説明

タブレットおよびタブレット一体型排気管

【課題】ビスマス系ガラスと耐火性フィラーを含有するタブレットにおいて、二次焼成工程で排気管を良好に封着可能であるとともに、真空排気工程で再軟化し難いタブレットを創案することにより、PDP等の製造効率や輝度特性を高めること。
【解決手段】本発明のタブレットは、ビスマス系ガラスと耐火性フィラーを含有するタブレットにおいて、(1)ビスマス系ガラスが、ガラス組成として、質量%で、Bi 70〜90%、B 2〜12%、Al 0〜5%、ZnO 1〜15%、BaO 0〜10%、CuO+Fe 0〜8%を含有し、(2)耐火性フィラーとして、アルミナを1〜25体積%含有し、(3)充填率が71%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管の封着に好適なタブレットおよびタブレット一体型排気管に関し、特にプラズマディスプレイパネル(以下、PDP)、各種形式のフィールドエミッションディスプレイ(以下、FED)、蛍光表示管(以下、VFD)の排気管の封着に好適なタブレットおよびタブレット一体型排気管に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスと耐火性フィラーを含む複合材料は、一般的に封着材料として使用されている。この封着材料は、有機系の接着材料に比べて、化学的耐久性や耐熱性に優れるとともに、気密性の確保に適している。
【0003】
封着材料は、用途に応じて、機械的強度、流動性、電気絶縁性、低融点特性等の特性が要求される。特に、PDP等に用いる場合、蛍光体の蛍光特性を劣化させない温度(例えば500℃以下)で封着可能であることが要求される。従来、鉛ホウ酸系ガラスが、この特性を満足するため広く用いられてきた(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、最近、鉛ホウ酸系ガラスに含まれるPbOに対して、環境上の問題が指摘されている。このため、無鉛ガラスへの置き換えが望まれており、現在、種々の無鉛ガラスが開発されるに至っている。特に、特許文献2等に記載のビスマス系ガラス(Bi−B系ガラス)は、熱膨張係数等の諸特性が鉛ホウ酸系ガラスと略同等であるため、鉛ホウ酸系ガラスの代替候補として期待されている。
【0005】
ところで、PDP等は、装置内部を排気し、排気後に希ガスを充填するために、排気管を取り付ける必要がある。そして、排気管は、PDPのガラス基板に設けられた排気孔の位置と、排気管先端の開口部が一致するように取り付けられる。
【0006】
一般的に、排気管の取り付けに当たり、封着材料を成型加工したタブレット(プレスフリット等とも称される)が用いられる。タブレットを用いると、ガラス基板の排気孔と排気管先端の開口部の位置合わせが容易になるとともに、排気管をガラス基板に安定して取り付けることができる。また、タブレットを軟化させると、排気管をガラス基板に封着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−315536号公報
【特許文献2】特開平6−24797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PDPの製造工程は、一次焼成工程、二次焼成工程、真空排気工程を有している。一次焼成工程は、ガラス基板上に塗布されたペースト中の樹脂を分解揮発させ、塗布膜の表面を平滑化する工程であり、一般的にグレーズ工程と称されている。二次焼成工程は、ガラス基板同士(前面ガラス基板と背面ガラス基板)を封着するとともに、ガラス基板と排気管を封着する工程であり、一般的に封着工程と称されている。真空排気工程は、装置内部を真空排気するとともに、装置内部に希ガスを充填する工程である。
【0009】
通常、一次焼成工程と二次焼成工程は、大気雰囲気で行われ、真空排気工程は、高真空の減圧雰囲気で行われる。近年、真空排気工程を高温化する試みが検討されている。真空排気を高温(具体的には450〜500℃)で行う程、装置内部が短時間で高真空状態になるため、PDPの製造効率を飛躍的に高めることができる。また、真空排気を高温で行うと、装置内部の残存ガス量や不純物の含有量が少なくなるため、換言すれば装置内部の真空度が上昇するため、装置内部の希ガスの純度を高めることができ、PDPの輝度特性を高めることができる。
【0010】
しかし、真空排気工程を高温で行うと、真空排気工程でタブレットが再軟化し、装置内部に引き込まれたり、排気管が動いて排気孔を塞いだり、タブレットに穴が開いて、装置内部の気密性が損なわれるおそれがあるとともに、封着部分の機械的強度が低下し、PDPの気密信頼性が低下しやすくなる。
【0011】
そこで、タブレットの軟化温度を上昇させると、真空排気工程でタブレットの再軟化を防止することができる。しかし、タブレットの軟化温度を上昇させると、二次焼成工程でガラス基板と排気管を封着し難くなり、結局、装置内部の気密性を確保し難くなる。
【0012】
そこで、本発明は、ビスマス系ガラスと耐火性フィラーを含有するタブレットにおいて、二次焼成工程で排気管を良好に封着可能であるとともに、真空排気工程で再軟化し難いタブレットを創案することにより、PDP等の製造効率や輝度特性を高めることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ビスマス系ガラスのガラス組成範囲を規制しつつ、耐火性フィラーとしてアルミナを添加し、且つタブレットの充填率を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明のタブレットは、ビスマス系ガラスと耐火性フィラーを含有するタブレットにおいて、(1)ビスマス系ガラスが、ガラス組成として、質量%で、Bi 70〜90%、B 2〜12%、Al 0〜5%、ZnO 1〜15%、BaO 0〜10%、CuO+Fe(CuOとFeの合量) 0〜8%を含有し、(2)耐火性フィラーとして、アルミナを1〜25体積%含有し、(3)充填率が71%以上であることを特徴とする。ここで、「充填率」とは、[(タブレットの実測密度)/(タブレットの理論密度)]×100(%)の値を指す。なお、タブレットの実測密度は、周知のアルキメデス法等で測定することができる。また、タブレットの理論密度は、各構成材料の密度と混合比率から計算で算出することができる。
【0014】
本発明のタブレットは、上記のようにビスマス系ガラスのガラス組成範囲を規制している。このようにすれば、ビスマス系ガラスの熱的安定性が向上するため、二次焼成工程でビスマス系ガラスが失透し難くなり、排気管の封着強度を高めることができる。また、このようにすれば、ビスマス系ガラスの軟化点が低下するため、二次焼成工程で排気管を封着しやすくなる。
【0015】
本発明のタブレットは、耐火性フィラーとして、アルミナを1〜25体積%含有する。耐火性フィラーとして、アルミナを1体積%以上添加すると、焼成時にタブレットの変形を抑制できるため、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれ難くなる。一方、アルミナの含有量を25体積%以下に規制すれば、二次焼成工程でタブレットが流動しない事態を防止することができる。すなわち、アルミナの含有量を1〜25体積%に規制すれば、二次焼成工程でタブレットの流動性を確保した上で、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれ難くなり、結果として、真空排気工程を高温で行うことが可能になり、PDPの製造効率や輝度特性を高めることができる。
【0016】
本発明のタブレットは、充填率が71%以上である。充填率が高い程、二次焼成工程でタブレットが寸法変化し難くなるため、つまり二次焼成工程でタブレットが収縮し難くなるため、二次焼成工程でタブレットの流動性が向上し、排気管の封着強度を高めることができる。
【0017】
第二に、本発明のタブレットは、アルミナの平均粒子径D50が1〜25μmであることを特徴とする。第三に、本発明のタブレットは、アルミナの10%粒子径D10が0.1〜5μmおよび/または90%粒子径D90が10〜70μmであることを特徴とする。ここで、「平均粒子径D50」は、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒子径を表す。また、「10%粒子径D10」は、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して10%である粒子径を表す。さらに、「90%粒子径D90」は、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して90%である粒子径を表す。
【0018】
第四に、本発明のタブレットは、耐火性フィラーとして、更にウイレマイトを含むことを特徴とする。
【0019】
第五に、本発明のタブレットは、ビスマス系ガラスの含有量が40〜90体積%であり、耐火性フィラーの含有量が10〜60体積%であることを特徴とする。
【0020】
第六に、本発明のタブレットは、貫通孔を有することを特徴とする。第七に、本発明のタブレットは、最大肉厚が2mm以下であることを特徴とする。
【0021】
第八に、本発明のタブレットは、実質的にPbOを含有しないことを特徴とする。なお、「実質的にPbOを含有しない」とは、タブレット中のPbOの含有量が1000ppm以下の場合を指す。
【0022】
第九に、本発明のタブレットは、排気管の封着に用いることを特徴とする。第十に、本発明のタブレットは、排気管を収納するための凹部を有することを特徴とする。第十一に、本発明のタブレットは、PDPの排気管の封着に用いることを特徴とする。
【0023】
第十二に、本発明のタブレット一体型排気管は、拡径された排気管の先端部にタブレットが取り付けられているタブレット一体型排気管において、タブレットが上記のタブレットであることを特徴とする。ここで、「排気管の先端部」とは、拡径化された排気管の表面部位を指し、拡径化された部分においてガラス基板と接する側の排気管底面および排気管外周側面を指す。また、タブレットは、排気管の先端部のみに接着される態様だけでなく、排気管の先端部の一部に接着される態様を含む。
【0024】
このようなタブレット一体型排気管の一例を図1に示す。図1は、タブレット一体型排気管の断面概略図であり、排気管1の先端部が拡径化されており、排気管のガラス基板側の先端部にタブレット2が接着されている。
【0025】
第十三に、本発明のタブレット一体型排気管は、拡径された排気管の先端部にタブレットと高融点リングが取り付けられているタブレット一体型排気管において、タブレットが上記のタブレットであり、且つタブレットが拡径された排気管の先端部側、高融点リングが後端部側に取り付けられていることを特徴とする。ここで、「高融点リング」とは、リング形状を有し、530℃以下の温度で軟化変形しないものを指す。
【0026】
このような構成のタブレット一体型排気管の一例を図2に示す。図2は、タブレット一体型排気管の断面概略図であり、排気管1の先端部が拡径化されており、排気管1のフランジ部分1a外周面側の先端部にタブレット2が接着している。一方、高融点リング3は排気管1の外周面側に接着していない。また、タブレット2は、フランジ部分1aの先端部側に取り付けられて、高融点リング3がタブレット2よりもフランジ部分1aの後端部側に取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明のタブレット一体型排気管の断面概略図である。
【図2】図2は、本発明のタブレット一体型排気管の断面概略図である。
【図3】図3(a)は、本発明のタブレットの上方から見た概略図であり、図3(b)は本発明のタブレットの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のタブレットにおいて、上記のようにビスマス系ガラスのガラス組成範囲を限定した理由を以下に示す。
【0029】
Biは、軟化点を低下させるための主要成分である。その含有量は70〜90%、好ましくは71〜84%、より好ましくは73〜82%、更に好ましくは75〜77%未満である。Biの含有量が70%より少ないと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、二次焼成工程で排気管を封着し難くなる。一方、Biの含有量が90%より多いと、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時または焼成時にガラスが失透しやすくなる。
【0030】
は、ビスマス系ガラスのガラスネットワークを形成する成分であり、必須成分である。その含有量は2〜12%、好ましくは3〜10%、より好ましくは4〜10%、更に好ましくは5〜9.6%である。Bの含有量が2%より少ないと、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時または焼成時にガラスが失透しやすくなる。一方、Bの含有量が12%より多いと、ガラスの粘性が高くなり過ぎ、二次焼成工程で排気管を封着し難くなる。
【0031】
質量比Bi/Bは、ビスマス系ガラスの熱的安定性や軟化特性に大きな影響を及ぼす成分比率である。また、ビスマス系ガラスにおいて、BiとBは、ガラスの骨格を形成する主要成分であるとともに、ガラス組成中の含有比率が高いため、ビスマス系ガラスの特性を決定付ける成分である。Biは、ガラスの軟化点を低下させる成分であり、Bに対しBiの含有量が多くなるにつれて、ガラスの軟化点が低下する傾向がある。その一方、ガラスの熱的安定性が乏しくなり、ガラスが失透しやすくなる。また、Bは、ガラスの熱的安定性を高める成分であり、Biに対しBの含有量が多くなるにつれて、ガラスの熱的安定性が向上する。その一方、ガラスの軟化点が上昇する傾向がある。したがって、BiとBは、その特性がトレードオフの関係にあり、質量比Bi/Bの値を所定範囲に規制すれば、ガラスの軟化点と熱的安定性を最適化することが可能になり、二次焼成工程でタブレットの流動性を確保しつつ、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれる事態を防止しやすくなる。質量比Bi/Bの値は11以下、4.5〜10.8、6〜10.2、特に7.8〜9.9が好ましい。質量比Bi/Bの値が11より大きいと、ガラスの軟化点は低下するが、二次焼成工程でガラスが失透しやすくなる、或いは真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれやすくなる。
【0032】
Alは、ガラスの耐候性を高める成分である。その含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%である。Alの含有量が5%より多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、二次焼成工程で排気管を封着し難くなる。
【0033】
ZnOは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分である。その含有量は1〜15%、好ましくは2〜11%、より好ましくは3〜9%、更に好ましくは4〜8%である。ZnOの含有量が1%より少ないと、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制し難くなる。ZnOの含有量が15%より多いと、ガラス組成内の成分バランスが損なわれて、逆にガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透しやすくなる。
【0034】
MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量)は、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は0〜15%、1〜10%、特に3〜7%が好ましい。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が15%より多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、二次焼成工程で排気管を封着し難くなる。
【0035】
MgO、CaO、SrOの各成分の含有量は0〜5%、特に0〜2%が好ましい。各成分の含有量が5%より多いと、ガラスが失透、或いは分相しやすくなる。
【0036】
BaOの含有量は0〜10%であり、好ましくは1〜8%、より好ましくは3〜7%である。BaOの含有量が10%より多いと、ガラス組成内の成分バランスが損なわれて、逆にガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透しやすくなる。
【0037】
CuO+Feは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜
8%、特に1〜5%が好ましい。CuO+Feの含有量が8%より多いと、ガラスが失透しやすくなる。なお、ガラスの熱的安定性を確実に高める観点から、CuOの微量添加が好ましく、CuOの含有量は0.01%以上、0.1%以上、特に1〜5%以上が好ましい。同様にして、ガラスの熱的安定性を確実に高める観点から、Feの微量添加も好ましく、Feの含有量は0.01〜3%以上、特に0.1〜2%以上が好ましい。
【0038】
Sbは、ガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜5%、0〜2%、特に0.1〜1%が好ましい。Sbは、ビスマス系ガラスのネットワーク構造を安定化させる効果があり、ビスマス系ガラスにおいて、Sbを適宜添加すれば、Biの含有量が多い場合、例えばBiの含有量が75%以上であっても、ガラスの熱的安定性が低下し難くなる。ただし、Sbの含有量が5%より多いと、ガラス組成内の成分バランスが損なわれて、逆にガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透しやすくなる。なお、ガラスの熱的安定性を効果的に高める観点から、Sbの微量添加が好ましく、Sbの含有量は0.1%以上、特に0.4%以上が好ましい。
【0039】
CeOは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜5%、0〜2%、特に0〜1%が好ましい。CeOの含有量が5%より多いと、ガラス組成内の成分バランスが損なわれて、逆にガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透しやすくなる。なお、ガラスの熱的安定性を高める観点から、CeOの微量添加が好ましく、CeOの含有量は0.01%以上が好ましい。
【0040】
上記成分以外にも、ガラス組成中に以下の成分を添加することができる。
【0041】
SiOは、ガラスの耐候性を高める成分である。その含有量は0〜10%、特に0〜3%が好ましい。SiOの含有量が10%より多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、二次焼成工程で排気管を封着し難くなる。
【0042】
WOは、ガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜10%、特に0〜2%が好ましい。WOの含有量が10%より多いと、ガラス組成内の成分バランスが損なわれて、逆にガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透しやすくなる。
【0043】
In+Ga(InとGaの合量)は、ガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜3%が好ましい。ただし、In+Gaの含有量が5%より多いと、ガラス組成内の成分バランスが損なわれて、逆にガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透しやすくなる。なお、Inの含有量は0〜1%が好ましく、Gaの含有量は0〜0.5%が好ましい。
【0044】
LiO、NaO、KOおよびCsOの酸化物は、ガラスの軟化点を低下させる成分である。しかし、これらの酸化物は、溶融時にガラスの失透を促進する作用を有する。このため、これらの酸化物の含有量は合量で2%以下が好ましい。
【0045】
は、溶融時にガラスの失透を抑制する成分であるが、その含有量が1%より多いと、溶融時にガラスが分相しやすくなる。
【0046】
MoO、La、Y、Gdは、溶融時にガラスの分相を抑制する成分であるが、これらの成分の含有量が合量で3%より多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、二次焼成工程で排気管を封着し難くなる。
【0047】
なお、その他の成分であっても、ガラスの特性を損なわない範囲(好ましくは15%以下、特に5%以下)でガラス組成中に添加することができる。
【0048】
本発明のタブレットは、結晶性を完全に排除するものではないが、非結晶性であることが好ましい。結晶性のタブレットは、一旦、ビスマス系ガラスに結晶が析出すると、ビスマス系ガラスが軟化変形し難くなり、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれる事態を防止することができる。しかし、結晶性のタブレットは、結晶の析出時期をコントロールすることが困難であり、二次焼成工程でタブレットが軟化変形する前に結晶が析出し、排気管の封着強度が著しく低下するおそれがある。一方、非結晶性のタブレットは、結晶の析出時期をコントロールする必要がなく、また二次焼成工程でタブレットが軟化変形する前に結晶が析出する事態が生じないため、排気管の封着強度を確実に高めることができる。ここで、「非結晶性」とは、タブレットを作製する前のビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラー粉末の混合試料を示差熱分析したときに、550℃以下、好ましくは570℃以下の温度で結晶化ピークが発現しないものを指し、真空排気工程後のタブレットの表面が光沢を呈していれば、少なくとも上記分析で550℃以下の温度で結晶化ピークが発現しないものと看做してもよい。なお、示差熱分析は、大気中で行い、昇温速度10℃/分で室温から測定を開始する。
【0049】
本発明のタブレットは、耐火性フィラーとして、アルミナを1〜25体積%含有し、好ましくは2.5〜18体積%、より好ましくは3〜14体積%含有する。アルミナは、焼成時にタブレットの変形を抑制する成分である。しかし、アルミナが1体積%より少ないと、焼成時にタブレットが変形しやすくなるため、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれやすくなる。一方、アルミナが25体積%より多いと、二次焼成工程でタブレットの流動性が失われて、排気管の封着強度が低下しやすくなる。
【0050】
本発明のタブレットにおいて、アルミナの10%粒子径D10は0.1〜5μm、特に1〜4μmが好ましい。アルミナの10%粒子径D10が0.1μmより小さいと、二次焼成工程でアルミナがガラス中に溶け込みやすくなるため、タブレットの流動性が失われて、排気管の封着強度が低下しやすくなる。一方、アルミナの10%粒子径D10が5μmより大きいと、タブレットが変形しやすくなるため、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれやすくなる。
【0051】
本発明のタブレットにおいて、アルミナの平均粒子径D50は1〜25μm、特に3〜10μmが好ましい。アルミナの平均粒子径D50が1μmより小さいと、二次焼成工程でアルミナがガラス中に溶け込みやすくなるため、タブレットの流動性が失われて、排気管の封着強度が低下しやすくなる。一方、アルミナの平均粒子径D50が25μmより大きいと、タブレットが変形しやすくなるため、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれやすくなる。
【0052】
本発明のタブレットにおいて、アルミナの90%粒子径D90は10〜70μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。アルミナの90%粒子径D90が10μmより小さいと、二次焼成工程でアルミナがガラス中に溶け込みやすくなるため、タブレットの流動性が失われて、排気管の封着強度が低下しやすくなる。一方、アルミナの90%粒子径D90が70μmより大きいと、タブレットが変形しやすくなるため、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれやすくなる。
【0053】
本発明のタブレットにおいて、アルミナの比表面積は0.1〜3m/g、特に0.5〜2m/gが好ましい。アルミナの比表面積が0.1m/gより小さいと、タブレットが変形しやすくなるため、真空排気工程でタブレットが装置内部に引き込まれやすくなる。一方、アルミナの比表面積が3m/gより大きいと、二次焼成工程でアルミナがガラス中に溶け込みやすくなるため、タブレットの流動性が失われて、排気管の封着強度が低下しやすくなる。ここで、「比表面積」は、気体吸着BET法で測定した値を指し、JIS R1626に準拠した方法により測定した値を指す。
【0054】
本発明のタブレットにおいて、ビスマス系ガラスと耐火性フィラーの含有量は、ビスマス系ガラス40〜90体積%、耐火性フィラー10〜60体積%が好ましく、ビスマス系ガラス50〜75体積%、耐火性フィラー25〜50体積%がより好ましい。このように両者の含有量を規定した理由は、耐火性フィラーが10体積%より少ないと、タブレットの熱膨張係数を排気管等の熱膨張係数に整合させ難くなり、残留応力により封着部分や排気管等が破壊しやすくなる。一方、耐火性フィラーが60体積%より多いと、ビスマス系ガラスの含有量が相対的に少なくなるため、ビスマス系ガラスと排気管の反応性が低下し、排気管の封着強度が低下しやすくなる。
【0055】
耐火性フィラーとして、アルミナ以外に、ウイレマイト、ジルコン、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、酸化スズ、コーディエライト、β−ユークリプタイト、チタン酸アルミニウム、セルシアン、石英ガラス、ムライト、β−スポジュメン、アルミナ−シリカ系セラミックス等の材料を使用することができる。特に、ウイレマイトは、ビスマス系ガラスとの適合性が良好であるため、焼成時にビスマス系ガラスを失透させ難く、更には低膨張で機械的強度も優れている。
【0056】
本発明のタブレットは、ビスマス系ガラスと耐火性フィラーの双方において、PbOを含有する態様を排除するものではないが、既述の通り、環境的観点からPbOを実質的に含有しないことが好ましい。また、タブレット中にPbOを含有させると、焼成時にPb2+が拡散して、封着部分の電気絶縁性が低下する場合がある。
【0057】
本発明のタブレットは、以下のような工程で作製することができる。まず、粉末状のビスマス系ガラスと耐火性フィラーを混合し、混合粉末を作製した上で、バインダーや溶剤を添加し、スラリーを作製する。次に、このスラリーをスプレードライヤー等の造粒装置に投入し、顆粒を作製する。その際、顆粒は、溶剤が揮発する温度(例えば100〜200℃程度)で熱処理される。続いて、作製された顆粒を所定寸法の金型に投入した後、乾式プレス成形によりプレス体を作製する。その後、ベルト炉等の焼成炉にて、このプレス体に残存するバインダーを分解揮発させるとともに、ビスマス系ガラスが軟化する温度で焼成する。このようにしてタブレットが作製される。なお、タブレットの充填率は、金型への顆粒の充填率やプレス圧等により、調整することができる。
【0058】
スラリーの作製に用いるバインダーとしては、アクリル樹脂、エチルセルロ−ス、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体、ニトロセルロース、ポリメチルスチレン、ポリエチレンカーボネート、メタクリル酸エステル等が使用可能である。特に、アクリル樹脂、低分子量のポリエチレングリコールは、熱分解性が良好である。
【0059】
スラリーの作製に用いる溶剤としては、N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、α−ターピネオール、高級アルコール、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラリン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、水、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が使用可能である。特に、DMF、トルエンは、顆粒の作製に好適な沸点を有しており、バインダーの溶解性も良好である。
【0060】
顆粒の粒度は20〜250μmが好ましい。このようにすれば、金型への顆粒の充填性が向上するため、タブレットの充填率を高めやすくなる。また、ビスマス系ガラスが軟化する温度で複数回熱処理すると、タブレットの機械的強度が向上し、タブレットの欠損、破壊等を防止することができる。
【0061】
本発明のタブレットにおいて、充填率は71%以上であり、75%以上、80%以上、特に83%以上が好ましい。このようにすれば、二次焼成工程でタブレットが寸法変化し難くなるため、つまり二次焼成工程でタブレットが収縮し難くなるため、タブレットの流動性が向上し、排気管の封着強度を高めることができる。
【0062】
本発明のタブレットは、形状が限定されるものではなく、リング状、円柱状、三角柱、四角柱等の形状が考えられる。特に、排気管の封着を想定した場合、タブレットの形状は、貫通孔を有する形状が好ましく、貫通孔は排気管先端の開口部またはガラス基板の排気孔と同等程度の直径を有することが好ましい。このようにすれば、装置内部の排気効率を高めやすくなる。また、本発明のタブレットは、最大肉厚(通常、外周端部の肉厚)が2mm以下、1.8mm以下、特に1.5mm以下が好ましい。最大肉厚を小さくすると、二次焼成工程でタブレットの伝熱性が高まるため、ビスマス系ガラスと排気管の反応性が向上し、排気管の封着強度を高めやすくなる。逆に、最大肉厚が2mmより大きいと、二次焼成工程でタブレットの伝熱性が低下し、排気管の封着強度が低下しやすくなる。但し、最大肉厚が小さ過ぎると、例えば最大肉厚が0.5mm未満であると、タブレット自体の機械的強度が低下し、タブレットが破損しやすくなる。
【0063】
本発明のタブレットは、排気管を収納するための凹部を有することが好ましい。このようにすれば、タブレット成分が排気管の底面とガラス基板の間に介在するため、排気管の封着強度を高めることができる。図3(a)は、この形態を上方から見た概略図であり、図3(b)はこの形態の断面概略図である。図3から明らかなように、タブレット2には、凹部が形成されており、この凹部に排気管が収納される。具体的には、段付き面2a上に先端部が拡径化された排気管を載置することにより、排気管を凹部に安定して収納することができる。
【0064】
本発明のタブレットは、拡径された排気管の先端部に取り付けてタブレット一体型排気管として用いることが好ましい。このような構成にすれば、ガラス基板、タブレットおよび排気管の3つの部材において、排気孔を中心とした位置合わせが不要になり、排気管の取り付け作業を簡略化することができる。このようなタブレット一体型排気管は、排気管の先端部にタブレットを接触させた状態で焼成することにより作製することができる。また、タブレットの軟化温度付近で5〜10分程度焼成すれば、排気管とタブレットを接着することができる。この場合、治具により排気管を固定し、この状態の排気管にタブレットを接触させて、焼成する方法を採用することができる。排気管を固定する治具は、タブレットが融着しない材質を用いることが好ましく、例えばカーボン治具等が使用可能である。
【0065】
排気管としては、アルカリ金属酸化物を所定量含有させたSiO−Al−B系ガラスが好適であり、特に日本電気硝子株式会社製のガラスコード「FE−2」が好適である。この排気管は、熱膨張係数が85×10−7/℃、耐熱温度が550℃であり、寸法が、例えば外径5mm、内径3.5mmである。また、排気管は、拡径化した先端部を有する形状が好ましく、先端部にフレア部またはフランジ部を有する形状がより好ましい。排気管の先端部を拡径化する方法として、種々の方法を採用することができる。特に、排気管の先端部を回転させながらガスバーナーで加熱し、数種類の治具を用いて所定の形状に加工する方法が、量産性に優れている。
【0066】
本発明のタブレット一体型排気管は、拡径された排気管の先端部にタブレットと、高融点リングとが取り付けられており、且つタブレットを拡径された排気管の先端部側に取り付けて、高融点リングをタブレットよりも後端部側に取り付けることが好ましい。このような構成にすれば、排気管を取り付ける際のガラス基板等と接触する面積が排気管だけの場合より大きくなるため、排気管を安定して自立させることができ、ガラス基板等に対して、垂直に排気管を取り付けやすくなる。さらに、タブレット一体型排気管の製造工程において、タブレットを排気管に接着させる際、治具とタブレットの間に高融点リングを介在させると、特殊な治具を使用することなくタブレット一体型排気管を作製することができ、タブレット一体型排気管の製造効率が向上する。
【0067】
上記構成のタブレット一体型排気管において、タブレットが排気管の先端部の外周面に接着していることが好ましく、排気管の先端部の外周面のみに接着し、排気管先端部の先端面、すなわちガラス基板等と接着する面に接着していないことが好ましい。このようにすれば、ガラス基板等に形成された排気孔へガラスが流れ込む事態を防止しやすくなる。また、排気管に直接接着していない状態で、タブレットを介して高融点リングを排気管に固定すれば、二次焼成工程で高融点リング部分をクリップで加圧固定した状態で排気管を封着することができ、排気管の封着強度を高めることができる。
【0068】
また、高融点リングの材質として、ガラス、セラミックス、金属等を用いることができる。高融点リングとして、日本電気硝子株式会社製のガラスコード「ST−4」、「FN−13」を加工したものが好ましい。この高融点リングは、本発明のタブレットと同様の方法で作製することができる。
【0069】
本発明のタブレットは、PDPの排気管の封着に用いることが好ましい。本発明のタブレットは、二次焼成工程で良好に封着可能であるとともに、真空排気工程で再軟化し難いため、PDPの製造効率や輝度特性を高めることができる。
【0070】
本発明のタブレットは、VFD、FEDの排気管の封着にも用いることができる。これらの平面表示装置も、真空排気工程が存在し、真空排気工程を高温で行うと、製造効率や輝度特性を高めることができる。
【実施例1】
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0072】
表1は、本発明の実施例(試料No.2〜7、9〜14)および比較例(試料No.1、8)を示しており、特にアルミナの含有量と引き込み性の関係を示している。
【0073】
【表1】

【0074】
まず表中のガラス組成になるように各種酸化物、炭酸塩等の原料を調合したガラスバッチを準備し、これを白金坩堝に入れて1000〜1200℃で2時間溶融した。次に、水冷ローラーにより、溶融ガラスを薄片状に成形した。最後に、薄片状のガラスをボールミルにて粉砕後、目開き200メッシュの篩いを通過させて、平均粒径D50が10μmの各ビスマス系ガラス粉末を得た。耐火性フィラーとして、10%粒子径D10=2.7μm、平均粒子径D50=7.7μm、平均粒子径D90=20.7μmのアルミナ粉末(表中ではALMと表記)、平均粒子径D50=10μmのウイレマイト粉末(表中ではWILと表記)を使用した。ビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラーを混合し、各混合試料を得た。各混合試料を用いて、常法に従い、表中の充填率を有するタブレット試料(φ20mm、5mm厚)を作製した。
【0075】
流動径は、高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)上に各タブレット試料を載置し、流気式熱処理炉に投入した上で空気中で10℃/分の速度で昇温し、510℃で20分間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温し、焼成後のタブレットの直径を測定することで評価した。なお、流動径が20mm以上であれば、排気管を封着可能であることを意味する。
【0076】
失透状態は、次のようにして評価した。まず、各混合試料とビークル(アクリル樹脂含有のα−ターピネオール)を三本ロールミルで均一に混錬し、ペースト化した後、高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の端部に線状(長さ40×幅3×1.5mm厚)に塗布し、乾燥オーブンに入れ、150℃で10分間乾燥した。次に、室温から10℃/分で昇温し、基板を510℃で20分間焼成した後、室温まで10℃/分で降温した。最後に、得られた焼成体の表面を光学顕微鏡(50倍)で観察して、表面に結晶が認められなかったものを「○」とし、表面に結晶が認められたものを「×」とした。
【0077】
残留応力は、次のようにして評価した。高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)上に各タブレット試料を載置し、流気式熱処理炉に投入した上で、空気中で10℃/分の速度で昇温し、510℃で20分間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温した。次に、焼成後のタブレット直下のガラス基板にクラックが発生していないものを「○」とし、クラックが発生しているものを「×」として、評価した。
【0078】
引き込み性は、次のようにして評価した。まず、各試料とビークル(アクリル樹脂含有のα−ターピネオール)を三本ロールミルで均一に混錬し、ペースト化した後、5mmφの排気孔を有する100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の外周縁に線状(長さ40×幅3×1.5mm厚)に塗布し、乾燥オーブンに入れ、150℃で10分間乾燥した。次に、得られた乾燥膜上に100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)を正確に重ね合わせた後、クリップ等で加圧しながら、室温から10℃/分で昇温し、510℃で20分間焼成した後、室温まで10℃/分で降温した。そして、排気孔を通じて、得られたガラス容器内を真空ポンプで真空排気した。真空排気は、480℃で40分間行い、装置内部が10−6Torrとなるように調整した。その後、ガラス容器内を観察し、封着部分に引き込みによる気密リークが発生していないものを「○」、気密リークが発生していないものの、封着部分が装置内部に引き込まれて、封着幅が極度に小さい部分が発生したものを「△」、封着部分が装置内部に引き込まれて、気密リークが発生したものを「×」として評価した。
【0079】
表1から明らかなように、試料No.2〜7は、流動径、失透状態、残留応力、引き込み性の評価が良好であった。試料No.1は、引き込み性の評価が不良であった。試料No.8は、流動径の評価が不良であった。
【実施例2】
【0080】
表2は、本発明の実施例(試料No.9〜15)および比較例(試料No.16、17)を示している。
【0081】
【表2】

【0082】
まず表中のガラス組成になるように各種酸化物、炭酸塩等の原料を調合したガラスバッチを準備し、これを白金坩堝に入れて1000〜1200℃で2時間溶融した。次に、水冷ローラーにより、溶融ガラスを薄片状に成形した。最後に、薄片状のガラスをボールミルにて粉砕後、目開き200メッシュの篩いを通過させて、平均粒径D50が10μmの各ビスマス系ガラス粉末を得た。耐火性フィラーとして、10%粒子径D10=2.7μm、平均粒子径D50=7.7μm、平均粒子径D90=20.7μmのアルミナ粉末(表中ではALMと表記)、平均粒子径D50=10μmのウイレマイト粉末(表中ではWILと表記)、平均粒子径D50=10μmのコーディエライト粉末(表中ではCDRと表記)、平均粒子径D50=10μmの酸化スズ粉末(表中ではSnOと表記)を使用した。ビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラーを混合し、各混合試料を得た。各混合試料を用いて、常法に従い、表中の充填率を有するタブレット試料(φ20mm、5mm厚)を作製した。
【0083】
流動径は、高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)上に各タブレット試料を載置し、流気式熱処理炉に投入した上で10℃/分の速度で昇温し、510℃で20分間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温し、焼成後のタブレットの直径を測定することで評価した。
【0084】
失透状態は、次のようにして評価した。まず、各混合試料とビークル(アクリル樹脂含有のα−ターピネオール)を三本ロールミルで均一に混錬し、ペースト化した後、高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の端部に線状(長さ40×幅3×1.5mm厚)に塗布し、乾燥オーブンに入れ、150℃で10分間乾燥した。次に、室温から10℃/分で昇温し、基板を510℃で20分間焼成した後、室温まで10℃/分で降温した。最後に、得られた焼成体の表面を光学顕微鏡(50倍)で観察して、表面に結晶が認められなかったものを「○」とし、表面に結晶が認められたものを「×」とした。
【0085】
残留応力は、次のようにして評価した。高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)上に各タブレット試料を載置し、流気式熱処理炉に投入した上で10℃/分の速度で昇温し、510℃で20分間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温した。次に、焼成後のタブレット直下のガラス基板にクラックが発生していないものを「○」とし、クラックが発生しているものを「×」として、評価した。
【0086】
引き込み性は、次のようにして評価した。まず、各試料とビークル(アクリル樹脂含有のα−ターピネオール)を三本ロールミルで均一に混錬し、ペースト化した後、5mmφの排気孔を有する100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の外周縁に線状(長さ40×幅3×1.5mm厚)に塗布し、乾燥オーブンに入れ、150℃で10分間乾燥した。次に、得られた乾燥膜上に100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)を正確に重ね合わせた後、クリップ等で加圧しながら、室温から10℃/分で昇温し、510℃で20分間焼成した後、室温まで10℃/分で降温した。そして、排気孔を通じて、得られたガラス容器内を真空ポンプで真空排気した。真空排気は、480℃で40分間行い、装置内部が10−6Torrとなるように調整した。その後、ガラス容器内を観察し、封着部分に引き込みによる気密リークが発生していないものを「○」、気密リークが発生していないものの、封着部分が装置内部に引き込まれて、封着幅が極度に小さい部分が発生したものを「△」、封着部分が装置内部に引き込まれて、気密リークが発生したものを「×」として評価した。
【0087】
表2から明らかなように、試料No.9〜15は、流動径、失透状態、残留応力、引き込み性の評価が良好であった。試料No.16、17は、流動径、失透状態の評価が不良であった。
【実施例3】
【0088】
表3は、本発明の実施例(試料No.19〜24)および比較例(試料No.18)を示しており、特にタブレットの充填率と封着強度の関係を示している。
【0089】
【表3】

【0090】
まず表中のガラス組成になるように各種酸化物、炭酸塩等の原料を調合したガラスバッチを準備し、これを白金坩堝に入れて1000〜1200℃で2時間溶融した。次に、水冷ローラーにより、溶融ガラスを薄片状に成形した。最後に、薄片状のガラスをボールミルにて粉砕後、目開き200メッシュの篩いを通過させて、平均粒径D50が10μmの各ビスマス系ガラス粉末を得た。耐火性フィラーとして、10%粒子径D10=2.7μm、平均粒子径D50=7.7μm、平均粒子径D90=20.7μmのアルミナ粉末(表中ではALMと表記)、平均粒子径D50=10μmのウイレマイト粉末(表中ではWILと表記)を使用した。ビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラーを混合し、各混合試料を得た。各混合試料を用いて、常法に従い、表中の充填率を有するタブレット試料(φ20mm、5mm厚)を作製した。
【0091】
流動径は、高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)上に各タブレット試料を載置し、流気式熱処理炉に投入した上で10℃/分の速度で昇温し、510℃で20分間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温し、焼成後のタブレットの直径を測定することで評価した。
【0092】
封着強度は、次のようにして評価した。最初に、30mm角の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の中央部に各タブレット試料を載置した。次に、この試料を流気式熱処理炉に投入し、空気中で10℃/分の速度で昇温した後、500℃で20分間保持し、10℃/分の速度で室温まで降温した。最後に、焼成後の試料について、コンクリート上に1m落下させる操作を10回繰り返し、タブレットとガラス基板が剥離しなかったものを「○」、タブレットとガラス基板の界面にクラックが発生したものを「△」、タブレットとガラス基板が剥離したものを「×」として評価した。
【0093】
引き込み性は、次のようにして評価した。まず、各試料とビークル(アクリル樹脂含有のα−ターピネオール)を三本ロールミルで均一に混錬し、ペースト化した後、5mmφの排気孔を有する100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の外周縁に線状(長さ40×幅3×1.5mm厚)に塗布し、乾燥オーブンに入れ、150℃で10分間乾燥した。次に、得られた乾燥膜上に100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)を正確に重ね合わせた後、クリップ等で加圧しながら、室温から10℃/分で昇温し、510℃で20分間焼成した後、室温まで10℃/分で降温した。そして、排気孔を通じて、得られたガラス容器内を真空ポンプで真空排気した。真空排気は、480℃で40分間行い、装置内部が10−6Torrとなるように調整した。その後、ガラス容器内を観察し、封着部分に引き込みによる気密リークが発生していないものを「○」、気密リークが発生していないものの、封着部分が装置内部に引き込まれて、封着幅が極度に小さい部分が発生したものを「△」、封着部分が装置内部に引き込まれて、気密リークが発生したものを「×」として評価した。
【0094】
表3から明らかなように、試料No.19〜24は、流動径、封着状態、引き込み性の評価が良好であった。試料No.18は、流動径、封着強度の評価が不良であった。
【実施例4】
【0095】
表4は、本発明の実施例(試料No.25〜31)を示しており、特にアルミナの粒度の影響を示している。
【0096】
【表4】

【0097】
まず表中のガラス組成になるように各種酸化物、炭酸塩等の原料を調合したガラスバッチを準備し、これを白金坩堝に入れて1000〜1200℃で2時間溶融した。次に、水冷ローラーにより、溶融ガラスを薄片状に成形した。最後に、薄片状のガラスをボールミルにて粉砕後、目開き200メッシュの篩いを通過させて、平均粒径D50が10μmの各ビスマス系ガラス粉末を得た。耐火性フィラーとして、表中の粒度を有するアルミナ粉末(表中ではALMと表記)、平均粒子径D50=10μmのウイレマイト粉末(表中ではWILと表記)を使用した。ビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラーを混合し、各混合試料を得た。各混合試料を用いて、常法に従い、表中の充填率を有するタブレット試料(φ20mm、5mm厚)を作製した。
【0098】
流動径は、高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)上に各タブレット試料を載置し、流気式熱処理炉に投入した上で10℃/分の速度で昇温し、510℃で20分間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温し、焼成後のタブレットの直径を測定することで評価した。
【0099】
封着強度は、次のようにして評価した。最初に、30mm角の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の中央部に各タブレット試料を載置した。次に、この試料を流気式熱処理炉に投入し、空気中で10℃/分の速度で昇温した後、500℃で20分間保持し、10℃/分の速度で室温まで降温した。最後に、焼成後の試料について、コンクリート上に1m落下させる操作を10回繰り返し、タブレットとガラス基板が剥離しなかったものを「○」、タブレットとガラス基板の界面にクラックが発生したものを「△」、タブレットとガラス基板が剥離したものを「×」として評価した。
【0100】
引き込み性は、次のようにして評価した。まず、各試料とビークル(アクリル樹脂含有のα−ターピネオール)を三本ロールミルで均一に混錬し、ペースト化した後、5mmφの排気孔を有する100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)の外周縁に線状(長さ40×幅3×1.5mm厚)に塗布し、乾燥オーブンに入れ、150℃で10分間乾燥した。次に、得られた乾燥膜上に100×100×1.8mm厚の高歪点ガラス基板(日本電気硝子株式会社製PP−8C)を正確に重ね合わせた後、クリップ等で加圧しながら、室温から10℃/分で昇温し、510℃で20分間焼成した後、室温まで10℃/分で降温した。そして、排気孔を通じて、得られたガラス容器内を真空ポンプで真空排気した。真空排気は、480℃で40分間行い、装置内部が10−6Torrとなるように調整した。その後、ガラス容器内を観察し、封着部分に引き込みによる気密リークが発生していないものを「○」、気密リークが発生していないものの、封着部分が装置内部に引き込まれて、封着幅が極度に小さい部分が発生したものを「△」、封着部分が装置内部に引き込まれて、気密リークが発生したものを「×」として評価した。
【0101】
[実施例1]〜[実施例4]において、実験の便宜上、φ20mm、5mm厚のタブレット等を用いたが、貫通孔を有するタブレット、排気管を収納するための凹部を有するタブレットでも同様の傾向が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のタブレットは、PDP、FED、VFDの排気管の封着に好適である。その他にも、本発明のタブレットは、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、ICセラミックパッケージ等の各種セラミックパッケージ、球レンズキャップ部品等の各種金属パッケージの封着に適用することもできる。
【符号の説明】
【0103】
1 排気管
2 タブレット
3 高融点リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス系ガラスと耐火性フィラーを含有するタブレットにおいて、
(1)ビスマス系ガラスが、ガラス組成として、質量%で、Bi 70〜90%、B 2〜12%、Al 0〜5%、ZnO 1〜15%、BaO 0〜10%、CuO+Fe 0〜8%を含有し、
(2)耐火性フィラーとして、アルミナを1〜25体積%含有し、
(3)充填率が71%以上であることを特徴とするタブレット。
【請求項2】
アルミナの平均粒子径D50が1〜25μmであることを特徴とする請求項1に記載のタブレット。
【請求項3】
アルミナの10%粒子径D10が0.1〜5μmおよび/または90%粒子径D90が10〜70μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のタブレット。
【請求項4】
耐火性フィラーとして、更にウイレマイトを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタブレット。
【請求項5】
ビスマス系ガラスの含有量が40〜90体積%であり、耐火性フィラーの含有量が10〜60体積%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタブレット。
【請求項6】
貫通孔を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタブレット。
【請求項7】
最大肉厚が2mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタブレット。
【請求項8】
実質的にPbOを含有しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタブレット。
【請求項9】
排気管の封着に用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のタブレット。
【請求項10】
排気管を収納するための凹部を有することを特徴とする請求項1〜9に記載のタブレット。
【請求項11】
プラズマディスプレイパネルの排気管の封着に用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のタブレット。
【請求項12】
拡径された排気管の先端部にタブレットが取り付けられているタブレット一体型排気管において、
タブレットが請求項1〜11のいずれかに記載のタブレットであることを特徴とするタブレット一体型排気管。
【請求項13】
拡径された排気管の先端部にタブレットと高融点リングが取り付けられているタブレット一体型排気管において、
タブレットが請求項1〜11のいずれかに記載のタブレットであり、
且つタブレットが拡径された排気管の先端部側、高融点リングが後端部側に取り付けられていることを特徴とするタブレット一体型排気管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37682(P2011−37682A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187936(P2009−187936)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】