説明

タップ加工を行う工作機械の制御装置

【課題】オーバヒートの防止、最適な加工精度および工具折損防止を実現する。
【解決手段】タップが取付けられていて回転する主軸と、主軸を送り出す送り軸とによってタップ加工を行う工作機械(18)を制御する制御装置(10)において、タップの寸法の指標を識別する識別部(12)と、主軸を駆動するモータ(19a)の温度を検出する温度検出部(19b)と、タップの寸法の指標に対応した主軸の加速度を記憶する加速度記憶部(21)と、モータの温度に応じて主軸の加速度を変更する割合を記憶する割合記憶部(22)と、識別部により識別されたタップの寸法の指標と加速度記憶部とから定まる加速度に、温度検出部により検出された温度と割合記憶部とから定まる割合を乗算して、主軸の新たな加速度を算出する加速度算出部(16)とを具備する。タップの寸法の指標はタップのピッチまたはタップの工具番号でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップが取付けられていて回転する主軸と、該主軸を送り出す送り軸とによってタップ加工を行う工作機械を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数値制御工作機械においては、工作機械に備えられた送り軸および主軸を駆動するモータの加減速度や最高速度を大きくし、それにより、加工時間を短縮して生産性を向上させている。このような制御を行うと、モータおよびアンプからなる各軸の駆動装置により大きな電流が流れ、また単位時間あたりのモータの加減速回数が多くなり、その結果、駆動装置が発熱するようになる。従来技術においては、発熱により駆動装置の温度が所定の温度まで上昇すると、アラームを発令して工作機械を停止させ、それにより、駆動装置が熱によって損傷するのを防止している。
【0003】
しかしながら、加工中に工作機械が停止すると、加工効率が低下し、加工不良が発生する場合がある。さらに、工作機械が無人運転される場合には、操作者が工作機械を復旧させる必要があるので、工作機械が長時間に亙って停止したままとなる可能性もある。このような不都合を回避するために、従来では、所定の単位時間あたりの最大加減速回数の範囲内で余裕を持った加速度を設定し、それにより、駆動装置がオーバヒートするのを回避している。
【0004】
しかしながら、駆動装置の温度上昇は、ワークの重量や材質、加工負荷、周囲温度などによっても異なるので、最大加減速回数内であっても駆動装置がオーバヒートする可能性がある。また、最大加減速回数を超えて加工した場合にも、同様にオーバヒートになる可能性がある。そこで、特許文献1および特許文献2においては、駆動装置のオーバヒートを防止して運転を継続できる装置または方法が開示されている。
【0005】
特許文献1は、駆動部の温度が所定の温度以上になると、加速度を制限して駆動部の出力を抑制することを開示している。特許文献2は、駆動手段の温度や加減速回数に基づいて、送り軸の加減速時定数をオーバヒートすることのない適正値に制御する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−5836号公報
【特許文献2】特開平9−179623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2においては、駆動装置の指令送り速度を変更することなしに加速度を変更している。このため、特許文献1および特許文献2においては加工時間をあまり増大させることなしに加工できるが、駆動部の温度や加減速回数に応じて加速度を変更するので、加工の内容に関わらず加速度が変化することとなる。
【0008】
また、マシニングセンタにおいては、一般的に加減速時における発熱は、送り軸よりも主軸の方が大きい。例えばタップ加工においては、主軸の加速および減速を繰返すので、加工数が多いと主軸の発熱が大きくなる。また、タップ加工においては主軸と送り軸とを同期させるので、加工動作の大部分において加減速が必要となる。このため、主軸の加速度を大きくすると、発熱が大きくなるばかりではなく、送り軸に対する同期誤差も大きくなって加工精度が低下する可能性がある。
【0009】
さらに、小径のタップ加工においては、加工工具が折損する可能性がある。また、加工精度が必要求されるタップ加工や小径タップ加工にあわせて小さな加速度を設定すると、加工時間が増大し加工効率が低下する可能性もある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、タップ寸法に応じた適切な加速度に制御することにより、オーバヒートの防止、最適な加工精度および工具折損防止を実現できる工作機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、タップが取付けられていて回転する主軸と、該主軸を送り出す送り軸とによってタップ加工を行う工作機械を制御する制御装置において、前記タップの寸法の指標を識別する識別部と、前記主軸を駆動するモータの温度を検出する温度検出部と、前記タップの寸法の指標に対応した前記主軸の加速度を記憶する加速度記憶部と、前記モータの温度に応じて前記主軸の加速度を変更する割合を記憶する割合記憶部と、前記識別部により識別された前記タップの寸法の指標と前記加速度記憶部とから定まる加速度に、前記温度検出部により検出された前記温度と前記割合記憶部とから定まる割合を乗算して、前記主軸の新たな加速度を算出する加速度算出部とを具備する、工作機械の制御装置が提供される。
【0012】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記タップの寸法の指標は前記タップのピッチであり、前記識別部は、前記工作機械の加工プログラムにおける主軸回転指令および送り軸送り速度指令からピッチを算出して、タップの寸法の指標を識別する。
【0013】
3番目の発明によれば、1番目の発明において、前記タップの寸法の指標はタップの工具番号であり、前記識別部は、前記工作機械の加工プログラムにおける工具番号指令を読込んで、タップの寸法の指標を識別する。
【0014】
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、さらに、加工処理を一回行うのに要する加工時間をワーク毎に記憶する加工時間記憶部と、現在の加工数をカウントするカウンタと、前記加工時間記憶部に記憶された前記加速度が変更される前の加工時間および前記加速度が変更された後の加工時間と、前記カウンタにカウントされた現在の加工数を所定の総加工数から減算した残加工数とに基づいて、残加工数の加工処理が終了するのに要する時間を算出する終了予定時間算出部と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
1番目の発明においては、タップの寸法の指標および主軸モータの温度に基づいて割合を定めて、加速度を変更している。このため、加工工具の折損が発生しやすい小径タップを用いる場合または高精度の加工が要求される場合には比較的小さい加速度(比較的大きい加減速時定数)を設定できる。さらに、加工工具の折損が発生し難い場合または高精度の加工が要求されない場合には比較的大きい加速度(比較的小さい加減速時定数)を設定できる。
【0016】
特に、主軸モータの温度に基づいて加速度を変更する割合(オーバライド値)を定めているので、工作機械のオーバーヒートを容易に防止できる。また、割合を加速度に乗算することにより加速度を変更しているので、新たな加速度は、タップの寸法の指標のみに基づいて定まる加速度よりも大きくなることはない。従って、最適な加工精度および工具折損防止を実現することができる。
【0017】
2番目の発明においては、タップのピッチを用いているので、加速度を正確に設定することができる。
【0018】
3番目の発明においては、タップの工具番号を用いているので、加速度を簡易かつ迅速に設定することができる。
【0019】
4番目の発明においては、新たな加速度が設定されたことにより変化する加工の終了予定時間を求めている。この終了予定時間は出力部を通じて操作者に通知できるので、加工終了後に行う検査作業などのスケジュールを容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に基づく工作機械の制御装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に基づく制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】(a)タップのピッチと加速度との間の関係を示す図である。(b)モータの温度とオーバライド値との間の関係を示す図である。
【図4】(a)タップのピッチと加減速時定数との間の関係を示す図である。(b)モータの温度とオーバライド値との間の関係を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に基づく制御装置の第二の動作を示すフローチャートである。
【図6】(a)タップの加工工具の工具番号と加速度との間の関係を示す図である。(b)タップの加工工具の工具番号と加減速時定数との間の関係を示す図4(a)と同様な図である。
【図7】本発明の他の実施形態に基づく制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づく工作機械の制御装置の機能ブロック図である。図1に示される制御装置10は、タップ加工を行う工作機械18を制御するようになっている。このため、工作機械18の主軸にはタップ(図示しない)が取付けられている。このタップは、主軸を駆動する主軸モータ19aにより回転し、送り軸を駆動する送り軸モータ(図示しない)によって送り出される。タップ加工においては、送り軸の動作は主軸の動作に同期するので、主軸モータ19aを制御することにより送り軸は自動的に制御されるものとする。
【0022】
図1に示されるように、制御装置10には、ワークの加工内容に応じて定まる複数の加工プログラム11が格納されている。そして、制御装置10は、加工プログラム11を読取りこれを解釈してプログラムデータを作成するプログラム読取解釈部12、プログラムデータを補間演算して位置指令データを作成する補間・加減速制御部13、位置指令データに基づいて、工作機械18の主軸モータ19aを駆動する動作指令を作成するモータ制御部14、および動作指令を増幅して工作機械18の主軸モータ19aに供給するモータ駆動アンプ15を主に含んでいる。なお、主軸モータ19aには、その温度を検出する温度検出部19bが備えられている。
【0023】
さらに、制御装置10は、各種の計算処理を行う算出部16を含んでいる。算出部16は、例えばタップの寸法の指標および主軸モータ19aの温度などに基づいて主軸モータ19aの新たな加速度を算出して補間・加減速制御部13に通知する。また、算出部16は、主軸モータ19aの加速度が変更された場合に、現在の加工数を所定の総加工数から減算した残加工数の加工処理が終了するのに要する終了予定時間を算出することもできる。さらに、制御装置10は、そのような終了予定時間および各種のデータを出力する出力部17、例えば液晶ディスプレイまたはプリンタを含んでいる。
【0024】
さらに、制御装置10のデータ記憶部20は、タップのピッチまたは加工工具の工具番号と加速度および加減速時定数との間の関係をマップの形で記憶した加速度記憶部21を含んでいる。また、データ記憶部20は、温度検出部19bにより検出された主軸モータ19aの温度とオーバライド値(加速度変更割合)との間の関係をマップの形で記憶した割合記憶部22を含んでいる。さらに、データ記憶部20は、ワーク(図示しない)の加工処理を一回行うのに要する加工時間を記憶する加工時間記憶部23と、現在の加工数Cをカウントするカウンタ24とを含んでいる。
【0025】
図2は本発明の第一の実施形態に基づく制御装置の動作を示すフローチャートである。以下、図2を参照して、第一の実施形態に基づく制御装置10の動作について説明する。なお、本発明の動作は、工作機械18がワーク(図示しない)を加工しているときに所定の制御周期で行われるものとする。
【0026】
はじめに、ステップS101においてプログラム読取解釈部12が加工プログラム11を読込み、ステップS102において加工プログラム11内にタップ加工に関する記載が存在するか否かを確認する。
【0027】
そして、タップ加工に関する記載が或る場合にはステップS103に進み、そのような記載が無い場合にはステップS101に戻る。ステップS103においては、プログラム読取解釈部12は、作成されたプログラムデータから主軸回転指令Sおよび送り軸送り速度指令Fとを取得し、これらを算出部16に供給する。
【0028】
次いで、ステップS104においては、算出部16がタップのピッチP(=F/S)を算出する。次いで、ステップS105においては、温度検出部19bが主軸モータ19aの温度TMを検出して算出部16に供給する。
【0029】
なお、温度検出部19bは主軸モータ19aに内蔵されていてもよいし、また主軸モータ19a近傍に設けられていてもよい。あるいは、温度検出部19bを直接的に検出する代わりに、主軸モータ19aに流れる電流値から主軸モータ19aの温度TMを推定するようにしてもよい。
【0030】
その後、ステップS106において算出部16は、ピッチに応じて定まる加速度A1と温度に応じて定まるオーバライドA2とを決定する。図3(a)はタップのピッチと加速度との間の関係を示す図である。図3(a)に示されるように、タップのピッチPに対する適切な加速度A1が予め実験等により求められていて、マップの形でデータ記憶部20の加速度記憶部21に記憶されている。
【0031】
図3(a)からわかるように、タップのピッチPに対する加速度A1は所定範囲のピッチ毎に求められている。図3(a)においてはピッチPが大きくなるほど、加速度A1も大きくなるものとする。そして、ステップS106において算出部16は、ピッチPに基づいて加速度記憶部21から加速度A1を決定する。
【0032】
また、図3(b)はモータの温度とオーバライド値との間の関係を示す図である。図3(b)は図3(a)と同様に実験等により作成されるが、図3(b)においては主軸モータ19aの温度TMが高くなるほどオーバライド値A2は低下するものとし、また、図3(b)におけるオーバライド値A2の上限値は100%である。ステップS106において算出部16はさらに、温度TMに基づいて割合記憶部22からオーバライド値A2を決定する。
【0033】
その後、ステップS107において算出部16は加速度A1およびオーバライド値A2に基づいて新たな加速度A0(=A1×A2)を算出する。最終的に、算出された新たな加速度A0は補間・加減速制御部13に供給され、新たな加速度A0に基づいて工作機械18の主軸モータ19aを駆動する。
【0034】
ところで、本発明においては、加速度A1の代わりに、加減速時定数を用いて新たな加速度A0を決定するようにしてもよい。図4(a)はタップのピッチと加減速時定数との間の関係を示す図であり、加速度記憶部21に同様に記憶されている。図4(a)においては、タップのピッチPが大きくなるほど、加減速時定数A3は小さくなるものとする。
【0035】
また、図4(b)はモータの温度とオーバライド値との間の関係を示す図であり、割合記憶部22に同様に記憶されている。そして、図4(b)においては主軸モータ19aの温度TMが高くなるほど、オーバライド値A4は増大するものとし、また、図4(b)におけるオーバライド値A4の下限値は100%である。このような場合には、図2を参照して説明したのと同様に、算出部16が加速度記憶部21から加減速時定数A3を決定し、温度TMに基づいて割合記憶部22からオーバライド値A4を決定する。そして、算出部16は新たな加減速時定数A0’(=A3×A4)を算出する。その後、新たな加減速時定数A0’を補間・加減速制御部13に供給し、新たな加減速時定数A0’に基づいて工作機械18の主軸モータ19aを駆動する。
【0036】
このように本発明においては、タップのピッチに応じて加速度または加減速時定数を最適に設定できる。言い換えれば、加工工具の折損が発生しやすい小径タップを用いる場合または高精度の加工が要求される場合には比較的小さい加速度(比較的大きい加減速時定数)を設定し、加工工具の折損が発生し難い場合または高精度の加工が要求されない場合には比較的大きい加速度(比較的小さい加減速時定数)を設定できる。このため、本発明では、効率の良いタップ加工を行うことが可能となる。
【0037】
さらに、本発明では、主軸モータの温度に基づいて加速度を変更する割合(オーバライド値)を定めているので、工作機械のオーバーヒートを容易に防止できる。また、割合を加速度に乗算することにより新たな加速度を算出しているので、新たな加速度は、タップのピッチのみに基づいて定まる加速度よりも大きくなることはない。従って、オーバーヒートの発生を防止しつつ、最適な加工精度および工具折損防止を実現することができる。
【0038】
ところで、図3および図4を参照して説明した実施形態においてはタップのピッチをタップの寸法の指標として使用している。実際には、使用される加工工具が定まればタップの寸法が決まるので、本発明の第二の実施形態においては加工工具の工具番号をタップの寸法の指標として使用することができる。図5は、本発明の第二の実施形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。以下、図5を参照して、第二の実施形態に基づく制御装置10の動作について説明する。
【0039】
はじめに、ステップS111においてプログラム読取解釈部12が加工プログラム11を読込み、ステップS112において加工プログラム11内に加工工具の交換指令が存在するか否かを確認する。
【0040】
そして、交換指令に関する記載が或る場合にはステップS113に進み、そのような記載が無い場合にはステップS111に戻る。ステップS113においては、プログラム読取解釈部12は、工具交換指令を取得して、算出部16に供給する。そして、算出部16は、工具番号に応じて定まる加速度A1を決定する。
【0041】
図6(a)はタップの加工工具の工具番号と加速度との間の関係を示す図である。図6(a)に示されるように、加工工具の工具番号Tに対する適切な加速度A1が予め実験等により求められていて、マップの形でデータ記憶部20の加速度記憶部21に記憶されている。
【0042】
次いで、ステップS114において、温度検出部19bが主軸モータ19aの温度を検出して算出部16に供給する。そして、ステップS115において、図3(b)に示されるのと同様な割合記憶部22のマップからオーバライド値A2を決定する。最終的に、ステップS116において、算出部16が新たな加速度A0(=A1×A2)を算出して、前述したのと同様に主軸モータ19aが制御される。
【0043】
また、図6(b)はタップの加工工具の工具番号と加減速時定数との間の関係を示す図4(a)と同様な図である。算出部16が図6(b)に示されるマップから加減速時定数A3を決定し、図4(b)に示されるのと同様な割合記憶部22のマップからオーバライド値A4を決定する。その後、算出部16によって新たな加減速時定数A0’(=A3×A4)を算出して、同様に主軸モータ19aを駆動してもよい。
【0044】
このような場合には、タップの加工工具の工具番号に応じて加速度または加減速時定数を設定できる。すなわち、工具折損が発生しやすい小径タップや加工精度が必要な加工に対しては小さい加速度(大きい加減速時定数)を設定し、工具折損や加工精度が問題にならないような加工に対しては大きい加速度(小さい加減速時定数)を設定できる。従って、図5および図6に示される実施形態においても効率の良いタップ加工を行えるのが分かるであろう。
【0045】
さらに、図7は本発明の他の実施形態に基づく制御装置の動作を示すフローチャートである。以下、図7を参照して、本発明の他の実施形態に基づく制御装置10の動作について説明する。
【0046】
はじめに、ステップS121において、ワーク(図示しない)に対する一回の加工処理が完了したか否かを判定する。そして、加工処理が完了している場合にはステップS122に進み、カウンタ24の現在の加工数Cに「1」を追加する。
【0047】
次いで、ステップS123において、加速度を新たな加速度A0、A0’に変更したか否かを判定する。新たな加速度A0、A0’に変更された場合にはステップS124に進み、新たな加速度A0、A0’に変更されていない場合にはステップS128に進む。
【0048】
ステップS124においては、新たな加速度A0、A0’に変更される前のワークの一回の加工時間と新たな加速度A0、A0’に変更された後のワークの一回の加工時間とを加工時間記憶部23から読出す。次いで、算出部16がこれら加工時間の偏差Δtを算出する。
【0049】
さらに、ステップS125において、算出部16は、現在の加工数Cをカウンタ24から取得し、この加工数を所定の総加工予定数C0から減算する。これにより、残加工数Crが得られる。
【0050】
次いで、ステップS126においては算出部16が偏差Δtに残加工数Crを乗算して、総加工時間増減量を算出する。さらに、算出部16は、新たな加速度A0、A0’に変更された後の加工時間に残加工数Crを乗算して、終了予定時間を算出する。
【0051】
ステップS127においては、これら総加工時間増減量および終了予定時間を出力部17、例えば液晶ディスプレイまたはプリンタに出力する。なお、工作機械18について所定の休止時間が設定されている場合には、算出部16はそのような休止時間が加算された終了予定時間を算出するものとする。最終的に、今回の加工処理に要した時間を加工時間記憶部23に記憶し、処理を終了する(ステップS128)。
【0052】
図7を参照して説明した実施形態においては、出力部17を通じて操作者に総加工時間増減量および終了予定時間を通知できる。このため、操作者は加速度が変更されたことにより時間に対する影響を的確に把握できる。その結果、全ての加工が終了した後に行われる作業、例えばワークの検査作業および次ロットのワークを加工するための段取り作業に対するスケジュールを容易に調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10 制御装置
11 加工プログラム
12 プログラム読取解釈部(識別部)
13 補間・加減速制御部
14 モータ制御部
15 モータ駆動アンプ
16 算出部(加速度算出部、終了予定時間算出部)
17 出力部
18 工作機械
19a 主軸モータ
19b 温度検出部
20 データ記憶部
21 加速度記憶部
22 割合記憶部
23 加工時間記憶部
24 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップが取付けられていて回転する主軸と、該主軸を送り出す送り軸とによってタップ加工を行う工作機械を制御する制御装置において、
前記タップの寸法の指標を識別する識別部と、
前記主軸を駆動するモータの温度を検出する温度検出部と、
前記タップの寸法の指標に対応した前記主軸の加速度を記憶する加速度記憶部と、
前記モータの温度に応じて前記主軸の加速度を変更する割合を記憶する割合記憶部と、
前記識別部により識別された前記タップの寸法の指標と前記加速度記憶部とから定まる加速度に、前記温度検出部により検出された前記温度と前記割合記憶部とから定まる割合を乗算して、前記主軸の新たな加速度を算出する加速度算出部とを具備する、工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記タップの寸法の指標は前記タップのピッチであり、
前記識別部は、前記工作機械の加工プログラムにおける主軸回転指令および送り軸送り速度指令からピッチを算出して、タップの寸法の指標を識別する、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記タップの寸法の指標はタップの工具番号であり、
前記識別部は、前記工作機械の加工プログラムにおける工具番号指令を読込んで、タップの寸法の指標を識別する、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項4】
さらに、加工処理を一回行うのに要する加工時間を記憶する加工時間記憶部と、
現在の加工数をカウントするカウンタと、
前記加工時間記憶部に記憶された前記加速度が変更される前の加工時間および前記加速度が変更された後の加工時間と、前記カウンタにカウントされた現在の加工数を所定の総加工数から減算した残加工数とに基づいて、残加工数の加工処理が終了するのに要する時間を算出する終了予定時間算出部と、を具備する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の工作機械の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−243009(P2012−243009A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111286(P2011−111286)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】