説明

タンクキャップ

【課題】給油口から取り外された状態での脱落を防止することができるとともに、長期使用に十分耐え得るタンクキャップを提供する。
【解決手段】燃料タンクTの給油口Taに取り付け可能なタンクキャップにおいて、給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体1と、キャップ本体1に組み付けられ、所定部位に鍔部9aを有するとともに、当該キャップ本体1に対して回動可能とされることにより鍔部9aを任意方向に突出させ得る取付プレート9と、取付プレート9の鍔部9aに一端が固定されるとともに、他端が燃料タンクTの把持部Tcに固定されてキャップ本体1と燃料タンクTとを連結可能な連結部材Wとを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶における燃料タンク(特に小型船舶における燃料タンク)は、持ち運びが容易な可搬式とされていることが多く、その可搬式の燃料タンクの給油口に取り付け可能及び当該給油口から取り外し可能なタンクキャップには、通常、キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させる連通孔と、使用者が操作手段(操作ノブ)を操作することにより当該連通孔を閉塞状態又は開放状態とし得る手動開閉弁とが配設されている。
【0003】
このようなタンクキャップは、燃料タンクの給油口から取り外された状態において脱落してしまうのを防止するために脱落防止手段を有していた。当該脱落防止手段として、従来より、例えば給油口の外縁部に例えば円形状の樹脂製バンド部材を引掛けておき、当該バンド部材にタンクキャップを繋ぐことで、タンクキャップを燃料タンクに連結させて脱落を防止可能とされたものが提案されている。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のタンクキャップにおいては、給油口の外縁部に引っ掛けられた円形状の樹脂製バンド部材にて燃料タンクと連結されていたため、給油口に対する取り付けの度に当該樹脂製バンド部材が折り曲げられてしまい、長期使用の過程において、その折り曲げ部に応力が集中して破損し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、給油口から取り外された状態での脱落を防止することができるとともに、長期使用に十分耐え得るタンクキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、前記給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、該キャップ本体に組み付けられ、所定部位に鍔部を有するとともに、当該キャップ本体に対して回動可能とされることにより前記鍔部を任意方向に突出させ得る取付プレートと、該取付プレートの鍔部に一端が固定されるとともに、他端が前記燃料タンクの所定部位に固定されて前記キャップ本体と燃料タンクとを連結可能な連結部材とを具備したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のタンクキャップにおいて、前記連結部材は、所定材料から成る芯線の外周を軟質樹脂で覆った紐状部材から成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のタンクキャップにおいて、前記キャップ本体は、外側部材と内側部材とを組み付けて成り、燃料タンクの給油口を覆いつつ回転させて取り付け可能とされるとともに、当該キャップ本体に対して回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際、前記外側部材を前記内側部材に対して相対的に回転させて当該キャップ本体を空回りさせるトルクリミッタ機構を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のタンクキャップにおいて、前記取付プレートは、前記内側部材に回動自在に組み付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、キャップ本体に対して回動可能とされることにより鍔部を任意方向に突出させ得る取付プレートと、取付プレートの鍔部に一端が固定されるとともに、他端が燃料タンクの所定部位に固定されてキャップ本体と燃料タンクとを連結可能な連結部材とを具備したので、給油口から取り外された状態での脱落を防止することができるとともに、長期使用に十分耐えることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、連結部材は、所定材料から成る芯線の外周を軟質樹脂で覆った紐状部材から成るので、柔軟性を持たせつつキャップ本体と燃料タンクとを連結させることができ、より長期使用に十分耐えることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、キャップ本体は、外側部材と内側部材とを組み付けて成り、燃料タンクの給油口を覆いつつ回転させて取り付け可能とされるとともに、当該キャップ本体に対して回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際、外側部材を内側部材に対して相対的に回転させて当該キャップ本体を空回りさせるトルクリミッタ機構を具備したので、キャップ本体に対して過負荷が付与されて破損してしまうのを抑制することができるとともに、トルクリミッタ機構が機能してキャップ本体が多数回空回りしても、連結部材の破損等を抑制することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、取付プレートは、内側部材に回動自在に組み付けられたので、トルクリミッタ機構が機能してキャップ本体が多数回空回りしても連結部材が外側部材に追従することがなく、当該連結部材の破損等をより一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るタンクキャップを示す平面図であって、(a)操作ノブが第2位置にある状態(b)操作ノブが第1位置にある状態を示す図
【図2】同タンクキャップを示す正面図
【図3】同タンクキャップを示す側面図
【図4】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第1位置にある状態)
【図5】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第2位置にある状態)
【図6】図1におけるVI−VI線断面図
【図7】同タンクキャップにおける自動開閉弁(連通孔を閉塞状態に維持した状態)を示す断面図
【図8】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合)を示す断面図
【図9】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合)を示す断面図
【図10】同タンクキャップを示す分解斜視図
【図11】同タンクキャップ内に配設されたトルクリミッタ機構におけるピン状部材及びキャップ本体に組み付けられた取付プレートを示す模式図
【図12】同タンクキャップにおける連結部材を示す模式図
【図13】同連結部材を示す断面模式図
【図14】同タンクキャップが適用される燃料タンクを示す模式図
【図15】同燃料タンクの給油口に本タンクキャップを取り付けた状態を示す模式図
【図16】(a)同タンクキャップと燃料タンクとが連結部材によって連結された状態であって、当該タンクキャップが燃料タンクに取り付けられた状態を示す模式図 (b)同タンクキャップと燃料タンクとが連結部材によって連結された状態であって、当該タンクキャップが燃料タンクから取り外された状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るタンクキャップは、図14に示す如き船舶における可搬式の燃料タンクTの給油口Taに取り付け可能なものである。かかる燃料タンクTは、内部に所定容量の燃料を収容可能とされており、持ち運ぶ際に把持可能な把持部Tcと、船舶から延設されたホース等と接続されて内部の燃料を排出してエンジン側に供給可能な排出部Tbとが形成されている。
【0016】
本タンクキャップは、図15に示すように、燃料タンクTの給油口Taに螺合にて取り付けられて当該給油口Taを開閉し得るもので、図1〜11に示すように、キャップ本体1と、連通孔aと、操作手段としての操作ノブ2と、手動開閉弁3と、自動開閉弁としての第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7と、トルクリミッタ機構(ロックピン8及び凸部1ac)と、取付プレート9とから主に構成されている。キャップ本体1は、給油口Taを覆いつつ取り付け可能なもので、外側部材としてのアウタ1aと、内側部材としてのボディ1b及びケース1cとを組み付けて一体形成して成るものである。
【0017】
アウタ1a(外側部材)は、例えば傘状に形成された樹脂成形品から成るもので、その中央頂部には操作ノブ2が取り付けられる突出部1aaが一体的に形成されている。この突出部1aaには、後述する連通孔aと通じる開口部1aeが形成されているとともに、操作ノブ2が回動する際に摺動する傾斜面1abが形成されている。ボディ1b(内側部材)は、図6に示すように、ボルトBにてケース1cと一体的に組み付けられるとともに、図4、5に示すように、アウタ1aに形成された爪部1adと係止可能な切欠部1baを有して成るものである。
【0018】
而して、ボルトBにて一体的に組み付けられたボディ1b及びケース1c(内側部材)は、爪部1adを切欠部1baに係止させて組み付けられており、アウタ1a(外側部材)に対して所定寸法の回転を許容しつつ抜け止めが図られている。尚、符号P1〜P3は、パッキン部材を示しており、これらパッキン部材P1〜P3にて所望部位をシールしている。また、符号1bbは、ボディ1bに形成されたネジ部を示しており、図15に示すように、このネジ部1bbを給油口Taの外縁部に形成されたネジ部Taaに螺合させることにより、本タンクキャップ全体が当該給油口Taに取り付け可能とされている。
【0019】
連通孔aは、キャップ本体1のボディ1bに形成された孔から成り、キャップ本体1が給油口Taに取り付けられた状態で燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る(具体的には、後述の手動開閉弁3及び自動開閉弁6、7が開状態のとき燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る)ものである。この連通孔aは、本タンクキャップの略中心軸に沿って形成されており、その開口縁部近傍には、シール手段としてのOリング4が配設されている。
【0020】
操作ノブ2(操作手段)は、キャップ本体1の上部に配設され、第1位置(図1(b)で示す「CLOSE位置」)と第2位置(同図(a)で示す「OPEN位置」)との間で回動操作可能なものである。この操作ノブ2には、傾斜面1ab(図10参照)と対峙する摺動面2aが形成されており、回動操作される際、傾斜面1ab上を摺動して突出部1aaに対して上下動し得るよう構成されている。即ち、操作ノブ2は、傾斜面1ab上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされているのである。
【0021】
更に、操作ノブ2には、開口部1aeに挿通した挿通部2cが形成されており、この挿通部2cに切欠2bが形成されている。かかる切欠2bには、手動開閉弁3に形成された爪部3aが係止されており、操作ノブ2の回動操作と連動して手動開閉弁3が動作し得るようになっている。この手動開閉弁3は、操作ノブ2の回動操作に伴って上下動し、当該操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき連通孔aを閉塞状態とするとともに当該操作ノブ2が第2位置(「OPEN位置」)にあるとき当該連通孔aを開放状態とするものである。
【0022】
具体的には、手動開閉弁3には、Oリング4と当接又は離間可能とされるとともにキャップ本体1内に配設されたコイルバネS1と当接した弁部3bが形成されており、当該コイルバネS1にて手動開閉弁3及び操作ノブ2が常時下方へ付勢されて組み付けられている。そして、弁部3bがOリング4と当接(コイルバネS1にてOリング4を押圧)した状態となると、連通孔aが閉塞状態となり、当該弁部3bがOリング4から離間した状態となると、連通孔aが開放状態となるよう構成されている。尚、コイルバネS1の上端には、プレート5が介装されており、操作ノブ2の回動操作時、当該操作ノブ2がプレート5上を摺動し得るようになっている。
【0023】
即ち、操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とするとともに、操作ノブ2を第2位置(「OPEN位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上昇する過程で手動開閉弁3が連動して上昇し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力に抗してOリング4から離間した状態となって連通孔aを開放状態とするのである。
【0024】
反対に、第2位置(「OPEN位置」)にある操作ノブ2を第1位置(「CLOSE位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して下降する過程で手動開閉弁3が連動して下降し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とする。このようにして、操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁3を連動させて上下動させ、連通孔aを任意に開閉し得るようになっているのである。
【0025】
自動開閉弁(6、7)は、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得るものであり、第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7で構成されている。これら第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7は、ケース1cに形成された収容部C1内に収容されており、当該収容部C1の下端部には開口C1aが形成されている。
【0026】
第1自動開閉弁6は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS2で下方に常時付勢された部品6aと、該部品6aに付与された付勢力で下方に常時付勢されるとともに中央の軸方向に貫通孔6baが形成された部品6bとで主に構成されている。
【0027】
部品6bの下面は、通常時、図7に示すように、収容部C1の段部及び第2自動開閉弁7の上面にそれぞれ当接され、その当接部位においてシールし得るようになっている。第2自動開閉弁7は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第1自動開閉弁6が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS3で上方に常時付勢された部品から成る。而して、燃料タンクT内部の圧力が上限値α以下であり且つ下限値β以上である場合、図7に示すように、第2自動開閉弁7が第1自動開閉弁6の部品6bの下端と当接してシールされるため、開口C1aと連通孔aとが連通しない状態とされる。
【0028】
そして、燃料タンクT内部の圧力が上限値αより高くなると、図8に示すように、その圧力によって第1自動開閉弁6が第2自動開閉弁7にて下方から押圧されて上昇し、部品6bの下面と段部Dとの間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の過大な圧力を外部に逃がすことができる。
【0029】
また、燃料タンクT内部の圧力が下限値βより低くなると、図9に示すように、その圧力によって第2自動開閉弁7がコイルバネS3の付勢力に抗して下降し、部品6bの下面と第2自動開閉弁7との間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが貫通孔6baを介して連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の負圧を解消することができる。
【0030】
上記実施形態によれば、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得る自動開閉弁(6、7)を具備したので、通常時(燃料タンク内部が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合以外)においては、操作ノブ2を第2位置(連通孔aを開放状態とする位置)として燃料タンクTを使用する際、連通孔aを閉塞状態として燃料の揮発を抑制することができる。
【0031】
また、自動開閉弁は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態とし得る第1自動開閉弁6と、当該燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態とし得る第2自動開閉弁7とを具備したので、燃料タンクT内部の圧力が高い場合と低い場合とで、連通孔aを開放状態とするそれぞれの設定値(即ち、上限値α及び下限値β)を容易に設定できる。
【0032】
本実施形態においては、ボディ1b(内側部材)側に配設されたロックピン8(ピン状部材)と、アウタ1a(外側部材)側に形成された凸部1acとで構成されたトルクリミッタ機構が配設されており、アウタ1a(外側部材)に所定荷重以上の負荷が付与されると、当該アウタ1aが内側部材(ボディ1b及びケース1c)に対して相対的に回転することにより、キャップ本体1が空回りし得るようになっている。
【0033】
より具体的には、ボディ1b(内側部材)における所定部位には、コイルバネS4及びロックピン8を収容した収容部C2が複数形成されており、それぞれのロックピン8がコイルバネS4によって上方に付勢されつつ配設されている。このロックピン8(コイルバネS4も同様)は、図11に示すように、ボディ1b(内側部材)に対して円環状に複数(本実施形態においては4つ)配設されており、コイルバネS4の付勢力より大きな荷重(所定荷重)が付与されると、当該コイルバネS4が圧縮されるのに伴って変位(下降)するよう設定されている。
【0034】
また、本実施形態に係るロックピン8は、図4、5に示すように、キャップ本体1の回転軸(図中上下方向に延びる軸)と略平行な方向に延びたピン状部材から成るものとされている。更に、本実施形態に係るロックピン8の先端は、凸部1acとの係止面8aが所定角度傾斜して成るとともに、その係止面8aと反対面8b(ロックピン8の先端における係止面8aと反対側の面)が回転方向に対して略垂直とされている。一方、アウタ1a(外側部材)におけるロックピン8の先端(上端)に対応する位置には、下方に突出した複数の凸部1acが平面視で環状に一体形成されており、当該ロックピン8の先端が係止し得るようになっている。
【0035】
そして、アウタ1a(外側部材)を手で掴みながら締め付け方向に回転させて本タンクキャップを燃料タンクTの給油口Taに取り付ける際、ロックピン8の先端が係止面8aにて凸部1acと係止しているため、当該アウタ1aと共にボディ1b及びケース1c(即ち、タンクキャップ全体)が連れ回しされるよう設定されているとともに、連れ回しの過程で過大な荷重が加わる(設定荷重以上が付与される)と、ロックピン8がコイルバネS4の付勢力に抗して変位(下降)し、凸部1acとの係止が解かれるようになっている。これにより、アウタ1a(外側部材)がボディ1b及びケース1c(内側部材)に対して空回りすることとなり、過大な荷重の付与による破損等が防止されることとなる。
【0036】
また、アウタ1a(外側部材)を手で掴みながら締め付け方向とは反対方向に回転させて本タンクキャップを燃料タンクTの給油口Taに取り付ける際、ロックピン8の反対面8bが凸部1acと係止してアウタ1a(外側部材)とボディ1b及びケース1c(内側部材)との一体的な回転が保持されるようになっている。即ち、本実施形態に係るトルクリミッタ機構は、締め付け方向にアウタ1aを回転する際、キャップ本体1の空回りが可能とされて過負荷が付与されるのを防止し得るとともに、締め付け方向と反対方向にアウタ1aを回転する際、アウタ1a(外側部材)とボディ1b及びケース1c(内側部材)との一体的な回転が保持されるようになっており、所謂ラチェット機能を備えているのである。
【0037】
ここで、本実施形態に係るキャップ本体1には、紐やチェーン等の紐状部材から成る連結部材Wの一端が取り付けられた取付プレート9が組み付けられている。この取付プレート9は、所定部位に鍔部9aを有する板状部材から成り、キャップ本体1に対して相対的に回動可能とされて組み付けられており、当該キャップ本体1に対する相対的回動によって鍔部9aが任意方向に突出させ得るものとされている。より具体的には、取付プレート9は、一部に鍔部9aを有した円環形状の板状部材から成り、図6に示すように、ボディ1b(内側部材)のフランジ部上面f1上に載置され、アウタ1a(外側部材)の下端面f2との間で回動自在に組み付けられており、図11に示すように、当該取付プレート9の回動に伴って鍔部9aが任意方向に向くようになっている。
【0038】
また、取付プレート9の鍔部9aには孔9aaが形成されており、当該孔9aaに連結部材Wの一端が挿通して固定されている。この連結部材Wは、取付プレート9の鍔部9aに一端が固定された紐状部材から成るとともに、図16に示すように、他端が燃料タンクTの所定部位(本実施形態においては把持部Tc)に固定されてキャップ本体1と燃料タンクTとを連結可能なものである。
【0039】
本実施形態に係る連結部材Wは、図12に示すように、1本の紐状部材を2つ折りにして先端同士をワイヤストッパ10で固定させて成り、図13に示すように、所定材料(例えばアルミ材等の金属)から成る芯線Waの外周をウレタン等の軟質樹脂Wbで覆って成るものである。尚、連結部材Wは、本実施形態のものに限定されず、取付プレート9の鍔部9aに一端が固定されるとともに、他端が燃料タンクTの所定部位(把持部Tcに限らず任意部位)に固定されてキャップ本体1と燃料タンクTとを連結可能なものであれば、他の形態のものであってもよい。
【0040】
而して、燃料タンクTの給油口Taから本タンクキャップを取り外した際、図16(b)に示すように、当該タンクキャップを燃料タンクTに連結させておくことができ、脱落を防止することができる。加えて、連結部材Wが柔軟に撓ってキャップ本体1と燃料タンクTとを連結させるので、本タンクキャップの給油口Taに対する取り付け及び取り外し作業を容易且つスムーズに行わせることができる。更に、本タンクキャップの給油口Taに対する取り付け及び取り外し時、取付プレート9が回動して連結部材Wに過度な荷重が付与されてしまうのを抑制することができる。
【0041】
上記実施形態に係るタンクキャップによれば、キャップ本体1に対して回動可能とされることにより鍔部9aを任意方向に突出させ得る取付プレート9と、取付プレート9の鍔部9aに一端が固定されるとともに、他端が燃料タンクTの所定部位(把持部Tc)に固定されてキャップ本体1と燃料タンクTとを連結可能な連結部材Wとを具備したので、給油口Taから取り外された状態での脱落を防止することができるとともに、長期使用に十分耐えることができる。また、連結部材Wは、所定材料から成る芯線Waの外周を軟質樹脂Wbで覆って成るので、柔軟性を持たせつつキャップ本体1と燃料タンクTとを連結させることができ、より長期使用に十分耐えることができる。
【0042】
更に、キャップ本体1は、外側部材としてのアウタ1aと内側部材としてのボディ1b及びケース1cとを組み付けて成り、燃料タンクTの給油口Taを覆いつつ回転させて取り付け可能とされるとともに、当該キャップ本体1に対して回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際、外側部材を内側部材に対して相対的に回転させて当該キャップ本体1を空回りさせるトルクリミッタ機構を具備したので、キャップ本体1に対して過負荷が付与されて破損してしまうのを抑制することができるとともに、トルクリミッタ機構が機能してキャップ本体1が多数回空回りしても、連結部材Wの破損等を抑制することができる。特に、本実施形態においては、取付プレート9は、内側部材としてのボディ1bに回動自在に組み付けられたので、トルクリミッタ機構が機能してキャップ本体1が多数回空回りしても連結部材Wが外側部材としてのボディ1bに追従することがなく、当該連結部材Wの破損等をより一層抑制することができる。
【0043】
尚、本実施形態においては、手動開閉弁3、第1自動開閉弁6(部品6a及び部品6b)及び第2自動開閉弁7は、連通孔aと略同軸状に配設されており、トルクリミッタ機構(ロックピン8及び凸部1ac)は、当該手動開閉弁3及び自動開閉弁(第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7)の周囲位置において環状に複数形成されている。これにより、手動開閉弁3、第1自動開閉弁6(部品6a及び部品6b)及び第2自動開閉弁7を連通孔aと略同軸状に配設することにより、連通孔aの開閉動作をよりスムーズ且つ確実に行わせることができるとともに、トルクリミッタ機構を当該手動開閉弁3及び自動開閉弁(第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7)の周囲位置において環状に複数形成することにより、キャップ本体1内のスペースを有効活用することができ、タンクキャップの更なる小型化を図ることができる。
【0044】
また、ロックピン8は、キャップ本体1の回転軸と略平行な方向に延びたピン状部材から成るので、キャップ本体1の径方向(幅方向)に対する大型化を回避してタンクキャップの小型化を図ることができる。尚、本実施形態においては、操作ノブ2(操作手段)が第1位置と第2位置との間で操作されると手動開閉弁3が上下動して連通孔aを開閉(開放状態又は閉塞状態)し得るので、従来の如くネジ形状同士を噛み合わせて両者を螺合させて手動開閉弁を開閉するものに比べ、当該連通孔aの開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔aの開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば操作ノブ2を有さないもの或いは手動開閉弁3及び自動開閉弁6、7といった開閉弁を有さないものにも適用することができる。トルクリミッタ機構を構成するロックピン8に代えてキャップ本体1の径方向(幅方向)に延設されたピン状部材としてもよく、その場合、コイルバネS4は図4、5中水平方向に延びて配設され、同方向にピン状部材が付勢されることとなる。更に、本実施形態においては、可搬式の燃料タンクの給油口に取り付けられるものに適用されているが、船舶(車両などの他の乗り物であってもよい)に固定式の燃料タンクの給油口に取り付けるものに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、キャップ本体に組み付けられ、所定部位に鍔部を有するとともに、当該キャップ本体に対して回動可能とされることにより鍔部を任意方向に突出させ得る取付プレートと、取付プレートの鍔部に一端が固定されるとともに、他端が燃料タンクの所定部位に固定されてキャップ本体と燃料タンクとを連結可能な連結部材とを具備したタンクキャップであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 キャップ本体
1a アウタ(外側部材)
1b ボディ(内側部材)
1c ケース(内側部材)
2 操作ノブ(操作手段)
3 手動開閉弁
4 Oリング
5 プレート
6 第1自動開閉弁
7 第2自動開閉弁
8 ロックピン
9 取付プレート
9a 鍔部
a 連通孔
W 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、
前記給油口を覆いつつ取り付け可能なキャップ本体と、
該キャップ本体に組み付けられ、所定部位に鍔部を有するとともに、当該キャップ本体に対して回動可能とされることにより前記鍔部を任意方向に突出させ得る取付プレートと、
該取付プレートの鍔部に一端が固定されるとともに、他端が前記燃料タンクの所定部位に固定されて前記キャップ本体と燃料タンクとを連結可能な連結部材と、
を具備したことを特徴とするタンクキャップ。
【請求項2】
前記連結部材は、所定材料から成る芯線の外周を軟質樹脂で覆った紐状部材から成ることを特徴とする請求項1記載のタンクキャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体は、外側部材と内側部材とを組み付けて成り、燃料タンクの給油口を覆いつつ回転させて取り付け可能とされるとともに、当該キャップ本体に対して回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際、前記外側部材を前記内側部材に対して相対的に回転させて当該キャップ本体を空回りさせるトルクリミッタ機構を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタンクキャップ。
【請求項4】
前記取付プレートは、前記内側部材に回動自在に組み付けられたことを特徴とする請求項3記載のタンクキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−230805(P2011−230805A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103826(P2010−103826)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】