必要するなど大規模なハードウェア装置を必要とするデメリットがある。
【0008】
そこで、双方の欠点を抑制するとともに費用対効果を高める手段として、自己容量方式とクロスポイント走査型の相互容量方式とを組合せる方法が、下記特許文献に開示されている。この方式では、必要な箇所においてのみクロスポイント走査を行うため、クロスポイント走査点数が大幅に削減でき、メモリを削減できるという効果を有している。しかし、自己容量方式とクロスポイント走査型の相互容量方式の両方が可能な検出回路が複数必要であり、複雑なハードウェアが必要である。また、人の指などの指示体と検出配線との間で結合されて生じる静電容量(以下「結合容量」と記すこともある)を検出する際に、隣接する検出配線がGND(グランド)に固定されており、検出配線と隣接検出配線との間の結合容量が大きくなる。その結果、指示体と検出配線との間の結合容量が少なくなり、タッチパネルの感度が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−140465号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「モバイルLCD搭載タッチパネル技術」、月刊ディスプレイ10年4月号、p.35−41。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
さて、上述したように、投影型静電容量方式タッチパネルでは、上述のタッチセンサに対し人の指が持つ静電容量が与える僅かな変化を検出回路で検出し、その検出結果に基づいてタッチスクリーン上のタッチ位置(位置座標)を算出する。
【0012】
この際に、人の指とタッチセンサとの間に形成される静電容量は、0.5〜2pF程度と非常に僅かであり、その大きさは、タッチスクリーン内に設けられたタッチセンサの形状や、タッチ面となる保護板及び保護板とタッチセンサ基板との間の部材の材質(誘電率)や厚さ、人の指とタッチセンサとの間及びその周辺の電界状態によって決まる。
【0013】
その一方で、タッチパネルにおいては、機器の堅牢性を上げるために保護板の厚さを厚くすることが求められている。しかしながら、このように厚くした場合には、保護板とタッチセンサ基板との間の結合容量が小さくなり、その結果、タッチ入力に伴う静電容量の変化は小さくなるという問題がある。
【0014】
また、投影型静電容量方式タッチパネルでは僅かな静電容量の変化が検出されるが、この静電容量はタッチセンサ周辺からの様々なノイズ(例えば、表示デバイスから受けるノイズや周辺機器、電源回路のスイッチングノイズ、インターフェース信号からのノイズ)に敏感である。一般的に、投影型静電容量方式タッチパネルのタッチセンサにおける静電容量の変化をシグナル(S)、タッチセンサのノイズをノイズ(N)とした場合、S/N比が高い程、タッチパネルの性能は良くなる。例えば、タッチを認識する感度、位置座標の直線性やタッチ認識の安定性(サンプリングごとのタッチ位置座標のバラツキ量やドラッグ操作時の検出安定性など)、タッチ入力の反応速度や検出速度といった、投影型静電容量方式における基本性能に、S/N比は大きな影響を与える。投影型静電容量方式タッチパネルにおいても、S/N比を上げることはタッチパネルの基本性能、マンマシンインターフェース機器の安定性や堅牢性、ユーザの操作感などを向上させることにつながる。
【0015】
また、子供の指や女性の小指などは小さいため、それらの指によりタッチされるタッチ面積は小さく、その際のシグナル値も小さくなることから、相対的にS/N比が悪化する。また、一般に位置座標は複数のタッチセンサのシグナル値に基づいて算出されるため、S/N比が悪化すると、タッチを認識する率が低下するだけでなく、算出に使用されるセンサ値の誤差が大きくなり、位置座標の検出誤差も大きくなる。そして、測定サンプリングごとのS/N比の変化も大きくなり位置座標バラツキの原因にもなる。
【0016】
以上のことから、投影型静電容量方式タッチパネルにおいては、S/N比を高めることが求められている。
【0017】
そこで、S/N比を高めるためのノイズ量抑制手段として、平均化などの各種ノイズフィルタ処理を施す方法が考えられるが、この方法では、タッチ入力が行われてから位置座標を出力するまでの時間が長くなるため、タッチ入力の反応速度や検出速度を低下させてしまうことになる。
【0018】
つまり、S/N比を上げるためにはノイズレベルを低減することだけでなく、よりシグナル値を大きくするように、指とタッチセンサとの間に形成される静電容量の検出感度を高めることが求められている。
【0019】
また、上述したように、自己容量方式のタッチパネルは、ハードウェアの簡素化の観点からが好ましいが、上述のゴースト現象が問題となっていた。
【0020】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、複数点のタッチ入力が行われた場合に、実際のタッチ入力を正しく判別することか可能な技術、好ましくは、静電容量の検出感度を高めることも可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るタッチパネルは、互いに交差する複数の検出用配線を有するタッチスクリーンと、検出ノードと接続された検出対象の前記検出用配線の静電容量を検出する静電容量検出回路と、前記静電容量検出回路で検出された前記静電容量に基づいて、前記タッチスクリーン上での指示体によるタッチ入力を検出し、その位置座標を算出する位置座標算出回路とを備える。前記タッチパネルは、(a)前記位置座標算出回路により複数点の前記タッチ入力が検出された場合には、当該検出時に前記検出用配線に付与した第1電圧と異なる第2電圧を前記検出用配線に付与して、前記静電容量検出回路により前記静電容量を再検出する。前記タッチパネルは、(b)前記(a)で検出された前記静電容量に基づいて、前記複数点のそれぞれにおける前記タッチ入力の有無を判別する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、互いに異なる第1及び第2電圧を検出用配線に付与し、そのそれぞれについて、検出用配線の静電容量を検出する。指示体のタッチ入力の有無に応じて、当該静電容量に変化が生じることから、複数点のタッチ入力が行われた場合に、当該タッチ入力を正しく判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1に係る表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】タッチスクリーンの斜視図である。
【図3】タッチスクリーンがタッチされたときの様子を示す図である。
【図4】タッチスクリーンがタッチされたときの様子を示す断面図である。
【図5】タッチ容量値の実測例を示す図である。
【図6】タッチパネルの回路構成を示す図である。
【図7】スイッチ回路及びその周辺の構成を示す図である。
【図8】スイッチ回路及びその周辺の構成を示す図である。
【図9】スイッチ回路及びその周辺の構成を示す図である。
【図10】実施の形態1に係るタッチパネルの動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態1に係るタッチパネルの動作を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態1に係るタッチパネルの動作を示す図である。
【図13】実施の形態1に係るタッチパネルの動作を示す図である。
【図14】実施の形態1に係るタッチパネルの動作を示す図である。
【図15】実施の形態1に係るタッチパネルの動作を示す図である。
【図16】実施の形態1に係るタッチパネルの動作を示す図である。
【図17】実施の形態2に係るタッチパネルの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るタッチパネル及びそれを備えた表示装置の全体構成を示す図である。この表示装置は、タッチパネルと、当該タッチパネルとGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)機器を構成する表示デバイス20(ここでは液晶パネル)とを備えている。
【0025】
本実施の形態に係るタッチパネルは、タッチスクリーン1と、タッチコントローラ18と、それらを電気的に接続するFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続基板19とを備えている。このタッチパネルは、自己容量方式のタッチパネルであり、タッチスクリーン1と指(指示体)との間に結合されて生じる静電容量(結合容量)を検出し、当該静電容量(結合容量)に基づいて指(指示体)によりタッチ入力されたタッチスクリーン1上の位置を、位置座標として算出する。
【0026】
タッチコントローラ18は、基板と、当該基板に搭載された検出処理回路とを備えている。当該検出処理回路は、タッチスクリーン1と指(指示体)との間の結合容量に基づいて、タッチスクリーン1における指13のタッチ入力を検出するとともに、その位置座標の算出処理を行う。そして、この検出処理回路は、その算出結果である検出座標データを外部装置(コンピュータなど)に出力する。
【0027】
なお、他の実施の形態にて説明される図面も含めて、以下の各図面において同一の符号が付された構成要素は、互いに同一または対応しているものとする。
【0028】
図2は、タッチスクリーン1の斜視図である。以下、この図2を用いてタッチスクリーン1の構成について説明する。
【0029】
タッチスクリーン1は、互いに異なる二方向(ここでは行列方向)に延設されて互いに交差する複数の検出用配線2,3を有している。具体的には、タッチスクリーン1は、ベース基板11と、列方向に延在する複数の検出用列配線2と、行方向に延在する複数の検出用行配線3と、絶縁層12と、保護層14とを備えている。絶縁層12は、複数の検出用列配線2及び複数の検出用行配線3を互いに電気的に絶縁し、保護層14は、複数の検出用行配線3及び絶縁層12を保護している。
【0030】
なお、図2には示していないが、タッチスクリーン1には、複数の検出用配線2,3と検出処理回路等とを互いに電気的に接続するための、引き出し配線、端子部、FPCによる接続を可能にする電気的接続手段を含んでいる。タッチスクリーン1の外形寸法は、検出用列配線2及び検出用行配線3が占める検出配線領域に、引き出し配線及び端子部が占める領域やクリアランスなどを含んだものとなる。
【0031】
さて、検出用配線2,3上に指13が存在する場合には、検出用配線2,3と指13との間に静電容量が生じる。検出用列配線2、検出用行配線3の配線幅は、指の大きさ、容量検出方式などによって決まるが、例えば、5〜10mm程度が好ましい。検出用列配線2、検出用行配線3の配線長、配線数は、タッチスクリーン1のサイズによって異なる。なお、本発明における作用、効果は、検出用配線2,3の本数には依存するものではない。
【0032】
次に、図2を参照して、タッチスクリーン1の層構成について説明する。タッチスクリーン1の上面層は、透明なガラス材料または透明な樹脂からなるベース基板11(透明基板)であり、当該ベース基板11の裏面上には、インジウム酸化スズ(ITO)等の透明配線材料からなる複数の検出用列配線2が並べられて形成される。その下には、検出用列配線2を被覆するように、SiN(窒化シリコン)、SiO2(酸化ケイ素)などの透明な絶縁層12が形成され、当該絶縁層12の裏面上に透明配線材料からなる検出用行配線3が並べられて形成される。さらに、その下には、絶縁層12及び検出用行配線3を被覆するように保護層14が積層される。
【0033】
なお、絶縁層12、保護層14の材質は、上述に限ったものではなく、空気層、アクリル等の透明粘着材などから構成されても構わない。また、ここでは、ベース基板11を指でタッチすることを前提としているが、ベース基板11の上にまたは保護層14の下に厚い保護板を配置し、その面をタッチすることを前提としても構わない。
【0034】
また、タッチスクリーン1の構成はこれに限ったものではなく、検出用列配線2と検出用行配線3との配設位置を上述の構成と逆の構成、つまり、ベース基板11の裏面上に検出用行配線3を形成し、絶縁層12の裏面に検出用列配線2を形成する構成であってもよい。また、検出用配線2,3は、ITO等の透明配線材料を用いた透明配線ではなく、アルミニウム等の非透明の金属配線材料を用いて構成してもよい。この場合には、各検出用配線2,3の配線幅を狭くし、検出用列配線2同士の間のスリット状開口部、及び、検出用行配線3同士のスリット状開口部のそれぞれの面積を大きく設定すれば、表示デバイス20の表示光に対する透過率を確保することができる。
【0035】
図3は、タッチスクリーン1のタッチ面側より見た時の検出用列配線2のパターンと、検出用行配線3のパターンと、タッチスクリーン1のタッチ面をタッチしている指13とを表した図である。この図3においては、それぞれの間で結合している静電容量が示されており、図4は、その断面図である。
【0036】
これらの図3,4において示される結合容量15は、互いに交差する検出用列配線2と検出用行配線3との間で結合して形成される静電容量である。結合容量16は、同一層において互いに隣接する検出用列配線2同士の間で結合して形成される静電容量、及び、同一層において互いに隣接する検出用行配線3同士の間で結合して形成される静電容量である。結合容量17は、指13と検出用列配線2との間で結合して形成される静電容量、及び、指13と検出用行配線3との間で結合して形成される静電容量であり、タッチパネルで感度よく検出されるべき静電容量である。
【0037】
なお、指13、検出用列配線2及び検出用行配線3のそれぞれには、タッチスクリーン1の保護層14や表示デバイス20の表示面やその内部の電極(例えば液晶パネルのカラーフィルタに構成される対向電極)などとの間で様々な寄生容量が存在するが、ここでは本発明を説明するために必要な容量のみを記載する。
【0038】
また、ここでは、図3に示されるように、菱形の検出用配線2,3が行及び列方向に並べられた一般的なレイアウトを有するタッチスクリーン1を前提にしている。しかし、静電容量を検出する対象となっている検出用配線2,3と、それ以外の検出用配線2,3と呼ぶ)との間の結合容量について、次の図5で説明する作用があれば、検出用配線2,3のパターンは、メッシュ状のパターンやそれ以外の配線形状(電極形状)であってもよい。なお、以下の説明において静電容量を検出する対象となっている検出用配線2,3を「検出対象の検出用配線2,3」と呼び、それ以外の検出用配線2,3を「非検出対象の検出用配線2,3」と呼ぶ。
【0039】
図5は、タッチ容量値の実測例をグラフ化したものである。ここで、タッチ容量値とは、タッチスクリーン1に指13によるタッチ(タッチ入力)が無い場合の静電容量値(以下「ベースライン値」と呼ぶ)と、タッチ入力がある場合の静電容量値との差分値に比例する値であり、後述の説明においては検出レベルと記載することもある。
【0040】
この図5に示される条件1のタッチ容量値は、検出対象の検出用配線2,3と、非検出対象の検出用配線2,3との電位差が比較的大きい条件下で実測されたタッチ容量値を示す。なお、この図5においては、1本の検出用列配線2を、検出対象の検出用配線とし、当該検出用列配線2と絶縁層12を介して交差する全ての検出用行配線3を、非検出対象の検出用配線としている。あるいは、1本の検出用行配線3を、検出対象の検出用配線とし、当該検出用行配線3と絶縁層12を介して交差する全ての検出用列配線2を、非検出対象の検出用配線としている。一般的には、静電容量検出回路における検出対象の検出用配線2,3の電圧と、GNDに接続された非検出対象の検出用配線2,3の電圧とは大きく異なることから、この条件1の状態は通常の回路で実現可能である。
【0041】
一方、条件2のタッチ容量値は、検出対象の検出用配線2,3と、非検出対象の検出用配線2,3との電位差が比較的小さい条件下で実測されたタッチ容量値を示す。この条件2を実現するために、ここでは、非検出対象の検出用配線2,3の電圧が、検出対象の検出用配線2,3の電圧とほぼ等しくなるように調整されている。検出対象の検出用配線2,3に付与される容量検出時の電圧波形を、低容量、高インピーダンスで受け、当該電圧との電位差が最小となる電圧を、伝播遅延が少なく、高速かつ低インピーダンスで、非検出対象の検出用配線2,3に出力する回路を設ければ、この条件2の状態は実現される。
【0042】
条件2においては、検出対象の検出用配線2,3と、非検出対象の検出用配線2,3との間に電界が発生しない。したがって、条件2によれば、条件1よりも、指13と検出対象の検出用配線2,3との間の結合容量17を大きくすることができ、当該結合容量17の検出感度を上げることができる。図5に示される実測例においても、条件2は、条件1よりも感度が約25%改善している。
【0043】
後述するように、本実施の形態に係るタッチパネルは、検出対象の検出用配線2,3に付与される電圧との電位差が小さい(好ましくは電位差がない)第1電圧を、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能な第1電圧付与部を備える。この第1電圧付与部の機能により、条件2の状態を実現でき、高感度なタッチパネルとすることが可能となっている。
【0044】
なお、検出対象の検出用配線2,3以外の少なくとも1つの検出用配線2,3に、この第1電圧を付与すれば、多少程度には差があるものの、上述と同様に結合容量17の感度を改善することができる。例えば、1つの検出用列配線2を、検出対象の検出用配線とした場合、それと交差する検出用行配線3ではなく、それ以外の検出用列配線2に第1電圧を付与する場合であっても、上述と同様に感度を改善することができる。
【0045】
また、後述するように、本実施の形態に係るタッチパネルは、上述の第1電圧付与部とは逆に、検出対象の検出用配線2,3に付与される電圧との電位差が大きい第2電圧を、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能な第2電圧付与部を備えている。この第2電圧付与部の機能により、ゴースト現象が生じることなく、実際に指13によりタッチ入力された各点の位置座標を検出することが可能となっている。このことについては後で詳細に説明する。
【0046】
図6は、本実施の形態に係るタッチパネルにおけるタッチ動作検出系の回路構成を示したものである。以下、この図6を用いて、当該構成について説明する。なお、上述したように本発明の効果は検出用配線2,3の本数に依存しないので、ここでは説明が簡単となるように比較的本数が少ない場合(ここではそれぞれ5本)を例にして説明する。つまり、5本の検出用列配線2(WX1〜WX5)と、5本の検出用行配線3(WY1〜WY5)とが設けられたタッチスクリーン1を例にして説明する。
【0047】
図6に示すように、本実施の形態に係るタッチパネルは、スイッチ回路Y4と、スイッチ回路X5と、静電容量検出回路(容量検出回路6)と、第1電圧付与部(ここではバッファ7)と、第2電圧付与部(ここではGND8)と、検出制御回路9と、演算回路10とを備えている。
【0048】
スイッチ回路Y4は、複数の検出用列配線2と接続されている。このスイッチ回路Y4は、検出制御回路9からの指示に基づいて、当該複数の検出用列配線2のなかから任意の検出用列配線2を、検出対象の検出用列配線2として選択し、当該検出対象の検出用列配線2を容量検出ノード(検出ノード)に接続する。容量検出回路6は、容量検出ノードに接続された検出対象の検出用列配線2の静電容量を検出する。なお、1回の容量検出動作を行うために容量検出ノードに接続される検出対象の検出用列配線2は通常1本であるが複数本であってもかまわない。
【0049】
図7は、スイッチ回路Y4の内部構成を示す図である。スイッチ回路Y4の構成を詳細に説明する前に、この周辺の構成要素について説明する。
【0050】
本実施の形態において第1電圧付与部であるバッファ7は、容量検出ノードの電圧との電位差が小さい第1電圧を、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能な回路であり、容量検出ノードの電圧をバッファリングして得られた電圧を第1電圧として、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能となっている。つまり、バッファ7は、容量検出ノードの電圧波形を低インピーダンスに変換して得られる信号(バッファ信号)を、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能となっている。なお、バッファ7としては、検出対象の検出用配線2,3と、非検出対象の検出用配線2,3との電位差が最小となるように作用し、高インピーダンスで低容量な入力回路を持ち、高スルーレートで高速の周波数特性を持ち、伝播遅延が少ないオペアンプ等の回路を使用することが望ましい。
【0051】
本実施の形態において第2電圧付与部であるGND8は、容量検出ノードの電圧との電位差が大きい第2電圧を、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能な回路であり、グランド電圧(GND電圧)を第2電圧として、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能となっている。なお、このように第2電圧付与部をGND8とする構成は、本発明の最も簡単な構成であるが、これに限ったものではない。例えば、図8に示されるように、第2電圧付与部は、低インピーダンスの電圧を前記第2電圧として、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能な直流電圧駆動回路8aであってもよい。また、例えば、図9に示されるように、第2電圧付与部は、容量検出ノードの電圧をバッファリングし、かつ極性反転させて得られた電圧を第2電圧として、非検出対象の検出用配線2,3に付与可能な回路8bであってもよい。いずれの構成であっても、本実施の形態に係るタッチパネルを、省スペース、低コストで実現することができる。
【0052】
さて、スイッチ回路Y4に説明を戻すと、このスイッチ回路Y4は、図7に示されるように、複数の検出用列配線2に対応する複数のスイッチを備える。各スイッチは、対応する検出用列配線2に、容量検出回路6と接続された容量検出ノード、バッファ7からの第1電圧を有する第1ノード、GND8からの第2電圧を有する第2ノードという3つのノードのうち1つのノードを接続する。このように構成されたスイッチ回路Y4は、検出対象の検出用列配線2と容量検出ノードとを接続することが可能であり、かつ、非検出対象の検出用列配線2と第1電圧を有する第1ノードまたは第2電圧を有する第2ノードとを接続することが可能である。
【0053】
スイッチ回路X5の構成は、スイッチ回路Y4と同様である。具体的には、スイッチ回路X5は、複数の検出用行配線3と接続されている。このスイッチ回路X5は、検出制御回路9からの指示に基づいて、当該複数の検出用行配線3のなかから任意の検出用行配線3を検出対象の検出用行配線3として選択し、当該検出対象の検出用行配線3を容量検出ノードに接続する。容量検出回路6は、容量検出ノードに接続された検出対象の検出用行配線3の静電容量を検出する。なお、1回の容量検出動作を行うために容量検出ノードに接続される検出対象の検出用行配線3は通常1本であるが複数本であってもかまわない。
【0054】
スイッチ回路X5の内部構成についても、スイッチ回路Y4と同様である。具体的には、スイッチ回路X5は複数の検出用行配線3に対応する複数のスイッチを備える。各スイッチは、対応する検出用行配線3に、容量検出回路6と接続された容量検出ノード、バッファ7からの第1電圧を有する第1ノード、GND8からの第2電圧を有する第2ノードという3つのノードのうち1つのノードを接続する。このように構成されたスイッチ回路X5は、検出対象の検出用行配線3と容量検出ノードとを接続することが可能であり、かつ、非検出対象の検出用行配線3と第1電圧を有する第1ノードまたは第2電圧を有する第2ノードとを接続することが可能である。
【0055】
以上のように、スイッチ回路Y4,X5は、検出対象の検出用配線2,3と容量検出ノードとを接続することが可能であり、かつ、非検出対象の検出用配線2,3と、第1電圧を有する第1ノード、または、第2電圧を有する第2ノードとを接続することが可能である。
【0056】
図6に戻って、容量検出回路6は、容量検出ノードと接続された検出対象の検出用配線2,3の静電容量を定期的に測定(検出)する。本実施の形態では、この静電容量には、寄生容量が多少含まれている。例えば、検出対象の検出用配線2,3における静電容量と、スイッチ回路Y4またはスイッチ回路X5とにおける静電容量との和が測定されるが、なるべく前者の静電容量のみが測定されるように構成されることが好ましい。
【0057】
容量検出回路6は、検出した静電容量を演算回路10に出力する。この容量検出回路6は、一般的には、容量検出ノードの電圧波形に高周波成分を含まない正弦波を使用した回路や弛張発振回路などでの構成が望ましいが、これに限ったものではなく、短時間で高精度に測定できれば方式は問わない。容量検出回路6は、測定した静電容量に比例したアナログ量を、演算回路10で演算しやすいデジタル量に変換し、それを演算回路10に出力する。
【0058】
検出制御回路9は、スイッチ回路Y4、スイッチ回路X5、容量検出回路6に接続されており、これらスイッチ回路Y4、スイッチ回路X5、容量検出回路6を制御する。本実施の形態では、検出制御回路9は、演算回路10からの出力信号に基づいて、スイッチ回路Y4,X5における検出対象及び非検出対象の検出用配線2,3の選択指示と、非検出対象の検出用配線2,3の接続先(バッファ7の第1電圧またはGND8の第2電圧)の選択指示と、容量検出回路6の検出タイミングの制御等を行う。
【0059】
位置座標算出回路である演算回路10は、容量検出回路6で測定された静電容量に基づいて、タッチスクリーン1上での指13(指示体)によるタッチ入力を検出し、その位置座標を算出する。本実施の形態では、この演算回路10には、容量検出回路6により測定された複数の検出用配線2,3の静電容量値(デジタル量)を受けており、以前に測定された静電容量値から、基準となる上述のベースライン値を算出する。そして、演算回路10は、当該ベースライン値と、直近に検出された静電容量値との差分値を算出する。演算回路10は、当該差分値と、タッチスクリーン1(つまり検出用配線2,3)上においてタッチ入力が有るか否か判定するためのタッチ閾値との比較を行い、その比較結果に基づいて、タッチ入力が有るか否かを判定する。そして、演算回路10は、タッチ入力が有ると判定された検出用列配線2及び検出用行配線3に基づいて、指13の位置座標を算出する。
【0060】
また、演算回路10は、定期的にベースライン値を更新するとともに、検出制御回路9の制御を行う。また、演算回路10は、指13の位置座標情報を、通信インターフェースを介して接続された上位の装置(図示せず)に送る制御なども行う。
【0061】
なお、検出制御回路9及び演算回路10は、安価で汎用的なマイクロコンピュータユニット(MCU)で構成することが可能である。
【0062】
図10及び図11は、位置座標を検出する際の本実施の形態に係るタッチパネルの一連の動作を示すフローチャートである。なお、図10に示されるステップS4に、図11に示されるステップS4a,S4bが対応し、図10に示されるステップS5に、図11に示されるステップS5a,S5bが対応している。
【0063】
図10に示されるように、本実施の形態に係る検出動作は、大きく分けて6ステップ(ステップS1〜S6)の動作で1回のスキャンを完了する。このタッチパネルは、通常、この6ステップの動作を繰り返し行うことで、任意の時間でのタッチ入力の検出が可能となっている。
【0064】
以下、図10及び図11等を用いて、タッチパネルの各ステップの動作を説明する。なお、説明に不要なベースラインの更新動作や座標送信などについては説明が煩雑になるため、その説明は省略する。
【0065】
まず、ステップS1にて、図5に示した高感度検出動作が、各検出用配線2,3に対して行われる。本実施の形態では、スイッチ回路Y4,X5により、検出対象の検出用配線2,3と容量検出ノードとが接続され、かつ、非検出対象の検出用配線2,3と第1ノードとが接続される。その状態で、タッチ入力を検出するための静電容量が、容量検出回路6により測定(検出)される。つまり、バッファ7からのバッファ信号を非検出対象の検出用配線2,3に付与することにより、検出対象の検出用配線2,3と、非検出対象の検出用配線2,3との間の電位差を最小にした状態で静電容量を測定する。この測定は図5に示した条件2での検出と同じとなることから、本実施の形態に係るタッチパネルは、ステップS1において、指13と検出対象の検出用配線2,3との間の結合容量を高感度で測定することが可能となっている。
【0066】
スイッチ回路Y4,X5は、全検出用配線2,3のなかから、検出対象の検出用配線2,3とすべき検出用配線2,3を順次切り替えていき、容量検出回路6は、その各々について上述の静電容量を測定する。演算回路10は、当該静電容量とベースラインとの差分値を、検出レベルとして取得する。上述した通り、この検出レベル(差分値)はタッチ容量値に比例する。
【0067】
図12は、1点のタッチ入力が行われたときの、タッチスクリーン1上の指13の位置と、ステップS1により得られる各検出用配線2,3の検出レベル(ただし比率のため単位はない)を示す棒グラフとを表す図である。以下の説明において、検出用列配線2(WY1〜WY5)での検出レベルを検出レベルLY1〜LY5とし、検出用行配線3(WX1〜WX5)での検出レベルをLX1〜LX5とする。なお、棒グラフが高いほど、検出レベル(つまりステップS1で検出された静電容量)が高いことを意味する。このことは、以降の図においても同様である。
【0068】
この図12に示されるように、検出用列配線2(WY2)及び検出用行配線3(WX2)のそれぞれの上に指13が実在する場合には、検出レベルLY2,LX2がそれぞれ高くなる。
【0069】
ステップS2にて、演算回路10は、ステップS1で取得された検出レベル(タッチ容量値、実質的にはステップS1で検出された静電容量)に基づいて、タッチスクリーン1におけるタッチ入力の有無を検出する。本実施の形態では、演算回路10は、各検出用配線2,3の検出レベル(タッチ容量値)を、タッチ入力の有無を検出するためのタッチ閾値と比較し、その比較結果に基づいてタッチ判定を行う。具体的には、演算回路10は、検出レベルがタッチ閾値よりも大きい場合にタッチ入力が有ると判定する。例えば、図12に示される例の場合には、検出用列配線2(WY2)の検出レベルLY2がタッチ閾値(一点鎖線)よりも大きく、また、検出用列配線2(WY2)の検出レベルLY2もタッチ閾値よりも大きいことから、タッチ入力が有ると判定する。
【0070】
ステップS2のタッチ判定にて、タッチ入力が有ると判定された場合には、ステップS3に進む。一方、ステップS2のタッチ判定にて、タッチ入力が無いと判定された場合には、必要に応じてベースライン値の更新を行い、ステップS1に戻る。なお、モバイル用途等のアプリケーションによっては、消費電力低減の理由により一定の待ち時間を設け、当該時間が経過して後に検出動作S1を行ってもよい。
【0071】
ステップS3にて、演算回路10は、ステップS2で判定したタッチ入力が1点であるか、複数点(2点以上)であるかの判定を行う。本実施の形態では、ステップS2でタッチ入力が有ると判定された検出用列配線2及び検出用行配線3がそれぞれ1本ずつである場合には、タッチ入力が1点であると判定し、それ以外の場合には、タッチ入力が複数点であると判定する。
【0072】
図12に示される例では、タッチ入力が有ると判定された検出用列配線2が1本(WY2)あり、タッチ入力が有ると判定された検出用行配線3が1本(WX2)ある。この場合には、演算回路10は、ステップS3にてタッチ入力が1点であると判定し、ステップS6に進む。
【0073】
当該ステップS6においては、演算回路10は、タッチ入力が有ると判定された検出用配線2,3の組合せに基づいて、指13の位置座標を算出する。なお、図12に示される例においては、タッチ入力が有ると判定された検出用列配線2と検出用行配線3との組合せは(WX2,WX2)の一つであり一意に決定することが可能であり、位置座標を算出することが可能である。ステップS6後のステップS1に戻る。このように、指13の位置座標の算出を繰り返すことで、指13の位置座標(つまりタッチ位置)が時々刻々と検出される。
【0074】
次に、ステップS3にて、タッチ入力が複数点であると判定される場合について説明する。図13は、複数点のタッチ入力が行われたときの様子を図12と同じ形式で表す図である。たたし、この図13においては、後の説明を容易にするため、図13の接続状態で取得された検出レベルLY1〜LY5,LX1〜LX5を、それぞれ検出レベルLY1a〜LY5a,LX1a〜LX5aと記している。
【0075】
この図13に示される例では、実在する指13a,13bが、ハッチングされた円で示されている。図13に示されるように、検出用列配線2(WY2,WY4)及び検出用行配線3(WX2,WX4)のそれぞれの上に指13が実在する場合には、検出レベルLY2,LY4,LX2,LX4がそれぞれ高くなる。つまり、タッチ閾値を超えた検出レベルを有する検出用列配線2が複数本(WY2,WY4)あり、タッチ閾値を超えた検出レベルを有する検出用行配線3が複数本(WX2,WX4)ある。この場合には、演算回路10は、ステップS3にてタッチ入力が複数点であると判定する。
【0076】
ここで、図13においては、タッチ入力が有ると判定された検出用列配線2と検出用行配線3との組合せは、(WX2,WY2)、(WX4,WY4)だけでなく、(WX2,WY4)、(WX4,WY2)も得られることから、このままでは位置座標を決定することができない。従来技術では、このようにタッチ入力が複数点存在する場合には、実在する指13a,13bと、図13において点線の円で示される実在しない指13c,13dとを区別することができず、どちらが正しいタッチ入力かを特定することができなかった。
【0077】
それに対し、本実施の形態に係るタッチパネルにおいては、タッチ入力が複数点存在する場合であっても、以下の動作を行うことにより、正しいタッチ入力を特定することが可能となっている。
【0078】
タッチ入力が複数点であると判定された場合には、同ステップS3にて、当該複数点に係る検出用配線2,3の組合せを、指13が実在する可能性がある候補位置として特定する。例えば、図13に示される例では、検出用列配線2のWX2上における指13の位置は、検出用行配線2のWY2上か、WY4上かのいずれかに絞られる。同様に、検出用行配線2のWX4上における指13の位置は、検出用行配線2のWY2上か、WY4上かのいずれかに絞られる。ここでは、このような場合に、演算回路10は、(WX2,WY2)を候補位置P1と特定し、(WX2,WY4)を候補位置P2と特定する。その後、ステップS4に進む。
【0079】
ステップS4にて、スイッチ回路Y4,X5により、検出対象の検出用配線2,3と容量検出ノードとが接続され、かつ、候補位置(複数点)に係る非検出対象の検出用配線2,3と第2ノードとが接続される。その状態で、静電容量の再測定(再検出)が、容量検出回路6により行われる。つまり、ステップS3にて演算回路10により複数点のタッチ入力が検出された場合には、ステップS4にて当該検出時に検出用配線2,3に付与した第1電圧と異なる第2電圧を検出用配線2,3に付与して、容量検出回路6により、静電容量を再測定(再検出)する。
【0080】
図14及び図15は、ステップS4の動作を説明するための図である。なお、ここでは、図14、図15の順に説明するが、実際の動作順はこれに限ったものではない。
【0081】
まず、ステップS4に含まれるステップS4a(図11)にて、図14に示されるように、スイッチ回路Y4,X5は、検出対象の検出用行配線3と容量検出ノードとを接続し、かつ、候補位置(ここでは候補位置P1)に対応する非検出対象の検出用列配線2(WY2)とGND8の第2ノードとを接続する。スイッチ回路X5は、全検出用行配線3のなかから、検出対象の検出用行配線3とすべき検出用行配線3を順次切り替えていき、容量検出回路6はその各々について静電容量を再測定する。そうすると、演算回路10は、当該静電容量に基づいて、図14に示される検出レベルを取得する。なお、図13の接続状態で取得された検出レベルLY1a〜LY5a,LX1a〜LX5aと区別するため、図14の接続状態で取得された検出レベルLY1〜LY5,LX1〜LX5を、それぞれ検出レベルLY1b〜LY5b,LX1b〜LX5bと記している。
【0082】
ここで、検出用列配線2(WY2)がGND8に接続された場合には、検出用行配線3(WX2)と検出用列配線2(WY2)との間の交差部における結合容量が増加し(ここでの増加量を「ΔCwx2-wy2」と記す)、検出レベルそのものも増加する。一方、検出用行配線3(WX2)から、GND8に接続された検出用列配線2(WY2)の方へ電界が広がり、結合が強くなるため、指13と検出用行配線3(WX2)との間における結合容量は減少し(ここでの減少量を「ΔCwx2-Touch」と記す)、検出レベルそのものも減少する。
【0083】
以上の結果、検出用行配線3(WX2)の検出レベルLX2bとして、
LX2b=LX2a+ΔCwx2-wy2−ΔCwx2-Touch ・・・(1)
がステップS4aにて取得されることになる。ここで、式(1)に示されているLX2aは、図13に示される検出用行配線3(WX2)の検出レベルLX2aである。
【0084】
次に、ステップS4に含まれるステップS4b(図11)にて、図15に示されるように、スイッチ回路Y4,X5は、検出対象の検出用行配線3と容量検出ノードとを接続し、かつ、先とは別の候補位置(ここでは候補位置P2)に対応する非検出対象の検出用列配線2(WY4)とGND8の第2ノードとを接続する。スイッチ回路X5は、上述と同様に、全検出用行配線3のなかから、検出対象の検出用行配線3とすべき検出用行配線3を順次切り替えていき、容量検出回路6はその各々について静電容量を再測定する。そうすると、演算回路10は、当該静電容量に基づいて、図15に示されるような検出レベルを取得する。なお、図13及び図14の接続状態で取得された検出レベルと区別するため、図15の接続状態で取得された検出レベルLY1〜LY5,LX1〜LX5を、それぞれ検出レベルLY1c〜LY5c,LX1c〜LX5cと記している。
【0085】
ここで、検出用列配線2(WY4)がGND8に接続された場合には、検出用行配線3(WX2)と検出用列配線2(WY4)との間の交差部における結合容量が増加し(ここでの増加量を「ΔCwx2-wy4」と記す)、検出レベルそのものも増加する。また、図14の接続状態と同様、検出用行配線3(WX2)から、GND8に接続された検出用列配線2(WY4)の方へ電界が広がり、結合が強くなる。しかし、図14の接続状態とは異なり、検出用列配線2(WY4)上には指13が実在しないため、検出用行配線3(WX2)から検出用列配線2(WY4)の方へ電界が広がることにより検出レベルは変化しない。
【0086】
以上の結果、検出用行配線3(WX2)の検出レベルLX2cとして、
LX2c=LX2a+ΔCwx2-wy4 ・・・(2)
がステップS4bにて取得されることになる。
【0087】
ステップS4の後、ステップS5にて、演算回路10は、ステップS4で検出された静電容量に基づいて、候補位置(複数点)のそれぞれにおける指13のタッチ入力の有無を判別する。
【0088】
本実施の形態では、演算回路10は、次式(3)に示される判定値Dを求める。ここで、タッチスクリーン1上の各々の検出用列配線2は等幅、検出用行配線3も等幅であり、かつ、各検出用列配線2と各検出用行配線3とのギャップも同じであるとする。この場合、式(1)に示されるΔCwx2-wy2と、式(2)に示されるΔCwx2-wy4とは等価である。判定値D=LX2b−LX2c=−ΔCwx2-Touch ・・・(3)
そして、演算回路10は、判定値Dの正負に基づいて、複数点のそれぞれにおける指13のタッチ入力の有無(実在する指13の位置)を判別する。
【0089】
例えば、演算回路10は、判定値Dが負の値であれば、候補位置P1(WX2,WY2)においてタッチ入力が有ると判定し、候補位置P2(WX2,WY4)においてタッチ入力が無いと判定する。この際、組合せを考慮すれば、自動的に(WX4,WY4)においてタッチ入力が有り、(WX4,WY2)においてタッチ入力が無いことになる。
【0090】
一方、演算回路10は、判定値Dが正の値であれば、候補位置P1(WX2,WY2)においてタッチ入力が無いと判定し、候補位置P2(WX2,WY4)においてタッチ入力が有ると判定する。この際、組合せを考慮すれば、自動的に(WX4,WY4)においてタッチ入力が無く、(WX4,WY2)においてタッチ入力が有ることになる。
【0091】
以上により、ステップS5にて、候補位置(複数点)のそれぞれにおける指13のタッチ入力の有無が判別される。なお、以上の説明では、ステップS4a,4bで測定された静電容量に基づいて、候補位置のそれぞれにおける指13のタッチ入力の有無を判別したが、これに限ったものではない。例えば、ステップS1で検出された静電容量(検出レベルLX2a)と、ステップS4で検出された静電容量(検出レベルLX2b)とに基づいて、候補位置のそれぞれにおける指13のタッチ入力の有無を判別してもよい。この場合には、ステップS4で検出された検出レベルLX2bが、ステップS1で検出された検出レベルLX2aと異なる場合には、候補位置P1(WX2,WY2)においてタッチ入力が有ると判定し、候補位置P2(WX2,WY4)においてタッチ入力が無いと判定する。一方、ステップS4で検出された検出レベルLX2bが、それより前に検出された検出レベルLX2aと同じ場合には、候補位置P1(WX2,WY2)においてタッチ入力が無いと判定し、候補位置P2(WX2,WY4)においてタッチ入力が有ると判定する。
【0092】
また、以上の説明では、判定値Dの正負に基づいて、複数点のそれぞれにおける指13のタッチ入力の有無(実在する指13の位置)を判別したが、これに限ったものではない。例えば、判定値Dに基づいて判別することと実質的には同じであるが、図11に示されているように、検出レベルLX2bと検出レベルLX2cとの大小を比較し(ステップS5a)、その比較結果に基づいて、複数点のそれぞれにおける指13のタッチ入力の有無を判別する(ステップS5b)ものであってもよい。
【0093】
ステップS1またはステップS5の後、ステップS6にて、演算回路10は、タッチ入力が有ると判別された検出用配線2,3の組合せに基づいて、指13の位置座標を算出し、その後ステップS1に戻る。
【0094】
以上のような本実施の形態に係るタッチパネル及び表示装置によれば、互いに異なる第1及び第2電圧を検出用配線2,3に付与し、そのそれぞれについて、検出用配線2,3の静電容量を検出する。指13(指示体)のタッチ入力の有無に応じて、当該静電容量において変化が生じることから、複数点のタッチ入力が行われた場合に、当該タッチ入力を正しく判別することができる。
【0095】
また、非検出対象の検出用配線2,3に第1電圧を付与することにより、検出対象の検出用配線2,3と、非検出対象の検出用配線2,3との電位差を小さくすることができる。したがって、指13と、検出対象の検出用配線2,3との間の静電容量(結合容量)を大きくすることができ、高感度な容量検出を行うことができる。
【0096】
つまり、本実施の形態に係るタッチパネルでは、低廉かつ簡便で、演算量が抑えられた回路構成でありながら、タッチ時の感度を高感度にすることができるとともに、ゴースト現象を抑制することもできる。なお、タッチ時との感度を高めることで厚手の手袋を装着したままの入力可能なタッチパネルや、3mm程度の厚い板ガラス等を用いた堅牢性を有するタッチパネルを実現することが期待できる。また、十分なマージンをとってタッチ閾値を設定することができることからノイズの影響を抑制可能なタッチパネルを実現することができる。
【0097】
なお、以上のステップS4及びS5の説明においては、1本の検出用行配線3(WX2)上でのタッチ入力の有無を判別することについて説明したが、これと同様に、別の1本の検出用行配線3(WX4)上でのタッチ入力の有無を判別してもよい。また、複数本の検出用行配線3(WX2,WX4)上でのタッチ入力の有無を判別し、それらの判別結果を総合してもよい。複数本の検出用行配線3についての判別結果を総合する場合には、タッチ検出の確度を向上させることができる。例えば、検出用行配線3(WX2)上での判別結果と、検出用行配線3(WX4)上での判別結果とが一致した場合に位置座標を出力すれば、確度の高い位置座標を出力することができる。
【0098】
また、以上のステップS4及びS5の説明においては、検出用行配線3上でのタッチ入力の有無に着目できるように、検出用列配線2をGND8に順次に接続した。しかしこれに限ったものではなく、検出用列配線2上でのタッチ入力の有無に着目できるように、検出用行配線3をGND8に順次に接続するものであってもよい。また、検出用列配線2及び検出用行配線3のそれぞれの上でのタッチ入力の有無を判別し、それらの判別結果を総合してもよい。検出用列配線2についての判別結果と検出用行配線3についての判別結果とを総合する場合には、タッチ検出の確度を向上させることができる。
【0099】
また、検出用列配線2及び検出用行配線3のそれぞれの上でのタッチ入力の有無を、複数本の検出用列配線2及び複数本の検出用行配線3のそれぞれについて判別し、それらの判別結果を総合してもよい。この場合には、タッチ検出の確度をさらに向上させることができる。例えば、検出用列配線2及び検出用行配線3のそれぞれの上でのタッチ入力の有無を、2本の検出用列配線2(WY2,WY4)及び2本の検出用行配線3(WX2,WX4)のそれぞれについて判別する場合には4回の判別結果を総合することになる。ここで、この4回の判別結果のうち、例えば、3回の判別結果が互いに一致するが、残りの1回の判別結果がこれらと一致しない場合には、3回の判別結果から得られた座標を出力するとともに、確度が低いことを知らせるフラグを出力してもよい。このようにすることで、それら出力を受け取る上位アプリケーション側において位置座標の処理をどうするかを判断することが可能となる。
【0100】
なお、以上の説明においては、2点(指13a,13b)のタッチ入力における動作について説明したが、3点以上のタッチ入力の場合においても、上述と同様に行えば、実際のタッチ入力のみを検出することができる。
【0101】
なお、一般的なタッチパネルにおいては、タッチスクリーン1内での各検出用列配線2の配線幅、及び、各検出用行配線3の配線幅はそれぞれ同一であり、層間膜である絶縁層12の厚さもほぼ均一であることから、以上の説明では、式(1)に示されるΔCwx2-wy2と、式(2)に示されるΔCwx2-wy4とは等価と仮定した。しかしこれに限ったものではなく、全ての候補位置での静電容量の検出(ステップS4)に対応するベースライン値を事前に測定して記憶しておき、ステップS4での静電容量の再測定を行う際に当該記憶済みのベースライン値を差分値の算出に使用することで、より正確な判別を行うことが可能となる。つまり、隣接する検出用配線2,3のパターン間距離のバラツキや、絶縁層12の厚さバラツキなどにより検出用列配線2と検出用行配線3との交差部の容量がタッチスクリーン1内で異なっていても対応することができる。
【0102】
また、以上の説明では、ステップS4において、GND8からの第2電圧が付与される非検出対象の検出用列配線2を1本とした。しかし、検出用配線2,3のパターン形状や検出配線幅によっては、指13と、検出対象の検出用配線2,3との容量結合をより弱めたいことがある。つまり、指13近傍の非検出対象の検出用列配線2に対して第2電圧が付与されたときに生じる静電容量(結合容量)の変化を、大きくしたいことがある。
【0103】
この場合には、GND8からの第2電圧が付与される非検出対象の検出用列配線2を、複数(例えば2本)とした方が望ましい。例えば、GND8に接続すべき1本の非検出対象の検出用列配線2に隣接する2本の非検出対象の検出用列配線2のうち、検出レベルがより高い非検出対象の検出用列配線2を選択する。そして、当該1本の非検出対象の検出用列配線2と、選択した1本の非検出対象の検出用列配線2、つまり合計2本の非検出対象の検出用列配線2を、同時にGND8に接続する。このようにすれば、上述の効果を高めることができる。
【0104】
図16にこの例を示す。この図16において、WX1〜WX5、WY1〜WY5の各検出用配線2,3の検出レベルが棒グラフで示されている。この図においては、検出用行配線3(WX3)と検出用列配線2(WY2,WY5)とがタッチ閾値を超えていると判定された後に、ステップS4において、検出用行配線3(WX3)上のうち、非検出対象の検出用列配線2(WY2)近傍に指13があるかを、静電容量の再測定で確認している。この場合に、当該検出用列配線2(WY2)に隣接する検出用列配線2(WY1,WY3)の検出レベルを比較する。この図16に示されるように、検出用列配線2(WY3)の検出レベルが検出用列配線(WY1)よりも高い場合には、指13が検出用列配線2(WY2)から検出用列配線2(WY3)に亘って偏在していることを検出することができる。そこで、このような場合には、2本の検出用列配線2(WY2,WY3)を、GND8に接続することが好ましい。これにより指13近傍の電位を固定できるため、指13近傍の非検出対象の検出用列配線2に対して第2電圧が付与されたときに生じる静電容量(結合容量)の変化を、大きくすることができる。
【0105】
<実施の形態2>
実施の形態1では、検出レベルがタッチ閾値を超えてタッチされたと判定された検出用列配線2と、それと同様にタッチされたと判定された検出用行配線3との予想される組合せを候補位置とし、原則としてその候補位置のそれぞれについて、静電容量を再測定することで、タッチスクリーン1上のタッチ入力の有無を判別した。しかし、タッチ入力された点が多くなると、予想される組合せ(候補位置)が増え、再測定数も増えると考えられる。
【0106】
例えば、タッチ入力が2点である場合には、予想される組合せ(候補位置)は4点であるが、タッチ入力が3点になると、予想される組合せ(候補位置)は9点となり、再測定数が急増する。また、指13の位置が、互いに隣接する検出用列配線2同士または検出用行配線3同士の間の中点位置にある場合などは、再測定数がさらに増える。これらのように再測定数が増えると、判別のための演算時間も増えるため、1回のタッチ検出動作にかかる時間(1回の位置座標を出力する時間)が長くなる。
【0107】
その一方で、ドラッグ操作時などにおいては、指13の位置は固定的ではなく動いている。それにもかかわらず、タッチ検出動作にかかる時間が長くなると、タッチ入力の検出中に指13の位置が移動してしまい位置判定の信頼度が下がる。例えば、実施の形態1で記載したように、2点タッチにおいて、4回の再測定による結果(判別結果)から指13の実在位置を判定すれば、指13が固定されている限りにおいてはその位置判定の信頼度は高くなる。しかし、指13が移動している場合には、判定時間が長くなる分だけ、判定された位置から離れてしまい、位置判定の信頼度が低下する。
【0108】
したがって、ステップS4での候補位置における静電容量の再測定は短時間で行われることが望ましい。そこで、本発明の本実施の形態2に係るタッチパネルにおいては、当該再測定を短時間で行うことが可能となっている。以下、このような本実施の形態に係るタッチパネルについて説明する。
【0109】
図17は、位置座標を検出する際の本実施の形態に係るタッチパネルの一連の動作を示すフローチャートである。この図17に示されるフローチャートは、先に説明した図4に示されるフローチャートに、ステップS31〜S34を追加したものとなっている。そこで、以下の説明においては、ステップS31〜S34について説明する。
【0110】
なお、この図17に示されるように、本実施の形態に係るタッチパネルでは、上述のステップS1〜S6が繰り返すものとなっている。つまり、ステップS1〜S6が複数時点において行われるものとなっている。また、本実施の形態に係るタッチパネルは、タッチ入力の数と、当該タッチ入力の位置座標とを当該複数時点について記憶する記憶手段を備えており、この記憶動作がステップS6後のステップS34にて行われるものとする。
【0111】
さて、ステップS3の後、ステップS31にて、前後する時点のタッチ入力の位置座標の変化と、前の時点のタッチ入力の数とに基づいて、後の時点におけるタッチ入力の位置座標の確度を示す信頼度を算出する。ここでは、当該信頼度を、前の時点で判別されたタッチ入力の数(1点、2点、3点以上)に対応する信頼度Aと、タッチ入力の位置座標の変化(つまり前の時点の位置座標と、後の時点の位置座標との相対距離)に対応する信頼度Bとの和として算出する。
【0112】
このように信頼度が算出される場合、例えば、ルックアップテーブルなどにおいて、前の時点のタッチ入力の数が1点である場合には、信頼度Aが高い値に設定され、当該タッチ入力の数が3点以上である場合には、信頼度Aが低い値に設定されている。また、例えば、ルックアップテーブルなどにおいて、前の時点の位置座標と後の時点の位置座標との相対距離が短い場合には、信頼度Bは高い値に設定され、当該相対距離が長い場合、または、初めて検出されたタッチ入力がある場合には、信頼度Bは低い値に設定されている。このステップS31においては、このような信頼度Aと信頼度Bとの和を、後の時点におけるタッチ入力の位置座標の確度を示す信頼度として、タッチ入力点ごとに算出する。
【0113】
例えば、1点のタッチ入力がほぼ同じ位置座標で連続して行なわれている場合には、信頼度A及び信頼度Bが高くなることから、ステップS31で算出される信頼度は高くなる。一方、その状態から、複数のタッチ入力が検出された場合には、ステップS31で算出される信頼度が低くなる。
【0114】
ステップS32にて、当該信頼度の判定を行う。本実施の形態では、信頼度が閾値以上か否かを、タッチ入力点ごとに判定する。信頼度が閾値以上のタッチ入力点については、再測定が不要であると判定して、ステップS33、ステップS4、ステップS5を行わずに、ステップS6にてその位置座標を算出して確定する。信頼度が閾値より低いタッチ入力点については、再測定が必要であると判定して、ステップS33に進む。
【0115】
ステップS33にて、信頼度に基づいて、ステップS4での検出用配線2,3の再測定順(例えば、信頼度が低い検出用配線から順に再測定を行う)や再測定回数を変更する。その後ステップS4に進む。
【0116】
こうして、本実施の形態に係るタッチパネルは、以上のステップS32,S33にて、信頼度に基づいて、ステップS4における静電容量の再測定(再検出)に係る条件(再測定の実施有無、検出用配線2,3の再測定順及び再測定回数)を変更する。
【0117】
以上のような本実施の形態に係るタッチパネルによれば、信頼度に基づいて、静電容量の再測定(再検出)に係る条件を変更する。したがって、例えば、2点のタッチ入力が有る場合には4点の候補位置があるが、そのうちの1点の信頼度が高ければ、残りの点について静電容量の再測定を行わなくてもそれらの位置座標を確定することができる。つまり、複数点のタッチ入力の有無の判別を行う際に、静電容量の再測定の回数を低減することができることから、位置座標の算出時間を短くすることができ、その結果、ドラッグ操作などにより指13が移動中であっても、タッチ入力の位置判定の信頼度を高めることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 タッチスクリーン、2 検出用列配線、3 検出用行配線、4 スイッチ回路Y、5 スイッチ回路X、6 容量検出回路、7 バッファ、8 GND、8a 直流電圧駆動回路、8b 回路、10 演算回路、13 指、20 表示デバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する複数の検出用配線を有するタッチスクリーンと、
検出ノードと接続された検出対象の前記検出用配線の静電容量を検出する静電容量検出回路と、
前記静電容量検出回路で検出された前記静電容量に基づいて、前記タッチスクリーン上での指示体によるタッチ入力を検出し、その位置座標を算出する位置座標算出回路と
を備え、
(a)前記位置座標算出回路により複数点の前記タッチ入力が検出された場合には、当該検出時に前記検出用配線に付与した第1電圧と異なる第2電圧を前記検出用配線に付与して、前記静電容量検出回路により前記静電容量を再検出し、
(b)前記(a)で検出された前記静電容量に基づいて、前記複数点のそれぞれにおける前記タッチ入力の有無を判別する、タッチパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチパネルであって、
前記検出ノードの電圧との電位差が小さい電圧を前記第1電圧として、前記検出対象の検出用配線以外の検出用配線である非検出対象の前記検出用配線に付与可能な第1電圧付与部と、
前記検出ノードの電圧との電位差が大きい電圧を前記第2電圧として、前記被検出対象の検出用配線に付与可能な第2電圧付与部と、
前記検出対象の検出用配線と前記検出ノードとを接続することが可能であり、かつ、前記非検出対象の検出用配線と、前記第1電圧を有する第1ノードまたは前記第2電圧を有する第2ノードとを接続することが可能なスイッチ回路と
をさらに備え、
(a−1)前記スイッチ回路により前記検出対象の検出用配線と前記検出ノードとが接続され、かつ、前記非検出対象の検出用配線と前記第1ノードとが接続された状態で、前記(a)における前記タッチ入力を検出するための前記静電容量を検出し、
(a−2)前記スイッチ回路により前記検出対象の検出用配線と前記検出ノードとが接続され、かつ、前記複数点に係る前記非検出対象の検出用配線と前記第2ノードとが接続された状態で、前記(a)における前記再検出を行う、タッチパネル。
【請求項3】
請求項2に記載のタッチパネルであって、
前記第1電圧付与部は、前記検出ノードの電圧をバッファリングして得られた電圧を前記第1電圧として、前記被検出対象の検出用配線に付与可能な回路であり、
前記第2電圧付与部は、グランド電圧を前記第2電圧として、前記被検出対象の検出用配線に付与可能な、タッチパネル。
【請求項4】
請求項2に記載のタッチパネルであって、
前記第1電圧付与部は、前記検出ノードの電圧をバッファリングして得られた電圧を前記第1電圧として、前記被検出対象の検出用配線に付与可能な回路であり、
前記第2電圧付与部は、低インピーダンスの電圧を前記第2電圧として、前記被検出対象の検出用配線に付与可能な直流電圧駆動回路である、タッチパネル。
【請求項5】
請求項2に記載のタッチパネルであって、
前記第1電圧付与部は、前記検出ノードの電圧をバッファリングして得られた電圧を、前記第1電圧として、前記被検出対象の検出用配線に付与可能な回路であり、
前記第2電圧付与部は、前記検出ノードの電圧をバッファリングし、かつ反転させて得られた電圧を前記第2電圧として、前記被検出対象の検出用配線に付与可能な回路である、タッチパネル。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のタッチパネルであって、
前記(a)及び前記(b)は複数時点において行われ、
前記(b)にて有ると判別された前記タッチ入力の数と、当該タッチ入力の前記位置座標とを前記複数時点について記憶する記憶手段を備え、
(c)前後する前記時点の前記タッチ入力の位置座標の変化と、前記タッチ入力の数とに基づいて、前記タッチ入力の位置座標の確度を示す信頼度を算出し、当該信頼度に基づいて、前記(a)における前記静電容量の前記再検出に係る条件を変更する、タッチパネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のタッチパネルと、
当該タッチパネルとGUI機器を構成する表示パネルと
を備える、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−221220(P2012−221220A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86367(P2011−86367)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】