説明

タンパク質及びペプチドに対する結合のための4分枝デンドリマー−PEG

本発明は、(I)で表すことができる、4つのモノメトキシポリエチレングリコール分枝を有するデンドリマー様ポリマー構造に関する。前記構造のカルボキシル基は、薬学的対象の結合体を得るために官能化できる。治療用タンパク質への前記デンドリマー様ポリエチレングリコールの結合により、治療用タンパク質のインビトロ及びインビボ安定性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的対象の結合体を得るための4分枝のポリエチレングリコール(PEG)を有するデンドリマー様ポリマー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの薬理学的性質に関して、治療用タンパク質とポリエチレングリコールとを結合することの利益はよく知られている。例えば、種々の原因、その中でも、ポリマー残基により、プロテアーゼの攻撃及び免疫系による該薬剤の認識が防止され、また、天然タンパク質に関しては、結合体が、相当高い水力学的体積となって、腎臓ろ過が著しく減少するために、血中半減期が増加する。多くの場合、PEG化は、インビトロでのタンパク質の生物活性に影響を及ぼすが、血中の存続時間がかなり長くなることにより、その治療上の作用がより有効となる(Harris J.M.及びChess R.B.(2003)、薬剤に及ぼすペギル化の効果(Effect of pegylation on pharmaceuticals)、Nat.Rev.Drug Discov.2:214〜21頁)。
【0003】
また、PEG化により、疎水性相互作用によって誘導された分解の経路が立体的に妨げられ、タンパク質の熱的不安定性に関与する分子間相互作用を減少させる立体的非特異的障害が生じる。このすべてのことから、PEG化タンパク質は、最終的な製剤の開発にとってきわめて有用な性質である、非修飾分子より高い物理的安定性を有することになる(Harris J.M.及びChess R.B.(2003)、薬剤に及ぼすペギル化の効果(Effect of pegylation on pharmaceuticals)、Nat.Rev.Drug Discov.2:214〜21頁)。
【0004】
タンパク質の結合に一般的に用いられる試薬は、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)として知られている、端部の1つがメチル化されたポリエチレングリコールである。メチル基がPEG鎖の端部の1つを保護することから、他の端部、一官能性試薬によってのみ活性化されることが可能になる。このことは、治療用タンパク質の結合にとってきわめて重要である。二官能性又は多官能性試薬への治療用タンパク質の結合は一般に、該タンパク質の生物活性に影響を及ぼす架橋に至るからである。mPEG分子は常に、非メチル化ポリマー、ジオール画分の小さな画分を有する。きわめて長い鎖では重合過程の制御がより困難であることから、高分子質量のmPEGにおけるジオール画分はより大きい(Roberts M.J.、Bentley M.D.、Harris J.M.(2002)、ペプチド及びタンパク質のPEG化に関する化学(Chemistry for peptide and protein PEGylation)、Adv.Drug Deliv.Reviews 54:459〜76頁)。
【0005】
PEGから誘導された最初の分子の1つは、塩化シアンによる反応によって合成されたものである。しかし、この試薬による結合実験は、広範囲のPEG化を引き起こす。これは、治療用タンパク質にとって望ましくない。PEG化の程度が高いと、活性部位の直接的な妨害、又は接近可能なタンパク質表面からこれらの部位を隠す位相幾何学的変化により、生物活性の突然の低下を引き起こすからである。通常、所望の結合体は、各タンパク質分子当たりPEG残基が1つだけ存在するものであり、この分子は、モノPEG化として知られている。
【0006】
1980年代から、「よりソフトな」活性基が使用され始めている。これらは主に、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルであるが、他の基もまた使用されている。最も一般的な3つの基は:スクシンイミジルスクシネート、トレシレート及びスクシンイミジルカルボネートである。活性化PEG類のこの生成は、第1の生成として知られている(Roberts M.J.、Bentley M.D.、Harris J.M.(2002)、ペプチド及びタンパク質のPEG化に関する化学(Chemistry for peptide and protein PEGylation)、Adv.Drug Deliv.Reviews 54:459〜76頁)。
【0007】
1990年代後半に、活性化PEG類の第2の生成があった。そこでは2つの重要な進歩があった:より選択的なPEG化を可能にする基(例えば、タンパク質のN末端により優先的に結合するアルデヒド基)及び分枝構造である(Roberts M.J.、Bentley M.D.、Harris J.M.(2002)、ペプチド及びタンパク質のPEG化に関する化学(Chemistry for peptide and protein PEGylation)、Adv.Drug Deliv.Reviews 54:459〜76頁)。分枝PEG類の例は、2つの分枝を有する一官能性(米国特許第5,932,462号)、4つの分枝を有するテトラ官能性及び8つの分枝を有するオクタ官能性である。治療用タンパク質の結合にとってより有用な活性化PEG類は、一官能性のものである。これらはタンパク質とポリマーとの間の架橋を避けるからである。また、分枝状PEG類は、タンパク質表面のより良好な保護を可能にする傘状構造を有する。
【0008】
2つの分枝の一官能性PEGにより、天然タンパク質よりも臨床上より良好な成績を有することを示すインターフェロンアルファ2aとの結合体を得ることが可能になった(Rajender Reddy K.、Modi M.W.、Pedder S.(2002)、C型肝炎治療のためのペグインターフェロンアルファ2a(40KD)(Pegasys)の使用(Use of peginterferon alfa−2a(40KD)(Pegasys) for the treatment of hepatitis C)、Adv.Drug Deliv.Reviews 54:571〜86頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
mPEG合成に関する現在の技法では、わずか30kDaの鎖が得られるだけであり、その理由で、2つの分枝を有する試薬は、最大60kDaの分子質量を得ることが可能になる。一定のタンパク質において最適な値を得るために、より広範囲の結合体を開発することを可能にするより高い分子質量の一官能性PEGを有する構造を有することが望ましい。しかし、前記の報告では、一官能性となり、2つ超のPEG鎖を有するPEG化用の試薬は用いられておらず、特性化も記載もされていない。2つ超のPEG鎖を有する試薬を得る場合、より高分子質量の結合体が得られると考えられ、これによって、前記の利点に加えて、二分枝構造と同様の分子質量のPEG化試薬を作製するために、より短いmPEG線状分枝を用いることが可能になる。これらの小サイズの分枝は、より小さなジオール画分を有し、合成法がより容易になると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決し、4つのmPEG分枝を有する一官能性デンドリマー様構造を提供する。この構造により、120kDaまでのポリマー残基を有する結合体を得ることが可能になる。このことによって、高分子質量のものなど、広範囲の分子質量を有する結合体を開発することが可能になる。さらに、このアプローチを用いて、他の分枝状一官能性試薬と同様の分子質量を有するが、より低分子質量の線状鎖を有するPEG分子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態において、PEG鎖の分子質量が5,000Daから30,000Daの間であり、全分子質量が20,000Daから120,000Daの間であるポリマー構造が得られる。
【0012】
小型の線状鎖の使用により、より大型の線状PEG分子に典型的なジオール混入をほとんど排除することが可能になった。予想外なことに、本発明の構造を有する結合体は、同様の分子質量を有する結合体よりもはるかに高い物理化学的安定性(高温及びプロテアーゼによる分解に対する抵抗性)を有したが、2つの分枝だけの構造により調製された。やはり予想外なことに、それらは、より長い平均血中存続時間を有した。他の予想外の結果は、本発明のデンドリマー様構造を有する結合体は、同様の分子質量を有するが2つの分枝のみを有する結合体によって得られたものよりもより少ない位置異性体を有することで、より均一だったことである。
【0013】
デンドリマー様4分枝一官能性PEGは、2つの主要ステップで得られる。第1のステップは、2つの線状PEG分子と、例えば、リシンであり得るコアとの結合による2分枝誘導体の合成である。同様の方法が他の著者によっても用いられており、良好な結果が得られている(米国特許第5,932,462号)。第2のステップは、4分枝誘導体を得るための、2分子の2分枝誘導体と、前記のものと同様のコアとの結合である。第1のステップにおいて、2つの線状PEG分枝をコアと結合させるために、それらは活性基を有することが必要である。この基は、当技術分野で知られているもののいくつかから選択できる。例えば、数ある中でも、スクシンイミジルスクシネート、スクシンイミジルカルボネート、p−ニトロフェニルカルボネート、スクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエートである。本発明における好ましい線状活性化PEGは、スクシンイミジルカルボネートである。これは種々の主要な理由、即ちこの試薬と遊離アミノ基を有するコアとの間の良好な反応収率、並びにこの官能化PEGの作製方法の容易さによる。この合成方法(Miron T.、Wilchek M.(1993)、タンパク質に結合させるスクシンイミジルカルボネートポリエチレングリコールを調製するための簡易化法(A Simplified Method for the Preparation of Succinimidyl Carbonate Polyethylene Glycol for Coupling to Proteins)、Bioconjugate Chem.4:568〜69頁)は、当業者に知られている。
【化1】

【0014】
線状活性化PEGが用意できたら、第1のステップは、コアとして選択された分子との反応によって容易に達成される。本発明の好ましい一実施形態において、コアは、生体適合性により、後の活性化に使用できる2つの遊離アミノ基及びカルボキシル基を有するL−リシンである。
【0015】
2分枝誘導体は、反応混合物から、クロマトグラフィー法により容易に精製される。この2分枝誘導体は、コア分子との引き続く反応及び4分枝誘導体の合成のために活性化される。この生成物は、種々の方法で活性化できるが、好ましい方法は、有効性及び使いやすさにより、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの形成である。
【0016】
【化2】

【0017】
この方法は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとして、PEG鎖を含有する構造を有するカルボキシル基の活性化のために首尾よく用いられている(米国特許第4,732,863号及び米国特許第5,932,462号)。
【0018】
4分枝誘導体調製の第2の段階は、2分枝誘導体とコア分子との反応からなり、そこでは、本発明の第1の段階と同様に、本発明の好ましい実施形態は、コアとしてのL−リシンである。
【0019】
【化3】

【0020】
対象である誘導体は、反応混合物から、クロマトグラフィー法により容易に精製される。
【0021】
このデンドリマー様PEG分子は、タンパク質へのその結合のために、種々の反応性基を用いて活性化できる。他のPEG構造の活性化に用いられる任意の官能基を、本特許に記載されたデンドリマー様PEGに用いることができる。これらの基のいくつかの例は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、スクシンイミジルカルボネート、種々のタイプのアルデヒド、マレイミドなどである。タンパク質へのこの構造の結合を可能にする他のタイプの基は、遷移金属を介して、ペプチド主鎖に存在するヒスチジン残基を結合することのできるキレート化基、ニトリロアセテート(NTA)である。反応性基の選択は、PEG分子を結合させようとしているタンパク質残基に依存する。
【0022】
例えば、遊離アミノ基との結合に対する優先性があれば、該デンドリマー様ポリマーは、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとして活性化できる。したがって、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、段階1の2分枝構造の活性化に関して記載されたものと同じ手順に従って、本発明の具現化として得られる。
【0023】
【化4】

【0024】
タンパク質と活性化PEGとの結合は適切な緩衝液中で生じる。緩衝液の特性は、他の因子の中でも、該ポリマーの官能基及び結合の対象に依存する。例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとしての官能化PEGと遊離アミノ基による結合が望ましい場合、結合部位は、予め決定されたpHを用いて、ある程度まで予測できる。約9のpH値が、リシンのεアミノ基を介する結合に有利である。
【0025】
【化5】

【0026】
他の例は、わずかに酸性のpHにより、PEG化が、好ましくはタンパク質のN末端部に生じることが可能になるアルデヒド官能基との結合におけるものである。対象となっている結合体の引き続く精製は、種々のクロマトグラフィー法によって実施できる。
【0027】
本発明の具現化において、タンパク質、ペプチド及びポリペプチドからなる群から選択される生体分子に求核性基が含まれる結合が記載される。
【0028】
精製した結合体の特性化をできるだけ完全に達成するために、該結合体のいくつかの化学的、物理的及び生物学的性質を分析することが必要である。例えば、PEG残基は該タンパク質の吸光係数にほとんど影響を及ぼさないため、該結合体の濃度は通常、紫外線分光法(280nmにおける吸光度)によって判定できる。ゲルろ過などのクロマトグラフィー法では、対象となっている結合体及び混入物に対応するシグナルの分解が不良である可能性があるため、精製産物の純度は、好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって判定する必要がある。他の物理化学的性質は通常の方法により調べることができる。
【0029】
この作業の結果、本発明の好ましい具現化では、該タンパク質が、インターフェロンアルファ2b、ストレプトキナーゼ、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン又は上皮成長因子からなる群から選択される結合体の調製が記載される。
【実施例】
【0030】
調製様式の詳細な解説
(実施例1)
N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとしての活性化PEGの合成
該構造の獲得及び活性化
モノメトキシポリエチレングリコールのスクシンイミジルカルボネート(SC−PEG)の獲得
12,000Daの分子質量を有するモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG12K)15グラムを500mLのトルエンに溶解し、3時間共沸乾燥した。この後、体積を250mLに減らし、混合物を室温まで冷却した。この溶液に以下の試薬:60mLの乾燥ジクロロメタン、15mLの乾燥アセトンに溶解した2gのジスクシンイミジルカルボネート(DSC)、及びトルエン:DCMの3:1混合物10mLに溶解した1gのジメチルアミノピリジンを加えた。攪拌しながら一晩(16時間)反応させた。該反応混合物を1Lの冷ジエチルエーテルによって沈殿させ、沈殿物をろ過により回収した。この生成物をアセトンに溶解させ、ジエチルエーテルにより沈殿させて、3回再結晶させた。最終産物を高減圧下で乾燥し、窒素下、−20℃で保存した。この過程の最終的収率は、90%よりも高かった。活性化PEGの画分は、グリシル−グリシンとの反応及びTNBSとの反応による遊離アミノ基の定量化によって判定した。
【0031】
二PEG化リシン(Lys−2PEG)の獲得
12グラムのSC−PEG12Kを、100mMのホウ酸緩衝液pH8.5中0.2mg/mLの濃度で溶解させた46mgのL−(+)−リシンと反応させた。室温で16時間攪拌させながら反応させた。この後、反応混合物を2回蒸留水中で5回希釈し、pHを塩酸で調整した。PEGを1体積のDCMで3回抽出した。3つの抽出画分のプールを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。DCM中PEG溶液をロータリーエバポレーターで20mLまで濃縮した。この濃縮物を120mLの冷ジエチルエーテルで沈殿させ、ろ過により回収し、高減圧で乾燥した。Lys−2PEGをDEAEセファロースによるイオン交換クロマトグラフィーにより該反応混合物の残りの成分から分離した。
【0032】
1リットルのクロマトグラフィーマトリックスを含有するカラムを、3体積の100mMホウ酸緩衝液pH7.5で平衡化してから、5体積の2回蒸留水で洗浄した。10グラムの反応混合物を取り、5mg/mLで2回蒸留水に溶解した。2体積の2回蒸留水でカラムを洗浄して、反応しなかったPEGを除去し、塩化ナトリウムの1mM溶液によりLys−2PEGを溶出させた。この画分のpHを塩酸により3に調整し、1体積のDCMで3回抽出した。3つの抽出画分のプールを無水硫酸ナトリウムで乾燥してからろ過した。DCM中PEG溶液をロータリーエバポレーターで10mLまで濃縮した。この濃縮物を60mLの冷ジエチルエーテルで沈殿させ、ろ過により回収し、高減圧で乾燥した。5%での塩化バリウム溶液及び100mMのヨードによりゲル染色するSDS−PAGEにより精製度を判定した。MALDI−TOFにより判定された分子質量は、23.0〜24.5kDaであった。この過程の合計収率は40%よりも高かった。
【0033】
N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとしての二PEG化リシンの活性化(PEG2,12K−NHS)
6グラムのLys−2PEGを20mLの乾燥DCM中に溶解し、60mgのN−ヒドロキシスクシンイミド及び250mgのN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を加えた。室温で攪拌しながら24時間反応を続けた。この混合物をろ過し、ロータリーエバポレーターで5mLまで濃縮した。生成物を20mLの冷ジエチルエーテルで沈殿させ、アセトンに溶解しジエチルエーテルで沈殿させ3回結晶化させた。最終産物を高減圧下で乾燥し、窒素下−20℃で保存した。この過程の合計収率は95%よりも高かった。活性化PEGの画分は、グリシル−グリシンとの反応により判定し、遊離アミノ基の数は、TNBSとの反応により定量化した。
【0034】
デンドリマー様4分枝PEGの獲得
5グラムのPEG2,12K−NHSを、100mMのホウ酸緩衝液pH8.5の0.1mg/mL中に溶解させた7mgのL−(+)−リシンと反応させた。室温で16時間攪拌させながら反応させた。この後、反応混合物を2回蒸留水中で5回希釈し、pHを塩酸で3に調整した。PEGを1体積のDCMで3回抽出した。3つの抽出画分のプールを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。DCM中PEG溶液をロータリーエバポレーターで5mLまで濃縮した。この濃縮物を30mLの冷ジエチルエーテルで沈殿させ、ろ過により分離し、高減圧で乾燥した。デンドリマー様4分枝PEGを、G3000−PWカラムのゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。所望の構造を含有する画分のpHを塩酸により3に調整し、1体積のDCMで3回抽出した。3つの抽出画分のプールを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。DCM中PEG溶液をロータリーエバポレーターで5mLまで濃縮した。この濃縮物を30mLの冷ジエチルエーテルで沈殿させ、ろ過により分離し、高減圧下で乾燥した。5%での塩化バリウム溶液及び100mMのヨードによりゲル染色するSDS−PAGEにより精製度を判定し、98%よりも高かった。MALDI−TOFにより判定された分子質量は、45.5〜50kDaであった。この過程の合計収率は30%よりも高かった。
【0035】
N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとしてのデンドリマー様4分枝PEGの官能化(PEG4,12K−NHS)
1.5グラムのデンドリマー様4分枝PEGを5mLの乾燥DCMに溶解し、9mgのN−ヒドロキシスクシンイミド及び37mgのN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドを加えた。室温で24時間攪拌下、反応を続けた。生成物をろ過してから、20mLの冷ジエチルエーテルで沈殿させた。沈殿物は、アセトンに溶解しジエチルエーテルで沈殿させ3回再結晶させた。最終産物を高減圧下で乾燥し、窒素下−20℃で保存した。この過程の合計収率は95%よりも高かった。活性化PEGの画分は、グリシル−グリシンとの反応により判定し、遊離アミノ基の量は、TNBSとの反応により判定した。
【0036】
(実施例2)
PEG4,12K−NHSと結合したIFN−α2bの獲得
結合反応
N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとしての活性化デンドリマー様4分枝PEG(PEG4,12K−NHS)4グラムを、120mMのホウ酸緩衝液pH8.5中6mg/mLのIFN−α2bの1グラムを含有する溶液に加えた。緩やかに攪拌しながら4℃で1時間反応を続けてから、10mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH4を用いた50倍希釈で停止させた。該反応の収率は、クーマシーブリリアントブルーR−250によるSDS−PAGE染色のデンシトメトリー分析によって判定した。デンドリマー様4分枝PEGを有するモノPEG化IFN−α2bの画分は、40%よりも高かった。
【0037】
デンドリマー様4分枝PEGを有するモノPEG化IFN−α2bの精製
500mLのFractogel EMD650(M)COO−を含有するXK50/60カラム(Pharmacia)を、40mL/分の流量で、10mMの酢酸緩衝液pH4の3体積により平衡化した。該反応混合物を含有する溶液を同じ流量で該カラムに入れた。反応しなかったPEG及び1つ超のPEG残基と結合したPEGを、25mMの塩化ナトリウムと共に40mMの酢酸緩衝液pH4により2時間洗浄して除去した。モノPEG化結合体を、150mMの塩化ナトリウムと共に50mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH4により溶出させた。純度は96%より高く、主な混入物は非修飾インターフェロン及び二PEG化結合体であった。対象となっている画分を200mLまで濃縮し、100mMの塩化ナトリウムと共に、50mMのリン酸緩衝液pH7によって平衡化した1LのSephadex G−25を含むXK50/60カラム(Pharmacia)に入れた。デンドリマー様4分枝PEGを有するモノPEG化インターフェロンは、0.2μmの孔径を有する酢酸セルロース膜を通してろ過し、4℃で保存した。
【0038】
(実施例3)
PEG4,12K−IFN−α2bの物理化学的特性化
結合体濃度の判定
タンパク質残基の関数としての該結合体の濃度は、280nmにおけるUV吸光度によって判定した。1吸光度単位は1mg/mLの濃度に等価であると考えられた。
【0039】
結合体の分子質量の判定
該結合体の分子質量は、MALDI−TOFによって判定した。デンドリマー様4分枝PEGに関して予測される平均分子質量は、48,000Daであり、IFN−α2bのそれは、19,200Daであり、したがって、該結合体の理論的質量は、67,200Daであった。PEG4,12K−IFN−α2bに関して算出された質量は、64,000Da〜70,000Daであった。
【0040】
(実施例4)
PEG4,12K−IFN−α2b結合体の生物学的特性化
ELISA型アッセイにおける該結合体の免疫学的同定
種々の濃度の結合体サンプル並びに陰性対照を、IFN−α2bに対するモノクローナル抗体で覆われたELISAマイクロタイタープレートに塗布した。次に、IFN−α2bの他のエピトープを認識する、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合した他のモノクローナル抗体を加えた。結合体サンプルの吸光度が、陰性サンプルの吸光度プラスこれらの値の標準偏差の3倍の平均よりも高い場合に、サンプルは免疫学的に認識されたと考えられた。すべての場合で、該サンプルは認識された。
【0041】
インビトロ抗ウィルス活性
インビトロ抗ウィルス活性は、Hep−2細胞(ATCC番号CCL23)に及ぼすメンゴウィルスにより生じる細胞変性効果の阻害によって判定した。2%ウシ胎仔血清及び40μg/mLのゲンタマイシンを有する最少基本培地中の該結合体連続希釈液(1:2)を、96ウェルマイクロタイタープレート内の細胞単層に混合した。3%二酸化炭素雰囲気及び95%相対湿度下、37℃で24時間、該プレートをインキュベートした。ウィルス(10TCID)を加え、細胞変性効果(90%の細胞溶解)が明らかになるまで、該プレートをインキュベートした。クリスタルバイオレットを用いた細胞の染色によって、細胞破壊のレベルを測定した。各サンプルの活性は、国際単位(IU)で表し、世界保健機構のIFN−α2b国際基準69/19によって評価し、得られた結果を表1に示してある。
【0042】
【表1】

【0043】
インビトロ抗増殖活性
ダウディ細胞(バーキットリンパ腫)の増殖を抑制する結合IFN−α2bの能力により、インビトロ抗増殖活性を測定した。PEG4,12K−IFN−α2bのインビトロ活性が、非修飾IFN−α2bのインビトロ活性の5%に等価であるという結果が示された。
【0044】
(実施例5)
PEG4,12K−IFN−α2bの物理化学的安定性
プロテアーゼによる分解に対する抵抗性
同様の分子質量を有する2又は4分枝PEGに結合した天然IFN−α2bの400μg/mLを含有する4%重炭酸ナトリウム溶液pH8の40マイクロリットルと、160μg/mLのトリプシン溶液の10μLとを混合した。該サンプルを37℃で一定時間インキュベートした。反応は、10μLのトリフルオロ酢酸によって停止させた。クーマシーブリリアントブルーによって染色したSDS−PAGE分析におけるバンドの消失によって、タンパク質の残量(結合又は非結合)を予測した。結果(図1)は、IFN−α2b結合体の分解に対する4分枝PEG構造(▲)をもたらす保護は、同様の分子質量の2分枝構造(●)によって生じるものよりも優れていることを示している。
【0045】
熱安定性
デンドリマー様4分枝PEGとのIFN−α2bの結合の安定性に及ぼす効果を判定するために、天然タンパク質及び結合タンパク質のサンプルを、リン酸緩衝生理食塩溶液中、60℃でインキュベートした。同様の分子質量の2分枝PEGに結合したIFN−α2bのサンプルを対照として用いた。一定の時点でサンプルを取り出し、クーマシーブリリアントブルーによって染色したSDS−PAGE分析におけるバンドの消失によって、タンパク質の残量(結合又は非結合)を予測した。結果(図2)は、4分枝PEG構造(▲)による結合の熱安定性が、他の2つの例[天然IFN(■)、2分枝構造に結合したIFN(●)]のそれよりも高いことを示している。
【0046】
(実施例6)
PEG4,12K−IFN−α2bの薬物動態
非修飾インターフェロンとデンドリマー様4分枝PEGに結合させたタンパク質との間の薬物動態比較試験を、平均体重2kgのニュージーランドラビットにおいて実施した。2分枝PEGに結合させたIFN−α2bを対照として用いた。生体分子を、体重1kg当たり150μgのタンパク質で皮下経路により注入した。血液サンプルを、予め決められた時点で、144時間の間隔で採取した。サンプルを遠心分離して血清を分離し、分析するまで−20℃で保存した。このサイトカインに特異的なモノクローナル抗体を用いたELISA型アッセイによってIFN−α2b濃度(結合又は非結合)を判定した。古典的なコンパートメント乳頭モデルに基づいて解釈を行った。結果は表2に示されている。
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例7)
デンドリマー様4分枝PEGに対する他の治療用タンパク質の結合
組換えストレプトキナーゼ(r−SK)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)及び上皮成長因子(EGF)などの他の治療用タンパク質を、デンドリマー様4分枝PEGに結合させた。プロテアーゼによる分解率に及ぼす結合の効果を評価した。
【0049】
N−ヒドロキシスクシンイミドのエステルとして活性化されたデンドリマー様4分枝PEGの結合
N−ヒドロキシスクシンイミドのエステルとして活性化されたデンドリマー様4分枝PEG(PEG4,12K−NHS)の100ミリグラムを、120mMのホウ酸緩衝液pH8.5中6mg/mLの治療用タンパク質25mgを含有する溶液に加えた。緩やかに攪拌しながら、4℃で1時間反応を続けた。10mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH4を用いた50倍希釈によって反応を停止させた。クーマシーブリリアントブルーR−250によって染色したサンプルのSDS−PAGEからのデンシトメトリー分析により反応収率を判定した。すべての場合において、デンドリマー様4分枝PEGを有するモノPEG化タンパク質の画分は、30%よりも高かった。
【0050】
アルデヒドとして活性化されたデンドリマー様PEGとの結合
20mMのシアノホウ化水素と共に100mMの酢酸緩衝液pH5中4mg/mLの治療用タンパク質15mgを含有する溶液に、アルデヒドとして活性化されたデンドリマー様4分枝PEG(PEG4,12K−ALD)の100ミリグラムを加えた。緩やかに攪拌しながら、4℃で24時間反応を続け、1mMのHClを用いた20倍希釈によって反応を停止させた。クーマシーブリリアントブルーR−250によって染色したサンプルのSDS−PAGEからのデンシトメトリー分析により反応収率を判定した。すべての場合において、デンドリマー様4分枝PEGを有するモノPEG化タンパク質の画分は、30%よりも高かった。
【0051】
プロテアーゼによるタンパク質の分解に対するデンドリマー様4分枝PEGの結合効果
400μg/mLの天然タンパク質又は4分枝PEGに結合したタンパク質を含有する、40マイクロリットルの4%重炭酸溶液pH8を、10μLの160μg/mLトリプシン溶液に混合した。このサンプルを、緩やかに攪拌しながら37℃で4時間インキュベートした。この時間後、反応を10μLのトリフルオロ酢酸で停止させた。タンパク質(結合又は非結合)の残量を、クーマシーブリリアントブルーで染色したSDS−PAGE分析におけるバンドの消失により算出した。この結果(表3)は、デンドリマー様4分枝PEGとの結合は、トリプシンによる分解から結合タンパク質を保護することを示している。すべての場合において、使用された化学結合法とは独立して、35%超のタンパク質は、トリプシンとの反応4時間後に消化されていなかった。しかしながら、天然タンパク質では、この反応時間後に検出できる徴候はなかった。
【0052】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】プロテアーゼによる分解に対する保護を示す図である。X軸は、時間を表し、Y軸は、ゼロ時間における量のパーセントで表される非分解タンパク質量を表す。
【図2】耐熱性を示す図である。X軸は、日数期間を表し、Y軸は、ゼロ時間における量のパーセントで表される非分解タンパク質量を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的対象の結合体を得るための、
【化1】


のように表すことができる4分枝のモノメトキシポリエチレングリコールを含むポリマーデンドリマー様構造。
【請求項2】
各PEG鎖の分子質量が5,000Daから30,000Daの間であり、全分子質量が20,000Daから120,000Daの間である、請求項1に記載のポリマー構造。
【請求項3】
カルボン酸基の官能化により得られた求核性基との結合のために活性化された、請求項2に記載のポリマー構造。
【請求項4】
請求項1に記載のポリマー構造及び求核性基を含む結合体。
【請求項5】
前記求核性基が、タンパク質、ペプチド及びポリペプチドからなる群から選択される生体分子中に含まれる、請求項4に記載の結合体。
【請求項6】
前記タンパク質が、インターフェロンアルファ2−b、ストレプトキナーゼ、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン又は上皮細胞成長因子を含む群から選択される、請求項5に記載の結合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−517414(P2009−517414A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542584(P2008−542584)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/CU2006/000014
【国際公開番号】WO2007/062610
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】