説明

タワークレーン

【課題】 タワーブームとリヤポストとの間にバックストップシリンダを取付けるときの作業性を高める。
【解決手段】
リヤポスト18とバックストップシリンダ25との間に、第1のリンク30、第2のリンク33、連結具35、ストッパ36等からなるシリンダ保持装置29を設ける構成とする。これにより、バックストップシリンダ25をリヤポスト18との取付部位とタワーブーム10との取付部位とを結ぶ軸線L−L上に保持することができ、バックストップシリンダ25のロッド25Bを伸長させてタワーブーム10のシリンダブラケット10Cに取付ける間、作業者は重量物であるバックストップシリンダ25を支える必要がない。このため、バックストップシリンダ25を取付けるときの作業者の負担を軽減し、その作業性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設現場等において地上と高所との間で荷物を運搬するのに好適に用いられるタワークレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高層ビルの建設現場等においては、地上と高所との間で資材等の荷物を運搬するためにタワークレーンが好適に用いられる。そして、このタワークレーンは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に設けられた作業装置(フロントアタッチメント)とにより構成されている。
【0003】
ここで、タワークレーンの作業装置は、上部旋回体に起伏可能に取付けられたタワーブームと、該タワーブームの先端側に起伏可能に取付けられたタワージブと、タワーブームの先端側に回動可能に取付けられタワージブにペンダントロープを介して連結されるフロントポストと、タワーブームの先端側に回動可能に取付けられフロントポストとの間にタワージブを起伏させるジブ起伏ロープが巻回して設けられるリヤポストと、該リヤポストとタワーブームとの間に設けられたバックストップシリンダとを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−60165号公報
【0005】
この従来技術によるタワークレーンは、タワーブームを地面に対して起立させた状態で、ジブ起伏ロープをジブ起伏ウインチによって巻取り、巻出しすることによりフロントポストをリヤポストに対して接近、離間させる。これにより、フロントポストにペンダントロープを介して連結されたタワージブがタワーブームの先端側で起伏し、このタワージブの先端側を所望の高さ位置まで持上げた状態で吊荷フックを昇降させることにより、吊荷フックに吊下げた荷物を地上と高所との間で運搬することができる。そして、この吊荷作業時において、リヤポストとタワーブームとの間に設けられたバックストップシリンダは、リヤポストを下側から支える構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したタワークレーンは、通常、タワーブーム、タワージブ等を分解した状態でトレーラによって作業現場に個別に搬送し、これらタワーブーム等を作業現場で組立てるようにしている。
【0007】
そして、タワークレーンの組立作業時には、タワーブームを地面に対してほぼ水平となるように延ばした状態で、タワーブームの先端側にタワージブ、フロントポスト、リヤポスト等を取付けた後、このタワーブームの先端側とリヤポストとの間にバックストップシリンダを取付けるようになっている。
【0008】
この場合、バックストップシリンダは、通常、長さ方向の一端側がリヤポストにピン等を用いて回動可能に取付けられており、タワーブームの先端側にリヤポストを取付けた状態では、バックストップシリンダの他端側は自由端となっている。
【0009】
従って、バックストップシリンダを伸長させてその他端側をタワーブームに取付けるときには、タワーブームに設けられたシリンダ取付用のブラケットとバックストップシリンダの他端側とを位置合わせするため、作業者がバックストップシリンダを保持する必要がある。
【0010】
このように、タワーブームに設けられたシリンダ取付用のブラケットとバックストップシリンダの他端側とを位置合わせする間、重量物であるバックストップシリンダを作業者が保持することにより、バックストップシリンダの取付け作業時における作業者の負担が増大し、その作業性が低下してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、タワーブームとリヤポストとの間にバックストップシリンダを取付けるときの作業性を高めることができるようにしたタワークレーンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため本発明は、地面に対して起伏可能となったタワーブームと、該タワーブームの先端側に起伏可能に取付けられたタワージブと、前記タワーブームの先端側に回動可能に取付けられ前記タワージブにペンダントロープを介して連結されるフロントポストと、前記タワーブームの先端側に回動可能に取付けられ前記フロントポストとの間に前記タワージブを起伏させるジブ起伏ロープが巻回して設けられるリヤポストと、該リヤポストと前記タワーブームとの間に取付けられ前記リヤポストを下側から支えるバックストップシリンダとを備えてなるタワークレーンに適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記リヤポストまたは前記タワーブームには、前記リヤポストと前記タワーブームとの間に前記バックストップシリンダを取付けるときに当該バックストップシリンダを保持するシリンダ保持装置を設けたことにある。
【0014】
請求項2の発明は、前記シリンダ保持装置は、基端側が前記リヤポストまたは前記タワーブーム側に取付けられた第1のリンクと、基端側が前記バックストップシリンダ側に取付けられた第2のリンクと、前記第1のリンクの先端側と前記第2のリンクの先端側とを折畳位置と拡開位置との間で変位可能に連結する連結具と、前記第1,第2のリンクのうち一方のリンクに設けられ他方のリンクに当接して拡開位置に保持するストッパとにより構成したことにある。
【0015】
請求項3の発明は、前記第1,第2のリンクには、これら各リンクの長手方向に沿って前記連結具がスライド可能に係合する長溝穴を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、タワーブームとリヤポストとの間にバックストップシリンダを取付けるときに、このバックストップシリンダを、リヤポストまたはタワーブームに設けたシリンダ保持装置によって保持しておくことができる。これにより、重量物であるバックストップシリンダを作業者が支える必要がないので、バックストップシリンダを取付けるときの作業者の負担を低減することができ、その作業性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、例えばバックストップシリンダをリヤポスト等と共に輸送するときには、第1,第2のリンクを折畳位置に変位させることにより、バックストップシリンダをリヤポスト等にコンパクトに格納しておくことができる。また、タワーブームとリヤポストとの間にバックストップシリンダを取付けるときには、第1,第2のリンクを拡開位置に変位させてストッパによって保持することにより、バックストップシリンダを安定して保持することができ、バックストップシリンダを取付けるときの作業性を高めることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、第1,第2のリンクに長手方向に延びる長溝穴を設け、この長溝穴に連結具がスライド可能に係合する構成としたので、バックストップシリンダにシリンダ保持装置を取付けたままで吊荷作業を行ったとしても、この吊荷作業時におけるバックストップシリンダの伸縮動作が、シリンダ保持装置によって妨げられることがない。このため、バックストップシリンダの取付け作業が終了した後でも、シリンダ保持装置を取外す必要がなく、この分、バックストップシリンダの取付け作業を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るタワークレーンの実施の形態を、自走式のタワークレーンを例に挙げ、図1ないし図11を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
図中、1は自走式のタワークレーンで、該タワークレーン1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前部側に設けられた後述の作業装置9とからなり、この作業装置9を用いて地上と高所との間で荷物を運搬する吊荷作業を行うものである。
【0021】
ここで、上部旋回体3には、後述するブーム起伏ロープ21の巻取り、巻出しを行うブーム起伏ウインチ4、後述する巻上ロープ23の巻取り、巻出しを行う巻上ウインチ5等が設けられている。
【0022】
6は基端側が上部旋回体3に回動可能に取付けられたマストで、該マスト6の先端側には、一定の長さ寸法を有するペンダントロープ7の一端側が接続され、該ペンダントロープ7の他端側は、後述するタワーブーム10の先端側に接続されている。また、マスト6の先端側にはシーブ8が回転可能に設けられ、該シーブ8には後述のブーム起伏ロープ21が巻回されている。
【0023】
9は上部旋回体3の前部側に設けられた作業装置で、該作業装置9は、後述のタワーブーム10、タワージブ13、フロントポスト15、リヤポスト18、バックストップシリンダ25等により構成されている。
【0024】
10は基端側が上部旋回体3に回動可能に取付けられたタワーブームで、該タワーブーム10は、長さ方向に延びる複数(2本のみ図示)の支柱10Aと、該各支柱10A間を連結する多数の梁材10B,10B,…とにより強固な骨組み構造をなしている。そして、タワーブーム10は、ブーム起伏ウインチ4によってブーム起伏ロープ21を巻取り、巻出すことにより、図1に示す如く地面に対してほぼ垂直に起立した位置と、図2に示す如く地面に対してほぼ水平に延びた位置との間で起伏するものである。
【0025】
ここで、タワーブーム10の基端側には、図1に示す如くジブ起伏ウインチ11が設けられ、該ジブ起伏ウインチ11は、後述するジブ起伏ロープ22の巻取り、巻出しを行うものである。また、タワーブーム10の先端側には、トップシーブ12が回転可能に設けられ、該トップシーブ12は、図3等に示すように、互いに独立して回転する複数枚のシーブによって構成され、後述するジブ起伏ロープ22、巻上ロープ23等が巻回されるものである。さらに、トップシーブ12の近傍に位置するタワーブーム10の梁材10Bには、後述のバックストップシリンダ25が取付けられる左,右のシリンダブラケット10C,10Cが固着され、該各シリンダブラケット10Cには、後述のピン27が挿通されるピン孔10Dが穿設されている。
【0026】
13はタワーブーム10の先端側に起伏可能に取付けられたタワージブで、該タワージブ13は、長さ方向に延びる複数(2本のみ図示)の支柱13Aと、該各支柱13A間を連結する多数の梁材13B,13B,…とにより強固な骨組み構造をなしている。そして、タワージブ13は、ジブ起伏ウインチ11によってジブ起伏ロープ22を巻取り、巻出すことにより、タワーブーム10の先端側で起伏するものである。また、タワージブ13の先端側には、巻上ロープ23が巻回されるシーブ14が回転可能に設けられている。
【0027】
15は基端側がタワーブーム10の先端側に回動可能に取付けられたフロントポストで、該フロントポスト15の先端側には、一定の長さ寸法を有するペンダントロープ16の一端側が接続され、該ペンダントロープ16の他端側は、タワージブ13の先端側に接続されている。また、フロントポスト15の先端側にはフロント側シーブ17が回転可能に設けられている。
【0028】
18はフロントポスト15よりも後側に配置され基端側がタワーブーム10の先端側に回動可能に取付けられたリヤポストで、該リヤポスト18の先端側には、一定の長さ寸法を有するペンダントロープ19の一端側が接続され、該ペンダントロープ19の他端側はタワーブーム10の基端側に接続されている。また、リヤポスト18の先端側にはリヤ側シーブ20が回転可能に設けられ、該リヤ側シーブ20とフロントポスト15に設けられたフロント側シーブ17との間には、ジブ起伏ロープ22が巻回される構成となっている。
【0029】
ここで、図3及び図5に示すように、リヤポスト18は、左,右方向で対向しつつ長手方向に延びる角筒状の左,右の支柱18A,18Aと、これら左,右の支柱18A,18A間を連結する角筒状の上連結体18B,下連結体18Cとを備えている。また、上連結体18Bには、後述のバックストップシリンダ25が取付けられる左,右のシリンダブラケット18D,18Dが固着され、該各シリンダブラケット18Dには、図4等に示すように後述のピン26が挿通されるピン孔18Eが穿設されている。さらに、下連結体18Cには、各シリンダブラケット18Dの下方に位置して後述する第1のリンク30が取付けられる左,右のリンクブラケット18F,18Fが固着されている。
【0030】
21はマスト6のシーブ8に巻回して設けられたブーム起伏ロープで、該ブーム起伏ロープ21は、ブーム起伏ウインチ4によって巻取り、巻出しされるものである。そして、ブーム起伏ウインチ4によってブーム起伏ロープ21を巻取り、巻出しすることにより、マスト6の先端側が前,後方向に回動し、該マスト6の先端側にペンダントロープ7を介して連結されたタワーブーム10が、地面に対して起伏する構成となっている。
【0031】
22はフロントポスト15のフロント側シーブ17とリヤポスト18のリヤ側シーブ20との間に巻回されたジブ起伏ロープで、該ジブ起伏ロープ22は、タワーブーム10の先端側に設けられたトップシーブ12等を介してジブ起伏ウインチ11に導かれている。そして、ジブ起伏ロープ22をジブ起伏ウインチ11によって巻取り、巻出しすることにより、フロントポスト15の先端側がリヤポスト18に接近、離間するように回動し、該フロントポスト15の先端側にペンダントロープ16を介して連結されたタワージブ13が、タワーブーム10の先端側で起伏する構成となっている。
【0032】
23は一端側が巻上ウインチ5に巻回された巻上ロープで、該巻上ロープ23の他端側は、タワーブーム10の先端側に設けられたトップシーブ12、タワージブ13の先端側に設けられたシーブ14等を介してタワージブ13の先端側に掛止めされている。そして、タワージブ13のシーブ14から下方に延びた巻上ロープ23の途中部位には、吊荷フック24が取付けられている。従って、巻上ロープ23を巻上ウインチ5によって巻取り、巻出しすることにより、吊荷フック24が昇降する構成となっている。
【0033】
25,25はリヤポスト18とタワーブーム10との間に取付けられた左,右のバックストップシリンダで、該各バックストップシリンダ25は、リヤポスト18を下側から支えることにより、当該リヤポスト18がタワーブーム10側に回動するのを抑えるものである。
【0034】
ここで、各バックストップシリンダ25は、チューブ25Aと、該チューブ25Aに対して伸縮するロッド25Bとを有する油圧シリンダによって構成され、ロッド25Bの突出端部には取付アイ25Cが設けられている。そして、バックストップシリンダ25の基端側となるチューブ25Aのボトム側は、リヤポスト18に設けられたシリンダブラケット18Dにピン26を用いて回動可能に取付けられている。一方、バックストップシリンダ25の先端側となるロッド25Bの取付アイ25Cは、図9等に示すように、タワーブーム10の先端側のシリンダブラケット10Cにピン27を用いて回動可能に取付けられる構成となっている。
【0035】
28,28はリヤポスト18の下連結体18Cに設けられた左,右のシリンダ受け部材で、該各シリンダ受け部材28は、図3等に示す如く略U字状に折曲げられた板体により形成され、上連結体18Bに固着された各シリンダブラケット18Dの下方に配置されている。そして、各シリンダ受け部材28は、図3及び図4に示すように、各バックストップシリンダ25のロッド25Bをタワーブーム10のシリンダブラケット10Cから取外した状態で、このバックストップシリンダ25のチューブ25Aを把持するものである。
【0036】
これにより、バックストップシリンダ25を、リヤポスト18に沿って延びた状態で当該リヤポスト18側に格納しておくことができ、シリンダブラケット18Dにピン26を用いて回動可能に取付けられたバックストップシリンダ25が、輸送時等においてピン26を中心として不用意に回動するのを抑えることができる構成となっている。
【0037】
このように、各バックストップシリンダ25は、図3及び図4に示すように、シリンダ受け部材28によって把持されることによりリヤポスト18に沿って延びた格納姿勢と、図6に示すように、後述のシリンダ保持装置29によって保持されることにより、リヤポスト18との取付部位(シリンダブラケット18Dのピン孔18E)とタワーブーム10との取付部位(シリンダブラケット10Cのピン孔10D)とを結ぶ軸線L−L上に配置された取付姿勢との間で変位するものである。
【0038】
29,29はリヤポスト18と各バックストップシリンダ25との間に設けられた左,右のシリンダ保持装置で、該各シリンダ保持装置29は、図3ないし図8等に示すように、タワーブーム10の先端側とリヤポスト18との間にバックストップシリンダ25を取付けるときに、このバックストップシリンダ25を保持するものである。そして、各シリンダ保持装置29は、後述する第1のリンク30、クランプ部材32、第2のリンク33、連結具35、ストッパ36等により構成されている。
【0039】
30は基端側がリヤポスト18に回動可能に取付けられた第1のリンクで、該第1のリンク30は、1枚の細長い板体として形成されている。そして、第1のリンク30の基端側は、リヤポスト18の下連結体18Cに設けられたリンクブラケット18Fにピン31を用いて回動可能に取付けられ、先端側は自由端となっている。また、第1のリンク30の先端側(自由端側)には、該第1のリンク30の長手方向に沿って先端側から中間部位まで延びる長溝穴30Aが設けられ、該長溝穴30A内には後述する連結具35のボルト35Aがスライド可能に係合する構成となっている。
【0040】
32はバックストップシリンダ25のチューブ25Aに着脱可能に取付けられたクランプ部材で、該クランプ部材32は、半円弧状に湾曲した一対の湾曲板32A,32Aによってチューブ25Aを挟込むことにより、チューブ25Aの長手方向における所望の位置に取付けられるものである。そして、一方の湾曲板32Aの外周面には、後述する第2のリンク33を取付けるためのリンク取付板32Bが外部に向けて突設されている。
【0041】
33は基端側がクランプ部材32を介してバックストップシリンダ25側に回動可能に取付けられた第2のリンクで、該第2のリンク33は、一定の間隔をもって対面する細長い2枚の板体33A,33Aにより形成されている(図8参照)。そして、第2のリンク33の基端側は、バックストップシリンダ25のチューブ25Aに固定されたクランプ部材32のリンク取付板32Bにピン34を用いて回動可能に取付けられ、先端側は自由端となっている。また、第2のリンク33を構成する各板体33Aの先端側(自由端側)には、該第2のリンク33の長手方向に沿って先端側から中間部位まで延びる長溝穴33Bがそれぞれ設けられ、該各長溝穴33B内には後述する連結具35のボルト35Aがスライド可能に係合する構成となっている。
【0042】
35は第1のリンク30の先端側と第2のリンク33の先端側との間に設けられた連結具で、該連結具35は、第1,第2のリンク30,33を、図3及び図4に示す如くバックストップシリンダ25を格納姿勢としたときの折畳位置と、図5及び図6に示す如くバックストップシリンダ25を取付姿勢としたときの拡開位置との間で変位可能に連結するものである。ここで、連結具35は、例えば図8に示すように、第1のリンク30の長溝穴30Aと第2のリンク33の各長溝穴33Bとに挿通されるボルト35Aと、第2のリンク33を左,右方向から挟んでボルト35Aに挿通される2枚のワッシャ35B,35Bと、ボルト35Aに螺着されるナット35Cとにより構成されている。
【0043】
そして、第2のリンク33を構成する各板体33A間に第1のリンク30を挿入した状態で、第2のリンク33の各長溝穴33B、第1のリンク30の長溝穴30A、各ワッシャ35Bにボルト35Aを挿通し、このボルト35Aにナット35Cを螺着することにより、第1のリンク30の先端側と第2のリンク33の先端側とが、連結具35によって変位(屈曲)可能に連結される構成となっている。
【0044】
この場合、連結具35は、第1のリンク30の長溝穴30Aと第2のリンク33の各長溝穴33Bにスライド可能に係合しているので、第1のリンク30と第2のリンク33とは、例えば図3及び図4に示す如くバックストップシリンダ25をリヤポスト18側に格納したときの折畳位置と、図5及び図6に示す如くバックストップシリンダ25をリヤポスト18とタワーブーム10との間に取付けるときの拡開位置の他に、図10に示す如く バックストップシリンダ25の縮小動作に追従して当該バックストップシリンダ25とリヤポスト18との間でほぼ直線状に伸展する位置まで変位することができる構成となっている。
【0045】
36は第2のリンク33の先端側に設けられたストッパで、該ストッパ36は、図8等に示す如く長方形の平板状をなし、第2のリンク33を構成する各板体33Aの先端部間に一体的に形成され、または溶接等の手段を用いて固着されている。
【0046】
そして、ストッパ36は、図5ないし図7に示すように、リヤポスト18とタワーブーム10との間にバックストップシリンダ25を取付けるときに、第1のリンク30に当接することにより、第1のリンク30と第2のリンク33とを拡開位置に保持し、バックストップシリンダ25を、リヤポスト18との取付部位(シリンダブラケット18Dのピン孔18E)とタワーブーム10との取付部位(シリンダブラケット10Cのピン孔10D)とを結ぶ軸線L−L上に位置決めするものである。
【0047】
即ち、ピン26を中心としてバックストップシリンダ25を回動変位させ、このバックストップシリンダ25をリヤポスト18との取付部位とタワーブーム10との取付部位とを結ぶ軸線L−L上に配置した状態では、図6及び図7に示すように、第1のリンク30と第2のリンク33とがなすピン26側の角度θは180°未満(θ<180°)となり、第1のリンク30と第2のリンク33とは、逆へ字状に屈曲(交差)した拡開位置に変位する。
【0048】
このとき、バックストップシリンダ25は、その自重によりピン26を中心としてリヤポスト18側に回動しようとするため、第1のリンク30と第2のリンク33とに対し、連結具35を中心として両者間の角度θが小さくなるように屈曲させようとする力Fが作用する。これに対し、第2のリンク33に固着されたストッパ36が第1のリンク30に当接することにより、第1のリンク30と第2のリンク33とは、これ以上に屈曲することがなく、図6及び図7に示す逆へ字状に屈曲した拡開位置に保持される。
【0049】
そして、ストッパ36によって第1,第2のリンク30,33を拡開位置に保持することにより、バックストップシリンダ25は、リヤポスト18との取付部位(シリンダブラケット18Dのピン孔18E)とタワーブーム10との取付部位(シリンダブラケット10Cのピン孔10D)とを結ぶ軸線L−L上に安定して保持される構成となっている。
【0050】
一方、第1のリンク30と第2のリンク33とが、図6及び図7に示す如く逆へ字状に屈曲した状態において、作業者等が連結具35をピン26側へと持上げた場合には、ストッパ36を第1のリンク30から離脱させることができる。これにより、バックストップシリンダ25は、シリンダその自重によりピン26を中心としてリヤポスト18側に回動し、第1のリンク30と第2のリンク33とが、図3及び図4に示す折畳位置に変位することにより、バックストップシリンダ25をシリンダ受け部材28によって把持し、リヤポスト18側に格納することができる構成となっている。
【0051】
本実施の形態によるタワークレーン1は上述の如き構成を有するもので、以下、このタワークレーン1を構成するタワーブーム10とリヤポスト18との間にバックストップシリンダ25を取付ける作業について説明する。
【0052】
まず、図2に示すように、タワーブーム10を地面に対してほぼ水平となるように伏せた状態で、タワーブーム10の先端側にタワージブ13の基端側、フロントポスト15の基端側、リヤポスト18の基端側をそれぞれ回動可能に取付ける。そして、例えば他のクレーン等(図示せず)を用いて、リヤポスト18を地面に対してほぼ垂直となるように保持する。
【0053】
このとき、図3及び図4に示すように、バックストップシリンダ25(チューブ25A)の基端側は、リヤポスト18のシリンダブラケット18Dにピン26を用いて回動可能に取付けられ、チューブ25Aの中間部位はシリンダ受け部材28によって把持されている。 そして、シリンダ保持装置29を構成する第1のリンク30と第2のリンク33とは、折畳位置となってリヤポスト18とバックストップシリンダ25との間を連結している。
【0054】
この状態で、作業者は、バックストップシリンダ25のチューブ25Aをシリンダ受け部材28から離脱させ、ピン26を中心としてバックストップシリンダ25の先端側をリヤポスト18から離れる方向に回動させる。これにより、シリンダ保持装置29を構成する第1のリンク30と第2のリンク33とは、バックストップシリンダ25の回動に追従し、図3及び図4に示す折畳位置から図5及び図6等に示す拡開位置へと変位する。
【0055】
そして、バックストップシリンダ25が、リヤポスト18との取付部位とタワーブーム10との取付部位とを結ぶ軸線L−L上に達したときには、第1のリンク30と第2のリンク33とが逆へ字状に屈曲し、第2のリンク33に固着されたストッパ36が、第1のリンク30に当接する(図6及び図7参照)。
【0056】
このとき、バックストップシリンダ25の自重により、図7に示すように、第1のリンク30と第2のリンク33とに対し、連結具35を中心として両者間の角度θが小さくなるように屈曲させようとする力Fが作用する。しかし、第2のリンク33に固着されたストッパ36が第1のリンク30に当接することにより、第1のリンク30と第2のリンク33とは、これ以上に屈曲することがなく、第1,第2のリンク30,33は、逆へ字状に屈曲した拡開位置に保持される。
【0057】
これにより、バックストップシリンダ25を、作業者によって支えることなく、シリンダ保持装置29によってリヤポスト18との取付部位とタワーブーム10との取付部位とを結ぶ軸線L−L上に安定して保持することができる。従って、この状態でバックストップシリンダ25のロッド25Bを伸長させるだけで、図9に示すように、ロッド25Bの取付アイ25Cと、タワーブーム10に設けたシリンダブラケット10Cのピン孔10Dとを位置合わせし、両者をピン27を用いて容易に連結することができる。
【0058】
かくして、本実施の形態によれば、リヤポスト18とバックストップシリンダ25との間に、第1のリンク30、第2のリンク33、連結具35、ストッパ36等からなるシリンダ保持装置29を設けることにより、バックストップシリンダ25をリヤポスト18との取付部位(シリンダブラケット18Dのピン孔18Eの中心)とタワーブーム10との取付部位(シリンダブラケット10Cのピン孔10Dの中心)とを結ぶ軸線L−L上に保持することができる。
【0059】
これにより、バックストップシリンダ25のチューブ25Aからロッド25Bを伸長させ、このロッド25Bに設けた取付アイ25Cをピン27を用いてタワーブーム10のシリンダブラケット10Cに取付ける間、作業者は重量物であるバックストップシリンダ25を支える必要がない。このため、リヤポスト18とタワーブーム10の先端側との間にバックストップシリンダ25を取付けるときの作業者の負担を軽減することができ、このバックストップシリンダ25を取付けるときの作業性を高めることができる。
【0060】
一方、図9に示す如くリヤポスト18とタワーブーム10の先端側との間にバックストップシリンダ25を取付けた後には、図2中に二点鎖線で示すように、リヤポスト18をタワーブーム10側に傾けることにより、リヤポスト18の先端側とタワーブーム10の基端側との間をペンダントロープ19によって連結する。
【0061】
この場合には、まず、図10に示すように、バックストップシリンダ25のロッド25Bを縮小させることにより、リヤポスト18をタワーブーム10側に傾ける。このとき、バックストップシリンダ25とリヤポスト18とは、第1のリンク30、第2のリンク33、連結具35によって連結されているが、連結具35は、第1のリンク30に設けた長溝穴30Aと第2のリンク33に設けた長溝穴33Bとにスライド可能に係合している。
【0062】
このため、図10に示すように、第1のリンク30と第2のリンク33とは、バックストップシリンダ25の縮小動作に追従し、当該バックストップシリンダ25とリヤポスト18との間でほぼ直線状に伸展することができる。従って、タワーブーム10に対するリヤポスト18の傾動動作がシリンダ保持装置29によって妨げられることがなく、バックストップシリンダ25との間にシリンダ保持装置29を設けたまま、図2中に二点鎖線で示す如く、リヤポスト18をタワーブーム10側に傾けることができる。
【0063】
これにより、ペンダントロープ19を弛ませた状態で、当該ペンダントロープ19によってリヤポスト18の先端側とタワーブーム10の基端側との間を容易に連結することができ、このペンダントロープ19を取付けるときの作業性をも高めることができる。
【0064】
そして、リヤポスト18の先端側とタワーブーム10の基端側とにペンダントロープ19を取付けた後には、図9に示す如く再びバックストップシリンダ25のロッド25Bを伸長させることにより、図2中に実線で示す如くリヤポスト18を地面に対してほぼ垂直となるように起立させる。これにより、リヤポスト18の先端側とタワーブーム10の基端側との間を適度な張力をもったペンダントロープ19によって容易に連結することができる。
【0065】
かくして、本実施の形態によれば、第1のリンク30に長溝穴30Aを設けると共に第2のリンク33に長溝穴33Bを設け、連結具35は、これら各長溝穴30A,33Bにスライド可能に係合する構成としている。これにより、リヤポスト18とバックストップシリンダ25との間にシリンダ保持装置29を設けたとしても、バックストップシリンダ25を図9に示す伸長状態と図10に示す縮小状態との間で伸縮させることができる。
【0066】
従って、タワークレーン1の吊荷作業時におけるバックストップシリンダ25の伸縮動作が、シリンダ保持装置29によって妨げられることがなく、バックストップシリンダ25の取付け作業が終了した後でも、シリンダ保持装置29を取外す必要がなく、この分、バックストップシリンダ25の取付け作業を迅速に行うことができる。
【0067】
なお、上述した実施の形態では、シリンダ保持装置29を、リヤポスト18とバックストップシリンダ25との間に設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図11に示す変形例のように、シリンダ保持装置29を、タワーブーム10の先端側とバックストップシリンダ25との間に設ける構成としてもよい。
【0068】
また、上述した実施の形態では、下部走行体2を備えた自走式のタワークレーン1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばグローアップクレーン等と呼ばれる走行体をもたない定置式のタワークレーンにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態によるタワークレーンを示す正面図である。
【図2】バックストップシリンダの取付け作業を行うためタワーブームを地面に対して水平に延ばした状態を示す正面図である。
【図3】図2中のバックストップシリンダ、シリンダ保持装置等を第1,第2のリンクが折畳位置となった状態で示す斜視図である。
【図4】図2中のa部を示す一部破断の拡大正面図である。
【図5】バックストップシリンダ、シリンダ保持装置等を第1,第2のリンクが拡開位置となった状態で示す図3と同様な斜視図である。
【図6】バックストップシリンダをシリンダ保持装置によって保持した状態を示す図4と同様な拡大正面図である。
【図7】図6中の第1のリンク、第2のリンク、ストッパ等を拡大して示す要部拡大図である。
【図8】シリンダ保持装置を示す分解斜視図である。
【図9】バックストップシリンダのロッドをタワーブームに取付けた状態を示す拡大正面図である。
【図10】バックストップシリンダのロッドを縮小させてリヤポストを傾けた状態を示す拡大正面図である。
【図11】シリンダ保持装置をタワーブーム側に設けた変形例を示す図9と同様な拡大正面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 タワーブーム
13 タワージブ
15 フロントポスト
16 ペンダントロープ
18 リヤポスト
22 ジブ起伏ロープ
25 バックストップシリンダ
29 シリンダ保持装置
30 第1のリンク
30A,33B 長溝穴
33 第2のリンク
35 連結具
36 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に対して起伏可能となったタワーブームと、該タワーブームの先端側に起伏可能に取付けられたタワージブと、前記タワーブームの先端側に回動可能に取付けられ前記タワージブにペンダントロープを介して連結されるフロントポストと、前記タワーブームの先端側に回動可能に取付けられ前記フロントポストとの間に前記タワージブを起伏させるジブ起伏ロープが巻回して設けられるリヤポストと、該リヤポストと前記タワーブームとの間に取付けられ前記リヤポストを下側から支えるバックストップシリンダとを備えてなるタワークレーンにおいて、
前記リヤポストまたは前記タワーブームには、前記リヤポストと前記タワーブームとの間に前記バックストップシリンダを取付けるときに当該バックストップシリンダを保持するシリンダ保持装置を設ける構成としたことを特徴とするタワークレーン。
【請求項2】
前記シリンダ保持装置は、基端側が前記リヤポストまたは前記タワーブーム側に取付けられた第1のリンクと、基端側が前記バックストップシリンダ側に取付けられた第2のリンクと、前記第1のリンクの先端側と前記第2のリンクの先端側とを折畳位置と拡開位置との間で変位可能に連結する連結具と、前記第1,第2のリンクのうち一方のリンクに設けられ他方のリンクに当接して拡開位置に保持するストッパとにより構成してなる請求項1に記載のタワークレーン。
【請求項3】
前記第1,第2のリンクには、これら各リンクの長手方向に沿って前記連結具がスライド可能に係合する長溝穴を設ける構成としてなる請求項2に記載のタワークレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−290782(P2007−290782A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117007(P2006−117007)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】