タンパク質相補によるリアルタイムインビボ核酸検出
本発明は、リアルタイムタンパク質相補性法を使用してインビボでRNA分子などの核酸分子を検出する方法に関する。本発明はさらに、本発明の新規な分割生体分子複合体を使用して、生体細胞中で、実時間で核酸、例えばRNAを高感度で検出する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は出願日2005年10月27日、米国特許仮出願第60/730,746の35U.S.C.119(e)の恩典を主張するものであり、この内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は核酸のインビボ検出のための組成物および方法を対象としている。より好ましくは、該組成物および方法により、高感度のリアルタイムインビボRNA検出が可能になる。
【0003】
背景
RNAは、遺伝子発現として広義に決められている多段階の工程に積極的に関与しており、この工程は、核内でのRNAの転写およびプロセシング、核からの排出、細胞質経由の輸送ならびにリボソーム内の翻訳を含む。さらに、非コードRNA、増加し続けるクラスのRNA分子は、全細胞の巨大分子、タンパク質、DNAおよびRNA:RNA編集、RNA修飾、DNAメチル化およびタンパク質修飾に関する多様な転写後および翻訳後事象に関与している(Kiss, 2002, Mattick, 2004; Huttenhoferら、2005)。これらの多機能を実行するために、RNAは正常な時間に正常な細胞配置で存在している必要がある。すなわち、細胞内RNA分子の空間的および時間的局在化が近年、細胞生物学の重要なメカニズムとなっている。
【0004】
RNAの局在化はタンパク質合成を調節するだけでなく、モルフォゲンの濃度勾配をつくり、細胞系統および細胞小器官の形成を決定する(概説は、Klocら、2002を参照)。RNAが適切に機能しなければ、多様な病態が現れる可能性がある。RNAの動的かつ不安定な性質、ならびにその運動および局在化に関連した多機能の重要な役割によって、関心と課題の双方が生じた。
【0005】
インビボにおけるRNA局在化の分野に現在直面している問題点の一例として、核内poly(A)+−mRNAの拡散係数を評価する適切な方法が存在しないことが挙げられる。値には2桁分の差異、すなわち0.03〜0.6μ2/secおよび9μ2/secと差異があることが報告されている(Politzら、1998, P olitzら、1999, Molenaarら、2004)。したがって、インビボでの多様なRNAの機能および挙動を一層よく理解するため、生体細胞内でのそれらRNAの局在化および運動を研究する新規の方法が明らかに至急必要とされている。
【0006】
細胞内RNAを視覚化するために、RNAを選択的に標識化する必要がある。インビボでのRNA標識化には様々な戦略が提示され、使用されてきた(概説は、Pedersonら、2001を参照)。それらの大多数が様々なRNA特異性ハイブリダイゼーションプローブおよび核または細胞質へのプローブ送達用のマイクロインジェクション法またはリポフェクション法を使用している。他の可能性として、予めRNAを標識化し、細胞内へそれを導入する方法が挙げられる。細菌細胞内のRNAハイブリダイゼーションに対してKoolおよび共同研究者らは自己連結消光プローブを使用することに成功した(Sando & Kool, 2002)。蛍光2’−O−メチル−RNAプローブは非メチル化オリゴヌクレオチドより安定していることが分かっており、いくつかのグループが使用した(Carmo-Fonsecaら、1999; Molenaarら、2001; Molenaarら、2004)。分子ビーコンおよびケージ化フルオレセイン標識化アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNAハイブリダイズプローブの改良型を示す(概説は、Politz, 1999, Pederson, 2001を参照)。分子ビーコンおよびケージ化プローブの利点は、それらがそれぞれ標的にハイブリダイズしない限り、または蛍光しない限り、シグナルを生成しないことにあり;これによりバックグラウンドは低下し、続いて感度が向上する(Sokolら、1998; Perlette & Tan, 2001; Matsuo, 1998; Tsujiら、2001; Sei-Iidaら、2000)。
【0007】
このハイブリダイゼーション戦略の最も深刻な制限は、細胞内RNAの低濃度に起因するハイブリダイゼーションの低感度である。ほとんどの場合、非常に豊富にあるRNA種のみが検出可能である(β−アクチンmRNA、c−fos mRNA、塩基性線維芽細胞成長因子RNAまたは総ポリ(A)−RNA)。インビボRNA検出用にオリゴヌクレオチドプローブを使用する際の他の障害として、核内におけるその蓄積が速いことが挙げられる(Tsujiら、2000; Molenaarら、2001)。
【0008】
インビボでのRNAを研究する他の戦略では、RNA結合タンパク質と蛍光タンパク質間の融合、およびRNA−標的内のタンパク質結合タグの誘導を使用する。2つの群で、MS2コートタンパク質および対応するRNAモチーフとの相互作用に基づく系が使用され(Bertrandら、1998; Beachら、1999; Beach & Bloom, 2001)、他の群ではタンパク質スプライシングU1Aに基づく系が使用された(Takizawa & Vale, 2000)。このアプローチにより、酵母細胞(Bertrandら、1998; Beachら、1999; Corral-Debrinskiら、2000; Beach & Bloom, 2001)およびニューロン(Rookら、2000)における特定のRNAのリアルタイム運動の監視が可能となることが期待される。この技術は蛍光タンパク質と細胞内RNA研究を結びつける最初の試みである。しかし、実質的な制限として、RNA結合タンパク質に融合した完全に機能的な蛍光タンパク質のバックグラウンドシグナルが上昇すると実際の監視は困難になる。
【0009】
さらに、インビボRNA分析は、RNA特異性蛍光プローブが細胞へと運ばれるか(例えば分子指標)あるいは細胞内で合成される(例えば、RNA結合タンパク質、例えばMS2コートタンパク質に融合した高感度緑色蛍光タンパク質、EGFP)蛍光検出法に大きく依存している[概説は、(14,15)を参照]。しかし、これらの方法には深刻な難点および制限がある。事前に標識化したオリゴヌクレオチド検出プローブは修飾してヌクレアーゼ耐性にする必要があり、侵襲的技術を用いて細胞内へ運ぶ必要もある(16)。RNA結合タンパク質を使用する第2アプローチは、RNA結合タンパク質認識タンパク質配列が連携した複数のコピー(96以下)で対象となるRNAを修飾することを含み、一方RNA結合タンパク質は完全サイズの蛍光タンパク質に融合する。結果として、融合タンパク質の大型多量体複合体は対象となるRNAに集まり、細胞内でRNAの正常な運動および移動を害する可能性がある。細菌内では、凝集する傾向がある全長蛍光タンパク質によりバックグラウンド蛍光も上昇し、その凝集体はRNA−タンパク質複合体と混同され得る。真核生物では、異なる区画にある蛍光タンパク質とRNPの複合体を分離することが役立つ場合もある(21)が、一般的には、全長蛍光タンパク質に起因する蛍光バックグラウンドの上昇により、このアプローチの感度が制限される。
【0010】
ゆえに、RNA標識化の現行法はすべて、非特異性バックグラウンドの上昇およびシグナル増幅の欠如に悩まされており;したがって、その方法のほとんどは豊富にあるRNA種の検出により制限されている。また、リアルタイムにRNAを検出することが非常に必要となる。
【0011】
発明の概要
本発明の発明者らは、リアルタイムのタンパク質相補法を使用してインビボでのRNA分子などの核酸分子を検出する方法を開示した。特に、本発明は核酸、例えばRNAを高シグナル:バックグラウンド比率でインビボ検出する方法を提供しており、これにより高感度でRNAが検出可能となる。さらに、本発明の方法は非侵襲的方法で生体細胞内のDNAおよびRNAを検出するための方法および成分を提供する。より具体的には、本発明の組成物は、2つ以上のポリペプチドフラグメントに分割された検出タンパク質を含む検出分子を含み、そのポリペプチドフラグメントは、個々に機能するか、あるいは協同して単一部位に結合する核酸結合モチーフに付着している。レポーター核酸結合配列(例えばアプタマー)を含むように改変されているRNAまたはDNAなどの標的核酸の存在下でのみ、検出ポリペプチドタンパク質フラグメントは機能的活性検出タンパク質へ再会合し、これによりレポーター核酸配列上で核酸結合モチーフがその同族結合部位(単数または複数)と相互に作用するようになる。この相互作用は検出タンパク質のフラグメントを集合させ、シグナルが即時に検出可能となる。検出分子のポリペプチド、特に検出タンパク質成分は活性的な立体配置にあるが単独では不活性であり、しかし再構成すると、それらは即時に活性タンパク質を形成し、それにより標的核酸存在下、リアルタイムにシグナルが生成される。一実施態様では、標的核酸はRNAである。また、一実施態様は、検出分子の核酸結合モチーフ成分としてRNA結合タンパク質またはペプチドを包含する。
【0012】
本明細書に記述するとおり、「検出構築物」は2つ以上の活性化ポリペプチドフラグメントへと分割された上述の検出タンパク質(蛍光または酵素タンパク質のいずれか)を含む検出分子をコードする核酸配列を指し、各フラグメントは核酸結合モチーフに結合している。ポリペプチドフラグメントは、結合した核酸結合モチーフが標的核酸に結合することで集合した場合、完全活性タンパク質を再構成し、即時に検出可能である。
【0013】
本明細書に記述するとおり、「レポーター構築物」は前述の核酸、例えば対象となる遺伝子をコードするRNAまたはDNA、および標的核酸結合配列、例えばアプタマーを含むレポーター分子をコードする核酸配列を指す。核酸結合配列は検出構築物の核酸結合モチーフにより認識可能である。核酸結合配列は、核酸、タンパク質、アプタマーまたはアプタマータグであってよい。
【0014】
一実施態様では、検出タンパク質は、例えばEGFPなどの蛍光分子である。本発明の一実施態様では、蛍光レポーターはアルファフラグメント(およそアミノ酸1〜158)およびベータフラグメント(およそアミノ酸159〜239)へと分割されたEGFPである。アルファフラグメントは成熟完全形成発色団を含み、該発色団は単独では蛍光を発することはなく蛍光の前段階にあり、ベータフラグメントと対になったとき即時に蛍光を発する。蛍光の即時性により、当技術分野で現在利用できないリアルタイムインビボRNA検出が可能になる。重要には、アルファおよびベータフラグメントは標的核酸、例えば標的RNAが不在である場合は再会合しない、または蛍光を発しない。
【0015】
他の実施態様では、蛍光タンパク質は緑色蛍光タンパク質(GFP)または高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)である。代替的実施態様では、蛍光タンパク質は黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、高感度シアン蛍光タンパク質(ECFP)または赤色蛍光タンパク質(dsRED)もしくは上記で列挙したタンパク質の任意の他の天然または遺伝子操作蛍光タンパク質である。なおさらなる実施態様では、再構成された蛍光タンパク質は、上記で列挙した蛍光タンパク質と同じもの、またはそのいずれかの組み合わせから得たフラグメントの混合物から成っていてよい。
【0016】
あるいは、検出タンパク質はシグナル増幅を可能にする酵素である。酵素は例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼであってよい。特定の実施態様では、検出酵素はベータ−ラクタマーゼである。
【0017】
本発明の重要な実施態様では、組成物および方法はリアルタイムインビボRNA検出を可能にするレポーターアッセイを提供する。一実施態様では、検出構築物を安定的に発現するために、対象となる細胞を作製する。検出構築物は、標的RNAが不在である場合は検出タンパク質からシグナルを生成せず、よって発光または活性化することもない検出分子を発現する。該細胞は、検出分子の核酸結合モチーフ(単数または複数)に対する結合部位および対象となる遺伝子を含むレポーター分子をコードするレポーター構築物も発現する。該レポーター構築物の発現は誘導可能である。該レポーター分子が細胞内で発現すると、検出分子は標的RNAに結合し、検出タンパク質の再構成および活性タンパク質とシグナルの生成を促進する。このことにより、リアルタイムインビボRNA発現検出が可能になり、この結果を図10〜11および18〜19および実施例9〜11に例示している。
【0018】
代替的な実施態様では、対象となる細胞はレポーター分子を含む2シストロン性核酸配列を発現可能であり、ここでは検出構築物は構造的に発現し、レポーター構築物の発現は対象となるプロモーターに対して動作可能に連結している。関連した実施態様では、(対象となるプロモーターに対して動作可能に連結している)レポーター構築物および検出構築物は分離した核酸配列上にある。プロモーターが特定の刺激により細胞内で活性化する場合、標的核酸配列の結合部位(単数または複数)は有効になり、検出分子の核酸結合タンパク質の結合は検出ポリペプチドフラグメントの会合および即時検出できる活性な検出タンパク質の形成を促進する。この実施態様によって、インビボでプロモ−ター機能をリアルタイムに研究することを可能になる。RNA結合部位を操作し、任意のベースライン検出構築物活性を分析するプロモ−ターを発現するプラスミドをトランスフェクトすることによって、例えば遺伝子の調節はリアルタイムに研究できる。関連した実施態様では、i)1種の化合物または複数の化合物と接触させるか、あるいはii)プロモ−ターの活性を改変する可能性がある多様な条件に供し、その結果、RNAの転写が増加、減少し、または変化が起こらないようになる。検出構築物によって、この改変を直ちに検出する。
【0019】
類似の実施態様では、「tet−on」または「tet−off」システムを本発明の方法で利用してよい。例えば、本発明の検出構築物を安定的に発現するために対象となる細胞を作製してよい。また細胞は、検出分子核酸結合モチーフ)に対する標的結合部位(単数または複数)および対象となる遺伝子の転写を調節可能にするtet−onまたはtet−off調節可能レポーター構築物を安定的に発現する場合もある。例えば、tet−offシステムでは細胞は対象となる遺伝子を即時に発現し、レポーター構築物は活性的であり即時検出可能である。tetに加えて、レポーター構築物(対象となる遺伝子および標的核酸結合部位を含む)の転写が停止し、すでに転写した転写産物のみがリアルタイムに分析可能である。このtet−off例では、レポーター蛍光または活性の減少を検出することで、例えば半減期などのRNAの安定性はインビボでリアルタイムに分析可能である。
【0020】
代替的実施態様では、「tet−on」構築物を使用すると生体細胞中の対象遺伝子が安定的に発現することになり、それにより、システムへのtetの添加によりレポーター構築物の転写が開始する。その後本発明の検出分子はその標的RNAに結合可能となり、即時に検出可能である。この実施態様では、RNA局在化は実験者が決定したとおりにリアルタイムに研究し得る。
【0021】
さらに別の本発明の実施態様では、レポーターアッセイはインビボで生体内にて行う。非限定的であるが、例えば動物、非ヒト動物、マウス、ゼブラフィッシュ、線虫(C. elegans)またはカエルを、検出構築物に結合するとされているRNA結合部位を有する検出構築物および対象遺伝子の両方を発現させるために供与してもよい。生体内の両構築物を発現させれば、1日目の胚から全成体期より試料を得ることで、対象となる転写産物が全成長を通じて分析可能になる。一実施態様では、生体は哺乳動物である。一実施態様では哺乳動物はマウスであり、他の実施態様では生体はトランスジェニック生体、例えばトランスジェニックマウスであるが、これに限定されない。
【0022】
あるいは、本発明の組成物および方法は、インサイチュハイブリダイゼーションに類似したリアルタイムインビトロRNA検出を提供する。このような実施態様では、検出分子の核酸結合モチーフに結合するとされているRNA結合配列を有する対象RNAを含むレポーター構築物を発現する細胞を透過処理し、本発明の検出構築物をその細胞に投与する。対象RNAが発現すると、検出構築物はRNA結合配列に結合し、RNAの局在化および存在量が決定できる。従来のインサイチュハイブリダイゼーション技術より優れたこの系の利点は、低量RNAを検出する能力(酵素レポーターを利用する検出構築物によって達成可能となるシグナル増幅に起因している)および放射活性なしに、迅速に、アッセイを終了させる能力である。検出構築物による迅速な検出が強く望まれる。現在、(例えば放射活性による)インサイチュハイブリダイゼーションを行う従来の方法は、実験が成功するか否か分かる前でも数週間から数ヶ月かかる。また、従来のインサイチュハイブリダイゼーションで使用するRNAプローブは、RNAが容易に分解され、および放射活性を使用するため、調製が困難である。本発明の方法では、放射活性またはRNAプローブは必要ない。検出構築物を、例えば当業者に周知である細菌から簡単に調製する。該アッセイは、インビトロでのタンパク質検出において抗体を使用可能にする免疫組織化学または免疫細胞化学技術に類似している。ここではRNAを検出する。
【0023】
代替的実施態様では、本発明の組成物および方法は核酸、特にインビボのRNAおよびDNAのリアルタイム検出を提供するものであり、RNAおよびタンパク質構築物の両方を、試験管内、例えば体外細胞中で、非限定的例としてエクソビボの細胞中でRNAを検出するように操作する場合の本発明の使用に関している。
【0024】
さらに、本発明の組成物および方法は、インビボでリアルタイムにDNAを検出する実施態様で使用してよい。例えば、本発明の検出構築物は、各々が核酸結合モチーフと会合している少なくとも2つの不活化ポリペプチドフラグメントへと分割された検出(蛍光または酵素)タンパク質を含んでよい。標的核酸、例えばアプタマーの存在により集合したときそのポリペプチドフラグメントは完全に活性な検出タンパク質を形成し、直ちに検出できる。例えば、本発明の方法により、ゲノム内の多様な遺伝子座の複製はリアルタイムに検出できる。検出構築物中の検出タンパク質と会合した核酸結合モチーフはRNAまたはDNAの多様な領域に特異的であり、それらの遺伝子座の複製をリアルタイムでインビボで検出ができる。
【0025】
同様に、本発明の方法および組成物を使用してリアルタイムインビボ染色体検出が可能となる。例えば、検出構築物は、テロメラーゼ結合タンパク質と会合して細胞内で発現する検出タンパク質を含んでよい。このように、テロメラーゼは細胞寿命全体にわたってリアルタイムに検出可能である。本明細書に示した組成物および方法の利点は、2等分に切断し、各半量が検出タンパク質の半量と会合しているテロメラーゼ結合タンパク質を提供することで特異性が上昇することである。両半分のテロメラーゼ結合タンパク質を単結合部位へ配位結合させると、標的認識に先立って検出体の活性は皆無かそれに近いものとなる。
【0026】
他の実施態様では、本発明は本発明の方法、特にインビボRNA検出に適したキットを提供する。一実施態様では、キットは検出構築物および誘導可能なレポーター構築物を含む。一実施態様では、レポーター構築物および検出構築物は分離した核酸分子上にある。他の実施態様では、それらは2シストロン性核酸分子の両側にある。他の実施態様では、レポーター分子は実施者の対象となる遺伝子を添加するために修飾可能であり、他の実施態様では、レポーター分子の発現はtet−onまたはtet−offプロモーターに対して動作可能に連結している。他の異なる実施態様では、標的核酸配列を含むレポーター構築物は実施者により修飾され、実施者の対象となるプロモーターに調節され得る。これらの各実施態様では、キットには、検出分子中の検出タンパク質のために選択された分割ポリペプチドが含まれ、また、検出タンパク質からシグナルを検出するための説明書および試薬も含まれている。いくつかの実施態様では、キットには、試料中の標的核酸の存在または量を捕らえる、および/または検出するのに適した試薬も含まれる。標的核酸の存在および/または量を検出する試薬は、集まったタンパク質に特異的な酵素的活性試薬または抗体を含むことが可能である。抗体は標識化できる。
【0027】
タンパク質相補性と酵素レポーターを組み合わせると、実質的にバックグラウンドが減少しシグナルが増幅する。これによって結果的に、中等量の核酸を分析できるインビボRNA検出技術が与えられる。
【0028】
さらなる実施態様では、本発明はインビボでRNAを検出する手段を含むキットを提供する。
【0029】
本発明の他の態様を以下に開示している。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、検出の感度を高める、バックグラウンドに対する高いシグナル割合で検出を可能にする、生体細胞内のRNAの高速検出のための新規な方法を開示している。本発明は核酸、例えばインビトロおよびインビボでのRNAおよびDNAのリアルタイムの高感度検出用の組成物および方法を含む。特に、本発明は、少なくとも2つのポリペプチドフラグメントに分割された検出タンパク質を含む検出分子を使用する方法を含んでおり、それらのフラグメントは核酸結合モチーフ、例えば個々に機能するか、あるいは共同して単一核酸結合部位と結合してもよいRNA結合モチーフに付けられるものである。検出タンパク質フラグメントの機能的検出タンパク質の再会合は、RNA結合モチーフと核酸上のその同族結合部位(単数または複数)との相互作用の結果として、標的核酸分子の存在下でのみ生じる。この相互作用は検出タンパク質の相補性ポリペプチドフラグメントを集め、シグナル検出を可能にする。
【0031】
本発明はRNAなどの核酸をインビボで確認可能にする革新的方法を提供するものであり、2つ以上のポリペプチドタンパク質フラグメントの活性タンパク質への再会合を意味するタンパク質相補対形成に基づいている。特に、分割したポリペプチドは活性的な立体配置にあり、単独では依然不活性であり、したがってそれらが相補性ポリペプチドフラグメントと会合すると即時に活性検出タンパク質が形成される。この場合、核酸/タンパク質相互作用を付加することで支援される場合のみ、相補性が生じる。一実施態様では、高親和性および高特異性タンパク質/RNAアプタマー相互作用について記述している。アプタマーは標的RNA内で認識タグとして発現し、一方、核酸結合モチーフは、分割した検出タンパク質のフラグメントに融合した2つの不活性フラグメントとして合成される。核酸結合モチーフフラグメントとアプタマーとの相互作用は検出タンパク質フラグメントを集合し、結果として細胞の内部に、再集合検出タンパク質の酵素活性または蛍光が生じる。
【0032】
一実施態様では、本明細書に記述した方法はリアルタイム核酸検出に使用可能である。ある検出分子、核酸結合モチーフに結合した検出タンパク質の1つのポリペプチドフラグメントおよび核酸結合モチーフに結合した検出タンパク質の少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントを含んでいる検出分子をコードする核酸配列を含む検出構築物について記述している。また、アッセイでは、対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含むレポーター分子をコードするレポーター構築物が利用されている。核酸結合配列は検出分子の核酸結合モチーフに認識される。この認識により、検出タンパク質は再構成され、リアルタイムに即時に検出可能となる。検出タンパク質は標的核酸の非存在下では活性せず、よって高感度でバックグラウンドも低レベルである。また、標的核酸配列の存在下での認識において活性が即時に検出可能になるように、検出タンパク質の断片化をデザインする。
【0033】
本発明の一実施態様では、核酸はRNAである。任意のRNAが検出可能であり、mRNAおよびmiRNAを含む群より選択される。あるいは、核酸はDNAである。
【0034】
本発明のアッセイは核酸結合モチーフを説明している。一実施態様では、モチーフは、核酸結合モチーフがポリペプチドフラグメントに分割される方法で検出タンパク質と会合してよく、1つのフラグメントは検出タンパク質の1つのフラグメントに結合し、残りの核酸ポリペプチドフラグメントは検出タンパク質の1つ以上の他のフラグメントに結合する。この実施態様では、モチーフの結合が配位され、各フラグメントは1つの核酸結合配列に結合するために存在しなければならない。
【0035】
代替的な実施態様では、検出タンパク質の1つのポリペプチドフラグメントと会合する核酸結合モチーフは、検出タンパク質の1つ以上の他のフラグメントに結合する他の核酸結合モチーフから独立している全長モチーフであってよい。例えば、核酸結合タンパク質は小規模のマルチドメイン核酸結合タンパク質であってよく、そのため各ドメインは検出タンパク質の1つ以上のフラグメントと会合する。この実施態様では、レポーター分子内の核酸結合モチーフの同族核酸配列(または元の核酸)への結合は独立している。
【0036】
細胞内での構築物の発現
【0037】
本発明の一実施態様では、検出およびレポータ分子はインビボ細胞内で発現する。このことを達成するために、検出およびレポーター分子をコードする核酸配列を、当業者が周知の任意の好適な方法、例えば形質転換またはトランスフェクションで細胞に挿入してよい。一実施態様では、構築物は、例えば単一核酸配列にあってよい。代替的な実施態様では、例えばそれらは2つの構築物にあってよい(1つはレポーター構築物を含み、また1つは検出構築物を含む)。該構築物は、細胞に同時形質転換または共トランスフェクトさせてもよい。この理論に制約されずに、同時形質転換/共トランスフェクトされた構築物は形質転換/トランスフェクション中に再結合することが提案されており、結果的に両構築物が細胞ゲノムDNA内の同じ部位で組み込まれることになる。
【0038】
あるいは、検出およびレポーター構築物は単独で、または組み合わせて細胞内で安定的に発現させてよい。目的の対象遺伝子および優性遺伝子マーカーをコードする発現ベクターで細胞をトランスフェクトした後、高レベルの組み換えタンパク質を産生する安定したクローンを得る。多様な細胞型へ安定的に組み込む方法は当業者に周知である。
【0039】
一実施態様では、核酸は、活性検出タンパク質を形成するために再構成する(検出タンパク質および核酸結合モチーフを含む)分割ポリペプチドフラグメントをコードしてよい。このような一実施態様では、分割ポリペプチドフラグメントは、例えば内部リボソーム侵入部位(IRES)で連結してよい。IRESは、転写産物にリボソーム侵入部位(単数または複数)を添加することにより対応する分割生成物に翻訳され得る2つ以上の分離した遺伝子から単一転写産物を生成することを可能にする。代替的な実施態様では、分割ポリペプチドフラグメントおよび/または検出タンパク質および/または核酸結合モチーフは、1つの核酸にコードされてよく、各核酸配列間の分割可能部位は目的のポリペプチドの分離を可能にする。非限定的な例として、核酸は、少なくとも2つの核酸結合モチーフを含む活性検出たんぱく質をコードする配列を含むことが可能で、ここでは、検出タンパク質をコードする配列は、核酸結合モチーフを個々に含む検出タンパク質の分割ポリペプチドフラグメントの生成を可能にする分割可能部位を含む。このような実施態様では、当業者に周知の任意の手段で、分割可能部位により分割ポリペプチドフラグメントの分割が可能になる。その手段は、例えば酵素切断、化学切断、熱切断、酸切断、放射線切断、光切断等が挙げられるが、これらに限定されない。また、検出構築物およびレポーター構築物も単一構築物にコードされてよく、個々の成分はIRESに連結されている。
【0040】
細胞内に核酸配列を誘導する方法は当業者に周知であり、例えば検出およびレポーター構築物が含まれ、その検出およびレポーター構築物をベクター、ウイルスベクターおよび非ウイルス手段を含む複数の手段により細胞内に誘導してもよい。非ウイルス手段には、融合、エレクトロポレーション、微粒子銃、トランスフェクション、リポフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクション法、加圧侵入、裸DNA等、または当業者に周知の任意の他の手段が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「プラスミド」と同じ意味で使用する用語「ベクター」は、それが連結している他の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。自身が操作可能に連結している遺伝子および/または核酸配列の発現を方向付けることが可能なベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。概して、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターは、ベクター形態では染色体に結合しない環状二重鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態であることが多い。他の発現ベクターは本発明の異なる実施態様で使用可能であり、非限定的であるが、例えばプラスミド、エピソーム、バクテリオファージまたはウイルスベクターが挙げられ、該ベクターは宿主ゲノムに組み入れてもよいし、あるいは特定の細胞中で自己複製してもよい。同等の機能を示す当業者が周知の発現ベクターの他の形態も使用可能である。発現ベクターには、DNAをコードする、安定的または一過性の発現のための発現ベクターが含まれる。
【0042】
一実施態様では、検出およびレポーター構築物は、構築物が特定の遺伝子座で組み込まれることが必要である相同組換えにより誘導してよい。例えば、本発明の核酸構築物により、同じ遺伝子座または他の場所で内在性遺伝子を欠失および/または置換させることが可能である。相同組換えのために、限定するものではないがΩまたはO−ベクターなどの特定のベクターに核酸をクローン化する。例えば、ThomasおよびCapecchi, cell (1987), 51; 503-512, Mansourら、nature, (1988) 336; 348-352; およびJoynerら、nature (1989) 338; 153-156を参照されたい。
【0043】
細菌または酵母の複製起点などの有用な要素を含むベクター、選択可能および/増幅可能マーカー、原核生物または真核生物における発現のためのプロモーター/エンハンサー要素、および哺乳動物発現制御の要素等は核酸構築物を保存するために使用し、トランスフェクションを行うため、当技術分野で周知であり、多くは市販されている。
【0044】
いくつかの実施態様では、ウイルスベクターを使用し、検出構築物および核酸構築物の核酸配列を誘導し、その発現を操作してよい。ウイルスベクターとは、核酸構築物を細胞に運ぶ担体としてのウイルスまたはウイルス関連ベクターの使用を指す。細胞に感染または誘導させるためのレトロウイルスおよびレンチウイルスベクターを含むアデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)または単純ヘルペスウイルス(HSV)等の非複製不完全ウイルゲノムに構築物を組み込み、封入してよい。そのベクターを細胞ゲノムに組み込まなくてもよい。必要に応じて構築物はトランスフェクション用のウイルス配列を含んでよい。あるいは、エピソーム複製が可能なベクター、例えばEPVおよびEBVベクターに構築物を組み込んでよい。
【0045】
核酸結合部分としてポリペプチドを有する検出構築物の分割ポリペプチドフラグメントでは、全分割ポリペプチドフラグメントおよび核酸結合部分分子はポリペプチドタンパク質、リンカーおよび核酸結合部分ポリペプチドなどの単一構築物にコードされることが可能である。この構築物は細胞内で発現させるか、あるいは細胞内に微量注入することが可能である。これらの構築物は対象となる核酸のインビトロ検出にも使用できる。
【0046】
アプタマー
【0047】
アプタマーは比較的短いRNAまたはDNAオリゴヌクレオチドであり、これはリガンドに結合しておりSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)という選択手法を用いてインビトロで単離する(Tuerk & Gold, 1990; Ellington & Szostak, 1990)。選択手法はリガンドの結合で操作するので、アプタマーは高親和性でそのリガンドに結合し、リガンド結合に最適化された二次構造内に折り畳まる(Herman & Patel, 2000)。この点において、アプタマーは、複合化学または生物学的混合物から対応するリガンドに選択的に結合することで抗体に類似している。
【0048】
アプタマーは本発明の方法に特に有用である。例えば、核酸結合モチーフがアプタマー結合配列を含み、レポーター構築物がアプタマーを含むように検出構築物を構成してよい。逆に、検出構築物がアプタマーを含み、レポーター構築物がアプタマー結合配列を含んでもよい。
【0049】
したがって、本発明の一実施態様では、アプタマー機能を実質的に干渉し得る隣接配列の非存在下でアプタマーが発現できるように、アプタマーを含むRNAオリゴヌクレオチドをコードするベクターを使用して細胞内で発現後、アプタマーは機能し得る。このような一実施態様では、このことは2つの自己切断リボザイムに隣接したアプタマーを含むRNAオリゴヌクレオチドで達成される。先行技術の方法と対照的に、米国特許第20050222400号に記載のとおり、オリゴヌクレオチドが発現すると、アプタマーは自己切断リボザイムの切断によって遊離し、遊離したアプタマーは、アプタマー配列の適切な折り畳みを干渉するする可能性が極めて低い自己切断リボザイムのレムナントである短いフランキング配列を有している。いかなる特定のメカニズムにも限定されず、これらの短いフランキング配列はアプタマー機能を実質的に干渉しないと考えられている。
【0050】
いくつかの実施態様でRNAオリゴヌクレオチドはDNAテンプレートからの転写産物であると予測されていることから、RNAオリゴヌクレオチドの長さは転写により生じる任意の長さであり得る。付加的なアプタマー、リボザイム、コード領域、リーダー配列等の他の要素はまた、もしこれらの要素がアプタマーまたは自己切断リボザイムの機能を実質的に干渉しないのであれば、RNAオリゴヌクレオチドの一部である。
【0051】
このような実施態様のアプタマーオリゴヌクレオチドは、現在周知であるか、あるいは今後開発される任意の有用なアプタマーであり得る。アプタマーは細胞内部にある標的に向けてよい。このような標的の1つの型は細胞の成分(すなわち元の構成要素)である。しかし、代替的実施態様では、アプタマーは細胞の操作された成分に向けられている。アプタマー結合に有用に影響され得る任意の細胞成分は、本発明のアプタマーの潜在的な標的であると予測される。このような細胞成分の非限定的な例として、酵素、構造タンパク質イオンチャネルタンパク質、電子輸送タンパク質、リボザイム成分、リポタンパク質および転写因子;プロテオグリカン;糖タンパク質;多糖;核酸;脂質;およびステロイドなどの小分子といったタンパク質が挙げられる。
【0052】
アプタマーを設計および合成する方法ならびにアプタマー結合配列は当業者に周知である。
【0053】
アプタマー−核酸結合タンパク質対
【0054】
アプタマー−タンパク質対のいかなる組み合わせも本発明で使用可能である。例えば一実施態様では、検出分子の核酸結合タンパク質は、RNAスプライシングに関与する転写因子またはタンパク質であり得る。検出分子の例には、レポーター分子の58個のヌクレオチド(nt)のアプタマーに結合するeIF4Aが挙げられる(Oguroら、2003)(実施例1〜8を参照)。他の実施態様では、核酸結合タンパク質とアプタマーの対には、二成分アプタマー−ペプチド対が挙げられ、表1および実施例11で示されている。また、本発明に包含されているアプタマーとタンパク質の対、特にRNA−タンパク質パートナーの他の例として;(i)MS2コートタンパク質−RNAステムループ(Sawata & Taira, 2003; Valegardら、1997);(ii)TAR−TatBIV−1ステムループ(Royら、1990; Comolliら、1998);(iii)転写活性化因子として働くことが分かっているG3/C3ステムループの3リピート(Jarrell & Ptashne, 2003);(iv)アプタマーの3リピート(Yamamotoら、2000);(v)最大Kd=27nMである、58塩基まで削減可能であるeIF4A−87ntの長いアプタマー(Oguroら、2003)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
核酸結合モチーフ
【0056】
核酸結合モチーフは、ポリペプチドなどの他の分子にカップリング可能な任意のポリペプチドまたはタンパク質またはペプチド分子であることが可能であり、近接近している標的核酸と結合可能である。
【0057】
本発明の他の実施態様は、ポリペプチドである核酸結合部分を提供する。ポリペプチドは標的核酸に対する高親和性を有する任意のポリペプチドであり得る。この実施態様では、標的核酸は二重鎖、三重鎖または単鎖DNAまたはRNAであり得る。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、ペプチド、100個未満のアミノ酸または全長タンパク質である。標的核酸に対するポリペプチドの親和性は低ナノモルから高ピコモルの範囲であり得る。ポリペプチドには、天然の、もしくは理論的根拠またはスクリーニングアプローチでデザインされた亜鉛フィンガーを含むポリペプチドが挙げられる。亜鉛フィンガーの例として、Zif2g8、Sp1、Gfi−1のフィンガー5、YY1のフィンガー3、CF2IIのフィンガー4および6ならびにTTKのフィンガー2が挙げられる(PNAS (2000) 97: 1495-1500; J Biol Chem (20010 276 (21): 29466-78; Nucl Acids Res (2001) 29 (24): 4920-9; Nucl Acid Res (2001) 29 (11): 2427-36)。他のポリペプチドには、インビトロ選択で得られ、特定の核酸配列に結合するポリペプチドが挙げられる。このようなアプタマーの例として、血小板由来成長因子(PDGF)(Nat Biotech (2002) 20: 473-77)およびトロンビン(Nature (1992) 355: 564-6が挙げられる。しかし他のポリペプチドはインビトロでのDNAトリプレックスに結合するポリペプチドであり;例えばhnRNP、K、L、E1、A2/B1およびIなどのヘテロ核のリボ核粒子(hnRNP)タンパク質のメンバーが含まれる(Nucl Acids Res (2001) 29 (11): 2427-36)。
【0058】
各分割ポリペプチド核酸モチーフポリペプチドの核酸結合部分は、標的核酸への結合を可能にする任意の分子であり得る。いくつかの実施態様では、核酸結合部分には、核酸、核酸類似体およびポリペプチドが含まれる。一実施態様では、核酸結合部分はオリゴヌクレオチドである。活性化分割ポリペプチドフラグメントの所与の対の核酸結合部分が、同種の分子、例えばオリゴヌクレオチドであることは可能であり、あるいはそれらは異なっており、例えば対のうちの1つの分割ポリペプチドが活性タンパク質を含み、オリゴヌクレオチド核酸結合部分を有し、対の他方がポリペプチド核酸結合部分を有していることが可能である。
【0059】
検出タンパク質
【0060】
検出タンパク質の(検出分子の一部である)分割ポリペプチドフラグメントは、活性タンパク質を産生するところまで近付いたときに会合する任意のポリペプチドであることが可能であり、これは集まった活性タンパク質は認識するが個々のポリペプチドは認識できない手段を用いて検出が可能である。例えば、2つのポリペプチドは再会合して酵素活性を持つタンパク質を生成し、発色性または蛍光発生活性を持つタンパク質を生成し、あるいは抗体に認識されるタンパク質を作製してもよい。さらに、インビトロおよびインビボでのタンパク質相補対形成に伴って従来から見られるいかなる遅延をも最小限に抑えるため、それは活性状態になるように、また活性タンパク質の再構成に対して待機状態(すなわち準備完了状態)にあるようにデザインされている。
【0061】
一実施態様では、検出分子の活性化分割ポリペプチドフラグメントは蛍光タンパク質である。このような実施態様では、分割蛍光タンパク質フラグメントの1つは活性的であり、ここで、フラグメントの1つは、その同族活性化分割蛍光フラグメント(単数または複数)との相補対形成での即時蛍光に対して待機状態および準備完了状態である、事前に形成した成熟発色団を含んでいる。
【0062】
本発明の好ましい実施態様では、検出タンパク質は蛍光タンパク質、非限定的例として高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)である。あるいは、蛍光タンパク質は黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、高感度シアン蛍光タンパク質(ECFP)または赤色蛍光タンパク質(dsRED)もしくはその任意の他の天然または遺伝子操作フラグメントであってよく、ここでは、再構成された蛍光タンパク質中の一フラグメントは事前形成された成熟発色団を含む。蛍光を発する蛍光タンパク質を生ずる上述の蛍光タンパク質およびそのフラグメントすべては本発明における使用に対して包含される。また、包含されたものは当業者に周知の蛍光タンパク質、ならびにそのフラグメントおよび遺伝子操作されたタンパク質である。
【0063】
あるいは、検出タンパク質はシグナル増幅を可能にする酵素である。酵素は例えば、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼであってよい。特定の実施態様では、検出酵素はベータ−ラクタマーゼである。
【0064】
本発明の他の実施態様では、検出タンパク質フラグメントは、再構成されると即時に活性化するようにデザインされている。さらに、蛍光タンパク質に伴って従来から見られるいかなる遅延をも最小限に抑えるため、それらは再構成に対して待機状態にあるようにデザインされている。
【0065】
いくつかの実施態様では、成熟発色団含有分割蛍光フラグメントと結合する同族非蛍光ポリペプチドフラグメントは、1つを超える活性的非蛍光フラグメントからなることが可能である。このような活性化非蛍光ポリペプチドは通常、適切な部位で1つの蛍光タンパク質のコードヌクレオチド配列を分割し、各ヌクレオチド配列フラグメントを個々に発現させることで生成する。活性化分割蛍光タンパク質フラグメントは単独で、または1つ以上のタンパク質融合パートナーと融合して発現させてもよい。
【0066】
本発明の一実施態様では、再構成された活性タンパク質は活性化分割EGFPフラグメントから成り、ここでは最初のフラグメントは、アミノ酸番号1からおよそアミノ酸番号158までの一続きのアミノ酸を含むEGFPのN末端フラグメントである。発現後に多様な核酸結合モチーフの結合の支援となるこのフラグメントにC末端システインを付加してもよい。他の活性化分割EGFPフラグメントはおよそアミノ酸番号159からアミノ酸番号239までの一続きのアミノ酸である。N末端システインを付加してもよい。アミノ酸1はEGFPの最初のアミノ酸を指す。アミノ酸239はGFPの最終アミノ酸を指す。全残基は、野生型オワンクラゲ(A. Victoria)のGFP(GenBankアクセッション番号M62653;配列番号7)の番号付けにしたがって、番号が付され、その番号付けは相同配列の同一の位置にも適用する。したがって、(野生型GFPと比較して)切断GFPで作用する場合、またはアミノ酸が付加されたGFPで作用する場合、適宜に番号付けは改変しなければならない。
【0067】
代替的実施態様では、再集合した蛍光タンパク質は、スペクトルで明確に区別できる様々な蛍光タンパク質から得る活性化分割蛍光フラグメントを含んでよい。再構成された活性蛍光タンパク質は、相補対形成に用いられる活性化分割蛍光フラグメントに依存している明確なおよび/または独自性のあるスペクトル特性を有してもよい。例えば、多色蛍光相補性は、多色生体分子蛍光相補性(多色BiFC)用の様々な蛍光タンパク質からフラグメントを再構成して得ている(Huら、Nature Biotechnology, 2003; 21; 539-545; Kerppola, 2006, 7; 449-456, Huら、Protein-Protein Interactions (P. AdamsおよびE. Golemis編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press. 2005を参照、全体が参照により本明細書に援用される)。フラグメントの1つが形成前成熟発色団を含む多色リアルタイム蛍光のための複数の蛍光タンパク質から得る活性化分割蛍光フラグメントの使用は本発明における使用に包含される。
【0068】
一実施態様では、蛍光タンパク質は、フローサイトメトリー、蛍光プレートリーダー、蛍光光度計、顕微鏡、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により、肉眼により、または当業者に周知の他の方法により検出可能である。代替的実施態様では、蛍光性は蛍光活性化セルソーター(FACS)または経時的顕微鏡検査法を使用してフローサイトメトリーにより検出する。
【0069】
他の例では、マーカーは、発色性/蛍光発生生成物を生ずる酵素である。
【0070】
本発明の他の実施態様では、活性化分割ポリペプチドフラグメントは接近して会合し、酵素活性アッセイにより検出可能な集合した活性酵素を形成した。好ましくは、酵素活性は発色性または蛍光発生反応で検出する。好ましい一実施態様では、酵素はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはβ−ラクタマーゼである。
【0071】
他の実施態様では、酵素はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である。例えば、Michnickらは、単独では酵素活性を有しないが近接した場合には機能的酵素を形成するDHFRのNまたはC末端フラグメントのみからなる「タンパク質相補アッセイ」を開発した。米国特許第6,428,951号、第6,294,330号および第6,270,964号を参照されたい。これらは参照により本明細書に援用される。発色および蛍光発生法を含む、DHFR活性を検出する方法は当技術分野で周知である。
【0072】
代替的実施態様では、他の分割ポリペプチドが使用可能である。例えば、酵素は基質の、検出可能な生成物への変換を触媒する。分割ポリペプチドの再集合用のこのような数種の系には;β−ガラクトシダーゼ(Rossiら、1997, PNAS, 94; 8405-8410);ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)(Pelletierら、PNAS, 1998; 95; 12141-12146);TEM−1β−ラクタマーゼ(LAC)(Galarneauら、Nat. Biotech. 2002; 20; 619-622)および蛍ルシフェラーゼ(Rayら、PNAS, 2002, 99; 3105-3110およびPaulmuruganら、2002; PNAS, 99; 15608-15613)の再集合したものが含まれるが、これらに限定されない。例えば、分割β−ラクタマーゼは二重鎖DNAの検出に使用されてきた(Ooiら、Biochemistry, 2006; 45; 3620-3525を参照)。リアルタイムシグナル検出用の活性化分割ポリペプチドフラグメントの使用は本発明における使用に包含され、そのフラグメントは相補対形成時の即時シグナル検出を可能にする完全に折り畳まれた成熟コンフォメーションにある。
【0073】
一実施態様では、シグナル増幅を可能にする検出タンパク質が使用でき、例えば、約100倍のシグナル増幅を可能にする細胞透過蛍光促進ベータ−ラクタマーゼ基質であるセファロスポリンベータ−ラクタム(CCF2)(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002; Wehrmanら、2002)を有するベータ−ラクタマーゼ系が挙げられる(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002)。
【0074】
本発明の別の実施態様では、活性化分割ポリペプチドフラグメントが会合すると、不連続エピトープを含むタンパク質が集まり、これは、集合したタンパク質にある不連続エピトープは特異的に認識するが各個別のポリペプチドにある部分的エピトープは認識しない抗体を使用することで検出し得る。不連続エピトープの1つのこのような例はHIVのgp120に見られる。これらおよび他のこのような誘導体は周知の技術に基づいて当業者により容易に作製し、自身のいずれのタンパク質フラグメントでもタンパク質の集合を認識しない抗体についてスクリーニング可能である。
【0075】
本発明の他の実施態様では、活性化した分割ポリペプチドは、相互に作用し集合タンパク質を形成する分子であり得る。例えば、分子はタンパク質フラグメント、もしくは二量体または多量体のサブユニットでもよい。
【0076】
核酸配列および対象となる分割ポリペプチドフラグメントをコードするコドンは、例えば望ましい系で優先的に使用するものにコドンを変換して最適化してよい。哺乳動物細胞が例として挙げられる。非哺乳動物細胞のタンパク質の発現に最適なコドンは当技術分野でも周知であり、宿主細胞が非哺乳動物細胞(例えば昆虫細胞)である場合、使用できる。
【0077】
本発明の活性化した分割ポリペプチドは、望ましい任意の修飾を追加することも可能である。例えば、一実施態様では、活性化分割ポリペプチドは核酸結合部分に連結している柔軟なリンカーも含むことが可能である。
【0078】
検出タンパク質は当業者に周知の任意の手段で核酸結合モチーフに結合してよい。非限定的な一例では、検出タンパク質は遺伝子融合により核酸結合モチーフに結合している。本明細書で使用する用語「共役」は、接合して1つの構成要素を形成する2つ以上のタンパク質の結合を指す。タンパク質は、リンカー、化学修飾、ペプチドリンカー、化学リンカー、共有または非共有結合またはタンパク質融合、もしくは当業者に周知の任意の手段によって結合してよい。接合は永久的でも、あるいは可逆的でもよい。いくつかの実施態様では、複合体中の各リンカーおよび各タンパク質の望ましい特性を利用するために、数種のリンカーを含めてよい。柔軟なリンカーおよび複合体の溶解度を上昇させるリンカーは単独で、または他のリンカーと使用することを意図しており、本明細書に援用される。ペプチドリンカーは、リンカーをコードするDNAを発現することで、複合体中の1つ以上のタンパク質に連結してもよい。リンカーは酸切断可能、光切断可能および熱感受性リンカーであってよい。
【0079】
用語「融合タンパク質」は2つ以上のタンパク質の組み換えタンパク質を指す。融合タンパク質が細胞中で、対象とするタンパク質すべてを内部に持つ単一ポリペプチドへ翻訳できる単一オープンリーディングフレームを構成するように、例えば1つのタンパク質をコードする核酸配列が他のタンパク質をコードする核酸に接合することにより、融合タンパク質は生成可能である。タンパク質の配置の順序は可変的である。非限定的な一例として、分割検出ポリペプチドフラグメントをコードする核酸配列は、核酸結合モチーフをコードする核酸の末端、5’または3’末端のいずれかに、フレーム内で融合する。この方式では、遺伝子が発現すると、分割検出タンパク質は機能的に発現し、N末端またはC末端に融合した核酸結合モチーフを含む。検出および/または蛍光タンパク質の修飾は、検出および/または蛍光タンパク質の機能性が、検出および/または蛍光タンパク質への核酸結合モチーフの融合に依然として実質的に影響を受けていない、修飾である。一実施態様では、EGFPの分割ポリペプチドフラグメントは、カルボキシル末端で、フレーム単位で分割eIF4AフラグメントまたはRNA結合ペプチドと融合している。
【0080】
用語「リンカー」は、融合タンパク質の生成以外の手段により2つ以上のタンパク質と接合する任意の手段を指す。リンカーは、共有結合リンカーまたは非共有結合リンカーであり得る。共有結合リンカーの例として、共有結合、または連結した1つ以上のタンパク質に共有結合したリンカー部分が挙げられる。リンカーはまた、非共有結合、例えば、プラチナ原子などの金属中心を介した有機金属結合することが可能である。共有結合には、カルボン酸誘導体などのアミド基、エーテル、有機および無機エステルなどのエステル、アミノ、ウレタン、尿素等といった多様な官能性が使用可能である。例えば、連結のために、核酸結合モチーフおよび/または蛍光タンパク質は、酸化、ヒドロキシル化、置換、還元等により修飾し、カップリングの部位をもたらすことが可能である。当然ながら、修飾が核酸結合モチーフおよび/または検出タンパク質、例えば蛍光タンパク質の機能を著しく減少させるわけではない。
【0081】
発現ベクター
【0082】
本発明に使用の検出およびレポーター構築物の組み換え発現用ベクターは、当業者に対する詳細な説明を必要としない通常の技術を使用して構成してよい。しかし、概説として、当業者はManiatisらのMolecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,(NY 1982)を参考にしたいと考える。
【0083】
要約すると、検出分子およびレポーター分子をコードする核酸配列の構築には標準的ライゲーション技術を使用する。生成された核酸構築物の配列の精度を確かめる分析として、ライゲーション混合物を使用して宿主細胞をトランスフェクト/形質導入してもよく、首尾よく遺伝子組み換え細胞を必要に応じて、抗生物質抵抗性で選択してもよい。
【0084】
トランスフェクト/トランスフォームした細胞からベクターを調製し、制限分析し、および/もしくは、Messingらの方法(Nucleic Acids Res., 9: 309-, 1981)、Maxamらの方法(Methods in Enzymology, 65: 499, 1980)、Sanger dideoxy法または当業者に周知の好適な他の方法で配列決定する。
【0085】
遺伝子の発現は、転写、翻訳または翻訳後レベルで制御する。転写開始は遺伝子発現の初期事象であり重要事象である。このことはプロモーターおよびエンハンサー配列に依存しており、これらの配列と相互に作用する特異性細胞因子に影響を受ける。多くの原核生物遺伝子の転写単位はプロモーターのみから成り、またエンハンサーまたはレギュレーター要素のみからなる場合もある(Banerjiら、Cell 27: 299 (1981); Cordenら、Science 209: 1406 (1980);およびBreathnachおよびChambon, Ann. Rev. Biochem. 50: 349 (1981))。レトロウイルスに関して、レトロウイルスゲノムの複製に関与する制御要素は末端反復配列(LTR)に存在する(Weissら編、The molecular biology of tumor viruses: RNA tumor viruses, Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982))。モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRはプロモーターおよびエンハンサー配列を含む(Jollyら、Nucleic Acid Res. 11: 1855 (1983); Capecchiら、In: Enhancer and eukaryotic gene expression, GulzmanおよびShenk編、pp. 101-102, Cold Spring Harbor Laboratories (NY 1991)。他の潜在的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)および他の野生型ウイルスプロモーター由来のものが挙げられる。
【0086】
本発明を実行するにあたり、別段指示がないかぎり、当技術分野の範囲にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組み換えDNAおよび免疫学の通常の技術を使用する。該技術は文献では十分に説明されていない。例えば、Sambrook, FritschおよびManiatisが編集したMolecular Cloning A Laboratory Manual第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989);DNA Cloning, Volumes I and II(D. N. Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gaitら、1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B. D. Hames & S. J. Higgins編、1984);Transcription and Translation(B. D. Hames & S. J. Higgins編、1984);Culture of Animal Cells(R. I. Freshley, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized cells and Enzymes(IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);論文、Methods in Enzymology(Academic Press, Inc., N. Y.);Gene Transfer vectors for Mammalian Cells(J. H. MillerおよびM. P. Calos編、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Methods in Enzymology, Vols. 154および155(Wuら編)、Immunochemical methods In CellおよびMolecular Biology(MayerおよびWalker編、Academic Press、ロンドン、1987);Handbook of Experimental Immunology, Volumes I-IV(D. M WeirおよびC. C. Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Press: Cold Spring Harbor, N. Y., 1986)を参照されたい。
【0087】
このようなタンパク質複合体または融合タンパク質および調節配列のためのデザイン、集合、プラスミドへの取り込みおよび構築物のトランスフェクションに関する、実施者に与えた追加バックグラウンド情報および一般的な助言は、以下の公開された国際特許出願:国際公開第94/18317号;国際公開第95/02684号;国際公開第95/24419号および国際公開第96/41865号で利用可能であり、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0088】
多数の非ウイルスプロモーターのプロモーターおよびエンハンサー領域も記述されている(Schmidtら、Nature 314: 285 (1985); Rossiおよびdecrombrugghe, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5590-5594 (1987))。静止細胞での導入遺伝子の発現を維持および増加する方法には、タイプI(1および2)コラーゲン(ProckopおよびKivirikko, N. Eng. J. Med. 311: 376 (1984); SmithおよびNiles, Biochem. 19: 1820 (1980); de Wetら、J. Biol. Chem., 258: 14385 (1983))、SV40およびLTRプロモーターを含むプロモーターの使用が含まれる。
【0089】
本発明の一実施態様にしたがって、プロモーターは、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター、JeTプロモーター、SV40プロモーター、伸長因子1アルファプロモーター(EF1−アルファ)、ニワトリ雛ベータ−アクチン、PGK、MT−1(メタロチオニン(Metallothionin))からなる群より選択される構造的プロモーターである。
【0090】
また本発明に包含されるものには誘導可能/抑制可能プロモーターがある。これらの構築物の非限定的例として、「Tet−On」、「Tet−Off」およびラパマイシン誘導性プロモーターが挙げられ、本発明に包含される。
【0091】
導入遺伝子発現を操作するウイルスおよび非ウイルスプロモーターの使用に加えて、エンハンサー配列を、導入遺伝子発現のレベルを増加させるために使用してよい。エンハンサーは、その元の遺伝子のみならず数種の外来遺伝子の転写活性を上昇させることが可能である(Armelor, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70: 2702 (1973))。例えば、本発明では、コラーゲンエンハンサー配列をコラーゲンプロモーター2(I)とともに使用し、導入遺伝子発現を増加させる。また、SV40ウイルスに見られるエンハンサー要素を使用し、導入遺伝子発現を増加してもよい。このエンハンサー配列は、Grussら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 943 (1981); BenoistおよびChambon, Nature 290: 304 (1981)ならびにFrommおよびBerg, J. Mol. Appl. Genetics, 1: 457 (1982)による記載のとおり、72塩基対リピートのみから成り、これらすべては参照により本明細書に援用される。このリピート配列は、多様なプロモーターに続いて存在する場合、多くの異なるウイルスおよび細胞遺伝子の転写を増加し得る(Moreauら、Nucleic Acids Res. 9: 6047 (1981)。
【0092】
発現を長期に安定させるため、プロモーター活性を調節するサイトカインを使用して導入遺伝子発現を増加させてもよい。数種のサイトカインはコラーゲン2(I)およびLTRプロモーターからの導入遺伝子発現を調節することが報告されている(Chuaら、connective Tissue Res., 25: 161-170 (1990); Eliasら、Annals N. Y. Acad. Sci., 580: 233-244(1990)); Seligerら、J. Immunol. 141: 2138-2144(1988)およびSeligerら、J. Virology 62: 619-621(1988))。例えば、形質転換成長因子(TOF)、インターロイキン(IL)−Iおよびインターフェロン(INF)は、LTRなどの多様なプロモーターにより操作された導入遺伝子発現を下方制御する。腫瘍壊死因子(TNF)およびTGF1はプロモーターにより操作された導入遺伝子発現を上方制御し、また、それを制御する目的で使用してもよい。有用であると判明し得る他のサイトカインは塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および上皮成長因子(EGF)を含む。
【0093】
一実施態様では、コラーゲンエンハンサー配列(Coll(E))を有するコラーゲンプロモーターを使用して、免疫防御状態にもかかわらず治療済みの脳で生じる可能性があるベクターに対する任意の免疫応答をさらに抑制することにより、導入遺伝子発現を増加させることもできる。
【0094】
他の実施態様では、ベクターは、Cre−リコンビナーゼタンパク質およびLoxP配列をコードする配列などの配列をさらに含んでよい。検出器および/またはレポーター構築物の一時的な発現を確実にする他の方法は、細胞にCre−リコンビナーゼを投与すると(Dae国際公開第ongら、Nature Biotechnology 19: 929-933)、またはリコンビナーゼをコードする遺伝子をウイルス構築物に組み込むこと(Pluck, Int J Exp Path, 77: 269-278)のいずれかで、挿入したDNA配列の一部を切除するに至るCre−LoxPシステムの使用を介している。リコンビナーゼの遺伝子をLoxP部位および構造遺伝子(本ケースではニューブラスチン(neublastin))とともにウイルス構築物中に組み込むと、約5日間、構造的遺伝子が発現することが高頻度で見られる。
【0095】
トランスジェニック生物
【0096】
本発明の一実施態様では、トランスジェニック生物が包含されており、これはリアルタイムインビボ核酸検出のためのレポーターおよび検出構築物を発現する。トランスジェニック生物またはトランスジェニック動物は、それらすべての細胞、あるいは一部ではあるがすべてではない細胞中に導入遺伝子を有する可能性があり、すなわちモザイク動物である。導入遺伝子は、例えば頭−頭縦列または頭−尾または尾−尾の縦一列になっている単一の導入遺伝子として、もしくは複数コピーとして、組み込むことができる。二量体、三量体または多量体トランスジェニック動物は少なくとも2つ以上の導入遺伝子を含むことが好ましい。好ましい実施態様では、該動物は、核酸結合モチーフに操作可能に連結したEGFP導入遺伝子、ならびに核酸結合配列および対象遺伝子をコードする導入遺伝子の2つの部分から構成される検出構築物を含んでいる。
【0097】
タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を導入遺伝子として使用する場合、遺伝子は適切な調節要素に操作可能に連結することが望ましく、これにより導入遺伝子が発現するとされている。調節要素、例えばプロモーター、エンハンサー、(例えば誘導可能または構造的)、またはポリアデニル化シグナルは当技術分野で周知である。調節配列は内在性調節配列、すなわちその配列が誘導されるような同一の動物種由来の、導入遺伝子としての調節配列であり得る。調節配列はまた、導入遺伝子として使用する遺伝子の天然調節配列であり得る。
【0098】
本明細書に記述した導入遺伝子構築物はDNA配列の3’非翻訳領域下流を含んでよい。該領域は発現系のRNA転写を安定させ、それによりその発現系由来の目的タンパク質の収率を上げることが可能である。3’非翻訳領域のうち、本発明の構築物に有用なものはポリAシグナルを提供する配列である。このような配列は、例えばSV40小型T抗原または当技術分野で周知の他の3’非翻訳配列から得てもよい。3’非翻訳領域の長さは重要ではないが、そのポリA転写産物の安定化効果は発現配列のRNAを安定化させる際に重要のようである。
【0099】
導入遺伝子構築物はまた、プロモーターとシグナル配列コードDNA配列間の5’非翻訳領域を含んでよい。該非翻訳領域は、プロモーターが得られる同じ制御領域から、または異なる遺伝子から得ることが可能であり、例えばそれらは他の合成源、半合成源または天然源由来であってもよい。
【0100】
アンチセンス核酸は本発明の導入遺伝子構築物にも使用してよい。例えば、(DNAコード鎖に相補的な)アンチセンスポリヌクレオチド配列は「正常」遺伝子の発現を減少させる細胞に導入してよい。このアプローチは、アンチセンス核酸または3重剤でmRNAを遮蔽するか、もしくはリボザイムでそれを切断することのいずれかによって、例えばアンチセンス核酸、リボザイムまたは三重剤を利用して、特定のmRNAの転写または翻訳を遮断する。あるいは、その方法は、遺伝子産物の作用または効果を模倣する、もしくは遺伝子の作用を遮断する試薬の投与を含む。遺伝子のインビトロ翻訳を改変するアンチセンス法の使用は当技術分野で周知である(例えばMarcus-Sekura, 172 ANAL. BIOCHEM. 289-95, 1988参照)。
【0101】
本明細書に記述している導入遺伝子構築物は増幅用の任意の好適なプラスミド、バクテリオファージまたはウイルスベクターに挿入してよく、それによってManiatisらが記述したような当技術分野で周知の方法を使用して繁殖させてもよい(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor, NY., 1989)。構築物は大きめのプラスミドの一部として調製してよく、このことにより、当技術分野で周知のとおり、高効率の方式で構築のクローニングおよび選択が可能となる。構築物は、目的の哺乳動物への組み込みのための残りのプラスミド配列から簡単に単離し得るようにプラスミド上の都合のよい制限部位の間にあってもよい。
【0102】
本発明の方法はまた、レトロウイルスベクターを使用して外因性DNAを卵母細胞へ導入することによるトランスジェニック動物または細胞の生成に関する。レトロウイルスベクターを使用し、ウイルス感染工程を生かして遺伝子を宿主細胞へ効率的に転移させることが可能である(Kimら、4 ANIM. BIOTECHNOL. 53-69, 1993; Kimら、35 MOL. REPROD. DEV. 105-13, 1993; HaskellおよびBowen, 40 MOL. REPROD. DEV. 386-90, 1995; Chanら、95 PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 14028-33, 1998; Krimpenfortら、1991; Bowenら、50 BIOL. REPROD. 664-68, 1994; Tadaら、1 TRANSGENICS 535-40, 1995)。
【0103】
適用
【0104】
本発明の方法は当業者に周知の複数の用途に使用可能である。本発明の1つの重要な実施態様は、リアルタイムインビボRNA検出のためのレポーターアッセイである。このような実施態様では、標的RNAの非存在下では検出タンパク質からシグナルを生成せず、したがって蛍光を発せず、あるいは活性を示さない検出分子を、対象となる細胞は安定的に発現する。細胞はまた、検出分子の核酸結合モチーフ(単数または複数)に対する結合部位および対象遺伝子を含む導入可能レポーター分子も発現可能であり、細胞内で発現した場合、検出分子は標的RNAに結合し、検出タンパク質の再構成ならびに活性タンパク質およびシグナルの生成を容易にする。これによりリアルタイムインビボRNA発現検出が可能となり、図10〜11および18〜19ならびに実施例9〜11に例示している。
【0105】
代替的実施態様では、対象となる細胞は対照のプロモーターに操作可能に連結したレポーター構築物を発現可能である。プロモーターが特定の刺激により細胞内で活性化する場合、標的核酸配列の結合部位(単数または複数)は有効になり、検出分子の核酸結合タンパク質の結合は検出ポリペプチドフラグメントの会合および即時検出が可能な活性的検出タンパク質の形成を促進する。この実施態様はインビボでプロモ−ター機能をリアルタイムに研究することを可能にする。RNA結合部位を操作し、任意のベースライン検出構築物活性を分析するプロモ−ターを発現するプラスミドをトランスフェクトすることによって、例えば遺伝子の調節はリアルタイムに研究できる。関連した実施態様では、i)1種の化合物または複数の化合物と接触させるか、あるいはii)プロモ−ターの活性を改変する可能性がある多様な条件に供し、そうすることで、RNAの転写が増加、減少し、または変化が起こらないようになる。
【0106】
あるいは、本発明の方法は、レポーター構築物が存在しないときでもインビボで標的核酸が存在することを検出する方法を提供する。このような一実施態様では、例えばDNAおよび/またはRNAといった核酸は、検出分子の核酸結合モチーフに結合する標的核酸配列を含む。このような実施態様では、検出分子の核酸成分のデザインに依存して、未処理または非修飾核酸はインビボで検出可能である。
【0107】
類似の実施態様では、「tet−on」または「tet−off」システムを本発明の方法で利用してよい。例えば、本発明の検出構築物を安定的に発現するために対象となる細胞を作製してよい。また細胞は、検出分子核酸結合モチーフ)に対する標的結合部位(単数または複数)および対象となる遺伝子の転写を調節可能にするtet−onまたはtet−off調節可能レポーター構築物を安定的に発現する場合もある。例えば、tet−offシステムでは細胞は対象となる遺伝子を即時に発現し、レポーター構築物は活性的であり即時検出可能である。tetに加えて、レポーター構築物(対象となる遺伝子および標的核酸結合部位を含む)の転写が停止し、すでに転写した転写産物のみがリアルタイムに分析可能である。このtet−off例では、レポーター蛍光または活性の減少を検出することにより、例えば半減期などのRNAの安定性はインビボでリアルタイムに分析可能である。
【0108】
代替的実施態様では、「tet−on」構築物を使用すると生体細胞中の対象遺伝子が安定的に発現し、それにより、システムへのtetの添加によりレポーター構築物の転写が進行する。その後、本発明の検出分子はその標的RNAに結合可能となり、即時に検出可能である。この実施態様では、RNA局在化は実験者が決定したとおりにリアルタイムに研究できる。
【0109】
さらに別の本発明の実施態様では、レポーターアッセイはインビボで生体において行う。非限定的であるが、例えば動物、非ヒト動物、マウス、ゼブラフィッシュ、線虫(C. elegans)またはカエルを、検出構築物に結合するとされているRNA結合部位を有する検出構築物および対象遺伝子をともに発現させるために供与してもよい。生体内の両構築物を発現させれば、1日目の胚から全成体期より試料を得ることで、対象となる転写産物が全成長を通して分析可能になる。一実施態様では、生体は哺乳動物である。一実施態様では哺乳動物はマウスであり、他の実施態様では生体はトランスジェニック生体、例えばトランスジェニックマウスであるが、これに限定されない。
【0110】
あるいは、本発明の組成物および方法は、インサイチュハイブリダイゼーション、例えば蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)に類似したリアルタイムインビトロRNA検出法を提供する。このような実施態様では、検出分子の核酸結合モチーフに結合するとされているRNA結合配列を有する対象RNAを含むレポーター構築物を発現する細胞を透過処理し、本発明の検出構築物をその細胞に投与する。対象RNAが発現すると検出構築物はRNA結合配列に結合し、RNAの局在化および存在量が決定できる。従来のインサイチュハイブリダイゼーション技術よりも優れたこの系の利点には、低量RNAを検出する能力(酵素レポーターを利用する検出構築物によって達成可能となるシグナル増幅に起因している)および放射活性なしでアッセイを迅速に終了させる能力が挙げられる。検出構築物による迅速な検出が非常に望まれている。現在、(例えば放射活性による)インサイチュハイブリダイゼーションを行う従来の方法は、実験が成功するか否か分かる前でも数週間から数ヶ月かかる。また、従来のインサイチュハイブリダイゼーションで使用するRNAプローブは、RNAが簡単に分解され、放射活性を使用するため、調製が困難である。本発明の方法では、放射活性またはRNAプローブは必要ない。検出構築物は、例えば当業者に周知である細菌から簡単に調製する。該アッセイは、インビトロでのタンパク質検出において抗体を使用可能にする免疫組織化学または免疫細胞化学技術に類似している。ここではRNAを検出する。
【0111】
さらに、本発明の組成物および方法は、インビボでリアルタイムにDNAを検出する実施態様で使用してよい。例えば、本発明の検出構築物は、各々がDNA結合モチーフと会合している少なくとも2つの不活化ポリペプチドフラグメントに分割された検出(蛍光または酵素)タンパク質を含んでよい。標的核酸、この場合ではDNAの存在により集合したときそのポリペプチドフラグメントは、十分に活性な検出タンパク質を形成し、即時に検出可能である。例えば、本発明の方法により、ゲノム内の多様な遺伝子座の複製がリアルタイムに検出可能となる。検出構築物中の検出タンパク質と会合したDNA結合モチーフはDNAの多様な領域に特異的であり、それらの遺伝子座の複製はリアルタイムインビボ検出が可能である。
【0112】
同様に、本発明の方法および組成物を使用してリアルタイムインビボ染色体検出が可能となる。例えば、検出構築物は、テロメラーゼ結合タンパク質と会合して細胞内で発現する検出タンパク質を含んでよい。このように、テロメラーゼは細胞寿命全体にわたってリアルタイムに検出可能である。本明細書で示された組成物および方法の利点は、2つの半分に2分され、各半量が検出タンパク質の半量と会合しているテロメラーゼ結合タンパク質を提供することで特異性が上昇することである。両半分のテロメラーゼ結合タンパク質を単結合部位に配位結合させることにより、標的認識に先立って検出体の活性は皆無かそれに近いものとなる。
【0113】
本発明の他の実施態様では、リアルタイムにPCR生成物を検出する方法を開示している。本発明の方法および組成物を使用して、現在利用可能なものより高い特異性で、リアルタイムでPCR反応の生成物を検出する。この実施態様の例では、反応の増幅生成物が検出構築物に存在する核酸結合モチーフに特異的に認識されるアプタマーを組み込むように、PCRプライマーがデザインされる。増幅が進行するにつれて、検出タンパク質はリアルタイムに検出可能である。検出構築物はPCR生成物に特異的であり、テンプレートDNAを検出しないことから、本発明はSYBRグリーンなどの現在使用している技術に勝る利点をもたらす。この実施態様を使用し、PCR実験を実施する前にRNAをcDNAに変換することによりRNAはリアルタイムに検出可能である。関連の実施態様では、検出分子の核酸結合モチーフ成分はPCR生成物の存在下で分割検出分子の再集合を促進し、インビボの免疫PCRの新規な方法が可能となる。また、他の実施態様では、検出分子の核酸結合成分は、免疫RCA(ローリングサークル増幅)法の核酸存在下で、分割検出分子の再集合、ひいてはシグナルを促進することが可能であり、インビボでのシグナル増幅が高まる。
【0114】
本発明の他の実施態様では、個体の多型性、突然変異または遺伝子発現異常を検出する方法を開示している。例えば、本発明のアッセイを利用し、特定の疾患、障害またはこのような疾患および障害に対する素因を診断するため、個体からDNAおよび/またはRNAを検出することが可能である。したがって、疾患または障害を有する個体のゲノムに存在し得る特定の配列に特異的な核酸結合モチーフで検出構築物がデザイン可能であるのであれば、本発明の方法により多様な疾患および障害の診断および予後が可能となる。
【0115】
関連の実施態様では、本発明により個体の多型性、突然変異または遺伝子発現異常をリアルタイムに検出できる。説明に役立つ実例として、特定の突然変異体または多型性部位にアプタマーはタグとして付くか、あるいは一過的に付着することが可能で、これは本発明の分割ポリペプチド分子により検出可能であり、該分子は、検出分子の核酸結合モチーフが検出を試みられている特定の突然変異、多型性または異常がある対象遺伝子に会合した付着アプタマーを認識するようにデザインされている。あるいは、分子のプールを使用し、これにより、多くの突然変異、多型性または異常が検出される可能性がある。核酸結合モチーフが、遺伝子入れ替え(perbutation)および/または変質に関連したアプタマーなどの付着した標的核酸を認識するのであれば、検出タンパク質のタンパク質相補対形成が起こり、シグナルおよび/または蛍光生成物の即時性に起因する高感度な検出が可能となる。
【0116】
重要な一実施態様では、分子は病原体のリアルタイム検出に使用できる。一実施態様では、本発明の分子を使用し、病原体および/または病原体核酸が存在する結果として病原体核酸配列の存在および/または核酸配列中の異常の存在を検出することができる。病原体はウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、寄生虫感染症および他の感染病であり得る。ウイルスは、以下からなるウイルス群から選択できる:単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス7、ヒトヘルペスウイルス8、痘瘡ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、デングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷熱ウイルス、西ナイルウイルス、リフトバレー出血熱ウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、シンドビスウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、ハンタウイルス、風疹ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルス2型。
【0117】
標的核酸はまた、食品、飲料、水、医薬品、パーソナルケア製品、乳製品または環境試料中の細菌および真核生物の検出に有用である可能性がある。好ましい飲料には、ソーダ、ボトル入りウォーター、果汁、ビール、ワインまたはアルコール製品が挙げられる。開発されたアッセイは、食品、飲料、水、医薬品、パーソナルケア製品、乳製品または環境試料を製造または保存するのに用いる原料、器具、製品または工程の分析用に特に有用であろう。
【0118】
本発明の他の関連実施態様では、活性化分割ポリペプチドフラグメントが集結すると、非連続的エピトープを含む検出タンパク質が集結し、このことは、集結したタンパク質上の非連続的エピトープを特異的に認識するが、個々のポリペプチドのいずれかにある部分的エピトープは認識しない抗体を使用して検出される可能性がある。非連続的エピトープのこのような一例はHIVのgp120に見られる。これら誘導体および他のこのような誘導体は周知の技術に基づいて当業者が容易に作製でき、集結したタンパク質をそれ自身のタンパク質フラグメントのいずれによっても認識しない抗体について、スクリーニングすることが可能である。
【0119】
標的核酸はヒト起源の核酸であり得る。標的核酸はDNAまたはRNAであり得る。標的核酸は溶液中では遊離し得るし、あるいは、固体支持体に固定できる。
【0120】
一実施態様では、標的核酸は遺伝子ベースの疾患に特異的であり、あるいは遺伝子ベースの疾患に対する素因に特異的である。前記疾患は、例えば、ベータ−サラセミア、鎌状赤血球貧血または第5因子ライデン、嚢胞性線維症(CF)などの遺伝子ベースの疾患、p53およびp10などの癌関連標的、もしくは乳癌感受性に対するBRC−1およびBRC−2であり得る。さらに別の実施態様では、単離した染色体DNAは親子鑑定、身元確認または犯罪捜査に関して調査してもよい。
【0121】
他の実施態様では、本発明は本発明の方法、特にインビボRNA検出に適したキットを提供する。一実施態様では、キットは検出構築物および誘導可能なレポーター構築物を含む。一実施態様では、レポーター構築物および検出構築物は分離した核酸分子上にある。他の実施態様では、それらは両方ともバイオシストロン性の核酸分子にコードされている。関連の実施態様では、分割ポリペプチドフラグメントはIRES部位によって分割される。他の実施態様では、ポリペプチドフラグメントは分割可能部位を含む一核酸としてコードされ、分割され、当業者に周知の手段、例えば、限定はしないが酵素切断;化学切断、光切断、酸切断、温度または熱切断等により分離した分割ポリペプチドフラグメントが形成可能である。他の実施態様では、レポーター分子は実行者の対象となる遺伝子を添加するために修飾可能であり、他の実施態様では、レポーター分子の発現はtet−onまたはtet−offプロモーターに対して動作可能に連結している。他の異なる実施態様では、標的核酸配列を含むレポーター構築物は実行者により修飾され、実行者の対象となるプロモーターに調節され得る。これらの各実施態様では、キットには、検出分子中の検出タンパク質のために選択された分割ポリペプチドが含まれ、また、検出タンパク質からシグナルを検出するための説明書および試薬も含まれている。いくつかの実施態様では、キットには、試料中の標的核酸の存在または量を捕らえる、および/または検出するのに適した試薬も含まれる。標的核酸の存在および/または量を検出する試薬は、集まったタンパク質に特異的な酵素的活性試薬または抗体を含むことができる。抗体は標識化できる。
【0122】
タンパク質相補性と酵素レポーターを組み合わせると、実質的にバックグラウンドが減少しシグナルが増幅する。これにより、低量、中程度量および高量の核酸を分析することができるインビボRNA検出技術が与えられる。
【0123】
他の実施態様では、本発明はインビボで標的核酸の存在および/または量を検出するのに適したキットを提供する。キットは少なくとも第1の分子とカップリングした第1のプローブおよび第2の分子とカップリングした第2のプローブを備え、この中のプローブは標的核酸中のハイブリダイゼーション配列に結合可能である。該プローブはバイアルに入っていることが好ましい。キットはまた、試料中の標的核酸の存在または量を把握および/または検出するのに適した試薬を備える。標的核酸の存在および/または量を検出する試薬は酵素活性試薬または集合したタンパク質に特異的な抗体を含むことが可能である。抗体は標識化できる。このようなキットは任意に、RCA反応、免疫RCA、免疫PCRを実行するために必要な試薬を備え、例えばDNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ補因子およびデオキシリボヌクレオチド−5’−三リン酸が挙げられる。場合により、キットは多様なポリヌクレオチド分子、DNAまたはRNAリガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、逆転写酵素、末端転移酵素、多様なバッファーおよび試薬、抗体ならびにRNaseおよびヌクレアーゼ活性の阻害物質も備えてよい。これらの成分はバイアルなどの容器に入っている。キットは、陽性および陰性対照反応を行うのに必要な試薬ならびに説明書も備えてよい。所与の反応に使用する試薬の最適量は、現在の開示によって利益を得ている当業者が容易に決定できる。
【0124】
他の実施態様では、本発明の方法は、同時に複数の核酸標的のタンパク質相補対形成、例えば、異なる核酸結合モチーフに関連している相補性分割ポリペプチドフラグメントのタンパク質相補対形成に対して使用可能である。標的核酸が存在すると、一つの活性的分割ポリペプチドフラグメント対のタンパク質相補性が促進され、一方、他の標的が存在すると、活性化分割ポリペプチドフラグメントの他の対のタンパク質相補性が促進され、異なる活性タンパク質および検出シグナルがもたらされる。このような実施態様では、複数の核酸標的が同時に検出可能である。代替的実施態様では、RNAおよびDNAなどの標的核酸の同時検出がリアルタイムのタンパク質相補性によって監視できる。
【0125】
関連した実施態様では、異なる蛍光タンパク質から得た分割蛍光タンパク質フラグメントを使用している複数のタンパク質相補対形成。関連した実施態様では、本発明の方法により、多様な他の、推定的ではあるが異なる核酸標的の中で、特定の標的核酸をリアルタイムに検出および同定することが可能となる(Huら、Nature Biotechnology, 2003; 21; 539-545; Kerppola, 2006, 7; 449-456, Huら、Protein-Protein Interactions (P. AdamsおよびE. Golemis編), Cold Spring Harbor Laboratory Press. 2005を参照されたい。これらは全体が参照により本明細書に援用される)。
【0126】
定義
【0127】
別段、記述がない限り、本明細書で使用する以下の用語および表現は以下の意味を持つことを意図している:
【0128】
本明細書で使用する用語「検出構築物」は、検出タンパク質および検出分子を含む核酸結合モチーフ、をコードする核酸配列を包含することを意図している。
【0129】
本明細書で使用する用語「レポーター構築物」は対象核酸(例えばDNAまたはRNA)およびレポーター分子を含む標的核酸配列(例えばRNAアプタマー)を包含することを意図している。
【0130】
用語「真核生物(eukaryote)」または「真核生物(eukaryotic organism)」は、原生動物、真菌、酵母、緑藻、単細胞植物、多細胞植物ならびに脊椎および無脊椎動物の全動物を含む動物界、植物界および原生生物界に存在する生物すべてを包含することを意図している。その用語は細菌またはウイルスは包含しない。「真核生物細胞」は単数の「真核生物細胞」および複数の「真核生物細胞」、ならびに真核生物由来の細胞を包含することを意図している。
【0131】
用語「脊椎動物」は単数の「脊椎動物」および複数の「脊椎動物」を包含し、哺乳動物および鳥類、ならびに魚類、爬虫類および両生類を包含することを意図している。
【0132】
用語「哺乳動物」は単数の「哺乳動物」および複数の「哺乳動物」を包含することを意図しており、また以下を含むが、これらに限定されない:ヒト;類人猿、サル、オランウータンおよびチンパンジーなどの霊長類;イヌおよびオオカミなどのイヌ科動物;ネコ、ライオンおよびトラなどのネコ科動物;ウマ、ロバおよびシマウマなどのウマ類、ウシ、ブタおよびヒツジなどの食肉動物;シカおよびキリンなどの有蹄動物;マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどの齧歯類;およびクマ。哺乳動物としてはヒト被験体であることが好ましい。
【0133】
本明細書で使用する用語「インビボ」は生物内に存在する生細胞を包含することを意図している。生物外にある生細胞を論じる場合、用語「エクソビボ」を一般的に使用する。生細胞は任意の細胞であり得るし、任意の器官を形成することが可能であり、多細胞器官ならびに酵母および細菌などの単細胞器官を含む。
【0134】
生細胞中の核酸を検出することに関して、本明細書で使用する用語「侵襲的」は、例えばリポフェクタミン(lipofectamine)およびマイクロインジェクション法などの侵襲的方法を使用した核酸検出法を指す。したがって用語「非侵襲的」は、該侵襲的手法を使わずに生細胞または生体細胞中の核酸を検出する方法を指す。
【0135】
用語「組織培養」または「細胞培養」または「培養」または「培養すること」は、細胞組成の保存、細胞機能の保存、さらなる分化、あるいはその3つすべてを可能にする条件下にて、インビトロで植物組織または動物組織、あるいは細胞を維持または成長させることを指す。「一次組織細胞」は組織から直接採取したものであり、すなわち、ある器官における同一の機能を示す同種の細胞群である。タンパク分解酵素、トリプシンでこのような組織細胞を処理すると、例えばそれらは、培養プレートに播種したとき細胞組成を成長または維持する個々の一次組織細胞へと解離する。組織培養において一次細胞の増殖から得られる細胞培養物を「二次細胞培養物」と呼ぶ。二次細胞の大部分は限られた回数で分裂し、その後死滅する。しかし、この「危機的期間」を通り越せる可能性のある二次細胞も少数あり、その後それらの細胞は無制限に増殖して連続的な「細胞系」を形成できる。細胞が培養される液体培地は本明細書では「培地」と呼ぶ。目的の分子、例えば免疫グロブリン分子が細胞培養中に分泌される培地は本明細書では「ならし培地」と呼ぶ。
【0136】
また、細胞は特定の被検細胞ではなく、該細胞の子孫または潜在的子孫を指しており、これは、実際には子孫は親細胞と同一ではないが本発明の範囲に依然として含まれるような特定の修飾または環境の影響、例えば分化に起因している。
【0137】
本発明で使用する細胞は、例えば本明細書の実施例に示すインビトロまたはエクソビボでの培養細胞であり得る。例えば、培地および環境刺激でインビトロ培養した細胞を培地に添加することが可能である。あるいは、エクソビボ培養細胞では、細胞は健常および/または罹患した被検者から得ることができる。細胞は、非限定的な例として、生検または他の当業者に周知の外科的手段によって得ることができる。
【0138】
用語「IRES」は、共通のリボソーム結合部位をコードする配列である内部リボソーム侵入部位(Kozak (1991) J. Biol. Chem. 266' 19867-70)を指し、内部リボソーム侵入部位を開始コドンの5’および/または調節配列または他の、遺伝子をコードする核酸配列の5’またはマーカー遺伝子に即時に挿入し、下流核酸配列の発現を向上させることが可能である。このような修飾の妥当性または必要性は実験的に決定してよい。
【0139】
用語「ポリヌクレオチド」は、核酸または構築物に存在する任意の1つ以上の核酸セグメントまたは核酸分子、例えばDNAまたはRNAフラグメントを指す。「対象遺伝子をコードするポリヌクレオチド」は、このようなポリペプチドのコード領域を含むポリヌクレオチドを指す。また、ポリヌクレオチドはプロモーターまたは転写ターミネーターなどの調節要素をコードしてよく、もしくは分泌シグナルペプチドまたは機能的ドメインなどのポリペプチドまたはタンパク質の特定の要素をコードしてもよい。
【0140】
「ヌクレオチド」はDNAまたはRNAなどの高分子核酸の中のモノマー単位であり、3つの明確に区別された下位区分または部分:糖、リン酸および核酸塩基から構成されている(Blackburn, M., 1996)。二本鎖の一部である場合、ヌクレオチドは「塩基」または「塩基対」とも称する。最も一般的な天然核酸塩基、アデニン(A)、グアニン(G)、ウラシル(U)、シトシン(C)およびチミン(T)は、配列特異的に1つの核酸鎖を他方に結合させる水素結合機能性を有する。「ヌクレオシド」はリン酸が無いヌクレオチドを指す。DNAおよびRNAでは、ヌクレオシドモノマーはホスホジエステル結合により連結しており、本明細書で使用するように、用語「ホスホジエステル結合」は、ホスホジエステル結合、または会合対イオン、例えばIT’、NW、Na’等のそのリン酸類似体を含む結合を指す。
【0141】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は天然のヌクレオチドモノマーの線状ポリマー、または二重鎖および単鎖デオキシリボヌクレオチド「DNA」、リボヌクレオチド「RNA」等を含む、その類似体を指す。すなわち、「オリゴヌクレオチド」は、それぞれデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む構造単位であるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの鎖である。ポリヌクレオチドの大きさは概して、数モノマー単位、例えば8〜40から数千のモノマー単位の範囲にある。DNAポリヌクレオチドが「ATGCCTG」などの文字配列に表現されている場合は必ず、別段指示がない限り、当然のことながら、ヌクレオチドは左から右の順に5’→3’の方向であり、「A」はデオキシアデノシンを、「C」はデオキシシチジン、「G」はデオキシグアノシン、および「T」はチミジンを意味する。
【0142】
「ワトソン/クリック塩基対」および「ワトソン/クリック相補性」は、水素結合を介して結びつくヌクレオチドおよびその類似体の特異的対合のパターンを指し、例えばAはTおよびUと、GはCと対合する。特異的塩基対合の活動は「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズ」である。核酸または核酸類似体の2つ以上の相補鎖が塩基対合を行うとき、ハイブリッドが生じる。
【0143】
「検出」は、検出標識の特性に基づいて構築物を検出、観察または測定することを指す。
【0144】
用語「核酸塩基修飾された」は、DNAおよびRNA中に存在する天然の核酸塩基であるAGC、T、Uの塩基対合誘導体を指す。
【0145】
用語「プロモーター」は、転写を導くのに十分な最小限のヌクレオチド配列を指す。また、プロモーター依存遺伝子発現を細胞型特異性、組織特異性に制御可能にする、もしくは外部シグナルまたは薬剤によって導入可能にするに十分なこれらのプロモーター要素は本発明に含まれ;該要素は、元の遺伝子の5’または3’領域に、またはイントロンに位置している可能性がある。用語「誘導可能プロモーター」は、RNAポリメラーゼ結合の割合および転写開始が外部刺激により調節可能であるプロモーターを指す。用語「構造プロモーター」は、RNAポリメラーゼ結合の割合および転写開始が一定で、比較的外部刺激に依存的であるプロモーターを指す。「一時的に調節されたプロモーター」はRNAポリメラーゼ結合と転写開始の速度が進行中の特定時間に調節されるプロモーターである。これらプロモーターのすべてのタイプは本発明に包含される。
【0146】
本明細書で使用するとおり、本明細書で同じ意味で使われている「プロモーター」または「プロモーター領域」または「プロモーター要素」は核酸配列のセグメント、典型的には、限定するわけではないが、DNAまたはRNAもしくはそれらの類似体を指し、これは自身が操作可能に連結する核酸配列の転写を制御するものである。プロモーター領域は、RNAポリメラーゼの認識、結合および転写開始に十分な特異性配列を含む。プロモーター領域のこの部分はプロモーターと称する。また、プロモーター領域はRNAポリメラーゼのこの認識、結合および転写開始活性を調節する配列を含む。これらの配列はシス作用的であるか、あるいはトランス作用因子に応答性である可能性がある。調節の特性に依存してプロモーターは構造的であるか、または調節されている可能性がある。
【0147】
用語「構造的に活性的なプロモーター」は、所与の細胞内で何時でも発現する遺伝子のプロモーターを指す。哺乳動物細胞に使用するためのプロモーターの代表例としてサイトメガロウイルス(CMV)が挙げられ、原核生物細胞での使用にはバクテリオファージT7およびT3プロモーター等が挙げられる。
【0148】
用語「操作可能に連結した」または「操作可能に会合した」は本明細書では同じ意味で使用され、核酸配列と、プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳停止部位および他のシグナル配列などのヌクレオチドの調節配列との機能的関係を指す。例えば、核酸配列、典型的にはDNAの、調節配列またはプロモーター領域への操作可能な連結は、DNAと調節配列またはプロモーター間の物理的および機能的関係を指し、そのため、DNAを特異的に認識、結合および転写するRNAポリメラーゼにより、このようなDNAの転写は調節配列またはプロモーターから開始されるようになっている。発現および/またはインビトロ転写を最適化するためには、それが発現するための細胞型における核酸またはDNAの発現用の調節配列を修飾することが必要となる場合がある。このような修飾の妥当性または必要性は実験的に決定してよい。
【0149】
用語「結合」は、接合して1つの構成要素を形成する2つ以上のタンパク質の結合を指す。タンパク質は、リンカー、化学修飾、ペプチドリンカー、化学リンカー、共有または非共有結合またはタンパク質融合、もしくは当業者に周知の手段によって結合してよい。接合は永久的でも、あるいは可逆的でもよい。いくつかの実施態様では、複合体中の各リンカーおよび各タンパク質の望ましい特性を活用するために数種のリンカーが含まれてもよい。柔軟リンカーおよび複合体の可溶性を増加させるリンカーは、単独で使用するか、または本明細書に援用されている他のリンカーとともに使用するかを熟考する。ペプチドリンカーは、リンカーをコードするDNAを発現することで複合体中の1つ以上のタンパク質に連結してよい。リンカーは酸切断性、光切断性および熱感受性のリンカーであってよい。いくつかの実施態様では、「結合」または「結合した」はまた、分子の一部同士を集めて近接して保存されるようにする共有、イオン性または疎水性相互作用をも包含する。
【0150】
本発明では、「アプタマー」は、特定の標的タンパク質と強力に、かつ特異的に結合するように人工的に操作した核酸リガンドを指す。「アプタマーを調節する」は、アプタマーの芯部が低いTm値を有し、標的タンパク質の存在下でのみ、結合して二重鎖を形成する2つの短いオリゴヌクレオチド鎖に分割されるように意図しているアプタマーを指す。
【0151】
実施例
実施例1
核酸相互作用により促進されたタンパク質相補対形成法
【0152】
核酸相互作用により促進された高速タンパク質相補対形成の作業性を確認するため、インビトロで数種の実験を行った。図20a、20bは、本明細書に記述している核酸相互作用がどのように作用するかを示している。これらの実験では、いくつかの理由から高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)をマーカータンパク質として選択した。第一に、EGFPの活性は特徴的な蛍光によって容易に測定される。第二に、GFPファミリー由来の蛍光タンパク質はすでに、いくつかのタンパク質相補性研究でマーカーまたは検出タンパク質として使用することに成功しており、例えば、Ozawaら、2000, Ozawaら、2001 a,b; Ghoshら、2000; Huら、2002; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005はEGFPを首尾よく分割するスキームを説明している。
【0153】
これらの研究から、EGFPの153〜161アミノ酸間にあるループは分割に有用な部位であり:このループ内へのタンパク質挿入はインビボでのタンパク質折り畳みおよび発色団形成に影響を及ぼさないことが分かった(Ozawaら、2000, Ozawaら、2001 a, b; Ghoshら、2000; Huら、2002; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005)。また、重要なことには、2つのフラグメントが大腸菌内で共発現した場合、蛍光団または発色団は自発的には自己集結しないことが分かった(Goshら、2000; Huら、2002; Maglieryら、2005)。したがって、2つの分割ポリペプチドを明らかにするため、GFPのフラグメントは核酸相互作用により会合し活性的蛍光タンパク質を形成するように方向付けることが可能で、本発明者らはEGFPの2つのポリペプチドフラグメントが相補性オリゴヌクレオチドに結合されるようにデザインし、カップリングしたオリゴヌクレオチドの二重鎖DNA形成はEGFPフラグメントの再会合を促進し、EGFPタンパク質を活性化し、蛍光を増強させるということを明らかにした。
【0154】
これらの研究では、EGFPを位置158で、α−およびβ−フラグメントと呼ばれる2つの部分に遺伝子操作的に分割した。オリゴヌクレオチドとのカップリングには、α−およびβ−EGFPフラグメントは、それぞれC−およびN−末端の過剰システイン残基を考慮してデザインした。インテインとのC末端融合としてそれらを大腸菌で発現させ、intein self-splirring chemistry(NE Biolabs)を使用して精製した。精製したタンパク質を有用なCys-targeted biotin-HPDO chemistry(Pierce)を使用して、インビトロで定量的にビオチン化し、共役オリゴヌクレオチドを得た。ビオチン化タンパク質を最初にストレプトアビジンでタグを付け、その後、5’−または3’−末端でビオチンを持つオリゴヌクレオチドでタグ付けした。このようにして、異なる末端でビオチンを持つ相補性21nt長のオリゴヌクレオチドは、四量体ストレプトアビジン分子を介してEGFPのα−およびβ−フラグメントに容易に付加した(図20a)。これらの分子キメラを等モル量で結合すると、蛍光が増強し、EGFPに類似した発光スペクトルを有する蛍光団が形成された(図20b)。対照実験では、ストレプトアブジンと融合するが相補性オリゴヌクレオチドとは融合しないEGFPのビオチン化α−およびβ−フラグメントを混合したが、有意な蛍光は検出されなかった(図20b)。蛍光の回復は実験間で多少変化し、インタクトな折り畳まれたEGFの蛍光度は最大で100%近く回復し、よってほとんどのケースで、計画されたタンパク質相補性によってGFP蛍光度は100%回復し得る。
【0155】
オリゴヌクレオチドが付加された分割EGFPフラグメントの再構成から得た再構成EGFPの蛍光スペクトルは元のEGFPのものとは多少異なっていた。第一に、再構成されたタンパク質の発光極大および励起極大(490/524)は、元のEGFP(488/507nm、Zimmer, 2002)と比較して赤色に変化した(図20b)。このことは、再構成タンパク質中のβ−バレル構造のコンフォメーションにやや差異が生じる可能性によって説明可能である。第二に、Mg2+イオンを付加すると再構成複合体とEGFP間に差異が見られた。2mMのMg2+を付加すると元のタンパク質の蛍光度は約30%減少するが、再構成EGFPの蛍光度は初め約30%増加し、その後次第に減少する(図21)。Mg2+の異なる影響は、再構成EGFPに付加した二本鎖DNAによって説明可能である。実際にはDNA二本鎖は把持グリップのようなEGFPの2つのフラグメントを集結し、Mg2+イオンを付加するとDNA二本鎖はより安定することから、再集結したEGFPの安定性は高まり、したがって蛍光度は初め増加する。逆に、元の蛍光タンパク質では、発色団の付近にある二価金属カチオンが蛍光を消光することが知られている(Richmondら、2000; Zimmer, 2002)。したがって、再構成されたEGFPの蛍光度が徐々に減少することは2つの工程:Mg2+イオンの存在下でDNA二本鎖の安定性が高いことに起因する複合体の安定化および蛍光消光、の結果である
【0156】
実施例2
計画された高速タンパク質相補対形成のための検出タンパク質
【0157】
実施例1では、タンパク質相補対形成の際のマーカータンパク質または検出タンパク質は蛍光タンパク質であり、すなわちクラゲ、オワンクラゲGFP(F64L、S65T)の二重変異体である高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)である。EGFPと残基154〜158における他の関連した蛍光タンパク質の分割は、インビボでのタンパク質/タンパク質相互作用を試験するためにデザインされたいくつかの研究に使用することに成功している(Ghoshら、2000; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005)。これらの研究から、活性的EGFPはそのフラグメントからインビボで自発的に再集合することはなく、タンパク質/タンパク質相互作用の付加を必要とすることが分かった(Maglieriら、2005)。また、EGFP再集合は相互に作用し合うタンパク質の大きさに対してかなり許容性があることが分かっている:(Ghoshら、2000; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005)。
【0158】
RNAの局在性研究のためにタンパク質相補性を使用するには、フラグメントの再集合の反応速度が十分に速いことが特に重要である。本発明者らがインビトロで行った予備試験では、活性化分割EGFPフラグメントの非常に高速の相補対形成により蛍光度が増加している(図22A)。EGFPのα−フラグメントが事前に形成された成熟発色団を含むため、このことは可能であり、したがって活性化したコンフォメーションで起こり、EGFPの相補性β−フラグメントと関係する活性的蛍光タンパク質を即時に形成することが可能である。EGFP再集結における高速動態のこの固有な特性により、インビボで標的RNAの高速運動を監視することが可能となる。この目的のため、本発明者らは、1つのプラスミドから相補対形成系の2つのタンパク質成分を発現し、2〜3時間後に、アプタマータグが付いた標的RNAの合成を誘導した。このようにして、本発明者らは特定のRNAの運動を監視することができる。
【0159】
蛍光団の成熟化がEGFPの速度より速く(KOX=8x10−3s−1対1.5x10−4s−1)、量子収率が高いことから、例えば黄色蛍光タンパク質、Venus(F64L、M153T、V163A、S175G)の変異体などの他のマーカータンパク質を使用することも可能である(Nagaiら、2002)。また、このタンパク質は光退色に対して、より安定的であり、そのスペクトル特性は細胞タンパク質の自己蛍光と識別しやすくする。
【0160】
他の実施例では、マーカーは発色性/蛍光発生生成物をもたらす酵素である。
【0161】
シグナル増幅によりタンパク質相補対形成系を開発するため、本発明者らは蛍光促進性ベータ−ラクタマーゼ基質である細胞透過性のセファロスポリンベータ−ラクタム(CCF2)(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002; Wehrmanら、2002)でベータ−ラクタマーゼ系を活用した。この酵素系によりシグナルが約100倍増幅することが分かった(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002)。定量的インビボ分析により、16時間後に、バックグラウンド量を超えて、1つのジャーカット細胞あたりベータ−ラクタマーゼが50分子という低量で検出され得ることが分かった。基質に対する暴露の時間を短縮することにより、ベータ−ラクタマーゼの20,000分子を定量した。この感受性は、バックグラウンドの自己蛍光を上回って検出されるには105〜106の標的分子量/細胞が必要である蛍光タンパク質達成可能感受性より大幅に高い(Zlokarnikら、1998)。
【0162】
したがって、酵素活性のあるマーカータンパク質は蛍光タンパク質より高いシグナルを発生させることとなる。しかし、低分子量の着色反応産物の拡散のため、酵素的アプローチには空間分解能が部分的に欠落している場合がある。よって、特定の実験の必要性に依存して、これら2つの系(蛍光または酵素)のいずれか1つが使用できる。
【0163】
相補性核酸相互作用に支援されたタンパク質相補対形成の可能性を証明するため、本発明者らは高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の分子をモデルとして選択し、それを2つのフラグメント、1〜158および159〜234aaに分断した。対応する遺伝子は、完全EGFP−1遺伝子(Clontech, PaloAlto, CA)を含むプラスミドを使用しPCRにより得た。両フラグメントはCys残基がC末端(アルファCys−フラグメント、1〜158)およびN末端(ベータCys−フラグメント、159〜234aa)で付加されるように操作した。SspDNABインテインのC末端融合として、PCR産物はTWIN−1ベクター(New England Biolabs, MA)にクローン化した。全構築物の構造は配列決定により確認した。
【0164】
EGFPのα−フラグメントは事前に形成した発色団を含む。スペクトルに多少差異があるにもかかわらず、核酸ベースのタンパク質相補性によって蛍光度が100%まで回復可能である。DNAを鋳型にしたEGFP再集合の動態は、t1/2〜100秒と驚くほどに速く(図22参照)、成熟発色団を有する編成タンパク質から得たEGFPの再生の動態に近似していた(Reid & Flynn, 1997, Zimmer, 2000)。注目すべきことに、蛍光タンパク質中の典型的な発色団成熟には時間がかかる(Zimmer, 2000、図22b)。高速の動態データに基づいて、本発明の方法は、成熟発色団を含むEGFPα−フラグメントの産生を可能にする。α−フラグメントは、(EGFP中、総数239個のアミノ酸から)N末端から158個のアミノ酸を含んで十分に大きいため、完全な発色団を形成する可能性がある。
【0165】
分子モデリングはEGFPのα−フラグメント中で完全に形成された成熟発色団の存在を支持している。図23において、α−フラグメントの構造的コンフォメーションの図式は、α−フラグメントがかなり小型の構造に折り畳まれていること(そのダングリングC末端部は例外である)、ならびにα−フラグメントおよび完全サイズのEGFP中の発色団形成アミノ酸の空間的配位は非常に緊密になっていることを示している(図23b、c)。このことは中心ヘリックスで強力な800以下の折り畳みを有する蛍光タンパク質のポリペプチド鎖の特定の組成とも一致しており、これは近接した蛍光団形成アミノ酸T66、Y67およびG68をもたらす(Barondeauら、2003; Donnelyら、2001)。α−フラグメント中の発色団は完全に形成されてはいるが、完全サイズのEGFPに存在するC末端β−フラグメント中のアミノ酸との重要な接触があまりなく、また、それは溶媒に暴露されているので、完全なタンパク質中の発色団に特徴的に見られる強力な蛍光を発する能力が欠落している。
【0166】
α−フラグメント中の蛍光促進性発色団の存在を直接的に確立するため、本発明者らはβ−フラグメント単独での吸光および蛍光スペクトルを分析し、それらを完全サイズEGFPのスペクトルと比較した(図24)。対照として、EGFPのβ−フラグメントおよび2つの非蛍光タンパク質(ストレプトアビジンおよびキモトリプシノーゲン)のスペクトルも記録した。α−およびβ−EGFPの吸光スペクトルを図24bに示す。確認できるとおり、それらには元のEGFPに見られる490nmでの特徴的な最高値を示しているものはない(図24a)。しかし、α−フラグメントは、β−フラグメント(図24b、挿入部)または任意の非蛍光タンパク質(図示せず)に見られない300〜400nmの領域におけるかなり高い吸光度を特徴としている。だがα−フラグメントの蛍光スペクトルは(図24d)、励起スペクトルでは360nm、弱発光スペクトルでは460nmで特徴的な最高値を明確に示している。これらのスペクトルは全長EGFPのものと全く異なっている(図24c)が、合成発色団のスペクトル、および部分的なタンパク質分解によってGFPから単離された短い発色団含有ペプチドのスペクトルと一致している(図25)(Niwaら、1996)。溶媒に暴露した(α−フラグメント中にあるような)発色団は300〜400nmで吸光するが、450〜500nmでは(完全サイズEGFPに見られるように)吸光しないことが好ましいということを留意されたい。個々の実験では、分割EGFPフラグメントはインビボの生体大腸菌中で発現した場合、完全に形成された元の構造EGFPに対して異なるスペクトルを示す(図25)。よってこのように生成されると、EGFPのα−およびβ−フラグメントは活性化形態であり、単独では非蛍光性または不活性であるにもかかわらず、再会合して活性的蛍光タンパク質を形成することが可能である。
【0167】
この、活性化相補性EGFPフラグメントの再会合はインビトロでもインビボでも存在可能であり、その核酸相互作用はEGFPフラグメント相補性を促進することが可能である。蛍光の回復または再構築の高速の動態は、対応する相補フラグメントによる再構築においてのみ活性的である活性化状態のフラグメントと一致する。特に、EGFPのα−フラグメントは成熟発色団を含み、したがって活性化状態ではあるが、成熟発色団の消光のため単独では不活性である。81個のC末端アミノ酸を含むEGFPβ−フラグメントを付加すると、環境から発色団を保護する小型の2分割されたタンパク質構造体が形成され、(関連のDNA−DNA相補性相互作用または他の核酸相補性相互作用により2つのタンパク質フラグメントが結合したままであるのなら)強力な蛍光が即時に発生する。
【0168】
これらのむしろ予想外の結果はインビボでの高速タンパク質相補対形成法を開発する上で非常に重要である。成熟発色団を事前に含むEGFPのα−フラグメントならびにα−フラグメントとβ−フラグメントとの再会合を利用すると、数秒以内に活性的EGFPタンパク質が形成される。1つのフラグメントが事前に形成された成熟発色団を含んでいるこれらの分割EGFPまたは分割蛍光フラグメントはRNA成分の誘導に先立って発現が可能である。RNA成分のRNA合成誘導はフラグメントの高速タンパク質相補対形成および蛍光度の増加を促進する。このことにより、発現の早期から特定のRNAの運命には従わざるを得ない。
【0169】
結果から相補性オリゴヌクレオチドを持つEGFPの2つのフラグメントをインキュベートすると、蛍光放出スペクトル(励起極大490nm)が上昇し、EGFPスペクトルに特徴的に524nmで最高値となった。EGFPフラグメントが相補性ヌクレオチドと混合されない場合、蛍光スペクトルに変化は見られなかった。
【0170】
実施例3
検出タンパク質と核酸結合タンパク質のコンジュゲーション
本実験では、本発明者らは、2つの分断したタンパク質キメラが発現しても、相互作用アプタマー配列の非存在下では蛍光は再構築されないことを確認した。この実験は大腸菌で行った。EGFP遺伝子のフラグメントはプラスミドpEGFP(Clontech)からPCRによって得られた。EGFP遺伝子の分割はインビトロでの実験と同じ位置で行った(1〜158、159〜239)。完全サイズeIF4A(pGEX−4A1)を含むプラスミドを使用した。eIF4AのF1およびF2フラグメントはPCRによって得られ、分割はOguroらに従って行った(図3参照)。SGリンカーを有する2つの融合タンパク質は、2つのメッセージの共発現のために構築された2つのプラスミド、pETDuet1およびpACYDuet−1(Novagen)に挿入した。これら2つのプラスミドの複製起源および選択マーカーは異なる。得られたプラスミドpMB12およびpMB13は大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)で共発現した。pMB12では、Aと称するEGFPの最初の158個のアミノ酸を、(Ser−Gly)5ペプチドリンカーを介して、F1と称する真核細胞開始因子タンパク質4A(eIF−4A)の最初の215個のアミノ酸に連結した。同様に、Bと称するEGFPのC末端の92個のアミノ酸を含むペプチドを、pMB13中のF2と称するeIF−4Aの後半部分に連結した(図3)。両構築物はT7プロモーターの制御下にあり、1mMのIPTGで誘導した。蛍光レベルをFACSで測定し、それらは非誘導培養でのレベルと同等であった(図4)。本実験の陽性対照として、本発明者らはベクターpTWIN(NEB)の全長EGFPを発現させ、陰性対照として―eIF4A(A−F1、B−F1)の同じF1フラグメントに融合したEGFPのフラグメントを発現させた(図4)。
【0171】
他の実験では、A−EGFP−F1−eIF−4AおよびB−EGFP−F2−eIF−4A核酸を、大腸菌で発現したpMP33と称する同じプラスミドで発現させた。pMB33プラスミドはpACYCDuet1(Novagen)の誘導体であり、マーカータンパク質(例えばEGFPまたは酵素)のフラグメントおよびRNA結合タンパク質(例えばMS2コートタンパク質またはeIF4a)のフラグメントを含む両キメラ分割EGFP−eIF−4Aフラグメントタンパク質を発現する2シストロン性のプラスミドである。発現したキメラ分割フラグメントは標的RNAの非存在下では再会合しないが、標的RNA存在下では即時に再会合して機能的EGFPマーカータンパク質を生成する(図9c)。
【0172】
したがって、RNA結合タンパク質と標的RNAとの核酸相互作用は、インビトロおよびインビボでの高速タンパク質相補対形成、ならびに高速動態による分割EGFPフラグメントからの蛍光の回復を促進し得る。これは、会合した21bpのオリゴヌクレオチドまたはRNA結合タンパク質のいずれかと核酸との相補結合によって促進が可能である。
【0173】
実施例4
アプタマー−核酸結合タンパク質対の選択
【0174】
本発明の一実施態様では、タンパク質相補性は、対象となる核酸配列、例えばRNAに付けたアプタマータグを検出することに基づいている。検出タンパク質に結合した核酸結合タンパク質によりアプタマーは検出可能である。特に、核酸結合タンパク質を断片化し、個々のフラグメントを検出タンパク質のポリペプチドフラグメントに結合させた。アプタマー/タンパク質相互作用のいくつかのパラメーターは核酸ベースのタンパク質相補性を首尾よく開発させるためには重要である。(i)RNAアプタマーとRNA結合タンパク質間の結合親和性は、マーカータンパク質の再集合のためのエネルギーを提供するのに十分高いことが好ましい。(ii)アプタマーの長さは長すぎないことが好ましく、そうでなければ、アプタマーをRNAに導入するとその発現および挙動に変化が起こる可能性がある。(iii)RNA結合タンパク質は、好ましくは、分離したときに不活性であるが一緒に発現したときはアプタマーに結合可能である2つのドメインからなる単量体の小さいポリペプチドであることが好ましい。
【0175】
eIF4Aは真核生物開始因子であり、したがって、真核生物翻訳系の遍在性成分である。酵母内のその自然の濃度は高く(50mM)、もう1つの豊富な細胞タンパク質アクチンの濃度と同等である(Duncanら、1987)。それは、他の開始因子(4B、4H、4G、4F)との複合体で働くATP依存性RNAヘリカーゼとして作用する29kDの小さいタンパク質である(Kapp & Lorsch, 2004)。eIF4Aは2つのドメインのみから成り、その結晶構造はダンベル型に類似している:小型N末端およびC末端ドメインは柔軟な11aa長リンカーによって結合している(Johnson & McKay, 1999; Benzら、1999; Benzら、1999; Caruthersら、2000)。これらの構造的特徴によりこのタンパク質は、ドメイン切断に好都合で有用な道具になる。さらに、近年の研究では、ナノモル範囲にある親和性でeIF4Aに結合する強力な結合オリゴヌクレオチドまたはアプタマーが単離されている(Oguroら、2003)。Oguroらは強力に結合しているアプタマー配列が56ntと短くなり得ることを示し、切断したeIF4Aのドメインがアプタマーに結合不可能である一方、完全サイズのタンパク質は高親和性でアプタマーに結合可能であることを見出した(Oguroら、2003)。
【0176】
これらの性質のため、eIF4Aはタンパク質相補対形成の好適な候補となり、本発明者らの系に使用してタンパク質相補対形成を誘導した。本発明者らは2つのフラグメントに分割したeIF4Aを使用し、それらの各々をEGFP検出タンパク質のフラグメントに融合した。したがってRNAアプタマーの存在下でeIF4Aが再集合するとEGFPタンパク質の2つのフラグメントが結合する。アプタマー−eIF4A相互作用の親和性は、細胞内RNAを監視するために使用するMS2コートタンパク質/MS2RNA相互作用と同じ範囲にある(Bertrandら、1998; Beachら、1999; Beach & Bloom, 2001; Rookら、2000)。
【0177】
あるいは、相補対のデザインでは、マーカータンパク質のフラグメントに2つの異なるRNAアプタマーおよび2つの異なるタンパク質またはペプチドを付加してよい(図5)。このケースでのタンパク質またはペプチドは、高結合親和性のアプタマーをインビトロで単離したウイルスタンパク質のリストから選択する(表1を参照)。
【0178】
【表1】
【0179】
この代替的デザインの利点は、1つのタンパク質が2つのフラグメントに分離するより、2つの異なるタンパク質またはペプチドが互いに相互作用する可能性のほうが低いことである。分割タンパク質のケースでは、切断したタンパク質のフラグメントが自然に再集合する可能性は依然としてある。アプタマー/タンパク質対を選択する主要なパラメーターは複合体の安定性(Kd)であり:相互作用が強いほど、マーカータンパク質相補対形成の可能性が高くなる。本発明者らは、化合物が対称的形状であることからタンパク質(またはペプチド)の類似したサイズが活性的な相補複合体形成に有利であると結論付ける。
【0180】
人工アプタマーのインビトロでの選択では、短いペプチドに結合する際に高度に特異的であり同族ペプチドにのみ結合するRNA構造が見出されることが可能である。同時に、それらの短いペプチドを含む大きめのタンパク質は異なるアプタマーと交差反応する(Herman & Patel、2000)。例えば、Rexタンパク質がRev応答性要素の一部に結合し、機能的にRevと置き換わることが可能であることは周知である(Bogerdら、1991; Rimskyら、1988);しかし、インビトロでの選択では、Revペプチドと相互作用しない抗Rex特異性アプタマーが単離される(Baskervilleら、1999)。標的RNAは、結合タンパク質に対する構造的ドメインを含むようにデザインすることも可能である。この標的RNAは、対応するプラスミドからも発現する。
【0181】
表1は、タンパク質相補対形成のRNAタグとして使用可能な、強力に親和性結合しているアプタマーとペプチドの対をいくつかを示している。あるいは、本発明に包含される潜在的RNA−タンパク質パートナーの例には追加が可能であり、限定されるわけではないが以下を含むリストから選択される:
(i)MS2コートタンパク質−RNAステムループ(Sawata & Taira, 2003; Valegardら、1997)。
(ii)TAR−TatBIV−1ステムループ(Royら、1990; Comolliら、1998)。
(iii)転写活性化因子として働くことが分かっているG3/C3ステムループの3リピート(Jarrell & Ptashne, 2003)。
(iv)アプタマーの3リピート(Yamamotoら、2000)。
(v)最大Kd=27nMである、58塩基まで削減可能であるeIF4A−87nt長のアプタマー(Oguroら、2003)。
【0182】
実施例5
アプタマー−核酸結合タンパク質相互作用に方向付けられたタンパク質相補対形成
【0183】
本発明の一実施態様では、実時間タンパク質相補対形成法はアプタマータグを対象となるRNAに組み込むことに基づいており、この組み込みは、それぞれマーカータンパク質およびRNA結合タンパク質のフラグメントを含む2つのタンパク質キメラのみからなるタンパク質複合体により認識されるものである。この系を確実に使用するために、アプタマータグの組み込みによりRNA合成および挙動が妨害されてはならない。
【0184】
対象となるRNAを監視することに対するタンパク質相補対形成の効用を示すため、アプタマーを対象となる遺伝子に付加した。アプタマーが真核生物遺伝子発現に影響を及ぼさないことを示すため、本発明者らは、出芽酵母株YPH500(MATα、ura3−52、lys2−801amber、ade2−101ochre trp1−Δ63、his3−Δ200、leu2−Δ1)中のレポーター遺伝子の停止コドンのすぐ後方に64ntのオリゴマーを誘導した(Oguroら、2003)。本発明者らはレポーター遺伝子、例えばEGFPが人工Tet応答性GAL1プロモーター下にある誘導性システムを使用した(Blakeら、2003)。この系では、ガラクトースの存在下でTetRがEGFPの発現を媒介するようにTetR遺伝子をGAL10プロモーターから発現させる(図1A)。この抑制は、TetRに直接結合する誘導因子、無水テトラサイクリン(ATc)の添加により取り除くことが可能である(図1B)。その後ガラクトースおよびATcの存在下でのEGFPの発現を、誘導可能転写系の染色体への組み込みを含む細胞でのフローサイトメトリー分析(FACS)により定量した。非修飾EGFPを発現する細胞と、アプタマーがこの遺伝子の3’末端に挿入されている細胞との間には蛍光度の差異は見られなかった(図2)。ゆえに、アプタマー配列を有する遺伝子の3’にタグを付けることは、タンパク質レベルでの遺伝子発現に影響を及ぼすとは思われない。RNAレベルはまたこのアプタマータグの存在には影響を受けないと本発明者らは合理的に推測した。
【0185】
文献の分析から、RNA合成を妨害することなくアプタマー配列は5’−または3’−非修飾RNA領域内に組み込み可能であり(Hansonら、2003; Nickensら、2003)、一方それは、特に組み込まれたアプタマーがいくつかの翻訳調節因子、例えばテトラサイクリンと相互作用すれば翻訳の効率に影響を与え得るということが分かる(Hansonら、2003)。本発明者らの予備段階の結果はこれらのデータを裏づけ、eIF4Aに抗するアプタマーの3’非翻訳領域への取り込みは酵母のマーカータンパク質EGFPの発現に影響を及ぼさないことを示し、このことはEGFPのmRNAレベルも影響を受けないことを示唆している。
【0186】
系を一層フレキシブルなものとするために、5’非翻訳領域がアプタマーの組み込みにも使用可能であるかを試験することによって、これらの実験を広げることが可能である。例えば、マーカータンパク質としてEGFPを使用し、その発現をアプタマータグの位置に準じてインビボで測定する。アプタマーの効果に次いで、蛍光セルソーター(FACS)を使用して総細胞蛍光度を測定し、RNA転写レベルを直接評価するノーザンブロット分析を行う。依然として、アプタマータグが組み込まれていると考えられる最も有望な部位は3’非翻訳領域である。
【0187】
RNAの運動と局在化に対するタグ組み込みの効果もまた考慮すべき事柄である。mRNAの3’−UTRはmRNA局在化を決定する調節要素を含む(概説は、Hesketh, 2004を参照)。例えば、ASH1 mRNAの3’UTRはmRNAの輸送および出芽内での固定に十分なシグナルをコードする。しかし、多くの場合、メッセージの他の部分内にある配列も適切なRNA局在化に必要である(Chartrandら、1999, Gonzalezら、1999)。例えば、最短の可能性があるアプタマータグは、メッセージのどの部分も除去することなく使用する。その際、調節RNA配列すべてを維持し、全RNA/タンパク質相互作用を保存すればRNAの局在化は損なわれることがない。再集合タンパク質複合体のRNAテンプレート上の位置決めは、小規模の蛍光タンパク質(またはベータラクタマーゼ)およびRNA内でアプタマーと相互作用する小さいペプチドを考えると、かなり許容性がある。にもかかわらず、修飾RNAの位置確認の適切さは、所与のmRNAに特異的なプローブを用いてインサイチュハイブリダイゼーションにより対照実験で直接点検する。
【0188】
実施例6
それぞれ蛍光マーカータンパク質のフラグメントおよびRNA結合タンパク質のフラグメントを含む2つのキメラタンパク質の等モル共発現系の開発。
【0189】
本発明のリアルタイムタンパク質相補対形成法を成功させるための、RNA結合タンパク質に結合し、等モル量で生成され、再会合の準備ができている活性化マーカータンパク質を各々が含む2つのポリペプチドタンパク質フラグメントの配位合成。タンパク質相補対形成についての事前研究から、2つのタンパク質融合体が異なるコピー数でプラスミドから合成されればGFPの蛍光の回復は検出されないということが分かった(Maglieryら、2005)。よって本発明者らは、タンパク質フラグメントの等モル合成が起こる系、およびRNA成分の独立した合成のための誘導性の系を開発した。
【0190】
等モル量の2つのキメラタンパク質を発現するために、本発明者らはいくつかのメッセージの共発現を可能にする発現ベクターを使用した(pETDuetまたはpACYCDuetベクター、Novagen)。これらのプラスミドは2つのT7プロモーターおよび2つの多重クローニング部位を有し、したがって各プラスミドは2つのメッセージの発現を支持することが可能である。同時に、これらのプラスミド中の複製起源は異なり、これがそれらの共発現を可能にしている。本発明者らは2つのキメラタンパク質を1つのプラスミドに、タグがついたRNAを異なるプラスミドに位置付けし;その結果、RNA発現は独立して誘導が可能となる。RNA発現の独立した誘導のためのpBADプラスミドを使用する。抗EGFP抗体(Clontech)を使用したウエスタンブロット分析により、キメラタンパク質の発現レベルを試験し、一方、RNA合成はノーザンブロッティングにより試験した。
【0191】
これらの実験を大腸菌内で行い、FACSを使用して総細胞蛍光度を測定してタンパク質相補性を監視した。対照として、RNA成分の非存在下で2つのタンパク質キメラを発現する細胞のバックグラウンドは蛍光を示さず(図9A)、一方アプタマー存在下でのその発現は蛍光を示し(図9C)、アプタマー/RNA結合タンパク質/ペプチド相互作用の特異性が立証された
【0192】
実施例7
分割ポリペプチド検出タンパク質としてのベータラクタマーゼの使用
【0193】
クラスAベータラクタマーゼは、2つの独立した群によるタンパク質相補性アッセイ中、分割マーカータンパク質として使用してきており(Wehrmanら、2002; Galarneauら、2002)、酵素のこの種におけるいくつかの興味深い特徴により説明できる。第一に、これらのタンパク質は比較的小さい単量体酵素であり、その結晶構造は周知である(Jelschら、1993)。ベータラクタマーゼは細菌細胞でも真核生物細胞でも発現し;真核生物細胞は内在性ラクタマーゼ活性を持たないことが重要である。ベータラクタマーゼをインビボで使用して強力なツールとする他の有意な因子は、Tsienのグループが開発した細胞透過性蛍光基質が利用可能であるということである(Zlokarnikら、1997)。
【0194】
ベータラクタマーゼは残基196〜198で切断可能であり、これらのフラグメントは、相互に作用するタンパク質を付加すれば互いに相補対を形成し得るということは、上述したとおり両グループによって示されてきた(Wehrmanら、2002; Galarneauら、2002)。この部位(196〜198アミノ酸)は触媒中心と逆の部位に位置し、周期的な二次構造は示さない。Blauのグループは、Aps−Gly−ArgトリペプチドをベータラクタマーゼのN末端フラグメントのC末端へ組み込むと酵素活性が10,000倍まで増加したことを示している(Wehmanら、2002)。結果として、ベータラクタマーゼ活性に基づくタンパク質相補性は約2けた分シグナルを増幅させ、シグナルはタンパク質誘導後数分以内に検出が可能となる(Wehrmanら、2002)。
【0195】
酵素活性の再構築に基づくタンパク質相補性は感度に関して有望であるが;しかしシグナルの拡散により空間分解能が欠落している可能性があることは強調しておく必要がある。よって、空間分解能は重要ではなく、例えばRNAの検出が低量であることが重要である場合に、アッセイのこの形式が適用されることは好ましい。
【0196】
原核および真核生物細胞におけるインビボRNA検出アッセイのための、ベータラクタマーゼを検出タンパク質として使用した方法において、ベータラクタマーゼはBlauのグループが示したとおり、活性化ポリペプチドフラグメントへと分割が可能である(Wehrmanら、2002)。2つのフラグメント、1つはアミノ酸残基24から197のみから成り(細胞内酵素を保存するアルファ−フラグメント欠失ペリプラスム分泌シグナル系)、2つ目は残基198から240(ベータフラグメント)のみから成っているこれらのフラグメントは大腸菌内でクローン化する。アルファ−およびベータ−フラグメントは最初にpUC19からPCRで増幅し、トリペプチドNGRはPCRによってアルファ−フラグメントのC末端に付加する。アルファ−フラグメントをコードするPCR生成物は、ポリペプチドリンカーを有するeIF4AのF1フラグメント下流でクローン化し、一方ベータラクタマーゼのベータ−フラグメントはeIF4AのF2フラグメントの下流でクローン化する。
【0197】
原核生物の発現では、キメラ分割βラクタマーゼ−eIF4A複合タンパク質をpCDF−duetベクター(Novagen)に誘導し、一方eIF4A結合アプタマーを有するRNA標的はpACYCDプラスミドから発現させる。得られたプラスミドは大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)で共発現させる。
【0198】
真核細胞中のeIF4Aポリペプチドフラグメントに結合しているベータラクタマーゼの発現は出芽酵母で行う。酵母内でベータラクタマーゼおよびeIF4Aのフラグメントを含むキメラタンパク質[ベータラクタマーゼ(A)−(F1)およびベータラクタマーゼ(B)−(F2)]を発現するのに使用するプラスミドは、HAまたはmycエピトープタグに融合したタンパク質をそのN末端で発現させるために修飾される発現ベクターpDB20(Beckerら、1991)の誘導体である。このことにより、強力なADH1プロモーターから構造タンパク質が発現し、ウエスタンブロットによる遺伝子発現が分析可能となる。プラスミドpRS4D1(Blakeら、2003)は修飾し、遺伝子の3’末端に位置する64nt長のアプタマータグとともに(EGFPの代わりに)標的RNAを発現する。このプラスミドを株YPH500のゲノムに組み込むことにより、培地にガラクトースおよび無水テトラサイクリンを添加するとタグ化RNAの発現が調節される(Blakeら、2003)。
【0199】
ベータラクタマーゼ活性が存在しない場合、409nmでクマリンが励起し、FRETが起こり、520での発光が起こる(緑色蛍光)。アプタマーおよび分割eIF4Aフラグメント間の相互作用のためベータラクタマーゼが活性し、ベータラクタム環が開環し、フルオレセインが分離し、この場合、FRETは起こらず、447nmでの発光が見られる(青色蛍光)(Zlokarnikら、1998)。
【0200】
実施例8
インビトロおよびインビボでの高速タンパク質相補対形成によるRNA分子の検出
【0201】
以下の実施例では、本発明者らは、従来の検出レベルを超える感受性を有する生体細胞内RNA検出のロバストな方法を開発した。活性的検出タンパク質の実質的に高速の再構築およびバックグラウンドの低減を可能にする活性化分割蛍光フラグメント(実施例2参照)を使用するリアルタイム高速動態タンパク質相補対形成と、酵素的工程を使用して誘導したシグナル増幅とを組み合わせることにより、適量の核酸分析が可能な検出技術がもたらされる。
【0202】
酵素活性または蛍光特性を有するタンパク質は二分割される(α−およびβ−サブユニット)。これらの部分を、アプタマー結合ドメインを持つ核酸結合タンパク質を有するキメラとしてインビボで発現させる。理想的な核酸結合タンパク質は、自身では不活性であるが集結すると活性的である2つの部分のみからなるものである。核酸結合タンパク質により認識可能であるモチーフを含むRNAの存在下では、検出タンパク質の活性は即時に回復する。タンパク質検出体が酵素である場合にシグナルが増幅する。タンパク質が蛍光性である場合、シグナル増幅は見られないがバックグラウンドも見られず、このことは蛍光が完全に標的RNAの存在に依存しているからである。
【0203】
本発明者らは、大腸菌BL21(DE)3細胞においてタンパク質融合物およびアプタマー含有RNA転写産物を共発現させるための構築物を作製した(図9)。セリンおよびグリシン残基のみからなる柔軟なポリペプチドリンカーを介して、EGFPフラグメント(残基1〜158)のC末端と、残基1〜215を含むeIF4AフラグメントのN末端とを融合した。2つのT7プロモーターから得た2つのオープンリーディングフレームの発現のためにデザインされたベクターpACYCDuet−1(Novagen)の最初の多重クローニング部位(MCS)におけるこの融合物をクローン化した。同様に、柔軟なポリペプチドリンカーを介して、EGFPフラグメント(残基159〜238)のC末端を、アミノ酸216〜406を含むeIF4AフラグメントのN末端に融合した。この融合物をベクターpACYDuet−1の第二のMCSにクローン化し、およそ等モル量の2つの融合タンパク質が発現可能な構築物を作製した。ベクターpETDuet−1(Novagen)を使用し、縦一列になっているeIF4Aと相互作用しているアプタマー配列の2つのコピーを含む360nt長のT7転写産物の発現に使用した。この小さいメッセージは33ntのリーダー配列のみから成り、その後にアプタマー配列の2つのコピー、および約200ntのヌクレアーゼ耐性T7停止配列が続く。
【0204】
タンパク質およびRNAの共発現のため、全相補性複合体および適切な対照を発現する大腸菌細胞は誘導因子、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下、室温で培養した。培養物が約0.5(OD600=0.5)の最適な密度に達したとき、それらを蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した(図21)。アプタマー含有RNA転写産物とともに相補性融合タンパク質を共発現させると、平均蛍光度が10〜20倍増加した(図9C)。しかし、アプタマー含有転写産物が不在であれば、相補性融合タンパク質を有する大腸菌細胞はバックグラウンドレベルを超える蛍光を示さない(図9A)。さらに重要なことは、非タグ化転写産物との複合体を相補対形成するタンパク質成分を細胞が発現しているとき、蛍光度の優位な上昇は見られなかったということである(図12)。T7転写産物がリボソーム結合部位を有していても、または欠いていても、蛍光収率に差異はなかった。このことから、メッセージの翻訳はその検出を干渉しないということが示唆される。
【0205】
実施例9
インビボRNA分子定量
【0206】
インタクトなEGFPを発現する細胞の蛍光度は相補対形成系を有する細胞のものより約30〜50倍高かった(図9Bおよび9C)。濃度をRNA濃度で判定する再集合EGFPと比較して全長EGFPの量は多いはずであることから、この差異は驚くほどではない。各RNA分子を数回リボソームで再利用することにより、RNAに対するタンパク質のモル比は1を超えることは周知である。
【0207】
次に、EGFPキャリブレーションビーズ(BD Biosciences Clontech)を使用し、細胞1個当たりの再集合EGFP分子の絶対平均数、ひいては本発明者らの検出系の効率を評価した。約40のコピー数を有するpETベクターからRNAを発現する細胞が、その細胞容量が1.41x10−15Lであれば、1〜2μMのRNAに対応する再集合EGFPの分子を500〜600個生成することを本発明者らは見出した(Leeら、2005)。このRNA濃度は、50〜70コピー/細胞であるベクターから大腸菌内で得られた実験結果と良好に相関している(Leeら、2005)。予測した結果と実験結果との一致から、アプタマー含有RNAの事実上すべての分子は再集合したタンパク質複合体に検出されるということが示唆される。RNAアプタマーを持つプラスミドのコピー数(40から100コピー/細胞)を増加させてこの仮説を試験し、細菌細胞は元の構築物と比較した場合、より高い蛍光度を示すことが認められた(図13)。この結果は、RNA分子のほとんどは本発明者らの相補対形成系により検出されるという本発明者らの結論を支持している。
【0208】
その後、再集合EGFPを持つ細胞の蛍光スペクトルと全長タンパク質を発現する細胞のスペクトルを比較した。これらの実験において、再集合複合体では(元のEGFPでの490nmに対して)470nmで励起が最大になること、および(元のEGFPでの508nmに対して)約520nmで発光が最大になることが見出された(図14)。この差異は、元のEGFPと再集合EGFP−RNA複合体間のタンパク質コンフォメーションが変化する可能性があることで説明できる。この結果はまた、インビトロ実験で2本鎖オリゴヌクレオチドを付加したことにより再集合した分割EGFPでは発光スペクトル(最大524nm)が同様に赤方偏移したことから細胞内蛍光シグナルは核タンパク質複合体の形成に起因しているという考え(Demidovら、2006)を支持している。
【0209】
実施例10
細菌細胞内蛍光度の空間的および時間的オシレーション
【0210】
落射蛍光顕微鏡およびB&Wカメラを使用し、RNA標識系を発現する細胞を観察した(図9cおよび11)。並行して、微分干渉コントラスト像を記録し細胞数および形状を分析した。複合体形成および蛍光発光のための時間に余裕を持って、細胞を室温で一晩培養した。このため大部分の細胞は分裂がほとんど起こらない定常期にあった。いくつかの例では、細胞分裂が見られず、すべての例で、新たに分裂した細胞は蛍光性ではなかった(図15)。
【0211】
タンパク質融合物とアプタマーを含むRNA転写産物とを共発現させると、細胞の一極または両極に明るい蛍光スポットが見られる蛍光細胞が生じた(図10)。対照的に、完全サイズのEGFPが発現すると、細胞全域に蛍光分布が一様になった強力な蛍光細胞が生成された(図9b)。同時に、アプタマー発現のないタンパク質融合物の発現では、有意な蛍光は生じず(図9a)、このことは本発明者らが事前に行ったフローサイトメトリーの結果を裏付けている。
【0212】
経時的顕微鏡検査では、蛍光粒子の顕著ないくつかの特徴ならびに細胞の総蛍光度の変化が明らかになった。図10では、一つの代表的な実験において30分間隔で収めた連続像が示されている。同じ領域の細胞は異なる振幅の同期発振を示した(図11c)。各細胞の総蛍光度は最初の2時間で徐々に減少したが、その後再度増加した。同時に、総細胞蛍光度が減少すると、細胞極での高蛍光粒子が現れる。興味深いことに、実験の工程で蛍光性になる細胞もある(図11b、180分後以降)。これらの変化の動態は実験間で変化したが、経時的な蛍光度の増加および減少の全体的なパターンは常に同一であった。
【0213】
細胞蛍光度の変化がRNA動態を実際に明らかにすることを示すため、本発明者らは細胞培養物から総RNAを抽出し、MALDI−TOF MS検出法を併用した実競合PCR(rcPCR)を使用し、絶対濃度のアプタマーおよびmreB RNA、正常化に使用するハウスキーピング遺伝子を測定した。実競合PCRは、増幅に先立って対象遺伝子に対する内部標準として挙動する連続的に希釈したDNA競合体を使用している。競合体と対象遺伝子間の単一塩基の差異は、伸長生成物の量を定量するMALDI−TOF MSを使用した1または2ntの塩基伸長反応に利用されている。
【0214】
アプタマーmRNAレベルの分析から、制御遺伝子mreBが定常である間は発振は統計的に有意であることが分かる(表2)。データから、アプタマー転写産物は1時間の時点でピークに達し、その後急速に減少し、120から150分の時点でゼロ時点のベースラインに戻る。その後に他の転写産物が170分時点でピークに達し、最後に急激に下降し、その後、最初のゼロ時点でのアプタマーmRNAレベルまで戻る。
【0215】
【表2】
濃度値は各細胞培養プレートから抽出したRNAのサンプルのものである。ハウスキーピング制御遺伝子mreBに対して調整し、ゼロ時点のベースラインに対して算出した倍率の数値。ブートストラップP値は、遺伝子がベースラインと異なって発現していることを確信させる尺度となる。高品質アッセイの指標である残存値および不適合度値は、分析した試料すべてで<0.05である。
【0216】
実施例9および本実施例に使用する技術を適用し、RNA局在化および運動を検出することが可能である。この新たな技術のこのような応用の一例によりASH1 mRNAが研究可能である。このRNAはHOエンドヌクレアーゼの転写を阻害する細胞運命決定因子をコードし、娘細胞中の接合型相互変換を遮断する。様々な方法から、出芽した酵母細胞の出芽の先端にそれが局在していることが分かっている。ASH1 mRNAが良好に研究されており;そのためそれはモデル実験として使用され、生体細胞内のRNA局在化および運動の分析における感受性および特異性を確認することが可能である。
【0217】
実施例11
二成分アプタマー−ペプチド相互作用を使用したインビボRNA検出
【0218】
実験9および10では、本発明者らは、蛍光タンパク質相補性に、RNA結合タンパク質とRNAアプタマーとの高親和性相互作用を併用したインビボRNAモニタリングを示した。これらの実験では、RNA結合タンパク質は、ダンベル型構造のみからなる真核生物開始因子4A(eIF4A)である。eIF4Aを2つのフラグメントに切断し、各フラグメントを高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の分割フラグメントに融合させる。2つの相補対形成タンパク質融合物とeIF4A特異性アプタマー含有転写産物とを共発現させると、細菌内でEGFP蛍光度が回復した。このアプローチの主要な利点は、蛍光シグナルが標的RNAにのみ判定されること、すなわち、RNAが存在しなければ検出可能シグナルはないということである。また、比較的小さいタンパク質複合体は標的RNAに集結し、RNA機能および局在化を干渉しないことが好ましい。
【0219】
実験11で、本発明者らは、RNA可視化に対する代替的実施態様の開発に関するデータを提供しており、ここではアプタマー結合部分は2つの短いペプチドである。このアプローチでは、2つの異なるRNAアプタマーを対象RNAにタグとして付加し、分割EGFPのフラグメントと融合した2つの短いウイルスペプチドに認識させる(図16)。これらの修飾には理由がいくつかある。第一に、集結したeIF4Aを含むものと比較して、標的RNAに集結したタンパク質複合体は実質的に小さい。概して、検出ツールが小さいほど、機能を干渉する可能性は低い。第二に、eIF4Aは真核細胞中では翻訳機械の部品であり、細菌タンパク質間の緊密な相同体も有する。したがって、過剰発現が正常細胞機能を干渉する可能性も多少ある。同時に、短いウイルスペプチドは細菌または真核細胞中では相同タンパク質を持たず、したがって細胞中のそれらの発現は細胞機能に対して中立である可能性がより高い。最終的に、RNA認識複合体の代替的デザインは新たなアプローチにさらなる柔軟性をもたらし、その普遍性を示す。
【0220】
二成分アプタマー−ペプチド相互作用に基づくインビボRNA検出に対する相補性複合体のデザイン。本発明者らのスキームにしたがって、生細胞中のRNAを検出するために、2つのペプチドと相互作用することが可能な2つのアプタマー配列とともにRNAを提供することが好ましい。各ペプチドは、分割した高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の2つのフラグメントのうち1つと融合した融合物として細胞中で発現することが好ましい(図16)。このようなシステム作業を行うには、いくつかの問題が考慮に入れられた;第一に、選択された各相互作用ペプチド/アプタマー対の親和性は高いことが好ましく、両対で同等の親和性で結合することが好ましい。第二に、2つのアプタマー/ペプチド対間には交差反応がないことが好ましく、すなわち各相互作用の特異性は十分高いことが好ましい。第三に、ペプチド間に相互作用がないことが好ましく、そうでなければペプチドはマーカータンパク質のフラグメントを集合させ、非特異性バックグラウンドを増加させてしまう可能性がある。次に、ペプチドの長さは、相補対形成複合体を対称的に集合させる長さと同等であることが好ましい。最後に、2つのアプタマーの位置付けにより、それらの各々が、対応するペプチドと独立して相互作用するようになることが好ましい。このことはアプタマー間に位置した柔軟リンカーを使用することで確立できる。
【0221】
多アルギニンモチーフ(ARM)を有するペプチドは、多数のRNA結合タンパク質と、対応するRNA標的との相互作用の高親和性および高特異性を判定するフラグメントである(22)。これらのペプチドの共通の特徴は、他の類似性が不在の場合にアルギニンが優勢であることである。近年の研究は対応するRNAとのARM−ペプチドの相互作用のメカニズムを理解することを目的とし、アルギニン位置の特異的パターンおよびペプチド骨格の柔軟性が対応するRNAリガンドの特異的結合の原因となっていることを結論付けた(23)。しかし、多数のARM−ペプチドは「カメレオン様の」挙動を示し、親和性が低いにもかかわらず多くのRNA標的に結合する(24)。このことに留意して本発明者らはARMウイルスペプチドからRNA結合ペプチドを選択したが(25〜27)、それらをタンパク質相補対形成に適用する前に、対応するRNAとのそれらの交差反応を試験した。
【0222】
アプタマー−ペプチド対を選択するインビトロ実験。利用可能データに基づいて、本発明者らは3つのペプチド/アプタマーペア;(i)HIV Rex;(ii)バクテリオファージλN;および(iii)HTLV−1Revを選択し(表1参照)、同族パートナーとの結合親和性および2つの他のRNAアプタマーとの交差反応をインビトロで試験した。RNAアプタマーの濃度を固定するとARM−ペプチド濃度の増加に伴って複合体が形成可能になる条件下で、非放射活性ゲルシフトアッセイを行った。非結合RNAアプタマーおよびシフトした複合体の量を定量した(表1)。結果からλNペプチドおよびHIV−1Rexペプチドは高特異性を示し、不一致RNAアプタマーとは交差反応しないことが分かった。同時に、HTLV−1Revペプチドは2つの不一致RNAアプタマーと多少交差反応を示した。これらの結果に基づいて、本発明者らは、λNおよびHTLV−1のRexペプチドならびにそれらの対応するアプタマーが本発明者らのタンパク質相補性複合体中で使用するのに最適な対を提供すると結論づけた(表3参照)。
【0223】
【表3】
【0224】
二成分ペプチド/アプタマー相互作用を使用した生細菌細胞におけるRNA転写産物の検出。タンパク質融合物およびアプタマー含有RNA転写産物をクローン化し、大腸菌BL21(DE)3細胞で発現させた(図17)。EGFPフラグメント(残基1〜158)のC末端を、セリンおよびグリシン残基のみからなる柔軟なリンカーを介してRexペプチド(16aa)のN末端に融合させた。同様に、第二のEGFPフラグメントのN末端(残基159〜238)を、またポリペプチドリンカーを介してλNペプチド(22aa)のC末端に融合させた。両タンパク質融合物をコードする全DNA挿入部分およびその間にあるプロモーター領域を多段階PCRで合成し、NcoIとAvrII部位間にあるベクターpACYCDuet−1へクローン化し、2つの融合タンパク質を共発現可能な構築物を作製した。5または10dT残基により連結した2つのアプタマー配列を含む230nt長のT7−転写産物を発現するために、ベクターpETDuet−1(Novagen)を使用した。このメッセージはリーダー配列から成り、この後に2つのアプタマー配列、約200ntのヌクレアーゼ耐性T7終止配列が続いていた。
【0225】
全相補性複合体を発現する大腸菌細胞および適切な対照を、タンパク質およびRNAの共発現のための誘導因子、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下で、室温で一晩培養した。培養物が約0.5(OD600=0.5)の光学密度に達したとき、それらを蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した(図17)。全相補性複合体を発現する大腸菌細胞の蛍光度を、2つのタンパク質融合物のみ、ならびに2つのタンパク質融合物に2つのアプタマーの不適切な組み合わせを加えたものを発現する細胞の蛍光度と比較した(10dTのヌクレオチドと連結した2つの同一Rexペプチド結合アプタマー)。
【0226】
結果として、1mMのIPTGで誘導すると、RNA発現の非存在下で細胞蛍光は高まり(図17A)、適切および不適切なアプタマー配列を発現する細胞の蛍光分布に差異も見られなかった(図17A)。1mMのIPTGで誘導したT7プロモーターが、RNA標的が不在の場合でさえ集合するタンパク質融合物を非常に高濃度で発現することを本発明者らは示唆した。この示唆が正しければ、IPTG濃度の減少はバックグラウンドの減少につながる。確かに、IPTG濃度が10倍減少すると、蛍光分布はタンパク質融合物のみを発現する細胞ならびにタンパク質と2つの適切なRNAアプタマーを発現する細胞に分離した。しかし、特異性は依然として不適切対適切アプタマー配列を識別するに十分な高さではなかった。最終的に、IPTGの濃度を0.01mMまで減少させると、適切および不適切アプタマー配列を有する細胞で蛍光分布が分離した。これらの最適化した条件下で、全相補性複合体を発現する細胞の平均蛍光度はバックグラウンド(RNA成分)の蛍光度より10〜15倍高く、適切なアプタマー配列を有する細胞は、不適切配列の細胞より4〜5倍高い蛍光を示した。
【0227】
蛍光変化の動態。最適化条件で全相補性複合体を発現する細菌細胞を蛍光顕微鏡で分析した。蛍光分布には多様なタイプが見られた(図18)。タンパク質相補対形成がeIF4A−アプタマー相互作用により誘発される場合、ほとんどの細胞で蛍光度が極で最高値になり、実験で得られた結果に類似していた。蛍光粒子が細胞の中央に局在している細胞もあり(約10%)、これはGoldingおよびCoxにより報告された結果に類似していた(18)。
【0228】
タイムラプスイメージングは、蛍光が時間的および空間的な変化を明らかにし、eIF4Aをベースにした相補対形成系での結果にも類似していた。図18には、1つの代表的な実験で4時間撮影した30分間隔の像が配列されている。細胞蛍光度は発振の変化を示し、異なる細胞で発振は同期していた(図19b)。
【0229】
二成分アプタマー−ペプチド相互作用およびタンパク質相補対形成系により得られた結果は、分割開始因子4A(eIF4A)とその対応するアプタマーとの相互作用を利用した系で得られた結果に、いくつかの点で非常に類似している。第一に、大多数の細胞における蛍光粒子の極への局在化は両方法に特徴的である。第二に、時間的および細胞空間的蛍光変化の動態はまた、eIF4Aをベースにした系に類似している。最後に、細胞間蛍光変化の同期化は両系で目視できる。これらの結果は、RNA−タンパク質結合タンパク質または該タンパク質相補性複合体中で使用するペプチドの性質は系が稼動するのに重要であること、また他の分割タンパク質または短いペプチドが類似した用途に使用可能であることを暗示している。生細胞中のRNA可視化のためにMS2コートタンパク質をベースにした系を使用することに関する公開された結果はまた、この結論を支持している(18、20)。
【0230】
同時に興味深いことには、2つの相補性のデザインを比較すると、蛍光シグナルの強度およびシグナル/バックグラウンド比に差異があることが分かった。本発明者らが完全に理解できない理由として、分割EGFPに融合した短いペプチドを発現する細胞の蛍光度は、EGFPと融合したeIF4Aのフラグメントを発現する細胞の蛍光度より大幅に高かった。本発明者らは、正電荷、ならびに負に帯電したタンパク質およびDNAと相互作用する能力に起因するARM−ペプチドは中立のeIF4Aフラグメントよりも第三の集団分子を介して集結する傾向が強いと仮定する。このことはEGFP集合やバックグラウンドの増加をまねく。バックグラウンドを減少させようと、本発明者らはIPTG濃度を低減し、シグナル/バックグラウンド比が10〜20倍であり、eIF4A系の場合と同じ範囲にある状態を見出だした。さらに、これらの条件下で、適切および不適切アプタマー配列間の識別も可能となった。
【0231】
材料と方法
【0232】
構築物および株
【0233】
pMB33およびpMB38は、それぞれ相互作用タンパク質フラグメントおよびEGFPのORFをクローン化するpACYCDuet−1(Novagen)の誘導体である。プラスミドpGEX−4AI(Dr. Chris Proudからの寄付)由来のマウスeIF4Aタンパク質のPCR増幅により、eIF4Aフラグメント1(F1:1〜215aa)をpACYCDuet−1(pMB09)に;2(F2:216〜406aa)をpETDuet−1(Novagen)(pMB11)にクローン化した。同様にEGFPフラグメント、アルファ(A:1〜158aa)およびベータ(B:159〜238aa)をpEGFP(Clonetech)からPCR増幅し、それぞれpACYCDuet−1(pMB08)およびpETDuet−1(pMB10)へクローン化した。10aaの柔軟ポリペプチドリンカー(Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser)を介してEGFPフラグメントAのC末端がeIF4AフラグメントF1のN末端に融合しているキメラ遺伝子(pMB12)は、Vaslら、2004(詳細は補足の方法を参照)にしたがって生成した。類似のプロトコールを使用し、融合B−F2(pMB13)を作製した。B−F2を、前述(Geiserら、2001)にしたがって、pMB12、pACYCDuet−1(pMB33)の誘導体にクローン化した(Geiserら、2001)。eIF4A相互作用アプタマー配列(58nt長)を含むT7転写産物を発現するpMB23はpETDuet−1(Novagen)の誘導体であった。pMB42はeIF4A相互作用アプタマーに対する配列をも発現するpRSFDuet(Novagen)の誘導体であった(さらなる詳細は補足の方法を参照)。大腸菌株XL10−Gold(TetrΔ(mcrA)183Δ(mcrCB−hsdSMR−mrr)173 endA1 supE44 thi−1recA1 gyrA96 relA1 lacHte[F’proAB lacIqZΔM15 Tn10(Tetr)Amy Camr])およびXL10−Gold Kanr(TetrΔ(mcrA)183Δ(mcrCB−hsdSMR−mrr)173 endA1 supE44 thi−1 recA1 gyrA96 relA1 lac Hte[F’proAB lacIqZΔM15 Tn10(Tetr)Tn5(Kanr)Amy)(Stratagene)をクローン化のために使用した。BL21(DE)3(大腸菌BF ̄dcm ompT hsdS(rB ̄mB ̄)galλ(DE3))(Stratagene)を、融合タンパク質および標的RNAを発現させるために使用した。
【0234】
EGFPおよびeIF4Aのフラグメントを含むタンパク質融合の調製はVasiら(Vasiら、2004)に記述された方法に準じた。5’−リン酸化オリゴヌクレオチドの2つのセットをデザインし、Integrated DNA Technology(Coraliville, IA)から購入した:
【表4】
オリゴヌクレオチドの下線部はAフラグメント(配列番号9)の3’末端;F1配列(配列番号10)の開始部;フラグメントB(配列番号11)の3’末端;およびF2フラグメント(配列番号12)の開始部に対応している。該オリゴヌクレオチド配列の残りはペプチドリンカーGSSGSS(配列番号9および11)およびGSGS(配列番号10および12)に対するコード配列に対応する。(EGFPのフラグメントAを有する)プラスミドpMBO8および(eIF4AのフラグメントF1を有する)pMBO9を、Xho1およびEcoN1制限酵素で切断し;これらの制限部位を5’からオリゴヌクレオチドがアニールする部位までに位置づけした。Expand Long Template FOR system(Roche Diagnostics)を使用し、これらの直線化したプラスミドおよびオリゴヌクレオチド1および2でPCRを、以下のプログラム:94℃で3分間;94℃で30秒間および61℃で305を30サイクル、ならびに72℃で10分間、最後に72℃で11分間伸長というプログラムにしたがって行った。その後PCR混合物を酵素Dpn1で処理し、メチル化テンプレートDNAを除去した。約5〜5kbpのPCR生成物をゲル精製し、1UのT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用しライゲーションした。ライゲーションした生成物をXL−10コンピテント細胞(Stratagene)に形質転換した。A−F1(pMB12)を持つ新たなキメラプラスミドを単離し、配列決定で確認した。オリゴヌクレオチド#3および#4を使用した類似のプロトコールにしたがって、ベクターpETDuet−1(pMBI3)内のキメラB−F2遺伝子を作製した。
【0235】
pACYCDuet−1における2つのMOSへの2つのキメラタンパク質のクローン化。2つのキメラ遺伝子の似通った発現レベルを維持するために、報告されたプロトコール(Geiserら、2001)にしたがって、次にB−F2フラグメントを、A−Fl1をすでに有するpMB12の第二のMCSに組み込んだ。すなわち、B−F2を、隣接する5’および3’ベクター配列を有するプラスミドpMBI3からPCR増幅した。隣接する配列は、pMB12の挿入部の地点からすぐ上の上流およびすぐ下の下流にある20bpのDNAに対応していた。レシピエントベクター、ならびに20bpの隣接相同性を介して非切断ベクターまでアニールするB−F2フラグメントによりPCR反応を行った。PCRプログラムは、95℃で30秒間の変性工程、その後の95℃で30秒間および55℃で30秒間の18サイクル、ならびにPfuターボDNAポリメラーゼを使用した68℃での8〜10分から構成されている。増幅した生成物を酵素Dpn1で3時間処理し、元のメチル化テンプレートDNAを除去した。XL−10コンピテント細胞を一定分量の精製した生成物で形質転換した。両タンパク質フラグメント(A−F1+B−F2)を担持するプラスミドを単離し、配列決定により確認した(pMB33)。構築物A−F1+B−F2も陰性対照として生成した(pMB54)。最後に、全長EGFPをベクターpACYCにクローン化し、EGFP発現の陽性対照として使用した(pMB38)。
【0236】
二成分アプタマーペプチドキメラのためのクローニング。EGFPをアミノ酸残基158と159との間で分割して2つの非蛍光フラグメントにし、それぞれをα−EGFPおよびβ−EGFPと名づけた。HTLV−1Rexペプチドを、10aaの柔軟ポリペプチドリンカー(Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser)を介してα−EGFPのC末端に融合させ;バクテリオファージλNペプチドを、同じ10aaのリンカーを介してβ−EGFPのN末端(図18)に融合した。多段階PCRを行い、2つの融合タンパク質およびその間にあるT7プロモーターをコードするDNAフラグメントを作製した。最初のT7プロモーター領域の後方およびT7ターミネーター領域の前方にある挿入部に位置する制限部位NcoIとAvrII間にあるpACYCDuet−1ベクター(Novagen)にDNA構築物を挿入した(図17)。したがって、2つのタンパク質キメラを1つのpACYCDuet−1プラスミドから発現させ、等モル量の両融合物の発現を確実にした。大腸菌株XL10−Gold Kanr(TetrΔ(mcrA)183Δ(mcrCB−hsdSMR−mrr)173 endA1 supE44 thi−1recA1 gyrA96 relA1 lacHte[F’proAB lacIqZΔM15 Tn10(Tetr)Tn5(Kanr)Amy)(Stratagene)をクローン化のために使用した。全構築物を配列決定により確認した。
【0237】
アプタマーのクローン化。2つのRNAアプタマーをコードし、そのうち1つがλNペプチドに結合し、その他がHTLV−1Rexペプチドに結合するようにDNA配列をデザインした。アプタマーを10個のチミンで分離し、XbaIおよびAvrIIの制限部位を末端に付加した。対応するDNAテンプレートをカスタム合成し、PCR増幅し、T7プロモーターの制御下でpETDuet−1ベクター(Novagen)中のXbaIおよびAvrII制限部位間に挿入した。pETDuet−1およびpACYCDuet−1ベクターは共発現に適合している。陰性対照として、2つの同一のRNAアプタマー配列をコードするDNA配列を同様に合成した。大腸菌株XL−10−Goldをクローン化のために使用した。全構築物を配列決定により確認した。
【0238】
培養条件および誘導。BL21(DE)3細胞を、(タンパク質キメラを発現する)pMB33および(標的RNAを発現する)pMB23で共形質転換した。タンパク質およびEGFP相補性複合体のRNA成分をコードする2つのプラスミドを大腸菌BL21(DE)3(BF ̄dcm ompT hsdS(rB ̄mB ̄)galλ(DE3))(Stratagene)内で共発現させた。陰性対照として、細胞を、2つの同一アプタマーを含むプラスミドで形質転換した。他の陰性対照として、アプタマー挿入部を含まないpETDuet−1プラスミドで形質転換した。形質転換細胞の単一コロニーを最初に、抗生物質が補充されたLB倍地中で37℃で3〜4時間培養した。37℃でのインキュベーションの後、培養物を300倍に希釈し、誘導因子イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG;1mM、あるいは二成分アプタマー−ペプチド相互作用では0.01mM)を含む新鮮な培地へ移し、室温で一晩培養した。試験時、培養の最適な密度は0.4から0.6(OD600=0.4から0.6)の間であった。BL21(DE3)pLysコンピテント細胞(Stratagene, CA)内でタンパク質を発現させた。0.35mMのIPTGで誘導を行い、細胞を37℃で4時間培養した。細胞を回収し、洗浄し、50mMのトリス−HCl pH8.0、25%のスクロース、1mMのEDTA、10mMのDTTおよび0.1%のアジ化ナトリウムを含むバッファー中で超音波処理(各30秒間を3回)により破壊した。封入体を同じバッファーで1回洗浄し、50mMのトリス−HCl pH8.5、100mMのNaCl、0.5%のトリトンX100、1mMのEDTA、1mMのDTT、0.1%のアジ化ナトリウムを含むバッファーで3回洗浄し、その後、8Mの尿素、25mMのMES pH8.5、10mMのEDTAおよび0.1mMのDTTを含むバッファーに溶解させた。尿素は含まないが同じバッファーへの滴下希釈によりタンパク質を再度折り畳み、バッファー(50mMのトリス−HCl、pH8.5、0.15MのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のトリトンX−100、1mMのPMSF)で平衡化したキチン親和性クロマトグラフィー樹脂(New England Biolabs, MA)に供した。同じバッファーでカラムを広範囲に洗浄した。その後カラムを50mMのトリス−HCl pH7.0、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのDTT、トリトンX−100を0.1%、1mMのPMSF)を含むバッファー中で平衡化し、インテイン切断が生じるように40℃で24〜48時間静置した。溶出物を回収し、タンパク質濃度および純度をSDS−PAGEおよびCoomasie Plus Protein染色(Pierce, IL)で分析した(図15および16参照)。同様の方式で全タンパク質を精製したが、1つ例外として:キチンクロマトグラフィー工程におけるEGFPのアルファサブユニットの単離にはトリス−HClバッファーの代わりにPBSバッファーを使用した。
【0239】
いくつかの実施例(実施例1および2)で、尿素は含まないが同じバッファーへの滴下希釈によりタンパク質を再度折り畳み、バッファー(50mMのトリス−HCl、pH8.5、0.15MのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のトリトンX−100、1mMのPMSF)で平衡化したキチン親和性クロマトグラフィー樹脂(New England Biolabs, MA)に供した。同じバッファーでカラムを広範囲に洗浄した。その後カラムを50mMのトリス−HCl pH7.0、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのDTT、トリトンX−100を0.1%、1mMのPMSF)を含むバッファー中で平衡化し、インテイン切断が生じるように40℃で24〜48時間静置した。溶出物を回収し、タンパク質濃度および純度をSDS−PAGEおよびCoomasie Plus Protein染色(Pierce, IL)で分析した(図15および16参照)。同様の方式で全タンパク質を精製したが、1つ例外として:キチンクロマトグラフィー工程におけるEGFPのアルファサブユニットの単離にはトリス−HClバッファーの代わりにPBSバッファーを使用した。これらの実施例では、5’および3’末端にSH基を有する2つの20nt長の相補性オリゴヌクレオチドはIDT DNA Technologiesから購入した。それらを10mMのDTTを含むバッファーとインキュベートすることでキャップから脱保護し、G25カラムでのゲルろ過により脱塩し、触媒、3mMの硫酸Cuおよび9mMの1,10−フェナントロリンの存在下で等モル量のタンパク質フラグメントと370℃で30分間、遮光してカップリングさせた(Leeら、1994)。カップリング効率はおよそ100%になった(図29参照)。二等分になったEGFPを含むカップリングされたキメラと相補性オリゴヌクレオチドとを等モル量で、透析チューブ内で混合し、50mMのトリス−HCl pH8.5、0.5MのNaCl、5mMのMgCl2および20μMのPEG(6000MW)を含むバッファーに対して透析した。4時間後にHitachi fluorescent spectrophotometer F-2500を使用して蛍光スペクトルを測定した(図30)。
【0240】
適切な抗生物質(クロラムフェニコールおよび/またはストレプトマイシン)を含むLB培地で細胞を培養し、発色性基質ニトロセフィン(nitrocefin)の存在下で0.2mMのIPTGにより誘導する。陰性対照はアプタマー配列を発現せず、崩壊したアプタマー配列およびアプタマーへの結合に必須な成分の1つを持たないタンパク質融合物を発現する。無細胞上清の490nmでの吸光度はNanoDrop ND-1000分光光度計を使用して測定する。
【0241】
フローサイトメトリー。488nmのアルゴン励起レーザーおよび515〜545nm発光フィルター(FL1)を使用したBecton-Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターで蛍光測定値を得た。アッセイに先立って1XPBSで細胞を1度洗浄した。細胞が100,000個回収されるまで測定を行った。
【0242】
蛍光顕微鏡、画像化およびデータ分析。培養した細菌細胞を1XPBS中で、カバーガラスと0.8%アガロースの薄い平板との間に固定化した。落射蛍光システムX-Cite 120を備えたNikon Eclipse 80i倒立顕微鏡を用いて室温で顕微鏡検査を行った。100倍率の対物レンズを備えたデジタルB&Wカメラ(12ビット;20mHz)を使用して、IPLab v. 3.7ソフトウェア(Scanalytics, Inc)で制御し、150〜300msの露光時間で撮影した。ND4フィルターを使用し、細胞の光損傷を低減した。ImageJ 1.36Bソフトウエア(Wayne Rasband, NIH)を使用し、画像処理を行った。顕微鏡撮影により得た蛍光像をJPEGフォーマットのImageJに読み取り、8ビット型に変換した。像ごとに閾値を手動で調整した。閾値の上限は最大観察値に自動で設定し、閾値の下限は、被写体として同定したバックグラウンド中では画素が見られないところに実験的に設定した。総細胞蛍光度を得るため、オプションで「Analyze Particles」を選択した。結果は、同定された被写体の画素面積、平均、最小および最大グレースケールとして表した。細胞の総蛍光度は、(グレースケール/画素)の平均から最小値を差し引いた値に(画素の)面積を乗じた積を合計して得た。この計算法はバックグラウンドを差し引いたものである。単一細胞における総蛍光変化の動態は今回、類似した方法で、長方形のセグメントツールを対象細胞に適用することで算出した。細胞に沿って蛍光分布を定量するため、細菌細胞の長軸に沿った蛍光プロファイルを測定し、ピーク表面値をMicrosoft Excellで算出した。各細胞を3から4回測定し、結果の平均値を求めた。各細胞の周囲にあるバックグラウンド蛍光を同様に定量し、蛍光プロファイルから差し引いた。
【0243】
蛍光測定および細胞の画像化:総細胞蛍光度はBecton-Dickinson蛍光活性化セルソーター(488nmの励起アルゴンレーザーを用いたFACSCalibur)で測定しExcelソフトウエアを使用して分析する。蛍光と微分干渉コントラスト(DIC)間の自動切換えを備えた共焦点顕微鏡システムを用いて細胞を画像化する。x150の拡大生検像を、冷却したスロースキャンCCD画像装置(C4880; Hamamatsu Photonics, Bridgewater, NJ)に直接送る。コンピューター制御(MetaMorph2.5ソフトウエア;Universal Imaging Corp., West Chester, PA)の顕微鏡を設置し、1μm間隔の軸段階での蛍光像、および中心蛍光像に対応する単一DIC像を取得するプロトコールを実行する。EGFPを監視するため、励起線が488nmであるアルゴンレーザーを使用し、発光ウインドウを500〜540nm間に設定する。いくつかの時点での合成画像を作製するため、Metamorphソフトウエアパッケージ(Universal Imaging Corporation)の3D再構成機構を使用する。RNAの速度は、1〜2分ごとに、あるいは必要に応じてそれ以下で撮像し、蛍光RNAのスポットを1つ1つ追っていくことで測定する。
【0244】
実競合PCRデザイン、増幅および伸長。細胞培養から得た総RNA試料を、総量20μL中、0.5μgの無作為のヘキサヌクレオチドおよびAMV逆転写酵素(Promega)で42℃1時間、逆転写した。プライマーおよび競合体を、Sequenom's Assay Designerソフトウエアを使用してデザインし、Integrated DNA Technology(Coralville, IA)により得た。100nMのPCRプライマー、多様な濃度の競合体、2.75mMのMgCl2および200μMのdNTPで、5μL中、0.1UのHotStar Taq DNAポリメラーゼ(Qiagen)を使用して、以下のPCR条件でcDNAの増幅を行った:95℃で15分間のホットスタート、次に95℃で30秒間を45サイクル、56℃で1分間、その後72℃で1分間、最後に72℃を7分間維持する。PCR増幅後、増幅サイクルでの未使用のdNTPを不活化する0.04Uのエビアルカリホスファターゼ、SAP(Sequenom)で生成物を37℃で20分間処理し、次いで85℃で5分間、熱不活性化を行った。伸長サイクルでは、特定のジデオキシヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチドを各反応に各塩基50μM含有している終止混合物を含む総反応物9μLに、1.2μMの最終濃度の伸長プライマーおよび0.6UのThermoSequenase(Sequenom)を添加した。伸長条件では、94℃を2分間維持すること、ならびに以下を75サイクル行うことが含まれる:94℃を5秒間、52度を5秒間および72℃を5秒間。
【0245】
MALDI−TOF MSおよび定量分析。MALDI−TOF MS分析に先だって、反応から得た塩を、SpectroCLEAN樹脂および16μLの水を使用して除去した。SpectroPOINT nanodispenser(Sequenom)を使用して約10nLの最終生成物を384プレート形式のMALDI-TOF MS SpectroCHIPに懸濁することによって、MassARRAYシステム(Sequenom)を用いてASV分析を行った。デフォルト値に設定したTITAN(Elvidgeら、2005)ソフトウエアを使用して質量分析データを分析した。
【0246】
培地:酵母野生型細胞をYDP(2%のグルコース、1%の酵母エキス、2%のペプトン)中で培養する。プラスミドで形質転換した細胞を、トリプトファン、ウラシルまたはロイシンを含有していない選択的合成ドロップアウト培地(0.67%の酵母窒素塩基、2%のグルコース)上で培養する。本試験で使用する株はYPH500の誘導体である(MATα、ura3-52、lys2-801amber、ade2-101ochre trp1-Δ63、his3-Δ200、leu2-Δ1)(Johnsson & Varshavsky, 1994)。
【0247】
酵母(真核生物)における共役検出体−核酸結合タンパク質の発現。酵母中でキメラタンパク質EGFP(A)-eIF4A(F1)およびEGFP(B)−eIF4A(F2)を発現するのに使用するプラスミドは、N末端でHAまたはmycエピトープに融合したタンパク質を発現するために修飾された発現ベクターpDB20(Beckerら、1991)の誘導体である。このことは強力なADH1プロモーターからの構成タンパク質の発現、およびウエスタンブロットによる遺伝子発現の分析を可能にする。遺伝子(第4のジップコードの後方)の3’末端に位置する64nt長のアプタマータグを有するASH1(EGFPの場所にある)の全メッセージを発現するため、プラスミドpRS4D1(Blakeら、2003)を修飾する。このプラスミドを株YPH500のゲノムに組み込むと、ガラクトースおよび無水テトラサイクリンを培地に添加することでタグ化ASH1遺伝子の発現が調節可能となる。このようにして、本発明者らは、ASH1の3’局在化配列を有するレポーター転写産物と対照的な全ASH1メッセージの局在化を追跡する(Bertrandら、1998;ならびにBreachおよびBloom、2001)。このことはRNA局在化のメカニズムに新たな見識をもたらす可能性がある。
【0248】
酵母細胞をザイモラーゼで処理し、その後DMEM中、2μMのCCF2/AMの存在下で、3x105細胞/mlの濃度で1時間、インキュベートする。細胞をPBSバッファーで洗浄し、励起を405nmおよび440〜450nmの発光に設定したフィルターを備える蛍光顕微鏡Nikon Eclipse 80iを使用して確認可能にする。細胞蛍光も蛍光活性化セルソーター(407nmで励起するレーザーを備えるFACSaria、Becton-Dickinson)で測定する。
【0249】
インビトロゲルシフトアッセイ。インビトロゲルシフトアッセイを行うため、表1に載せられたカスタム合成されたペプチドおよびRNAアプタマーを購入した。最初にRNAをバッファー(50mMのpH8.0 トリス−HCl、50mMのKCl)中、95℃で加熱することで変性させ、その後室温まで徐々に冷却しRNAを復元した。復元したRNAとペプチドを一般的なバッファー(50mMのトリス−HCl、pH8.0、50mMのKCl)に、30℃で15分間混合した。ペプチド−RNAアプタマー複合体を15%TBEゲルを用いたゲル電気泳動により分析した。RNAアプタマーおよびペプチド−RNAアプタマー複合体を臭化エチジウムで染色した。
【0250】
実施例らは、本発明の作製法および使用法の完全な開示および記述を当業者に提供するために提案されており、発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定することを目的としたものではなく、本発明に行われ得る実験および実施例のみを説明することを目的としたものでもない。本開示の観点から、多数の修飾および変化が、本発明の対象となる範囲から逸脱せずに実証される特定の実施態様および実施例中で実施可能であることは当業者に賞賛されることとなろう。このような修飾のすべては添付の請求項の範囲内に包含されることを目的としており、方法がRNAのインビボ可視化のための多数の系に適用可能であることは理解されている。
【0251】
参考文献
本明細書に引用され、出願を通過した参考文献は全体が参照により本明細書に援用される。
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1A】サッカロミセス・セルビシア(Saccharomyces cervisiae)での遺伝子発現に対するアプタマーの効果を研究するための転写系である(Blakeら、2003)。
【図1B】サッカロミセス・セルビシア(Saccharomyces cervisiae)での遺伝子発現に対するアプタマーの効果を研究するための転写系である(Blakeら、2003)。
【図2】マーカー遺伝子の3’末端におけるアプタマーの挿入は酵母での遺伝子発現に影響を及ぼさない。アプタマータグをEGFPの3’末端に挿入した(プラスミドを説明した図1を参照)。培養物を、0.2%のガラクトースおよび40ng/mlのATc存在下で対数増殖期まで培養した。番号1〜4は誘導性構築物の4つの異なる染色体組み込みに対応している。各培養物につき50,000個の細胞をFACSによりアッセイした。
【図3】本研究で使用したEGFPおよびeIF4Aのフラグメントを含むタンパク質融合の概要である。真核生物開始因子を2つのドメインに分割し、各ドメインをEGFPの2つのフラグメントに融合し、EGFP(A)−eIF4A(F1)およびEGFP(B)−eIF4A(F1)を生成した。数字は各フラグメントに含まれたアミノ酸の範囲を示している。(NはN末端;CはC末端)。
【図4】アプタマータグのない細菌細胞中での2つのキメラタンパク質の発現は蛍光を再構成しない。EGFP(A)−eIF4A(F1)およびEGFP(B)−eIF4A(F1)はBL21(DE3)細胞中で共発現した。培養物は1mMのIPTGで37℃で3時間誘導し、複合体形成を蛍光フローサイトメトリーで監視した。全長EGFPを発現するBL21(DE3)細胞を誘導の陽性対照(bEGFP)として使用し、A−F1およびB−F1の発現を陰性対照とした。
【図5A】2つの近接したアプタマータグおよび個々に近接アプタマーと相互作用する2つのペプチドによるインビボでのタンパク質相補対形成の図である。分割されたマーカータンパク質を灰色で表し、RNA結合ペプチド(プローブタンパク質)をオレンジ色で表している。(図5B)3つのアプタマーは、それぞれHIV Tatタンパク質(配列番号:2);HIV revペプチド(配列番号:1)およびHTLV Rexペプチド(配列番号:3)のCQペプチドに対するインビトロでの選択により見出した(Kdおよび参考文献に関しては表1を参照)。これら、または類似の構造は代替的なデザインにおけるRNAタグとして本発明者らのプロジェクトで使用可能である(タンパク質分割アプローチと対照的に)。
【図5B】2つの近接したアプタマータグおよび個々に近接アプタマーと相互作用する2つのペプチドによるインビボでのタンパク質相補対形成の図である。分割されたマーカータンパク質を灰色で表し、RNA結合ペプチド(プローブタンパク質)をオレンジ色で表している。(図5B)3つのアプタマーは、それぞれHIV Tatタンパク質(配列番号:2);HIV revペプチド(配列番号:1)およびHTLV Rexペプチド(配列番号:3)のCQペプチドに対するインビトロでの選択により見出した(Kdおよび参考文献に関しては表1を参照)。これら、または類似の構造は代替的なデザインにおけるRNAタグとして本発明者らのプロジェクトで使用可能である(タンパク質分割アプローチと対照的に)。
【図6】インビボRNA研究に関する核酸の相互作用に支持されたタンパク質相補性アッセイの概要である。酵素活性または蛍光発生特性を有するタンパク質を2つの不活性部分に分割した(アルファおよびベータサブユニットとする)。これらの部分は他のタンパク質を有するキメラとしてインビボで発現し、RNA結合ドメインを有する。理想的なRNA結合タンパク質は2つの部分から成り、単独では不活性であるが共同で活性的である。RNA結合タンパク質により認識可能なモチーフを含むRNAの存在下で、マーカータンパク質の活性が回復する。タンパク質が酵素である場合、シグナルが増幅する。タンパク質が蛍光を発する場合、シグナルは増幅しないがバックグラウンドも生じない。というのも蛍光は標的RNAの存在に完全に依存しているからである。
【図7】インビボRNA検出の図である。標的RNAをインビボで合成し、あるいは細胞へ導入する。2つのタンパク質キメラをインビボで合成し、または細胞へトランスフェクトする。各キメラは、標的RNA内の特別な二次構造(またはモチーフ)に特異的に結合するマーカータンパク質およびドメインの一部を含む。タグを有し、RNA結合タンパク質に特異的に認識される標的RNAの存在下では、タンパク質マーカーが集まり、その活性(蛍光または酵素活性)により検出される。
【図8】RNA発現がインビボでリアルタイムに分析可能となる本発明の一実施態様の図である。対象となる遺伝子およびRNA結合部位をプラスミドにコードし、安定的に組み込まれた本発明のレポーター構築物を有する細胞へトランスフェクトする。遺伝子(およびRNA結合部位)が発現する場合、レポーター構築物が活性化する。
【図9A】分割したEGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。(a)分割したeIF4Aおよび分割したEGFPのフラグメントをそれぞれ含む2つのタンパク質融合物が発現しても蛍光シグナルは現れない。(b)全長EGFPが発現すると大腸菌細胞が一様に蛍光性となる。(c)2つのタンパク質融合物およびアプタマーを有するRNA転写産物が共発現すると細胞極に局在化しやすい蛍光シグナルが現れる。1段目:大腸菌で発現した分子構築物。2段目:相補性複合体の成分を発現するプラスミド。3段目:FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布;黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。最下段:相補複合体の対応する成分を発現する大腸菌細胞の蛍光顕微鏡写真。
【図9B】分割したEGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。(a)分割したeIF4Aおよび分割したEGFPのフラグメントをそれぞれ含む2つのタンパク質融合物が発現しても蛍光シグナルは現れない。(b)全長EGFPが発現すると大腸菌細胞が一様に蛍光性となる。(c)2つのタンパク質融合物およびアプタマーを有するRNA転写産物が共発現すると細胞極に局在化しやすい蛍光シグナルが現れる。1段目:大腸菌で発現した分子構築物。2段目:相補性複合体の成分を発現するプラスミド。3段目:FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布;黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。最下段:相補複合体の対応する成分を発現する大腸菌細胞の蛍光顕微鏡写真。
【図9C】分割したEGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。(a)分割したeIF4Aおよび分割したEGFPのフラグメントをそれぞれ含む2つのタンパク質融合物が発現しても蛍光シグナルは現れない。(b)全長EGFPが発現すると大腸菌細胞が一様に蛍光性となる。(c)2つのタンパク質融合物およびアプタマーを有するRNA転写産物が共発現すると細胞極に局在化しやすい蛍光シグナルが現れる。1段目:大腸菌で発現した分子構築物。2段目:相補性複合体の成分を発現するプラスミド。3段目:FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布;黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。最下段:相補複合体の対応する成分を発現する大腸菌細胞の蛍光顕微鏡写真。
【図10】単一バクテリア内転写の動態である。(a)RNAアプタマー−eIF4A相補複合体を発現する大腸菌細胞の30分間隔の経時的蛍光顕微鏡写真。実験中、位相差顕微鏡写真に変化は見られなかった。
【図11A】生体細胞中のRNA検出により促進した蛍光の動態である。(b)異なる単一細胞における蛍光変化の動態(c)当技術分野の全細胞の総蛍光変化の動態。(d)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図11B】生体細胞中のRNA検出により促進した蛍光の動態である。(b)異なる単一細胞における蛍光変化の動態(c)当技術分野の全細胞の総蛍光変化の動態。(d)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図11C】生体細胞中のRNA検出により促進した蛍光の動態である。(b)異なる単一細胞における蛍光変化の動態(c)当技術分野の全細胞の総蛍光変化の動態。(d)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図12】アプタマー配列を持たないRNAを発現する細胞は、FACSによって得られたlacZ転写産物の存在下で相補複合体のタンパク質成分を発現する細胞の高蛍光性の蛍光分布を示さない。黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。比較として、アプタマー配列および相補タンパク質を含むRNAを発現する細胞の蛍光分布を青色で表す。
【図13A】高コピーベクター(〜100コピー)からアプタマー含有標的RNAを発現する細胞は蛍光性が高い。(a)タンパク質融合物およびアプタマー配列を含むRNA転写産物を発現するプラスミドの図。(b)FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布。黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。比較として、低コピー数(〜40)プラスミドから発現したアプタマーを有する細胞の蛍光分布を青色で表す。
【図13B】高コピーベクター(〜100コピー)からアプタマー含有標的RNAを発現する細胞は蛍光性が高い。(a)タンパク質融合物およびアプタマー配列を含むRNA転写産物を発現するプラスミドの図。(b)FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布。黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。比較として、低コピー数(〜40)プラスミドから発現したアプタマーを有する細胞の蛍光分布を青色で表す。
【図14A】全長EGFPを発現する細胞(a)および分割したEGFPを含む再構成された核タンパク質複合体(b)の蛍光スペクトルは異なる。細胞懸濁液を希釈して光学密度を0.5(CD600=0.5)にし、F−2500蛍光光度計(Hitachi)を使用して蛍光性を記録した。同一の光学密度である非誘導細胞を光散乱の対照として使用した。
【図14B】全長EGFPを発現する細胞(a)および分割したEGFPを含む再構成された核タンパク質複合体(b)の蛍光スペクトルは異なる。細胞懸濁液を希釈して光学密度を0.5(CD600=0.5)にし、F−2500蛍光光度計(Hitachi)を使用して蛍光性を記録した。同一の光学密度である非誘導細胞を光散乱の対照として使用した。
【図15A】新たに分割した細胞は蛍光性を示さない。(a)指示時点で得られた位相差画像。(b)対応する蛍光像。
【図15B】新たに分割した細胞は蛍光性を示さない。(a)指示時点で得られた位相差画像。(b)対応する蛍光像。
【図16】二成分ペプチド−RNAアプタマー相互作用に基づく蛍光タンパク質相補性のデザイン。EGFPの2つのフラグメントであるαおよびβを、2つのウイルスペプチド、HIV−1RexペプチドおよびバクテリオファージλNペプチドと融合させた。2つの対応するアプタマーを持つRNA転写産物の存在下で、2つのペプチドは同族アプタマーと相互に作用し、分割したEGFPの2つのフラグメントを1つにする。EGFPが再集合すると、蛍光性が増強する。
【図17A】二成分アプタマー/ペプチド相互作用に基づく分割EGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。バックグラウンドからシグナルを識別するには低濃度(0.01mM)のIPTGで可能である。A、1.00mMのIPTGに誘導された細胞の蛍光分布。B、IPTG濃度の減少によって誘導された細胞の蛍光分布。
【図17B】二成分アプタマー/ペプチド相互作用に基づく分割EGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。バックグラウンドからシグナルを識別するには低濃度(0.01mM)のIPTGで可能である。A、1.00mMのIPTGに誘導された細胞の蛍光分布。B、IPTG濃度の減少によって誘導された細胞の蛍光分布。
【図18】蛍光シグナルが様々に局在化した大腸菌細胞である。
【図19A】RNAの局在化および濃度の動態は単一細菌内で変化する。(a)相補複合体を発現する大腸菌細胞の30分間隔の経時的蛍光顕微鏡写真。実験期間中、位相差顕微鏡写真に変化は見られなかった。(b)2つの単一細胞で測定した総蛍光変化。(c)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図19B】RNAの局在化および濃度の動態は単一細菌内で変化する。(a)相補複合体を発現する大腸菌細胞の30分間隔の経時的蛍光顕微鏡写真。実験期間中、位相差顕微鏡写真に変化は見られなかった。(b)2つの単一細胞で測定した総蛍光変化。(c)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図20A】DNA二重鎖形成に支持された機能的EGFPの再集合。20A:実験の概要。CおよびN末端でCys残基を有するEGFPの精製α−およびβ−フラグメントをそれぞれN−[6−(ビオチンアミド)ヘキシル]−3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド(HPDP-biotin, Pierce)でビオチン化し、精製し、等モル量のストレプトアビジンとともにインキュベートした。その後これらの複合体を、等モル量の2つの相補性21ntの長いオリゴヌクレオチドとともに別々にインキュベートした。各工程における複合体収率をゲルシフトアッセイで確認し、およそ100%であることが分かった。その後2つのタンパク質−オリゴヌクレオチドキメラを等モル濃度で混合した。1B:元のEGFP(最大)および21bpのDNA二重鎖が加えられた再集合したEGFP(最低)の480nm励起での蛍光放射スペクトル。蛍光スペクトルはリン酸Naバッファー、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA中で測定した。
【図20B】DNA二重鎖形成に支持された機能的EGFPの再集合。20A:実験の概要。CおよびN末端でCys残基を有するEGFPの精製α−およびβ−フラグメントをそれぞれN−[6−(ビオチンアミド)ヘキシル]−3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド(HPDP-biotin, Pierce)でビオチン化し、精製し、等モル量のストレプトアビジンとともにインキュベートした。その後これらの複合体を、等モル量の2つの相補性21ntの長いオリゴヌクレオチドとともに別々にインキュベートした。各工程における複合体収率をゲルシフトアッセイで確認し、およそ100%であることが分かった。その後2つのタンパク質−オリゴヌクレオチドキメラを等モル濃度で混合した。1B:元のEGFP(最大)および21bpのDNA二重鎖が加えられた再集合したEGFP(最低)の480nm励起での蛍光放射スペクトル。蛍光スペクトルはリン酸Naバッファー、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA中で測定した。
【図21】元の、および再構成EGFPの蛍光に対するMg2+イオンの影響は異なる。
【図22A】図22A:EGFPのα−およびβ−フラグメントと、加えられた相補性の21nt長のオリゴヌクレオチドとを混合すると、蛍光の高速反応速度が上昇する。図22B:全工程のt1/2でのS65Tにおける発色団形成の動態経路(Zimmer, 2002より)。
【図22B】図22A:EGFPのα−およびβ−フラグメントと、加えられた相補性の21nt長のオリゴヌクレオチドとを混合すると、蛍光の高速反応速度が上昇する。図22B:全工程のt1/2でのS65Tにおける発色団形成の動態経路(Zimmer, 2002より)。
【図23A】EGFPの折り畳みα−フラグメントは事前形成された発色団を含んでよい。図23A:離散分子力学(DMD)シミュレーションから得たα−フラグメントの10個の配列された典型的折り畳み構造の骨格表示(Dokholyan、未発表)。発色団形成アミノ酸を青色で表す。残りの分子と接触する数がわずかであるため、フラグメントのN末端の大部分およびその他のフラグメントの非常に柔軟なC末端部分を密封することを留意されたい。図23B:折り畳みα−ドメインおよび全長EGFPの配列。全長EGFPを黄色で示し、α−ドメインを青色で示す。発色団形成残基(#62〜70)を赤色で示す。図23C:完全サイズのEGFP中のアミノ酸と比較したEGFPのα−フラグメント中の各残基の二乗平均平方根偏差(RMSD)。RMSD値を、タンパク質が折り畳まれたとき、低温でDMDシミュレーションから算出する。発色団形成アミノ酸は分割領域にあり、それらの偏差は≦2Aである。
【図23B】EGFPの折り畳みα−フラグメントは事前形成された発色団を含んでよい。図23A:離散分子力学(DMD)シミュレーションから得たα−フラグメントの10個の配列された典型的折り畳み構造の骨格表示(Dokholyan、未発表)。発色団形成アミノ酸を青色で表す。残りの分子と接触する数がわずかであるため、フラグメントのN末端の大部分およびその他のフラグメントの非常に柔軟なC末端部分を密封することを留意されたい。図23B:折り畳みα−ドメインおよび全長EGFPの配列。全長EGFPを黄色で示し、α−ドメインを青色で示す。発色団形成残基(#62〜70)を赤色で示す。図23C:完全サイズのEGFP中のアミノ酸と比較したEGFPのα−フラグメント中の各残基の二乗平均平方根偏差(RMSD)。RMSD値を、タンパク質が折り畳まれたとき、低温でDMDシミュレーションから算出する。発色団形成アミノ酸は分割領域にあり、それらの偏差は≦2Aである。
【図23C】EGFPの折り畳みα−フラグメントは事前形成された発色団を含んでよい。図23A:離散分子力学(DMD)シミュレーションから得たα−フラグメントの10個の配列された典型的折り畳み構造の骨格表示(Dokholyan、未発表)。発色団形成アミノ酸を青色で表す。残りの分子と接触する数がわずかであるため、フラグメントのN末端の大部分およびその他のフラグメントの非常に柔軟なC末端部分を密封することを留意されたい。図23B:折り畳みα−ドメインおよび全長EGFPの配列。全長EGFPを黄色で示し、α−ドメインを青色で示す。発色団形成残基(#62〜70)を赤色で示す。図23C:完全サイズのEGFP中のアミノ酸と比較したEGFPのα−フラグメント中の各残基の二乗平均平方根偏差(RMSD)。RMSD値を、タンパク質が折り畳まれたとき、低温でDMDシミュレーションから算出する。発色団形成アミノ酸は分割領域にあり、それらの偏差は≦2Aである。
【図24A】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図24B】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図24C】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図24D】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図25A】部分的なタンパク質分解によりGFPから単離した発色団含有ペプチド(図25A)および化学合成した酸性/中性pHの発色団(図25B)の吸光度(Niwaら、1996)。
【図25B】部分的なタンパク質分解によりGFPから単離した発色団含有ペプチド(図25A)および化学合成した酸性/中性pHの発色団(図25B)の吸光度(Niwaら、1996)。
【図26】タンパク質相補性アッセイを支援するための核酸相互作用の2つの可能性ある配列。
【図27】自己分割インテインを有するキメラとして大腸菌で発現するEGFP(ベータ−シス)のベータ−フラグメントの精製。レーン6のタンパク質はインテインの自己分割後に得られたEGFPの純粋なβ−サブユニットである。
【図28】自己分割インテインを有するキメラとして大腸菌で発現するEGFPのアルファ−フラグメントの精製。レーン5のタンパク質はEGFPの純粋なα−サブユニットである。
【図29】タンパク質はSH含有オリゴヌクレオチドにおよそ100%完全に結合される。非変性PAGEを使用する分析。結合後、タンパク質は負電荷を帯びているオリゴヌクレオチドに連結する。したがって、修飾したタンパク質は非修飾タンパク質より迅速に運動する(レーン1および2および3および4と比較されたい)。オリゴヌクレオチドをビオチン化すれば、ストレプトアビジンとの複合体の形成が可能となる。このような複合体もストレプトアビジン単独より迅速に移動する(レーン6および7と比較されたい)。このデータから、本発明者らは、オリゴヌクレオチドのタンパク質とのカップリング効率がおよそ100%であると結論付ける。
【図30A】結合させたアルファ+Aおよびベータ+Bの蛍光性は活性EGFPの再構成を示し、一方、オリゴヌクレオチドない場合には活性EGFPは存在しない。
【図30B】結合させたアルファ+Aおよびベータ+Bの蛍光性は活性EGFPの再構成を示し、一方、オリゴヌクレオチドない場合には活性EGFPは存在しない。
【図31】タンパク質酵素活性の回復によるタンパク質相補性の図である。この原理は図6に類似している。酵素の再集合はRNAとRNA結合タンパク質との相互作用に依存している。再集合した活性酵素はその基質を分割しており、結果として発色性または蛍光発生生成物が生じる。よってタンパク質の酵素活性によりシグナルは増幅する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は出願日2005年10月27日、米国特許仮出願第60/730,746の35U.S.C.119(e)の恩典を主張するものであり、この内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は核酸のインビボ検出のための組成物および方法を対象としている。より好ましくは、該組成物および方法により、高感度のリアルタイムインビボRNA検出が可能になる。
【0003】
背景
RNAは、遺伝子発現として広義に決められている多段階の工程に積極的に関与しており、この工程は、核内でのRNAの転写およびプロセシング、核からの排出、細胞質経由の輸送ならびにリボソーム内の翻訳を含む。さらに、非コードRNA、増加し続けるクラスのRNA分子は、全細胞の巨大分子、タンパク質、DNAおよびRNA:RNA編集、RNA修飾、DNAメチル化およびタンパク質修飾に関する多様な転写後および翻訳後事象に関与している(Kiss, 2002, Mattick, 2004; Huttenhoferら、2005)。これらの多機能を実行するために、RNAは正常な時間に正常な細胞配置で存在している必要がある。すなわち、細胞内RNA分子の空間的および時間的局在化が近年、細胞生物学の重要なメカニズムとなっている。
【0004】
RNAの局在化はタンパク質合成を調節するだけでなく、モルフォゲンの濃度勾配をつくり、細胞系統および細胞小器官の形成を決定する(概説は、Klocら、2002を参照)。RNAが適切に機能しなければ、多様な病態が現れる可能性がある。RNAの動的かつ不安定な性質、ならびにその運動および局在化に関連した多機能の重要な役割によって、関心と課題の双方が生じた。
【0005】
インビボにおけるRNA局在化の分野に現在直面している問題点の一例として、核内poly(A)+−mRNAの拡散係数を評価する適切な方法が存在しないことが挙げられる。値には2桁分の差異、すなわち0.03〜0.6μ2/secおよび9μ2/secと差異があることが報告されている(Politzら、1998, P olitzら、1999, Molenaarら、2004)。したがって、インビボでの多様なRNAの機能および挙動を一層よく理解するため、生体細胞内でのそれらRNAの局在化および運動を研究する新規の方法が明らかに至急必要とされている。
【0006】
細胞内RNAを視覚化するために、RNAを選択的に標識化する必要がある。インビボでのRNA標識化には様々な戦略が提示され、使用されてきた(概説は、Pedersonら、2001を参照)。それらの大多数が様々なRNA特異性ハイブリダイゼーションプローブおよび核または細胞質へのプローブ送達用のマイクロインジェクション法またはリポフェクション法を使用している。他の可能性として、予めRNAを標識化し、細胞内へそれを導入する方法が挙げられる。細菌細胞内のRNAハイブリダイゼーションに対してKoolおよび共同研究者らは自己連結消光プローブを使用することに成功した(Sando & Kool, 2002)。蛍光2’−O−メチル−RNAプローブは非メチル化オリゴヌクレオチドより安定していることが分かっており、いくつかのグループが使用した(Carmo-Fonsecaら、1999; Molenaarら、2001; Molenaarら、2004)。分子ビーコンおよびケージ化フルオレセイン標識化アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNAハイブリダイズプローブの改良型を示す(概説は、Politz, 1999, Pederson, 2001を参照)。分子ビーコンおよびケージ化プローブの利点は、それらがそれぞれ標的にハイブリダイズしない限り、または蛍光しない限り、シグナルを生成しないことにあり;これによりバックグラウンドは低下し、続いて感度が向上する(Sokolら、1998; Perlette & Tan, 2001; Matsuo, 1998; Tsujiら、2001; Sei-Iidaら、2000)。
【0007】
このハイブリダイゼーション戦略の最も深刻な制限は、細胞内RNAの低濃度に起因するハイブリダイゼーションの低感度である。ほとんどの場合、非常に豊富にあるRNA種のみが検出可能である(β−アクチンmRNA、c−fos mRNA、塩基性線維芽細胞成長因子RNAまたは総ポリ(A)−RNA)。インビボRNA検出用にオリゴヌクレオチドプローブを使用する際の他の障害として、核内におけるその蓄積が速いことが挙げられる(Tsujiら、2000; Molenaarら、2001)。
【0008】
インビボでのRNAを研究する他の戦略では、RNA結合タンパク質と蛍光タンパク質間の融合、およびRNA−標的内のタンパク質結合タグの誘導を使用する。2つの群で、MS2コートタンパク質および対応するRNAモチーフとの相互作用に基づく系が使用され(Bertrandら、1998; Beachら、1999; Beach & Bloom, 2001)、他の群ではタンパク質スプライシングU1Aに基づく系が使用された(Takizawa & Vale, 2000)。このアプローチにより、酵母細胞(Bertrandら、1998; Beachら、1999; Corral-Debrinskiら、2000; Beach & Bloom, 2001)およびニューロン(Rookら、2000)における特定のRNAのリアルタイム運動の監視が可能となることが期待される。この技術は蛍光タンパク質と細胞内RNA研究を結びつける最初の試みである。しかし、実質的な制限として、RNA結合タンパク質に融合した完全に機能的な蛍光タンパク質のバックグラウンドシグナルが上昇すると実際の監視は困難になる。
【0009】
さらに、インビボRNA分析は、RNA特異性蛍光プローブが細胞へと運ばれるか(例えば分子指標)あるいは細胞内で合成される(例えば、RNA結合タンパク質、例えばMS2コートタンパク質に融合した高感度緑色蛍光タンパク質、EGFP)蛍光検出法に大きく依存している[概説は、(14,15)を参照]。しかし、これらの方法には深刻な難点および制限がある。事前に標識化したオリゴヌクレオチド検出プローブは修飾してヌクレアーゼ耐性にする必要があり、侵襲的技術を用いて細胞内へ運ぶ必要もある(16)。RNA結合タンパク質を使用する第2アプローチは、RNA結合タンパク質認識タンパク質配列が連携した複数のコピー(96以下)で対象となるRNAを修飾することを含み、一方RNA結合タンパク質は完全サイズの蛍光タンパク質に融合する。結果として、融合タンパク質の大型多量体複合体は対象となるRNAに集まり、細胞内でRNAの正常な運動および移動を害する可能性がある。細菌内では、凝集する傾向がある全長蛍光タンパク質によりバックグラウンド蛍光も上昇し、その凝集体はRNA−タンパク質複合体と混同され得る。真核生物では、異なる区画にある蛍光タンパク質とRNPの複合体を分離することが役立つ場合もある(21)が、一般的には、全長蛍光タンパク質に起因する蛍光バックグラウンドの上昇により、このアプローチの感度が制限される。
【0010】
ゆえに、RNA標識化の現行法はすべて、非特異性バックグラウンドの上昇およびシグナル増幅の欠如に悩まされており;したがって、その方法のほとんどは豊富にあるRNA種の検出により制限されている。また、リアルタイムにRNAを検出することが非常に必要となる。
【0011】
発明の概要
本発明の発明者らは、リアルタイムのタンパク質相補法を使用してインビボでのRNA分子などの核酸分子を検出する方法を開示した。特に、本発明は核酸、例えばRNAを高シグナル:バックグラウンド比率でインビボ検出する方法を提供しており、これにより高感度でRNAが検出可能となる。さらに、本発明の方法は非侵襲的方法で生体細胞内のDNAおよびRNAを検出するための方法および成分を提供する。より具体的には、本発明の組成物は、2つ以上のポリペプチドフラグメントに分割された検出タンパク質を含む検出分子を含み、そのポリペプチドフラグメントは、個々に機能するか、あるいは協同して単一部位に結合する核酸結合モチーフに付着している。レポーター核酸結合配列(例えばアプタマー)を含むように改変されているRNAまたはDNAなどの標的核酸の存在下でのみ、検出ポリペプチドタンパク質フラグメントは機能的活性検出タンパク質へ再会合し、これによりレポーター核酸配列上で核酸結合モチーフがその同族結合部位(単数または複数)と相互に作用するようになる。この相互作用は検出タンパク質のフラグメントを集合させ、シグナルが即時に検出可能となる。検出分子のポリペプチド、特に検出タンパク質成分は活性的な立体配置にあるが単独では不活性であり、しかし再構成すると、それらは即時に活性タンパク質を形成し、それにより標的核酸存在下、リアルタイムにシグナルが生成される。一実施態様では、標的核酸はRNAである。また、一実施態様は、検出分子の核酸結合モチーフ成分としてRNA結合タンパク質またはペプチドを包含する。
【0012】
本明細書に記述するとおり、「検出構築物」は2つ以上の活性化ポリペプチドフラグメントへと分割された上述の検出タンパク質(蛍光または酵素タンパク質のいずれか)を含む検出分子をコードする核酸配列を指し、各フラグメントは核酸結合モチーフに結合している。ポリペプチドフラグメントは、結合した核酸結合モチーフが標的核酸に結合することで集合した場合、完全活性タンパク質を再構成し、即時に検出可能である。
【0013】
本明細書に記述するとおり、「レポーター構築物」は前述の核酸、例えば対象となる遺伝子をコードするRNAまたはDNA、および標的核酸結合配列、例えばアプタマーを含むレポーター分子をコードする核酸配列を指す。核酸結合配列は検出構築物の核酸結合モチーフにより認識可能である。核酸結合配列は、核酸、タンパク質、アプタマーまたはアプタマータグであってよい。
【0014】
一実施態様では、検出タンパク質は、例えばEGFPなどの蛍光分子である。本発明の一実施態様では、蛍光レポーターはアルファフラグメント(およそアミノ酸1〜158)およびベータフラグメント(およそアミノ酸159〜239)へと分割されたEGFPである。アルファフラグメントは成熟完全形成発色団を含み、該発色団は単独では蛍光を発することはなく蛍光の前段階にあり、ベータフラグメントと対になったとき即時に蛍光を発する。蛍光の即時性により、当技術分野で現在利用できないリアルタイムインビボRNA検出が可能になる。重要には、アルファおよびベータフラグメントは標的核酸、例えば標的RNAが不在である場合は再会合しない、または蛍光を発しない。
【0015】
他の実施態様では、蛍光タンパク質は緑色蛍光タンパク質(GFP)または高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)である。代替的実施態様では、蛍光タンパク質は黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、高感度シアン蛍光タンパク質(ECFP)または赤色蛍光タンパク質(dsRED)もしくは上記で列挙したタンパク質の任意の他の天然または遺伝子操作蛍光タンパク質である。なおさらなる実施態様では、再構成された蛍光タンパク質は、上記で列挙した蛍光タンパク質と同じもの、またはそのいずれかの組み合わせから得たフラグメントの混合物から成っていてよい。
【0016】
あるいは、検出タンパク質はシグナル増幅を可能にする酵素である。酵素は例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼであってよい。特定の実施態様では、検出酵素はベータ−ラクタマーゼである。
【0017】
本発明の重要な実施態様では、組成物および方法はリアルタイムインビボRNA検出を可能にするレポーターアッセイを提供する。一実施態様では、検出構築物を安定的に発現するために、対象となる細胞を作製する。検出構築物は、標的RNAが不在である場合は検出タンパク質からシグナルを生成せず、よって発光または活性化することもない検出分子を発現する。該細胞は、検出分子の核酸結合モチーフ(単数または複数)に対する結合部位および対象となる遺伝子を含むレポーター分子をコードするレポーター構築物も発現する。該レポーター構築物の発現は誘導可能である。該レポーター分子が細胞内で発現すると、検出分子は標的RNAに結合し、検出タンパク質の再構成および活性タンパク質とシグナルの生成を促進する。このことにより、リアルタイムインビボRNA発現検出が可能になり、この結果を図10〜11および18〜19および実施例9〜11に例示している。
【0018】
代替的な実施態様では、対象となる細胞はレポーター分子を含む2シストロン性核酸配列を発現可能であり、ここでは検出構築物は構造的に発現し、レポーター構築物の発現は対象となるプロモーターに対して動作可能に連結している。関連した実施態様では、(対象となるプロモーターに対して動作可能に連結している)レポーター構築物および検出構築物は分離した核酸配列上にある。プロモーターが特定の刺激により細胞内で活性化する場合、標的核酸配列の結合部位(単数または複数)は有効になり、検出分子の核酸結合タンパク質の結合は検出ポリペプチドフラグメントの会合および即時検出できる活性な検出タンパク質の形成を促進する。この実施態様によって、インビボでプロモ−ター機能をリアルタイムに研究することを可能になる。RNA結合部位を操作し、任意のベースライン検出構築物活性を分析するプロモ−ターを発現するプラスミドをトランスフェクトすることによって、例えば遺伝子の調節はリアルタイムに研究できる。関連した実施態様では、i)1種の化合物または複数の化合物と接触させるか、あるいはii)プロモ−ターの活性を改変する可能性がある多様な条件に供し、その結果、RNAの転写が増加、減少し、または変化が起こらないようになる。検出構築物によって、この改変を直ちに検出する。
【0019】
類似の実施態様では、「tet−on」または「tet−off」システムを本発明の方法で利用してよい。例えば、本発明の検出構築物を安定的に発現するために対象となる細胞を作製してよい。また細胞は、検出分子核酸結合モチーフ)に対する標的結合部位(単数または複数)および対象となる遺伝子の転写を調節可能にするtet−onまたはtet−off調節可能レポーター構築物を安定的に発現する場合もある。例えば、tet−offシステムでは細胞は対象となる遺伝子を即時に発現し、レポーター構築物は活性的であり即時検出可能である。tetに加えて、レポーター構築物(対象となる遺伝子および標的核酸結合部位を含む)の転写が停止し、すでに転写した転写産物のみがリアルタイムに分析可能である。このtet−off例では、レポーター蛍光または活性の減少を検出することで、例えば半減期などのRNAの安定性はインビボでリアルタイムに分析可能である。
【0020】
代替的実施態様では、「tet−on」構築物を使用すると生体細胞中の対象遺伝子が安定的に発現することになり、それにより、システムへのtetの添加によりレポーター構築物の転写が開始する。その後本発明の検出分子はその標的RNAに結合可能となり、即時に検出可能である。この実施態様では、RNA局在化は実験者が決定したとおりにリアルタイムに研究し得る。
【0021】
さらに別の本発明の実施態様では、レポーターアッセイはインビボで生体内にて行う。非限定的であるが、例えば動物、非ヒト動物、マウス、ゼブラフィッシュ、線虫(C. elegans)またはカエルを、検出構築物に結合するとされているRNA結合部位を有する検出構築物および対象遺伝子の両方を発現させるために供与してもよい。生体内の両構築物を発現させれば、1日目の胚から全成体期より試料を得ることで、対象となる転写産物が全成長を通じて分析可能になる。一実施態様では、生体は哺乳動物である。一実施態様では哺乳動物はマウスであり、他の実施態様では生体はトランスジェニック生体、例えばトランスジェニックマウスであるが、これに限定されない。
【0022】
あるいは、本発明の組成物および方法は、インサイチュハイブリダイゼーションに類似したリアルタイムインビトロRNA検出を提供する。このような実施態様では、検出分子の核酸結合モチーフに結合するとされているRNA結合配列を有する対象RNAを含むレポーター構築物を発現する細胞を透過処理し、本発明の検出構築物をその細胞に投与する。対象RNAが発現すると、検出構築物はRNA結合配列に結合し、RNAの局在化および存在量が決定できる。従来のインサイチュハイブリダイゼーション技術より優れたこの系の利点は、低量RNAを検出する能力(酵素レポーターを利用する検出構築物によって達成可能となるシグナル増幅に起因している)および放射活性なしに、迅速に、アッセイを終了させる能力である。検出構築物による迅速な検出が強く望まれる。現在、(例えば放射活性による)インサイチュハイブリダイゼーションを行う従来の方法は、実験が成功するか否か分かる前でも数週間から数ヶ月かかる。また、従来のインサイチュハイブリダイゼーションで使用するRNAプローブは、RNAが容易に分解され、および放射活性を使用するため、調製が困難である。本発明の方法では、放射活性またはRNAプローブは必要ない。検出構築物を、例えば当業者に周知である細菌から簡単に調製する。該アッセイは、インビトロでのタンパク質検出において抗体を使用可能にする免疫組織化学または免疫細胞化学技術に類似している。ここではRNAを検出する。
【0023】
代替的実施態様では、本発明の組成物および方法は核酸、特にインビボのRNAおよびDNAのリアルタイム検出を提供するものであり、RNAおよびタンパク質構築物の両方を、試験管内、例えば体外細胞中で、非限定的例としてエクソビボの細胞中でRNAを検出するように操作する場合の本発明の使用に関している。
【0024】
さらに、本発明の組成物および方法は、インビボでリアルタイムにDNAを検出する実施態様で使用してよい。例えば、本発明の検出構築物は、各々が核酸結合モチーフと会合している少なくとも2つの不活化ポリペプチドフラグメントへと分割された検出(蛍光または酵素)タンパク質を含んでよい。標的核酸、例えばアプタマーの存在により集合したときそのポリペプチドフラグメントは完全に活性な検出タンパク質を形成し、直ちに検出できる。例えば、本発明の方法により、ゲノム内の多様な遺伝子座の複製はリアルタイムに検出できる。検出構築物中の検出タンパク質と会合した核酸結合モチーフはRNAまたはDNAの多様な領域に特異的であり、それらの遺伝子座の複製をリアルタイムでインビボで検出ができる。
【0025】
同様に、本発明の方法および組成物を使用してリアルタイムインビボ染色体検出が可能となる。例えば、検出構築物は、テロメラーゼ結合タンパク質と会合して細胞内で発現する検出タンパク質を含んでよい。このように、テロメラーゼは細胞寿命全体にわたってリアルタイムに検出可能である。本明細書に示した組成物および方法の利点は、2等分に切断し、各半量が検出タンパク質の半量と会合しているテロメラーゼ結合タンパク質を提供することで特異性が上昇することである。両半分のテロメラーゼ結合タンパク質を単結合部位へ配位結合させると、標的認識に先立って検出体の活性は皆無かそれに近いものとなる。
【0026】
他の実施態様では、本発明は本発明の方法、特にインビボRNA検出に適したキットを提供する。一実施態様では、キットは検出構築物および誘導可能なレポーター構築物を含む。一実施態様では、レポーター構築物および検出構築物は分離した核酸分子上にある。他の実施態様では、それらは2シストロン性核酸分子の両側にある。他の実施態様では、レポーター分子は実施者の対象となる遺伝子を添加するために修飾可能であり、他の実施態様では、レポーター分子の発現はtet−onまたはtet−offプロモーターに対して動作可能に連結している。他の異なる実施態様では、標的核酸配列を含むレポーター構築物は実施者により修飾され、実施者の対象となるプロモーターに調節され得る。これらの各実施態様では、キットには、検出分子中の検出タンパク質のために選択された分割ポリペプチドが含まれ、また、検出タンパク質からシグナルを検出するための説明書および試薬も含まれている。いくつかの実施態様では、キットには、試料中の標的核酸の存在または量を捕らえる、および/または検出するのに適した試薬も含まれる。標的核酸の存在および/または量を検出する試薬は、集まったタンパク質に特異的な酵素的活性試薬または抗体を含むことが可能である。抗体は標識化できる。
【0027】
タンパク質相補性と酵素レポーターを組み合わせると、実質的にバックグラウンドが減少しシグナルが増幅する。これによって結果的に、中等量の核酸を分析できるインビボRNA検出技術が与えられる。
【0028】
さらなる実施態様では、本発明はインビボでRNAを検出する手段を含むキットを提供する。
【0029】
本発明の他の態様を以下に開示している。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、検出の感度を高める、バックグラウンドに対する高いシグナル割合で検出を可能にする、生体細胞内のRNAの高速検出のための新規な方法を開示している。本発明は核酸、例えばインビトロおよびインビボでのRNAおよびDNAのリアルタイムの高感度検出用の組成物および方法を含む。特に、本発明は、少なくとも2つのポリペプチドフラグメントに分割された検出タンパク質を含む検出分子を使用する方法を含んでおり、それらのフラグメントは核酸結合モチーフ、例えば個々に機能するか、あるいは共同して単一核酸結合部位と結合してもよいRNA結合モチーフに付けられるものである。検出タンパク質フラグメントの機能的検出タンパク質の再会合は、RNA結合モチーフと核酸上のその同族結合部位(単数または複数)との相互作用の結果として、標的核酸分子の存在下でのみ生じる。この相互作用は検出タンパク質の相補性ポリペプチドフラグメントを集め、シグナル検出を可能にする。
【0031】
本発明はRNAなどの核酸をインビボで確認可能にする革新的方法を提供するものであり、2つ以上のポリペプチドタンパク質フラグメントの活性タンパク質への再会合を意味するタンパク質相補対形成に基づいている。特に、分割したポリペプチドは活性的な立体配置にあり、単独では依然不活性であり、したがってそれらが相補性ポリペプチドフラグメントと会合すると即時に活性検出タンパク質が形成される。この場合、核酸/タンパク質相互作用を付加することで支援される場合のみ、相補性が生じる。一実施態様では、高親和性および高特異性タンパク質/RNAアプタマー相互作用について記述している。アプタマーは標的RNA内で認識タグとして発現し、一方、核酸結合モチーフは、分割した検出タンパク質のフラグメントに融合した2つの不活性フラグメントとして合成される。核酸結合モチーフフラグメントとアプタマーとの相互作用は検出タンパク質フラグメントを集合し、結果として細胞の内部に、再集合検出タンパク質の酵素活性または蛍光が生じる。
【0032】
一実施態様では、本明細書に記述した方法はリアルタイム核酸検出に使用可能である。ある検出分子、核酸結合モチーフに結合した検出タンパク質の1つのポリペプチドフラグメントおよび核酸結合モチーフに結合した検出タンパク質の少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントを含んでいる検出分子をコードする核酸配列を含む検出構築物について記述している。また、アッセイでは、対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含むレポーター分子をコードするレポーター構築物が利用されている。核酸結合配列は検出分子の核酸結合モチーフに認識される。この認識により、検出タンパク質は再構成され、リアルタイムに即時に検出可能となる。検出タンパク質は標的核酸の非存在下では活性せず、よって高感度でバックグラウンドも低レベルである。また、標的核酸配列の存在下での認識において活性が即時に検出可能になるように、検出タンパク質の断片化をデザインする。
【0033】
本発明の一実施態様では、核酸はRNAである。任意のRNAが検出可能であり、mRNAおよびmiRNAを含む群より選択される。あるいは、核酸はDNAである。
【0034】
本発明のアッセイは核酸結合モチーフを説明している。一実施態様では、モチーフは、核酸結合モチーフがポリペプチドフラグメントに分割される方法で検出タンパク質と会合してよく、1つのフラグメントは検出タンパク質の1つのフラグメントに結合し、残りの核酸ポリペプチドフラグメントは検出タンパク質の1つ以上の他のフラグメントに結合する。この実施態様では、モチーフの結合が配位され、各フラグメントは1つの核酸結合配列に結合するために存在しなければならない。
【0035】
代替的な実施態様では、検出タンパク質の1つのポリペプチドフラグメントと会合する核酸結合モチーフは、検出タンパク質の1つ以上の他のフラグメントに結合する他の核酸結合モチーフから独立している全長モチーフであってよい。例えば、核酸結合タンパク質は小規模のマルチドメイン核酸結合タンパク質であってよく、そのため各ドメインは検出タンパク質の1つ以上のフラグメントと会合する。この実施態様では、レポーター分子内の核酸結合モチーフの同族核酸配列(または元の核酸)への結合は独立している。
【0036】
細胞内での構築物の発現
【0037】
本発明の一実施態様では、検出およびレポータ分子はインビボ細胞内で発現する。このことを達成するために、検出およびレポーター分子をコードする核酸配列を、当業者が周知の任意の好適な方法、例えば形質転換またはトランスフェクションで細胞に挿入してよい。一実施態様では、構築物は、例えば単一核酸配列にあってよい。代替的な実施態様では、例えばそれらは2つの構築物にあってよい(1つはレポーター構築物を含み、また1つは検出構築物を含む)。該構築物は、細胞に同時形質転換または共トランスフェクトさせてもよい。この理論に制約されずに、同時形質転換/共トランスフェクトされた構築物は形質転換/トランスフェクション中に再結合することが提案されており、結果的に両構築物が細胞ゲノムDNA内の同じ部位で組み込まれることになる。
【0038】
あるいは、検出およびレポーター構築物は単独で、または組み合わせて細胞内で安定的に発現させてよい。目的の対象遺伝子および優性遺伝子マーカーをコードする発現ベクターで細胞をトランスフェクトした後、高レベルの組み換えタンパク質を産生する安定したクローンを得る。多様な細胞型へ安定的に組み込む方法は当業者に周知である。
【0039】
一実施態様では、核酸は、活性検出タンパク質を形成するために再構成する(検出タンパク質および核酸結合モチーフを含む)分割ポリペプチドフラグメントをコードしてよい。このような一実施態様では、分割ポリペプチドフラグメントは、例えば内部リボソーム侵入部位(IRES)で連結してよい。IRESは、転写産物にリボソーム侵入部位(単数または複数)を添加することにより対応する分割生成物に翻訳され得る2つ以上の分離した遺伝子から単一転写産物を生成することを可能にする。代替的な実施態様では、分割ポリペプチドフラグメントおよび/または検出タンパク質および/または核酸結合モチーフは、1つの核酸にコードされてよく、各核酸配列間の分割可能部位は目的のポリペプチドの分離を可能にする。非限定的な例として、核酸は、少なくとも2つの核酸結合モチーフを含む活性検出たんぱく質をコードする配列を含むことが可能で、ここでは、検出タンパク質をコードする配列は、核酸結合モチーフを個々に含む検出タンパク質の分割ポリペプチドフラグメントの生成を可能にする分割可能部位を含む。このような実施態様では、当業者に周知の任意の手段で、分割可能部位により分割ポリペプチドフラグメントの分割が可能になる。その手段は、例えば酵素切断、化学切断、熱切断、酸切断、放射線切断、光切断等が挙げられるが、これらに限定されない。また、検出構築物およびレポーター構築物も単一構築物にコードされてよく、個々の成分はIRESに連結されている。
【0040】
細胞内に核酸配列を誘導する方法は当業者に周知であり、例えば検出およびレポーター構築物が含まれ、その検出およびレポーター構築物をベクター、ウイルスベクターおよび非ウイルス手段を含む複数の手段により細胞内に誘導してもよい。非ウイルス手段には、融合、エレクトロポレーション、微粒子銃、トランスフェクション、リポフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクション法、加圧侵入、裸DNA等、または当業者に周知の任意の他の手段が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「プラスミド」と同じ意味で使用する用語「ベクター」は、それが連結している他の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。自身が操作可能に連結している遺伝子および/または核酸配列の発現を方向付けることが可能なベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。概して、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターは、ベクター形態では染色体に結合しない環状二重鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態であることが多い。他の発現ベクターは本発明の異なる実施態様で使用可能であり、非限定的であるが、例えばプラスミド、エピソーム、バクテリオファージまたはウイルスベクターが挙げられ、該ベクターは宿主ゲノムに組み入れてもよいし、あるいは特定の細胞中で自己複製してもよい。同等の機能を示す当業者が周知の発現ベクターの他の形態も使用可能である。発現ベクターには、DNAをコードする、安定的または一過性の発現のための発現ベクターが含まれる。
【0042】
一実施態様では、検出およびレポーター構築物は、構築物が特定の遺伝子座で組み込まれることが必要である相同組換えにより誘導してよい。例えば、本発明の核酸構築物により、同じ遺伝子座または他の場所で内在性遺伝子を欠失および/または置換させることが可能である。相同組換えのために、限定するものではないがΩまたはO−ベクターなどの特定のベクターに核酸をクローン化する。例えば、ThomasおよびCapecchi, cell (1987), 51; 503-512, Mansourら、nature, (1988) 336; 348-352; およびJoynerら、nature (1989) 338; 153-156を参照されたい。
【0043】
細菌または酵母の複製起点などの有用な要素を含むベクター、選択可能および/増幅可能マーカー、原核生物または真核生物における発現のためのプロモーター/エンハンサー要素、および哺乳動物発現制御の要素等は核酸構築物を保存するために使用し、トランスフェクションを行うため、当技術分野で周知であり、多くは市販されている。
【0044】
いくつかの実施態様では、ウイルスベクターを使用し、検出構築物および核酸構築物の核酸配列を誘導し、その発現を操作してよい。ウイルスベクターとは、核酸構築物を細胞に運ぶ担体としてのウイルスまたはウイルス関連ベクターの使用を指す。細胞に感染または誘導させるためのレトロウイルスおよびレンチウイルスベクターを含むアデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)または単純ヘルペスウイルス(HSV)等の非複製不完全ウイルゲノムに構築物を組み込み、封入してよい。そのベクターを細胞ゲノムに組み込まなくてもよい。必要に応じて構築物はトランスフェクション用のウイルス配列を含んでよい。あるいは、エピソーム複製が可能なベクター、例えばEPVおよびEBVベクターに構築物を組み込んでよい。
【0045】
核酸結合部分としてポリペプチドを有する検出構築物の分割ポリペプチドフラグメントでは、全分割ポリペプチドフラグメントおよび核酸結合部分分子はポリペプチドタンパク質、リンカーおよび核酸結合部分ポリペプチドなどの単一構築物にコードされることが可能である。この構築物は細胞内で発現させるか、あるいは細胞内に微量注入することが可能である。これらの構築物は対象となる核酸のインビトロ検出にも使用できる。
【0046】
アプタマー
【0047】
アプタマーは比較的短いRNAまたはDNAオリゴヌクレオチドであり、これはリガンドに結合しておりSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)という選択手法を用いてインビトロで単離する(Tuerk & Gold, 1990; Ellington & Szostak, 1990)。選択手法はリガンドの結合で操作するので、アプタマーは高親和性でそのリガンドに結合し、リガンド結合に最適化された二次構造内に折り畳まる(Herman & Patel, 2000)。この点において、アプタマーは、複合化学または生物学的混合物から対応するリガンドに選択的に結合することで抗体に類似している。
【0048】
アプタマーは本発明の方法に特に有用である。例えば、核酸結合モチーフがアプタマー結合配列を含み、レポーター構築物がアプタマーを含むように検出構築物を構成してよい。逆に、検出構築物がアプタマーを含み、レポーター構築物がアプタマー結合配列を含んでもよい。
【0049】
したがって、本発明の一実施態様では、アプタマー機能を実質的に干渉し得る隣接配列の非存在下でアプタマーが発現できるように、アプタマーを含むRNAオリゴヌクレオチドをコードするベクターを使用して細胞内で発現後、アプタマーは機能し得る。このような一実施態様では、このことは2つの自己切断リボザイムに隣接したアプタマーを含むRNAオリゴヌクレオチドで達成される。先行技術の方法と対照的に、米国特許第20050222400号に記載のとおり、オリゴヌクレオチドが発現すると、アプタマーは自己切断リボザイムの切断によって遊離し、遊離したアプタマーは、アプタマー配列の適切な折り畳みを干渉するする可能性が極めて低い自己切断リボザイムのレムナントである短いフランキング配列を有している。いかなる特定のメカニズムにも限定されず、これらの短いフランキング配列はアプタマー機能を実質的に干渉しないと考えられている。
【0050】
いくつかの実施態様でRNAオリゴヌクレオチドはDNAテンプレートからの転写産物であると予測されていることから、RNAオリゴヌクレオチドの長さは転写により生じる任意の長さであり得る。付加的なアプタマー、リボザイム、コード領域、リーダー配列等の他の要素はまた、もしこれらの要素がアプタマーまたは自己切断リボザイムの機能を実質的に干渉しないのであれば、RNAオリゴヌクレオチドの一部である。
【0051】
このような実施態様のアプタマーオリゴヌクレオチドは、現在周知であるか、あるいは今後開発される任意の有用なアプタマーであり得る。アプタマーは細胞内部にある標的に向けてよい。このような標的の1つの型は細胞の成分(すなわち元の構成要素)である。しかし、代替的実施態様では、アプタマーは細胞の操作された成分に向けられている。アプタマー結合に有用に影響され得る任意の細胞成分は、本発明のアプタマーの潜在的な標的であると予測される。このような細胞成分の非限定的な例として、酵素、構造タンパク質イオンチャネルタンパク質、電子輸送タンパク質、リボザイム成分、リポタンパク質および転写因子;プロテオグリカン;糖タンパク質;多糖;核酸;脂質;およびステロイドなどの小分子といったタンパク質が挙げられる。
【0052】
アプタマーを設計および合成する方法ならびにアプタマー結合配列は当業者に周知である。
【0053】
アプタマー−核酸結合タンパク質対
【0054】
アプタマー−タンパク質対のいかなる組み合わせも本発明で使用可能である。例えば一実施態様では、検出分子の核酸結合タンパク質は、RNAスプライシングに関与する転写因子またはタンパク質であり得る。検出分子の例には、レポーター分子の58個のヌクレオチド(nt)のアプタマーに結合するeIF4Aが挙げられる(Oguroら、2003)(実施例1〜8を参照)。他の実施態様では、核酸結合タンパク質とアプタマーの対には、二成分アプタマー−ペプチド対が挙げられ、表1および実施例11で示されている。また、本発明に包含されているアプタマーとタンパク質の対、特にRNA−タンパク質パートナーの他の例として;(i)MS2コートタンパク質−RNAステムループ(Sawata & Taira, 2003; Valegardら、1997);(ii)TAR−TatBIV−1ステムループ(Royら、1990; Comolliら、1998);(iii)転写活性化因子として働くことが分かっているG3/C3ステムループの3リピート(Jarrell & Ptashne, 2003);(iv)アプタマーの3リピート(Yamamotoら、2000);(v)最大Kd=27nMである、58塩基まで削減可能であるeIF4A−87ntの長いアプタマー(Oguroら、2003)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
核酸結合モチーフ
【0056】
核酸結合モチーフは、ポリペプチドなどの他の分子にカップリング可能な任意のポリペプチドまたはタンパク質またはペプチド分子であることが可能であり、近接近している標的核酸と結合可能である。
【0057】
本発明の他の実施態様は、ポリペプチドである核酸結合部分を提供する。ポリペプチドは標的核酸に対する高親和性を有する任意のポリペプチドであり得る。この実施態様では、標的核酸は二重鎖、三重鎖または単鎖DNAまたはRNAであり得る。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、ペプチド、100個未満のアミノ酸または全長タンパク質である。標的核酸に対するポリペプチドの親和性は低ナノモルから高ピコモルの範囲であり得る。ポリペプチドには、天然の、もしくは理論的根拠またはスクリーニングアプローチでデザインされた亜鉛フィンガーを含むポリペプチドが挙げられる。亜鉛フィンガーの例として、Zif2g8、Sp1、Gfi−1のフィンガー5、YY1のフィンガー3、CF2IIのフィンガー4および6ならびにTTKのフィンガー2が挙げられる(PNAS (2000) 97: 1495-1500; J Biol Chem (20010 276 (21): 29466-78; Nucl Acids Res (2001) 29 (24): 4920-9; Nucl Acid Res (2001) 29 (11): 2427-36)。他のポリペプチドには、インビトロ選択で得られ、特定の核酸配列に結合するポリペプチドが挙げられる。このようなアプタマーの例として、血小板由来成長因子(PDGF)(Nat Biotech (2002) 20: 473-77)およびトロンビン(Nature (1992) 355: 564-6が挙げられる。しかし他のポリペプチドはインビトロでのDNAトリプレックスに結合するポリペプチドであり;例えばhnRNP、K、L、E1、A2/B1およびIなどのヘテロ核のリボ核粒子(hnRNP)タンパク質のメンバーが含まれる(Nucl Acids Res (2001) 29 (11): 2427-36)。
【0058】
各分割ポリペプチド核酸モチーフポリペプチドの核酸結合部分は、標的核酸への結合を可能にする任意の分子であり得る。いくつかの実施態様では、核酸結合部分には、核酸、核酸類似体およびポリペプチドが含まれる。一実施態様では、核酸結合部分はオリゴヌクレオチドである。活性化分割ポリペプチドフラグメントの所与の対の核酸結合部分が、同種の分子、例えばオリゴヌクレオチドであることは可能であり、あるいはそれらは異なっており、例えば対のうちの1つの分割ポリペプチドが活性タンパク質を含み、オリゴヌクレオチド核酸結合部分を有し、対の他方がポリペプチド核酸結合部分を有していることが可能である。
【0059】
検出タンパク質
【0060】
検出タンパク質の(検出分子の一部である)分割ポリペプチドフラグメントは、活性タンパク質を産生するところまで近付いたときに会合する任意のポリペプチドであることが可能であり、これは集まった活性タンパク質は認識するが個々のポリペプチドは認識できない手段を用いて検出が可能である。例えば、2つのポリペプチドは再会合して酵素活性を持つタンパク質を生成し、発色性または蛍光発生活性を持つタンパク質を生成し、あるいは抗体に認識されるタンパク質を作製してもよい。さらに、インビトロおよびインビボでのタンパク質相補対形成に伴って従来から見られるいかなる遅延をも最小限に抑えるため、それは活性状態になるように、また活性タンパク質の再構成に対して待機状態(すなわち準備完了状態)にあるようにデザインされている。
【0061】
一実施態様では、検出分子の活性化分割ポリペプチドフラグメントは蛍光タンパク質である。このような実施態様では、分割蛍光タンパク質フラグメントの1つは活性的であり、ここで、フラグメントの1つは、その同族活性化分割蛍光フラグメント(単数または複数)との相補対形成での即時蛍光に対して待機状態および準備完了状態である、事前に形成した成熟発色団を含んでいる。
【0062】
本発明の好ましい実施態様では、検出タンパク質は蛍光タンパク質、非限定的例として高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)である。あるいは、蛍光タンパク質は黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、高感度シアン蛍光タンパク質(ECFP)または赤色蛍光タンパク質(dsRED)もしくはその任意の他の天然または遺伝子操作フラグメントであってよく、ここでは、再構成された蛍光タンパク質中の一フラグメントは事前形成された成熟発色団を含む。蛍光を発する蛍光タンパク質を生ずる上述の蛍光タンパク質およびそのフラグメントすべては本発明における使用に対して包含される。また、包含されたものは当業者に周知の蛍光タンパク質、ならびにそのフラグメントおよび遺伝子操作されたタンパク質である。
【0063】
あるいは、検出タンパク質はシグナル増幅を可能にする酵素である。酵素は例えば、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼであってよい。特定の実施態様では、検出酵素はベータ−ラクタマーゼである。
【0064】
本発明の他の実施態様では、検出タンパク質フラグメントは、再構成されると即時に活性化するようにデザインされている。さらに、蛍光タンパク質に伴って従来から見られるいかなる遅延をも最小限に抑えるため、それらは再構成に対して待機状態にあるようにデザインされている。
【0065】
いくつかの実施態様では、成熟発色団含有分割蛍光フラグメントと結合する同族非蛍光ポリペプチドフラグメントは、1つを超える活性的非蛍光フラグメントからなることが可能である。このような活性化非蛍光ポリペプチドは通常、適切な部位で1つの蛍光タンパク質のコードヌクレオチド配列を分割し、各ヌクレオチド配列フラグメントを個々に発現させることで生成する。活性化分割蛍光タンパク質フラグメントは単独で、または1つ以上のタンパク質融合パートナーと融合して発現させてもよい。
【0066】
本発明の一実施態様では、再構成された活性タンパク質は活性化分割EGFPフラグメントから成り、ここでは最初のフラグメントは、アミノ酸番号1からおよそアミノ酸番号158までの一続きのアミノ酸を含むEGFPのN末端フラグメントである。発現後に多様な核酸結合モチーフの結合の支援となるこのフラグメントにC末端システインを付加してもよい。他の活性化分割EGFPフラグメントはおよそアミノ酸番号159からアミノ酸番号239までの一続きのアミノ酸である。N末端システインを付加してもよい。アミノ酸1はEGFPの最初のアミノ酸を指す。アミノ酸239はGFPの最終アミノ酸を指す。全残基は、野生型オワンクラゲ(A. Victoria)のGFP(GenBankアクセッション番号M62653;配列番号7)の番号付けにしたがって、番号が付され、その番号付けは相同配列の同一の位置にも適用する。したがって、(野生型GFPと比較して)切断GFPで作用する場合、またはアミノ酸が付加されたGFPで作用する場合、適宜に番号付けは改変しなければならない。
【0067】
代替的実施態様では、再集合した蛍光タンパク質は、スペクトルで明確に区別できる様々な蛍光タンパク質から得る活性化分割蛍光フラグメントを含んでよい。再構成された活性蛍光タンパク質は、相補対形成に用いられる活性化分割蛍光フラグメントに依存している明確なおよび/または独自性のあるスペクトル特性を有してもよい。例えば、多色蛍光相補性は、多色生体分子蛍光相補性(多色BiFC)用の様々な蛍光タンパク質からフラグメントを再構成して得ている(Huら、Nature Biotechnology, 2003; 21; 539-545; Kerppola, 2006, 7; 449-456, Huら、Protein-Protein Interactions (P. AdamsおよびE. Golemis編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press. 2005を参照、全体が参照により本明細書に援用される)。フラグメントの1つが形成前成熟発色団を含む多色リアルタイム蛍光のための複数の蛍光タンパク質から得る活性化分割蛍光フラグメントの使用は本発明における使用に包含される。
【0068】
一実施態様では、蛍光タンパク質は、フローサイトメトリー、蛍光プレートリーダー、蛍光光度計、顕微鏡、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により、肉眼により、または当業者に周知の他の方法により検出可能である。代替的実施態様では、蛍光性は蛍光活性化セルソーター(FACS)または経時的顕微鏡検査法を使用してフローサイトメトリーにより検出する。
【0069】
他の例では、マーカーは、発色性/蛍光発生生成物を生ずる酵素である。
【0070】
本発明の他の実施態様では、活性化分割ポリペプチドフラグメントは接近して会合し、酵素活性アッセイにより検出可能な集合した活性酵素を形成した。好ましくは、酵素活性は発色性または蛍光発生反応で検出する。好ましい一実施態様では、酵素はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはβ−ラクタマーゼである。
【0071】
他の実施態様では、酵素はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である。例えば、Michnickらは、単独では酵素活性を有しないが近接した場合には機能的酵素を形成するDHFRのNまたはC末端フラグメントのみからなる「タンパク質相補アッセイ」を開発した。米国特許第6,428,951号、第6,294,330号および第6,270,964号を参照されたい。これらは参照により本明細書に援用される。発色および蛍光発生法を含む、DHFR活性を検出する方法は当技術分野で周知である。
【0072】
代替的実施態様では、他の分割ポリペプチドが使用可能である。例えば、酵素は基質の、検出可能な生成物への変換を触媒する。分割ポリペプチドの再集合用のこのような数種の系には;β−ガラクトシダーゼ(Rossiら、1997, PNAS, 94; 8405-8410);ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)(Pelletierら、PNAS, 1998; 95; 12141-12146);TEM−1β−ラクタマーゼ(LAC)(Galarneauら、Nat. Biotech. 2002; 20; 619-622)および蛍ルシフェラーゼ(Rayら、PNAS, 2002, 99; 3105-3110およびPaulmuruganら、2002; PNAS, 99; 15608-15613)の再集合したものが含まれるが、これらに限定されない。例えば、分割β−ラクタマーゼは二重鎖DNAの検出に使用されてきた(Ooiら、Biochemistry, 2006; 45; 3620-3525を参照)。リアルタイムシグナル検出用の活性化分割ポリペプチドフラグメントの使用は本発明における使用に包含され、そのフラグメントは相補対形成時の即時シグナル検出を可能にする完全に折り畳まれた成熟コンフォメーションにある。
【0073】
一実施態様では、シグナル増幅を可能にする検出タンパク質が使用でき、例えば、約100倍のシグナル増幅を可能にする細胞透過蛍光促進ベータ−ラクタマーゼ基質であるセファロスポリンベータ−ラクタム(CCF2)(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002; Wehrmanら、2002)を有するベータ−ラクタマーゼ系が挙げられる(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002)。
【0074】
本発明の別の実施態様では、活性化分割ポリペプチドフラグメントが会合すると、不連続エピトープを含むタンパク質が集まり、これは、集合したタンパク質にある不連続エピトープは特異的に認識するが各個別のポリペプチドにある部分的エピトープは認識しない抗体を使用することで検出し得る。不連続エピトープの1つのこのような例はHIVのgp120に見られる。これらおよび他のこのような誘導体は周知の技術に基づいて当業者により容易に作製し、自身のいずれのタンパク質フラグメントでもタンパク質の集合を認識しない抗体についてスクリーニング可能である。
【0075】
本発明の他の実施態様では、活性化した分割ポリペプチドは、相互に作用し集合タンパク質を形成する分子であり得る。例えば、分子はタンパク質フラグメント、もしくは二量体または多量体のサブユニットでもよい。
【0076】
核酸配列および対象となる分割ポリペプチドフラグメントをコードするコドンは、例えば望ましい系で優先的に使用するものにコドンを変換して最適化してよい。哺乳動物細胞が例として挙げられる。非哺乳動物細胞のタンパク質の発現に最適なコドンは当技術分野でも周知であり、宿主細胞が非哺乳動物細胞(例えば昆虫細胞)である場合、使用できる。
【0077】
本発明の活性化した分割ポリペプチドは、望ましい任意の修飾を追加することも可能である。例えば、一実施態様では、活性化分割ポリペプチドは核酸結合部分に連結している柔軟なリンカーも含むことが可能である。
【0078】
検出タンパク質は当業者に周知の任意の手段で核酸結合モチーフに結合してよい。非限定的な一例では、検出タンパク質は遺伝子融合により核酸結合モチーフに結合している。本明細書で使用する用語「共役」は、接合して1つの構成要素を形成する2つ以上のタンパク質の結合を指す。タンパク質は、リンカー、化学修飾、ペプチドリンカー、化学リンカー、共有または非共有結合またはタンパク質融合、もしくは当業者に周知の任意の手段によって結合してよい。接合は永久的でも、あるいは可逆的でもよい。いくつかの実施態様では、複合体中の各リンカーおよび各タンパク質の望ましい特性を利用するために、数種のリンカーを含めてよい。柔軟なリンカーおよび複合体の溶解度を上昇させるリンカーは単独で、または他のリンカーと使用することを意図しており、本明細書に援用される。ペプチドリンカーは、リンカーをコードするDNAを発現することで、複合体中の1つ以上のタンパク質に連結してもよい。リンカーは酸切断可能、光切断可能および熱感受性リンカーであってよい。
【0079】
用語「融合タンパク質」は2つ以上のタンパク質の組み換えタンパク質を指す。融合タンパク質が細胞中で、対象とするタンパク質すべてを内部に持つ単一ポリペプチドへ翻訳できる単一オープンリーディングフレームを構成するように、例えば1つのタンパク質をコードする核酸配列が他のタンパク質をコードする核酸に接合することにより、融合タンパク質は生成可能である。タンパク質の配置の順序は可変的である。非限定的な一例として、分割検出ポリペプチドフラグメントをコードする核酸配列は、核酸結合モチーフをコードする核酸の末端、5’または3’末端のいずれかに、フレーム内で融合する。この方式では、遺伝子が発現すると、分割検出タンパク質は機能的に発現し、N末端またはC末端に融合した核酸結合モチーフを含む。検出および/または蛍光タンパク質の修飾は、検出および/または蛍光タンパク質の機能性が、検出および/または蛍光タンパク質への核酸結合モチーフの融合に依然として実質的に影響を受けていない、修飾である。一実施態様では、EGFPの分割ポリペプチドフラグメントは、カルボキシル末端で、フレーム単位で分割eIF4AフラグメントまたはRNA結合ペプチドと融合している。
【0080】
用語「リンカー」は、融合タンパク質の生成以外の手段により2つ以上のタンパク質と接合する任意の手段を指す。リンカーは、共有結合リンカーまたは非共有結合リンカーであり得る。共有結合リンカーの例として、共有結合、または連結した1つ以上のタンパク質に共有結合したリンカー部分が挙げられる。リンカーはまた、非共有結合、例えば、プラチナ原子などの金属中心を介した有機金属結合することが可能である。共有結合には、カルボン酸誘導体などのアミド基、エーテル、有機および無機エステルなどのエステル、アミノ、ウレタン、尿素等といった多様な官能性が使用可能である。例えば、連結のために、核酸結合モチーフおよび/または蛍光タンパク質は、酸化、ヒドロキシル化、置換、還元等により修飾し、カップリングの部位をもたらすことが可能である。当然ながら、修飾が核酸結合モチーフおよび/または検出タンパク質、例えば蛍光タンパク質の機能を著しく減少させるわけではない。
【0081】
発現ベクター
【0082】
本発明に使用の検出およびレポーター構築物の組み換え発現用ベクターは、当業者に対する詳細な説明を必要としない通常の技術を使用して構成してよい。しかし、概説として、当業者はManiatisらのMolecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,(NY 1982)を参考にしたいと考える。
【0083】
要約すると、検出分子およびレポーター分子をコードする核酸配列の構築には標準的ライゲーション技術を使用する。生成された核酸構築物の配列の精度を確かめる分析として、ライゲーション混合物を使用して宿主細胞をトランスフェクト/形質導入してもよく、首尾よく遺伝子組み換え細胞を必要に応じて、抗生物質抵抗性で選択してもよい。
【0084】
トランスフェクト/トランスフォームした細胞からベクターを調製し、制限分析し、および/もしくは、Messingらの方法(Nucleic Acids Res., 9: 309-, 1981)、Maxamらの方法(Methods in Enzymology, 65: 499, 1980)、Sanger dideoxy法または当業者に周知の好適な他の方法で配列決定する。
【0085】
遺伝子の発現は、転写、翻訳または翻訳後レベルで制御する。転写開始は遺伝子発現の初期事象であり重要事象である。このことはプロモーターおよびエンハンサー配列に依存しており、これらの配列と相互に作用する特異性細胞因子に影響を受ける。多くの原核生物遺伝子の転写単位はプロモーターのみから成り、またエンハンサーまたはレギュレーター要素のみからなる場合もある(Banerjiら、Cell 27: 299 (1981); Cordenら、Science 209: 1406 (1980);およびBreathnachおよびChambon, Ann. Rev. Biochem. 50: 349 (1981))。レトロウイルスに関して、レトロウイルスゲノムの複製に関与する制御要素は末端反復配列(LTR)に存在する(Weissら編、The molecular biology of tumor viruses: RNA tumor viruses, Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982))。モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRはプロモーターおよびエンハンサー配列を含む(Jollyら、Nucleic Acid Res. 11: 1855 (1983); Capecchiら、In: Enhancer and eukaryotic gene expression, GulzmanおよびShenk編、pp. 101-102, Cold Spring Harbor Laboratories (NY 1991)。他の潜在的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)および他の野生型ウイルスプロモーター由来のものが挙げられる。
【0086】
本発明を実行するにあたり、別段指示がないかぎり、当技術分野の範囲にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組み換えDNAおよび免疫学の通常の技術を使用する。該技術は文献では十分に説明されていない。例えば、Sambrook, FritschおよびManiatisが編集したMolecular Cloning A Laboratory Manual第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989);DNA Cloning, Volumes I and II(D. N. Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gaitら、1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B. D. Hames & S. J. Higgins編、1984);Transcription and Translation(B. D. Hames & S. J. Higgins編、1984);Culture of Animal Cells(R. I. Freshley, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized cells and Enzymes(IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);論文、Methods in Enzymology(Academic Press, Inc., N. Y.);Gene Transfer vectors for Mammalian Cells(J. H. MillerおよびM. P. Calos編、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Methods in Enzymology, Vols. 154および155(Wuら編)、Immunochemical methods In CellおよびMolecular Biology(MayerおよびWalker編、Academic Press、ロンドン、1987);Handbook of Experimental Immunology, Volumes I-IV(D. M WeirおよびC. C. Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Press: Cold Spring Harbor, N. Y., 1986)を参照されたい。
【0087】
このようなタンパク質複合体または融合タンパク質および調節配列のためのデザイン、集合、プラスミドへの取り込みおよび構築物のトランスフェクションに関する、実施者に与えた追加バックグラウンド情報および一般的な助言は、以下の公開された国際特許出願:国際公開第94/18317号;国際公開第95/02684号;国際公開第95/24419号および国際公開第96/41865号で利用可能であり、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0088】
多数の非ウイルスプロモーターのプロモーターおよびエンハンサー領域も記述されている(Schmidtら、Nature 314: 285 (1985); Rossiおよびdecrombrugghe, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5590-5594 (1987))。静止細胞での導入遺伝子の発現を維持および増加する方法には、タイプI(1および2)コラーゲン(ProckopおよびKivirikko, N. Eng. J. Med. 311: 376 (1984); SmithおよびNiles, Biochem. 19: 1820 (1980); de Wetら、J. Biol. Chem., 258: 14385 (1983))、SV40およびLTRプロモーターを含むプロモーターの使用が含まれる。
【0089】
本発明の一実施態様にしたがって、プロモーターは、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター、JeTプロモーター、SV40プロモーター、伸長因子1アルファプロモーター(EF1−アルファ)、ニワトリ雛ベータ−アクチン、PGK、MT−1(メタロチオニン(Metallothionin))からなる群より選択される構造的プロモーターである。
【0090】
また本発明に包含されるものには誘導可能/抑制可能プロモーターがある。これらの構築物の非限定的例として、「Tet−On」、「Tet−Off」およびラパマイシン誘導性プロモーターが挙げられ、本発明に包含される。
【0091】
導入遺伝子発現を操作するウイルスおよび非ウイルスプロモーターの使用に加えて、エンハンサー配列を、導入遺伝子発現のレベルを増加させるために使用してよい。エンハンサーは、その元の遺伝子のみならず数種の外来遺伝子の転写活性を上昇させることが可能である(Armelor, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70: 2702 (1973))。例えば、本発明では、コラーゲンエンハンサー配列をコラーゲンプロモーター2(I)とともに使用し、導入遺伝子発現を増加させる。また、SV40ウイルスに見られるエンハンサー要素を使用し、導入遺伝子発現を増加してもよい。このエンハンサー配列は、Grussら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 943 (1981); BenoistおよびChambon, Nature 290: 304 (1981)ならびにFrommおよびBerg, J. Mol. Appl. Genetics, 1: 457 (1982)による記載のとおり、72塩基対リピートのみから成り、これらすべては参照により本明細書に援用される。このリピート配列は、多様なプロモーターに続いて存在する場合、多くの異なるウイルスおよび細胞遺伝子の転写を増加し得る(Moreauら、Nucleic Acids Res. 9: 6047 (1981)。
【0092】
発現を長期に安定させるため、プロモーター活性を調節するサイトカインを使用して導入遺伝子発現を増加させてもよい。数種のサイトカインはコラーゲン2(I)およびLTRプロモーターからの導入遺伝子発現を調節することが報告されている(Chuaら、connective Tissue Res., 25: 161-170 (1990); Eliasら、Annals N. Y. Acad. Sci., 580: 233-244(1990)); Seligerら、J. Immunol. 141: 2138-2144(1988)およびSeligerら、J. Virology 62: 619-621(1988))。例えば、形質転換成長因子(TOF)、インターロイキン(IL)−Iおよびインターフェロン(INF)は、LTRなどの多様なプロモーターにより操作された導入遺伝子発現を下方制御する。腫瘍壊死因子(TNF)およびTGF1はプロモーターにより操作された導入遺伝子発現を上方制御し、また、それを制御する目的で使用してもよい。有用であると判明し得る他のサイトカインは塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および上皮成長因子(EGF)を含む。
【0093】
一実施態様では、コラーゲンエンハンサー配列(Coll(E))を有するコラーゲンプロモーターを使用して、免疫防御状態にもかかわらず治療済みの脳で生じる可能性があるベクターに対する任意の免疫応答をさらに抑制することにより、導入遺伝子発現を増加させることもできる。
【0094】
他の実施態様では、ベクターは、Cre−リコンビナーゼタンパク質およびLoxP配列をコードする配列などの配列をさらに含んでよい。検出器および/またはレポーター構築物の一時的な発現を確実にする他の方法は、細胞にCre−リコンビナーゼを投与すると(Dae国際公開第ongら、Nature Biotechnology 19: 929-933)、またはリコンビナーゼをコードする遺伝子をウイルス構築物に組み込むこと(Pluck, Int J Exp Path, 77: 269-278)のいずれかで、挿入したDNA配列の一部を切除するに至るCre−LoxPシステムの使用を介している。リコンビナーゼの遺伝子をLoxP部位および構造遺伝子(本ケースではニューブラスチン(neublastin))とともにウイルス構築物中に組み込むと、約5日間、構造的遺伝子が発現することが高頻度で見られる。
【0095】
トランスジェニック生物
【0096】
本発明の一実施態様では、トランスジェニック生物が包含されており、これはリアルタイムインビボ核酸検出のためのレポーターおよび検出構築物を発現する。トランスジェニック生物またはトランスジェニック動物は、それらすべての細胞、あるいは一部ではあるがすべてではない細胞中に導入遺伝子を有する可能性があり、すなわちモザイク動物である。導入遺伝子は、例えば頭−頭縦列または頭−尾または尾−尾の縦一列になっている単一の導入遺伝子として、もしくは複数コピーとして、組み込むことができる。二量体、三量体または多量体トランスジェニック動物は少なくとも2つ以上の導入遺伝子を含むことが好ましい。好ましい実施態様では、該動物は、核酸結合モチーフに操作可能に連結したEGFP導入遺伝子、ならびに核酸結合配列および対象遺伝子をコードする導入遺伝子の2つの部分から構成される検出構築物を含んでいる。
【0097】
タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を導入遺伝子として使用する場合、遺伝子は適切な調節要素に操作可能に連結することが望ましく、これにより導入遺伝子が発現するとされている。調節要素、例えばプロモーター、エンハンサー、(例えば誘導可能または構造的)、またはポリアデニル化シグナルは当技術分野で周知である。調節配列は内在性調節配列、すなわちその配列が誘導されるような同一の動物種由来の、導入遺伝子としての調節配列であり得る。調節配列はまた、導入遺伝子として使用する遺伝子の天然調節配列であり得る。
【0098】
本明細書に記述した導入遺伝子構築物はDNA配列の3’非翻訳領域下流を含んでよい。該領域は発現系のRNA転写を安定させ、それによりその発現系由来の目的タンパク質の収率を上げることが可能である。3’非翻訳領域のうち、本発明の構築物に有用なものはポリAシグナルを提供する配列である。このような配列は、例えばSV40小型T抗原または当技術分野で周知の他の3’非翻訳配列から得てもよい。3’非翻訳領域の長さは重要ではないが、そのポリA転写産物の安定化効果は発現配列のRNAを安定化させる際に重要のようである。
【0099】
導入遺伝子構築物はまた、プロモーターとシグナル配列コードDNA配列間の5’非翻訳領域を含んでよい。該非翻訳領域は、プロモーターが得られる同じ制御領域から、または異なる遺伝子から得ることが可能であり、例えばそれらは他の合成源、半合成源または天然源由来であってもよい。
【0100】
アンチセンス核酸は本発明の導入遺伝子構築物にも使用してよい。例えば、(DNAコード鎖に相補的な)アンチセンスポリヌクレオチド配列は「正常」遺伝子の発現を減少させる細胞に導入してよい。このアプローチは、アンチセンス核酸または3重剤でmRNAを遮蔽するか、もしくはリボザイムでそれを切断することのいずれかによって、例えばアンチセンス核酸、リボザイムまたは三重剤を利用して、特定のmRNAの転写または翻訳を遮断する。あるいは、その方法は、遺伝子産物の作用または効果を模倣する、もしくは遺伝子の作用を遮断する試薬の投与を含む。遺伝子のインビトロ翻訳を改変するアンチセンス法の使用は当技術分野で周知である(例えばMarcus-Sekura, 172 ANAL. BIOCHEM. 289-95, 1988参照)。
【0101】
本明細書に記述している導入遺伝子構築物は増幅用の任意の好適なプラスミド、バクテリオファージまたはウイルスベクターに挿入してよく、それによってManiatisらが記述したような当技術分野で周知の方法を使用して繁殖させてもよい(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor, NY., 1989)。構築物は大きめのプラスミドの一部として調製してよく、このことにより、当技術分野で周知のとおり、高効率の方式で構築のクローニングおよび選択が可能となる。構築物は、目的の哺乳動物への組み込みのための残りのプラスミド配列から簡単に単離し得るようにプラスミド上の都合のよい制限部位の間にあってもよい。
【0102】
本発明の方法はまた、レトロウイルスベクターを使用して外因性DNAを卵母細胞へ導入することによるトランスジェニック動物または細胞の生成に関する。レトロウイルスベクターを使用し、ウイルス感染工程を生かして遺伝子を宿主細胞へ効率的に転移させることが可能である(Kimら、4 ANIM. BIOTECHNOL. 53-69, 1993; Kimら、35 MOL. REPROD. DEV. 105-13, 1993; HaskellおよびBowen, 40 MOL. REPROD. DEV. 386-90, 1995; Chanら、95 PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 14028-33, 1998; Krimpenfortら、1991; Bowenら、50 BIOL. REPROD. 664-68, 1994; Tadaら、1 TRANSGENICS 535-40, 1995)。
【0103】
適用
【0104】
本発明の方法は当業者に周知の複数の用途に使用可能である。本発明の1つの重要な実施態様は、リアルタイムインビボRNA検出のためのレポーターアッセイである。このような実施態様では、標的RNAの非存在下では検出タンパク質からシグナルを生成せず、したがって蛍光を発せず、あるいは活性を示さない検出分子を、対象となる細胞は安定的に発現する。細胞はまた、検出分子の核酸結合モチーフ(単数または複数)に対する結合部位および対象遺伝子を含む導入可能レポーター分子も発現可能であり、細胞内で発現した場合、検出分子は標的RNAに結合し、検出タンパク質の再構成ならびに活性タンパク質およびシグナルの生成を容易にする。これによりリアルタイムインビボRNA発現検出が可能となり、図10〜11および18〜19ならびに実施例9〜11に例示している。
【0105】
代替的実施態様では、対象となる細胞は対照のプロモーターに操作可能に連結したレポーター構築物を発現可能である。プロモーターが特定の刺激により細胞内で活性化する場合、標的核酸配列の結合部位(単数または複数)は有効になり、検出分子の核酸結合タンパク質の結合は検出ポリペプチドフラグメントの会合および即時検出が可能な活性的検出タンパク質の形成を促進する。この実施態様はインビボでプロモ−ター機能をリアルタイムに研究することを可能にする。RNA結合部位を操作し、任意のベースライン検出構築物活性を分析するプロモ−ターを発現するプラスミドをトランスフェクトすることによって、例えば遺伝子の調節はリアルタイムに研究できる。関連した実施態様では、i)1種の化合物または複数の化合物と接触させるか、あるいはii)プロモ−ターの活性を改変する可能性がある多様な条件に供し、そうすることで、RNAの転写が増加、減少し、または変化が起こらないようになる。
【0106】
あるいは、本発明の方法は、レポーター構築物が存在しないときでもインビボで標的核酸が存在することを検出する方法を提供する。このような一実施態様では、例えばDNAおよび/またはRNAといった核酸は、検出分子の核酸結合モチーフに結合する標的核酸配列を含む。このような実施態様では、検出分子の核酸成分のデザインに依存して、未処理または非修飾核酸はインビボで検出可能である。
【0107】
類似の実施態様では、「tet−on」または「tet−off」システムを本発明の方法で利用してよい。例えば、本発明の検出構築物を安定的に発現するために対象となる細胞を作製してよい。また細胞は、検出分子核酸結合モチーフ)に対する標的結合部位(単数または複数)および対象となる遺伝子の転写を調節可能にするtet−onまたはtet−off調節可能レポーター構築物を安定的に発現する場合もある。例えば、tet−offシステムでは細胞は対象となる遺伝子を即時に発現し、レポーター構築物は活性的であり即時検出可能である。tetに加えて、レポーター構築物(対象となる遺伝子および標的核酸結合部位を含む)の転写が停止し、すでに転写した転写産物のみがリアルタイムに分析可能である。このtet−off例では、レポーター蛍光または活性の減少を検出することにより、例えば半減期などのRNAの安定性はインビボでリアルタイムに分析可能である。
【0108】
代替的実施態様では、「tet−on」構築物を使用すると生体細胞中の対象遺伝子が安定的に発現し、それにより、システムへのtetの添加によりレポーター構築物の転写が進行する。その後、本発明の検出分子はその標的RNAに結合可能となり、即時に検出可能である。この実施態様では、RNA局在化は実験者が決定したとおりにリアルタイムに研究できる。
【0109】
さらに別の本発明の実施態様では、レポーターアッセイはインビボで生体において行う。非限定的であるが、例えば動物、非ヒト動物、マウス、ゼブラフィッシュ、線虫(C. elegans)またはカエルを、検出構築物に結合するとされているRNA結合部位を有する検出構築物および対象遺伝子をともに発現させるために供与してもよい。生体内の両構築物を発現させれば、1日目の胚から全成体期より試料を得ることで、対象となる転写産物が全成長を通して分析可能になる。一実施態様では、生体は哺乳動物である。一実施態様では哺乳動物はマウスであり、他の実施態様では生体はトランスジェニック生体、例えばトランスジェニックマウスであるが、これに限定されない。
【0110】
あるいは、本発明の組成物および方法は、インサイチュハイブリダイゼーション、例えば蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)に類似したリアルタイムインビトロRNA検出法を提供する。このような実施態様では、検出分子の核酸結合モチーフに結合するとされているRNA結合配列を有する対象RNAを含むレポーター構築物を発現する細胞を透過処理し、本発明の検出構築物をその細胞に投与する。対象RNAが発現すると検出構築物はRNA結合配列に結合し、RNAの局在化および存在量が決定できる。従来のインサイチュハイブリダイゼーション技術よりも優れたこの系の利点には、低量RNAを検出する能力(酵素レポーターを利用する検出構築物によって達成可能となるシグナル増幅に起因している)および放射活性なしでアッセイを迅速に終了させる能力が挙げられる。検出構築物による迅速な検出が非常に望まれている。現在、(例えば放射活性による)インサイチュハイブリダイゼーションを行う従来の方法は、実験が成功するか否か分かる前でも数週間から数ヶ月かかる。また、従来のインサイチュハイブリダイゼーションで使用するRNAプローブは、RNAが簡単に分解され、放射活性を使用するため、調製が困難である。本発明の方法では、放射活性またはRNAプローブは必要ない。検出構築物は、例えば当業者に周知である細菌から簡単に調製する。該アッセイは、インビトロでのタンパク質検出において抗体を使用可能にする免疫組織化学または免疫細胞化学技術に類似している。ここではRNAを検出する。
【0111】
さらに、本発明の組成物および方法は、インビボでリアルタイムにDNAを検出する実施態様で使用してよい。例えば、本発明の検出構築物は、各々がDNA結合モチーフと会合している少なくとも2つの不活化ポリペプチドフラグメントに分割された検出(蛍光または酵素)タンパク質を含んでよい。標的核酸、この場合ではDNAの存在により集合したときそのポリペプチドフラグメントは、十分に活性な検出タンパク質を形成し、即時に検出可能である。例えば、本発明の方法により、ゲノム内の多様な遺伝子座の複製がリアルタイムに検出可能となる。検出構築物中の検出タンパク質と会合したDNA結合モチーフはDNAの多様な領域に特異的であり、それらの遺伝子座の複製はリアルタイムインビボ検出が可能である。
【0112】
同様に、本発明の方法および組成物を使用してリアルタイムインビボ染色体検出が可能となる。例えば、検出構築物は、テロメラーゼ結合タンパク質と会合して細胞内で発現する検出タンパク質を含んでよい。このように、テロメラーゼは細胞寿命全体にわたってリアルタイムに検出可能である。本明細書で示された組成物および方法の利点は、2つの半分に2分され、各半量が検出タンパク質の半量と会合しているテロメラーゼ結合タンパク質を提供することで特異性が上昇することである。両半分のテロメラーゼ結合タンパク質を単結合部位に配位結合させることにより、標的認識に先立って検出体の活性は皆無かそれに近いものとなる。
【0113】
本発明の他の実施態様では、リアルタイムにPCR生成物を検出する方法を開示している。本発明の方法および組成物を使用して、現在利用可能なものより高い特異性で、リアルタイムでPCR反応の生成物を検出する。この実施態様の例では、反応の増幅生成物が検出構築物に存在する核酸結合モチーフに特異的に認識されるアプタマーを組み込むように、PCRプライマーがデザインされる。増幅が進行するにつれて、検出タンパク質はリアルタイムに検出可能である。検出構築物はPCR生成物に特異的であり、テンプレートDNAを検出しないことから、本発明はSYBRグリーンなどの現在使用している技術に勝る利点をもたらす。この実施態様を使用し、PCR実験を実施する前にRNAをcDNAに変換することによりRNAはリアルタイムに検出可能である。関連の実施態様では、検出分子の核酸結合モチーフ成分はPCR生成物の存在下で分割検出分子の再集合を促進し、インビボの免疫PCRの新規な方法が可能となる。また、他の実施態様では、検出分子の核酸結合成分は、免疫RCA(ローリングサークル増幅)法の核酸存在下で、分割検出分子の再集合、ひいてはシグナルを促進することが可能であり、インビボでのシグナル増幅が高まる。
【0114】
本発明の他の実施態様では、個体の多型性、突然変異または遺伝子発現異常を検出する方法を開示している。例えば、本発明のアッセイを利用し、特定の疾患、障害またはこのような疾患および障害に対する素因を診断するため、個体からDNAおよび/またはRNAを検出することが可能である。したがって、疾患または障害を有する個体のゲノムに存在し得る特定の配列に特異的な核酸結合モチーフで検出構築物がデザイン可能であるのであれば、本発明の方法により多様な疾患および障害の診断および予後が可能となる。
【0115】
関連の実施態様では、本発明により個体の多型性、突然変異または遺伝子発現異常をリアルタイムに検出できる。説明に役立つ実例として、特定の突然変異体または多型性部位にアプタマーはタグとして付くか、あるいは一過的に付着することが可能で、これは本発明の分割ポリペプチド分子により検出可能であり、該分子は、検出分子の核酸結合モチーフが検出を試みられている特定の突然変異、多型性または異常がある対象遺伝子に会合した付着アプタマーを認識するようにデザインされている。あるいは、分子のプールを使用し、これにより、多くの突然変異、多型性または異常が検出される可能性がある。核酸結合モチーフが、遺伝子入れ替え(perbutation)および/または変質に関連したアプタマーなどの付着した標的核酸を認識するのであれば、検出タンパク質のタンパク質相補対形成が起こり、シグナルおよび/または蛍光生成物の即時性に起因する高感度な検出が可能となる。
【0116】
重要な一実施態様では、分子は病原体のリアルタイム検出に使用できる。一実施態様では、本発明の分子を使用し、病原体および/または病原体核酸が存在する結果として病原体核酸配列の存在および/または核酸配列中の異常の存在を検出することができる。病原体はウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、寄生虫感染症および他の感染病であり得る。ウイルスは、以下からなるウイルス群から選択できる:単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス7、ヒトヘルペスウイルス8、痘瘡ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、デングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷熱ウイルス、西ナイルウイルス、リフトバレー出血熱ウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、シンドビスウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、ハンタウイルス、風疹ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルス2型。
【0117】
標的核酸はまた、食品、飲料、水、医薬品、パーソナルケア製品、乳製品または環境試料中の細菌および真核生物の検出に有用である可能性がある。好ましい飲料には、ソーダ、ボトル入りウォーター、果汁、ビール、ワインまたはアルコール製品が挙げられる。開発されたアッセイは、食品、飲料、水、医薬品、パーソナルケア製品、乳製品または環境試料を製造または保存するのに用いる原料、器具、製品または工程の分析用に特に有用であろう。
【0118】
本発明の他の関連実施態様では、活性化分割ポリペプチドフラグメントが集結すると、非連続的エピトープを含む検出タンパク質が集結し、このことは、集結したタンパク質上の非連続的エピトープを特異的に認識するが、個々のポリペプチドのいずれかにある部分的エピトープは認識しない抗体を使用して検出される可能性がある。非連続的エピトープのこのような一例はHIVのgp120に見られる。これら誘導体および他のこのような誘導体は周知の技術に基づいて当業者が容易に作製でき、集結したタンパク質をそれ自身のタンパク質フラグメントのいずれによっても認識しない抗体について、スクリーニングすることが可能である。
【0119】
標的核酸はヒト起源の核酸であり得る。標的核酸はDNAまたはRNAであり得る。標的核酸は溶液中では遊離し得るし、あるいは、固体支持体に固定できる。
【0120】
一実施態様では、標的核酸は遺伝子ベースの疾患に特異的であり、あるいは遺伝子ベースの疾患に対する素因に特異的である。前記疾患は、例えば、ベータ−サラセミア、鎌状赤血球貧血または第5因子ライデン、嚢胞性線維症(CF)などの遺伝子ベースの疾患、p53およびp10などの癌関連標的、もしくは乳癌感受性に対するBRC−1およびBRC−2であり得る。さらに別の実施態様では、単離した染色体DNAは親子鑑定、身元確認または犯罪捜査に関して調査してもよい。
【0121】
他の実施態様では、本発明は本発明の方法、特にインビボRNA検出に適したキットを提供する。一実施態様では、キットは検出構築物および誘導可能なレポーター構築物を含む。一実施態様では、レポーター構築物および検出構築物は分離した核酸分子上にある。他の実施態様では、それらは両方ともバイオシストロン性の核酸分子にコードされている。関連の実施態様では、分割ポリペプチドフラグメントはIRES部位によって分割される。他の実施態様では、ポリペプチドフラグメントは分割可能部位を含む一核酸としてコードされ、分割され、当業者に周知の手段、例えば、限定はしないが酵素切断;化学切断、光切断、酸切断、温度または熱切断等により分離した分割ポリペプチドフラグメントが形成可能である。他の実施態様では、レポーター分子は実行者の対象となる遺伝子を添加するために修飾可能であり、他の実施態様では、レポーター分子の発現はtet−onまたはtet−offプロモーターに対して動作可能に連結している。他の異なる実施態様では、標的核酸配列を含むレポーター構築物は実行者により修飾され、実行者の対象となるプロモーターに調節され得る。これらの各実施態様では、キットには、検出分子中の検出タンパク質のために選択された分割ポリペプチドが含まれ、また、検出タンパク質からシグナルを検出するための説明書および試薬も含まれている。いくつかの実施態様では、キットには、試料中の標的核酸の存在または量を捕らえる、および/または検出するのに適した試薬も含まれる。標的核酸の存在および/または量を検出する試薬は、集まったタンパク質に特異的な酵素的活性試薬または抗体を含むことができる。抗体は標識化できる。
【0122】
タンパク質相補性と酵素レポーターを組み合わせると、実質的にバックグラウンドが減少しシグナルが増幅する。これにより、低量、中程度量および高量の核酸を分析することができるインビボRNA検出技術が与えられる。
【0123】
他の実施態様では、本発明はインビボで標的核酸の存在および/または量を検出するのに適したキットを提供する。キットは少なくとも第1の分子とカップリングした第1のプローブおよび第2の分子とカップリングした第2のプローブを備え、この中のプローブは標的核酸中のハイブリダイゼーション配列に結合可能である。該プローブはバイアルに入っていることが好ましい。キットはまた、試料中の標的核酸の存在または量を把握および/または検出するのに適した試薬を備える。標的核酸の存在および/または量を検出する試薬は酵素活性試薬または集合したタンパク質に特異的な抗体を含むことが可能である。抗体は標識化できる。このようなキットは任意に、RCA反応、免疫RCA、免疫PCRを実行するために必要な試薬を備え、例えばDNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ補因子およびデオキシリボヌクレオチド−5’−三リン酸が挙げられる。場合により、キットは多様なポリヌクレオチド分子、DNAまたはRNAリガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、逆転写酵素、末端転移酵素、多様なバッファーおよび試薬、抗体ならびにRNaseおよびヌクレアーゼ活性の阻害物質も備えてよい。これらの成分はバイアルなどの容器に入っている。キットは、陽性および陰性対照反応を行うのに必要な試薬ならびに説明書も備えてよい。所与の反応に使用する試薬の最適量は、現在の開示によって利益を得ている当業者が容易に決定できる。
【0124】
他の実施態様では、本発明の方法は、同時に複数の核酸標的のタンパク質相補対形成、例えば、異なる核酸結合モチーフに関連している相補性分割ポリペプチドフラグメントのタンパク質相補対形成に対して使用可能である。標的核酸が存在すると、一つの活性的分割ポリペプチドフラグメント対のタンパク質相補性が促進され、一方、他の標的が存在すると、活性化分割ポリペプチドフラグメントの他の対のタンパク質相補性が促進され、異なる活性タンパク質および検出シグナルがもたらされる。このような実施態様では、複数の核酸標的が同時に検出可能である。代替的実施態様では、RNAおよびDNAなどの標的核酸の同時検出がリアルタイムのタンパク質相補性によって監視できる。
【0125】
関連した実施態様では、異なる蛍光タンパク質から得た分割蛍光タンパク質フラグメントを使用している複数のタンパク質相補対形成。関連した実施態様では、本発明の方法により、多様な他の、推定的ではあるが異なる核酸標的の中で、特定の標的核酸をリアルタイムに検出および同定することが可能となる(Huら、Nature Biotechnology, 2003; 21; 539-545; Kerppola, 2006, 7; 449-456, Huら、Protein-Protein Interactions (P. AdamsおよびE. Golemis編), Cold Spring Harbor Laboratory Press. 2005を参照されたい。これらは全体が参照により本明細書に援用される)。
【0126】
定義
【0127】
別段、記述がない限り、本明細書で使用する以下の用語および表現は以下の意味を持つことを意図している:
【0128】
本明細書で使用する用語「検出構築物」は、検出タンパク質および検出分子を含む核酸結合モチーフ、をコードする核酸配列を包含することを意図している。
【0129】
本明細書で使用する用語「レポーター構築物」は対象核酸(例えばDNAまたはRNA)およびレポーター分子を含む標的核酸配列(例えばRNAアプタマー)を包含することを意図している。
【0130】
用語「真核生物(eukaryote)」または「真核生物(eukaryotic organism)」は、原生動物、真菌、酵母、緑藻、単細胞植物、多細胞植物ならびに脊椎および無脊椎動物の全動物を含む動物界、植物界および原生生物界に存在する生物すべてを包含することを意図している。その用語は細菌またはウイルスは包含しない。「真核生物細胞」は単数の「真核生物細胞」および複数の「真核生物細胞」、ならびに真核生物由来の細胞を包含することを意図している。
【0131】
用語「脊椎動物」は単数の「脊椎動物」および複数の「脊椎動物」を包含し、哺乳動物および鳥類、ならびに魚類、爬虫類および両生類を包含することを意図している。
【0132】
用語「哺乳動物」は単数の「哺乳動物」および複数の「哺乳動物」を包含することを意図しており、また以下を含むが、これらに限定されない:ヒト;類人猿、サル、オランウータンおよびチンパンジーなどの霊長類;イヌおよびオオカミなどのイヌ科動物;ネコ、ライオンおよびトラなどのネコ科動物;ウマ、ロバおよびシマウマなどのウマ類、ウシ、ブタおよびヒツジなどの食肉動物;シカおよびキリンなどの有蹄動物;マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどの齧歯類;およびクマ。哺乳動物としてはヒト被験体であることが好ましい。
【0133】
本明細書で使用する用語「インビボ」は生物内に存在する生細胞を包含することを意図している。生物外にある生細胞を論じる場合、用語「エクソビボ」を一般的に使用する。生細胞は任意の細胞であり得るし、任意の器官を形成することが可能であり、多細胞器官ならびに酵母および細菌などの単細胞器官を含む。
【0134】
生細胞中の核酸を検出することに関して、本明細書で使用する用語「侵襲的」は、例えばリポフェクタミン(lipofectamine)およびマイクロインジェクション法などの侵襲的方法を使用した核酸検出法を指す。したがって用語「非侵襲的」は、該侵襲的手法を使わずに生細胞または生体細胞中の核酸を検出する方法を指す。
【0135】
用語「組織培養」または「細胞培養」または「培養」または「培養すること」は、細胞組成の保存、細胞機能の保存、さらなる分化、あるいはその3つすべてを可能にする条件下にて、インビトロで植物組織または動物組織、あるいは細胞を維持または成長させることを指す。「一次組織細胞」は組織から直接採取したものであり、すなわち、ある器官における同一の機能を示す同種の細胞群である。タンパク分解酵素、トリプシンでこのような組織細胞を処理すると、例えばそれらは、培養プレートに播種したとき細胞組成を成長または維持する個々の一次組織細胞へと解離する。組織培養において一次細胞の増殖から得られる細胞培養物を「二次細胞培養物」と呼ぶ。二次細胞の大部分は限られた回数で分裂し、その後死滅する。しかし、この「危機的期間」を通り越せる可能性のある二次細胞も少数あり、その後それらの細胞は無制限に増殖して連続的な「細胞系」を形成できる。細胞が培養される液体培地は本明細書では「培地」と呼ぶ。目的の分子、例えば免疫グロブリン分子が細胞培養中に分泌される培地は本明細書では「ならし培地」と呼ぶ。
【0136】
また、細胞は特定の被検細胞ではなく、該細胞の子孫または潜在的子孫を指しており、これは、実際には子孫は親細胞と同一ではないが本発明の範囲に依然として含まれるような特定の修飾または環境の影響、例えば分化に起因している。
【0137】
本発明で使用する細胞は、例えば本明細書の実施例に示すインビトロまたはエクソビボでの培養細胞であり得る。例えば、培地および環境刺激でインビトロ培養した細胞を培地に添加することが可能である。あるいは、エクソビボ培養細胞では、細胞は健常および/または罹患した被検者から得ることができる。細胞は、非限定的な例として、生検または他の当業者に周知の外科的手段によって得ることができる。
【0138】
用語「IRES」は、共通のリボソーム結合部位をコードする配列である内部リボソーム侵入部位(Kozak (1991) J. Biol. Chem. 266' 19867-70)を指し、内部リボソーム侵入部位を開始コドンの5’および/または調節配列または他の、遺伝子をコードする核酸配列の5’またはマーカー遺伝子に即時に挿入し、下流核酸配列の発現を向上させることが可能である。このような修飾の妥当性または必要性は実験的に決定してよい。
【0139】
用語「ポリヌクレオチド」は、核酸または構築物に存在する任意の1つ以上の核酸セグメントまたは核酸分子、例えばDNAまたはRNAフラグメントを指す。「対象遺伝子をコードするポリヌクレオチド」は、このようなポリペプチドのコード領域を含むポリヌクレオチドを指す。また、ポリヌクレオチドはプロモーターまたは転写ターミネーターなどの調節要素をコードしてよく、もしくは分泌シグナルペプチドまたは機能的ドメインなどのポリペプチドまたはタンパク質の特定の要素をコードしてもよい。
【0140】
「ヌクレオチド」はDNAまたはRNAなどの高分子核酸の中のモノマー単位であり、3つの明確に区別された下位区分または部分:糖、リン酸および核酸塩基から構成されている(Blackburn, M., 1996)。二本鎖の一部である場合、ヌクレオチドは「塩基」または「塩基対」とも称する。最も一般的な天然核酸塩基、アデニン(A)、グアニン(G)、ウラシル(U)、シトシン(C)およびチミン(T)は、配列特異的に1つの核酸鎖を他方に結合させる水素結合機能性を有する。「ヌクレオシド」はリン酸が無いヌクレオチドを指す。DNAおよびRNAでは、ヌクレオシドモノマーはホスホジエステル結合により連結しており、本明細書で使用するように、用語「ホスホジエステル結合」は、ホスホジエステル結合、または会合対イオン、例えばIT’、NW、Na’等のそのリン酸類似体を含む結合を指す。
【0141】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は天然のヌクレオチドモノマーの線状ポリマー、または二重鎖および単鎖デオキシリボヌクレオチド「DNA」、リボヌクレオチド「RNA」等を含む、その類似体を指す。すなわち、「オリゴヌクレオチド」は、それぞれデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む構造単位であるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの鎖である。ポリヌクレオチドの大きさは概して、数モノマー単位、例えば8〜40から数千のモノマー単位の範囲にある。DNAポリヌクレオチドが「ATGCCTG」などの文字配列に表現されている場合は必ず、別段指示がない限り、当然のことながら、ヌクレオチドは左から右の順に5’→3’の方向であり、「A」はデオキシアデノシンを、「C」はデオキシシチジン、「G」はデオキシグアノシン、および「T」はチミジンを意味する。
【0142】
「ワトソン/クリック塩基対」および「ワトソン/クリック相補性」は、水素結合を介して結びつくヌクレオチドおよびその類似体の特異的対合のパターンを指し、例えばAはTおよびUと、GはCと対合する。特異的塩基対合の活動は「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズ」である。核酸または核酸類似体の2つ以上の相補鎖が塩基対合を行うとき、ハイブリッドが生じる。
【0143】
「検出」は、検出標識の特性に基づいて構築物を検出、観察または測定することを指す。
【0144】
用語「核酸塩基修飾された」は、DNAおよびRNA中に存在する天然の核酸塩基であるAGC、T、Uの塩基対合誘導体を指す。
【0145】
用語「プロモーター」は、転写を導くのに十分な最小限のヌクレオチド配列を指す。また、プロモーター依存遺伝子発現を細胞型特異性、組織特異性に制御可能にする、もしくは外部シグナルまたは薬剤によって導入可能にするに十分なこれらのプロモーター要素は本発明に含まれ;該要素は、元の遺伝子の5’または3’領域に、またはイントロンに位置している可能性がある。用語「誘導可能プロモーター」は、RNAポリメラーゼ結合の割合および転写開始が外部刺激により調節可能であるプロモーターを指す。用語「構造プロモーター」は、RNAポリメラーゼ結合の割合および転写開始が一定で、比較的外部刺激に依存的であるプロモーターを指す。「一時的に調節されたプロモーター」はRNAポリメラーゼ結合と転写開始の速度が進行中の特定時間に調節されるプロモーターである。これらプロモーターのすべてのタイプは本発明に包含される。
【0146】
本明細書で使用するとおり、本明細書で同じ意味で使われている「プロモーター」または「プロモーター領域」または「プロモーター要素」は核酸配列のセグメント、典型的には、限定するわけではないが、DNAまたはRNAもしくはそれらの類似体を指し、これは自身が操作可能に連結する核酸配列の転写を制御するものである。プロモーター領域は、RNAポリメラーゼの認識、結合および転写開始に十分な特異性配列を含む。プロモーター領域のこの部分はプロモーターと称する。また、プロモーター領域はRNAポリメラーゼのこの認識、結合および転写開始活性を調節する配列を含む。これらの配列はシス作用的であるか、あるいはトランス作用因子に応答性である可能性がある。調節の特性に依存してプロモーターは構造的であるか、または調節されている可能性がある。
【0147】
用語「構造的に活性的なプロモーター」は、所与の細胞内で何時でも発現する遺伝子のプロモーターを指す。哺乳動物細胞に使用するためのプロモーターの代表例としてサイトメガロウイルス(CMV)が挙げられ、原核生物細胞での使用にはバクテリオファージT7およびT3プロモーター等が挙げられる。
【0148】
用語「操作可能に連結した」または「操作可能に会合した」は本明細書では同じ意味で使用され、核酸配列と、プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳停止部位および他のシグナル配列などのヌクレオチドの調節配列との機能的関係を指す。例えば、核酸配列、典型的にはDNAの、調節配列またはプロモーター領域への操作可能な連結は、DNAと調節配列またはプロモーター間の物理的および機能的関係を指し、そのため、DNAを特異的に認識、結合および転写するRNAポリメラーゼにより、このようなDNAの転写は調節配列またはプロモーターから開始されるようになっている。発現および/またはインビトロ転写を最適化するためには、それが発現するための細胞型における核酸またはDNAの発現用の調節配列を修飾することが必要となる場合がある。このような修飾の妥当性または必要性は実験的に決定してよい。
【0149】
用語「結合」は、接合して1つの構成要素を形成する2つ以上のタンパク質の結合を指す。タンパク質は、リンカー、化学修飾、ペプチドリンカー、化学リンカー、共有または非共有結合またはタンパク質融合、もしくは当業者に周知の手段によって結合してよい。接合は永久的でも、あるいは可逆的でもよい。いくつかの実施態様では、複合体中の各リンカーおよび各タンパク質の望ましい特性を活用するために数種のリンカーが含まれてもよい。柔軟リンカーおよび複合体の可溶性を増加させるリンカーは、単独で使用するか、または本明細書に援用されている他のリンカーとともに使用するかを熟考する。ペプチドリンカーは、リンカーをコードするDNAを発現することで複合体中の1つ以上のタンパク質に連結してよい。リンカーは酸切断性、光切断性および熱感受性のリンカーであってよい。いくつかの実施態様では、「結合」または「結合した」はまた、分子の一部同士を集めて近接して保存されるようにする共有、イオン性または疎水性相互作用をも包含する。
【0150】
本発明では、「アプタマー」は、特定の標的タンパク質と強力に、かつ特異的に結合するように人工的に操作した核酸リガンドを指す。「アプタマーを調節する」は、アプタマーの芯部が低いTm値を有し、標的タンパク質の存在下でのみ、結合して二重鎖を形成する2つの短いオリゴヌクレオチド鎖に分割されるように意図しているアプタマーを指す。
【0151】
実施例
実施例1
核酸相互作用により促進されたタンパク質相補対形成法
【0152】
核酸相互作用により促進された高速タンパク質相補対形成の作業性を確認するため、インビトロで数種の実験を行った。図20a、20bは、本明細書に記述している核酸相互作用がどのように作用するかを示している。これらの実験では、いくつかの理由から高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)をマーカータンパク質として選択した。第一に、EGFPの活性は特徴的な蛍光によって容易に測定される。第二に、GFPファミリー由来の蛍光タンパク質はすでに、いくつかのタンパク質相補性研究でマーカーまたは検出タンパク質として使用することに成功しており、例えば、Ozawaら、2000, Ozawaら、2001 a,b; Ghoshら、2000; Huら、2002; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005はEGFPを首尾よく分割するスキームを説明している。
【0153】
これらの研究から、EGFPの153〜161アミノ酸間にあるループは分割に有用な部位であり:このループ内へのタンパク質挿入はインビボでのタンパク質折り畳みおよび発色団形成に影響を及ぼさないことが分かった(Ozawaら、2000, Ozawaら、2001 a, b; Ghoshら、2000; Huら、2002; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005)。また、重要なことには、2つのフラグメントが大腸菌内で共発現した場合、蛍光団または発色団は自発的には自己集結しないことが分かった(Goshら、2000; Huら、2002; Maglieryら、2005)。したがって、2つの分割ポリペプチドを明らかにするため、GFPのフラグメントは核酸相互作用により会合し活性的蛍光タンパク質を形成するように方向付けることが可能で、本発明者らはEGFPの2つのポリペプチドフラグメントが相補性オリゴヌクレオチドに結合されるようにデザインし、カップリングしたオリゴヌクレオチドの二重鎖DNA形成はEGFPフラグメントの再会合を促進し、EGFPタンパク質を活性化し、蛍光を増強させるということを明らかにした。
【0154】
これらの研究では、EGFPを位置158で、α−およびβ−フラグメントと呼ばれる2つの部分に遺伝子操作的に分割した。オリゴヌクレオチドとのカップリングには、α−およびβ−EGFPフラグメントは、それぞれC−およびN−末端の過剰システイン残基を考慮してデザインした。インテインとのC末端融合としてそれらを大腸菌で発現させ、intein self-splirring chemistry(NE Biolabs)を使用して精製した。精製したタンパク質を有用なCys-targeted biotin-HPDO chemistry(Pierce)を使用して、インビトロで定量的にビオチン化し、共役オリゴヌクレオチドを得た。ビオチン化タンパク質を最初にストレプトアビジンでタグを付け、その後、5’−または3’−末端でビオチンを持つオリゴヌクレオチドでタグ付けした。このようにして、異なる末端でビオチンを持つ相補性21nt長のオリゴヌクレオチドは、四量体ストレプトアビジン分子を介してEGFPのα−およびβ−フラグメントに容易に付加した(図20a)。これらの分子キメラを等モル量で結合すると、蛍光が増強し、EGFPに類似した発光スペクトルを有する蛍光団が形成された(図20b)。対照実験では、ストレプトアブジンと融合するが相補性オリゴヌクレオチドとは融合しないEGFPのビオチン化α−およびβ−フラグメントを混合したが、有意な蛍光は検出されなかった(図20b)。蛍光の回復は実験間で多少変化し、インタクトな折り畳まれたEGFの蛍光度は最大で100%近く回復し、よってほとんどのケースで、計画されたタンパク質相補性によってGFP蛍光度は100%回復し得る。
【0155】
オリゴヌクレオチドが付加された分割EGFPフラグメントの再構成から得た再構成EGFPの蛍光スペクトルは元のEGFPのものとは多少異なっていた。第一に、再構成されたタンパク質の発光極大および励起極大(490/524)は、元のEGFP(488/507nm、Zimmer, 2002)と比較して赤色に変化した(図20b)。このことは、再構成タンパク質中のβ−バレル構造のコンフォメーションにやや差異が生じる可能性によって説明可能である。第二に、Mg2+イオンを付加すると再構成複合体とEGFP間に差異が見られた。2mMのMg2+を付加すると元のタンパク質の蛍光度は約30%減少するが、再構成EGFPの蛍光度は初め約30%増加し、その後次第に減少する(図21)。Mg2+の異なる影響は、再構成EGFPに付加した二本鎖DNAによって説明可能である。実際にはDNA二本鎖は把持グリップのようなEGFPの2つのフラグメントを集結し、Mg2+イオンを付加するとDNA二本鎖はより安定することから、再集結したEGFPの安定性は高まり、したがって蛍光度は初め増加する。逆に、元の蛍光タンパク質では、発色団の付近にある二価金属カチオンが蛍光を消光することが知られている(Richmondら、2000; Zimmer, 2002)。したがって、再構成されたEGFPの蛍光度が徐々に減少することは2つの工程:Mg2+イオンの存在下でDNA二本鎖の安定性が高いことに起因する複合体の安定化および蛍光消光、の結果である
【0156】
実施例2
計画された高速タンパク質相補対形成のための検出タンパク質
【0157】
実施例1では、タンパク質相補対形成の際のマーカータンパク質または検出タンパク質は蛍光タンパク質であり、すなわちクラゲ、オワンクラゲGFP(F64L、S65T)の二重変異体である高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)である。EGFPと残基154〜158における他の関連した蛍光タンパク質の分割は、インビボでのタンパク質/タンパク質相互作用を試験するためにデザインされたいくつかの研究に使用することに成功している(Ghoshら、2000; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005)。これらの研究から、活性的EGFPはそのフラグメントからインビボで自発的に再集合することはなく、タンパク質/タンパク質相互作用の付加を必要とすることが分かった(Maglieriら、2005)。また、EGFP再集合は相互に作用し合うタンパク質の大きさに対してかなり許容性があることが分かっている:(Ghoshら、2000; Hu & Kerppola, 2003; Remy & Michnick, 2004; Maglieryら、2005)。
【0158】
RNAの局在性研究のためにタンパク質相補性を使用するには、フラグメントの再集合の反応速度が十分に速いことが特に重要である。本発明者らがインビトロで行った予備試験では、活性化分割EGFPフラグメントの非常に高速の相補対形成により蛍光度が増加している(図22A)。EGFPのα−フラグメントが事前に形成された成熟発色団を含むため、このことは可能であり、したがって活性化したコンフォメーションで起こり、EGFPの相補性β−フラグメントと関係する活性的蛍光タンパク質を即時に形成することが可能である。EGFP再集結における高速動態のこの固有な特性により、インビボで標的RNAの高速運動を監視することが可能となる。この目的のため、本発明者らは、1つのプラスミドから相補対形成系の2つのタンパク質成分を発現し、2〜3時間後に、アプタマータグが付いた標的RNAの合成を誘導した。このようにして、本発明者らは特定のRNAの運動を監視することができる。
【0159】
蛍光団の成熟化がEGFPの速度より速く(KOX=8x10−3s−1対1.5x10−4s−1)、量子収率が高いことから、例えば黄色蛍光タンパク質、Venus(F64L、M153T、V163A、S175G)の変異体などの他のマーカータンパク質を使用することも可能である(Nagaiら、2002)。また、このタンパク質は光退色に対して、より安定的であり、そのスペクトル特性は細胞タンパク質の自己蛍光と識別しやすくする。
【0160】
他の実施例では、マーカーは発色性/蛍光発生生成物をもたらす酵素である。
【0161】
シグナル増幅によりタンパク質相補対形成系を開発するため、本発明者らは蛍光促進性ベータ−ラクタマーゼ基質である細胞透過性のセファロスポリンベータ−ラクタム(CCF2)(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002; Wehrmanら、2002)でベータ−ラクタマーゼ系を活用した。この酵素系によりシグナルが約100倍増幅することが分かった(Zlokarnikら、1998; Galarneauら、2002)。定量的インビボ分析により、16時間後に、バックグラウンド量を超えて、1つのジャーカット細胞あたりベータ−ラクタマーゼが50分子という低量で検出され得ることが分かった。基質に対する暴露の時間を短縮することにより、ベータ−ラクタマーゼの20,000分子を定量した。この感受性は、バックグラウンドの自己蛍光を上回って検出されるには105〜106の標的分子量/細胞が必要である蛍光タンパク質達成可能感受性より大幅に高い(Zlokarnikら、1998)。
【0162】
したがって、酵素活性のあるマーカータンパク質は蛍光タンパク質より高いシグナルを発生させることとなる。しかし、低分子量の着色反応産物の拡散のため、酵素的アプローチには空間分解能が部分的に欠落している場合がある。よって、特定の実験の必要性に依存して、これら2つの系(蛍光または酵素)のいずれか1つが使用できる。
【0163】
相補性核酸相互作用に支援されたタンパク質相補対形成の可能性を証明するため、本発明者らは高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の分子をモデルとして選択し、それを2つのフラグメント、1〜158および159〜234aaに分断した。対応する遺伝子は、完全EGFP−1遺伝子(Clontech, PaloAlto, CA)を含むプラスミドを使用しPCRにより得た。両フラグメントはCys残基がC末端(アルファCys−フラグメント、1〜158)およびN末端(ベータCys−フラグメント、159〜234aa)で付加されるように操作した。SspDNABインテインのC末端融合として、PCR産物はTWIN−1ベクター(New England Biolabs, MA)にクローン化した。全構築物の構造は配列決定により確認した。
【0164】
EGFPのα−フラグメントは事前に形成した発色団を含む。スペクトルに多少差異があるにもかかわらず、核酸ベースのタンパク質相補性によって蛍光度が100%まで回復可能である。DNAを鋳型にしたEGFP再集合の動態は、t1/2〜100秒と驚くほどに速く(図22参照)、成熟発色団を有する編成タンパク質から得たEGFPの再生の動態に近似していた(Reid & Flynn, 1997, Zimmer, 2000)。注目すべきことに、蛍光タンパク質中の典型的な発色団成熟には時間がかかる(Zimmer, 2000、図22b)。高速の動態データに基づいて、本発明の方法は、成熟発色団を含むEGFPα−フラグメントの産生を可能にする。α−フラグメントは、(EGFP中、総数239個のアミノ酸から)N末端から158個のアミノ酸を含んで十分に大きいため、完全な発色団を形成する可能性がある。
【0165】
分子モデリングはEGFPのα−フラグメント中で完全に形成された成熟発色団の存在を支持している。図23において、α−フラグメントの構造的コンフォメーションの図式は、α−フラグメントがかなり小型の構造に折り畳まれていること(そのダングリングC末端部は例外である)、ならびにα−フラグメントおよび完全サイズのEGFP中の発色団形成アミノ酸の空間的配位は非常に緊密になっていることを示している(図23b、c)。このことは中心ヘリックスで強力な800以下の折り畳みを有する蛍光タンパク質のポリペプチド鎖の特定の組成とも一致しており、これは近接した蛍光団形成アミノ酸T66、Y67およびG68をもたらす(Barondeauら、2003; Donnelyら、2001)。α−フラグメント中の発色団は完全に形成されてはいるが、完全サイズのEGFPに存在するC末端β−フラグメント中のアミノ酸との重要な接触があまりなく、また、それは溶媒に暴露されているので、完全なタンパク質中の発色団に特徴的に見られる強力な蛍光を発する能力が欠落している。
【0166】
α−フラグメント中の蛍光促進性発色団の存在を直接的に確立するため、本発明者らはβ−フラグメント単独での吸光および蛍光スペクトルを分析し、それらを完全サイズEGFPのスペクトルと比較した(図24)。対照として、EGFPのβ−フラグメントおよび2つの非蛍光タンパク質(ストレプトアビジンおよびキモトリプシノーゲン)のスペクトルも記録した。α−およびβ−EGFPの吸光スペクトルを図24bに示す。確認できるとおり、それらには元のEGFPに見られる490nmでの特徴的な最高値を示しているものはない(図24a)。しかし、α−フラグメントは、β−フラグメント(図24b、挿入部)または任意の非蛍光タンパク質(図示せず)に見られない300〜400nmの領域におけるかなり高い吸光度を特徴としている。だがα−フラグメントの蛍光スペクトルは(図24d)、励起スペクトルでは360nm、弱発光スペクトルでは460nmで特徴的な最高値を明確に示している。これらのスペクトルは全長EGFPのものと全く異なっている(図24c)が、合成発色団のスペクトル、および部分的なタンパク質分解によってGFPから単離された短い発色団含有ペプチドのスペクトルと一致している(図25)(Niwaら、1996)。溶媒に暴露した(α−フラグメント中にあるような)発色団は300〜400nmで吸光するが、450〜500nmでは(完全サイズEGFPに見られるように)吸光しないことが好ましいということを留意されたい。個々の実験では、分割EGFPフラグメントはインビボの生体大腸菌中で発現した場合、完全に形成された元の構造EGFPに対して異なるスペクトルを示す(図25)。よってこのように生成されると、EGFPのα−およびβ−フラグメントは活性化形態であり、単独では非蛍光性または不活性であるにもかかわらず、再会合して活性的蛍光タンパク質を形成することが可能である。
【0167】
この、活性化相補性EGFPフラグメントの再会合はインビトロでもインビボでも存在可能であり、その核酸相互作用はEGFPフラグメント相補性を促進することが可能である。蛍光の回復または再構築の高速の動態は、対応する相補フラグメントによる再構築においてのみ活性的である活性化状態のフラグメントと一致する。特に、EGFPのα−フラグメントは成熟発色団を含み、したがって活性化状態ではあるが、成熟発色団の消光のため単独では不活性である。81個のC末端アミノ酸を含むEGFPβ−フラグメントを付加すると、環境から発色団を保護する小型の2分割されたタンパク質構造体が形成され、(関連のDNA−DNA相補性相互作用または他の核酸相補性相互作用により2つのタンパク質フラグメントが結合したままであるのなら)強力な蛍光が即時に発生する。
【0168】
これらのむしろ予想外の結果はインビボでの高速タンパク質相補対形成法を開発する上で非常に重要である。成熟発色団を事前に含むEGFPのα−フラグメントならびにα−フラグメントとβ−フラグメントとの再会合を利用すると、数秒以内に活性的EGFPタンパク質が形成される。1つのフラグメントが事前に形成された成熟発色団を含んでいるこれらの分割EGFPまたは分割蛍光フラグメントはRNA成分の誘導に先立って発現が可能である。RNA成分のRNA合成誘導はフラグメントの高速タンパク質相補対形成および蛍光度の増加を促進する。このことにより、発現の早期から特定のRNAの運命には従わざるを得ない。
【0169】
結果から相補性オリゴヌクレオチドを持つEGFPの2つのフラグメントをインキュベートすると、蛍光放出スペクトル(励起極大490nm)が上昇し、EGFPスペクトルに特徴的に524nmで最高値となった。EGFPフラグメントが相補性ヌクレオチドと混合されない場合、蛍光スペクトルに変化は見られなかった。
【0170】
実施例3
検出タンパク質と核酸結合タンパク質のコンジュゲーション
本実験では、本発明者らは、2つの分断したタンパク質キメラが発現しても、相互作用アプタマー配列の非存在下では蛍光は再構築されないことを確認した。この実験は大腸菌で行った。EGFP遺伝子のフラグメントはプラスミドpEGFP(Clontech)からPCRによって得られた。EGFP遺伝子の分割はインビトロでの実験と同じ位置で行った(1〜158、159〜239)。完全サイズeIF4A(pGEX−4A1)を含むプラスミドを使用した。eIF4AのF1およびF2フラグメントはPCRによって得られ、分割はOguroらに従って行った(図3参照)。SGリンカーを有する2つの融合タンパク質は、2つのメッセージの共発現のために構築された2つのプラスミド、pETDuet1およびpACYDuet−1(Novagen)に挿入した。これら2つのプラスミドの複製起源および選択マーカーは異なる。得られたプラスミドpMB12およびpMB13は大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)で共発現した。pMB12では、Aと称するEGFPの最初の158個のアミノ酸を、(Ser−Gly)5ペプチドリンカーを介して、F1と称する真核細胞開始因子タンパク質4A(eIF−4A)の最初の215個のアミノ酸に連結した。同様に、Bと称するEGFPのC末端の92個のアミノ酸を含むペプチドを、pMB13中のF2と称するeIF−4Aの後半部分に連結した(図3)。両構築物はT7プロモーターの制御下にあり、1mMのIPTGで誘導した。蛍光レベルをFACSで測定し、それらは非誘導培養でのレベルと同等であった(図4)。本実験の陽性対照として、本発明者らはベクターpTWIN(NEB)の全長EGFPを発現させ、陰性対照として―eIF4A(A−F1、B−F1)の同じF1フラグメントに融合したEGFPのフラグメントを発現させた(図4)。
【0171】
他の実験では、A−EGFP−F1−eIF−4AおよびB−EGFP−F2−eIF−4A核酸を、大腸菌で発現したpMP33と称する同じプラスミドで発現させた。pMB33プラスミドはpACYCDuet1(Novagen)の誘導体であり、マーカータンパク質(例えばEGFPまたは酵素)のフラグメントおよびRNA結合タンパク質(例えばMS2コートタンパク質またはeIF4a)のフラグメントを含む両キメラ分割EGFP−eIF−4Aフラグメントタンパク質を発現する2シストロン性のプラスミドである。発現したキメラ分割フラグメントは標的RNAの非存在下では再会合しないが、標的RNA存在下では即時に再会合して機能的EGFPマーカータンパク質を生成する(図9c)。
【0172】
したがって、RNA結合タンパク質と標的RNAとの核酸相互作用は、インビトロおよびインビボでの高速タンパク質相補対形成、ならびに高速動態による分割EGFPフラグメントからの蛍光の回復を促進し得る。これは、会合した21bpのオリゴヌクレオチドまたはRNA結合タンパク質のいずれかと核酸との相補結合によって促進が可能である。
【0173】
実施例4
アプタマー−核酸結合タンパク質対の選択
【0174】
本発明の一実施態様では、タンパク質相補性は、対象となる核酸配列、例えばRNAに付けたアプタマータグを検出することに基づいている。検出タンパク質に結合した核酸結合タンパク質によりアプタマーは検出可能である。特に、核酸結合タンパク質を断片化し、個々のフラグメントを検出タンパク質のポリペプチドフラグメントに結合させた。アプタマー/タンパク質相互作用のいくつかのパラメーターは核酸ベースのタンパク質相補性を首尾よく開発させるためには重要である。(i)RNAアプタマーとRNA結合タンパク質間の結合親和性は、マーカータンパク質の再集合のためのエネルギーを提供するのに十分高いことが好ましい。(ii)アプタマーの長さは長すぎないことが好ましく、そうでなければ、アプタマーをRNAに導入するとその発現および挙動に変化が起こる可能性がある。(iii)RNA結合タンパク質は、好ましくは、分離したときに不活性であるが一緒に発現したときはアプタマーに結合可能である2つのドメインからなる単量体の小さいポリペプチドであることが好ましい。
【0175】
eIF4Aは真核生物開始因子であり、したがって、真核生物翻訳系の遍在性成分である。酵母内のその自然の濃度は高く(50mM)、もう1つの豊富な細胞タンパク質アクチンの濃度と同等である(Duncanら、1987)。それは、他の開始因子(4B、4H、4G、4F)との複合体で働くATP依存性RNAヘリカーゼとして作用する29kDの小さいタンパク質である(Kapp & Lorsch, 2004)。eIF4Aは2つのドメインのみから成り、その結晶構造はダンベル型に類似している:小型N末端およびC末端ドメインは柔軟な11aa長リンカーによって結合している(Johnson & McKay, 1999; Benzら、1999; Benzら、1999; Caruthersら、2000)。これらの構造的特徴によりこのタンパク質は、ドメイン切断に好都合で有用な道具になる。さらに、近年の研究では、ナノモル範囲にある親和性でeIF4Aに結合する強力な結合オリゴヌクレオチドまたはアプタマーが単離されている(Oguroら、2003)。Oguroらは強力に結合しているアプタマー配列が56ntと短くなり得ることを示し、切断したeIF4Aのドメインがアプタマーに結合不可能である一方、完全サイズのタンパク質は高親和性でアプタマーに結合可能であることを見出した(Oguroら、2003)。
【0176】
これらの性質のため、eIF4Aはタンパク質相補対形成の好適な候補となり、本発明者らの系に使用してタンパク質相補対形成を誘導した。本発明者らは2つのフラグメントに分割したeIF4Aを使用し、それらの各々をEGFP検出タンパク質のフラグメントに融合した。したがってRNAアプタマーの存在下でeIF4Aが再集合するとEGFPタンパク質の2つのフラグメントが結合する。アプタマー−eIF4A相互作用の親和性は、細胞内RNAを監視するために使用するMS2コートタンパク質/MS2RNA相互作用と同じ範囲にある(Bertrandら、1998; Beachら、1999; Beach & Bloom, 2001; Rookら、2000)。
【0177】
あるいは、相補対のデザインでは、マーカータンパク質のフラグメントに2つの異なるRNAアプタマーおよび2つの異なるタンパク質またはペプチドを付加してよい(図5)。このケースでのタンパク質またはペプチドは、高結合親和性のアプタマーをインビトロで単離したウイルスタンパク質のリストから選択する(表1を参照)。
【0178】
【表1】
【0179】
この代替的デザインの利点は、1つのタンパク質が2つのフラグメントに分離するより、2つの異なるタンパク質またはペプチドが互いに相互作用する可能性のほうが低いことである。分割タンパク質のケースでは、切断したタンパク質のフラグメントが自然に再集合する可能性は依然としてある。アプタマー/タンパク質対を選択する主要なパラメーターは複合体の安定性(Kd)であり:相互作用が強いほど、マーカータンパク質相補対形成の可能性が高くなる。本発明者らは、化合物が対称的形状であることからタンパク質(またはペプチド)の類似したサイズが活性的な相補複合体形成に有利であると結論付ける。
【0180】
人工アプタマーのインビトロでの選択では、短いペプチドに結合する際に高度に特異的であり同族ペプチドにのみ結合するRNA構造が見出されることが可能である。同時に、それらの短いペプチドを含む大きめのタンパク質は異なるアプタマーと交差反応する(Herman & Patel、2000)。例えば、Rexタンパク質がRev応答性要素の一部に結合し、機能的にRevと置き換わることが可能であることは周知である(Bogerdら、1991; Rimskyら、1988);しかし、インビトロでの選択では、Revペプチドと相互作用しない抗Rex特異性アプタマーが単離される(Baskervilleら、1999)。標的RNAは、結合タンパク質に対する構造的ドメインを含むようにデザインすることも可能である。この標的RNAは、対応するプラスミドからも発現する。
【0181】
表1は、タンパク質相補対形成のRNAタグとして使用可能な、強力に親和性結合しているアプタマーとペプチドの対をいくつかを示している。あるいは、本発明に包含される潜在的RNA−タンパク質パートナーの例には追加が可能であり、限定されるわけではないが以下を含むリストから選択される:
(i)MS2コートタンパク質−RNAステムループ(Sawata & Taira, 2003; Valegardら、1997)。
(ii)TAR−TatBIV−1ステムループ(Royら、1990; Comolliら、1998)。
(iii)転写活性化因子として働くことが分かっているG3/C3ステムループの3リピート(Jarrell & Ptashne, 2003)。
(iv)アプタマーの3リピート(Yamamotoら、2000)。
(v)最大Kd=27nMである、58塩基まで削減可能であるeIF4A−87nt長のアプタマー(Oguroら、2003)。
【0182】
実施例5
アプタマー−核酸結合タンパク質相互作用に方向付けられたタンパク質相補対形成
【0183】
本発明の一実施態様では、実時間タンパク質相補対形成法はアプタマータグを対象となるRNAに組み込むことに基づいており、この組み込みは、それぞれマーカータンパク質およびRNA結合タンパク質のフラグメントを含む2つのタンパク質キメラのみからなるタンパク質複合体により認識されるものである。この系を確実に使用するために、アプタマータグの組み込みによりRNA合成および挙動が妨害されてはならない。
【0184】
対象となるRNAを監視することに対するタンパク質相補対形成の効用を示すため、アプタマーを対象となる遺伝子に付加した。アプタマーが真核生物遺伝子発現に影響を及ぼさないことを示すため、本発明者らは、出芽酵母株YPH500(MATα、ura3−52、lys2−801amber、ade2−101ochre trp1−Δ63、his3−Δ200、leu2−Δ1)中のレポーター遺伝子の停止コドンのすぐ後方に64ntのオリゴマーを誘導した(Oguroら、2003)。本発明者らはレポーター遺伝子、例えばEGFPが人工Tet応答性GAL1プロモーター下にある誘導性システムを使用した(Blakeら、2003)。この系では、ガラクトースの存在下でTetRがEGFPの発現を媒介するようにTetR遺伝子をGAL10プロモーターから発現させる(図1A)。この抑制は、TetRに直接結合する誘導因子、無水テトラサイクリン(ATc)の添加により取り除くことが可能である(図1B)。その後ガラクトースおよびATcの存在下でのEGFPの発現を、誘導可能転写系の染色体への組み込みを含む細胞でのフローサイトメトリー分析(FACS)により定量した。非修飾EGFPを発現する細胞と、アプタマーがこの遺伝子の3’末端に挿入されている細胞との間には蛍光度の差異は見られなかった(図2)。ゆえに、アプタマー配列を有する遺伝子の3’にタグを付けることは、タンパク質レベルでの遺伝子発現に影響を及ぼすとは思われない。RNAレベルはまたこのアプタマータグの存在には影響を受けないと本発明者らは合理的に推測した。
【0185】
文献の分析から、RNA合成を妨害することなくアプタマー配列は5’−または3’−非修飾RNA領域内に組み込み可能であり(Hansonら、2003; Nickensら、2003)、一方それは、特に組み込まれたアプタマーがいくつかの翻訳調節因子、例えばテトラサイクリンと相互作用すれば翻訳の効率に影響を与え得るということが分かる(Hansonら、2003)。本発明者らの予備段階の結果はこれらのデータを裏づけ、eIF4Aに抗するアプタマーの3’非翻訳領域への取り込みは酵母のマーカータンパク質EGFPの発現に影響を及ぼさないことを示し、このことはEGFPのmRNAレベルも影響を受けないことを示唆している。
【0186】
系を一層フレキシブルなものとするために、5’非翻訳領域がアプタマーの組み込みにも使用可能であるかを試験することによって、これらの実験を広げることが可能である。例えば、マーカータンパク質としてEGFPを使用し、その発現をアプタマータグの位置に準じてインビボで測定する。アプタマーの効果に次いで、蛍光セルソーター(FACS)を使用して総細胞蛍光度を測定し、RNA転写レベルを直接評価するノーザンブロット分析を行う。依然として、アプタマータグが組み込まれていると考えられる最も有望な部位は3’非翻訳領域である。
【0187】
RNAの運動と局在化に対するタグ組み込みの効果もまた考慮すべき事柄である。mRNAの3’−UTRはmRNA局在化を決定する調節要素を含む(概説は、Hesketh, 2004を参照)。例えば、ASH1 mRNAの3’UTRはmRNAの輸送および出芽内での固定に十分なシグナルをコードする。しかし、多くの場合、メッセージの他の部分内にある配列も適切なRNA局在化に必要である(Chartrandら、1999, Gonzalezら、1999)。例えば、最短の可能性があるアプタマータグは、メッセージのどの部分も除去することなく使用する。その際、調節RNA配列すべてを維持し、全RNA/タンパク質相互作用を保存すればRNAの局在化は損なわれることがない。再集合タンパク質複合体のRNAテンプレート上の位置決めは、小規模の蛍光タンパク質(またはベータラクタマーゼ)およびRNA内でアプタマーと相互作用する小さいペプチドを考えると、かなり許容性がある。にもかかわらず、修飾RNAの位置確認の適切さは、所与のmRNAに特異的なプローブを用いてインサイチュハイブリダイゼーションにより対照実験で直接点検する。
【0188】
実施例6
それぞれ蛍光マーカータンパク質のフラグメントおよびRNA結合タンパク質のフラグメントを含む2つのキメラタンパク質の等モル共発現系の開発。
【0189】
本発明のリアルタイムタンパク質相補対形成法を成功させるための、RNA結合タンパク質に結合し、等モル量で生成され、再会合の準備ができている活性化マーカータンパク質を各々が含む2つのポリペプチドタンパク質フラグメントの配位合成。タンパク質相補対形成についての事前研究から、2つのタンパク質融合体が異なるコピー数でプラスミドから合成されればGFPの蛍光の回復は検出されないということが分かった(Maglieryら、2005)。よって本発明者らは、タンパク質フラグメントの等モル合成が起こる系、およびRNA成分の独立した合成のための誘導性の系を開発した。
【0190】
等モル量の2つのキメラタンパク質を発現するために、本発明者らはいくつかのメッセージの共発現を可能にする発現ベクターを使用した(pETDuetまたはpACYCDuetベクター、Novagen)。これらのプラスミドは2つのT7プロモーターおよび2つの多重クローニング部位を有し、したがって各プラスミドは2つのメッセージの発現を支持することが可能である。同時に、これらのプラスミド中の複製起源は異なり、これがそれらの共発現を可能にしている。本発明者らは2つのキメラタンパク質を1つのプラスミドに、タグがついたRNAを異なるプラスミドに位置付けし;その結果、RNA発現は独立して誘導が可能となる。RNA発現の独立した誘導のためのpBADプラスミドを使用する。抗EGFP抗体(Clontech)を使用したウエスタンブロット分析により、キメラタンパク質の発現レベルを試験し、一方、RNA合成はノーザンブロッティングにより試験した。
【0191】
これらの実験を大腸菌内で行い、FACSを使用して総細胞蛍光度を測定してタンパク質相補性を監視した。対照として、RNA成分の非存在下で2つのタンパク質キメラを発現する細胞のバックグラウンドは蛍光を示さず(図9A)、一方アプタマー存在下でのその発現は蛍光を示し(図9C)、アプタマー/RNA結合タンパク質/ペプチド相互作用の特異性が立証された
【0192】
実施例7
分割ポリペプチド検出タンパク質としてのベータラクタマーゼの使用
【0193】
クラスAベータラクタマーゼは、2つの独立した群によるタンパク質相補性アッセイ中、分割マーカータンパク質として使用してきており(Wehrmanら、2002; Galarneauら、2002)、酵素のこの種におけるいくつかの興味深い特徴により説明できる。第一に、これらのタンパク質は比較的小さい単量体酵素であり、その結晶構造は周知である(Jelschら、1993)。ベータラクタマーゼは細菌細胞でも真核生物細胞でも発現し;真核生物細胞は内在性ラクタマーゼ活性を持たないことが重要である。ベータラクタマーゼをインビボで使用して強力なツールとする他の有意な因子は、Tsienのグループが開発した細胞透過性蛍光基質が利用可能であるということである(Zlokarnikら、1997)。
【0194】
ベータラクタマーゼは残基196〜198で切断可能であり、これらのフラグメントは、相互に作用するタンパク質を付加すれば互いに相補対を形成し得るということは、上述したとおり両グループによって示されてきた(Wehrmanら、2002; Galarneauら、2002)。この部位(196〜198アミノ酸)は触媒中心と逆の部位に位置し、周期的な二次構造は示さない。Blauのグループは、Aps−Gly−ArgトリペプチドをベータラクタマーゼのN末端フラグメントのC末端へ組み込むと酵素活性が10,000倍まで増加したことを示している(Wehmanら、2002)。結果として、ベータラクタマーゼ活性に基づくタンパク質相補性は約2けた分シグナルを増幅させ、シグナルはタンパク質誘導後数分以内に検出が可能となる(Wehrmanら、2002)。
【0195】
酵素活性の再構築に基づくタンパク質相補性は感度に関して有望であるが;しかしシグナルの拡散により空間分解能が欠落している可能性があることは強調しておく必要がある。よって、空間分解能は重要ではなく、例えばRNAの検出が低量であることが重要である場合に、アッセイのこの形式が適用されることは好ましい。
【0196】
原核および真核生物細胞におけるインビボRNA検出アッセイのための、ベータラクタマーゼを検出タンパク質として使用した方法において、ベータラクタマーゼはBlauのグループが示したとおり、活性化ポリペプチドフラグメントへと分割が可能である(Wehrmanら、2002)。2つのフラグメント、1つはアミノ酸残基24から197のみから成り(細胞内酵素を保存するアルファ−フラグメント欠失ペリプラスム分泌シグナル系)、2つ目は残基198から240(ベータフラグメント)のみから成っているこれらのフラグメントは大腸菌内でクローン化する。アルファ−およびベータ−フラグメントは最初にpUC19からPCRで増幅し、トリペプチドNGRはPCRによってアルファ−フラグメントのC末端に付加する。アルファ−フラグメントをコードするPCR生成物は、ポリペプチドリンカーを有するeIF4AのF1フラグメント下流でクローン化し、一方ベータラクタマーゼのベータ−フラグメントはeIF4AのF2フラグメントの下流でクローン化する。
【0197】
原核生物の発現では、キメラ分割βラクタマーゼ−eIF4A複合タンパク質をpCDF−duetベクター(Novagen)に誘導し、一方eIF4A結合アプタマーを有するRNA標的はpACYCDプラスミドから発現させる。得られたプラスミドは大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)で共発現させる。
【0198】
真核細胞中のeIF4Aポリペプチドフラグメントに結合しているベータラクタマーゼの発現は出芽酵母で行う。酵母内でベータラクタマーゼおよびeIF4Aのフラグメントを含むキメラタンパク質[ベータラクタマーゼ(A)−(F1)およびベータラクタマーゼ(B)−(F2)]を発現するのに使用するプラスミドは、HAまたはmycエピトープタグに融合したタンパク質をそのN末端で発現させるために修飾される発現ベクターpDB20(Beckerら、1991)の誘導体である。このことにより、強力なADH1プロモーターから構造タンパク質が発現し、ウエスタンブロットによる遺伝子発現が分析可能となる。プラスミドpRS4D1(Blakeら、2003)は修飾し、遺伝子の3’末端に位置する64nt長のアプタマータグとともに(EGFPの代わりに)標的RNAを発現する。このプラスミドを株YPH500のゲノムに組み込むことにより、培地にガラクトースおよび無水テトラサイクリンを添加するとタグ化RNAの発現が調節される(Blakeら、2003)。
【0199】
ベータラクタマーゼ活性が存在しない場合、409nmでクマリンが励起し、FRETが起こり、520での発光が起こる(緑色蛍光)。アプタマーおよび分割eIF4Aフラグメント間の相互作用のためベータラクタマーゼが活性し、ベータラクタム環が開環し、フルオレセインが分離し、この場合、FRETは起こらず、447nmでの発光が見られる(青色蛍光)(Zlokarnikら、1998)。
【0200】
実施例8
インビトロおよびインビボでの高速タンパク質相補対形成によるRNA分子の検出
【0201】
以下の実施例では、本発明者らは、従来の検出レベルを超える感受性を有する生体細胞内RNA検出のロバストな方法を開発した。活性的検出タンパク質の実質的に高速の再構築およびバックグラウンドの低減を可能にする活性化分割蛍光フラグメント(実施例2参照)を使用するリアルタイム高速動態タンパク質相補対形成と、酵素的工程を使用して誘導したシグナル増幅とを組み合わせることにより、適量の核酸分析が可能な検出技術がもたらされる。
【0202】
酵素活性または蛍光特性を有するタンパク質は二分割される(α−およびβ−サブユニット)。これらの部分を、アプタマー結合ドメインを持つ核酸結合タンパク質を有するキメラとしてインビボで発現させる。理想的な核酸結合タンパク質は、自身では不活性であるが集結すると活性的である2つの部分のみからなるものである。核酸結合タンパク質により認識可能であるモチーフを含むRNAの存在下では、検出タンパク質の活性は即時に回復する。タンパク質検出体が酵素である場合にシグナルが増幅する。タンパク質が蛍光性である場合、シグナル増幅は見られないがバックグラウンドも見られず、このことは蛍光が完全に標的RNAの存在に依存しているからである。
【0203】
本発明者らは、大腸菌BL21(DE)3細胞においてタンパク質融合物およびアプタマー含有RNA転写産物を共発現させるための構築物を作製した(図9)。セリンおよびグリシン残基のみからなる柔軟なポリペプチドリンカーを介して、EGFPフラグメント(残基1〜158)のC末端と、残基1〜215を含むeIF4AフラグメントのN末端とを融合した。2つのT7プロモーターから得た2つのオープンリーディングフレームの発現のためにデザインされたベクターpACYCDuet−1(Novagen)の最初の多重クローニング部位(MCS)におけるこの融合物をクローン化した。同様に、柔軟なポリペプチドリンカーを介して、EGFPフラグメント(残基159〜238)のC末端を、アミノ酸216〜406を含むeIF4AフラグメントのN末端に融合した。この融合物をベクターpACYDuet−1の第二のMCSにクローン化し、およそ等モル量の2つの融合タンパク質が発現可能な構築物を作製した。ベクターpETDuet−1(Novagen)を使用し、縦一列になっているeIF4Aと相互作用しているアプタマー配列の2つのコピーを含む360nt長のT7転写産物の発現に使用した。この小さいメッセージは33ntのリーダー配列のみから成り、その後にアプタマー配列の2つのコピー、および約200ntのヌクレアーゼ耐性T7停止配列が続く。
【0204】
タンパク質およびRNAの共発現のため、全相補性複合体および適切な対照を発現する大腸菌細胞は誘導因子、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下、室温で培養した。培養物が約0.5(OD600=0.5)の最適な密度に達したとき、それらを蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した(図21)。アプタマー含有RNA転写産物とともに相補性融合タンパク質を共発現させると、平均蛍光度が10〜20倍増加した(図9C)。しかし、アプタマー含有転写産物が不在であれば、相補性融合タンパク質を有する大腸菌細胞はバックグラウンドレベルを超える蛍光を示さない(図9A)。さらに重要なことは、非タグ化転写産物との複合体を相補対形成するタンパク質成分を細胞が発現しているとき、蛍光度の優位な上昇は見られなかったということである(図12)。T7転写産物がリボソーム結合部位を有していても、または欠いていても、蛍光収率に差異はなかった。このことから、メッセージの翻訳はその検出を干渉しないということが示唆される。
【0205】
実施例9
インビボRNA分子定量
【0206】
インタクトなEGFPを発現する細胞の蛍光度は相補対形成系を有する細胞のものより約30〜50倍高かった(図9Bおよび9C)。濃度をRNA濃度で判定する再集合EGFPと比較して全長EGFPの量は多いはずであることから、この差異は驚くほどではない。各RNA分子を数回リボソームで再利用することにより、RNAに対するタンパク質のモル比は1を超えることは周知である。
【0207】
次に、EGFPキャリブレーションビーズ(BD Biosciences Clontech)を使用し、細胞1個当たりの再集合EGFP分子の絶対平均数、ひいては本発明者らの検出系の効率を評価した。約40のコピー数を有するpETベクターからRNAを発現する細胞が、その細胞容量が1.41x10−15Lであれば、1〜2μMのRNAに対応する再集合EGFPの分子を500〜600個生成することを本発明者らは見出した(Leeら、2005)。このRNA濃度は、50〜70コピー/細胞であるベクターから大腸菌内で得られた実験結果と良好に相関している(Leeら、2005)。予測した結果と実験結果との一致から、アプタマー含有RNAの事実上すべての分子は再集合したタンパク質複合体に検出されるということが示唆される。RNAアプタマーを持つプラスミドのコピー数(40から100コピー/細胞)を増加させてこの仮説を試験し、細菌細胞は元の構築物と比較した場合、より高い蛍光度を示すことが認められた(図13)。この結果は、RNA分子のほとんどは本発明者らの相補対形成系により検出されるという本発明者らの結論を支持している。
【0208】
その後、再集合EGFPを持つ細胞の蛍光スペクトルと全長タンパク質を発現する細胞のスペクトルを比較した。これらの実験において、再集合複合体では(元のEGFPでの490nmに対して)470nmで励起が最大になること、および(元のEGFPでの508nmに対して)約520nmで発光が最大になることが見出された(図14)。この差異は、元のEGFPと再集合EGFP−RNA複合体間のタンパク質コンフォメーションが変化する可能性があることで説明できる。この結果はまた、インビトロ実験で2本鎖オリゴヌクレオチドを付加したことにより再集合した分割EGFPでは発光スペクトル(最大524nm)が同様に赤方偏移したことから細胞内蛍光シグナルは核タンパク質複合体の形成に起因しているという考え(Demidovら、2006)を支持している。
【0209】
実施例10
細菌細胞内蛍光度の空間的および時間的オシレーション
【0210】
落射蛍光顕微鏡およびB&Wカメラを使用し、RNA標識系を発現する細胞を観察した(図9cおよび11)。並行して、微分干渉コントラスト像を記録し細胞数および形状を分析した。複合体形成および蛍光発光のための時間に余裕を持って、細胞を室温で一晩培養した。このため大部分の細胞は分裂がほとんど起こらない定常期にあった。いくつかの例では、細胞分裂が見られず、すべての例で、新たに分裂した細胞は蛍光性ではなかった(図15)。
【0211】
タンパク質融合物とアプタマーを含むRNA転写産物とを共発現させると、細胞の一極または両極に明るい蛍光スポットが見られる蛍光細胞が生じた(図10)。対照的に、完全サイズのEGFPが発現すると、細胞全域に蛍光分布が一様になった強力な蛍光細胞が生成された(図9b)。同時に、アプタマー発現のないタンパク質融合物の発現では、有意な蛍光は生じず(図9a)、このことは本発明者らが事前に行ったフローサイトメトリーの結果を裏付けている。
【0212】
経時的顕微鏡検査では、蛍光粒子の顕著ないくつかの特徴ならびに細胞の総蛍光度の変化が明らかになった。図10では、一つの代表的な実験において30分間隔で収めた連続像が示されている。同じ領域の細胞は異なる振幅の同期発振を示した(図11c)。各細胞の総蛍光度は最初の2時間で徐々に減少したが、その後再度増加した。同時に、総細胞蛍光度が減少すると、細胞極での高蛍光粒子が現れる。興味深いことに、実験の工程で蛍光性になる細胞もある(図11b、180分後以降)。これらの変化の動態は実験間で変化したが、経時的な蛍光度の増加および減少の全体的なパターンは常に同一であった。
【0213】
細胞蛍光度の変化がRNA動態を実際に明らかにすることを示すため、本発明者らは細胞培養物から総RNAを抽出し、MALDI−TOF MS検出法を併用した実競合PCR(rcPCR)を使用し、絶対濃度のアプタマーおよびmreB RNA、正常化に使用するハウスキーピング遺伝子を測定した。実競合PCRは、増幅に先立って対象遺伝子に対する内部標準として挙動する連続的に希釈したDNA競合体を使用している。競合体と対象遺伝子間の単一塩基の差異は、伸長生成物の量を定量するMALDI−TOF MSを使用した1または2ntの塩基伸長反応に利用されている。
【0214】
アプタマーmRNAレベルの分析から、制御遺伝子mreBが定常である間は発振は統計的に有意であることが分かる(表2)。データから、アプタマー転写産物は1時間の時点でピークに達し、その後急速に減少し、120から150分の時点でゼロ時点のベースラインに戻る。その後に他の転写産物が170分時点でピークに達し、最後に急激に下降し、その後、最初のゼロ時点でのアプタマーmRNAレベルまで戻る。
【0215】
【表2】
濃度値は各細胞培養プレートから抽出したRNAのサンプルのものである。ハウスキーピング制御遺伝子mreBに対して調整し、ゼロ時点のベースラインに対して算出した倍率の数値。ブートストラップP値は、遺伝子がベースラインと異なって発現していることを確信させる尺度となる。高品質アッセイの指標である残存値および不適合度値は、分析した試料すべてで<0.05である。
【0216】
実施例9および本実施例に使用する技術を適用し、RNA局在化および運動を検出することが可能である。この新たな技術のこのような応用の一例によりASH1 mRNAが研究可能である。このRNAはHOエンドヌクレアーゼの転写を阻害する細胞運命決定因子をコードし、娘細胞中の接合型相互変換を遮断する。様々な方法から、出芽した酵母細胞の出芽の先端にそれが局在していることが分かっている。ASH1 mRNAが良好に研究されており;そのためそれはモデル実験として使用され、生体細胞内のRNA局在化および運動の分析における感受性および特異性を確認することが可能である。
【0217】
実施例11
二成分アプタマー−ペプチド相互作用を使用したインビボRNA検出
【0218】
実験9および10では、本発明者らは、蛍光タンパク質相補性に、RNA結合タンパク質とRNAアプタマーとの高親和性相互作用を併用したインビボRNAモニタリングを示した。これらの実験では、RNA結合タンパク質は、ダンベル型構造のみからなる真核生物開始因子4A(eIF4A)である。eIF4Aを2つのフラグメントに切断し、各フラグメントを高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の分割フラグメントに融合させる。2つの相補対形成タンパク質融合物とeIF4A特異性アプタマー含有転写産物とを共発現させると、細菌内でEGFP蛍光度が回復した。このアプローチの主要な利点は、蛍光シグナルが標的RNAにのみ判定されること、すなわち、RNAが存在しなければ検出可能シグナルはないということである。また、比較的小さいタンパク質複合体は標的RNAに集結し、RNA機能および局在化を干渉しないことが好ましい。
【0219】
実験11で、本発明者らは、RNA可視化に対する代替的実施態様の開発に関するデータを提供しており、ここではアプタマー結合部分は2つの短いペプチドである。このアプローチでは、2つの異なるRNAアプタマーを対象RNAにタグとして付加し、分割EGFPのフラグメントと融合した2つの短いウイルスペプチドに認識させる(図16)。これらの修飾には理由がいくつかある。第一に、集結したeIF4Aを含むものと比較して、標的RNAに集結したタンパク質複合体は実質的に小さい。概して、検出ツールが小さいほど、機能を干渉する可能性は低い。第二に、eIF4Aは真核細胞中では翻訳機械の部品であり、細菌タンパク質間の緊密な相同体も有する。したがって、過剰発現が正常細胞機能を干渉する可能性も多少ある。同時に、短いウイルスペプチドは細菌または真核細胞中では相同タンパク質を持たず、したがって細胞中のそれらの発現は細胞機能に対して中立である可能性がより高い。最終的に、RNA認識複合体の代替的デザインは新たなアプローチにさらなる柔軟性をもたらし、その普遍性を示す。
【0220】
二成分アプタマー−ペプチド相互作用に基づくインビボRNA検出に対する相補性複合体のデザイン。本発明者らのスキームにしたがって、生細胞中のRNAを検出するために、2つのペプチドと相互作用することが可能な2つのアプタマー配列とともにRNAを提供することが好ましい。各ペプチドは、分割した高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の2つのフラグメントのうち1つと融合した融合物として細胞中で発現することが好ましい(図16)。このようなシステム作業を行うには、いくつかの問題が考慮に入れられた;第一に、選択された各相互作用ペプチド/アプタマー対の親和性は高いことが好ましく、両対で同等の親和性で結合することが好ましい。第二に、2つのアプタマー/ペプチド対間には交差反応がないことが好ましく、すなわち各相互作用の特異性は十分高いことが好ましい。第三に、ペプチド間に相互作用がないことが好ましく、そうでなければペプチドはマーカータンパク質のフラグメントを集合させ、非特異性バックグラウンドを増加させてしまう可能性がある。次に、ペプチドの長さは、相補対形成複合体を対称的に集合させる長さと同等であることが好ましい。最後に、2つのアプタマーの位置付けにより、それらの各々が、対応するペプチドと独立して相互作用するようになることが好ましい。このことはアプタマー間に位置した柔軟リンカーを使用することで確立できる。
【0221】
多アルギニンモチーフ(ARM)を有するペプチドは、多数のRNA結合タンパク質と、対応するRNA標的との相互作用の高親和性および高特異性を判定するフラグメントである(22)。これらのペプチドの共通の特徴は、他の類似性が不在の場合にアルギニンが優勢であることである。近年の研究は対応するRNAとのARM−ペプチドの相互作用のメカニズムを理解することを目的とし、アルギニン位置の特異的パターンおよびペプチド骨格の柔軟性が対応するRNAリガンドの特異的結合の原因となっていることを結論付けた(23)。しかし、多数のARM−ペプチドは「カメレオン様の」挙動を示し、親和性が低いにもかかわらず多くのRNA標的に結合する(24)。このことに留意して本発明者らはARMウイルスペプチドからRNA結合ペプチドを選択したが(25〜27)、それらをタンパク質相補対形成に適用する前に、対応するRNAとのそれらの交差反応を試験した。
【0222】
アプタマー−ペプチド対を選択するインビトロ実験。利用可能データに基づいて、本発明者らは3つのペプチド/アプタマーペア;(i)HIV Rex;(ii)バクテリオファージλN;および(iii)HTLV−1Revを選択し(表1参照)、同族パートナーとの結合親和性および2つの他のRNAアプタマーとの交差反応をインビトロで試験した。RNAアプタマーの濃度を固定するとARM−ペプチド濃度の増加に伴って複合体が形成可能になる条件下で、非放射活性ゲルシフトアッセイを行った。非結合RNAアプタマーおよびシフトした複合体の量を定量した(表1)。結果からλNペプチドおよびHIV−1Rexペプチドは高特異性を示し、不一致RNAアプタマーとは交差反応しないことが分かった。同時に、HTLV−1Revペプチドは2つの不一致RNAアプタマーと多少交差反応を示した。これらの結果に基づいて、本発明者らは、λNおよびHTLV−1のRexペプチドならびにそれらの対応するアプタマーが本発明者らのタンパク質相補性複合体中で使用するのに最適な対を提供すると結論づけた(表3参照)。
【0223】
【表3】
【0224】
二成分ペプチド/アプタマー相互作用を使用した生細菌細胞におけるRNA転写産物の検出。タンパク質融合物およびアプタマー含有RNA転写産物をクローン化し、大腸菌BL21(DE)3細胞で発現させた(図17)。EGFPフラグメント(残基1〜158)のC末端を、セリンおよびグリシン残基のみからなる柔軟なリンカーを介してRexペプチド(16aa)のN末端に融合させた。同様に、第二のEGFPフラグメントのN末端(残基159〜238)を、またポリペプチドリンカーを介してλNペプチド(22aa)のC末端に融合させた。両タンパク質融合物をコードする全DNA挿入部分およびその間にあるプロモーター領域を多段階PCRで合成し、NcoIとAvrII部位間にあるベクターpACYCDuet−1へクローン化し、2つの融合タンパク質を共発現可能な構築物を作製した。5または10dT残基により連結した2つのアプタマー配列を含む230nt長のT7−転写産物を発現するために、ベクターpETDuet−1(Novagen)を使用した。このメッセージはリーダー配列から成り、この後に2つのアプタマー配列、約200ntのヌクレアーゼ耐性T7終止配列が続いていた。
【0225】
全相補性複合体を発現する大腸菌細胞および適切な対照を、タンパク質およびRNAの共発現のための誘導因子、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下で、室温で一晩培養した。培養物が約0.5(OD600=0.5)の光学密度に達したとき、それらを蛍光活性化セルソーター(FACS)で分析した(図17)。全相補性複合体を発現する大腸菌細胞の蛍光度を、2つのタンパク質融合物のみ、ならびに2つのタンパク質融合物に2つのアプタマーの不適切な組み合わせを加えたものを発現する細胞の蛍光度と比較した(10dTのヌクレオチドと連結した2つの同一Rexペプチド結合アプタマー)。
【0226】
結果として、1mMのIPTGで誘導すると、RNA発現の非存在下で細胞蛍光は高まり(図17A)、適切および不適切なアプタマー配列を発現する細胞の蛍光分布に差異も見られなかった(図17A)。1mMのIPTGで誘導したT7プロモーターが、RNA標的が不在の場合でさえ集合するタンパク質融合物を非常に高濃度で発現することを本発明者らは示唆した。この示唆が正しければ、IPTG濃度の減少はバックグラウンドの減少につながる。確かに、IPTG濃度が10倍減少すると、蛍光分布はタンパク質融合物のみを発現する細胞ならびにタンパク質と2つの適切なRNAアプタマーを発現する細胞に分離した。しかし、特異性は依然として不適切対適切アプタマー配列を識別するに十分な高さではなかった。最終的に、IPTGの濃度を0.01mMまで減少させると、適切および不適切アプタマー配列を有する細胞で蛍光分布が分離した。これらの最適化した条件下で、全相補性複合体を発現する細胞の平均蛍光度はバックグラウンド(RNA成分)の蛍光度より10〜15倍高く、適切なアプタマー配列を有する細胞は、不適切配列の細胞より4〜5倍高い蛍光を示した。
【0227】
蛍光変化の動態。最適化条件で全相補性複合体を発現する細菌細胞を蛍光顕微鏡で分析した。蛍光分布には多様なタイプが見られた(図18)。タンパク質相補対形成がeIF4A−アプタマー相互作用により誘発される場合、ほとんどの細胞で蛍光度が極で最高値になり、実験で得られた結果に類似していた。蛍光粒子が細胞の中央に局在している細胞もあり(約10%)、これはGoldingおよびCoxにより報告された結果に類似していた(18)。
【0228】
タイムラプスイメージングは、蛍光が時間的および空間的な変化を明らかにし、eIF4Aをベースにした相補対形成系での結果にも類似していた。図18には、1つの代表的な実験で4時間撮影した30分間隔の像が配列されている。細胞蛍光度は発振の変化を示し、異なる細胞で発振は同期していた(図19b)。
【0229】
二成分アプタマー−ペプチド相互作用およびタンパク質相補対形成系により得られた結果は、分割開始因子4A(eIF4A)とその対応するアプタマーとの相互作用を利用した系で得られた結果に、いくつかの点で非常に類似している。第一に、大多数の細胞における蛍光粒子の極への局在化は両方法に特徴的である。第二に、時間的および細胞空間的蛍光変化の動態はまた、eIF4Aをベースにした系に類似している。最後に、細胞間蛍光変化の同期化は両系で目視できる。これらの結果は、RNA−タンパク質結合タンパク質または該タンパク質相補性複合体中で使用するペプチドの性質は系が稼動するのに重要であること、また他の分割タンパク質または短いペプチドが類似した用途に使用可能であることを暗示している。生細胞中のRNA可視化のためにMS2コートタンパク質をベースにした系を使用することに関する公開された結果はまた、この結論を支持している(18、20)。
【0230】
同時に興味深いことには、2つの相補性のデザインを比較すると、蛍光シグナルの強度およびシグナル/バックグラウンド比に差異があることが分かった。本発明者らが完全に理解できない理由として、分割EGFPに融合した短いペプチドを発現する細胞の蛍光度は、EGFPと融合したeIF4Aのフラグメントを発現する細胞の蛍光度より大幅に高かった。本発明者らは、正電荷、ならびに負に帯電したタンパク質およびDNAと相互作用する能力に起因するARM−ペプチドは中立のeIF4Aフラグメントよりも第三の集団分子を介して集結する傾向が強いと仮定する。このことはEGFP集合やバックグラウンドの増加をまねく。バックグラウンドを減少させようと、本発明者らはIPTG濃度を低減し、シグナル/バックグラウンド比が10〜20倍であり、eIF4A系の場合と同じ範囲にある状態を見出だした。さらに、これらの条件下で、適切および不適切アプタマー配列間の識別も可能となった。
【0231】
材料と方法
【0232】
構築物および株
【0233】
pMB33およびpMB38は、それぞれ相互作用タンパク質フラグメントおよびEGFPのORFをクローン化するpACYCDuet−1(Novagen)の誘導体である。プラスミドpGEX−4AI(Dr. Chris Proudからの寄付)由来のマウスeIF4Aタンパク質のPCR増幅により、eIF4Aフラグメント1(F1:1〜215aa)をpACYCDuet−1(pMB09)に;2(F2:216〜406aa)をpETDuet−1(Novagen)(pMB11)にクローン化した。同様にEGFPフラグメント、アルファ(A:1〜158aa)およびベータ(B:159〜238aa)をpEGFP(Clonetech)からPCR増幅し、それぞれpACYCDuet−1(pMB08)およびpETDuet−1(pMB10)へクローン化した。10aaの柔軟ポリペプチドリンカー(Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser)を介してEGFPフラグメントAのC末端がeIF4AフラグメントF1のN末端に融合しているキメラ遺伝子(pMB12)は、Vaslら、2004(詳細は補足の方法を参照)にしたがって生成した。類似のプロトコールを使用し、融合B−F2(pMB13)を作製した。B−F2を、前述(Geiserら、2001)にしたがって、pMB12、pACYCDuet−1(pMB33)の誘導体にクローン化した(Geiserら、2001)。eIF4A相互作用アプタマー配列(58nt長)を含むT7転写産物を発現するpMB23はpETDuet−1(Novagen)の誘導体であった。pMB42はeIF4A相互作用アプタマーに対する配列をも発現するpRSFDuet(Novagen)の誘導体であった(さらなる詳細は補足の方法を参照)。大腸菌株XL10−Gold(TetrΔ(mcrA)183Δ(mcrCB−hsdSMR−mrr)173 endA1 supE44 thi−1recA1 gyrA96 relA1 lacHte[F’proAB lacIqZΔM15 Tn10(Tetr)Amy Camr])およびXL10−Gold Kanr(TetrΔ(mcrA)183Δ(mcrCB−hsdSMR−mrr)173 endA1 supE44 thi−1 recA1 gyrA96 relA1 lac Hte[F’proAB lacIqZΔM15 Tn10(Tetr)Tn5(Kanr)Amy)(Stratagene)をクローン化のために使用した。BL21(DE)3(大腸菌BF ̄dcm ompT hsdS(rB ̄mB ̄)galλ(DE3))(Stratagene)を、融合タンパク質および標的RNAを発現させるために使用した。
【0234】
EGFPおよびeIF4Aのフラグメントを含むタンパク質融合の調製はVasiら(Vasiら、2004)に記述された方法に準じた。5’−リン酸化オリゴヌクレオチドの2つのセットをデザインし、Integrated DNA Technology(Coraliville, IA)から購入した:
【表4】
オリゴヌクレオチドの下線部はAフラグメント(配列番号9)の3’末端;F1配列(配列番号10)の開始部;フラグメントB(配列番号11)の3’末端;およびF2フラグメント(配列番号12)の開始部に対応している。該オリゴヌクレオチド配列の残りはペプチドリンカーGSSGSS(配列番号9および11)およびGSGS(配列番号10および12)に対するコード配列に対応する。(EGFPのフラグメントAを有する)プラスミドpMBO8および(eIF4AのフラグメントF1を有する)pMBO9を、Xho1およびEcoN1制限酵素で切断し;これらの制限部位を5’からオリゴヌクレオチドがアニールする部位までに位置づけした。Expand Long Template FOR system(Roche Diagnostics)を使用し、これらの直線化したプラスミドおよびオリゴヌクレオチド1および2でPCRを、以下のプログラム:94℃で3分間;94℃で30秒間および61℃で305を30サイクル、ならびに72℃で10分間、最後に72℃で11分間伸長というプログラムにしたがって行った。その後PCR混合物を酵素Dpn1で処理し、メチル化テンプレートDNAを除去した。約5〜5kbpのPCR生成物をゲル精製し、1UのT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用しライゲーションした。ライゲーションした生成物をXL−10コンピテント細胞(Stratagene)に形質転換した。A−F1(pMB12)を持つ新たなキメラプラスミドを単離し、配列決定で確認した。オリゴヌクレオチド#3および#4を使用した類似のプロトコールにしたがって、ベクターpETDuet−1(pMBI3)内のキメラB−F2遺伝子を作製した。
【0235】
pACYCDuet−1における2つのMOSへの2つのキメラタンパク質のクローン化。2つのキメラ遺伝子の似通った発現レベルを維持するために、報告されたプロトコール(Geiserら、2001)にしたがって、次にB−F2フラグメントを、A−Fl1をすでに有するpMB12の第二のMCSに組み込んだ。すなわち、B−F2を、隣接する5’および3’ベクター配列を有するプラスミドpMBI3からPCR増幅した。隣接する配列は、pMB12の挿入部の地点からすぐ上の上流およびすぐ下の下流にある20bpのDNAに対応していた。レシピエントベクター、ならびに20bpの隣接相同性を介して非切断ベクターまでアニールするB−F2フラグメントによりPCR反応を行った。PCRプログラムは、95℃で30秒間の変性工程、その後の95℃で30秒間および55℃で30秒間の18サイクル、ならびにPfuターボDNAポリメラーゼを使用した68℃での8〜10分から構成されている。増幅した生成物を酵素Dpn1で3時間処理し、元のメチル化テンプレートDNAを除去した。XL−10コンピテント細胞を一定分量の精製した生成物で形質転換した。両タンパク質フラグメント(A−F1+B−F2)を担持するプラスミドを単離し、配列決定により確認した(pMB33)。構築物A−F1+B−F2も陰性対照として生成した(pMB54)。最後に、全長EGFPをベクターpACYCにクローン化し、EGFP発現の陽性対照として使用した(pMB38)。
【0236】
二成分アプタマーペプチドキメラのためのクローニング。EGFPをアミノ酸残基158と159との間で分割して2つの非蛍光フラグメントにし、それぞれをα−EGFPおよびβ−EGFPと名づけた。HTLV−1Rexペプチドを、10aaの柔軟ポリペプチドリンカー(Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser)を介してα−EGFPのC末端に融合させ;バクテリオファージλNペプチドを、同じ10aaのリンカーを介してβ−EGFPのN末端(図18)に融合した。多段階PCRを行い、2つの融合タンパク質およびその間にあるT7プロモーターをコードするDNAフラグメントを作製した。最初のT7プロモーター領域の後方およびT7ターミネーター領域の前方にある挿入部に位置する制限部位NcoIとAvrII間にあるpACYCDuet−1ベクター(Novagen)にDNA構築物を挿入した(図17)。したがって、2つのタンパク質キメラを1つのpACYCDuet−1プラスミドから発現させ、等モル量の両融合物の発現を確実にした。大腸菌株XL10−Gold Kanr(TetrΔ(mcrA)183Δ(mcrCB−hsdSMR−mrr)173 endA1 supE44 thi−1recA1 gyrA96 relA1 lacHte[F’proAB lacIqZΔM15 Tn10(Tetr)Tn5(Kanr)Amy)(Stratagene)をクローン化のために使用した。全構築物を配列決定により確認した。
【0237】
アプタマーのクローン化。2つのRNAアプタマーをコードし、そのうち1つがλNペプチドに結合し、その他がHTLV−1Rexペプチドに結合するようにDNA配列をデザインした。アプタマーを10個のチミンで分離し、XbaIおよびAvrIIの制限部位を末端に付加した。対応するDNAテンプレートをカスタム合成し、PCR増幅し、T7プロモーターの制御下でpETDuet−1ベクター(Novagen)中のXbaIおよびAvrII制限部位間に挿入した。pETDuet−1およびpACYCDuet−1ベクターは共発現に適合している。陰性対照として、2つの同一のRNAアプタマー配列をコードするDNA配列を同様に合成した。大腸菌株XL−10−Goldをクローン化のために使用した。全構築物を配列決定により確認した。
【0238】
培養条件および誘導。BL21(DE)3細胞を、(タンパク質キメラを発現する)pMB33および(標的RNAを発現する)pMB23で共形質転換した。タンパク質およびEGFP相補性複合体のRNA成分をコードする2つのプラスミドを大腸菌BL21(DE)3(BF ̄dcm ompT hsdS(rB ̄mB ̄)galλ(DE3))(Stratagene)内で共発現させた。陰性対照として、細胞を、2つの同一アプタマーを含むプラスミドで形質転換した。他の陰性対照として、アプタマー挿入部を含まないpETDuet−1プラスミドで形質転換した。形質転換細胞の単一コロニーを最初に、抗生物質が補充されたLB倍地中で37℃で3〜4時間培養した。37℃でのインキュベーションの後、培養物を300倍に希釈し、誘導因子イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG;1mM、あるいは二成分アプタマー−ペプチド相互作用では0.01mM)を含む新鮮な培地へ移し、室温で一晩培養した。試験時、培養の最適な密度は0.4から0.6(OD600=0.4から0.6)の間であった。BL21(DE3)pLysコンピテント細胞(Stratagene, CA)内でタンパク質を発現させた。0.35mMのIPTGで誘導を行い、細胞を37℃で4時間培養した。細胞を回収し、洗浄し、50mMのトリス−HCl pH8.0、25%のスクロース、1mMのEDTA、10mMのDTTおよび0.1%のアジ化ナトリウムを含むバッファー中で超音波処理(各30秒間を3回)により破壊した。封入体を同じバッファーで1回洗浄し、50mMのトリス−HCl pH8.5、100mMのNaCl、0.5%のトリトンX100、1mMのEDTA、1mMのDTT、0.1%のアジ化ナトリウムを含むバッファーで3回洗浄し、その後、8Mの尿素、25mMのMES pH8.5、10mMのEDTAおよび0.1mMのDTTを含むバッファーに溶解させた。尿素は含まないが同じバッファーへの滴下希釈によりタンパク質を再度折り畳み、バッファー(50mMのトリス−HCl、pH8.5、0.15MのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のトリトンX−100、1mMのPMSF)で平衡化したキチン親和性クロマトグラフィー樹脂(New England Biolabs, MA)に供した。同じバッファーでカラムを広範囲に洗浄した。その後カラムを50mMのトリス−HCl pH7.0、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのDTT、トリトンX−100を0.1%、1mMのPMSF)を含むバッファー中で平衡化し、インテイン切断が生じるように40℃で24〜48時間静置した。溶出物を回収し、タンパク質濃度および純度をSDS−PAGEおよびCoomasie Plus Protein染色(Pierce, IL)で分析した(図15および16参照)。同様の方式で全タンパク質を精製したが、1つ例外として:キチンクロマトグラフィー工程におけるEGFPのアルファサブユニットの単離にはトリス−HClバッファーの代わりにPBSバッファーを使用した。
【0239】
いくつかの実施例(実施例1および2)で、尿素は含まないが同じバッファーへの滴下希釈によりタンパク質を再度折り畳み、バッファー(50mMのトリス−HCl、pH8.5、0.15MのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のトリトンX−100、1mMのPMSF)で平衡化したキチン親和性クロマトグラフィー樹脂(New England Biolabs, MA)に供した。同じバッファーでカラムを広範囲に洗浄した。その後カラムを50mMのトリス−HCl pH7.0、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのDTT、トリトンX−100を0.1%、1mMのPMSF)を含むバッファー中で平衡化し、インテイン切断が生じるように40℃で24〜48時間静置した。溶出物を回収し、タンパク質濃度および純度をSDS−PAGEおよびCoomasie Plus Protein染色(Pierce, IL)で分析した(図15および16参照)。同様の方式で全タンパク質を精製したが、1つ例外として:キチンクロマトグラフィー工程におけるEGFPのアルファサブユニットの単離にはトリス−HClバッファーの代わりにPBSバッファーを使用した。これらの実施例では、5’および3’末端にSH基を有する2つの20nt長の相補性オリゴヌクレオチドはIDT DNA Technologiesから購入した。それらを10mMのDTTを含むバッファーとインキュベートすることでキャップから脱保護し、G25カラムでのゲルろ過により脱塩し、触媒、3mMの硫酸Cuおよび9mMの1,10−フェナントロリンの存在下で等モル量のタンパク質フラグメントと370℃で30分間、遮光してカップリングさせた(Leeら、1994)。カップリング効率はおよそ100%になった(図29参照)。二等分になったEGFPを含むカップリングされたキメラと相補性オリゴヌクレオチドとを等モル量で、透析チューブ内で混合し、50mMのトリス−HCl pH8.5、0.5MのNaCl、5mMのMgCl2および20μMのPEG(6000MW)を含むバッファーに対して透析した。4時間後にHitachi fluorescent spectrophotometer F-2500を使用して蛍光スペクトルを測定した(図30)。
【0240】
適切な抗生物質(クロラムフェニコールおよび/またはストレプトマイシン)を含むLB培地で細胞を培養し、発色性基質ニトロセフィン(nitrocefin)の存在下で0.2mMのIPTGにより誘導する。陰性対照はアプタマー配列を発現せず、崩壊したアプタマー配列およびアプタマーへの結合に必須な成分の1つを持たないタンパク質融合物を発現する。無細胞上清の490nmでの吸光度はNanoDrop ND-1000分光光度計を使用して測定する。
【0241】
フローサイトメトリー。488nmのアルゴン励起レーザーおよび515〜545nm発光フィルター(FL1)を使用したBecton-Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターで蛍光測定値を得た。アッセイに先立って1XPBSで細胞を1度洗浄した。細胞が100,000個回収されるまで測定を行った。
【0242】
蛍光顕微鏡、画像化およびデータ分析。培養した細菌細胞を1XPBS中で、カバーガラスと0.8%アガロースの薄い平板との間に固定化した。落射蛍光システムX-Cite 120を備えたNikon Eclipse 80i倒立顕微鏡を用いて室温で顕微鏡検査を行った。100倍率の対物レンズを備えたデジタルB&Wカメラ(12ビット;20mHz)を使用して、IPLab v. 3.7ソフトウェア(Scanalytics, Inc)で制御し、150〜300msの露光時間で撮影した。ND4フィルターを使用し、細胞の光損傷を低減した。ImageJ 1.36Bソフトウエア(Wayne Rasband, NIH)を使用し、画像処理を行った。顕微鏡撮影により得た蛍光像をJPEGフォーマットのImageJに読み取り、8ビット型に変換した。像ごとに閾値を手動で調整した。閾値の上限は最大観察値に自動で設定し、閾値の下限は、被写体として同定したバックグラウンド中では画素が見られないところに実験的に設定した。総細胞蛍光度を得るため、オプションで「Analyze Particles」を選択した。結果は、同定された被写体の画素面積、平均、最小および最大グレースケールとして表した。細胞の総蛍光度は、(グレースケール/画素)の平均から最小値を差し引いた値に(画素の)面積を乗じた積を合計して得た。この計算法はバックグラウンドを差し引いたものである。単一細胞における総蛍光変化の動態は今回、類似した方法で、長方形のセグメントツールを対象細胞に適用することで算出した。細胞に沿って蛍光分布を定量するため、細菌細胞の長軸に沿った蛍光プロファイルを測定し、ピーク表面値をMicrosoft Excellで算出した。各細胞を3から4回測定し、結果の平均値を求めた。各細胞の周囲にあるバックグラウンド蛍光を同様に定量し、蛍光プロファイルから差し引いた。
【0243】
蛍光測定および細胞の画像化:総細胞蛍光度はBecton-Dickinson蛍光活性化セルソーター(488nmの励起アルゴンレーザーを用いたFACSCalibur)で測定しExcelソフトウエアを使用して分析する。蛍光と微分干渉コントラスト(DIC)間の自動切換えを備えた共焦点顕微鏡システムを用いて細胞を画像化する。x150の拡大生検像を、冷却したスロースキャンCCD画像装置(C4880; Hamamatsu Photonics, Bridgewater, NJ)に直接送る。コンピューター制御(MetaMorph2.5ソフトウエア;Universal Imaging Corp., West Chester, PA)の顕微鏡を設置し、1μm間隔の軸段階での蛍光像、および中心蛍光像に対応する単一DIC像を取得するプロトコールを実行する。EGFPを監視するため、励起線が488nmであるアルゴンレーザーを使用し、発光ウインドウを500〜540nm間に設定する。いくつかの時点での合成画像を作製するため、Metamorphソフトウエアパッケージ(Universal Imaging Corporation)の3D再構成機構を使用する。RNAの速度は、1〜2分ごとに、あるいは必要に応じてそれ以下で撮像し、蛍光RNAのスポットを1つ1つ追っていくことで測定する。
【0244】
実競合PCRデザイン、増幅および伸長。細胞培養から得た総RNA試料を、総量20μL中、0.5μgの無作為のヘキサヌクレオチドおよびAMV逆転写酵素(Promega)で42℃1時間、逆転写した。プライマーおよび競合体を、Sequenom's Assay Designerソフトウエアを使用してデザインし、Integrated DNA Technology(Coralville, IA)により得た。100nMのPCRプライマー、多様な濃度の競合体、2.75mMのMgCl2および200μMのdNTPで、5μL中、0.1UのHotStar Taq DNAポリメラーゼ(Qiagen)を使用して、以下のPCR条件でcDNAの増幅を行った:95℃で15分間のホットスタート、次に95℃で30秒間を45サイクル、56℃で1分間、その後72℃で1分間、最後に72℃を7分間維持する。PCR増幅後、増幅サイクルでの未使用のdNTPを不活化する0.04Uのエビアルカリホスファターゼ、SAP(Sequenom)で生成物を37℃で20分間処理し、次いで85℃で5分間、熱不活性化を行った。伸長サイクルでは、特定のジデオキシヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチドを各反応に各塩基50μM含有している終止混合物を含む総反応物9μLに、1.2μMの最終濃度の伸長プライマーおよび0.6UのThermoSequenase(Sequenom)を添加した。伸長条件では、94℃を2分間維持すること、ならびに以下を75サイクル行うことが含まれる:94℃を5秒間、52度を5秒間および72℃を5秒間。
【0245】
MALDI−TOF MSおよび定量分析。MALDI−TOF MS分析に先だって、反応から得た塩を、SpectroCLEAN樹脂および16μLの水を使用して除去した。SpectroPOINT nanodispenser(Sequenom)を使用して約10nLの最終生成物を384プレート形式のMALDI-TOF MS SpectroCHIPに懸濁することによって、MassARRAYシステム(Sequenom)を用いてASV分析を行った。デフォルト値に設定したTITAN(Elvidgeら、2005)ソフトウエアを使用して質量分析データを分析した。
【0246】
培地:酵母野生型細胞をYDP(2%のグルコース、1%の酵母エキス、2%のペプトン)中で培養する。プラスミドで形質転換した細胞を、トリプトファン、ウラシルまたはロイシンを含有していない選択的合成ドロップアウト培地(0.67%の酵母窒素塩基、2%のグルコース)上で培養する。本試験で使用する株はYPH500の誘導体である(MATα、ura3-52、lys2-801amber、ade2-101ochre trp1-Δ63、his3-Δ200、leu2-Δ1)(Johnsson & Varshavsky, 1994)。
【0247】
酵母(真核生物)における共役検出体−核酸結合タンパク質の発現。酵母中でキメラタンパク質EGFP(A)-eIF4A(F1)およびEGFP(B)−eIF4A(F2)を発現するのに使用するプラスミドは、N末端でHAまたはmycエピトープに融合したタンパク質を発現するために修飾された発現ベクターpDB20(Beckerら、1991)の誘導体である。このことは強力なADH1プロモーターからの構成タンパク質の発現、およびウエスタンブロットによる遺伝子発現の分析を可能にする。遺伝子(第4のジップコードの後方)の3’末端に位置する64nt長のアプタマータグを有するASH1(EGFPの場所にある)の全メッセージを発現するため、プラスミドpRS4D1(Blakeら、2003)を修飾する。このプラスミドを株YPH500のゲノムに組み込むと、ガラクトースおよび無水テトラサイクリンを培地に添加することでタグ化ASH1遺伝子の発現が調節可能となる。このようにして、本発明者らは、ASH1の3’局在化配列を有するレポーター転写産物と対照的な全ASH1メッセージの局在化を追跡する(Bertrandら、1998;ならびにBreachおよびBloom、2001)。このことはRNA局在化のメカニズムに新たな見識をもたらす可能性がある。
【0248】
酵母細胞をザイモラーゼで処理し、その後DMEM中、2μMのCCF2/AMの存在下で、3x105細胞/mlの濃度で1時間、インキュベートする。細胞をPBSバッファーで洗浄し、励起を405nmおよび440〜450nmの発光に設定したフィルターを備える蛍光顕微鏡Nikon Eclipse 80iを使用して確認可能にする。細胞蛍光も蛍光活性化セルソーター(407nmで励起するレーザーを備えるFACSaria、Becton-Dickinson)で測定する。
【0249】
インビトロゲルシフトアッセイ。インビトロゲルシフトアッセイを行うため、表1に載せられたカスタム合成されたペプチドおよびRNAアプタマーを購入した。最初にRNAをバッファー(50mMのpH8.0 トリス−HCl、50mMのKCl)中、95℃で加熱することで変性させ、その後室温まで徐々に冷却しRNAを復元した。復元したRNAとペプチドを一般的なバッファー(50mMのトリス−HCl、pH8.0、50mMのKCl)に、30℃で15分間混合した。ペプチド−RNAアプタマー複合体を15%TBEゲルを用いたゲル電気泳動により分析した。RNAアプタマーおよびペプチド−RNAアプタマー複合体を臭化エチジウムで染色した。
【0250】
実施例らは、本発明の作製法および使用法の完全な開示および記述を当業者に提供するために提案されており、発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定することを目的としたものではなく、本発明に行われ得る実験および実施例のみを説明することを目的としたものでもない。本開示の観点から、多数の修飾および変化が、本発明の対象となる範囲から逸脱せずに実証される特定の実施態様および実施例中で実施可能であることは当業者に賞賛されることとなろう。このような修飾のすべては添付の請求項の範囲内に包含されることを目的としており、方法がRNAのインビボ可視化のための多数の系に適用可能であることは理解されている。
【0251】
参考文献
本明細書に引用され、出願を通過した参考文献は全体が参照により本明細書に援用される。
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1A】サッカロミセス・セルビシア(Saccharomyces cervisiae)での遺伝子発現に対するアプタマーの効果を研究するための転写系である(Blakeら、2003)。
【図1B】サッカロミセス・セルビシア(Saccharomyces cervisiae)での遺伝子発現に対するアプタマーの効果を研究するための転写系である(Blakeら、2003)。
【図2】マーカー遺伝子の3’末端におけるアプタマーの挿入は酵母での遺伝子発現に影響を及ぼさない。アプタマータグをEGFPの3’末端に挿入した(プラスミドを説明した図1を参照)。培養物を、0.2%のガラクトースおよび40ng/mlのATc存在下で対数増殖期まで培養した。番号1〜4は誘導性構築物の4つの異なる染色体組み込みに対応している。各培養物につき50,000個の細胞をFACSによりアッセイした。
【図3】本研究で使用したEGFPおよびeIF4Aのフラグメントを含むタンパク質融合の概要である。真核生物開始因子を2つのドメインに分割し、各ドメインをEGFPの2つのフラグメントに融合し、EGFP(A)−eIF4A(F1)およびEGFP(B)−eIF4A(F1)を生成した。数字は各フラグメントに含まれたアミノ酸の範囲を示している。(NはN末端;CはC末端)。
【図4】アプタマータグのない細菌細胞中での2つのキメラタンパク質の発現は蛍光を再構成しない。EGFP(A)−eIF4A(F1)およびEGFP(B)−eIF4A(F1)はBL21(DE3)細胞中で共発現した。培養物は1mMのIPTGで37℃で3時間誘導し、複合体形成を蛍光フローサイトメトリーで監視した。全長EGFPを発現するBL21(DE3)細胞を誘導の陽性対照(bEGFP)として使用し、A−F1およびB−F1の発現を陰性対照とした。
【図5A】2つの近接したアプタマータグおよび個々に近接アプタマーと相互作用する2つのペプチドによるインビボでのタンパク質相補対形成の図である。分割されたマーカータンパク質を灰色で表し、RNA結合ペプチド(プローブタンパク質)をオレンジ色で表している。(図5B)3つのアプタマーは、それぞれHIV Tatタンパク質(配列番号:2);HIV revペプチド(配列番号:1)およびHTLV Rexペプチド(配列番号:3)のCQペプチドに対するインビトロでの選択により見出した(Kdおよび参考文献に関しては表1を参照)。これら、または類似の構造は代替的なデザインにおけるRNAタグとして本発明者らのプロジェクトで使用可能である(タンパク質分割アプローチと対照的に)。
【図5B】2つの近接したアプタマータグおよび個々に近接アプタマーと相互作用する2つのペプチドによるインビボでのタンパク質相補対形成の図である。分割されたマーカータンパク質を灰色で表し、RNA結合ペプチド(プローブタンパク質)をオレンジ色で表している。(図5B)3つのアプタマーは、それぞれHIV Tatタンパク質(配列番号:2);HIV revペプチド(配列番号:1)およびHTLV Rexペプチド(配列番号:3)のCQペプチドに対するインビトロでの選択により見出した(Kdおよび参考文献に関しては表1を参照)。これら、または類似の構造は代替的なデザインにおけるRNAタグとして本発明者らのプロジェクトで使用可能である(タンパク質分割アプローチと対照的に)。
【図6】インビボRNA研究に関する核酸の相互作用に支持されたタンパク質相補性アッセイの概要である。酵素活性または蛍光発生特性を有するタンパク質を2つの不活性部分に分割した(アルファおよびベータサブユニットとする)。これらの部分は他のタンパク質を有するキメラとしてインビボで発現し、RNA結合ドメインを有する。理想的なRNA結合タンパク質は2つの部分から成り、単独では不活性であるが共同で活性的である。RNA結合タンパク質により認識可能なモチーフを含むRNAの存在下で、マーカータンパク質の活性が回復する。タンパク質が酵素である場合、シグナルが増幅する。タンパク質が蛍光を発する場合、シグナルは増幅しないがバックグラウンドも生じない。というのも蛍光は標的RNAの存在に完全に依存しているからである。
【図7】インビボRNA検出の図である。標的RNAをインビボで合成し、あるいは細胞へ導入する。2つのタンパク質キメラをインビボで合成し、または細胞へトランスフェクトする。各キメラは、標的RNA内の特別な二次構造(またはモチーフ)に特異的に結合するマーカータンパク質およびドメインの一部を含む。タグを有し、RNA結合タンパク質に特異的に認識される標的RNAの存在下では、タンパク質マーカーが集まり、その活性(蛍光または酵素活性)により検出される。
【図8】RNA発現がインビボでリアルタイムに分析可能となる本発明の一実施態様の図である。対象となる遺伝子およびRNA結合部位をプラスミドにコードし、安定的に組み込まれた本発明のレポーター構築物を有する細胞へトランスフェクトする。遺伝子(およびRNA結合部位)が発現する場合、レポーター構築物が活性化する。
【図9A】分割したEGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。(a)分割したeIF4Aおよび分割したEGFPのフラグメントをそれぞれ含む2つのタンパク質融合物が発現しても蛍光シグナルは現れない。(b)全長EGFPが発現すると大腸菌細胞が一様に蛍光性となる。(c)2つのタンパク質融合物およびアプタマーを有するRNA転写産物が共発現すると細胞極に局在化しやすい蛍光シグナルが現れる。1段目:大腸菌で発現した分子構築物。2段目:相補性複合体の成分を発現するプラスミド。3段目:FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布;黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。最下段:相補複合体の対応する成分を発現する大腸菌細胞の蛍光顕微鏡写真。
【図9B】分割したEGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。(a)分割したeIF4Aおよび分割したEGFPのフラグメントをそれぞれ含む2つのタンパク質融合物が発現しても蛍光シグナルは現れない。(b)全長EGFPが発現すると大腸菌細胞が一様に蛍光性となる。(c)2つのタンパク質融合物およびアプタマーを有するRNA転写産物が共発現すると細胞極に局在化しやすい蛍光シグナルが現れる。1段目:大腸菌で発現した分子構築物。2段目:相補性複合体の成分を発現するプラスミド。3段目:FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布;黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。最下段:相補複合体の対応する成分を発現する大腸菌細胞の蛍光顕微鏡写真。
【図9C】分割したEGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。(a)分割したeIF4Aおよび分割したEGFPのフラグメントをそれぞれ含む2つのタンパク質融合物が発現しても蛍光シグナルは現れない。(b)全長EGFPが発現すると大腸菌細胞が一様に蛍光性となる。(c)2つのタンパク質融合物およびアプタマーを有するRNA転写産物が共発現すると細胞極に局在化しやすい蛍光シグナルが現れる。1段目:大腸菌で発現した分子構築物。2段目:相補性複合体の成分を発現するプラスミド。3段目:FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布;黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。最下段:相補複合体の対応する成分を発現する大腸菌細胞の蛍光顕微鏡写真。
【図10】単一バクテリア内転写の動態である。(a)RNAアプタマー−eIF4A相補複合体を発現する大腸菌細胞の30分間隔の経時的蛍光顕微鏡写真。実験中、位相差顕微鏡写真に変化は見られなかった。
【図11A】生体細胞中のRNA検出により促進した蛍光の動態である。(b)異なる単一細胞における蛍光変化の動態(c)当技術分野の全細胞の総蛍光変化の動態。(d)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図11B】生体細胞中のRNA検出により促進した蛍光の動態である。(b)異なる単一細胞における蛍光変化の動態(c)当技術分野の全細胞の総蛍光変化の動態。(d)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図11C】生体細胞中のRNA検出により促進した蛍光の動態である。(b)異なる単一細胞における蛍光変化の動態(c)当技術分野の全細胞の総蛍光変化の動態。(d)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図12】アプタマー配列を持たないRNAを発現する細胞は、FACSによって得られたlacZ転写産物の存在下で相補複合体のタンパク質成分を発現する細胞の高蛍光性の蛍光分布を示さない。黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。比較として、アプタマー配列および相補タンパク質を含むRNAを発現する細胞の蛍光分布を青色で表す。
【図13A】高コピーベクター(〜100コピー)からアプタマー含有標的RNAを発現する細胞は蛍光性が高い。(a)タンパク質融合物およびアプタマー配列を含むRNA転写産物を発現するプラスミドの図。(b)FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布。黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。比較として、低コピー数(〜40)プラスミドから発現したアプタマーを有する細胞の蛍光分布を青色で表す。
【図13B】高コピーベクター(〜100コピー)からアプタマー含有標的RNAを発現する細胞は蛍光性が高い。(a)タンパク質融合物およびアプタマー配列を含むRNA転写産物を発現するプラスミドの図。(b)FACSにより得たEGFP相補複合体を発現する細胞の蛍光分布。黒色はIPTG誘導前;赤色はIPTG誘導後である。比較として、低コピー数(〜40)プラスミドから発現したアプタマーを有する細胞の蛍光分布を青色で表す。
【図14A】全長EGFPを発現する細胞(a)および分割したEGFPを含む再構成された核タンパク質複合体(b)の蛍光スペクトルは異なる。細胞懸濁液を希釈して光学密度を0.5(CD600=0.5)にし、F−2500蛍光光度計(Hitachi)を使用して蛍光性を記録した。同一の光学密度である非誘導細胞を光散乱の対照として使用した。
【図14B】全長EGFPを発現する細胞(a)および分割したEGFPを含む再構成された核タンパク質複合体(b)の蛍光スペクトルは異なる。細胞懸濁液を希釈して光学密度を0.5(CD600=0.5)にし、F−2500蛍光光度計(Hitachi)を使用して蛍光性を記録した。同一の光学密度である非誘導細胞を光散乱の対照として使用した。
【図15A】新たに分割した細胞は蛍光性を示さない。(a)指示時点で得られた位相差画像。(b)対応する蛍光像。
【図15B】新たに分割した細胞は蛍光性を示さない。(a)指示時点で得られた位相差画像。(b)対応する蛍光像。
【図16】二成分ペプチド−RNAアプタマー相互作用に基づく蛍光タンパク質相補性のデザイン。EGFPの2つのフラグメントであるαおよびβを、2つのウイルスペプチド、HIV−1RexペプチドおよびバクテリオファージλNペプチドと融合させた。2つの対応するアプタマーを持つRNA転写産物の存在下で、2つのペプチドは同族アプタマーと相互に作用し、分割したEGFPの2つのフラグメントを1つにする。EGFPが再集合すると、蛍光性が増強する。
【図17A】二成分アプタマー/ペプチド相互作用に基づく分割EGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。バックグラウンドからシグナルを識別するには低濃度(0.01mM)のIPTGで可能である。A、1.00mMのIPTGに誘導された細胞の蛍光分布。B、IPTG濃度の減少によって誘導された細胞の蛍光分布。
【図17B】二成分アプタマー/ペプチド相互作用に基づく分割EGFPのタンパク質相補性により生細菌細胞中のRNAが検出される。バックグラウンドからシグナルを識別するには低濃度(0.01mM)のIPTGで可能である。A、1.00mMのIPTGに誘導された細胞の蛍光分布。B、IPTG濃度の減少によって誘導された細胞の蛍光分布。
【図18】蛍光シグナルが様々に局在化した大腸菌細胞である。
【図19A】RNAの局在化および濃度の動態は単一細菌内で変化する。(a)相補複合体を発現する大腸菌細胞の30分間隔の経時的蛍光顕微鏡写真。実験期間中、位相差顕微鏡写真に変化は見られなかった。(b)2つの単一細胞で測定した総蛍光変化。(c)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図19B】RNAの局在化および濃度の動態は単一細菌内で変化する。(a)相補複合体を発現する大腸菌細胞の30分間隔の経時的蛍光顕微鏡写真。実験期間中、位相差顕微鏡写真に変化は見られなかった。(b)2つの単一細胞で測定した総蛍光変化。(c)細胞の長軸に沿って測定した、単一細菌細胞におけるリアルタイム蛍光分布変化。
【図20A】DNA二重鎖形成に支持された機能的EGFPの再集合。20A:実験の概要。CおよびN末端でCys残基を有するEGFPの精製α−およびβ−フラグメントをそれぞれN−[6−(ビオチンアミド)ヘキシル]−3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド(HPDP-biotin, Pierce)でビオチン化し、精製し、等モル量のストレプトアビジンとともにインキュベートした。その後これらの複合体を、等モル量の2つの相補性21ntの長いオリゴヌクレオチドとともに別々にインキュベートした。各工程における複合体収率をゲルシフトアッセイで確認し、およそ100%であることが分かった。その後2つのタンパク質−オリゴヌクレオチドキメラを等モル濃度で混合した。1B:元のEGFP(最大)および21bpのDNA二重鎖が加えられた再集合したEGFP(最低)の480nm励起での蛍光放射スペクトル。蛍光スペクトルはリン酸Naバッファー、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA中で測定した。
【図20B】DNA二重鎖形成に支持された機能的EGFPの再集合。20A:実験の概要。CおよびN末端でCys残基を有するEGFPの精製α−およびβ−フラグメントをそれぞれN−[6−(ビオチンアミド)ヘキシル]−3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド(HPDP-biotin, Pierce)でビオチン化し、精製し、等モル量のストレプトアビジンとともにインキュベートした。その後これらの複合体を、等モル量の2つの相補性21ntの長いオリゴヌクレオチドとともに別々にインキュベートした。各工程における複合体収率をゲルシフトアッセイで確認し、およそ100%であることが分かった。その後2つのタンパク質−オリゴヌクレオチドキメラを等モル濃度で混合した。1B:元のEGFP(最大)および21bpのDNA二重鎖が加えられた再集合したEGFP(最低)の480nm励起での蛍光放射スペクトル。蛍光スペクトルはリン酸Naバッファー、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA中で測定した。
【図21】元の、および再構成EGFPの蛍光に対するMg2+イオンの影響は異なる。
【図22A】図22A:EGFPのα−およびβ−フラグメントと、加えられた相補性の21nt長のオリゴヌクレオチドとを混合すると、蛍光の高速反応速度が上昇する。図22B:全工程のt1/2でのS65Tにおける発色団形成の動態経路(Zimmer, 2002より)。
【図22B】図22A:EGFPのα−およびβ−フラグメントと、加えられた相補性の21nt長のオリゴヌクレオチドとを混合すると、蛍光の高速反応速度が上昇する。図22B:全工程のt1/2でのS65Tにおける発色団形成の動態経路(Zimmer, 2002より)。
【図23A】EGFPの折り畳みα−フラグメントは事前形成された発色団を含んでよい。図23A:離散分子力学(DMD)シミュレーションから得たα−フラグメントの10個の配列された典型的折り畳み構造の骨格表示(Dokholyan、未発表)。発色団形成アミノ酸を青色で表す。残りの分子と接触する数がわずかであるため、フラグメントのN末端の大部分およびその他のフラグメントの非常に柔軟なC末端部分を密封することを留意されたい。図23B:折り畳みα−ドメインおよび全長EGFPの配列。全長EGFPを黄色で示し、α−ドメインを青色で示す。発色団形成残基(#62〜70)を赤色で示す。図23C:完全サイズのEGFP中のアミノ酸と比較したEGFPのα−フラグメント中の各残基の二乗平均平方根偏差(RMSD)。RMSD値を、タンパク質が折り畳まれたとき、低温でDMDシミュレーションから算出する。発色団形成アミノ酸は分割領域にあり、それらの偏差は≦2Aである。
【図23B】EGFPの折り畳みα−フラグメントは事前形成された発色団を含んでよい。図23A:離散分子力学(DMD)シミュレーションから得たα−フラグメントの10個の配列された典型的折り畳み構造の骨格表示(Dokholyan、未発表)。発色団形成アミノ酸を青色で表す。残りの分子と接触する数がわずかであるため、フラグメントのN末端の大部分およびその他のフラグメントの非常に柔軟なC末端部分を密封することを留意されたい。図23B:折り畳みα−ドメインおよび全長EGFPの配列。全長EGFPを黄色で示し、α−ドメインを青色で示す。発色団形成残基(#62〜70)を赤色で示す。図23C:完全サイズのEGFP中のアミノ酸と比較したEGFPのα−フラグメント中の各残基の二乗平均平方根偏差(RMSD)。RMSD値を、タンパク質が折り畳まれたとき、低温でDMDシミュレーションから算出する。発色団形成アミノ酸は分割領域にあり、それらの偏差は≦2Aである。
【図23C】EGFPの折り畳みα−フラグメントは事前形成された発色団を含んでよい。図23A:離散分子力学(DMD)シミュレーションから得たα−フラグメントの10個の配列された典型的折り畳み構造の骨格表示(Dokholyan、未発表)。発色団形成アミノ酸を青色で表す。残りの分子と接触する数がわずかであるため、フラグメントのN末端の大部分およびその他のフラグメントの非常に柔軟なC末端部分を密封することを留意されたい。図23B:折り畳みα−ドメインおよび全長EGFPの配列。全長EGFPを黄色で示し、α−ドメインを青色で示す。発色団形成残基(#62〜70)を赤色で示す。図23C:完全サイズのEGFP中のアミノ酸と比較したEGFPのα−フラグメント中の各残基の二乗平均平方根偏差(RMSD)。RMSD値を、タンパク質が折り畳まれたとき、低温でDMDシミュレーションから算出する。発色団形成アミノ酸は分割領域にあり、それらの偏差は≦2Aである。
【図24A】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図24B】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図24C】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図24D】EGFPのα−フラグメントは事前形成された発色団を含む。図24A:EGFPの吸光スペクトル、図24B:EGFPのα−およびβ−フラグメントの吸光度、図24C:EGFPの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)、図24D:α−フラグメントの蛍光スペクトル(青色―励起、ピンク色―発光)。等モル濃度の全タンパク質をスペクトル分析に供した。
【図25A】部分的なタンパク質分解によりGFPから単離した発色団含有ペプチド(図25A)および化学合成した酸性/中性pHの発色団(図25B)の吸光度(Niwaら、1996)。
【図25B】部分的なタンパク質分解によりGFPから単離した発色団含有ペプチド(図25A)および化学合成した酸性/中性pHの発色団(図25B)の吸光度(Niwaら、1996)。
【図26】タンパク質相補性アッセイを支援するための核酸相互作用の2つの可能性ある配列。
【図27】自己分割インテインを有するキメラとして大腸菌で発現するEGFP(ベータ−シス)のベータ−フラグメントの精製。レーン6のタンパク質はインテインの自己分割後に得られたEGFPの純粋なβ−サブユニットである。
【図28】自己分割インテインを有するキメラとして大腸菌で発現するEGFPのアルファ−フラグメントの精製。レーン5のタンパク質はEGFPの純粋なα−サブユニットである。
【図29】タンパク質はSH含有オリゴヌクレオチドにおよそ100%完全に結合される。非変性PAGEを使用する分析。結合後、タンパク質は負電荷を帯びているオリゴヌクレオチドに連結する。したがって、修飾したタンパク質は非修飾タンパク質より迅速に運動する(レーン1および2および3および4と比較されたい)。オリゴヌクレオチドをビオチン化すれば、ストレプトアビジンとの複合体の形成が可能となる。このような複合体もストレプトアビジン単独より迅速に移動する(レーン6および7と比較されたい)。このデータから、本発明者らは、オリゴヌクレオチドのタンパク質とのカップリング効率がおよそ100%であると結論付ける。
【図30A】結合させたアルファ+Aおよびベータ+Bの蛍光性は活性EGFPの再構成を示し、一方、オリゴヌクレオチドない場合には活性EGFPは存在しない。
【図30B】結合させたアルファ+Aおよびベータ+Bの蛍光性は活性EGFPの再構成を示し、一方、オリゴヌクレオチドない場合には活性EGFPは存在しない。
【図31】タンパク質酵素活性の回復によるタンパク質相補性の図である。この原理は図6に類似している。酵素の再集合はRNAとRNA結合タンパク質との相互作用に依存している。再集合した活性酵素はその基質を分割しており、結果として発色性または蛍光発生生成物が生じる。よってタンパク質の酵素活性によりシグナルは増幅する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記:
a.検出構築物をコードする核酸配列を発現する工程であって、該検出構築物が核酸結合モチーフにコンジュゲーションした第一のポリペプチドフラグメントおよび核酸結合モチーフにコンジュゲーションした少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントを含み、該2つのポリペプチドフラグメントは結合して活性化状態で検出タンパク質を形成し、該2つのフラグメントは活性的野生型タンパク質と比較した場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にある工程;および
b.レポーター構築物をコードする核酸配列を発現する工程であって、該レポーター構築物が対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含み、該核酸結合配列は該検出構築物中の2つ以上の該核酸結合モチーフにより認識され;該ポリペプチドフラグメントの2つ以上の核酸結合モチーフが該核酸結合配列に結合することによって、該活性的検出タンパク質がリアルタイムに再構成される工程;および
c.該再構成された検出タンパク質を検出する手段、
を含む、リアルタイム核酸検出法。
【請求項2】
検出がインビトロまたはインビボである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該検出がインビボである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該核酸がRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該核酸がDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該検出タンパク質の第一のポリペプチドフラグメントと会合した該核酸結合モチーフが全長モチーフの一部であり、残りのモチーフが該検出タンパク質の少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントと会合している、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項7】
該検出タンパク質の第一のポリペプチドフラグメントと会合した該核酸結合モチーフが、該検出タンパク質の少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントと会合した該核酸結合モチーフから独立した全長モチーフである、請求項1、3、4または6記載の方法。
【請求項8】
該核酸結合モチーフがマルチドメイン核酸結合分子のドメインを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該検出タンパク質が蛍光タンパク質である、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項10】
該蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP);高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP);緑色蛍光タンパク質様タンパク質(GFP様);黄色蛍光タンパク質(YFP);高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP);青色蛍光タンパク質(BFP);高感度青色蛍光タンパク質(EBFP);シアン蛍光タンパク質(CFP);高感度シアン蛍光タンパク質(ECFP);赤色蛍光タンパク質(dsRED);ならびにその改変型およびフラグメントからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該蛍光タンパク質がEGFPである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
第一および第二のEGFPフラグメント間に位置する切断産物をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
EGFPの第一のフラグメントがアミノ酸1からおよそアミノ酸158であり、EGFPの第二のフラグメントがおよそアミノ酸159からアミノ酸239である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
該検出タンパク質が酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該酵素が、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
該酵素がベータ−ラクタマーゼである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
該ベータ−ラクタマーゼの第一のフラグメントがおよそアミノ酸24からアミノ酸197であり、該ベータ−ラクタマーゼの第二のフラグメントがおよそアミノ酸198からアミノ酸240である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
該核酸結合モチーフがタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
該核酸結合モチーフタンパク質が2つ以上のフラグメントに断片化され、1つのフラグメントが第一の検出ポリペプチドフラグメントにコンジュゲーションし、残りのフラグメントが1つ以上の相補性ポリペプチドフラグメントにコンジュゲーションし、該フラグメントは:(a)活性化コンフォメーションにあり;(b)それ自身では活性的ではなく;(c)該レポーター構築物中で該核酸結合配列に結合することにより、相補対形成し、リアルタイムに該活性な検出タンパク質を再構成する、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項20】
該核酸結合モチーフがMS2コートタンパク質であり、該核酸結合配列がRNAステムループであるか、あるいは該核酸結合モチーフがTARであり、該核酸結合配列がTatBIV−1ステムループであるか、あるいは該核酸結合モチーフがG3/C3ステムループの3つのリピートであり、該核酸結合配列が転写活性化因子であるか、あるいは該核酸結合モチーフがeIF4Aに特異的なアプタマーであり、該核酸結合配列がeIF4aであるか、あるいは該核酸結合モチーフが該レポーター構築物中に存在する該核酸結合配列に特異的なアプタマーであるか、あるいは該レポーター構築物中に存在する該核酸結合配列がアプタマータグである、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項21】
該レポータータンパク質を検出する手段が定量的または定性的な手段を含む、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項22】
該方法が以下の工程:(a)生体試料中の該検出タンパク質のベースラインシグナルを検出する工程;(b)該検出タンパク質のポリペプチドフラグメントにコンジュゲーションした該核酸結合モチーフに、該レポーター構築物の該核酸結合配列を接触させることの改変があるようにアッセイ条件を改変する工程、(c)シグナル変化が対象ヌクレオチドの変化の指標となる、該生体試料から該活性検出タンパク質の変化を即時に検出する工程、をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
手段が、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、電子顕微鏡、蛍光活性化セルソーター(FACS)および外観検査からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
該構築物を用いる細胞のトランスフォーメーションまたはトランスフェクションにより該検出構築物およびレポーター構築物を細胞中で発現させる、請求項1記載の方法。
【請求項25】
融合産物が生成されるように、該検出タンパク質および該核酸結合モチーフをコードする2つの核酸がインフレームで融合することによって、該検出タンパク質が該核酸結合モチーフに結合する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
該融合産物がタンパク分解酵素部位またはタグを含み、精製を促進する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
該タグが6−Hisタグまたはグルタチオン−S−トランスフェラーゼタグまたはペプチドエピトープである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
下記:
(i)請求項1の該検出構築物;
(ii)請求項1の該レポーター構築物;または
(iii)(i)の該検出構築物および(ii)の該レポーター構築物の両方
の少なくとも1つをコードするDNA配列を含むプラスミド。
【請求項29】
請求項28のDNA配列の少なくとも1つをそのゲノムにコンピテントに組み込んだトランスジェニック生物。
【請求項30】
下記:
a.検出構築物が核酸結合モチーフに結合した第一のポリペプチドフラグメントおよび核酸結合モチーフに結合した少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントを含み、該2つのポリペプチドフラグメントは結合して活性化状態で検出タンパク質を形成し、該2つのフラグメントは活性的野生型タンパク質と比較した場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にある、該検出構築物をコードする核酸配列;および/または
b.レポーター構築物が対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含み、該核酸結合配列は該検出構築物中の2つ以上の該核酸結合モチーフにより認識され;該ポリペプチドフラグメントの2つ以上の核酸結合モチーフが該核酸結合配列に結合することによって、該活性的検出タンパク質がリアルタイムに再構成される、該レポーター構築物をコードする核酸配列
の機能的ゲノム発現をそのゲノムにコンピテントに組み込んだトランスジェニック生物。
【請求項31】
マウス、ゼブラフィッシュ、線虫(c. elegans)、酵母、細菌、哺乳動物細胞、一次細胞および二次細胞からなる群より選択される、請求項29または30のトランスジェニック生物。
【請求項32】
下記:
a.該核酸結合モチーフが特定の疾患または障害に特異的である請求項1で記述した検出構築物に、個体から得たDNAまたはRNAを接触させる工程;および
b.該検出構築物からのシグナル変化の検出が疾患または障害の存在の指標になる、該検出構築物のシグナル変化を検出する工程
の工程を含む、個体における疾患または障害の検出法。
【請求項33】
該疾患が病原体である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
該病原体が、ウイルス;インフルエンザ、細菌、真菌、寄生生物および酵母を含む群より選択される請求項33記載の方法。
【請求項35】
該DNAまたはRNAが疾患に対する遺伝的資質である、請求項32記載の方法。
【請求項36】
該検出タンパク質フラグメントが再構築されるとすぐに活性化するように設計されている、請求項1または3記載の方法。
【請求項37】
該検出ポリペプチドタンパク質フラグメントは活性的野生型タンパク質と比較した場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にあり、相補性検出ポリペプチドタンパク質フラグメントは標的核酸の存在下ではリアルタイムに該検出タンパク質およびシグナル表現型を再構築する、請求項1記載の方法。
【請求項38】
リアルタイムに核酸を検出するための、検出構築物およびレポーター構築物をコードする核酸セグメントの使用であって;
(i)該検出構築物は、活性的野生型タンパク質とした場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にある検出タンパク質のフラグメントを含み;それらは核酸結合モチーフにコンジュゲーションし、少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントは核酸結合モチーフにコンジュゲーションしており;そして
(ii)該レポーター構築物が対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含み、該核酸結合配列は該検出構築物中の2つ以上の該核酸結合モチーフにより認識され;該ポリペプチドフラグメントの2つ以上の核酸結合モチーフが核酸結合配列に結合すると活性的検出タンパク質がリアルタイムに再構成される、使用。
【請求項39】
リアルタイムに検出された該核酸をインビボで検出する、請求項38の核酸セグメントの使用。
【請求項40】
下記:
(i)請求項1の検出構築物;
(ii)請求項1のレポーター構築物;または
(iii)(i)の該検出構築物および(ii)の該レポーター構築物の両方
の少なくとも1つをコードするDNA配列を含むプラスミドを含むキット。
【請求項41】
該検出構築物が請求項9または10の該蛍光タンパク質もしくは請求項15の該酵素を含む、請求項40記載のキット。
【請求項42】
該レポーター構築物が請求項20のアプタマーを含む、請求項40記載のキット。
【請求項43】
該検出を、線維芽細胞、神経細胞、卵母細胞、腫瘍細胞、ウイルス感染哺乳動物細胞、上皮細胞、細菌細胞および酵母細胞からなる群より選択された細胞中で行う、請求項1記載の方法。
【請求項44】
該細胞が遺伝子改変細胞である、請求項43記載の方法。
【請求項1】
下記:
a.検出構築物をコードする核酸配列を発現する工程であって、該検出構築物が核酸結合モチーフにコンジュゲーションした第一のポリペプチドフラグメントおよび核酸結合モチーフにコンジュゲーションした少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントを含み、該2つのポリペプチドフラグメントは結合して活性化状態で検出タンパク質を形成し、該2つのフラグメントは活性的野生型タンパク質と比較した場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にある工程;および
b.レポーター構築物をコードする核酸配列を発現する工程であって、該レポーター構築物が対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含み、該核酸結合配列は該検出構築物中の2つ以上の該核酸結合モチーフにより認識され;該ポリペプチドフラグメントの2つ以上の核酸結合モチーフが該核酸結合配列に結合することによって、該活性的検出タンパク質がリアルタイムに再構成される工程;および
c.該再構成された検出タンパク質を検出する手段、
を含む、リアルタイム核酸検出法。
【請求項2】
検出がインビトロまたはインビボである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該検出がインビボである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該核酸がRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該核酸がDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該検出タンパク質の第一のポリペプチドフラグメントと会合した該核酸結合モチーフが全長モチーフの一部であり、残りのモチーフが該検出タンパク質の少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントと会合している、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項7】
該検出タンパク質の第一のポリペプチドフラグメントと会合した該核酸結合モチーフが、該検出タンパク質の少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントと会合した該核酸結合モチーフから独立した全長モチーフである、請求項1、3、4または6記載の方法。
【請求項8】
該核酸結合モチーフがマルチドメイン核酸結合分子のドメインを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該検出タンパク質が蛍光タンパク質である、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項10】
該蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP);高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP);緑色蛍光タンパク質様タンパク質(GFP様);黄色蛍光タンパク質(YFP);高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP);青色蛍光タンパク質(BFP);高感度青色蛍光タンパク質(EBFP);シアン蛍光タンパク質(CFP);高感度シアン蛍光タンパク質(ECFP);赤色蛍光タンパク質(dsRED);ならびにその改変型およびフラグメントからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該蛍光タンパク質がEGFPである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
第一および第二のEGFPフラグメント間に位置する切断産物をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
EGFPの第一のフラグメントがアミノ酸1からおよそアミノ酸158であり、EGFPの第二のフラグメントがおよそアミノ酸159からアミノ酸239である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
該検出タンパク質が酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該酵素が、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
該酵素がベータ−ラクタマーゼである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
該ベータ−ラクタマーゼの第一のフラグメントがおよそアミノ酸24からアミノ酸197であり、該ベータ−ラクタマーゼの第二のフラグメントがおよそアミノ酸198からアミノ酸240である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
該核酸結合モチーフがタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
該核酸結合モチーフタンパク質が2つ以上のフラグメントに断片化され、1つのフラグメントが第一の検出ポリペプチドフラグメントにコンジュゲーションし、残りのフラグメントが1つ以上の相補性ポリペプチドフラグメントにコンジュゲーションし、該フラグメントは:(a)活性化コンフォメーションにあり;(b)それ自身では活性的ではなく;(c)該レポーター構築物中で該核酸結合配列に結合することにより、相補対形成し、リアルタイムに該活性な検出タンパク質を再構成する、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項20】
該核酸結合モチーフがMS2コートタンパク質であり、該核酸結合配列がRNAステムループであるか、あるいは該核酸結合モチーフがTARであり、該核酸結合配列がTatBIV−1ステムループであるか、あるいは該核酸結合モチーフがG3/C3ステムループの3つのリピートであり、該核酸結合配列が転写活性化因子であるか、あるいは該核酸結合モチーフがeIF4Aに特異的なアプタマーであり、該核酸結合配列がeIF4aであるか、あるいは該核酸結合モチーフが該レポーター構築物中に存在する該核酸結合配列に特異的なアプタマーであるか、あるいは該レポーター構築物中に存在する該核酸結合配列がアプタマータグである、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項21】
該レポータータンパク質を検出する手段が定量的または定性的な手段を含む、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項22】
該方法が以下の工程:(a)生体試料中の該検出タンパク質のベースラインシグナルを検出する工程;(b)該検出タンパク質のポリペプチドフラグメントにコンジュゲーションした該核酸結合モチーフに、該レポーター構築物の該核酸結合配列を接触させることの改変があるようにアッセイ条件を改変する工程、(c)シグナル変化が対象ヌクレオチドの変化の指標となる、該生体試料から該活性検出タンパク質の変化を即時に検出する工程、をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
手段が、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、電子顕微鏡、蛍光活性化セルソーター(FACS)および外観検査からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
該構築物を用いる細胞のトランスフォーメーションまたはトランスフェクションにより該検出構築物およびレポーター構築物を細胞中で発現させる、請求項1記載の方法。
【請求項25】
融合産物が生成されるように、該検出タンパク質および該核酸結合モチーフをコードする2つの核酸がインフレームで融合することによって、該検出タンパク質が該核酸結合モチーフに結合する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
該融合産物がタンパク分解酵素部位またはタグを含み、精製を促進する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
該タグが6−Hisタグまたはグルタチオン−S−トランスフェラーゼタグまたはペプチドエピトープである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
下記:
(i)請求項1の該検出構築物;
(ii)請求項1の該レポーター構築物;または
(iii)(i)の該検出構築物および(ii)の該レポーター構築物の両方
の少なくとも1つをコードするDNA配列を含むプラスミド。
【請求項29】
請求項28のDNA配列の少なくとも1つをそのゲノムにコンピテントに組み込んだトランスジェニック生物。
【請求項30】
下記:
a.検出構築物が核酸結合モチーフに結合した第一のポリペプチドフラグメントおよび核酸結合モチーフに結合した少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントを含み、該2つのポリペプチドフラグメントは結合して活性化状態で検出タンパク質を形成し、該2つのフラグメントは活性的野生型タンパク質と比較した場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にある、該検出構築物をコードする核酸配列;および/または
b.レポーター構築物が対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含み、該核酸結合配列は該検出構築物中の2つ以上の該核酸結合モチーフにより認識され;該ポリペプチドフラグメントの2つ以上の核酸結合モチーフが該核酸結合配列に結合することによって、該活性的検出タンパク質がリアルタイムに再構成される、該レポーター構築物をコードする核酸配列
の機能的ゲノム発現をそのゲノムにコンピテントに組み込んだトランスジェニック生物。
【請求項31】
マウス、ゼブラフィッシュ、線虫(c. elegans)、酵母、細菌、哺乳動物細胞、一次細胞および二次細胞からなる群より選択される、請求項29または30のトランスジェニック生物。
【請求項32】
下記:
a.該核酸結合モチーフが特定の疾患または障害に特異的である請求項1で記述した検出構築物に、個体から得たDNAまたはRNAを接触させる工程;および
b.該検出構築物からのシグナル変化の検出が疾患または障害の存在の指標になる、該検出構築物のシグナル変化を検出する工程
の工程を含む、個体における疾患または障害の検出法。
【請求項33】
該疾患が病原体である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
該病原体が、ウイルス;インフルエンザ、細菌、真菌、寄生生物および酵母を含む群より選択される請求項33記載の方法。
【請求項35】
該DNAまたはRNAが疾患に対する遺伝的資質である、請求項32記載の方法。
【請求項36】
該検出タンパク質フラグメントが再構築されるとすぐに活性化するように設計されている、請求項1または3記載の方法。
【請求項37】
該検出ポリペプチドタンパク質フラグメントは活性的野生型タンパク質と比較した場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にあり、相補性検出ポリペプチドタンパク質フラグメントは標的核酸の存在下ではリアルタイムに該検出タンパク質およびシグナル表現型を再構築する、請求項1記載の方法。
【請求項38】
リアルタイムに核酸を検出するための、検出構築物およびレポーター構築物をコードする核酸セグメントの使用であって;
(i)該検出構築物は、活性的野生型タンパク質とした場合、活性的でコンフォメーション的に正常な形態にある検出タンパク質のフラグメントを含み;それらは核酸結合モチーフにコンジュゲーションし、少なくとも1つの他のポリペプチドフラグメントは核酸結合モチーフにコンジュゲーションしており;そして
(ii)該レポーター構築物が対象となるヌクレオチドおよび核酸結合配列を含み、該核酸結合配列は該検出構築物中の2つ以上の該核酸結合モチーフにより認識され;該ポリペプチドフラグメントの2つ以上の核酸結合モチーフが核酸結合配列に結合すると活性的検出タンパク質がリアルタイムに再構成される、使用。
【請求項39】
リアルタイムに検出された該核酸をインビボで検出する、請求項38の核酸セグメントの使用。
【請求項40】
下記:
(i)請求項1の検出構築物;
(ii)請求項1のレポーター構築物;または
(iii)(i)の該検出構築物および(ii)の該レポーター構築物の両方
の少なくとも1つをコードするDNA配列を含むプラスミドを含むキット。
【請求項41】
該検出構築物が請求項9または10の該蛍光タンパク質もしくは請求項15の該酵素を含む、請求項40記載のキット。
【請求項42】
該レポーター構築物が請求項20のアプタマーを含む、請求項40記載のキット。
【請求項43】
該検出を、線維芽細胞、神経細胞、卵母細胞、腫瘍細胞、ウイルス感染哺乳動物細胞、上皮細胞、細菌細胞および酵母細胞からなる群より選択された細胞中で行う、請求項1記載の方法。
【請求項44】
該細胞が遺伝子改変細胞である、請求項43記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図31】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図31】
【公表番号】特表2009−513141(P2009−513141A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538055(P2008−538055)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/042210
【国際公開番号】WO2007/050979
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(595094600)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (37)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/042210
【国際公開番号】WO2007/050979
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(595094600)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (37)
【Fターム(参考)】
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