説明

タンパク質の検出方法及びそれに用いる蛍光色素

【課題】 高感度の検出が可能で操作の簡便なタンパク質の検出方法及びそれに用いる蛍光色素を提供すること。
【解決手段】 蛍光色素で標識したタンパク質を検出するタンパク質の検出方法である。遊離状態で観測される第1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質に結合した状態で観測される第2の蛍光波長に基づく蛍光を計測してタンパク質を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の検出方法及びそれに用いる蛍光色素に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトゲノムの全容が明らかにされ、遺伝子治療や遺伝子診断等を目的としたポストゲノム研究が盛んに行われている。特に、ゲノム情報を利用して、一つの生物や細胞に含まれるすべてのタンパク質について網羅的・系統的に性質や発現動態を解析するプロテオーム解析においては、遺伝子の発現により産生される微量タンパク質を高感度に検出・同定する必要がある。また、ガンやウィルスによる感染症などの疾病は、それぞれ特殊なタンパク質を生成させるため、これら特殊なタンパク質を疾病のマーカーとして取り扱い、疾病の診断や治療に応用することが可能であるが、これら特殊なタンパク質を高感度に検出・同定する必要がある。
【0003】
タンパク質の高感度分析法としては、例えば、試料タンパク質を蛍光色素により標識し(非特許文献1)、電気泳動による分離を行った後、MALDI-TOF MS等の質量分析計を用いて分画されたタンパク質の分子量を測定し、データベース検索を行ってタンパク質の同定を行う方法が用いられている。また、ウエスタンブロッティングなどのブロッティング法。更に、発現解析やタンパク質間の相互作用の解析には、DNAチップの技術を利用したプロテインチップが使用されている(例えば、非特許文献2)。プロテインチップは、蛍光色素により標識されたタンパク質を用い、疎水性物質やイオン交換体や金属イオン等を貼り付けてタンパク質の発現解析に使用し、あるいは抗体等を貼り付けてタンパク質間の相互作用の解析に使用する。プロテインチップを用いることにより、多種類のタンパク質の発現動態や相互作用の同時解析を簡便かつ迅速に行うことができる。
【0004】
また、電気泳動を用いたタンパクの分割は、ゲルにタンパクを乗せた後、両末端にセットした電極に電気を通じることでクロマト上を移動させ、分子量等の違いによって分割する。この後、ゲルを蛍光色素溶液に浸すことで蛍光標識を行う(例えば、特許文献1及び2)。しかし、ゲルを乾燥させると蛍光消光が生じるため、湿潤状態で定量を行っているが膨潤したゲルの厚みなどから正確な定量が行えないのが現状である。
【特許文献1】特表2003−531946号公報
【特許文献2】特開2004−317297号公報
【非特許文献1】Michael Brinkley, Bioconjugate Chem., 1992, 3, 2-13
【非特許文献2】Paul Cutler, Proteomics, 2003, 3, 3-18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蛍光強度の変化を測定する場合、蛍光強度の増大幅に再現性がなく、また蛍光強度が微弱で遊離状態との差異が小さい場合、タンパク質の高感度の検出が困難であるという問題がある。微弱な蛍光強度を測定しようとすると、励起光の強度を増加せざるを得ず、光源が大型化したり、試料のダメージが大きくなるという問題もある。さらに、プロテインチップを用いて測定を行う場合、チップ上の試料が乾燥することにより、タンパク質に結合している蛍光色素の蛍光が消光するという問題もある。特に、mlからμlといった微量試料の場合、試料が乾燥しやすいため、非常に大きな問題となる。また、蛍光色素によっては温度安定性が低く、測定に時間を要すれば、定量性に問題が生じる事も考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を解決し、高感度の検出が可能で操作の簡便なタンパク質の検出方法及びそれに用いる蛍光色素を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、従来の蛍光強度の変化に基づく検出方法と異なる全く新しいタンパク質の検出方法が可能なことを見出して本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明のタンパク質の検出方法は、蛍光色素で標識したタンパク質を検出するタンパク質の検出方法であって、遊離状態で観測される第1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質に結合した状態で観測される第2の蛍光波長に基づく蛍光を計測してタンパク質を検出することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、結合状態における蛍光強度が弱い場合であっても、遊離状態で観測される第1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質に結合した状態で観測される第2の蛍光波長の蛍光を測定する、例えば、第2の蛍光波長値やその蛍光強度を測定すれば良いので、従来の検出方法に比べより高感度の検出が可能となる。また、微弱な蛍光強度を測定するため、励起光の強度を上げる必要もない。また、熟練していない検査員でも容易に判別することが可能となる。また、タンパク質を段階的に添加すると、タンパク質との結合量の増加と供に、第2の蛍光波長は短波長にシフトするので、第1の蛍光波長からのシフト値とタンパク質の量との関係からタンパク質を定量することもできる。
【0009】
また、本発明の検出方法の一態様として、試料中のタンパク質を分離手段に供し、分離した画分を質量分析に供する検出方法の場合、タンパク質を分離手段に供する前に、第2の蛍光波長を発生する第1の蛍光色素によりタンパク質を標識することができる。さらに、第1の蛍光色素によりタンパク質を標識するに先立って又は同時に、タンパク質に結合した状態で第1の蛍光波長が短波長にシフトしない第2の蛍光色素によりタンパク質を標識し、次いで分離手段に供することもできる。
【0010】
また、本発明の検出方法の別の態様として、タンパク質と上記第2の蛍光波長を発生する第1の蛍光色素とを溶液中で反応させ、その溶液を測定基板に点着し、その測定基板からの第2の蛍光波長に基づく蛍光画像を計測することができる。さらに、タンパク質と第1の蛍光色素とを溶液中で反応させるに先立って又は同時に、タンパク質に結合した状態で第1の蛍光波長が短波長にシフトしない第2の蛍光色素をタンパク質と溶液中で反応させることもできる。
【0011】
また、第1の蛍光色素はタンパク質と静電結合するアニオン性基を有することが好ましい。また、第2の蛍光色素はタンパク質と共有結合する共有結合性基を有することが好ましい。その共有結合には、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、エステル結合又はグアニジン結合等を挙げることができ、共有結合性基には、イソシアネート基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、トリアジン基、カルボジイミド基、そして活性エステル化したカルボニル基のいずれか1種、より好ましくはトリアジン基、カルボジイミド基、そして活性エステル化したカルボニル基のいずれか1種を用いることができる。
【0012】
本発明の検出方法には、タンパク質と結合するアニオン性基が直接あるいは連結部を介して有機EL色素に結合したアニオン性蛍光色素を用いることができる。ここで、上記アニオン性基は、カルボキシル基、スルホニル基、硫酸塩基、リン酸塩基及びそれらの組み合わせのいずれかを用いることができる。さらに、有機EL色素には、共役系を有する5員環化合物を含む化合物であって、該5員環化合物は1種以上のヘテロ原子、セレン原子又はボロン原子を含むものを用いることができる。また、有機EL色素には、上記5員環化合物と共役系を有する6員環化合物とから成る縮合多環化合物を用いることができ、上記5員環化合物は、アゾール誘導体又はイミダゾール誘導体であることが好ましい。
【0013】
本発明のアニオン性蛍光色素は、試料が乾燥しても消光することがないので、乾燥状態でも高感度の検出が可能となる。例えば、溶液中でアニオン性蛍光色素とタンパク質とを反応させ、その溶液をプロテインチップの基板上に点着させて、イメージスキャナなどで画像化して検出することもできる。また、本発明に用いるアニオン性蛍光色素は最近開発されたドライアッセイにも用いることが可能であり、使用方法を選ばない試薬である。また、熱に対して安定であり、常温での長期保存に耐えることができるので、取り扱いが容易である。
【0014】
上記のアニオン性蛍光色素が本発明の検出方法に好適に使用できる理由については、以下の理由が考えられる。本発明者の知見によれば、アニオン性基を有する従来の蛍光色素、例えば、メチルオレンジ、オレンジG等を用いても、蛍光波長のシフトは全く観測されなかった。これに対し、上記のアニオン性蛍光色素を用いると、蛍光波長がより短波長にシフトし(ブルーシフトし)、蛍光強度が増加した。また、吸収波長がより長波長にシフトし(レッドシフトし)、その強度は低下した。アニオン性蛍光色素はタンパク質の正荷電基、例えばアミノ基と静電結合するが、有機EL色素を発色部に用いると、有機EL色素は近接したタンパク質との相互作用によりエネルギーが流出し易くなることによると考えられる。また、アニオン性基から成る結合部を有しない場合、発色部が有機EL色素から成る色素を用いても、蛍光波長のブルーシフトも蛍光強度の増加も観測されなかった。アニオン性基から成る結合部を有しない蛍光色素を用いる場合、蛍光色素はタンパク質の表面の官能基のみと反応して共有結合を形成すると考えられる。これに対し、アニオン性基から成る結合部を有する蛍光色素は、分子量も小さく立体障害も少ないため静電結合によりタンパク質の表面のアミノ基のみならず深部のアミノ基とも結合するため、前述のようにタンパク質の深部(疎水場)にも位置することとなり、これにより、ブルーシフトと蛍光強度の増加が起きたものと考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検出方法は、以下のような効果を有する。
すなわち、遊離状態で観測される第1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質に結合した状態で観測される第2の蛍光波長値及びその蛍光強度を測定することにより、従来に比べ、より高感度の検出が可能となる。また、タンパク質との結合量の増加に伴い第2の蛍光波長はより短波長にシフトするので、蛍光色素に段階的にタンパク質を添加し、第1の蛍光波長からの蛍光波長のシフト値からタンパク質を定量することもできる。また、試料が乾燥状態でも蛍光を発することができるので、タンパク質の検出を簡便且つ高精度な定量を行うことができる。更に、本発明に用いる蛍光色素は、Cy3やCy5、Alexa色素よりも熱安定性が高く、退光性も観測されないので、取り扱いは容易で、さらにCy3やCy5に比べ安価であるので、より低コストでタンパク質の検出を行うことができる。また、本発明の蛍光色素は乾燥したときに最大の量子収率を示すことから、電気泳動によりタンパク質を分割する場合に、ゲルを乾燥させることで極力厚みを薄くすることができるため従来よりも精度の高い定量を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の検出方法は、蛍光色素で標識したタンパク質を検出するタンパク質の検出方法であって、遊離状態で観測される第1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質に結合した状態で観測される第2の蛍光波長に基づく蛍光を計測してタンパク質を検出する。
本発明に用いるアニオン性蛍光色素の蛍光波長は、タンパク質との結合量の増加とともに、遊離状態の蛍光波長からより短波長に徐々にシフトし、それ以上蛍光波長がシフトせず、かつ蛍光強度も増加しない飽和状態に至る。従って、遊離状態から飽和状態に至る間の中間状態の蛍光波長値及びその蛍光強度を用いて、試料中のタンパク質の存在の有無の確認そしてその定量を行うことができる。また、アニオン性蛍光色素にタンパク質を段階的に添加し、添加したタンパク質の量と遊離状態の蛍光波長からのシフト値との関係から、タンパク質を定量することもできる。
【0017】
本発明の対象とする試料は、タンパク質を含むものであれば特に限定されない。単純タンパクであるコラーゲンも標識することが可能であり、電気泳動後、標識することが可能である。また、アミノ基を有する糖鎖及びペプチドの検出に用いることが可能である。また、抗体の標識においてもこれまでと同様の取り扱いで良く、抗原抗体反応にも用いることが可能である。例えば、抗体抗原チップをはじめ、エバネセント波蛍光免疫測定法など、あらゆる手法で抗体反応を観察することが可能である。
【0018】
本発明の検出方法は、溶液状態の試料であっても、固体状態の試料であっても適用が可能である。
溶液状態の試料の場合、例えば、所定濃度のアニオン性蛍光色素を溶解させた溶液にタンパク質を含む試料溶液を添加し、蛍光分光光度計等を用い、溶液の蛍光スペクトルを測定し、第2の蛍光波長の有無及びその蛍光強度もしくは蛍光波長のシフト値から試料濃度を検出する。あるいは、第2の蛍光波長が予めわかっている場合には、測定波長を第2の蛍光波長に固定し、蛍光強度から試料濃度を検出することもできる。また、タンパク質を含む試料溶液にアニオン性蛍光色素を溶解させた溶液を添加する方法を用いることもできる。
【0019】
また、固体状態の試料の場合、例えば、以下の方法を用いることができる。タンパク質とアニオン性蛍光色素とを溶液状態で反応させ、次いでその溶液を測定基板、例えばプロテインチップ上にスポットして点着し、そのチップをイメージスキャナ等を用いて画像化して試料濃度を検出する。あるいは、上に予めアニオン性蛍光色素を固定し、次いでその測定基板にタンパク質を含む試料溶液を点着させることもできる。
【0020】
ここで、遊離状態で観測される第1の蛍光波長とは、溶液中あるいは固体中で、アニオン性蛍光色素が単独で存在する場合に観測される蛍光波長をいう。一方、タンパク質に結合した状態で観測される第2の蛍光波長とは、タンパク質に結合したアニオン性蛍光色素に基づく蛍光波長であり、第1の蛍光波長よりも短波長である。ここで、第2の蛍光波長の第1の蛍光波長からのシフト値は、タンパク質に結合したアニオン性蛍光色素の種類に依存し、少なくとも2nm以上である。
【0021】
本発明の検出方法に用いるアニオン性蛍光色素には、タンパク質と結合するアニオン性基が有機EL色素に直接結合したものと、アニオン性基が連結部を介して有機EL色素に結合したものが含まれる。ここで、アニオン性基は、タンパク質のアミノ基等の正荷電基と静電結合する、カルボキシル基、スルホニル基、硫酸塩基、リン酸塩基及びそれらの組み合わせのいずれかを用いることができるが、スルホニル基を用いることが好ましい。
【0022】
また、連結部には、一般式A1-A2 (1)で表される化合物を用いることができる。ここで、Aは有機EL色素(発色部)と結合する第1結合基、Aはアニオン性基と結合し、スペーサ基を兼ねる第2結合基である。第1結合基には、置換又は未置換のアルキル基、エーテル基、チオエーテル基、置換又は未置換のイミノ基、アミド基、そしてエステル基からなる群から選択されたいずれか1種を用いることが好ましい。また、第2結合基には、アルキレン基又は主鎖にヘテロ原子を含むアルキレン基を用いることが好ましい。アルキレン基には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基を用いることが好ましい。主鎖にヘテロ原子を含むアルキレン基としては、エチレンオキサイド基を用いることが好ましい。
【0023】
また、第2結合基として、アニオン性基を置換基として有する、トリアジン基、カルボジイミド基及び活性エステル化したカルボニル基のいずれか、より好ましくは活性エステル化したカルボニル基を用いることもできる。
活性エステル化したカルボニル基には、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステルやマレイミドエステルを用いることができるが、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステルを用いることが好ましい。N−ヒドロキシ−スクシンイミドを用いることにより、以下のスキーム1の式Iに示すように、縮合剤としてDCCを用いることによりN−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル体を経由してアミド結合によりEL色素と標的分子が結合する。また、スキーム1の式IIに示すように、活性エステル化したカルボニル基には、トリアジン誘導体を用いることもできる。また、カルボジイミド基には、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)や1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミド等のカルボジイミド試薬を用いることができる。カルボジイミド体を経由してアミド結合によりEL色素と標的分子を結合させることができる(式III)。また、分子内に予めカルボジイミド基、トリアジン基を導入したEL色素を、生体分子内のアミノ基、イミノ基に対して直接結合させる事もできる(式IV)。ここで、Rはアニオン性基を置換基として含む芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はヘテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。なお、活性エステルにスルホニル基を導入するには、例えば、式Vの方法を用いることができる。
【0024】
【化1】

【0025】
ここで、連結部は、第1結合基と第2結合基とにより、発色部とアニオン性基との連結を確保する。さらに、第2結合基の存在は、発色部とアニオン性基との物理的距離を確保して、発色部とアニオン性基の分子骨格の選択の自由度を確保する一方、アニオン性基がタンパク質の深部の正荷電基と結合し易くする効果を有する。これにより、特定のタンパク質のみを選択的に標識することも可能となる。また、第1結合基に窒素原子などのヘテロ原子を用いると、分子全体をより剛直な構造とすることができるので、発色部同士のスタッキングを抑制することができる。また、酸素原子などを導入することで柔軟な分子構造となり、スタッキング強度をコントロールすることが可能である。
【0026】
本発明に用いる有機EL色素は、一対の陽極と陰極との間に固体状態で挟持され、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子とが再結合する際のエネルギーにより発光可能な色素であれば特に限定されない。例えば、テトラフェニルブタジエンやペリレン等の多環芳香族化合物、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、クマリン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、アクリドン誘導体、キナクドリン誘導体、スチルベン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラジノピリジン誘導体、アゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体そしてチオフェン誘導体等を用いることができる。
【0027】
上記有機EL色素の具体例としては、多環芳香族化合物として、ルブレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン、クリセン、デカサイクレン、コロネン、テトラフェニルブタジエン、テトラフェニルシクロブタジエン、ペンタフェニルシクロブタジエンを挙げることができる。シクロペンタジエン誘導体としては、1,2,3,4−テトラフェニル−1,3−シクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエンを挙げることができる。オキサジアゾール誘導体としては、2−(4’−t−ブチルフェニル)−5−(4’−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾールを挙げることができる。クマリン誘導体としては、クマリン1,クマリン6,クマリン7,クマリン30を挙げることができる。ジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス−(2−(4−ビフェニル)エテニル)ピラジン、2,5−ビス−(4−エチルステリル)ピラジン、2,9−ビス−(4−メトキシステリル)ピラジンを挙げることができる。アクリドン誘導体としてはアクリドンおよびその誘導体を挙げることができる。キナクドリン誘導体としてはキナクドリンおよびその誘導体を挙げることができる。スチルベン誘導体としては、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルを挙げることができる。アゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体は本明細書中に一般式で記載したもの使用することができる。
【0028】
本発明の検出方法に用いる好ましい有機EL色素は、共役系を有する5員環化合物を含む化合物であって、その5員環化合物が1種以上のヘテロ原子、セレン原子又はボロン原子を含むものを挙げることができる。さらに、詳しくは共役系を有する5員環化合物から成る単環化合物と、その5員環化合物と共役系を有する6員環化合物から成る縮合多環化合物を挙げることができる。固体状態であっても、量子収率が大きく、強い蛍光を示すからである。5員環化合物には、アゾール誘導体あるいはイミダゾール誘導体が好ましい。さらに、アゾール誘導体あるいはイミダゾール誘導体は1以上の4級アンモニウム基を有することが好ましい。水溶性を向上させことができるからである。
【0029】
なお、以下に説明する縮合多環化合物は前述の連結部を介してアニオン性基と結合させてアニオン性蛍光色素として用いることができるが、アニオン性基が直接結合した縮合多環化合物は、それ自身をアニオン性蛍光色素として用いることができる。以下の縮合多環化合物は、すべて本発明の検出方法に好適に使用することができるが、好ましくは、ジアゾール誘導体3,イミダゾール誘導体2、チアジアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、であり、さらに好ましくは、オキサゾロピリジン誘導体(オキサジアゾロピリジン誘導体)である。
【0030】
以下に、縮合多環化合物の具体例について説明する。
(モノアゾール誘導体1)
【化2】

ここで、式中、R1、 R2、 R3、 R4、 R6、 R7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はヘテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。R1、 R2、 R3、 R4、 R6、 R7は同じでも異なっていてもよい。R'は芳香環を含んでも良いアルキル基又はアルケニル基等の脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基、An-は、Cl-、Br-、I-等のハロゲン化物イオン、CF3SO3-、BF4-、PF6-を示す。なお、以下の一般式においても、特に断らない限り同様である。
【0031】
(モノアゾール誘導体2)
【化3】

ここで、式中、R8、R9は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はヘテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。R8、R9は同じでも異なっていてもよい。なお、以下の一般式においても、特に断らない限り同様である。また、nは1以上の整数、好ましくは1〜5であり、以下の一般式中でも同様である。
【0032】
(ジアゾール誘導体1)
【化4】

【0033】
(ジアゾール誘導体2)
【化5】

【0034】
(ジアゾール誘導体3)
【化6】

ここで、式中、R1、 R2、 R3、 R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はヘテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。R1、 R2、 R3、 R4、 R6、 R7は同じでも異なっていてもよい。R2、 R3は、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基を用いることが好ましい。また、Xは、置換基を有しても良い窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はボロン原子であり、特に断らない限り以下の一般式中でも同様である。
【0035】
(ジアゾール誘導体4)
【化7】

【0036】
(ジアゾール誘導体5)
【化8】

ここで、N→Oは、窒素原子が酸素原子に配位結合している状態を示す。
【0037】
(ジアゾール誘導体6)
【化9】

【0038】
(ジアゾール誘導体7)
【化10】

【0039】
(ジアゾール誘導体8)
【化11−1】

【0040】
【化11−2】

ここで、式中、R10、R11は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はヘテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。R10、R11は同じでも異なっていてもよい。また、R12は、置換基を有してもよいオレフィン基又はパラフィン基であり、nは1から3の整数、好ましくは1である。なお、以下の一般式においても、特に断らない限り同様である。
【0041】
(ジアゾール誘導体9)
【化12−1】

【0042】
【化12−2】

【0043】
上記のジアゾール誘導体ではあれば特に限定されないが、以下の一般式で表されるオキサジアゾロピリジン誘導体を好適に用いることができる。
【0044】
【化13】

【0045】
オキサゾロピリジン誘導体は、そのカルボン酸誘導体を合成後、例えば、以下のスキーム2に示す反応により、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を縮合剤として用い、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステルを含む活性エステル体へ誘導したものを用いることが好ましい。
【0046】
【化14】

Scheme 1
【0047】
(トリアゾール誘導体1)
【化15】

【0048】
(トリアゾール誘導体2)
【化16】

【0049】
(トリアゾール誘導体3)
【化17】

【0050】
(トリアゾール誘導体4)
【化18】

【0051】
5員環化合物として、チオフェン基を含む以下の誘導体を用いることもできる。
(チオフェン誘導体1)
【化19】

【0052】
(チオフェン誘導体2)
【化20】

【0053】
(チオフェン誘導体3)
また、チオフェン誘導体の場合、非縮合系の化合物であり、以下の一般式で示される2,3,4,5-テトラフェニルチオフェン誘導体を用いることもできる。
【化21】

ここで、式中、R12,R13,R14はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換または未置換のアリール基、あるいは置換または未置換のアラルキル基を表し、Ar1およびAr2は置換または未置換のアリール基を表し、さらに、Ar1とAr2は結合している窒素原子と共に含窒素複素環を形成してもよい。また、Y1およびY2は水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、あるいは置換または未置換のアミノ基を表す。
【0054】
(チオフェン誘導体4)
また、以下の一般式で示される2,3,4,5-テトラフェニルチオフェン誘導体を用いることもできる。
【化22】

ここで、式中、Ar1〜Ar6はそれぞれ独立に、置換または未置換のアリール基を表し、さらに、Ar1とAr2、Ar3とAr4およびAr5とAr6は結合している窒素原子と共に含窒素複素環を形成していても良い。
【0055】
また、5員環化合物にイミダゾールを用い、以下の一般式で示すイミダゾール誘導体を用いることもできる。
【0056】
(イミダゾール誘導体1)
【化23】

【0057】
(イミダゾール誘導体2)
【化24】

【0058】
(イミダゾール誘導体3)
【化25】

【0059】
(イミダゾール誘導体5)
【化26−1】

【0060】
【化26−2】

ここで、イミダゾール骨格は中央のベンゼン環R8, R9, R10, R11 の任意の位置に複数ユニットが結合していても良い。また、R12は、置換基を有してもよいオレフィン基又はパラフィン基であり、nは1から3の整数、好ましくは1である。
【0061】
(カルバゾール誘導体)
また、以下の一般式で示されるカルバゾール誘導体を用いることもできる。
【化27】

【0062】
また、共役系を有する5員環化合物であって、1種以上のヘテロ原子、セレン原子又はボロン原子を含む単環化合物を用いることもできる。特に限定されないが、例えば、以下の一般式で表されるアゾール誘導体を用いることができる。
【0063】
【化28】

ここで、式中、R1、 R4、 R5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、あるいはスルホニル基などの置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は炭化水素基又は複素環基又はヘテロ原子を環内に含む芳香族基を示す。R1、 R4、 Rは同じでも異なっていてもよい。
【0064】
本発明の検出方法は、溶液、固体あるいは半固体状態のタンパク質の蛍光を測定する検出方法であれば、あらゆる検出方法に適用することができる。また、ペプチド、抗体、アミノ基を有する糖などに関しても同様である。
例えば、試料中のタンパク質をアニオン性蛍光色素で標識し、この標識したタンパク質を分離手段に供し、MALDI-TOF MS等の質量分析計により画分の分子量を測定し、データベース検索を行いタンパク質を同定することができる。ここで、分離手段には、イオン交換カラムHPLC、逆相分配HPLC、ゲル濾過HPLC、又は電気泳動を用いることができる。電気泳動には、一次及び二次泳動の用いることが可能であり、泳動後、ゲルを乾燥して定量が可能である。
【0065】
また、共有結合性蛍光色素と、それにアニオン性基を導入したアニオン性蛍光色素とを用いることにより以下の検出方法が可能となる。ここで、共有結合性蛍光色素は、それによりタンパク質を標識しても蛍光波長が変化しないものである。最初に、共有結合性蛍光色素で標識する。その後、電気泳動を行い分割する。更に泳動後のゲル基板をアニオン性蛍光色素で標識すると蛍光波長は変化する。アニオン性蛍光色素は、タンパクの深部に位置するアミノ残基を標識可能なので、蛍光波長の変化はタンパクの構造の違いによるものである。したがって、蛍光波長の変化からタンパクの構造を予測することも可能である。この際、用いる蛍光色素は、アニオン性基以外は構造が同じなので、蛍光色素の量子収率などの性能は全く同じである。従って、精度の高い定量が可能となる。
【0066】
また、プロテインチップを用いる検出方法には、本発明を以下のように適用することができる。タンパク質とアニオン性蛍光色素とを溶液中で反応させ、その溶液を測定基板に点着し、その測定基板からの第2の蛍光波長に基づく蛍光画像を計測することができる。点着後は、所定温度で放置することによりタンパク質は基板上に固定されるが、必要によりインキュベーションを行うこともできる。また、プロテインチップ上では、この蛍光色素で標識されたタンパクを捕捉する際、どのような状況下でも安定した蛍光を発するため、これまでのように神経質に取り扱わなくてもよい。また、乾燥状態でも蛍光消光を起こさないので乾燥状態でも安定な観測が可能である。また、前述の、共有結合性蛍光色素と、それにアニオン性基を導入したアニオン性蛍光色素とを用いる検出方法を用いることもできる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いてさらに詳細に本発明について説明する。
合成例1.
活性エステル系アニオン性蛍光色素の合成例を示す。
(1)発色部3の合成
発色部3は、以下のスキーム2に従い合成した。
【0068】
【化29】

【0069】
50 mL 三口フラスコでオキサジアゾロピリジンカルボン酸1 1.0 g (0.0026 moL)とN-ヒドロキシスクシンイミド2 0.30 g (0.0026 moL)をDMF 20mLに溶解した。これにN, N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド 0.54 g (0.0026 moL)を30分かけて滴下した。滴下後、室温で30時間撹拌した。減圧下、DMFを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で単離精製し、オキサジアゾロピリジン活性エステル体 3を0.76 g 、収率62%で得た。
【0070】
(2)スルホニル基の導入
活性エステル体3をDMF中、タウリンを反応させ、スルホン化された4へ誘導した(Scheme 3)。
【化30】

【0071】
実施例1.
(実験方法)
活性エステルのスルホニル体4を純水に溶解し、0.1 M HEPES Buffer
(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid) (pH 7.3)を混合した後、BSA(Bovine Serium Albumin)を添加し、色調の変化をスペクトルで観察するため、スルホニル体4のUVスペクトルを測定し、次いで、蛍光スペクトルを測定してスルホニル体4とBSAの相互作用を観察した。UVスペクトルは、2000μLのセルに蛍光試薬13μM、26μMを調製して測定した。また、蛍光スペクトルは、セル中で26μMの溶液3000μLを調製し、これに所定濃度となるようにBSAを添加して測定した。
【0072】
(結果)
スルホニル体4を含むBuffer液の色調は、BSAを添加すると、黄色から黄緑色へ変化した(図1)。図2にスルホニル体4のUVスペクトルを示す。この結果より、スルホニル体4の最大吸収波長は397 nmであることが分かった。次に、励起波長に397 nmを用いて蛍光スペクトルを測定した。結果を図3に示す。ここで、BSAは1.6 μMの濃度になるよう添加している。蛍光スペクトルは、BSAの添加により18 nmのブルーシフトを示し、かつ蛍光強度は約5倍に増大した。これは、スルホニル体4がBSAのアミノ基と静電結合し、BSA表面とスルホニル体4との相互作用により、ブルーシフトが観測されたと考えられる。また、スルホニル体4がBSAの疎水場に位置することから、水との相互作用がある程度解消されて蛍光強度の増大を示したと考えられる。
【0073】
次に、スルホニル体4 26uM水溶液2000μLを調製し、そこへBSA 0〜15 nMを8回に分割して添加した。その時のUVスペクトルを図4に示す。BSAの添加により淡色効果を示すとともに、ピーク波長はレッドシフトした(15 nMで7 nmのレッドシフト)。これより、スルホニル体4は、BSAの深部(疎水場)に位置しているものと考えられる。
【0074】
なお、比較のため、スルホニル体4に代えて活性エステル体3を用いたが、BSAのピーク波長の変化及び蛍光強度の増加は観測されなかった。活性エステル体3は、活性エステル基とアミノ基との求核置換反応によって生成するアミド結合を介してタンパク質と結合するが、スクシンイミド分子などの立体障害によりBSA深部に位置するアミノ基とは結合せず、表面のアミノ基のみと結合すると考えられる。一方、スルホニル体4は、静電結合によりBSA表面のアミノ基のみならず深部のアミノ基とも結合するため、前述のようにBSAの深部(疎水場)にも位置する。これにより、ブルーシフトと蛍光強度の増加が起きたものと考えられる。
【0075】
実施例2.
(実験方法)
次に、タンパク質にインスリン(Inslin)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。スルホニル体4 26.7μMを蛍光セル中で2000μL調製し、そこへ、インスリン 0 〜 232μMを6回に分けて添加した。
【0076】
(結果)
インスリンを添加した時の蛍光スペクトルを図5に示す。BSAの場合と同様に19 nmのブルーシフトと、蛍光強度の増大が観測された。添加した際のセル中のインスリン濃度と各濃度におけるピーク波長FLmaxとの関係を図6に、インスリン濃度とピーク波長における蛍光強度ΔInt.(スルホニル体4のみの蛍光強度を差し引いた値)との関係を図7に示す。インスリン濃度の増加とともに、ピーク波長FLmaxが直線的に低波長にシフトした。また、インスリン濃度の増加とともに、蛍光強度ΔInt.が直線的に増加するという結果が得られた。これより、蛍光強度の変化から、あるいはピーク波長の変化からインスリンの濃度を算出することが可能であることがわかる。
【0077】
実施例3.
(実験方法)
次に、タンパク質にリゾチームを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。スルホニル体4 26.7μMを蛍光セル中で2000μL調製し、そこへ、リゾチーム 0 〜 46.6μMを4回に分けて添加した。
【0078】
(結果)
リゾチームを添加した時の蛍光スペクトルを図8に示す。リゾチームを添加しても、蛍光強度の増加も、ピーク波長のブルーシフトも観測されなかった。このことは、スルホニル体4が、リゾチームと結合しないことを示している。これは、タンパク質の表面に位置するアミノ基はタンパク質の種類によって異なる配座を取っていることから、スルホニル体4が、リゾチームのアミノ基とは結合しないことを意味しているものと考えられる。しかしながら、スルホニル体4はBSAやインスリンと結合することから、選択的にタンパク質を標識可能な蛍光試薬としてスルホニル体4を用いることが可能であると考えられる。
【0079】
比較例1.
従来使用されているメチルオレンジを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。しかし、メチルオレンジを添加しても、蛍光強度の増加も、ピーク波長のブルーシフトも観測されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明における蛍光色素の色調の変化の一例を示す写真である。
【図2】本発明の実施例1における蛍光色素のUVスペクトルの変化を示す図である。
【図3】本発明の実施例1における蛍光色素の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図4】本発明の実施例1における蛍光色素のUVスペクトルの変化を示す図である。
【図5】本発明の実施例2における蛍光色素の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図6】本発明の実施例2におけるインスリン濃度と蛍光ピーク波長との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2におけるインスリン濃度と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例3における蛍光色素の蛍光スペクトルの変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光色素で標識したタンパク質を検出するタンパク質の検出方法であって、
遊離状態で観測される第1の蛍光波長より短波長であって、タンパク質に結合した状態で観測される第2の蛍光波長に基づく蛍光を計測してタンパク質を検出するタンパク質の検出方法。
【請求項2】
上記検出方法が、試料中のタンパク質を分離手段に供し、分離した画分を質量分析に供する検出方法であって、
タンパク質を分離手段に供する前に、上記第2の蛍光波長を発生する第1の蛍光色素によりタンパク質を標識する請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
上記第1の蛍光色素によりタンパク質を標識するに先立って又は同時に、タンパク質に結合した状態で第1の蛍光波長が短波長にシフトしない第2の蛍光色素によりタンパク質を標識し、次いで分離手段に供する請求項2記載の検出方法。
【請求項4】
上記タンパク質と上記第2の蛍光波長を発生する第1の蛍光色素とを溶液中で反応させ、該溶液を測定基板に点着し、該測定基板からの第2の蛍光波長に基づく蛍光画像を計測する請求項1記載の検出方法。
【請求項5】
上記タンパク質と上記第1の蛍光色素とを溶液中で反応させるに先立って又は同時に、タンパク質に結合した状態で第1の蛍光波長が短波長にシフトしない第2の蛍光色素をタンパク質と溶液中で反応させる請求項4記載の検出方法。
【請求項6】
上記第1の蛍光色素はタンパク質と結合するアニオン性基を有する請求項2から5のいずれか一つに記載の検出方法。
【請求項7】
上記第2の蛍光色素はタンパク質と結合する共有結合性基を有する請求項3又は4に記載の検出方法。
【請求項8】
タンパク質と結合するアニオン性基が直接あるいは連結部を介して結合した有機EL色素を含むアニオン性蛍光色素から成るタンパク質検出用の蛍光色素。
【請求項9】
上記アニオン性基が、カルボキシル基、スルホニル基、硫酸塩基、リン酸塩基及びそれらの組み合わせのいずれかである請求項8記載の蛍光色素。
【請求項10】
上記有機EL色素は、共役系を有する5員環化合物を含む化合物であって、該5員環化合物は1種以上のヘテロ原子、セレン原子又はボロン原子を含む請求項8又は9に記載の蛍光色素。
【請求項11】
上記有機EL色素は、上記5員環化合物と共役系を有する6員環化合物とから成る縮合多環化合物である請求項10記載の蛍光色素。
【請求項12】
上記5員環化合物は、アゾール誘導体又はイミダゾール誘導体である請求項10又は11に記載の蛍光色素。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−234772(P2006−234772A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53798(P2005−53798)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(503474098)
【Fターム(参考)】